説明

パワーリフトゲート

【課題】市販のガススプリングを使用することができ、見た目および構造がシンプルなガススプリングを併用したパワーリフトゲートを提供する。
【解決手段】自動車11の後部開口の周縁上端にヒンジ14で連結される跳ね上げ式のドア12の上部にガススプリング15のシリンダ17の上端を回動自在に連結し、ガススプリング15のロッド18の先端を開口部周縁の側部または下部に回動自在に連結し、シリンダ17の下端と開口部周縁との間に、ガススプリング15と略平行に、スクリューシャフト21とナット部材22からなるネジ機構を備えた伸縮機構16を介在させ、ナット部材22をトルクケーブル31を介してモータMで回転駆動するパワーリフトゲート10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車などの車体の開口部周縁の上端にヒンジ連結されるドアなどのゲートをモータ駆動により開閉するパワーリフトゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図8に示すような、自動車の後部ドア枠101の近辺に配置されるモータMと、そのモータによって回転駆動されるトルクケーブル102と、そのトルクケーブルによって回転する送りネジ103と、その送りネジと螺合するスライダ(ナット)104と、そのスライダを摺動自在に、かつ、回転しないようにガイドするレール105と、スライダ104と跳ね上げ式のドア106との間に介在されるロッド107とからなるパワーリフトゲート100が開示されている。また、ドア106の上部とドア枠101の間には、ドア106の開閉時の重量を軽減し、開いた状態に維持できるガススプリング(ガスダンパ)108が介在されている。
【0003】
このパワーリフトゲート100は、モータMが回転し、トルクケーブル102を介して送りネジ103を回転させると、スライダ104がレール105に沿って上下に移動する。そしてスライダ104の上下動は、ロッド107を介してドア106を開閉させる。この場合、ガススプリング108がモータMの負担を軽減し、トルクケーブル102が伝えるトルクを軽減する。またトルクケーブル102は可撓性を有し、湾曲した経路に沿って回転力を伝えるので、モータMの取付け位置の選択範囲が広い。
【0004】
特許文献2には、ガススプリング内にナットおよび雄ネジを収容した、駆動部とガススプリングとを一体化したパワーリフトゲートが開示されている。特許文献3には、跳ね上げ式のドアのドア枠の外側にガススプリングを配置し、内側にシリンダ状のパワーアクチュエータを配置し、両者をほぼ平行に取付けたパワーリフトゲートが開示されている。これらの装置も回転力の伝達にトルクケーブルを使用し、ガススプリングの作用と駆動部との協働作用でドアを開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−175211号公報
【特許文献2】米国特許第7320198号公報
【特許文献3】米国特許第6516567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のパワーリフトゲート100は、ドア106を開いたとき、2本のガススプリング108がドア106とドア枠101の間に渡され、さらにドア106の片側では、ガススプリング108とヒンジ109の間に、斜め方向にロッド107が介在される。そのため、自動車後部の開口まわりに煩雑な印象を与える。
【0007】
特許文献2のパワーリフトゲートは、ガススプリングとパワーアクチュエータとが一体化しているので、ドア回りがすっきりとしているが、機構がきわめて複雑である。さらに市販のガススプリングは使用できず、特別に設計した専用のガススプリングとなる。特許文献3のパワーリフトゲートは、ドア枠の内側と外側にガススプリングとパワーアクチュエータを配置しているので、見た目が煩雑である。
【0008】
本発明は市販のガススプリングを使用することができ、しかも見た目がすっきりとし、構造もシンプルなガススプリングを併用したパワーリフトゲートを提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパワーリフトゲートは、開口部周縁の上端にヒンジ連結されるゲートと、上端が前記ゲートの上部に回動自在に連結されるシリンダおよびそのシリンダの下端から突出し、シリンダに対して軸方向に移動自在で、先端が前記開口部周縁の側部または下部に回動自在に連結されるロッドを備えたガススプリングと、前記ガススプリングのシリンダと開口部周縁との間に介在され、モータ駆動により前記ロッドが延びている方向に伸縮する伸縮機構とからなることを特徴としている。
【0010】
本発明のパワーリフトゲートの第2の態様は、車体の開口部周縁の上端にヒンジ連結されるゲートと、上端が前記ゲートの上部に回動自在に連結されるシリンダおよびそのシリンダの下端から突出し、シリンダに対して軸方向に移動自在で、先端が前記開口部周縁の側部または下部に回動自在に連結されるロッドを備えたガススプリングと、前記ガススプリングと略平行に接近して設けられ、前記ゲートの上部と開口部周縁との間に介在される、モータ駆動により伸縮駆動される伸縮機構とからなり、前記伸縮機構が、下端が前記開口部周縁の側部または下部に回動自在に連結されるケースと、そのケース内に回動自在に収容されるナット部材と、そのナット部材と螺合する雄ネジ部材またはその雄ネジ部材に連結されりアームとからなり、前記雄ネジ部材またはアームの先端が前記ゲートの上部に回動自在に連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明のパワーリフトゲートは、ガススプリングと伸縮機構とがほぼ一体化されているので、見た目がすっきりとしている。なお、必要であれば、ガススプリングと伸縮機構をカバーで覆うことにより、一体感をさらに高めることもできる。また、ガススプリング自体は内部に改造を加える必要がないので、市販品をそのまま使用することができ、全体の構造も比較的簡易である。
【0012】
(2)前記伸縮機構の下部または中間部が、ガススプリングのロッドの回動中心と略平行で接近した回動中心回りに回動自在に連結されている場合は、ゲートの開閉に伴ってガススプリングが揺動するとき、伸縮機構もガススプリングと略平行な状態を保ちながら揺動する。そのため、一層両者の一体感が増す。
【0013】
(3)前記伸縮機構の一端がガススプリングのシリンダの下端近辺に連結されている場合は、ガススプリングのうち、細いロッドの部分と伸縮機構とが並列的に位置するので、伸縮機構が一層目立ちにくく、見栄えがよい。
【0014】
(4)前記伸縮機構がナット部材と、そのナット部材と螺合する雄ネジ部材とを備えており、ナット部材または雄ネジ部材のうちいずれか一方が前記ガススプリングのシリンダに連結され、他方が自軸廻りに回転自在に設けられており、前記他方とモータとが可撓性を備えたトルクケーブルによってトルク伝達可能に連結されている場合は、モータが回転すると、トルクケーブルを介してナット部材と雄ネジ部材のうちトルクケーブルに連結されている部材が回転する。それによりガススプリングのシリンダと連結されている部材が軸方向に移動し、その部材がシリンダを昇降させる。そして回転力を伝える手段としてトルクケーブルを採用しているので、ゲートの開閉に応じてガススプリングの揺動するとき、それにつれて伸縮機構が揺動しても、揺動の邪魔にならない。
【0015】
(5)前記伸縮機構が筒状のケースを備えており、そのケース内に前記ナット部材が回転自在に収容され、前記雄ネジ部材の一端側またはその雄ネジ部材に連結されるアームの一端側がケースの端部から突出し、ケースに対して軸方向に移動自在で、その雄ネジ部材の先端が前記ガススプリングのシリンダに回動自在に連結されており、前記ナット部材にトルクケーブルの一端が連結されている場合は、トルクケーブルが回転すると、ナット部材が回転し、それと螺合している雄ネジ部材が軸方向に移動する。そのため、ケースの上端から突出している雄ネジ部材あるいはアームの他端側が軸方向に移動し、ガススプリングのシリンダを上下動させ、ゲートを開閉する。そして外部に出ているのが比較的細い雄ネジ部材あるいはアームであるので、見た目が一層すっきりとする。
【0016】
(6)本発明のパワーリフトゲートの第2の態様は、伸縮機構がガススプリングと略平行に、かつ、接近して設けられているので、見た目に一体感があり、煩雑な印象を与えない。そしてガススプリングのロッドは伸縮機構のケースと接近し、シリンダは伸縮機構の細い雄ネジ部材またはアームと接近するので、全体として一層すっきりした外観を呈する。
【0017】
(7)前記シリンダの上端と前記雄ネジ部材またはアームの上端がそれぞれブラケットに回動自在に連結されており、そのブラケットがゲートの上部に回動自在に連結されているパワーリフトゲートは、ガススプリングと伸縮機構の一体性が一層増大する。
【0018】
(8)前記ロッドの下端と前記ケースの下端がそれぞれ下部ブラケットに回動自在に連結されており、その下部ブラケットが開口部周縁の下部に回動自在に連結されているパワーリフトゲートについても、ガススプリングと伸縮機構の一体性が一層増大する。
【0019】
(9)前記シリンダと雄ネジ部材またはアームを囲むカバーを備えている場合は、外観上、一層一体感をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のパワーリフトゲートを備えた自動車の一実施形態を示す一部切り欠き要部側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1の自動車の要部斜視図である。
【図4】本発明に関わる伸縮機構の他の実施形態を示す側面断面図である。
【図5】本発明に関わる伸縮機構のさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【図6】本発明のパワーリフトゲートのさらに他の実施形態を示す側面図である。
【図7】図7aおよび図7bはそれぞれ本発明に関わる伸縮機構のさらに他の実施形態を示す一部断面概略側面図である。
【図8】従来のパワーリフトゲートの一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに図面を参照しながら本発明のパワーリフトゲートの実施の形態を説明する。図1に示すパワーリフトゲート10は、自動車11の後部のドア12とドア枠13との間に介在されている。ドア12は、上端がドア枠13の上端縁にヒンジ14によって回動自在に連結されている、いわゆる跳ね上げ式のドアである。このパワーリフトゲート10は、従来公知のガススプリング(ガスダンパ)15と、電機駆動により伸縮する伸縮機構(直動ユニット)16とを組み合わせたものである。ガススプリング15は、開閉時にドア12の重量を軽減するため、かつ、跳ね上げたときに降りてこないように上方へ付勢するためのものであり、シリンダ17と、そのシリンダの下端から突出している伸縮自在のロッド18とを備えている。
【0022】
ガススプリング15の内部構造は、従来公知であるので、ここでは詳細には触れない。ガススプリング15は通常はドア12の左右に一対で設けられる(図3参照)。伸縮機構16は片方だけでよいが、必要に応じて左右に設けてもよい。シリンダ17の一端(図面の上端)は、ボールソケットジョイント19aやクレビス、ピンジョイントなどでドア12の、閉じたときの上端からいくらか下の位置に回動自在に連結されている。ロッド18の先端も、ボールソケットジョイント19bにより、ドア枠13あるいは側壁内面に連結されている。
【0023】
図1のパワーリフトゲート装置10では、伸縮機構16は、ガススプリング15のロッド18と略平行に配置されるスクリューシャフト(雄ネジ部材)21と、そのスクリューシャフト21と螺合するナット部材22と、そのナット部材22を回転駆動する駆動機構23とからなる。スクリューシャフト21の上端は、ガススプリング15のシリンダ17の下端近辺に取付けた上部ブラケット24により、回転しないように支持されている。スクリューシャフト21の下端はナット部材22を貫通しており、想像線で示すように下方に延びることができる。
【0024】
図2に示すように、ナット部材22は下部ブラケット25によって自軸回りに回転自在に支持されており、下部ブラケット25は、ガススプリングのロッド18の先端の回動中心Pの近辺で、水平軸回りに揺動自在に支持されている。ロッド18の先端の回動中心Pと下部ブラケット25の揺動中心とは一致しているのが好ましい。ただしずれていてもよい。ナット部材22の外周と下部ブラケット25の間には、ボールベアリングなどの軸受け26が介在されている。さらにナット部材22の外周には、リング状の従動ギヤ27が固定されている。ナット部材22と従動ギヤ27は一体に形成されていてもよい。そしてその従動ギヤ27と噛み合う駆動ギヤ28が下部ブラケット25によって回転自在に支持されている。
【0025】
駆動ギヤ28はたとえば回転軸29に固定されており、その回転軸29は下部ブラケット25にボールベアリングなどの軸受け30を介して回転自在に支持されている。回転軸29の一端には、トルクケーブル31がトルク伝達可能に連結されている。そのトルクケーブル31の他端はモータMの出力軸に連結されている。モータMは自動車11の車体32の下部に固定されている。ただしモータMは作用の妨げにならない限り、揺動自在に取付けられていてもよい。
【0026】
トルクケーブル31は、従来公知のものであり、トルク伝達が可能な可撓性を有するインナーケーブル33と、そのインナーケーブルを回転自在に支持する可撓性を備えたアウターケーシング(アウターチューブ)34とからなる。インナーケーブル33は、たとえば金属線からなる芯線の周囲に、多数本の金属線を並列的に同方向に巻き付けて構成する。通常は、多数本の金属線を巻き付けて第1層とし、さらにその上に多数本の金属線を並列的に逆方向に巻き付けて第2層とするなど、2〜5層程度重ねて設けることにより製造される。なお、1本の金属線に変えて、複数本の金属素線を撚り合わせた撚り線を芯線として使用することもできる。
【0027】
アウターケーシング34は、合成樹脂チューブなどが用いられる。インナーケーブル33もアウターケーシング34も可撓性を有し、湾曲した経路に沿って配索した状態で、インナーケーブル33を両方向に回転させてトルクを伝達することができる。アウターケーシング34の上端は下部ブラケット25に固定されている。下端はモータMの取付けブラケットなど、車体側に固定されている。
【0028】
モータMとしては通常のDCモータが用いられる。モータMに減速機を設けてもよいが、スクリューシャフト21とナット部材22によるネジ機構で大きく減速されるので、とくに設けなくてもよい。なお、駆動ギヤ28と従動ギヤ27の歯数に差を設け、それらの間で減速させるようにしてもよい。
【0029】
上記のように構成されるパワーリフトゲート10は、モータMが一方向に回転すると、トルクケーブル31を介して回転運動が伝えられ、回転軸29および駆動ギヤ28が回転する。そして駆動ギヤ28と噛み合っている従動ギヤ27が回転し、その従動ギヤ27と一体に回転するナット部材22が回転する。それにより、ナット部材22と螺合しているスクリューシャフト21が、ナット部材22の回転方向に応じて上向きあるいは下向きに直進運動する。
【0030】
たとえば図1のように、ドア12が開いている状態からモータMを一方向に回転させてスクリューシャフト21を下向きに移動させると、ガススプリング15のシリンダ17が下降し、ドア12を閉じていく。なお、ドア12が開いている状態では、ガススプリング15とドア12とがほぼ直角に近いため、ガススプリング15による上向きの付勢力が強い。そのため、スクリューシャフト21はガススプリング15の付勢力に抗しながらドア12を閉じていく。
【0031】
ドア12が閉じていくときは、ドア12がヒンジ14回りに時計方向に回動するので、シリンダ17の上端は矢印S方向に円弧状の軌跡を描きながら下降する。そしてロッド21の下端は回動中心P回りに回動するので、シリンダ17およびスクリューシャフト21は反時計方向に回動しながら下降していく。そのとき、ロッド18の先端の回動中心Pとスクリューシャフト21の下端を支持する下部ブラケット25は、共に回動中心P回りに回動するので、スクリューシャフト21とロッド18は平行な状態を維持しながら、一体的に下降していく。
【0032】
下部ブラケット25が回動すると、駆動ギヤ28も同様に回動中心P回りに回動するが、駆動ギヤ28とモータMとは可撓性を有するトルクケーブル31によって連結されているので、モータMを車体に固定していても、トルクケーブル31が下部ブラケット25の回動に追従して湾曲ないし屈曲し(想像線参照)、下部ブラケット25の回動を妨げない。なお、モータMは車体に取付けるほか、下部ブラケット25に直接取付けてもよい。その場合はモータMの電源線や制御線などの配線が下部ブラケット25の回動に追従して、湾曲ないし屈曲する。
【0033】
ドア12が閉じて行く途中で、ガススプリング15とドア12のなす角度が小さくなり、ガススプリング15の付勢力ではドア12の重量を支持できなくなる。そのため、その後はドア12の重量が閉じる方向に働き、モータMの負荷が小さくなる。ドア12が閉じた状態では、スクリューシャフト21は想像線で示すようにナット部材22から大きく下方に突出しており、反時計方向に回動した状態のガススプリング15と略平行な状態で、下端が自動車の後方を向くように傾斜している。
【0034】
ドア12が閉じた後は、ドアはラッチで閉じた状態に維持される。なお、仮係合したストライカをフルラッチにするには電動式のオートクロージャが用いられ、ドア12を開けるときには、電動式のオープナによってラッチのロックを解除する。オートクロージャおよびオープナについては、公知であるので、詳述しない。ドア12を開けていくときは、前述と逆方向にモータMを回転させる。それにより、トルクケーブル31および駆動ギヤ28が前述とは逆方向に回転し、ナット部材22を回転させ、ナット部材22と螺合するスクリューシャフト21を上昇させ、ドア12の重量に抗してシリンダ17を上昇させる。その場合はガススプリング15の上向きの付勢力でモータMの負荷が軽減される。さらに途中からはガススプリング15の付勢力でドア12が跳ね上げられようとするが、ナット部材22とスクリューシャフト21が螺合しているので、跳ね上がりが抑制され、ゆっくりと開いていく。
【0035】
図1に示すパワーリフトゲート10は、図3に示すように、伸縮機構16とガススプリング15とが接近して配置され、両者がほぼ一体化されている。そのため、見た目がすっきりとしている。さらにガススプリング15と伸縮機構16とが同方向に同一ストロークだけ伸縮するので、両者の角度が変化する場合に比して、安全性が一層高い。また、カバーなどを設けて安全性をさらに向上させることも容易である。また、ガススプリング自体は内部に改造を加える必要がなく、市販品をそのまま使用することができ、全体の構造も簡易である。
【0036】
図4に示す伸縮機構36は、図1の機構におけるスクリューシャフト21に代えて、アーム37とそのアーム37の下端に固定した雄ネジ部材38とを採用している。そしてナット部材として、アーム37の昇降ストロークに相当する長さのロングナット39を採用している。さらにこの実施形態では、ロングナット39に軸端部材40を固定し、その軸端部材40にトルクケーブル31のインナーケーブル33を連結している。インナーケーブル33の端部には、角柱状の心材33aが固着されており、その心材33aを軸端部材40に形成した角穴に嵌合させている。なお、符号41は合成樹脂などのリングカバーである。
【0037】
さらにこの実施形態ではロングナット39の外周にパイプ状のケース42を設け、そのケース42の上端を下部ブラケット25に固定している。前述のロングナット39はケース42に対し、ベアリング42a、42bを介して回転自在に収容されている。下部ブラケット25およびケース42は、車体に取付けた支持ブラケット43によって回動中心P回りに回動自在に支持されている。アーム37の断面形状は四角形、六角形などの角形でもよく、円形でもよい。いずれの場合も、上端は図1の場合と同様に、ガススプリングのシリンダの下端に取付けた上部ブラケット(図1の符号24参照)に回転しないように固定する。
【0038】
図4に示す伸縮機構36を用いたパワーリフトゲートは、図1のパワーリフトゲート10と同様に、ガスシリンダと伸縮機構とがほぼ一体化されるので、見た目がすっきりとする。しかもロングナット39の周囲をケース42で覆っているので、回転する部分が露出せず、使用者にとって一層安全である。なお、ロングナット39の下端は左右(自動車の前後)に大きく振れるが、この振れはトルクケーブル31の弾性変形によって吸収することができる。図4の伸縮機構36においても、図1の伸縮機構16と同様の従動ギヤ27をロングナット39の上端に結合し、その従動ギヤ27と噛み合う駆動ギヤ28をトルクケーブル31を介してモータMで回転させる構成とすることができる。この場合は駆動ギヤ28の横振れが小さいので、トルクケーブル31の弾性変形を小さい範囲に抑制することができる。
【0039】
図4に示す伸縮機構36では、アーム37の下端は雄ネジ部材38に固定し、上端は上部ブラケットに固定しているが、図5に示す伸縮機構44のように、アーム37の上端を上部ブラケット24に対してピン45によって揺動自在に連結し、下端をピン46によって雄ネジ部材38に揺動自在に連結してもよい。揺動の方向は、アーム37の軸心に対して直角方向(図5の紙面に直角の方向)の軸心廻りとする。さらにロングナット39の内径をアーム37の揺動を許す程度に大きくしている。
【0040】
この伸縮機構44では、ガススプリング15の角度とロングナット39の角度がずれても、アーム37が吸収する。そのため、ケース42は、ガススプリング15と一緒に揺動させるための下部ブラケットを用いずに、取り付け脚47によって車体に固定することができる。この場合、モータMとロングナット39の間に連結されるトルクケーブル31は、ドア12を開閉させてもほとんど湾曲ないし屈曲せず、配索状態の形状を維持する。ただし図5の伸縮機構44でも、図4の伸縮機構36と同様に、揺動する下部ブラケット25にケース42あるいはロングナット39を取付けることができる。
【0041】
図6に示すパワーリフトゲート48は、ガススプリング15と伸縮機構16とをほぼ並列的に配置し、一体性を高めている。すなわちこのパワーリフトゲート48では、伸縮機構16のアーム37を上部ブラケット24によってガススプリング15のシリンダ17の上端近辺に固定している。そしてケース39の下端を下部ブラケット25によってロッド18の下端に結合している。他の構成は図1あるいは図4と同様である。このものは、ガススプリング15と伸縮機構16とをほぼ並列的に配置しているので、全体の長さがガススプリング15の長さと実質的に同一になり、図1あるいは図4の装置のように、両者を上下にずらせて配置する場合に比して、全体の長さを短くすることができる。
【0042】
一体性が高くなったことにより、たとえば想像線で示すように、両者の上部をカバー49で覆うことが容易になり、一層安全性を高めることができる。なお、カバー49の下端と下部ブラケット25との間にジャバラを設けてロッド18などを覆うこともできる。その場合は可動部が外部から隠されるので、使用者に対し、一層安心感を与えることができる。図6のパワーリフトゲート48において、アーム37と雄ネジ部材に代えて、図1のスクリューシャフト21を採用することもできる。
【0043】
図1などの実施形態では、モータMとナット部材22とをトルクケーブル31で連結しているが、ユニバーサルジョイント、ラバージョイント、スプリングジョイントなど、途中に角度があっても、また、いずれの回転方向でもトルク伝達できるジョイントを介して連結してもよい。さらに前述のように、ナット部材にモータの出力軸を直接連結してもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、ナット部材を回転させ、雄ネジ部材を軸方向に移動させているが、逆に、雄ネジ部材を回転させ、ナット部材を軸方向に移動させる構成とすることもできる。この場合も、長いスクリューシャフトと短いナット部材との組み合わせ、あるいは短い雄ネジ部材とロングナットとの組み合わせのいずれの機構も採用することができる。たとえば図1の実施形態の雄ネジ部材とナット部材を逆にする場合は、図7aに示すように、上部ブラケット24にナット部材22を固定すると共に、そのナット部材22と螺合するスクリューシャフト21の下端近辺を下部ブラケット25に回転自在に、かつ、軸方向に移動しないように支持し、そのスクリューシャフト21をトルクケーブル31を介して、あるいは直接、モータMにより回転させるように構成する。
【0045】
また、図4あるいは図5の場合の雄ネジ部材とナット部材を逆にする場合は、図7bに示すように、上部ブラケット24あるいはシリンダ17にロングナット39を固定し、そのロングナット39に雄ネジ部材38を螺合させ、その雄ネジ部材に連結したアーム37の下端側を下部ブラケット25で回転自在に支持し、前述と同様にモータMでアーム37を回転駆動するように構成する。なお、図7bのロングナット39をシリンダ17に固定して雄ネジ部材38を回転させる構成は、図6のガススプリング15と伸縮機構16を並列的に配置するパワーリフトゲート48において、伸縮機構1のナット部材とネジ部材を逆にしたものとも見ることができる。
【0046】
前記実施形態では、パワーリフトゲートを自動車の後部のドアに採用する場合を説明したが、跳ね上げ式のいわゆるガルウイングタイプのフロントドア、リアドアに対して採用することもできる。また、トランクリッドを電気駆動で開閉する場合にも採用することができる。特許請求の範囲にいう「ゲート」には、このようなヒンジによって開口部を開閉する蓋体で、ガススプリングによって蓋体の重量を軽減させるものも含まれる。さらに自動車のほか、建設機械、船舶、住宅やオフィスなどのドアや跳ね上げ式の窓などに使用することができる。
【0047】
また、前記実施形態では、ガススプリングはロッドを下側にして配置しているが、ロッドを上側に、シリンダを下側にして配置することもできる。
【符号の説明】
【0048】
10 パワーリフトゲート
11 自動車
12 ドア
13 ドア枠
14 ヒンジ
15 ガススプリング
16 伸縮機構
17 シリンダ
18 ロッド
19a、19b ボールソケットジョイント
21 スクリューシャフト
22 ナット部材
23 駆動機構
24 上部ブラケット
25 下部ブラケット
26 軸受け
27 従動ギヤ
28 駆動ギヤ
29 回転軸
30 軸受け
31 トルクケーブル
M モータ
32 車体
33 インナーケーブル
33a 心材
34 アウターケーシング
36 伸縮機構
37 アーム
38 雄ネジ部材
39 ロングナット
40 軸端部材
41 リングカバー
42 ケース
42a、42b ベアリング
44 伸縮機構
45、46ピン
48 パワーリフトゲート
49 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部周縁の上端にヒンジ連結されるゲートと、
上端が前記ゲートの上部に回動自在に連結されるシリンダおよびそのシリンダの下端から突出し、シリンダに対して軸方向に移動自在で、先端が前記開口部周縁の側部または下部に回動自在に連結されるロッドを備えたガススプリングと、
前記ガススプリングのシリンダと開口部周縁との間に介在され、モータ駆動により前記ロッドが延びている方向に伸縮する伸縮機構とからなる、
パワーリフトゲート。
【請求項2】
前記伸縮機構の下部または中間部が、ガススプリングのロッドの回動中心と略平行で接近した回動中心回りに回動自在に連結されている請求項1記載のパワーリフトゲート。
【請求項3】
前記伸縮機構の上端がガススプリングのシリンダの下端近辺に連結されている請求項1または2記載のパワーリフトゲート。
【請求項4】
前記伸縮機構がナット部材と、そのナット部材と螺合する雄ネジ部材とを備えており、
ナット部材または雄ネジ部材のうちいずれか一方が前記ガススプリングのシリンダに連結され、他方が自軸廻りに回転自在に設けられており、
前記他方とモータとが可撓性を備えたトルクケーブルによってトルク伝達可能に連結されている、請求項1、2または3記載のパワーリフトゲート。
【請求項5】
前記伸縮機構が筒状のケースを備えており、
そのケース内に前記ナット部材が回転自在に収容され、前記雄ネジ部材の一端側またはその雄ネジ部材に連結されるアームの一端側がケースの端部から突出しており
その雄ネジ部材の先端が前記ガススプリングのシリンダに回動自在に連結されており、
前記ナット部材にトルクケーブルの一端が連結されている請求項4記載のパワーリフトゲート。
【請求項6】
開口部周縁の上端にヒンジ連結されるゲートと、
上端が前記ゲートの上部に回動自在に連結されるシリンダおよびそのシリンダの下端から突出し、先端が前記開口部周縁の側部または下部に回動自在に連結されるロッドを備えたガススプリングと、
前記ガススプリングと略平行に接近して設けられ、前記ゲートの上部と開口部周縁との間に介在される、モータ駆動により伸縮駆動される伸縮機構とからなり、
前記伸縮機構が、下端が前記開口部周縁の側部または下部に回動自在に連結されるケースと、そのケース内に回動自在に収容されるナット部材と、そのナット部材と螺合する雄ネジ部材またはその雄ネジ部材に連結されるアームとからなり、
前記雄ネジ部材またはアームの先端が前記ゲートの上部に回動自在に連結されている、パワーリフトゲート。
【請求項7】
前記シリンダの上端と前記雄ネジ部材またはアームの上端がそれぞれブラケットに回動自在に連結されており、そのブラケットがゲートの上部に回動自在に連結されている請求項6記載のパワーリフトゲート。
【請求項8】
前記ロッドの下端と前記ケースの下端がそれぞれ下部ブラケットに回動自在に連結されており、その下部ブラケットが開口部周縁の下部に回動自在に連結されている請求項6または7記載のパワーリフトゲート。
【請求項9】
前記シリンダと雄ネジ部材またはアームを囲むカバーを備えている請求項6、7または8記載のパワーリフトゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−94423(P2011−94423A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250905(P2009−250905)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】