説明

パワーコンディショナ装置

【課題】比較的簡単な構成で、系統電圧が上昇した場合における太陽光発電の出力抑制を回避して系統電圧を低下させることが可能なパワーコンディショナ装置を得る。
【解決手段】直流交流変換部11は、太陽光発電パネル22より得られる直流電力を、交流電力に変換して電力線L11に供給する。スイッチ14は電力線L11と充電コンセント15との間に介挿され、ON設定時に充電コンセント15に接続される電気自動車24への電力線L11からの充電を可能にし、OFF設定時に充電コンセント15に接続される電気自動車24への充電を不能にする。充電コントローラ12は、系統電圧V23を指示する検知電圧信号S13に基づき、系統電圧V23が所定の制限電圧を上回る恐れがあることを規定する充電判断基準を満足した場合にON設定するように、スイッチ14のON/OFF設定を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光発電パネルで発電された直流電力を、家庭内の電気設備や電力会社の系統に接続するために交流に変換するためのパワーコンディショナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽光発電用のパワーコンディショナ装置の一態様として、例えば、特許文献1に開示されたパワーコンディショナ装置がある。このパワーコンディショナ装置は、系統連系運転と自立運転とを切り替えて運転するインバータと自立運転用コンセントと複数の開閉器を持ち、電力系統の運転状況に応じて自立運転時は一方の開閉器を開き他方の開閉器を閉じ、連系時は一方の開閉器を閉じて他方の開閉器を開く。これにより、コンセントには自立運転時にのみ電源供給するようにしている。
【0003】
このように特許文献1に開示されたパワーコンディショナ装置は、自立運転時に電源供給可能な非常用コンセントを保有したパワーコンディショナ装置に関するものであり、電力系統が正常に電気を供給しているときにも電源を供給するものではない。
【0004】
また、従来の太陽光発電用のパワーコンディショナ装置の他の態様として、例えば、特許文献2に開示された系統連系型電源システムがある。
【0005】
この系統連系型電源システムは、電力系統の電圧が上昇した場合に、太陽電池の発電電量を負荷への供給や蓄電池に充電することにより、電圧上昇を抑制する系統連系形電源システムである。特許文献1に開示された構造では、パワーコンディショナ機能と蓄電池充電システムが一体となっているが、電力変換機器として、DC/DC変換器、双方向AC/DC変換器、双方向DC/DC変換器から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3293433号公報
【特許文献2】特開2004−180467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽光発電用のパワーコンディショナに関連して、系統電圧が上昇した場合に太陽光発電の出力抑制を回避して系統電圧を低下させる手段を想定した場合、特許文献1及び特許文献2に開示された従来技術では以下で述べる問題点がある。
【0008】
特許文献1で開示された技術は、パワーコンディショナ装置本体にコンセントを具備しているが、停電時に電力供給を可能とすることが目的であり、上記に想定した手段に合致した機能は保有していないという問題点があった。
【0009】
特許文献2で開示された技術は、上記想定した手段に合致した機能を発揮することが可能であるが、そのために双方向変換機能(太陽光パネルの直流・蓄電池の直流と、系統交流の相方向変換)を新たに追加する必要があり、パワーコンディショナ装置本来の機能(太陽光パネルの直流から系統への交流の片方向変換)に比べて変換器を高機能にする必要があり、装置構成が複雑化するという問題点があった。
【0010】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、比較的簡単な構成で、系統電圧が上昇した場合においても太陽光発電を出力抑制することなく系統電圧を低下させることが可能なパワーコンディショナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る請求項1記載のパワーコンディショナ装置は、発電の直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ装置であって、太陽光発電より得られる直流電力を交流電力に変換して、電力系統が繋がる所定の電力線に供給する直流交流変換部と、電気自動車用の充電コンセントと、前記所定の電力線と前記充電コンセントとの間の電気的接続関係を切り換え、ON設定時に前記充電コンセントを介した前記所定の電力線からの充電を可能にし、OFF設定時に前記充電コンセントを介した前記所定の電力線からの充電を不能にするスイッチと、前記所定の電力線上における電圧である系統電圧を計測して検知電圧を得る電圧計測計と、前記検知電圧に基づき、前記系統電圧が所定の制限電圧を上回る恐れがあることを規定する充電判断基準を満足した場合に前記スイッチをON設定する充電コントローラとを備える。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本願発明であるパワーコンディショナ装置は、充電コントローラによって、系統電圧が所定の制限電圧を上回る恐れがあることを規定する充電判断基準を満足した場合にスイッチをON設定することにより、所定の電力線から充電コンセントに接続される電気自動車への充電を可能にすることができる。
【0013】
その結果、電気自動車への充電によって系統電圧を低下させることができるため、系統電圧の上昇した場合においても、太陽光発電の発電力が抑制されるのを回避することができる。
【0014】
加えて、上記充電コンセントを介した充電制御のために新たに必要となるパワーコンディショナ装置の構成は、充電コンセント、スイッチ、電圧計測計及び充電コントローラであり、新たに電力変換機能を必要としないため、比較的簡単な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1である太陽光発電用のパワーコンディショナ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2である太陽光発電用のパワーコンディショナ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3である太陽光発電用のパワーコンディショナ装置及び電気自動車充電装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態1>
(目的)
電気事業法により家庭用の系統電圧は101V±6Vとするよう電圧範囲が定められている。一方、太陽光発電装置を設置した場合、発電量が多い場合には系統電圧が上昇し上記電圧範囲を逸脱することがある。このため、パワーコンディショナ装置には電圧計測計が内蔵されており、電圧が規定を超えて高くなった場合には出力を抑制させる機能が搭載されている。本発明は、太陽光発電によって系統電圧が高くなる場合に、電気自動車の充電を開始することで電力消費を促し、系統電圧の上昇を抑制し、太陽光発電の出力抑制を回避することを目的としている。
【0017】
(構成)
図1はこの発明の実施の形態1である太陽光発電用のパワーコンディショナ装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
同図に示すように、パワーコンディショナ装置1は太陽光発電パネル22の太陽光発電により電力線L22上に得られる直流電力を、電力線L11に接続される電力系統23と連系すべく交流電力に変換して電力線L11に交流電力を供給している。さらに、電力線L11上の系統電圧V23が上述した電圧範囲(所定の制限電圧)を上回る恐れがあると判断した場合、(電気自動車用)充電コンセント15に接続された電気自動車24への充電電力の供給を行う充電制御機能を有している。なお、電力系統23は家庭内の電気設備や電力会社の系統を意味する。
【0019】
以下、パワーコンディショナ装置1の内部構成について詳述する、電力線L22に接続される直流交流変換部11は、太陽光発電パネル22より得られる直流電力を、交流電力に変換して電力線L11に供給する。この電力線L11上の電圧が系統電圧V23となる。
【0020】
スイッチ14は電力線L11と充電コンセント15との間に介挿され、ON設定時に入力端P1,出力端P2間を電気的に接続し、充電コンセント15に接続される電気自動車24への充電を可能にする。一方、スイッチ14はOFF設定時には入力端P1,出力端P2間は電気的に遮断して、充電コンセント15に接続される電気自動車24への充電を不能にする。
【0021】
電圧計測計13は電力線L11における検出エリアd13より系統電圧V23を検出して検知電圧信号S13として充電コントローラ12に出力する。電圧計測計13は既存のものを用い、電力線L11との接触/非接触を問わない。
【0022】
充電コントローラ12は、検知電圧信号S13に基づき、スイッチ14のON/OFF設定を制御する。なお、具体的な制御方法については後述する。
【0023】
(第1の制御方法)
前述したように、充電コントローラ12は検知電圧信号S13に基づき、スイッチ14のON/OFF設定を制御する。第1の制御方法として以下の演算式(1)に基づく制御がある。なお、演算式(1)において、TH1,TH2は閾値電圧である。
【0024】
【数1】

【0025】
演算式(1)において、例えば、閾値電圧TH1が106V、閾値電圧TH2が103Vの場合を例に挙げて説明する。
【0026】
この場合、充電コントローラ12は、検知電圧信号S13で指示する系統電圧V23が106V(=TH1)を上回った場合、スイッチ14をON設定し、系統電圧V23が103V(=TH2)を下回った場合、スイッチ14をOFF設定する。そして、それ以外の場合はスイッチ14の現状状態を維持する。したがって、スイッチ14が一度、ON設定されると系統電圧V23が103Vを下回るまではON設定が維持され、スイッチ14が一度、OFF設定されると系統電圧V23が106Vを上回るまではOFF設定が維持される。
【0027】
演算式(1)において、閾値電圧TH1と閾値電圧TH2とが同じ値の場合、スイッチ14のON状態とOFF状態とがハンチングする可能性があるため、上述した例のように、TH1>TH2とする。この閾値電圧TH1と閾値電圧TH2とは、充電コントローラ12の内部のメモリ(図示せず)に保存されており、固定値であっても変更可能な値であっても良い。
【0028】
(第2の制御方法)
第2の制御方法として以下の演算式(2)(演算式(2a)+演算式(2b))に基づく制御がある。なお、演算式(2)において、TVは目標電圧、BSは不感帯、TH5(>0),TH6(<0)は閾値電圧である。また、積分値ΣΔVの初期値は“0”である。
【0029】
【数2】

【0030】
演算式(2)において、例えば、目標電圧TVが104V、不感帯BSが1V、閾値電圧TH5が10V、閾値電圧TH6が−10Vで、1分間隔で演算式(2a)及び演算式(2b)を実行する場合を例に挙げて説明する。
【0031】
まず、演算式(2a)の制御内容について説明する。この場合、充電コントローラ12は、検知電圧信号S13で指示する系統電圧V23が105V(TV(104)+BS(1V))を上回った場合(第1のケース)、その上回った電圧分ΔV(=(V23−(TV+BS)))を積分値ΣΔVとして加算する。
【0032】
一方、充電コントローラ12は、系統電圧V23が103V(TV(104)−BS(1V))を下回った場合(第2のケース)、その下回った電圧分ΔV(=(V23−(TV−BS)))を積分値ΣΔVから減算する。
【0033】
なお、上記第1及び第2のケースいずれにも該当しない場合、積分値ΣΔVは“0”の初期値に戻される。
【0034】
次に、演算式(2b)の制御内容について説明する。この場合、積分値ΣΔVが10V(=TH5)を上回った場合(第3のケース)、すなわち、105Vを上回った電圧分ΔVの積分値ΣΔVが10Vを上回った場合、スイッチ14をON設定する。
【0035】
一方、積分値ΣΔVが−10V(=TH6)を下回った場合、すなわち、103Vを下回った電圧分ΔVの積分値ΣΔVが−10Vを下回った場合(第4のケース)、スイッチ14をOFF設定する。
【0036】
そして、上記第3及び第4のケースいずれにも該当しない場合、スイッチ14の現状状態を維持する。したがって、スイッチ14が一度、ON設定されると積分値ΣΔVが−10Vを下回るまではON設定が維持され、スイッチ14が一度、OFF設定されると積分値ΣΔVが10Vを上回るまではOFF設定が維持される。
【0037】
演算式(2)を用いた制御の場合、積分動作を伴うため、閾値電圧TH5と閾値電圧TH6とが同じであってもハンチングは発生しない。
【0038】
(効果)
このように、実施の形態1のパワーコンディショナ装置1は、系統電圧V23が高くなり、上記電圧範囲を上回る恐れがあると判断した場合に電気自動車24を接続する充電コンセント15を充電可能状態に設定することにより、電気自動車24への充電による電力消費で系統電圧V23を低下させ、太陽光発電パネル22による太陽光発電の出力抑制の回避が可能となる。
【0039】
すなわち、実施の形態1のパワーコンディショナ装置1は、充電コントローラ12によって、系統電圧V23が所定の制限電圧を上回る恐れがあることを規定する充電判断基準を満足した場合にスイッチ14をON設定することにより、電力線L11から充電コンセント15に接続される電気自動車24への充電を可能にすることができる。
【0040】
なお、上記充電判断基準として、演算式(1)を用いた第1の制御方法では、系統電圧V23が閾値電圧TH1を上回る場合、演算式(2)を用いた第2の制御方法では、積分値ΣΔVが閾値電圧TH5を上回る場合を採用している。
【0041】
その結果、電気自動車24への充電によって系統電圧V23を低下させることができるため、系統電圧V23の上昇した場合においても太陽光発電パネル22による太陽光発電の発電力を抑制する必要性を回避することができる効果を奏する。
【0042】
この効果に伴い、太陽光発電の発電力を有効利用することができるため、間接的に省エネルギーに寄与することができる。
【0043】
加えて、充電コンセント15を介した充電制御のために新たに必要となる構成は、充電コンセント15、スイッチ14、電圧計測計13及び充電コントローラ12であり、全て電力変換機能を必要としないため、比較的簡単な構成で実現することができる。
【0044】
また、深夜電力契約をしている場合、電力変換器11の動作状態や系統電圧V23に関係のない(上記第1及び第2の制御方法を用いない)充電コントローラ12による制御も可能である。すなわち、充電コントローラ12に内蔵したタイマーにより夜間の単価の安い電力で電気自動車を充電するようスイッチ14をON設定し、昼間にはスイッチ14をOFF設定に変更にするという制御を実施するようにしても良い。
【0045】
<実施の形態2>
(概要)
一般に、太陽光発電用のパワーコンディショナ装置は単相3線式で200V系統に接続している。また、電気自動車に搭載されている充電器は、100Vと200Vの両方に対応しているものがある。これは、100Vで接続される場合にくらべ、200Vで接続されると充電電力が大きくなり短時間で充電可能とするためである。実施の形態2では、スイッチ部分をON/OFF設定だけではなく、ON設定を100Vと200Vのいずれかを選択可能とした第1及び第2のON設定に細分化している。
【0046】
(構成)
図2はこの発明の実施の形態2である太陽光発電用のパワーコンディショナ装置の構成を示すブロック図である。
【0047】
同図に示すように、パワーコンディショナ装置2は太陽光発電パネル22の太陽光発電により電力線L22上に得られる直流電力を、電力線L11a〜L11cに接続される電力系統23と連系すべく、交流電力に変換して単相3線式の電力線L11a〜L11c上に交流電力を供給している。さらに、系統電圧V23(絶対値)が上記電圧範囲(所定の制限電圧)を上回る恐れがあると判断した場合、(電気自動車用)充電コンセント15に接続された電気自動車24への充電電力の供給を行う充電制御機能を有している。
【0048】
以下、パワーコンディショナ装置2の内部構成について詳述する、電力線L22に接続される直流交流変換部19は、太陽光発電パネル22より得られる直流電力を、交流電力に変換して電力線L11a〜L11cに供給する。なお、電力線L11aには系統電圧V23である100Vの交流電圧が付与され、電力線L11bには0Vの固定電圧が付与され、電力線L11cには系統電圧−V23である−100Vの交流電圧が付与される。また、系統電圧V23と系統電圧−V23とは位相が180゜異なる交流電圧となる。
【0049】
また、直流交流変換部19は電力線L22より得られる太陽光発電パネル22からの太陽光発電電力P22を指示する太陽光発電電力信号S22を充電コントローラ20に出力する。
【0050】
充電コンセント15の第1端子15aはスイッチ17の入力端P1aに固定接続され、第2端子15bが出力端P2に接続される。
【0051】
スイッチ17は電力線L11a〜L11cと充電コンセント15との間に介挿され、第1のON設定時に入力端P1c,出力端P2間を電気的に接続し、第2のON設定時に入力端P1b,出力端P2間を電気的に接続する。したがって、第1のON設定時において、充電コンセント15に接続される電気自動車24への200V(第1の充電電圧)の充電が可能となり、第2のON設定時において、充電コンセント15に接続される電気自動車24への100V(第2の充電電圧)の充電が可能となる。
【0052】
一方、スイッチ17はOFF設定時には入力端P1a,出力端P2a間を電気的に接続し、充電コンセント15の第1端子15a,15b間の電位差を0Vに設定することにより、充電コンセント15に接続される電気自動車24への充電を不能にする。
【0053】
電圧計測計18は電力線L11b,L11cにおける検出エリアd18より系統電圧−V23と0Vとの電位差を検出して検知電圧信号S18として充電コントローラ20に出力する。電圧計測計18は既存のものを用い、電力線L11b,11cとの接触/非接触を問わない。また、電圧計測計18の検出エリアd18を電力線L11a,L11bに設定することも勿論可能である。
【0054】
充電コントローラ20は、検知電圧信号S18及び太陽光発電電力信号S22に基づき、スイッチ17のON/OFF設定を制御する。なお、具体的な制御方法については後述する。
【0055】
(第1の制御方法)
前述したように、充電コントローラ20は検知電圧信号S18及び太陽光発電電力信号S22に基づき、スイッチ17のON/OFF設定を制御する。なお、ON設定は第1のON設定及び第2のON設定を含んでいる。
【0056】
第1の制御方法として以下の演算式(3)に基づく制御がある。なお、演算式(3)において、TH1〜TH4は閾値電圧である。また、系統電圧V23は絶対値で示される。
【0057】
【数3】

【0058】
演算式(3)において、例えば、閾値電圧TH1が106V、閾値電圧TH2が105V、閾値電圧TH3が104V、閾値電圧TH4が103Vの場合を例に挙げて説明する。
【0059】
この場合、充電コントローラ20は、検知電圧信号S18で指示する系統電圧V23が106V(=TH1)を上回った場合(第1のケース)、スイッチ17を第1のON設定し、系統電圧V23が105V(=TH2)を下回るが104V(=TH3)を上回った場合(第2のケース)、スイッチ17を第2のON設定する。そして、系統電圧V23が103V(=TH4)を下回った場合、スイッチ17をOFF設定する。そして、それ以外の場合はスイッチ17の現状状態を維持する。
【0060】
したがって、スイッチ17が一度、第1のON設定されると系統電圧V23が103Vを下回るか104V〜105V間にあるときまでは第1のON設定が維持され、スイッチ17が一度、第1のON設定されると系統電圧V23が103Vを下回るか106Vを上回るまでは第1のON設定が維持される。そして、スイッチ17が一度、OFF設定されると系統電圧V23が106Vを上回るか104V〜105V間にあるときまではOFF設定が維持される。
【0061】
演算式(3)において、閾値電圧TH1〜TH4において、TH1とTH2、TH3とTH4とが同じ値の場合、スイッチ17の第1のON状態,第1のON状態間あるいは第1のON状態,OFF状態間でハンチングする可能性があるため、上述した例のように、TH1>TH2>TH3>TH4とする。これら閾値電圧TH1〜TH4は、充電コントローラ20の内部のメモリ(図示せず)に保存されており、固定値であっても変更可能な値であっても良い。
【0062】
(第2の制御方法)
第2の制御方法として以下の演算式(4)に基づく制御がある。なお、演算式(4)において、P22は太陽光発電電力、TH1,TH2は閾値電圧、PH1,PH2は閾値電力である。
【0063】
【数4】

【0064】
演算式(4)において、例えば、閾値電圧TH1が106V、閾値電圧TH2が103V、閾値電力PH1が太陽光発電パネル22による太陽光発電力における定格の80%の電力、閾値電力PH2が同定格の50%の電力の場合を例に挙げて説明する。例に挙げて説明する。
【0065】
充電コントローラ20は、検知電圧信号S18で指示する系統電圧V23が106V(=TH1)を上回った場合、太陽光発電電力信号S22で指示する太陽光発電電力P22に基づく処理に移行する。
【0066】
また、太陽光発電電力P22が定格の80%(=PH1)を上回った場合(第3のケース)、スイッチ17を第1のON設定にする。そして、太陽光発電電力P22が定格の50%(=PH2)を下回っている場合(第4のケース)はスイッチ17を第2のON設定にする。上記第3及び第4のケースのいずれにも該当しない場合、スイッチ17は現在の状態を維持する。
【0067】
一方、充電コントローラ20は、系統電圧V23が103V(=TH2)を下回った場合、スイッチ17をOFF設定する。
【0068】
そして、上述したいずれにも該当しない場合、スイッチ17の現状状態を維持する。したがって、スイッチ17が一度、第1のON設定されると系統電圧V23が103Vを下回るか、系統電圧V23>106Vの状態で上記第4のケースに該当するまでは第1のON設定が維持される。同様に、スイッチ17が一度、第1のON設定されると系統電圧V23が103Vを下回るか106Vを上回りかつ上記第3のケースに該当するまでは第1のON設定が維持される。そして、スイッチ17が一度、OFF設定されると系統電圧V23が106Vを上回り、かつ太陽光発電電力P22が上記第3あるいは第4のケースに該当するまではOFF設定が維持される。
【0069】
(効果)
このように、実施の形態2のパワーコンディショナ装置2は、系統電圧V23が高くなり、上記電圧範囲を上回る恐れがあると判断した場合に電気自動車24を接続する充電コンセント15を充電可能状態に設定することにより、電気自動車24への充電による電力消費で系統電圧V23を低下させ、太陽光発電パネル22による太陽光発電の出力抑制の回避が可能となる。
【0070】
したがって、実施の形態2のパワーコンディショナ装置2は、実施の形態1のパワーコンディショナ装置1と同様な効果を奏する。
【0071】
加えて、実施の形態2のパワーコンディショナ装置は、系統電圧V23の上昇度合に関連した要因に基づき、スイッチ17の第1及び第2のON設定を選択的に実行することにより、電気自動車24への供給電圧(充電電圧)に変化を持たせて電力消費量を制御することにより、系統電圧V23の上昇度合に基づき、より適切な制御が可能となる。
【0072】
具体的には、実施の形態2のパワーコンディショナ装置2では、充電コンセント15に接続される電気自動車24への充電電圧を100V(第2のON設定)及び200V(第1のON設定)のうち一方を選択的に設定することができるため、電気自動車24への充電電力レベルを制御できる効果を奏する。このため、例えば、系統電圧V23が高く日射量も多く太陽光発電電力P22が比較的高い場合には充電電圧200Vで充電電力を大きくして系統電圧V23の上昇を大きく抑え、日射量がそれほど多くなく太陽光発電電力P22が比較的低い場合は充電電圧100Vで電圧上昇は抑えつつも充電電力を少なくすることが可能となる。
【0073】
なお、所定の制限電圧を上回る恐れがある充電判断基準として、演算式(3)を用いた第1の制御方法では、上記第1あるいは第2のケースに該当する場合、演算式(4)を用いた第2の制御方法では、系統電圧V23が閾値電圧TH1を上回り、かつ上記第3あるいは第4のケースに該当する場合を採用している。
【0074】
また、系統電圧V23の上昇度合に関連した要因として、演算式(3)を用いた第1の制御方法では、系統電圧V23自体の上昇度合を採用し、演算式(4)を用いた第2の制御方法では、系統電圧V23の上昇度合と正の相関がある太陽光発電電力P22の発電度合を採用している。
【0075】
また、実施の形態1と同様、深夜電力契約をしている場合、直流交流変換部19の動作状態や系統電圧V23に関係のない(第1及び第2の制御方法を用いない)充電コントローラ20による制御も可能である。すなわち、充電コントローラ20に内蔵したタイマーにより夜間の単価の安い電力で電気自動車を充電するようスイッチ17をON設定(第1あるいは第2のON設定)し、昼間にはスイッチ17をOFF設定に変更にするという制御を実施するようにしても良い。
【0076】
<実施の形態3>
(構成)
図3はこの発明の実施の形態3である太陽光発電用のパワーコンディショナ装置及び電気自動車充電装置の構成を示すブロック図である。
【0077】
同図に示すように、パワーコンディショナ装置3は太陽光発電パネル22の太陽光発電により電力線L22上に得られる直流電力を、電力線L11に接続される電力系統23と連系すべく、交流電力に変換して電力線L11上に交流電力を供給している。さらに、電力線L11上の系統電圧V23が所定の制限電圧を上回る恐れがあると判断した場合、電気自動車充電装置5(所定充電装置)内に設けられる(電気自動車用)充電コンセント52に接続された電気自動車24への充電電力の供給を行う充電制御機能を有している。
【0078】
以下、パワーコンディショナ装置3の内部構成について詳述する、電力線L22に接続される直流交流変換部11は、太陽光発電パネル22より得られる直流電力を、交流電力に変換して電力線L11に供給する。電力線L11の上の電圧が系統電圧V23となる。
【0079】
電圧計測計13は電力線L11における検出エリアd13より系統電圧V23を検出して検知電圧信号S13として充電コントローラ21に出力する。
【0080】
充電コントローラ21は、検知電圧信号S13に基づき、制御出力ポート16から電気自動車充電装置5の制御入力ポート53に制御信号S21を付与し、電気自動車充電装置5内のスイッチ51のON/OFF設定を制御する。なお、具体的な制御方法については後述する。
【0081】
次に、パワーコンディショナ装置3による充電制御される電気自動車充電装置5の内部構成について説明する。
【0082】
スイッチ51はパワーコンディショナ装置3の出力端子部分o3の電力線L11から分岐した分岐電力線L5と充電コンセント52との間に介挿され、ON設定時に入力端P1,出力端P2間を電気的に接続し、充電コンセント52に接続される電気自動車24への充電を可能にする。一方、スイッチ51はOFF設定時には入力端P1,出力端P2間は電気的に遮断し、充電コンセント52に接続される電気自動車24の充電を不能にする。
【0083】
(第1の制御方法)
前述したように、充電コントローラ21は検知電圧信号S13に基づき、制御信号S21を電気自動車充電装置5に付与して、電気自動車充電装置5内のスイッチ51のON/OFF設定を制御する。第1の制御方法として実施の形態1で述べた演算式(1)と等価な以下の演算式(5)に基づく制御がある。なお、実施の形態3における第1の制御方法は、スイッチ14がスイッチ51に置き換えられる点を除き、実施の形態1における第1の制御方法と同様に行われるため、説明を省略する。
【0084】
【数5】

【0085】
(第2の制御方法)
第2の制御方法として実施の形態2で述べた演算式(2)(演算式(2a)+演算式(2b))と等価な以下の演算式(6)(演算式(6a)+演算式(6b))に基づく制御がある。なお、実施の形態3における第2の制御方法は、スイッチ14がスイッチ51に置き換えられる点を除き、実施の形態2における第2の制御方法と同様に行われるため、説明を省略する。
【0086】
【数6】

【0087】
(効果)
このように、実施の形態3のパワーコンディショナ装置3は、実施の形態1と同様、系統電圧V23が高くなり、上記電圧範囲を上回る恐れがあると判断した場合に電気自動車24を接続する電気自動車充電装置5内の充電コンセント52を充電可能状態に設定することにより、電気自動車24への充電による電力消費で系統電圧V23を低下させ、太陽光発電パネル22による太陽光発電の出力抑制の回避が可能となる。
【0088】
すなわち、実施の形態3のパワーコンディショナ装置3は、充電コントローラ21によって、系統電圧V23が上記電圧範囲を上回る恐れがあることを規定する充電判断基準を満足した場合に電気自動車充電装置5を制御して、電力線L11をパワーコンディショナ装置3の外部で分岐させた分岐電力線L5を利用した電気自動車24の充電が可能とすることができる。
【0089】
なお、上記充電判断基準として、演算式(5)を用いた第1の制御方法では、系統電圧V23が閾値電圧TH1を上回る場合、演算式(6)を用いた第2の制御方法では、積分値ΣΔVが閾値電圧TH5を上回る場合を採用している。
【0090】
その結果、電気自動車24への充電によって系統電圧V23を低下させることができるため、系統電圧V23が上昇した場合においても太陽光発電の発電力が抑制されるのを回避することができる。
【0091】
加えて、充電コンセント52からの充電制御のために新たに必要となるパワーコンディショナ装置3の構成は、電圧計測計13及び充電コントローラ21であり、全て電力変換部を必要としないため、比較的簡単な構成で実現することができる。
【0092】
さらに、実施の形態3のパワーコンディショナ装置3では、太陽光発電用のパワーコンディショナ3と電気自動車充電装置5とを分離して設置することにより、パワーコンディショナ装置3の装置構成のさらなる簡略化を図ることができる。
【0093】
さらに、実施の形態3のパワーコンディショナ装置3は、パワーコンディショナ装置3の分岐電力線L5に分岐する前段に位置する電力線L11の部分である出力端子部分o3に電力量計(図示せず)を設置することにより、太陽光発電パネル22による太陽光発電により得られた交流発電量を正確に計測することが可能となる効果を奏する。
【0094】
以下、この効果について詳述する。実施の形態1及び実施の形態2のパワーコンディショナ装置1及び2の場合、パワーコンディショナ装置1(2)外の電力線L11(L11a〜L11c)の出力端子相当部分は図示しない電力計測計によって計測される電力量は、太陽光発電パネル22による太陽光発電電力P22から電気自動車24への充電電力が差し引かれた値となる。
【0095】
これに対し、実施の形態3の場合は太陽光発電用のパワーコンディショナ装置3の交流側である電力線L11の出力端子相当部分o3に設置した図示しない電力計測計では実際に太陽光発電パネル22によって、電気自動車24への充電電力が差し引かれることなく太陽光発電パネル22で太陽光発電した太陽光発電電力P22の計測が可能となるという、実施の形態1及び実施の形態2では得ることができない効果を奏する。
【0096】
また、深夜電力契約をしている場合、電力変換器11の動作状態や系統電圧V23に関係のない(上記第1及び第2の制御方法を用いない)電気自動車充電装置5単独での制御も可能である。すなわち、電気自動車充電装置5に内蔵したタイマーにより夜間の単価の安い電力で電気自動車を充電するようスイッチ51をON設定し、昼間にはスイッチ51をOFF設定に変更にするという制御を電気自動車充電装置5単独で実施するようにしても良い。
【0097】
(実施の形態2への適用)
実施の形態3は電気自動車充電装置5のスイッチ51及び電気自動車用充電コンセント52に対する制御を実施の形態1の第1及び第2の制御方法と実質同じ制御方法を用いたが、実施の形態2の第1及び第2の制御方法と実質同じ制御方法を用いることも可能である。ただし、この場合、スイッチ51及び電気自動車用充電コンセント52は実施の形態2のスイッチ17及び充電コンセント15と等価な構成であり、電力線L11を実施の形態2の電力線L11a〜L11cのように単相3線式で実現する等、実施の形態2に適合した変更が必要となる。
【0098】
<その他>
なお、上述した実施の形態では充電対象装置として電気自動車24を示したが、他にもヒートポンプ式給湯器や電気温水器等を電気自動車24に変わる充電対象装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0099】
1〜3 パワーコンディショナ装置、5 電気自動車充電装置、11,19 直流交流変換部、12,20,21 充電コントローラ、13,18 電圧計測計、14,17,51 スイッチ、15,52 (電気自動車用)充電コンセント、16 制御出力ポート、23 電力系統、24 電気自動車、53 制御入力ポート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電の直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ装置であって、
太陽光発電より得られる直流電力を交流電力に変換して、電力系統が繋がる所定の電力線に供給する直流交流変換部と、
電気自動車用の充電コンセントと、
前記所定の電力線と前記充電コンセントとの間の電気的接続関係を切り換え、ON設定時に前記充電コンセントを介した前記所定の電力線からの充電を可能にし、OFF設定時に前記充電コンセントを介した前記所定の電力線からの充電を不能にするスイッチと、
前記所定の電力線上における電圧である系統電圧を計測して検知電圧を得る電圧計測計と、
前記検知電圧に基づき、前記系統電圧が所定の制限電圧を上回る恐れがあることを規定する充電判断基準を満足した場合に前記スイッチをON設定する充電コントローラとを備える、
パワーコンディショナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のパワーコンディショナ装置であって、
前記所定の電力線は単相3線式の電力線を含み、
前記ON設定は第1のON設定及び第2のON設定を含み、
前記スイッチは、第1のON設定時に第1の充電電圧を充電可能に前記単相3線式の電力線を前記充電コンセントに電気的に接続し、第2のON設定時に前記第1の充電電圧より低い第2の充電電圧を充電可能に前記単相3線式の電力線を前記充電コンセントに電気的に接続し、
前記充電コントローラは、前記充電判断基準を満足すると判断した場合に、前記系統電圧の上昇度合に関連した要因に基づき前記第1及び第2のON設定を選択的に行うように前記スイッチを制御する、
パワーコンディショナ装置。
【請求項3】
太陽光発電の直流電力を交流電力に変換するとともに、電気自動車用の所定の充電装置を制御可能なパワーコンディショナ装置であって、
太陽光発電より得られる直流電力を交流電力に変換して、電力系統が繋がる所定の電力線に供給する直流交流変換部と、
前記所定の電力線上における電圧である系統電圧を計測して検知電圧を得る電圧計測計と、
前記所定の充電装置に制御可能に接続され、前記検知電圧に基づき、前記系統電圧が所定の制限電圧を上回ることを規定する充電判断基準を満足した場合に、前記所定の電力線を外部で分岐させた分岐電力線から前記電気自動車への充電が可能となるように前記所定の充電装置を制御する充電コントローラとを備える、
パワーコンディショナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55131(P2012−55131A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197599(P2010−197599)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】