説明

パルス信号生成装置、搬送装置、画像形成装置及びパルス生成方法

【課題】エンコーダ信号にパルス周期異常が発生した場合でも、パルス出力信号の切り換え時の位相ずれに起因するパルス信号の周期の乱れを効果的に小さく抑えることができるパルス信号生成装置、搬送装置、画像形成装置及びパルス信号生成方法を提供する。
【解決手段】複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする出力信号DP1、DP2のうちセンサ選択信号SSに基づいて選択された一方の出力信号が第1及び第2遅延回路82,83のうち対応する遅延回路により遅延されることで印字基準信号PTSが生成される。第1及び第2位相差計測部84,85のうち印字基準信号PTSの生成に出力信号が使用されている側の位相差計測部では位相差計測が中止され、印字基準信号PTSの生成に出力信号が使用されていない側の位相差計測部では位相差計測が行われる。遅延回路における遅延時間は、切り換え時における最新の位相差に基づき決められるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダの出力パルスの周期異常を検出して周期の修復されたパルスを生成するパルス信号生成装置、搬送装置、画像形成装置及びパルス信号生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ等の画像形成装置においては、搬送方向に搬送される用紙(ターゲット)に対し記録ヘッドが印刷を施す構成となっている。この場合、用紙搬送位置に応じた適切なタイミングでインク滴を吐出する必要があるため、用紙搬送速度に同期してエンコーダから出力される出力信号(パルス信号)を基に用紙の搬送速度に同期して印字基準信号を生成し、印字基準信号に基づき吐出タイミングの制御を行っている。
【0003】
例えば特許文献1には、用紙搬送手段として搬送ベルトを用いたプリンタ(画像形成装置)が開示されている。搬送ベルト上にはその速度及び位置を検出するためのマークが設けられており、エンコーダでマークを読み取り、そのエンコーダ信号に基づいてインク吐出を行い、用紙上に文字や画像を印刷するようになっている。
【0004】
特許文献1のように搬送ベルトによる用紙の搬送手段を用いたプリンタでは、ベルト移動量と記録用紙移動量とが同じであると仮定し、ベルト移動量から記録紙移動量を検出して所望ピッチ毎にインク滴吐出を行っている。インク滴吐出は、印字ピッチと同間隔のパルスを有するエンコーダ信号に同期して行われるため、搬送手段に速度変動がある場合でも、着弾位置ズレを制御することができる高画質印刷が可能となる。しかし、特許文献1の方式では、エンコーダ信号が等ピッチで連続的に出力される必要があり、以下の課題があった。
【0005】
記録用紙の搬送手段(搬送ベルト)の周長が印字ピッチの整数倍になっていない場合、リニアエンコーダの出力信号に不連続部分が発生し、画像劣化が発生する。また、搬送ベルトに配設されたリニアエンコーダにインクミストや紙粉が付着したり、リニアエンコーダが傷付いたりした場合は、エンコーダ信号にパルスの欠落が発生し、この場合も画像劣化をもたらす。
【0006】
この種の問題を解決する装置が、例えば特許文献2及び特許文献3に開示されている。
特許文献2には、ホームセンサ位置で2つのセンサを切り換えて使用する装置が開示されている。センサ切り換え時の信号位相差はプレ駆動により検出しておくようになっていた。
【0007】
特許文献3には、マークを検出する2個のセンサを検出対象位置が異なる位置となるように設け、一方のセンサの出力信号に基づき搬送ベルトの継ぎ目などのマークの不連続部分や、ゴミや傷等によるパルスの欠落が検出されたときには、ベルト搬送速度を一定に制御するためのモータ制御に使用する出力信号を他方のセンサのものに切り換える構成が開示されている。また、センサの切換え時の信号の位相差を抑えるために、計測した周期を分割したり、同一クロックを用いたりして、補間処理部が高分解能信号を生成して信号合わせ誤差(位相差)を小さくする構成が採用されていた。また、特許文献2、3には、センサ信号(エンコーダ信号)の周期をベースクロックでカウントし、センサ信号のパルス周期が一定の閾値以上となった場合に、マークの不連続部分(エンコーダ信号のパルスの欠落)であると判定する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−245383号公報
【特許文献2】特開2005−91943号公報
【特許文献3】特開2005−350195号公報(例えば明細書段落[0041]〜[0053]等、図6〜図11等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の技術によれば、予め継ぎ目として設定された場所にのみ有効であり、ホームセンサによる継ぎ目位置検出が必要となる。また、突発的な抜けに対応できないという問題があった。
【0009】
また、特許文献3の装置によれば、周期分割による位相合わせのため、少なからず位相差が発生する。また、パルス抜け検出が遅れる問題もある。このため、抜け発生部ではパルス周期が大きくなり、補間パルスから次の正常パルス出力までの周期が小さくなってしまう。これを防止するために閾値を狭くすると、速度変動により正常パルス発生時刻が遅れただけでもパルス抜けとして誤検出する恐れがあった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンコーダ信号にパルス周期異常が発生した場合でも、パルス出力信号の切り換え時の位相ずれに起因するパルス信号の周期の乱れを効果的に小さく抑えることができるパルス信号生成装置、搬送装置、画像形成装置及びパルス信号生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号のうち切り換えられた一のパルス出力信号に基づきパルス信号を生成するパルス信号生成装置であって、検出対象の速度に応じたパルス周期をもつエンコーダ信号をそれぞれ出力する前記複数のエンコーダと、前記複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号ごとにパルス信号との相対ディレイ量を管理するディレイ量管理手段と、前記複数のエンコーダ信号のパルス異常を個別に検出する検出手段と、前記複数のパルス出力信号のうちパルス異常が検出されていない一つのパルス出力信号に切り換える切換手段と、前記切換手段により切り換えられた一つのパルス出力信号を対応する前記相対ディレイ量だけ遅延させてパルス信号を生成するパルス生成手段とを備えたことを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号ごとにパルス信号との相対ディレイ量がディレイ量管理手段により管理される。複数のエンコーダ信号のパルス異常が検出手段により個別に検出される。切換手段は、複数のパルス出力信号のうちパルス異常が検出されていない一つのパルス出力信号に切り換える。そして、パルス生成手段により、切換手段により切り換えられた一つのパルス出力信号を対応する相対ディレイ量だけ遅延させてパルス信号が生成される。従って、エンコーダ信号にパルス周期異常が発生した場合でも、パルス出力信号の切り換え時の位相ずれに起因するパルス信号の周期の乱れを効果的に小さく抑えることができる。
【0013】
また、本発明のパルス信号生成装置では、前記エンコーダ信号を基にパルス周期が制限範囲内に収まるように調整して前記パルス出力信号を生成する出力信号生成手段を備えていることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、出力信号生成手段により、エンコーダ信号を基にすべてのパルス周期が制限範囲内になるように異常周期パルスを調整してパルス出力信号が生成される。すなわち、エンコーダ信号を基に周期異常が発生した場合、パルス周期が制限範囲内に収まるように調整し、正常周期の場合にエンコーダ信号をそのまま使用してパルス出力信号を生成する。よって、パルス信号のパルス周期を適正な範囲に収めることができる。
【0015】
本発明のパルス信号生成装置では、前記検出手段は、前記パルス異常として周期が正常周期の上限を超える周期上限異常を少なくとも検出する構成であり、前記出力信号生成手段は、前記検出手段の周期上限異常検出に基づき前記切換手段がパルス出力信号を切り換えた際に当該切り換えた後のパルス出力信号のパルスと切り換え前のパルス出力信号のパルスとの間のパルス周期が前記制限範囲内に収まりうる所定遅延時間だけ、前記エンコーダ信号のうち前記制限範囲内にパルス周期が収まる正常周期のエンコーダパルスを遅延させることにより当該正常周期のエンコーダパルスに基づく前記パルス出力信号を生成することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、出力信号生成手段は、エンコーダ信号のうち正常周期のエンコーダパルスに基づきパルス出力信号を生成する場合、この正常周期のエンコーダパルスを所定遅延時間だけ遅延させることでパルス出力信号を生成する。この所定遅延時間は、検出手段の周期上限異常検出に基づき切換手段がパルス出力信号を切り換えた際に当該切り換えた後のパルス出力信号のパルスと切り換え前のパルス出力信号のパルスとの間のパルス周期が制限範囲内に収まりうる値に設定されている。この結果、検出手段の周期上限異常検出に基づき切換手段がパルス出力信号を切り換えた際に当該切り換えた後のパルス出力信号のパルスと切り換え前のパルス出力信号のパルスとの間のパルス周期を制限範囲内に収めることが可能となる。
【0017】
本発明のパルス信号生成装置では、前記パルス信号のパルス周期を計測するとともに複数回分の周期計測結果に基づいて妥当周期を求める妥当周期取得手段をさらに備え、前記パルス生成手段は、前記検出手段により前記複数のエンコーダの全てに周期異常が検出された場合は、前記パルス信号の一つ前のパルスに前記妥当周期と同周期のパルスを繋げるようにパルス信号を生成することが好ましい。
【0018】
この発明によれば、パルス信号のパルス周期を計測する周期計測手段による複数回分の計測結果に基づいて妥当周期取得手段が妥当周期を求める。パルス生成手段は、検出手段により複数のエンコーダの全てに周期異常が検出された場合、パルス信号の一つ前のパルスに妥当周期と同周期のパルスを繋げてパルス信号を生成する。よって、複数のエンコーダの全てに周期異常が検出された場合でも、パルス信号のパルスを適正なパルス周期で生成することができる。
【0019】
さらに本発明のパルス信号生成装置では、前記ディレイ量管理手段は、前記パルス出力信号ごとに位相差を計測する位相差計測手段を備え、前記相対ディレイ量は前記位相差に応じた調整時間であることが好ましい。
【0020】
この発明によれば、位相差計測手段によりパルス出力信号ごとに位相差が計測される。パルス生成手段は、位相差に応じた調整時間だけ遅延させることでパルス信号が生成される。よって、パルス出力信号の切り換え時におけるパルス信号の位相ずれを効果的に防止できる。
【0021】
本発明のパルス信号生成装置では、前記切換手段により切り換えられた一のパルス出力信号と対応する前記位相差計測手段は、位相差の計測を中止して切り換え時の位相差を保持し、他のパルス出力信号と対応する前記位相差計測手段は位相差の計測を行うように構成され、前記パルス生成手段は、切り換えられたパルス出力信号を前記保持された位相差に応じた調整時間だけ遅延させることが好ましい。
【0022】
この発明によれば、切換手段により切り換えられた一のパルス出力信号と対応する位相差計測手段は、位相差の計測を中止して切り換え時の位相差を保持する。一方、他のパルス出力信号と対応する位相差計測手段は位相差の計測を行う。パルス生成手段は、切り換えられたパルス出力信号を保持された位相差に応じた調整時間だけ遅延させてパルス信号を生成する。よって、パルス出力信号を遅延させてもパルス出力信号のパルス周期を保持できるうえ、次の切り換え時には切り換え先のパルス出力信号を適切な調整時間で遅延させて切り換え前後のパルス出力信号の位相ずれに起因するパルス信号の周期異常を効果的に抑えることができる。
【0023】
本発明は、搬送装置であって、上記発明のパルス信号生成装置と、前記検出対象としての搬送手段とを備えた搬送装置であって、前記パルス信号生成装置を構成する前記エンコーダが前記搬送手段の搬送速度に応じたパルス周期のエンコーダ信号を出力するものであることを要旨とする。
【0024】
この発明によれば、搬送手段の搬送速度に応じた周期をもつパルス信号を周期異常がほとんどない状態で生成しうる搬送装置を提供できる。
本発明は、画像形成装置であって、上記発明の搬送装置と、前記搬送手段により搬送されるターゲットに画像を形成すべく記録を施す記録手段と、前記パルス生成手段により生成されたパルス信号に基づいて前記記録手段の記録タイミングを制御する制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0025】
この発明によれば、制御手段がパルス信号に基づいて記録手段の記録タイミングが制御するので、ターゲットに良好な画質の画像を記録できる。
本発明は、複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号のうち切り換えられた一つのパルス出力信号に基づきパルス信号を生成するパルス信号生成方法であって、前記複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号ごとにパルス信号との相対ディレイ量を管理するディレイ量管理ステップと、複数のエンコーダ信号のパルス異常を個別に検出する検出ステップと、前記複数のパルス出力信号のうちパルス異常が検出されていない一のパルス出力信号に切り換える切換ステップと、前記切換ステップで切り換えられた一のパルス出力信号を対応する前記相対ディレイ量だけ遅延させてパルス信号を生成するパルス生成ステップとを備えたことを要旨とする。この発明によれば、上記パルス信号生成装置の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図1〜図14に従って説明する。
図1は、インクジェット式記録装置の模式側面図を示し、図2は、その模式平面図を示す。なお、図2においては記録ヘッド等を省略している。
【0027】
図1及び図2に示すように、画像形成装置としてのインクジェット式記録装置(以下、単にプリンタ11という)は、記録紙Sを搬送するための搬送装置としてベルト搬送装置12を備える。ベルト搬送装置12は、用紙搬送方向下流側(図1、図2では左側)に設けられた駆動ローラ13と、用紙搬送方向上流側に設けられた従動ローラ14と、駆動ローラ13と従動ローラ14間の略中間位置かつやや下側(図2参照)に配置されたテンションローラ15と、各ローラ13〜15に渡って巻き掛けられた無端状の搬送ベルト16とを有している。
【0028】
図2に示すように、駆動ローラ13には電動モータ17の出力軸が直接又は減速機構(図示省略)を介して動力伝達可能に連結されている。電動モータ17が正転駆動されると、駆動ローラ13が回転駆動し、搬送ベルト16が記録紙Sを上流側から下流側へ搬送可能な方向へ回転する。
【0029】
ベルト搬送装置12の上流側には給紙部18が設けられ、給紙部18に積載された記録紙Sは給紙ローラ19により一枚ずつ給送される。給紙部18とベルト搬送装置12との間には、ゲートローラ20が設けられ、記録紙Sはゲートローラ20の回転により搬送ベルト16上へ給送される。なお、ゲートローラ20は、記録紙Sをローラ面に突き当てることで記録紙Sのスキューを補正し、またゲートローラ20の駆動開始タイミングを図ることで、記録紙Sを搬送ベルト16上の目標位置に載せるようにタイミングを合わせて記録紙Sを送り出す。
【0030】
従動ローラ14の下側には、帯電ローラ21がバネ22により従動ローラ14側へ付勢されて搬送ベルト16に接触して転動可能な状態に配置されている。帯電ローラ21は電源23に接続されて搬送ベルト16を帯電させることが可能であり、搬送ベルト16上に記録紙Sが静電吸着されるようになっている。なお、記録紙Sのベルト吸着方式は、静電吸着方式に限定されず、例えば搬送ベルト16上に形成された吸引孔から負圧により吸引気流を発生させて記録紙Sを吸着する負圧吸着方式も採用できる。なお、ベルト搬送装置12の下流側には、搬送ベルト16上からの印刷後の記録紙Sの排出先となる排紙部24が設けられている。
【0031】
搬送ベルト16の搬送方向中間位置上方には、長尺状をなすラインヘッド方式の記録ヘッド25が搬送ベルト16の幅方向と各々の長手方向が平行となる向きで搬送方向に沿って複数配置されている。記録ヘッド25は、プリンタ11が印刷できる最大幅の記録紙Sの幅方向全域より少し広い範囲に渡り多数のノズルが一定のノズルピッチで配列されてなるノズル列を下面(ノズル形成面)に複数列有しており、用紙搬送速度に合わせたタイミングでノズルからインク滴を順次噴射することで、搬送中の記録紙Sに画像等の印刷が行える。本例では、各記録ヘッド25はインク供給チューブを通じて図示しないインクカートリッジと接続されており、それぞれ対応するインクカートリッジから供給されたインクを吐出する。本例では、各記録ヘッド25は、上流側(図1における右側)から順に、黒、シアン、マゼンタ、イエローの4色に対応するインク滴をそれぞれ噴射する。
【0032】
図2に示すように、搬送ベルト16の上面側縁部には、搬送方向に沿って磁気リニアスケール26が搬送ベルト16の全周に渡って設けられている。磁気リニアスケール26は、搬送ベルト16の側縁部に形成された帯状の磁気記録層に一定ピッチで磁気パターンを記録して構成されている。磁気リニアスケール26の上側(図2では紙面手前側)近接位置には、磁気リニアスケール26上に記録された磁気パターンを再生するための磁気センサからなる第1エンコーダセンサ27A及び第2エンコーダセンサ27Bが設けられている。磁気リニアスケール26と、この磁気リニアスケール26を被検出体として共有する二個のエンコーダセンサ27A,27Bとにより、二個のリニアエンコーダ28,29が構成されている。また、プリンタ11には制御手段としてのコントローラ30が設けられている。コントローラ30は、電動モータ17(図2に示す)を駆動制御するとともに、各エンコーダセンサ27A,27Bから入力したエンコーダ信号ES1,ES2(エンコーダパルス)を基に内部回路で生成した印字基準信号PTS(噴射タイミング信号)(図14参照)に基づき用紙搬送速度(用紙搬送位置)に合わせた適切なタイミングでインク滴の噴射制御を行う。
【0033】
図3は、磁気リニアスケールの着磁パターンの一部を示す模式図である。図3に示すように、磁気リニアスケール26上には、搬送ベルト16(記録紙Sも同様)の位置を検出するために、一定ピッチ(着磁ピッチP)で規則正しくN極とS極が交互に並んで着磁された着磁パターンが形成されている。磁気リニアスケール26の被検出要素(磁極N・S)の配列周期である着磁ピッチPは、プリンタ11の印刷時におけるベルト搬送速度と印刷解像度とから設定されており、例えば35μm(解像度720dpiの場合)や70μm(解像度360dpiの場合)程度の値である。
【0034】
図4にエンコーダセンサの配置構成を示す。2つのリニアエンコーダ28,29をそれぞれ構成する2つのエンコーダセンサ27A,27Bは、搬送方向に「L」、ベルト幅方向に「m」だけ離間して配置されている。搬送ベルト16は、所定長さの一枚の帯状ゴムの両端部を接合して形成されており、継ぎ目Jがある。搬送ベルト16の継ぎ目Jの搬送方向長さを「K」とすると、L>Kの関係が成り立つように配置され、継ぎ目Jが両エンコーダセンサ27A,27Bに同時刻にかかることがないように配置される。また、エンコーダセンサ27A,27Bに接触式センサを用いる場合、ベルト幅方向に「m」離間して配置することによって、ベルト幅方向の同一箇所を集中的に摺動することを避け、ベルト耐久性向上が可能となる。また、エンコーダセンサ27A,27Bのベルト幅方向配置位置は、搬送ベルト16が蛇行や斜行してもエンコーダセンサ27A,27Bが磁気リニアスケール26のスケール幅から外れない位置に設定されている。なお、「m」は両エンコーダセンサ27A,27Bの各検出部の中心間距離を示す。
【0035】
図5及び図6は、磁気リニアスケールの着磁装置を説明する模式図である。図5は着磁装置の模式側面図、図6は着磁装置の模式平面図である。
着磁装置31は、プリンタ11のベルト搬送装置12のものとほぼ同じ構成の駆動ローラ32と従動ローラ33とテンションローラ34とを備える。搬送ベルト16には、用紙搬送経路にあたらない側縁部に一定幅の磁性層26Aが塗布等の手法で形成されている。この搬送ベルト16を各ローラ32〜34に巻き掛けるように装着する。
【0036】
図6に示すように、駆動ローラ32には電動モータ35(例えばDCモータ)が直接又は減速機構を介して動力伝達可能な状態で連結されている。また、従動ローラ33には、高分解能(例えば720万パルス/rev)のロータリエンコーダ36が取り付けられている。コントローラ37は、ロータリエンコーダ36からの回転角度に同期したエンコーダパルスを入力し、このエンコーダパルスに基づいて搬送ベルト16が正確に一定速度で回転駆動するように電動モータ35を駆動制御する。
【0037】
この着磁装置31において、搬送ベルト16の磁性層26Aと対応する位置には、図5に示す書込み磁気ヘッド38が磁性層26Aに軽く接触する状態に設けられている。なお、書込み磁気ヘッド38としては、例えばGMR(Giant Magneto Resistive Effect)センサやMR(Magneto Resistive Effect)センサなどの多値出力可能な磁気センサを使用している。その他、ホール素子やMI(磁気インピーダンス)素子等を使用してもよい。
【0038】
書込み磁気ヘッド38は、コントローラ37内の書込み制御回路(図示せず)に接続されている。この書込み制御回路は、ロータリエンコーダ36からのエンコーダパルスを例えば分周した分周信号により、書込み磁気ヘッド38内のコイルの電流方向を変化させ、磁性層26Aに磁極Nと磁極Sとが一定の着磁ピッチPで磁化反転された着磁パターンを書き込む。こうして所定の着磁パターンが書き込まれた磁気リニアスケール26を側端部に有する搬送ベルト16が、プリンタ11の各ローラ13〜15に巻き掛けられる。
【0039】
なお、搬送ベルト16の継ぎ目J部分に段差など形状的欠陥があったり、紙粉やインクミストが磁気リニアスケール26に付着すると、リニアエンコーダ28,29を構成するエンコーダセンサ27A,27Bの出力パルスの欠落(パルス抜け)が発生する。また、プリンタ11の装置個体差によって搬送ベルト16の速度分布中心値(ベルト平均速度)がプリンタ11ごとに異なるので、リニアエンコーダ28,29から出力されるパルスの周期分布中心値(平均パルス周期)がプリンタ11ごとに異なる。また、ローラ13,14等の偏心量やベルト厚み等の偏りなどが、搬送ベルト16の速度のばらつきを発生させ、リニアエンコーダ28,29の出力パルスの周期のばらつきを生じさせる原因となる。
【0040】
図7はコントローラ30内に設けられた印字基準信号生成装置を示す。図8はディレイ処理回路を示す。また、図9はディレイ処理回路における信号タイミングチャートを示し、(a)マスク処理、(b)ディレイ処理をそれぞれ示す。以下、図7に従って、必要に応じて図8及び図9を参照しつつ印字基準信号生成装置の構成及び動作を説明する。パルス信号生成装置としての印字基準信号生成装置41は、リニアエンコーダ28,29からのエンコーダ信号ESと、クロック回路42からの基準クロック信号CLとに基づき印字基準信号PTSを生成して記録ヘッド25へ出力する。なお、記録ヘッド25内では、ヘッド駆動回路がノズル毎に設けられた吐出駆動素子(図示せず)を印字データに基づき印字基準信号PTSのタイミングに合わせて駆動し、駆動された吐出駆動素子に対応するノズルからインク滴が噴射される。ここで、吐出駆動素子としては、インクジェット方式に用いられる圧電振動素子、静電駆動素子、ヒータ等を採用できる。
【0041】
図7に示すように、印字基準信号生成装置41は、第1エンコーダセンサ27A、第2エンコーダセンサ27B、クロック回路42、第1ディレイ処理回路43、第2ディレイ処理回路44、センサ選択回路45及び印字基準信号生成回路46などを備える。
【0042】
第1ディレイ処理回路43は、第1エンコーダセンサ27Aからのエンコーダ信号ES1とクロック回路42からの基準クロック信号CLとを入力して、エンコーダ信号ES1のパルス周期異常検出処理、及びパルス周期補正処理を行う。第1ディレイ処理回路43は、パルス周期異常検出処理として、エンコーダ信号ESのパルス抜けを検出するパルス抜け検出処理、パルス周期が適正周期範囲の上限を超えたか否かを判定する上限検出処理、パルス周期が適正周期範囲の下限を下回ったことを検出する下限検出処理を行い、それぞれ異常検出時にHiレベル、正常検出時にLowレベルとなる抜け検出信号PLS1、上限検出信号US1、下限検出信号LS1をそれぞれ出力する。また、第1ディレイ処理回路43は、印字基準信号生成回路46から出力される印字基準信号PTSと同周期のパルスを有し印字基準信号PTSを生成する際の基準パルスとされる出力信号DP1をエンコーダ信号ES1等に基づき生成する。
【0043】
また、第2ディレイ処理回路44は、第1ディレイ処理回路43と同様の回路構成を有しており、第2エンコーダセンサ27Bからのエンコーダ信号ES2と基準クロック信号CLとを入力して、エンコーダ信号ES2のパルス周期異常検出処理、及びパルス周期補正処理を同様に行う。そして、第2ディレイ処理回路44は、内部回路におけるパルス周期異常検出処理の検出結果として、抜け検出信号PLS2、上限検出信号US2、下限検出信号LS2を出力するとともに、印字基準信号PTSと同周期でその信号生成時の基準パルスとされる出力信号DP2を出力する。
【0044】
第1ディレイ処理回路43から出力された抜け検出信号PLS1、上限検出信号US1及び下限検出信号LS1の三信号はオア回路47入力され、これらの論理和演算結果がオア回路47からエラー信号Er1として出力される。よって、抜け検出信号PLS1、上限検出信号US1及び下限検出信号LS1の三信号のうち少なくとも一の検出信号が周期異常検出時のHiレベルであればエラー信号Er1はHiレベルとなり、これら三信号のうち全てが正常検出時のLowレベルであればエラー信号Er1はLowレベルとなる。同様に、第2ディレイ処理回路44から出力された抜け検出信号PLS2、上限検出信号US2及び下限検出信号LS2の三信号はオア回路48に入力され、これらの論理和演算結果がオア回路48からエラー信号Er2として出力される。各オア回路47,48からの各エラー信号Er1,Er2は、センサ選択回路45に入力される。
【0045】
センサ選択回路45は、入力したエラー信号Er1,Er2のうち一方が周期異常検出の旨のHiレベルであった場合、そのHiレベルとなったエラー信号Er入力元側のディレイ処理回路と反対側のディレイ処理回路からの出力信号を選択する旨のセンサ選択信号を出力する。本実施形態では、センサ選択回路45は、エラー信号Er1がHiレベルであるときにLowレベルのセンサ選択信号SSを出力し、一方、エラー信号Er2がHiレベルであるときにHiレベルのセンサ選択信号SSを出力する。センサ選択回路45から出力されたセンサ選択信号SSは印字基準信号生成回路46に入力される。
【0046】
また、第1ディレイ処理回路43の抜け検出信号PLS1と、第2ディレイ処理回路44の抜け検出信号PLS2とがアンド回路49に入力され、これらの論理積演算結果がアンド回路49からタイマ選択信号TSとして出力される。つまり、タイマ選択信号TSは、各エンコーダ信号ES1,ES2に同時にパルス抜けが検出された場合にHiレベルとなり、それ以外のときにLowレベルとなる。このタイマ選択信号TSは、印字基準信号生成回路46に入力される。また、第1及び第2ディレイ処理回路43,44からの各出力信号DP1,DP2はそれぞれ印字基準信号生成回路46へ入力される。
【0047】
印字基準信号生成回路46は、タイマ選択信号TSがLowレベルの状態において、センサ選択信号SSがLowレベルのときには出力信号DP1に基づき印字基準信号PTSを生成し、一方、センサ選択信号SSがHiレベルのときには出力信号DP2に基づき印字基準信号PTSを生成する。また、印字基準信号生成回路46は、タイマ選択信号TSがHiレベルであれば、センサ選択信号SSの信号値に関わらず内部の設定周期(後述する平均周期Tavg)と同じ時間の周期をもつ印字基準信号PTSを生成する。なお、第1及び第2ディレイ処理回路43,44及びセンサ選択回路45の詳細については後述する。
【0048】
図8はディレイ処理回路のブロック図を示す。以下、図8を用いてディレイ処理回路の回路構成を説明する。ここで、第1ディレイ処理回路43と第2ディレイ処理回路44は同じ回路構成なので、図8では特に区別することなく説明する。そのため、この回路に関連する信号の符号についても、エンコーダ信号ES、出力信号DP、下限検出信号LS、上限検出信号US、抜け検出信号PLSと記す。
【0049】
図8に示すように、ディレイ処理回路43(44)は、マスク処理部51とディレイ処理部52とを備えている。
マスク処理部51は、エンコーダ信号ESと基準クロック信号CLとを入力して、出力マスクMS(マスク用パルス)、上限検出信号US、下限検出信号LS(第1下限検出信号とも呼ぶ)、第2下限検出信号KSを生成する処理回路部である。また、ディレイ処理部52は、マスク処理部51で生成された出力マスクMS及び検出信号US,LS,KSとエンコーダ信号ESと用いて、出力信号DPを生成する処理回路部である。
【0050】
まずマスク処理部51の回路構成を説明する。図8に示すように、マスク処理部51は、エンコーダ信号周期計測部(以下、単に「周期計測部53」という)、エンコーダ信号周期記憶部(以下、単に「周期記憶部54」という)、平均周期算出部55、パルス抜け検出器56、上限・下限値算出部57、マスク生成回路58、上限検出器59、第1下限検出器60及び第2下限検出器61等を備えている。
【0051】
周期計測部53は、リニアエンコーダ28(29)を構成するエンコーダセンサ27A(27B)からのエンコーダ信号ESと、クロック回路42からの基準クロック信号CLとを入力し、エンコーダ信号ESのパルスごとにパルス周期を計測する。詳しくは、周期計測部53は、エンコーダ信号ESの一のパルスの立ち上がりから次パルスの立ち上がりまでの間に入力される基準クロック信号CLのパルス数をカウンタ(図示せず)で計数することで、パルス周期を計測する。この周期計測結果は、周期計測部53から、パルス抜け検出器56、上限検出器59、第1下限検出器60及び第2下限検出器61にクロックカウントアップ毎に逐次送信され、各検出器56,59〜61ではリアルタイムで比較演算が行われる。
【0052】
パルス抜け検出器56からの抜け検出信号PLSとエンコーダ信号ESとがオア回路(図示省略)による論理和演算結果が第1ラッチ信号として周期記憶部54に入力され、周期記憶部54には第1ラッチ信号の立ち上がりタイミングで周期計測部53の周期計測結果がラッチされる。また、平均周期算出部55には、第1ラッチ信号の反転信号である第2ラッチ信号の立ち上がりのタイミングで周期記憶部54からの記憶周期が半周期遅れてラッチされる。
【0053】
平均周期算出部55は、周期記憶部54の記憶周期を周期平均値算出用データとして用い、以下の式(1)に基づいて、エンコーダパルスの平均周期(パルス周期平均値)Av(n)を算出する。
Av(n)=(Av(n-1)×(Q−1)+Tn)/Q … (1)
ここで、Av(n)は今回(n回目)の平均周期、Av(n-1)は前回(n-1回目)の平均周期、Qは平均するデータ個数(計測周期データ個数)である。平均周期算出部55は、平均周期の算出に使用する過去のデータを格納する格納部(例えばレジスタ)を備え、その格納部には前回(n-1回目)の平均周期Av(n-1)とデータ個数Qとが記憶される。例えばデータ個数Qは最大「16」「64」「128」「256」等の数値であるが、前回の平均周期Av(n-1)とデータ個数Qとを保存できる格納領域を用意するだけで、計測周期データQ個分を平均したにほぼ等しい平均周期Av(n)を算出することが可能となっている。平均周期算出部55が算出した平均周期Av(n)は、パルス抜け検出器56、上限・下限値算出部57及び第1下限検出器60に送信される。
【0054】
パルス抜け検出器56は、周期計測部53が今回計測した計測周期と、平均周期算出部55から入力した平均周期Av(n)とに基づき以下の式(2)で示される条件式が成立するか否かを比較判定する。
計測周期Tnew>平均周期Av(n)×検出設定値B … (2)
ここで、検出設定値Bは、パルスが現れない期間が、平均周期Av(n)の何倍になったらパルス抜け(パルス欠落)であると判定するかの倍率を決めている設定値である。検出設定値Bは、例えば1.3〜2の範囲内の値に設定されている。パルス抜け検出器56は、上記式(2)で示された条件式Tnew>Av(n)×Bを満たしたパルス抜け検出時にHiレベルとなり、パルス抜け非検出時にLowレベルとなるパルス抜け検出信号PLSを出力する。ここで、周期計測部53は、クロックカウントアップ毎にパルス抜け検出器56に周期計測結果を送信するため、パルス抜け検出器56ではリアルタイムで比較演算が行われる。なお、パルス抜け検出の条件式は、平均周期Av(n)の替わりに周期記憶部54の記憶周期を用いて、計測周期Tnew>記憶周期Told×検出設定値B を採用してもよい。
【0055】
上限・下限値算出部57は、平均周期Av(n)の±H(%)の各値をそれぞれ下限値Tmin、上限値Tmaxとして算出する。下限値Tmin=Av(n)×(100−H)/100)、上限値Tmax=Av(n)×(1 00+H)/100で示される。例えばH(%)が2%であれば、下限値Tmin=Av(n)×0.98、上限値Tmax=Av(n)×1.02と算出される。マスク生成回路58には下限値Tmin及び上限値Tmaxが送られ、上限検出器59には上限値Tmaxが送られ、さらに第1下限検出器60には下限値Tminが送られる。なお、周期制限値(上限・下限値)を決めるH(%)の設定値は、工場出荷時もしくはユーザによって設定される。
【0056】
マスク生成回路58は、基準クロック信号CL、エンコーダ信号ES、上限・下限値を入力し、平均周期Av(n)を中心とする±H(%)の範囲に渡りHiレベルとなるパルス幅の出力マスクMSを生成する。すなわち、出力マスクMSは、平均周期Av(n)を中心として、下限値Tmin(=Av(n)×(100−H)/100)と上限値Tmax(=Av(n)×(100+H)/100)との間の範囲でHiレベルとなるパルスとして生成される。マスク生成回路58は、例えばカウンタを備え、エンコーダ信号ESを基準に計測するクロックカウント値がマスク下限値Tminに達するとパルスを立ち上げ、クロックカウント値がマスク上限値Tmaxに達するとパルスを立ち下げる。そして、この動作を繰り返すことにより、例えば図9(a)のタイミングチャートに示すように、平均周期Av(n)を中心とする下限値Tminと上限値Tmaxの範囲でHiレベルとなるパルス幅Av(n)×2H(%)の出力マスクMSが生成される。この出力マスクMSは第2下限検出器61に送信される。
【0057】
上限検出器59は、一つ前のエンコーダパルス入力時からマスク上限値までの間に次のエンコーダパルスの入力が検出されなかった場合に、計測周期がマスク上限値Tmaxに達した時点でHiレベルとなり、次のエンコーダパルス入力時点でLowレベルになる上限検出信号USを出力する。詳しくは、上限検出器59は、計測周期と上限値Tmaxとエンコーダ信号ESとを入力し、一つ前のエンコーダパルス入力時から次のエンコーダパルス入力時までのクロックパルス数のカウント値である計測周期がマスク上限値Tmaxを超えた時点でパルスを立ち上げる。そして、その後、検出中のエンコーダパルスの立ち上がりエッジの検出時点でパルスを立ち下げることで、図9(a)に示すような上限検出信号USを出力する。
【0058】
図8に示す第1下限検出器60は、一つ前のエンコーダパルス入力時からマスク下限値Tminまでの間に次のエンコーダパルスの立ち上がりエッジが検出されると、計測周期がマスク中心位置(=平均周期Av(n))に達した時点でHiレベルを出力してパルスを立ち上げ、検出中のエンコーダパルスの立ち下がりエッジ検出時点もしくは計測周期がマスク上限値に達した時点でLowレベルへパルスを立ち下げることで、図9(a)に示す第1下限検出信号LSを出力する。詳しくは、第1下限検出器60は、計測周期とマスク下限値Tminとエンコーダ信号ESと平均周期Av(n)とを入力し、一つ前のエンコーダパルス入力時から次のエンコーダパルス入力時までのクロックパルス数のカウント値である計測周期が、マスク下限値Tminに到達する前に検出中のエンコーダパルスの立ち上がりエッジが検出されると、計測周期がマスク中心値(=平均周期Av(n))に達した時点でパルスを立ち上げ、計測周期がマスク上限値Tmaxに達した時点でパルスを立ち下げることで、第1下限検出信号LS(下限検出信号)を出力する。
【0059】
図8に示す第2下限検出器61は、一つ前のエンコーダパルス入力時からマスク下限値までの間に次のエンコーダパルスの立ち上がりエッジが検出されると、計測周期がマスク下限値Tminに達した時点でHiレベル信号を出力してパルスを立ち上げ、計測周期がマスク上限値に達した時点でLowレベル信号を出力してパルスを立ち下げることで、図9(a)に示す第2下限検出信号KSを出力する。詳しくは、第2下限検出器61は、計測周期とマスク下限値Tminとマスク上限値Tmaxとエンコーダ信号ESとを入力し、一つ前のエンコーダパルス入力時から次のエンコーダパルス入力時までのクロックパルス数のカウント値である計測周期がマスク下限値Tminに到達する前にエンコーダパルスの立ち上がりエッジを検出すると、計測周期がマスク下限値Tminに達した時点でパルスを立ち上げ、計測周期がマスク上限値Tmaxに達した時点でパルスを立ち下げることで、第2下限検出信号KSを出力する。こうして、マスク処理部51は、出力マスクMS、抜け検出信号PLS、上限検出信号US、第1下限検出信号LS、第2下限検出信号KSを生成する。
【0060】
次に、ディレイ処理部52について説明する。ディレイ処理部52はマスク処理部51で生成された各検出信号PLS,US,LS,KS及びエンコーダ信号ESを用いて出力信号DPを生成する。ここで、出力信号DPは、印字基準信号PTSを生成する際の基準となる信号である。
【0061】
以下、図8を用いてディレイ処理部52の構成及び動作を図9(b)に示すディレイ処理を説明するタイミングチャートを参照しつつ説明する。
図8に示すように、ディレイ処理部52は、第1信号生成部63、第2信号生成部64及び各種の論理回路などを備える。
【0062】
マスク処理で生成された検出信号PLS,US,LS1,LS2及びエンコーダ信号ESから出力信号DPを生成するまでの処理は、次のように行われる。
アンド回路65の出力A1は、エンコーダ信号ESと出力マスクMSとの論理積演算によって生成される。出力A1にはマスク周期範囲内に立ち上がりエッジが検出されたエンコーダパルス及びマスク下限値より短い周期と検出されたエンコーダパルスのときに、前者ではエンコーダ信号ES立ち上がり時刻と同時刻で立ち上がり、後者ではマスク下限値で立ち上がり、共にマスク上限値で立ち下がるパルスが出力され、マスク上限値を超える周期を有するエンコーダパルスのときにはパルスが生成されない。
【0063】
次にEXオア回路66によりこの出力A1と第2下限検出信号KSとの排他論理和をとり出力A2を生成する。出力A2にはマスク周期範囲内に立ち上がりエッジが検出されたエンコーダパルスのときのみにエンコーダ信号ES立ち上がり時刻と同時刻で立ち上がりマスク上限値Tmaxで立ち下がるパルスが現れる。
【0064】
同時にアンド回路67により、出力A1と第1下限検出信号LSとの論理積をとることによって、マスク上限値Tmaxを超えて立ち上がりエッジが検出されたエンコーダパルスのときに、マスク中心値Av(n)で立ち上がりマスク上限値Tmaxで立ち下がる補正パルスのみが現れた出力B1が生成される。さらにオア回路68によるこの出力B1と出力A2の論理和演算の結果として出力信号B2が生成される(図9(b)参照)。この出力B2は第1信号生成部63に入力される。
【0065】
第1信号生成部63は、出力信号B2の立ち上がりエッジをDtだけ遅延させて出力して、その立ち上がり時点から時間間隔W経過した時刻で立ち下げることにより、図9(b)に示す出力信号Cを生成する。ここで、ディレイ時間Dtは固定値である。ディレイ時間Dtは事前に計測された、若しくは装置毎に設定された周期ZTを用いて、以下の式によって算出されることが望ましい。
Dt=ZT×2H/100 …(3)
ここで、ZTはエンコーダ信号平均周期、Hは周期制限%である。例えばH=2%であれば、Dt=ZT×0.04となる。もちろん、上記Dtの値は一例であって適宜な値を設定できる。
【0066】
一方、抜け検出信号PLSのノット回路69を介した論理否定と、上限検出信号USとのアンド回路70による論理積をとり出力信号Dを生成する。図9(b)に示すように、出力信号Dはマスク上限値Tmaxまでに立ち上がりエッジが検出されなかったエンコーダパルスのときに、マスク上限値Tmaxで立ち上がり、エンコーダパルスの立ち上がりエッジ検出時点もしくはパルス抜け検出時点(図9(b)の時点では前者)で立ち下がるパルスである。この出力Dは、第2信号生成部64に入力される。
【0067】
図8に示す第2信号生成部64は、出力信号Dの立ち上がりエッジをディレイ時間UDtだけ遅延させて出力して、時間間隔W経過した時刻で立ち下げることにより、図9(b)に示すような出力信号Eを生成する。本例では、ディレイ時間UDtは、以下の式によって算出される。
UDt=Dt−Av(n)×H/100 …(4)
ここで、Dtは第1信号生成部63におけるディレイ時間、Av(n)は平均周期、Hは周期制限%である。
【0068】
図8に示すように、出力信号Cと出力信号Eはオア回路71に入力され、両者の論理和演算結果が出力信号DPとして出力される。出力信号Cはマスク範囲内で立ち上がったエンコーダ信号ESの立ち上がりエッジはそのまま使用し、マスク下限値以下の周期で立ち上がったエンコーダ信号ESをマスク中心値Av(n)で立ち上がる信号に補正して、立ち上がり時刻をディレイ時間Dtだけ遅延させたパルス幅Wのパルスであり、出力信号Eはマスク上限値からディレイ時間UDt(ディレイ時間Dtからマスク範囲の半分の時間Av(n)×Hを引いた時間)だけ遅延して立ち上がるパルス、つまり立ち上がり時刻をマスク中心値Av(n)からDtだけ遅延した位置に補正したパルス幅Wのパルスである。従って、出力信号DPはマスクによる周期監視終了後に立ち上がる信号となり、周期tn(pn)が制限範囲(Av(n)×(1−H/100)≦tn(pn)≦Av(n)×(1+H/100))内に収まった信号となる。
【0069】
図10は、パルス抜け発生時のディレイ処理回路の出力信号生成タイミングを示すタイミングチャートである。図10に示すように、パルス抜け発生時は、まず計測周期がマスク上限値を超えた時点で、上限検出器59により上限検出信号USがLowレベルからHiレベルに立ち上がる。次いで、計測周期がAv(n)×Bを超えてパルス抜け検出器56によりパルス抜けが検出された時点で、抜け検出信号PLSがLowレベルからHiレベルに立ち上がる。この場合、抜け検出信号PLSがLowレベルの状態で上限検出信号USが立ち上がるため、アンド回路70の出力Dにパルスが現れるので(図8、図9(b)を参照)、パルス抜け検出前に出力信号DPにパルスが生成される。そして、このパルスを最後にパルス抜け終了後、さらにエンコーダ1パルスの入力が終わるまで出力信号DP1にパルスが発生しない。このため、パルス抜け検出時は出力信号DP1を用いずに印字基準信号PTSのパルスを生成するようにしている。
【0070】
図11は、マスク生成回路の出力マスク生成タイミングのタイミングチャートを示す。
マスク生成回路58は例えばカウンタを備えたマスク生成回路部(図示せず)を一組備え、一組のマスク生成回路部がエンコーダ信号ES及び平均周期Av(n)を基準として、それぞれ出力マスクMS1,MS2を生成し、2種類の出力マスクMS1,MS2のアンド回路(図示せず)による論理和演算結果として出力マスクMSを生成する。
【0071】
一方のマスク生成回路部を構成する第1マスク用カウンタ73は、エンコーダ信号ESを立ち上がり基準で2分周した信号であるカウント開始タイミング信号の立ち下がりによってカウントを開始し、エンコーダ信号ESを立ち下がり基準で2分周した信号であるカウント値リセットタイミング信号の立ち下がりによって零にリセットされる。但し、周期制限時間より前にエンコーダパルスが入力された場合は、カウンタ値が周期制限時間の中心値の時刻に達した時点で、周期制限時間内にエンコーダパルスが入力されない場合は、周期制限上限時刻に達した時点でカウント開始タイミング信号を変化させる。カウント開始タイミング信号の立ち上がり時刻の制限計測は第2マスク用カウンタ74で計測され、立ち下がり時刻の制限計測は、第1マスク用カウンタ73で計測される。この動作により、パルス抜けが発生しない限り、カウンタ信号のリセット、スタートを繰り返すことになる。
【0072】
そして、第1マスク用カウンタ73のカウント値が、周期制限範囲の下限値Tmin=Av(n)×(100−H)/100に達した時刻で出力マスクMS1を立ち上げ、カウント値が周期制限範囲の上限値Tmax=Av(n)×(100+H)/100に達した時刻で出力マスクMS1を立ち下げる。この動作を繰り返し1パルスおきに出力マスクMS1が生成される。出力マスクMS2は、第2マスク用カウンタ74のカウント値を用いて出力マスクMS1と同様の方法で生成される。そして、図示しないアンド回路で出力マスクMS1と出力マスクMS2の論理和演算結果が出力マスクMSとして生成される。
【0073】
図12(a)はセンサ選択回路45の回路構成及び図12(b)はその入出力信号のタイミングチャートを示す。センサ選択回路45は、エラー信号Er1,Er2を入力して、エラー信号Er1がHiレベルのときに、Lowレベルのセンサ選択信号SSを出力し、エラー信号Er2がHiレベルのときに、Hiレベルのセンサ選択信号SSを出力する回路である。
【0074】
センサ選択回路45は、図12(a)に示すように、Reset入力であるエラー信号Er2と、Set入力であるエラー信号Er1のノット回路76を介した反転信号とが入力されるアンド回路77と、アンド回路77の出力をReset入力とするとともに、エラー信号Er1をSet入力とするRS−FF(リセットフリップフロップ)とを備えた構成となっている。RS−FFは、アンド回路77の出力が入力となるノア回路78と、エラー信号Er1が入力されるノア回路79とを備え、各ノア回路78,79の出力がそれぞれ他方のノア回路の入力となるように接続されており、Q端子からセンサ選択信号SSを出力する。
【0075】
図12(b)のセンサ選択回路45のタイミングチャートに示すように、センサ選択回路45に入力されるエラー信号Er1及びエラー信号Er2は共に、正常周期検出時にLowレベルとなり、異常周期検出時にHiレベルとなる。エラー信号Er1が立ち上がった時にセンサ選択信号SSはLowレベルからHiレベルに立ち上がり、一方、エラー信号Er1がLowレベルの状態でエラー信号Er2が立ち上がった時にセンサ選択信号SSは立ち下がるようになっている。よって、エラー信号Er1が第1エンコーダセンサ27A側の周期異常検出時に立ち上がりセンサ選択信号SSがLowレベルからHiレベルに立ち上がることでエンコーダセンサの切り換えが行われた後、第1エンコーダセンサ27A側の周期異常が検出されなくなって(つまり正常周期に復帰して)エラー信号Er1が立ち下がっても、その後、次にエラー信号Er2が第2エンコーダセンサ27B側で周期異常が検出されたことにより立ち上がるまで第1エンコーダセンサ27Aへの復帰は行われない。
【0076】
このため、センサ選択回路45は、第1及び第2エンコーダセンサ27A,27Bの頻繁な切り換えを抑制し、使用中のエンコーダセンサで周期異常が検出され且つ他方のエンコーダセンサが正常の場合にのみエンコーダセンサの切り換えを行う。これにより異常周期から正常周期への復帰直後の不安定な信号を使用する頻度を一層減少させている。
【0077】
図13は、印字基準信号生成回路46の概略回路構成を示す。
印字基準信号生成回路46は、選択回路81、第1遅延回路82、第2遅延回路83、第1位相差計測部84、第2位相差計測部85、平均周期算出部86、周期計測部87及び信号生成部88などを備える。印字基準信号生成回路46に入力された各信号DP1,DP2,SS,TS,CLは、選択回路81に入力される。また、選択回路81から各部82〜88には、図示は省略しているが基準クロック信号CLが入力されている。
【0078】
選択回路81は、センサ選択信号SSに基づき第1位相差計測部84及び第2位相差計測部85の計測動作を制御する。すなわち、選択回路81は、周期異常検出側のエンコーダセンサに対応する位相差計測部による位相差の計測を中止させるとともに、正常周期検出状態に復帰した側のエンコーダセンサに対応する位相差計測部による位相差の計測を行わせる。
【0079】
例えばセンサ選択信号SSがHiレベルであれば、第1位相差計測部84による位相差dnの計測は中止させるとともに、第2位相差計測部85による位相差Dnの計測を行わせる。また、センサ選択信号SSがLowレベルであれば、第2位相差計測部85による位相差Dnの計測を中止させるとともに、第1位相差計測部84による位相差dnの計測を行わせる。
【0080】
また、選択回路81は、タイマ選択信号TSがHiレベルになると、そのHiレベルを周期計測部87に出力してこれを起動させる。周期計測部87はクロックカウント値を計数して所定の時間を計時するタイマとして機能し、印字基準信号PTSの前のパルスがその周期を終えたタイミングで信号生成部88がパルスを立ち上げた時刻を起点として計時を開始する。
【0081】
平均周期算出部86は、印字基準信号PTSを入力してパルスごとの周期を計測するとともに、複数の計測周期から平均周期を求めて一時保持している。平均周期算出方法は、エンコーダ信号ESの平均周期Av(n)を計測する図8に示す平均周期算出部55と同じ方法を採用し、以下の式(5)を同様に用いて、前回の平均周期Tavgと今回の計測周期Tptsとデータ個数Qを用いて計算している。
Tavg(n)=Tavg(n-1)×(Q−1)+T(n))/Q … (5)
ここで、Tavg(n)は今回(n回目)の平均周期、Tavg(n-1)は前回(n-1回目)の平均周期、Qは平均するデータ個数(計測周期データ個数)である。平均周期算出部86は、平均周期Tavgの算出に使用する過去のデータを格納する格納部(例えばレジスタ)を備え、その格納部には前回(n-1回目)の平均周期Tavg(n-1)とデータ個数Qとが記憶される。
【0082】
アンド回路91には、センサ選択信号SSがノット回路92で反転された反転信号と、第1遅延回路82からの出力信号とが入力され、両信号の論理積演算結果がアンド回路91から出力される。また、アンド回路93には、センサ選択信号SSと、第2遅延回路83からの出力信号とが入力され、両信号の論理積演算結果がアンド回路93から出力される。
【0083】
両アンド回路91,93の出力はオア回路94で論理和演算され、このオア回路94の出力と、タイマ選択信号TSとがアンド回路95で論理積演算される。このため、タイマ選択信号TSがHiレベルのときにはアンド回路95の出力はLowレベルになる。次いでオア回路96には、アンド回路95の出力と、信号生成部88からの出力とが入力され、両者の論理和演算結果が印字基準信号PTSとして出力される。
【0084】
図14は、本実施形態の印字基準信号生成装置41の動作を説明するタイミングチャートを示す。なお、以下の説明において、第1ディレイ処理回路43の出力信号DP1を「第1出力信号DP1」と呼び、第2ディレイ処理回路44の出力信号DP2を「第2出力信号DP2」と呼ぶ場合もある。図14のタイミングチャートにおいて、位相差dnは第1位相差計測部84が計測した位相差を示し、位相差Dnは第2位相差計測部85が計測した位相差を示す。
【0085】
印字基準信号生成回路46においてセンサ選択信号SSがLowレベルの場合は、第1ディレイ処理回路43のからの第1出力信号DP1が選択されて印字基準信号PTSの生成が行われる。第1出力信号DP1はそのパルスエッジが第1遅延回路82により第1位相差計測部84が計測した最新の位相差d1分のディレイ量(調整時間)だけ遅延されることにより印字基準信号PTSが生成される。第1出力信号DP1の次の周期t2,周期t3のパルスについても同様に位相差d1分のディレイ量だけ遅延される。この結果、印字基準信号PTSのパルス周期は第1出力信号DP1のパルス周期が保持されることになる。よって、周期情報を保持しなくとも、印字基準信号PTSをそのパルス周期が第1出力信号DP1のパルス周期と同じになるように生成できる。
【0086】
この動作により、第1出力信号DP1を基に印字基準信号PTSを生成している間、印字基準信号生成回路46内では、第2位相差計測部85が第2出力信号DP2と印字基準信号PTSとの位相差Dnを計測し、逐次変更する。よって、図14に示すように、第1エンコーダセンサ使用区間では、第2出力信号DP2の毎パルスごとに印字基準信号PTSのパルスとの位相差がD1,D2,…のように逐次更新される。なお、第1及び第2位相差計測部84,85は、内部のカウンタが出力信号DP1,DP2のパルス立ち上がりエッジ検出時点から印字基準信号PTSのパルス立ち上がりエッジ検出時点までの間に入力されるクロックカウント値として位相差dn,Dnを計測する。
【0087】
その後、例えばエンコーダ信号ES1にパルス抜けが発生して抜け検出信号PLS1がHiレベルになると、センサ選択信号SSがHiレベルとなる。印字基準信号生成回路46においてセンサ選択信号SSがHiレベルであることを検出した場合、選択回路81が第1位相差計測部84による位相差Dnの計測を中止させる。これとほぼ同時に第2遅延回路83は第2位相差計測部85が計測した最新の位相差Dn(図14の例では位相差D4)を基に、第2出力信号DP2を位相差Dn分のディレイ量(調整時間)だけ遅延させて印字基準信号PTSとして出力する。第2エンコーダセンサ使用区間では、第2出力信号DP2の次の周期p5,周期p6,…,周期p9のパルスについても同様に位相差D4分のディレイ量だけ遅延される。この結果、印字基準信号PTSのパルス周期は第2出力信号DP2のパルス周期が保持されることになる。
【0088】
一方、第2エンコーダセンサ使用区間への切り換え後、第1出力信号DP1のパルスが入力された後、第1位相差計測部84により印字基準信号PTSと第1出力信号DP1との位相差dnが計測される。図14に示すように、第2エンコーダセンサ使用区間では、第1出力信号DP1の毎パルスごとに印字基準信号PTSのパルスとの位相差がd2,d3,…のように逐次更新される。
【0089】
その後、エンコーダ信号ES2にパルス抜けが発生して抜け検出信号PLS2がHiレベルになると、再度、センサ選択信号SSがLowレベルになる。すると、第1遅延回路82は第2位相差計測部85が計測した最新の位相差dn(図14の例では「d4」)を用いて第1出力信号DP1を遅延させることで印字基準信号PTSを出力する。この間、位相差Dnは第2出力信号DP2の入力があるまで計測されない。また、印字基準信号PTSが出力されている間、平均周期算出部86は印字基準信号PTSのパルス周期を計測してパルス複数回分の平均周期Tavg(周期平均値)を算出する。この平均周期Tavgの算出には、前回の平均周期Tavg(n-1)と今回の計測周期T(n)とデータ個数Qを用いて、前述の式(5)に従って行われる。
【0090】
その後、図14に示すように、2つのエンコーダセンサ27A,27Bが同時にパルス抜けを発生した場合、タイマ選択信号TSがHiレベルに変化する。すると、信号生成部88は、印字基準信号PTSの前のパルスに平均周期算出部86により算出された平均周期Tavgのパルスを繋げるようにパルスを生成して印字基準信号PTSとして出力する。このとき、タイマ選択信号TSがHiレベルなると、まず信号生成部88が印字基準信号PTSの前のパルスの周期終了を検出し、その周期終了検出時点でパルスを立ち上げ、これと同時に周期計測部87の計測を開始する。そして、そのパルスの立ち上がり時から計測を開始した周期計測部87の計測周期が、パルス幅Wに達すると、信号生成部88はパルスを立ち下げ、さらに計測周期が平均周期Tavgに達すると、信号生成部88はパルスを立ち上げる。以後、タイマ選択信号TSがHiレベルの間は、この動作を繰り返すことで、平均周期Tavgを周期にもつパルスを生成することで印字基準信号PTSを出力する。この結果、出力信号DP1,DP2の両方にパルス抜けが発生しても、パルスを補間することでパルス抜けのない印字基準信号PTSを生成できる。
【0091】
以上の動作を繰り返すことにより、2つのエンコーダセンサ27A,27Bから出力されるエンコーダ信号ES1,ES2に位相差があった場合でも、エンコーダセンサ切り換え時の周期のずれを最小に抑えた印字基準信号PTSの生成が可能となる。また、2つのエンコーダセンサ27A,27Bで同時にパルス抜け(パルス欠落)が発生した場合でも、平均周期算出部86が算出した平均周期Tavgを用いて周期計測部87が計時を行ってパルスの立ち上がりと立ち下がりのタイミングを決めることで、信号生成部88が平均周期Tavgのパルスで印字基準信号PTSを生成する。このため、印字基準信号PTSのパルス欠落を防止することができる。
【0092】
こうして搬送ベルト16が装着されたプリンタ11において、エンコーダセンサ27A,27Bからのエンコーダ信号ES1,ES2を基にコントローラ30内の印字基準信号生成装置41により印字基準信号PTSが生成される。そして、印字基準信号PTSの例えば立ち上がり時期を噴射タイミングとして記録ヘッド25のノズルからインクを噴射することで、記録紙S上にインク滴を着弾させて画像や文字が印刷される。このとき、印字基準信号PTSが、周期が制限範囲内に収まった出力信号DP1、DP2を遅延させて生成したものであることから、周期異常がない信号が生成されるとともに、搬送ベルト16の継ぎ目Jの部分を検出したり磁気リニアスケール26上に紙粉等の異物が付着したりしてパルス抜けが発生しても、他方のエンコーダセンサ側の出力信号への切り換えが行われる。よって、使用中の一方のエンコーダセンサにパルス抜けが発生しても、他方のエンコーダセンサに切り換えることで、安定な周期の印字基準信号PTSを生成できる。しかもエンコーダセンサの切り換え時(出力信号切り換え時)には、印字基準信号PTSと出力信号との位相差を補間する調整が行われるので、位相ずれによる周期異常がないパルスが生成される。
【0093】
以上、詳述したように第一実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)出力信号DP1、DP2と印字基準信号PTSとの各位相差を計測して管理する位相差計測部84,85を設けた。そして、エンコーダセンサ切り換え時には、切り換え先のエンコーダセンサ側の出力信号と印字基準信号PTSとの位相差に応じたディレイ量で、切り換え先の遅延回路82又は83による遅延処理を行って印字基準信号PTSを生成する構成とした。よって、使用中のエンコーダセンサで周期異常が検出されて出力信号の切り換えが行われても、その切り換え前後におけるパルスの位相差に起因する周期異常を効果的に抑えて適切な周期の印字基準信号PTSを生成することができる。
【0094】
(2)搬送ベルト16の継ぎ目に起因するエンコーダ信号ESのパルスの欠落や、紙粉やインクミスト等の付着などによる突発的なパルスの欠落が発生し、エンコーダセンサ27A,27Bの両方にパルス抜けが同時に発生した場合には、周期計測部87(タイマ)が周期を計測する時間に基づいてその時間が平均周期Tavgに達したときに1周期を終えるように信号生成部88がパルスを生成することで平均周期Tavgと同じ時間を周期にもつ印字基準信号PTSを生成する。よって、複数のエンコーダセンサの全てでパルス抜けが検出された場合でも、パルスの欠落のない印字基準信号PTSを生成でき、しかもパルス抜けを適切な周期のパルスで補間することができる。例えば印字基準信号PTSのパルスの欠落は記録ヘッド25のインク吐出ミスを招き、印刷画質を著しく低下させる原因となるが、本実施形態の印字基準信号生成装置41を備えたプリンタ11によれば、このような不都合を回避して良好な印刷画質を提供できる。
【0095】
(3)第1及び第2位相差計測部84,85のうち印字基準信号PTSの生成に使用する側の出力信号に対応する位相差計測部では位相差の計測を中止して切り換え時最終の位相差を保持する一方、印字基準信号PTSの生成に使用されない側の出力信号に対応する位相差計測部では位相差の計測を行って毎パルス毎にその更新を逐次行う。よって、切り換え時における最新の位相差を継続使用して出力信号を遅延させることで、出力信号と同じ周期を保持した適切な周期で印字基準信号PTSを生成できる。また、次回出力信号DP1、DP2が切り換えられる際は、最新の位相差を用いて切り換え先の出力信号を遅延させることで、適切な周期で印字基準信号PTSを生成することができる。
【0096】
(4)ディレイ処理回路43,44によりエンコーダ信号ES1,ES2の周期異常監視を行い必要箇所に周期補正を加え、所定ディレイ量だけ遅延した出力信号DP1、DP2を生成した。そして、出力信号DP1、DP2のうちセンサ選択回路45からのセンサ選択信号SSにより選択された一の出力信号を印字基準信号生成回路46内の遅延回路82,83で遅延させることで印字基準信号PTSを生成した。よって、両エンコーダセンサ27A,27Bが共にパルス抜け検出時に平均周期Tavgを用いる以外は、周期情報(周期データ)を持たなくても適切な周期の印字基準信号PTSを比較的簡単な回路構成で生成できる。従って、周期情報のデータを持つ場合に必要となるビット線やデータ格納部の記憶容量を低減できる。
【0097】
(5)計測周期がマスク周期範囲内にある周期正常時にはエンコーダ信号ES立ち上がり時刻から時間Dtだけ遅れた時刻で立ち上がり、マスク下限値を下回る周期下限異常時にはマスク中心値から時間Dt遅れた時刻で立ち上がる所定パルス幅Wの出力Cを生成し、一方、計測周期がマスク上限値を超える周期上限異常時には、マスク上限値から時間UDt(<Dt)(マスク中心値からみれば時間Dt)遅れた時刻で立ち上がる同一パルス幅Wの出力Eを生成する。そして、出力Cと出力Eの論理和をとって出力信号DP1、DP2を生成するようにした。この処理により、周期異常検出から信号出力までの間に時間差を設けることが可能になり、上限周期以上の周期を持つ信号を検出した後でも平均周期の信号へ補正することが可能となった。また、このような出力信号DP1、DP2を、エンコーダ信号ES、出力マスクMS、上限検出信号US、第1下限検出信号LS、第2下限検出信号KSを用いて比較的簡単な論理回路による論理演算及び、第1及び第2信号生成部63,64によるディレイ処理により比較的簡単に生成できる。
【0098】
(6)計測周期がマスク上限値を超えたときを検出する上限検出器59を設けたので、パルス抜け発生時にも上限検出信号の立ち上がりパルスを用いて出力信号DP1,DP2のパルスを生成することができる。よって、パルス抜け発生時にはパルス抜け検出時点でエンコーダセンサの切り換えが行われる前に出力信号のパルスを生成できるので、エンコーダ信号ESのパルス抜け発生時におけるエンコーダセンサ切り換え直前のタイミングにおける印字基準信号PTSのパルスの欠落を確実に防止できる。
【0099】
(7)パルス抜け検出時はエンコーダセンサの切り換えが行われるので、切り換え先のエンコーダセンサ側のディレイ処理回路から出力される出力信号DPに基づき印字基準信号PTSを生成できる。このとき2つのエンコーダセンサ27A,27Bは同時には継ぎ目Jを検出しない位置関係に配置されるうえ、磁気リニアスケール26の幅方向にも位置をずらして配置されているので、2つのエンコーダセンサ27A,27Bが同時にパルス抜けを発生する確率は極めて低くなる。よって、一方のエンコーダセンサでパルス抜けが発生した場合、他方のエンコーダセンサではパルス抜けはまず起こらず、出力信号DP1、DP2に基づき印字基準信号PTSを生成できるので、平均周期Tavgを用いる場合に比べより適正な周期で印字基準信号PTSを生成しやすい。
【0100】
(8)抜け検出、上限検出、下限検出のうち1つでも検出されれば印字基準信号PTSの生成に使用すべき出力信号を切り換える構成なので、周期異常発生時にも計測周期に基づく精度の高い周期で印字基準信号PTSを生成することができる。
【0101】
なお、実施形態は、上記に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)出力信号を切り換えてから位相差調整(遅延処理)を行ってもよい。例えば出力信号DP1、DP2の切り換え回路の信号伝送方向下流側に遅延回路を接続する構成とする。この場合、2つの遅延回路を設け、切り換え後の出力信号の出力先を切り換える構成としてもよいし、遅延回路を一つとして遅延回路に遅延時間を設定すべき位相差計測部を切り換える構成としてもよい。
【0102】
(変形例2)パルス出力信号は、出力信号DP1,DP2に限定されず、エンコーダ信号ES1,ES2であってもよい。つまり、ディレイ処理回路は必須ではない。エンコーダ信号であっても、検出手段が例えば正常周期よりも短い周期下限異常を検出する構成である場合に限れば、切り換え時の位相差に起因する周期異常を小さく抑えたパルス信号(印字基準信号PTS)を生成できる。なお、検出手段が正常周期よりも長い周期上限異常を検出する構成の場合、周期上限異常検出時点でエンコーダ信号を切り換えても、その切り換え時点で既に前のパルスに対し正常周期範囲を超えた遅れたタイミングで上限異常周期のパルスが生成されてしまううえ、切り換え先のエンコーダ信号がたとえ正常周期のパルスであっても、切り換え時のパルスの立ち上がり遅れに起因して、次のパルスの周期が正常周期よりも短くなる周期異常を招いてしまう。この場合、周期上限異常を早めに検出できるように周期制限範囲を小さく設定すれば、検出手段が異常周期を検出する設定の自由度が減少するものの、切り換え時の周期異常を効果的に小さく抑えることはできる。また、両エンコーダ共にパルス抜け発生時には、パルスの立ち上がりに多少の遅れは伴うものの、平均周期Tavgに近い正常周期のパルスを補間してパルス抜けのない印字基準信号PTSを生成できる。
【0103】
(変形例3)図13の印字基準信号生成回路46で印字基準信号の平均周期を算出する替わりに、ディレイ処理回路43又は44のどちらか一方の平均周期算出部55の平均算出データAv(n)を用いて周期計測部87に計測させ、信号生成部88がパルスを立ち上げるタイミングを決める構成としてもよい。
【0104】
(変形例4)妥当周期は平均周期Tavg(周期平均値)に限定されない。加重平均、累積加重平均、相加平均、相乗平均、調和平均などでもよい。また、これらの平均算出時に最大値と最小値など不適当な値の可能性のある値を計算対象から除外してもよい。さらには平均に限定されず、統計学上の妥当値であればよい。また、実験でパルス周期の計測を行って得られたデータから統計学的な解析を行って妥当値算出用の計算式を導き、その計算式を用いて妥当値を算出してもよい。
【0105】
(変形例5)パルス抜け以外の周期異常検出(上限検出、下限検出)時は、出力信号の切り換えを行わず、パルス抜け検出時のときに出力信号の切り換えを行う構成としてもよい。また、パルス抜け以外の周期異常検出時に、出力信号のパルスを、平均周期等の妥当周期を用いて生成したパルスに置き換えても構わない。
【0106】
(変形例6)検出手段を、パルス抜け検出器、上限検出器、下限検出器のうち一つだけ採用してもよいし、二つ採用してもよい。但し、パルス抜け検出器を含めることが好ましい。もちろん、その他の周期異常を検出する検出器を設けてもよく、さらに4種類以上の複数種の周期異常を検出可能に四種以上の検出手段を設けてもよい。
【0107】
(変形例7)前記実施形態では、リニアエンコーダに適用したが、ロータリエンコーダに適用してもよい。例えばモータの回転制御を行う場合にロータリエンコーダの検出パルスを用いる構成において、パルス信号生成装置を適用することもできる。また、エンコーダは、インクリメンタルエンコーダに限らず、アブソリュートエンコーダも使用できる。
【0108】
(変形例8)用紙等の記録媒体を搬送する搬送手段は、搬送ベルト方式に限定されない。例えば搬送経路上の複数箇所に駆動ローラと従動ローラとの一対からなるローラ装置が配設されてなるローラ方式の搬送装置を備えたプリンタにも適用できる。例えばローラの端部周面上に磁気スケールを設けたり、ローラや動力伝達系の回転駆動軸にロータリエンコーダ式の回転板磁気スケールを設ければよい。また、ラインプリンタにおけるベルト搬送方式の場合、搬送方向上流側と下流側にそれぞれ一対ずつ配設されたローラ間に複数本のベルトを千鳥配置で巻き掛けた構成も採用できる。また、搬送ベルトを有さないドラムを備え、ドラムの外周面上に記録用紙が吸着された状態で、記録手段により印刷を施す構成も採用できる。
【0109】
(変形例9)パルス信号生成装置は、ラインプリンタへの適用に限定されず、例えば記録ヘッドが紙幅方向に移動(走査)しながら印刷を行うシリアル式プリンタに適用してもよい。例えば記録ヘッドが設けられたキャリッジの移動経路と平行にリニアエンコーダを設け、キャリッジと共に移動する複数のセンサからの各エンコーダ信号を前記実施形態における印字基準信号生成装置に入力して印字基準信号PTSを生成する構成とする。
【0110】
(変形例10)前記実施形態において、一つのリニアスケールに対しセンサを3個以上の複数個設けてもよい。例えばエンコーダを3個以上の複数個設け、3個以上の複数個の出力信号間でパルス信号の生成に使用する一つに切り換える構成としてもよい。
【0111】
(変形例11)エンコーダ(リニアエンコーダ、ロータリエンコーダ)は磁気式に限らず光学式も採用できる。光学式エンコーダの場合、スケールに一定ピッチでスリットを設け、光源(発光素子)から出射されてスリットを通過した光を受光する光検出センサの受光量が周期的に変化するようにスリットの開口形状や開口面積を周期的に変化させれば、振幅が周期的に変化するエンコーダ信号ESを得ることができる。また、光学式エンコーダを構成する場合、上記の透過型以外に反射型も採用できる。
【0112】
(変形例12)印字基準信号生成装置は、ハードウェアの構成に限定されない。CPU(中央処理装置)がメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、ディレイ処理回路、センサ選択回路、印字基準信号生成回路と同様の機能をもつ各処理部を実現するりソフトウェアにより構成してもよい。
【0113】
(変形例13)パルス信号生成装置によって生成するパルス信号は、プリンタの印字基準信号の生成に限定されない。パルス信号生成装置を例えばエンコーダ信号生成装置として用いてもよい。例えばエンコーダ信号生成装置を、搬送ベルトの速度検出用として使用したり、搬送ベルトの位置検出用として使用したりしてもよい。これらの構成の場合、本発明のエンコーダ信号生成装置を用いてモータ等のアクチュエータの速度制御や位置制御を行うことにより、速度制御の精度を高めたり、位置制御の精度を高めたりすることができる。また、印字基準信号以外の基準パルス信号を生成してもよく、その場合、パルス信号生成装置から出力あれたパルス信号を逓倍又は分周することによりパルス信号周期と異なる周期の基準パルス信号を生成するようにしてもよい。
【0114】
(変形例14)前記各実施形態において、パルス抜け(パルス欠落)検出状態が所定時間継続した場合に、ユーザにリニアエンコーダ等のクリーニングをする旨を報知する構成を採用できる。
【0115】
(変形例15)画像形成装置はプリンタに限定されず、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの所定パターン(配線パターン、電極パターン、画素パターン、エッチングパターン、配列パターンを含む)を画像として描画する画像形成装置であってもよい。もちろん、インクジェット方式以外のプリンタにも適用できる。例えば、ドットインパクトプリンタ、熱転写プリンタ、レーザープリンタ等に適用してもよい。さらにはプリンタ以外の電子機器にも適用でき、例えば搬送装置を有するスキャナ装置等にも適用できる。
【0116】
前記実施形態及び変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(1)前記検出手段は前記周期異常の一つとしてパルス抜け異常を検出することを特徴とする請求項3に記載のパルス信号生成装置。この構成によれば、検出手段によるパルス抜け異常検出時にパルス異常が検出されていない他のパルス出力信号に切り換えられることにより、パルス生成手段により生成されるパルス信号のパルス抜けを防止できる。
【0117】
(2)前記切換手段は、前記パルス信号の生成に使用中のパルス出力信号側のエンコーダに周期異常が検出されたときは、周期異常の検出されていない他のエンコーダ側のパルス出力信号に切り換えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のパルス信号生成装置。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】一実施形態におけるプリンタの概略構成を示す模式側面図。
【図2】記録ヘッドを省略したプリンタの模式平面図。
【図3】磁気リニアスケールを示す模式平面図。
【図4】リニアエンコーダの部分模式平面図。
【図5】着磁装置を示す模式側面図。
【図6】着磁装置を示す模式平面図。
【図7】印字基準信号生成装置の電気的構成を示す回路図。
【図8】ディレイ処理回路の電気的構成を示す回路図。
【図9】(a)マスク処理、(b)ディレイ処理の信号タイミングチャート。
【図10】ディレイ処理回路におけるパルス抜け検出時の信号タイミングチャート。
【図11】マスク生成回路の動作タイミングチャート。
【図12】(a)センサ選択回路の回路図、(b)その動作タイミングチャート。
【図13】印字基準信号生成回路の電気的構成を示す回路図。
【図14】印字基準信号生成装置の動作タイミングチャート。
【符号の説明】
【0119】
11…画像形成装置としてのプリンタ、12…搬送装置としてのベルト搬送装置、13…搬送手段を構成する駆動ローラ、14…搬送手段を構成する従動ローラ、15…テンションローラ、16…搬送手段を構成するとともに検出対象としての搬送ベルト、17…電動モータ、25…記録手段としての記録ヘッド、26…エンコーダを構成する磁気リニアスケール、27A…第1エンコーダセンサ、27B…第2エンコーダセンサ、28,29…エンコーダとしてのリニアエンコーダ、30…制御手段としてのコントローラ、41…パルス信号生成装置としての印字基準信号生成装置、42…クロック回路、43…出力信号生成手段を構成する第1ディレイ処理回路、44…出力信号生成手段を構成する第2ディレイ処理回路、45…切換手段を構成するセンサ選択回路、46…パルス信号生成手段としての印字基準信号生成回路、53…エンコーダ信号周期計測部、54…エンコーダ信号周期記憶部、55…平均周期算出部、56…検出手段を構成するパルス抜け検出器、57…上限・下限値算出部、58…マスク生成回路、59…検出手段を構成する上限検出器、60…検出手段を構成する第1下限検出器、61…第2下限検出器、63…第1信号生成部、64…第2信号生成部、81…選択回路、82…パルス生成手段を構成する第1遅延回路、83…パルス生成手段を構成する第2遅延回路、84…ディレイ量管理手段及び位相差計測手段を構成する第1位相差計測部、85…ディレイ量管理手段及び位相差計測手段を構成する第2位相差計測部、86…妥当周期取得手段としての平均周期算出部、87…パルス生成手段を構成する周期計測部、88…パルス生成手段を構成する信号生成部、91…切換手段を構成するアンド回路、93…切換手段を構成するアンド回路、94…切換手段を構成するオア回路、95…切換手段を構成するアンド回路、96…切換手段を構成するオア回路、ES,ES1,ES2…エンコーダ信号、DP1、DP2…パルス出力信号としての出力信号、Tmin…下限値、Tmax…上限値、PLS1,PLS2…抜け検出信号、US1,US2…上限検出信号、LS1,LS2…下限検出信号(第1下限検出信号)、KS…第2下限検出信号、MS…出力パルス、Av(n)…平均周期、
Er1,Er2r…エラー信号、SS…センサ選択信号、TS…タイマ選択信号、PTS…印字基準信号、tn,pn…パルス信号のパルス周期としての周期、dn,Dn…位相差、Tavg…妥当周期としての平均周期、S…ターゲットとしての記録紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号のうち切り換えられた一つのパルス出力信号に基づきパルス信号を生成するパルス信号生成装置であって、
検出対象の速度に応じたパルス周期をもつエンコーダ信号をそれぞれ出力する前記複数のエンコーダと、
前記複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号ごとにパルス信号との相対ディレイ量を管理するディレイ量管理手段と、
前記複数のエンコーダ信号のパルス異常を個別に検出する検出手段と、
前記複数のパルス出力信号のうちパルス異常が検出されていない一つのパルス出力信号に切り換える切換手段と、
前記切換手段により切り換えられた一つのパルス出力信号を対応する前記相対ディレイ量だけ遅延させてパルス信号を生成するパルス生成手段と
を備えたことを特徴とするパルス信号生成装置。
【請求項2】
前記エンコーダ信号を基にパルス周期が制限範囲内に収まるように調整して前記パルス出力信号を生成する出力信号生成手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のパルス信号生成装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記パルス異常として周期が正常周期の上限を超える周期上限異常を少なくとも検出する構成であり、
前記出力信号生成手段は、前記検出手段の周期上限異常検出に基づき前記切換手段がパルス出力信号を切り換えた際に当該切り換えた後のパルス出力信号のパルスと切り換え前のパルス出力信号のパルスとの間のパルス周期が前記制限範囲内に収まりうる所定遅延時間だけ、前記エンコーダ信号のうち前記制限範囲内にパルス周期が収まる正常周期のエンコーダパルスを遅延させることにより当該正常周期のエンコーダパルスに基づく前記パルス出力信号を生成することを特徴とする請求項2に記載のパルス信号生成装置。
【請求項4】
前記パルス信号のパルス周期を計測するとともに複数回分の周期計測結果に基づいて妥当周期を求める妥当周期取得手段をさらに備え、
前記パルス生成手段は、前記検出手段により前記複数のエンコーダの全てに周期異常が検出された場合は、前記パルス信号の一つ前のパルスに前記妥当周期と同周期のパルスを繋げるようにパルス信号を生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパルス信号生成装置。
【請求項5】
前記ディレイ量管理手段は、前記パルス出力信号ごとに位相差を計測する位相差計測手段を備え、前記相対ディレイ量は前記位相差に応じた調整時間であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパルス信号生成装置。
【請求項6】
前記切換手段により切り換えられた一のパルス出力信号と対応する前記位相差計測手段は、位相差の計測を中止して切り換え時の位相差を保持し、他のパルス出力信号と対応する前記位相差計測手段は位相差の計測を行うように構成され、
前記パルス生成手段は、切り換えられたパルス出力信号を前記保持された位相差に応じた調整時間だけ遅延させることを特徴とする請求項5に記載のパルス信号生成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパルス信号生成装置と、前記検出対象としての搬送手段とを備えた搬送装置であって、
前記パルス信号生成装置を構成する前記エンコーダが前記搬送手段の搬送速度に応じたパルス周期のエンコーダ信号を出力するものであることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の搬送装置と、前記搬送手段により搬送されるターゲットに画像を形成すべく記録を施す記録手段と、
前記パルス生成手段により生成されたパルス信号に基づいて前記記録手段の記録タイミングを制御する制御手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号のうち切り換えられた一のパルス出力信号に基づきパルス信号を生成するパルス信号生成方法であって、
前記複数のエンコーダをそれぞれ出力元とする複数のパルス出力信号ごとにパルス信号との相対ディレイ量を管理するディレイ量管理ステップと、
複数のエンコーダ信号のパルス異常を個別に検出する検出ステップと、
前記複数のパルス出力信号のうちパルス異常が検出されていない一のパルス出力信号に切り換える切換ステップと、
前記切換ステップで切り換えられた一のパルス出力信号を対応する前記相対ディレイ量だけ遅延させてパルス信号を生成するパルス生成ステップと
を備えたことを特徴とするパルス信号生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−249166(P2009−249166A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102685(P2008−102685)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】