説明

パラジウム担持セピオライト触媒およびβ−アミノ酸類の製造方法

【課題】工業的に重要なβ−アミノ酸類の簡便で経済的で生産性の良い製造方法を提供する。
【解決手段】アミン類とアクリル酸エステル類とを反応させて、一般式(3)で表されるβ−アミノ酸類を製造する際に、パラジウム担持セピオライトから成るβ−アミノ酸類製造用触媒を用いる。


(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数が1から10のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。あるいは、RとRが結合する窒素原子と共に置換されていても良い環を形成していても良い。ただしRとRが同時に水素原子ではない。Rは炭素数1から10のアルキル基を示し、Rは水素原子または置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジウム担持セピオライトから成るβ−アミノ酸類製造用触媒およびそれを用いたβ−アミノ酸類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
β−アミノ酸類は、薬理・生理活性を示す化合物に多くみられ、また染料、ファインケミカル、医農薬等の中間体として工業的に重要である。
【0003】
このようなβ−アミノ酸類の製造方法として、反応式(I)に示されるアミン類(1)とアクリル酸エステル類(2)とのヒドロアミノ化が知られている。
【0004】
【化1】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数が1から10のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。あるいは、RとRが結合する窒素原子と共に置換されていても良い環を形成していても良い。ただしRとRが同時に水素原子ではない。Rは炭素数1から10のアルキル基を示し、Rは水素原子または置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基を示す。)。
【0005】
反応式(I)のヒドロアミノ化の触媒としては例えば、ビス(トリフラート)銅(II)や三塩化インジウム等のルイス酸触媒、ゼオライト等の固体酸触媒、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、ブチルリチウム等の強塩基を触媒とした例が知られている(非特許文献1)。
【0006】
また、貴金属錯体を触媒とした例も知られており、強酸条件下でパラジウム塩を使用する例やロジウム錯体を用いる例がある(非特許文献2)。
【0007】
しかしながら、ルイス酸触媒では廃液が強酸性であり、しかも金属含有廃液の処理や、触媒の回収の必要があるという欠点がある。
【0008】
強塩基触媒では、廃液が強塩基性であり、処理負担が大きい。
【0009】
貴金属錯体は、触媒が高価であり、工業化に際しては触媒の回収が重要であるが、効率の良い回収方法は未解決である。さらに、例えばパラジウム塩を用いる場合、パラジウム塩が反応の進行とともに、金属として反応器内に析出してしまうため、触媒活性が経時的に低下し、パラジウムのロスが経済的な負担となる。
【0010】
【非特許文献1】Chemical Review,98巻,675ページ,1998年
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society,122巻,9546ページ,2000年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は薬理・生理活性を示す化合物に多くみられ、また染料、ファインケミカル、医農薬等の中間体として工業的に重要なβ−アミノ酸類の、上記のような欠点の無い簡便で経済的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、パラジウム担持セピオライトを触媒として用いることにより、効率よく反応式(I)のヒドロアミノ化が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明はパラジウム担持セピオライトから成ることを特徴とする、β−アミノ酸類製造用触媒である。
【0014】
また本発明は、一般式(1)
【0015】
【化2】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数が1から10のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。あるいは、RとRが結合する窒素原子と共に置換されていても良い環を形成していても良い。ただしRとRが同時に水素原子ではない。)で表されるアミン類と一般式(2)
【0016】
【化3】

(式中、Rは炭素数1から10のアルキル基を示し、Rは水素原子または置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基を示す。)で表されるアクリル酸エステル類とを反応させて一般式(3)
【0017】
【化4】

(式中、R、R、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。)
で表されるβ−アミノ酸類を製造する際に、上述のβ−アミノ酸類製造用触媒を用いることを特徴とする製造方法である。以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明で用いるセピオライトは、粘土鉱物の一つであり、化学式は、MgSi1230(OH)(HO)・nHOで表される。ここで(HO)は結合水を、nHOは沸石水を表す。セピオライトの結晶構造はMgO6配位8面体シートの頂点酸素を両側から挟むようにSiO4面体の酸素と共有して、2:1層を形成し、そのシートが周期的に頂点方向を逆転させてつながり、図1のような断面が長方形のトンネル構造を形成している。トンネル壁に面して存在するMg2+には2分子の水が配位して6配位8面体が完成している。
【0019】
本発明で用いるセピオライトはそのまま使用してもよいが、触媒活性が高い点で、あらかじめ活性化処理を行うことが望ましい。活性化処理としては酸処理、塩基処理、熱処理、真空処理、還元処理等が例示できる。
【0020】
酸処理とは、酸性を示す溶液に浸して撹拌し、一定時間後に蒸留水等で洗浄して酸性溶液を除去する処理である。酸性溶液は特に制限はなく、無機酸または無機酸塩、有機酸または有機酸塩の溶液を用いることができる。無機酸または無機酸塩として具体的には塩酸、硫酸、硝酸、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等が、有機酸または有機酸塩としてギ酸、シュウ酸、酢酸、フルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、トルエンスルホン酸アンモニウム等が例示できる。好ましくは無機酸およびその無機酸塩である。酸性溶液のpHは、2〜7が望ましく、2未満では、セピオライト骨格を損傷する恐れがある。酸性溶液に浸す際の温度は、特に制限はなく、通常0℃〜300℃、好ましくは20℃〜220℃である。酸処理の時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。
【0021】
塩基処理とは、塩基性を示す溶液に浸して撹拌し、一定時間後に蒸留水等で洗浄して塩基性溶液を除去する処理である。塩基性溶液は特に制限はなく、無機塩基または有機塩基の溶液を用いることができる。無機塩基として具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸第二水素ナトリウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸セシウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、アンモニア等が例示できる。有機塩基としてはメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、イミダゾール、ピロール、モルホリン等が例示できる。好ましくは無機塩基である。パラジウムの担持が容易になることから塩基性溶液のpHは、9〜14が望ましい。塩基性溶液に浸す際の温度は、特に制限はなく、通常0℃〜300℃、好ましくは20℃〜220℃である。塩基処理の時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。
【0022】
熱処理の処理温度は通常50℃〜500℃、好ましくは100℃〜400℃である。熱処理の時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。熱処理する際の雰囲気は空気中、酸素および窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが例示できるが、空気中が好ましい。
【0023】
真空処理の処理温度には特に制限はなく、通常0℃〜500℃、好ましくは50℃〜250℃である。また、処理時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。
【0024】
還元処理とは、セピオライトを使用する前にあらかじめ水素気流中で加熱処理することである。処理温度は通常50℃〜500℃、好ましくは100℃〜400℃である。処理時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。水素ガスは、不活性ガスで希釈して水素含有混合ガスとしても良い。不活性ガスは特に限定されないが例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム等が挙げられる。水素含有混合ガス中の水素分圧は、処理温度にもよるが、最低0.1%あれば良い。
【0025】
また、液相中で、還元剤を用いて行うこともできる。還元剤としてはヒドラジン、ヒドロキシアミン、ヒドロキシアミン塩酸塩、ヒドロキシアミン硫酸塩、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等が例示できる。処理温度は、0℃〜150℃好ましくは10℃〜110℃である。処理時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。
【0026】
触媒活性が高い点で、酸処理および塩基処理がさらに望ましい。
【0027】
次に、パラジウムをセピオライトに担持する方法を説明する。
パラジウム源は特に限定されないが、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酸化パラジウム等のパラジウム塩類、パラジウムアセチルアセトナート、ジクロロビスベンゾニトリルパラジウム、ジクロロビスアセトニトリルパラジウム、ジクロロビスアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム等のパラジウム錯体類などを用いることができる。これらのうち、担持操作が容易であり、触媒活性が高い点で、パラジウム錯体類が好ましく、さらに好ましくはテトラアンミンパラジウム塩化物が用いられる。
【0028】
セピオライトにパラジウムを担持する方法に特に制約はなく、通常用いられるイオン交換法、含浸担持法および共沈法を用いることができるが、触媒活性が高い、操作が容易である、触媒調製の再現性が高い、等の点でイオン交換法が好ましい。
【0029】
イオン交換法で用いるパラジウム源を含む溶液の溶媒に特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の有機溶媒、水を用いることができる。これらの溶媒は単独で使用するのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。パラジウム源の溶解性が高く、取り扱いが容易な点で、水が望ましい。また、パラジウムの濃度は、特に制限されないが、通常0.001重量%〜20重量%、好ましくは0.05重量%〜10重量%である。
【0030】
イオン交換の時間に特に制限はないが、イオン交換率が高められることから、1時間〜100時間が好ましい。
【0031】
イオン交換の温度は特に制限はないが、イオン交換率が高められることから、好ましくは0℃〜100℃、さらに好ましくは20℃〜80℃である。
【0032】
イオン交換後は常法に従って、デカンテーション、濾別、加熱または減圧加熱等の操作で溶媒を除去する。溶媒を除去後の乾燥は加熱乾燥、減圧乾燥等を用いることができる。焼成を行う場合には酸素、または窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した酸素あるいは空気の雰囲気下100℃〜1000℃で行うと良い。
【0033】
本発明においては、上記のパラジウム担持セピオライト触媒に、目的物の製造に差し支えない範囲で、パラジウム以外の元素がさらに担持されていてもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、サマリウム、ユウロピウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、テルルなどが挙げられる。これらの元素もパラジウムと同様に、塩類または錯体を用いてイオン交換法、含浸担持法および共沈法を用いて、担持することができる。
【0034】
以上のようにして得られるパラジウム担持セピオライトのパラジウム含有率は特に制限されないが、経済性と生産効率の点から0.001wt%〜50wt%、好ましくは0.01重量%〜20重量%である。
【0035】
このパラジウム担持セピオライトは、β−アミノ酸類製造用触媒として用いることができ、例えばアミン類とアクリル酸エステル類とのヒドロアミノ化反応によりβ−アミノ酸類を製造することができる。このときのアミン類やアクリル酸エステル類には特に限定はないが、例えば一般式(1)で表されるアミン類と一般式(2)で表されるアクリル酸エステル類とのヒドロアミノ化により一般式(3)で表されるβ−アミノ酸類を得ることができる。
【0036】
一般式(1)および(2)において、R、RおよびRで示される炭素数1から10のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、デシル基などが例示できる。
【0037】
およびRで示される置換されていてもフェニル基としては、具体的には、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−シアノフェニル基、m−シアノフェニル基、p−シアノフェニル基、o−アセチルフェニル基、m−アセチルフェニル基、p−アセチルフェニル基、o−エチルカルボニルフェニル基、m−エチルカルボニルフェニル基、p−エチルカルボニルフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、メシチル基などが例示できる。
【0038】
また、RとRが結合する窒素原子と共に置換されていてもよい環を形成しても良く、その際のアミン類(1)としては、具体的には、エチレンイミン、アゼチジン、ピロール、2−メチルピロール、3−メチルピロール、2−トリフルオロメチルピロール、3−トリフルオロメチルピロール、2−ジフルオロメチルピロール、3−ジフルオロメチルピロール、ピロリン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、3−メチルピロリジン、2−メトキシメチルピロリジン、3−メトキシメチルピロリジン、2−トリフルオロメチルピロリジン、3−トリフルオロメチルピロリジン、2−トリフルオロメトキシメチルピロリジン、3−トリフルオロメトキシメチルピロリジン、2−ジフルオロメチルピロリジン、3−ジフルオロメチルピロリジン、2−ジフルオロメトキシメチルピロリジン、3−ジフルオロメトキシメチルピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等があげられる。
【0039】
また、4−メチルイミダゾール、5−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2,5−ジメチルイミダゾール、4,5−ジメチルイミダゾール、2−メチル−4−フェニルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、2−トリフルオロメチルイミダゾール、4−トリフルオロメチルイミダゾール、5−トリフルオロメチルイミダゾール、2,4−ビス(トリフルオロメチル)イミダゾール、2,5−ビス(トリフルオロメチル)メチルイミダゾール、4,5−ビス(トリフルオロメチル)メチルイミダゾール、2−トリフルオロメチル−4−フェニルイミダゾール、4−トリフルオロメチル−2−フェニルイミダゾール、2−ジフルオロメチルイミダゾール、4−ジフルオロメチルイミダゾール、5−ジフルオロメチルイミダゾール、2,4−ビス(ジフルオロメチル)イミダゾール、2,5−ビス(ジフルオロメチル)メチルイミダゾール等があげられる。
【0040】
また、4,5−ビス(ジフルオロメチル)メチルイミダゾール、2−ジフルオロメチル−4−フェニルイミダゾール、4−ジフルオロメチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、5−フェニルイミダゾール、2,4−ジフェニルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,3,5,6−テトラメチルピペリジン、2−トリフルオロメチルピペリジン、3−トリフルオロメチルピペリジン、4−トリフルオロメチルピペリジン、2,6−ビス(トリフルオロメチル)ピペリジン、2−ジフルオロメチルピペリジン、3−ジフルオロメチルピペリジン、4−ジフルオロメチルピペリジン、2,6−ビス(ジフルオロメチル)ピペリジン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2−トリフルオロメチルピペラジン、2,6−ビス(トリフルオロメチル)ピペラジン、等があげられる。
【0041】
また2−ジフルオロメチルピペラジン、2,6−ビス(ジフルオロメチル)ピペラジン、2−ピリミジルピペラジン、3−ピリミジルピペラジン、2−フェニルピペラジン、3−フェニルピペラジン、2−ベンジルピペラジン、3−ベンジルピペラジン、4H−1,4−オキサジン、モルホリン、4H−1,4−チアジン、インドール、2−メチルインドール、3−メチルインドール、2−メトキシインドール、3−メトキシインドール、2−トリフルオロメチルインドール、3−トリフルオロメチルインドール、2−トリフルオロメトキシインドール、3−トリフルオロメトキシインドール、2−ジフルオロメチルインドール、3−ジフルオロメチルインドール、2−ジフルオロメトキシインドール、3−ジフルオロメトキシインドール、インドリン、イソインドール、イソインドリン、1H−インダゾール、2H−インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾリン、カルバゾール、フェノキサジン、フェノチアジンなどが例示できる。
【0042】
で示される置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基等のアルキル基、または、これらのアルキル基がハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、3−ブロモプロピル基、フルオロメチル基、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、クロロジフルオロメチル等が例示できる。医薬品および農薬等の中間体として有用な点で、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0043】
本発明の製造方法の反応形式は特に制限されず、任意の反応形式で行うことが可能であり、例えば、固定床気相流通式、固定床液相流通式、または懸濁床回分式で行うことができる。操作が容易な点で、懸濁床回分式が望ましい。
【0044】
懸濁床回分式で行う場合は、溶媒中または無溶媒でも行うことができる。溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、トリフルオロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、トリグライム等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N−メチルピロリドン等のアミド類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。操作性の点からベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N−メチルピロリドン等のアミド類が好ましい。
【0045】
反応温度は特に制限されないが、0℃〜300℃が望ましく、収率が良い点で、20℃〜250℃がさらに望ましい。反応圧力は特に制限されないが通常、絶対圧で0.01MPa〜10MPa、好ましくは0.1MPa〜2MPaである。反応時間は特に制限されないが、1分〜100時間が望ましく、収率良く得られる点で、5分〜50時間がさらに望ましい。
【0046】
原料濃度は、用いる溶媒および原料の溶解度によるが、生産効率の点から、0.0001g/L以上が望ましく、0.001g/L以上がさらに望ましい。
【0047】
反応中の雰囲気は、特に限定されないが、触媒の失活を避けるため、空気と水分を極力除くことが望ましく、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で反応が行うことが好ましい。
【0048】
使用する触媒の量は特に制限はなく、生産効率の点から、原料であるアミン類1モルに対してパラジウム金属が0.000001〜20.0モル%であり、好ましくは0.00001〜10.0モル%、より好ましくは0.0001〜5.0モル%となるようにパラジウム担持セピオライト触媒を使用するとよい。
【0049】
アミン類(1)とアクリル酸エステル類(2)のモル比は、1:5から5:1が望ましく、収率の点で、1:2から2:1がさらに望ましい。
【発明の効果】
【0050】
本発明は染料、ファインケミカル、医薬品および農薬等の中間体として工業的に重要なβ−アミノ酸類を簡便で経済的な製造方法を提供するものであり、工業的にも非常に有用である。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1 パラジウム担持セピオライト触媒の製造
蒸留水80mLに塩化アンモニウム10gを溶解した酸性溶液に和光純薬社製のセピオライト2.0gを懸濁させ、室温で48時間撹拌した。この懸濁液を吸引濾過と洗浄を繰り返して、酸性処理したセピオライトを得た。次にパラジウムテトラアンミンパラジウム塩化物0.20gを蒸留水80mLに溶解したパラジウム水溶液に上記のように処理したセピオライト2gを懸濁させ、室温で48時間撹拌した。この懸濁液を吸引濾過して110℃で乾燥することによりパラジウム担持セピオライト触媒を得た。パラジウム含有量は1.3wt%であった。
【0053】
実施例2
アクリル酸ブチルを1.53g(12mmol)とインドリン1.21g(10mmol)をトルエン5mLに添加し、実施例1で調製したパラジウム担持セピオライト触媒0.1gを懸濁させ、5気圧のアルゴンガスで反応系内を置換した。反応器を100℃に昇温して3時間反応させた。反応後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、3−(1−インドリニル)プロピオン酸ブチルの生成率は40%、空時収量は3200g/kg−cat・hであった。
【0054】
実施例3
蒸留水100mLに水酸化ナトリウム10gを溶解した塩基性溶液に和光純薬社製のセピオライト2.0gを懸濁させ、密閉したオートクレーブに導入して200℃で6時間撹拌した。この懸濁液を吸引濾過と洗浄を繰り返して、塩基性処理したセピオライトを得た。
【0055】
テトラアンミンパラジウム塩化物0.2gを蒸留水80mLに溶解したパラジウム水溶液に上記のように処理したセピオライト2.0gを懸濁させ、室温で48時間撹拌した。この懸濁液を吸引濾過して110℃で乾燥することによりパラジウム担持セピオライト触媒を得た。パラジウム含有量は4.4wt%であった。
【0056】
実施例4
アクリル酸ブチルを1.53g(12mmol)とインドール0.48g(4mmol)をN−メチルピロリドン5mLに添加し、実施例3で調製したパラジウム担持セピオライト触媒0.1gを懸濁させ、5気圧のアルゴンガスで反応系内を置換した。反応器を190℃に昇温して20時間反応させた。反応後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、3−(1−インドリル)プロピオン酸ブチルの生成率は62%で、空時収量は302g/kg−cat・hであった。
【0057】
実施例5
アクリル酸ブチルを1.53g(12mmol)とピペラジン0.86g(10mmol)をo−キシレン5mLに添加し、実施例3で調製したパラジウム担持セピオライト触媒0.1gを懸濁させ、5気圧のアルゴンガスで反応系内を置換した。反応器を100℃に昇温して3時間反応させた。反応後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、3−ピペラジノプロピオン酸ブチルの生成率は67%、空時収量は5900g/kg−cat・hであった。
【0058】
実施例6
アクリル酸ブチルを1.53g(12mmol)とモルホリン0.88g(10mmol)をo−キシレン5mLに添加し、実施例3で調製したパラジウム担持セピオライト触媒0.1gを懸濁させ、5気圧のアルゴンガスで反応系内を置換した。反応器を100℃に昇温して3時間反応させた。反応後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、3−モルホリノプロピオン酸ブチルの生成率は98%で、空時収量は7200g/kg−cat・hであった。
【0059】
実施例7
アクリル酸ブチルを1.53g(12mmol)とイミダゾール0.28g(4mmol)をN−メチルピロリドン溶媒5mLに添加し、実施例3で調製したパラジウム担持セピオライト触媒0.1gを懸濁させ、5気圧のアルゴンガスで反応系内を置換した。反応器を190℃に昇温して20時間反応させた。反応後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、3−(1−イミダゾリル)プロピオン酸ブチルの生成率は99%で、空時収量は470g/kg−cat・hであった。
【0060】
実施例8
メタクリル酸メチルを1.21g(12mmol)とピペリジン0.85g(10mmol)をo−キシレン溶媒5mLに添加し、実施例3で調製したパラジウム担持セピオライト触媒0.1gを懸濁させ、5気圧のアルゴンガスで反応系内を置換した。反応器を100℃に昇温して3時間反応させた。反応後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、2−メチル−3−ピペリジノプロピオン酸メチルの生成率は15%で、空時収量は910g/kg−cat・hであった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】セピオライトの結晶構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム担持セピオライトから成ることを特徴とする、β−アミノ酸類製造用触媒。
【請求項2】
一般式(1)
【化1】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数が1から10のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。あるいは、RとRが結合する窒素原子と共に置換されていても良い環を形成していても良い。ただしRとRが同時に水素原子ではない。)で表されるアミン類と一般式(2)
【化2】

(式中、Rは炭素数1から10のアルキル基を示し、Rは水素原子または置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基を示す。)で表されるアクリル酸エステル類とを反応させて一般式(3)
【化3】

(式中、R、R、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。)
で表されるβ−アミノ酸類を製造する際に、請求項1に記載の触媒を用いることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
反応温度が0℃から300℃である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
反応圧が0.01MPaから10MPaである請求項2または3に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−149213(P2008−149213A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336913(P2006−336913)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】