説明

パン搬送装置

【課題】パンを搬送する搬送経路上において搬送速度が異なる領域を設けることができる簡易な構成のパン搬送装置を提供する。
【解決手段】パンB2を搬送するための搬送経路Pに沿って配置され、前記パンB2を搬送する第1のディスチャージコンベア3と、前記搬送経路Pに沿って配置され、前記第1のディスチャージコンベア3が通る搬送経路P上の領域と部分的に重なる共通領域7を通り前記パンB2を搬送する第2のディスチャージコンベア9と、を備え、前記第1のディスチャージコンベア3は、前記パンB2を付勢するための第1のフライト5を有し、前記第2のディスチャージコンベア9は、前記パンB2を付勢するための第2のフライト11を有し、前記第2のディスチャージコンベア9により前記パンB2を搬送する搬送速度は、前記第1のディスチャージコンベア3により前記パンB2を搬送する搬送速度と異なるパン搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンを搬送するためのパン搬送装置に関し、特に、パンを搬送する搬送経路において搬送速度を変更できるパン搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエチレン袋等の包装部材内に縦長の(例えば3斤長の)食パンを詰めるパン包装システムが利用されている。例えば、特許文献1は、従来のパン包装システムを開示する。この従来のパン包装システムは、インフィードコンベアにより食パンをスクープに導入し、スクープの往復移動により、食パンをポリエチレン製の袋に収容し、袋に収容された食パンをスクープからディスチャージコンベアへ落下させる。そして、包装された食パンをディスチャージコンベアのフライトで次の工程(例えば、袋の封止工程)に搬送する構成である。
【0003】
なお、食パンを包装するためのスクープは、食パンを搬送する搬送経路を横切るように前進し包装部材を保持する。さらに、包装部材を保持したスクープは、再度搬送経路を横切るように後退すると、食パンが包装部材内に収容され、包装された食パンが搬送経路上に落下する。このように、従来のパン包装システムでは、スクープが往復移動することで食パンが包装される。
【0004】
別の従来のパン包装システムが特許文献2に開示されている。特許文献2が開示するパン包装システムは、食パンを付勢するフライトが装着され、食パンが載置される無端ベルトを有する第1のコンベアと、当該フライトを付勢する衝撃ストライカが装着された無端チェーンを有する第2のコンベアと、を備える。当該構成において、無端チェーンを、無端ベルトより速く回動させることで、衝撃ストライカがフライトを付勢しているときは、衝撃ストライカがフライトに当接していない場合に比べ、フライトを相対的に速く移動させる構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭44−1594号公報
【特許文献2】米国特許第6766898号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される従来の食パン等のパンを包装するパン包装システムでは、搬送経路上におけるスクープが通過する往復移動領域に、包装された食パンが存在すると、次の食パンを包装することができない。そこで、食パンを包装する包装工程を高速で行うためには、搬送経路上に落下した食パンを高速で搬送させることが考えられる。
【0007】
しかし、包装された食パンをディスチャージコンベア、すなわちパン搬送装置により搬送する搬送速度は、次の工程へ送り出すタイミングに基づいて設定される。従って、スクープの移動速度は、次工程へ送り出すタイミングを無視し、パンを包装する工程のみを考慮してパン搬送装置を高速化することができない。結果として、パン搬送装置が組み込まれるパン包装システムの処理速度を高速化することが困難であった。
【0008】
また、特許文献2に開示されるパン包装システムでは、フライトが装着されている第1の無端ベルトが伸縮可能である。従って、フライトに対する衝撃ストライカの係合が解除されると、収縮した状態の無端ベルトが伸長し、載置されているパン又はフライトが上流側に戻り、前工程の動作(例えば、スクープの動作)に干渉する恐れがある。さらに、衝撃ストライカがフライトに衝突する際の打音や、衝撃ストライカとフライトとの間の摩擦による摩耗粉が発生する恐れがある。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものである。すなわち、前工程の動作に干渉しないように、パンを搬送する搬送経路上において搬送速度を異ならせた領域を設けることができ、打音や摩耗粉が発生しない簡易な構成のパン搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のパン搬送装置の第1の態様は、パンを搬送するための搬送経路に沿って配置され、前記パンを搬送する第1のディスチャージコンベアと、前記搬送経路に沿って配置され、前記第1のディスチャージコンベアが通る搬送経路上の領域と部分的に重なる共通領域を通り前記パンを搬送する第2のディスチャージコンベアと、を備え、前記第1のディスチャージコンベアは、前記パンを付勢するための第1のフライトを有し、前記第2のディスチャージコンベアは、前記パンを付勢するための第2のフライトを有し、前記第2のディスチャージコンベアにより前記パンを搬送する搬送速度は、前記第1のディスチャージコンベアにより前記パンを搬送する搬送速度と異なる。
【0011】
本発明のパン搬送装置の第2の態様によれば、前記共通領域を除く前記搬送経路上の領域では、前記パンは、前記第1のフライトにより付勢される。
【0012】
本発明のパン搬送装置の第3の態様によれば、前記パンに当接する前記第1のフライトの当接部及び前記パンに当接する前記第2のフライトの当接部は、湾曲形状である。
【0013】
また、本発明のパン搬送装置の第4の態様によれば、前記第1のフライト又は前記第2のフライトの当接部は、回動可能である。
【0014】
また、本発明のパン搬送装置の第5の態様によれば、前記第1のディスチャージコンベア及び第2のディスチャージコンベアは、等速で回動する。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるパン搬送装置は、部分的に搬送経路が重なる第1のディスチャージコンベアと第2のディスチャージコンベアとを設け、第1のディスチャージコンベアの第1のフライトと第2のディスチャージコンベアの第2のフライトとの移動速度を異ならせる構成である。従って、簡易な構成で、前工程の動作に干渉しないように搬送経路上に沿ってパンの搬送速度を調整することができる。
さらに、搬送経路に沿って速度が異なる第1のフライト及び第2のフライトそれぞれにより、パンを搬送する構成である。従って、速度を異ならせるために部材同士を衝突させる必要がなく、打音や摩擦粉が生じる恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る食パン包装システムの主要要素を模式的に示す側面図である。
【図2】実施形態に係る食パン包装システムの主要要素を分割した状態で模式的に示す平面図である。
【図3】図1の線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】(a)は、食パン搬送装置の第1のフライトの正面図であり、(b)は、食パン搬送装置の第1のフライトの側面図である。
【図5】(a)は、食パン搬送装置の第2のフライトの正面図であり、(b)は、食パン搬送装置の第2のフライトの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明のパン搬送装置を適用した実施形態に係る食パン包装システム101を図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、実施形態に係る食パン包装システム101の主要要素を模式的に示す側面図、図2は、実施形態に係る食パン包装システム101の主要要素を分割した状態で模式的に示す平面図、図3は、図1の線III−IIIに沿った断面図、図4(a)は、食パン搬送装置の第1のフライトの正面図、図4(b)は、食パン搬送装置の第1のフライトの側面図、図5(a)は、食パン搬送装置の第2のフライトの正面図、図5(b)は、食パン搬送装置の第2のフライトの側面図である。
【0019】
なお、図2は、各構成要素の明瞭化のため、食パン包装装置103及びインフィードコンベア105と、食パン搬送装置1と、を分離した状態を示す。従って、図2に実線で示される食パン包装装置103及びインフィードコンベア105は、矢印X方向に示す二点鎖線で示される位置に配置される。また、本明細書において、下流側とは食パンが搬送される方向のことであり、上流側とはその逆の方向のことである。さらに、右側(又は左側)とは、パンが搬送される方向(下流側)に向いたときの右方(又は左方)を意味する。
【0020】
図1、2に示されるように、食パン包装システム101は、主として、食パンB1を包装するための食パン包装装置103と、前工程で製造された食パンB1を、食パン包装装置103へ搬送するためのインフィードコンベア105と、包装された食パンB2を次工程へ搬送するための食パン搬送装置1と、を備える。すなわち、包装される前の食パンB1、包装された食パンB2の搬送経路Pに沿って、食パン包装装置103の上流側には、インフィードコンベア105が配置され、食パン包装装置103の下流側には、食パン搬送装置1が配置される。
【0021】
食パン搬送装置1は、主として、搬送経路Pに沿って配置され、食パンB2を搬送する第1のディスチャージコンベア3と、第1のディスチャージコンベア3に装着され、食パンB2を付勢するための第1のフライト5と、搬送経路Pに沿って配置され、第1のディスチャージコンベア3が通る搬送経路P上の領域と部分的に重なる領域である共通領域7を通る第2のディスチャージコンベア9と、第2のディスチャージコンベア9に装着され、食パンB2を付勢するための第2のフライト11と、を備える。
【0022】
また、第2のディスチャージコンベア9により食パンB2を搬送する搬送速度は、第1のディスチャージコンベア3により食パンB2を搬送する搬送速度とは異なる。本実施形態では、第2のディスチャージコンベア9の搬送速度は、第1のディスチャージコンベア3の搬送速度より早い。
【0023】
以下に、食パン搬送装置1の各構成要素について詳細に説明する。第1のディスチャージコンベア3は、搬送経路Pの上流側に配置される上流端スプロケット13と、搬送経路Pの下流側に配置される下流端スプロケット15と、上流端スプロケット13と下流端スプロケット15とに巻回される無端チェーン17とを有する。上流端スプロケット13と下流端スプロケット15は、搬送経路Pが延びる方向に延在する搬送基台27に回転可能に固定されている。
【0024】
また、食パン搬送装置1における搬送経路Pは、食パンB2が摺動可能な板状部材である搬送板25により構成される。搬送板25は、搬送経路Pの共通領域7に配置される第2の搬送板25bと、第2のフライト搬送板25aに対し搬送経路Pの下流側に配置される第1の搬送板25aと、を有する。第1の搬送板25aと第2の搬送板25bとは、互いに搬送経路Pが延びる方向に所定距離離間し、第2の搬送板25b上を通る第2のフライト11の当接部11a(図5参照。)が、第2の駆動軸38の回りを周回できるように構成されている。第1の搬送板25aと第2の搬送板25bとは、搬送基台27に略水平に固定され、搬送板25上を食パンBが搬送される。さらに、搬送基台27は、食パン搬送装置1の箱状の筐体である装置本体29に固定されている。
【0025】
第1のディスチャージコンベア3は、第1の無端チェーン17に回転力を付与する駆動スプロケット19を有している。駆動スプロケット19は、搬送基台27に回転可能に支持され、上流端スプロケット13と下流端スプロケット15との間であって第1の無端チェーン17の外周側に配置されている。後述する駆動モータ21からの回転力が駆動スプロケット19(矢印23方向)に伝達されると、第1の無端チェーン17は、矢印Y方向に回動する。
【0026】
第1の無端チェーン17は、第1の搬送板25aの短手方向(図2の上下方向)に対向する両端部に沿って平行に配置される第1の右側無端チェーン部材17a及び第1の左側無端チェーン部材17bを有する。また、第1の右側無端チェーン部材17aは、第1の右側上流端スプロケット13a及び右側下流端スプロケット15aに巻回され、第1の左側無端チェーン部材17bは、左側上流端スプロケット13b及び左側下流端スプロケット15bに巻回されている。さらに、第1の右側無端チェーン部材17aと左側無端チェーン17bとの間には、搬送経路Pに対して垂直方向に延びる複数の第1のフライト5が両無端チェーン部材17a、17bの周方向で等間隔に固定されている。図4に示されるように、第1のフライト5は、食パンB2に当接する第1の当接部5aと、当接部5aを回転可能に支持する2つの第1のフライト支持部5bと、を有する。
【0027】
第1の当接部5aは、金属製の所定の曲率半径を有する円筒部材である。2つの第1のフライト支持部5bは、それぞれ、搬送板25に対して垂直に延在し、その長手方向長さは、第1の当接部5aが搬送板25上に載置されている食パンB2に当接できるように寸法付けされている。2つの第1のフライト支持部5bは、それぞれ第1の右側無端チェーン部材17aと第1の左側無端チェーン部材17bに固定されている。
【0028】
なお、本実施形態では、上流端スプロケット13と下流端スプロケット15との間に第1の無端チェーン17の張力を調整するためのテンション調節用スプロケット31が配置されている。
【0029】
第2のディスチャージコンベア9は、第2の駆動スプロケット39と、第2の従動スプロケット41と、第2の駆動スプロケット39及び第2の従動スプロケット41に巻回される第2の無端チェーン37とを有する。第2の無端チェーン37は、第2の搬送板25bの長手方向(図2の上下方向)に平行に配置される第2の右側無端チェーン部材37a及び第2の左側無端チェーン部材37bを有する。第2の駆動スプロケット39は、第2の右側駆動スプロケット39a及び左側従動スプロケット39bを有し、第2の従動スプロケット41は、第2の右側従動スプロケット41a及び左側従動スプロケット41bを有する。
【0030】
第2の右側無端チェーン部材37aは、第2の右側駆動スプロケット39a及び右側従動スプロケット41bに巻回され、第2の左側無端チェーン部材37bは、第2の左側駆動スプロケット39b及び左側従動スプロケット41bに巻回されている。なお、第2の右側駆動スプロケット39a及び第2の左側駆動スプロケット39bは、回転可能に支持されている第2の駆動軸38に離間配置されている。また、第2の右側従動スプロケット41a及び左側従動スプロケット41bは、回転可能に支持されている第2の従動軸42に離間配置されている。
【0031】
さらに、第2の右側無端チェーン部材37aと左側無端チェーン部材37bとの間には、第2の搬送板25bに対して垂直方向に延びる単一の第2のフライト11が両第2の無端チェーン部材37a、37bに固定されている。図5に示されるように、第2のフライト11は、搬送経路Pを交差する方向に延び、食パンB2に当接する第2の当接部11aと、第2の当接部11aの長手方向に関する両端部から所定距離の部位を支持する2つの第2のフライト支持部11bと、を有する。
【0032】
第2の当接部11aは、金属製の所定の曲率半径を有する円筒部材である。2つの第2のフライト支持部11bの長手方向長さは、第2の無端チェーン37から延びる第2の当接部11aが、第2の搬送板25b上に載置されている食パンB2に当接できるように寸法付けされている。第2のフライト支持部11bの一端部は、第2の当接部11aの外周面に設けられた溝部に第2の当接部11aを回動可能に保持する湾曲形状であり、他端部は直線状に延び右側(左側)無端チェーン部材37a(37b)に固定されている。なお、第2のフライト支持部11bの一端部の外周面と、第2の当接部11aの外周面とが、ほぼ面一になるように、第2の当接部11a及び第2のフライト支持部11bは寸法付けされている。
【0033】
また、第1の無端チェーン17及び第2の無端チェーン37は、共通領域7に沿って延び、共通領域7は、食パンB2が搬送される搬送経路P上の同一区間である(すなわち、第2の駆動スプロケット39は、上流端スプロケット13より搬送経路Pに関し下流側に配置され、第2の従動スプロケット41は、下流端スプロケット15より搬送経路Pに関し上流側に配置される。)。従って、第1及び第2の無端チェーン17、37の動作が干渉しないように、第1の無端チェーン17及び第2の無端チェーン37の、搬送経路Pの短手方向に関する相対位置は、異なる。
上記構成の第2のディスチャージコンベア3の第2の駆動スプロケット39が回転されると、第2の無端チェーン37及び第2のフライト11が回動し、第2の従動スプロケット41が回動する。
【0034】
次に、食パン搬送装置1の駆動系について説明する。図3に示されるように、駆動源である駆動モータ21が装置本体29内に配置されている。駆動モータ21の不図示の回転軸は、ウォームギア等(不図示)を介して駆動シャフト51に連結されている。駆動シャフト51の一端部には、第1の搬送スプロケット53が装着されている。図1に示されるように、第1の搬送スプロケット53と、駆動スプロケット19の回転軸に同心に固定されている第1の従動スプロケット55とは、第1の搬送駆動チェーン57により巻回されている。従って、駆動モータ21の回転力は、第1の搬送スプロケット53、第1の搬送駆動チェーン57、及び第1の従動スプロケット55を介して、第1の駆動スプロケット19に伝達される。
【0035】
さらに、図3に示す駆動シャフト51には、その軸方向に関して第1の搬送スプロケット53から離れる位置に、第2の搬送スプロケット59が装着されている。第2の搬送スプロケット59は、装置本体29のほぼ中央に配置される伝達機構61に第1の伝達チェーン63を介して連結されている。また、伝達機構61は、第2の伝達チェーン65により、伝達スプロケット67に連結される。伝達スプロケット67が装着される回転軸には、伝達スプロケット67と同心に、同軸スプロケット69が装着されている。図1に示されるように、同軸スプロケット69と、第2の駆動軸38に固定されている駆動伝達スプロケット71とには、第3の伝達チェーン73が巻回されている。よって、駆動モータ21の回転力は、各要素及び駆動伝達スプロケット71を介して第2の駆動スプロケット39に伝達される。
【0036】
図3に示すように、伝達機構61は、第1の伝達軸75と、第2の伝達軸77と、第1及び第2の伝達軸75、77それぞれに装着される入力スプロケット79及び出力スプロケット81と、入力及び出力スプロケット79、81間で回転力を伝達する入力ギア83及び出力歯車85と、を有する。第1の伝達軸75の軸心及び第2の伝達軸77の軸心は、互いに平行に、第1及び第2の伝達軸75が回転可能に装置本体29に支持されている。第1の伝達チェーン63は、入力スプロケット79に巻回され、駆動モータ21からの回転力は入力スプロケット79に伝達される。入力スプロケット79に供給された回転力により、第1の伝達軸75が回動すると、第1の伝達軸75に装着されている入力ギア83が回動する。
【0037】
入力ギア83の回転力は、入力ギア83に噛合する出力ギア85に伝達される。出力ギア85は、第2の伝達軸77に装着されている。従って、出力ギア85の回転力が出力スプロケット81に伝達される。出力スプロケット81と、伝達スプロケット67とは、第2の伝達チェーン65により巻回されている。従って、出力スプロケット81の回転力は、第2の伝達チェーン65を介して伝達スプロケット67へと伝達される。
【0038】
上述の通り、本実施形態の食パン搬送装置1では、単一の駆動モータからの回転力により、第1のディスチャージコンベア3及び第2のディスチャージコンベア9が作動する。また、第1のディスチャージコンベア3及び第2のディスチャージコンベア9の搬送速度は、上述した駆動系を構成する要素の数や寸法等を変えることにより調節することができる。
【0039】
〔インフィードコンベア〕
次に、インフィードコンベア105の構成について簡単に説明する。インフィードコンベア105は、主として、インフィード駆動スプロケット111と、インフィード上流端スプロケット113と、インフィード下流端スプロケット115と、インフィード上流端スプロケット113及びインフィード下流端スプロケット115を巻回するインフィード無端チェーン118と、を備える。
【0040】
インフィード上流端スプロケット113からインフィード下流端スプロケット115までのインフィード無端チェーン118の領域は、搬送経路Pに沿って延在する。インフィード無端チェーン118には、その周方向で等間隔に複数のインフィードフライト119が、配置されている。インフィードコンベア105の筐体であるインフィード本体121には、水平に延び、搬送経路Pを構成するインフィード板123が固定されている。包装前の食パンB1は、インフィードフライト119により付勢され、インフィード板123上を摺動する。なお、インフィード板123は、前述の搬送板25より図1の上下方向において上方に延在し、インフィード板123と搬送板25とは、包装システム101が載置される床面に対する高さが異なる。
【0041】
インフィードコンベア105は、前述の駆動モータ21により回転力が供給される。図3に示されるように、駆動モータ21により回転される駆動シャフト51には、インフィードスプロケット114が装着されている。インフィードスプロケット114と、インフィード伝達スプロケット117とは、インフィード伝達チェーン120により巻回されている。インフィード伝達スプロケット117の回転軸122には、インフィード伝達スプロケット127がインフィード伝達スプロケット117と同心に装着されている。インフィード伝達スプロケット117と、インフィード駆動スプロケット111と同心にインフィード駆動軸129に装着されているインフィード伝達スプロケット131と(図1参照。)、には、伝達無端チェーン125が巻回されている。
【0042】
このように、駆動モータ21からの回転力は、上記の要素を介してインフィード駆動スプロケット111に伝達される。インフィード駆動スプロケット111が回動すると、インフィード無端チェーン118は、矢印133方向に回動する。従って、前工程から供給される食パンB1は、インフィード板123上をインフィードフライト119により、インフィード上流端スプロケット113側から、インフィード下流端スプロケット115側へと搬送経路Pに沿って搬送される。
【0043】
〔食パン包装装置〕
食パン包装装置103の構成について簡単に説明する。食パンB1は、インフィードコンベア105により食パン包装装置103に導入される。食パン包装装置103は、食パンB1が収容されるポリエチレン袋などの包装部材を保持するスクープと、搬送経路Pを横切る方向にスクープを往復移動させる往復移動機構と、を備える。往復移動機構及びスクープは、公知の構成であるから、その構成の詳細は割愛する。
【0044】
図1、2では、スクープを構成する下方スクープ151のみを示している。図2は、下方スクープ151が、下方スクープ151の先端部151aと不図示の上スクープの先端部により包装部材を保持する位置に到達した前進位置にある状態を示している。この状態で、インフィードコンベア105により搬送される食パンB1が下方スクープ151上に導入される。なお、下方スクープ151の食パンB1が載置される領域は、水平に延在する。
【0045】
なお、図1の側面視において、下方スクープ151の平坦面の図1における上下方向位置は、搬送台25より上方であり、インフィード板123より下方にある。また、下方スクープ151は、第1及び第2のフライト5、11の動作に干渉しない位置関係にあることは言うまでもない。
【0046】
食パンB1が載置されている下方スクープ151を含むスクープが後退位置(一点鎖線で示す状態(符号152))方向に後退すると、食パンB1が不図示の保持部材により搬送経路P上に維持されるとともに、下方スクープ151の先端部151aに保持され、開口された包装部材内に食パンB1が収容される。さらに、スクープが完全に後退位置に到達すると、包装された食パンB2が、下方スクープ151から、第1のディスチャージコンベア3の搬送台5上に落下する。
【0047】
〔食パン搬送装置の動作〕
食パン搬送装置1では、第2の無端チェーン37が、第1の無端チェーン17より速い回転速度で回動する。また、第1の無端チェーン17及び第2の無端チェーン37は、それぞれ等速で回動するように駆動モータ21が不図示の制御部により制御されている。前述したように下方スクープ151から搬送板25上に包装された食パンB2が落下すると、第2のフライト11が最初に食パンB2に当接する。搬送経路Pの共通領域7では、第2のフライト11が食パンB2を搬送する。共通領域7の最も下流側の位置、すなわち、第2のフライト11が第2の駆動スプロケット39を周回し始め、第2のフライトの当接部11aが、食パンB2から離れる地点まで、第2の無端チェーン37の搬送速度で食パンB2を移動する。
【0048】
このように、第1のフライト5が共通領域7に到達する前に第2のフライト11が共通領域7に進入し、食パンB2を搬送した後、第1のフライト5が、食パンBに当接するようなタイミングで、第1及び第2のフライト5、11が周回している。従って、第2のフライト11は、第1のフライト5の各々が共通領域7に進入する前に、共通領域7に進入するような速度で、回動する構成である。
【0049】
その後、回動する第1の無端チェーン17に装着されている第1のフライト5が、停止している食パンB2に当接する。食パンB2は、第1のフライト5により、搬送台25上を下流端スプロケット15の方向(搬送経路Pの下流方向)に搬送される。すなわち、共通領域7を除く搬送経路P上の領域では、第1のフライト5により食パンB2が付勢され、食パンB2が搬送される。
【0050】
なお、発明者等は、鋭意研究したところ、往復移動(下スクープ155の後退位置152から前進位置まで進み、さらに、前進位置から後退位置に戻るまでの移動)に要する所要時間の10%〜15%以内に、搬送経路P上に落下した包装済みの食パンB2を、スクープが往復移動する空間外へ移動させるように、第2のフライト11、すなわち第2の無端チェーン37の回動速度を設定することが好ましいという知見を得ている。
【0051】
このように、第2のフライト11により、搬送台25上に落下した食パンB2を、スクープの往復移動を妨げないような地点へ移動させることで、次の食パンB1に対する包装工程に移行できる。また、第2のフライト11による食パンB2に対する係合が解除された後、第1のフライト5が当該食パンB2に係合し、搬送する。第1のフライト5の回動速度は、後工程に食パンB2を適時に供給できる速さに設定されている。このように、等速移動する複数のベルトコンベアであって、複数のベルトコンベア各々の搬送速度を変えることにより、搬送経路Pの領域毎に食パンB2を搬送する搬送速度を自由に変更することができる。
【0052】
また、食パンB2を同一時間で所定距離だけ搬送する場合、第1の無端チェーン17及び第2の無端チェーン37を加減速させて移動させる構成より、等速(定速)で移動させる構成の方が、第1及び第2のフライト5、11の最高速度を低くできる。結果として、食パンB2に与える衝撃を最小限に抑えることができる。
【0053】
さらに、第1の当接部5a及び第2の当接部11aは回転可能であり、それらの長手方向に鉛直な断面が円形状である。従って、第1及び第2のフライト5、11が食パンB2から離れる際、すなわち、第1及び第2の当接部5a、11aが下流端スプロケット15の回転軸16又は駆動軸42の回りを回動するに従い、当接部5a、11aが回転しつつ食パンB2に係合する。結果として、食パンB2が変形すること、傷づくこと、一部が削り取られることを防止できる。また、食パンB2の包装部材が傷付くことや裂けることを防止できる。
【0054】
また、第1及び第2のフライトの当接部は、円筒形状に限定されない。食パンに当接する当接部が滑らかな湾曲形状であれば良い。すなわち、食パンから当接部が離れる際に食パンを傷つけないように、フライトの当接部は、凹凸や突起のない形状であればよい。
本実施形態では、回転力を伝達するためにスプロケットとチェーンとを用いているが、プーリとベルトとにより回転力を伝達することも可能である。
【0055】
本実施形態の食パン包装システムは、食パン包装装置103、インフィードコンベア105と、食パン搬送装置1とを組み合わせた構成である。しかし、本発明この構成に限定されない。本発明のパン搬送装置は、パンの製造、包装、搬送工程といった種々のパン製造工程において使用することができる。搬送経路の所定領域において搬送速度を変える必要がある場合に用いることができる。
【0056】
なお、本実施形態の変形例として、第1のディスチャージコンベア3の上流側(又は下流側)に配置される上流端スプロケット13(又は下流端スプロケット15)と、第2のディスチャージコンベア9の第2の従動スプロケット41(又は第2の駆動スプロケット39)と、が単一の軸に配置される同軸構成であって、両スプロケットが互いに独立して回動できる構成としても良い。
【0057】
なお、本実施形態の食パン包装装置は、ポリエチレン袋で食パンを包装する構成であるが、本発明は、この構成に限定されない。包装部材は、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等のプラスチック製の部材に限定されず、紙製、金属製、布製等の材料を用いてもよい。また、第1及び第2のフライト5、11の数は、任意に変更できる。
【0058】
本実施形態は、直方体形状の角型食パンを用いて説明したが、本発明は、角型食パンに限定されず、種々の寸法及び形状のパンを搬送するためのパン搬送装置やパンを切断するためのパン切断装置に適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 食パン搬送装置
3 第1のディスチャージコンベア
5 第1のフライト
7 共通領域
9 第2のディスチャージコンベア
11 第2のフライト
13 上流端スプロケット
15 下流端スプロケット
17 第1の無端チェーン
19 駆動スプロケット
21 駆動モータ
25 搬送板
27 搬送基台
29 装置本体
31 テンション調節用スプロケット
37 第2の無端チェーン
38 第2の駆動軸
39 第2の駆動スプロケット
41 第2の従動スプロケット
42 第2の従動軸
51 駆動シャフト
53 第1の搬送スプロケット
55 第1の従動スプロケット
57 第1の搬送駆動チェーン
59 第2の搬送スプロケット
61 伝達機構
69 同軸スプロケット
71 駆動伝達スプロケット
73 第3の伝達チェーン
101 食パン包装システム
103 食パン包装装置
104 搬送台
105 インフィードコンベア
111 インフィード駆動スプロケット
113 インフィード上流端スプロケット
115 インフィード下流端スプロケット
118 インフィード無端チェーン
123 インフィード板
151 下方スクープ
B1 包装される前の食パン
B2 包装された食パン
P 搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンを搬送するための搬送経路に沿って配置され、前記パンを搬送する第1のディスチャージコンベアと、
前記搬送経路に沿って配置され、前記第1のディスチャージコンベアが通る搬送経路上の領域と部分的に重なる共通領域を通り前記パンを搬送する第2のディスチャージコンベアと、を備え、
前記第1のディスチャージコンベアは、前記パンを付勢するための第1のフライトを有し、前記第2のディスチャージコンベアは、前記パンを付勢するための第2のフライトを有し、
前記第2のディスチャージコンベアにより前記パンを搬送する搬送速度は、前記第1のディスチャージコンベアにより前記パンを搬送する搬送速度と異なることを特徴とするパン搬送装置。
【請求項2】
前記共通領域を除く前記搬送経路上の領域では、前記パンは、前記第1のフライトにより付勢されることを特徴とする請求項1に記載のパン搬送装置。
【請求項3】
前記パンに当接する前記第1のフライトの当接部又は前記パンに当接する前記第2のフライトの当接部は、湾曲形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパン搬送装置。
【請求項4】
前記第1のフライト又は前記第2のフライトの当接部は、回動可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のパン搬送装置。
【請求項5】
前記第1のディスチャージコンベア及び第2のディスチャージコンベアは、等速で回動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のパン搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66892(P2012−66892A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211467(P2010−211467)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000128728)株式会社オシキリ (40)
【Fターム(参考)】