説明

パーキングロック装置

【課題】部品点数が少なく、アクチュエータをより小型することができるパーキングロック装置を提供する。
【解決手段】セクターギア20のギア部23の一側にロック側嵌合凹部25、他側にアンロック側嵌合凹部24を形成する。ギア部23と噛合する駆動ギアG3に無歯部G3aを形成する。ロック側嵌合凹部25と無歯部G3aの嵌合面を、無歯部G3aがロック側嵌合凹部25と嵌合している状態で、セクターギア20にアンロック方向の外力が加えられた時、ロック側嵌合凹部25の歯溝27側の端部が、無歯部G3aの外周面に当たって回動不能になるように形成する。又、アンロック側嵌合凹部24と無歯部G3aの嵌合面を、無歯部G3aがアンロック側嵌合凹部24と嵌合している状態で、セクターギア20にロック方向の外力が加えられた時、アンロック側嵌合凹部24の歯溝26側の端部が、無歯部G3aの外周面に当たって回動不能になるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の変速装置には、シフトレバーをPレンジにしたとき、変速装置内部に設けたパーキングギアと係合し、車両が不用意に動かないようにさせるパーキングロック装置が備えられている。
【0003】
この種のパーキングロック装置は、例えば特許文献1で示すように、アクチュエータ(モータ)がコントロールロッドを介してディテントプレートを回転駆動させると、自動変速機制御装置とパークロッドが同時に摺動操作されるように構成されている。そして、アクチュエータの駆動によって、自動変速機制御装置がPレンジになる時に、パークロッドの先端に設けられた円錐状のロックカムが、パーキングロックポールをパーキングギアに噛合するロック位置に変位操作する。これによって、パーキングロックポールが噛合したパーキングギアは回転が禁止されて、自動変速機の出力軸の回転も規制されるようになっている。このとき、ディテントプレートの変位はローラ付き板バネによってPレンジに保持可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−39094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のパーキングロック装置では、パーキングロックポールをロック位置に変位操作するロックカム、そのロックカムを押し引き操作するコントロールロッド、ディテントプレートの変位を規制するローラ付き板バネなどといった多数の部材を設置する必要があるため、変速ユニット全体としての小型化を阻害する傾向があった。
【0006】
しかも、パーキングロック装置の駆動には、比較的大きなトルクを必要とするため、一般にアクチュエータ(モータ)とコントロールロッドの間に減速比の大きな減速機構を設けている。その結果、減速機構に用いられる歯車機構は、抵効率の歯車機構となるため、必然的に大型のモータを用いなければならず、パーキングロック装置の大型化につながっていた。
【0007】
また、シフトレバーがPレンジにあってパーキングロックポール、ディテントプレートがロック位置あるときに、これらパーキングロックポールや、ディテントプレートに何らかの要因でアンロック位置の方向に力が加えられた場合、アンロック位置側に回動しないように防止部材が設けられている。これら防止部材を設けることによって、部品点数が増加し、パーキングロック装置のさらなる大型化につながっていた。
【0008】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであって、その目的は用いる部品点数を少なくでき、装置全体をより小型することができるパーキングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、第1支軸を回転中心に回動してパーキングギアと噛合するロック位置と前記パーキングギアとの噛合が解除されるアンロック位置に回動案内されるロックポールと、駆動ギアと噛合し、その駆動ギアの正逆回転によって第2支軸を回転中心として往復回動して前記ロックポールを、前記ロック位置とロック解除位置に案内する減速ギアと、前記駆動ギアを正逆回転させるモータとを有したパーキングロック装置であって、前記駆動ギアは、その一部に無歯部を形成した欠歯車で構成し、前記減速ギアは、その円弧状の外周面の一部にギア部を形成し、そのギア部の一側に、前記ロックポールがロック位置に案内された時、前記無歯部と嵌合する第1嵌合部を、そのギア部の他側に、前記ロックポールがアンロック位置に案内された時、前記無歯部と嵌合する第2嵌合部を形成し、前記第1及び第2嵌合部と前記無歯部の各嵌合面は、前記駆動ギアに回動力が加えられたとき、前記無歯部の嵌合面が第1及び第2嵌合部の嵌合面に摺接して前記減速ギアとの噛合を許容し、前記減速ギアに回動力が加えられたとき、前記第1及び第2嵌合部の嵌合面が前記無歯部の嵌合面と当接して前記減速ギアの回転を禁止する制御面を形成した。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、第1嵌合部と無歯部a、第1及び第2嵌合部の嵌合面に形成した制御面によって、ロック位置にある減速ギアが、何らかの要因で、アンロック位置の方向に力が加えられても、アンロック位置側に回動しない。その結果、ロック位置あるロックポールがパーキングギアとの噛合が解除されることが防止される。
【0011】
また、アンロック位置にある減速ギアが、何らかの要因で、ロック位置の方向に力が加えられても、ロック位置側に回動しない。その結果、アンロック位置にあるロックポールがパーキングギアと噛合されることが防止される。
【0012】
しかも、第1及び第2嵌合部と駆動ギアの無歯部は、減速ギアと駆動ギアの一部として一体的に形成できるので、回転防止機構のための部品点数を増加させることはなく、パーキングロック装置の小型化を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパーキングロック装置において、前記第1支軸を回転中心としてロック位置とアンロック位置との2位置間を回動する前記ロックポールは、前記減速ギアを支持する前記第2支軸を回転中心に回動する回動リンクと、前記回動リンクの先端部と前記ロックポールに先端部間をそれぞれ連結軸にて回転可能に連結する連結リンクとで4節リンク機構を構成するとともに、前記回動リンクに対して、前記ロックポールをロック位置側に回動させる弾性力を付与する弾性部材を設けた。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、ロックポールを回動させるのに効率の良い4節リンク機構を用いたので、ロックポールを回動させるのに大きなトルクを必要としない。そのため、アクチュエータを小型でき、パーキングロック装置を小型化できる。しかも、4節リンク機構と減速ギアを平行に配置できるので、組み付けスペースを少スペースにでき、パーキングロック装置全体を小型化することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のパーキングロック装置において、前記減速ギアは、前記回動リンクと前記連結リンクとを連結する前記連結軸に係合し、前記減速ギアが前記弾性部材の弾性力を付与する方向と反対方向に回動するとき、前記連結軸を介して、前記弾性部材の弾性力に抗して前記回動リンクに、前記ロックポールをアンロック位置側に回動させる回動力を付与する操作片を設けた。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、駆動ギアによって、減速ギアが弾性部材の弾性力を付与する方向と反対方向のアンロック位置に回動するとき、操作片にて弾性部材の弾性力に抗して回動リンク、即ち、ロックポールをアンロック位置に回動させる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のパーキングロック装置において、前記弾性部材は、ゼンマイバネであって、前記ゼンマイバネの内側巻き端を減速ギアのボス部に係合させ、前記ゼンマイバネの外側巻き端を前記回動リンクと前記連結リンクとを連結する前記連結軸に係合させた。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、ゼンマイバネも、4節リンク機構と減速ギアに対して平行に配置できるので、組み付けスペースを少スペースにでき、パーキングロック装置全体を小型化することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のパーキングロック装置において、前記パーキングギアの一側に配置されるプレートに、前記モータと前記モータにて回転される前記駆動ギアを設けるとともに、前記第1支軸及び第2支軸を設け、その第1支軸に前記ロックポールを回転可能に支持し、前記第2支軸に前記減速ギア及び4節リンク機構を構成する前記回動リンクを回動可能に支持するようにした。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、パーキングギアの一側に配置されるプレートに、パーキングロック装置を構成する殆どの構成部材が集約して組み付けられるようにしたので、よりパーキングロック装置がコンパクトになり、車両の変速装置への組み付けが容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、用いる部品点数を少なくでき、装置全体をより小型することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】パーキングロック装置を説明するための斜視図である。
【図2】パーキングロック装置を説明するための分解斜視図である。
【図3】パーキングロック装置のアンロック状態を示す要部平面図である。
【図4】パーキングロック装置のロック状態を示す要部平面図である。
【図5】パーキングロック装置のロック状態における切換機構の状態を示す要部平面図である。
【図6】パーキングロック装置の待ち状態を示す要部平面図である。
【図7】セクターギアのロック側嵌合凹部に駆動ギアの無歯部が嵌合している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明のパーキングロック装置の実施形態を図面に従って説明する。
図1はパーキングロック装置の全体斜視図、図2はパーキングロック装置の分解斜視図を示す。
【0024】
パーキングロック装置1は、車両に備えられた変速装置のハウジングケース内に設けられ、パーキングギア2、そのパーキングギア2と係脱するロックポール3を有している。パーキングギア2は、変速装置のハウジングケース内に貫挿されたエンジンのクランク軸(図示せず)に固着され、クランク軸と一体回転するようになっている。そして、パーキングギア2は、パーキングギア2の歯にロックポール3の係止爪3aが噛合することによって、その回転が禁止される。
【0025】
ロックポール3は、パーキングギア2に隣接配置され、変速装置のハウジングケース内に固設された中間プレート4に揺動可能に支持されている。ロックポール3は、その基端部が中間プレート4に固設した第1支持部材5に設けた第1支軸6に対して回動可能に支持され、第1支軸6の中心軸線C1を回転中心として回動可能になっている。
【0026】
ロックポール3のパーキングギア2側の中間部には、係止爪3aが形成されている。ロックポール3は、パーキングギア2側に回動して係止爪3aが、図4に示すように、パーキングギア2と噛合する位置(以下、ロック位置という)に案内されることでパーキングギア2の回転を不能にさせるようになっている。反対に、ロックポール3は、パーキングギア2から離間する方向に回動して係止爪3aが、図3に示すように、パーキングギア2との噛合を解除する位置(以下、アンロック位置という)に案内させることでパーキングギア2の回転を可能にさせるようになっている。
【0027】
次に、係止爪3aがパーキングギア2と噛合するロック位置と噛合解除されるロック解除位置との間で、ロックポール3を回動させる駆動機構について説明する。駆動機構は中間プレート4に設けられている。
【0028】
中間プレート4の一側に設けた第2支持部材7には、第2支軸8が取着され、その第2支軸8に回動リンク9に基端部が回動可能に支持され、回動リンク9は第2支軸8の中心軸線C2を回転中心として回動可能になっている。そして、回動リンク9の先端部は、連結リンク10を介してロックポール3の先端部と連結されている。
【0029】
詳述すると、回動リンク9の先端部と連結リンク10の一端は、第1連結軸11が貫挿され、第1連結軸11に対してそれぞれ回転可能に支持されている。一方、連結リンク10の他端とロックポール3の先端部は、第2連結軸12が貫挿され、第2連結軸12に対してそれぞれ回転可能に支持されている。
【0030】
これによって、中間プレート4上において、これらロックポール3、回動リンク9、連結リンク10によって、4節リンク機構が構成されている。従って、回動リンク9を、第2支軸8の中心軸線C2を回転中心として回動させると、連結リンク10を介して、ロックポール3が第1支軸6の中心軸線C1を回転中心として回動する。
【0031】
そして、図3に示すアンロック位置に、ロックポール3、回動リンク9及び連結リンク10が位置した状態から、回動リンク9を、時計回り方向に、図4に示すロック位置まで回動させると、ロックポール3も連動して回動する。そして、ロックポール3の係止爪3aは、パーキングギア2との噛合が解除されたアンロック位置から噛合するロック位置に案内される。
【0032】
ここで、回動リンク9を、時計回り方向に、図3に示すアンロック位置から図4に示すロック位置まで回動させるとき、図5に示すように、回動リンク9と連結リンク10を回転可能に支持連結した第1連結軸11の中心軸線C3は、第2支軸8の中心軸線C2と第2連結軸12の中心軸線C4の間であって、かつ、これら中心軸線C2,C4を結ぶ直線L1を、左から右に横切るように形成されている。そして、第1連結軸11の中心軸線C3が直線L1を越えて右に位置した時、回動リンク9の先端部はロックポール3のパーキングギア2と反対側の側面3bに当接し押圧するようになっている。
【0033】
従って、図5に示す位置(ロック位置)にあって、ロックポール3に対して、第1支軸6の中心軸線C1を回転中心として反時計回りの回動力が加えられたとき、第1連結軸11の中心軸線C3が直線L1の右側に位置しているため、ロックポール3は連結リンク10にてロックされ反時計回りの回動が禁止される。その結果、ロックポール3の係止爪3aは、パーキングギア2との噛合が解除されることはない。
【0034】
反対に、図4、図5に示す位置(ロック位置)に、ロックポール3、回動リンク9及び連結リンク10が位置した状態から、回動リンク9を、反時計回り方向に、図3に示すアンロック位置まで回動させると、連結リンク10を介してロックポール3も連動する。
【0035】
つまり、第1連結軸11の中心軸線C3が、回動するロックポール3の第2連結軸12の中心軸線C4を通る接線L2を右から左に越えた時、ロックポール3は、連結リンク10を介して回動リンク9の回動力によって回動する。そして、ロックポール3の係止爪3aは、パーキングギア2と噛合された位置から噛合が解除されたアンロック位置に案内される。
【0036】
回動リンク9を回動可能に支持した第2支軸8には、減速ギアとしてのセクターギア20が回転可能に支持されている。セクターギア20は、中間プレート4と回動リンク9との間に平行に配置されている。セクターギア20は、基端ボス部21が第2支軸8に回転可能に支持され、第2支軸8の中心軸線C2を回転中心に回動するようになっている。
【0037】
セクターギア20と第1連結軸11の間には、弾性部材としてのゼンマイバネ30が介装されている。ゼンマイバネ30は、セクターギア20の基端ボス部21を取り囲むように配置され、中心側の巻き端(内巻き端)31が基端ボス部21外周面に連結固定され、外側の巻き端(外巻き端)32が、連結リンク10から下方に突出した第1連結軸11の係止部11aに摺動可能に連結されている。
【0038】
そして、ゼンマイバネ30の外巻き端32は、ゼンマイバネ30の拡張方向の付勢力を第1連結軸11の係止部11aに付与している。つまり、ゼンマイバネ30は、第1連結軸11にゼンマイバネ30の拡張方向の付勢力を付与することによって、回動リンク9を図3において、時計回り方向(アンロック位置からロック位置方向)の回動力を常に付与している。
【0039】
セクターギア20の側面には、ゼンマイバネ30の外巻き端32を摺動可能に連結した第1連結軸11の係止部11aを、ロックポール3側から係合する復帰操作片22が立設形成されている。復帰操作片22は、セクターギア20が図3において反時計回り方向に回動したとき、第1連結軸11の係止部11aと係合し、ゼンマイバネ30の拡張方向の付勢力に抗して回動リンク9を反時計回り方向に回動させるようになっている。
【0040】
セクターギア20の先端外周面には、平歯車状のギア部23が形成されている。また、そのギア部23のパーキングギア2側の外側には、第2嵌合部としてのアンロック側嵌合凹部24が形成されているとともに、ギア部23のパーキングギア2側と反対側の外側には、第1嵌合部としてのロック側嵌合凹部25が形成されている。
【0041】
セクターギア20のギア部23は、中間ギア機構40を介してモータMと駆動連結されている。モータMは、中間プレート4に形成されたボス部4aに嵌合固設され、その出力軸には第1ヘリカルギアG1が外嵌固定されている。中間ギア機構40は、第2ヘリカルギアG2と平歯車状の駆動ギアG3を有し、中間プレート4に立設した支持軸41に回転可能に支持されている。第2ヘリカルギアG2と平歯車状の駆動ギアG3は、一体的に支持軸41に対して回転するように互いに連結固定されている。
【0042】
そして、第2ヘリカルギアG2は、モータMの第1ヘリカルギアG1と噛合し、駆動ギアG3は、セクターギア20のギア部23と噛合するようになっている。従って、モータMを回転させることによって、モータMの駆動力が中間ギア機構40を介してセクターギア20に伝達され、セクターギア20は、第2支軸8を回転中心に回動する。
【0043】
ここで、図3に示すアンロック位置において、セクターギア20が時計回り方向に回動すると、セクターギア20に設けた復帰操作片22も時計回り方向に回動する。この時、復帰操作片22に係合していた第1連結軸11(回動リンク9)は、ゼンマイバネ30の拡張方向の付勢力によって押圧され、第2支軸8を回転中心に時計回り方向に回動する。この回動に連動してロックポール3も回動する。そして、セクターギア20がさらに回動して回動リンク9が、図3に示すアンロック位置から図4に示すロック位置まで回動すると、ロックポール3の係止爪3aは、パーキングギア2と噛合する位置に案内される。
【0044】
なお、ロックポール3の係止爪3aが、時計回り方向に回動してパーキングギア2と噛合する際、パーキングギア2の回動停止位置によって、図6に示すように、パーキングギア2の歯の歯面2aに当接し、歯溝に噛合しない場合がある。
【0045】
このロックポール3の係止爪3aがパーキングギア2の歯面2aに当接した状態においては、ロックポール3は、時計回り方向の回動は禁止されるが、セクターギア20は、駆動ギアG3によって、時計回り方向に回動し続ける。
【0046】
つまり、セクターギア20に設けた復帰操作片22が第1連結軸11の係止部11aから離間し、第1連結軸11の係止部11aを残して復帰操作片22が時計回り方向に回動することになる。その結果、ロックポール3の係止爪3aが、パーキングギア2の歯面2aをゼンマイバネ30の拡張方向の付勢力にて押し続けた状態(以下、これを「待ち状態」という)で、ロックポール3は回動停止している。
【0047】
この「待ち状態」において、駐車された車両に対して、路面の起伏、あるいは、悪意で車両を移動させようとする力に基づいてエンジンのクランク軸に僅かな回転力が加えられると、パーキングギア2がいずれかの方向に回動する。その結果、ロックポール3の係止爪3aは、ゼンマイバネ30の拡張方向の付勢力によってパーキングギア2の歯溝に押し込まれ噛合し、自動的に図4に示すロック位置となる。
【0048】
反対に、図4に示すロック位置において、セクターギア20が反時計回り方向に回動すると、セクターギア20に設けた復帰操作片22も反時計回り方向に回動する。この時、復帰操作片22は、この回動によりに第1連結軸11と係合し、第1連結軸11(回動リンク9)をゼンマイバネ30の拡張方向の付勢力に抗して、第2支軸8を回転中心に反時計回り方向に回動させる。この回動に連動してロックポール3も反時計回り方向に回動する。そして、セクターギア20がさらに回動して回動リンク9が、図3に示すアンロック位置まで回動すると、ロックポール3の係止爪3aは、パーキングギア2との噛合が解除された位置に案内される。
【0049】
セクターギア20のギア部23と噛合する駆動ギアG3は、図7に示すように、外周面の一部に無歯部G3aを有する欠歯歯車であって、無歯部G3aを除く外周面に形成された歯の歯数は、セクターギア20に形成したギア部23の歯溝(アンロック側嵌合凹部24及びロック側嵌合凹部25とそれぞれ隣接する歯溝26,27を含む)の数と同じにしている。そして、駆動ギアG3は、図3に示すアンロック位置にあるとき、その無歯部G3aがギア部23のアンロック側嵌合凹部24と嵌合し、図4に示すロック位置にあるとき、その無歯部G3aがロック側嵌合凹部25と嵌合するように予め組み付けられている。
【0050】
ここで、図3及び図4に示す状態で、アンロック側嵌合凹部24及びロック側嵌合凹部25と嵌合して部分の駆動ギアG3の無歯部G3aの制御面としての外周面は、支持軸41の中心軸線C5を中心とした半径Rの円弧面である。尚、半径Rは、支持軸41の中心軸線C5から駆動ギアG3の歯面までの長さと一致させている。そして、アンロック側嵌合凹部24及びロック側嵌合凹部25の内側に凹設された制御面としての内周面は、前記無歯部G3aの円弧面が摺動可能な、図3及び図4に示す状態で、支持軸41の中心軸線C5を中心とした半径の円弧面にて形成されている。
【0051】
また、アンロック側嵌合凹部24及びロック側嵌合凹部25は、その周方向の長さは無歯部G3aの周方向の長さより短く形成されているとともに、その周方向の両端部がギア部23の各歯と同じ高さになるようにそれぞれ形成されている。
【0052】
一方、駆動ギアG3の無歯部G3aは、図3及び図4に示すアンロック側嵌合凹部24及びロック側嵌合凹部25の内周面と摺接している部分から外れる位置から駆動ギアG3の歯に至る外周面はその曲率半径を小さくし駆動ギアG3の歯溝に収束するように形成されている。
【0053】
つまり、図3に示すアンロック位置にあって、駆動ギアG3の無歯部G3aがアンロック側嵌合凹部24と嵌合しているとき、駆動ギアG3が支持軸41を回転中心として反時計回り方向に回転すると、ギア部23の最初の歯がアンロック側嵌合凹部24の側壁とギア部23の最初の歯とで形成された歯溝26に噛合して、セクターギア20は第2支軸8を回転中心として時計回り方向に回動を開始する。
【0054】
そして、図4に示すロック位置に到達して、駆動ギアG3の最後の歯がセクターギア20のギア部23の最後の歯とロック側嵌合凹部25の側壁とで形成された歯溝27との噛合が外れると、駆動ギアG3の無歯部G3aがロック側嵌合凹部25と嵌合する。その結果、セクターギア20は時計回り方向への回動を停止され、ロック位置に保持される。
【0055】
反対に、図4に示すロック位置にあって、駆動ギアG3の無歯部G3aがロック側嵌合凹部25と嵌合しているとき、駆動ギアG3が支持軸41を回転中心として時計回り方向に回転すると、ギア部23の最初の歯がロック側嵌合凹部25の側壁とギア部23の最初の歯とで形成された歯溝27に噛合して、セクターギア20は第2支軸8を回転中心として反時計回り方向に回動を開始する。
【0056】
そして、図3に示すアンロック位置に到達して、駆動ギアG3の最後の歯がセクターギア20のギア部23の最後の歯とアンロック側嵌合凹部24側壁とで形成された歯溝26との噛合が外れると、駆動ギアG3の無歯部G3aがアンロック側嵌合凹部24と嵌合する。その結果、セクターギア20は時計回り方向への回動を停止されアンロック位置に保持される。
【0057】
そして、図4に示すロック位置にあって、駆動ギアG3の無歯部G3aがロック側嵌合凹部25と嵌合している状態で、何らかの原因でセクターギア20に反時計回り方向の外力が加えられたとする。セクターギア20は反時計回り方向に回動しようとするが、ロック側嵌合凹部25の歯溝27側の端部が、駆動ギアG3の無歯部G3aの外周面(円弧面)の当たり、回動不能にする。つまり、駆動ギアG3の時計回り方向の回転によってのみセクターギア20は反時計回り方向に回動が可能になる。
【0058】
同様に、図3に示すアンロック位置にあって、駆動ギアG3の無歯部G3aがアンロック側嵌合凹部24と嵌合している状態で、何らかの原因でセクターギア20に時計回り方向の外力が加えられたとする。セクターギア20は時計回り方向に回動しようとするが、アンロック側嵌合凹部24の歯溝26側の端部が、駆動ギアG3の無歯部G3aの外周面(円弧面)の当たり、回動不能にする。つまり、駆動ギアG3の反時計回り方向の回転によってのみセクターギア20は時計回り方向に回動が可能になる。
【0059】
尚、本実施形態では、モータMの回転軸に設けた第1ヘリカルギアG1と中間ギア機構40の第2ヘリカルギアG2の間で得られる減速比を2:15とし、中間ギア機構40の駆動ギアG3とセクターギア20に形成したギア部23の間で得られる減速比を18:170として、全体としての減速比は1:71としている。
【0060】
これは、停止中のモータMがゼンマイバネ30に対する付勢力によって逆転回転されうる程度の小さな減速比である。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
【0061】
(1)本実施形態では、ロックポール3、回動リンク9、連結リンク10とで4節リンク機構を形成した。そして、ゼンマイバネ30にてロックポール3をロック位置に常に回動させる方向に回動力を付与した回動リンク9に対して、セクターギア20で回動させるようにした。
【0062】
つまり、4節リンク機構とその4節リンク機構とセクターギア20を平行に配設してロックポール3をロック位置とアンロック位置に回動させようにしたので、組み付けスペースを少スペースにでき、パーキングロック装置全体を小型化することができる。
【0063】
しかも、ロックポール3を回動させるのに効率の良い4節リンク機構を用いたので、ロックポール3を回動させるのに大きなトルクを必要としない。そのため、モータMを小型でき、その分パーキングロック装置を小型化できる。
【0064】
(2)本実施形態では、セクターギア20のギア部23の一側にロック側嵌合凹部25を形成し、ギア部23と噛合する駆動ギアG3に無歯部G3aを形成した。そして、ロック側嵌合凹部25と無歯部G3aの嵌合面を、駆動ギアG3の無歯部G3aがロック側嵌合凹部25と嵌合している状態で、セクターギア20に反時計回り方向の外力が加えられたとき、ロック側嵌合凹部25の歯溝27側の端部が、駆動ギアG3の無歯部G3aの外周面(円弧面)に当たって回動不能になるように形成した。
【0065】
従って、ロック位置にあるセクターギア20が、何らかの要因で、アンロック位置の方向に力が加えられても、アンロック位置側に回動しない。その結果、ロックポール3がパーキングギア2との噛合が解除されることが防止される。
【0066】
しかも、この回転防止機構のロック側嵌合凹部25と無歯部G3aを、セクターギア20と駆動ギアG3にそれぞれ一体的に形成したので、回転防止機構のための部品点数の増加はなく、パーキングロック装置の小型化を図ることができる。
【0067】
(3)また、本実施形態では、セクターギア20のギア部23の他側に、駆動ギアG3の無歯部G3aと嵌合するアンロック側嵌合凹部24を形成した。そして、アンロック側嵌合凹部24と無歯部G3aの嵌合面を、駆動ギアG3の無歯部G3aがアンロック側嵌合凹部24と嵌合している状態で、セクターギア20に時計回り方向の外力が加えられたとき、アンロック側嵌合凹部24の歯溝26側の端部が、駆動ギアG3の無歯部G3aの外周面(円弧面)に当たって回動不能になるように形成した。
【0068】
従って、アンロック位置にあるセクターギア20が、何らかの要因で、ロック位置の方向に力が加えられても、ロック位置側に回動しない。その結果、ロックポール3がパーキングギア2と噛合されることが防止される。
【0069】
しかも、この回転防止機構のアンロック側嵌合凹部24と無歯部G3aを、同様に、セクターギア20と駆動ギアG3にそれぞれ一体的に形成したので、回転防止機構のための部品点数の増加はなく、パーキングロック装置の小型化を図ることができる。
【0070】
(3)また、本実施形態では、ロックポール3を常にロック位置側に付勢する弾性部材をゼンマイバネ30で構成した。従って、ゼンマイバネ30は、ロックポール3、回動リンク9、連結リンク10及びセクターギア20に対して平行に配置でき、組み付けスペースを少スペースにでき、パーキングロック装置全体をさらに小型化することができる。
【0071】
(4)本実施形態では、パーキングギア2を除いて、パーキングロック装置1の殆どの部材を、中間プレート4に、組み付けるように構成した。パーキングロック装置1の構成部材を組み付けた中間プレート4を事前に用意し、その中間プレート4を変速装置に組み付けるだけで、パーキングロック装置が簡単に組み付けられる。
【0072】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、駆動ギアG3を平歯状の欠歯歯車、セクターギア20のギア部23の歯を平歯状にした。これを、それぞれヘリカルギアにして実施してもよい。
【0073】
・上記実施形態では、第1ヘリカルギアG1及び第2ヘリカルギアG2を平歯車で実施してもよい。
・上記実施形態では、パーキングギア2を、変速装置に貫挿されたエンジンのクランク軸に固着したパーキングロック装置に具体化した。これを、変速装置の出力軸にパーキングギア2を固着したパーキングロック装置に応用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…パーキングロック装置、2…パーキングギア、2a…歯面、3…ロックポール、3a…係止爪、4…中間プレート(プレート)、5…第1支持部材、6…第1支軸、7…第2支持部材、8…第2支軸、9…回動リンク、10…連結リンク、11…第1連結軸(連結軸)、11a…係止部、12…第2連結軸(連結軸)、20…セクターギア(減速ギア)、21…基端ボス部(ボス部)、22…復帰操作片(操作片)、23…ギア部、24…アンロック側嵌合凹部(第2嵌合部)、25…ロック側嵌合凹部(第1嵌合部)、26,27…歯溝、30…ゼンマイバネ(弾性部材)、31…内巻き端、32…外巻き端、40…中間ギア機構、41…支持軸、G1…第1ヘリカルギア、G2…第2ヘリカルギア、G3…駆動ギア、G3a…無歯部、G3a…無歯部、M…モータ、C1〜C5…中心軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支軸を回転中心に回動してパーキングギアと噛合するロック位置と前記パーキングギアとの噛合が解除されるアンロック位置に回動案内されるロックポールと、
駆動ギアと噛合し、その駆動ギアの正逆回転によって第2支軸を回転中心として往復回動して前記ロックポールを、前記ロック位置とロック解除位置に案内する減速ギアと、
前記駆動ギアを正逆回転させるモータと
を有したパーキングロック装置であって、
前記駆動ギアは、その一部に無歯部を形成した欠歯車で構成し、
前記減速ギアは、その円弧状の外周面の一部にギア部を形成し、そのギア部の一側に、前記ロックポールがロック位置に案内された時、前記無歯部と嵌合する第1嵌合部を、そのギア部の他側に、前記ロックポールがアンロック位置に案内された時、前記無歯部と嵌合する第2嵌合部を形成し、
前記第1及び第2嵌合部と前記無歯部の各嵌合面は、前記駆動ギアに回動力が加えられたとき、前記無歯部の嵌合面が第1及び第2嵌合部の嵌合面に摺接して前記減速ギアとの噛合を許容し、前記減速ギアに回動力が加えられたとき、前記第1及び第2嵌合部の嵌合面が前記無歯部の嵌合面と当接して前記減速ギアの回転を禁止する制御面を形成したことを特徴とするパーキングロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパーキングロック装置において、
前記第1支軸を回転中心としてロック位置とアンロック位置との2位置間を回動する前記ロックポールは、前記減速ギアを支持する前記第2支軸を回転中心に回動する回動リンクと、前記回動リンクの先端部と前記ロックポールに先端部間をそれぞれ連結軸にて回転可能に連結する連結リンクとで4節リンク機構を構成するとともに、
前記回動リンクに対して、前記ロックポールをロック位置側に回動させる弾性力を付与する弾性部材を設けたことを特徴とするパーキングロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパーキングロック装置において、
前記減速ギアは、前記回動リンクと前記連結リンクとを連結する前記連結軸に係合し、前記減速ギアが前記弾性部材の弾性力を付与する方向と反対方向に回動するとき、前記連結軸を介して、前記弾性部材の弾性力に抗して前記回動リンクに、前記ロックポールをアンロック位置側に回動させる回動力を付与する操作片を設けたことを特徴とするパーキングロック装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のパーキングロック装置において、
前記弾性部材は、ゼンマイバネであって、前記ゼンマイバネの内側巻き端を減速ギアのボス部に係合させ、前記ゼンマイバネの外側巻き端を前記回動リンクと前記連結リンクとを連結する前記連結軸に係合させたことを特徴とするパーキングロック装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパーキングロック装置において、
前記パーキングギアの一側に配置されるプレートに、前記モータと前記モータにて回転される前記駆動ギアを設けるとともに、前記第1支軸及び第2支軸を設け、その第1支軸に前記ロックポールを回転可能に支持し、前記第2支軸に前記減速ギア及び4節リンク機構を構成する前記回動リンクを回動可能に支持するようにしたことを特徴とするパーキングロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−106484(P2011−106484A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259228(P2009−259228)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】