説明

パワースイッチング回路

【課題】誘導性負荷のフライホイル電流が流れる接合ダイオードの逆回復電流を実質的に低減するパワースイッチング回路を提供すること。
【解決手段】たとえばMOSFET41hの寄生ダイオードからなる第1ダイオード42hからなる第1転流経路と並列に、第2ダイオード43hとインダクタンス素子44hとを直列接続してなる第2転流経路を設ける。フライホイル電流によりインダクタンス素子44hに蓄積された磁気エネルギーにより、第1ダイオード42hを流れる逆回復電流を吸収する。これにより、下アームスイッチのMOSFET41lに流れ込む逆回復電流を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子と逆並列に接続されて誘導性負荷のための還流電流を通電するダイオードの逆回復電流損失を低減可能なパワースイッチング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動用のインバータなどの誘導性負荷を駆動する電力変換回路の半導体スイッチング素子には、還流電流を通電するためのダイオードを逆並列に接続している。このダイオードが導通状態から阻止状態に移行する遷移期間に逆回復電流が流れることが知られている。この逆回復電流は、スイッチング損失やノイズの原因となるため、少数キャリアのライフタイムを制御したファストリカバリダイオードやショットキーバリアダイオードがダイオードとして用いられている。
【0003】
けれども、半導体スイッチング素子と逆並列に寄生ダイオードを有するが形成されたMOSFETなどでは、この寄生ダイオードの逆回復電流により損失が発生する。寄生ダイオードの逆回復電流は高耐圧のMOSFETほど大きくなる傾向にある。特に高耐圧と低抵抗を両立することで近年開発が進んでいるスーパージャンクション(SJ)構造のMOSFETは、寄生ダイオードの逆回復電流が大きくかつ急峻な特性をもち、損失やノイズが増大するという問題があった。
【0004】
この寄生ダイオードの逆回復損失やノイズの低減技術として、下記非特許文献1は、寄生ダイオードと逆直列に低耐圧のダイオードを接続し、寄生ダイオードに順方向電流が流れないようにすることを提案し、下記の特許文献1、2、3は、逆回復電荷を外部回路でキャンセルして逆回復を抑えることを提案している。
【非特許文献1】「パワーMOSFETの応用技術」 日刊工業新聞社 P138
【特許文献1】特開平10-327585
【特許文献2】特開平2006-141167
【特許文献3】特開平2006-141168
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、寄生ダイオードと逆直列にダイオードを挿入する特許文献1の方法は、回路構造が複雑となる他、スイッチング素子が導通状態のときに逆直列ダイオードの順方向電圧降下分の損失が発生して導通損失が増加するという問題がある。また、外部回路で逆回復電荷をキャンセルする特許文献2、3の方法は、電荷の供給とその制御のための電源とスイッチが新たに必要になり、回路構造が複雑化するという問題があり、損失も増加するという問題もある。
【0006】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、簡素な回路構成により半導体スイッチング素子と逆並列に接続された寄生ダイオードを含むダイオードの逆回復電流による損失やノイズを低減可能なパワースイッチング回路を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、電力源側に接続される電源側端子と、誘導性負荷に接続される負荷側端子と、前記電源側端子と前記負荷側端子との間を流れるスイッチ電流を断続する半導体スイッチング素子と、前記半導体スイッチング素子に対して逆並列接続される第1ダイオードを有して前記半導体スイッチング素子のオフ時に誘導性負荷の転流電流を前記スイッチ電流と逆向きに流す第1転流経路とを備えるパワースイッチング回路において、前記半導体スイッチング素子に対して逆並列接続される第2ダイオードを有して前記第1転流経路と並列接続されるとともに、前記半導体スイッチング素子のオフ時に前記スイッチ電流と逆向きに前記誘導性負荷の転流電流を流す第2転流経路を有し、前記第2ダイオードは、前記第1ダイオードよりも短い逆回復時間を有し、前記第2転流経路のインダクタンスは、前記第1転流経路のインダクタンスよりも大きいことを特徴としている。
【0008】
すなわち、本発明は、半導体スイッチング素子と逆並列に接続されるダイオード(フライホイルダイオード)として、互いに並列接続され、半導体スイッチング素子に対して逆並列接続された第1、第2ダイオードをもつ。第1ダイオードは、MOSFETのような半導体スイッチング素子の寄生ダイオードでもよい。更に、本発明は、半導体スイッチング素子の両端間の第2ダイオードの電流経路である第2転流経路のインダクタンスは、半導体スイッチング素子の両端間の第1ダイオードの電流経路である第1転流経路のインダクタンスよりも大きく設定され。第2ダイオードは第1ダイオードよりも短い逆回復時間をもつ点をその特徴とする。
【0009】
本発明によれば、半導体スイッチング素子のオフ期間に、誘導性負荷に蓄積された磁気エネルギーによる電流が第1、第2ダイオードを通じて転流する転流期間の終了後、半導体スイッチング素子の負荷側端子の電位が低下し、第1ダイオードがオフする際の逆回復電流を、第2ダイオードと直列接続されて転流期間に蓄積されたインダクタンスの磁気エネルギー消勢するための消勢電流により低減することができる。これにより、第1、第2ダイオードの合計電流を転流期間終了後に速やかに低減することができる。なお、第2ダイオードは、第1ダイオードよりも優れた逆回復特性をもち、相対的にその悪影響は小さい。
【0010】
そのうえ、この発明では、上記転流期間において、従来、第1ダイオードにのみ流れていた電流を第2ダイオードに分流させるため、第1ダイオードの順方向通電による小数キャリア蓄積量も小さくなり、その分だけ逆回復電流も低減することもできる。
【0011】
本発明によれば、第1ダイオードの逆回復電流の大きさに応じて適切な大きさのインダクタンスを、第1ダイオードの両端間で第2ダイオードと直列接続するというきわめて簡単な回路構成により上記効果を実現することができ、実用性に優れている。
【0012】
好適な態様において、本発明のパワースイッチング回路は、インバータやDCDCコンバータに用いられる1乃至複数のハーフブリッジ回路の上アームや下アームに採用される。ハーフブリッジとして用いる場合、本願発明のパワースイッチング回路は、誘導性負荷を交流駆動するハーフブリッジ回路に適用される。このハーフブリッジ回路に適用された本発明は、直流電源に接続される高位電源側端子と、負荷に接続される負荷側端子と、前記高位電源側端子と前記負荷側端子とを接続する半導体スイッチング素子とを有し、前記高位電源側主端子から前記負荷側主端子へスイッチ電流を流す主電流経路と、前記半導体スイッチング素子に対して逆並列接続される第1ダイオードを有して前記半導体スイッチング素子オフ時に転流電流を前記スイッチ電流と逆向きに流す第1転流経路とを有する上アームと、直流電源に接続される低位電源側端子と、負荷に接続される負荷側端子と、前記低位電源側端子と前記負荷側端子とを接続する半導体スイッチング素子とを有し、前記高位電源側端子から前記負荷側端子へスイッチ電流を流す主電流経路と、前記半導体スイッチング素子に対して逆並列接続される第1ダイオードを有して前記半導体スイッチング素子オフ時に転流電流を前記スイッチ電流と逆向きへ流す第1転流経路とを有する下アームとを備え、前記上アーム及び下アームの前記負荷側端子は、互いに接続されて誘導性負荷に交流電流を給電するハーフブリッジ回路を有するパワー半導体スイッチング回路において、前記半導体スイッチング素子に対して逆並列接続される第2ダイオードを有して前記主電流経路及び前記第1転流経路と並列接続されて、前記半導体スイッチング素子オフ時に転流電流を前記スイッチ電流と逆向きへ流す第2転流経路を有し、前記第2ダイオードは、前記第1ダイオードよりも短い逆回復時間を有し、前記第2転流経路のインダクタンスは、前記第1転流経路のインダクタンスよりも大きいことをその特徴とする。
【0013】
このようにすれば、たとえば上アームの第1ダイオードの逆回復電流が、下アームの半導体スイッチング素子のオン遷移期間に流れて大きな損失を生じたり、下アームの第1ダイオードの逆回復電流が、上アームの半導体スイッチング素子のオン遷移期間に流れて大きな損失を生じたりするのを大幅に低減することができる。
【0014】
好適な態様において、前記逆回復電流が前記第1ダイオードに流れる期間に前記第2転流経路を前記逆回復電流と逆向きに流れて前記第2転流経路のインダクタンスの磁気エネルギーを消勢する前記第2転流経路の磁気エネルギー消勢電流の平均値は、前記逆回復電流の平均値に略等しく設定されている。上記で言う略等しいとは、50〜100%を言うものとする。このようにすれば、第1ダイオードに逆回復電流が流れる期間に第2転流経路に逆向きに流れる消勢電流がこの逆回復電流に略キャンセルすることができるため、この逆回復電流による損失やノイズを大幅に低減することができる。
【0015】
好適な態様において、前記第2転流経路のインダクタンスは、前記第1転流経路のインダクタンスの2〜8倍、更に好適には4〜6倍に設定されている。このようにすれば、第1ダイオードに逆回復電流が流れる期間に第2転流経路に逆向きに流れる消勢電流がこの逆回復電流に略キャンセルする効果を奏する。更に説明する。第1ダイオードを流れる逆回復電流と逆向きの上記消勢電流が、第1、第2ダイオードを循環する回路を考えると、転流期間に第1転流経路のインダクタンスに蓄積された磁気エネルギーは、転流期間に第2転流経路のインダクタンスに蓄積された磁気エネルギーと逆向きとなる。このため、これら両磁気エネルギーによる消勢電流の差が、逆回復電流のエネルギーに略等しい場合に、このパワースイッチング回路から転流期間後の逆回復期間に外部に流れる電流を最小とすることがわかる。シミュレーションによれば、前記第2転流経路のインダクタンスは、前記第1転流経路のインダクタンスの2〜8倍更に好適には4〜6倍に設定すると、良好に逆回復電流がこのパワースイッチング回路から外部に流れるのを低減できることがわかった。
【0016】
好適な態様において、前記第2転流経路のインダクタンスは、主として配線インダクタンスにより構成されている。このようにすれば、製造工程の複雑化や回路の大型化を招くことなく、逆回復電流による悪影響を低減することができる。
【0017】
その他、第2転流経路のインダクタンスを通常の配線とは別に製造されたインダクタンス素子により構成してもよい。この種の小インダクタンス値をもつインダクタンス素子は、たとえば第2ダイオードが実装される基板の導電パターンにより容易に構成することができる。たとえば、導電パターンを螺旋巻きしてインダクタンス素子を構成することができる。その他、第2ダイオードが形成された半導体チップの電極領域とこの半導体チップが実装されるパッケージに固定された端子とを接続するボンディングワイヤによりこのインダクタンス素子を構成することができる。この場合、第1転流経路をなす導電パターンやボンディングワイヤなどは、第2転流経路をなす導電パターンやボンディングワイヤよりも相対的に短くされるべきである。
【0018】
好適な態様において、前記第2転流経路の配線長は、前記第1転流経路の配線長よりも大きく形成されている。これにより、容易に第2転流経路のインダクタンスを第1転流経路のそれよりも増大することができる。
【0019】
好適な態様において、前記半導体スイッチング素子、第1ダイオード及び第2ダイオードは同一基板に実装されて同一パッケージに収容され、前記第1転流経路と前記第2転流経路との接続点は、前記パッケージ内に配置されている。このようにすれば、第2ダイオードを外付けしないため、第1転流経路及び第2転流経路のインダクタンスを好適な値に容易かつ高精度に設定することができる。
【0020】
なお、ここで言う第1転流経路と第2転流経路の接続点とは、半導体スイッチング素子及び第1ダイオードと電源側又は負荷とを接続する配線に、第2転流経路の配線が接続される分岐点を意味する。
【0021】
好適な態様において、前記半導体スイッチング素子及び第1ダイオードは同一の半導体チップに集積され、前記第2ダイオードは前記半導体チップとは異なる半導体チップに作成されて前記半導体スイッチング素子及び第1ダイオードと同一パッケージに収容されている。このようにすれば、第2ダイオードを外付けしないため、第2転流経路のインダクタンスを好適な値に容易かつ高精度に設定することができる。なお、半導体スイッチング素子をMOSFETとする場合の寄生ダイオードを、ここで言う第1ダイオードとみなすことができる。
【0022】
好適な態様において、前記半導体スイッチング素子、第1ダイオード及び第2ダイオードは、同一の半導体チップに集積されている。このようにすれば、ボンディングワイヤに接続する端子配置の設計などにより、第2転流経路のインダクタンスを第1転流経路のインダクタンスより容易かつ高精度に設定することができる。
【0023】
好適な態様において、前記半導体スイッチング素子は、前記第1ダイオードとしての寄生ダイオードをもつMOSFETにより構成され、前記第1転流経路と前記第2転流経路との接続点は、前記MOSFETが形成された半導体チップ表面に形成された電極により構成されている。このようにすれば、第1転流経路の配線インダクタンスを大幅に低減することができ、第2転流経路の配線インダクタンスを増大することができる。
【0024】
好適な態様において、前記第1ダイオードの逆回復電流の積分値と、前記第1ダイオードの逆回復電流通電期間の前記第2電流経路に流れるインダクタンス減勢方向の電流の積分値は略等しくされている。このようにすれば、外部に流れ出す逆回復電流を大幅に低減することができる。なお、ここで言う略等しいとは、50〜150%以内の差を含むものとする。このようにすれば、逆回復電流による損失やその電流変化率に比例するノイズ電圧を良好に低減することができる。
【0025】
好適な態様において、前記第1ダイオードは、接合ダイオードからなり、前記第2ダイオードは、第1ダイオードの順方向オン電圧よりも小さい順方向オン電圧をもつショットキーダイオード又はファストリカバリダイオードからなる。これにより、第2ダイオードの逆回復電流による問題を軽減できるうえ、転流期間に第2ダイオードが先に導通するため、第1ダイオードの小数キャリア蓄積を減らしてその逆回復電流を低減することができる。
【0026】
好適な態様において、前記第1ダイオードは、ファストリカバリダイオードからなり、前記第2ダイオードは、ショットキーダイオードからなる。これにより、上記と同様の効果を奏することができる。
【0027】
好適な態様において、前記第1ダイオードは、前記半導体スイッチング素子をなすSJ−MOSFETの寄生ダイオードからなる。これにより、SJ−MOSFETの大きくかつ急峻な波形の逆回復電流による悪影響を良好に低減することができる。なお、この態様では、逆回復電流の波形が急峻であるため、第2転流経路の配線抵抗をそのインダクタンスに対して相対的に小さくするべきである。これに対して、第1ダイオードがMOSFETの寄生ダイオードである場合には、第2転流経路の抵抗は相対的に大きくされることが好適である。
【0028】
好適な態様において、前記半導体スイッチング素子及び前記第1ダイオードは、前記電源側端子または前記負荷側端子として複数の電極端子をもつ同一のパッケージに実装され、前記第2ダイオードは、配線を通じて前記複数の電極端子の一部に接続される。このようにすれば、第1転流経路や第2転流経路の配線長さを容易かつ高精度に設定することができるため、インダクタンス値のばらつきを低減することができる。
【発明の実施形態】
【0029】
本発明のパワースイッチング回路の好適な実施形態を図面を参照して説明する。本発明は、下記の実施形態に限定解釈されるべきではなく、本発明の技術思想を公知の他のパワースイッチング回路に適用しても良いことはもちろんである。
【0030】
(実施形態1)
(全体回路構成)
誘導性負荷をハーフブリッジにより駆動する実施形態1を図1を参照して説明する。図1において、41h、41lは本発明で言う半導体スイッチング素子をなすMOSFET、42h、42lは本発明で言う第1ダイオードをなすMOSFET41h、41lの寄生ダイオードである。43h、43lは、本発明で言う第2ダイオードをなすショットキーダイオード、44h、44lは配線インダクタンスからなるインダクタンス、46は直流電源、47は誘導性負荷である。このハーフブリッジは、よく知られているように、上アームスイッチ(単に上アームとも略称する)と下アームスイッチ(単に下アームとも呼ぶ)とを直列接続し、直流電源46の両端に接続して構成されている。
【0031】
(上アームスイッチ)
上アームスイッチは、直流電源46の正極端に接続される高位電源側端子49と、誘導性負荷47の一端に接続される負荷側端子48と、MOSFET41hと、第1ダイオード42hと、第2ダイオード43hと、インダクタンス素子44hとにより構成されている。
【0032】
MOSFET41hは、高位電源側端子49と負荷側端子48とを接続している。高位電源側端子49からMOSFET41hのチャンネルを通じて負荷側端子48に達する主電流経路の電流はMOSFET41hのチャンネルスイッチングにより断続される。
【0033】
第1ダイオード42hは、MOSFET41hの寄生ダイオードであるため、破線で略示される半導体チップ内にてMOSFET41hのチャンネルに対して逆並列に接続されている。高位電源側端子49から第1ダイオード42hを通じて負荷側端子48に達する電流経路を以下、第1転流経路と呼ぶ。
【0034】
第2ダイオード43hは、ショットキーダイオードであり、インダクタンス素子44hと直列に接続されている。第2ダイオード43h及びインダクタンス素子44hは、寄生ダイオードである第1ダイオード42hを内蔵するMOSFET41hと並列に接続されている。第2ダイオード43hは、いわゆるフライホイルダイオードであって、MOSFET41hに対して周知のように逆並列に接続されている。高位電源側端子49から第2ダイオード43h及びインダクタンス素子44hを通じて負荷側端子48に達する電流経路を以下、第2転流経路と呼ぶ。
【0035】
MOSFET41hの高位電源側端子49は、正確には、MOSFET41hのドレイン電極側と、直流電源46の正極側と、第2ダイオード43hのカソード電極側とが接続される分岐点により構成される。同じく、MOSFET41hの負荷側端子48は、正確には、MOSFET41hのソース電極側と、誘導性負荷47の低電位端側と第2ダイオード43hのアノード電極側とが接続される分岐点を意味する。
【0036】
(下アームスイッチ)
下アームスイッチは、直流電源46の負極端に接続される低位電源側端子50と、誘導性負荷47の一端に接続される負荷側端子51と、MOSFET41lと、第1ダイオード42lと、第2ダイオード43lと、インダクタンス素子44lとにより構成されている。
【0037】
MOSFET41lは、低位電源側端子50と負荷側端子51とを接続している。負荷側端子51からMOSFET41lのチャンネルを通じて低位電源側端子50に達する主電流経路の電流はMOSFET41lのチャンネルスイッチングにより断続される。
【0038】
第1ダイオード42lは、MOSFET41lの寄生ダイオードであるため、破線で略示される半導体チップ内にてMOSFET41lのチャンネルに対して逆並列に接続されている。負荷側端子51から第1ダイオード42hを通じて低位電源側端子50に達する電流経路を以下、第1転流経路と呼ぶ。
【0039】
第2ダイオード43lは、ショットキーダイオードであり、インダクタンス素子44lと直列に接続されている。第2ダイオード43l及びインダクタンス素子44lは、寄生ダイオードである第1ダイオード42lを内蔵するMOSFET41lと並列に接続されている。第2ダイオード43lは、いわゆるフライホイルダイオードであって、MOSFET41lに対して周知のように逆並列に接続されている。負荷側端子51から第2ダイオード43l及びインダクタンス素子44lを通じて低位電源側端子50に達する電流経路を以下、第2転流経路と呼ぶ。
【0040】
MOSFET41lの低位電源側端子50は、正確には、MOSFET41lのソース電極側と、直流電源46の負極側と、第2ダイオード43lのカソード電極側とが接続される分岐点により構成される。同じく、MOSFET41lの負荷側端子51は、正確には、MOSFET41lのドレイン電極側と、誘導性負荷47の低電位端側と第2ダイオード43lのアノード電極側とが接続される分岐点(接続点)を意味する。
【0041】
図1において、Sは破線で示す半導体パッケージに収容されたMOSFET41h、41lのソース端子、Dは同じく破線で示す半導体パッケージに収容されたMOSFET41h、41lのドレイン端子である。
【0042】
ショットキーダイオードにより構成される第2ダイオード43h、43lは、寄生ダイオードである第1ダイオード42h、42lよりも短い逆回復時間をもつ。なお、第2ダイオード43h、43lを接合ダイオードで構成してもよい。ただし、この場合には、よく知られているように、接合ダイオードのpn接合近傍の耐圧層にAu、Ptなどの重金属をドープすることにより、第2ダイオード43h、43lの小数キャリアのライフタイムを減少させ、逆回復時間を短縮してファストリカバリダイオードとすることが好適である。ショットキー接合ダイオードの順方向オンしきい値電圧値は、pn接合ダイオードのそれよりも小さいため、寄生ダイオードである第1ダイオード42hへのフライホイル電流を低減することができ、その結果として、インダクタンス素子44hのインダクタンス値を小さくすることができる。その他、第2ダイオード43hとして、ショットキー接合ダイオードとpn接合ダイオードとを並列接続して構成してもよい。第2ダイオード43hとして用いるショットキー接合ダイオードの耐圧特性を改善するために、ジャンクション・バリア・ショットキーダイオードを採用しても良い。
【0043】
(動作説明)
この実施例のハーフブリッジの動作原理を説明するために、上アームスイッチ(ハイサイドスイッチ)のスイッチング動作を図2を参照して説明する。
【0044】
時点t1以前には、MOSFET41h、41lがともにオフ状態(デッドタイム状態)であり、誘導性負荷47の磁気エネルギーによる負荷電流が、MOSFET41hの寄生ダイオードである第1ダイオード42hと第2ダイオード43hとを通じてMOSFET41h、41lのソース電極側からMOSFET41h、41lのドレイン電極側に流れている。
【0045】
この負荷電流は、第1ダイオード42hと第2ダイオード43hとに分配される。一例いおいて、第1ダイオード42h、42lの特性を調整することにより、第1ダイオード42hの電流と第2ダイオード43hの電流を略等しくすることが好適である。他例において、第2ダイオード43hの電流を第1ダイオード42hの電流よりも大きくしてもよい。このフライホイル電流により、インダクタンス素子44hには、電流量に応じた磁気エネルギーが蓄積される。
【0046】
時点t1において、下アームスイッチ(ローサイドスイッチ)のMOSFET41lがオンし、そのチャンネルに電流が流れる。これにより、いままで上アームスイッチの第1ダイオード42h及び第2ダイオード43hに流れていたフライホイル電流がそれぞれ減少する。
【0047】
第2ダイオード43hが存在する第2転流経路の電流減少率は、インダクタンス素子44hの存在のため、第1ダイオード42hをもつ第1転流経路の電流減少率よりも小さい。このため、時点t2にて第1ダイオード42hの順方向電流が0になった後も、第2ダイオード43hにはフライホイル電流がまだ流れる。接合ダイオードである第1ダイオード42hには、時点t2から時点t4まで逆回復電流がMOSFET41hのドレイン電極側からソース電極側へ流れ、この逆回復電流は、時点t3にて最大となる。
【0048】
結局、時点t2〜t4の期間に、上記逆回復電流irから、第2転流経路におけるインダクタンス素子44hの磁気エネルギーによるフライホイル電流i2を差し引いた電流差ir−i2が、MOSFET41lのチャンネルに流れる。時点t2〜t4は、MOSFET41lのオン立ち上がり期間であるため、そのチャンネル抵抗はその後の定常的なオン状態におけるチャンネル抵抗よりも高い。したがって、インダクタンス素子44hを無視できる従来においては、逆回復電流irによりMOSFET41lに追加的なオーム損失(電流の2乗×チャンネル抵抗)が発生する。言い換えると、MOSFET41lのチャンネル両端の電圧は、直流電源46の電源電圧から略0Vまで低下するが、時点t2〜t4の間においてMOSFET41lのチャンネル両端の電圧は十分に大きい。この期間のオーム損失は、電圧×電流となる。
【0049】
これに対して、この実施形態では、時点t2〜t4において、逆回復電流irがフライホイル電流i2だけ減少するため、このMOSFET41lのオーム損失を低減することができる。
【0050】
なお、下アームスイッチ(ローサイドスイッチ)の第1ダイオード42l、第2ダイオード43lにフライホイル電流が流れ、上アームスイッチのMOSFET41hをオンする場合における損失低減原理も上記と同じであるため、その説明は省略される。
【0051】
図2において、破線は、インダクタンス素子44hが無視し得る従来の場合の電流波形を示し、実線はインダクタンス素子44hがあるこの実施形態の電流波形を示す。図2の破線では、第2ダイオード43hとしてショットキーダイオードを仮定しているため、その逆回復電流は無いとしている。
【0052】
(等価回路の説明)
図1にて本発明の原理を説明したが、より実際に即した動作、等価回路形態を図3を参照して説明する。図3は、時点t2〜t4における第1転流経路及び第2転流経路の状態を示す。irは時点t2〜t4に第1転流経路を流れる逆回復電流、i2は時点t2〜t4にインダクタンス素子44hの蓄積磁気エネルギーにより第2転流経路を流れるフライホイル電流である。
【0053】
r1は第1転流経路の抵抗、L1は第1転流経路のインダクタンス、r2は第2転流経路の抵抗、L2は第2転流経路のインダクタンスであって、インダクタンス素子44hのインダクタンスを構成している。逆回復電流irは、抵抗r1及びインダクタンスL1を通じて流れる。電流i2は、インダクタンス素子44hの蓄積磁気エネルギー(0.5L2×i2×i2)と、第2ダイオード43hの順方向電圧降下ΔVと抵抗r2とにより決定される。
【0054】
これらの各回路パラメータを調整することにより、時点t2〜t4における逆回復電流irの平均値と、フライホイル電流i2の平均値が等しくなるように調整される。これにより、電流差ir−i2の平均値を略0とすることができるので、電流差ir−i2による上記したMOSFET41lのオーム損失を良好に低減することができる。その他、電流差ir−i2の平均値が略0となるように、各回路パラメータを調整してもよい。
【0055】
(インダクタンスL1、L2と逆回復電流irと第2ダイオード電流i2との関係)
インダクタンスL1、L2の関係を図4を参照して説明する。図4は、逆回復電流irのうち第2ダイオード43hに流れる割合が、インダクタンスL2とインダクタンスL1とを種々変更した場合にどのように変化するかを調べたものである。つまり、逆回復電流irと第2ダイオード電流i2との比率とインダクタンスL1、L2の関係を以下に説明する。
【0056】
ただし、第1ダイオード42hと第2ダイオード43hとの順方向特性は等しいと仮定する。図4は、時点t2〜t4における逆回復電流irの平均値を基準とした場合の、時点t2〜t4における第2ダイオード43hのフライホイル電流i2の平均値の割合を示す。図4から、インダクタンス44hのインダクタンス値L2が、大きいほど、第1転流経路のインダクタンス値L1が小さいほど、この割合は大きくなることがわかる。
【0057】
図4から、第1ダイオード42hのインダクタンス値L1を小さく、第2ダイオード43hのインダクタンス値L2を3〜7倍、更に好適には、4〜6倍とすることが電流差ir−i2を低減するために好適であることがわかる。第1転流経路のインダクタンスL1が10nH以下である通常の上アームスイッチでは、インダクタンスL2は数十nH程度となる。したがって、インダクタンス素子44hは、配線の寄生インダクタンスで構成することが可能である。第1ダイオード42hのインダクタンス値L1に対する第2ダイオード43hのインダクタンス値L2の割合が、上記値より小さい場合には、時点t2〜t4における電流差ir−i2を低減するのに不十分となり、MOSFET41lの損失が増大する。
【0058】
第1ダイオード42hのインダクタンス値L1に対する第2ダイオード43hのインダクタンス値L2の割合が、上記値より大きい場合には、MOSFET41lがオフして、フライホイル電流が第1ダイオード42h及び第2ダイオード43hに流れ始める転流期間の初期において、インダクタンス素子44hが第2ダイオード43hへのフライホイル電流i2の通電を抑制するため、第1ダイオード42hに流れるフライホイル電流の割合が増大する。このことは、その後に流れる第1ダイオード42hの逆回復電流が増大することを意味する。更に、第2ダイオード43hに流れるフライホイル電流が減少するため、インダクタンス素子44hに蓄積される磁気エネルギーが減少する。このことは、その後のフライホイル電流i2の減少により、時点t2〜t4における電流差ir−i2が増大し、時点t2〜t4におけるMOSFET41lの抵抗損失が増大することを意味する。
【0059】
結局、インダクタンス素子44hのインダクタンス値L2は時点t2〜t4の終期に第2ダイオード43hの電流値を定常状態に近い値になるように設定することが好適である。
【0060】
(回路実装例1)
寄生ダイオードである第1転流ダイオードを内蔵するMOSFET41hを縦型MOSFETチップ81により構成した例を図5、及び図6に示す。縦型MOSFETチップ81の表面にはソース電極82及びゲート電極83が、裏面には図略のドレイン電極が形成されている。810は、複数のリード端子84〜87を有するパッケージであり、縦型MOSFETチップ81のソース電極82は、リード端子85、87にボンディングワイヤ89により接続されている。88は縦型MOSFETチップ81のドレイン電極が接合される導体であり、導体88はボンディングワイヤによりリード端子86に接続されている。同じく、ゲート電極83は、ボンディングワイヤによりリード端子84に接続されている。
【0061】
この実施形態では、ソース電極82に接続されるリード端子85、87のうちの1つ(ここでは85)を、図略の第2ダイオード43hのアノード電極に接続し、リード端子85、87のうちの他の1つ(ここでは87)を、MOSFET41lを内蔵する図略のパッケージの各リード端子のうちドレイン電極端子に接続されるリード端子と、誘導性負荷47に接続される端子とに接続している。
【0062】
このようにすると、MOSFET41hのソース電極と、第2ダイオード43hのアノード電極と、MOSFET41lのドレイン電極及び誘導性負荷47との分岐部が、MOSFET41hのソース電極82となる。したがって、寄生ダイオードである第1ダイオード42hをもつ第1転流経路のインダクタンス値を最小とすることができる。
【0063】
これに対して、第1ダイオード42hを含む第2転流経路は、ソース電極82からリード端子87を通じて図略の第2ダイオード43hのアノード電極にいたる配線の配線インダクタンスをもつことになる。この配線インダクタンスは、配線の形状や配置状態により影響されるが、通常1mmあたり1nH程度になる。したがって、リード端子87と外部の第2ダイオード43hのアノード電極端子との間の配線長を数cm程度の範囲で調整して必要なインダクタンス値をえることができる。
【0064】
なお、市販のディスクリート縦型MOSFETパッケージのソース電極用のリード端子と、ドレイン電極に接続されるリード端子との間には、第1転流経路の配線インダクタンスL1として10nH程度の寄生インダクタンスが存在する。この場合には、このパッケージのソース電極に接続されるリード端子又はその近傍に、上記した分岐部を設け、この分岐部に40〜60nHのインダクタンス素子を通じて第2ダイオード43hのアノードを接続すればよい。このインダクタンス素子は直線的な配線により作製してもよく、あるいは渦巻き状の配線により作製してもよく、さらには特別のコイルにより構成してもよい。分岐部がパッケージのソース電極用のリード端子近傍に配置されるため、第1転流経路の配線インダクタンスを減らすことができる。
【0065】
(回路実装例2)
第2ダイオード43hをなすフライホイルダイオードチップ911を、MOSFET41hと同一パッケージに実装した例を図7を参照して説明する。縦型MOSFETチップ91の表面にはソース電極92及びゲート電極93が、裏面には図略のドレイン電極が形成されている。913は、複数のリード端子94〜98を有するパッケージであり、パッケージ913内の導体99には縦型MOSFETチップ91のドレイン電極と、第2ダイオード43hをなすフライホイルダイオードチップ911のカソード電極とが接合されている。
【0066】
縦型MOSFETチップ91のソース電極92は、リード端子95、97にボンディングワイヤにより接続されている。リード端子94はゲート電極93に、リード端子95、97はソース電極に、リード端子96は導体99に、リード端子98はフライホイルダイオードチップ911のアノード電極912に、それぞれボンディングワイヤ910により接続されている。
【0067】
この実施形態では、リード端子97とリード端子98との間にインダクタンス素子44hを接続すればよい。この実施形態によれば、アノード電極912とリード端子98との間の配線インダクタンス、並びに、リード端子97とソース電極92との間の配線インダクタンスのばらつきを高精度に決定できるため、インダクタンス素子44hのばらつきを減らすことができる。
【0068】
(回路実装例3)
回路実装例3を図8を参照して説明する。図8は、図7において、ソース電極92とアノード電極912とをインダクタンス素子44hを通じて接続するためのリード端子97、98を省略し、その代わりに、ソース電極92とアノード電極912とをボンディングワイヤ110により直接接続したものである。この実装例では、この実施形態では、MOSFET41hをなす縦型MOSFETチップ91と、第2ダイオード43hをなすフライホイルダイオードチップ911とが同一パッケージに実装され、第1転流経路及び第2転流経路が、同一パッケージ内に作り込まれるため、インダクタンスL1、L2を精密に作り込むことができる。
【0069】
(回路実装例4)
回路実装例4を図9を参照して説明する。図9は、図7において、アノード電極912に接続するためのリード端子98を省略し、その代わりに、アノード電極912をボンディングワイヤ910によりリード端子97に接続したものである。ただし、リード端子97は外部には接続されない。このようにすれば、インダクタンス素子44hのインダクタンス値を増大することができる。
【0070】
(回路実装例5)
回路実装例5を図10を参照して説明する。図10は、図9において、空きのリード端子98の代わりに、導体99に隣接配置されてパッケージ913に内蔵された導体1111に、ボンディングワイヤ1110、1112を通じて、縦型MOSFETチップ91のソース電極92及び第1ダイオード42hをなすフライホイルダイオードチップ911のアノード電極912を接続した点に、その特徴がある。これにより、第2ダイオード43hをなすフライホイルダイオードチップ911と直列接続されるインダクタンス素子44hのインダクタンスL2を大きくし、第1ダイオード42hと直列接続されるインダクタンスL1を最小とすることができる。また、インダクタンスL1、L2がパッケージ913内に作り込まれるため、それらのばらつきを低減することができる。なお、導体1111の形状を種々変更することにより、インダクタンスL2や抵抗r2の大きさを容易かつ高精度に調整することができる。
【0071】
(回路実装例6)
回路実装例6を図11を参照して説明する。図11は図10において、導体99と導体1111とを絶縁基板1112上に形成し、導体1111をフライホイルダイオードチップ911を囲んで配置した例である。導体1111の両端はボンディングワイヤ1210、1210によりアノード電極912及びソース電極92に個別に接続されている。このようにすれば、コンパクトにインダクタンスL2を銅題することができる。
【0072】
(変形態様1)
上記各回路実装例では、MOSFET41hと第2ダイオード43hとを別のチップで構成したが、それらを一体に形成しても良いことはもちろんである。この場合、MOSFET41hのソース電極と、第2ダイオード43hのアノード電極とは、別々に形成することが好適である。更に、このチップに、インダクタンス素子44hを更に集積してもよい。
【0073】
(変形態様2)
上記各回路実装例では、縦型MOSFETチップ91のソース電極と第2ダイオード43hのアノード電極との間に、インダクタンス素子44hを配置したが、縦型MOSFETチップ91のドレイン電極と第2ダイオード43hのカソード電極との間にインダクタンス素子44hを設けても良い。つまり、インダクタンスL2は、縦型MOSFETチップ91のソース電極側の電流分岐点と、ドレイン電極側の電流分岐点との間の第1転流経路全体のインダクタンスにより構成される。
【0074】
(変形態様3)
上記各回路実装例では、縦型MOSFETチップ91の寄生ダイオードである第1ダイオード42hの逆回復電流の低減を行ったが、縦型MOSFETチップ91の代わりに同様の小数キャリア蓄積効果をもつ種々のパワー半導体スイッチング素子の逆回復電流の低減にも、上記第2ダイオード43h及びインダクタンス素子44hからなる第2転流経路を用いることができる。この種のパワー半導体スイッチング素子として、特に高耐圧のDMOSFET、スーパージャンクション(SJ)構造のMOSFETがある。なお、SJ構造のMOSFETは逆回復電流の電流変化率が大きいため、第2転流経路の抵抗r2を小さくして、フライホイル電流i2の変化率を大きくすることが好適である。
【0075】
その他、図12に示すように、IGBTにたとえばファストリカバリーダイオードからなる第1ダイオード42hを逆並列接続する場合には、更に上記した第2ダイオード43hとインダクタンス素子44hとを直列接続して、第1ダイオード42hと並列接続することにより、この第1ダイオード42hの逆回復電流の悪影響を低減することができる。
【0076】
(変形態様4)
上記各回路実装例では、ハーフブリッジ回路の上アームスイッチ(ハイサイドスイッチ)に本発明を適用した実施形態を説明したが、本発明の第2ダイオード43hとインダクタンス素子44hとからなる第2転流経路は、下アームスイッチにも適用することができ、ハーフブリッジ回路を複数並列接続してなるインバータ回路にも適用でき、DCDCコンバータなどのパワースイッチング回路にも適用できることは明らかである。
【0077】
(MOSFET41lの電流実測波形)
寄生ダイオードである第1ダイオード42hをもつMOSFET41hに対して、第2ダイオード43hとインダクタンス素子44hとが直列接続された第2転流経路を設けた場合(A)、第2ダイオード43hだけの第2転流経路を設けた場合(B)、第2転流経路を設けない場合(C)の、MOSFET41lのオン立ち上がり電流波形を図13に示す。インダクタンス素子44hの設置により逆回復電流を良好に抑制できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態1のハーフブリッジを示す回路図である。
【図2】図1のハーフブリッジの電流波形図である。
【図3】図1の逆回復電流が流れる場合の第1転流経路及び第2転流経路の等価回路図である。
【図4】インダクタンスL1、L2の大きさと、逆回復電流irと第2ダイオードのフライホイル電流i2との割合との関係を示す図である。
【図5】回路実装例1のモジュールの模式平面図である。
【図6】図5の模式斜視図である。
【図7】回路実装例2のモジュールの模式平面図である。
【図8】回路実装例3のモジュールの模式平面図である。
【図9】回路実装例4のモジュールの模式平面図である。
【図10】回路実装例5のモジュールの模式平面図である。
【図11】回路実装例6のモジュールの模式平面図である。
【図12】IGBTに第1ダイオード、第2ダイオード及びインダクタンス素子を設けた場合を示す回路図である。
【図13】各種形態における下アーム電流の立ち上がり波形を示す電流波形図である。
【符号の説明】
【0079】
42h 寄生ダイオード(第1ダイオード)
42l 寄生ダイオード(第1ダイオード)
43h 第2ダイオード
43l 第2ダイオード
44h インダクタンス(インダクタンス素子)
44l インダクタンス(インダクタンス素子)
46 直流電源
47 誘導性負荷
48 負荷側端子
49 高位電源側端子
50 低位電源側端子
51 負荷側端子
81 チップ
82 ソース電極
83 ゲート電極
84〜87 リード端子
88 導体
89 ボンディングワイヤ
91 チップ
92 ソース電極
93 ゲート電極
94〜98 リード端子
99 導体
110 ボンディングワイヤ
1110 ボンディングワイヤ
1111 導体
1112 絶縁基板
1210 ボンディングワイヤ
910 ボンディングワイヤ
911 フライホイルダイオードチップ
912 アノード電極
913 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力源側に接続される電源側端子と、誘導性負荷に接続される負荷側端子と、前記電源側端子と前記負荷側端子との間を流れるスイッチ電流を断続する半導体スイッチング素子と、
前記半導体スイッチング素子に対して逆並列接続される第1ダイオードを有して前記半導体スイッチング素子のオフ時に誘導性負荷の転流電流を前記スイッチ電流と逆向きに流す第1転流経路と、
を備えるパワースイッチング回路において、
前記半導体スイッチング素子に対して逆並列接続される第2ダイオードを有して前記第1転流経路と並列接続されるとともに、前記半導体スイッチング素子のオフ時に前記スイッチ電流と逆向きに前記誘導性負荷の転流電流を流す第2転流経路を有し、
前記第2ダイオードは、前記第1ダイオードよりも短い逆回復時間を有し、
前記第2転流経路のインダクタンスは、前記第1転流経路のインダクタンスよりも大きいことを特徴とするパワースイッチング回路。
【請求項2】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記逆回復電流が前記第1ダイオードに流れる期間に前記第2転流経路を前記逆回復電流と逆向きに流れて前記第2転流経路のインダクタンスの磁気エネルギーを消勢する前記第2転流経路の磁気エネルギー消勢電流の平均値は、前記逆回復電流の平均値に略等しく設定されているパワースイッチング回路。
【請求項3】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記第2転流経路のインダクタンスは、前記第1転流経路のインダクタンスの2〜8倍に設定されているパワースイッチング回路。
【請求項4】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記第2転流経路のインダクタンスは、前記第1転流経路のインダクタンスの4〜6倍に設定されているパワースイッチング回路。
【請求項5】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記第2転流経路のインダクタンスは、配線インダクタンスにより構成されているパワースイッチング回路。
【請求項6】
請求項5記載のパワースイッチング回路において、
前記第2転流経路の配線長は、前記第1転流経路の配線長よりも大きく形成されているパワースイッチング回路。
【請求項7】
請求項6記載のパワースイッチング回路において、
前記半導体スイッチング素子、第1ダイオード及び第2ダイオードは同一基板に実装されて同一パッケージに収容され、前記第1転流経路と前記第2転流経路との接続点は、前記パッケージ内に配置されているパワースイッチング回路。
【請求項8】
請求項6又は7記載のパワースイッチング回路において、
前記半導体スイッチング素子及び第1ダイオードは同一の半導体チップに集積され、
前記第2ダイオードは前記半導体チップとは異なる半導体チップに作成されて前記半導体スイッチング素子及び第1ダイオードと同一パッケージに収容されているパワースイッチング回路。
【請求項9】
請求項6又は7記載のパワースイッチング回路において、
前記半導体スイッチング素子、第1ダイオード及び第2ダイオードは、同一の半導体チップに集積されているパワースイッチング回路。
【請求項10】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記半導体スイッチング素子は、前記第1ダイオードとしての寄生ダイオードをもつMOSFETにより構成され、
前記第1転流経路と前記第2転流経路との接続点は、前記MOSFETが形成された半導体チップ表面に形成された電極により構成されているパワースイッチング回路。
【請求項11】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記第1ダイオードの逆回復電流の積分値と、前記第1ダイオードの逆回復電流通電期間の前記第2電流経路に流れるインダクタンス減勢方向の電流の積分値は略等しくされているパワースイッチング回路。
【請求項12】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記第1ダイオードは、接合ダイオードからなり、前記第2ダイオードは、ショットキーダイオードからなるパワースイッチング回路。
【請求項13】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記第1ダイオードは、接合ダイオードからなり、前記第2ダイオードは、ファストリカバリダイオードからなるパワースイッチング回路。
【請求項14】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記第1ダイオードは、ファストリカバリダイオードからなり、前記第2ダイオードは、ショットキーダイオードからなるパワースイッチング回路。
【請求項15】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記第1ダイオードは、前記半導体スイッチング素子をなすSJ−MOSFETの寄生ダイオードからなるパワースイッチング回路。
【請求項16】
請求項1記載のパワースイッチング回路において、
前記半導体スイッチング素子及び前記第1ダイオードは、前記電源側端子または前記負荷側端子として複数の電極端子をもつ同一のパッケージに実装され、前記第2ダイオードは、配線を通じて前記複数の電極端子の一部に接続されるパワースイッチング回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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