説明

パレコキシブ(PARECOXIB)、バルデコキシブ(VALDECOXIB)およびベンゾピラン誘導体のような水溶性の選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤の経皮投与

COX−2が仲介する疾患の局所的および/または全身的治療用の対象者の皮膚の部分への適用のための医薬組成物は、皮膚の部分に柔軟に適合する支持シート{支持シートは、適用した場合それぞれ皮膚に対し遠位および近位である向かい合う表面を有する};ならびに(a)粘着性物質および(b)選択的COX−2阻害薬、そのプロドラッグおよび塩から選ばれる水溶性活性物質{活性物質は、治療上効果的な総量で、粘着性物質以外の合計してゼロから活性物質可溶化に効果的な量より少ない量の1種以上の溶媒を含むマトリックスに分散している}を含む支持シートの近位表面上の被覆物質を含む。対象者の疼痛および/または炎症の部位の局所的治療方法は、対象者の皮膚表面に、好ましくは疼痛および/または炎症の部位の上に重なる又は隣接する位置に組成物を適用し、そして局所的治療量の活性物質の送達を可能にするのに効果的な期間、適所に組成物を置いておくことを含む。COX−2が仲介する疾患を有する対象者の全身的治療方法は、対象者の皮膚表面に組成物を適用し、そして治療量の活性物質の経皮送達を可能にするのに効果的な期間、適所に組成物を置いておくことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性の選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害薬を含有する医薬組成物、特に、局所的または全身的治療効果を提供するため皮膚への投与に適している粘着性物質被覆シート形態のこのような組成物に関する。本明細書で、“粘着性物質被覆シート”には、パッチ剤、絆創膏剤、パップ剤、パッド剤、硬膏剤、湿布剤、包帯剤等が含まれる。本発明は、また、このような組成物を調製する方法及びそれを必要とする対象者の皮膚へのこのような組成物の投与を含む治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素の阻害は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)が、プロスタグランジン合成の阻害を通じてそれらの特徴的抗炎症、解熱および鎮痛効果を発揮する少なくとも主要なメカニズムであると考えられる。ケトロラク、ジクロフェナク、ナプロキセン及びその塩のような従来のNSAIDsは、治療的用量で、構成的に発現されているCOX−1および炎症が関係する又は誘導COX−2の両シクロオキシゲナーゼのアイソフォームを阻害する。正常な細胞機能に必要であるプロスタグランジンを生成するCOX−1の阻害は、従来のNSAIDsの使用と関係してきた特定の不利な副作用を説明できると考えられる。対照的に、COX−1の実質的阻害の無いCOX−2の選択的阻害は、このような不利な副作用を最小化または排除しながら抗炎症、解熱、鎮痛および他の有用な治療効果に導く。選択的COX−2阻害薬は、従って、技術上の重要な進歩の象徴であった。
【0003】
多数の化合物が、治療上および/または予防上有用な選択的COX−2阻害効果を有することが報告され、特定のCOX−2仲介疾患又はこのような疾患全般の治療または予防に有用性があるとして開示されてきた。このような化合物の中に、例えば本明細書でセレコキシブ(celecoxib)(I)とも呼ばれる化合物4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミドおよび本明細書でデラコキシブ(deracoxib)(II)とも呼ばれる化合物4−[5−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−3−ジフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミドを含む、ターレイ(Talley)等の米国特許第5,466,823号で報告されたような多数の置換ピラゾリルベンゼンスルホンアミド類がある。
【化3】

【0004】
治療上および/または予防上有用な選択的COX−2阻害効果を有することが報告された他の化合物は、例えば本明細書でバルデコキシブ(valdecoxib)(III)とも呼ばれる化合物4−[5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イル]ベンゼンスルホンアミドを含む、ターレイ等の米国特許第5,633,272号で報告されたような置換イソオキサゾリルベンゼンスルホンアミド類である。
【化4】

【0005】
治療上および/または予防上有用な選択的COX−2阻害効果を有することが報告された尚も他の化合物は、例えば本明細書でロフェコキシブ(rofecoxib)(IV)とも呼ばれる化合物3−フェニル−4−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−5H−フラン−2−オンを含む、ダチャーム(Ducharme)等の米国特許第5,474,995号で報告されたような置換(メチルスルホニル)フェニルフラノン類である。
【化5】

【0006】
ベリー(Belley)等の米国特許第5,981,576号は、3−(1−シクロプロピルメトキシ)−5,5−ジメチル−4−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−5H−フラン−2−オンおよび3−(1−シクロプロピルエトキシ)−5,5−ジメチル−4−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−5H−フラン−2−オンを含む選択的COX−2阻害薬として有用であると言われる更なる一連の(メチルスルホニル)フェニルフラノン類を開示する。
【0007】
デューブ(Dube)等の米国特許第5,861,419号は、例えば本明細書でエトリコキシブ(etoricoxib)(V)とも呼ばれる化合物5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジンを含む選択的COX−2阻害薬として有用であると言われる置換ピリジン類を開示する。
【化6】

【0008】
ヨーロッパ特許出願番号0863134は、選択的COX−2阻害薬として有用であると言われる化合物2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−シクロペンテン−1−オンを開示する。国際公開番号WO99/11605は、COX−2の選択的阻害剤であると言われる化合物5−メチル−2−(2´−クロロ−6´−フルオロアニリノ)フェニル酢酸及びその塩を含む5−アルキル−2−アリールアミノフェニル酢酸及びその誘導体を開示する。
【0009】
カーター(Carter)等の米国特許第6,034,256号は、化合物(S)−6,8−ジクロロ−2−(トリフルオロメチル)−2H−1−ベンゾピラン−3−カルボン酸(VI)
【化7】

化合物(S)−6−クロロ−7−(1,1−ジメチルエチル)−2−(トリフルオロメチル)−2H−1−ベンゾピラン−3−カルボン酸(VII)
【化8】

及びその塩を含む、選択的COX−2阻害薬として有用であると言われる一連のベンゾピラン類を開示する。
【0010】
国際公開番号WO00/24719は、化合物2−(3,4−ジフルオロフェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブトキシ)−5−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−(2H)−ピリダジノンを含む、選択的COX−2阻害薬として有用であると言われる置換ピリダジノン類を開示する。
【0011】
選択的COX−2阻害薬は、種々の方法で、主として経口送達用に処方されてきた。しかしながら、このような薬物の局所的投与については、例えば上述した特許のいくつかで一般に示唆されてきた。
【0012】
上述の米国特許第5,466,823号および第5,633,272号は、セレコキシブおよびバルデコキシブを含むそれらの対象化合物を局所的に送達することができることを開示する。
【0013】
上述の米国特許第5,474,995号は、ロフェコキシブを含むその対象化合物を、局所用途用クリーム剤、軟膏剤、ゼリー剤、液剤または懸濁剤として処方することができることを開示する。上述の米国特許第5,861,419号は、同様に、エトリコキシブを含むその対象化合物を、局所用途用クリーム剤、軟膏剤、ゼリー剤、液剤または懸濁剤として処方することができることを開示し、更に、局所処方物が、一般に製薬担体、共溶媒、乳化剤、浸透増強物質、保存剤システムおよび皮膚軟化剤から成ってもよいことを示唆する。
【0014】
ターレイ等の米国特許5,932,598号は、本明細書でパレコキシブ(parecoxib)(VIII)とも呼ばれる化合物N−[[4−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イル)フェニル]スルホニル]プロパンアミド及びその塩、例えば本明細書でパレコキシブナトリウムと呼ばれるナトリウム塩を含む、選択的COX−2阻害薬の水溶性プロドラッグのクラスを開示する。パレコキシブは、対象者への投与後、実質的に水に不溶性の選択的COX−2阻害薬バルデコキシブへと変わる。パレコキシブそれ自体は、COX−1およびCOX−2の両者に対し弱いインビトロ阻害活性を示すが、一方、バルデコキシブ(III)は、COX−1の弱い阻害剤であるが、COX−2に対しては強い阻害活性を有する。
【化9】

【0015】
セレコキシブおよびバルデコキシブのようなほとんどの選択的COX−2阻害薬と比較すると、パレコキシブ、特にパレコキシブナトリウムのような塩の高い水溶性故に、プロドラッグのパレコキシブは、非経口用途が提案されてきた。ターレイ等(2000),
J. Med. Chem. 43, 1661-1663参照。
【0016】
上述の米国特許第5,932,598号および第6,034,256号は、それらの対象化合物が、例えば、レザバーおよび多孔性膜タイプまたは固形マトリックス(solid matrix)型のいずれかのパッチを用いる経皮的仕掛けにより投与することができることを開示する。どちらの場合においても、活性物質は、レザバー(reservoir)またはマイクロカプセルから膜を通じて、活性物質が浸透できる粘着性物質(粘着性物質は、受容者の皮膚または粘膜と接触している)中へと継続的に送達されると言われる。
【0017】
イケダ等の米国特許第5,208,035号は、支持材料およびその上に広げられるペーストを含む硬膏剤を開示する。ペーストは、NSAIDジクロフェナクナトリウム、1−メントール、プロピレングリコールおよび水溶性ポリマーを含む。
【0018】
ベイカー(Baker)等の米国特許第5,591,767号は、塞がれた支持層と多孔性膜の間にNSAIDケトロラク(ketorolac)の貯蔵庫を有する経皮パッチ剤を開示する。貯蔵庫は、ケトロラクに加え、ミリスチン酸イソプロピル、カプリル酸トリグリセリド(caprylic
triglyceride)、カプリン酸トリグリセリド(capric triglyceride)およびグリセリルオレアートから選ばれる可塑化タイプの増強物質ならびにエタノール、プロパノールおよびプロピレングリコールから選ばれる溶媒タイプの増強物質を含有する。粘着性物質層は、多孔性膜の皮膚に面する側と接触している。
【0019】
アキザワ等の米国特許第5,607,690号は、ジクロフェナクナトリウムを含有するその他の点では同様の製剤と比較すると増強した皮膚浸透を示すと報告されているそのヒドロキシエチルピロリジン塩の形態のNSAIDジクロフェナクを含有する抗炎症および鎮痛硬膏製剤を開示する。ジクロフェナクナトリウムの低い皮膚浸透性は、この塩の水における低い溶解性に起因することがその中で述べられている。
【0020】
デイビス&プリモ−デイビス(Davis
& Primo-Davis)の米国特許第5,665,378号は、NSAID、利尿薬パマブロム、カプサイシンならびにメントール、ユーカリプトール、グリセリルモノステアラートおよびd−リモネンから選ばれる皮膚浸透増強物質を含む経皮パッチ処方物を開示する。処方物は、月経痛を治療するのに有用であると言われている。
【0021】
ジェオング(Jeong)等の米国特許第5,916,587号は、NSAIDピロキシカム、吸収助剤(典型的には溶媒)および浸透増強物質を含有する粘着性物質ポリマーマトリックスを有する経皮パッチ剤を開示する。
【0022】
特開平6−219940は、水中油滴型エマルションのNSAIDジクロフェナクナトリウムを含むレザバーを有する経皮パッチ剤を開示する。
【0023】
国際公開番号WO94/23713は、NSAID具体的にはフルルビプロフェン、脂肪酸アルキルエステル類およびモノグリセリド類から選ばれる親油性医薬品添加物、ならびにポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル類、イソソルビド(isosorbide)エーテル類およびジエチレングリコールエーテル類から選ばれる親水性医薬品添加物を含む局所および/または経皮送達組成物を開示する。柔軟な支持物への適用用処方物に圧力感受性粘着性物質を含めて絆創膏剤、パッチ剤または包帯剤として有用な粘着性物質被覆シート材料を形成することができる。
【0024】
国際公開番号WO97/29735は、エステル系日焼け止めである皮膚浸透増強物質、好ましくはp−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸ジメチル、ケイ皮酸、メトキシケイ皮酸またはサリチル酸の長鎖アルキルエステル、例えばオクチルジメチルp−アミノベンゾエートまたはサリチル酸オクチルを含む経皮薬物送達システムを開示する。
【0025】
特開平10−114646は、NSAID具体的にはインドメタシン、および皮膚刺激を軽減する物質としてのベルベリンを含むパッチ剤を開示する。
【0026】
特開平10−218793は、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、NSAIDフェルビナク、1−メントールおよびオレイルアルコールを含む粘着性絆創膏剤を開示する。
【0027】
特開平10−298065は、支持層を形成するためにポリマーフィルムと布を張り合わせ、次いで血液循環促進物質およびNSAIDを含有することのできる親水性層と張り合わせることにより調製した“温かさを感じる”と言われる粘着性絆創膏剤を開示する。
【0028】
特開平10−298069は、ポリエーテル−エステル−アミド粘着性物質およびNSAID具体的にはケトプロフェンを含有する圧力感受性粘着性物質層をその上に有する弾性支持物を含むパッチ剤を開示する。
【0029】
特開平11−199515は、フルルビプロフェン、フェルビナク、ブフェキサマックおよびサプロフェンから選ばれるNSAID、1種以上の水溶性ポリマーならびに2種以上の多価金属化合物を含むパッチ剤を開示する。
【0030】
特開平11−199516は、NSAIDフルルビプロフェン、トウガラシエキスおよびポリマーの混合物を含むパッチ剤を開示する。
【0031】
特開平11−199518は、NSAIDフルルビプロフェン、トウガラシエキスおよびβ−シクロデキストリンを含むパッチ剤を開示する。
【0032】
特開平11−199519は、NSAIDフルルビプロフェン、トウガラシエキスおよびゼラチンを含むパッチ剤を開示する。
【0033】
国際公開番号WO99/62557は、実質的にジエチレングリコールエーテルおよびソルビタンエステルから成る吸収促進物質、ならびに粘着性物質マトリックスを含むNSAIDの経皮投与用組成物を開示する。
【0034】
国際公開番号WO00/41538は、異なる機能性を有する2種以上のアクリルを基にしたポリマーの混合物を含む薬物の経皮投与用組成物を開示する。
【0035】
国際公開番号WO00/51575は、脂肪アルコール類例えばオレイルアルコールおよび脂肪酸エステル類例えばグリセリルモノオレアート、ミリスチル酸イソプロピルから選ばれる皮膚浸透増強物質を有するNSAIDの組成物を含有する経皮的仕掛けを開示する。
【0036】
特開2000−256214は、上に層になったポリエチレン布を有するシリコーン処理されたポリエステルフィルム上の粘着性基剤中に処方された、NSAIDならびにトウガラシエキス、カプサイシンおよびノナン酸バニリルアミドから選ばれる温度感覚刺激物質を含むパッチ剤を開示する。
【0037】
韓国特許公開番号2000/24702は、粘着性ポリマー、助剤および吸収促進物質と共にNSAIDロキソプロフェンを含むパップ剤を開示する。
【0038】
ヨーロッパ特許出願番号1148106は、薬物例えばNSAID、多価アルコールおよび脂肪酸のナトリウム、マグネシウム、亜鉛またはアルミニウム塩を含む圧力感受性粘着性絆創膏製剤を開示する。
【0039】
ヨーロッパ特許出願番号1170020は、炎症疼痛例えば腰痛の局所治療のためNSAID具体的にはジクロフェナクナトリウムおよび局所麻酔薬具体的にはリドカインを含む組成物を開示する。活性物質は、報告では、水溶性ポリマー、架橋剤、水および保水剤を含有する粘着性ゲル基剤中に包含され;ゲル基剤は、次いで、パッチ剤へと切断するため圧力をかけられポリプロピレンライナーで覆われる不織布に塗布される。
【0040】
カワジ&ヤマジの米国特許第6,262,121号は、NSAIDジクロフェナクナトリウム、イソステアリン酸、大気温で液体である脂肪酸および粘着性基剤を含む油性パッチ剤を開示する。
【0041】
国際公開番号WO01/91743は、重量%で5−50%のスチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー、0.05−20%のN−メチル−2−ピロリドンおよび0.1−20%のポリエチレングリコールと共に0.1−20%のNSAID4−ビフェニル酢酸(フェルビナク)を含有するパッチ剤を開示する。
【0042】
英国特許公開番号2362825は、水溶性ポリマー、水溶性ビニルポリマーおよび水に不溶性の多価金属塩を含む水性基剤中のNSAID、アルキルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび親水性非イオン表面活性剤を含む経皮パッチ剤を開示する。
【0043】
特開2002−193793は、フルルビプロフェンのようなNSAIDを含むパッチ処方物を開示する。処方物は、グリセリンを含有するゲルにグリコールを溶解または分散し、同じゲル中にNSAIDを分散することにより調製される。ゲルは、次いで、伸縮自在の不織布上に広げられ、ポリプロピレンフィルムで覆われてパッチ剤を提供する。
【0044】
国際公開番号WO02/58620は、COX−2阻害剤例えば選択的COX−2阻害剤、および筋弛緩剤具体的にはプリジノールメシラートを含有する医薬組成物を開示する。パップ剤(エンプラスト(emplasto))およびパッチ剤(パーチ(parche))を含む種々の剤形が、その中で考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
前記のものが示すように、局所的または全身的治療効果を達成する目的で皮膚へのNSAIDある場合には選択的COX−2阻害薬を含む粘着性物質被覆シートの投与が、当業界で広く考えられてきた。しかしながら、このような効果を達成するため薬物の十分な速度の皮膚浸透を発揮することを示すことのできる選択的COX−2阻害薬の粘着性物質被覆シート組成物に対する技術上の必要性が依然として残っている。
【0046】
全身的効果を所望である場合、組成物は、薬物が経口または非経口的に与えられる場合の最小の治療上効果的な毎日の投薬量に少なくとも等しい量の薬物を皮膚浸透により毎日送達することができる必要がある。たとえ経皮経路による生物学的利用能が高くても、これは、特に治療上の用量が高い場合には、困難な挑戦になりかねない。更に、この結果を達成するのに皮膚の非常に大きい面積に粘着性物質被覆シートを貼ることは、実際的ではないし好都合でもない;典型的には、成人ヒト対象者への適用のための最大面積は、約400cmであるが、好ましくは皮膚のずっと小さい部分が対象とされる。
【0047】
具体的には、セレコキシブの場合、成人ヒトの経口投与による典型的な最小の毎日の用量は、約200mgである。従って、400cm部分において500μg/cm.日の最小浸透速度が、最小の一日用量のセレコキシブを提供するのに必要とされる。400cmよりずっと小さい部分を対象とすることが一般的に望ましく、従って、望まれる最小浸透速度は、500μg/cm.日より更に高い。局所的送達のみが所望される場合でさえ、例えばパッチ剤、パップ剤または絆創膏剤による局所的適用に利用できる皮膚の面積が、一般にわずか約140cm、しばしばそれより少ないことから、高い浸透速度は尚も重要である。
【0048】
従って、全身的治療効果を所望であろうと局所的治療効果を所望であろうと、特に僅か約400cmの皮膚面積に適用する場合、治療上の効果を得るのに十分な浸透を提供する粘着性物質被覆シートの形態で選択的COX−2阻害薬を処方することは、依然として困難な挑戦である。更に詳しくは、水溶性の選択的COX−2阻害薬またはプロドラッグをこのような形態で処方することは、困難な挑戦である。
【課題を解決するための手段】
【0049】
そこで、COX−2が仲介する疾患の局所的および/または全身的治療用の対象者の皮膚の部分への適用のための医薬組成物が提供される。組成物は、皮膚の部分に柔軟に適合する支持シート{支持シートは、適用した場合それぞれ皮膚に対し遠位および近位である向かい合う表面を有する};および支持シートの近位表面上の被覆物質を含む。被覆物質は、(a)粘着性物質および(b)選択的COX−2阻害薬又はそのプロドラッグもしくは塩を含む水溶性活性物質を含み、活性物質は、治療上効果的な総量であり、粘着性物質を除き合計がゼロから活性物質可溶化に効果的な量未満である1種以上の溶媒を含むマトリックス(matrix)に分散している。
【0050】
粘着性物質以外の1種以上の溶媒、例えば水またはポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールのような多価アルコールが、“合計が活性物質可溶化に効果的な量未満”でマトリックスに存在すると本明細書で規定される場合、このような溶媒の量は、被覆物質に存在する全ての活性物質を溶解するには不十分であると理解されるであろう。活性物質は、マトリックス中に固形微粒子形態で分散することができる。あるいは、マトリックスが粘着性物質により主として形成される場合、活性物質は、任意にこのようなマトリックス中に全体的に又は部分的に分子として、即ち固溶体で、分散することができる。
【0051】
本組成物は、それらを調製するのに用いるいずれの方法によっても制限されない。具体例の方法において、活性物質は、粘着性物質と混合する前に、溶媒または溶媒の混合物、例えばエタノールおよび水に溶解する。しかしながら、代表的には、溶媒または溶媒の混合物は、後に加熱により除去され、従って、本発明による最終組成物は、このような溶媒を含有していないか、または合計が活性物質可溶化に効果的な量未満であるこのような溶媒を有する。
【0052】
好ましい態様において、被覆物質は、粘着性物質を含むマトリックスに分散した活性物質を有する層を含む。あるいは、被覆物質は、二つの層:支持シートに隣り合う活性物質を含むレザバー層、および使用した場合皮膚に近位である粘着性物質層を含む。任意選択で、このような被覆物質において、活性物質の通過を可能にする膜が、レザバー層と粘着性物質層の間に存在する。
【0053】
好ましい組成物において、被覆物質は、更に1種以上の皮膚浸透増強物質を含む。
【0054】
好ましくは、はがせる剥離ライナーも提供される。このライナーは、使用前は粘着性物質を含有する層に隣り合っており、皮膚への組成物の適用前に除去される。
【0055】
対象者のその部位における疼痛および/または炎症の局所的治療方法が更に提供され、方法は、対象者の皮膚表面に、好ましくは疼痛および/または炎症の部位の上に重なる又は隣接する位置に本明細書で提供されるような医薬組成物を適用し、そして局所的治療量の活性物質の送達を可能にするのに効果的な期間、適所に組成物を置いておくことを含む。
【0056】
COX−2が仲介する疾患を有する対象者の全身的治療方法が尚も更に提供され、方法は、対象者の皮膚表面に本明細書で提供されるような医薬組成物を適用し、そして治療量の活性物質の経皮送達を可能にするのに効果的な期間、適所に組成物を置いておくことを含む。
【0057】
本発明の医薬組成物は、一般的名称であって、皮膚に対し粘着性であるパッチ剤、絆創膏剤、パップ剤、パッド剤、硬膏剤、湿布剤および包帯剤を包含すると理解されるであろう
“粘着性物質被覆シート”として本明細書で説明される。粘着性物質被覆シートの成分は、組成物が適用されることになる皮膚表面に関連して本明細書で説明される。ここで層または表面に適用された時、用語“近位”は、組成物が正確に適用された場合、皮膚表面に近いことを意味し、用語“遠位”は、皮膚表面から離れていることを意味する。
【0058】
組成物の最も遠位層は、皮膚表面に柔軟に適合する支持シートである。いずれの適切な材料も支持シートに用いることができるが、代表的には、ポリマーフィルム、例えば1種以上のポリエチレン、塩化ポリビニル、エチルビニルアセタート、ポリウレタンおよびポリエステル、または任意にその上に張り合わせたポリマーフィルムを有する織物もしくは不織布を含むものを用いる。支持シートは、実質的に塞がれた包帯剤を提供するように気密および/または防水であってもよい。あるいは、治療される皮膚部分への空気の循環のため孔または他の手段を有する支持シートを用いることができる。目下好ましい支持シートは、約20から約100μmの厚さを有するエチルビニルアセタートフィルム、例えばミランテクノロジー社(Mylan Technologies Inc.)のメジフレックス(Mediflex)(登録商標)1200である。
【0059】
被覆物質は、支持シートの近位表面上に存在する。上記で示したように、被覆物質は、(a)粘着性物質および(b)バルデコキシブ又はそのプロドラッグ又はその塩を含む活性物質を含み、活性物質は、治療上効果的な総量で、粘着性物質を除いた合計がゼロから活性物質可溶化に効果的な量未満の1種以上の溶媒を含むマトリックスに分散している。
【0060】
第一の態様において、活性物質は、粘着性物質および任意に他の医薬品添加物を含んでも良いマトリックス中に分散している。図1に示すように、この第一の態様の組成物10は、有効成分が粘着性物質マトリックス中に分散している被覆物質層12をその近位表面上に有する遠位支持シート11を含む。被覆物質層12の近位側上に、皮膚表面への適用前に被覆物質層12を露出するために取り除くことのできる任意のはがせる剥離ライナー15があってもよい。
【0061】
第二の態様において、活性物質は、支持シートに隣り合うレザバー層の固形または半固形マトリックス例えばゲル中に分散しており、そして粘着性物質は、レザバー層に近位のまったく別の層に存在し、任意にこれらの層の間の活性物質の通過を可能にする膜があってもよい。図2に示すように、この第二の態様の組成物20は、有効成分が固形または半固形マトリックス中に分散しているレザバー層22をその近位表面上に有する遠位支持シート21を含む。レザバー層22の近位側上に、任意に膜24によりレザバー層22と隔てられてもよい粘着性物質層23がある。粘着性物質層23の近位側上に、皮膚表面への適用前に粘着性物質層23を露出するために取り除くことのできる任意のはがせる剥離ライナー25があってもよい。
【0062】
好ましくは、上記の態様のいずれにおいても、剥離ライナーが提供される。このライナーは、粘着性物質を含有する層に粘りつかないいずれの適切な材料でも製造することができる、またはこのような材料とはり合わせることができるため、ライナーは、組成物からその層のかなりの量をはがすことなく容易にはがせる。代表的剥離ライナーは、シリコーンまたはフルオロポリマーの簡単剥離被覆物質とはり合わせたポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタラート)またはポリウレタンフィルムである。目下好ましい剥離ライナーは、約50から約250μmの厚さを有する、シリコーンとはり合わせたポリエステル、PETまたはポリウレタンフィルム、例えばミランテクノロジー社のメジフレックス(登録商標)2228である。
【0063】
剥離ライナーは、組成物の輸送および貯蔵中の被覆物質のいくらかの保護を提供するが、代表的には、組成物は、個々の包装、例えばポリエチレンラップにより更に保護される。組成物は、好ましくは、包装が開けられるまで滅菌条件で維持される。
【0064】
活性物質は、25℃で約10mg/ml以上、好ましくは約50mg/ml以上、そして更に好ましくは約100mg/ml以上の水中溶解度を有する選択的COX−2阻害薬並びにそのプロドラッグおよび塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。ここで“選択的COX−2阻害薬”とは、インビボまたはインビトロで測定した場合のCOX−1/COX−2 IC50比が、約10以上、好ましくは約20以上、更に好ましくは約50以上、そして最も好ましくは約100以上のであるものである。
【0065】
一態様において、活性物質は、式(IX)
【化10】

[ここで、RおよびRは、独立に、水素または代謝的に水素で置換可能である基である]の水溶性化合物又はこのような化合物の薬学的に許容することのできる塩を含む。好ましくは、Rは、水素または低級アルキル、ヒドロキシアルキルもしくはアシル基であり、そしてRは、水素または低級アルキル、ヒドロキシアルキルもしくはアシル基またはR−CO−基である(Rは、水素または低級アルキル、低級アルコキシ、低級カルボキシアルキル、低級アルコキシアルキル、低級アルコキシカルボニルアルキル、低級アミノアルキル、低級アルキルカルボニルアミノアルキル、低級アルコキシカルボニルアミノアルキル、フェニルもしくは低級アルコキシカルボニル基であり、更に好ましくは、水素またはC1−5アルキル、アルコキシ、カルボキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシカルボニルもしくはフェニル基である)。
【0066】
特に好ましいのは、Rが水素であり、そしてRがエトキシカルボニルである式(IX)の化合物(即ち、パレコキシブ)および式(X):
【化11】

[ここで、Mは、薬学的に許容することのできるカチオンである]を有するパレコキシブの塩である。このような塩としては、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属カチオン、例えばアルミニム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛のような無機カチオン、またはトロメタミン、ジエチルアミン、N,N´−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン等のようなアミンから調製される有機カチオンを有する塩基付加塩が挙げられる。パレコキシブの好ましい塩は、アルカリ金属塩、最も好ましくは以後パレコキシブナトリウムと称するナトリウム塩である。
【0067】
別の態様において、活性物質は、式(XI)
【化12】

[ここで、Rは、水素、ハロゲン、または低級アルキル、低級ヒドロキシアルキルもしくはアルコキシ基であり;Rは、水素、ハロゲンまたは低級アルキル、低級アルキルチオ、低級ハロアルキル、アミノ、アミノスルホニル、低級アルキルスルホニル、低級アルキルスルフィニル、低級アルコキシアルキル、低級アルキルカルボニル、ホルミル、シアノ、低級ハロアルキルチオ、置換又は無置換フェニルカルボニル、低級ハロアルコキシ、低級アルコキシ、低級アラルキルカルボニル、低級ジアルキルアミノスルホニル、低級アルキルアミノスルホニル、低級アラルキルアミノスルホニル、低級ヘテロアラルキルアミノスルホニル、5−もしくは6−員のヘテロアリール、低級ヒドロキシアルキル、置換された又は置換されていないフェニルまたは5−もしくは6−員の窒素含有ヘテロシクロスルホニル基であり;Rは、水素またはハロゲンまたは低級アルキル、低級ハロアルキル、低級アルコキシもしくはフェニル基であり;そしてRは、水素、ハロゲンまたはシアノ、ヒドロキシイミノメチル、低級ヒドロキシアルキル、低級アルキニル、フェニルアルキニル、低級アルキル、低級アルコキシ、ホルミルもしくはフェニル基である]の水溶性化合物;またはその塩を含む。
【0068】
特に好ましいのは、RおよびRが各々水素であり、そしてRおよびRが各々コリンである式(XI)の化合物、即ち化合物(S)−6,8−ジクロロ−2−(トリフルオロメチル)−2H−1−ベンゾピラン−3−カルボン酸(VI)、またはRおよびRが各々水素であり、Rが塩素であり、そしてRがtert−ブチル基である式(XI)の化合物、即ち化合物(S)−6−クロロ−7−(1,1−ジメチルエチル)−2−(トリフルオロメチル)−2H−1−ベンゾピラン−3−カルボン酸(VII)および薬学的に許容することのできるその塩である。
【0069】
本発明の組成物に用いられるパレコキシブ及びその塩は、いずれの公知の方法によっても、例えば上述の米国特許第5,932,598号に示される方法で調製することができる。本発明の組成物に用いられる式(XI)の化合物及びその塩は、いずれの公知の方法によっても、例えば上述の米国特許第6,034,256号に示される方法で調製することができる。
【0070】
活性物質は、組成物が皮膚に適用される時、治療上の効力を提供するのに十分な量および濃度で存在し、約7日まで、好ましくは約1日までの期間、それと接触したままである。治療上効果的な量または濃度を構成するものは、用いる特定の活性物質、皮膚の浸透性、治療しようとする疾患の性質、局所的または全身的送達を必要とするかどうか、および他の要素に依存する。
【0071】
パレコキシブまたはパレコキシブナトリウムの場合、代表的には、支持シートを除いて重量%で約0.1%から約50%、より代表的には約0.5%から約25%、例えば約1%から約10%の組成物中の濃度が適切である。組成物の単位面積あたりのパレコキシブまたはパレコキシブナトリウムの量は、代表的には約10から約5000μg/cm、更に代表的には約50から約2500μg/cm、例えば約100から約1000μg/cmである。投与された用量の一部分しか皮膚の中におよび/または皮膚を通じて移行されないが、具体的には、cm当たり200μgの活性物質を含有する10cmx10cm(100cm)のパッチ剤は、20mg量の活性物質投与に相当する。例えば、この具体例のパッチ剤は、活性物質2mgの合計送達に相当する1日間で20μg/cm.日の浸透速度または2/20即ち10%の送達効率で活性物質を送達することができる。より大きい及びより小さい効率の送達も、本明細書で考えられる範囲内にある。
【0072】
活性物質は、粘着性物質を除いた合計がゼロから活性物質可溶化量未満である1種以上の溶媒を含むマトリックスに分散している。好ましい態様において、マトリックスは、主として(約50重量%より多い)粘着性物質から成る。
【0073】
理論に縛られる訳ではないが、活性物質を粘着性物質以外の溶媒系に完全に可溶化するということは、皮膚および下にある組織へ浸透する活性物質の傾向を望ましくないほど妨げるであろうと考えられている。対照的に、このような溶媒系が実質的にない本組成物は、例えば“アクリルエマルションのような粘着性物質系を有する適切な溶媒系中”に活性物質を含む、上述した米国特許第5,932,598号で考えられたような組成物よりも、皮膚の中への又は皮膚を通じた活性物質の移行に大きい駆動力を有すると考えられる。
【0074】
好ましくは、組成物は、約1以上、更に好ましくは約3以上、そして最も好ましくは約10μg/cm.日以上の皮膚浸透速度を示す。
【0075】
皮膚浸透速度又はこのような速度の範囲が本明細書で示される場合、そのような速度は標準試験、具体的にはヒトの死体の皮膚を用いる標準試験により測定される速度を意味すると理解されるであろう。
【0076】
このような試験の一例として、適切な面積例えば直径25mmの平円形の死体の皮膚膜、および適切な受容液、例えば1%ポリソルベート80溶液または6%ポリエチレングリコール(20)オレイルエーテル(oleth-20)溶液を有するフランツ(Franz)拡散セルを用いることができる。フランツ拡散セルの受容コンパートメントは、受容液で満たされ、拡散セルは、適切な温度、好ましくは生きているヒトの皮膚温に近い温度で維持される。32℃の受容液温が、適切であることが分かっている。膜は、その内側表面,即ち表皮表面の反対側の表面が受容液と接触して置かれるように向いている。空気の泡を受容液から取り除き、次いで、適切な期間、代表的には約30分間膜と平衡にする。表皮表面を乾燥し、剥離層が取り除かれている組成物の試験試料例えば10mmの平円形をその粘着性被覆物質が表皮表面と接触するように置き、所望の期間例えば24時間適所に残したままにする。試料と表皮間の接触の申し分のない完全さを保障することが重要である。この期間中に間隔をおいて、および/またはこの期間の最後に、受容液中の活性物質の濃度を、適切な分析法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。この濃度は、試験期間中に皮膚膜に浸透した活性物質の量の尺度であり、活性物質の皮膚浸透速度をμg/cm.日またはμg/cm.日のような単位で算定するのに用いることができる。
【0077】
皮膚膜が、供給源に依存して浸透性にかなりの変動を示すことは理解されるであろう。このような膜を通過する絶対浸透速度は、従って、基準組成物から得られたデータに基づき、用いた試験膜の浸透性を標準化した浸透速度よりも意味が小さい。適切な基準組成物は、70%水性エタノール中の活性物質溶液または水性懸濁液であり、フランツセルまたは並行拡散セルで評価することができる。
【0078】
粘着性物質は、通常、1種以上の高分子物質を含む。例としては、ゼラチン、寒天、アルギン酸、マンナン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン(PIB)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロックコポリマー類、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルコポリマー、アクリル酸−アクリル酸エステル−酢酸ビニルコポリマー類および石油樹脂が挙げられる。シリコーンを主成分とする粘着性物質は、もう一つの選択肢である。
【0079】
天然ゴムを粘着性物質の主成分として用いる場合、具体例の粘着性物質組成物は、約30重量%から約70重量%の天然ゴム、約30重量%から約60重量%の粘稠剤樹脂、多くて約20重量%の可塑剤または柔軟剤および約0.01%から約2%の酸化防止剤を含む。粘着性物質がSISブロックコポリマーを主成分とする場合、具体例の粘着性物質組成物は、約20重量%から約50重量%のコポリマー、約25重量%から約60重量%粘稠剤樹脂、約5重量%から約20重量%の液状ゴムおよび約0.01重量%から約2重量%の酸化防止剤を含む。
【0080】
適切な粘稠剤樹脂としては、具体的には、脂環式飽和炭化水素石油樹脂、ロジン、ロジングリセリンエステル、水素化ロジン、水素化ロジングリセリンエステル、水素化ロジンペンタエリトリトールエステル、クマロンインデン樹脂類、ポリテルペン類、テルペン−フェノール樹脂類、シクロ脂肪族炭化水素樹脂、アルキル芳香族炭化水素樹脂、炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂およびフェノール樹脂が挙げられる。適切な酸化防止剤としては、具体的にはジブチルヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられる。適切な可塑剤または柔軟剤としては、具体的には、流動パラフィンおよび石油が挙げられる。
【0081】
任意に、金属封鎖剤を、粘着性物質組成物に含有させても良い。適切な金属封鎖剤としては、特に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ジメチルグリオキシム、8−ヒドロキシキノリン、ニトリロ三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、グルコン酸、クエン酸および酒石酸が挙げられる。これらは、具体的には、約0.01重量%から約2重量%の量で用いる。
【0082】
1種以上の溶媒の溶液で一般に提供される現在のところ好ましい粘着性物質は、PIBを主成分とする粘着性物質、例えばナショナルスターチ(National Starch)のDuro−Tak(登録商標)87−6173;アクリル酸エステルを主成分とする粘着性物質、例えばナショナルスターチのDuro−Tak(登録商標)387−2052、387−2353または387−2516;およびシリコーンを主成分とする粘着性物質、例えばダウコーニング(Dow
Corning)のBio−PSA(登録商標)7−4201である。本発明の特定の組成物の用途用最適粘着性物質システムの選択は、本明細書の開示に照らし、通常の試験により行うことができるが、通常、バルデコキシブの最善の皮膚流量(skin
flux)にはアクリルを主成分とする粘着性物質システムを選ぶべきであり、一方、パレコキシブの最善の皮膚流量には、特にパレコキシブナトリウムとして適用する場合、シリコーンを主成分とする粘着性物質システムが好ましいことが分かっている。
【0083】
組成物中に少なくとも1種の皮膚浸透増強物質を含有することが好ましい。
【0084】
一態様において、少なくとも1種の皮膚浸透増強物質は、テルペン類、テルペノイド類、脂肪アルコール及びその誘導体から選ばれる。例としては、オレイルアルコール、チモール、メントール、カルボン、カルベオール、シトラール、ジヒドロカルベオール、ジヒドロカルボン、ネオメントール、イソプレゴール、4−テルピネオール、メントン、プレゴール、ショウノウ、ゲラニオール、α−テルピネオール、リナロオール、カルバクロール、トランス−アネトール、その異性体及びそのラセミ混合物が挙げられる。任意に1種より多いこのような浸透増強物質、例えば脂肪アルコールおよびテルペンまたはテルペノイドが存在しても良い。従って、一つの具体的態様において、本発明の組成物は、浸透増強物質としてオレイルアルコールおよびチモールを含む。
【0085】
脂肪酸例えばオレイン酸ならびにそれらのアルキルおよびグリセリルエステル例えばラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、グリセリルモノラウラート、グリセリルモノオレアート、グリセリルモノステアラート、グリセリルジラウラート、グリセリルジオレアート等も皮膚浸透増強物質として用いることができる。この群のうち、グリセリルモノラウラートが、特に好ましい。例えば参照により本明細書に含める国際公開番号WO98/18416に開示されるようなグリコール酸及びその塩の脂肪酸エステルも、やはり有用な皮膚浸透増強物質である。このようなエステルの例としては、グリコール酸ラウロイル、グリコール酸カプロイル、グリコール酸ココイル、グリコール酸イソステアロイル、ラウロイルグリコール酸ナトリウム、ラウロイルグリコール酸トロメタミン等が挙げられる。皮膚浸透増強物質としてやはり有用なのは、脂肪アルコールの乳酸エステル、例えば乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸オレイル等である。
【0086】
他の皮膚浸透増強物質としては、ヘキサヒドロ−1−ドデシル−2H−アゼピン−2−オン(ラウロカプラム、アゾン(Azone)(登録商標)及びその誘導体、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−デシルメチルスルホキシド、サリチル酸及びそのアルキルエステル例えばサリチル酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルトルアミド、2−ピロリジノン及びそのN−アルキル誘導体例えばNMPおよびN−オクチル−2−ピロリジノン、2−ノニル−1,3−ジオキソラン、ユーカリプトールおよびソルビタンエステルが挙げられる。
【0087】
組成物の他の成分としては、粘稠化剤、表面活性剤、乳化剤、酸化防止剤、保存剤、安定化剤、着色剤および着香剤から選ばれる1種以上の医薬品添加物を挙げることができる。皮膚刺激軽減剤、例えばビタミンE、グリチルレチン酸またはジフェンヒドラミンも存在することができる。
【0088】
具体的には、本発明の組成物は、以下の通りである量の種々の成分(全て重量パーセンテージ):
活性物質 1−10%
皮膚浸透増強物質 2−20%
粘着性物質 70−97%
を含む被覆物質層を有する。
【0089】
浸透増強物質として上記で挙げた特定の化合物は、本来、局所的鎮痛薬として機能することができる。例えばサリチル酸メチル、メントールまたはその組合せは、本発明の組成物に含有される場合、補助的無痛を提供することができる。特に、このような化合物は、活性物質のより長期の持続鎮痛および抗炎症効果を補う早期開始の短期無痛を提供することができる。サリチル酸メチルおよびメントールを含む本発明の組成物において、適切な量は、5−30重量%のサリチル酸メチルおよび2−20重量%のメントールである。これらの範囲外の量も、特定の状況で有用であっても良い。
【0090】
本発明の被覆シート組成物は、いずれの公知の方法によっても調製することができる。二つの具体的方法を、ここで、“溶媒法”および“溶融法”として説明する。
【0091】
溶媒法に従い、活性物質を、初めに、加熱により後に容易に除去することのできる適切な溶媒に溶解する。活性物質に依存して、溶媒は、水性、有機又はその混合物であってもよい。適切な例としては、エタノール、エタノール/水混合物、酢酸エチル、イソプロパノール、トルエンおよびヘプタンが挙げられる。任意に、例えば1種以上の皮膚浸透増強物質を含む、粘着性物質以外の1種以上の医薬品添加物成分を、その結果できた溶液に加え、攪拌および/または必要であれば超音波処理で十分混合してプレミックスを形成する。粘着性物質を、加熱により後に容易に除去することのできる適切な溶媒の溶液で提供する。粘着性物質溶液を、均質な混合物を保障するため十分混合しながらプレミックスに加える。空気のため込みを最小にするやり方でこの混合を行うか又は次の工程に進む前に混合物から空気を除去することが、通常望ましい。混合物を、次いで、適切な剥離ライナー上に所望の厚さで被覆する。その結果できた被覆ライナーを乾燥してプレミックスおよび粘着性物質溶液に導入されたほとんどの、好ましくは実質的に全ての溶媒を除去する。乾燥は、このような乾燥に効果的ないずれの設定条件下でも行うことができるが、代表的には、環境温度(ambient temperature)での短い乾燥期間の後に高温での乾燥期間が続くものである。乾燥温度は、溶媒を追い出すには十分高いが活性物質または他の成分の著しい分解を起こすほどは高くないように選ぶべきである。乾燥後、適切な支持シートを、ライナー上の被覆物質の上に置き、押し付けて被覆物質と支持シートの間の良好な接触を保障する。その結果できた被覆シート組成物を、所望のサイズにも切断し、適切なパッケージにも、例えばポリエチレンまたは金属箔小袋に詰めることができる。
【0092】
溶融法に従い、圧力感受性粘着性物質組成物を、初めに提供する。代表的には、このような組成物は、天然ゴムまたはスチレンブロックコポリマー(例えばSIS)のような熱可塑性ポリマーシステム、粘稠剤樹脂、可塑剤および酸化防止剤を含む。粘着性物質組成物を、粘着性物質を溶融するには十分であるが活性物質の著しい分解を起こすほど高くはない温度で加熱混合する。その結果できた溶融した粘着性物質に活性物質を粉末または溶融形態で十分混合しながら加えて被覆物質組成物を得、それを、次いで、適切な剥離ライナー上に所望の厚さで被覆する。適切な支持シートを、ライナー上の被覆物質の上に置き、押し付けて被覆物質と支持シートの間の良好な接触を保障する。その結果できた被覆シート組成物を、溶媒法と同様に切断しパッケージに詰めることができる。
【0093】
薬物が皮膚に浸透して表皮、皮膚、皮下、筋肉および関節器官および組織のような標的部位へ、最小の治療上効果的な濃度を著しく超えない薬物の全身濃度を維持しながら、治療上効果的な量の薬物を送達するように組成物を設計することができる。従って、本組成物を用いて対象者の疼痛および/または炎症の外的または内的部位への水溶性の選択的COX−2阻害薬またはプロドラッグの狙いを定めた送達を達成することができる。本発明の第一の治療法に従い、本明細書で提供される組成物を、対象者の皮膚表面に、好ましくは疼痛および/または炎症の部位に重なる又は隣接する位置で局所的に投与する。
【0094】
本明細書で提供される組成物を用いて、あるいは、COX−2が仲介する疾患を有する対象者の全身的治療を達成することができる。本発明の第二の治療法に従い、本明細書で提供される組成物を、好ましくは組成物と約400cm以下の面積の対象者の皮膚とを接触することにより、経皮的に投与する。
【0095】
本発明の治療法および組成物は、それらに限定される訳ではないが、炎症、疼痛および/または発熱により特徴付けられる疾患を含む、COX−2により仲介される非常に広い範囲の疾患の治療および予防に有用である。このような組成物は、特に全身的に投与された場合、COX−1に対してよりもCOX−2に対して優位な選択性に欠ける従来のNSAIDsの組成物よりも有害な副作用が著しく少ないという更なる利点を有する、関節炎の治療におけるような抗炎症薬として特に有用である。従って、本発明の組成物は、このようなNSAIDsが、例えば消化性潰瘍、胃炎、限局性回腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎を有する又は胃腸疾患の再発歴、消化管出血、低プロトロンビン血症、血友病もしくは他の出血問題のような貧血を含む凝固障害;腎疾患を有する患者;または手術前の患者もしくは抗凝血物質を服用している患者において禁忌を示す場合、従来のNSAIDsの代替物として特に有用である
【0096】
熟考された組成物は、それらに限定される訳ではないが、慢性関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節炎、全身性エリテマトーデスおよび若年性関節炎を含む種々の関節炎の疾患を治療するのに有用である。
【0097】
このような組成物は、喘息、気管支炎、月経性痙攣、早産、腱炎、滑液包嚢炎、アレルギー性神経炎、サイトメガロウィルス感染能、HIVが誘導するアポトーシスを含むアポトーシス、腰痛症、肝炎を含む肝疾患、乾癬、湿疹、座瘡、熱傷、皮膚炎およびサンバーンを含む紫外線照射障害のような皮膚が関係する症状、ならびに術後炎症の治療に有用である。
【0098】
このような組成物は、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群および潰瘍性大腸炎のような胃腸症状を治療するのに有用である。
【0099】
このような組成物は、片側頭痛、多発性結節性動脈炎、甲状腺炎、形成不全貧血、ホジキン病、強皮症、リウマチ熱、I型糖尿病、重症筋無力症を含む神経筋接合部疾患、多発性硬化症を含む白質疾患、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、腎炎、過敏性、脳浮腫を含む損傷後に起きる腫脹、心筋虚血等のような疾患の炎症を治療するのに有用である。
【0100】
このような組成物は、網膜炎、結膜炎、網膜症、ぶどう膜炎、眼の羞明(ocular photophobia)、および眼組織に対する急性損傷のような眼疾患の治療に有用である。
【0101】
このような組成物は、ウィルス感染と関係したもの及び嚢胞性線維症のような肺の炎症ならびに骨粗鬆症と関係したもののような骨吸収の治療に有用である。
【0102】
このような組成物は、アルツハイマー病を含む皮質性痴呆、神経変性ならびに脳卒中、虚血および損傷に起因する中枢神経系損傷のような特定の中枢神経系疾患の治療に有用である。本文脈の用語“治療”は、アルツハイマー病、血管痴呆、多発梗塞性痴呆、初老期痴呆、アルコール痴呆および老年痴呆を含む痴呆の部分的または全体的阻害を含む。
【0103】
このような組成物は、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、エンドトキシンショック症候群および肝疾患の治療に有用である。
【0104】
このような組成物は、それらに限定される訳ではないが、術後疼痛、歯痛、筋肉痛、および癌に起因する疼痛を含む疼痛の治療に有用である。例えば、このような組成物は、リウマチ熱、インフルエンザおよび感冒を含む他のウィルス感染症、腰痛および頸痛、月経困難、頭痛、歯痛、捻挫および筋違え、筋炎、神経痛、滑膜炎、慢性関節リウマチ、退行性関節疾患(変形性関節炎)、痛風および強直性脊椎関節炎を含む関節炎、滑液包嚢炎、熱傷、ならびに手術および歯の処置後の損傷を含む種々の症状における疼痛、発熱および炎症の軽減に有用である。
【0105】
このような組成物は、血管疾患、冠状動脈疾患、動脈瘤、血管拒絶、動脈硬化症、心臓移植アテローム動脈硬化症を含むアテローム動脈硬化症、心筋梗塞、塞栓症、脳卒中、静脈血栓症を含む血栓症、不安定狭心症を含む狭心症、冠状動脈プラーク炎症を含む炎症が関係する心血管疾患、クラミジアが誘導する炎症を含む細菌が誘導する炎症、ウィルスが誘導する炎症、ならびに冠状動脈バイパス手術を含む血管移植、血管形成術を含む血行再建術、ステント配置、動脈内膜切除術、またはその他の動脈、静脈および毛細管に対して切開して器具を挿入する処置のような手術的処置と関係した炎症の治療および予防に有用である。
【0106】
このような組成物は、対象者における脈血管形成が関係する疾患の治療、例えば腫瘍脈血管形成の阻害、に有用である。このような組成物は、転移を含む新形成;角膜移植後拒絶、眼の血管新生、損傷または感染後の血管新生を含む網膜の血管新生、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、水晶体後部線維増殖症および血管新生緑内障のような眼科学的症状;胃潰瘍のような潰瘍性疾患;乳児血管腫を含む血管腫、鼻上咽頭の線維血管腫および無血管性骨壊死のような病的ではあるが悪性ではない症状;ならびに子宮内膜症のような女性の生殖器系の疾患の治療に有用である。
【0107】
このような組成物は、光線角化症(actinic keratosis)のような前癌疾患の治療に有用である。
【0108】
このような組成物は、良性および悪性腫瘍ならびに癌の転移における新形成(neoplasia)を含む新形成の予防、治療および阻害に有用である。癌の転移の例としては、例えば大腸癌、脳癌、骨癌、基底細胞癌のような上皮細胞が誘導する新形成(上皮癌)、腺癌、口唇癌、口腔癌、食道癌、小腸癌、胃癌、結腸癌のような消化管癌、肝癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、乳癌、扁平上皮細胞および基底細胞癌のような皮膚癌、前立腺癌、腎細胞癌、ならびにその他の既知の体中の上皮細胞に発生する癌である。。本発明の組成物が特に有用であると考えられる新形成は、消化管癌、バレット食道、肝癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、肺癌、乳癌および皮膚癌である。このような組成物は、照射療法で起きる線維症を治療するのにもやはり用いることができる。このような組成物は、家族性腺腫性ポリープ症(FAP)を有するものを含む、腺腫性ポリープを有する対象者を治療するのに用いることができる。更に、このような組成物は、FAPの危険のある患者におけるポリープ形成を予防するのに用いることができる。
【0109】
更に詳しくは、本組成物は、先端黒子型黒色腫、紫外線角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星上細胞腫、大前庭腺癌、基底細胞癌、乳癌、気管支腺癌、毛細管性血管腫、カルチノイド、癌肉腫、海綿状血管腫、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫または癌、明細胞癌、皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉症)、嚢腺腫、形成異常母斑、エンドダーマルサイナス腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質性肉腫、子宮内膜線癌、上衣細胞腫、類上皮血管腫症、ユーイング肉腫、線維層板肉腫(fibrolamellar sarcoma)、限局性結節性過形成、ガストリン再生腫瘍、胚細胞腫瘍、膠芽細胞腫、グルカゴン産生腫瘍、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝細胞癌、インスリノーマ、上皮内新形成、上皮間の扁平細胞新形成、侵食性扁平細胞癌、カポジ肉腫、大細胞癌、平滑筋肉腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫瘍、髄芽細胞腫、髄様上皮腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、粘液類表皮腫、神経芽細胞腫、神経上皮腺癌、結節型黒色腫、燕麦細胞癌、乏突起細胞腫、骨肉腫、乳頭漿液性腺癌、松果体部腫瘍、下垂体腫瘍、プラスモサイトーマ、偽性肉腫、胚芽細胞腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、小細胞癌、軟部組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平癌、扁平上皮癌、中皮下癌(submesothelial
carcinoma)、表在拡大型黒色腫、未分化癌、ぶどう膜黒色腫、疣状癌、ビポーマ、十分分化した癌およびウィルムス腫瘍の治療、予防および阻害に用いることができる。
【0110】
このような組成物は、収縮性プロスタグランジン類の合成を阻害することにより、プロスタグランジン類が誘導する平滑筋収縮を阻害し、従って、月経困難、早産、喘息および好酸球関連疾患の治療に役立つことができる。それらは、また、特に閉経後の女性における骨損失の減少(即ち、骨粗鬆症の治療)および緑内障の治療に役立つことができる。
【0111】
本発明の組成物にとって好ましい用途は、慢性関節リウマチおよび変形性関節症の治療、一般に疼痛管理(特に口腔手術後疼痛、一般的手術後疼痛、顎矯正手術後疼痛、および変形性関節症の急性発赤)、頭痛および片頭痛の予防および治療、アルツハイマー病の治療、結腸癌化学的予防である。
【0112】
本発明の組成物の局所的適用は、悪性、非悪性又は前悪性を問わず、瘢痕形成およびケトーシスを含み、そして熱傷および日光性損傷、例えばサンバーン、皺等をも含む炎症性要素を有するいかなる種類の皮膚疾患の治療にも特に有用であってもよい。このような組成物は、限定される訳ではないが、ヘルペス感染症(例えば、単純ヘルペス、陰部ヘルペス)、帯状ヘルペスおよび水疱瘡を含むウィルス疾患により引き起こされるものを含む種々の皮膚損傷に起因する炎症を治療するのに用いることができる。このような組成物で治療することのできる皮膚の他の疾患または損傷としては、とこずれ(褥瘡性潰瘍)、表皮における高増殖活性、汗疹、乾癬、湿疹、座瘡、皮膚炎、掻痒、いぼ及び酒さが挙げられる。このような組成物は、また、美容処置、例えば化学的除去術、レーザー治療、削皮術、フェイスリフト、瞼の手術等を含む外科手術的処置後の治癒過程を容易にすることができる。
【0113】
ヒトの治療に有用である点に加え、本発明の組成物は、コンパニオンアニマル(companion animals)、外来動物、農場の動物等、特に齧歯類動物を含む哺乳類の獣医学的治療にも有用である。更に詳しくは、本発明の組成物は、ウマ、イヌおよびネコにおけるCOX−2が仲介する疾患の獣医学的治療に有用である。
【0114】
本組成物は、とりわけ、オピオイド類および麻薬性鎮痛薬を含む他の鎮痛薬、Mu受容体アンタゴニスト、カッパ受容体アンタゴニスト、非麻薬性(即ち、非嗜癖性)鎮痛薬、モノアミン取り込み阻害剤、アデノシン調節物質、カンナビノイド誘導体、サブスタンスPアンタゴニスト、ニューロキニン−1受容体アンタゴニストおよびナトリウムチャンネル遮断薬との多剤併用療法に用いることができる。好ましい多剤併用療法は、本発明の組成物とアセクロフェナク、アセメタシン、ε−アセトアミドカプロン酸、アセトアミノフェン、アセトアミノザロール、アセトアニリド、アセチルサリチルサルチル酸、S−アデノシルメチオニン、アルクロフェナク、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルミノプロフェン、アロキシプリン、アルファプロジン、ビス(アセチルサリチル酸)アルミニウム、アムフェナク、アミノクロルテノキサジン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、2−アミノ−4−ピコリン、アミノプロピロン、アミノピリン、アミキセトリン、サリチル酸アンモニウム、アンピロキシカム、アムトルメチングアシル(amtolmetin guacil)、アニレリジン、アンチピリン、サリチル酸アンチピリン、アントラフェニン、アパゾン、アスピリン、バルサラジド、ベンダザック、ベノリラート、ベノキサプロフェン、ベンズピペリロン、ベンジダミン、ベンジルモルヒネ、ベルベリン、ベルモプロフェン、ベジトラミド、α−ビサボロール(bisabolol)、ブロムフェナク、p−ブロモアセトアニリド、5−ブロモサリチル酸アセタート、ブロモサリゲニン(bromosaligenin)、ブセチン、ブクロクス酸、ブコローム、ブフェキサマック、ブマジゾン、ブプレノルフィン、ブタセチン、ブチブフェン、ブトルファノール、アセチルサリチル酸カルシウム、カルバマゼピン、カルビフェン、カルプロフェン、カルサラム、クロロブタノール、クロルテノキサジン、サリチル酸コリン、キノフェン、シンメタシン、シラマドール、クリダナク、クロメタシン、クロニタゼン、クロニキシン、クロピラク、チョウジ、コデイン、メチル臭化コデイン、リン酸コデイン、硫酸コデイン、クロプロパミド、クロテタミド、デソモルヒネ、デキスオキサドロール、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジクロフェナク、ジフェナミゾール、ジフェンピラミド、ジフルニサル、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセタート、ジヒドロモルヒネ、ジヒドロキシアセチルサリチル酸アルミニウム、ジメノキサドール、ジメプタノール、ジメチルチアムブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、ジピロセチル、ジピロン、ジタゾール、ドロキシカム、エモルファゾン、エンフェナム酸、エピリゾール、エプタゾシン、エタネルセプト(etanercept)、エテルサラート、エテンザミド、エトヘプタジン、エトキサゼン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトドラク、エトフェナマート、エトニタゼン、オイゲノール、フェルビナク、フェンブフェン、フェンクロジン酸、フェンドサール、フェノプロフェン、フェンタニール、フェンチアザク、フェプラジノール、フェプラゾン、フロクタフェニン、フルフェナム酸、フルノキサプロフェン、フルオレソン、フルピルチン、フルプロカゾン、フルルビプロフェン、フォスフォサル、ゲンチジン酸、グラフェニン、グルカメタシン、サリチル酸グリコール、グアイアズレン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロキシサム、サリチル酸イミダゾール、インドメタシン、インドプロフェン、インフリキシマブ(infliximab)、インターロイキン−10、イソフェゾラク、イソラドール、イソメタドン、イソニキシン、イソキセパック、イソキシカム、ケトベミドン、ケトプロフェン、ケトロラク、p−ラクトフェネチド(lactophenetide)、レフェタミン、レボルファノール、レキシパファント(lexipafant)、ロフェンタニル、ロナゾラク、ロルノキシカム、ロキソプロフェン(loxoprofen)、アセチルサリチル酸リジン、アセチルサリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メペリジン、メプタジノール、メサラミン、メタゾシン、メタドン、メトトリメプラジン、メチアジン酸、メトホリン、メトポン、モフェブタゾン、モフェゾラク(mofezolac)、モラゾン(morazone)、モルヒネ、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、サリチル酸モルホリン、ミロフィン、ナブメトン、ナルブフィン、サリチル酸1−ナフチル、ナプロキセン、ナルセイン、ネホパム、ニコモルフィン、ニフェナゾン、ニフルム酸、ニメスリド、5´−ニトロ−2´−プロポキシアセトアニリド、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルフィン、ノルピパノン、オルサラジン、アヘン、オキサセプロール、オキサメタシン、オキサプロジン、オキシコドン、オキシモルフォン、オキシフェンブタゾン、パパベレタム、パラニリン、パルサルミド、ペンタゾシン、ペリソキサール、フェナセチン、フェナドキソン、フェナゾシン、塩酸フェナゾピリジン、フェノコール(phenocoll)、フェノペリジン、フェノピラゾン、アセチルサリチル酸フェニル、フェニルブタゾン、サリチル酸フェニル、フェニラミドール、ピケトプロフェン、ピミノジン、ピペブゾン、ピペリロン、ピラゾラク、ピリトラミド、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プログルメタシン、プロヘプタジン、プロメドール(promedol)、プロパセタモール(propacetamol)、プロピラム、プロポキシフェン、プロピルフェナゾン、プロカゾン、プロチジン酸、ラミフェナゾン、レミフェンタニル(remifentanil)、メチル硫酸リマゾリウム、サラセタミド、サリシン、サリチルアミド、サリチルアミドo−酢酸、サリチル硫酸、サルサラート、サルベリン、シメトリド、サリチル酸ナトリウム、スフェンタニル(sufentanil)、スルファサラジン、スリンダク、スーパーオキシドジスムターゼ、スプロフェン、スキシブゾン、タルニフルマート、テニダプ、テノキシカム、テロフェナマート、テトランドリン、チアゾリノブタゾン、チアプロフェン酸、チアラミド、チリジン、チノリジン、トルフェナム酸、トルメチン、トラマドール、トロペシン、ビミノール、キセンブシン、キシモプロフェン、ザルトプロフェン、ジコノチドおよびゾメピラク(ザ メルク インデックス(The
Merck Index)、13版(2001)、セラピューティック カテゴリー アンド バイオロジカル アクティビティ インデックス(Therapeutic
Category and Biological Activity Index)、その中の“鎮痛薬”、“抗炎症薬”および“解熱薬”と見出しが付いたリスト参照)から選ばれる1種以上の化合物の使用を含む。
【0115】
特に好ましい多剤併用療法は、本発明の組成物とオピオイド化合物の使用を含み、更に詳しくはオピオイド化合物が、コデイン、メペリジン、モルヒネ又はその誘導体である。
【0116】
本発明の組成物と組み合わせて投与される化合物は、それと別々に処方し、経口、経直腸、非経口または皮膚もしくは他のどこかへの局所的を含むいずれの適切な経路によっても投与することができる。あるいは、本組成物と組み合わせて投与される化合物は、それと共に被覆シート組成物として共処方することができる。
【0117】
本発明の一態様において、特にCOX−2が仲介する症状が頭痛または片頭痛である場合、本組成物は、血管調節物質、好ましくは血管調節作用を有するキサンチン誘導体、更に好ましくはアルキルキサンチン化合物との多剤併用療法で投与される。
【0118】
アルキルキサンチン化合物が本明細書で提供される組成物と共投与される多剤併用療法は、アルキルキサンチンが血管調節物質であろうとなかろうと、そして多剤併用の治療効果が血管調節作用にどの程度帰せられようと帰せられまいと、本発明の本態様により包含される。ここで、用語“アルキルキサンチン”は、一つ以上のC1−4アルキル好ましくはメチル置換基を有するキサンチン誘導体およびこのようなキサンチン誘導体の薬学的に許容することのできる塩を包含する。カフェイン、テオブロミンおよびテオフィリンを含むジメチルキサンチンおよびトリメチルキサンチンが、特に好ましい。最も好ましくは、アルキルキサンチン化合物は、カフェインである。
【0119】
多剤併用療法の血管調節物質またはアルキルキサンチン成分は、任意の適切な剤形により、経口、経直腸、非経口または皮膚もしくは他のどこかへの局所的を含むいずれの適切な経路によって投与することができる。血管調節物質またはアルキルキサンチンは、任意に、単一の経皮剤形に本組成物と共処方することができる。従って、本発明の経皮組成物は、任意に、水溶性の選択的COX−2阻害薬またはプロドラッグおよび血管調節物質またはアルキルキサンチン例えばカフェインの両方を、治療上効果的である全体的および相対的量で含む。
【実施例】
【0120】
本発明は、以下の実施例により更に完全に説明されるが、本発明は、これらの実施例に制限される訳ではない。用語“パレコキシブ”は、特にことわる場合を除いてはパレコキシブ酸の厳密な意味でこれらの実施例で用いており;“パレコキシブNa”は、パレコキシブナトリウムを意味する。
【0121】
試験パッチ剤中に処方された選択的COX−2阻害薬またはプロドラッグの皮膚浸透特性を測定する方法として、ヒトの死体の皮膚膜および1%ポリソルベート80(TweenTM80)溶液または6%oleth−20(BrijTM98)溶液のような受容液を用いるフランツ拡散セルが提供される。フランツ拡散セルの受容コンパートメントは、受容液で満たされ、拡散セルは32℃で維持される。冷凍された皮膚を室温で解凍し、2x2cm平方を切り出して膜を得る。膜の表面を綿棒で乾かす。10mmのディスク(面積0.636cm)を試験パッチからパンチで切り出し、このディスクを、その粘着性物質側が膜と接触するように当てる。試験パッチと膜間の良好な接触を保障するために、2kgの重しをパッチ上で3回転がし、一片の堅い透明なプラスチックを、膜上のパッチの上に置く。試験パッチをその上に載せた膜を、次いで、受容コンパートメント上に置き、覆いをし、締め具で締める。空気の泡を受容液から取り除き、30分間平衡にする。24から48時間の種々の時間に膜を通じて浸透した薬物の量を、受容液のHPLC分析により測定する。各々の試験を、数回繰り返して行う。
【0122】
実施例1
パレコキシブナトリウムのパッチ処方物を、次の通りに調製した。パレコキシブナトリウムおよび、Duro−Tak(登録商標)粘着性物質を除く表1に示す他の成分を計量し、エタノールに溶解してエタノール溶液を得た。溶液中の既知の固形物含量で提供された粘着性物質を計量し、エタノール溶液と混合した。この結果できた混合物から空気を除去し、次いで、ドローダウン装置を用いて剥離ライナー(メジリリーズ(Medirelease)(登録商標)2228)上に積層して厚さ1−2mmの被覆物を形成した。積層した溶液を室温で5−10分間乾燥し、次いで、40−80℃のオーブン内で20−40分間乾燥して実質的に全ての溶媒を除去した。支持シート(メジフレックス(登録商標)1200)をライナーの被覆した側の上に置き、それをローラーで加圧した。その結果できた10cmx30cmのパッチを、ビニール袋内で貯蔵した。
【表1】

【0123】
実施例2
実施例1のパッチ剤を、低い浸透性の皮膚を用い皮膚の浸透特性を試験した。皮膚の流量データを、表2に示す。皮膚浸透の時間的経過を、図3にグラフ的に示す。PIB粘着性物質を含有する組成物1−3は、アクリル酸エステル粘着性物質を含有する組成物1−1および1−2よりも幾分低い皮膚浸透を示した。組成物1−3は、この実施例の他の2つの組成物よりもパレコキシブナトリウムの濃度が低かった点は注目されるであろう。
【表2】

【0124】
パッチ組成物1−1から1−3のデータを、この研究で用いた皮膚源の浸透性について標準化した場合、これらのパッチ剤は、100cmのパッチサイズではパレコキシブ5−10mg/日の治療上有用な速度の経皮送達に等しい50−100μg/cm.日の皮膚流量のパレコキシブを送達することができることが分かる。
【0125】
図3に示すように、継続的且つ安定した送達プロフィールが4日間にわたり観察され、血漿中の持続した治療上効果的な薬物濃度が、組成物1−1から1−3のそれらと類似した経皮パッチの適用後数日間達成可能であることを示した。
【0126】
実施例3
パレコキシブナトリウムのパッチ処方物(組成物3−1)を、次の通りに調製した。パレコキシブナトリウム(0.99g)および、Duro−Tak(登録商標)粘着性物質を除く表3に示す他の成分(チモール0.99g、オレイルアルコール1.00g、乳酸ラウリル1.01g、PVP1.07g)を計量し、7.57gのエタノールおよび1.12gの水の混合物に溶解して全重量13.74gの第一混合物を得た。溶液中の36.5%の固形物含量で提供された粘着性物質を計量し、それに4.5gの第一混合物を加えて第二混合物を得た。空気のため込みを避けるためにゆっくり循環する混合を2時間継続した。この結果できた混合物を、次いで、ドローダウン装置を用いて剥離ライナー(メジリリーズ(登録商標)2228)上に積層して被覆物を形成した。積層した溶液を室温で15分間乾燥し、次いで、45℃のオーブン内で30分間乾燥して実質的に全ての溶媒を除去した。支持シート(メジフレックス(登録商標)1200)をライナーの被覆した側の上に置き、それをローラーで加圧した。その結果できた10cmx30cmのパッチを、ビニール袋内で貯蔵した。
【0127】
パレコキシブ酸のパッチ処方物(組成物3−2および3−3)を、次の通りに調製した。パレコキシブならびに、PVPおよびDuro−Tak(登録商標)粘着性物質を除く表3に示す他の成分を、8.5gのエタノールおよび0.5gの水と共に計量して全重量14.7gの第一混合物を得た。第一混合物を攪拌し、2時間音波処理した。パレコキシブは、完全には溶解しなかったことが認められた。溶液中の既知の固形物含量で提供された粘着性物質を計量し、それに計量した量の第一混合物(組成物3−2中に1.5g;組成物3−3中に2.0g)を加えて第二混合物を得た。組成物3−2のみに、1.1gのPVPを、やはり加えた。空気のため込みを避けるためにゆっくり循環する混合を1時間継続した。この混合は、パレコキシブの完全な溶解に帰したように見えた。この結果できた混合物を、次いで、ドローダウン装置を用いて剥離ライナー(メジリリーズ(登録商標)2228)上に積層して被覆物を形成した。積層した溶液を、45℃のオーブン内で2時間乾燥して実質的に全ての溶媒を除去した。支持シート(メジフレックス(登録商標)1200)をライナーの被覆した側の上に置き、それをローラーで加圧した。その結果できた10cmx30cmのパッチを、ビニール袋内で貯蔵した。
【表3】

【0128】
実施例4
実施例3のパッチ剤を、低い浸透性の皮膚を用い皮膚の浸透特性を試験した。皮膚流量データを、表4に示す。PIB粘着性物質を含有する組成物1−3は、アクリル酸エステル粘着性物質を含有する組成物1−1および1−2よりも幾分低い皮膚浸透を示した。組成物1−3は、この実施例の他の2つの組成物よりもパレコキシブナトリウムの濃度が低かった点は注目されるであろう。
【表4】

【0129】
実施例5
活性物質としてセレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブまたはパレコキシブナトリウムを有するパッチ処方物組成物5−1から5−24を調製した。概ね、手法は、次の通りであった。溶液中の既知の固形物含量で提供された粘着性物質、活性物質および必要であれば他の成分を計量し、共に混合した。その結果できた混合物から空気を除去し、次いで、研究室規模のナイフ被覆器を用いて剥離ライナー上に0.45mmの厚さで積層した。組成物を、室温で5分間、次いで、60℃のオーブン内で20分間乾燥した。PET支持シート(バーテク(Bertek)(登録商標)92GA2600)をライナーの被覆した側の上に置き、それをローラーで加圧した。その結果できたパッチを、ビニール袋内で貯蔵した。
【0130】
剥離ライナーは、シリコーンを主成分とする粘着性物質を用いる場合にスコッチパク(Scotchpak)(登録商標)1022が剥離ライナーとして選ばれたのを除いては、メジリリーズ(登録商標)2226であった。
【0131】
この実施例のいくつかの組成物中に、増強物質混合物が含有された。増強物質混合物は、以下の組成を有する、酢酸エチル溶液中の5種の皮膚浸透増強物質から成った:
チモール 5.9%
オレイルアルコール 11.8%
乳酸ラウリル 11.8%
乳酸ミリスチル 11.8%
グリセリルジラウラート 29.4%
酢酸エチル 29.4%
【0132】
他の組成物中に、単一の皮膚浸透増強物質(グリセリルモノラウラート、本明細書では“GML”)を加えた。
【0133】
3種の異なる粘着性物質を用いた:(1)ポリイソブチレン(PIB)を主成分とする粘着性物質、ナショナルスターチのDuro−Tak(登録商標)87−6173、(2)アクリル酸エステルを主成分とする粘着性物質、ナショナルスターチのDuro−Tak(登録商標)387−2516、および(3)シリコーンを主成分とする粘着性物質、ダウコーニングのBio−PSA(登録商標)7−4201。
【0134】
組成物5−1から5−24に用いた被覆物質の組成を、表5に示す。
【表5】

【表6】

【0135】
実施例6
組成物5−7から5−24を、皮膚浸透について試験した。異なる皮膚源の浸透性の相違を補正するために標準化した皮膚流量データを、表6に示す。
【表7】

【0136】
表6のデータは、
(a)最善の皮膚浸透のための粘着性物質の選択は、用いた活性物質(バルデコキシブ対パレコキシブナトリウム)次第であると考えられること;そして
(b)パッチ中の増強物質(増強物質の混合物またはグリセリルモノラウラート単独のいずれか)の含有は、活性物質または粘着性物質に関わらず、概ね皮膚流量を増加させたことを示している。
【0137】
実施例7
パレコキシブナトリウムパッチ組成物7−1および7−2を、実施例5で説明したものと同様の手法により調製した。各組成物は、乾燥重量を基準として5%パレコキシブナトリウム、5%増強物質および90%アクリル酸エステル粘着性物質(Duro−Tak(登録商標)385−2353)を含有した。増強物質は、組成物7−1ではグリセリルモノラウラート(GML)および組成物7−2ではグリセリルモノステアラート(GMS)であった。
【0138】
組成物7−1および7−2を、皮膚浸透性について試験した。皮膚流量データを、表7に示す。
【表8】

【0139】
実施例8
活性物質としてバルデコキシブ、パレコキシブまたはパレコキシブナトリウムを有するパッチ処方物組成物8−1から8−26を調製した。概ね、手法は、次の通りであった。6.6から8.1gの量の酢酸エチルを、ジャーの中に計りいれた。計量した量の活性物質および必要であれば1種以上の増強物質をジャーに加え、均質な混合物が得られるまで超音波処理をしながら混合した。溶液中の既知の固形物含量で提供された粘着性物質を加え、プロペラーミキサーを用い5にセットした速度で2分間混合した。その結果できた混合物から空気を除去し、次いで、研究室規模のドローダウン装置を用いて剥離ライナー(下記で特にことわる場合を除いてはスコッチパク(登録商標)1022の3M)上に0.45mmの厚さで積層した。組成物を、室温で5分間、次いで、60℃のオーブン内で20分間乾燥した。支持シート(コトラン(CoTran)(登録商標)9722の3M)をライナーの被覆した側の上に置き、それをローラーで加圧した。その結果できたパッチを、ビニール袋内で貯蔵した。
【0140】
用いた増強物質は、グリセリルモノラウラート(GML)、グリセリルモノステアラート(GMS)および乳酸ラウリル(LL)であった。
【0141】
3種の異なる型の粘着性物質を用いた:(1)ポリイソブチレン(PIB)を主成分とする粘着性物質、ナショナルスターチのDuro−Tak(登録商標)87−6173、(2)アクリル酸エステルを主成分とする粘着性物質、ナショナルスターチのDuro−Tak(登録商標)387−2052、および(3)シリコーンを主成分とする粘着性物質、ダウコーニングのBio−PSA(登録商標)7−4302。
【0142】
組成物8−1から8−26に用いた被覆物質の組成を、表8に示す。
【表9】

【0143】
HPLCによる分析は、実施例8のパッチに存在する活性物質の量が、149から799μg/cmにわたり、平均433μg/cmであることを示した。
【0144】
実施例9
組成物8−3から8−26を、皮膚浸透性について試験した。異なる皮膚源の浸透性の相違を補正するために標準化した皮膚流量データを、表9に示す。
【表10】

【0145】
表9の皮膚束密度データは、皮膚束密度の絶対水準が表6よりも低い傾向があるが、上記表6で報告された知見と概ね一致する。
【0146】
実施例10
実施例9において、特定のパッチが、浸透研究に用いた皮膚膜に十分粘着しなかったことが認められた。従って、組成物8−3から8−6および8−13から8−20を、皮膚浸透について再試験した。各パッチを、良好な粘着を保障するために前回の試験よりも更にしっかり皮膚膜に押し付けた。この研究に用いた皮膚膜は、実施例9の同じ組成物の為に用いたものより高い浸透性を有した。皮膚束密度データを、表10に示す。
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1は、本発明の第一の態様の組成物の縮尺図ではない模式的断面図である。
【0148】
【図2】図2は、本発明の第二の態様の組成物の縮尺図ではない模式的断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COX−2が仲介する疾患の局所的および/または全身的治療用の対象者の皮膚の部分への適用のための医薬組成物であって、皮膚の部分に柔軟に適合する支持シート{当該支持シートは、適用した場合それぞれ皮膚に対し遠位および近位である向かい合う表面を有する}および支持シートの近位表面上の被覆物質{当該被覆物質は、(a)粘着性物質ならびに(b)選択的COX−2阻害薬、そのプロドラッグおよび塩から成る群から選ばれる水溶性活性物質を含み、活性物質は、治療上効果的な総量であり、粘着性物質を除き合計がゼロから活性物質可溶化に効果的な量未満である1種以上の溶媒を含むマトリックス(matrix)に分散している}を含む組成物。
【請求項2】
活性物質として、式
【化1】

[ここで、Rは、水素または低級アルキル、ヒドロキシアルキルもしくはアシル基であり、そしてRは、水素または低級アルキル、ヒドロキシアルキルもしくはアシル基またはR−CO−基(Rは、水素または低級アルキル、低級アルコキシ、低級カルボキシアルキル、低級アルコキシアルキル、低級アルコキシカルボニルアルキル、低級アミノアルキル、低級アルキルカルボニルアミノアルキル、低級アルコキシカルボニルアミノアルキル、フェニルもしくは低級アルコキシカルボニル基である)である]を有する化合物;またはこのような化合物の薬学的に許容することのできる塩を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
活性物質として、式
【化2】

[ここで、Rは、水素、ハロゲン、または低級アルキル、低級ヒドロキシアルキルもしくはアルコキシ基であり;Rは、水素、ハロゲンまたは低級アルキル、低級アルキルチオ、低級ハロアルキル、アミノ、アミノスルホニル、低級アルキルスルホニル、低級アルキルスルフィニル、低級アルコキシアルキル、低級アルキルカルボニル、ホルミル、シアノ、低級ハロアルキルチオ、置換又は無置換フェニルカルボニル、低級ハロアルコキシ、低級アルコキシ、低級アラルキルカルボニル、低級ジアルキルアミノスルホニル、低級アルキルアミノスルホニル、低級アラルキルアミノスルホニル、低級ヘテロアラルキルアミノスルホニル、5−もしくは6−員のヘテロアリール、低級ヒドロキシアルキル、置換又は無置換フェニルまたは5−もしくは6−員の窒素含有ヘテロシクロスルホニル基であり;Rは、水素またはハロゲンまたは低級アルキル、低級ハロアルキル、低級アルコキシもしくはフェニル基であり;そしてRは、水素、ハロゲンまたはシアノ、ヒドロキシイミノメチル、低級ヒドロキシアルキル、低級アルキニル、フェニルアルキニル、低級アルキル、低級アルコキシ、ホルミルもしくはフェニル基である]を有する化合物;またはその塩を含む、請求項1の組成物。
【請求項4】
被覆物質が、粘着性物質を含むマトリックスに分散した活性物質を有する層を含む、請求項1乃至3項のいずれか1項の組成物。
【請求項5】
活性物質が、マトリックスに少なくとも部分的に固形微粒子形態で分散している、請求項4の組成物。
【請求項6】
活性物質が、マトリックスに少なくとも部分的に分子として分散している、請求項4の組成物。
【請求項7】
被覆物質が、支持シートに隣り合う活性物質を含むレザバー(reservoir)層、使用した場合皮膚に近位である粘着性物質層、および任意選択のレザバー層と粘着性物質層の間の膜{当該膜は、活性物質の通過を可能にする}を含む、請求項1から3のいずれかの組成物。
【請求項8】
被覆物質が、少なくとも1種の皮膚浸透増強物質を更に含む、前述の請求項のいずれかの組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の皮膚浸透増強物質が、テルペン類、テルペノイド類、脂肪アルコール及びその誘導体、脂肪酸並びにそのアルキルおよびグリセリルエステル類、グリコール酸及びその塩の脂肪酸エステル類、脂肪アルコール類の乳酸エステル類、ラウロカプラム(laurocapram)及びその誘導体、ジメチルスルホキシド、n−デシルメチルスルホキシド、サリチル酸及びそのアルキルエステル類、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルトルアミド、2−ピロリジノン及びそのN−アルキル誘導体、2−ノニル−1,3−ジオキソラン、ユーカリプトールならびにソルビタンエステル類から成る群から選ばれる、請求項8の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の皮膚浸透増強物質が、グリセリルモノラウラートである、請求項8の組成物。
【請求項11】
被覆物質が、約1重量%から約10重量%の活性物質、合計約2重量%から約20重量%の1種以上の皮膚浸透増強物質、および約70重量%から約97重量%の粘着性物質組成物を含む、前述の請求項のいずれかの組成物。
【請求項12】
使用前に粘着性物質を含有する層に隣り合っていてはがせる剥離ライナーを更に含む、前述の請求項のいずれかの組成物。
【請求項13】
対象者のその部位における疼痛および/または炎症の局所的治療法であって、対象者の皮膚表面に請求項1から12のいずれかの組成物を適用する段階;および局所的治療量の活性物質の送達を可能にするのに効果的な期間、適所に組成物を置いておく段階を含む前記方法。
【請求項14】
組成物を適用する皮膚表面が、疼痛および/または炎症の部位の上に重なる又は隣接する位置にある、請求項13の方法。
【請求項15】
COX−2が仲介する疾患を有する対象者の全身的治療法であって、対象者の皮膚表面に請求項1から12のいずれかの組成物を適用する段階;および治療量の活性物質の経皮送達を可能にするのに効果的な期間、適所に組成物を置いておく段階を含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−509759(P2006−509759A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555394(P2004−555394)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/035638
【国際公開番号】WO2004/047814
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(304048436)ファルマシア コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】