説明

パルス電圧を利用する高電圧印加装置および当該高電圧印加方法

【課題】パルストランスを介して容量性負荷にパルス状ピークをもつ高電圧を印加するに当って、パルス状ピークを増大し、かつ任意のパルス繰返し周波数を印加することを目的とする。
【解決手段】パルス電圧を利用する高電圧印加装置において、容量性負荷1に対してパルストランス4を介して、立上がりの急峻なパルス状ピークをもつパルス幅τ0 の高電圧を印加するようにされてなり、その際に、容量性負荷1のキャパシタンスC1 とパルストランス4の2次側漏れインダクタンスL1 との関係は
1= (τ0/π)×(1/C1
を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン発生などのために用いるプラズマ発生電源用としての、パルス電圧を利用する高電圧印加装置および当該高電圧印加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン発生などのために用いるプラズマ発生電源装置が知られている。この種の電源装置として特許文献1や特許文献2が知られている。一方、本願出願人は、平成18年12月28日付けで、高電圧印加装置として、特許文献3に示す出願を行っている。
【0003】
特許文献1や特許文献2に示される構成は、容量性負荷に高電圧を印加せしめるために、いわば正弦波に対応する交番電圧が供給されるトランスを用い、当該トランスの2次側に接続される容量性負荷に対して当該容量性負荷にインダクタンスが接続される形に構成され、当該容量性負荷とインダクタンスとの共振周波数に相当する周波数をもつ交番電圧をトランスに供給せしめるようにしている。
【0004】
これに対して特許文献3においては、パルストランスを介して容量性負荷が接続されている構成の下で、立上がりが急峻で立下がりが緩やかな、いわば三角波形状の高電圧を発生せしめ、所定の繰返し期間を持つ交番するパルス波電圧を利用して高電圧を印加せしめている。
【0005】
なお、当該容量性負荷に対して高電圧を印加する高電圧印加装置は、例えば燃焼排ガス中の窒素酸化物(NOx )や硫黄酸化物(SOx )を除去するに当たって、ストリーマ放電やグロー放電などの低温プラズマを用いる方法が考慮されており、この場合に、窒素酸化物や硫黄酸化物を除去する手段として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−340185号公報
【特許文献2】特開2005−63760号公報
【特許文献3】特開2008−167584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示される構成においては、電源装置として、スイッチング素子を用いることによって、パルストランスを介して、立上がり急峻な三角波電圧を印加するようにしている。しかし、立上がりを急峻にするといっても、回路設計上に限界があり、波形の立上がり時間(立上がりに要する時間)T(rise) は、図3に後述するように、波形の立上がり時間T(rise) (図示(a)の 期間)は
T(rise) =T( r・delay )+5τ(rise)
但し,T( r・delay ):PWMスイッチングレギュレータICとワンショットIC
とフォトカプラと半導体スイッチング素子SWとの立上が り遅延時間の合計。
【0008】
τ(rise) :容量性負荷1の等価静電容量Cと、スイッチング回路や電
流制限用インダクタンスやパルストランスや配線などの合
成抵抗値Rt とによる時定数(当該時定数に「4.605
」を乗じることで、ピーク値の99%の値となるので、時
定数「5」を乗じることで、ピーク値に達する時間になる
とする)。
で与えられるように、回路設計上の遅れが存在する。
【0009】
本発明は、前記特許文献3に開示される所の、所定期間のパルス成分をもつ交番電圧を印可する構成の下で、前記特許文献1や特許文献2に開示される所のいわば共振現象とは無関係に、より高電圧を発生させ、任意のパルス繰返し周波数を容量性負荷に印加せしめることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1は本発明の全体の一実施例構成を示す。
【0011】
図中の符号1は容量性負荷であって放電してガスを励起しプラズマを発生させる誘電体バリア放電リアクタ(DBD Load)、2は直流電圧供給回路であって整流回路と平滑回路とをもつもの、3はスイッチング回路であって複数のスイッチング素子SWiを用いているインバータを構成しているもの、4はパルストランスである。
【0012】
なお、スイッチング素子SWiは、好ましくはMOS−FETを使用し、IGBT、トランジスタ等の半導体スイッチング素子でもよい。
【0013】
また5は電流検出器、6は増幅回路であって検出された直流電流成分に比例した比例電圧成分と当該直流電流成分を所定の時定数をもって積分した積分電圧成分とを得ているもの、7はOR回路であって比例電圧成分と積分電圧成分とのいずれか大きい成分を抽出するものである。
【0014】
更に、8は発振回路であって設定された周期をもって例えばデューティ比50%の矩形波を発振するが、前記OR回路7の出力の大きさに応じてデューティ比50%以下の矩形波を例えば25%の矩形波を出力するように制御され、更に前記OR回路7の出力が限度を超えて大となる場合に、デューティ比0%の矩形波(即ち、発振停止)を出力するように設定されているものである。
【0015】
次に9は短パルス発生回路であって、発振回路8からの出力の立上がり点を基準として、予め定められた例えばデューティ比10%の矩形波を発生するものである。また10はゲートドライブ回路であって、短パルス発生回路9の出力を受けて、前記スイッチング素子SWiに対するゲート制御信号を発生するものである。
【0016】
スイッチング回路3においては、原理的に言えば、スイッチング素子SW1とSW4とがオンされることによって、パルストランス4を図示の上方から下方に向かう電流が供給され、逆にスイッチング素子SW2とSW3とがオンされることによって、パルストランス4を図示の下方から上方に向かう電流が供給される。即ち、容量性負荷1に対して、立上がりが急峻で立下がりが比較的緩やかな、正極性三角波と負極性三角波とが、前記発振回路8の発振周波数に対応して、印加される。
【0017】
換言すれば、短パルス発生回路9からの矩形波のデューティ比が50%以下の値であることから、前記の立上がりが急峻で立下がりが比較的緩やかな三角波が印加されることとなる。
【0018】
図1に示すパルストランス4の2次側の電圧は、前記三角波電圧、即ち
(i)急峻な立上がりに対応するパルス波成分と、
(ii)緩やかな立下がりに対応する減衰波成分
をもつ、交番電圧となり、当該交番電圧が容量性負荷1に印加される。
【0019】
この際、容量性負荷1のキャパシタンスC1 とすると、本発明においてパルストランス4の2次側漏れインダクタンスL1 と、パルス波成分のパルス幅τ0の関係は、
1=(τ0/π)×(1/C1 ) ・・・ (1)
を満足する値となるよう設定する。
つまり、容量性負荷1のキャパシタンスC1 によって、パルスの繰返し周期To に関係なく、前記パルス幅τ0 で、パルストランス4の2次側漏れインダクタンスを選定し、又はパルストランス4の2次側漏れインダクタンスによりパルス幅τ0を決定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、立上がり急峻な三角波電圧として得られる、パルス幅τ0 でのパルスの繰返し周期T0 なる交番電圧を生成した上で、当該交番電圧における所の、最大の電力効率と出力電圧が任意の繰返し周期T0 で高電圧を容量性負荷に印加せしめることが可能になり、この結果、例えば排ガス中の窒素酸化物や硫黄酸化物を少ない投入電力で除去することが可能になる。また、容量性負荷に高電圧を供給するトランスの小型化、軽量化、及び低コストを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の全体の一実施例構成を示す。
【図2】各部の波形図を示す。
【図3】スイッチング素子をオン・オフするタイミングによって容量性負荷に印加される高電波形を示している。
【図4】図1に示す増幅回路とOR回路とについての原理的な構成図を示している。
【図5】発振回路が出力する矩形波のデューティ比を説明する図である。
【図6】パルストランスの2次側漏れインダクタンス[H]を選択せしめてパルストランス出力電圧ピーク値[kVpp]を測定してプロットした図である。
【図7】図6における点[1]に対応する値をもつパルストランスの2次側漏れインダクタンスが選ばれている場合での、図1に示す容量性負荷1に印加される電圧波形を示した図である。
【図8】図6における点[3]に対応する値をもつパルストランスの2次側漏れインダクタンスが選ばれている場合での、図1に示す容量性負荷1に印加される電圧波形を示した図である。
【図9】図6における点[4]に対応する値をもつパルストランスの2次側漏れインダクタンスが選ばれている場合での、図1に示す容量性負荷1に印加される電圧波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の高電圧印加装置は、図1に示した如き構成を有するが、図2は各部の波形図を示している。
【0023】
[1],[2]:発振回路8は、位相のずれた2つの矩形波を発振する。図示の「発振回路出力信号1」と「発振回路出力信号2」との間には、実際には、所定の「同時オフ期間」が存在しているが、本明細書においては簡単のためにこのような場合をもデューティ比50%の矩形波と呼んでいる。
【0024】
[3],[4]:短パルス発生回路9は、図示の「発振回路出力信号1」と「発振回路出力信号2」との夫々の立上がりタイミングに対応して立上がる短パルスを発生する。即ち、図示の「短パルス発生回路出力信号1」と「短パルス発生回路出力信号2」とを発生する。
【0025】
[5],[6],[7],[8]:スイッチング素子SW1ないしSW4に印加されるゲート信号は、「短パルス発生回路出力信号1」と「短パルス発生回路出力信号2」とにもとづいて図示の如きものとなる。
【0026】
[9]:容量性負荷には、パルストランス4が介在されて、立上がりが急峻で立下がりが緩やかな、正極性と負極性の三角波が印加されることとなる。
図3はスイッチング素子をオン・オフするタイミングによって容量性負荷に印加される高電圧波形を示している。
【0027】
例えばスイッチング素子SW1とSW4とがオンされるタイミングが図示(a)の始点の時点でありかつオフされるタイミングが図示(b)の終点の時点であるとすると、図3に示す波形の立上がり時間T(rise) (図示(a)の期間)は
T(rise) =T( r・delay )+5τ(rise)
但し,T( r・delay ):PWMスイッチングレギュレータICとワンショットIC
とフォトカプラと半導体スイッチング素子SWとの立上が
り遅延時間の合計。
【0028】
τ(rise) :容量性負荷1の等価静電容量Cと、スイッチング回路や パルストランスや配線などの合成抵抗値Rt とによる時定 数(当該時定数に「4.605」を乗じることで、ピーク 値の99%の値となるので、時定数「5」を乗じることで
、ピーク値に達する時間になるとする)。
【0029】
で与えられる。
【0030】
また、ピーク電圧維持時間T(peak)(図示(b)の期間)は
T(peak)=T(on)−T(rise)
但し、T(on):短パルス発生回路で設定したパルス幅である(なお、T(peak)とT
(rise) との和が、後述する立下がり時間T(fall)よりも小さい
ようにT(on)を設定する)。
【0031】
また、スイッチング素子SW1とSW4とがオフされるタイミングが図示(c)の始点の時点であるとすると、図3に示す波形の立下がり時間T(fall)(図示(c)の期間)は
T(fall)=T( f・delay )+5τ(fall)
但し、T( f・delay ):PWMスイッチングレギュレータICとワンショットIC
とフォトカプラと半導体スイッチング素子SWとの立下が
り遅延時間の合計。
【0032】
τ(fall):容量性負荷1の等価静電容量Cと、容量性負荷1の抵抗R
B とによる時定数(この場合も「5」を乗じることにより
零レベルに達する時間になるとする)。
【0033】
図4は図1に示す増幅回路とOR回路とについての原理的な構成図を示している。図中の符号6,7は図1に対応し、6−10と6−11とは増幅器、6−20はCR回路をもつ時定数回路で積分回路部に対応するもの、6−21は抵抗回路をもつ比例回路部、7−10と7−11とはダイオード、7−2は分圧回路を表している。
【0034】
増幅回路6に供給される所の、電流検出器5で検出された直流電流成分は、比例回路部6−21を介して増幅器6−11に入力され、比例電圧成分として出力される。また当該検出された直流電流成分は、積分回路部6−20を介して増幅器6−10に入力され、積分電圧成分として出力される。
【0035】
両者の電圧成分は、ダイオード7−10,7−11と分圧回路7−2とによって構成されるOR回路7に入力され、周知の如く、いずれか大きい値をもつ成分が選択されて、分圧されて出力される。当該分圧された出力は、図1に示す発振回路8に供給される。
【0036】
前述した如く、立上がりの急峻な高電圧が容量性負荷1に印加されるとき、当該容量性負荷1に対して大きい突入電流が流入される。この突入電流に対応する形で、図1に示す電流検出器5から出力される直流電流成分も瞬間的に大となるが突入電流が小に落着につれて当該直流電流成分も小になる。この結果、突入電流に対応する場合での比例電圧成分と積分電圧成分とがOR回路7に供給された場合でも、図4に示す分圧回路7−2からの出力は、いわばピーク値が一時的に増大するだけというような電圧となっている。
【0037】
これに対して、仮に容量性負荷1において短絡が生じるような場合には、当該短絡に伴う短絡電流は十分に大きくかつ時間的に持続する。このことから、電流検出器5で検出される当該短絡電流に対応する直流電流成分の場合には、OR回路7における分圧回路7−2からの出力は所定レベルを超えて持続するような電圧となっている。
【0038】
図5は、発振回路が出力する矩形波のデューティ比を説明する図である。
【0039】
発振回路8(図1に示す)の構成と、発振回路8が出力する矩形波の発振周波数とについては後述するが、図5の左側に示す如く、発振回路8により発振される矩形波のデューティ比は、前述のOR回路7から供給される電圧が図示v1 以下の場合には、デューティ比50%となるようにされ、OR回路7から供給される電圧がv2 あるいはv2 以上の場合には、デューティ比0%(即ち、発振停止のこと)となるようにされ、OR回路7から供給される電圧が図示v1 を超えかつv2 より小さい場合には、デューティ比25%となるようにされている。
【0040】
前述の如く、容量性負荷1に流入する突入電流の場合には、OR回路7からの出力は、図5の左側に「突入電流部分」として示しているように、瞬時的には、前述の電圧v1 を超えることもあるが、電圧v2 に達することはない(達しないように設計されている)が、短絡が生じた場合には、図5の左側に「短絡電流部分」と示しているように、OR回路7からの出力は電圧v2 を超えてしまう。
【0041】
このことから、図1に示す構成の場合には、短絡が生じた場合には、発振回路8は発振を停止し(即ち、デューティ比0%となり)、他方、突入電流が多少大きくなったとしても発振回路8はデューティ比50%の矩形波が一時的にデューティ比25%の矩形波となるだけで、発振は持続される。
【0042】
前述の如く、発振回路8からの出力にもとづいて、短パルス発生回路9が所定のデューティ比をもつ短パルスを発生することから、前述の如く発振回路8のデューティ比が50%から25%に変化しても、図示に示すゲートドライブ回路10に供給されるパルス波のデューティ比に変化はない。しかし、短絡が発生した場合には、発振回路8は発振停止となり、短パルス発生回路9も短パルスを発生しなくなり、結果的に、スイッチング回路3におけるスイッチング素子SW1ないしSW4のオン・オフ動作は停止する。
【0043】
本発明においては、容量性負荷1のキャパシタンスC1 とすると、パルストランス4の2次側漏れインダクタンスL1 は、パルス波成分のパルス幅をτ0 から、
1=(τ0/π)×(1/C1
の値となる。
つまり、容量性負荷1のキャパシタンスC1 によって、パルスの繰返し周期To に関係なく、前記パルス幅τ0で、パルストランス4の2次側漏れインダクタンスを選定する。
【0044】
なお、本願にいう「パルストランス4の2次側漏れインダクタンスL1 」とは、パルストランス4の2次側におけるリード線や当該2次側に付加的に挿入せしめたインダクタンス素子(図示せず)を含めた「等価的なインダクタンス」を意味している。
【0045】
また、容量性負荷1のキャパシタンスC1 とし、パルストランス4における2次側漏れインダクタンスL1 であれば、パルス波成分のパルス幅τ0 は、
τ0 = π√L1 √C1
となるよう短パルス発生回路9を調整する。
【0046】
更に言えば、後述の図8で示すように仮に、パルス幅τ0 =10μs、負荷のキャパシタンスC1 =200pFとした場合の高電圧パルストランスの2次側漏れインダクタンスL1 の値は、
1 =(τ0 /π)2 ×(1/C1
=0.0507[H]
=50.7[mH]
となる。
【0047】
図6はパルストランスの2次側漏れインダクタンス[H]を選択せしめてパルストランス出力電圧ピーク値[kVpp]を測定してプロットした図である。
【0048】
図6における曲線は前記プロット点を平滑に結んだ線である。
【0049】
図7ないし図9は、夫々、図6における点[1]、[3]および[4]に対応する値をもつパルストランスの2次側漏れインダクタンスが選ばれている場合での、図1に示す容量性負荷1に印加される電圧波形を示した図である。
【0050】
図7においては、図6に示される点線に対応する最適と考えられる所の、パルストランスの2次側漏れインダクタンスから、当該インダクタンスが少ない方向にズレている場合の波形が示されている。図2に示す「[9]DBD負荷出力」として示す波形が現実には図7に示す波形となって観測されている。
【0051】
図8においては、図6に示される点線に対応する最適と考えられる所の、パルストランスの2次側漏れインダクタンスに比較的近い場合の波形が示されている。
【0052】
図9においては、図6に示される点線に対応する最適と考えられる所の、パルストランスの2次側漏れインダクタンスから大きい方向にズレてしまっている場合の波形が示されている。
【0053】
本願請求項1にいう「前記パルストランスの2次側漏れインダクタンスと前記容量性
負荷のキャパシタンスとで生じる振動電圧の半サイクル分が、前記スイッチング素子がオン・オフされる当該オン期間のパルス幅に対応する値となるように、前記パルストランスの2次側漏れインダクタンスの値が与えられてなる」なる表現における『対応する値となるように』とは、パルストランスの2次側漏れインダクタンスが図6に示す点[1]から点[4]の範囲内にあるように選ばれていることを意味する。この点[1]や点[4]に選ばれている場合には、当該インダクタンスが最適な値に選ばれている場合において得られる「トランス出力電圧[kVpp]の値の大略半分の値を出力している。
【0054】
以上説明したように、本願発明においては、パルストランスの2次側漏れインダクタンスと容量性負荷のキャパシタンスとで生じる振動波が、図2に示される「[9]DBD負荷出力」として示す三角波状波形全体での繰返し周期に共振する形ではなく、好ましくは、当該三角波状波形での先頭のパルス状の成分のパルス幅τ0 に見合う半サイクルをもつように設計している。このために、図6ないし図9に示すように、容量性負荷1に印加される電圧のピーク値が大きく増大されるものとなっている。
【0055】
なお、本願発明の場合には、容量性負荷1に印加される正ピークと負ピークとの繰返し周期を変化させた場合においても、前記
1=(τ0/π)×(1/C1
で与えられる条件は、変化させる必要がない。即ち、パルス繰返し周期To を、任意に変化させても、高いピーク値電圧が印加されるものとなっている。
【0056】
このことは、図1に関連して説明した所の、直流電流成分の大きさに対応してデューティ比を変化させる構成が非所望な影響を与えるものとはならないことを示している。即ち、本願における容量性負荷1のキャパシタンスC1 とパルストランス4の2次側漏れインダクタンスL1 とで生じる振動電圧成分は、前述のパルス幅τ0 の2倍の期間を周期とするように選定されているのであって、パルス繰返し周期To の変化に影響されるものではないからである。
【0057】
言うまでもなく、前記特許文献1や特許文献2に示されるものにおいては、当該特許文献1や特許文献2での回路上で生じるキャパシタンスとインダクタンスとで生じる共振周波数の周期と、容量性負荷1に印加される正ピークと負ピークとの繰返し周期とが、1対1に対応付けられてしまっている。
【符号の説明】
【0058】
1:容量性負荷
2:直流電圧供給回路
3:スイッチング回路
4:パルストランス
5:電流検出器
6:増幅回路
7:OR回路
8:発振回路
9:短パルス発生回路
10:ゲートドライブ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性負荷に対して、立上がり急峻な高電圧を印加する所の、パルス電圧を利用する高電圧印加装置であって、
容量性負荷に対して、パルストランスを介して、立上がり急峻なパルス波を供給するスイッチング回路をそなえたパルス電圧を利用する高電圧印加装置において、
前記スイッチング回路は、ゲート制御によってオン・オフされる複数のスイッチング素子を有し、
かつ予め定められたデューティ比α%と、デューティ比0%と、当該デューティ比α%からデューティ比0%までの間での少なくとも中間のデューティ比β(α>β>0)%との信号を発生し得る発振回路を備えており、
当該発振回路からの矩形波の出力の立上がりに対応して、予め定められた期間だけオン電圧を発生する短パルスが発生され、当該短パルスにもとづいて、前記スイッチング素子がゲート制御されると共に、
前記スイッチング回路の出力が、パルストランスを介して、前記容量性負荷に電圧を印加するよう構成され、
前記パルストランスの2次側漏れインダクタンスと前記容量性負荷のキャパシタンスとで生じる振動電圧の半サイクル分が、前記スイッチング素子がオン・オフされる当該オン期間のパルス幅に対応する値となるように、前記パルストランスの2次側漏れインダクタンスの値が与えられてなる
ことを特徴とするパルス電圧を利用する高電圧印加装置。
【請求項2】
前記発振回路は、前記スイッチング回路に流入する直流電流成分についての、当該直流電流成分に比例する比例電圧成分と、
当該直流電圧成分を所定の時定数をもって積分した積分電圧成分とのいずれか大きい電圧成分の大きさに対応して、
予め定められたデューティ比α%と、デューティ比0%と、当該デューティ比α%からデューティ比0%までの間での少なくとも中間のデューティ比β(α>β>0)%とをとり得る構成をもつ
ことを特徴とする請求項1記載のパルス電圧を利用する高電圧印加装置。
【請求項3】
容量性負荷に対して、立上がり急峻な高電圧を印加する所の、パルス電圧を利用するため、
パルストランスを介して、立上がり急峻なパルス波を供給し、
ゲート制御によってオン・オフされる複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と共に、
予め定められたデューティ比α%と、デューティ比0%と、当該デューティ比α%からデューティ比0%までの間での少なくとも中間のデューティ比β(α>β>0)%との信号を発生し得る発振回路とが用いられ、
当該発振回路からの矩形波の出力の立上がりに対応して、予め定められた期間だけオン電圧を発生する短パルスが発生され、当該短パルスにもとづいて、前記スイッチング素子がゲート制御されると共に、
前記スイッチング回路の出力が、パルストランスを介して、前記容量性負荷にパルス電圧を印加するよう構成された装置により高電圧を印加する方法において、
下記の式を満足するようパルストランスの2次側漏れインダクタンスL1 と、パルス波のパルス幅τ0 の値を与えることを特徴とするパルス電圧を利用する高電圧印加方法

1=(τ0/π)×(1/C1
ここで、C1:容量性負荷のキャパシタンス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−114877(P2011−114877A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265941(P2009−265941)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000253075)澤藤電機株式会社 (31)
【Fターム(参考)】