説明

パーキンソン病を治療するためのNURR−1活性化剤としてのインドール誘導体の使用

【課題】パーキンソン病を治療するためのNURR−1活性化剤としてのインドール誘導体の使用。
【解決手段】本発明は、インドールから誘導される化合物、特に治療上有用な化合物に関し、該化合物は、式(I)の化合物:
[化1]


(式中、Rはハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基;Rは水素原子、又はC−Cアルキル基;Rはイソプロピル(1−メチルエチル)基、又はtert−ブチル(1,1−ジメチルエチル)基;及び、n=3又は4)、及び、上記式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩から選択されることを特徴とする。本発明は、神経変性疾患、特にパーキンソン病の治療に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核内受容体NURR−1関連疾患の治療及び/又は予防における特定のインドール誘導体の新規の治療的使用に関する。より具体的には、本発明はパーキンソン病の治療用及び/又は予防用医薬品を調製するための上記化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患は、神経系の進行性機能障害を特徴とする疾患であると定義される。この疾患は、多くの場合、罹患した中枢又は末梢神経系の構造の萎縮を伴う。この疾患の例として、特に、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、リソソーム病、進行性核上性麻痺、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症などが挙げられ、なかでも、パーキンソン病は世界中で約4百万人が冒されている病である。どの年代の人々も罹患しているが、高齢者に最も多い(65歳以上の人口の2%がこの疾患を罹患している)。そして、その特徴は、黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性である。
【0003】
ドーパミンは神経伝達物質であり、随意運動の制御、認知機能、及び感情関連行動の発達において中心的な役割を果たしている。
【0004】
パーキンソン病の治療戦略は、現在のところ、L−DOPAなどの代謝前駆体を投与してドーパミンの不足を補い、症状を軽減することである。
【0005】
この疾患の罹患数の増加に伴い、神経の分化や生存に有益に働く新規治療剤の開発が目下、必要となってきた。
【0006】
この開発を進めるなかで、パーキンソン病の病因に関与する核内受容体を活性化できる化合物を同定するに至った。
【0007】
転写因子NURR−1は、オーファン核内受容体スーパーファミリーのメンバーであり、脳内で高度に発現するのだが、中脳のドーパミン作動性ニューロンの発生や維持に不可欠な役割を担っていることが確認されている(非特許文献1)。
【0008】
NURR−1核内受容体は、ドーパミン作動性(DA)ニューロン特異的遺伝子を制御し、ドーパミン作動性表現型の維持に干渉する。また、該受容体は、DAニューロンを毒性の攻撃から保護し、DAニューロンの生存を促す。よって、NURR−1核内受容体は、ドーパミン作動性ニューロン特異的転写因子として作用するものであるが、その活性を制御し、パーキンソン病におけるドーパミン作動性神経伝達を変化させることができる。
【0009】
上記受容体は、単量体、ホモ二量体、又はRXR(レチノイドX受容体)とのヘテロ二量体としてDNAに結合する。RXRとは、核内受容体ファミリーの他の多くのメンバーのヘテロパートナーとなる核内受容体である。RXRは、脂質代謝、グルコース代謝、発生及び分化などの多くの生理的過程に干渉する。このように、NURR−1はRXRのα及びγイソ型と相互作用する。RXRαは偏在して発現しているが、RXRγは主に脳内、具体的には線条体、視床下部及び下垂体に集中して発現している。
【0010】
形成されたNURR−1/RXRα及びNURR−1/RXRγ複合体は、RXRのリガンドに応じて転写を制御することができる。よって、RXRはNURR−1の転写の活性化を促進する。
【0011】
故に、NURR−1/RXRα及びNURR−1/RXRγ複合体を活性化することが可能な化合物を同定することで、パーキンソン病治療に適用し得る新しい手段を得られるはずである。
【0012】
特許文献1には、パーキンソン病治療に活性を有する複素環式化合物が開示されている。
【0013】
さらに、特許文献2〜5には、NURR−1受容体の活性化剤となる化合物が記載されており、特許文献6には、NGFI−Bファミリー(そのメンバーの一つがNURR−1である)の受容体の活性を変化させることができる複素環式化合物の使用について記載されている。
【0014】
最後に、特許文献7では、PPAR核内受容体の活性化剤となるインドール誘導体が開示されており、該誘導体は心血管系の特定の疾患の治療用医薬品の活性成分として有用であることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2003/015780号
【特許文献2】国際公開第2004/072050号
【特許文献3】仏国特許出願公開第2903105号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2903106号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第2903107号明細書
【特許文献6】国際公開第2005/047268号
【特許文献7】国際公開第2005/056522号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Zetterstrom,Solomin and al.1997,Science.1997 Apr 11;276(5310):248−50
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような状況に鑑み、インドール誘導体であって、国際公開第2005/056522号に開示の一般式に包含される特定の化合物が、NURR−1/RXRα及びNURR−1/RXRγの選択的アゴニストであり、パーキンソン病に見られるニューロン変性を抑制できることが見出された。そして、この発見が本発明の基盤となっている。
【0018】
従って、驚くべきことに、本発明の化合物は、PPAR活性化能に加え、非常に高いNURR−1/RXRα及びNURR−1/RXRγヘテロ二量体活性化能を示すことが分かった。よって、その特性から、該化合物はNURR−1受容体関連疾患、特に神経変性疾患、より具体的にはパーキンソン病の治療又は予防の用途に特に有用である。
【0019】
従って、本発明は第一に、
i)式(I)の化合物:
【0020】
【化1】

(式中、Rはハロゲン、又はトリフルオロメチル基;
は水素原子、又はC−Cアルキル基;
はイソプロピル(1−メチルエチル)基、又はtert−ブチル(1,1−ジメチルエチル)基;及び、
n=3又は4)、及び
ii)上記式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩
から選択される、インドールから誘導される化合物を新規物質として提供する。
【0021】
・ベンゼンスルホニル基のメタ位にイソプロピル置換基又はtert−ブチル置換基;さらに、
・インドールの5位にハロゲン又はトリフルオロメチル基
が同時に存在することで、本発明の化合物が、全く予想されなかった著しい活性をNURR−1受容体に対して示すことが確認された。これは本発明の化合物固有の性質である。
【0022】
従って、本発明の化合物の化学構造は、国際公開第2005/056522号に開示の一般式にあまねく包含されるとはいえ、パーキンソン病の治療のための化合物を探索する中で、当業者がなし得なかったであろう選択を行った結果、得られたものである。
【0023】
本発明は第二に、薬理活性成分として使用するための該化合物、及び、それを含む医薬組成物を提供する。
【0024】
本発明は第三に、NURR−1受容体関連疾患、特に神経変性疾患、例えばより具体的にはパーキンソン病の治療用の医薬品を調製するための活性成分としての、少なくとも1つの式(I)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る化合物が期待される神経保護効果を実際に有することを実証するための一連のインビボ試験の結果を示す。
【図2】本発明に係る化合物が期待される神経保護効果を実際に有することを実証するための一連のインビボ試験の結果を示す。
【図3】本発明に係る化合物が期待される神経保護効果を実際に有することを実証するための一連のインビボ試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において、C−Cアルキル基とは、1〜4個の炭素原子を有する、直鎖若しくは分枝鎖の飽和炭化水素鎖であり、より具体例には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、又は1,1−ジメチルエチル基である。
【0027】
ハロゲンとは、フッ素又は塩素原子である。
【0028】
が水素原子である場合、式(I)の化合物はカルボン酸であり、遊離酸形態又は塩形態で用いることができる。塩は、薬学的に許容可能であることが好ましい非毒性有機又は無機塩基と上記酸とを化合させて得られる。使用できる無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化カルシウムなどが挙げられる。使用できる有機塩基としては、例えば、アミン、アミノアルコール、塩基性アミノ酸(リシンやアルギニン等)、又は他に、第4級アンモニウム官能基を有する化合物(ベタインやコリン等)などが挙げられる。
【0029】
本発明に係る化合物は以下の工程を含む第一のプロセスにより調製できる。
a)式(II)の化合物:
【0030】
【化2】

(式中、Rはハロゲン、又はトリフルオロメチル基;
は水素原子、又はC−Cアルキル基;及び、
n=3又は4)
を式(III)のベンゼンスルホニルクロリド:
【0031】
【化3】

(式中、Rはイソプロピル、又はtert−ブチル基)
と、溶媒及び塩基(例えばピリジン等)の存在下、室温で約15時間反応させ、下記式の化合物:
【0032】
【化4】

(式中、R、R、R及びnは出発化合物におけるそれらと同義)
を得る工程;
b)式(IV)の化合物を、酢酸銅(II)の作用(例えば、J.Org.Chem.,2004,69(4),1126−1136を参照)などにより、1,2−ジクロロエタン等の溶媒中、溶媒の還流温度に近い温度で約15時間環化し、下記式の化合物:
【0033】
【化5】

(式中、R、R、R及びnは出発化合物におけるそれらと同義)
を得る工程;
c)(必要時)式(Ia)の化合物のエステル官能基を、水酸化リチウム等の無機塩基の作用などにより、当業者に周知の手順に従って加水分解し、酸処理後に、式(I)の化合物の遊離酸形態:
【0034】
【化6】

を得る工程。
【0035】
第一の実施形態において、式(I)の化合物は以下の工程を含むプロセスにより得ることができる。
a)下記式の化合物:
【0036】
【化7】

(式中、Rはハロゲン、又はトリフルオロメチル基;
は水素原子、又はC−Cアルキル基;及び、
n=3又は4)
を、上記一般プロセスの工程b)を行う場合と同様の条件下で環化し、下記式のインドール化合物:
【0037】
【化8】

(式中、R、R及びnは出発化合物におけるそれらと同義)
を得る工程;
b)式(V)のインドール化合物を水素化ナトリウムで活性化した後、式(V)の化合物を式(III)のベンゼンスルホニルクロリド:
【0038】
【化9】

(式中、Rはイソプロピル、又はtert−ブチル基)
と、ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中、室温で約3時間反応させ、式(Ia)の化合物:
【0039】
【化10】

(式中、R、R、R及びnは出発化合物におけるそれらと同義)
を得る工程;
c)(必要時)式(Ia)の化合物のエステル官能基を、(tert−ブチルエステルの場合には)トリフルオロ酢酸等の有機酸の作用などにより、ジクロロメタン等の溶媒中、当業者に周知の手順に従って加水分解し、式(I)の化合物の遊離酸形態:
【0040】
【化11】

を得る工程。
【0041】
第二の実施形態において、式(I)の化合物は以下の工程を含むプロセスにより得ることができる。
a)式(VI)の化合物:
【0042】
【化12】

(式中、Rはハロゲン、又はトリフルオロメチル基)
を式(III)のベンゼンスルホニルクロリド:
【0043】
【化13】

(式中、Rはイソプロピル、又はtert−ブチル基)
と、ピリジン等の溶媒中、室温で約4時間反応させ、式(VII)の化合物:
【0044】
【化14】

(式中、R及びRは出発化合物におけるそれらと同義)
を得る工程;
b)式(VII)の化合物を下記式のアセチレン誘導体:
【0045】
【化15】

(式中、Rは水素原子、又はC−Cアルキル基;
n=3又は4)
と、ヨウ化第一銅、パラジウム系触媒(例えば塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等)、及び有機塩基(例えばトリエチルアミン等)の存在下、ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中、室温〜80℃の温度で12時間反応させ、下記式の化合物:
【0046】
【化16】

(式中、R、R、R及びnは出発化合物におけるそれらと同義)
を得る工程;
c)上記式(IV)の化合物を、上記一般プロセスの工程b)を行う場合と同様の条件下で環化し、下記式のインドール化合物:
【0047】
【化17】

(式中、R、R、R及びnは出発化合物におけるそれらと同義)
を得る工程;
d)(必要時)式(Ia)の化合物のエステル官能基を、(tert−ブチルエステルの場合には)トリフルオロ酢酸等の有機酸の作用などにより、ジクロロメタン等の溶媒中、当業者に周知の手順に従って加水分解し、式(I)の化合物の遊離酸形態:
【0048】
【化18】

(式中、R、R、R及びnは出発化合物におけるそれらと同義)
を得る工程。
【0049】
なお注目すべきことには、特定条件下においては、このプロセスの工程b)及びc)を単一の操作(いわゆるワンポットプロセス)で行うことができ、有利である。
【0050】
がハロゲン、又はトリフルオロメチル基;RがC−Cアルキル基;及び、n=3又は4の場合の式(II)の化合物は、下記式のオルトヨードアニリン:
【0051】
【化19】

を、下記式のアルキン酸エステル:
【0052】
【化20】

(式中、RはC−Cアルキル基;及び、
n=3又は4)
と、ヨウ化第一銅、パラジウム系触媒(例えば塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等)、及び有機塩基(例えばトリエチルアミン等)の存在下、ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中、室温〜80℃の温度で1〜12時間反応させて得られる。
【0053】
下記式のアルキン酸エステル:
【0054】
【化21】

(式中、RはC−Cアルキル基;及び、
n=3又は4)
は、相当するアルキン酸を出発物質とし、オキサリルクロリドに続いて式ROM(式中、Mはアルカリ金属(例えばナトリウムやカリウム等))の金属アルコキシドを連続的に作用させて得られる。
【0055】
式(Ib)の酸と有機又は無機塩基との塩形態の本発明の化合物は、当業者に周知の方法を用いて従来手順で得られ、例えば、理論量の式(Ib)の酸と塩基とを溶媒(例えば水や水アルコール混合液など)中で混合した後に、得られた溶液を凍結乾燥することで得られる。
【0056】
上記の反応工程のなかには、従来の加熱方法に代えて、この種の反応に適した反応器を用いたマイクロ波加熱を行ってもよい工程もあり、有利である。当業者であれば、この場合の加熱時間が、従来の加熱時に必要とされる時間と比べて格段に短くなることを理解するであろう。
【0057】
以下に示された式(I)の化合物の調製例によって本発明をさらに理解できるであろう。
【0058】
下記実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、「調製」と表題の付いた実施例は中間体の合成を記載する実施例であり、「実施例」と表題の付いたものは本発明に係る式(I)の化合物の合成を記載する。
【0059】
下記略語を使用した。
・mM:ミリモル
・THF:テトラヒドロフラン
・DMF:ジメチルホルムアミド
・DCM:ジクロロメタン
【0060】
融点はコフラーベンチで測定し、核磁気共鳴スペクトル値の特徴は、TMS(テトラメチルシラン)を基準として算出された化学シフト、シグナルに関連するプロトンの数、及びシグナルの形状(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線)により示した。測定周波数及び使用溶媒は化合物ごとに示した。
【0061】
室温は20℃±5℃である。
【実施例】
【0062】
調製1
6−[2−(((3−(1−メチルエチル)フェニル)スルホニル)アミノ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−5−ヘキシン酸,メチルエステル
6−[2−アミノ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−5−ヘキシン酸のメチルエステル42.90g(150.39mM)をピリジン500mLに溶解して溶液を調製し、3−(1−メチルエチル)ベンゼンスルホニルクロリド37.90g(173.29mM)を添加した。混合液を室温で15時間攪拌した後、氷と塩酸との混合物へと注ぎ込んだ。得られた酸性混合液を酢酸エチルで3回抽出した。集めた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残留油状物をクロマトグラフィーによりシリカゲルで精製し、シクロヘキサン/酢酸エチル混合液(9/1;v/v)で溶出させた。これにより、黄土色油状の期待された化合物29.09gを得た(収率=41%)。
1H NMR(DMSOd6,250MHz)δ=1.12(d,J=6.9,6H),1.76(q,J=7.0,2H),2.40(t,J=7.0,2H),2.44(t,J=7.0,2H),2.92(q,J=6.9,1H),3.62(s,3H),7.47−7.51(m,4H),7.62−7.66(m,3H),9.68(s,1H).
【0063】
実施例1
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ブタン酸,メチルエステル
調製1に従って得られたエステル28.12g(60.15mM)を1,2−ジクロロエタン250mLに溶解して溶液を調製し、酢酸銅(II)一水和物12.49g(62.55mM)を添加した。混合液を窒素雰囲気下に置き、約15時間攪拌下で還流を行った。反応混合液を濾過し、固体濾過残渣をフィルター上でDCMにより洗浄した。集めた濾液を減圧下で濃縮した。これにより、ベージュ色結晶状の期待された化合物27.70gを得た(収率=99%)。
m.p.=115℃.
【0064】
実施例2
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ブタン酸
実施例1に従って得られたエステル27.50g(58.82mM)をTHF450mLと混合し、水100mL中の水酸化リチウム4.23g(176.47mM)を添加した。混合液を約15時間室温で攪拌した後、0℃に冷却した。その後、N塩酸180mLを充分に攪拌しながら徐々に添加した。有機相を分離し、減圧下、加熱せずに溶媒の半分を留去した。蒸発残留物をジクロロメタンで3回抽出した。集めた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。これにより、白色粉末状の期待された生成物26.22gを得た(収率=98%)。
m.p.=160℃.
【0065】
実施例2a
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ブタン酸,ナトリウム塩
実施例2に従って得られた酸68mg(0.15mM)をテトラヒドロフラン4mLに溶解し、この溶液に水3mLに溶解した水酸化ナトリウム6mg(0.15mM)を混合した。混合液を室温で6時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。これにより、白色結晶粉末状の期待された塩65mgを得た(収率=91%)。
m.p.=231℃.
【0066】
実施例2b
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ブタン酸,ピペラジン塩
実施例2に従って得られた酸400mg(0.88mM)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、ピペラジン76mg(0.88mM)を添加した。反応混合液を一晩、室温で攪拌した後、減圧下で濃縮した。これにより、白色結晶粉末状の期待された塩400mgを得た(収率=46%)。
m.p.=147℃.
【0067】
実施例2c
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ブタン酸,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩
実施例2に従って得られた酸400mg(0.88mM)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン106.85mg(0.88mM)を添加した。水3mLを添加して溶液を得た。反応混合液を一晩、室温で攪拌した後、減圧下で濃縮した。残留物のメタノールへの溶解を3回行い、その際、続けて溶媒を減圧下で留去した。これにより、白色結晶粉末状の期待された塩480mgを得た(収率=95%)。
m.p.=126℃.
【0068】
調製2
6−[5−クロロ−2−[[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]アミノ]フェニル]−5−ヘキシン酸,メチルエステル
6−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−5−ヘキシン酸のメチルエステルを出発物質とし、調製1と同じ手順で進めて、茶色油状の期待された化合物を得た(収率=96%)。
1H NMR(DMSOd,300MHz)δ=1.13(d,J=6.9,6H) 1.71(q,J=7.1,2H),2.33(t,J=7.1,2H),2.42(t,J=7.4,2H),2.91(q,J=6.9,1H),3.61(s,3H),7.26(d,J=7.3,1H),7.34−7.40(m,3H),7.49−7.57(m,2H),7.76−7.78(m,1H),9.68(s,1H).
【0069】
実施例3
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−クロロ−1H−インドール−2−ブタン酸,メチルエステル
調製2に従って得られたエステル0.3g(0.69mM)を1,2−ジクロロエタン13mLに溶解して溶液を調製し、酢酸銅(II)一水和物0.21g(1.05mM)を添加した。反応混合液を電子レンジ中、120℃で15分間マイクロ波を照射した後、冷却し、濾過した。フィルター上の残渣をDCMで洗浄した後、濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲルで精製し、シクロヘキサン/酢酸エチル混合液(9/1;v/v)で溶出させた。これにより、ベージュ色固体状の期待された化合物0.23gを得た(収率=77%)。
m.p.=94〜97℃.
1H NMR(DMSOd,250MHz)δ=1.11(d,J=6.9,6H),1.95(q,J=7.4,2H),2.42(t,J=7.4,2H),2.94(q,J=7.4,1H),3.02(t,J=7.4,2H),3.59(s,3H),6.61(s,1H),7.32(dd,J=2.2及び8.9,1H),7.47(t,J=7.9,1H),7.56−7.63(m,4H),8.06(d,J=8.9,1H).
【0070】
実施例4
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−クロロ−1H−インドール−2−ブタン酸
実施例3に従って得られた化合物を出発物質とし、実施例2と同様な手順で進めて、濃ベージュ色固体状の期待された生成物を得た(収率=93%)。
m.p.=128℃.
【0071】
調製3
6−ヘプチン酸,1,1−ジメチルエチルエステル
6−ヘプチン酸8.00g(63.41mM)を、無水ジクロロメタン137mLと無水ジメチルホルムアミド0.70mLとの混合液に溶解した。オキサリルクロリド16.10g(126.83mM)を滴下した。反応混合液を室温で1時間、窒素雰囲気下で攪拌した後、窒素雰囲気下で溶媒を留去した。残留生成物をテトラヒドロフラン137mLに溶解した。混合液を0℃に冷却し、カリウムtert−ブトキシド14.23g(126.83mM)を何回かに分けて添加して混合した。反応混合液を攪拌下、室温に1時間保持した。その後、氷200g及び水200mLを添加した。混合液をエーテル200mLで3回抽出した後、集めた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。これにより、茶色油状の期待された化合物7.46gを得た(収率=65%)。
1H NMR(DMSOd6,250MHz)δ=1.40(s,9H),1.40−1.45(m,4H),2.13−2.22(m,4H),2.75(t,J=2.7,1H).
【0072】
調製4
7−[2−アミノ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−6−ヘプチン酸,1,1−ジメチルエチルエステル
2−ヨード−4−(トリフルオロメチル)アニリン9.78g(34.07mM)と、調製3に従って得られた6−ヘプチン酸のエステル7.45g(40.89mM)とをトリエチルアミン136mLに溶解して溶液を調製した。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.20g(1.70mM)及びヨウ化第一銅0.3g(1.70mM)を添加した。反応混合液を窒素雰囲気下で3時間、還流下攪拌して加熱した後、減圧下で濃縮した。蒸発残留物を酢酸エチルに溶解し、炭酸水素ナトリウム溶液(水中、約1M)に続いて1N塩酸、最後に蒸留水で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。これにより、茶色油状の期待された化合物12.38gを得た(収率=71%)。
H NMR(DMSOd,250MHz)δ=1.40(s,9H),1.53−1.68(m,4H),2.24(t,J=8.4,2H),2.48(t,J=8.1,2H),5.93(s,2H),6.78(d,J=10.2,1H),7.28−7.33(m,2H).
【0073】
調製5
5−トリフルオロメチル−1H−インドール−2−ペンタン酸,1,1−ジメチルエチルエステル
7−[2−アミノ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−6−ヘプチン酸のtert−ブチルエステル7.63g(22.35mM)を1,2−ジクロロエタン44.70mLに溶解して溶液を調製し、酢酸銅(II)一水和物6.69g(33.52mM)を添加した。混合液を48時間、攪拌下で還流を行った。反応混合液をナイロンフィルター上で濾過した後、濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲルで精製し、シクロヘキサン/酢酸エチル混合液(9/1;v/v)で溶出させた。これにより、黄色粉末状の期待された化合物3.42gを得た(収率=45%)。
1H NMR(DMSOd,250MHz)δ=1.38(s,9H),1.51−1.57(m,2H),1.67−1.73(m,2H),2.23(t,J=8.4,2H),2.75(t,J=8.7,2H),6.31(s,1H),7.28(dd,J=2.1及び10.2,1H),7.44(d,J=10.2,1H),7.79(s,1H).
【0074】
実施例5
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ペンタン酸,1,1−ジメチルエチルエステル
水素化ナトリウム(油中60%)46.87mg(1.17mM)を、調製5に従って得られたエステル200.00mg(0.59mM)をDMF0.5mLに溶解した溶液に0℃で添加した。この混合液を5分間攪拌し、さらに引き続き0℃で、3−(1−メチルエチル)ベンゼンスルホニルクロリド192.20mg(0.88mM)をDMF0.5mLに溶解した溶液を添加した。混合液を室温で3時間攪拌した後、塩化アンモニウム溶液を添加して、残留する微量の水素化ナトリウムを中和した。混合液をジクロロメタンで抽出した。有機相を減圧下で濃縮した後、得られた反応混合液を精製することなく次の工程で反応させた。
【0075】
実施例6
1−[[3−(1−メチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ペンタン酸
実施例5に従って得られたエステル200.00mg(0.38mM)をDCM1mLに溶解して溶液を調製し、トリフルオロ酢酸1mLを添加した。反応混合液を室温で3時間攪拌した後、DCMに溶解し、減圧下で濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲルで精製し、シクロヘキサン/酢酸エチル混合液(6/4;v/v)で溶出させた。これにより、オフホワイト色粉末状の期待された化合物50.00mgを得た(収率=26%)。
m.p.=119℃.
【0076】
調製6
3−(1,1−ジメチルエチル)−N−[2−ヨード−4−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド
2−ヨード−4−(トリフルオロメチル)アニリン1.03g(3.59mM)をピリジン5mLに溶解して溶液を調製し、3−(1,1−ジメチルエチル)ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.31mM)を添加した。続いて、反応混合液を室温で4時間攪拌した。反応混合液を1N塩酸で洗浄し、酢酸エチルで2回抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲルで精製し、シクロヘキサン/酢酸エチル混合液(勾配:100/0から90/10;v/v)で溶出させた。これにより、白色結晶粉末状の期待された化合物730mgを得た(収率=42%)。
m.p.=111℃.
【0077】
実施例7
1−[[3−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ブタン酸,メチルエステル
調製6に従って得られた化合物250mg(0.52mM)、ヨウ化第一銅4.93mg(0.03mM)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム9.08mg(0.01mM)及びトリエチルアミン3mLの混合液を窒素雰囲気下で調製した。反応混合液を室温で10分間攪拌した。5−ヘキシン酸のメチルエステル120.31mg(0.95mM)をジメチルホルムアミド3mLに溶解した溶液を添加した。反応混合液を3時間還流下で加熱した後、水洗し、酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲルで精製し、シクロヘキサン/酢酸エチル混合液(95/5;v/v)で溶出させた。これにより、ベージュ色結晶粉末状の期待された生成物115mgを得た(収率=46%)。
m.p.=84℃.
【0078】
実施例8
1−[[3−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ブタン酸
実施例7に従って得られた化合物を出発物質とし、実施例2と同じ手順で進めて、白色粉末状の期待された生成物を得た(収率=27%)。
m.p.=135〜141℃.
【0079】
実施例9
1−[[3−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ペンタン酸,メチルエステル
調製6に従って得られた化合物57.93g(119.87mM)とジメチルホルムアミド350mLとの混合液を窒素雰囲気下で調製し、生成物が完全に溶解するまで攪拌した。その後、4−ペンチン酸のメチルエステル21.84g(155.83mM)、ヨウ化第一銅1.14g(5.99mM)、及びビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム1.68g(2.40mM)を連続して添加した。この混合液を室温で15分間攪拌した後、トリエチルアミン174mLを滴下した。反応混合液を80℃で14時間加熱し、冷却し、その後、水1Lで加水分解し、酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた油状生成物を40℃でイソプロピルエーテルに溶解した。得られた溶液を濾過し、減圧下で濃縮した。得られた生成物を、イソプロパノール140mLと水60mLとの混合液で再結晶させた。これにより、オフホワイト色固体状の期待された生成物46.51gを得た(収率=78%)。
m.p.=77℃.
【0080】
実施例10
1−[[3−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]スルホニル]−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−2−ペンタン酸
実施例9に従って得られた化合物を出発物質とし、実施例2と同じ手順で進めて、オフホワイト色固体状の期待された生成物を得た(収率=94%)。
m.p.=135℃.
【0081】
上述した本発明に係る化合物を下記表にまとめて示した。
【0082】
【表1】

【0083】
薬理活性
本発明の化合物に対して生物学的試験を行い、幾つかの神経変性病変を治療又は予防できるかどうかを評価した。
【0084】
まず始めに、インビトロアッセイを用いて、本発明に係る化合物が、NURR−1核内受容体及びRXR核内受容体により形成されるヘテロ二量体の活性化剤として作用できるかどうかを評価した。
【0085】
最初のスクリーニング試験として転写活性(transactivation)アッセイを採用した。ヒト受容体NURR−1−Gal4のキメラを発現するプラスミド、RXRヒト受容体(RXRα又はRXRγ受容体)を発現するプラスミド、及びレポータープラスミド5Gal4pGL3−TK−LucをCos−7細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクションは薬品(Jet PEI)も用いて行った。
【0086】
トランスフェクトした細胞を384ウェルプレートにまき、24時間放置した。
【0087】
24時間後、培地を交換した。試験物質を培地に添加した(最終濃度:10−4〜3.10−10M)。一晩インキュベートした後、メーカー(Promega)の使用説明書に従って「SteadyGlo」を添加し、ルシフェラーゼの発現量を測定した。
【0088】
2×10−5Mの4−[[6−メチル−2−フェニル−5−(2−プロペニル)−4−ピリミジニル]アミノ]安息香酸(XCT0135908とよぶ)(RXRアゴニスト)を対照物質として使用した。
【0089】
各ヘテロ二量体の基礎活性に関して誘導濃度を算出した。結果は、対照物質を用いた場合に得られた誘導濃度と比較した誘導濃度のパーセンテージで表した(便宜上、対照物質の誘導濃度は100%に等しいとする)。
【0090】
本発明に係る化合物の誘導濃度は、最大で104%(NURR1/RXRα)、88%(NURR1/RXRγ)であり、そのEC50値は最小で26nM(NURR1/RXRα)、20nM(NURR1/RXRγ)である。
【0091】
本発明に係る化合物の幾つかは、EC50が100nM未満であり、NURR−1/RXRαヘテロ二量体において顕著である。
【0092】
本発明に係る化合物のなかから、例として下記の比較結果を示し、対照物質としてNURR−1/RXR活性化化合物(XCT0135908)と比較したパーセンテージで表す。
【0093】
【表2】

【0094】
また、比較対象として、本発明に係る化合物に比較的近い構造を有する特許出願WO2007/026097の実施例76を検討したところ、最大効能の50%を示す化合物の濃度(EC50)は、本発明に記載の化合物よりも少なくとも10倍高いものであることが分かった。
【0095】
雄性C57Bl6マウスにおける脳内及び血漿中の薬物動態プロファイルを測定し、化合物が血液脳関門を通過することを実証するために、一連の最初のインビボ試験を本発明に係る幾つかの化合物に対して行った。
【0096】
用いた手順は以下の通りである。
【0097】
この試験には、雄性C57Bl6マウス(25〜30g)(Janvier(フランス,ル ジュネスト−サン−ティスル)より入手)を使用した(一投与群当たり12匹のマウスを使用)。
【0098】
動物には標準の齧歯類用飼料(Purina Mills(ミズーリ州,セントルイス))を摂取させ、ケージに入れて、明暗サイクル(12時間/12時間)下に置いた。室温は22±2℃に、湿度は55±10%に維持した。
【0099】
投与前にはマウスを絶食させた。試験中は水を自由摂取させた。
【0100】
試験化合物を10mg/kgで経口投与した。
【0101】
10mg/kgで経口投与する場合、1%メチルセルロース400cpで調製した試験化合物の懸濁液10mL/kgを動物に強制(挿管)投与した。
【0102】
強制(挿管)投与から15分、30分、1時間、3時間、6時間、8時間後に動物を麻酔下で屠殺した。
【0103】
各回、各屠殺動物から血液を採取し、さらに脳を切除した。
【0104】
蒸発濃縮した抗凝血剤(1000IU/mLのヘパリンナトリウム塩溶液)20μLを含む1.5mL試験管に、採取した血液1mLを入れて、4500×gで3分間遠心分離して約400μLの血漿を得た。血漿を200μLのアリコートに二分割し、それらを使用時まで−20℃で保存した。使用時にはタンパク質を沈殿させて抽出を行った後、タンデム質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)で分析して、試験化合物の定量を行った。
【0105】
脳を切除後すぐに液体窒素中に浸漬し、その後、分析のため−20℃で保存した。その後に、脳を水/有機溶媒混合液の存在下ですりつぶして、ホモジェネートを得た。続いて、このホモジェネートを遠心分離して、得られた上清から液液抽出により試験化合物を抽出した後、LC−MS/MSで定量した。
【0106】
Excelでのノンコンパートメント解析に基づいて薬物動態パラメータを求めた。曲線下面積(AUC0−t)を線形台形法により求めた。
【0107】
例として、実施例2、8及び10の化合物で得られた結果は以下の通りである。
【0108】
【表3】

【0109】
各分子が期待される神経保護効果を実際に有することを実証するため、一連の別のインビボ試験を本発明に係る幾つかの化合物に対して行った。
【0110】
1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)投与モデルマウスに対して実施例2の化合物を試験して、その活性の有無を確認した。MPTPは神経毒であり、脳の黒質の幾つかのニューロンを破壊してパーキンソン病の症状を恒久的に引き起こす。用いた手順は以下の通りである。
【0111】
試験開始時に10〜12週齢であった雄性C57BL6/Jマウスを8個体ずつ各群に分けた。化合物を1日2回、合計11日間経口投与した。投与開始から3日後より、MPTP毒を20又は25mg/kgで投与した。MPTPは腹腔内注射により1日1回、5日間投与した。試験化合物の投与は、MPTP投与後3日間続けた。一群のマウスには、ビヒクル(0.5%メチルセルロース溶液)のみを投与した。最後の強制(挿管)投与後に動物を安楽死させ、線条体を切除した。線条体からドーパミンを抽出し、ドーパミン(DA)量を電気化学的検出と組み合わせた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、線条体1g当たりのng(平均±SEM)で表した。
【0112】
得られた結果を添付の図1〜3に示す。
【0113】
これらの結果から、MPTP投与により線条体のドーパミン濃度が特徴的に低下すること、さらに、実施例2、8及び10の化合物が、パーキンソン病症状を引き起こす毒であるMPTPの作用を用量依存的に低下させることが分かる。
【0114】
このように、10及び30mg/kgの各投与量において著しい効果がみられる。すなわち、本発明の化合物は、経口投与した場合に、MPTPにより阻害されたドーパミン作用を脳内において回復させることができる。
【0115】
この種の化合物は、血液脳関門を通過し、ニューロン間の伝達に良好な効果を示すものであり、パーキンソン病の治療を目的とした医薬品の活性成分として有利に使用できる。
【0116】
これらのインビトロ及びインビボの結果によれば、本発明の化合物は特定の動物及び細胞モデルにおける疾患のメカニズムを修正することができ、さらに、ドーパミン作動性ニューロンの細胞死を阻止する神経保護物質を生み出すことで変性プロセスを中断させることができる。従って、神経変性疾患、より具体的にはパーキンソン病の予防又は治療用医薬品の活性成分として本化合物を使用することが有用であると確認できる。
【0117】
また、本発明は、活性成分として少なくとも1つの式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の1つを含む医薬組成物を提供する。
【0118】
別の態様において、本願は、NURR−1受容体関連疾患、特に神経変性疾患、より具体的にはパーキンソン病の予防又は治療のための、この種の医薬組成物の使用を包含するものである。
【0119】
該医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤を用いて従来の方法で調製することができ、非経口的に、又は好ましくは経口的(例えば錠剤やカプセルなど)に投与可能な形態とすることができる。
【0120】
注射剤形の場合、水性媒体に可溶な塩の形態で式(I)の化合物を使用するのが有利であろう。上述したように、式(Ib)の化合物(酸)と薬理学的に許容可能な非毒性塩基とで塩を形成するのが好ましい。剤形は、可溶性賦形剤の存在下で等張水性媒体に化合物を添加した溶液であってもよいし、化合物の凍結乾燥物として、希釈溶媒を用時に添加して用いてもよい。これらの調合物は、患者又は患畜の必要に応じて灌流形態やボーラスで注入することができる。
【0121】
実用的見地から、化合物を非経口投与する場合、ヒトにおける日用量は、好ましくは2〜250mgである。
【0122】
経口投与可能な調合物は、細かく粉砕された、又はさらに好適には微粉末化された本発明の化合物を、当業者に公知の賦形剤(例えば乳糖、α化デンプン、ステアリン酸マグネシウムなど)と混合したカプセルや錠剤の形態であるのが好ましい。
【0123】
例えば、細かく粉砕された実施例2の化合物500g、α化デンプン500g、乳糖1250g、ラウリル硫酸ナトリウム15g、及びポリビニルピロリドン235gからなる混合物を顆粒状にした。次に、この顆粒状混合物をステアリン酸マグネシウム20g及び微結晶セルロース80gに添加し、得られた混合物を粉砕及びふるい分けした後、260mgカプセルに分配した。これにより、1つ当たり活性成分50mgを含むカプセルを得た。
【0124】
実用的見地から、化合物を経口投与する場合、ヒトにおける日用量は、好ましくは5〜500mgである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)式(I)の化合物:
【化1】

(式中、Rはハロゲン、又はトリフルオロメチル基;
は水素原子、又はC−Cアルキル基;
はイソプロピル(1−メチルエチル)基、又はtert−ブチル(1,1−ジメチルエチル)基;及び、
n=3又は4)、及び
ii)前記式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩
から選択されることを特徴とする、インドールから誘導される化合物、特に治療上有用な化合物。
【請求項2】
前記式(I)中、Rはイソプロピル基であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(I)中、Rはtert−ブチル基であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記式(I)中、Rは水素原子であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
活性成分として少なくとも1つの請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のインドール誘導体の、NURR−1受容体関連疾患の治療又は予防用医薬品を調製するための使用。
【請求項7】
神経変性疾患の治療及び予防用医薬品を調製するための、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記疾患はパーキンソン病であることを特徴とする、請求項7に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−527326(P2011−527326A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517215(P2011−517215)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051372
【国際公開番号】WO2010/004221
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(596160894)ラボラトワール フルニエ エス・アー (16)
【Fターム(参考)】