パネルの固定構造
【課題】固定用のボルトが見えないボルトレスの外観を実現して見栄えの向上が図られるパネルの固定構造を提供する。
【解決手段】隣り合うパネル10の一端部に内側重畳部15を設けるとともに、他端部に内側重畳部15を覆ってパネル10の表面10a側に重畳する外側重畳部16を設け、内側重畳部15に表面10a側からボルト30を通して胴縁20に締結して外壁を構成する。ボルト30の頭部31を外側重畳部16で覆って外観を何もない表面だけにする。
【解決手段】隣り合うパネル10の一端部に内側重畳部15を設けるとともに、他端部に内側重畳部15を覆ってパネル10の表面10a側に重畳する外側重畳部16を設け、内側重畳部15に表面10a側からボルト30を通して胴縁20に締結して外壁を構成する。ボルト30の頭部31を外側重畳部16で覆って外観を何もない表面だけにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の建材用のパネルを接続して建物の外壁や内壁あるいは天井等を構成するパネルの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫、あるいは住宅等の建物にあっては、複数の長方形状のパネルを横方向に接続しながら並べて外壁を簡易に構成する場合がある(特許文献1等)。特に、金属板の間に断熱材を芯材として挟んだ金属サンドイッチパネルは、密閉性や断熱機能に優れるため、前記建物の他に、養鶏所やキノコ栽培棟等の農畜産施設の外壁材として需要が高まっている。
【0003】
従来、このようなパネルを固定するには、例えば図6および図7に示すように、建物の躯体を構成する胴縁101にパネル110の裏面を合わせ、表面側(屋外側)からパネル110に通したボルト102を胴縁101にねじ込むことにより、パネル110を胴縁101に締結して固定する構造が採られている。
【0004】
建材用のパネルは、上記のように外壁を構成する他に、内壁や内部仕切り、あるいは天井を構成するために用いられる場合がある。例えば、図8および図9に示すように、屋根103の鉄骨梁104から吊りボルト105で吊り下げられたC型鋼106に対してパネル110を固定し、天井が構成される。吊りボルト105はターンバックル105aによって長さが可変とされ、平行に組まれた複数のC型鋼106の高さが均一に調整されるようになっている。C型鋼106に対するパネル110の固定構造としては、上記と同様であって図10に示すように、C型鋼106にパネル110の裏面を合わせ、表面側(屋内側)からパネル110に通したボルト102をC型鋼106にねじ込むことにより、パネル110をC型鋼106に締結して固定する構造が挙げられる。
【0005】
また、C型鋼106に対するパネル110の固定は、図11に示すように、パネル110どうしの接合面に形成されている溝110aに嵌め込まれるスプラインと呼ばれる継手板107に通したボルト108aを、C型鋼106に被せてパネル110の上面にセットしたハット型金具109に通し、このボルト108aにナット108bをねじ込んでハット型金具をパネルに締結する手法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−40800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、図7や図10に示したボルト102による固定構造では、ボルト102の頭部がパネル110の表面側に露出するため外観の点で見劣りするといった問題があった。この点、図11に示した固定構造ではボルト108aの頭部が表面側に露出することはない。しかしながら、パネル110の接合面の間に挟まれる継手板107、ボルト108aおよびハット型金具109を介してパネル110をC型鋼106に固定するため、必要な部材が多く、施工の手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、ボルトが見えないボルトレスの外観を実現して見栄えの向上が図られるとともに、簡単な作業で固定することができることにより施工性の向上が図られるパネルの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明パネルの固定構造は、裏面側を支持部材に対向させた複数のパネルを施工方向に並べ、これらパネルの表面側からパネルに通したボルトを前記支持部材にねじ込むことにより、パネルを支持部材に締結して固定するパネルの固定構造であって、隣り合う前記パネルの一端部に内側重畳部を設けるとともに、他端部に内側重畳部を覆ってパネルの表面側に重畳する外側重畳部を設け、前記内側重畳部に前記ボルトを通して該内側重畳部を前記支持部材に締結し、該ボルトの頭部を前記外側重畳部で覆うことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、パネルは、一端部の内側重畳部に通して支持部材にねじ込まれたボルトによって支持部材に固定され、ボルトは、内側重畳部を覆う外側重畳部で覆われて外部には見えない状態となる。したがってパネルの表面側(外側)からはボルトが見えないボルトレスの外観が実現される。また、固定のための部材が少なく、パネルの内側重畳部に通したボルトを支持部材にねじ込むといった簡単な作業でパネルを固定させることができるため、施工性が向上する。
【0011】
本発明では、前記パネルの少なくとも一端部または他端部に、該一端部と該他端部との間の隙間を密閉するシール材が、前記外側重畳部で覆われるように設けられている形態を含む。この形態では、シール材によってパネル間の気密性が確保され、また、シール材は外側重畳部で覆われて外部に露出しないため、違和感のない外観を維持することができる。
【0012】
また、本発明では、隣り合う前記パネルの前記一端部と前記他端部とにジョイント板が挿入され、該ジョイント板に前記ボルトが挿通される形態を含む。この形態では、パネルの固定強度の向上が図られる。
【0013】
上記ジョイント板を用いた場合、ジョイント板の、前記ボルトがねじ込まれない前記パネルの前記他端部に挿入される側の裏面側が、前記表面側に向かうテーパ面に形成されている形態とすることは、既設のパネルの一端部に次のパネルの他端部を接続させる際に、ジョイント板を該他端部に円滑に挿入させることができるため、好ましい形態である。
【0014】
本発明では、前記パネルにより壁が構成されること、あるいは天井が構成されることを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持部材への固定用のボルトが見えないボルトレスの外観を実現して見栄えの向上が図られるとともに、簡単な作業で固定することができることにより施工性の向上が図られるパネルの固定構造が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るパネルの固定構造で外壁が構成された状態を示す断面斜視図である。
【図2】一実施形態の固定構造の詳細を示す断面図である。
【図3】一実施形態の固定構造で施工されたパネルからなる外壁を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るパネルの固定構造で天井が構成された状態を示す断面斜視図である。
【図5】図4の固定構造の詳細を示す断面図である。
【図6】従来の外壁用のパネルの固定構造を示す斜視図である。
【図7】従来の外壁用のパネルの固定構造を示す断面図である。
【図8】天井用のパネルを固定するC型鋼を屋根から吊り下げた状態を示す側面図である。
【図9】天井用のパネルをC型鋼に固定して天井を構成した状態を示す斜視図である。
【図10】従来の天井用のパネルの固定構造を示す断面図である。
【図11】従来の天井用のパネルの固定構造の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、垂直に立てた複数の長方形状のパネル10を一実施形態の固定構造で胴縁(支持部材)20に固定しながら横方向に接続して並べ、外壁を構成した状態を示している。胴縁20は、図6に示したものと同様のアングル材で構成されたもので、横方向に延びる状態で施工され建物の躯体を構成している。パネル10は、裏面10b側を胴縁20に対向させ、表面10aが外観を構成する。
【0018】
パネル10は、図2に示すように2枚の金属板(表面10a側の金属板11と裏面10b側の金属板12)の間に断熱材13を芯材として挟んだ金属サンドイッチパネルである。金属板11,12は、例えば、溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)や亜鉛−アルミニウム6%−マグネシウム3%めっき鋼板(ZAM:登録商標)、あるいはカラー鋼板等が用いられ、断熱材13は、例えばポリスチレン等の樹脂発泡材が用いられる。パネル10の寸法は任意であるが、例えば縦方向長さ:1800〜10000mm、幅:900mm、厚さ:40〜100mmとされる。このような構成のパネル10は、断熱機能に優れるといった特徴を有している。
【0019】
パネル10の一端部(図1および図2で左側の端部)の表面10a側には、厚さを減じる段部14が形成されており、この段部14が形成された厚さ部分が、内側重畳部15として形成されている。この内側重畳部15は、金属板11,12と断熱材13の双方で形成されている。一端部における断熱材13の表面10a側の角部13aは面取り加工されており、表面10a側の金属板11の一端部はこの角部13aを覆っている。また、パネル10の一端部の裏面10b側の金属板12は、断熱材13の表面に沿って一端面13bの途中まで直角に折り返されている。
【0020】
パネル10の他端部(図1および図2で右側の端部)の表面10a側には、一端部の上記段部14に対応して該段部14に嵌り込むとともに、上記内側重畳部15を覆って表面10a側に重畳する外側重畳部16が形成されている。この外側重畳部16は、表面10a側の金属板11の端部を突出させて折り重ねることにより形成されている。他端部金属板11,12は、断熱材13の表面に沿って他端面13cの途中まで直角に折り返されている。表面10a側の金属板11の外側重畳部16の内面と、他端面13cに接触する端部との内隅部には、シール材40が貼り付けられている。シール材40は、例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等の弾性を有する密閉部材が好適に用いられる。 シール材40は、パネル10の全長にわたって設けられている。
【0021】
パネル10の一端部および他端部における断熱材13には、それぞれの端面13b、13cに開放するスリット17,18がそれぞれ形成されている。スリット17,18はパネル10の厚さのほぼ中間部に形成されており、これらスリット17,18には、1枚のジョイント板50が挿入される。ジョイント板50はある程度の剛性を有する板材を材料としており、例えばPP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等から形成されている。
【0022】
ジョイント板50は、パネル10の一端部、すなわち内側重畳部15側に挿入される側は、厚さがほぼ均一である。一方、ジョイント板50の、パネル10の他端部に挿入される側は、裏面10b側が、先端に向かうしたがってパネル10の表面10a側に向かうように厚さが減じられるテーパ面51に形成されている。
【0023】
本実施形態のパネル10によれば、次のようにして外壁が構成される。
すなわち、はじめに施工するパネル10を、胴縁20に裏面10bを対向させて配置し、内側重畳部15の裏面10b側を胴縁20に合わせる。また、一端部のスリット17にジョイント板50を挿入する。ジョイント板50は、予めスリット17に挿入された状態でもよい。次に、内側重畳部15の表面10a側から、ドリルによって内側重畳部15、ジョイント板50および胴縁20を貫通する下孔を形成する。そしてこの下孔に、ゴムパッキン32に通したボルト30を、内側重畳部15の表面10a側から通し、そのボルト30を胴縁20にねじ込む。上記下孔はボルト30よりも径が小さく、ボルト30は胴縁20に形成されたこの下孔にねじ込まれる。これにより、パネル10は内側重畳部15がボルト30で胴縁20に締結されて固定される。ゴムパッキン32はボルト30の頭部31で金属板11に圧着された状態となり、このゴムパッキン32でボルト30が通る孔が気密的に封止される。
【0024】
次に、ジョイント板50が突出しているパネル10の一端部に対して、次に施工するパネル10の他端部を接続させる。その際には、スリット18にジョイント板50を挿入し、かつ、外側重畳部16を段部14に嵌合させる。この作業の際には、ジョイント板50にテーパ面51が形成されていることにより表面10a側から斜めに入れ込んで接続させるパネル10のスリット18にジョイント板50を円滑に挿入させやすいという利点がある。そして、このように既設のパネル10に接続させたパネル10の内側重畳部15を、ボルト30により同様にして胴縁20に固定する。
【0025】
以上の作業を繰り返し行って複数のパネル10を順次胴縁20に固定し、図3に示すような外壁を施工する。
【0026】
本実施形態のパネル10の固定構造は、図2に示すように、ボルト30が通された内側重畳部15が、隣りのパネル10の外側重畳部16によって覆われ、これによりボルト30の頭部31が外側重畳部16によって覆われる。外側重畳部16の表面は金属板11の表面と面一となる。また、シール材40は、パネル10間において挟まれ、角部13aに向かって弾性的に押圧された状態で一端部と他端部との間の隙間を密閉する。このシール材40も、外側重畳部16で覆われる。
【0027】
本実施形態の固定構造によれば、パネル10は、一端部の内側重畳部15に通して胴縁20にねじ込まれたボルト30によって胴縁20に固定され、ボルト30の頭部31は、内側重畳部15を覆う外側重畳部16で覆われて外部には見えない状態となる。したがって図3に示すようにパネル10の表面側(外側)からはボルト30が見えないボルトレスの外観が実現され、得られた外壁はパネル10の表面だけが見える状態となる。
【0028】
また、パネル10間の隙間を密閉するシール材40によって気密性が確保される。このシール材40も外側重畳部16で覆われて外部に露出しないため、違和感のない外観が維持される。さらに、パネル10の一端部と他端部とにわたってジョイント板50が挿入されているとともに、このジョイント板50にボルト30が挿通されているため、胴縁20に対するパネル10の固定強度や、パネル10そのものの強度といったものが向上する。その結果、胴縁20の数を減らすことができ、コスト低減が可能となる。また、図11で示したハット型金具109のような固定のための部材が少なくて済み、パネルの内側重畳部に通したボルトを支持部材にねじ込むといった簡単な作業でパネルを固定させることができるため、施工性が向上する。
【0029】
図4および図5は、上記実施形態の固定構造を用いて、上記パネル10により天井を構成した例を示している。この場合、複数のパネル10は、上記胴縁20に代えて屋根の下方に水平に設けられたC型鋼(支持部材)60に対し、上記実施形態と同様の構造で固定して接続されて天井を構成している。C型鋼60は、例えば、図8および図9に示したように、屋根の鉄骨梁から吊りボルトで水平に吊り下げられて設けられている。
【0030】
パネル10は、一端部の内側重畳部15に通してC型鋼60にねじ込まれたボルト30によってC型鋼20に固定され、ボルト30の頭部31は、内側重畳部15を覆う外側重畳部16で覆われて下方からは見えない状態となっている。したがってパネル10の表面側(下側)からはボルト30が見えないボルトレスの外観が実現され、得られた天井はパネル10の表面だけが見える状態となる。
【0031】
なお、上記実施形態は本発明を外壁および天井を構成するパネルに適用したものであるが、本発明は、内壁用や間仕切り用等の各種パネルにも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
10…パネル
10a…パネルの表面
10b…パネルの裏面
15…内側重畳部
16…外側重畳部
20…胴縁(支持部材)
30…ボルト
31…ボルトの頭部
32…ゴムパッキン
40…シール材
50…ジョイント板
51…ジョイント板のテーパ面
60…C型鋼(支持部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の建材用のパネルを接続して建物の外壁や内壁あるいは天井等を構成するパネルの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫、あるいは住宅等の建物にあっては、複数の長方形状のパネルを横方向に接続しながら並べて外壁を簡易に構成する場合がある(特許文献1等)。特に、金属板の間に断熱材を芯材として挟んだ金属サンドイッチパネルは、密閉性や断熱機能に優れるため、前記建物の他に、養鶏所やキノコ栽培棟等の農畜産施設の外壁材として需要が高まっている。
【0003】
従来、このようなパネルを固定するには、例えば図6および図7に示すように、建物の躯体を構成する胴縁101にパネル110の裏面を合わせ、表面側(屋外側)からパネル110に通したボルト102を胴縁101にねじ込むことにより、パネル110を胴縁101に締結して固定する構造が採られている。
【0004】
建材用のパネルは、上記のように外壁を構成する他に、内壁や内部仕切り、あるいは天井を構成するために用いられる場合がある。例えば、図8および図9に示すように、屋根103の鉄骨梁104から吊りボルト105で吊り下げられたC型鋼106に対してパネル110を固定し、天井が構成される。吊りボルト105はターンバックル105aによって長さが可変とされ、平行に組まれた複数のC型鋼106の高さが均一に調整されるようになっている。C型鋼106に対するパネル110の固定構造としては、上記と同様であって図10に示すように、C型鋼106にパネル110の裏面を合わせ、表面側(屋内側)からパネル110に通したボルト102をC型鋼106にねじ込むことにより、パネル110をC型鋼106に締結して固定する構造が挙げられる。
【0005】
また、C型鋼106に対するパネル110の固定は、図11に示すように、パネル110どうしの接合面に形成されている溝110aに嵌め込まれるスプラインと呼ばれる継手板107に通したボルト108aを、C型鋼106に被せてパネル110の上面にセットしたハット型金具109に通し、このボルト108aにナット108bをねじ込んでハット型金具をパネルに締結する手法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−40800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、図7や図10に示したボルト102による固定構造では、ボルト102の頭部がパネル110の表面側に露出するため外観の点で見劣りするといった問題があった。この点、図11に示した固定構造ではボルト108aの頭部が表面側に露出することはない。しかしながら、パネル110の接合面の間に挟まれる継手板107、ボルト108aおよびハット型金具109を介してパネル110をC型鋼106に固定するため、必要な部材が多く、施工の手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、ボルトが見えないボルトレスの外観を実現して見栄えの向上が図られるとともに、簡単な作業で固定することができることにより施工性の向上が図られるパネルの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明パネルの固定構造は、裏面側を支持部材に対向させた複数のパネルを施工方向に並べ、これらパネルの表面側からパネルに通したボルトを前記支持部材にねじ込むことにより、パネルを支持部材に締結して固定するパネルの固定構造であって、隣り合う前記パネルの一端部に内側重畳部を設けるとともに、他端部に内側重畳部を覆ってパネルの表面側に重畳する外側重畳部を設け、前記内側重畳部に前記ボルトを通して該内側重畳部を前記支持部材に締結し、該ボルトの頭部を前記外側重畳部で覆うことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、パネルは、一端部の内側重畳部に通して支持部材にねじ込まれたボルトによって支持部材に固定され、ボルトは、内側重畳部を覆う外側重畳部で覆われて外部には見えない状態となる。したがってパネルの表面側(外側)からはボルトが見えないボルトレスの外観が実現される。また、固定のための部材が少なく、パネルの内側重畳部に通したボルトを支持部材にねじ込むといった簡単な作業でパネルを固定させることができるため、施工性が向上する。
【0011】
本発明では、前記パネルの少なくとも一端部または他端部に、該一端部と該他端部との間の隙間を密閉するシール材が、前記外側重畳部で覆われるように設けられている形態を含む。この形態では、シール材によってパネル間の気密性が確保され、また、シール材は外側重畳部で覆われて外部に露出しないため、違和感のない外観を維持することができる。
【0012】
また、本発明では、隣り合う前記パネルの前記一端部と前記他端部とにジョイント板が挿入され、該ジョイント板に前記ボルトが挿通される形態を含む。この形態では、パネルの固定強度の向上が図られる。
【0013】
上記ジョイント板を用いた場合、ジョイント板の、前記ボルトがねじ込まれない前記パネルの前記他端部に挿入される側の裏面側が、前記表面側に向かうテーパ面に形成されている形態とすることは、既設のパネルの一端部に次のパネルの他端部を接続させる際に、ジョイント板を該他端部に円滑に挿入させることができるため、好ましい形態である。
【0014】
本発明では、前記パネルにより壁が構成されること、あるいは天井が構成されることを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持部材への固定用のボルトが見えないボルトレスの外観を実現して見栄えの向上が図られるとともに、簡単な作業で固定することができることにより施工性の向上が図られるパネルの固定構造が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るパネルの固定構造で外壁が構成された状態を示す断面斜視図である。
【図2】一実施形態の固定構造の詳細を示す断面図である。
【図3】一実施形態の固定構造で施工されたパネルからなる外壁を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るパネルの固定構造で天井が構成された状態を示す断面斜視図である。
【図5】図4の固定構造の詳細を示す断面図である。
【図6】従来の外壁用のパネルの固定構造を示す斜視図である。
【図7】従来の外壁用のパネルの固定構造を示す断面図である。
【図8】天井用のパネルを固定するC型鋼を屋根から吊り下げた状態を示す側面図である。
【図9】天井用のパネルをC型鋼に固定して天井を構成した状態を示す斜視図である。
【図10】従来の天井用のパネルの固定構造を示す断面図である。
【図11】従来の天井用のパネルの固定構造の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、垂直に立てた複数の長方形状のパネル10を一実施形態の固定構造で胴縁(支持部材)20に固定しながら横方向に接続して並べ、外壁を構成した状態を示している。胴縁20は、図6に示したものと同様のアングル材で構成されたもので、横方向に延びる状態で施工され建物の躯体を構成している。パネル10は、裏面10b側を胴縁20に対向させ、表面10aが外観を構成する。
【0018】
パネル10は、図2に示すように2枚の金属板(表面10a側の金属板11と裏面10b側の金属板12)の間に断熱材13を芯材として挟んだ金属サンドイッチパネルである。金属板11,12は、例えば、溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)や亜鉛−アルミニウム6%−マグネシウム3%めっき鋼板(ZAM:登録商標)、あるいはカラー鋼板等が用いられ、断熱材13は、例えばポリスチレン等の樹脂発泡材が用いられる。パネル10の寸法は任意であるが、例えば縦方向長さ:1800〜10000mm、幅:900mm、厚さ:40〜100mmとされる。このような構成のパネル10は、断熱機能に優れるといった特徴を有している。
【0019】
パネル10の一端部(図1および図2で左側の端部)の表面10a側には、厚さを減じる段部14が形成されており、この段部14が形成された厚さ部分が、内側重畳部15として形成されている。この内側重畳部15は、金属板11,12と断熱材13の双方で形成されている。一端部における断熱材13の表面10a側の角部13aは面取り加工されており、表面10a側の金属板11の一端部はこの角部13aを覆っている。また、パネル10の一端部の裏面10b側の金属板12は、断熱材13の表面に沿って一端面13bの途中まで直角に折り返されている。
【0020】
パネル10の他端部(図1および図2で右側の端部)の表面10a側には、一端部の上記段部14に対応して該段部14に嵌り込むとともに、上記内側重畳部15を覆って表面10a側に重畳する外側重畳部16が形成されている。この外側重畳部16は、表面10a側の金属板11の端部を突出させて折り重ねることにより形成されている。他端部金属板11,12は、断熱材13の表面に沿って他端面13cの途中まで直角に折り返されている。表面10a側の金属板11の外側重畳部16の内面と、他端面13cに接触する端部との内隅部には、シール材40が貼り付けられている。シール材40は、例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等の弾性を有する密閉部材が好適に用いられる。 シール材40は、パネル10の全長にわたって設けられている。
【0021】
パネル10の一端部および他端部における断熱材13には、それぞれの端面13b、13cに開放するスリット17,18がそれぞれ形成されている。スリット17,18はパネル10の厚さのほぼ中間部に形成されており、これらスリット17,18には、1枚のジョイント板50が挿入される。ジョイント板50はある程度の剛性を有する板材を材料としており、例えばPP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等から形成されている。
【0022】
ジョイント板50は、パネル10の一端部、すなわち内側重畳部15側に挿入される側は、厚さがほぼ均一である。一方、ジョイント板50の、パネル10の他端部に挿入される側は、裏面10b側が、先端に向かうしたがってパネル10の表面10a側に向かうように厚さが減じられるテーパ面51に形成されている。
【0023】
本実施形態のパネル10によれば、次のようにして外壁が構成される。
すなわち、はじめに施工するパネル10を、胴縁20に裏面10bを対向させて配置し、内側重畳部15の裏面10b側を胴縁20に合わせる。また、一端部のスリット17にジョイント板50を挿入する。ジョイント板50は、予めスリット17に挿入された状態でもよい。次に、内側重畳部15の表面10a側から、ドリルによって内側重畳部15、ジョイント板50および胴縁20を貫通する下孔を形成する。そしてこの下孔に、ゴムパッキン32に通したボルト30を、内側重畳部15の表面10a側から通し、そのボルト30を胴縁20にねじ込む。上記下孔はボルト30よりも径が小さく、ボルト30は胴縁20に形成されたこの下孔にねじ込まれる。これにより、パネル10は内側重畳部15がボルト30で胴縁20に締結されて固定される。ゴムパッキン32はボルト30の頭部31で金属板11に圧着された状態となり、このゴムパッキン32でボルト30が通る孔が気密的に封止される。
【0024】
次に、ジョイント板50が突出しているパネル10の一端部に対して、次に施工するパネル10の他端部を接続させる。その際には、スリット18にジョイント板50を挿入し、かつ、外側重畳部16を段部14に嵌合させる。この作業の際には、ジョイント板50にテーパ面51が形成されていることにより表面10a側から斜めに入れ込んで接続させるパネル10のスリット18にジョイント板50を円滑に挿入させやすいという利点がある。そして、このように既設のパネル10に接続させたパネル10の内側重畳部15を、ボルト30により同様にして胴縁20に固定する。
【0025】
以上の作業を繰り返し行って複数のパネル10を順次胴縁20に固定し、図3に示すような外壁を施工する。
【0026】
本実施形態のパネル10の固定構造は、図2に示すように、ボルト30が通された内側重畳部15が、隣りのパネル10の外側重畳部16によって覆われ、これによりボルト30の頭部31が外側重畳部16によって覆われる。外側重畳部16の表面は金属板11の表面と面一となる。また、シール材40は、パネル10間において挟まれ、角部13aに向かって弾性的に押圧された状態で一端部と他端部との間の隙間を密閉する。このシール材40も、外側重畳部16で覆われる。
【0027】
本実施形態の固定構造によれば、パネル10は、一端部の内側重畳部15に通して胴縁20にねじ込まれたボルト30によって胴縁20に固定され、ボルト30の頭部31は、内側重畳部15を覆う外側重畳部16で覆われて外部には見えない状態となる。したがって図3に示すようにパネル10の表面側(外側)からはボルト30が見えないボルトレスの外観が実現され、得られた外壁はパネル10の表面だけが見える状態となる。
【0028】
また、パネル10間の隙間を密閉するシール材40によって気密性が確保される。このシール材40も外側重畳部16で覆われて外部に露出しないため、違和感のない外観が維持される。さらに、パネル10の一端部と他端部とにわたってジョイント板50が挿入されているとともに、このジョイント板50にボルト30が挿通されているため、胴縁20に対するパネル10の固定強度や、パネル10そのものの強度といったものが向上する。その結果、胴縁20の数を減らすことができ、コスト低減が可能となる。また、図11で示したハット型金具109のような固定のための部材が少なくて済み、パネルの内側重畳部に通したボルトを支持部材にねじ込むといった簡単な作業でパネルを固定させることができるため、施工性が向上する。
【0029】
図4および図5は、上記実施形態の固定構造を用いて、上記パネル10により天井を構成した例を示している。この場合、複数のパネル10は、上記胴縁20に代えて屋根の下方に水平に設けられたC型鋼(支持部材)60に対し、上記実施形態と同様の構造で固定して接続されて天井を構成している。C型鋼60は、例えば、図8および図9に示したように、屋根の鉄骨梁から吊りボルトで水平に吊り下げられて設けられている。
【0030】
パネル10は、一端部の内側重畳部15に通してC型鋼60にねじ込まれたボルト30によってC型鋼20に固定され、ボルト30の頭部31は、内側重畳部15を覆う外側重畳部16で覆われて下方からは見えない状態となっている。したがってパネル10の表面側(下側)からはボルト30が見えないボルトレスの外観が実現され、得られた天井はパネル10の表面だけが見える状態となる。
【0031】
なお、上記実施形態は本発明を外壁および天井を構成するパネルに適用したものであるが、本発明は、内壁用や間仕切り用等の各種パネルにも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
10…パネル
10a…パネルの表面
10b…パネルの裏面
15…内側重畳部
16…外側重畳部
20…胴縁(支持部材)
30…ボルト
31…ボルトの頭部
32…ゴムパッキン
40…シール材
50…ジョイント板
51…ジョイント板のテーパ面
60…C型鋼(支持部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側を支持部材に対向させた複数のパネルを施工方向に並べ、これらパネルの表面側からパネルに通したボルトを前記支持部材にねじ込むことにより、パネルを支持部材に締結して固定するパネルの固定構造であって、
隣り合う前記パネルの一端部に内側重畳部を設けるとともに、他端部に内側重畳部を覆ってパネルの表面側に重畳する外側重畳部を設け、
前記内側重畳部に前記ボルトを通して該内側重畳部を前記支持部材に締結し、該ボルトの頭部を前記外側重畳部で覆うこと
を特徴とするパネルの固定構造。
【請求項2】
前記パネルの少なくとも一端部または他端部に、該一端部と該他端部との間の隙間を密閉するシール材が、前記外側重畳部で覆われるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパネルの固定構造。
【請求項3】
隣り合う前記パネルの前記一端部と前記他端部とにジョイント板が挿入され、該ジョイント板に前記ボルトが挿通されることを特徴とする請求項1または2に記載のパネルの固定構造。
【請求項4】
前記ジョイント板の、前記ボルトがねじ込まれない前記パネルの前記他端部に挿入される側の裏面側が、前記表面側に向かうテーパ面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のパネルの固定構造。
【請求項5】
前記パネルにより壁が構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパネルの固定構造。
【請求項6】
前記パネルにより天井が構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパネルの固定構造。
【請求項1】
裏面側を支持部材に対向させた複数のパネルを施工方向に並べ、これらパネルの表面側からパネルに通したボルトを前記支持部材にねじ込むことにより、パネルを支持部材に締結して固定するパネルの固定構造であって、
隣り合う前記パネルの一端部に内側重畳部を設けるとともに、他端部に内側重畳部を覆ってパネルの表面側に重畳する外側重畳部を設け、
前記内側重畳部に前記ボルトを通して該内側重畳部を前記支持部材に締結し、該ボルトの頭部を前記外側重畳部で覆うこと
を特徴とするパネルの固定構造。
【請求項2】
前記パネルの少なくとも一端部または他端部に、該一端部と該他端部との間の隙間を密閉するシール材が、前記外側重畳部で覆われるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパネルの固定構造。
【請求項3】
隣り合う前記パネルの前記一端部と前記他端部とにジョイント板が挿入され、該ジョイント板に前記ボルトが挿通されることを特徴とする請求項1または2に記載のパネルの固定構造。
【請求項4】
前記ジョイント板の、前記ボルトがねじ込まれない前記パネルの前記他端部に挿入される側の裏面側が、前記表面側に向かうテーパ面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のパネルの固定構造。
【請求項5】
前記パネルにより壁が構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパネルの固定構造。
【請求項6】
前記パネルにより天井が構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパネルの固定構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−82675(P2012−82675A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266618(P2010−266618)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(596066482)明正工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(596066482)明正工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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