説明

パーマ用第1剤組成物

【課題】激しく損傷した毛髪に対しても、パーマのかかり過ぎを抑制し所望の形状を安定して賦与することができ、しかも、パーマ施術に伴う刺激臭や毛髪に残留する不快臭が少ないパーマ用第1剤組成物及び毛髪処理方法の提供。
【解決手段】成分(A)〜(C)
(A)チオグリコール酸又はその塩:チオグリコール酸として1〜4重量%
(B)アルカノールアミン類:0.5〜5重量%
(C)ヒドロキシカルボン酸又はその塩:0.2〜5重量%
を含有し、pHが8.6〜9.4の範囲であり、かつ「I=C×〔χ÷(1+χ)〕」〔式中、Cはチオグリコール酸としての成分(A)の含有量、χ=10^(pH値−9.3)〕で定義される指数Iが0.2〜1.9の範囲である毛髪還元用第1剤組成物及びこれを用いた毛髪処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学処理の繰り返しで激しく損傷した毛髪に対しても、更なる損傷を抑制しつつ、パーマのかかり過ぎを抑制し所望の形状を安定して賦与することができ、しかも、パーマ施術時の刺激臭及び施術後に毛髪に残留する不快臭が少ないパーマ用の第1剤組成物及びこれを用いた毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を長期間にわたり所望の形状にセットする一般的な手段として、ウェーブパーマ処理及びストレートパーマ処理が挙げられる。通常のパーマ処理では、チオグリコール酸塩、システイン等の還元性物質を含有する第1剤によって毛髪に内在するシスチン結合を開裂し、毛髪を変形する際に発生する応力を緩和する。次いで臭素酸塩、過酸化水素等の酸化性物質を含有する第2剤によってシスチン結合を再形成することで応力を回復し、所望の形状に固定する。毛髪への形状賦与は、ウェーブパーマの場合、第1剤の塗布前後で毛髪をロッド等に巻き付けることで、またストレートパーマの場合、第1剤の塗布後のコーミング等によって直線的に伸張することで行われる。
【0003】
最近のヘアケア行動の影響から、日常的にカラリング処理やブリーチ処理を繰り返し行っている人が多く、以前に比べて顕著に損傷した状態の髪にパーマ施術を行う機会が増加している。このため、健康な毛髪に対するパーマ施術では発生しないようなトラブル、例えば、毛先等の既損傷部分での縮れや断毛の発生、パーマウェーブのかかり過ぎ、髪の手触りの著しい劣化等の毛髪損傷の進行が懸念され、安心して施術が行えないばかりか、パーマ施術そのものが実施できないこともある。また、一時期に比べてヘアサロンにおけるパーマの施術頻度も激減したため、技術者における施術経験の減少に伴う施術技術水準の低下から、想定どおりのウェーブの強さにパーマをかけることが難しい状況にある。このような背景から、損傷した毛髪に対するパーマ施術においても、かかり過ぎが起こりにくく、ヘアダメージが少ないパーマ剤の開発が望まれている。
【0004】
例えば、毛髪を還元処理するための第1剤組成物のpHを7.5〜8.5に調整し、更に、0.1Nの塩酸標準溶液の消費量で規定されるアルカリ度を0.5〜2.0mL/gと通常のパーマ剤に比べ低い水準で製剤化する方法が提案されている(特許文献1)。また、同様に毛髪を還元することを目的とした第1剤組成物において、3〜12重量%のチオグリコール酸塩(特定比率のアンモニウム塩とモノエタノールアミン塩を併用)を含有し、組成物のpHを9〜9.5に調整する技術が提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、いずれの方法も、化学処理の繰り返しで激しく損傷した毛髪に対し、所望の形状を安定して賦与する点に関しては十分とはいえない。また、パーマ施術時の刺激臭及び施術後に毛髪に残留する不快臭、いわゆる毛髪還元臭が強い点において好ましくない。
【0006】
【特許文献1】特開2002-363041号公報
【特許文献2】特開昭63-255215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヘアカラー、ヘアブリーチ、ストレートパーマ、ウェーブパーマ等の化学処理の繰り返しで激しく損傷した毛髪に対しても、更なる損傷を抑制しつつ、パーマのかかり過ぎを抑制し所望の形状を安定して賦与することができ、しかも、パーマ施術に伴う刺激臭や毛髪に残留する不快臭が少ない、パーマネントウェーブ用又はストレートパーマ用の第1剤組成物及び毛髪処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔第1剤組成物(毛髪還元性組成物)〕
本発明者は、毛髪還元用の第1剤組成物において、チオグリコール酸又はその塩を従来に比べ少量とし、アルカノールアミンと共にヒドロキシカルボン酸を含有させ、組成物のpH及び組成物の毛髪に対する作用の強さを示す指数を一定範囲に調整することによって上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(C)
(A) チオグリコール酸又はその塩:チオグリコール酸として1〜4重量%
(B) アルカノールアミン類:0.5〜5重量%
(C) ヒドロキシカルボン酸又はその塩:0.2〜5重量%
を含有し、pHが8.6〜9.4の範囲であり、かつ下記式
【0010】
I=C×〔χ÷(1+χ)〕
【0011】
〔式中、Cはチオグリコール酸としての成分(A)の含有量(重量%)を示し、χは10^(pH値−9.3)を示す。〕
で定義される指数Iが0.2〜1.9の範囲であるパーマネントウェーブ用又はストレートパーマ用第1剤組成物を提供するものである。
【0012】
また本発明は、上記第1剤組成物と、酸化剤を含有する第2剤組成物とからなる二浴式パーマネントウェーブ用又はストレートパーマ用組成物を提供するものである。
【0013】
更に本発明は、上記の第1剤組成物により毛髪を処理した後、水洗を行い、又は行わずに、酸化剤を含有する第2剤組成物により毛髪を処理する毛髪処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化学処理の繰り返しで激しく損傷した毛髪に対しても、かかり過ぎを抑制することで所望の形状を安定して賦与でき、しかもパーマ施術に伴う刺激臭や毛髪に残留する不快臭が少ない。また、技術の未熟な者の施術によっても、パーマのかかり過ぎを生じにくく、所望の形状を容易に賦与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
成分(A)のチオグリコール酸又はその塩としては、パーマ施術時の刺激臭及び施術後に毛髪に残留する不快臭を抑制できることから、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩が好ましい。良好なウェーブ賦与効果、ストレート化効果を得ると共に、刺激臭や不快臭を抑制する観点から、本発明の第1剤組成物中の成分(A)の含有量は、チオグリコール酸として1〜4重量%とされるが、1.25〜3.75重量%、特に1.5〜3.5重量%が好ましい。
【0016】
成分(B)のアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。良好なウェーブ賦与効果、ストレート化効果を得ると共に、刺激臭、不快臭、皮膚への刺激を抑制する観点から、本発明の第1剤組成物中の成分(B)の含有量は、0.5〜5重量%とされるが、0.75〜4.5重量%、特に1〜4重量%が好ましい。
【0017】
成分(C)のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸の塩としては、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。特にしっかりとしたウェーブ形状の付与と優れたストレート化効果が得られること、また、組成中の塩濃度を抑制し、保存安定性を向上させる観点から、本発明の第1剤組成物中の成分(C)の含有量は、0.2〜5重量%とされるが、0.5〜4重量%、特に1〜3重量%が好ましい。
【0018】
本発明の第1剤組成物のpHは8.6〜9.4に調整されるが、美容上許容される範囲の強さのパーマウェーブを得て、しかも毛髪の損傷を低減する観点から、pHは8.65〜9.35、更には8.7〜9.3の範囲であることが好ましい。
【0019】
第1剤組成物における「I=C×〔χ÷(1+χ)〕」で示される指数Iは、0.2〜1.9の範囲であることが必要である。ここに、Cはチオグリコール酸としての成分(A)の含有量(重量%)を示し、χは10の(pH値−9.3)乗の値である。9.3はチオグリコール酸のチオール基の解離定数(pKa)である。即ち、この指数Iは、前記の成分(A)のチオグリコール酸としての含有量と第1剤組成物のpH値とから求められる、還元剤成分(A)の毛髪への作用の大きさの指標である。美容上許容される範囲の強さのパーマウェーブを得て、しかも毛髪へのダメージを低減する観点から、この指数Iは0.25〜1.75、特に0.3〜1.5であることが好ましい。
【0020】
本発明の第1剤組成物は、有効成分の十分な量を毛髪内部へ浸透させる観点、及び毛髪損傷を最小限に抑制する観点から、その「1gをpH5.2まで中和するのに必要な0.1N塩酸の量(mL/g)」で定義されるアルカリ量が、0.5〜4.5mL/gの範囲であることが好ましく、更には0.75〜4.25mL/g、特に1〜4mL/gの範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明の第1剤組成物には、成分(A)以外の毛髪還元剤を必要に応じて併用することもできる。ただし、かかり過ぎの抑制効果やパーマ施術に伴う不快臭の低減効果の維持の観点から、特に、システイン又はその塩類、アセチルシステイン及び亜硫酸塩から選ばれることが望ましく、成分(A)の濃度(チオグリコール酸としてのモル濃度)に対して、等モル量以下、特に2分の1モル量以下が好ましい。
【0022】
本発明の第1剤組成物には、以上の成分以外に、不要な着色現象を抑制すると共に安定な還元反応を保証することを目的として、組成物中の金属イオンと安定的に複合体を形成する機能を有するキレート剤を含有させることができる。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸及びその塩、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸及びその塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸及びその塩、ニトリロトリスメチレンジホスホン酸及びその塩、8-キノリノール及びその塩が挙げられる。
【0023】
本発明の第1剤組成物には、更に、通常のパーマ剤に使用される成分を、適宜配合することができる。このような成分としては、香料成分;カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤;炭素数1〜6のアルコール等の有機溶剤;高級アルコール、脂肪酸又はその塩類、コレステロール又はその誘導体、ワセリン、ラノリン誘導体、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等の油性成分;天然セラミド又はセラミド類似構造を有するセラミド類縁体;保湿剤;ビタミン等の薬剤;タンパク質加水分解物やアミノ酸、又はその四級化誘導体やシリル化誘導体;ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、シリコーン等のポリマー微粉末又はそれらの疎水化処理物;動植物由来の抽出エキス;紫外線吸収剤;パール化剤;防腐剤;殺菌剤;抗炎症剤;シリコーン類、変性シリコーン類、カチオン性ポリマー、両性ポリマー等の高分子化合物;抗フケ剤;pH調整剤;色素;香料などが挙げられる。
【0024】
本発明の第1剤組成物は、水を媒体とし、液状、ジェル状、乳化状、泡状(エアゾールタイプ、ポンプフォーマータイプ)等、いずれの剤型とすることもできる。
【0025】
本発明の第1剤組成物を用いてパーマネントウェーブ又はストレートパーマ処理を行うには、本発明の第1剤組成物により毛髪を処理した後、水洗を行い、又は行わずに、酸化剤を含有する第2剤組成物により毛髪を処理すればよい。
【0026】
〔第2剤組成物(毛髪酸化性組成物)〕
第2剤組成物に含まれる酸化剤は、臭素酸塩又は過酸化水素が好ましく、臭素酸塩を含有する場合は、第2剤組成物のpHは4.5〜8、特に5〜7.5の範囲であることが好ましい。過酸化水素を含有する場合は、第2剤組成物のpHは2.5〜4.5、特に2.7〜4.3の範囲であることが好ましい。
【0027】
第2剤組成物には、使用する酸化剤に適したpHに調整するためのpH緩衝剤を含有させることができる。pH緩衝剤としては、化粧品又はパーマ剤で用いられる蟻酸、グリコール酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸等の有機酸、リン酸等の無機酸と、これらの塩としてナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩のほか、アルカリ土類金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。
【0028】
第2剤組成物を乳化物として製剤化する場合には、通常同目的に用いられる界面活性剤とともに、炭素数12〜30、好ましくは12〜24、特に好ましくは16〜22の、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和の脂肪族アルコールや、炭素数10〜30、好ましくは12〜24、特に好ましくは16〜22の、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和の、水酸基を有してもよい脂肪酸又はその塩類、及びこれらの混合物を含有させることができる。また第2剤組成物をジェル状又は微粘性を有するローションとして製剤化する際には、粘度調整剤としてカチオン性、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子を含有させることができる。
【0029】
更に、第2剤組成物には、これらの含有成分以外にも必要に応じて種々の香粧品原料を含有させることができる。例えば、種々の配合成分の可溶化剤として、炭素数1〜6の低級アルコール、イオン性(アニオン性又はカチオン性)界面活性剤又は非イオン界面活性剤;使用感の向上を目的として、油剤、シリコーン類、カチオン性ポリマー、両性ポリマー等;毛髪損傷の低減や毛髪保護を目的として、アミノ酸又はその誘導体、タンパク、その加水分解物類又はその誘導体、天然セラミド又は類似機能を有する擬似セラミド類等を含有させることができ、またその他、賦香剤、着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、キレート剤、育毛成分等を適宜含有させることができる。
【実施例】
【0030】
実施例1〜4,比較例1〜2
表1に示す還元性組成物(第1剤)及び表2に示す酸化性組成物(第2剤)を調製し、評価用ウェーブパーマ剤とした。このウェーブパーマ剤を用いてパーマ処理を行い、パーマ処理によるパーマのかかりについて、以下の方法により評価した。
【0031】
<パーマ処理>
事前にブリーチ処理(花王(株)のイナズマブリーチにより10回処理、浴比1:1(毛髪:剤)、室温で20分放置)を行い、激しく損傷した0.1g、長さ20cmの毛束を作製した。これを直径15mmの円筒状ガラスロッドにらせん状に巻きつけ、浴比1:1で第1剤を塗布し均一になじませ、室温で15分間放置した。次いで、ロッドに巻いた状態の毛束を40℃の流水中で30秒間すすぎ、タオルで水気を除いた後、第2剤を浴比1:1で塗布し、均一になじませ室温で15分間放置した。最後に、毛束をロッドから外し、40℃の流水中で30秒すすぎ、ウェーブパーマ処理を終了した。
【0032】
<評価>
・カール度とウェーブ度の測定
パーマ処理に用いたガラスロッドの直径をA0(=15mm)、元の毛束の長さをL0(=20cm)とし、パーマ処理後、毛束を水で濡らした状態で形成するカールの直径をA(mm単位)、毛束の長さをL(cm単位)として、下記の式からカール度とウェーブ度を求めた。なお、毛髪の長さは、毛束の根元を固定して垂直に吊した状態で測定した。
【0033】
カール度(%)=(A0/A)×100
ウェーブ度(%)=〔(L0−L)÷L0〕×100
【0034】
表1にカール度及びウェーブ度を示すと共に、カール度35〜50%及びウェーブ度15〜30%である場合をそれぞれ好ましいかかり具合として「○」とし、これらの基準を外れる場合を「×」として示した。上記基準未満ではパーマのかかりが弱すぎ、上記基準を超えるとパーマがかかり過ぎとなり美的観点から好ましくない。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1中記載の結果から、実施例1〜4の還元性組成物は、激しくダメージした毛髪に対して狙いどおりのウェーブの賦与ができることが分かる。一方、pH範囲が外れた比較例1〜2の還元性組成物では、パーマのかかりが不十分か又はかかり過ぎの状態になり好ましくない結果であることが分かる。
【0038】
実施例5,比較例3〜6
表3に示す実施例5及び比較例3〜6の還元性組成物と前記表2の酸化性組成物を用い、実施例1と同様の方法でパーマ処理を行い、ウェーブ度とカール度を測定した。
その結果、実施例5の還元性組成物は、ウェーブ賦与効果に優れるものであることを確認した。一方、成分(A)の量及び/又は指数の範囲が外れた比較例3〜6については、いずれもパーマのかかりが不十分か又はかかり過ぎの状態になり好ましくない結果であることが分かる。
【0039】
【表3】

【0040】
実施例6〜9,比較例7
表4に示す実施例6〜9及び比較例7の還元性組成物と前記表2の酸化性組成物を用い、実施例1と同様の方法でパーマ処理を行い、ウェーブ度とカール度を測定した。
その結果、実施例6〜9の還元性組成物は、いずれもウェーブ賦与効果に優れるものであることを確認した。一方、指数の範囲が外れる比較例7は、パーマのかかり過ぎの状態になり好ましくない結果であることが分かる。
【0041】
【表4】

【0042】
実施例10〜11,比較例8〜9
表5に示す実施例10〜11及び比較例8〜9の還元性組成物と前記表2の酸化性組成物を用い、実施例1と同様の方法でパーマ処理を行い、ウェーブ度とカール度を測定した。また、美しいウェーブ見え方・均整(ウェーブのリッジとピッチの比)を反映した指標(W/p比)を以下の方法で評価した。
【0043】
<評価>
・美しいウェーブ見え方・均整(W/p比)の測定
実施例1と同様の方法で処理したトレスを水で濡らし、上端を固定して吊した状態で自然乾燥する。乾燥後のトレスのウェーブの幅(W;cm単位)とウェーブの1周期あたりの長さ(p;cm単位)をそれぞれ測定して、以下の式からW/p比を決定した。
【0044】
W/p比(%)=W/p×100
【0045】
W/p比が15〜25%の範囲の場合、かかり過ぎず、均整のとれた美しいウェーブとなることから、「○」とし、それ以下の場合はウェーブがダレたように見え、それ以上の場合はかかり過ぎた状態に見えることから、「×」と表記した。
【0046】
【表5】

【0047】
表5の結果から、適量の有機酸を含有する実施例10〜11では美しく均整のとれたウェーブが得られるが、有機酸を含まない比較例8〜9ではウェーブがダレたようになり好ましくない結果であることが分かる。
【0048】
実施例12,比較例10
表6に示す実施例12及び比較例10の還元性組成物と前記表2の酸化性組成物を用いて実施例1と同様の方法でパーマ処理を行った。ただし、第1剤塗付後の放置時間は、10分〜50分まで10分毎に変化させ、放置時間の経過がパーマのかかり(ウェーブ度とカール度)に及ぼす影響を確認することで、施術条件によらない安定した形状賦与ができるかどうかを確認すると共に、以下に示す方法で、パ−マ処理後の毛束に残留する不快臭を評価した。
【0049】
<評価>
・パ−マ処理後の毛束の不快臭の評価
専門パネラー(5名)により前記の方法でパーマ処理を行ったトレスについて、下記の評価基準に従って残留する不快臭の評価を行った。表1に評価の平均値を示すと共に、評価3以上であれば使用上許容される使用感であることから、平均値が3以上を○、3未満を×として示した。
【0050】
〔評価基準〕
4:残留する不快臭が僅かにあり
3:残留する不快臭がやや強い
2:残留する不快臭が強い
1:残留する不快臭が非常に強い
【0051】
【表6】

【0052】
表6の結果から、実施例12は広範な放置時間において一定のパーマのかかりが安定的に得られ、かつ、パーマに伴う不快臭が低いことが分かる。一方、同じ指数Iを有していても、pHが過少で還元剤量が過大の場合には、パーマのかかりの放置時間依存性が大きく、最適なかかりの施術を行うには不都合であること、また、パーマ後の髪に多大の不快臭を残す点で好ましくないことが分かる。
【0053】
実施例13
(重量%)
50%チオグリコール酸モノエタノールアミン
(チオグリコール酸として50%) 4.5
90%乳酸 4.6
40%ジチオジグリコール酸ジアンモニウム 1.0
モノエタノールアミン 3.0
プロピレングリコール 3.2
イソステアリルグリセリルエーテル 0.1
塩化セチルトリメチルアンモニウム液(30重量%) 2.8
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(23E.O.) 0.9
ポリオキシエチレンドデシルエーテル(9E.O.) 0.6
アミノ変性シリコーン
(SM8704C,東レ・ダウコーニング・シリコーン社) 1.0
長鎖二塩基酸ビス3-メトキシプロピルアミド 0.1
トリメチルグリシン 2.0
エデト酸二ナトリウム 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
香料 適量
精製水 残量
pH8.8,指数0.54,アルカリ量1.47mL/g
【0054】
実施例14
(重量%)
50%チオグリコール酸モノエタノールアミン
(チオグリコール酸として50%) 4.5
50%リンゴ酸 4.3
40%ジチオジグリコール酸ジアンモニウム 1.0
モノエタノールアミン 3.0
プロピレングリコール 3.2
イソステアリルグリセリルエーテル 0.1
塩化セチルトリメチルアンモニウム液(30重量%) 2.8
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(23E.O.) 0.9
ポリオキシエチレンドデシルエーテル(9E.O.) 0.6
アミノ変性シリコーン
(SM8704C,東レ・ダウコーニング・シリコーン社) 1.0
長鎖二塩基酸ビス3-メトキシプロピルアミド 0.1
トリメチルグリシン 2.0
エデト酸二ナトリウム 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
香料 適量
精製水 残量
pH9.0,指数0.75,アルカリ量2.18mL/g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C)
(A) チオグリコール酸又はその塩:チオグリコール酸として1〜4重量%
(B) アルカノールアミン類:0.5〜5重量%
(C) ヒドロキシカルボン酸又はその塩:0.2〜5重量%
を含有し、pHが8.6〜9.4の範囲であり、かつ下記式
I=C×〔χ÷(1+χ)〕
〔式中、Cはチオグリコール酸としての成分(A)の含有量(重量%)を示し、χは10^(pH値−9.3)を示す。〕
で定義される指数Iが0.2〜1.9の範囲であるパーマネントウェーブ用又はストレートパーマ用第1剤組成物。
【請求項2】
組成物の1gをpH5.2まで中和するのに必要な0.1N塩酸の量(mL/g)で定義されるアルカリ量が、0.5〜4.5mL/gの範囲である請求項1記載のパーマネントウェーブ用又はストレートパーマ用第1剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の第1剤組成物と、酸化剤を含有する第2剤組成物とからなる二浴式パーマネントウェーブ用又はストレートパーマ用組成物。
【請求項4】
第2剤組成物が、臭素酸塩を含有しpHが4.5〜8の範囲、又は過酸化水素を含有しpHが2.5〜4.5の範囲である請求項3記載の二浴式パーマネントウェーブ用又はストレートパーマ用組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載の第1剤組成物により毛髪を処理した後、水洗を行い、又は行わずに、酸化剤を含有する第2剤組成物により毛髪を処理する毛髪処理方法。

【公開番号】特開2007−217315(P2007−217315A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37696(P2006−37696)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】