説明

パピローマウイルスワクチン

本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチド、又はHPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物の、HPV‐16以外の少なくとも1種類のパピローマウイルスに起因する感染若しくは病理状態を予防又は治療する薬剤を製造するための使用に関する。本発明が特に対象とするのは免疫療法であり、特に、子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)へ、そして最終的には子宮頚癌へ至る可能性のあるHPVの持続感染の予防及び治療である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチド、又はHPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物の、HPV‐16以外の少なくとも1種類のパピローマウイルスに起因する感染若しくは病理状態を予防又は治療する薬剤を製造するための使用に関する。本発明が特に対象とするのは免疫療法であり、特に、子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)へ、そして最終的には子宮頚癌へ、至る可能性のあるHPVの持続感染の予防及び治療である。
【背景技術】
【0002】
パピローマウイルスは、ヒトを含む数多くの高等生物中で確認されている、小さなDNAウイルスである(例えば、Pfister,1987,in The papovaviridae: The Papillomaviruses, Salzman and Howley edition,Plenum Press,New York,p 1‐38、参照)。このウイルスは、良性腫瘍から悪性腫瘍にわたる病理状態と関連している。良性腫瘍においては、ウイルスゲノムはエピソームであるが、一方、悪性腫瘍においては、HPVのDNAは宿主染色体へ組み込まれる(Stoler,2000,Int.J.Gynecol.Path.19,16‐28)。
【0003】
パピローマウイルスは、カプシドタンパク質に囲まれた塩基対約7900の二本鎖環状DNAを有する。ゲノムは、E1乃至E7のリーディングフレームを含む初期(E)領域、及び後期(L)領域を有する。後期領域は、ウイルスカプシドを形成する構造タンパク質L1及びL2をコードし、一方、初期遺伝子は、核内で主に見られる制御タンパク質をコードする。E1は、ウイルスゲノムの維持と複製に重要である2種類のタンパク質をコードする。E2は、E6及びE7の転写を指令するウイルスプロモーターを制御する活性化タンパク質及び抑制タンパク質をコードする(Bechtold et al.,2003,J.Virol.77,2021‐2028)。E4にコードされたタンパク質は、細胞質内のケラチンネットワークに結合してこれを分断し、ウイルスの成熟化に際して重要な役割を担うことができる。E5タンパク質の役割に関しては依然として議論の余地があり、その発現は、ウイルスが宿主染色体へ組み込まれる際に失われることが多い。癌関連HPV遺伝子型のE6及びE7にコードされた遺伝子産物は、感染細胞の癌化に関与しており(Kanda et al.,1988,J.Virol.62,610‐613;Vousden et al.,1988,Oncogene Res.3,1‐9;Bedell et al.,1987,J.Virol.61,3635‐3640)、これは、これらのウイルスタンパク質が、各々、細胞腫瘍抑制遺伝子産物であるp53、及び網膜芽細胞腫(Rb)と結合できる能力によるものと推定される。HPV‐16の天然E6ポリペプチドのp53との結合に関与するアミノ酸残基は、118乃至122の残基(1番目のMet残基を+1とした場合、又は、好適に用いられるように、2番目のmet残基から始めた場合は、111乃至115の残基)であることが明らかにされており(Crook et al.,1991,Cell 67,547‐556)、HPV‐16の天然E7ポリペプチドのRbとの結合に関与するアミノ酸残基は、21乃至26の残基に位置する(Munger et al.,1989,EMBO J.8,4099‐4105;Heck et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,4442‐4446)。
【0004】
現在、100を超す種類のヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子型がクローン化され、配列決定されている(Stoler,2000,Int.J.Gynecol.Path 19,16‐28)。性器粘膜に感染するHPV遺伝子型は40種類のみであり、そのうちの約15種類が、女性に生殖器の悪性腫瘍を起こす危険をもたらす。より詳細には、最も蔓延している2種類の遺伝子型であるHPV‐16及びHPV‐18は、浸潤性子宮頚癌の70%超で検出され、一方、HPV‐31、HPV‐33、及びHPV‐45が合わせて、この症例の10%を占めている(Cohen et al.,2005,Science 308,618‐621)。
【0005】
子宮頚部をスクリーニングするプログラムは存在するが、国際癌研究機関のデータによると、世界中で毎年約50万人の女性が子宮頚癌と診断され、死亡者数は27万人を超えている。従来からの手法は依然として手術及び放射線療法であるが、最近の15年の間に、例えばペプチド主体のワクチン(Feltkamp et al.,1993,Eur.J.Immunol.23,2242‐2249)、ウイルス様粒子(VLP)ワクチン、DNAワクチン(Osen et al.,2001,Vaccine 19,4276‐4286;Smahel et al.,2001,Virology 281,231‐238)、及びウイルスベクターワクチン(EP462,187,Daemen et al.,2000,Gene Ther.7:1859‐1866; He et al.,2000,Virology 270,146‐161;Borysiewicz et al.,1996,Lancet 347,1523‐1527)など、新しくワクチンを用いた方策も設計されてきた。
【0006】
概念上、HPVワクチンには、予防及び治療という2つの手法がある。予防的手法では、ウイルス感染の防止、すなわち、主に中和抗体の誘発によってウイルスが宿主細胞へ侵入する前にこれを阻止することを目的とする。通常、予防ワクチンは、ウイルス表面で発現されるカプシドタンパク質を標的とする。ワクチンのほとんどは、遺伝子組換えによって作製されたL1タンパク質のVLP、又は最も蔓延しているHPV種のVLP混合物に基づいている。MerckとGlaxoSmithKline(GSK)は、最近、フェーズIIIの臨床試験に成功し、種特異的な子宮頚部感染の予防効力が100%であったとの報告を発表した。HPV‐16及びHPV‐18のVLPの混合物を投与した後の、発癌性のHPV‐31及びHPV‐45遺伝子型に対する干渉効果が報告されている(WO2004/056389)。しかし、VLPを主体とする予防ワクチンは、HPV感染によって発症した病理状態の軽減を引き起こすことは期待されない。
【0007】
治療的手法は、主に細胞免疫反応を誘発することにより、発症したHPV感染を治療し、HPVに関連する前癌及び癌の病理状態の軽減を引き起こすことを目的とする。通常、治療的方策は、HPVに起因する腫瘍細胞によって発現されるE6及び/又はE7腫瘍性タンパク質に対する免疫化に基づいている。現在までのところ、E6及びE7HPV抗原によってもたらされる免疫は遺伝子型に特異的であると考えられており、現在、臨床又は前臨床開発段階の治療ワクチンは、主に、最も蔓延している発癌性のHPV‐16に、及びそれよりは小さな規模でHPV‐18に焦点が当てられている。
【0008】
しかし、理想的な治療ワクチンは、最も蔓延しているHPV遺伝子型だけでなく、残りの30%の子宮頚癌に関与しているその他の蔓延度の低いHPV遺伝子型に対しても防御効果を発揮することが可能であるべきである。これは、各発癌性HPV遺伝子型に対する代替的なワクチン候補の開発によって達成することができる。しかし、この方策は、蔓延度の低いHPV遺伝子型に曝露した患者の数が限られているのに対して、監督官庁が求める臨床及び前臨床開発にかかるコストを考えた場合、あまり魅力的ではないと思われる。
【0009】
HPVは、その感染の慢性的かつ持続的な特性、高い蔓延性、及びHPVに誘発された癌の著しい罹患率のため、何年にもわたって地球規模での健康に対する重大な脅威であり続けることが考えられる。従って、より広い適用範囲を有し、最も蔓延しているHPV‐16遺伝子型に加えて、その他の蔓延度の低い潜在的に発癌性であるHPV遺伝子型を含む複数のHPV遺伝子型に対して防御及び/又は治療を行うことが可能なワクチンの開発が求められている。
【発明の開示】
【0010】
従って、本発明は、工業国並びに発展途上国において、パピローマウイルス感染又はパピローマウイルスに関連する前悪性及び悪性病変の予防と治療の改善についての著しい進歩に関する。
【0011】
本技術的課題は、請求項で明示する態様を提供することによって解決される。
【0012】
本発明のその他の及びさらなる局面、特徴、及び利点は、以下に述べる本発明の現時点で好ましい態様から明らかとなるであろう。これらの態様は、開示の目的で示されるものである。
【0013】
従って、第一の局面では、本発明は、HPV‐16以外の少なくとも1種類のパピローマウイルスに起因する感染若しくは病理状態を予防又は治療する薬剤を製造するための、HPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチド、又はHPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物の使用を提供する。
【0014】
より詳細には、本発明は、HPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチド、又はHPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物の、HPV‐16以外の少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスに起因する感染若しくは病理状態を治療する薬剤を製造するための使用に関する。本発明はさらに、HPV‐16以外の少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスに起因する感染若しくは病理状態を治療する方法にも関し、その方法には、HPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチド、又はHPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物を宿主生物へ投与することを含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この全出願を通して本明細書で用いる「1の(a)」及び「1の(an)」という用語は、状況に応じて特に他の意味を示さない限りにおいて、「少なくとも1の」、「少なくとも第一の」、「1若しくは2以上の」、又は「複数の」示された化合物若しくは工程、という意味で用いる。例えば、「1個の細胞(a cell)」という用語には、混合物を含む複数個の細胞が含まれる。より詳細には、少なくとも1の」、及び「1若しくは2以上の」は、1又は1よりも大きい数を意味し、特に1、2、又は3が好ましい。
【0016】
本明細書で用いる「及び/又は」という用語は、「及び」、「又は」、及び「該用語で接続された要素の全て若しくはその他のいずれかの組み合わせ」という意味を含む。
【0017】
本明細書で用いる「約」又は「おおよそ」という用語は、与えられた値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、そしてより好ましくは5%以内であるということを意味する。
【0018】
「アミノ酸」及び「残基」という用語は同意である。これらの用語は、天然の、非天然の、及び/又は合成のアミノ酸を意味し、光学異性体であるD体又はL体、修飾アミノ酸、及びアミノ酸類似体を含む。
【0019】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書において交換可能に用いられ、ペプチド結合によって結合した9若しくは10個以上のアミノ酸を含んでなるアミノ酸残基のポリマーを意味する。このポリマーは、直鎖状、分岐鎖状、又は環状であってよく、天然のアミノ酸及び/又はアミノ酸類似体を含んでよく、非アミノ酸で区切られていてもよい。一般的な表記として、アミノ酸ポリマーが長鎖である場合(例:50個超のアミノ酸残基)、ポリペプチド又はタンパク質と称することが好ましい。
【0020】
本発明に関連する範囲内において、「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」、及び「ヌクレオチド配列」という用語は、交換可能に用いられ、ポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)(例:cDNA、ゲノムDNA、プラスミド、ベクター、ウイルスゲノム、単離DNA、プローブ、プライマー、及びこれらのいずれかの組み合わせ)、若しくはポリリボヌクレオチド(RNA)分子(例:mRNA、アンチセンスRNA)、又は混合したポリリボヌクレオチド‐ポリデオキシリボヌクレオチドのいかなる長さでもよいポリマーを意味する。これらは、一本鎖若しくは二本鎖、直鎖状若しくは環状、天然若しくは合成のポリヌクレオチドを包含する。さらに、ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体などの非天然ヌクレオチドを含んでいてもよく(修飾の例として、US5,525,711、US4,711,955、EPA302175、を参照)、非ヌクレオチド成分で区切られていてもよい。ヌクレオチドの修飾は、存在する場合は、重合の前に付与しても後に付与してもよい。
【0021】
本明細書で用いる「含んでなる(comprising)」という用語は、生成物、組成物、及び方法の定義に用いる場合、その生成物、組成物、及び方法が、示された化合物又は工程を有するが、それ以外も除外しない、という意味であることを意図している。「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、その他の化合物又は工程で重要な意味を持つものは含まない、ということを意味するものとする。従って、列挙された化合物から本質的になる組成物は、微量不純物及び薬理学的に許容される担体は除外しない。「からなる(consisting of)」とは、微量成分であるその他の化合物又はわずかな構成要素であるその他の工程も、それ以上のものも除外する、ということを意味するものとする。例えば、ポリペプチドがアミノ酸配列「からなる」とは、そのポリペプチドが示されたアミノ酸配列以外のいかなるアミノ酸も含まない場合のことである。ポリペプチドがアミノ酸配列「から本質的になる」とは、そのアミノ酸配列に共に存在する追加的なアミノ酸残基が、数個、通常は約1乃至50個程度だけである場合のことである。ポリペプチドがアミノ酸配列を「含んでなる」とは、そのアミノ酸配列が、ポリペプチドの最終的なアミノ酸配列の少なくとも一部である場合のことである。そのようなポリペプチドは、数個から数百個の追加的なアミノ酸残基を有することができる。そのような追加的なアミノ酸残基は、とりわけ、ポリペプチドの輸送を担ったり、ポリペプチドの産生若しくは精製を促進したり、半減期を伸ばしたりすることなどができる。ヌクレオチド配列についても同じことが言える。
【0022】
本明細書で述べる、「単離された」という用語は、その天然の環境から精製若しくは取り出されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、又は核酸のことである。「精製された」という用語は、天然に共存する少なくとも1種類のその他の成分から分離されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、又は核酸のことである。
【0023】
「宿主細胞」という用語は、限定することなく、広い意味で理解されるべきであり、組織、器官、又は単離された細胞における特定の構成物に関する。このような細胞は、特有の種類の細胞、又は異なる種類の細胞の集団であってよく、培養細胞系、一次細胞、及び増殖性細胞を包含する。「宿主生物」という用語は、脊椎動物、特に、哺乳類種に属する種類のことであり、特に、家畜、スポーツ用動物、及びヒトを含む霊長類のことである。
【0024】
「HPV」は、「ヒトパピローマウイルス」を意味する。その分類は、ゲノムの関連性に基づいている。現在のところ100を超える数のHPV遺伝子型が確認されており、単離された時系列順に従って番号が付与されている。慣例的に、オープンリーディングフレームE6、E7、及びL1を有するゲノムの約2000ヌクレオチドの長さの部分での互いの同一性が90%未満となる場合、2個の単離物は異なった種類から成る。入手可能なヌクレオチド配列を並べ合わせることによって、系統樹が構築された(Van Ranst et al.,1992,J.Gen.Virol.73,2653;De Villiers et al.,2004,Virology 324,17‐27)。
【0025】
本明細書で用いる「初期ポリペプチド」という用語は、E1、E2、E3、E4、E5、E6、及びE7ポリペプチドから成る群より選択されるが、特にE6及びE7が好ましい、本技術分野で認識される非構造タンパク質のことである。本発明に関連して、本発明に従って用いられる組成物に含まれるか、又はその組成物に含まれる核酸によってコードされる1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドは、HPV‐16由来のものである。「由来する」という用語は、単離された、クローン化された、誘導体化された、又は関連した、という意味である。従って、本発明によると、1若しくは2種類以上のHPV‐16初期ポリペプチドは、天然初期HPV‐16ポリペプチド由来であってもよく、その誘導体由来であってもよい。「天然初期HPV‐16ポリペプチド」という用語は、自然源で見られる若しくはそこから単離することができるタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドのことであり、実験室で人の手によって人工的に修飾又は変性されたものとは異なる。そのような自然源としては、生物サンプル(例:HPV‐16の感染患者からの血液、血漿、血清、膣内液及び子宮頚管液、組織切片、生体組織、細胞学的サンプル)、培養細胞、並びに組換え物質(例:HPV‐16ウイルス又はゲノム、ゲノムライブラリー又はcDNAライブラリー、HPV‐16ゲノムの断片を含むプラスミド、組換え初期HPV‐16ポリペプチド、など)が挙げられる。従って、「天然初期HPV‐16ポリペプチド」という用語は、天然由来の初期HPV‐16ポリペプチド及びその断片を含むであろう。断片は、少なくとも9アミノ酸残基であることが好ましく、少なくとも1個の免疫原性エピトープを含んでなる。HPV‐16初期遺伝子/ポリペプチドのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は文献に記載されており、専門のデータバンク、例えばGenbankにおいて、各々、NC_01526及びK02718の受託番号で入手可能である。しかし、天然初期HPV‐16ポリペプチドはこれらの典型的な配列に限定されない。実際、アミノ酸配列は、別々のHPV‐16の単離物間で異なる場合があり、この自然の遺伝的変異の範囲も、本発明の範囲に含まれる。本発明で用いる適切な断片としては、実施例のセクションで例示するペプチドが挙げられ、特に、配列番号5のR9Fペプチド、配列番号9のE9Lペプチド、S9Sに対応するHPV‐16 E6ポリペプチドのペプチド(配列番号8)、及びT9Lに対応するHPV‐16 E7ポリペプチドのペプチド(配列番号10)である。このようなペプチドは単独で、又は組み合わせて(例:融合して)用いることができる。
【0026】
初期HPV‐16ポリペプチドの誘導体は、天然HPV‐16初期ポリペプチドに対して、以下に示すような1若しくは2箇所以上の修飾(改変)を含む。修飾は、変異及び/若しくは化学部分の付加(例:アルキル化、アセチル化、アミド化、リン酸化など)という方法、又は一部分の標識という方法によって行うことができる。変異としては、1若しくは2個以上のアミノ酸残基の欠失、置換、若しくは付加、又はこれらの可能性のいずれかの組み合わせが挙げられる。いくつかの修飾を意図する場合は、連続する残基及び/又は非連続の残基を対象にすることができる。修飾は、部位特異的変異誘発(例:フランス、Les Ullis、AmershamのSculptor(商標)インビトロ変異誘発システムを用いる)、PCR変異誘発、及びDNAシャフリングなど、当業者に公知である数多くの方法で行なうことができる。
【0027】
修飾された初期HPV‐16ポリペプチドは、有利に、その完全長アミノ酸配列、又はそのより短い断片(例:少なくとも9、20、30、40、50、100アミノ酸の長さ)にわたって、対応する天然初期HPV‐16ポリペプチドに対して高度のアミノ酸配列同一性を保持し、それは75%超、有利には80%超、望ましくは85%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、さらにより好ましくは97%超(例:配列同一性100%)である。2個のポリペプチド間の同一性パーセントは、これらの配列が共有する同一部位の数の関数であり、最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数と各ギャップの長さが考慮されている。本技術分野において、アミノ酸配列間の同一性パーセントを算出する様々なコンピュータプログラム及び数学アルゴリズムが入手可能であり、例えば、NCBIで入手可能なW2H HUSARソフトウェア及びBlastプログラム(例:Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25,3389‐3402;Altschul et al.,2005,FEBS J.272,5101‐5109)などがある。
【0028】
本発明に従って使用する修飾された初期HPV‐16ポリペプチドは、細胞性免疫反応を刺激する能力などの、天然初期HPV‐16ポリペプチドの免疫原性作用を保持することが望ましい。
【0029】
一つの態様では、組成物を用いて、HPV‐16以外の少なくとも1種類のHPV遺伝子型に起因する、特に肛門生殖器の管部、皮膚、若しくは口腔におけるHPVの感染及び/又は病理状態を治療する。一つの局面では、少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスのゲノムは、HPV‐16ゲノムのE6又はE7ポリペプチドをコードする部分とのヌクレオチド配列の同一性が、90%未満であり、有利には87%未満、そして望ましくは85%未満であるが、50%超であり、有利には55%超であり、そして望ましくは60%超である。HPVゲノムの部分間の同一性パーセントは、これらの2個の配列が共有する同一部位の数の関数であり、最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数と各ギャップの長さが考慮されている。本技術分野において、ヌクレオチド配列間の同一性パーセントを算出する様々なコンピュータプログラム及び数学アルゴリズムが入手可能である。そのようなHPV遺伝子型の代表例としては、HPV‐2、HPV‐6、HPV‐11、HPV‐13、HPV‐18、HPV‐30、HPV‐31、HPV‐32、HPV‐33、HPV‐35、HPV‐39、HPV‐40、HPV‐42、HPV‐44、HPV‐45、HPV‐51、HPV‐52、HPV‐56、HPV‐58、HPV‐59、HPV‐61、HPV‐64、及びHPV‐68が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
HPV‐16以外の少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスとしては、HPV‐31、HPV‐33、HPV‐35、HPV‐39、HPV‐51、HPV‐52、HPV‐56、HPV‐58、HPV‐59、及びHPV‐68V1、から成る群より選択され、特には、HPV‐31、HPV‐33、HPV‐35、HPV‐52、及びHPV‐58のいずれか、又はこれらの可能な組み合わせである。そのような組み合わせの代表例としては、HPV‐31と、HPV‐33、HPV‐35、HPV‐52、及びHPV‐58の少なくとも1つとの組み合わせ;HPV‐33と、HPV‐31、HPV‐35、HPV‐52、及びHPV‐58の少なくとも1つとの組み合わせ;HPV‐35と、HPV‐31、HPV‐33、HPV‐52、及びHPV‐58の少なくとも1つとの組み合わせ;HPV‐52と、HPV‐31、HPV‐33、HPV‐35、及びHPV‐58の少なくとも1つとの組み合わせ;HPV‐58と、HPV‐31、HPV‐33、HPV‐35、及びHPV‐52の少なくとも1つとの組み合わせ、が挙げられる。これらのHPV遺伝子型のヌクレオチド及びアミノ酸配列は文献に記載されており、表1に示すように、専門のデータバンクで入手可能である。
【0031】
表1:Genbankアクセション番号
【表1】

【0032】
別の態様では、本発明に従って使用される組成物は、HPV‐16 E6ポリペプチド、HPV‐16 E7ポリペプチド、若しくはHPV‐16 E6ポリペプチド及びHPV‐16 E7ポリペプチドの両方を、含んでなるか、又はコードする。上記で取り上げたHPV‐16 E6及びE7ポリペプチドの形質変化力に関する報告を考慮すると、各々、細胞腫瘍抑制遺伝子産物であるp53及びRbとの相互作用に関与する領域において変異された非発癌性の変異体である修飾されたHPV‐16 E6及び/又はE7ポリペプチドを用いることが好ましい。本発明は、p53への結合性が変性されたか若しくは少なくとも著しく低減されたHPV‐16 E6ポリペプチドの使用、及び/又は、Rbへの結合性が変性されたか若しくは少なくとも著しく低減されたHPV‐16 E7ポリペプチド(Murger et al.,1989,EMBO J.8,4099‐4105;Crook et al.,1991,Cell 67,547‐556;Heck et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,4442‐4446;Phelps et al.,1992,J.Virol.66,2148‐2427)の使用を包含する。本発明の目的に適した非発癌性であるHPV‐16 E6変異体は、おおよそ118位乃至おおよそ122位(天然HPV‐16 E6ポリペプチドの第一番目のメチオニン残基から始めた場合、又は、第二番目のメチオニン残基から始めた場合はおおよそ111位乃至おおよそ115位)に位置する1若しくは2個以上のアミノ酸残基が欠失しており、118乃至122の残基が完全に欠失していることが特に好ましい(CPEEK)。最も好ましい非発癌性であるHPV‐16 E6ポリペプチド変異体は、配列番号1に示すアミノ酸配列と相同的若しくは同一であるアミノ酸配列を含んでなるか、又は別の選択肢として本質的にそれからなるか、又は別の選択肢としてそれからなるものである。本発明の目的に適した非発癌性であるHPV‐16 E7変異体は、おおよそ21位乃至おおよそ26位(+1を天然HPV‐16 E7ポリペプチドの第一番目のアミノ酸とする)に位置する1若しくは2個以上のアミノ酸残基が欠失しており、21乃至26の残基が完全に欠失していることが特に好ましい(DLYCYE)。最も好ましい非発癌性であるHPV‐16 E7ポリペプチド変異体は、配列番号2に示すアミノ酸配列と相同的若しくは同一であるアミノ酸配列を含んでなるか、又は別の選択肢として本質的にそれからなるか、又は別の選択肢としてそれからなるものである。
【0033】
好ましい局面では、本発明で用いる1若しくは2種類以上のHPV‐16初期ポリペプチドは、MHCクラスI及び/若しくはMHCクラスIIによる提示を改善するために、並びに/又は、抗HPV免疫を刺激するために、さらに修飾される。HPV‐16 E6及びE7ポリペプチドは核タンパク質であり、その治療効果は、膜提示(membrane presentation)によって向上されることがすでに示されている(例えば、WO99/03885を参照)。従って、少なくとも1種類のHPV‐16初期ポリペプチドを修飾して細胞膜にアンカーされるようにすることが得策であろう。膜へのアンカリングは、膜アンカー配列(membrane‐anchoring sequence)をHPV‐16初期ポリペプチドへ組み込むことによって容易に達成され、天然ポリペプチドがそれを有さない場合は、分泌配列(すなわち、シグナルペプチド)が組み込まれる。HPV‐16 E6及び/又はE7ポリペプチドは、膜アンカー配列及び分泌配列を組み込むことによって修飾されることが好ましい。膜アンカー配列及び分泌配列は本技術分野で公知である。簡単に述べると、分泌配列は、膜提示された、又は分泌されたポリペプチドのN末端に存在し、その小胞体(ER)への移行を開始させる。配列は通常15乃至35の実質的に疎水性であるアミノ酸を含んでなるが、これらは、次に、ERに存在する特定のエンドペプチダーゼによって除去され、成熟ポリペプチドを生成する。膜アンカー配列は、通常、疎水性が高いという性質を持ち、ポリペプチドを細胞膜へアンカーする働きを有する(例えば、Branden and Tooze,1991,in Introduction to Protein Structure p.202‐214,NY Garland)。
【0034】
本発明に関連して用いることができる膜アンカー配列及び分泌配列の選択肢は膨大である。これらの配列は、狂犬病ウイルスの糖タンパク質、HIVウイルスの外被糖タンパク質、麻疹ウイルスのFタンパク質など、その配列を含んでなる、膜へアンカーされた及び/又は分泌されたいかなるポリペプチド(例:細胞ポリペプチド又はウイルスポリペプチド)からも得ることができ、あるいは合成されたものでもよい。本発明に従って用いられる初期HPV‐16ポリペプチドの各々に挿入された膜アンカー配列及び/又は分泌配列の由来は、共通であっても異なっていてもよい。分泌配列の挿入部位は、翻訳開始コドンの下流側のN末端が好ましく、膜アンカー配列の挿入部位は、例えば停止コドンのすぐ上流側などのC末端が好ましい。さらに、リンカーペプチドを用いて、本発明に用いる初期HPV‐16ポリペプチドへ分泌配列を結合することができ、又は、初期HPV‐16ポリペプチドを膜アンカー配列へ結合することもできる。リンカーペプチドは本技術分野で公知である。通常、リンカーペプチドは2乃至20個のアミノ酸を含み、アラニン、グリシン、プロリン、及び/又はセリンを含む。
【0035】
本発明で用いるHPV‐16 E6ポリペプチドは、麻疹ウイルスのFタンパク質の分泌シグナル及び膜アンカーシグナルを挿入することによって修飾されることが好ましく、特に、配列番号3に示すアミノ酸配列と相同的若しくは同一であるアミノ酸配列を含んでなるか、又は別の選択肢として本質的にそれからなるか、又は別の選択肢としてそれからなるポリペプチドが好ましい。任意に、若しくは組み合わせて、本発明で用いるHPV‐16 E7ポリペプチドは、狂犬病ウイルスの糖タンパク質の分泌シグナル及び膜アンカーシグナルを挿入することによって修飾されることが好ましく、特に、配列番号4に示すアミノ酸配列と相同的若しくは同一であるアミノ酸配列を含んでなるか、又は別の選択肢として本質的にそれからなるか、又は別の選択肢としてそれからなるポリペプチドが好ましい。
【0036】
別の、そしてより好ましい局面では、1若しくは2種類以上の免疫賦活薬であるポリペプチド、又はそのような免疫賦活薬であるポリペプチドをコードする1若しくは2種類以上の核酸を用いることによって、本発明で用いる組成物の治療効果を向上させることもできる。例えば、HPV‐16初期ポリペプチドを、カルレティキュリン(Cheng et al.,2001,J.Clin.Invest.108,669‐678)、マイコバクテリウム ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)熱ショックタンパク質70(HSP70)(Chen et al.,2000,Cancer Res.60,1035‐1042)、ユビキチン(Rodriguez et al.,1997,J.Virol.71,8497‐8503)、又はシュードモナス エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)外毒素Aの転座領域(translocation domain)(ETA(dIII))(Hung et al.,2001 Cancer Res.61,3698‐3703)などの細菌性毒素、などといったポリペプチドと結合させることが有利である場合もある。別の選択肢として、本発明で用いる組成物は、サイトカイン、又はサイトカインをコードする核酸をさらに含んでなることができる。適切なサイトカインとしては、これらに限定されないが、(IL)‐2、IL‐7、IL‐15、IL‐18、IL‐21、及びIFNgが挙げられ、特にIL‐2が好ましい。
【0037】
別の、そして好ましい態様によると、本発明に従って用いる組成物は、上記で示すように、1又は2種類以上のHPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる。好ましくは:
配列番号1若しくは配列番号3に示すアミノ酸配列と相同的若しくは同一であるアミノ酸配列を含んでなるか、又は別の選択肢として本質的にそれからなるか、又は別の選択肢としてそれからなるHPV‐16 E6ポリペプチド;及び、
配列番号2若しくは配列番号4に示すアミノ酸配列と相同的若しくは同一であるアミノ酸配列を含んでなるか、又は別の選択肢として本質的にそれからなるか、又は別の選択肢としてそれからなるHPV‐16 E7ポリペプチド、
を少なくともコードする核酸である。
【0038】
必要に応じて、本発明に用いる核酸分子は、例えばヒト宿主細胞若しくは人体など、特定の宿主細胞若しくは生物中でのHPV‐16初期ポリペプチドの発現が高レベルとなるように最適化することができる。通常、哺乳類宿主細胞中であまり使われないコドンに対応する1若しくは2個の「天然の」(例:HPV)コドンを、同じアミノ酸をコードするより頻繁に使用される1若しくは2個のコドンで置換することによってコドン最適化を行う。これは、従来の変異誘発又は化学合成技術(例:合成核酸を得る結果となる)によって達成することができる。一部分の置換でも発現の増加を達成することができるため、あまり使われないコドンに対応する天然コドンすべてを置換する必要はない。さらに、制限部位の導入に適応するために、最適化コドンの使用に厳密に沿った方法からの若干の変形も可能である。
【0039】
本発明で用いるHPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸は、宿主細胞又は生物中での発現に適した形態であることが好ましく、このことは、E6ポリペプチドをコードする核酸配列及び/又はE7ポリペプチドをコードする核酸配列が、宿主細胞又は生物中での発現に必要な1若しくは2種類以上の調節エレメントの支配下に置かれることを意味している。本明細書で用いる「調節エレメント」という用語は、複製、重複化、転写、スプライシング、翻訳、安定化、及び/又は核酸若しくはその誘導体の一つの(すなわち、mRNA)の宿主細胞への輸送を含む、任意の宿主細胞中での核酸の発現を可能にしたり、又はこれに寄与したり、又はこれを調節したりするいかなる配列をも意味する。調節エレメントの選択が、宿主細胞、ベクター、及び所望の発現レベルなどの要因に依存し得ることは、当業者には理解されるであろう。
【0040】
プロモーターは特に重要であり、本発明は、多くの種類の宿主細胞中で核酸の発現を指令する構成的プロモーター、及び特定の宿主細胞中のみでの発現、又は特定の現象若しくは外的要因(例:温度、栄養添加剤、ホルモン、又はその他のリガンド)に反応しての発現だけを指令する構成的プロモーターの使用を包含する。適切なプロモーターは文献に広く記載されており、より詳細には、RSV(ラウス肉腫ウイルス)、SV40(サルウイルス40)、CMV(サイトメガロウイルス)、及びMLP(主要後期プロモーター)プロモーターなどのウイルスプロモーターを挙げることができる。ポックスベクターに用いられる好ましいプロモーターとしては、これらに限定されないが、ワクシニアプロモーターである7.5K、H5R、TK、p28、p11、及びK1L、初期及び後期ポックスウイルスプロモーターの間であるキメラプロモーター、並びに、Chakrabarti et al.(1997, Biotechniques 23, 1094‐1097)、Hammond et al.(1997,J.Virological Methods 66,135‐138)、及び、Kumar and Boyle(1990,Virology 179,151‐158)、に記載のものなどの合成プロモーターが挙げられる。
【0041】
当業者であれば、核酸の発現を制御する調節エレメントが、宿主細胞又は生物中の、転写(例:ポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例:核移行シグナル配列)、プロセッシング(例:スプライシングシグナル)、安定化(例:イントロン、並びに非コード5’及び3’配列)、及び翻訳(例:三連リーダー配列(tripartite leader sequence)、リボソーム結合部位、シャイン‐ダルガノ配列、など)の適切な開始、調節、及び/又は終結のための追加的なエレメントをさらに含んでなることができることは理解されるであろう。
【0042】
別の好ましい態様によると、本発明に従って用いられる核酸は、ベクター中に含まれる。本明細書で用いる「ベクター」という用語は、ウイルスベクター並びに非ウイルスベクター(例:プラスミドDNA)を意味し、染色体外ベクター(例:エピソーム)、多コピーベクター、及び組み込みベクター(すなわち、宿主染色体に組み込まれるベクター)を含む。本発明に関連して特に重要であるのは、遺伝子治療ベクター(すなわち、核酸を宿主生物へ送達することができるベクター)、並びに種々の発現系に用いられる発現ベクターである。適切な非ウイルスベクターとしては、pREP4、pCEP4(Invitrogene)、pCI(Promega)。pCDM8(Seed,1987,Nature 329,840)、pVAX、及びpgWiz(Gene Therapy System Inc.;Himoudi et al.,2002,J.Virol.76,12735‐12746)などのプラスミドが挙げられる。適切なウイルスベクターは、種々の異なるウイルス(例:レトロウイルス、アデノウイルス、AAV、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、泡沫状ウイルス、など)から誘導することができる。本明細書で用いる「ウイルスベクター」という用語は、ベクターDNA並びにそれから産生されたウイルス粒子を包含する。ウイルスベクターは自己複製型であっても、又は遺伝子的な無能化による複製欠損型若しくは複製障害型であってもよい。本発明で用いる「自己複製型」という用語は、複製性の向上又は特定の宿主細胞中(例:腫瘍細胞)での選択的な複製のために遺伝子操作された選択的複製型、及び条件複製型のウイルスベクターを包含する。
【0043】
一つの局面では、本発明で用いるベクターは、アデノウイルスベクターである(概説として、”Adenoviral vectors for gene therapy”,2002,Ed D.Curiel and J.Douglas,Academic Pressを参照)。このベクターは、種々のヒト又は動物源から誘導することができ、アデノウイルス血清型1乃至51のいずれの血清型も用いることができる。特に好ましいのは、ヒトアデノウイルス2型(Ad2)、5型(Ad5)、6型(Ad6)、11型(Ad11)、24型(Ad24)、及び35型(Ad35)である。このようなアデノウイルスは、American Type Culture Collection(ATCC、メリーランド州、Rockville)から入手可能であり、数多くの刊行物の主題としてその配列、構成、及び作製方法が述べられており、当業者はこれらを利用することができる(例えば、US6,133,028;US6,110,735;WO02/40665;WO00/50573;EP1016711;Vogels et al.,2003,J.Virol.77,8263‐8271、を参照)。
【0044】
本発明で用いるアデノウイルスベクターは、自己複製型であってよい。自己複製型アデノウイルスの数多くの例が、当業者には容易に入手可能である(Hernandez‐Alcoceba et al.,2000,Human Gene Ther.11,2009‐2024;Nemunaitis et al.,2001,Gene Ther.8,746‐759;Alemany et al.,2000,Nature Biotechnology 18,723‐727)。例えば、E1A CR2領域中の欠失(例:WO00/24408)、並びに/又は、天然E1及び/若しくはE4プロモーターの組織特異的、腫瘍特異的、若しくは細胞状態に特異的なプロモーターによる置換により、野生型アデノウイルスゲノムから遺伝子操作することができる(例:US5,998,205、WO99/25860、US5,698,443、WO00/46355、WO00/15820、及びWO01/36650)。
【0045】
別の選択肢として、本発明で用いるアデノウイルスベクターは、複製欠損型である(例えば、WO94/28152;Lusky et al.,1998,J.Virol.72,2022‐2032参照)。好ましい複製欠損型のアデノウイルスベクターは、E1欠失がおおよそ459位乃至3328位、又はおおよそ459位乃至3510位にわたる(受託番号M73260でGeneBankに、及びChroboczek et al.,1992,Virol.186,280‐285に開示されるヒトアデノウイルス5型の配列を基準にして)E1欠損型である(例:US6,136,594、及びUS6,013,638)。アデノウイルスゲノムの一部(非必須のE3領域、又は他の必須であるE2、E4領域の全部若しくは一部)をさらに欠失させることによって、クローニング能力をさらに向上させることができる。核酸の挿入は、Chartier et al.(1996,J.Virol.70,4805‐4810)に記載のように、アデノウイルスゲノムのいずれかの部位における相同組換えによって行うことができる。例えば、HPV‐16 E6ポリペプチドをコードする核酸をE1領域に置き換えて、及びHPV‐16 E7ポリペプチドをコードする核酸をE3領域に置き換えて挿入することができ、又はその逆も可能である。
【0046】
別の、そして好ましい局面では、本発明で用いるベクターは、ポックスウイルスベクターである(例えば、Cox et al.in ”Viruses in Human Gene Therapy”Ed.J.M.Hos,Carolina Academic Pressを参照)。ポックスウイルス科に属するいかなる種類からも得ることができるが、特に、カナリアポックス、鶏痘、及びワクシニアウイルスであり、後者が好ましい。適切なワクシニアウイルスとしては、これらに限定されないが、コペンハーゲン株(Goebel et al.,1990,Virol.179,247‐266 and 517‐563;Johnson et al.,1993,Virol.196,381‐401)、ワイス株(Wyeth strain)、及び非常に弱毒化された修飾アンカラ(Ankara)(MVA)株(Mayr et al.,1975,Infection 3,6‐16)である。MVAゲノムの完全な配列の同定及びコペンハーゲンゲノムとの比較により、MVAゲノム中で7箇所の欠失(IからVII)が発生していることが正確に識別されており(Antoine et al.,1998,Virology 244,365‐396)、そのいずれをも用いて、HPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸を挿入することができる。
【0047】
発現に必要な核酸及び関連する調節エレメントをポックスウイルスゲノムへ挿入する基本技術は、数多くの文献に記載されており、当業者が入手可能である(Paul et al.,2002,Cancer gene Ther.9,470‐477;Piccini et al.,1987,Methods of Enzymology 153,545‐563;US4,769,330;US4,772,848;US4,603,112;US5,100,587、及びUS5,179,993)。通常は、ウイルスゲノムと挿入核酸を有するプラスミドとの両方に存在するオーバーラップ配列間の相同組換え(すなわち、所望の挿入部位を隣接させる)によって行われる。
【0048】
核酸は、組換えポックスウイルスが生存し、感染性を保持するように、ポックスウイルスゲノムの非必須遺伝子座位に挿入することが好ましい。非必須領域は、非コード遺伝子間領域か、又は、不活性化若しくは欠失がウイルスの増殖、複製、若しくは感染性を著しく悪化させることのない遺伝子である。例えば、ポックスウイルスゲノムの欠失された配列に対応する相補配列を有するヘルパー細胞系を用いることなどによって、欠損した機能がウイルス粒子産生の途中で提供されるのであれば、必須ウイルス遺伝子座位への挿入も考慮してよい。
【0049】
コペンハーゲンワクシニアウイルスを用いる場合、HPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸をチミジンキナーゼ遺伝子(tk)中へ挿入することが好ましい(Hruby et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80,3411‐3415;Weir et al.,1983,J.Virol.46,530‐537)。しかし、適切な挿入部位は他にもあり、例えば、赤血球凝集素遺伝子(Guo et al.,1989,J.Virol.63,4189‐4198)、K1L遺伝子座位、u遺伝子(Zhou et al.,1990,J.Gen.Virol.71,2185‐2190)、又は種々の自然欠失若しくは人工欠失が文献で報告されているワクシニアウイルスゲノムの左末端(Altenburger et al.,1989,Archives Virol.105,15‐27;Moss et al.1981,J.Virol.40,387‐395;Panicali et al.,1981,J.Virol.37,1000‐1010;Perkus et al.,1989,J.Virol.63,3829‐3836;Perkus et al.,1990,Virol.179,276‐286;Perkus et al.,1991,Virol.180,406‐410)などである。
【0050】
MVAを用いる場合、HPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸は、識別されている欠失部位I乃至VIIのいずれか、並びにD4R遺伝子座位に挿入することができるが、欠失部位II又はIIIへの挿入が好ましい(Meyer et al.,1991,J.Gen.Virol.72,1031‐1038;Sutter et al.,1994,Vaccine 12,1032‐1040)。
【0051】
鶏痘ウイルスを用いる場合、HPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸は、チミジンキナーゼ遺伝子内への挿入も考えられるが、ORF7及び9の間に位置する遺伝子間領域へ導入することが好ましい(例えば、EP314569、及びUS5,180,675を参照)。
【0052】
上述のように、本発明で用いる組成物は、サイトカイン発現核酸をさらに含んでなることができる。その運搬体としては、1若しくは2種類以上のHPV‐16初期ポリペプチドをコードするベクター、又は由来が同一であっても異なっていてもよい独立したベクターを用いることができる。
【0053】
本発明の好ましい態様は、7.5Kプロモーターの支配下に置かれたHPV‐16 E6ポリペプチド、7.5Kプロモーターの支配下に置かれたHPV‐16 E7ポリペプチド、及びH5Rプロモーターの支配下に置かれたヒトIL‐2遺伝子をコードするMVAベクターを含んでなる組成物の使用に関する。好ましくは、HPV‐16 E6ポリペプチド、HPV‐16 E7ポリペプチド、及びヒトIL‐2をコードする核酸は、MVAゲノムの欠失部位IIIに挿入される。
【0054】
さらに、本発明で用いる組成物は、動物/ヒトの体内での分解を防ぐため、及び/又は、宿主細胞若しくは生物へのベクターのトランスフェクション/感染を促進するために、脂質(例:カチオン性脂質、リポソーム、WO98/44143に記載の脂質)、ヌクレアーゼ阻害剤、ハイドロゲル、ヒアルロニダーゼ(WO98/53853)、コラゲナーゼ、カチオン性ポリマー、多糖類、キレート化剤(EP890362)などの1若しくは2種類以上の安定化剤を含むことができる。このような安定化剤は、単独で用いても組み合わせて用いてもよい(例:カチオン性脂質と中性脂質)。
【0055】
上述の核酸又はベクターを含んでなる感染性ウイルス粒子は、所定のプロセスで作製することができる。典型的なプロセスは:
(a)ウイルスベクターを適切な細胞系へ導入する工程と、
(b)前記細胞系を適切な条件下で培養し、前記感染性ウイルス粒子を産生させる工程と、
(c)産生されたウイルス粒子を前記細胞系の培養物から回収する工程と、
(d)場合によっては、前記の回収された感染性ウイルス粒子を精製する工程と、
を含んでなる。
【0056】
ウイルスベクターが複製欠損型である場合、感染性粒子は通常、トランス(in trans)で非機能性ウイルス遺伝子を提供する補完細胞系(complementation cell line)内で、又はヘルパーウイルスを用いることによって作製される。例えば、E1欠失アデノウイルスベクターを補完する適切な細胞系としては、293細胞(Graham et al.,1997,J.Gen.Virol.36,59‐72)、並びにPER‐C6細胞(Fallaux et al.,1998,Human Gene Ther.9,1909‐1917)が挙げられる。ポックスウイルスベクターの増殖に適した細胞はトリの細胞であり、最も好ましいのは、受精卵から得られたニワトリ胚から調製された初代ニワトリ線維芽細胞(CEF)である。
【0057】
感染性ウイルス粒子は、培養上清から、又は溶解後の細胞から(例:化学的手法、凍結/解凍、浸透圧ショック、機械的ショック、超音波処理、などによる)回収することができる。ウイルス粒子は、プラーク精製を連続して行うことで単離し、その後、本技術分野の技術(クロマトグラフィー法、塩化セシウム若しくはショ糖勾配上での超遠心)を用いて精製することができる。
【0058】
本発明は、特定の標的宿主細胞が優先的に標的とされるように修飾されたベクター又はウイルス粒子の使用も包含する(例えば、Wickam et al.,1997,J.Virol.71,8221‐8229;Arnberg et al.,1997,Virol.227,239‐244;Michael et al.,1995,Gene Therapy 2,660‐668;WO94/10323;WO02/96939、及びEP1146125、参照)。標的化されたベクター及びウイルス粒子に特有の特徴は、その表面に、細胞特異的マーカー(例:HPV感染細胞)、組織特異的マーカー(例:子宮頚部に特異的なマーカー)、並びにウイルス(例:HPV)抗原などの表面に露出した細胞性成分を認識してこれに結合する能力を有するリガンドが存在することである。適切なリガンドの例としては、HPVの抗原性ドメインに対する抗体又はその断片が挙げられる。リガンドは、通常、ウイルス表面に存在するポリペプチド中(例:アデノウイルス線維、ペントン、pIX、又はワクシニアp14遺伝子産物)へ遺伝子的に挿入される。
【0059】
本発明で用いる組成物は、適切ないかなる方法でも作製することができ、例えば、標準的な直接ペプチド合成技術(例:Bodanszky,1984 in Principles of peptide synthesis, Springer‐Verlag)、及び適切な宿主細胞中での組換えDNA技術が挙げられる。例えば、HPV‐16 E6及びE7初期ポリペプチドをコードする核酸は、HPV含有細胞(例:Caski細胞)、cDNA及びゲノムライブラリー、ウイルスゲノム、又はその核酸を含有することが公知の先行技術のいかなるベクターからも、従来の分子生物学又はPCR技術によって直接単離することができる。必要であれば、核酸はさらに、所定の変異誘発技術によって修飾することもできる。別の選択肢として、本発明で用いる核酸は、自動化プロセスによる化学合成によって作製することもできる(例:例えば、Edge,1981,Nature 292,756;Nambair et al.,1984,Science 223,1299;Jay et al.,1984,J.Biol.Chem.259,6311、に記載のように、重複合成オリゴヌクレオチド(overlapping synthetic oligonucleotide)からの構築)。当業者であれば、HPV‐16初期ポリペプチドを適切な宿主細胞中で作製するのに使用可能な数多くの発現システム、及び宿主細胞へベクター又は感染性ウイルス粒子を導入する方法に精通している。
【0060】
本発明に従う組成物の好ましい使用は、種々の疾患及び病理状態、特にその中でも、上記で挙げたHPV遺伝子型の少なくとも1種類に起因するHPV感染と関連するものを治療するための使用である。本発明は予防についても包含するが、特に治療に有用であり、例えば、HPV持続感染の治療、HPV感染患者に発症することのある前癌状態並びに癌状態の治療などである。HPVに関連する癌状態の例としては、子宮頚癌、肛門癌、及び口腔癌が挙げられる。HPVに関連する前癌状態は、子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)のグレード1、2、又は3を含む、軽度病変から重度病変に及ぶ。
【0061】
本明細書で述べるモダリティに従った宿主生物への投与により、本発明の組成物は治療を受けた宿主生物へ治療上の利点をもたらす。治療上の利点は、治療前と比較することにより数多くの方法で立証することができ、例えば、集団レベルでは、HPV感染の頻度の減少やHPV感染と通常関連する病理状態の進行の遅延(例:CIN病変若しくは子宮頚癌の進行の遅延)によって、又は、個人レベルでは、HPVウイルス血症の減少、及び/若しくはウイルス遺伝子発現の阻害(例:HPV E6若しくはE7を発現するRNAの減少)、及び/若しくは臨床成績の改善(例:HPVに関連する病変の安定化、部分的若しくは完全な回復)、及び/若しくは液性であれ、細胞性であれ、若しくはその両方であれ、抗HPV反応を高める結果となる免疫システムの刺激(例:抗HPV抗体及び/若しくはT細胞性免疫の産生)、及び/若しくは、従来の治療に対するその宿主生物の反応の改善によって立証することができる。例えば、本発明に従って用いられる組成物は、HPV陽性の女性への投与に続いて、(i)1若しくは2回以上の陽性の検出に続いてHPV陰性が検出された場合、(ii)重度であるCIN2/3グレードの病変が軽度であるCIN1グレードへ軽減された場合、又は(iii)浸潤性子宮頚癌の安定化若しくは軽減が見られた場合に、利点をもたらすことになる。治療後は、少なくとも6ヶ月間にわたる患者の定期的な経過観察を行うことが望ましい。
【0062】
HPVの存在は、生物学的液体中(例:膣内液又は子宮頚管液、血液、血清、血漿)、従来の子宮頚部サンプリングデバイスで採取した婦人科サンプル中、組織切片中において、及び生体組織中において確認することができる。サンプル中にあるHPVのDNA及びRNAの存在を評価する様々な方法が当業者にとって使用可能であり、例えば、LiPAシステム(WO99/14377; Labo Biomedical products、オランダ)、Pre Tect HPV Proofer(NorChip AS、ノルウェイ)、Hybrid Capture IIシステム(Digene Corp.、USA)、Thin Prepシステム(Cytyc Corporate、マサチューセッツ州、Marlborough)、及びPCR/RT‐PCRシステムなどである。適切なプライマーは、当業者に公知であり、又は対象であるHPV遺伝子型のヌクレオチド配列に基づいて容易に合成することができる。適切な抗体を用いた免疫原生アッセイ(例:ELISA)によって行ってもよい。HPVに起因する病変の軽減又は安定化は、一定の期間にわたって病変部の実際の大きさを測定することによって確認することができる。一定期間にわたる病変部の大きさは、直接観察(例:コルポスコピー)、放射線画像法、免疫画像法、又は超音波法を用いて評価することができる。さらに、種々のインビトロの方法を用いて宿主生物中のHPVに関連する病変の安定化又は軽減を予測することができ、例えば、異型細胞の存在を推定する細胞学的解析、及び組織学的解析などである。抗HPV免疫反応の刺激の推定は、免疫反応を誘発又は刺激するための組成物の使用に関連して下記で述べるような多くの通常の技術によって行うことができる。
【0063】
適切に、本発明の組成物は薬理学的に許容される媒体(vehicle)をさらに含んでなる。本明細書で用いる「薬理学的に許容される媒体」とは、医薬投与に適合するあらゆる担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、分散媒、被覆剤、抗菌剤及び抗真菌剤、並びに吸収遅延剤などを含むことを意図したものである。組成物に含まれる薬理学的に許容される媒体は、さらに、製造、及び凍結温度(例:−70℃、−20℃)、冷蔵温度(例:4℃)、若しくは室温(例:20℃)における、又は凍結乾燥状態での長期保存(すなわち、少なくとも1ヶ月)の条件下でその安定性を保持させるものでなければならない。
【0064】
本発明で用いる組成物は、ヒトへの使用に適するように生理的pH又はわずかに塩基性のpH(例:約pH7乃至約pH9の間)に適切に緩衝される。適切なバッファーとしては、リン酸バッファー(例;PBS)、重炭酸バッファー、及び/又はトリスバッファーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
さらに、組成物は、ヒト又は動物への使用に適した希釈剤を含んでもよい。そのような希釈剤は、等張性、低張性、又は弱い高張性であることが好ましく、イオン強度は比較的低いことが好ましい。代表例としては、滅菌水、生理食塩水(例:塩化ナトリウム)、リンゲル液、グルコース、トレハロース、若しくはショ糖の溶液、ハンクス液、及びその他の生理的平衡塩類水溶液(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,Lippincott,Williams&Wilkins、の最新版を参照)が挙げられる。
【0066】
組成物は、例えば、浸透圧モル濃度、粘度、透明性、色、無菌性、安定性、製剤溶解速度の改変又は維持、ヒト若しくは動物の生物内への放出若しくは吸収の改変又は維持、血液関門を通っての輸送若しくは特定の器官(例:肝臓)への透過の促進などを含む、所望の医薬的若しくは薬力学的特性を与えるために、その他の薬理学的に許容される賦形剤を含有してもよい。適切な賦形剤にはアミノ酸が含まれる。
【0067】
さらに、組成物は、ヒトの全身若しくは粘膜投与に適した従来のアジュバントと組み合わせて使用してもよい。
【0068】
組成物は、全身、局所、及び局部投与を含む種々の投与方法によって宿主生物へ投与することができる。適切な投与経路としては、これらに限定されないが、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、腫瘍内、血管内、及び動脈内注射が挙げられる。注射による投与は、従来のシリンジと針により、又は本技術分野で使用可能なその他の適切ないかなるデバイスによっても行うことができる。別の選択肢として、経口/経消化管、経鼻、気管内、肺内、膣内、又は直腸内経路など、粘膜経路によって投与することもできる。局所投与は、経皮的手法で行うこともできる(例:パッチなど)。本発明に関連しては、筋肉内及び皮下投与が好ましい経路である。投与は、1回の用量で行ってもよく、又は1日乃至1年といった範囲の所定の間隔を置いて1回若しくは数回投与を繰り返す用量で行ってもよい。投与間隔は、1週間乃至1ヶ月程度が望ましい。
【0069】
適切な投与量は、種々のパラメータ、特に、投与方法、使用する組成物、宿主生物の年齢、健康状態、及び体重、症状の性質及び程度、併用中の治療法の種類、治療の頻度、並びに/又は予防若しくは治療の必要性に応じて適応させることができる。適切な用量を決定するのに必要なさらに精密な計算は、関連する状況を考慮して、医師が日常的に行う。一般的な指針としては、ワクシニア含有組成物の適切な用量は、約10乃至10pfu(プラーク形成単位)の範囲であり、約10乃至10pfuが望ましく、一方、アデノウイルス含有組成物の場合は、約10乃至1013iu(感染単位)の範囲であり、約10乃至1011iuが望ましい。ベクタープラスミド主体の組成物は、10μg及び20mgの間の用量で投与することができ、有利には、100μg及び2mgの間である。タンパク質組成物は、10ng及び20mgの間の用量で投与することができ、特に好ましいのは、体重1kgあたり約0.1μg乃至2mgの用量である。
【0070】
好ましい態様では、本発明で用いる組成物は、上述のMVAベクターを含んでなり、5×10pfu乃至5×10pfuの用量で、1週間の間隔で3回、皮下経路で投与される。
【0071】
所望する場合、本発明は、1又は2種類以上の治療モダリティ(例:放射線、化学療法、及び/又は外科手術)と組み合わせて使用することができる。複合的な治療手法によって、より幅広い治療介入が患者に対して施される。一つの態様では、本発明の方法に先立って、又は好ましくはそれに続いて、HPVと関連する病変部位の外科切除を行うことができる(例:円錐切除)。別の態様では、本発明の方法に先立って、又はそれに続いて、放射線治療(例:ガンマ線)を行うことができる。当業者であれば、使用することができる適切な放射線治療のプロトコル及びパラメータを容易に構築することができる(例えば、Perez and Brady,1992,Principles and Practice of Radiation Oncology,2nd Ed.JB Lippincott Co.参照;当業者であれば容易に明らかであろう適切な適応及び変更を行う)。さらに別の態様では、本発明の方法又は使用は、HPV感染やHPVに関連する病理状態の治療又は予防に従来から用いられている1若しくは2種類以上の薬物を用いた化学療法と組み合わされる。
【0072】
別の態様では、1若しくは2種類以上のプライミング組成物(初回組成物)(priming composition)、及び1若しくは2種類以上のブースティング組成物(追加組成物)(boosting composition)の逐次投与を含んでなるプライム・ブースト治療モダリティ(prime boost therapeutic modality)に従って、本発明が用いられる。通常、プライミング組成物及びブースティング組成物は、少なくとも一つの共通する免疫原性ドメインを含んでなるかコードする異なる媒体を使用する。プライミング組成物をまず宿主生物へ投与し、続いて、1日乃至12ヶ月の範囲のある期間の後に、ブースティング組成物を投与する。さらに、プライミング組成物及びブースティング組成物は、同一の部位に投与してもよく、又は、同じ投与経路若しくは異なる投与経路により、別々の部位に投与してもよい。例えば、HPV‐16初期ポリペプチドを主体とするプライミング組成物を粘膜経路で投与することができ、一方、核酸ベクターを主体とするブースティング組成物を、好ましくは、例えばMVAベクターの皮下注射、DNAプラスミド及びアデノウイルスベクターの筋肉内注射などの注射によって投与する。
【0073】
本発明はさらに、HPV‐16以外の少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスに対する免疫反応を誘発又は刺激するための、1若しくは2種類以上のHPV‐16初期ポリペプチド又はHPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物の使用に関する。本発明はさらに、HPV‐16以外の少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスに対する免疫反応を哺乳類中で誘発又は刺激するための方法に関し、その方法は、1若しくは2種類以上のHPV‐16初期ポリペプチド又はHPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物を哺乳類に投与することを含んでなる。免疫反応は、HPV初期ポリペプチドに対する細胞免疫反応であることが好ましく、CD4+、CD8+、又はCD4+とCD8+の両方が媒介する免疫反応が好ましい。
【0074】
動物若しくはヒトである生物への投与によって抗HPV免疫反応を誘発又は刺激する能力は、本技術分野において標準的な種々のアッセイを用いて、インビトロ若しくはインビボで評価することができる。免疫反応の発生及び刺激を評価するのに使用可能な技術に関する一般的な説明に関しては、例えば、Coligan et al.(1992 and 1994,Current Protocols in Immunology;ed.J.Wiley & Sons Inc.,National Institute of Health)を参照のこと。細胞免疫の測定は、CD4+及びCD8+T細胞から誘導されるものを含む活性化されたエフェクター細胞によって分泌されるサイトカインプロファイルの測定(例:エリスポットによるIL‐10又はIFNg産生細胞の定量)、免疫エフェクター細胞の活性化状態の測定(例:古典的な[H]チミジン取り込み試験によるT細胞増殖のアッセイ)、感作された対象中での抗原特異的Tリンパ球のアッセイ(例:細胞毒性アッセイにおけるペプチド特異的な溶解)、例えば51Cr放出アッセイによって測定されるリンパ球が媒介する抗腫瘍細胞溶解作用、によって行うことができる。体液性反応を刺激する能力は、抗体結合及び/若しくは結合の競争によって(例えば、Harlow,1989,Antibodies,Cold Spring Harbor Pressを参照)、又はインビトロでの腫瘍特異的抗体の媒介による細胞増殖の阻害の発生(Gazit et al.,1992,Cancer Immunol.Immunother 35,135‐144)によって測定することができる。本発明の方法は、適切な腫瘍誘発剤(例:HPV‐16 E6及びE7を発現するTC1細胞)を接種した動物モデルでの、抗HPV免疫反応の誘発又は刺激を反映する抗腫瘍活性を測定することによって、さらに実証することもできる。
【0075】
本発明を実例を挙げる形で説明してきたが、使用した用語は、限定のためではなく説明のための言葉の性質を有するものであることを意図していることは理解されるべきである。上述の教示内容に照らして、本発明の多くの変更、及び変形が可能であることは明らかである。従って、添付の請求項の範囲内において、本発明が、本明細書で具体的に述べるものとは異なる方法で実施することが可能であることは理解されるべきである。
【0076】
上記で引用したすべての特許、刊行物、及びデータベース入力事項の開示内容は、それらの特許、刊行物、又は入力事項の各々が参照することで組み入れられると特に個々に示されているのと同様に、その全てが参照することで本明細書に特に組み入れられる。
【実施例】
【0077】
以下の例によって本発明を例証する。
【0078】
材料と方法
ウイルス
MVATG8042(図1)は、HPV‐16 E6及びE7ポリペプチドの膜にアンカーされた非発癌性変異体(E6TMF及びE7TMR)、並びにヒトIL‐2を発現する遺伝子組換えMVAウイルスである。MVATG8042は、WO99/03885及びUS6,884,786に記載されている。HPV‐16遺伝子配列は、両方がp7.5Kプロモーターの支配下に置かれ、一方、IL‐2遺伝子はH5Rプロモーターによって働き、これらすべてはMVAゲノムのexcision III中へ挿入される。
【0079】
MVATG8042のウイルス粒子は、従来の技術に従い、CEF細胞中で作製する。ウイルスストックは、注射投与の日まで−80℃で保存した。このウイルス懸濁液を急速解凍し、投与前に、pH8のTris‐HClを10mM、ショ糖を5%(w/v)、及びNaClを50mM含むTG0008バッファーで希釈して、体積100μl中のウイルス用量を5×10pfuとした。
【0080】
動物モデル
健康なメスのSPFマウスC57B1/6をCharles River(Les Oncins、フランス)より入手した。この動物を、一時間あたり少なくとも11回の換気を行う空調された専用個室で飼育した。温度は18乃至22℃、相対湿度は40乃至70%の範囲とした。12時間点灯、12時間消灯の周期となるように照明を自動制御した。動物は、実験期間を通して無菌飼料タイプのRM1(SDS、フランス)を自由に食べられるようにした。無菌水はボトルから自由に与えた。
【0081】
生後7週間のメスのマウスC57B1/6を、5×10pfuのMVATGN33又はMVATG8042により、第0日、第7日、及び第14日の3回、皮下投与で免疫を行った。皮下注射は、各回ごとに、動物の右側腹部の異なる場所に行った。最後の免疫化後、第21日に脾臓を採取した。新鮮な脾臓細胞を、本技術分野における従来の技術を用いて調製した。
【0082】
96ウェルのニトロセルロースプレートは、炭酸ナトリウムバッファー中の3μg/mlのモノクローナルラット抗マウスIFNg抗体(クローンR4‐6A2;Pharmingen、Cat Number 551216、100μl/ウェル)でコーティングした。プレートは、4℃で一晩、又は37℃で1時間インキュベートした。プレートは、10%FCS含有DMEMで3回洗浄し、各ウェルあたり100μlの10%FCS含有DMEMにより、37℃で2時間浸漬した。脾細胞は、10細胞/100μlの濃度で播種した。IL‐2を、6U/50μl/ウェルの濃度でウェルへ添加した(R&D Systems;10ng/ml)。ポジティブコントロールとして、コンカナバリンAを用いた(5μg/ml)。
【0083】
ペプチドはすべてNeosystemによって合成した。各ペプチドは、DMSO中に10mg/mlの濃度で溶解し、4℃で保存した。ペプチドは、5μg/mlの濃度で用いた。プレートは、5%CO下、37℃で48時間インキュベートした。
【0084】
1X PBSで1回、0.05%PBS‐Tweenで5回プレートの洗浄を行った。0.3μg/100μl/ウェルの濃度でビオチン化抗マウスIFNg(クローンXMG1.2、Pharmingen)を添加し、ゆっくり攪拌しながら室温で2時間インキュベートした。プレートを0.05%PBS‐Tweenで5回洗浄した。0.05%PBS‐Tween‐1%FCS中の1/5000に希釈したExtravidin AKP(Sigma、ミズーリ州、St.Louis)もウェルに添加した(100μl/ウェル)。プレートを、室温で45分間インキュベートし、その後、0.05%PBS‐Tweenで5回洗浄した。IFNg分泌は、バイオラッドキット(Biorad Kit)により確認した。各ウェルに100μlの基質(NBT+BCIP)を添加し、プレートを室温で0.5時間静置した。プレートは水で洗浄し、室温で一晩乾燥させた。スポットのカウントは、解剖顕微鏡を用いて行った。
【0085】
結果
異なるHPV遺伝子型からのE6及びE7アミノ酸配列は、HUSARマルチプルアラインメントプログラム(CLUSTAL)(https://genius.embnet.dkfz‐heidelberg.de/menu/cgi‐bin/w2h/w2h.start)を用いて整列した。
【0086】
H2制限ペプチド(H2‐restricted peptide)(Db又はKb制限)は、インターネット上で公開されている、ペプチドの結合性に関するプログラムBIMAS(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)を用いて識別した。HPV16‐E7タンパク質中に存在するR9Fペプチド(RAHYNIVTF:配列番号5)を参照ペプチドとして用いた。これは、本技術分野で、E7特異的CTLに認識される能力を持つことが報告されており、BIMASデータ中での結合性スコアは6であった。この値と等しいか又はこれを超すスコアを示した非HPV‐16 E6及びE7ペプチドのアミノ酸配列を、対応するHPV‐16 E6及びE7のペプチドの配列と整列させた。HPV‐16 E6及びE7ポリペプチドのアミノ酸配列と比べて1又は2個のアミノ酸の違いを示すペプチドを選択して、交差反応性分析にかけた。分析したのは:
SCVYCKKEL(HPV56 E6 Db):S9Lペプチド(配列番号6)
RCIICQRPL(HPV33、E6 HPV 58 E6 Db):R9Lペプチド(配列番号7)
SEYRHYQYS(HPV52、E6 Kb):S9Sペプチド(配列番号8)
ECVYCKQQL(HPV16、E6 Db):E9Lペプチド(配列番号9)
TDLHCYEQL(HPV31、E7 Kb):T9Lペプチド(配列番号10);及び、
ポジティブコントロールとして、RAHYNIVTF(HPV16、E7 Db):ペプチドR9F(配列番号5)、
の6種類のペプチドで、無関係であるペプチドをネガティブコントロールとした。
【0087】
例えば、HPV‐31及びHPV‐52 E7ポリペプチド中のペプチドT9Lは、結合性スコア20を示した。これは、対応するHPV‐16 E7ペプチドに対して1個のアミノ酸が異なる(TDLCYEQL)。HPV‐52 E6ポリペプチド中のペプチドS9Sは、結合性スコア15.8を示し、これは、対応するHPV‐16 E6ペプチドに対して1個のアミノ酸が異なる(SEYRHYYS)。
【0088】
交差反応性は、材料と方法、で述べたように、MVATG8042で免疫されたマウスから採取した脾細胞でのIFNgエリスポットアッセイによって評価した。結果を図2に示す。非組換えMVATGN33によるマウスの免疫では、Th1反応は誘起されない(IFNgの産生が基準レベルより低い)。一方、MVATG8042の免疫では、マウス中にマルチエピトープTh1反応が誘起される。予想通り、R9Fペプチドで免疫された脾細胞の培養物は、IFNgの産生を刺激するが、無関係のFluペプチドを脾細胞の培養物へ添加しても有意の影響は見られない(IFNgの産生が基準レベル)。しかし、驚くべきことに、S9S、E9L、及びT9Lペプチドなどの、公知のE7 H2制限R9Fペプチド以外のペプチドがCTLに認識されている。さらに、HPV‐31又はHPV‐52に特異的なペプチドによるT細胞の刺激は、CTLに認識されるR9F E7ペプチドによって発生する刺激と同程度に強力であると思われる。これらの結果は、MHCクラスI分子に基づいて得られたものである。その他の遺伝子型がMHCクラスII分子によって提示される可能性を排除することはできないであろう。
【0089】
さらに特筆すべきは、HPV‐31及びHPV‐52に特異的なT9Lペプチドの配列は、HPV‐33、35、及び58の配列の対応するペプチドの配列と、アミノ酸1個を除いて整合していることである。
【0090】
交差刺激実験
MVATG8042で免疫されたマウスから採取した脾細胞が他のHPV遺伝子型に特異的なペプチドによって刺激され得るかどうかを調べるために、交差刺激実験を行った。分析するペプチドの数を限定するために、E6又はE7タンパク質領域で、MHCクラスI分子との会合の可能性の高い領域(Db及びKb)をBimassソフトウェアを用いて識別した。HPV‐16 E6若しくはE7からの対応するペプチドに対して1、2、又は3個のアミノ酸が異なる一連のペプチドを分析した(表2参照)。ペプチドはすべて、Neosystem(フランス)により、免疫グレードレベルで合成した。各ペプチドは、DMSO中に10mg/mlの濃度で溶解し、4℃で保存した。未処理又はMVATG8042でワクチン接種された動物から採取したペプチドで刺激された脾細胞中で、10個の脾細胞あたりのIFNγ産生細胞の数を測定した。
【0091】
表2:分析したペプチドの一覧
【表2】

【0092】
簡単に述べると、メスのマウスC57B1/6を、5×10pfuのMVATGN33(1匹のマウスにネガティブコントロールとして)又はMVATG8042(3匹のマウスに)で皮下経路より3回免疫した。皮下注射は、各回ごとに、動物の右側腹部の異なる場所に行った。最後の免疫化後、第21日に脾臓を採取し、Cell Strainer(BD Falcon)を用いて新鮮な脾臓細胞を調製した。HPV‐16で免疫された脾細胞に対する種々のペプチドの交差刺激を、Mabtech ABのマウスIFNγエリスポットプラス(ELISPOTPLUS)キット又はマウスIL‐4エリスポットプラスキット(Mabtech、フランス)を製造元の説明書に従って使用することで、エリスポットにより評価した。プレートを水で洗浄し、室温で一晩乾燥させた。スポットのカウントは、エリスポットリーダー、Bioreader4000Pro‐X(BIOSYS‐Gmbh;Serlabo、フランス)を用いて行った。各ペプチドについて、スポットの数は、二つ組サンプルの平均から二つ組のバックグラウンドの平均を差し引いたものを表す。バックグラウンド値は、Kb制限された無関係のペプチドで得られたスポットの数である。少なくとも30個のスポットが見られ、その数がナイーブ動物での同じペプチドについて見られた値の2倍である場合に、非HPV‐16遺伝子型からのペプチドが、MVATG8042で免疫された動物からの脾細胞を交差刺激することができると見なした。
【0093】
注射を行っていないナイーブ動物でのペプチドの再刺激では、目立った細胞免疫反応の刺激は見られなかった。予想通りこれとは極めて対照的に、公知のE7 H2制限R9FペプチドによるMVATG8042で免疫されたマウスから採取した脾細胞の再刺激では、数多くのスポットが見られた。しかし、驚くべきことには、R9Fペプチド以外のペプチド、特にT9L(HPV‐31)、T9F(HPV‐31)、T9S(HPV‐35)、及びT9Y(HPV‐52)ペプチドがCTLによって認識されている。
【0094】
すべてを合わせると、これらのデータは、HPV‐16 E6及び/若しくはE7ポリペプチド、又は発現ベクター(例:MVATG8042)によるワクチン接種が、蔓延度の低い発癌性HPVの遺伝子型である31、33、35、及び52の感染を治療するのにも効果を示す可能性があるという肯定的な傾向を示している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】MVATG8042を示す図である。
【図2】E7/E6特異的IFNgエリスポットアッセイ(平均/グループ)を示す図である。グループは、使用した免疫原、MNA N33(白棒グラフ)又はMVATG8042(灰色棒グラフ)によって区別される。結果は、免疫されたグループのメジアンとして表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチド、又はHPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物の、HPV‐16以外の少なくとも1種類のパピローマウイルスに起因する感染若しくは病理状態を予防又は治療する薬剤を製造するための使用。
【請求項2】
HPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチド、又はHPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物の、HPV‐16以外の少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスに起因する感染若しくは病理状態を治療する薬剤を製造するための使用。
【請求項3】
HPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチド、又はHPV‐16の1若しくは2種類以上の初期ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物の、HPV‐16以外の少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスに対する免疫反応を誘発するための使用。
【請求項4】
前記のHPV‐16以外の少なくとも1種類のヒトパピローマウイルスが、HPV‐31、HPV‐33、HPV‐35、HPV‐39、HPV‐51、HPV‐52、HPV‐56、HPV‐58、HPV‐59、及びHPV‐68V1から成る群より選択される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記の1若しくは2種類以上のHPV‐16初期ポリペプチドが、E6ポリペプチド、E7ポリペプチド、又はE6ポリペプチド及びE7ポリペプチドの両方である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記のHPV‐16 E6及び/又はE7ポリペプチドが、非発癌性変異体である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記のHPV‐16 E6ポリペプチドの非発癌性変異体が、配列番号1に示すアミノ酸配列と相同的又は同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記のHPV‐16 E7ポリペプチドの非発癌性変異体が、配列番号2に示すアミノ酸配列と相同的又は同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記のHPV‐16 E6及び/又はE7ポリペプチドが、細胞膜へアンカーされるように、膜アンカー配列及び分泌配列を組み込むことによって修飾される、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記の膜アンカー配列及び/又は分泌配列が、狂犬病ウイルス糖タンパク質、HIVウイルス外被糖タンパク質、又は麻疹ウイルスFタンパク質から得られる、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記のHPV‐16 E6ポリペプチドが、配列番号3に示すアミノ酸配列と相同的又は同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記のHPV‐16 E7ポリペプチドが、配列番号4に示すアミノ酸配列と相同的又は同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記の組成物が、サイトカイン又はサイトカインをコードする核酸をさらに含んでなる、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記のサイトカインがIL‐2である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記の1若しくは2種類以上のHPV‐16初期ポリペプチドをコードする核酸が、ベクター内に含まれる、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記のベクターがワクシニアベクターである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記のワクシニアベクターがMVAベクターである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記のMVAベクターが、7.5Kプロモーターの支配下に置かれたHPV‐16 E6ポリペプチドをコードする核酸、7.5Kプロモーターの支配下に置かれたHPV‐16 E7ポリペプチドをコードする核酸、及びH5Rプロモーターの支配下に置かれたヒトIL‐2遺伝子を含んでなる、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記のHPV‐16 E6ポリペプチド、前記のHPV‐16 E7ポリペプチド、及び前記のヒトIL‐2遺伝子をコードする核酸が、MVAゲノムの欠失部位IIIへ挿入される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記の病理状態が、HPVの持続感染、前癌若しくは癌状態である、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記のHPVと関連する癌状態が、子宮頚癌、肛門癌、又は口腔癌である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記のHPVと関連する前癌状態が、子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)のグレード1、2、又は3である、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記の組成物が、皮下経路又は筋肉内経路から投与される、請求項1乃至22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記の組成物が、5×10pfu乃至5×10pfuのワクシニアベクターを含んでなる用量で投与される、請求項20乃至23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記の組成物が、請求項17、18、又は19に記載のようにMVAベクターを含んでなり、5×10pfu乃至5×10pfuの用量で、1週間の間隔をおいて皮下経路から3回投与される、請求項24に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−534332(P2009−534332A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505767(P2009−505767)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003368
【国際公開番号】WO2007/121895
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】