説明

パワーアンプモジュール

【課題】複数の入力整合回路及び複数の出力整合回路をコンパクトに実装できるパワーアンプモジュールを提案する。
【解決手段】パワーアンプモジュール11は、それぞれが異なる周波数帯域を有する複数の無線信号を選択的に電力増幅するパワーアンプ20と、複数の無線信号のそれぞれについてパワーアンプ20の入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された複数の入力整合回路31,32と、複数の無線信号のそれぞれについてパワーアンプ20の出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された複数の出力整合回路41,42と、パワーアンプ20を搭載するとともに複数の入力整合回路31,32及び複数の出力整合回路41,42を内蔵する多層基板50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はそれぞれが異なる周波数帯域を有する複数の無線信号を選択的に電力増幅するパワーアンプモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信端末には、通信容量拡大の中でより安定した高品質な通信を確保するために複数の周波数帯域に対応可能なマルチバンド化や、海外での使用を可能とする国際ローミング等に対応するために複数の通信方式に対応可能なマルチモード化の要求が高まっている。例えば、国内では、CDMA方式やUMTS方式といった第3世代方式が800MHz帯、1.7GHz帯、及び2GHz帯を使用しており、海外では、GSM方式が850MHz帯、900MHz、1.8GHz帯、及び1.9GHz帯を使用している。このようなマルチバンド・マルチモード化に対応するために、複数の入力整合回路及び複数の出力整合回路を一つのパワーアンプモジュールに実装する例が報告されている。パワーアンプモジュールのデバイス構造として、例えば、特開2006−261170号公報に開示されているように、LTCC基板やHTCC基板を積層する実装構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−261170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の入力整合回路及び複数の出力整合回路をパワーアンプモジュールの基板に表面実装する方式では、実装面積が大きくなるので、パワーアンプモジュールのサイズを小型化する上で技術的な制約が伴う。
【0005】
そこで、本発明は複数の入力整合回路及び複数の出力整合回路をコンパクトに実装できるパワーアンプモジュールを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係わるパワーアンプモジュールは、それぞれが異なる周波数帯域を有する複数の無線信号を選択的に電力増幅するパワーアンプと、複数の無線信号のそれぞれについてパワーアンプの入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された複数の入力整合回路と、複数の無線信号のそれぞれについてパワーアンプの出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された複数の出力整合回路と、パワーアンプを搭載するとともに複数の入力整合回路及び複数の出力整合回路を内蔵する多層基板と、を備える。
【0007】
複数の入力整合回路及び複数の出力整合回路を多層基板に内蔵することにより、コンパクトな実装を可能にし、モジュールサイズを小型化できる。
【0008】
多層基板は、複数の内層基板がグランド層を介して積層された積層構造を有してもよい。複数の無線信号は、それぞれ異なる周波数帯域を有する第1及び第2の無線信号を含む。複数の入力整合回路は、第1及び第2の無線信号についてパワーアンプの入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の入力整合回路を含む。複数の出力整合回路は、第1及び第2の無線信号についてパワーアンプの出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の出力整合回路を含む。第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路は、第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路をそれぞれ複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面の一部が重なるようにグランド層を介して異なる内層基板に実装されてもよい。第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路は、第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路をそれぞれ複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面の一部が重なるようにグランド層を介して異なる内層基板に実装されてもよい。
【0009】
第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路の間にグランド層を介在させることにより、第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。また、第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路をそれぞれ異なる内層基板に実装することにより、コンパクトかつ高密度な実装を可能にできる。第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路の間にグランド層を介在させることにより、第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。また、第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路をそれぞれ異なる内層基板に実装することにより、コンパクトかつ高密度な実装を可能にできる。
【0010】
第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路は、第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路をそれぞれ複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないようにグランド層を介して異なる内層基板に実装されてもよい。第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路は、第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路をそれぞれ複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないようにグランド層を介して異なる内層基板に実装されてもよい。第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路の間にグランド層を介在させることにより、第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路の間にグランド層を介在させることにより、第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。
【0011】
多層基板は、複数の内層基板が積層された積層構造を有してもよい。複数の無線信号は、それぞれ異なる周波数帯域を有する第1及び第2の無線信号を含む。複数の入力整合回路は、第1及び第2の無線信号についてパワーアンプの入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の入力整合回路を含む。複数の出力整合回路は、第1及び第2の無線信号についてパワーアンプの出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の出力整合回路を含む。第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路は、第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路をそれぞれ複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないように異なる内層基板に実装されてもよい。第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路は、第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路をそれぞれ複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないように異なる内層基板に実装されてもよい。
【0012】
第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路の間にグランド層を介さなくても、これらの二つの投影面が重ならないように第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路を異なる内層基板に実装することで、第1の入力整合回路及び第2の入力整合回路の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路の間にグランド層を介さなくても、これらの二つの投影面が重ならないように第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路を異なる内層基板に実装することで、第1の出力整合回路及び第2の出力整合回路の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。
【0013】
第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路は、第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路をそれぞれ複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないように異なる内層基板に実装されてもよい。第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路は、第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路をそれぞれ複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないように異なる内層基板に実装されてもよい。第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路の二つの投影面の一部が重ならないように第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路を異なる内層基板に実装することにより、第1の入力整合回路及び第1の出力整合回路の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路の二つの投影面の一部が重ならないように第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路を異なる内層基板に実装することにより、第2の入力整合回路及び第2の出力整合回路の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の入力整合回路及び複数の出力整合回路をパワーアンプモジュールにコンパクトに実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に係わるパワーアンプモジュールの断面図である。
【図2】実施例1に係わる整合回路の配置位置を示す説明図である。
【図3】実施例2に係わるパワーアンプモジュールの断面図である。
【図4】実施例2に係わる整合回路の配置位置を示す説明図である。
【図5】実施例1,2に係わるパワーアンプモジュールの回路図である。
【図6】実施例1,2に係わるパワーアンプモジュールの回路図である。
【図7】実施例1,2に係わるパワーアンプモジュールの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、各図を参照しながら本発明に係わる実施例について説明する。同一の回路素子については、同一の符号を付すものとし、重複する説明を省略する。また、実施例2では、実施例1との相違点を中心に説明するものとし、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0017】
図1は本実施例に係わるパワーアンプモジュール11のデバイス構造を示す断面図である。パワーアンプモジュール11は、それぞれが異なる周波数帯域を有する複数の無線信号を選択的に電力増幅するようにモノリシック集積回路化されたパワーアンプ20と、複数の無線信号のそれぞれについてパワーアンプ20の入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された複数の入力整合回路31,32と、複数の無線信号のそれぞれについてパワーアンプ20の出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された複数の出力整合回路41,42と、パワーアンプ20を搭載するとともに、複数の入力整合回路31,32及び複数の出力整合回路41,42を内蔵する多層基板50を備える。入力整合回路31及び出力整合回路41は、第1の周波数帯域を有する第1の無線信号についてインピーダンス整合するように回路設計されており、入力整合回路32及び出力整合回路42は、第2の周波数帯域を有する第2の無線信号についてインピーダンス整合するように回路設計されている。但し、第1及び第2の周波数帯域は、異なる周波数帯域であるものとする。
【0018】
図5に示すように、複数の入力整合回路31,32及び複数の出力整合回路41,42は、それぞれ、スイッチ121,122,123,124を内蔵している。スイッチ121,122,123,124は、パワーアンプモジュール11の外部から供給される制御信号CTLに基づいて開閉制御される。例えば、第1の無線信号を電力増幅する場合には、入力整合回路31の出力が増幅器20の入力に接続するようにスイッチ121が切り替えられるとともに、増幅器20の出力が出力整合回路41の入力に接続するようにスイッチ123が切り替えられる。一方、第2の無線信号を電力増幅する場合には、入力整合回路32の出力が増幅器20の入力に接続するようにスイッチ122が切り替えられるとともに、増幅器20の出力が出力整合回路42の入力に接続するようにスイッチ124が切り替えられる。このような構成により、パワーアンプ11は、複数の周波数帯域(マルチバンド)及び複数の通信方式(マルチモード)に対応することができる。但し、図6に示すように、パワーアンプ20は、複数の入力整合回路31,32の中から選択された何れか一つの入力整合回路の出力をパワーアンプ20の入力に接続切り替えするスイッチ125と、複数の出力整合回路41,42の中から選択された何れか一つの出力整合回路の入力をパワーアンプ20の出力に接続切り替えするスイッチ126とを内蔵してもよい。また、図7に示すように、複数の入力整合回路31,32の中から選択された何れか一つの入力整合回路の出力をパワーアンプ20の入力に接続切り替えするスイッチ127と、複数の出力整合回路41,42の中から選択された何れか一つの出力整合回路の入力をパワーアンプ20の出力に接続切り替えするスイッチ128は、パワーアンプ20、複数の入力整合回路31,32、及び複数の出力整合回路41,42とは別体の部品として多層基板50に実装されてもよい。なお、複数の入力整合回路31,32及び複数の出力整合回路41,42は、図5乃至図7に示す回路構成を有するものに限定されるものではなく、公知の整合回路でもよい。また、図5乃至図7に示す回路構成は、後述する実施例2に適用してもよい。
【0019】
図1に示すように、多層基板50は、複数の内層基板51,52,53,54がグランド層61,62,63及び樹脂層71,72を介して積層された積層構造を有している。より詳細には、隣接する二つの内層基板51,52の間にはグランド層61が介挿され、隣接する二つの内層基板52,53の間には樹脂層71及びグランド層62が介挿され、隣接する二つの内層基板53,54の間には樹脂層72及びグランド層63が介挿されている。内層基板51,52,53,54として、例えば、プラスチック基板、セラミック基板、金属基板、フィルム基板等を使用することができ、具体的には、ガラスエポキシ基板、ガラスポリイミド基板、アルミナ基板、低温焼成セラミック基板、窒化アルミニウム基板、アルミニウム基板、ポリイミドフィルム基板等を使用することができる。入力整合回路31は、内層基板52の表面に形成されている内層配線83に電気的に接続している。入力整合回路31と内層配線83との接続は、CSP等のバンプを用いた接続でもよく、或いはワイヤボンディングでもよい。内層配線83の配線パターンは銅で形成されているものが好ましく、特に配線パターンに化学的な表面処理が施されたものが好ましい。多層基板50の最表面に露出する電極パッド81は、多層基板50の内部を貫通するビア配線82を介して内層配線83の一部に電気的に接続している。グランド層61は、内層基板52の内部を貫通するビア配線84を介して内層配線83の一部に電気的に接続している。多層基板50の最裏面に露出する信号電極86は、多層基板50の内部を貫通するビア配線85を介して内層配線83の一部に電気的に接続している。パワーアンプ20は、ワイヤ92を半田91で電極パッド81にボンディングすることにより、パワーアンプ20と整合回路31との間の接続が得られる。内層配線83と入力整合回路31は、樹脂層71によって樹脂封止され、その上にグランド層62を介して内層基板53が積層される。他の整合回路31,41,42とパワーアンプ20との間の接続構造も同様であるため、詳細な説明を省略する。図1に示すように、多層基板50の最表面には、電極パッド101が露出し、多層基板50の最裏面には、グランド電極103が露出している。電極パッド101及びグランド電極103は、多層基板50の内部を貫通するビア配線102を介して電気的に接続している。パワーアンプ20のグランド端子は、半田104により電極パッド101に接続している。
【0020】
図1及び図2に示すように、二つの入力整合回路31,32は、入力整合回路31,32をそれぞれ複数の内層基板51,52,53,54の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面310,320の一部が重なるようにグランド層62を介して異なる内層基板52,53に実装されている。このように、二つの入力整合回路31,32の間にグランド層62を介在させることにより、入力整合回路31,32の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。また、二つの入力整合回路31,32をそれぞれ異なる内層基板52,53に実装することにより、例えば、図2に示すように、二つの投影面310,320の一部が重なるように二つの入力整合回路31,32を配置できるため、コンパクトかつ高密度な実装を可能にできる。同様に、二つの出力整合回路41,42は、出力整合回路41,42をそれぞれ複数の内層基板51,52,53,54の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面410,420の一部が重なるようにグランド層62を介して異なる内層基板52,53に実装されている。二つの出力整合回路41,42の間にグランド層62を介在させることにより、出力整合回路41,42の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。また、二つの出力整合回路41,42をそれぞれ異なる内層基板52,53に実装することにより、例えば、図2に示すように、二つの投影面410,420の一部が重なるように二つの出力整合回路41,42を配置できるため、コンパクトかつ高密度な実装を可能にできる。
【0021】
また、入力整合回路31及び出力整合回路41は、入力整合回路31及び出力整合回路41をそれぞれ複数の内層基板51,52,53,54の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面310,410の一部が重ならないようにグランド層62を介して異なる内層基板52,53に実装されている。このように、入力整合回路31及び出力整合回路41の間にグランド層62を介在させることにより、入力整合回路31及び出力整合回路41の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。同様に、入力整合回路32及び出力整合回路42は、入力整合回路32及び出力整合回路42をそれぞれ複数の内層基板51,52,53,54の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面320,420の一部が重ならないようにグランド層62を介して異なる内層基板53,52に実装されている。このように、入力整合回路32及び出力整合回路42の間にグランド層62を介在させることにより、入力整合回路32及び出力整合回路42の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。
【0022】
尚、図2において、符号200は、パワーアンプ20を複数の内層基板51,52,53,54の積層方向に垂直な平面に投影して得られる投影面を示し、符号500は、多層基板50を複数の内層基板51,52,53,54の積層方向に垂直な平面に投影して得られる投影面を示す。
【0023】
本実施例によれば、複数の入力整合回路31,32及び複数の出力整合回路41,42をモノリシック集積回路化し、多層基板50に内蔵しているため、整合回路同士を高密度に積み重ねることが可能になり、パワーアンプモジュール11のデバイス構造をコンパクト化できる。また、複数の入力整合回路31,32の間、複数の出力整合回路41,42の間、入力整合回路31と出力整合回路41との間、入力整合回路32と出力整合回路42との間における高周波信号の回り込みに起因する発振動作を抑制するようにパワーアンプモジュール11のデバイス構造が設計されているため、パワーアンプモジュール11の安定動作を確保できる。
【0024】
本実施例では、パワーアンプモジュール11がデュアルバンド対応の回路構成を有する場合について言及したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、三つ以上の周波数帯域に対応できるようにパワーアンプモジュール11を回路設計してもよい。例えば、2.5GHz帯、3.5GHz帯、及び5.8GHz帯を使用するWiMAX(IEEE802.16−2004,IEEE802.16e−2005)と、5GHz帯を使用する無線LAN(IEEE802.11a)とを共用する通信システムに本実施例を適用してもよい。後述する実施例2においても同様に、デュアルバンド対応に限定されるものではなく、三つ以上の周波数帯域に対応できるように設計してもよい。
【実施例2】
【0025】
本実施例に係わるパワーアンプモジュール12は、グランド層を有しない点、複数の入力整合回路31,32の相対的位置関係、及び複数の出力整合回路41,42の相対的位置関係が実施例1と相違し、その余の点で共通する。図3に示すように、本実施例に係わる多層基板50は、複数の内層基板51,52が樹脂層71,72,73を介して積層された積層構造を有している。図3及び図4に示すように、二つの入力整合回路31,32は、入力整合回路31,32をそれぞれ複数の内層基板51,52の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面310,320が重ならないように異なる内層基板51,52に実装されている。二つの入力整合回路31,32の間にグランド層を介さなくても、二つの投影面310,320が重ならないように二つの入力整合回路31,32を異なる内層基板51,52に実装することで、二つの入力整合回路31,32の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。同様に、二つの出力整合回路41,42は、出力整合回路41,42をそれぞれ複数の内層基板51,52の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面410,420が重ならないように異なる内層基板52,51に実装されている。二つの出力整合回路41,42の間にグランド層を介さなくても、二つの投影面410,420が重ならないように二つの出力整合回路41,42を異なる内層基板52,51に実装することで、二つの出力整合回路41,42の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。
【0026】
また、入力整合回路31及び出力整合回路41は、入力整合回路31及び出力整合回路41をそれぞれ複数の内層基板51,52の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面310,410の一部が重ならないように異なる内層基板51,52に実装されている。二つの投影面310,410の一部が重ならないように入力整合回路31及び出力整合回路41を異なる内層基板51,52に実装することにより、入力整合回路31及び出力整合回路41の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。同様に、入力整合回路32及び出力整合回路42は、入力整合回路32及び出力整合回路42をそれぞれ複数の内層基板51,52の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面320,420の一部が重ならないように異なる内層基板51,52に実装されている。二つの投影面320,420の一部が重ならないように入力整合回路32及び出力整合回路42を異なる内層基板52,51に実装することにより、入力整合回路32及び出力整合回路42の間の高周波信号の回り込みに起因する発振動作を効果的に抑制できる。
【0027】
本実施例によれば、複数の入力整合回路31,32及び複数の出力整合回路41,42をモノリシック集積回路化し、多層基板50に内蔵しているため、整合回路同士を高密度に積み重ねることが可能になり、パワーアンプモジュール12のデバイス構造をコンパクト化できる。また、複数の入力整合回路31,32の間、複数の出力整合回路41,42の間、入力整合回路31と出力整合回路41との間、入力整合回路32と出力整合回路42との間における高周波信号の回り込みに起因する発振動作を抑制するようにパワーアンプモジュール12のデバイス構造が設計されているため、パワーアンプモジュール12の安定動作を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係わるパワーアンプモジュールは、携帯電話や自動車電話等の各種の無線通信機器に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
11,12…パワーアンプモジュール
20…パワーアンプ
31,32…入力整合回路
41,42…出力整合回路
51,52,53,54…内層基板
61,62,63…グランド層
71,72,73…樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる周波数帯域を有する複数の無線信号を選択的に電力増幅するパワーアンプと、
前記複数の無線信号のそれぞれについて前記パワーアンプの入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された複数の入力整合回路と、
前記複数の無線信号のそれぞれについて前記パワーアンプの出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された複数の出力整合回路と、
前記パワーアンプを搭載するとともに、前記複数の入力整合回路及び前記複数の出力整合回路を内蔵する多層基板と、
を備えるパワーアンプモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーアンプモジュールであって、
前記多層基板は、複数の内層基板がグランド層を介して積層された積層構造を有しており、
前記複数の無線信号は、それぞれ異なる周波数帯域を有する第1及び第2の無線信号を含み、
前記複数の入力整合回路は、前記第1及び第2の無線信号について前記パワーアンプの入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の入力整合回路を含み、
前記複数の出力整合回路は、前記第1及び第2の無線信号について前記パワーアンプの出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の出力整合回路を含み、
前記第1の入力整合回路及び前記第2の入力整合回路は、前記第1の入力整合回路及び前記第2の入力整合回路をそれぞれ前記複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面の一部が重なるように前記グランド層を介して異なる内層基板に実装されているか、又は
前記第1の出力整合回路及び前記第2の出力整合回路は、前記第1の出力整合回路及び前記第2の出力整合回路をそれぞれ前記複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面の一部が重なるように前記グランド層を介して異なる内層基板に実装されている、パワーアンプモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のパワーアンプモジュールであって、
前記多層基板は、複数の内層基板が積層された積層構造を有しており、
前記複数の無線信号は、それぞれ異なる周波数帯域を有する第1及び第2の無線信号を含み、
前記複数の入力整合回路は、前記第1及び第2の無線信号について前記パワーアンプの入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の入力整合回路を含み、
前記複数の出力整合回路は、前記第1及び第2の無線信号について前記パワーアンプの出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の出力整合回路を含み、
前記第1の入力整合回路及び前記第2の入力整合回路は、前記第1の入力整合回路及び前記第2の入力整合回路をそれぞれ前記複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないように異なる内層基板に実装されているか、又は
前記第1の出力整合回路及び前記第2の出力整合回路は、前記第1の出力整合回路及び前記第2の出力整合回路をそれぞれ前記複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないように異なる内層基板に実装されている、パワーアンプモジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のパワーアンプモジュールであって、
前記多層基板は、複数の内層基板が積層された積層構造を有しており、
前記複数の無線信号は、それぞれ異なる周波数帯域を有する第1及び第2の無線信号を含み、
前記複数の入力整合回路は、前記第1及び第2の無線信号について前記パワーアンプの入力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の入力整合回路を含み、
前記複数の出力整合回路は、前記第1及び第2の無線信号について前記パワーアンプの出力のインピーダンス整合を行うようにモノリシック集積回路化された第1及び第2の出力整合回路を含み、
前記第1の入力整合回路及び前記第1の出力整合回路は、前記第1の入力整合回路及び前記第1の出力整合回路をそれぞれ前記複数の内層基板の積層方向に垂直な平面に投影して得られる二つの投影面が重ならないように異なる内層基板に実装されている、パワーアンプモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−166354(P2011−166354A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25481(P2010−25481)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】