説明

パンクシール剤の注入容器

【課題】 パンクシール剤の固形化を抑制すると共に、パンク修理を行う際の注入作業を、注入量の過不足を伴うことなしに、自動的に行えるようにしたパンクシール剤の注入容器を提供する。
【解決手段】 筒状の耐圧容器2の一方の端部2aに封止弁3aで封鎖された吐出口3を設ける一方、他端2b側の内部にフリーピストン6aにより仕切った空間を設けると共にこの空間に高圧流体Gを充填するか、或いは他端2b側の内部に高圧流体Gを充填したブラダー6bを配置し、フリーピストン6a又はブラダー6bと吐出口3とにより仕切った空間にシール剤Sを充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパンクシール剤の注入容器に関し、さらに詳しくは、パンクシール剤の固形化を抑制すると共に、パンク修理を行う際の作業性を向上させるようにしたパンクシール剤の注入容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤが走行中に釘などを踏んでパンクした際の応急措置としてパンクシール剤を収容した容器からタイヤバルブ孔に向けてパンクシール剤を注入し、パンク孔を防ぐ措置が行われるようになってきた。
【0003】
パンクシール剤の容器には、注入作業を簡単に行えるようにするために、あらかじめパンクシール剤に高圧ガスを混合して封入しておき、このパンクシール剤をエアゾール方式によりタイヤバルブ孔に注入する方式がある。しかしながら、高圧ガスはパンクシール剤を固化させるという性質があるため、長期にわたり保存していると高圧ガスによりパンクシール剤の固化が進行してしまい、この固化成分がパンクシール剤の注入時にタイヤバルブ孔に詰まってしまい、注入作業を不可能にすることがある。
【0004】
その対策として、パンクシール剤を直接手動によりタイヤバルブ孔に注入する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方式では、パンクシール剤の注入作業に長時間を要すると共に、注入作業を行うときの個人差により、パンクシール剤の注入量に過不足が生じて、シール性に不具合が発生するという問題があった。
【特許文献1】特開2003−26217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解消するもので、パンクシール剤の固形化を抑制すると共に、パンク修理を行う際の注入作業を、注入量の過不足を伴うことなしに、自動的に行えるようにしたパンクシール剤の注入容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に記載したパンクシール剤の注入容器は、筒状の耐圧容器の一方の端部に封止弁で封鎖された吐出口を設け、該耐圧容器内における前記吐出口とは反対側にフリーピストンを配置すると共に、前記吐出口の反対側の端部と前記フリーピストンとで仕切られた空間内に高圧流体を充填し、前記フリーピストンと前記吐出口とで仕切られた空間内にシール剤を充填したことを要旨とする。
【0007】
さらに、本発明の請求項2に記載したパンクシール剤の注入容器は、筒状の耐圧容器の一方の端部に封止弁で封鎖された吐出口を設け、該耐圧容器内における前記吐出口の反対側の端部にブラダーを配置すると共に、該ブラダーの内部に高圧流体を充填し、該ブラダーと前記吐出口とで仕切られた空間内にシール剤を充填したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパンクシール剤の注入容器によれば、筒状の耐圧容器の一方の端部に封止弁で封鎖された吐出口を設ける一方、他端の内部にフリーピストンにより仕切った空間を設けると共にこの空間に高圧流体を充填するか、或いは他端の内部に高圧流体を充填したブラダーを配置し、フリーピストン又はブラダーと吐出口により仕切った空間にシール剤を充填したので、吐出口の封止弁を解除することにより、高圧流体の圧力によりシール剤を吐出口から自動的に圧送するため、パンク修理時の注入作業を簡単に行うことができる。
【0009】
しかも、耐圧容器内に充填するシール剤の容量をあらかじめタイヤ1本あたりに必要な容量に調整しておくことにより、常にパンク孔を塞ぐのに必要な量のシール剤を圧送することができるため、シール剤の注入量の過不足に伴う不具合を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の構成につき添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態によるパンクシール剤の注入容器を示す断面図、図2は図1の注入容器からパンクシール剤が圧送されている状態を示す断面図である。
【0011】
図1において、パンクシール剤の注入容器1(以下、単に注入容器1という)は筒状の耐圧容器2からなり、耐圧容器2の一方の端部2aには、封止弁3aで封鎖された吐出口3が設けられている。耐圧容器2の内部における吐出口3とは反対側にはフリーピストン6aが配置され、吐出口3の反対側の端部2bとフリーピストン6aとで仕切られた空間4(以下、高圧ガス室4という)内には高圧流体Gが充填され、フリーピストン6aと吐出口3とで仕切られた空間5(以下、シール剤室5という)内にはシール剤Sが充填されている。なお、図中3bは吐出口3を覆うキャップを示している。
【0012】
上述する注入容器1からシール剤Sを圧送する場合には、先ず吐出口3の先端からキャップ3bを取り外した後、吐出口3とタイヤのバルブ孔とを連結する図示しないホースを接続する。その後、吐出口3の封止弁3aを開放することにより、図2に示すように、高圧ガス室4内の高圧流体Gがフリーピストン6aを徐々に上方に持ち上げながらパンクシール剤Sを吐出口3から自動的にタイヤのバルブ孔に向けて圧送する。
【0013】
これにより、高圧流体Gとシール剤Sとが直接混合することがないため、シール剤Sの固形化が抑制されると共に、パンク修理時には、シール剤Sが自動的に吐出口3からバルブ孔に向かって圧送されるため、パンク修理時の注入作業を簡単に行うことができる。さらに、シール剤室5内に充填するシール剤Sの容量をタイヤ1本あたりに必要な容量に調整しておくことにより、常にパンク孔を塞ぐのに必要な量のシール剤Sを圧送することができるため、シール剤Sの注入量の過不足に伴う不具合を防ぐことができる。
【0014】
なお、本発明の注入容器1では、吐出口3の先端に、キャップ3bを取り付けることなしに、直接タイヤバルブに接続する図示しないホースなどの接続具を取り付けるようにしてもよい。
【0015】
本発明において、高圧ガス室4内に充填する高圧流体Gとしては、空気や窒素などの圧縮ガス又はプロパン、ブタン、フロンなどの液化ガスを使用するとよい。これにより、シール剤Sのタイヤバルブ孔への圧送を確実かつ安全に行うことができる。
【0016】
図3は本発明の他の実施形態による注入容器1を示す断面図で、本実施形態では耐圧容器2内における吐出口3とは反対側の端部2bに高圧流体Gを充填したブラダー6bを配置している。本実施形態による注入容器1の作用効果は図1の注入容器1と同等であるため、重複する説明を省略する。なお、本実施形態では、注入容器1の構造を簡素化することができると共に、注入容器1の重量を軽減することができ、さらには注入容器1が外力により変形を受けた場合にあっても、作動性に支障を及ぼさない利点がある。
【0017】
本実施形態におけるブラダー6bの形態は特に限定されるものではないが、端部2a側への円滑な膨張を確保する観点から、ブラダー6bを筒状のゴム又は樹脂からなる成形体で構成するとよい。さらに好ましくは、周囲を蛇腹状に形成した筒状のゴム又は樹脂からなる成形体で構成するとよい。ブラダー6b内に充填する高圧流体Gとしては、図1の実施形態と同様に、空気や窒素などの圧縮ガス又はプロパン、ブタン、フロンなどの液化ガスが使用される。
【0018】
本発明におけるシール剤Sには、主として天然ゴムラテックス、SBRラテックス、NBRラテックスが好ましく用いられる。これらの物質は注入容器1内で長期にわたり保管されるとラテックスの安定性が保たれず、ラテックスの凝固物や繊維、フィラー等の固形成分が析出し、シール剤Sの圧入時にこれらの固形成分がタイヤバルブ孔に詰まってしまい、圧入作業を不可能にする場合がある。
【0019】
図4は本発明の他の実施形態による注入容器1を示す断面図で、本実施形態では図1の実施形態によるシール剤室5における吐出口3側に、フィルター7を配置している。したがって、吐出口3からシール剤Sを圧送する場合には、図5に示すように、フィルター7により濾過された固形物を含まないシール剤S’が吐出口3から常に圧送されることになる。これにより、シール剤Sのバルブ孔への目詰まりを確実に解消することができる。
【0020】
図6は本発明の他の実施形態による注入容器1を示す断面図で、本実施形態では図3の実施形態によるシール剤室5における吐出口3側に、フィルター7を配置している。本実施形態の場合にも図4の本実施形態の場合と同様の作用効果が得られる。
【0021】
なお、上述するフィルター7の材質は特に限定されないが、パンクシール剤Sの濾過が効率よく行なわれるようにする観点から、フィルター7を例えば金属や強化プラスチックのように剛性の高い材料、又はこれらと繊維集合体との組み合わせによる多孔質構造体により構成するとよい。さらに、図4及び図6におけるフィルター7は、耐圧容器2の内壁に固定させて配置するとよい。
【0022】
図7は本発明のさらに他の実施形態による注入容器1を示す断面図で、本実施形態ではフリーピストン6aに隣接する吐出口3側に、耐圧容器2の上下方向に移動可能なフィルター7を配置すると共に、このフィルター7にロッド8を連結し、ロッド8の他端8aを耐圧容器2の吐出口3側における外側まで貫通させ、その貫通部分をロック手段9により解除可能に係止している。なお、図中10はシール剤Sの外部への漏洩を防止するためのシール機構を示している。
【0023】
本実施形態による注入容器1では、固定手段9を開放することにより、図8(a)に示すように、シール剤室5内に充填されたシール剤Sと外部との差圧により、シール剤Sがフィルター7の微小孔を通過しながら、フリーピストン6a側に流れ込み、濾過されたシール剤S’がフリーピストン6aから受ける反力によりフィルター7及びロッド8を端部2a側に押し上げる。このようにして、フィルター7はシール剤Sを濾過しながら、最終的には耐圧容器2の端部2aの位置まで上昇する。図8(b)はシール剤Sの濾過が完了した状態を示している。
【0024】
シール剤Sの濾過が完了したことを確認した後、吐出口3の先端からキャップ3bを取り外し、吐出口3の封止弁3aを開放することにより、図9に示すように、高圧流体Gの圧力により固形物を含まないシール剤S’が吐出口3からタイヤのバルブ孔に向けて圧送される。なお、シール剤Sの濾過が完了したことを外部から確認できるようにするために、ロッド8のフィルター7側の近傍には濾過完了標識8bを形成しておくとよい。
【0025】
上述する実施形態による注入容器1では、フィルター7によるシール剤Sの濾過作業を円滑にするため、シール剤室5内の内圧はできるだけ小さくなるように、好ましくは準真空状態になるように設定しておくことが好ましい。すなわち、シール剤室5内の内圧を低圧に保つためには、シール剤S中に含まれる気体や揮発成分を除去することにより、シール剤室5内の内圧を低圧又は準真空状態に保つようにするとよい。
【0026】
図10は本発明の他の実施形態による注入容器1を示す断面図で、本実施形態では図7の耐圧容器2内における吐出口3とは反対側の端部2bに、フリーピストン6aに代えて高圧流体Gを充填したブラダー6bを配置している。本実施形態による注入容器1の作用効果は図7の注入容器1と同等であるため、重複する説明を省略する。
【0027】
上述する図7及び図10の実施形態では、シール剤S’の圧送が完了した時点で、ロッド8を図7及び図10の状態になるまで耐圧容器2の端部2b側に押し込み、このロッド8をロック手段9により係止した後、吐出口3から新たなシール剤Sをシール剤室5に充填し、充填が完了した時点で吐出口3の封止機構3aを封鎖することにより、再び新たな注入容器1として使用することができる利点がある。
【0028】
本発明において、フィルター7の材質は、上述するように、金属や強化プラスチックのように剛性の高い材料、又はこれらと繊維集合体との組み合わせによる多孔質構造体が好ましく使用される。フィルター7の穴径は0.5〜4.0mm、好ましくは1.5〜2.0mmに設定するとよい。フィルター7の穴径が4.0mm超になると、シール剤Sの固形物がタイヤのバルブ孔に目詰まりし易くなる。
【0029】
上述するように、本発明の注入容器1は、筒状の耐圧容器内を上下に移動可能なフリーピストン又は上下に膨縮可能なブラダーにより下端側の高圧ガス室と上端側のシール剤室とに仕切り、下端側の高圧ガス室に圧縮ガス又は液化ガスを充填し、上端側のシール剤室にシール剤を充填することにより、シール剤の固形化を抑制しながら、パンク修理を行う際の注入作業を、注入量の過不足を伴うことなしに、自動的に行えるようにしたもので、コンパクトな構成でありながら優れた利点を有することから、車両に搭載する携帯用のパンクシール剤の注入容器として幅広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態によるパンクシール剤の注入容器を示す断面図である。
【図2】図1のパンクシール剤の注入容器によりシール剤を圧送している状態を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態によるパンクシール剤の注入容器を示す断面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態によるパンクシール剤の注入容器を示す断面図である。
【図5】図4のパンクシール剤の注入容器からシール剤を圧送している状態を示す断面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態によるパンクシール剤の注入容器を示す断面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態によるパンクシール剤の注入容器を示す断面図である。
【図8】(a)は図7のパンクシール剤の注入容器内においてシール剤の濾過が開始された状態を示す断面図、(b)はシール剤の濾過が完了した状態を示す断面図である。
【図9】図7のパンクシール剤の注入容器からシール剤を圧送している状態を示す断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態によるパンクシール剤の注入容器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 パンクシール剤の注入容器
2 耐圧容器
2a、2b 端部
3 吐出口
3a 封止弁
3b キャップ
4 高圧ガス室
5 シール剤室
6a フリーピストン
6b ブラダー
7 フィルター
8 ロッド
9 ロック手段
10 シール機構
G 高圧流体
S シール剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の耐圧容器の一方の端部に封止弁で封鎖された吐出口を設け、該耐圧容器内における前記吐出口とは反対側にフリーピストンを配置すると共に、前記吐出口の反対側の端部と前記フリーピストンとで仕切られた空間内に高圧流体を充填し、前記フリーピストンと前記吐出口とで仕切られた空間内にシール剤を充填したパンクシール剤の注入容器。
【請求項2】
筒状の耐圧容器の一方の端部に封止弁で封鎖された吐出口を設け、該耐圧容器内における前記吐出口の反対側の端部にブラダーを配置すると共に、該ブラダーの内部に高圧流体を充填し、該ブラダーと前記吐出口とで仕切られた空間内にシール剤を充填したパンクシール剤の注入容器。
【請求項3】
前記フリーピストン又はブラダーと前記吐出口とで仕切られた空間内における吐出口側にフィルターを配置した請求項1又は2に記載のパンクシール剤の注入容器。
【請求項4】
前記フリーピストン又はブラダーに隣接する前記吐出口側にフィルターを配置し、該フィルターにロッドを連結すると共に、該ロッドの他端を前記耐圧容器の吐出口側における外側まで貫通させ、その貫通部分をロック手段により解除可能に係止した請求項1又は2に記載のパンクシール剤の注入容器。
【請求項5】
前記フィルターの穴径が0.5〜4.0mmである請求項1、2、3又は4に記載のパンクシーリング剤の注入容器。
【請求項6】
前記高圧流体が圧縮ガス又は液化ガスである請求項1、2、3、4又は5に記載のパンクシーリング剤の注入容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−276294(P2007−276294A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106361(P2006−106361)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】