説明

パチンコ機

【課題】図柄表示装置の熱による遊技盤の膨張又は収縮や歪みを抑制可能なパチンコ機を提供する。
【解決手段】放熱部材34を、その一部(伝導部34a及びフランジ片36)を液晶表示装置30に接触させ、且つ、放熱部34bを通気窓29を介して遊技盤2の前方へ突出させた状態で設置した。そのため、液晶表示装置30から生じた熱は伝導部34aやフランジ片36から放熱部34bへ伝わった後、遊技盤2の前方へ放熱される。したがって、液晶表示装置30の熱に伴う遊技盤2の後方の温度上昇を抑制することができ、特に遊技盤2後面に生じる変形量(膨張又は収縮量)を小さく抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、遊技性の向上を図るべく、遊技盤を透明な合成樹脂により成形したパチンコ機が考案されている(たとえば、特許文献1)。そして、このようなパチンコ機においても、大当たり抽選に係る「図柄」(たとえば、所謂「デモ図柄」)等を表示するための液晶表示装置は、従来周知のパチンコ機同様、遊技盤の後方に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−152580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、合成樹脂により成形された遊技盤は周囲の温度変化に影響を受けやすく、液晶表示装置の熱に起因して表面(後面)が膨張し、ひいては遊技領域内に植設されている遊技釘同士の間隔が大きく変化して、たとえば遊技球がチューリップ式電動役物へ入賞できなくなるといった不具合が起こるおそれがある。また、遊技盤の前方と後方とで生じた温度差により、遊技盤の前面と後面とで熱膨張率が異なり、遊技盤全体が前方又は後方へ反ってしまうという事態も起こっている。
さらに、上記問題の解決にあたり、熱の影響を受けにくい、すなわち熱変形しにくい合成樹脂の採用も考えられるが、そのような合成樹脂は比較的高価である上、加工性に劣り遊技盤の作製には不向きである等といった問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、高価な合成樹脂を用いることなく、図柄表示装置の熱による遊技盤の膨張又は収縮や歪みを抑制可能なパチンコ機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、前面に遊技球が流下する遊技領域を形成した合成樹脂製の板状部材からなる遊技盤を設置したパチンコ機であって、前記遊技盤に、その前面から後面にわたって貫通する開口を開設し、前記遊技盤の表面積を増やすとともに、前記開口の前方を、少なくとも一部が前記遊技領域内に位置する遊技部材により覆ったことを特徴とする。
【0007】
なお、前面に遊技球が流下する遊技領域を設けた合成樹脂製の遊技盤が設置されているとともに、遊技盤の後方に図柄表示装置が設置されてなるパチンコ機であって、遊技盤に、その前面から後面にわたって貫通する開口を開設する一方、一部が図柄表示装置に接触しているとともに、放熱部が開口から露出する放熱部材を設け、図柄表示装置から生じる熱を一部から放熱部を介して放熱可能とするような構成も考えられる。そして、該構成を採用すると、放熱部材により図柄表示装置から生じた熱を遊技盤の後方にとどまらせることなく、開口から遊技盤の前方へと逃がすことができる。
また、前面に遊技球が流下する遊技領域を設けた合成樹脂製の遊技盤が設置されているとともに、遊技盤の後方に図柄表示装置が設置されてなるパチンコ機であって、一部が図柄表示装置に接触しているとともに、放熱部が遊技盤から外方へ突出する放熱部材を設け、図柄表示装置から生じる熱を一部から放熱部を介して放熱可能とするような構成も考えられる。そして、該構成を採用すると、熱を遊技盤の上方や側方等へ逃がすことができる。したがって、高価な合成樹脂を用いずとも、図柄表示装置の熱に伴う遊技盤後方の温度上昇を抑制することができ、特に遊技盤の後面に生じる膨張又は収縮を低減することができる。
【0008】
さらに、放熱部を、遊技盤の前面よりも前方へ突出させるような構成も考えられる。そして、該構成を採用すると、放熱部が遊技盤の前方へ突出しているため、図柄表示装置から生じた熱を遊技盤の前方へ逃がすことができ、結果として遊技盤の前面と後面との間で生じる温度差を小さく抑えることができる。したがって、遊技盤の前面と後面とで膨張又は収縮量に差が生じ、遊技盤が大きく反る等といった事態の発生を防止することができる。
さらにまた、放熱部の前方を、少なくとも一部が遊技領域内に位置する遊技部材により覆うとともに、遊技部材に通気孔を形成するような構成も考えられる。そして、該構成を採用すると、放熱部の前方を、少なくとも一部が遊技領域内に位置する遊技部材により覆うため、たとえ開口を遊技領域内に設けたとしてもパチンコ機のデザイン性が損なわれることはない。また、遊技部材に通気孔を設けているため、放熱部から放出された熱をためることなく逃がすことができる。
加えて、遊技盤に、当該遊技盤の中央を中心とした円周に沿う円弧状のスリットを設けるような構成も考えられる。そして、該構成を採用すると、遊技盤にスリットを設けているため、たとえ膨張又は収縮が生じたとしても、スリットによって遊技盤の外周縁よりも内方でその膨張又は収縮を逃がすことができ、遊技盤全体での変形量を低減することができる。また、スリットを遊技盤の中央を中心とした円周に沿う円弧状に形成しているため、スリットにおいて膨張又は収縮を無理なく逃がすことができ、遊技盤に撓みが生じる事態をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遊技盤に、その前面から後面にわたって貫通する開口を開設しているため、遊技盤の表面積が増す。したがって、遊技盤に伝わった熱を、特に開口の断面から放出することができ、遊技盤の膨張を抑制することができる。また、開口を設けることで、遊技盤の外周縁よりも内方で膨張又は収縮を逃がすことができる。したがって、遊技盤全体での変形量(膨張量又は収縮量)を低減することができる。さらに、開口の前方を、少なくとも一部が遊技領域内に位置する遊技部材により覆っているため、正面から見た際のデザイン性が損なわれることもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】パチンコ機を前面側から示した説明図である。
【図2】パチンコ機を後面側から示した説明図である。
【図3】遊技盤及び液晶表示装置を正面側から示した説明図である。
【図4】平板部材を正面側から示した説明図である。
【図5】基台部材を示した説明図であって、(a)は正面側、(b)は後面側を夫々示している。
【図6】液晶表示装置を示した斜視説明図である。
【図7】取付金具を示した説明図であって、(a)は正面、(b)は右側面、(c)は上面を夫々示している。
【図8】放熱部材を示した斜視説明図である。
【図9】放熱機構部分を断面で示した説明図である。
【図10】放熱機構部分の変更例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態となるパチンコ機について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0012】
まず、パチンコ機1全体の構成について説明する。図1は、パチンコ機1を前面側から示した説明図であり、図2は、パチンコ機1を後面側から示した説明図である。
パチンコ機1は、遊技盤2の前面に形成された遊技領域2a内へ遊技球を打ち込み、遊技領域2a内を流下させて遊技するものであって、遊技盤2は、支持体として機能する機枠3の前面上部に、金属製のフレーム部材であるミドル枠5を介して設置されている。また、遊技盤2の前方には、ガラス扉を嵌め込み設置してなる前扉4が、左端縁を軸として片開き可能に機枠3に蝶着されており、該前扉4によって閉塞される遊技盤2の前方空間が遊技領域2aとされている。
【0013】
遊技領域2aは、遊技盤2の前面に円弧状に配設された外レール及び内レール(図示せず)等によって囲まれており、両レール間が遊技球を遊技領域2a内へ打ち込むための発射通路とされている。また、遊技領域2aの略中央には、「0」〜「9」の数字や絵柄等からなる「図柄」の表示領域となる図柄表示部6が設けられている。さらに、図柄表示部6の左右、及び上方を囲むように、庇部材14及びランプ部材15が設置されており、図柄表示部6の前方への遊技球の進入を防止している。加えて、遊技領域2aには、図示しない多数の遊技釘、遊技球が通過可能なゲート部材16、一対の爪片を開閉動作可能に備えたチューリップ式電動役物17、開閉可能な扉部材を有する大入賞装置18、3つの入賞口を有する入賞部材19、風車(図示せず)等が設置されている。尚、庇部材14は、前方へ膨出した中空状の膨出部を備えており、当該膨出部には、左右方向へ長い複数の通気スリット14a、14a・・が設けられている。
【0014】
また、機枠3の前面側であって上記遊技盤2の下方には、遊技球を発射装置10へ供給するための供給皿7、及び供給皿7から溢れた遊技球を貯留するための貯留皿8が機枠3に対して夫々片開き可能に取り付けられている。さらに、貯留皿8の右側には、発射装置10を作動させるためのハンドル9が回動操作可能に設置されている。
【0015】
一方、機枠3の後面側には、供給皿5へ貸球や賞品球として払い出される遊技球を貯留するための貯留タンク11、当該貯留タンク11と連結された払い出し装置、図柄表示部6に「図柄」を表示させるための液晶表示装置30(図1に示す)、払い出し装置12や液晶表示装置30等の動作を統合的に制御するサブ統合基板を内蔵したサブ制御装置(図示せず)が設置されているとともに、遊技に係る制御(たとえば、所謂「大当たり抽選」等)を実行するためのメイン制御基板21を内蔵してなる主制御装置20が設置されている。
【0016】
以上のようなパチンコ機1では、遊技者によってハンドル9が回動操作されると、発射装置10が作動して遊技球が遊技領域2a内へ打ち込まれる。そして、遊技領域2a内を流下する遊技球がチューリップ式電動役物17へ入賞すると、メイン制御基板21にて「大当たり抽選」を行い、所謂「大当たり」である場合には、図柄表示部6に「図柄」を所定態様(たとえば、「7、7、7」等)で表示させた後、大入賞装置18の扉部材を所定回数にわたって断続的に開成させるといった所謂「大当たり状態」を生起させる。
【0017】
次に、本発明の要部となる遊技盤2、及び液晶表示装置30の構成について順に詳述する。図3は、遊技盤2及び液晶表示装置30を正面側から示した説明図であり、図4は、平板部材41を正面側から示した説明図である。図5は、基台部材42を示した説明図であって、(a)は正面側、(b)は後面側を夫々示している。
遊技盤2は、アクリル等の透明な合成樹脂からなる板状部材であって、前面に遊技領域2aが形成される平板部材41と、平板部材41を支持する基台部材42とからなる。平板部材41は、正面視略円形に成形されており、その略中央部が図柄表示部6として機能する。また、平板部材41の下部には、チューリップ式電動役物17及び大入賞装置18を取り付けるための大取付孔22が略逆T字状に開設されているとともに、大取付孔22の右方には、ランプ部材15を取り付けるためのランプ孔23が、大取付孔22の左方には、入賞部材19の入賞口として機能する3つの入賞孔24、24・・が夫々設けられている。
【0018】
さらに、大取付孔22の上方には、上面を遊技球が転動可能なステージ部材を(図示せず)取り付けるためのステージ孔25が円弧状に設けられており、当該設置孔25の左方には、庇部材14の一部として下方へ延設され、ステージ部材上へ遊技球を導くためのワープ部14bを取り付けるための設置孔26が設けられている。
加えて、平板部材41には、膨張又は収縮に起因する歪みを抑制するための大径スリット27A、27Bと、小径スリット28A、28Bとが、平板部材41の前面から後面にわたって貫通するように設けられている。さらに、平板部材41の上部には、遊技盤2の前後で空気を流動させるための通気窓29が開設されている。
【0019】
大径スリット27Aは、平板部材41の左下部から中央左部にかけて円弧状に形成されており、平板部材41の略中央を中心とした所定の円周上に位置している。当該大径スリット27Aの右端部は、入賞孔24、24・・を連結した状態となっている。そして、大径スリット27Aは、入賞部材19を平板部材41に取り付けた際、入賞部材19によって覆われるようになっている。一方、大径スリット27Bは、平板部材41の右下部において大径スリット27Aと同じ円周上で円弧状に設けられており、ランプ孔23の一部として形成されている。そして、大径スリット27Bは、ランプ部材15を平板部材41に取り付けた際、ランプ部材15によって覆われるようになっている。
【0020】
また、小径スリット28Aは、平板部材41の右側部に円弧状に形成されている。該小径スリット28Aは、上記大径スリット27A、27Bと中心が同じであるものの径が小さな円周上に位置している。さらに、小径スリット28Bは、平板部材41の右下部において小径スリット28Aと同じ円周上で円弧状に設けられており、ランプ孔23の一部として形成されている。そして、小径スリット28A、28Bは、ランプ部材15を取り付けた際、ランプ部材15によって覆われるようになっている。
【0021】
さらに、通気窓29は、平板部材41の上部に略かまぼこ形状に開設されている。通気窓29の左端部には、小径スリット28A、28Bと同じ円周上に形成された円弧状部29Aが設けられており、当該円弧状部29Aにより通気窓29と設置孔26とは連結されている。そして、通気窓29(円弧状部29Aを含む)は、庇部材14を取り付けた際、庇部材14によって覆われるようになっている。
【0022】
一方、基台部材42は、複数の枠部材を正面視略四角形状に組み立ててなるもので、各枠部材の後面側には上下方向に延びるリブと左右方向に延びるリブとからなる格子構造を有している。また、基台部材42の正面側中央部には、大開口43が形成されているとともに、当該大開口43の周縁、すなわち枠部材の内周縁には、枠部材の外周縁よりも一段後方へ凹んだ支持凹部44が設けられており、組み立て状態にある基台部材42の支持凹部44内へ平板部材41を嵌め込むことで支持可能としている。尚、支持凹部44の正面は、平板部材41の大径スリット27A、27B、小径スリット28A、28B、及び通気窓29よりも更に外方部分の後面に当接する(すなわち、嵌め込み状態において、平板部材41の大径スリット27A、27B、小径スリット28A、28B、及び通気窓29は、大開口43内に位置する)ようになっている。
【0023】
そして、上記平板部材41と基台部材42とを組み付けてなる遊技盤2の後方に液晶表示装置30が設置される。図6は、液晶表示装置30を示した斜視説明図であり、図7は、取付金具33を示した説明図であって、(a)は正面、(b)は右側面、(c)は上面を夫々示している。
液晶表示装置30は、「図柄」等を表示する略四角形状の表示画面31の周囲及び後面を覆うように金属製のフレーム部材32を取り付けてなるもので、図7に示す取付金具33を介し、表示画面31が図柄表示部6の後方に位置するようミドル枠5等にネジ止めされる。この取付金具33は、正面及び下面が開放された箱状体で、上面、左右側面、及び背面の内面が、フレーム部材32の上面、左右側面、及び後面に夫々当接するように、液晶表示装置30の上部に取り付けられる。尚、33aは、取付金具33を液晶表示装置30の上面にネジ止めするためのネジ止め部である。
【0024】
また、上記取付金具33には、図8に示す放熱部材33が取り付けられる。放熱部材34は、略L字状に折り曲げられた金属製のプレート部材であって、取付金具33の上面から前方へ延びる伝導部34aと、伝導部34aの前方で上方へ折り曲げて起こされた放熱部34bとからなる。伝導部34aの後端部には、放熱部材34を取付金具33のネジ止め部33aへ螺着するためのネジ孔35が設けられているとともに、取付金具33への螺着状態においてフレーム部材32の前面に当接するフランジ片36が下方へ突設されている。一方、放熱部34bには、前方へ突出する複数の放熱フィン37、37・・が取り付けられている。また、放熱部34bは、通気窓29内を挿通可能な程度の大きさとされており、液晶表示装置30の遊技盤2後方への設置に伴い、通気窓29を介して遊技盤2の前方へ突出するようになっている。
【0025】
ここで、上記遊技盤2及び液晶表示装置30の設置、液晶表示装置30が生じる熱の放熱、及び大径スリット27A等による遊技盤2の歪み抑制に係る作用、効果について説明する。
まず、基台部材42の支持凹部44内に平板部材41を嵌め込み、遊技盤2を組み立てる。次に、遊技盤2の前面から、遊技釘、庇部材14、ランプ部材15、ゲート部材16、チューリップ式電動役物17、大入賞装置18、及び入賞部材19等を組み付ける。この各種部材の組み付けにより、大取付孔22、ランプ孔23、入賞孔24、設置孔26、大径スリット27A、27B、小径スリット28A、28B、及び通気窓29は全て、組み付けられた部材により前方を覆われた状態となる。そして、全ての部材を組み付けた遊技盤2をミドル枠5に設置する。
【0026】
次に、液晶表示装置30に取付金具33を取り付けるとともに、放熱部材34を放熱部34bが前方へ突出する姿勢にて取付金具33の上面にネジ止めする。このとき、放熱部材34は、液晶表示装置30に対して伝導部34aの端部及びフランジ片36が接触した状態となっている。そして、このような姿勢で放熱部材34が取り付けられた状態にある液晶表示装置30を、遊技盤2の後方の所定位置に設置する。この液晶表示装置30の設置状態においては、図9に示す如く、放熱部材34の放熱部34bが通気窓29を介して遊技盤2の前方へ突出し、庇部材14の膨出部内に位置している。
このようにして、遊技盤2及び液晶表示装置30は組み立てられ設置される。
【0027】
以上のような遊技盤2及び液晶表示装置30を有するパチンコ機1においては、電源の投入等により液晶表示装置30が動作し、液晶表示装置30に熱が生じる。しかしながら、この熱はフレーム部材32から取付金具33を介して放熱部材34の伝導部34aに伝わり(又はフレーム部材32から直接フランジ片36に伝わり)、更に前方の放熱部34bへ伝わった後、放熱フィン37、37・・を介して庇部材14の膨出部内、すなわち遊技盤2の前方へ放熱される。さらに、放熱フィン37から放出される熱は、通気スリット14a、14a・・を介して遊技盤2の更に前方へ逃げることになる。したがって、熱により変形しにくいような高価な合成樹脂を用いずとも、液晶表示装置30の熱に伴う遊技盤2の後方の温度上昇を抑制することができ、特に遊技盤2後面に生じる変形量(膨張又は収縮量)を小さく抑えることができる。また、遊技盤2の後方の温度上昇を抑制することができることから、遊技盤2の前面と後面とで大きな温度差が生じるといった事態も防止することができ、温度差に起因する膨張又は収縮量の差により遊技盤2が大きく反る等といった事態の発生も防止することができる。
【0028】
また、遊技盤2の膨張又は収縮を完全に抑止することは困難であり、液晶表示装置30のみならず主制御装置20が生じる熱、遊技領域2aを流下する遊技球の摩擦等に起因して、遊技盤2(特に平板部材41)の前面及び後面は、熱膨張又は収縮しようとする。しかしながら、遊技盤2では、遊技釘等が設置されている平板部材41に大径スリット27A、27Bや小径スリット28A、28Bを設けているため、当該各スリットにより遊技盤2の外周縁よりも内方で膨張又は収縮を逃がすことができる。したがって、遊技盤2全体での変形量を低減することができる。さらに、各スリットを円弧状に形成しているため、各スリットにおいて膨張又は収縮を無理なく逃がすことができ、遊技盤2に撓みが生じる事態をより効果的に抑制することができる。加えて、大径スリット27A、27Bや小径スリット28A、28B、通気窓29を設けたことで、平板部材41の表面積が増す。したがって、遊技盤2に伝わった熱が、特に各スリット及び通気窓29の断面から放出され、遊技盤2の膨張が更に抑制されることになる。
【0029】
一方、遊技盤2の前方と後方とで完全に温度差をなくすことも困難であり、液晶表示装置30に加え、主制御装置20等の各種制御装置が設置されていることから、遊技盤2の後方が前方よりも高温になりやすい。しかしながら、パチンコ機1では、上記放熱部材34の設置に加え、平板部材41に通気窓29を形成しているため、遊技盤2の前方と後方とで空気が自発的に流動し、温度差が低減されることになる。したがって、遊技盤2の前面と後面とで変形量に差が生じにくく、ひいては遊技盤2に生じる反りを更に低減することができる。
【0030】
また、大径スリット27A、27Bや小径スリット28A、28B、及び通気窓29は、庇部材14やランプ部材15、入賞部材19によって前方を覆われるため、正面から見た際のデザイン性が損なわれることがない。
さらに、遊技盤2を平板部材41と平板部材41を支持する基台部材42とから構成するとともに、基台部材42の後面に格子構造を形成しているため、基台部材42をそもそも熱により膨張又は収縮しにくいものとすることができるし、たとえ平板部材41が膨張又は収縮したとしても、当該膨張又は収縮は基台部材42に伝わりにくい。したがって、基台部材42までもが膨張又は収縮して、遊技盤2のミドル枠5への設置部分に負荷が生じるといった事態を防止することができるし、遊技盤2全体での変形量や歪み量を抑制することができる。
【0031】
なお、本発明のパチンコ機に係る構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、遊技盤や放熱機構に係る構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0032】
たとえば、放熱部材34の伝導部34aや放熱部34bに通気孔を形成してもよい。当該構成を採用することで、遊技盤2の前方と後方との間で空気をよりスムーズに流動させることが可能となり、前方と後方とでの温度差解消をより図ることができる。
また、放熱部材34の放熱部34bは必ずしも通気窓29を介して前方へ突出させる必要はなく、正面視で通気窓29内に放熱部34bが露出させるだけでも遊技盤2の後方にたまりがちな熱を逃がすといった効果を期待できる。さらに、放熱部34bを遊技盤2の上方又は側方等へ露出させるようにしても、熱を逃がすことは可能であり、ひいては通気窓29を設けない構成としてもよい。
【0033】
さらに、放熱部材についても上記実施形態のものに何ら限定されることはなく、たとえば図10に示すような構成を採用してもよい。図10は、放熱機構部分の変更例を示した説明図であって、庇部材14の後方に、伝導部50aと放熱部50bとからなる放熱部材50が庇部材14と一体的に設けられている。当該庇部材14(放熱部材50を含む)は、熱伝導性の高い合成樹脂(たとえば、炭素繊維が添加されたポリ乳酸樹脂等)により成形されてなり、放熱部50bの前面には、複数の放熱フィン50c(合成樹脂製)が突設されている。この庇部材14を、遊技盤2の前方から通気窓29を介して放熱部材50が後方へ突出するように取り付け、後方へ突出する放熱部材50の伝導部50aを液晶表示装置30に連結することで、液晶表示装置30から生じる熱を、放熱部材50及び庇部材14を介して遊技盤2の前方へ放熱可能となる。このように庇部材14と放熱部材50とを一体的に形成することにより、庇部材14を取り付けるだけで放熱部材50が位置決めされるため、設置作業が容易になるというメリットがある。尚、取付部材(取付金具33)についても熱伝導性の高い合成樹脂を採用することは可能であるし、熱伝導性がそれほど高くない合成樹脂の表面に金属メッキを施してなる放熱部材や取付部材を採用することも当然可能である。また、放熱部材を庇部材ではなくランプ部材等の他の遊技部材と一体成形してもよいことは言うまでもないし、必ずしも放熱部材の放熱部に放熱フィンを設ける必要はない。
【0034】
また、大径スリット27Aや小径スリット28A等の各スリット、ランプ孔23や入賞孔24等を覆うランプ部材15や入賞部材19にも、通気スリット14a等のような空気孔を形成したり、ランプ部材15や入賞部材19を平板部材41の前面に設置するにあたって、平板部材41の表面から若干浮かせる等することにより、空気がスリットやランプ孔等を介しても流動できるように構成することもできる。
さらに、庇部材14における通気スリット14aの形状は勿論、形成位置等も当然設計変更可能であって、庇部材の14の上面や下面に設けてもよい。このように庇部材14の上面や下面に通気スリット14aを設けることで、遊技者等が正面から見た際に庇部材14内部の放熱部材が見えたりせず、デザイン性に優れたパチンコ機とすることができる。また、特に庇部材14の上面に通気スリット14aを設けることで、熱せられて上方へ移動する空気をそのまま逃がすことができ、放熱、温度差解消等といった効果をより期待することができる。加えて、大径スリット27Aや小径スリット28A等を必ずしも円弧状に形成する必要はなく、直線状であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1・・パチンコ機、2・・遊技盤、2a・・遊技領域、14・・庇部材(遊技部材)、14a・・通気スリット、19・・入賞部材、23・・ランプ孔、24・・入賞孔、27A、27B・・大径スリット(開口)、28A、28B・・小径スリット(開口)、29・・通気窓(開口)、30・・液晶表示装置(図柄表示装置)、33・・取付金具、34・・放熱部材、34a・・伝導部(図柄表示装置に接触する一部)、34b・・放熱部、36・・フランジ片(図柄表示装置に接触する一部)、37・・放熱フィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に遊技球が流下する遊技領域を形成した合成樹脂製の板状部材からなる遊技盤を設置したパチンコ機であって、
前記遊技盤に、その前面から後面にわたって貫通する開口を開設し、前記遊技盤の表面積を増やすとともに、前記開口の前方を、少なくとも一部が前記遊技領域内に位置する遊技部材により覆ったことを特徴とするパチンコ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−99616(P2013−99616A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−36140(P2013−36140)
【出願日】平成25年2月26日(2013.2.26)
【分割の表示】特願2008−310142(P2008−310142)の分割
【原出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000241234)豊丸産業株式会社 (428)
【Fターム(参考)】