説明

パン製造機

【課題】パン生地表面への蒸気吹き付け効果に優れたパン製造機を提供する。
【解決手段】調理材料(図示せず)を収納し練り羽根9を有したパン容器6と、水が収容され蒸気を発生させるための着脱自在な水容器13と、パン容器6や水容器13を加熱するヒータ7を具備した焼成室4と、練り羽根9を回転駆動するモータ3と、複数の調理メニューを有し調理工程の動作を制御する制御装置22とを備え、水容器13の下部でヒータ7の上方と側方を覆い、ヒータ7上に水容器13を着脱自在に嵌合載置できるようにしたもので、水容器13がヒータ7上に確実に固定され、ヒータ7との接触面積も増してヒータ7からの熱伝導性が向上するので、蒸気を焼成工程の初期段階からパン生地に効果的に吹き付けることができ、パンの出来映えを大幅に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の調理材料を機器に投入するだけで、自動的にパン等を作ることができるパン製造機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパン製造機には、水蒸気発生手段を備え、製パン工程の過程において水蒸気を加えることにより、パンの出来映えを向上させるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、上記特許文献1に記載された従来のパン製造機の縦断面図である。図6に示すように、30は従来のパン製造機の本体で、32は、材料を入れるパンケースで、底部に羽根31が回転自在に設けられている。33は、前記羽根31を回転駆動する駆動手段、34は、製パンを行う調理室、35は、練りやねかし、発酵、焼成を行う際の加熱手段であるヒータ、39は、調理室34或いはその近傍の温度を検知する温度検知手段、36は、前記駆動手段33、前記ヒータ35、温度検知手段39を制御する制御手段、37は、製パンコースを選択する選択手段、38は、選択手段37で選択された製パンコースを表示する表示手段、40はヒータ35に接着され、水を収納するとともに、前記調理室34内に水蒸気を注入する際に使用する水容器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−275504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記従来のパン製造機の構成では、水を入れた水容器40をつまみながらヒータ35上にセットする操作がしづらいとともに、水容器40の取り付けが不安定なため、本体30の傾きや振動により、水容器40が倒れたり、ヒータ35から落下するなどして、中の水がこぼれてしまい、パンがうまく焼けなかったり錆や故障の原因になることがあり、水容器40の使い勝手が悪かった。
【0006】
また、水容器40は、ヒータ35と接触しその熱伝導により高温になるが、水容器40とヒータ35の接触面積が小さいため、ヒータ35から水容器40への熱伝導効率が悪く、パンの出来映え改善に効果のある蒸気の発生に時間がかかり、パン生地表面に蒸気が当り始める前に、パン生地の焼成が進んでパンの外皮が固化し焼き色が付き始め、蒸気によるパンの出来映え向上の効果が半減していた。
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、蒸気を発生させてパンの出来映えを向上する水容器をヒータ上に確実に固定してパンの出来映え不良や製品の故障を防ぐとともに、パン生地表面への蒸気吹き付け効果を最大限に発揮することができるパン製造機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明のパン製造機は、調理材料を収納すると共にそれを混練する練り羽根を有したパン容器と、水が収容され蒸気を発生させるための着脱自在な水容器と、前記パン容器や前記水容器を加熱するヒータを具備した焼成室と、前記焼成室の温度を検知する温度検知部と、前記練り羽根を回転駆動するモータと、複数の調
理メニューを有し調理工程の動作を制御する制御装置とを備え、前記水容器の下部で前記ヒータの上方と側方を覆い、前記ヒータ上に前記水容器を着脱自在に嵌合載置できるように形成したもので、水容器はヒータ上に確実に固定されるとともに、ヒータとの接触面積も増してヒータからの熱伝導性が向上し、蒸気を焼成工程の初期段階からパン生地に当てることができ、また水容器の脱落によるパンの出来映え不良や製品の故障を防ぎ、パン生地への蒸気の吹き付け効果を最大限に発揮させ、パンの出来映えを大幅に向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパン製造機は、水蒸気発生手段によるパンの出来映え不良や製品の故障を防ぎつつ、蒸気の吹き付け効果を向上させてパンの出来映えを大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1におけるパン製造機の縦断面図
【図2】同パン製造機の横断面図
【図3】同パン製造機の外蓋を開いた状態を示す平面図
【図4】同パン製造機の水容器の斜視図
【図5】本発明の実施の形態2におけるパン製造機の縦断面図
【図6】従来のパン製造機の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、調理材料を収納すると共にそれを混練する練り羽根を有したパン容器と、水が収容され蒸気を発生させるための着脱自在な水容器と、前記パン容器や前記水容器を加熱するヒータを具備した焼成室と、前記焼成室の温度を検知する温度検知部と、前記練り羽根を回転駆動するモータと、複数の調理メニューを有し調理工程の動作を制御する制御装置とを備え、前記水容器の下部で前記ヒータの上方と側方を覆い、前記ヒータ上に前記水容器を着脱自在に嵌合載置できるように形成したもので、水容器はヒータ上に確実に固定されるとともに、ヒータとの接触面積も増してヒータからの熱伝導性が向上し、蒸気を焼成工程の初期段階からパン生地に当てることができ、また水容器の脱落によるパンの出来映え不良や製品の故障を防ぎ、パン生地への蒸気の吹き付け効果を最大限に発揮させ、パンの出来映えを大幅に向上させることができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の水容器の外周面に複数のリブまたは/及び凸形状を設け、これらのリブまたは/及び凸形状を焼成室の内面に当接させて前記水容器を保持するようにしたもので、水容器と焼成室の接触面積を最小限に抑えるため、水容器の熱が焼成室に逃げるのを防止するとともに、水容器と焼成室の間に空間を確保できるため、水容器によるヒータ遮熱の悪影響を低減し焼成室内の温度分布の偏りが低減される。そのため水容器の加熱速度が早まり、パン生地への蒸気吹き付け量を効果的に増すとともに、パンの焼きムラを防ぎ出来映えを大幅に向上させることができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の水容器を対向する2ヶ所に配したもので、水容器が小型化され蒸気吹き付け量が効果的に増すとともに、水容器を配した対面間の温度と蒸気の吹き付け具合に差がなくなるため、パン外皮の焼色やツヤにムラが生じるのを防ぎ、パンの出来映えを大幅に向上させることができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるパン製造機の縦断面図、図2は、同パン製
造機の横断面図、図3は、同パン製造機の外蓋を開いた状態を示す平面図、図4は、同パン製造機の水容器の斜視図である。
【0016】
図1〜4において、1は、本実施の形態におけるパン製造機の本体で樹脂で形成され、その本体1の下部にはシャーシ2が取付けられ、このシャーシ2には、モータ3と、焼成室4と、容器取付台5が取り付けられている。また、焼成室4の内部には、パン等の調理材料がセットされる着脱自在なパン容器6と、ヒータ7と、焼成室4内の温度を検知する温度検知部8が設けられている。
【0017】
さらにパン容器6は、調理材料を混練する練り羽根9と、練り羽根9が嵌合されベルト10を介してモータ3によって回転駆動される回転軸11と、パン容器6の着脱時や持ち運び時に握る把手12を備えている。
【0018】
ヒータ7の上には、パン生地の焼成中に発生させる蒸気の発生源となる水を収容する水容器13が着脱自在に載置されている。この水容器13は、アルミ製で略直方体に形成され、略長方形を成す平面形状の対向する一方の長辺に設けたつまみ部14と、他方の長辺に設けたつまみ部15を、互いの正面に対向しないように配設している。
【0019】
また、水容器13の下部には、ヒータ7に着脱自在に嵌合載置され、ヒータ7の上方と側方を覆う凹部16を形成し、さらに、外周面コーナー部には、複数のリブ17を設けている。さらに、水容器13の内面には、パンのサイズや種類等に応じ最適な蒸気量をパン生地に当てるのに必要な水量を示す複数の段差18が、段階的に全周にわたり形成されている。なお、水容器13は、対面側のヒータ7上に載置することも可能で、かつ表裏はどちらに向けても載置できるように、凹部16とリブ17は対称形状に形成され、リブ17も、水容器13の表裏両面に設けている。
【0020】
本体1の上部には、内蓋19を具備すると共に焼成室4を開閉する外蓋20が回動自在に取り付けられるとともに、メニューの選択や調理のスタート等を行う操作部材21が取り付けられている。また、内部には、練り羽根9を回転させるモータ3、調理材料を加熱するヒータ7等の通電を制御し、温度検知部8により検知された温度情報に基づいて、混練、ねかし、発酵、ガス抜き、蒸気発生、焼成等の調理工程を自動的に行う制御装置22が設けられている。
【0021】
以上のように構成された本実施の形態におけるパン製造機について、以下に蒸気を発生させてパンを焼き上げるまでの動作と作用を説明する。
【0022】
まず、パンのサイズや種類等に応じて水容器13の所定の段差18まで水を注いだ後、つまみ部14またはつまみ部15を指でつまみ、この水容器13をヒータ7の上に載置して、イースト、小麦粉、砂糖、塩、スキムミルク、バター、水等のパン材料を入れたパン容器6を、焼成室4内の容器取付台5にセットし外蓋20を閉じる。
【0023】
次に、蒸気を発生させて焼くパンのメニューを操作部材21上のキー(図示せず)で選択しスタートキー(図示せず)を押すと、必要に応じパン材料が予熱された後、練り羽根9が回転し始めパン材料を混練する混練工程が始まる。パン材料が所定の時間混練されパン生地が形成されると、混練工程が終了し練り羽根9の回転が停止する。
【0024】
その後、ヒータ7を随時入り切りして焼成室4内とパン生地を発酵に適した温度に所定の時間保つ発酵工程に入る。この時、ヒータ7が短時間通電されるため水容器13からは少量の水分が蒸発放出され、パン生地を含む焼成室4内は高湿度に保たれ乾燥を防止できるため、膨化が促進される。
【0025】
さらに発酵がある程度進むと、練り羽根9を微小に間欠回転させて、発酵したパン生地中のガスを抜き、パン生地のきめを均一に整えるガス抜き工程が行われる。これら発酵工程とガス抜き工程は、パンの種類により異なるが、2〜3回繰り返し行われパン生地が仕上がる。
【0026】
次に、仕上がったパン生地を焼き上げる焼成工程に入ると、パンの種類や焼色の設定により異なるが、焼成室4内の温度を140〜170℃に上げるため、ヒータ7がフル通電される。すると、焼成室4内の温度が上昇するとともに水容器13も加熱され、収容された水が蒸発してなくなるまで、水容器13からパンのサイズや種類に応じた最適量の水蒸気が発生し、焼成室4内に水蒸気を充満させながらパン生地を焼き上げる。
【0027】
これにより、パン生地に最適量の蒸気を当てて、パン生地表面の乾燥を防止できるため、糊化が促進されメイラード反応によりツヤが生じるとともに膨化も促進され、パンの出来映えを大幅に向上させることができる。
【0028】
パンの焼き上げ後はミトンを手に着用して、把手12を持ってパンの入ったパン容器6を取出し、焼成室4を室温まで冷却した後、つまみ部14またはつまみ部15を指でつまんで、水容器13を取外す。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、水容器13の下部にヒータ7の上方と側方を覆う凹部16を、ヒータ7上に着脱自在に嵌合載置できるように形成することにより、水容器13は、凹部16を介してヒータ7上に確実に固定されるため、本体1が傾いたり混練工程で振動しても水容器13が倒れたりヒータ7から落下することがなく、また水がこぼれるのを防止できるので、水容器13の脱落によりパンがうまく焼けなかったり、錆や故障が発生するのを防ぐことができる。
【0030】
また凹部16を介して、ヒータ7と水容器13の接触面積が増し、ヒータ7からの熱伝導性が向上して蒸気発生の開始が早まるため、焼成工程が進みパン生地の外皮に焼き色が付き固化し始める前に、蒸気を効果的にパン生地に当てることができ、パン生地表面の乾燥を防ぎ糊化が促進されて、メイラード反応によりツヤが生じるとともに膨化も促進され、パンの出来映えを大幅に向上させることができる。
【0031】
さらに水容器13の外周面のコーナー部に複数のリブ17を設け、そのリブ17を焼成室4の内面に当接させて水容器13を保持することにより、水容器13と焼成室4の接触面積が最小限に抑えられ、水容器13より温度の低い焼成室4で水容器13が冷却されるのを防止できるため、水容器13の加熱速度が早まり蒸気の発生タイミングがさらに早められ、パン生地への蒸気吹き付け量を効果的に増すことができる。
【0032】
また水容器13と焼成室4の間にリブ17を介して空間が確保され、ヒータ7からの熱気が水容器13と焼成室4の間を循環するため、水容器13によるヒータ7遮熱の悪影響を低減し、焼成室4内の温度分布の偏りが低減されるので、水容器13載置側のパンの焼色が薄くなるのを抑え、パンの焼きムラを防ぎ出来映えを向上させることができる。
【0033】
なお本実施の形態では、図4に示すように、水容器13の外周面のコーナー部上端から下端までリブ17を設けているが、リブ17の代わりに前記上端や下端に凸形状を設けても、水容器13と焼成室4の接触面積を小さくし、水容器13と焼成室4の間に空間を確保できるため、前記のようなリブ17と同様な作用効果が得られる。
【0034】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態におけるパン製造機の縦断面図である。本実施の形態におけるパン製造機の構成は、水容器24の配置を除き、図1〜4に示した実施の形態1におけるパン製造機と同一であるため、個々の説明を省略し、実施の形態1と相違する水容器24の配置について説明する。
【0035】
図5において、本実施の形態におけるパン製造機は、2つの水容器24を備え、それぞれアルミ製で略直方体に形成され、略長方形を成す平面形状の対向する一方の長辺に設けるつまみ部25と、他方の長辺に設けるつまみ部(図示せず)が、互いの正面に対向しないように配設され、ヒータ7上の対向する2ヶ所に着脱自在に載置されている。
【0036】
また水容器24のそれぞれの下部には、ヒータ7に着脱自在に嵌合載置され、ヒータ7の上方と側方を覆う凹部26が形成され、外周面のコーナー部には、複数のリブ27を設けている。さらに各水容器24の内面には、パンのサイズや種類等に応じ最適な蒸気量をパン生地に当てるのに必要な水量を示す複数の段差28が、段階的に全周にわたり形成され、水容器24の深さ寸法Bは、上記実施の形態1の水容器13の深さ寸法A(図2参照)よりも小さく形成している。また2つの水容器24は、同一形状で、対向するヒータ7上のどちら側にも載置することが可能で、かつ表裏はどちらに向けても載置できるように、凹部26とリブ27は対称形状に形成されている。
【0037】
以上のように本実施の形態においては、対向する2ヶ所に水容器24を配することにより、各々の水容器24に入れる水量が半分になり、水容器24も小型化され、しかも水容器24内の水が沸騰するまでの時間が短縮され蒸気の発生が早まるため、焼成工程でパン生地の外皮に焼き色が付き固化し始める前に、蒸気を効果的にパン生地に当てることができ、パン生地表面の乾燥を防ぎ糊化が促進されて、メイラード反応によりツヤが生じるとともに膨化も促進され、パンの出来映えを向上させることができる。
【0038】
また、蒸気を発生する水容器24を2つに分けて配設することで、水容器24を配した対面間の温度と蒸気の吹き付け具合に差がなくなり、焼成室4内の温度と蒸気の分布をより均一に近付けることができるため、パン外皮の焼色やツヤにムラが生じるのを防ぎ、パンの出来映えをさらに向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように本発明にかかるパン製造機は、パンの出来映えを大幅に向上する水蒸気発生手段を構造の簡単な水容器で構成しているので、パン製造機はもちろん、蒸し機能を有した調理器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 本体
3 モータ
4 焼成室
6 パン容器
7 ヒータ
9 練り羽根
13、24 水容器
16、26 凹部
17、27 リブ
18、28 段差
22 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理材料を収納すると共にそれを混練する練り羽根を有したパン容器と、水が収容され蒸気を発生させるための着脱自在な水容器と、前記パン容器や前記水容器を加熱するヒータを具備した焼成室と、前記焼成室の温度を検知する温度検知部と、前記練り羽根を回転駆動するモータと、複数の調理メニューを有し調理工程の動作を制御する制御装置とを備え、前記水容器の下部で前記ヒータの上方と側方を覆い、前記ヒータ上に前記水容器を着脱自在に嵌合載置できるように形成したパン製造機。
【請求項2】
水容器の外周面に複数のリブまたは/及び凸形状を設け、これらのリブまたは/及び凸形状を焼成室の内面に当接させて前記水容器を保持するようにした請求項1に記載のパン製造機。
【請求項3】
水容器を対向する2ヶ所に配した請求項1または2に記載のパン製造機。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−251028(P2011−251028A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127464(P2010−127464)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】