説明

パッチアンテナ装置

【課題】性能を向上させながら小型化、多機能化が可能な車載用のパッチアンテナ装置を提供する。
【解決手段】車載用のパッチアンテナ装置は、基板10と、基板10上に設けられるグラウンド導体20と、アンテナエレメント部30と、報知回路部40とを具備する。アンテナエレメント部30は、基板10のグラウンド導体20が設けられる面と対向する面に設けられ、給電部31と縮退分離素子部32とを有する。報知回路部40は、基板10上に設けられ、アンテナエレメント部30の給電部31が設けられる領域以外の周辺領域であって、電流分布が最小になる領域付近に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパッチアンテナ装置に関し、特に、性能を向上させながら小型化が可能な車載用のパッチアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近来から、いわゆるノンストップ自動料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)等の車載器に用いられるアンテナとして、パッチアンテナが知られている。パッチアンテナは、マイクロストリップアンテナとも呼ばれるものであり、このアンテナは背が低く帯域が狭いという特徴を有している。パッチアンテナは、アンテナエレメントを、基板や空気層を介してグラウンド導体上に配置した構造である。
【0003】
また、特許文献1や特許文献2に記載のアンテナ装置のように、発光ダイオードやスピーカ等の電気回路がアンテナ装置に組み込まれ、アンテナ装置の動作や状態等を報知する機能を備えるものも存在する。特許文献1に開示の発光ダイオード付マイクロストリップアンテナは、アンテナエレメントが共振したときに、アンテナエレメントとグラウンド導体との電位差が最小となる部位に発光ダイオードを設けることで、アンテナエレメントの外側周辺の基板の面積を減少させたものである。特許文献2に開示のスピーカ一体型アンテナは、グラウンド導体に圧電セラミック部材を貼付することで、グラウンド導体にスピーカとしての機能を持たせアンテナ装置の小型化を目指したものである。スピーカ回路はアンテナエレメントの給電点に接続されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−166041号公報
【特許文献2】特開2006−186881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアンテナ装置では、アンテナ素子とグラウンド導体との電位差が最小となる部位、より具体的にはアンテナエレメントの中心付近に発光ダイオードを設ける必要があるため、発光ダイオードの設置自由度が低く、ETCアンテナ等に用いられる場合のデザインの自由度が低いものであった。また、ETCアンテナ装置は、通常、フロントガラスに貼付されて使用されるものであり、フロントガラス側にアンテナエレメントが設けられ、それと反対側、即ち運転席側に発光ダイオードやスピーカ等の報知部が設けられているものである。さらに、アンテナ装置の状態を知らせるために、発光ダイオードとスピーカを組み合わせて光と音により報知する必要がある場合もある。しかしながら、特許文献1に記載のアンテナ装置では、発光ダイオードがアンテナエレメント又はグラウンド導体の中心付近に設けられるため、小型化を図りながらスピーカと発光ダイオードとを同一面上に配置することは難しく、発光ダイオードとスピーカを組み合わせて用いることは困難であった。
【0006】
また、特許文献2に記載のアンテナ装置では、アンテナエレメントを空中に配置しなければならず、位置精度や組立性、耐久性に問題があった。また、アンテナエレメントをグラウンド導体が設けられる基板から浮かせて空中に配置するため、アンテナ部の薄型化が難しかった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、性能を向上させながら小型化、多機能化が可能な車載用のパッチアンテナ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明によるパッチアンテナ装置は、基板と、基板上に設けられるグラウンド導体と、基板のグラウンド導体が設けられる面と対向する面に設けられ、給電部と縮退分離素子部とを有するアンテナエレメント部と、基板上に設けられ、アンテナエレメント部の給電部が設けられる領域以外の周辺領域であって、電流分布が最小になる領域付近に接続される、外部に状態を伝えるための報知回路部と、を具備するものである。
【0009】
ここで、アンテナエレメント部は、その幅によりインピーダンス調整が可能な突出パターンをその周縁部に有し、アンテナエレメント部の給電部は、突出パターン内に配置されれば良い。
【0010】
また、縮退分離素子部はアンテナエレメント部を挟むように対向してアンテナエレメント部の周辺領域に装荷され、報知回路部は対向する縮退分離素子部間を結ぶ線上の、又は同線に直交する線上の、アンテナエレメント部の周辺領域付近に接続されれば良い。
【0011】
また、報知回路部は、アンテナエレメント部の周縁部に沿って配置されても良い。
【0012】
さらに、報知回路部は報知部と回路部とからなり、報知部が基板のグラウンド導体が設けられる面側に配置され、回路部が基板のアンテナエレメント部が設けられる面側に配置されれば良い。
【0013】
ここで、報知部は、発光ダイオード及び/又はスピーカを含むものである。
【0014】
さらに、パッチアンテナ装置の外形を画定する筐体を具備し、該筐体は、報知部が設けられる面側を覆う側が半透明又は透明素材からなり、報知部の位置に対応する部分が他の部分と比べて薄くても良い。
【0015】
また、基板は、アンテナエレメント部の給電部に接続されるケーブルが嵌合する切り欠き部を有するものであっても良い。
【0016】
そして、グラウンド導体は、切り欠き部の周辺まで延在していても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明のパッチアンテナ装置には、給電部以外の領域に報知回路部を接続することで給電部に報知回路部を接続するものに比べて利得特性等の性能が向上すると共に、アンテナエレメント部の周辺領域の極一部を用いて小型化、薄型化が可能であるという利点がある。また、報知部として発光ダイオードやスピーカ等を組み合わせても小型化が可能であるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の車載用のパッチアンテナ装置を説明するための概略図であり、図1(a)はその上面図、図1(b)はその下面図、図1(c)はアンテナ装置にケーブルを接続した状態の横断面図である。なお、本明細書中では、説明の都合上、基板のアンテナエレメントが配置される側を表面とし、グラウンド導体が配置される側を裏面と称する。
【0019】
本発明のパッチアンテナ装置は、主な構成要素として、基板10と、グラウンド導体20と、アンテナエレメント部30と、報知回路部40とからなる。基板10は、所謂プリント基板等であり、例えば誘電体材料からなる。基板10としては、例えばフッ素樹脂基板(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等を用いることが可能であり、好ましくは基板の誘電率は2〜4程度である。基板10は、後述のアンテナエレメント部30や報知回路部40の大きさに合わせて、その大きさや形状が決定されれば良い。
【0020】
なお、以下の説明では、本発明のパッチアンテナ装置を、ETCアンテナ装置に適用した例を中心に説明する。ETCアンテナ装置では、例えば5.8GHzのマイクロ波信号が使用される。また、本発明のパッチアンテナ装置では、報知回路部用の直流信号及び低周波信号がマイクロ波信号に重畳されてアンテナ装置に供給されている。
【0021】
パッチアンテナ装置と例えばETC車載器(図示せず)との間は、同軸ケーブル等のケーブル50により接続されている。図1(c)に示されるように側方から見た場合に、ケーブル50の芯線51の高さと基板10の表面の高さとを揃えるために、図1(a)、図1(b)に示されるように、基板10には、切り欠き部11が設けられている。切り欠き部11は、図示例では基板10のケーブル50が接続される側の突出部に設けられている。また、切り欠き部11は、ケーブル50の保護皮膜が嵌合する程度の切り欠き幅を有し、ここにケーブル50が嵌合し、ケーブル50の芯線51の高さと、基板10の表面の高さが揃うように調整される。これにより、ケーブル50の芯線51を基板10上の給電部31とのはんだ付けによる接続の作業効率が向上する。
【0022】
そして、基板10の裏面側には、銅箔等の導電体からなるグラウンド導体20が設けられている。グラウンド導体20は、基板10の略裏面全体を覆うように設けられている。また、グラウンド導体20は、切り欠き部11の周辺まで延在しており、切り欠き部11に嵌合するケーブル50のグラウンド線52が、この切り欠き部11周辺のグラウンド導体にはんだ付け等により接続される。
【0023】
基板10の表面、即ち、グラウンド導体20が設けられる面と対向する面には、銅箔等の導電体からなるアンテナエレメント部30が設けられている。なお、グラウンド導体20やアンテナエレメント部30は、両面プリント基板をエッチングすることで形成されれば良い。
【0024】
図1に示されるアンテナエレメント部30は、1点給電型円偏波パッチアンテナであり、給電部31と縮退分離素子部32とが設けられている。より具体的には、アンテナエレメント部30は、主要部が一辺λ/2長の略方形状であり、円偏波を発生させるために、縮退分離素子部32がその対角の角部領域に装荷されている。縮退分離素子部32は、アンテナエレメント部で発生する直交する2つの偏波のバランスをずらすためのものであるため、切り欠きや突出部等であれば良い。また、給電部31は、アンテナエレメント部30の中心線上に配置されている。
【0025】
図示例では、入力インピーダンスを調整するために、インピーダンス調整部33がアンテナエレメントから突出するパターンによって周縁部に設けられている。これは、ETC車載器との入力インピーダンスを調整するためのものであり、インピーダンス調整部33の幅と長さ(面積)により入力インピーダンスが調整される。そして、給電部31は、このインピーダンス調整部33内に配置されている。
【0026】
なお、図示例ではインピーダンス調整部33はアンテナエレメント部30の中心線に対称に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。図2を用いて、インピーダンス調整部の他の例について説明する。図2は、本発明のパッチアンテナ装置のインピーダンス調整部の他の例を説明するための、アンテナエレメント部周辺を示した上面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしているため、詳説は省略する。図2(a)に示されるように、インピーダンス調整部33aは、ケーブル50とアンテナエレメント部30との間に存在していれば良いため、アンテナエレメント部30から離した位置に配置されている。また、図2(b)に示されるように、インピーダンス調整部33bは、アンテナエレメント部30の中心線から左右にずらして配置されていても良い。なお、何れの場合であっても、1点給電型の円偏波パッチアンテナでは、原則的には給電部31がアンテナエレメント部30の中心線上に配置される。但し、調整の範囲で給電部がオフセットされる場合もある。
【0027】
図1を再度参照すると、ケーブル50は、インピーダンス調整部33の突出パターンと裏面側のグラウンド導体20とで固定される。また、必要により、基板10の表面側の、切り欠き11の周辺近傍にも、ケーブル50のグラウンド線を接続可能なグラウンドパターンを提供しても良い。なお、別途ケーブルの抜け防止対策を行っても良い。
【0028】
そして、アンテナエレメント部30には、報知回路部40が接続されている。報知回路部40は、外部にアンテナ装置の状態を伝えるためのものであり、基板10上に設けられる。図1に示されるように、本発明のパッチアンテナ装置では、ケーブル50からの信号は、アンテナエレメント部30を介して報知回路部40に接続されている。報知回路部40は、例えば、報知部である発光ダイオード45とスピーカ46及び、それらの周辺回路である回路部からなるものである。そして、報知回路部40は、必要により基板10に設けられるスピーカ用スルーホール12や発光ダイオード用スルーホール13を用いて表裏に配置されている。なお、図示例では発光ダイオードとスピーカを備えたパッチアンテナ装置を示したが、本発明はこれに限定されず、発光ダイオードだけを備えるものや、スピーカだけを備えるものであっても構わない。また、本発明のパッチアンテナ装置では、報知回路部は、発光ダイオードやスピーカに限られず、アンテナ装置の状態を伝えることが可能なデバイスであれば如何なるものであっても構わない。
【0029】
図3に、報知回路部が発光ダイオード(LED)とスピーカとを含んだ場合の等価回路図を示す。図示の通り、報知回路部40では、ケーブル50からの信号が、アンテナエレメント部30に供給されると共に、マイクロ波信号をフィルタリングするためのコイルLを介して直流回路側に供給されている。直流回路側は、抵抗R1と発光ダイオード45とからなる発光ダイオード側回路と、低周波回路(コンデンサC1,C2とスピーカ46とからなるスピーカ側回路)とからなっている。
【0030】
ここで、報知回路部40は、アンテナエレメント部30の給電部31が設けられる領域以外の周辺領域であって、電流分布が最小になる領域付近に接続されている。図4を用いて、報知回路部40が接続される位置について説明する。図4は、本発明のパッチアンテナ装置の電流分布の概念を説明するための、アンテナエレメント部周辺を示した上面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしているため、詳説は省略する。1点給電型の円偏波パッチアンテナにおいて、アンテナエレメント部30上に発生する電流分布は、給電部31周辺とアンテナエレメント部30の4辺のエッジ中央付近に強く現れる。そして、図4に示されるように、対向する縮退分離素子部間を結ぶ線上の、又は同線に直交する線上であって、アンテナエレメント部の周辺領域付近に電流分布が最小となる領域が存在する(図中、点線で囲まれた領域)。この電流分布が最小となる領域は、時間の経過と共に回転するアンテナ上を流れる電流が常に略ゼロに保たれる領域である。なお、アンテナエレメント部の周辺領域から中心付近に向かうに従い、電流分布は高くなる。本発明のパッチアンテナ装置の最も特徴的な部分は、この電流分布が最小となる領域付近に、報知回路部40の回路を接続した点にある。なお、電流分布が最小となる領域付近であれば良いため、必ずしも電流分布が最小である位置自身に接続位置が限定されるものではなく、接続位置はある程度幅のあるものである。
【0031】
より具体的には、図4に示される方形状の1点給電型の円偏波パッチアンテナにおいては、縮退分離素子32が設けられる角部領域近傍、及び縮退分離素子32が設けられない角部領域近傍に電流分布が最小となる領域が存在する。したがって、この領域付近に報知回路部40が接続されれば良い。
【0032】
また、報知回路部40の接続形態については、図示例のようにアンテナエレメント部30から突出した回路パターンで接続するものに限定されず、アンテナエレメント部内にスルーホールを設け、裏面側に配置される報知回路部にスルーホールで接続されるように構成しても良い。
【0033】
ここで、図1(a)ではアンテナエレメント部30の左下角の左辺近傍に報知回路部40が接続されているが、電流分布が最小となる領域付近に接続されれば本発明はこれに限定されない。即ち、例えば図4に示されるように、アンテナエレメント部30の左下角の左辺近傍40aだけでなく、左下角の下辺近傍40bや右上角の上辺近傍40c、右辺近傍40d等に接続されても良い。このように、縮退分離素子部32がアンテナエレメント部30を挟むように対向してアンテナエレメント部の周辺領域に装荷された場合には、報知回路部40は、この対向する縮退分離素子部32間を結ぶ線に直交する線上であって、アンテナエレメント部30の周辺領域付近に接続されれば良い。また、報知回路部40は、縮退分離素子32が設けられる角部領域付近に接続されても良い。なお、角部近傍(角部からずれた位置)に報知回路部40が接続される例のみを示したが、本発明はこれに限定されず、角部自体に報知回路部40が接続されるものであっても良い。
【0034】
ここで、図1ではアンテナエレメント部の形状が方形状のものを図示したが、本発明はこれに限定されず、円偏波を送受信可能な形状であれば良い。例えば、アンテナエレメント部の形状は円形状のものであっても良い。図5は、本発明のパッチアンテナ装置のアンテナエレメント部の他の形状を説明するための図であり、図5(a)が縮退分離素子部として凹部を設けたものの上面図、図5(b)が縮退分離素子部として凸部を設けたものの上面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしているため、詳説は省略する。このような形状のアンテナエレメント部であっても、円偏波を送受信可能である。そして、方形状のアンテナエレメント部の場合と同様に、対向する縮退分離素子部32'間を結ぶ線上の、又は同線に直交する線上であって、アンテナエレメント部30'の周辺領域付近が電流分布が最小となる。したがって、図示の通り、本発明のパッチアンテナ装置では、例えば、アンテナエレメント部30'に装荷される対向する縮退分離素子部32'間を結ぶ線に直交する線上の、アンテナエレメント部の周辺領域付近(接続領域)から報知回路部40への配線が引き出されれば良い。また、報知回路部40は、縮退分離素子32'付近に接続されても良い。より具体的には、図5(a)に示されるように縮退分離素子部として凹部を設けた場合には、凹部入り口の角部に放置回路部40が接続されれば良い。また、図5(b)に示されるように縮退分離素子部として凸部を設けた場合には、凸部先端の角部に放置回路部40が接続されれば良い。
【0035】
図6を用いて、報知回路部がアンテナエレメント部を介さずに給電部に接続されたパッチアンテナ装置と、図1に示されるようなアンテナエレメント部を介して電流分布が最小になる領域付近に接続されたパッチアンテナ装置の各特性を比較する。図6は、周波数が5785MHz、5820MHz、5855MHzにおける、方位角に対する利得特性及びアンテナ放射パターンをそれぞれ示すグラフである。なお、図6(a)が図1に示される構成の本発明のパッチアンテナ装置の結果であり、図6(b)が比較例として従来のように給電部に報知回路部を接続した場合のパッチアンテナ装置の結果である。図示の通り、測定したすべての周波数帯において、本発明のパッチアンテナ装置の利得特性が向上していることが分かる。また、パッチアンテナ装置の指向性についても、本発明のパッチアンテナ装置のほうが、アンテナエレメント部側に強く放射される特性を有していることが分かる。このため、よりETCアンテナ等の車載用アンテナ装置に望まれる特性を有していることが分かる。
【0036】
このように、本発明によれば、アンテナエレメント部の電流分布が最小になる領域付近に報知回路部を接続することで、アンテナの信号特性を向上することが可能である。
【0037】
ここで、再度図1を参照すると、本発明のパッチアンテナ装置では、アンテナエレメント部30の角部近傍の電流分布が最小になる領域付近に報知回路部40を接続するため、報知回路部40の各構成要素を、周辺部に沿って配置可能である。図4を用いて説明したように、本発明のパッチアンテナ装置では、報知回路部40の接続位置の自由度が高いため、基板10上の配置レイアウトの自由度も高く、パッチアンテナ装置の小型化が可能となる。
【0038】
また、図1(c)に示されるように、報知回路部40の報知部である発光ダイオード45とスピーカ46は、グラウンド導体20が設けられる面側、即ち、基板10の裏面側に配置されており、回路部であるコイルやコンデンサ等の素子は、アンテナエレメント部30が設けられる面側、即ち、基板10の表面側に配置されている。なお、スピーカ46とグラウンド導体20との間は、適宜絶縁シート等により絶縁されれば良い。このように配置することで、比較的素子の高さが低い回路部を基板10の表面側に集め、比較的高さのあるスピーカ46や発光ダイオード45を基板10の裏面側に集めることが可能となる。なお、必要によりすべての素子を片側に集めても良い。これにより、パッチアンテナ装置の薄型化が可能となる。また、図示例のように、発光ダイオード45とスピーカ46が、図1(c)における上下で重ならないように、発光ダイオード45を、基板10に設けられた凸部に配置するようにしても良い。これにより、スピーカ46が配置される側から見た場合に、発光ダイオード45による光がスピーカ46の影響を受けなくなる。
【0039】
また、報知回路部40の回路部は、基板10の裏面側に設けられるグラウンド導体20と重なる基板10の表面位置に配置されるようにしても良い。グラウンド導体20は、通常、基板の裏面全体を略覆うように提供されており、アンテナエレメント部30はそれよりも小さな領域に提供されている。したがって、基板のアンテナエレメント部30の提供される周辺の余白部分は、側面からの上下関係で見れば、グラウンド導体20と重なる位置となる。したがって、この余白部分に報知回路部の回路部を配置すれば良い。
【0040】
ここで、本発明のパッチアンテナ装置は、その使用時には、車両の例えばフロントガラス上、より具体的には、車内側からフロントガラス上に貼付されて用いられる。したがって、アンテナエレメント部30が設けられる側がフロントガラス側に対向し、報知部である発光ダイオード45やスピーカ46が配置される側が車内側に対向する。
【0041】
図7を用いて、筐体に覆われた状態の本発明のパッチアンテナ装置について説明する。図7は、本発明のパッチアンテナ装置の使用時の状態を示す図であり、図7(a)がその斜視図、図7(b)がその横断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしているため、詳説は省略する。図示の通り、基板10や発光ダイオード45、スピーカ46等は、筐体60により覆われている。筐体60は、パッチアンテナ装置の外形を画定するものである。そして、筐体60は、アンテナエレメント部30が設けられる面側を覆うベース筐体61と、発光ダイオード45やスピーカ46等の報知部が設けられる面側を覆う透明筐体62とからなる。ベース筐体61は、アンテナエレメント部30から放射される電磁波が通過する素材からなるものであり、例えばABS樹脂等であれば良い。なお、ベース筐体61が、車両の例えばフロントガラス上に車内側から貼付される。また、透明筐体62は、透明又は半透明素材からかるものであり、例えばポリカーボネイトやエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂等であれば良い。なお、ベース筐体61も、透明筐体62と同様の透明又は半透明素材からなるもので形成しても良い。
【0042】
透明筐体62には、スピーカ46の音がそこから通るように、複数の孔63が設けられている。なお、報知部として発光ダイオード45のみを用いてスピーカ46を用いないパッチアンテナ装置の場合には、孔63は設けなくても良い。
【0043】
さらに、透明筐体62の、発光ダイオード45の位置に対応する部分64は、他の部分に比べて薄く形成されており、発光ダイオード45により放射される光を良く通すように構成されている。なお、透明筐体62の発光ダイオード45の位置に対応する部分については、薄くする代わりにレンズ効果を有するレンズ部を設けても良い。レンズ部は透明筐体62の厚みを凸レンズ状に一体成形することで設ければ良い。このような構成により、発光ダイオード45から発せられる光を集光することで視認性が向上する。このように、発光ダイオード45の位置に対応する部分64は、透明筐体62と一体成形が可能であるため、製造や組立も容易である。
【0044】
図示例では、ケーブル50を基板10の切り欠き部に嵌合し、ケーブル50の芯線を曲げて給電部に接続することで、筐体60内に適宜収まるように配置しているが、本発明はこれに限定されず、図1(c)に示されるように、ケーブル50の芯線と基板10との高さを揃えた構成であっても良い。
【0045】
なお、本発明のパッチアンテナ装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の車載用のパッチアンテナ装置を説明するための概略図であり、図1(a)はその上面図、図1(b)はその下面図、図1(c)はアンテナ装置にケーブルを接続した状態の横断面図である。
【図2】図2は、本発明のパッチアンテナ装置のインピーダンス調整部の他の例を説明するための、アンテナエレメント部周辺を示した上面図である。
【図3】図3は、報知回路部が発光ダイオードとスピーカとを含んだ場合の等価回路図である。
【図4】図4は、本発明のパッチアンテナ装置の電流分布を説明するための、アンテナエレメント部周辺を示した上面図である。
【図5】図5は、本発明のパッチアンテナ装置のアンテナエレメント部の他の形状を説明するための図であり、図5(a)が縮退分離素子部として凹部を設けたものの上面図、図5(b)が縮退分離素子部として凸部を設けたものの上面図である。
【図6】図6は、本発明のパッチアンテナ装置と従来例との各特性を比較するためのグラフであり、図6(a)が図1に示される構成の本発明のパッチアンテナ装置の結果であり、図6(b)が比較例として従来のように給電部に報知回路部を接続した場合のパッチアンテナ装置の結果である。
【図7】図7は、本発明のパッチアンテナ装置の使用時の状態を示す図であり、図7(a)がその斜視図、図7(b)がその横断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 基板
11 切り欠き部
12 スピーカ用スルーホール
13 発光ダイオード用スルーホール
20 グラウンド導体
30 アンテナエレメント部
31 給電部
32 縮退分離素子部
33 インピーダンス調整部
40 報知回路部
45 発光ダイオード
46 スピーカ
50 ケーブル
51 芯線
52 グラウンド線
60 筐体
61 ベース筐体
62 透明筐体
63 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用のパッチアンテナ装置であって、該パッチアンテナ装置は、
基板と、
前記基板上に設けられるグラウンド導体と、
前記基板の前記グラウンド導体が設けられる面と対向する面に設けられ、給電部と縮退分離素子部とを有するアンテナエレメント部と、
前記基板上に設けられ、前記アンテナエレメント部の給電部が設けられる領域以外の周辺領域であって、電流分布が最小になる領域付近に接続される、外部に状態を伝えるための報知回路部と、
を具備することを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパッチアンテナ装置において、前記アンテナエレメント部は、その幅によりインピーダンス調整が可能な突出パターンをその周縁部に有し、前記アンテナエレメント部の給電部は、前記突出パターン内に配置されることを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のパッチアンテナ装置において、前記縮退分離素子部は前記アンテナエレメント部を挟むように対向してアンテナエレメント部の周辺領域に装荷され、前記報知回路部は対向する前記縮退分離素子部間を結ぶ線上の、又は同線に直交する線上の、アンテナエレメント部の周辺領域付近に接続されることを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のパッチアンテナ装置において、前記報知回路部は、前記アンテナエレメント部の周縁部に沿って配置されることを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のパッチアンテナ装置において、前記報知回路部は報知部と回路部とからなり、前記報知部が前記基板の前記グラウンド導体が設けられる面側に配置され、前記回路部が前記基板の前記アンテナエレメント部が設けられる面側に配置されることを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパッチアンテナ装置において、前記報知部は、発光ダイオード及び/又はスピーカを含むことを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のパッチアンテナ装置であって、さらに、パッチアンテナ装置の外形を画定する筐体を具備し、該筐体は、前記報知部が設けられる面側を覆う側が半透明又は透明素材からなり、前記報知部の位置に対応する部分が他の部分と比べて薄いことを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れかに記載のパッチアンテナ装置において、前記基板は、前記アンテナエレメント部の給電部に接続されるケーブルが嵌合する切り欠き部を有することを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のパッチアンテナ装置において、前記グラウンド導体は、前記切り欠き部の周辺まで延在することを特徴とするパッチアンテナ装置。
【請求項10】
車載用のパッチアンテナ装置であって、該パッチアンテナ装置は、
基板と、
前記基板上に設けられるグラウンド導体と、
前記基板の前記グラウンド導体が設けられる面と対向する面に設けられ、給電部と縮退分離素子部とを有するアンテナエレメント部と、
前記基板上に設けられ外部に状態を伝えるための報知回路部であって、前記アンテナエレメント部を挟むように対向してアンテナエレメント部の周辺領域に装荷される前記縮退分離素子部間を結ぶ線上の、又は同線に直交する線上の、アンテナエレメント部の周辺領域付近に接続される報知回路部と、
を具備することを特徴とするパッチアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−171567(P2009−171567A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323088(P2008−323088)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000165848)原田工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】