説明

パーキング用ディスクブレーキ

【課題】リターンスプリングを、パーキングレバーとキャリパボデイ間に於いて位置決めを確実に行う事が可能となり、ブレ等を生じる事がなく、リターンスプリング荷重を安定しブレーキワイヤとの干渉も発生する事がない。
【解決手段】パーキングレバー3にブレーキワイヤ4を連結し、このブレーキワイヤ4を引くと、アジャストボルト5を介してパーキング制動するとともにパーキング解除により、パーキングレバー3とキャリパボデイ1間に縮設しているリターンスプリング6の復元力でパーキングレバー3が復元し、アジャストボルト5を介して摩擦パッド7、8による、ディスクロータ10の挟持を解除するパーキング用ディスクブレーキに於いて、リターンスプリング6の一端をパーキングレバー3に押圧当接するとともにリターンスプリング6の他端をキャリパボデイ1に設けた挿入凹部23に押圧挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキング用のディスクブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−206576号公報
【0004】
従来より特許文献1に示す如く、キャリパボデイに組み付けたパーキングレバーにブレーキワイヤを連結し、このブレーキワイヤを引くと、アジャストボルトを介してパーキング制動するとともにパーキング解除により、パーキングレバーとキャリパボデイ間に縮設しているリターンスプリングの復元力でパーキングレバーが復元し、アジャストボルトを介して摩擦パッドによる、ディスクロータの挟持を解除するパーキング用ディスクブレーキが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のディスクブレーキは、パーキングレバーとキャリパボデイ間に縮設しているリターンスプリングが、パーキングレバーとキャリパボデイ間に両端を当接しているのみで、何等の固定手段も用いられていない。そのため、パーキングレバーの作動に伴いリターンスプリングがパーキングレバーとキャリパボデイ間で両端部の当接位置を移動し、リターンスプリング荷重が不安定になったりブレーキワイヤと干渉しリターンスプリングの復元力が変化する可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、リターンスプリングをパーキングレバーとキャリパボデイ間に安定良く配置し、リターンスプリング荷重が不安定になったりブレーキワイヤと干渉を生じる事が無く、常に一定のリターンスプリング荷重を可能とし、パーキングレバーの安定した正確な復元を可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の如き課題を解決するため、キャリパボデイに組み付けたパーキングレバーにブレーキワイヤを連結し、このブレーキワイヤを引くと、アジャストボルトを介してパーキング制動するとともにパーキング解除により、パーキングレバーとキャリパボデイ間に縮設しているリターンスプリングの復元力でパーキングレバーが復元し、アジャストボルトを介して摩擦パッドによる、ディスクロータの挟持を解除するパーキング用ディスクブレーキを前提とするものである。
【0008】
そして、リターンスプリングの一端をパーキングレバーに押圧当接するとともにリターンスプリングの他端をキャリパボデイに設けた挿入凹部に押圧挿入したものである。この挿入凹部に他端を挿入したリターンスプリングは、パーキングレバーとキャリパボデイ間に於いて位置決めを確実に行う事が可能となり、ブレ等を生じる事がないから、リターンスプリング荷重が安定しブレーキワイヤとの干渉も発生する事がないものである。
【0009】
また、挿入凹部は、開口縁を面取りしたものであっても良い。このように構成する事により、リターンスプリングを組み付ける場合に挿入凹部の鋭角な開口縁に、リターンスプリングの端部が引っ掛かるようなことがなく、挿入凹部へのリターンスプリングの挿入を円滑に可能とし組み付け作業が容易となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く構成したものであるから、リターンスプリングの一端をパーキングレバーに押圧当接するとともにリターンスプリングの他端をキャリパボデイに設けた挿入凹部に押圧挿入することにより、この挿入凹部に他端を挿入したリターンスプリングは、パーキングレバーとキャリパボデイ間に於いて位置決めを確実に行う事が可能となり、ブレ等を生じる事がないから、リターンスプリング荷重が安定しブレーキワイヤとの干渉も発生する事がないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示す一部切り欠き正面図。
【図2】図1の挿入凹部部分の拡大図。
【図3】本発明の実施例を示す斜視図。
【図4】図1のA−A線断面図。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図1〜4に於いて説明すると、(1)はキャリパボデイであって、作用部(2)側に組み付けたパーキングレバー(3)にブレーキワイヤ(4)を連結し、このブレーキワイヤ(4)を引くと、アジャストボルト(5)を介してパーキング制動するとともにパーキング解除により、パーキングレバー(3)とキャリパボデイ(1)間に縮設しているリターンスプリング(6)の復元力でパーキングレバー(3)が復元し、アジャストボルト(5)を介して摩擦パッド(7)(8)による、ディスクロータ(10)の挟持を解除するパーキング用ディスクブレーキを前提としたものである。
【0013】
本実施例1について更に詳細に説明すると、図4に示す如く、前記キャリパボデイ(1)はディスクロータ(10)の両側に配設された作用部(2)及び反作用部(11)と、この作用部(2)と反作用部(11)とをディスクロータ(10)を介して連結したブリッジ部(12)とから成るものである。そして上記ディスクロータ(10)の作用部(2)側の内部には、図4に示す如くシリンダ孔(13)を形成している。
【0014】
そして、このシリンダ孔(13)の作用部(2)側の開口部(14)内に、内周螺溝を形成した筒状のスリーブナット(15)を挿入して固定配置している。そしてこのスリーブナット(15)には、前記内周螺溝に螺合可能な外周螺溝を形成した筒状のねじ部材(16)を、スリーブナット(15)の内周螺溝に螺合させて配置している。また、このねじ部材(16)の一端(17)をスリーブナット(15)から外方に突出して配置している。
【0015】
そしてこのねじ部材(16)の一端(17)には、パーキングレバー(3)を前記ねじ部材(16)と一体に回動可能となるよう組み付けるとともに、このねじ部材(16)にアジャストボルト(5)を挿通配置している。即ち、このねじ部材(16)に内周螺溝を形成し、この内周螺溝にアジャストボルト(5)の外周面に形成した外周螺溝を螺合することにより、ねじ部材(16)とアジャストボルト(5)とを組み付けている。
【0016】
また前記アジャストボルト(5)は、作用部(2)側の摩擦パッド(7)を押圧するためのピストン(18)をアジャストボルト(5)の一部として一体に形成するとともに、ピストン(18)配置側とは反対側の基端部(20)をねじ部材(16)から外方に突出配置している。上記の如くアジャストボルト(5)をピストン(18)の一部として一体に形成することにより、アジャストボルト(5)とピストン(18)とを別個に形成して組み付けた従来品よりも、部品点数を少なくしてディスクブレーキの構成を簡易なものとすることができ、製造
コストを低廉なものとすることが可能となる。
【0017】
そして、このアジャストボルト(5)の基端部(20)側にロックナット(21)を螺合してねじ部材(16)及びパーキングレバー(3)を締め付けることにより、アジャストボルト(5)、ねじ部材(16)、及びパーキングレバー(3)が一体に回動可能となるよう連結固定している。尚、前記パーキングレバー(3)の先端にはブレーキワイヤ(4)の一端を接続するとともに、このブレーキワイヤ(4)の他端に、運転者が操作するブレーキペダルやブレーキレバーなどのブレーキ操作子を連結している。
【0018】
また、キャリパボデイ(1)には、パーキングレバー(3)と一定の間隔を介して保持腕(22)を突出し、この保持腕(22)とパーキングレバー(3)との間にリターンスプリング(6)を縮設している。そして、このリターンスプリング(6)は、一端をパーキングレバー(3)に押圧当接するとともに他端を、キャリパボデイ(1)に設けた挿入凹部(23)に押圧挿入している。また、挿入凹部(23)の軸心には挿通孔(24)を貫通形成し、一端をパーキングレバー(3)に固定したブレーキワイヤ(4)を貫通するとともにこのブレーキワイヤ(4)は、リターンスプリング(6)の軸方向に貫通している。また、リターンスプリング(6)の挿入凹部(23)への押圧挿入は、離脱したりする事のない程度のバネ荷重を以て行われる。また、挿入凹部(23)の開口縁(25)は面取りを行い、リターンスプリング(6)の挿入凹部(23)への組み付け時に、リターンスプリング(6)が鋭角な開口縁(25)に引っ掛かったりすることがないように構成する。
【0019】
また、前記ピストン(18)の先端面(26)には、平面円形で断面コ字型の嵌合凹部(27)を凹設している。そして、ピストン(18)側の摩擦パッド(7)の裏板(28)には前記嵌合凹部(27)に嵌合可能な円筒状の嵌合突部(30)を形成しており、この嵌合突部(30)を嵌合凹部(27)にCクリップ等の連結具を介して、ピストン(18)と摩擦パッド(7)(8)を分離困難な状態で互いに独立して回動可能に接続する。また、キャリパボデイ(1)の反作用部(11)に設置した摩擦パッド(8)も裏板(31)に嵌合突部(32)を形成し、キャリパボデイ(1)の嵌合凹部(33)にCクリップ等の連結具を介して、分離困難な状態で互いに独立して回動可能に接続する。また、摩擦パッド(7)(8)は全体形状を円板形状としている。そのため、ディスクロータ(10)への摩擦パッド(7)(8)の組み付け方向を考慮する必要がないことから組み付け性の向上を図ることができる。
【0020】
上記の如く構成したものにおいてパーキングブレーキの制動を行う場合には、運転者が操作するブレーキペダルやブレーキレバーなどのブレーキ操作子により、ブレーキワイヤ(4)を牽引することによって、パーキングレバー(3)がリターンスプリング(6)の復元力に抗して一方向に回動する。そしてこのパーキングレバー(3)の回動に伴ってパーキングレバー(3)と一体に回動するよう組み付けたアジャストボルト(5)とねじ部材(16)とが、パーキングレバー(3)と同一方向に回動する。これにより、スリーブナット(15)の内周螺溝によってアジャストボルト(5)がねじ部材(16)とともにディスクロータ(10)側に送り出されるため、このアジャストボルト(5)と一体に形成したピストン(18)、及びこのピストン(18)の先端に接続した作用部(2)側の摩擦パッド(7)もディスクロータ(10)側に回動しながら摺動するものとなる。
【0021】
そして、上記の如く摩擦パッド(7)がディスクロータ(10)側に摺動することにより、摩擦パッド(7)の表面がディスクロータ(10)の表面に面接触するものとなる。また、前記作用部(2)側の摩擦パッド(7)の移動に伴う反力によってキャリパボデイ(1)が前記ピストン(18)の移動方向とは反対方向に移動し、このキャリパボデイ(1)の移動によって反作用部(11)側の摩擦パッド(8)がディスクロータ(10)側に移動してディスクロータ(10)の反作用部(11)側の側面に圧接されるものとなる。これにより、図1に示す如く作用部(2)側及び反作用部(11)側にそれぞれ設けた一対の摩擦パッド(7)(8)がディスクロータ(10)の両面に圧接してパーキングブレーキによる制動が行われる。
【0022】
次に制動の解除について以下に説明すると、まずブレーキワイヤ(4)の牽引を運転者のブレーキ操作子の操作等によって解除することにより、パーキングレバー(3)とキャリパボデイ(1)の間に縮設介挿したリターンスプリング(6)の復元力により、制動開始前の元位置に復元させる。これにより、アジャストボルト(5)及びピストン(18)がねじ部材(16)とともに制動時とは反対方向に回動してディスクロータ(10)の離反方向に摺動する。この時、ピストン(18)を摩擦パッド(7)(8)とは独立して回動可能としているためピストン(18)を容易に逆方向に回動させることが可能となる。
【0023】
このリターンスプリング(6)の復元は、リターンスプリング(6)が、一端をパーキングレバー(3)に押圧当接するとともにリターンスプリング(6)の他端をキャリパボデイ(1)の保持腕(22)に設けた挿入凹部(23)に押圧挿入した状態で行われる。そのため、リターンスプリング(6)が位置を移動したりブレを生じる事が無く、定位置での位置決めが確実に行われるためにリターンスプリング(6)の荷重が安定し、軸心を貫通しているブレーキワイヤ(4)との干渉を生じる事もない。
【0024】
そして、上記の如くピストン(18)をディスクロータ(10)の離反方向に摺動させることにより、このピストン(18)に接続した摩擦パッド(7)(8)を強制的にディスクロータ(10)の離反方向に摺動させることが可能となる。そのため、制動の解除時に摩擦パッド(7)(8)がディスクロータ(10)側に引き摺られるという問題が生じにくいものとなる。また、前記作用部(2)側の摩擦パッド(7)の移動に伴う反力によって、キャリパボデイ(1)が移動して反作用部(11)側の摩擦パッド(8)が反ディスクロータ(10)側に移動する。これにより、作用部(2)側及び反作用部(11)側の摩擦パッド(7)(8)が反ディスクロータ(10)側に移動するためパーキングブレーキの制動を円滑に解除することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 キャリパボデイ
3 パーキングレバー
4 ブレーキワイヤ
5 アジャストボルト
6 リターンスプリング
7 摩擦パッド
8 摩擦パッド
10 ディスクロータ
23 挿入凹部
25 開口縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリパボデイに組み付けたパーキングレバーにブレーキワイヤを連結し、このブレーキワイヤを引くと、アジャストボルトを介してパーキング制動するとともにパーキング解除により、パーキングレバーとキャリパボデイ間に縮設しているリターンスプリングの復元力でパーキングレバーが復元し、アジャストボルトを介して摩擦パッドによる、ディスクロータの挟持を解除するパーキング用ディスクブレーキに於いて、リターンスプリングの一端をパーキングレバーに押圧当接するとともにリターンスプリングの他端をキャリパボデイに設けた挿入凹部に押圧挿入した事を特徴とするパーキング用ディスクブレーキ。
【請求項2】
挿入凹部は、開口縁を面取りした事を特徴とする請求項1のパーキング用ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87837(P2013−87837A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227813(P2011−227813)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】