説明

パネル装置

【課題】開閉操作性を悪化させないで、パネルと枠体側との間を確実にシールするパネル装置を提供する。
【解決手段】パネル装置Rは、鍵棒48を鍵穴47に差し込んで正逆方向に回動すると、その回動方向に応じてスライドブロックが相反する上下方向に直線往復動する錠前30と、スライドブロックにそれぞれリンク50・60の基端を連結し、各リンクの先端に連結したクランク55・65をそれぞれ回動可能にパネルPの上下両端部に枢支したリンクユニット40と、クランクが回動して押し当たると、その押当力の反作用により、パネルが、クランクの回動方向に応じて壁体の開口部Sの奥行方向Y前後に移動し、ガイドレール10・11上をスライドする摺動位置と、枠体Fとの間の隙間を塞ぐシール部材Cに押し当たる封止位置との間をシフトするように案内する、シフトガイド手段Gを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルを、枠体内で天井側と床側のガイドレールに沿ってスライドさせて壁体の開口部を開閉すると共に、枠体との間の隙間を塞ぐシール部材に押し当てて封止するのに好適なパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のビル建築物では、コンクリート壁などに代えて、図15に示すように、複数枚の金属製パネル1を横一列に引き通し状態で並設して面一な室内壁を形成したり、空調機やサーバ等を置いた通路との間を仕切る同じく面一な仕切壁を形成したりするが、従来、それら壁体2には、事務処理機器や空調機やサーバ等を出し入れできる一方、騒音も遮断できるように、パネル1を、枠体3内で天井側と床側のガイドレールに沿ってスライドさせて開閉すると共に、枠体3との間の隙間を塞ぐゴムパッキン等のシール部材に押し当てて封止する、パネル装置を備えている。
【0003】
従来、この種のパネル装置の中には、図16に示すように、戸車4を天井側レール5に係合し、床側レールにも戸車を係合してパネル1をスライド自在とする一方、パネル1を吸音効果のある芯部材6aに遮音効果のあるシート部材6bを外被した遮断パッキン6に当接させて、パネル1と天井側レール5の隙間をシールして遮音する構造にしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−41837号公報
【特許文献2】実開昭63−37711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のパネル装置には、パネル1を引いて開閉するとき、その都度、パネル1が遮断パッキン6に当接したまま摺動するため、パネル1は、遮断パッキン6と間の摩擦が抵抗になり、そのため、開閉動作が重たくて操作性が悪いという課題がある。
【0006】
他方、パネルは、個々に建付けにがたつきがあったり変形していたり、他方、遮断パッキン6に長年の使用によりへたりが発生したりすると、個々のパネル1と遮断パッキン6の当接状態は一定でなくなってムラを生じ、そのため、パネル1と天井側レール5との間を完全にシールして遮音することができないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、開閉操作性を悪化させないで、パネルと枠体側との間を確実にシールするパネル装置を提供することにある。
【0008】
本発明の目的を達成すべく、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、壁体を形成するパネルPを枠体F内の天井側と床側のガイドレール10・11に沿ってスライドさせて前記壁体の開口部Sを開閉するパネル装置Rにおいて、鍵棒48を鍵穴47に差し込んで正逆方向A・Bに回動させると、該鍵棒48の回動方向に応じてスライドブロック42・43のような第1および第2作動部材が相反する上下方向に直線往復動する錠前30と、該錠前30の第1および第2作動部材にそれぞれリンク50・60の基端を連結し、該リンク50・60の先端に連結したクランク55・65をそれぞれ回動可能に前記パネルPの上下両端部に枢支したリンクユニット40と、前記クランク55・65が回動して押し当たると、その押当力の反作用により、前記パネルPが、前記クランク55・65の回動方向に応じて前記開口部Sの奥行方向Y前後に移動し、前記ガイドレール10・11上をスライドする摺動位置と、前記枠体Fとの間の隙間を塞ぐシール部材Cに押し当たる封止位置との間をシフトするように案内するシフトガイド手段Gと、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパネル装置Rにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記シフトガイド手段Gは、前記天井側ガイドレール10に前記パネルPを係止させるガイドプレート45に、上部の前記クランク55を係合する係合穴36と、前記パネルPの開閉方向Xに対して斜め向きにカム穴35を設け、前記パネルの上端部に、前記カム穴35に係合する上部ガイド70を突設する一方、前記パネルPの下端部に前記カム穴35と対応するカム穴15を斜め向きに設け、前記床側ガイドレール11に戸車wを係合して前記パネルPを走行させる戸車ユニット19に、下部の前記クランク65を係合する係合穴22と、前記パネルPのカム穴15に係合する下部ガイド25を突設し、前記クランク55・65が回動して前記係合穴36・22の穴縁q・rに押し当たると、その押当力の反作用により、前記パネルPが、前記クランク55・65の回動方向に応じて、前記カム穴35・15に沿って前記開口部Sの奥行方向Y前後に平行に傾動して前記摺動位置と前記封止位置との間をシフトするように案内してなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のパネル装置Rにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記パネルPには、外側に臨む鍵操作用の小穴75を前記鍵穴47の位置に合わせて穿設し、その小穴位置の内側に前記錠前30を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、鍵棒を錠前の鍵穴に差し込み、正逆方向に回動して第1および第2作動部材を相反する上下方向に移動させると、リンクユニットにおいて、リンクが相反する方向に上下し、すると、上下のクランクが互いに反対向きに回動し、このクランクの回動方向に応じて、クランクがシフトガイド手段に押し当たる。すると、このときにパネルPが受ける押当力の反作用により、パネルが、クランクの回動方向に応じて開口部の奥行方向前後に移動し、ガイドレール上をスライドする摺動位置と、シール部材に押し当たる封止位置との間をシフトする構成とし、壁体の開閉時、摺動位置において、パネルを、シール部材に当接することなくスムーズにスライドさせて開閉操作できる一方で、常時は、封止位置において、パネルを、シール部材に押し当てて枠体との間の隙間を塞いで確実にシールし遮音することができる。
【0012】
更に、請求項1に記載の発明によれば、壁体を構成するパネルを個々に封止位置にシフトするとき、鍵棒による錠前の回動量を調節してパネルのシフト量を微調整し、これにより、すべてパネルをシール部材に確実に押し当てて密着させ気密性を担保する一方で、隣接する他のパネルとズレなく引き通し状態に列設して壁面の面一性を確保することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、鍵棒を錠前の鍵穴に差し込み、正逆方向に回動して第1および第2作動部材を相反する上下方向に移動させると、リンクユニットにおいて、リンクが相反する方向に上下し、すると、上下のクランクが互いに反対向きに回動し、このクランクの回動方向に応じて、上部のクランクが係合穴の穴縁に押し当たってガイドプレートを押圧すると共に、下部のクランクが係合穴の穴縁に押し当たって戸車ユニットを押圧する。すると、このときにパネルが受ける押圧力の反作用により、上下のガイドとカム穴の穴縁とが圧接するが、カム穴の穴縁も斜め向きであるため、パネルは、カム穴の穴縁の傾斜に従って奥行方向前後に平行に傾動して摺動位置と封止位置との間をシフトするため、パネルのシフト動作がスムーズで安定し、封止位置においては、パネルを、その上部と下部とでムラなくシール部材に適確に押し当てて、枠体との間の隙間をより一層確実にシールすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、パネルの外側には、小穴だけで、鍵操作用にハンドル等の突起物が設けないので、壁面の面一性と美感性が損なわれることがなく、一方で、鍵操作用の小穴を通して鍵棒を鍵穴に差し込めば、パネル装置を、パネルの外側からも容易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)パネルが摺動位置にある本発明のパネル装置を示す斜視図、(B)パネルが封止位置にあるパネル装置を示す斜視図である。
【図2】(A)パネルが摺動位置のパネル装置を示す正面図、(B)パネルが封止位置のパネル装置を示す正面図である。
【図3】パネル装置を、外側から見て示す斜視図である。
【図4】(A)パネルが摺動位置のシフト状態を示すパネル装置の平面図、(B)パネルが封止位置のシフト状態を示すパネル装置の平面図である。
【図5】パネルの下横枠板の形状を示すパネルの横断面図である。
【図6】戸車ユニットの組立斜視図である。
【図7】パネルガイドユニットの分解斜視図である。
【図8】パネルガイドユニットの組立斜視図である。
【図9】錠前とリンクの組立体おとび鍵棒を示す斜視図である。
【図10】(A1)錠前とリンクの組立体を鍵棒の差込み状態で示す正面図、(A2)同側面図、(B1)錠前とリンクの組立体を鍵棒の回動操作状態で示す正面図、(B2)同側面図である。
【図11】(A)パネルが摺動位置にある錠前の内部構造を示す縦断面図、(B)パネルが封止位置にある錠前の内部構造を示す縦断面図である。
【図12】クランクの分解斜視図である。
【図13】(A)上部のクランクの作動状態を示す正面図、(B)下部のクランクの作動状態を示す正面図である。
【図14】(A)パネルが摺動位置のシフト状態を示すパネル装置の側面図、(B)パネルが封止位置のシフト状態を示すパネル装置の側面図である
【図15】従来の壁体全体の壁面構造を示す正面図である。
【図16】図15の線E−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1(A)は、パネルが摺動位置にある本発明のパネル装置を示す斜視図、(B)はパネルが封止位置にあるパネル装置を示す斜視図である。図2(A)は、パネルが摺動位置のパネル装置を示す正面図、(B)はパネルが封止位置のパネル装置を示す正面図である。図3は、パネル装置を外側から見て示す斜視図である。本発明のパネル装置Rは、複数枚の金属製パネルを横一列に引き通し状態で並設し、例えば空調機やサーバ等を置いた通路との間を仕切る壁体(仕切壁)に適用する。図示例の壁体は、パネル装置Rにより、枠体Fと床面fで囲んだ開口部S内で、複数枚のパネルPを、それぞれ天井側と床側の金属製ガイドレール10・11に沿って開閉方向Xにスライド自在とし、開時は開閉方向Xと直交する奥行方向Y手前の摺動位置にシフトし、常時はシール材Cに押し当たる奥行方向Y奥側の封止位置にシフトするように列設して構築してなる。
【0018】
枠体Fには、上枠部aと下枠部bのそれぞれ奥行方向Y奥側にシール部材Cを接着している(図14参照)。図示例のシール部材Cは、細長い中空のゴムパッキンからなる。シール部材Cは、スポンジや合成樹脂などを用いて形成できるが、少なくとも弾性を有する素材であることが望ましい。
【0019】
図示例のパネルPは、鋼板製パネルで、板本体12と、板本体12の内側(裏面側)に直角に屈曲した図中左右の縦枠板12a・12b、上下の横枠板12c・12d、横枠板12c・12d間の溝形補強材12eとで矩形扉状に形成してなる。板本体12は、裏面の縦枠板12dに沿って取付フレーム13を固着し、下横枠板12dと縦枠板12c・12dの下部間にユニット収納空間12fを形成している。取付フレーム13は、溝形に曲げ成形した本体の一部を開口して錠前取付部13aを形成し、縦枠板12bと反対側の側縁上下に、細いガイド溝13bを有した一対のリンクガイド板部13d・13eを曲げ起こしてなる。
【0020】
更に、パネルPの上横枠板12cには、図4に示すように、長さ方向に間隔を置いて一対の軸逃げ穴14を設け、図中右側の軸逃げ穴14の縦枠板12b側に板逃げ穴39を設けている。軸逃げ穴14は、上横枠板12cの長さ方向に対して斜め向きに平行に穿設した長穴からなる。板逃げ穴39は、上横枠板12cの長さ方向に沿って長い矩形穴からなる。一方、図5に示すように、下横枠板12dには、長さ方向に間隔を置いて一対のカム穴15を設け、図中右のカム穴15の縦枠板12b側に板逃げ穴16を設けている。カム穴15は、穴縁の対向部位を円弧穴縁部分と直線穴縁部分m・nとで形成した長穴で、直線穴縁部分m・nを下横枠板12dの長さ方向に対して斜め向きに平行に穿設している。
【0021】
天井側ガイドレール10は、図1および図2に示すように、長さ方向に逃げ溝10aをあけた溝形パイプ状をなし、逃げ溝10aの両側に断面L形のガイドリブ10bを対称に凸設し、ガイドリブ10bに一対の樹脂製ライナー17を走行自在に係着し、ライナー17を下向きに枠体Fの上枠部aに敷設する。床側ガイドレール11は、長さ方向に係合溝11aをあけた溝形パイプ状をなし、ガイド溝11aを上向きに床面fの凹溝に嵌め込んで敷設する。
【0022】
パネル装置Rは、パネルPの下端部に装着する戸車ユニット19と、パネルPの上端部に搭載するパネルガイドユニット20と、取付フレーム13の錠前取付部13aに取り付ける錠前30と、錠前30を操作して作動するリンクユニット40と、パネルPのシフトガイド手段Gとを備える。
【0023】
戸車ユニット19は、図6に示すように、断面コ状の溝形ブラケット18内に、戸車wを一部突出させて転動自在に枢支した一対の戸車体21を組み付け、溝形ブラケット18の上板部18a上に、長さ方向に間隔を置いて一対のガイド25を突設する。更に、溝形ブラケット18の上板部18aには、その片側端縁に幅方向に長方形の係合穴22を設けてなる。ガイド25は、ねじピン23と、中心に軸穴24aの貫通した回転駒24からなる。回転駒24は、パネルPのカム穴15の穴幅と対応する径寸法の嵌合部分と、それより一段拡径な鍔状抜止め部分を設けて外周に掛け止め段部24bを形成してなる。係合穴22は、溝形ブラケット18の上板部18aの幅方向に長い矩形の長穴からなる。
【0024】
そこで、戸車ユニット19は、図1および図2に示すように、パネルPのユニット収納空間12f内に配置する一方、図6に示すように、ねじピン23を回転駒24に係合させてガイド25となし、ねじピン23を、パネルPの下横枠板12dの上方から、カム穴15を通して溝形ブラケット18の上板部18aにねじ込み、回転駒24の掛け止め段部24bを、回転駒24がねじピン23を中心に回転自在な状態で、図1および図2に示すようにカム穴15の穴縁に係合させて、ガイド25でパネルPの下横枠板12dに吊設している。
【0025】
パネルガイドユニット20は、図7および図8に示すように、細長い金属板のガイドプレート45と、それぞれ一対の段付き係合軸26、ガイドパイプ27、中心に軸挿通穴28aを有する押え板28を備える。ガイドプレート45は、両端寄りに一対の掛け止め穴29を設け、それら掛け止め穴29の端部寄りに一対のカム穴35を設け、片側のカム穴35の端縁側に係合穴36を設けている。掛け止め穴29は、穴縁の対向部位を円弧穴縁部分と回り止めのための直線穴縁部分29aとで形成した長穴で、直線穴縁部分29aを板幅方向に合わせて穿設している。カム穴35は、パネルPの下横枠板12dのカム穴15に対応し、穴縁の対向部位を円弧穴縁部分と回り止めのための直線穴縁部分m・nとで形成した長穴で、直線穴縁部分m・nをガイドプレート45の長さ方向に対して斜めに向きに穿設している。係合穴36は、戸車ユニット19の係合穴22と対応し、ガイドプレート45の幅方向に長い矩形の長穴からなる。
【0026】
係合軸26は、円筒部26aと、円筒部26aより一段細径な中間軸部26bと、中間軸部26bより一段細径な先端軸部26cとからなる。円筒部26aには、中間軸部26b寄りに横穴31を開けている。ガイドパイプ27は、周面にL形のガイド穴27aをあけ、その図中上側の一端に環状鍔部27bを設けてなる。環状鍔部27bには、その周縁の対角部位を掛け止め穴29に合わせ直線的に切り欠いて回り止め段部27cを形成してなる。
【0027】
パネルガイドユニット20は、円筒部26a内に図中下端の開口からコイルばね32を入れて開口を蓋33で塞いで係合軸26を組み立て、係合軸26を、掛け止め穴29に通した状態でガイドパイプ27に貫挿してから、横穴31に先端軸部を嵌着して係合軸26に摘みhを取り付け、ガイドパイプ27の環状鍔部27bの回り止め段部27cを掛け止め穴29の直線穴縁部分29aに掛け止めて、係合軸26を、中間軸部26bと先端軸部26cが掛け止め穴29から突出した状態で、ガイドプレート45に懸架し、次いで、先端軸部26cと中間軸部26bを順に軸挿通穴28aに通してから、押え板片28をガイドプレート45上にねじで止めて環状鍔部27bを押え付け、これにより、係合軸26をガイドプレート45に垂設して組み立てられる。
【0028】
そこで、パネルガイドユニット20は、図4に示すように、パネルPの上横枠板12c上に上部ガイド70を介して搭載する。上部ガイド70は、下部ガイド25と同様、図8に示すように、ねじピン71と、中心に軸穴72aの貫通した回転駒72からなる。回転駒72は、ガイドプレート45のカム穴35の穴幅と対応する径寸法の嵌合部分と、それより一段拡径な鍔状抜止め部分を設けて外周に掛け止め段部72aを形成してなる。そして、上部ガイド70は、パネルPの上方において、パネルガイドユニット20に備えるカム穴35と係合穴36と、パネルPの下方において、戸車ユニット19に備える下部ガイド25と、係合穴22と、パネルPの下横枠板12dに有するカム穴15とで、パネルPのシフトガイド手段Gを構成している。
【0029】
さて、パネルガイドユニット20は、パネルPの上横枠板12c上に載置する一方、ねじピン71を回転駒72に係合してガイド70となし、ねじピン71を、上方からカム穴35を通して上横枠板12cにねじ込んで、回転駒72の掛け止め段部72bを、回転駒72がねじピン71を中心に回転自在の状態で、カム穴35の直線穴縁部分m・nに係合し、図4に示すように、パネルガイドユニット20をカム穴35に沿って上横枠板12c上にスライド移動可能に搭載する。
【0030】
錠前30は、図9〜図11に示すように、錠本体37と、錠本体37の鍵穴47に抜き差しして回動操作する専用の鍵棒48とからなる。錠本体37は、錠ケース38内に、回転体41と、第1および第2作動部材として、一対のスライドブロック42・43を組み込んで構成されている。錠ケース38は、浅底な矩形箱形をなし、片側の取付用側板部38aに縦長な一対の逃げ穴49を開けてなる。回転体41は、錠ケース38内に横架した中心の枢軸44と、枢軸44をボス部46aの軸穴に嵌着して枢軸44で回転自在に支持するプロペラ46とからなる。ボス部46aには、回り止めの形状の鍵穴47が貫設されている。スライドブロック42・43は、錠ケース38のコーナーに合わせてL形ピースで形成され、それぞれ一部を凹ませて係止凹部42a・43aを設ける一方、L形のアングル板片42b・43bを取り付けてなる。そこで、錠本体36は、アングル板片42b・43bを逃げ穴49から突出する一方、係止凹部42a・43aにプロペラ46を係止させた状態で、スライドブロック42・43を錠ケース38内に長さ方向にスライド移動可能に配置して組み立てられる。
【0031】
専用の鍵棒48は、軸部48aが角棒状の回り止め形状で、その軸部48aの基端にT型の取手48bを取り付けてなる。そこで、錠前30は、錠本体37を、取付フレーム13の錠前取付部13aに嵌め入れ、鍵穴47を位置合わせしてから、側板部38aの両端を取付フレーム13にねじで止めてパネルPに固定する。パネルPには、板本体12に、図3に示すように、鍵操作用の小穴75を鍵穴47の位置に対応させて穿設し、錠本体37は、小穴75に鍵穴47を合わせて取付フレーム13に組み付ける。従って、錠前30は、必要に応じて、パネルPの内側と外側の両方から、任意に鍵棒48の軸部48aを鍵穴47に差し入れて回動操作できるようになっている。
【0032】
即ち、錠前30は、鍵棒48を鍵穴47に差し入れて正逆方向に回動させると、鍵棒48の回動方向に応じて、回転体41のプロペラ46を、枢軸44を中心として回転してスライドブロック42・43を相反する上下方向に直線往復動させる構造になっている。錠前30は、これらスライドブロック42・43にリンクユニット40を連結している。
【0033】
リンクユニット40は、図9に示すように、スライドブロック42・43のアングル板片42b・43bに基端を連結するリンク50・60と、リンク50・60の先端を連結するクランク55・65を備える。リンク50は、細長い金属プレートで、先端に係止穴51を有してなる。このリンク50は、基端をスライドブロック42のアングル板片42bにねじで止めて連結する一方、先端をリンクガイド板部13dのガイド溝13bに差し込み、中間部を板挟み片52の差込溝に差し込んで押え、取付フレーム13に沿って立てて上下に直線往復移動可能に組み付ける(図1・図2参照)。一方、リンク60は、細くて短尺な金属プレートで、先端に係止穴53を有してなる。このリンク60は、基端をスライドブロック43のアングル板片43bにねじで止めて連結する一方、先端を、リンクガイド板部13eのガイド溝13bに差し込んで、取付フレーム13に沿って立てて上下に直線往復移動可能に組み付ける。
【0034】
リンクユニット40において、クランク55・65は、図12に示すように、L形に似た曲げ板状で、第1アーム部55a・65aと第2アーム部55b・65bを直角な向きに延ばし、両アーム部が交差する位置に軸穴54を設け、枢軸56を、軸穴54に通して段付き取付板片57の取付穴57aに嵌着し、図13に示すように、段付き取付板片57に枢軸56を中心として回動自在に組み付ける。そのうち上部のクランク55は、図1および図2に示すように、第1アーム部55aを係止穴51に係止してリンク50と連結する一方、図4に示すように、第2アーム部55bを逃げ穴39に通して係合穴36と係合し、段付き取付板片57を取付フレーム13の上端にねじで止める。他方、下部のクランク65は、図1および図2に示すように、第1アーム部65aを係止穴53に係止してリンク60と連結する一方、図5に示すように、第2アーム部65bを逃げ穴16に通して係合穴22に係合し、段付き取付板片57を取付フレーム13の下端にねじで止めてなる。
【0035】
そこで、図示パネル装置では、錠前30において、鍵棒48を鍵穴47に差し込み、図11に示すように、正逆方向A・Bに所定角度回動して回転体41のプロペラ46を回転し、スライドブロック42・43を相反する方向に上下移動させる。すると、リンクユニット40において、リンク50・60が、図10に示すように相反する向きに上下に移動し、すると、クランク55・65が、図13に示すように枢軸56を中心として互いに反対向きに回動する。すると、クランク55・65の回動方向に応じて、クランク55・65の第2アーム部55b・65bがそれぞれ係合穴22・36の対向する直線穴縁部分q・rのいずれかに押し当たり、上部のクランク55でパネルガイドユニット20を押圧し、下部のクランク65で戸車ユニット19を押圧する。すると、このときにパネルPが受ける押圧力の反作用により、上下のガイド25・70における回転駒24・72の掛け止め段部24a・72aと、カム穴15・35の直線穴縁部分m・nとが圧接するが、直線穴縁部分m・nが斜め向きであるため、パネルPは、カム穴15・35の直線穴縁部分m・nの傾斜に従って、図4(A)に示す摺動位置と、(B)に示す封止位置との間を、戸車ユニット19とリンクユニット40に対し平行に傾動する構造になっている。
【0036】
さて、図示パネル装置Rにおいて、パネルPを含む同様な複数枚のパネルを枠体F内に横一列に列設して壁体(仕切壁)を構築する場合は、図8に示すガイドユニット20において、摘みhを摘み、左右の係合軸26を、それぞれガイドパイプ27のL形ガイド穴27aの縦溝に沿ってコイルばね32に抗して押し下げ、ガイドパイプ27内に納まる退避位置に引っ込めてから、軸芯周り一方向に回し、摘みhの軸部をガイド穴27aの横溝に掛けて止める。それから、パネルPを持ち上げ、戸車ユニット19の戸車wを床側ガイドレール11のガイド溝11aに係合させて立てる一方、係合軸26の位置を、それぞれ天井側ガイドレール10に係着したライナー17の係合軸穴(不図示)に合わせてから、摘みhを摘み、左右の係合軸26を軸芯周り他方向に回して係合軸2の掛け止めを外す。すると、係合軸26がコイルばね32のばね付勢力で跳ね上がって先端軸部26cがライナー17の係合軸穴に係合させる。すると、パネルPは、図14(A)に示すように、シール材Cとの間に隙間dのある位置で、天井側と床側ガイドレール10・11上をスライドする摺動位置で枠体Fに、いったん吊り込まれる。
【0037】
次いで、図示パネル装置Rでは、摺動位置にあるパネルPの、例えば外側から、図3に示すように、鍵棒48を、鍵操作用小穴75に通して錠前30の鍵穴47に差し込み、図11(B)に示すように正方向(図中反時計方向)Aに所定角度回動して回転体41のプロペラ46を回転し、スライドブロック42・43を相離れる上下方向に移動させる。すると、リンクユニット40において、リンク50・60が、図10(B1)・(B2)に示すように相離れる上下方向に移動し、すると、クランク55・65が、図13中実線で示すように第1アーム部55a・65aの相離れる反対向きに回動する。すると、クランク55・65の回動方向に応じて、図4(B)に示すように、上部クランク55の第2アーム部55bが係合穴36の片側の直線穴縁部分qに押し当たってパネルガイドユニット20を押圧すると共に、図5に示すように、下部クランク65の第2アーム部65bが係合穴22の片側の直線穴縁部分qに押し当たって戸車ユニット19を押圧する。すると、このときにパネルPが受ける押圧力の反作用により、上下のガイド25・70における回転駒24・72の掛け止め段部24a・72aと、カム穴15・35の片側の直線穴縁部分mとが圧接するが、直線穴縁部分mが斜め向きであるため、パネルPは、戸車ユニット19とリンクユニット40を摺動位置に残し、カム穴15・35の直線穴縁部分mの傾斜に従って奥行方向Y後方に平行に傾動し、シール部材Cに押し当たる封止位置にシフトして枠体Fとの間の隙間dを塞いだ状態で枠体Fに吊り込まれる。
【0038】
しかる後、図示省略するが、他のパネルも、それぞれ同様に摺動位置にいったん吊り込んでから、鍵棒48を、鍵操作用小穴75に通して錠前30の鍵穴47に差し込み、正方向Aに所定角度回動操作し、各パネルを、奥行方向Y後方に平行に傾動してシール部材Cに押し当たる同じ封止位置にシフトし、順に枠体Fに気密に吊り込んで引き通し状態の横一列に列設し、外側の壁面が面一な壁体を構築する。
【0039】
図示パネル装置Rでは、このように個々にパネルを封止位置にシフトするとき、鍵棒48による錠前30の回動量を調節してパネル毎にシフト量を微調整し、これにより、すべてパネルをシール部材Cに確実に押し当て密着させて気密性を担保する一方で、隣接する他のパネルとズレなく引き通し状態に列設して壁面の面一性を確保することができる。
【0040】
次に、図示パネル装置Rにおいて、例えば空調機やサーバ等を搬出するために、壁体を開けるときは、封止位置にあるパネルPの、例えば外側から、図3に示すように、鍵棒48を、鍵操作用小穴75に通して錠前30の鍵穴47に差し込み、図11(A)に示すように逆方向(図中時計方向)Bに所定角度回動して回転体41のプロペラ46を回転し、スライドブロック42・43を相接近する上下方向に移動させる。すると、リンクユニット40において、リンク50・60が、図10(A1)・(A2)に示すように相接近する上下に移動し、すると、クランク55・65が、図13中鎖線で示すように第1アーム部55a・65aの相接近する反対向きに回動する。すると、クランク55・65の回動方向に応じて、図4(A)に示すように、上部クランク55の第2アーム部55bが係合穴36の他側の直線穴縁部分rに押し当たってパネルガイドユニット20を押圧すると共に、下部クランク65の第2アーム部65bが係合穴22の他側の直線穴縁部分rに押し当たって戸車ユニット19を押圧する。すると、このときにパネルPが受ける押圧力の反作用により、上下のガイド25・70における回転駒24・72の掛け止め段部24a・72aと、カム穴15・35の他側の直線穴縁部分nとが圧接するが、直線穴縁部分nも斜め向きであるため、パネルPは、カム穴15・35の直線穴縁部分nの傾斜に従って奥行方向Y手前に平行に傾動して摺動位置にシフトし、戸車ユニット19とリンクユニット40と合体する。しかる後、パネルPをガイドレール10・11に沿ってスライドし、空調機やサーバ等を搬出できる広さの開口部Sを壁体に開ける。
【0041】
ところで、図示パネル装置Rは、必要に応じて、パネルPを枠体Fから簡単に取り外すこともできる。その場合は、パネルPを、上述のように摺動位置にシフトさせてから、図8に示すガイドユニット20において、摘みhを摘み、左右の係合軸26を、それぞれガイドパイプ27のL形ガイド穴27aの縦溝に沿ってコイルばね32に抗して押し下げ、ガイドパイプ27内に納まる退避位置に引っ込めて天井側ガイドレール10上のライナー17との係着を外してから、軸芯周り一方向に回し、摘みhの軸部をガイド穴27aの横溝に掛けて止める。それから、パネルPを持ち上げれば、簡単に枠体Fから取り外すことができる。
【符号の説明】
【0042】
C シール部材
G シフトガイド手段
F 枠体
P パネル
R パネル装置
S 開口部
X 開閉方向
Y 奥行方向
f 床面
m・n・q・r 直線穴縁部分
w 戸車
10 天井側ガイドレール
11 床側ガイドレール
15・35 カム穴
19 戸車ユニット
20 パネルガイドユニット
22・36 係合穴
25・70 ガイド
30 錠前
40 リンクユニット
45 ガイドプレート
47 鍵穴
48 鍵棒
50・60 リンク
55・65 クランク
55a・65a 第1アーム部
55b・65b 第2アーム部
75 鍵操作用小穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体を形成するパネルを枠体内の天井側と床側のガイドレールに沿ってスライドさせて前記壁体の開口部を開閉するパネル装置において、
鍵棒を鍵穴に差し込んで正逆方向に回動させると、該鍵棒の回動方向に応じて第1および第2作動部材が相反する上下方向に直線往復動する錠前と、
該錠前の第1および第2作動部材にそれぞれリンクの基端を連結し、該リンクの先端に連結したクランクをそれぞれ回動可能に前記パネルの上下両端部に枢支したリンクユニットと、
前記クランクが回動して押し当たると、その押当力の反作用により、前記パネルが、前記クランクの回動方向に応じて前記開口部の奥行方向前後に移動し、前記ガイドレール上をスライドする摺動位置と、前記枠体との間の隙間を塞ぐシール部材に押し当たる封止位置との間をシフトするように案内するシフトガイド手段と、
を備えてなることを特徴とする、パネル装置
【請求項2】
前記シフトガイド手段は、
前記天井側ガイドレールに前記パネルを係止させるガイドプレートに、上部の前記クランクを係合する係合穴と、前記パネルの開閉方向に対して斜め向きにカム穴を設け、前記パネルの上端部に、前記カム穴に係合する上部ガイドを突設する一方、
前記パネルの下端部に前記カム穴と対応するカム穴を斜め向きに設け、前記床側ガイドレールに戸車を係合して前記パネルを走行させる戸車ユニットに、下部の前記クランクを係合する係合穴と、前記パネルのカム穴に係合する下部ガイドを突設し、
前記クランクが回動して前記係合穴の穴縁に押し当たると、その押当力の反作用により、前記パネルが、前記クランクの回動方向に応じて、前記カム穴に沿って前記開口部の奥行方向前後に平行に傾動して前記摺動位置と前記封止位置との間をシフトするように案内してなることを特徴とする、請求項1に記載のパネル装置。
【請求項3】
前記パネルには、外側に臨む鍵操作用の小穴を前記鍵穴の位置に合わせて穿設し、その小穴位置の内側に前記錠前を備えてなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−261148(P2010−261148A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110257(P2009−110257)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(592114703)株式会社ベスト (69)
【Fターム(参考)】