説明

パルスレーダ装置

【課題】MTIフィルタの伝達関数に新たな項を付加して通過帯域幅を広げることにより、MTIに近いクラッタ抑圧性能を保持しつつ、フィルタの振幅特性による目標信号の減衰を軽減することのできるパルスレーダ装置を得る。
【解決手段】パルス電波を送受信して受信信号xを生成する送受信処理回路100と、フィルタ通過域幅を可変設定して受信信号を通過させる通過域幅制御型クラッタ抑圧手段と、通過域幅制御型クラッタ抑圧手段の出力信号に対して目標検出処理を行い、検出結果を通過域幅制御型クラッタ抑圧手段にフィードバック入力する目標検出手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナからパルス電波を目標物に照射して反射電波を受信し、受信信号に含まれる静止物体(目標物以外)からのクラッタ(不要反射エコー)を抑圧して、目標を検出するパルスレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、パルスレーダ装置においては、パルス状の電波を空間に放射し、目標物からのエコーを抽出して距離計測が行われるが、受信時には、目標からの反射エコー以外にクラッタと呼ばれる不要な物体からの反射エコーも同時に受信することが多い。
【0003】
この種のクラッタは、目標検出処理を妨げるものであるから、従来から、捜索系のパルスレーダ装置には、クラッタを抑圧する方式の一例として、MTI(Moving Target Indicators)が備えられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
MTIは、「移動する目標からのエコーにはドップラー周波数が発生するが、地面や建築物からのエコーであるグランドクラッタにはドップラー周波数が発生しないこと」を利用して、クラッタのみを抑圧する一種の高域通過フィルタである。
【0005】
つまり、MTIは、各レンジビンの受信信号において、1パルス遅延させた受信信号を差し引くことにより、ドップラー周波数が0付近のクラッタを集中的に抑圧する方式である。
よく使用されるMTIとして、伝達関数が「1−z-1」で表されるMTIは、単一消去器と呼ばれ、また、(1−z-1(M>1)で表されるMTIは、多重消去器と呼ばれる。
【0006】
MTIにおいては、多重化する(フィルタ次数を増やす)ほど、阻止域幅が広くなり、かつ阻止域減衰量が大きくなってクラッタ抑圧性能が高くなる傾向がある。
しかしながら、フィルタの零点を多重化させることでのみ、阻止域減衰量を調整していることになり、次数が高いMTIは、クラッタ抑圧性能が高いが、通過帯域幅が狭いという欠点がある。すなわち、MTIによってクラッタが抑圧される一方で、目標信号もMTI処理によって減衰する可能性が高いということになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭58−55474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のパルスレーダ装置は以上のように構成されているので、MTIによりクラッタを抑圧した場合、目標の移動速度によっては、目標信号がMTIにより大きく減衰して目標検出が困難になるという課題があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、MTIフィルタの伝達関数に新たな項を付加して通過帯域幅を広げることにより、MTIに近いクラッタ抑圧性能を保持しつつ、フィルタの振幅特性による目標信号の減衰を軽減することのできるパルスレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るパルスレーダ装置は、パルス電波を送受信して目標検出を行うパルスレーダ装置において、フィルタ通過域幅を可変設定して受信信号を通過させる通過域幅制御型クラッタ抑圧手段と、通過域幅制御型クラッタ抑圧手段の出力信号に対して目標検出処理を行い、検出結果を通過域幅制御型クラッタ抑圧手段にフィードバック入力する目標検出手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、MTIに近いクラッタ抑圧性能を保持しつつ、フィルタの振幅特性による目標信号の減衰を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るパルスレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1内の通過域幅制御型クラッタ抑圧手段による効果を図式的に示す説明図である。
【図3】従来のMTIによるクラッタ抑圧フィルタ振幅特性を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるクラッタ抑圧フィルタ振幅特性を示す説明図である。
【図5】図1内のFIRトランスバーサルフィルタの機能構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るパルスレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】図6内の1つの通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタの機能構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るパルスレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係るパルスレーダ装置の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るパルスレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
図1において、この発明の実施の形態1に係るパルスレーダ装置は、送受信アンテナを有する送受信処理回路100から入力される受信信号xに基づいて目標を検出する目標検出手段7と、目標検出手段7の入力側に挿入された通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10(クラッタ抑圧フィルタ)とにより構成されている。
【0014】
通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10は、主要部を構成するFIRトランスバーサルフィルタ1と、FIRトランスバーサルフィルタ1のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出手段2と、フィルタ係数算出手段2のフィルタ次数を選定するフィルタ次数選定手段3と、FIRトランスバーサルフィルタ1からのクラッタ出力電力を評価して評価結果をフィルタ次数選定手段3に入力するクラッタ出力電力評価手段4と、目標検出手段7の検出結果から通過域幅調整係数を更新する通過域幅調整係数更新手段5と、通過域幅調整係数の初期値を記憶して通過域幅調整係数更新手段5に入力する通過域幅調整係数初期値記憶手段6と、を備えている。
【0015】
図2は図1内の通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10による効果を図式的に示す説明図である。図2においては、クラッタを抑圧する効果と通過域幅を広げる効果との相乗作用により、クラッタ抑圧比が高く、かつ通過域幅も広いフィルタ特性が得られることを示している。
【0016】
また、図3は従来のMTI(4次フィルタ)によるクラッタ抑圧フィルタ振幅特性20を示す説明図であり、図4はこの発明の実施の形態1によるクラッタ抑圧フィルタ振幅特性21を示す説明図である。
図3、図4においては、従来の振幅特性20(図3)と比べて、この発明の実施の形態1による振幅特性21(図4)によれば、目標信号(正規化周波数が「0.15」)の減衰量が抑制されることを示している。
【0017】
図5は図1内のFIRトランスバーサルフィルタ1の具体的構成を示すブロック図であり、クラッタ抑圧フィルタとしての抑圧処理を実行するための機能構成を示している。
図5において、受信信号x(n)は、レンジビンkごとのフィルタ係数h(l)、(l=0、1、…、L)で処理された値を総和することにより、クラッタ抑圧処理された出力信号y(n)となる(後述の式(7)参照)。
【0018】
次に、図2〜図5を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1による動作について説明する。
前述のように、パルスレーダにおいては、まず、送受信処理回路100の送信アンテナからパルス状の電波が放射される。続いて、受信アンテナで受信された反射波は、位相検波されてベースバンドの受信信号に変換された後、標本化および量子化が施されてディジタル信号に変換される。
【0019】
ディジタル変換された受信信号は、受信電波の位相を保持しており、I信号(In−phase signal)と、Q信号(Quadrature−phase signal)とを、それぞれ実部および虚部に持つ複素信号である。
【0020】
このとき、信号の標本化は、すべての受信信号に対して同じタイミングで行われ、送信信号を送信した時点から一定時間だけ遅延後に、一定周期で標本化が行われる。
1つの受信信号からは、x(n)、x(n)、・・・、x(n)で示される総数K個のディジタル受信信号が生成される。
【0021】
ここでは、「n」をヒット番号と呼び、受信信号の時間因子を表すパラメータとして扱う。また、「k」はレンジビン番号と呼び、標本化の順番(レーダからの距離)を表すパラメータとして扱う。
以上の処理で得られたディジタル受信信号x(n)は、図1に示すパルスレーダ装置の入力信号となる。
【0022】
以下、図1内の通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10を用いることにより、目標信号の減衰量が軽減される効果について説明する。
まず、従来のMTIフィルタとして知られている多重消去器の伝達関数F(z)は、以下の式(1)のように表される。
【0023】
【数1】

【0024】
式(1)において、Lは多重度(フィルタ次数)である。また、最もシンプルなMTIにおいては、係数bの値は「1」である。
一方、この発明の実施の形態1によるFIRトランスバーサルフィルタ1の伝達関数G(z)は、以下の式(2)のように表される。
【0025】
【数2】

【0026】
式(2)において、αはフィルタ係数正規化のための定数である。
式(2)の形の伝達関数G(z)を持つフィルタを用いる理由(利点)としては、以下の2点(A)、(B)があげられる。
【0027】
(A)z=1(f=0)に一重、または多重の阻止零点を形成することにより、クラッタスペクトルの中心周波数近傍のフィルタゲインを小さくして、クラッタ抑圧比を大きくすることができる。
(B)従来の多重消去器に比べると、クラッタ抑圧比は劣るが、式(2)の右辺Σの項を設けることにより、通過域幅を広くすることができて、移動目標(ドップラー周波数が0でない目標信号)がフィルタにより減衰する可能性が低くなる。
【0028】
また、f=0に阻止零点を設定しない設計法もある。
たとえば、f=0の両側、すなわち、f=±δ(δはごく小さな実数)に零点を設定する手法である。この場合、式(2)よりも通過域幅が広いフィルタを設計することができるが、クラッタ抑圧比が小さくなる。
なお、8次以上の高い次数でフィルタ設計が可能であるなら、必ずしもf=0に阻止零点を設定する必要はない。なぜなら、次数が高ければ、f=0近傍のフィルタゲインを十分に小さくすることができて、抑圧比を確保することができるからである。
【0029】
式(2)の右辺第2項(Σの項)は、フィルタ通過域の特性をどのようにするかによって決まる。ここでは、できるだけ低い次数で、かつできるだけ少ない設計パラメータでフィルタ通過域を広げる効果を得たい、という点を重視することから、式(2)のΣの項は、a(0)=1、a(1)=r、とした。このとき、式(2)は、以下の式(3)のように表される。
【0030】
【数3】

【0031】
式(3)に新たに設けた通過域幅調整係数rを調整することにより、FIRトランスバーサルフィルタ1の通過域幅を変化させることができる。
図2はFIRトランスバーサルフィルタ1の通過域幅の変化イメージを示している。
【0032】
式(3)において、右辺第1項は、多次のMTIフィルタと同じ形になっており、図2の左端の図(クラッタの抑圧効果)に示すように、ドップラー周波数が「0」のフィルタ利得を著しく下げて、グランドクラッタを抑圧する効果がある。
【0033】
また、式(3)において、右辺第2項は、図2の中央の図(通過域幅を広げる効果)に示すように、MTIでは通過域となる領域の利得を敢えて下げたような、1次フィルタと同じ特性になる。
【0034】
上記の両者を掛け合わせることにより、MTIの振幅特性20(図3)でピークを示していた領域の通過域利得をやや犠牲にして、その分、振幅特性20(図4)のように、通過域幅を広げることが可能になる。
【0035】
このとき、通過域幅調整係数rの値が大きいほど、通過域幅を広げる効果があるが、逆に阻止域幅が狭くなるので、クラッタ抑圧性能は劣化する。
したがって、FIRトランスバーサルフィルタ1を有効に使うためには、クラッタ抑圧性能を保持したまま、可能な限りフィルタ通過域幅を広げる制御が必要である。
【0036】
FIRトランスバーサルフィルタ1の振幅特性21(図4)においては、通過域幅調整係数rの値を0.1刻みで、0.1〜0.6まで変化させたときの振幅特性を重ねて示している。
なお、図3はこの発明の実施の形態1による効果を明確にするために、比較対象として示している。図3、図4において、横軸は、レーダ送信パルスの繰り返し周波数で正規化されたドップラー周波数を示し、縦軸は、フィルタ振幅のdB値を示している(1.0を0dBとしている)。
【0037】
ここで、受信された目標の正規化ドップラー周波数を「0.15」とすると、図3に示したMTIフィルタの振幅特性20においては、目標信号に対するフィルタの利得が−20dB程度であり、大きく受信電力が低下することが分かる。
一方、図4に示したFIRトランスバーサルフィルタ1の振幅特性21においては、目標信号に対するフィルタ利得が−10dB前後であり、MTIに比べて大きく改善されることが分かる。
【0038】
次に、FIRトランスバーサルフィルタ1の次数L(=M+1)について説明する。
捜索レーダにおけるパルスヒット数は、1桁〜10数ヒット程度であることが多く、実用的なFIRトランスバーサルフィルタ1の次数Lは、3〜5次程度であると考えられる。
【0039】
ここで、フィルタ次数を「3」〜「5」とした場合の式(3)を展開し、一般的なFIRトランスバーサルフィルタ1の形に整理すると、以下のようになる。
すなわち、3次のクラッタ抑圧フィルタの場合、以下の式(4)のように表される。
【0040】
h(0)=α、h(1)
=−α(r+2)、
h(2)=α(2r+1)、
h(3)=−αr ・・・(4)
【0041】
また、4次のクラッタ抑圧フィルタの場合、以下の式(5)のように表される。
【0042】
h(0)=α、
h(1)=−α(r+3)、
h(2)=3α(r+1)、
h(3)=−α(3r+1)、
h(4)=αr ・・・(5)
【0043】
さらに、5次のクラッタ抑圧フィルタの場合、以下の式(6)のように表される。
【0044】
h(0)=α、
h(1)=−α(r+4)、
h(2)=α(4r+6)、
h(3)=−α(6r+4)、
h(4)=α(4r+1)、
h(5)=−αr ・・・(6)
【0045】
上記の式(4)〜(6)の形式にしておけば、図5に示した通常のFIRトランスバーサルフィルタ1の処理に適用できるので、汎用性が高くなる。他の次数についても同様に求めることができる。
なお、捜索レーダでは、短時間で捜索範囲を探索する必要があるため、パルスヒット数をあまり多く取ることができない。
【0046】
また、目標信号のS/Nは、目標のステルス化も含めて、近年ますます低くなっていく傾向があり、目標検出には、受信信号の積分処理でS/N改善を行うことが不可欠になっている。
【0047】
レーダでは、強烈なグランドクラッタを抑圧する必要があり、これをFIR系フィルタで抑圧した場合、フィルタの過渡応答の影響で、有効なパルスヒット数がフィルタの次数分だけ減少してしまう。
すなわち、積分処理に使えるパルスヒット数が減少してしまうことになるので、クラッタ抑圧性能を確保しつつ、できるだけフィルタの次数も抑えなければならない。
【0048】
上記条件を踏まえて、FIRトランスバーサルフィルタ1の次数は、以下のように設定される。
フィルタで抑圧するクラッタは、グランドクラッタやドップラー周波数がほとんど0に近いシークラッタであるとする。
【0049】
初めに、フィルタ次数選定手段3は、フィルタ次数Lの初期値を設定する。なお、変化させる次数は、せいぜい最大8次程度なので、初期値は「1」〜「2」程度で構わない。
クラッタ電力や帯域幅が事前に推定できる場合は、それを抑圧できるMTIフィルタ相当の次数がセットされる。
【0050】
フィルタ次数選定手段3で選定されたフィルタ次数Lは、フィルタ係数計算手段2に入力される。
また、式(3)に示したFIRトランスバーサルフィルタ1の過域幅調整係数rの初期値が、通過域幅調整係数初期値記憶手段6から、通過域幅調整係数更新手段5を介してフィルタ係数計算手段2に入力される。なお、過域幅調整係数rの初期値としては、クラッタ抑圧性能を確保することが最優先なので、0に近い値(たとえば、0.1)が設定される。
【0051】
これで、フィルタ次数lと過域幅調整係数rとが決まるので、フィルタ係数計算手段2は、式(4)〜式(6)のように展開されたフィルタ係数(FIRトランスバーサルフィルタ係数)を計算する。
計算されたフィルタ係数は、FIRトランスバーサルフィルタ1に入力され、クラッタ抑圧処理がレンジビンkごとに行われる。
【0052】
ここでは、一例として、レンジビンkごとに抑圧フィルタを更新していくものとする。
すなわち、パルスレーダ装置の受信信号をx(n)とし、抑圧処理後の信号をy(n)として、FIRトランスバーサルフィルタ1のフィルタ係数をレンジビンkごとに変えることを想定して、フィルタ係数をh(l)、(l=0、1、…、L)とすると、以下の式(7)にしたがって、クラッタ抑圧処理が実行される。
【0053】
【数4】

【0054】
クラッタが抑圧された信号y(n)は、目標検出手段7に入力されると同時にクラッタ出力電力評価手段4に入力される。
クラッタ抑圧処理は、次のレンジビンk+1へと移行するが、処理を始める前に、以下の動作が行われる。
【0055】
すなわち、クラッタ出力電力評価手段4は、クラッタ抑圧処理後の信号のヒット方向で平均した信号電力を計算する。もし、受信信号x中に存在するクラッタがグランドクラッタのみであると仮定すれば、クラッタの消え残りがどの程度あるかが、クラッタ出力電力評価手段4で算出された平均電力値から推定評価することができる。
【0056】
クラッタが完全に抑圧されていれば、平均電力値が受信機雑音電力に近い値を示すはずであるから、クラッタ出力電力評価手段4は、適当な閾値を設定し、平均電力が閾値を上回れば、クラッタ消え残りが大きいものと評価する。
【0057】
たとえば、クラッタ消え残りが大きい場合には、フィルタ次数が不足しているものと見なされるので、クラッタ出力電力評価手段4は、その評価情報をフィルタ次数選定手段3に入力する。
【0058】
フィルタ次数選定手段3は、前回使用したフィルタ次数から「1」だけ増やしたフィルタ次数をフィルタ係数計算手段2に入力する。
以下、レンジビンk+1で同様のクラッタ抑圧処理が行われる。
【0059】
なお、上記ロジックでは、フィルタ次数がクラッタに比べて過剰に大きい場合の判定は不可能なので、同じ次数でのクラッタ抑圧処理が、ある特定の回数連続して実行された場合には、再び次数を初期値に戻す。
【0060】
クラッタ抑圧処理後の平均信号電力が閾値を下回った場合、クラッタ出力電力評価手段4は、フィルタ次数が十分であると判定する。
これにより、処理は通過帯域幅を広げる動作へと移行するので、クラッタ出力電力評価手段4は、係数更新指示を通過域幅調整係数更新手段5に入力する。
【0061】
通過域幅調整係数更新手段5は、係数更新の指示が入力されるまでは、通過域幅調整係数初期値記憶手段6から読み込んだ初期値をそのままフィルタ係数計算手段2に入力しているが、係数更新指示が入力されると、あらかじめ指定しておいた刻み幅で、通過域幅調整係数rを順次に大きな値に更新する。
すなわち、過域幅調整係数rは、通過域幅が広がる方向に変更されて、フィルタ係数計算手段2に入力される。
【0062】
過域幅調整係数rの更新動作は、目標検出手段7において目標信号が検出されるまで繰り返される。
ただし、通過域幅調整係数rの上限をあらかじめ決めておき、上限値に達した時点で更新動作はストップされる。なお、通過域幅調整係数rの更新処理は、フィルタ次数選定手段3によりフィルタ次数が変更された時点で終了し、通過域幅調整係数rは初期値に復帰する。
【0063】
なお、上記説明では、レンジビンごとに、フィルタ次数や通過域幅調整係数rの更新処理を実行したが、複数のレンジビン単位で更新処理を実行してもよい。また、スキャンごとに更新してもよい。
【0064】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1)に係るパルスレーダ装置は、パルス電波を送受信して受信信号xを生成する送受信処理回路100と、フィルタ通過域幅を可変設定して受信信号xを通過させる通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10と、通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10の出力信号yに対して目標検出処理を行い、検出結果を通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10にフィードバック入力する目標検出手段7と、を備えている。
【0065】
通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10は、受信信号x中のクラッタを抑圧するFIRトランスバーサルフィルタ1と、FIRトランスバーサルフィルタ1の出力信号yの平均電力を計算してフィルタ次数を制御するクラッタ出力電力評価手段4と、クラッタ出力電力評価手段4の評価結果に応じてフィルタ次数Lを増減するフィルタ次数選定手段3と、FIRトランスバーサルフィルタ1の通過域幅を制御するための通過域幅調整係数rの初期値を記憶する通過域幅調整係数初期値記憶手段6と、目標検出手段7の検出結果およびクラッタ出力電力評価手段4の評価結果にしたがって通過域幅調整係数rを更新する通過域幅調整係数更新手段5と、FIRトランスバーサルフィルタ1のフィルタ係数hを計算してFIRトランスバーサルフィルタ1に入力するフィルタ係数算出手段2と、を備えている。
【0066】
通過域幅調整係数更新手段5は、通過域幅調整係数初期値記憶手段6からの通過域幅調整係数rの初期値、または、前回のクラッタ抑圧処理で使用した通過域幅調整係数rを更新する。
また、フィルタ係数算出手段2は、通過域幅調整係数更新手段5からの通過域幅調整係数rと、フィルタ次数選定手段3からのフィルタ次数Lとに基づいて、フィルタ係数hを計算する。
【0067】
このように、MTIフィルタの伝達関数に新たな項を付加して通過帯域幅を広げることにより、クラッタ抑圧性能を保持しつつ、MTIよりも通過域幅が広いフィルタで、クラッタ抑圧処理を実行することができるので、目標信号のドップラー周波数がフィルタの阻止域に近い場合に、MTIでは検出できなかった目標信号を検出できる可能性が高くなる。
したがって、クラッタの抑圧性能を保持しつつ、目標信号の検出性能を高めることができる。
【0068】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1)では、単一の通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10を用いて通過域幅調整係数rを順次に更新したが、図6のように、通過域幅調整係数rが互いに異なる複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xを用い、目標検出結果選択手段11により検出結果を選択するように構成してもよい。
【0069】
図6はこの発明の実施の形態2に係るパルスレーダ装置の構成を示すブロック図であり、図7は図6内の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xの具体的構成を示すブロック図である。
図6において、パルスレーダ装置は、並設された複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xと、通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xに個別に接続された複数の目標検出手段7a〜7xと、目標検出手段7a〜7xの各検出結果のうちの1つを選択して出力する目標検出結果選択手段11とを備えている。
【0070】
図7においては、通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xのうちの1つの機能構成が、通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30として代表的に示されている。
図7において、通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30は、前述(図1)と同様のFIRトランスバーサルフィルタ1およびフィルタ係数算出手段2に加えて、フィルタ係数算出手段2に対して通過域幅調整係数を入力する通過域幅調整係数記憶手段33を備えている。
【0071】
次に、図6および図7に示したこの発明の実施の形態2に係るパルスレーダ装置の動作について、前述の実施の形態1(図1)と対比して説明する。なお、ここでは、前述の実施の形態1と異なる点のみについて説明する。
前述の実施の形態1においては、通過域幅調整係数rを目標検出結果に応じて変化させることにより、適応性が高めていたが、通過域幅調整係数rが最適値にたどり着く前に、目標信号が存在するレンジビンの処理が実行されてしまう可能性がある。
【0072】
すなわち、前述の実施の形態1では、たとえば、最適な係数r(=0.5)であれば目標を検出できたはずだったが、実際のクラッタ抑圧処理で使用した係数rが「0.1」であったことから、通過域幅が狭くて目標信号の減衰量が多く、目標を検出できなかったという場合が起こり得る。
【0073】
一方、この発明の実施の形態2(図6)においては、上記のような問題を極力回避するために、通過域幅調整係数rが互いに異なる複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xを備えている。
ただし、図6の構成を適用するためには、前提として、クラッタを十分に抑圧可能なフィルタ次数があらかじめ推定できる場合に限られる。
【0074】
図7において、通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30x内の各々の通過域幅調整係数記憶手段33は、それぞれ、任意の刻み幅で変えた通過域幅調整係数rを記憶しており、自身のフィルタに通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30に適用するために、通過域幅調整係数rをフィルタ係数計算手段2に入力する。
【0075】
これにより、通過域幅が少しずつ異なる通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xにおいて、それぞれ並列に抑圧処理が実行されることになる。
通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xからの各出力信号は、個別の目標検出手段7a〜7xに入力されて、目標検出処理が行われる。
【0076】
目標検出結果選択手段11は、各目標検出手段7a〜7xから入力される検出結果のうち、目標信号が検出できる結果を選択して、最終の検出結果として出力する。
このとき、複数の目標検出手段7a〜7xで目標が検出された場合には、後段の処理に影響がなければ、クラッタ抑圧性能が最も高い(通過域幅調整係数rが小さい)通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタに基づく処理結果を選択する。
【0077】
以上のように、この発明の実施の形態2(図6、図7)に係るパルスレーダ装置は、パルス電波を送受信して受信信号xを生成する送受信処理回路100と、フィルタ通過域幅をあらかじめ広く設定して受信信号xを通過させる複数の通過域幅制御型クラッタフィルタ30a〜30xと、複数の通過域幅制御型クラッタフィルタ30a〜30xの出力信号のそれぞれに対して個別に目標検出を行う複数の目標検出手段7a〜7xと、複数の目標検出手段7a〜7xから入力される各検出結果から目標信号が検出できる処理結果を選択する目標検出結果選択手段11と、を備えている。
【0078】
複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xのそれぞれは、フィルタ通過域幅を調整するための通過域幅調整係数rを記憶する通過域幅調整係数記憶手段33と、通過域幅調整係数記憶手段33に記憶されている通過域幅調整係数rに基づいて、通過域幅が広げられたフィルタ係数hを計算するフィルタ係数計算手段2と、フィルタ係数計算手段2により算出されたフィルタ係数hを用いて受信信号x中のクラッタを抑圧するFIRトランスバーサルフィルタ1と、を備えている。
通過域幅調整係数記憶手段33に記憶されている通過域幅調整係数rは、複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xごとに、それぞれ異なっている。
【0079】
このように、互いに通過域幅調整係数rが異なる複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xを並設したので、通過域幅調整係数rが最適値に更新されていない状況で目標検出処理が実行されることを防止することが可能となり、目標検出性能を改善することができる。
【0080】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1(図1)では、通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10内において、FIRトランスバーサルフィルタ1を用いたが、図8のように、ドップラー周波数を有する移動クラッタを対象クラッタと想定して、移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41を用いてもよい。
【0081】
図8はこの発明の実施の形態3に係るパルスレーダ装置の要部機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図8において、通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10Aは、前述のFIRトランスバーサルフィルタ1に代えて、クラッタ中心周波数推定手段40および移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41を備えている。
クラッタ中心周波数推定手段40は、受信信号xからクラッタの中心周波数fを推定して、推定された中心周波数fを移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41に入力する。
【0082】
次に、図8に示したこの発明の実施の形態3による動作について説明する。
前述の実施の形態1では、受信信号x中に存在するクラッタとして、ドップラー周波数が発生しないグランドクラッタ、または、ほとんどドップラー周波数が発生しないシークラッタを想定し、移動クラッタを考慮していなかった。
【0083】
これに対し、この発明の実施の形態3においては、クラッタがドップラー周波数を有する移動クラッタである場合に対応できるようにしたものである。
図8において、クラッタ中心周波数推定手段40は、受信信号xの一部を使用し、受信信号x中のクラッタの中心周波数fを推定する。
【0084】
このとき、捜索レーダのように、クラッタの中心周波数fの推定処理に多くのヒット数を使えない場合には、フーリエ変換などの多くのヒット数を必要とする周波数解析手法は、あまり有効ではない。
しかし、このような状況下で有効な方法として、公知(たとえば、特許第2787855号公報を参照)の推定方法がある。
【0085】
上記公知の推定方法は、MEM(Maximum Entropy Method)を利用して、クラッタのピーク周波数を推定するものである。
なお、MEMについては、公知文献(S.Haykin、「Nonlinear Methods of Spectral Analysis」、Springer−Verlag、1983)に詳しく説明されている。
【0086】
たとえば、クラッタスペクトルピークを1つ有する単峰性クラッタは、1次のARモデルで近似することができる。
この1次ARモデルの係数をa11とすると、1次ARモデルの極を計算で求めることにより、クラッタの中心周波数f(パルスの繰り返し周波数で規格化された値)は、以下の式(8)のように推定することができ、また、係数a11は、以下の式(9)のように表される。
【0087】
【数5】

【0088】
ただし、式(9)において、x(n)は、ある特定のレンジビンの受信信号、または複数のレンジビンをまとめた受信信号であり、NNは、パルスヒット数である。
式(8)により推定された中心周波数fは、移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41に入力される。
【0089】
移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41は、フィルタ係数計算手段2から入力されるフィルタ係数h(l)と、クラッタ中心周波数推定手段40から入力されるクラッタの中心周波数fとを用いて、以下の式(10)の演算により、新たなフィルタ係数gを求める。
【0090】
【数6】

【0091】
ただし、式(10)において、l=0、1、・・・、Lである。
この結果、図8のフィルタ振幅特性は、フィルタ減衰域がf=fに形成されるので、移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41により、移動クラッタを抑圧することができる。
【0092】
以上のように、この発明の実施の形態3(図8)に係るパルスレーダ装置の通過域幅制御型クラッタ抑圧手段10Aは、受信信号x中のクラッタの中心周波数fを推定するクラッタ中心周波数推定手段40と、推定された中心周波数fに基づきフィルタ係数を調整して、受信信号x中のクラッタを抑圧する移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41と、移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41の出力信号yの平均電力を計算してフィルタ次数を制御するクラッタ出力電力評価手段4と、クラッタ出力電力評価手段4の評価結果に応じてフィルタ次数Lを増減するフィルタ次数選定手段3と、移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41の通過域幅を制御するための通過域幅調整係数rの初期値を記憶する通過域幅調整係数初期値記憶手段6と、目標検出手段7の検出結果およびクラッタ出力電力評価手段4の評価結果にしたがって通過域幅調整係数rを更新する通過域幅調整係数更新手段5と、移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41のフィルタ係数hを計算して移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41に入力するフィルタ係数算出手段2と、を備えている。
【0093】
このように、クラッタ中心周波数推定手段40および移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41を設けることにより、移動クラッタに対しても、クラッタ抑圧性能を保ちつつ、通過域幅が広い移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41(クラッタ抑圧フィルタ)を使用することができるので、目標検出性能を改善することができる。
【0094】
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図8)では、前述の実施の形態1(図1)の構成に移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41を適用したが、図9のように、前述の実施の形態2(図6、図7)の構成に適用してもよい。
【0095】
図9はこの発明の実施の形態3に係るパルスレーダ装置の要部機能構成を示すブロック図であり、前述(図7、図8参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。また、この発明の実施の形態4に係るパルスレーダ装置の全体構成は、図6に示した通りである。
【0096】
図9において、通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30Aは、図6内の複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xのうちの1つを代表的に示している。
この場合、前述(図7)のFIRトランスバーサルフィルタ1に代えて、クラッタ中心周波数推定手段40および移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41を備えている。
【0097】
以上のように、この発明の実施の形態4(図6、図9)に係るパルスレーダ装置の複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xのそれぞれは、フィルタ通過域幅を調整するための通過域幅調整係数rを記憶する通過域幅調整係数記憶手段33と、通過域幅調整係数記憶手段に記憶されている通過域幅調整係数rに基づいて、通過域幅が広げられたフィルタ係数を計算するフィルタ係数計算手段2と、受信信号x中のクラッタの中心周波数fを推定するクラッタ中心周波数推定手段40と、推定された中心周波数fに基づきフィルタ係数を調整して、受信信号x中のクラッタを抑圧する移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41と、を備えている。
通過域幅調整係数記憶手段33に記憶されている通過域幅調整係数rは、複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタ30a〜30xごとに、それぞれ異なっている。
【0098】
このように、クラッタ中心周波数推定手段40を追加し、クラッタ抑圧フィルタとして移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41を用いることにより、前述の実施の形態3と同様に、移動クラッタに対しても、クラッタ抑圧性能を保ちつつ、通過域幅が広い移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ41(クラッタ抑圧フィルタ)を使用することができるので、目標検出性能を改善することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 FIRトランスバーサルフィルタ、2 フィルタ係数算出手段、3 フィルタ次数選定手段、4 クラッタ出力電力評価手段、5 通過域幅調整係数更新手段、6 通過域幅調整係数初期値記憶手段、7、7a 目標検出手段、10、10A 通過域幅制御型クラッタ抑圧手段、11 目標検出結果選択手段、30、30a〜30x、30A 通過域幅制御型クラッタフィルタ、33 通過域幅調整係数記憶手段、40 クラッタ中心周波数推定手段、41 移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタ、100 送受信処理回路、f 中心周波数、h フィルタ係数、L フィルタ次数、r 過域幅調整係数、r 通過域幅調整係数、x 受信信号、y 出力信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス電波を送受信して受信信号を生成する送受信処理回路と、
フィルタ通過域幅を可変設定して前記受信信号を通過させる通過域幅制御型クラッタ抑圧手段と、
前記通過域幅制御型クラッタ抑圧手段の出力信号に対して目標検出処理を行い、検出結果を前記通過域幅制御型クラッタ抑圧手段にフィードバック入力する目標検出手段と、
を備えたことを特徴とするパルスレーダ装置。
【請求項2】
前記通過域幅制御型クラッタ抑圧手段は、
前記受信信号中のクラッタを抑圧するFIRトランスバーサルフィルタと、
前記FIRトランスバーサルフィルタの出力信号の平均電力を計算してフィルタ次数を制御するクラッタ出力電力評価手段と、
前記クラッタ出力電力評価手段の評価結果に応じて前記フィルタ次数を増減するフィルタ次数選定手段と、
前記FIRトランスバーサルフィルタの通過域幅を制御するための通過域幅調整係数の初期値を記憶する通過域幅調整係数初期値記憶手段と、
前記目標検出手段の検出結果および前記クラッタ出力電力評価手段の評価結果にしたがって前記通過域幅調整係数を更新する通過域幅調整係数更新手段と、
前記FIRトランスバーサルフィルタのフィルタ係数を計算して前記FIRトランスバーサルフィルタに入力するフィルタ係数算出手段と、を備え、
前記通過域幅調整係数更新手段は、前記通過域幅調整係数初期値記憶手段からの前記通過域幅調整係数の初期値、または、前回のクラッタ抑圧処理で使用した通過域幅調整係数を更新し、
前記フィルタ係数算出手段は、前記通過域幅調整係数更新手段からの通過域幅調整係数と、前記フィルタ次数選定手段からのフィルタ次数とに基づいて、前記フィルタ係数を計算することを特徴とする請求項1に記載のパルスレーダ装置。
【請求項3】
前記通過域幅制御型クラッタ抑圧手段は、
前記受信信号中のクラッタの中心周波数を推定するクラッタ中心周波数推定手段と、
推定された前記中心周波数に基づきフィルタ係数を調整して、前記受信信号中のクラッタを抑圧する移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタと、
前記移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタの出力信号の平均電力を計算して前記フィルタ次数を制御するクラッタ出力電力評価手段と、
前記クラッタ出力電力評価手段の評価結果に応じて前記フィルタ次数を増減するフィルタ次数選定手段と、
前記移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタの通過域幅を制御するための通過域幅調整係数の初期値を記憶する通過域幅調整係数初期値記憶手段と、
前記目標検出手段の検出結果および前記クラッタ出力電力評価手段の評価結果にしたがって前記通過域幅調整係数を更新する通過域幅調整係数更新手段と、
前記移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタのフィルタ係数を計算して前記移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタに入力するフィルタ係数算出手段と、を備え、
前記通過域幅調整係数更新手段は、前記通過域幅調整係数初期値記憶手段からの前記通過域幅調整係数の初期値、または、前回のクラッタ抑圧処理で使用した通過域幅調整係数を更新し、
前記フィルタ係数算出手段は、前記通過域幅調整係数更新手段からの通過域幅調整係数と、前記フィルタ次数選定手段からのフィルタ次数とに基づいて、前記フィルタ係数を計算することを特徴とする請求項1に記載のパルスレーダ装置。
【請求項4】
パルス電波を送受信して受信信号を生成する送受信処理回路と、
フィルタ通過域幅をあらかじめ広く設定して前記受信信号を通過させる複数の通過域幅制御型クラッタフィルタと、
前記複数の通過域幅制御型クラッタフィルタの出力信号のそれぞれに対して個別に目標検出を行う複数の目標検出手段と、
前記複数の目標検出手段から入力される各検出結果から目標信号が検出できる処理結果を選択する目標検出結果選択手段と、
を備えたことを特徴とするパルスレーダ装置。
【請求項5】
前記複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタのそれぞれは、
フィルタ通過域幅を調整するための通過域幅調整係数を記憶する通過域幅調整係数記憶手段と、
前記通過域幅調整係数記憶手段に記憶されている通過域幅調整係数に基づいて、通過域幅が広げられたフィルタ係数を計算するフィルタ係数計算手段と、
前記フィルタ係数計算手段により算出されたフィルタ係数を用いて前記受信信号中のクラッタを抑圧するFIRトランスバーサルフィルタと、を備え、
前記通過域幅調整係数記憶手段に記憶されている通過域幅調整係数は、前記複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタごとに異なることを特徴とする請求項4に記載のパルスレーダ装置。
【請求項6】
前記複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタのそれぞれは、
フィルタ通過域幅を調整するための通過域幅調整係数を記憶する通過域幅調整係数記憶手段と、
前記通過域幅調整係数記憶手段に記憶されている通過域幅調整係数に基づいて、通過域幅が広げられたフィルタ係数を計算するフィルタ係数計算手段と、
前記受信信号中のクラッタの中心周波数を推定するクラッタ中心周波数推定手段と、
推定された前記中心周波数に基づきフィルタ係数を調整して、前記受信信号中のクラッタを抑圧する移動クラッタ用FIRトランスバーサルフィルタと、を備え、
前記通過域幅調整係数記憶手段に記憶されている通過域幅調整係数は、前記複数の通過域幅制御型クラッタ抑圧フィルタごとに異なることを特徴とする請求項4に記載のパルスレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−185752(P2011−185752A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51491(P2010−51491)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】