説明

パワーステアリング装置

【課題】電動モータにおける異音の発生を抑制したパワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】モータ回転軸24の一端側にウォームギヤ機構を、他端側にレゾルバ35をそれぞれ設けるとともに、モータ回転軸24のうちモータ回転子36を挟んでレゾルバ35側の部分を第1ボールベアリング46で、モータ回転軸24のうちモータ回転子36を挟んでウォームギヤ機構側の部分を第2ボールベアリング54でそれぞれ回転可能に支持し、第2ボールベアリング54のアウターレースをウェーブワッシャ64によって第1ボールベアリング46側へ付勢することにより、第1ボールベアリング46と第2ボールベアリング54とにそれぞれ予圧を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動モータを動力源としたパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパワーステアリング装置に関する技術ではないが、車載の電動モータにおける軸受構造として例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1に記載の技術では、一対のボールベアリングによって回転子の軸方向両端部をそれぞれ回転可能に支持しており、上記回転子を軸方向一方側へ付勢することにより、当該回転子の軸方向におけるがたつきを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−48904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、上記回転子の軸方向におけるがたつきは抑制しているものの、上記回転子の径方向のがたつきについては考慮されておらず、上記回転子の回転時に電動モータから異音が発生する虞があり、好ましくない。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、駆動源となる電動モータからの異音の発生を抑制したパワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特に、モータ回転軸の一端側に減速機構を、他端側に回転位置センサをそれぞれ設けるとともに、モータ回転軸のうちモータ回転子を挟んで回転位置センサ側の部分を第1ボールベアリングで、上記モータ回転軸のうちモータ回転子を挟んで減速機構側の部分を第2ボールベアリングでそれぞれ回転可能に支持し、上記第2ボールベアリングのアウターレースを付勢部材によって上記第1ボールベアリング側へ付勢することにより、上記第1ボールベアリングと第2ボールベアリングとにそれぞれ予圧を付与していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記付勢部材により、上記第1ボールベアリングおよび第2ボールベアリングのそれぞれに予圧が付与されるため、上記電動モータからの異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態として電動パワーステアリング装置を示す概略図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図1のB−B断面図。
【図4】図3に示すオルダム継手の分解斜視図。
【図5】図3に示すモータ制御装置の軸方向に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜5は本発明の好適な実施の形態を示す図であって、そのうち図1は電動パワーステアリング装置の全体構成を示す概略図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図である。なお、図3では、後述するウォームホイール22の図示を便宜上省略している。
【0010】
図1,2に示すように、ステアリングホイールSWと一体に回転するステアリングシャフト1は、ユニバーサルジョイント2a,2bおよび中間シャフト3を介してピニオンシャフト4に連結されている。ピニオンシャフト4は、周知のように、ステアリングホイールSW側の入力軸5と、その入力軸5の下端に図示外のトーションバーをもって同軸連結され、外周面にピニオンギヤ6aが形成された出力軸6と、を備えていて、出力軸6は、図示外の車体に支持固定されたステアリングギヤハウジング7のうち上下方向に延びる略円筒状のピニオン収容部7aを挿通しつつ、ステアリングギヤハウジング7のうち車体左右方向に延びる略円筒状のラック収容部7bに収容されたラック軸8と噛合している。つまり、ピニオンシャフト4とラック軸8とによっていわゆるラックピニオン式のステアリングギヤ9を操舵機構として構成している。なお、図2の符号10は、ピニオンシャフト4との噛み合いを強める方向にラック軸8を付勢するラックリテーナーを示している。
【0011】
そして、運転者がステアリングホイールSWを回転操作すると、そのステアリングホイールSWに同期して入力軸5が回転することで上記トーションバーが捩られ、そのトーションバーの弾性力により出力軸6が入力軸5に追従して回転する。その上で、出力軸6の回転運動がラックピニオン機構によってラック軸8の直線運動に変換され、当該ラック軸8の両端にタイロッド11およびナックルアーム12を介してそれぞれ接続された転舵輪13が転舵されることになる。
【0012】
また、ステアリングギヤハウジング7のピニオン収容部7aのうち上方側の開口端には略円筒状のセンサハウジング14がセンサハウジング固定ボルト15によって固定されていて、そのセンサハウジング14内には、上記トーションバーの捩れ変形に基づく入力軸5と出力軸6との相対回転によって操舵トルクを検出するトルクセンサTSが収容されている。
【0013】
トルクセンサTSは、出力軸6の上端にかしめ固定された外筒16と、その外筒16の内周側となる位置で入力軸14に固定された内筒17と、外筒16の外周側に設けられたコイルユニット18と、を備えていて、上記トーションバーが捩られると、外筒16と内筒17にそれぞれ形成されたスリットの重合面積が変化して磁束が増減するようになっている。そして、このような磁束の増減は、インピーダンス検出回路19によってコイルユニット18のインピーダンスの差として検出され、その情報が後述する電子コントロールユニット21に出力されることになる。
【0014】
他方、図1,2のほか図3に示すように、出力軸6の下端部には、減速機構であるウォームギヤ機構20を介して操舵アシスト用の電動モータMの回転駆動力が伝達されるようになっている。電動モータMは、当該電動モータMを挟んでウォームギヤ機構20とは反対側の位置に設けられた電子コントロールユニット21(以下、ECUと略称する。)により、トルクセンサTSの出力信号のほか、後述するレゾルバ35の出力信号や例えば車速等の車両の運転状態を示す信号に基づいて駆動制御されるようになっていて、このように電動モータMを駆動制御することにより、運転者の操舵トルクに応じた操舵アシスト力を出力軸6に付与し、運転者による操舵を補助することになる。なお、詳しくは後述するが、電動モータMとECU21は、それらの筐体の一部を共有することでモータ制御装置MCとして一体的に構成されている。
【0015】
ウォームギヤ機構20は、出力軸6の下端部に一体的に固定され、外周に歯部22aを有するウォームホイール22と、そのウォームホイール22の歯部22aと噛合する歯部23aが軸方向の所定範囲に形成された入力軸としてのウォームシャフト23とを、ウォームギヤハウジング26に収容することで構成されている。なお、ウォームギヤハウジング26は、ウォームギヤハウジング固定ボルト25をもってピニオン収容部5aのうち下方側の開口端に固定されている。
【0016】
ウォームギヤハウジング26は、ウォームホイール22を収容する略偏平円筒状のウォームホイール収容部26aと、そのウォームホイール収容部26aに軸方向の所定の範囲が臨むように形成され、ウォームシャフト23を車体左右方向に沿った姿勢で収容する略有底円筒状のウォームシャフト収容部26bと、を備えている。そして、ウォームシャフト23の軸方向両端部が一対のボールベアリング27,28を介してウォームギヤハウジング26のウォームシャフト収容部26bに軸支されているとともに、そのウォームシャフト23の軸方向一端は、電動モータMのモータ回転軸24に軸継手としてのオルダム継手29を介して同軸連結されている。なお、図2の符号26cは、ウォームホイール収容部26aのうちステアリングギヤハウジング7とは反対側の開口を閉蓋するエンドカバーである。
【0017】
図4は、オルダム継手29をモータ回転軸24側から見た分解斜視図である。なお、図4では、ウォームシャフト23およびモータ回転軸24をそれぞれ簡略化して図示してある。図3のほか図4に示すように、オルダム継手29は、モータ回転軸24のうちウォームシャフト23側の端部に一体的に圧入固定された外歯部材30と、ウォームシャフト23のうちモータ回転軸24側の端部に一体回転可能に結合され、外歯部材30を受容する内歯部材31と、外歯部材30と内歯部材31との間に介装された可撓性材料からなる緩衝部材32と、を備えている。
【0018】
外歯部材30は、モータ回転軸24に圧入固定された略円筒状の基部30aと、その基部30aの周方向で等間隔に複数設けられ、基部30aから径方向外側へ向かって一体的に延出する外歯30bと、を備えている。
【0019】
内歯部材31は、略有底円筒状に形成され、ウォームシャフト23にセレーション結合された基部31aと、その基部31aの周方向で等間隔に複数設けられ、基部31aから径方向内側へ向かって一体的に延出する内歯31bと、を備えている。
【0020】
そして、外歯部材30と内歯部材31との間に緩衝部材32を介在させつつ、内歯部材31内に外歯部材30を挿入することでオルダム継手29が構成されている。すなわち、オルダム継手29は、モータ回転軸24とウォームシャフト23との接近離間方向の相対変位を許容しつつ、各外歯30bと各内歯31bとの緩衝部材32を介した噛み合いにより、モータ回転軸24の回転をウォームシャフト23に伝達するようになっている。
【0021】
他方、図3に示す電動モータMは、上述したようにECU21と筐体の一部を共有することでそのECU21と一体的に構成され、この一体構成してなるモータ制御装置MCが、ウォームギヤハウジング26のうちウォームシャフト収容部26bの開口端にモータ制御装置固定ボルト33によって取付固定されている。このモータ制御装置MCの軸方向に沿った断面を図5に示す。
【0022】
図5に示すように、電動モータMは、モータハウジング34と、そのモータハウジング34内の後述するモータ要素収容空間34aを挿通するモータ回転軸24と、通電によりモータ回転軸24を回転駆動するモータ要素MBと、を備えていて、モータ回転軸24のうちウォームシャフト23とは反対側の端部の外周側には、後述するレゾルバ35が設けられている。
【0023】
モータ要素MBは、モータ回転軸24の外周に圧入され、かつ、図示外のキー等によって回り止めが施された略円筒状のモータ回転子36と、そのモータ回転子36の外周側に所定の径方向隙間を介して非接触状態に配置された略円筒状のモータ固定子37と、から構成され、ECU21からモータ固定子37へ供給される電力により、モータ回転子36がモータ回転軸24とともに回転するようになっている。
【0024】
モータハウジング34は、第1ハウジング部材38と第2ハウジング部材39とに軸方向で二分されている。第2ハウジング部材39は、ウォームギヤハウジング26のうちウォームシャフト収容部26bの開口端にモータ制御装置固定ボルト33をもって固定され(図3参照)、ウォームギヤハウジング26とは反対側に向けて開口する略有底円筒状を呈している一方、第1ハウジング部材38は、第2ハウジング部材39の開口端に第2ハウジング部材固定ボルト40をもって固定され、略矩形筒状を呈している。そして、第1ハウジング部材38のうち軸方向の中間部に形成された隔壁38aと第2ハウジング部材39の底壁39aとの間に、モータ要素MBを収容するモータ要素収容空間34aが形成されている。
【0025】
具体的には、第2ハウジング部材39の周壁39bの長さは、モータ固定子37の軸方向中心位置PよりもECU21側の位置にまで延びる長さに設定されていて、その周壁39bの先端部に形成されたフランジ部39cに、第1ハウジング部材38のうち第2ハウジング部材39側の開口端面38bが着座した状態で、第2ハウジング部材39と第1ハウジング部材38とが第1ハウジング部材固定ボルト40によって締結されている。換言すれば、第1ハウジング部材38のうち第2ハウジング部材39側の開口端面38bが、モータ固定子37の軸方向中央位置PよりもECU21側の位置に形成されている。そして、第2ハウジング部材39のうち周壁39bの内周面に、モータ固定子37が圧入固定されている。
【0026】
第1ハウジング部材38のうち第2ハウジング部材39とは反対側の開口は、ECUハウジング41によって閉蓋されている。ECUハウジング41には、電動モータMに供給する電流を生成するパワーモジュール42と、そのパワーモジュール42のうちMOS−FETに代表されるような図示外のスイッチング素子を駆動制御する制御回路としての制御モジュール43とが、電動モータM側から、制御モジュール43、パワーモジュール42の順で重合した状態で取り付けられている。すなわち、第1ハウジング部材38の隔壁38aとECUハウジング41との間に形成された制御回路収容空間44に制御モジュール43とパワーモジュール42とを収容することにより、ECU21が構成されている。なお、パワーモジュール42とモータ固定子37とは、第1ハウジング部材38の隔壁38aに貫通形成された端子挿通孔38cを通じて電気的に接続されている。
【0027】
また、第1ハウジング部材38のうち隔壁38aの中央部には、略円筒状の第1軸受収容部45がモータ要素収容空間34a側に向けて突出形成されている。その第1軸受収容部45には第1ボールベアリング46が収容され、モータ回転軸24のうちECU21側の端部がその第1ボールベアリング46によって回転自在に軸受支持されている。第1ボールベアリング46は、アウターレース47とインナーレース48との間に転動体としての鋼球49を複数設けてなるいわゆる深溝玉軸受である。
【0028】
そして、モータ回転軸24のうちECU21側の端部は、第1軸受収容部45の内周側を挿通して制御回路収容空間44に臨んでいて、制御回路収容空間44内に設けられた回転位置センサとしてのレゾルバ35に接続されている。つまり、レゾルバ35は、モータ回転子36と制御モジュール43との間の位置に設けられている。言い換えるならば、モータ回転軸24のうちモータ回転子36とレゾルバ35との間の軸方向位置に第1ボールベアリング46が設けられている。
【0029】
レゾルバ35は、モータ回転軸24のうちECU21側の端部に一体的に固定されたセンサ回転子としてのレゾルバロータ50と、そのレゾルバロータ50の外周側となる位置で第1ハウジング部材38の隔壁38aにセンサ固定子として固定された環状のレゾルバステータ51と、を備えていて、レゾルバステータ51は、レゾルバロータ50と一体に回転するモータ固定子37の回転位置に応じた検出信号を接続端子52を介して制御モジュール43へ出力するようになっている。
【0030】
一方、第2ハウジング部材39のうち底壁39aの中央部には、略円筒状の第2軸受収容部53がモータ要素収容空間34aに向けて突出形成され、その第2軸受収容部53に、モータ回転軸24のうちウォームシャフト23側の端部を回転自在に支持する第2ボールベアリング54が収容されている。第2ボールベアリング54は、アウターレース55とインナーレース56との間に転動体としての鋼球57を複数設けてなるいわゆる深溝玉軸受である。
【0031】
そして、モータ回転軸24のうちウォームシャフト23側の端部は、第2軸受収容部53を挿通してウォームギヤハウジング26のウォームシャフト収容部26b内にまで延びていて(図3参照)、そのウォームシャフト収容部26b内でオルダム継手29を介してウォームシャフト23に接続されている。
【0032】
さらに、モータ回転軸24の軸受構造についてより詳しく説明するに、モータ回転軸24は、当該モータ回転軸24のうち軸方向の中間部に形成され、外周側にモータ回転子36が一体的に固定された大径部58と、当該モータ回転軸24のうちレゾルバ35側の端部に形成され、且つ大径部58よりも小径な第1小径部59と、当該モータ回転軸24のうちウォームシャフト23側の端部に形成され、且つ大径部58よりも小径な第2小径部60と、を有する段付き形状を呈している。なお、第1小径部59と第2小径部60とは互いに同一の形状に形成されている。
【0033】
そして、第1ボールベアリング46のインナーレース48のうち第2ボールベアリング54側の端面48aが、モータ回転軸24のうち大径部58と第1小径部59との間に第1当接部として形成された第1段状部61に当接しているとともに、第2ボールベアリング54のインナーレース56のうち第1ボールベアリング46側の端面56aが、モータ回転軸24のうち大径部58と第2小径部60との間に第2当接部として形成された第2段状部62に当接している。
【0034】
他方、第1ボールベアリング46のアウターレース47のうち第2ボールベアリング54とは反対側の端面47aは、第1軸受収容部45の内周側に第3当接部として突出形成された円環状の突出部45aに当接しているとともに、第1ボールベアリング46のアウターレース47のうち第2ボールベアリング54側の端面47bは、第1軸受収容部45の内周面に位置規制部材として取り付けられたスナップリング63に当接している。つまり、突出部45aから離間する方向におけるアウターレース47の変位をスナップリング63が規制することにより、アウターレース47が、第1ハウジング部材38に対して軸方向で相対変位不能に位置決め固定されている。なお、図5の符号45bは、第1軸受収容部45の内周面に形成され、スナップリング63が嵌合する環状溝である。
【0035】
さらに、第2ボールベアリング54のアウターレース55は、付勢部材であるウェーブワッシャ64によって第1ボールベアリング46側へ向けて付勢されている。ウェーブワッシャ64は、第2ボールベアリング54のアウターレース55のうち第1ボールベアリング54とは反対側の端面55aと第2軸受収容部53の内周側に突出形成された円環状の突出部53aとの間に、軸方向で所定量だけ圧縮変形した状態で設けられ、その圧縮変形に基づく復元力により、第2ボールベアリング54のアウターレース55を第1ボールベアリング46側へ付勢している。
【0036】
すなわち、本実施の形態によれば、第2ボールベアリング54のアウターレース55が上述したように付勢されていることから、その第2ボールベアリング54のアウターレース55と各鋼球57およびインナーレース56を介してモータ回転軸24がレゾルバ35側へ向けて付勢されるとともに、そのモータ回転軸24の第1段状部61によって第1ボールベアリング46のインナーレース48がレゾルバ35側へ向けて付勢されることになる。その結果、第1ボールベアリング46および第2ボールベアリング54のそれぞれにアキシアル方向の予圧が付与され、それらの両ベアリング46,54の内部すきまがなくなる。これにより、モータ回転軸24の回転時における軸方向および径方向の振動が抑制され、電動モータMからの異音の発生を抑制することができる。
【0037】
ここで、図3に示すように、電動モータMからウォームギヤ機構20を介してピニオンシャフト4へ回転動力が伝達されると、特に電動モータMの回転方向が反転したときに、ウォームシャフト23は、ウォームホイール22から受ける反力によって両ボールベアリング27,28の持つ内部すきまの分だけ軸方向に変位することになる。
【0038】
そして、オルダム継手29がウォームシャフト23とモータ回転軸24との接近離間方向の相対変位を許容していることは上述したとおりであるから、ウォームシャフト23がモータ回転軸24から離間する方向に変位した場合には、当該ウォームシャフト23の推力がモータ回転軸24に伝達されることはない。
【0039】
一方、ウォームシャフト23がモータ回転軸24に接近する方向に変位した場合には、オルダム継手29がいわゆる底突き状態となって、モータ回転軸24がレゾルバ35側へ向けて押圧されることになる。
【0040】
しかしながら、本実施の形態では、ウェーブワッシャ64によってモータ回転軸24をレゾルバ35側へ付勢することにより、そのモータ回転軸24がレゾルバ35側へ向かう方向で第1,第2ボールベアリング46,54の内部すきまをなくしていることから、モータ回転軸24がウォームシャフト23によって押圧されても、当該モータ回転軸24がレゾルバ35側へ向かってさらに変位するようなことはない。これにより、レゾルバステータ51とレゾルバロータ50との軸方向の位置ずれが抑制され、レゾルバ35によるモータ回転子36の回転位置検出の精度が向上する。
【0041】
しかも、第1ボールベアリング46のアウターレース47は、スナップリング63により、第1ハウジング部材38に対して軸方向で相対変位不能に位置決め固定されているため、外部からモータハウジング34へ振動が入力された場合であっても、第1ボールベアリング46のアウターレース47が第1ハウジング部材38に対して軸方向で相対変位することがなく、レゾルバステータ51とレゾルバロータ50との軸方向の位置ずれのほか、電動モータMからの異音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0042】
また、レゾルバ35を挟んでモータ回転子36とは反対側の位置に制御モジュール43が設けられていることから、レゾルバ35と制御モジュール43との電気的な接続を容易に行えるようになるメリットもある。
【0043】
さらに、第1ボールベアリング46をスナップリング63によって第1ハウジング部材38に組み付ける組付作業は、第2ハウジング部材39と第1ハウジング部材38とを組み合わせる前に行うことになるが、モータ固定子36を第1ハウジング部材38ではなく第2ハウジング部材39に固定していることから、モータ固定子36が第1ボールベアリング46の組付作業の妨げにならず、その組付作業性が向上する。
【0044】
その上、第1ハウジング部材38のうち第2ハウジング部材39側の開口端面38bが、モータ固定子36の軸方向中央位置Pよりも第1ボールベアリング46側の位置に形成されていることから、第1ハウジング部材38のうち第2ハウジング部材39側の開口から第1ボールベアリング46を組み付ける組付作業がさらに容易となる。
【0045】
ここで、上述した実施の形態から把握される特許請求の範囲に記載した以外の技術的思想について、以下に説明する。
【0046】
(1)上記モータハウジングは、上記第1ボールベアリングが収容された第1軸受収容部を有する第1ハウジング部材と、上記第2ボールベアリングが収容された第2軸受収容部を有する第2ハウジング部材とに軸方向で分割されていて、
上記第1ハウジング部材に上記モータ固定子が固定されていることを特徴とする請求項3に記載のパワーステアリング装置。
【0047】
(1)に記載の技術的思想によれば、上記第1ハウジング部材と上記第2ハウジング部材とを組み合わせるのに先だって、上記第1ボールベアリングを請求項3に記載の位置規制部材によって上記第1ハウジング部材の第1軸受収容部に組み付けるときに、上記モータ固定子がその組付作業を妨げることがなく、上記第1ボールベアリングの組付作業性が向上する。
【0048】
(2)上記第1ハウジング部材のうち上記第2ハウジング側の開口端面が、上記モータ回転子の軸方向中央位置よりも上記第1ボールベアリング側の位置に形成されていることを特徴とする(1)に記載のパワーステアリング装置。
【0049】
(2)に記載の技術的思想によれば、上記第1ハウジング部材のうち上記第2ハウジング部材側の開口端面から上記第1ボールベアリングを挿入し、その第1ボールベアリングを上記位置規制部材によって上記第1軸受収容部に組み付ける組付作業がさらに容易に行えるようになる。
【符号の説明】
【0050】
9…ステアリングギヤ(操舵機構)
13…転舵輪
20…ウォームギヤ機構(減速機構)
23…ウォームシャフト(減速機構の入力軸)
24…モータ回転軸
29…オルダム継手(軸継手)
34…モータハウジング
35…レゾルバ(回転位置センサ)
36…モータ回転子
37…モータ固定子
43…制御モジュール(制御回路)
45a…突出部(第3当接部)
46…第1ボールベアリング
47…第1ボールベアリングのアウターレース
48…第1ボールベアリングのインナーレース
50…レゾルバロータ(センサ回転子)
51…レゾルバステータ(センサ固定子)
54…第2ボールベアリング
55…第2ボールベアリングのアウターレース
56…第2ボールベアリングのインナーレース
61…第1段状部(第1当接部)
62…第2段状部(第2当接部)
63…スナップリング(位置規制部材)
64…ウェーブワッシャ(付勢部材)
SW…ステアリングホイール
M…電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの回転を転舵輪に伝達する操舵機構と、
モータ回転子とそのモータ回転子の外周側に位置するモータ固定子とをモータハウジング内に収容するとともに、上記モータ回転子と一体に回転するモータ回転軸を上記モータ回転子の内周側に挿通させてなり、上記操舵機構に操舵アシスト力を付与する電動モータと、
上記電動モータのモータ回転軸と上記操舵機構との間に介装され、上記モータ回転軸の回転を上記操舵機構に伝達する減速機構と、
上記モータ回転軸と上記減速機構の入力軸との間に介装され、上記モータ回転軸と上記減速機構の入力軸との離間方向の相対変位を許容しつつ、上記モータ回転軸の回転を上記減速機構の入力軸に伝達する軸継手と、
上記モータ回転軸のうち上記モータ回転子を挟んで上記減速機構とは反対側の部分に固定されたセンサ回転子と、そのセンサ回転子の外周側となる位置で上記モータハウジングに対して固定され、上記センサ回転子の回転方向における位置を検出するセンサ固定子とから構成された回転位置センサと、
上記回転位置センサの出力信号に基づいて上記電動モータを回転駆動する制御回路と、
上記モータハウジングと上記モータ回転軸との間に設けられ、上記モータ回転軸のうち上記モータ回転子よりも上記回転位置センサ側の部分を回転可能に支持する第1ボールベアリングと、
上記モータハウジングと上記モータ回転軸との間に設けられ、上記モータ回転軸のうち上記モータ回転子よりも上記減速機構側の部分を回転可能に支持する第2ボールベアリングと、
上記モータ回転軸に設けられ、上記第1ボールベアリングのインナーレースのうち上記第2ボールベアリング側の端面が当接する第1当接部と、
上記モータ回転軸に設けられ、上記第2ボールベアリングのインナーレースのうち上記第1ボールベアリング側の端面が当接する第2当接部と、
上記ハウジングに設けられ、上記第1ボールベアリングのアウターレースのうち上記第2ボールベアリングとは反対側の端面が当接する第3当接部と、
上記第2ボールベアリングのアウターレースを上記第1ボールベアリング側に向けて付勢する付勢部材と、
を備えていて、上記付勢部材の付勢力をもって上記第1ボールベアリングと第2ボールベアリングとにそれぞれ予圧を付与していることを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項2】
上記制御回路は、上記回転位置センサを挟んで上記モータ回転子とは反対側の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項3】
上記第1ボールベアリングのアウターレースの変位を上記第3当接部から離間する方向で規制する変位規制部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のパワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−197052(P2012−197052A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63501(P2011−63501)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(301041449)日立オートモティブシステムズステアリング株式会社 (44)
【Fターム(参考)】