説明

パール顔料の設計方法及びメイクアップ化粧料

【課題】トライ&エラーや職人の経験に依存することなく、所望の色のパール顔料を設計する際の構成および膜厚を求める。
【解決手段】薄片状粉体の複素屈折率、厚みおよび所望の反射光波長を選定し、この選定した事項をパール顔料の多層膜反射率Rを求め、当該多層膜反射率Rが所望の波長で最大値または最小値になるように各被覆層の膜厚を求め、この求めた膜厚値になるように設計する。さらに、薄片状粉体の厚み分布を考慮した平均反射率Fを求め、これを多層膜反射率Rに代えて利用する。あるいは、Torrance−Sparrowモデルを適用し、パール顔料を粗面に塗布した際の塗布面に対するパール顔料の傾きを考慮した塗布面反射率RCを求め、これを多層膜反射率Rまたは平均反射率Fに代えて利用する。これにより、薄片状粉体の厚み分布および粗面に対する塗布粗さを考慮したシミュレーションを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有色顔料を用いた顔料の設計方法に関する。特に、化粧料用のパール顔料の設計方法に関する。また、本発明はパール顔料を含有するメイクアップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
パール顔料は、ペイント、プラスチック、印刷業界で幅広く利用されてきている。パール顔料は薄片状粉体の上に酸化チタン等の無色金属酸化物を複数被覆した層構造を持ち、その厚さを変化させることで、様々な干渉色を得ることができる。この干渉効果により、パール顔料は、既存の材料(顔料、染料、金属粉体)にはない、高彩度、高輝度、高色相変化(Color Travel)の特徴を有することができる。また、パール顔料は、化粧品業界においても、ポイントメイクからファンデーションまで幅広く使用される必要不可欠な材料になっている。
【0003】
さらに化粧品に酸化チタン被膜マイカ顔料等の無色金属化合物のみからなるパール顔料を用いた場合には、パール顔料の拡散色が白色(無彩色)のため化粧仕上がりが白浮きした感じとなり印象が悪くなることがある。
【0004】
よって、化粧品業界においては、高彩度、高輝度、高色相変化(Color Travel)等の光学特性を有した、被覆膜に少なくとも1種類の有色顔料を持つパール顔料の作成が望まれている。
【0005】
このような先行技術として、例えば、特許文献1には、薄片状粉体上に酸化鉄層を形成し、さらにアルミニウム化合物を被覆した多層パール顔料が提案されている。これは、赤色系の顔料とその製法に関するものであり、特許文献1の請求項記載のアルミニウム化合物被覆膜厚みについてはシミュレーション等の計算により設計されたものではなく実験的に得られたものである。
【0006】
また、特許文献2または3には、酸化鉄を被覆した薄片状粉体上に酸化チタンなどの無色金属酸化物を被覆した多層構造を持つパール顔料が提案されている。
【0007】
さらに特徴的な光学特性を得るために、近年、シリカフレーク(例えば、特許文献4参照)、アルミフレーク(例えば、特許文献5参照)のように厚み分布が均一な薄片状粉体も製造されている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−100794号公報
【特許文献2】特開平7−11161号公報
【特許文献3】特開平8−259840号公報
【特許文献4】特開平11−12488号公報
【特許文献5】特開2001−207081号公報
【特許文献6】特許第3389360号
【非特許文献1】Max Born and Emil Wolf著(草川 徹、横田英詩 訳)、光学の原理I 第7版、東海大出版会、1991、P78−103
【非特許文献2】Torrance,K.and E.Sparrow,Journal of the Optical Society of America 57,1976 1105−1114
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多層膜パール顔料の層構造および各膜厚みを経験的に予想することは難しい。そのため、光学薄膜理論を用いて被覆層の構造や膜厚みを最適化することが行われている。例えば、特許文献6においては90%以上の反射率を有するパール顔料として、薄片状粉体に高屈折率材層と低屈折率材層とを交互に1/4波長の奇数倍の光学的厚みで積層する構造が設計されている。
【0010】
しかし、この手法のみでは所望するパール顔料の構造を決めることは難しいため、最終的には現場でのトライ&エラーや経験に依存する部分が多い。
【0011】
そこで、パール顔料の構造を決める設計法の開発を行うことで実際に試作することなく、所望のパール顔料の構造を決定する設計方法が求められる。
【0012】
特に、化粧料目的で被覆膜に少なくとも1種類の有色顔料を持つパール顔料の被覆膜の構成および膜厚みを設計するには以下の3つの課題があった。
【0013】
1)被覆膜に吸収を持つ材質が使用されているときには、同じ屈折率で吸収効果がない被覆膜と比べて、境界面での位相のずれや被覆膜中での光吸収により干渉効果が異なるため、実際の反射特性が異なる。
【0014】
2)シリカフレーク、アルミナフレーク、ガラスフレーク等の薄片状粉体は容易に製造および入手することが困難である。それに対して、マイカは入手が比較的容易であり、化粧料として肌に塗布した際の感触もよいので、マイカを薄片状粉体として用いることが望ましい。
【0015】
従来はマイカの厚み分布を考慮しておらず、マイカの厚みを無限大と仮定することでマイカの厚み分布を無視し片面の構造のみで反射率の計算がされていた。しかし、有色金属化合物を被覆膜として用いた際には、裏面に被覆された有色金属化合物の吸収効果も考慮する必要があり、マイカの厚みを測定し設計に取り込む必要が生じる。
【0016】
3)さらに、パール顔料の用途は塗装・プラスチックが中心であり、ラッカーおよび樹脂等の透明媒質中にパール顔料を分散した溶液をアプリケーターにより白黒隠蔽紙等の平滑な面にコーティングしたサンプルで評価を行っていた。このサンプルは高い配向状態で塗布されているため、パール顔料の発色が際立つが、同時に溶剤の屈折率により実際のパール干渉とは異なる色相が発現する。これに対して、化粧品用パール顔料の評価では肌に近い凹凸を有する黒色のウレタン布地にパール顔料を直接塗布したサンプルを変角分光測定器により測定しているため、化粧品用途の設計には、粗面にパール顔料を塗布させたサンプルの変角分光反射率を測定する必要がある。
【0017】
以上説明したように、1)有色の被覆膜を有した2)薄片状粉体のパール顔料が3)粗面に塗布された状態を考慮してパール顔料の構造を決めることは様々な課題があるため、現実の製造現場ではトライ&エラーや職人の経験に依存する部分も多い。
【0018】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、パール顔料の設計にあたり、トライ&エラーや職人の経験に依存することなく、所望の色のパール顔料について、その構成および膜厚みを予めシミュレーションにより求めることができるパール顔料の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明では、1)有色の被覆膜を有した2)薄片状粉体の厚み分布を持つパール顔料が3)粗面に塗布された状態での反射特性を得る設計理論を構築することで、所望する反射率およびL値に対してパール顔料の構造を決める設計方法の開発を行った。
【0020】
検討は、I)多層膜構造の反射率、II)材料の光吸収効果、III)薄片状粉体の厚み分布、IV)材塗布時の粗さの順番で行った。以下でそれぞれについて説明を行う。
I)多層膜構造の反射率
パール顔料は粒子形状20μmの板状粉体のため形状に由来したエッジ効果が生じる。従って、3次元的形状を考慮して計算する必要があるが、粉体の粒径は可視波長に比べて十分大きいと仮定するため、薄片状粉体に横方向と奥行き方向は無限の大きさを持つ薄膜をM層被覆した多層構造モデルを考える。図1に多層膜モデルの一例を示す。
【0021】
この多層膜モデルを計算するため、多層膜の反射率や透過率を正確に計算するために用いられる特性マトリックス法を用いた(例えば、非特許文献1参照)。この手法によると各層は屈折率と光学膜厚みより定まるマトリックスMiで表現される(i=0の時は薄片状粉体自身を表す)。
【0022】
【数6】

多層膜の特性マトリックスは、各層の行列の積で求められる。
【0023】
【数7】

この特性マトリックスより、パール顔料の多層膜反射率Rは以下になる。
【0024】
【数8】

(ただし、
iはi番目の被覆層の屈折率(i=0の時は薄片状粉体の屈折率)、
airは空気の屈折率、
iはi番目の被覆層の膜厚み(i=0の時は薄片状粉体の厚み)、
λ0は所望の反射光波長(真空中)、
θ入射はパール顔料への入射角度、θiはi番目の被覆層への入射角度、
i、pi、pairは複雑な式の表示を簡単に表示するための変数、jは複素数)
II)材料の光吸収効果
光吸収を考慮するために、特性マトリックス法における屈折率を複素屈折率に置き換える必要がある。その複素屈折率は屈折率nrと被覆膜の吸収効果を表す減衰係数niを用いて以下の複素数で記述できる。
【0025】
【数9】

これは(数6)の屈折率Niと(数8)の屈折率Nairを複素屈折率に変更することを意味する。
【0026】
また、ガラスのような透明な材質は可視光領域で吸収がないためni=0となる。
III)薄片状粉体の厚み分布
薄片状粉体厚みを測定するために、AFM(原子間力顕微鏡)を用いた。測定法としては、薄片状粉体をエタノール等の溶媒に分散させた状態で、平滑な基板面上に付着させ、溶媒を除去することにより基板に密着させた後、AFMにより薄片状粉体と平滑基板との段差を測定した。図2にAFM画像の一例を示す(薄片状粉体はマイカ)。その結果得られた薄片状粉体の厚み分布関数f(x)から、以下の式でパール顔料の平均反射率Fを計算した。
【0027】
【数10】

ここで、最も薄い厚みをxiとし、最も厚い厚みをxとする。
IV)材塗布時の粗さ
粗面にパール顔料を塗布させたサンプルの反射率を求める必要があるため、物体表面の表面形状から反射率を推定するTorrance−Sparrowモデルを適応した(例えば、非特許文献2参照)。
【0028】
Torrance−Sparrowモデルとは表面に凹凸があるアルミニウム板の反射を、材質表面の法線分布をガウス関数でモデル化した分布関数(Distribution Function)、粗面からのフレネル反射(Fresnel Coefficient)、粗面によるシャドウイングやマスキングによる減衰率の地理的減衰(Geometrical Attenuation)との積で表現したものである。図3にTorrance−Sparrowモデルのモデル図を示す。
【0029】
このモデルと式(1)記載の多層膜反射率Rまたは式(3)記載の平均反射率Fを組み合わせて粗面にパール顔料を塗布させたサンプルの塗布面反射率RCを以下の式で表現した。
【0030】
【数11】

【0031】
ここで、表面粗さを示す平均傾きmは、塗布面に対するパール顔料の平均傾きを表しており、平均傾きmが大きくなると反射分布が表面に広がる。また、平均傾きmは既存のパール顔料を黒色のウレタン布地に塗布し測定された変角分光反射率を再現するように決定することもできる。
【0032】
すなわち、本発明は、屈折率の異なる少なくとも2層の被覆層を、薄片状粉体の表面に有し、かつ特定の波長の光を反射するパール顔料の設計方法であって、本発明の特徴とするところは、前記薄片状粉体の複素屈折率、厚みおよび所望の反射光波長を選定し、多層膜反射率Rを求める上記式(1)に適用させ、当該多層膜反射率Rが所望の波長で最大値または最小値になるように各被覆層の膜厚みを求め、この求めた膜厚み値になるように設計するところにある。
【0033】
ここで、多層膜反射率Rが所望の波長で最大値になるようにとは、所望する波長をパール顔料から最大に反射させて、高彩度、高輝度、高色相変化(Color Travel)の特徴を際立たせることを意味し、一方最小値になるようにとは、高彩度、高輝度、高色相変化(Color Travel)の特徴を際立たせないことを意味する。
【0034】
さらに、前記薄片状粉体の厚み分布を考慮したパール顔料における平均反射率Fを上記式(3)により求め、これを前記多層膜反射率Rに代えて利用することもできる。あるいは、Torrance−Sparrowモデルを適用し、パール顔料を粗面に塗布した際のパール顔料の塗布面に対する傾きを考慮した前記パール顔料における塗布面反射率RCを上記式(4)により求め、これを前記多層膜反射率Rまたは平均反射率Fに代えて利用することもできる。
【0035】
これにより、前記薄片状粉体の厚み分布を考慮した前記パール顔料における平均反射率Fおよび前記パール顔料の表面粗さを考慮した前記パール顔料における塗布面反射率RCの双方を加味したシミュレーションを行うことができるため、所望の色のパール顔料について、その構成および膜厚みを予めシミュレーションにより求めることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、パール顔料の設計にあたり、トライ&エラーや職人の経験に依存することなく、所望の色のパール顔料について、その構成および膜厚みを予めシミュレーションにより求めて設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
薄片状粉体に多層膜を被覆したパール顔料の設計について、図4のパール顔料設計方法の機能ブロック構成および処理フローを基に説明していく。
1)薄片状粉体厚みの測定
薄片状粉体の厚みを原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメント社製、NanoscopeIII)を用いて測定する。測定の際、薄片状粉体はエタノール等の溶媒に分散させた状態で、平滑な基板面上に付着させ、溶媒を除去することにより平滑基板に密着させた後、原子間力顕微鏡により薄片状粉体と平滑基板との段差を測定する。かかる薄片状粉体としては、雲母、セリサイト、タルク、カオリン、スメクタイト属粘土鉱物、合成マイカ、合成セリサイト、板状二酸化チタン、板状シリカ、板状酸化アルミニウム、窒化硼素、硫酸バリウム、板状チタニア・シリカ複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、特に雲母(マイカ)が、表面の平滑性の点で好ましい。
【0038】
薄片状粉体は、平均粒径が2〜200μmで、平均厚さが0.01〜5μmであるのが好ましい。特に、塗料等に配合する際には、配合適性の点から、平均粒径が2〜20μmで、平均厚さが0.05〜1μmであるのがより好ましい。
2)被覆特性の取得
顔料の屈折率(複素屈折率の実部)は、色彩科学ハンドブック等に多数記載されている。複素屈折率についての測定結果は通常の屈折率と比べてかなり少ないが、酸化鉄やフタニンシアニン・ブルーについては複素屈折率を測定した論文がある。
【0039】
薄片状粉体を被覆する有色金属としては、金、銅等が挙げられ、特に金が好ましい。有色金属酸化物としては、酸化鉄、低次酸化チタン、酸化銅、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル等が挙げられ、特に酸化鉄が好ましい。
【0040】
本発明において、薄片状粉体に被覆する無色金属としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、錫、珪素、アルミニウム等が挙げられ、特に、チタンが好ましい。また、無色金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等が挙げられ、特に、酸化チタンが好ましい。
3)パール顔料の下地に対する塗布粗さ推定
黒色人工皮革に、既存のパール顔料を塗布したものを測定サンプルとして用いた。これを共焦点顕微鏡により粉体塗布面の凹凸分布を測定することで、パール顔料を下地に塗布した際の塗布面に対する傾きを測定し平均の傾きmを求める。
【0041】
もしくは、この塗布されたサンプルを変角分光測定器により測定し、この角度依存性を上記式(4)の表面粗さモデルで再現できるように平均傾きmを求める。
4)シミュレーション
薄片状粉体の厚み、被膜物性、塗布粗さが求まると、粗面におけるパール顔料の変角分光反射率は、構成膜の組み合わせと厚みによって決定される。この得られた反射特性に対して光源と視野とを与えると3刺激値XYZを決めることができ、CIE L値を求めることが可能になる。
【0042】
を用いることで、より明るいパール顔料を設計したいときには、L値に着目すればよい。また、黄色の彩度を向上させたいときにはb値に着目すればよい。
【0043】
さらにより精度の高い設計を行いたいときには、分光反射率曲線を比較すればよい。
【0044】
もし、求める分光反射率およびLが予め設定されているときには、目標に対する計算値の差分の2乗が最小になるように構成膜の組み合わせと厚みを決定する。
5)試作
先願(特願2004−363964、特願2004−363966、本願出願時に未公開)に記載されている中和滴定法を用いて被膜の作成を行った。この手法を用いると、有色顔料を被覆した際の被膜表面の粗さを軽減することができるため、表面での拡散反射が抑えられ、設計した性能を得ることができる。
6)試作品評価
作成した試作品を黒色人工皮革(オカモト社製、型式:OK−7)に、5cm×10cmの範囲に平均0.05mg/cmとなるようにスポンジを用いて試作したパール顔料を塗布し、そのサンプルを変角分光測定器により測定することで分光反射率およびCIE L値を得る。また、被膜前の薄片状粉体の厚さを測定し、被覆後のパール顔料の厚さを測定することで、被覆膜の幾何学的膜厚みを求める。
7)被覆膜の光学物性推定
試作したサンプルの分光反射率と所望する分光反射率に開きがある場合には、6)で求めた膜厚みを基に被膜の複素屈折率の実部もしくは虚部、または、実部と虚部とを変化させて最適な物性値を求め、パール顔料の各被覆層の膜厚みを再設計する。
【0045】
具体的には、以下のステップを行う。
I)試作サンプルに被覆されている膜の複素屈折率は文献から引用された複素屈折率と比較して大きく外れていないとみなして、後述実施例1に記載の文献(Applied Optics)の値±0.5、好ましくは±0.2の誤差範囲内と仮定する。
II)6)で求めた被覆膜厚みとI)で決めた複素屈折率の誤差範囲内で式4)により分光反射率を計算する。
III)II)で計算された分光反射率と試作したサンプルの分光反射率との差分の2乗を最小にする複素屈折率の実部もしくは虚部、または実部と虚部の組を求める。
IV)波長毎にI)〜III)のステップを繰り返し最適の複素屈折率を求める。
V)求めた複素屈折率を用いてパール顔料の各被覆層の膜厚みを再設計する。
【0046】
当該の設計したパール顔料を最終的にはリップスティック、アイシャドウ、ファンデーション等のメイクアップ化粧料に配合することで、消費者の嗜好に適した商品開発を行うことが可能になる。
【0047】
(実施例1:黄色高彩度パール顔料の設計および製造)
黄色高彩度パール顔料を作成するために、薄片状粉体であるマイカに酸化鉄および酸化チタンを被覆させる構造に対する検討内容について説明を行う。
1)薄片状粉体厚みは原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメント社製、NanoscopeIII)を用いて測定される。測定の際、薄片状粉体はエタノール等の溶媒に分散させた状態で、平滑な基板面上に付着させ、溶媒を除去することにより薄片状粉体を平滑基板に密着させた後、原子間力顕微鏡により薄片状粉体と平滑基板との段差を測定し、図5の結果が得られた。図5にマイカの厚み分布を示す。図5は横軸に厚みをとり、縦軸に頻度をとる。
2)物性値である複素屈折率は文献により取得した。
【0048】
酸化チタンについては、メルク社技術報告書Kontakte(1992)に記載されている屈折率2.5を用いた。
【0049】
酸化鉄(ヘマタイト)の物性値についてはApplied Optics 33,7275−7281,J.Opt.Soc.Am.71932−934に記載されている値を用いた。図6に酸化鉄(ヘマタイト)の複素屈折率を示す。図6は横軸に波長をとり、縦軸に複素屈折率の実部と虚部をとる。酸化鉄は赤色顔料であるため、複素屈折率の虚部(吸収項)は青色領域で高い値を持つことがわかる。
3)黒色人工皮革(オカモト社製、型式:OK−7)を使用し、5cm×10cmの範囲に平均0.05mg/cmとなるようにスポンジを用いて、既存のパール顔料を塗布したものを測定サンプルとして用いた。これをキーエンス社製共焦点顕微鏡により粉体塗布面の凹凸分布を測定した。得られた高さ分布からパール顔料を下地に塗布した際の傾き状態を推定する。図7にラフネス(粗さ)の定量化(共焦点顕微鏡による測定)を示す。横軸と縦軸は測定器上の座標位置を示しており、各パール顔料の傾きを直線近似で求めた。
【0050】
また、この塗布されたサンプルを変角分光測定器により測定し、この角度依存性を式(4)の表面粗さモデルで再現できるように平均傾きmを求めた。図8にラフネスの定量化(モデルによるフィンティング)を示す。図8は横軸に受光角をとり、縦軸にY値(CIE色空間)をとる。
【0051】
この二つの手法による検討で顔料の表面粗さは、式(4)における平均傾きでm=0.01〜1、好ましくは、m=0.1〜0.25である。
4)シミュレーション
市販の黄色パール顔料(エンゲルハルド社製フラメンコゴールド)と比べて著しく彩度の高い黄色パール顔料を製作するために、この市販品パール顔料を黒色人工皮革に対して5cm×10cmの範囲に平均0.05mg/cmとなるようにスポンジを用いて均一に塗布した。
【0052】
そして、そのサンプルを変角分光測定器(村上色彩製GCMS−4)を用いて、入射角を45度、受光角を−75度から75度の15度間隔で測定し、a−bグラフをプロットした(図11:市販品)。また、入射角45度、受光角45度における分光反射率の測定値を図12(市販品)に示す。図12は横軸に波長をとり、縦軸に反射率をとる。
i)図12によると黄色パール顔料の分光反射率は波長が大きくなると反射率も大きくなる右肩上がりの曲線であるため、色彩理論によると、より黄色高彩度のパール顔料を達成するためには、黄色の波長である565〜595nmで鋭いピークを持つことが必要となるため、青色領域の光を吸収する酸化鉄を被覆膜の1つとして選択した。その際の物性値は2)で説明した文献値を用いた。
ii)多層構造として酸化チタンと酸化鉄の積層構造に着目し、マイカに酸化鉄/酸化チタンの順番に被覆する構造と酸化チタン/酸化鉄の順番に被覆する構造についてシミュレーションを行った。入射角は45度に固定し、受光角を0度から75度まで15度間隔で変化させたときのa−b値を求めた。その際に、酸化鉄の膜厚みは20nmに固定し、酸化チタンの膜厚みを140〜180nmから10nm間隔で変えた。図9にa−bグラフ(上図:マイカ/Fe/TiO、下図:マイカ/TiO/Fe)を示す(理論計算)。図9は横軸にa*をとり、縦軸にbをとる。
【0053】
この結果によると、酸化チタンを最外層にした構造では彩度がより向上する可能性があることが分かった。また、正反射方向以外にもパール光沢が現れているが、これは、パール顔料を凹凸がある黒色人工皮革に塗布しているため塗布膜が乱れることにより生じるものである。
【0054】
彩度向上のメカニズムを理解するために、酸化鉄20nm/酸化チタン140nmにおける反射率分布(入射角45度、受光角45度)を比較した(図10)。その結果、酸化チタンを最外層にした構造の方が短波長側での分光反射率曲線の傾きが大きくなることにより彩度が向上することが分かる。図10に分光反射率を示す。図10は横軸に波長をとり、縦軸に反射率をとる。実線が酸化チタンを最外層にした構造の反射率を表し、点線が酸化鉄を最外層にした構造の反射率を表す。
5)試作(製造例1)
酸化鉄20nm、酸化チタン140nmの被膜を以下の手順で試作した。
【0055】
粒径5〜60μmの薄片状雲母80gを、1.2Lの水に加えて十分に分散させ、80℃まで昇温した後、塩酸を加えてpH3にする。次に、予め調製した硝酸第二鉄水溶液(硝酸第二鉄17質量部:水26質量部)337gを、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3に保ちながら、鉄イオン濃度9×10−4mol/minの割合でゆっくりと添加する。添加終了後、水酸化ナトリウム水溶液でpH5にする。濾過し、水洗して塩を除去し、吸引濾過、乾燥し、次いで700℃で1時間焼成を行った。
【0056】
得られた着色顔料は、薄片状雲母の上に、非常に微細な酸化鉄粒子が幾何学的膜厚み20nmに均一に被覆されていた。被覆層の表面粗さをAFMにより測定したところ、表面粗さは3.44nmであった。
【0057】
次いで、前記酸化鉄被覆パール顔料80gを1.2Lの水に加えて十分に分散させ、温度を75℃まで昇温する。昇温した後に、塩酸を加えてpH1.6とする。この後、40質量%四塩化チタン水溶液を1.4g/minの速度で240g添加しながら、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを1.6に維持する。その後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて分散液をpH7まで中和する。その後、水洗によって塩を除去し、吸引濾過、乾燥して、次いで700℃で90分間焼成を行った。これにより、高彩度な金色干渉の酸化チタン/酸化鉄被覆着色パール顔料を得た。
【0058】
被覆前の薄片状粉体の厚さを測定し、被覆後のパール顔料の厚さを測定することで、幾何学的膜厚みを求め、酸化鉄膜20nm、酸化チタン膜140nmを確認した。
6)評価
作成したパール顔料と市販の黄色パール顔料(エンゲルハルド社製フラメンコゴールド)の光学顕微鏡写真を比較すると、作成したパール顔料が高彩度の発色をしていることが確認できた。
【0059】
また、この開発品を1)で示した市販品と同様に粉体を黒色人工皮革に対して5cm×10cmの範囲に平均0.05mg/cmとなるようにスポンジを用いて均一に塗布し、そのサンプルを変角分光測定器(村上色彩製GCMS−4)を用いて、入射角を45度、受光角を−75度から75度の15度間隔で測定し、a−bをプロットした。図11にa−bグラフ(開発品と市販品)を示す(測定値)。図11は横軸にaをとり、縦軸にbをとる。図11より、作成した酸化鉄/酸化チタン被覆パール顔料は、市販の黄色パール顔料より2倍近く高い彩度を持つことが分かる。
【0060】
また、図12に、入射角45度、受光角45度における分光反射率(開発品と市販品)の測定値を示す。図12は横軸に波長をとり、縦軸に反射率をとる。これにより作成した酸化鉄/酸化チタン被覆パール顔料の分光反射率が565nm〜590nmの間に鋭いピークを持つことにより、高彩度で黄色の発色が発現することが確認できる。
【0061】
(実施例2:黄色高彩度パール顔料の設計および製造)
実施例1同様のシミュレーションにより酸化鉄膜厚みを30nm、酸化チタンを130nmも黄色高彩度パール顔料になることを見出し、以下の手順で試作した。
5)試作(製造例2)
硝酸第二鉄水溶液(硝酸第二鉄17質量部:水26質量部)337gを430gに代える以外は実施例1と同様にして、酸化鉄被覆パール顔料を製造した。得られた顔料は、薄片状雲母の上に、非常に微細な酸化鉄粒子が幾何学的膜厚み30nmに均一に被覆されていた。被覆層の表面粗さを測定したところ、表面粗さはAFMにより測定したところ4.30nmであった。
【0062】
次いで、40質量%四塩化チタン水溶液の添加量を240gから200gに変える以外は実施例1と同様にして、高彩度な金色干渉の酸化チタン/酸化鉄被覆パール顔料を得た。
【0063】
被覆前の薄片状粉体の厚さを測定し、被覆後のパール顔料の厚さを測定することで、幾何学的膜厚みを求め、酸化鉄膜30nm、酸化チタン膜130nmを確認した。
7)被覆膜の光学物性推定
計算された酸化鉄/酸化チタン被覆パール顔料の分光反射率と実際の測定値とを比較すると、ピーク位置は一致するが、ピーク幅は違う。図13に実験結果および計算値の分光反射率を示す。図13は横軸に波長をとり、縦軸に計算値および実験結果をとる。これは、設計で使用している複素屈折率が論文等とは異なることが要因であると考えられるため複素屈折率の修正を行った。その理由は、酸化鉄のような有色化合物は、その製造条件等により色調が異なるのが一般的であり、例えば合成条件や焼成条件が重要な因子であることは良く知られているためである。したがって、設計の計算精度を向上させるためには、実際にある条件で作ったサンプルから複素屈折率を逆算することが望ましい。
【0064】
マイカに酸化鉄膜を30nm被覆したパール顔料において、実測値および計算値の反射率曲線を比較すると、中・長波長側で異なる傾向を示しており、酸化鉄膜の中・長波長側での複素屈折率を修正した。図14に複素屈折率の変更状況を示す。図14は横軸に波長をとり、縦軸に複素屈折率をとる。その修正した複素屈折率を用いて酸化鉄/酸化チタン被覆パール顔料の再計算を行うと、良い一致を示すことが分かる。図15に実験結果および計算値の分光反射率を示す。図15は横軸に波長をとり、縦軸に計算値および実験結果をとる。
【0065】
(実施例3:ファンデーションによる評価)
実施例1および2に示した製造例1および2のパール顔料を用いて、図16に示す組成の固形粉末状ファンデーションを製造し、きめ細かい仕上がり、肌色の明るさ、額部と頬側面部の塗布色の差の少なさおよび自然の艶を評価した。その結果を図16に併せて示す。
【0066】
(製法)
成分(1)〜(11)を攪拌混合後、成分(12)〜(14)を添加して混合する。これをアトマイザーで粉砕し、篩掛けした後、金皿に充填、打錠して固形粉末状ファンデーションを得た。
【0067】
(評価方法)
各固形粉末状ファンデーションを化粧品専用パネル20名が使用し、下記の基準で評価し、その平均値で判定した。
(1)きれいな肌に見える、きめ細かい仕上がり、肌色の明るさ、自然なつや;
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
(2)額部と頬側面部の塗布色の差の少なさ;
5点:差がほとんどない
4点:差が少ない
3点:差がややある
2点:差がやや大きい
1点:差が大きい
【0068】
(比較例1)(酸化鉄吸収効果)
実施例1のシミュレーションにおいて、酸化鉄の吸収効果を考慮しないで(複素屈折率の虚数部分をゼロとする)同様の設計を行うと、マイカ/酸化鉄/酸化チタンの順番に被覆する構造とマイカ/酸化チタン/酸化鉄の順番に被覆する構造の分光反射率(45度入射、45度受光)に違いを見出すことができない。図17に酸化鉄の吸収効果の有無による複素屈折率の違いを示す。図17は横軸に波長をとり、縦軸に複素屈折率をとる。図18に吸収効果の有無による反射率分布の違い(シミュレーション)を示す。図18は横軸に波長とり、縦軸に反射率をとる。
【0069】
(比較例2)(薄片状粉体厚み効果)
実施例1のシミュレーションにおいて、マイカ/酸化鉄/酸化チタン構造における薄片状粉体の厚み分布を考慮しないで、測定した厚み分布の平均値440nmを用いて分光反射率(45度入射、45度受光)を計算すると、薄片状粉体の厚み分布を考慮した分光反射率(45度入射、45度受光)と全く異なる反射分布を示し、実際に製造した結果とも全く一致しない(図13もしくは図15の実験結果を参照)。図19に厚み分布を示す。図19は横軸に厚みをとり、縦軸に頻度をとる。図20に薄片状粉体厚み分布の有無による反射率分布の違い(シミュレーション結果)を示す。図20は横軸に波長をとり、縦軸に反射率をとる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、パール顔料の設計にあたり、トライ&エラーや職人の経験に依存することなく、所望の色のパール顔料について、その構成および膜厚みを予めシミュレーションにより求めることができるので、短期間かつ安価にパール顔料およびパール顔料を用いたメイクアップ化粧料を設計製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】多層膜モデルの一例を示す図。θ入射は多層膜被覆粉体への入射角度を、θはM番目の被覆層への入射(進入)角度を表す。
【図2】AFM画像の一例を示す図。
【図3】Torrance−Sparrowモデルの一例を示す図。
【図4】パール顔料設計システムの機能ブロック構成および処理フローを示す図。
【図5】マイカの厚み分布を示す図。
【図6】酸化鉄(ヘマタイト)の複素屈折率を示す図。
【図7】ラフネス(粗さ)の定量化(顕微鏡による測定)を示す図。
【図8】ラフネスの定量化(モデルによるフィンティング)を示す図。
【図9】a−bグラフ(上図:マイカ/Fe/TiO、下図:マイカ/TiO/Fe)を示す図(理論計算)。
【図10】分光反射率を示す図。実線が酸化チタンを最外層にした構造の分光反射率を表し、点線が酸化鉄を最外層にした構造の分光反射率を表す。
【図11】a−bグラフ(開発品と市販品)を示す図(測定値)。
【図12】入射角45度、受光角45度における分光反射率(開発品と市販品)の測定値を示す図。
【図13】実験結果および計算値の分光反射率を示す図。
【図14】複素屈折率の変更状況を示す図。点線で囲った部分が変更箇所を示す。
【図15】実験結果および計算値の分光反射率を示す図。
【図16】評価に用いた固形粉末状ファンデーションの組成および評価結果を示す図。
【図17】酸化鉄の吸収効果の有無による複素屈折率の違いを示す図。
【図18】吸収効果の有無による反射率分布の違い(シミュレーション)を示す図。実線が酸化チタンを最外層にした構造の分光反射率を表し、点線が酸化鉄を最外層にした構造の分光反射率を表す。
【図19】薄片状粉体の厚み分布の有無を示す図。
【図20】薄片状粉体厚み分布の有無による反射率分布の違い(シミュレーション)を示す図。
【符号の説明】
【0072】
1 薄片状粉体厚み測定(AFM)
2 被膜塗膜物性取得
3 パール顔料の塗布粗さ推定(顕微鏡)
4 シミュレーション
5 試作
6 評価(分光反射率測定)
7 被覆膜の光学物性推定
8 実機製造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の異なる少なくとも2層の被覆層を、薄片状粉体の表面に有し、かつ特定の波長の光を反射するパール顔料の設計方法において、
前記薄片状粉体の複素屈折率、厚みおよび所望の反射光波長を選定し、
この選定した事項をパール顔料の多層膜反射率Rを求める下記漸化式
【数1】

【数2】

【数3】

(ただし、
iはi番目の被覆層の複素屈折率(i=0の時は薄片状粉体の複素屈折率)、
airは空気の複素屈折率、
iはi番目の被覆層の膜厚み(i=0の時は薄片状粉体の厚み)、
λ0は所望の反射光波長(真空中)、
θ入射はパール顔料への入射角度、θiはi番目の被覆層への入射角度、
i、pi、pairは複雑な式の表示を簡単に表示するための変数、
jは複素数)
に適用させ、当該多層膜反射率Rが所望の波長で最大値または最小値になるように各被覆層の膜厚みを求め、この求めた膜厚み値になるように設計することを特徴とするパール顔料の設計方法。
【請求項2】
前記薄片状粉体の厚み分布を表す関数をf(x)とし、最も薄い厚みをxiとし、最も厚い厚みをxとしたときに、前記パール顔料における平均反射率Fを
【数4】

として求め、この平均反射率Fを前記多層膜反射率Rに代えて用いる請求項1記載のパール顔料の設計方法。
【請求項3】
Torrance−Sparrowモデルを適用し、前記パール顔料を粗面に塗布した際の塗布面に対するパール顔料の傾きの割合を表す関数をDとし、当該パール顔料における地理的減衰をGとしたときに、請求項1記載の多層膜反射率Rまたは請求項2記載の平均反射率Fを用いて前記パール顔料が塗布された粗面表面の塗布面反射率RCを
【数5】

として求め、この塗布面反射率RCを前記多層膜反射率Rまたは平均反射率Fに代えて用いる請求項1または2記載のパール顔料の設計方法。
【請求項4】
前記パール顔料の分光反射率を測定することで該パール顔料の被覆膜の前記複素屈折率を修正し、該パール顔料の各被覆層の膜厚みを求め直すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のパール顔料の設計方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載のパール顔料の設計方法で得られたパール顔料を含有するメイクアップ化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−332180(P2007−332180A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162346(P2006−162346)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】