説明

ヒスタミン受容体H1関連状態のRNAi介在型阻害

ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を阻害するため、特にアレルギー性結膜炎、眼炎症、皮膚炎、鼻炎、喘息、又はアレルギーなどのHRH1関連状態を有するか、又はHRH1関連状態を発症する危険性がある患者を治療するためのRNA干渉を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスタミン受容体H1(HRH1)関連状態を治療するための干渉RNA組成物の分野に関する。このような状態には、例えばアレルギー性結膜炎、眼炎症、皮膚炎、鼻炎、喘息、又はアレルギーがある。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性結膜炎、眼炎症、皮膚炎、鼻炎、喘息、及びアレルギーは歴史的に、経口、鼻腔内又は局所抗ヒスタミン剤、又は経口又は鼻腔内ステロイド剤、或いはアレルギーの場合、アレルゲン注射治療のレジメンで治療されてきた。全身治療は、典型的には、高濃度の薬剤化合物を投与して有効濃度を必要な治療部位に到達させることを必要とする。抗ヒスタミン剤化合物は中枢神経系活性を有することが知られており、眠気及び粘膜の乾燥は抗ヒスタミン剤使用の一般的な副作用である。
【0003】
組織のヒスタミン受容体H1とのヒスタミンの結合は、例えば血管漏出(浮腫)、平滑筋収縮(気管支収縮)、又は神経線維活性化(掻痒症、くしゃみ)をもたらす。PATANOL(登録商標)及びEMADINE(登録商標)を含めた多くの薬剤は、この受容体と結合することによってそれらの治療効果の一部又は全部を発揮する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらなる作用物質及び治療法は、ヒスタミンH1受容体を標的とし、全身抗ヒスタミン剤治療の副作用を避けながら、それによって局部環境中の内因性ヒスタミンの作用を遮断するのに望ましいはずである。本発明の実施形態は、このような作用物質及び治療法に関する当技術分野の必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、HRH1関連状態の非常に強力且つ有効な治療、予防又は介入を提供することによって、従来技術のこれら及び他の欠点を克服する。一態様では、本発明の方法は、HRH1のmRNAの発現を抑制する干渉RNAを投与し、それによってGタンパク質共役受容体シグナル伝達経路に干渉し、HRH1関連状態におけるヒスタミン介在型炎症応答と関係がある一連の事象を妨げることにより、HRH1関連状態を有するか又はHRH1関連状態を発症する危険性がある対象を治療することを含む。
【0006】
本発明は、HRH1のmRNAを標的としそれによってHRH1のmRNAの発現に干渉する干渉RNAを対象とする。本発明の干渉RNAは、HRH1関連状態を有するか又はHRH1関連状態を発症する危険性がある患者を治療するのに有用である。
【0007】
本発明の一実施形態は、対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させる方法であって、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含む方法である。ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現はそれによって減弱する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療する方法である。この方法は、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含む。HRH1関連状態はそれによって治療される。一実施形態では、対象はヒトであり、ヒトはHRH1関連状態を有し、他の実施形態では、対象はヒトであり、ヒトはHRH1関連状態を発症する危険性がある。
【0009】
前述の実施形態に関して、干渉RNAは、配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの(penultimate)13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0010】
前述の方法の他の実施形態では、19〜49ヌクレオチドの長さを有し配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応する第二のmRNAの3’末端の最後から2番目からの13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む第二の干渉RNAを、組成物はさらに含む。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態では、対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させる方法は、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、干渉RNAはセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を含み、アンチセンス鎖は配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有する。ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現はそれによって減弱する。
【0012】
治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療する方法は、本発明の一実施形態であり、この方法は19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、干渉RNAはセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を含み、アンチセンス鎖は配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有する。HRH1関連状態はそれによって治療される。
【0013】
前述の方法では、干渉RNAのアンチセンス鎖を、ヌクレオチド285、324、410、581、584、660、672、801、817、1045、1059、1089、1157、1209、1223、1241、1253、1265、1363、1391、1488、1521、1624、1670、1673、1784、1873、1875、1985、2086、2087、2226、2297、2420、2421、2485、2603、2647、又は3431を含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計する。
【0014】
19〜49ヌクレオチドの長さを有する第二の干渉RNAを対象に投与することもでき、この第二の干渉RNAは、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い相補性のある領域を含み、第二の干渉RNAのアンチセンス鎖は、配列番号1に対応するmRNAの第二の部分と生理的条件下でハイブリダイズし、アンチセンス鎖は、配列番号1に対応するmRNAの第二のハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有する。
【0015】
対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させる方法であって、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の一本鎖干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、一本鎖干渉RNAが、上記で特定したヌクレオチドを含む配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズする方法は、本発明の他の実施形態である。
【0016】
治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療する方法は、本発明の一実施形態である。この方法は、RNA干渉によってHRH1遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物を対象に投与することを含み、siRNA分子の各鎖は独立して約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、siRNA分子の一方の鎖はHRH1遺伝子に対応するmRNAと実質的相補性を有するヌクレオチド配列を含み、その結果siRNA分子はRNA干渉によるmRNAの切断を誘導する。この方法の他の実施形態では、siRNA分子の各鎖は独立して約19ヌクレオチド〜約25ヌクレオチドの長さ、又は約19ヌクレオチド〜約21ヌクレオチドの長さである。
【0017】
RNA干渉によってHRH1遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物は、本発明の一実施形態である。siRNA分子の各鎖は独立して約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、siRNA分子の一方の鎖はHRH1遺伝子に対応するmRNAと実質的相補性を有するヌクレオチド配列を含み、その結果siRNA分子はRNA干渉によるmRNAの切断を誘導する。この組成物の他の実施形態では、siRNA分子の各鎖は独立して約19ヌクレオチド〜約25ヌクレオチドの長さ、又は約19ヌクレオチド〜約21ヌクレオチドの長さである。
【0018】
本発明はさらなる実施形態として、19〜49ヌクレオチドの長さを有する干渉RNAを含み、配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列、又はその相補配列、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を含む。
【0019】
本明細書に示すHRH1のmRNAの発現を減弱させるための薬剤を調製する際の、本明細書に記載する実施形態のいずれかの使用も、本発明の一実施形態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書に列挙する参照文献は、それらが本明細書に示すものを補足する例示的手順又は他の詳細を提供する程度で、具体的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
当業者は、本開示に照らして、本明細書に開示する実施形態の明らかな改変を、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに作成することができることを理解するはずである。本明細書に開示する全ての実施形態は、本開示に照らして過度の実験なしで作成し実施することができる。本発明の全範囲は、本開示及びその同等の実施形態中に示される。本明細書を、本発明が権利を与えられた全保護範囲を過度に狭めるものとして解釈すべきではない。
【0022】
本明細書で使用するように、且つ他に示さない限り、用語「a」及び「an」は「1つ」、「少なくとも1つ」或いは「1つ又は複数」を意味すると考える。
【0023】
本明細書で使用する用語「HRH1関連状態」は、アレルギー性結膜炎、眼炎症、皮膚炎、鼻炎、喘息、及びアレルギーなどの状態と関係があるヒスタミン介在型の炎症応答を含み、HRH1関連状態を直接的又は間接的にもたらすHRH1−mRNAの発現から生じる細胞の変化を含む。本明細書で提供する干渉RNAは、非特異的物質による望ましくない副作用を回避しながら、このようなサイレンシングをもたらす。
【0024】
本明細書で使用する用語「アレルギー性結膜炎」は、まぶたの裏を覆い強膜の露出表面を覆うデリケートな膜である結膜の炎症を指す。用語「アレルギー性結膜炎」は、例えばアトピー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、枯草熱結膜炎、通年性アレルギー性結膜炎、及び春季性角結膜炎を含む。
【0025】
本明細書で使用する用語「皮膚炎」は皮膚の炎症を指し、例えばアレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹、乾皮性皮膚炎(下肢における乾燥皮膚)、アトピー性皮膚炎、刺激性接触皮膚炎及びウルシオール誘導性接触皮膚炎を含めた接触皮膚炎、湿疹、沈下性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、外耳炎、口囲皮膚炎、及び脂漏性皮膚炎を含む。
【0026】
本明細書で使用する用語「鼻炎」は鼻の粘膜の炎症を指し、例えばアレルギー性鼻炎、アトピー性鼻炎、刺激性鼻炎、エオシン好性非アレルギー性鼻炎、薬物性鼻炎、及び好中性鼻副鼻腔炎を含む。
【0027】
本明細書で使用する用語「喘息」は、鼻及び口から肺に空気を運ぶ気道の狭窄をもたらす気道の炎症を指し、例えばアレルギー性喘息、アトピー性喘息、アトピー性気管支IgE介在型喘息、気管支喘息、細気管支炎、気腫性喘息、本態性喘息、運動誘発性喘息、環境要因によって引き起こされる外因性喘息、初期喘息、病態生理的障害によって引き起こされる内因性喘息、非アレルギー性喘息、非アトピー性喘息、及び呼吸困難な幼児の症候群を含む。
【0028】
語句「(配列識別子)のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域」は、1つのヌクレオチド置換を与える。2つのヌクレオチド置換(即ち、11/13=85%の同一性/相補性)は、このような語句には含まれない。
【0029】
用語「同一率」は、第二の核酸分子中の同じ長さの一組の連続したヌクレオチドと同じである第一の核酸分子中の連続したヌクレオチドの割合を記載する。用語「相補率」は、第二の核酸分子中の一組の連続したヌクレオチドとワトソン−クリックの意味において塩基対形成することができる、第一の核酸分子中の連続したヌクレオチドの割合を記載する。
【0030】
「ハイブリダイゼーション」は、相補的又はほぼ相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸が相互作用して、ハイブリッドと呼ばれる水素結合複合体を形成するプロセスを指す。ハイブリダイゼーション反応は高感度且つ選択的である。in vitroでは、ハイブリダイゼーションの特異性(即ち、ストリンジェンシー)は、例えばプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション溶液中の塩又はホルムアミドの濃度によって、及びハイブリダイゼーション温度によって制御され、このような手順は当技術分野でよく知られている。特に、塩の濃度を低下させること、ホルムアミドの濃度を増大させること、又はハイブリダイゼーション温度を上昇させることによってストリンジェンシーが増大する。
【0031】
例えば、高ストリンジェンシー条件は約50%のホルムアミド、37℃〜42℃で生じる可能性がある。低ストリンジェンシー条件は約35%〜25%のホルムアミド、30℃〜35℃で生じる可能性がある。ハイブリダイゼーションに関するストリンジェンシー条件の例は、Sambrook、J、1989、「分子クローニング:研究室用マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.中に与えられている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の他の例には、400mMのNaCl、40mMのPIPES pH6.4、1mMのEDTA、50℃又は70℃で12〜16時間、次いで洗浄、或いは1×SSC中70℃又は1×SSC、50%のホルムアミド中50℃におけるハイブリダイゼーション、次いで0.3×SSC中70℃での洗浄、或いは4×SSC中70℃又は4×SSC、50%のホルムアミド中50℃におけるハイブリダイゼーション、次いで1×SSC中67℃での洗浄がある。ハイブリダイゼーションに関する温度は、ハイブリッドの溶解温度(T)より約5〜10℃低く、この場合Tは以下の計算式を使用して19塩基対長と49塩基対長の間のハイブリッドに関して測定する:T℃=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)、前式でNはハイブリッド中の塩基の数であり、且つ[Na+]はハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオンの濃度である。
【0032】
本明細書で使用する用語「アレルギー」は、通常有害ではない物質に対する免疫系の異常な反応を指し、例えばアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、及び血管浮腫などの皮膚アレルギー;アレルギー性鼻炎、ホコリ又はカビに対する反応などの呼吸アレルギー;牛乳、卵白、ピーナッツ、コムギ、ダイズ、ベリー、甲殻類、コーン、マメ、黄色い食用色素No.5及びアラビアゴム中のタンパク質に対する反応などの食物アレルギー;ペニシリン、サルファ剤、バルビツレート、抗けいれん剤、インシュリン、局所麻酔薬及び造影剤に対する反応などの薬剤アレルギー;及びミツバチ、ジガバチ、スズメバチ、イエロージャケット及びフシアリの針中の毒素に対する反応などの虫刺れアレルギーを含む。
【0033】
mRNAの発現の減弱:本明細書で使用する語句「mRNAの発現の減弱」は、mRNA切断又は直接的な翻訳の阻害のいずれかによって標的mRNAのタンパク質への翻訳を低下させるための、一定量の干渉RNA(例えば、siRNA)の投与又は発現を意味する。標的mRNA又は対応するタンパク質の発現の低下は一般に「ノックダウン」と呼ばれ、投与後に存在するレベル又は非標的対照RNA(例えば、非標的対照siRNA)の発現と比較して報告される。50%と100%の間を含めた一定量の発現のノックダウンは、本明細書の実施形態によって企図される。しかしながら、このようなノックダウンレベルを本発明の目的で達成することは必要ではない。一実施形態では、1つの干渉RNA標的HRH1のmRNAを投与する。他の実施形態では、2つ以上の干渉RNA標的HRH1のmRNAを投与する。
【0034】
ノックダウンは一般に、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)増幅を使用してmRNAレベルを測定することによって、或いはウエスタンブロット又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によりタンパク質レベルを測定することによって評価される。タンパク質レベルを分析することによって、mRNA切断と翻訳阻害の両方の評価を与える。ノックダウンを測定するための他の技法には、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、マイクロアレイを用いた遺伝子発現モニタリング、抗体結合、ラジオイムノアッセイ、及び蛍光活性化細胞分析がある。
【0035】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)を使用して遺伝子発現を抑制するプロセスである。理論に拘泥するものではないが、RNAiはRNaseIII様酵素、ダイサーによる小さな干渉RNA(siRNA)への長いdsRNAの切断で始まる。siRNAは通常約19〜28ヌクレオチド、又は20〜25ヌクレオチド、又は21〜22ヌクレオチドの長さであるdsRNAであり、2ヌクレオチドの3’突出部分、及び5’リン酸及び3’ヒドロキシル末端を含むことが多い。siRNAの一本の鎖は、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られるリボ核タンパク質複合体中に取り込まれている。RISCはこのsiRNA鎖を使用して、取り込まれたsiRNA鎖と少なくとも部分的に相補的であるmRNA分子を特定し、次いでこれらの標的mRNAを切断し或いはそれらの翻訳を阻害する。したがって、RISC中に取り込まれたsiRNA鎖はガイド鎖又はアンチセンス鎖として知られる。パッセンジャー鎖又はセンス鎖として知られる他のsiRNA鎖はsiRNAから排除され、標的mRNAと少なくとも部分的に相同的である。当業者は、原則として、siRNAの一方の鎖はRISC中に取り込ませ、ガイド鎖として働かせることが可能であることを理解しているはずである。しかしながら、siRNAの設計(例えば、アンチセンス鎖の5’末端における低下したsiRNA二本鎖の安定性)によって、RISCへのアンチセンス鎖の取り込みを助長することができる。
【0036】
ガイド鎖と少なくとも部分的に相補的である配列を有するmRNAのRISC介在型切断は、そのmRNA及びこのmRNAによってコードされる対応するタンパク質の安定状態レベルの低下をもたらす。或いはRISCは、標的mRNAを切断せずに翻訳を抑制することによって、対応するタンパク質の発現を低下させることも可能である。他のRNA分子及びRNA様分子も、RISCと相互作用し遺伝子発現を抑制することができる。RISCと相互作用することができる他のRNA分子の例には、短いヘアピンRNA(shRNA)、一本鎖siRNA、ミクロRNA(miRNA)、及びダイサー基質である27塩基の二本鎖がある。本明細書で使用する用語「siRNA」は、他に示さない限り二本鎖干渉RNAを指す。RISCと相互作用することができるRNA様分子の例には、1つ又は複数の化学的に修飾されたヌクレオチド、1つ又は複数のデオキシリボヌクレオチド、及び/又は1つ又は複数の非ホスホジエステル結合を含むRNA分子がある。本発明の考察の目的で、RISCと相互作用しRISC介在型の遺伝子発現の変化に関与することができる全てのRNA又はRNA様分子を、「干渉RNA」と呼ぶことにする。したがってsiRNA、shRNA、miRNA、及びダイサー基質である27塩基の二本鎖は、「干渉RNA」の部分集合である。
【0037】
本発明の実施形態の干渉RNAは標的mRNAの切断に関して触媒式に作用するようである、即ち、干渉RNAは化学量論量未満の量で標的mRNAの阻害に影響を与えることができる。アンチセンス療法と比較して、有意に少ない干渉RNAがこのような切断条件下で治療効果を与えるために必要とされる。
【0038】
本発明は一般に、ヒスタミン受容体H1(HRH1)のmRNAの発現を阻害するための干渉RNAの使用に関する。ヒスタミンH1受容体(HRH1)は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーである。ヒスタミンとHRH1の結合はその関連ヘテロ三量体Gタンパク質、Gq/11を活性化させ、ホスホリパーゼC(PLC)及びタンパク質キナーゼC(PKC)の活性化、イノシトール1,4,5−三リン酸(IP3)及び1,2−ジアシルグリセロールの合成をもたらし、細胞内Ca2+の上昇、及び他のシグナル伝達事象をもたらす。HRH1のmRNAの標的化はそれによってHRH1の局所発現を低下させ、したがって局所環境中のヒスタミンの作用を阻害し、ヒスタミン介在型の炎症応答を遮断する。本発明によれば、細胞外に提供或いは内因性発現した干渉RNAは、HRH1のmRNAの発現抑制において特に有効である。
【0039】
本明細書に挙げる核酸配列は、他に示さない限り5’から3’方向に書く。本明細書で使用する用語「核酸」は、DNA又はRNAのいずれか、或いはDNA(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、チミン「T」)中又はRNA(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、ウラシル「U」)中に存在するプリン又はピリミジン塩基を含むその修飾形を指す。「T」塩基はRNA中には本来存在しないが、本明細書で提供する干渉RNAは特に3’末端に「T」塩基を含み得る。「核酸」は用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」を含み、一本鎖分子又は二本鎖分子を指すことができる。二本鎖分子はA塩基とT塩基の間、C塩基とG塩基の間、及びA塩基とU塩基の間のワトソン−クリックの塩基対形成によって形成される。二本鎖分子の鎖は互いに部分的、実質的又は完全な相補性を有する可能性があり、二本鎖ハイブリッドを形成するはずであり、その結合の強度は塩基の配列の相補性の性質及び程度に依存する。
【0040】
mRNAの配列は、対応するDNA配列の配列から容易に推測される。例えば、配列番号1はHRH1のmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を提供する。mRNAの配列は、「U」塩基で置換された「T」塩基を有するDNAのセンス鎖配列と同一である。したがって、HRH1のmRNAの配列は配列番号1から知られる。
【0041】
ヒスタミン受容体H1(HRH1)のmRNA:GenBankデータベースは、「配列表」中に配列番号1として提供される、アクセッション番号NM_000861としてHRH1に関するDNA配列を提供する。配列番号1はHRH1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を提供する(「U」塩基である「T」塩基は除く)。HRH1のコード配列はヌクレオチド179〜1642由来である。
【0042】
前述のHRH1のmRNA配列の相当物は、選択的スプライス形、対立遺伝子形、アイソザイム、又はその同族である。同族は配列番号1と相同的である他の哺乳動物種由来のヒスタミン受容体のmRNA(即ち、オルソログ)である。配列番号1と関係があるHRH1核酸配列には、GenBankアクセッション番号D14436、BC060802、Z34897、D28481、AB041380、X76786、AF026261、AY136743、及びDQ047308を有する配列がある。
【0043】
HRH1の阻害は、HRH1を発現するヒト細胞集団を使用してin vitroで測定することもできる。これらの細胞は、Cookら、(Cook EBら、Invest Ophthalmol Vis Sci.1998Feb、39(2):336〜43)によって記載された初代ヒト結膜上皮細胞、又は形質転換されたヒト角膜上皮細胞系CEPI−17−CL4(Offord EAら、Invest Ophthalmol Vis Sci.1999 May、40(6):1091〜101)だけには限られないが、これらであることが好ましいはずである。HRH1干渉RNA又は対照の活性の評価は、放射性リガンド結合によって実施することができ(Sharif NAら、J Ocul Pharmacol Ther、1996 Winter、12(4):401〜7)、この場合干渉RNAでトランスフェクトした細胞は、非標的対照の干渉RNAでトランスフェクトした細胞と比較して低下した結合を示す。ヒスタミン刺激に応答するカルシウム感受性色素を用いて測定したカルシウム動員を使用して、或いは受容体活性化の指標として[H]イノシトールリン酸([H]IP)の生成を使用して(Sharif NAら、Invest Ophthalmol Vis Sci.1998 Dec、39(13):2562〜71)、機能評価を実施することができる。対照と比較した干渉RNAで治療した細胞における低下した読み取り値は、HRH1機能の阻害を示す。
【0044】
HRH1の阻害は、HRH1標的干渉RNAを用いた予備治療によって、モルモット中のヒスタミン誘導型の血管透過性の変化を予防することによってin vivoで測定することもできる。in vivo試験用の方法は、Yanniら(J.Ocular Pharmacology 10:665〜675、1994)によって提供されている。簡潔に言うと、Dunkin Hartley異系交配モルモットに、耳翼辺縁静脈を介して1.0mlのエバンスブルー色素を静脈内注射する。色素注射後45分で、動物はヒスタミンを用いて結膜下を攻撃する。青色色素の領域が結膜の組織に浸出したとき、ヒスタミン注射後30分間、局所組織の応答性を次いで観察することができる。干渉RNAは、ヒスタミン注射の48〜72時間前に目に局所適用する。干渉RNAで治療した組織中の血管透過性の低下した変化は、HRH1機能の阻害を実証する。
【0045】
HRH1の阻害は、アレルギー性結膜炎、眼炎症、皮膚炎、鼻炎、喘息、又はアレルギーと関係がある症状における改善などの、HRH1関連状態の症状の改善を観察することによって、ヒト又は哺乳動物においても推測される。例えば浮腫、かゆみ、炎症、又は環境課題に対する耐性のいずれかにおける改善は、HRH1機能の阻害を示す。
【0046】
干渉RNA:本発明の一実施形態では、干渉RNA(例えば、siRNA)はセンス鎖及びアンチセンス鎖を有し、そのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を含む。本発明のさらなる実施形態では、干渉RNA(例えば、siRNA)はセンス鎖及びアンチセンス鎖を有し、アンチセンス鎖はHRH1のmRNAの標的配列に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を含み、センス鎖はHRH1のmRNAの標的配列と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した同一性のある領域を含む。本発明のさらなる実施形態では、干渉RNAはmRNA内の対応する標的配列の3’末端の最後から2番目からの13、14、15、16、17、又は18のヌクレオチドのそれぞれとある割合の配列相補性、又はある割合の配列同一性を有する、少なくとも13、14、15、16、17、又は18個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0047】
干渉RNAの各鎖の長さは19〜49ヌクレオチドを含み、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又は49ヌクレオチドの長さを含み得る。
【0048】
siRNAのアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖がRISC中に取り込まれ、したがってRISCによって切断又は翻訳抑制に関してアンチセンスsiRNA鎖と少なくとも部分的な相補性を有する標的mRNAを同定することができる点で、siRNAの活性誘導物質である。
【0049】
本発明の実施形態では、標的mRNA配列内の干渉RNA標的配列(例えば、siRNA標的配列)は、利用可能な設計ツールを使用して選択する。HRH1標的配列に対応する干渉RNAは、次いで標的mRNAを発現する細胞のトランスフェクションによって試験し、次に前に記載したようにノックダウンを評価する。
【0050】
siRNAの標的配列を選択するための技法は、Rockefeller Universityのウエブサイトで入手可能な2004年5月6日に改訂されたTuschl、Tら、「siRNAのユーザーガイド(The siRNA User Guide)」によって、AmbionのウェブサイトのTechnical Bulletin#506、「siRNAの設計ガイドライン(siRNA Design Guidelines)」、Ambion Inc.によって、及び例えば他のウエブベースの設計ツール、the Invitrogen、Dharmacon、「組み込みDNA技術(Integrated DNA Technologies)」、Genscript、又はProligoウエブサイトによって提供される。初期検索パラメータは、35%と55%の間のG/C含有率、及び19ヌクレオチドと27ヌクレオチドの間のsiRNAの長さを含み得る。標的配列はコード領域中、或いはmRNAの5’又は3’非翻訳領域に位置する可能性がある。
【0051】
HRH1のmRNAに関する19ヌクレオチドのDNA標的配列の実施形態は、配列番号1のヌクレオチド285〜303に存在する:
【化1】

【0052】
21ヌクレオチドの鎖及び2ヌクレオチドの3’突出部分を有する配列番号2の対応するmRNA配列を標的とするための本発明のsiRNAは以下の通りである:
【化2】

【0053】
それぞれの「N」残基は任意のヌクレオチド(A、C、G、U、T)又は修飾ヌクレオチドであってよい。3’末端は1、2、3、4、5、及び6個の間及びこれを含めた数の「N」残基を有し得る。一方の鎖上の「N」残基は同じ残基であってよく(例えば、UU、AA、CC、GG、又はTT)、或いはそれらは異なってよい(例えば、AC、AG、AU、CA、CG、CU、GA、GC、GU、UA、UC、又はUG)。3’突出部分は同じであってよく、或いはそれらは異なってよい。一実施形態では、両方の鎖が3’UU突出部分を有する。
【0054】
各鎖上に21ヌクレオチドの鎖及び3’UU突出部分を有する配列番号2の対応するmRNA配列を標的とするための本発明のsiRNAは以下の通りである:
【化3】

【0055】
干渉RNAはヌクレオチドの5’突出部分を有する可能性もあり、或いはそれは平滑末端を有する可能性がある。19ヌクレオチドの鎖及び平滑末端を有する配列番号2の対応するmRNA配列を標的とするための本発明のsiRNAは以下の通りである:
【化4】

【0056】
二本鎖干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖を結合させて、ヘアピン又はステム−ループ構造(例えば、shRNA)を形成することが可能である。19bpの二本鎖ステム領域及び3’UU突出部分を有する配列番号2の対応するmRNA配列を標的とする本発明のshRNAは以下の通りである:
【化5】

【0057】
NはヌクレオチドA、T、C、G、U又は当業者によって知られている修飾形である。ループ中のヌクレオチドNの数は3〜23、又は5〜15、又は7〜13、又は4〜9、又は9〜11個の間及びこれを含めた数であり、或いはヌクレオチドNの数は9である。ループ中のヌクレオチドの数個は、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与している可能性がある。ループを形成するために使用することができるオリゴヌクレオチド配列の例には、5’−UUCAAGAGA−3’(Brummelkamp、T.R.ら、(2002)「サイエンス(Science)」296:550)及び5’−UUUGUGUAG−3’(Castanotto、D.ら、(2002)RNA8:1454)がある。生成する一本鎖オリゴヌクレオチドが、RNAi機構と相互作用することができる二本鎖領域を含むステム−ループ又はヘアピン構造を形成することは、当業者によって理解されるはずである。
【0058】
上記で特定したsiRNA標的配列を3’末端で伸長して、ダイサー基質である27塩基の二本鎖の設計を容易にすることができる。HRH1のDNA配列(配列番号1)において特定した19ヌクレオチドのDNA標的配列(配列番号2)の6ヌクレオチドの伸長によって、配列番号1のヌクレオチド285〜309に存在する25ヌクレオチドのDNA標的配列が生成する:
【化6】

【0059】
配列番号10の対応するmRNA配列を標的とするための本発明のダイサー基質である27塩基の二本鎖は以下の通りである:
【化7】

【0060】
センス鎖の3’末端における2つのヌクレオチド(即ち、配列番号11のCUヌクレオチド)は、増強プロセシング用のデオキシヌクレオチド(即ち、TG)であってよい。本明細書で提供するような19〜21ヌクレオチドの標的配列からのダイサー基質である27塩基の二本鎖の設計は、Integrated DNA Technologies(IDT)のウエブサイト及びKim、D.−Hら、(2005年2月)Nature Biotechnology 23:2;222〜226によってさらに論じられている。
【0061】
干渉RNAを化学合成によって生成するとき、ヌクレオチドの5’位置、(存在する場合)一方又は両方の鎖の5’末端におけるリン酸化は、結合したRISC複合体のsiRNAの有効性及び特異性を増大させる可能性があるが必要とはされない、何故ならリン酸化は細胞内で起こり得るからである。
【0062】
さらなる実施形態は、対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させる様々な方法であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、干渉RNAが
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域、
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの14ヌクレオチドと少なくとも85%の配列相補性、又は少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14個の連続したヌクレオチドの領域、及び
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの15、16、17、又は18ヌクレオチドのそれぞれと少なくとも80%の配列相補性、又は少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15、16、17、又は18個の連続したヌクレオチドの領域からなる群から選択されるRNAを含み、
ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現がそれによって減弱する様々な方法を開示する。
【0063】
治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療する方法であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、
干渉RNAが配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域、
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの14ヌクレオチドと少なくとも85%の配列相補性、又は少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14個の連続したヌクレオチドの領域、又は
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの15、16、17、又は18ヌクレオチドのそれぞれと少なくとも80%の配列相補性、又は少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15、16、17、又は18の連続したヌクレオチドの領域を含み、
HRH1関連状態がそれによって治療される方法も開示する。
【0064】
他の実施形態は、対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させる様々な方法であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、干渉RNAが
センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を含み、
アンチセンス鎖が、配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有し、
ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現がそれによって減弱する様々な方法を開示する。
【0065】
様々な実施形態が、治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療するための方法であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、干渉RNAがセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を含み、
アンチセンス鎖が、配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有し、
HRH1関連状態がそれによって治療される方法を開示する。
【0066】
対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させる方法であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の一本鎖干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、
一本鎖干渉RNAが、ヌクレオチド285、324、410、581、584、660、672、801、817、1045、1059、1089、1157、1209、1223、1241、1253、1265、1363、1391、1488、1521、1624、1670、1673、1784、1873、1875、1985、2086、2087、2226、2297、2420、2421、2485、2603、2647、又は3431を含む配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、干渉RNAが配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズ部分と少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有し、
ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現がそれによって減弱する方法も開示する。
【0067】
治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療する方法であって、
RNA干渉によってHRH1遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物を対象に投与することを含み、
siRNA分子の各鎖が独立して約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、
siRNA分子の一方の鎖がHRH1遺伝子に対応するmRNAと実質的相補性を有するヌクレオチド配列を含み、その結果siRNA分子がRNA干渉によるmRNAの切断を誘導する方法も開示する。
【0068】
さらなる実施形態は、RNA干渉によってHRH1遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物であって、
siRNA分子の各鎖が独立して約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、
siRNA分子の一方の鎖がHRH1遺伝子に対応するmRNAと実質的相補性を有するヌクレオチド配列を含み、その結果siRNA分子がRNA干渉によってmRNAの切断を誘導する組成物を開示する。
【0069】
本発明の個々の実施形態を示し記載してきたが、多数の変形及び他の実施形態が当業者には思い浮かぶはずである。したがって、本発明を添付の特許請求の範囲の事項のみに限定することを目的とする。
【0070】
本発明はその精神又は必要な特性から逸脱せずに、他の特定の形に具体化することができる。記載した実施形態は、全ての点において単に例示的であり制限的ではないと考えられよう。したがって、本発明の範囲は、前述の記載によってではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲の範疇内の特許請求の範囲に対する全ての変更は、その範囲内に包含される。さらに、本明細書で言及する全ての公開済み文書、特許、及び出願は、それらの全容を示すが如く参照として本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0071】
表1は配列番号1のHRH1のDNA標的配列の例を列挙し、そこから本発明のsiRNAを前述したような方法で設計する。HRH1は前述のようにヒスタミン受容体H1をコードする。
表1.siRNAのHRH1標的配列
【表1】

【0072】
前の実施例中に列挙したように、当業者は表1中に与えられた標的配列の情報を使用して、配列番号1中の配列位置を参照することによって、及び配列番号1と相補的又はほぼ相補的なヌクレオチドの付加又は欠失によって、表1中に与えられた配列より短い又は長い長さを有する干渉RNAを設計することができる。
【0073】
siRNA及び他の形の干渉RNAによって誘導される標的RNA切断反応は、非常に配列特異的である。一般に、標的mRNAの一部分と配列が同一であるセンスヌクレオチド鎖、及び標的mRNAの一部分と厳密に相補的であるアンチセンスヌクレオチド鎖を含むsiRNAは、本明細書に列挙するmRNAの阻害に関するsiRNAの実施形態である。しかしながら、アンチセンスsiRNA鎖と標的mRNAの間、又はアンチセンスsiRNA鎖とセンスsiRNA鎖の間の100%の配列相補性は、本発明を実施するために必要とされない。したがって、例えば本発明は、遺伝的突然変異、系統の多様性、又は進化的分岐が原因であると予想され得る配列の変形を与える。
【0074】
本発明の一実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、標的mRNAと少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性を有する。本明細書で使用する「完全に近い」は、siRNAのアンチセンス鎖が標的mRNAの少なくとも一部分と「実質的に相補的」であり、siRNAのセンス鎖が標的mRNAの少なくとも一部分と「実質的に同一」であることを意味する。当業者によって知られている「同一性」は、配列間のヌクレオチドの順序及び同一性を一致させることによって決定される、ヌクレオチド配列間の配列関連性の程度である。一実施形態では、標的mRNA配列と80%、及び80%と100%までの間の相補性、例えば85%、90%又は95%の相補性を有するsiRNAのアンチセンス鎖は、完全に近い相補性であると考えられ、本発明中で使用することができる。「完全な」連続した相補性は、連続した塩基対の標準的なワトソン−クリックの塩基対形成である。「少なくとも完全に近い」連続した相補性は、本明細書で使用する「完全な」相補性を含む。同一性又は相補性を決定するためのコンピュータ手法、例えばBLASTN(Altschul、S.Fら、(1990)J.Mol.Biol.215:403〜410)を設計して、ヌクレオチド配列の最大整合度を同定する。
【0075】
標的mRNA(センス鎖)とsiRNAの一本の鎖(センス鎖)の間の関係が、その同一性である。存在する場合、siRNAのセンス鎖はパッセンジャー鎖とも呼ばれる。標的mRNA(センス鎖)とsiRNAの他方の鎖(アンチセンス鎖)の間の関係が、その相補性である。siRNAのアンチセンス鎖はガイド鎖とも呼ばれる。
【0076】
5’から3’方向に書かれる核酸配列中の最後から2番目の塩基は、最後の塩基、即ち3’塩基の隣の塩基の隣に位置する。5’から3’方向に書かれる核酸配列の最後から2番目からの13塩基は、3’塩基の隣の配列の最後の13塩基であり、3’塩基は含まない。同様に、5’から3’方向に書かれる核酸配列の最後から2番目からの14、15、16、17、又は18塩基は、3’塩基の隣のそれぞれ配列の最後の14、15、16、17、又は18塩基であり、3’塩基は含まない。
【0077】
本発明の一実施形態では、連続したヌクレオチドの領域は、各配列識別子によって特定された配列に対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの14ヌクレオチドと少なくとも85%の配列相補性、又は少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14の連続したヌクレオチドの領域である。2つのヌクレオチド置換(即ち、12/14=86%の同一性/相補性)は、このような語句に含まれる。
【0078】
本発明の他の実施形態では、連続したヌクレオチドの領域は、配列識別子の配列に対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの14ヌクレオチドと少なくとも80%の配列相補性、又は少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15、16、17、又は18の連続したヌクレオチドの領域である。3つのヌクレオチド置換は、このような語句に含まれる。
【0079】
配列番号1に対応するmRNA中の標的配列は、mRNAの5’又は3’非翻訳領域中、及びmRNAのコード領域中に存在する可能性がある。
【0080】
二本鎖干渉RNAの鎖の一方又は両方は1〜6ヌクレオチドの3’突出部分を有することが可能であり、それはリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド又はそれらの混合物であってよい。突出部分のヌクレオチドは塩基対形成していない。本発明の一実施形態では、干渉RNAはTT又はUUの3’突出部分を含む。本発明の他の実施形態では、干渉RNAは少なくとも1つの平滑末端を含む。末端は通常5’リン酸基又は3’ヒドロキシル基を有する。他の実施形態では、アンチセンス鎖は5’リン酸基を有し、センス鎖は5’ヒドロキシル酸基を有する。さらに他の実施形態では、末端は他の分子又は官能基の共有結合によってさらに修飾される。
【0081】
二本鎖siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、前に記載したように2本の一本鎖の二本鎖形であってよく、或いは相補的領域が塩基対形成しており、ヘアピンループにより共有結合して一本鎖を形成する場合は単分子であってよい。ヘアピンはダイサーと呼ばれるタンパク質によって細胞内で切断されて、2つの別個の塩基対形成RNA分子の干渉RNAを形成すると考えられる。
【0082】
干渉RNAは1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換又は修飾によって本来存在するRNAと異なる可能性がある。非ヌクレオチド物質は5’末端、3’末端のいずれかで、或いは内部で干渉RNAと結合する可能性がある。このような修飾体を一般的に設計して、干渉RNAのヌクレアーゼ耐性を増大させ、細胞の取り込みを改善し、細胞の標的化を向上させ、干渉RNAの追跡を手助けし、安定性をさらに改善し、或いはインターフェロン経路の活性化の可能性を低下させる。例えば、干渉RNAは突出部分の両末端にプリンヌクレオチドを含み得る。ピロリジンリンカーによるsiRNA分子のセンス鎖の3’末端とコレステロールの結合は、例えばsiRNAに対する安定性ももたらす。
【0083】
他の修飾体には、例えば3’末端ビオチン分子、細胞透過性を有することが知られているペプチド、ナノ粒子、ペプチド模倣体、蛍光色素、又はデンドリマーがある。
【0084】
本発明の幾つかの実施形態では、ヌクレオチドはそれらの塩基部分で、それらの糖部分で、又は分子及び官能基のリン酸部分で修飾することができる。修飾は、例えばアルキル、アルコキシ、アミノ、デアザ、ハロ、ヒドロキシル、チオール基、又はこれらの組合せによる置換を含む。高い安定性を有する類似体で、デオキシリボヌクレオチドによるリボヌクレオチドの置換、或いは例えば2’アミノ基、2’O−メチル基、2’メトキシエチル基、又は2’−O、4’−Cメチレン架橋による2’OH基などの糖修飾基の置換などで、ヌクレオチドを置換することができる。ヌクレオチドのプリン又はピリミジン類似体の例には、キサンチン、ヒポキサンチン、アザプリン、メチルチオアデニン、7−デアザ−アデノシン及びO−及びN−修飾ヌクレオチドがある。ヌクレオチドのリン酸基は、1つ又は複数のリン酸基の酸素と窒素又はイオウの置換によって修飾することができる(ホスホロチオエート)。修飾は例えば機能を向上させ、安定性又は透過性を改善し、或いは局在化又は標的化を誘導するのに有用である。
【0085】
配列番号1の一部分と相補的ではない、アンチセンス干渉RNA鎖の1つ又は複数の領域が存在し得る。非相補的領域は相補的領域の3’、5’又は両末端に、或いは2つの相補的領域の間に存在し得る。
【0086】
干渉RNAは化学合成によって細胞外で、in vitro転写によって、或いはダイサー又は類似の活性を有する他の適切なヌクレアーゼを用いた、長い二本鎖RNAの切断によって生成することができる。従来のDNA/RNA合成装置を使用して保護リボヌクレオシドホスホラミダイトから生じる化学合成された干渉RNAは、Ambion Inc.(Austin、TX)、Invitrogen(Carlsbad、CA)、又はDharmacon(Lafayette、CO)などの供給業者から入手することができる。干渉RNAは例えば溶媒又は樹脂を用いた抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィー、又はこれらの組合せによって精製される。或いは、サンプル処理による損失を避けるための何らかの精製が存在する場合、干渉RNAはほとんど使用しなくてよい。
【0087】
干渉RNAはプラスミド又はウイルス発現ベクターから、或いは最小発現カセット、例えば1つ又は複数のプロモーター及び干渉RNAに適した1つ又は複数の鋳型を含むPCR生成断片から、内因性発現される可能性もある。shRNA用の市販のプラスミド系発現ベクターの例は、pSilencerシリーズ(Ambion、Austin、TX)及びpCpG−siRNA(InvivoGen、San Diego、CA)のメンバーを含む。干渉RNAの発現用のウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス(例えば、HIV、FIV、及びEIAV)、及びヘルペスウイルスを含めた様々なウイルスに由来してよい。shRNA発現用の市販のウイルスベクターの例は、pSilencerアデノ(Ambion、Austin、TX)及びpLenti6/BLOCK−iT(商標)−DEST(Invitrogen、Carlsbad、CA)を含む。ウイルスベクターの選択、ベクターから干渉RNAを発現させるための方法、及びウイルスベクターを送達する方法は、当業者の範疇にある。PCR生成shRNA発現カセットを生成するためのキットの例は、Silencer Express(Ambion、Austin、TX)及びsiXpress(Mirus、Madison、WI)を含む。第一の干渉RNAは、第一の干渉RNAを発現することができる第一の発現ベクターからのin vivo発現を介して投与することができ、第二の干渉RNAは、第二の干渉RNAを発現することができる第二の発現ベクターからのin vivo発現を介して投与することができ、或いは両方の干渉RNAを、両方の干渉RNAを発現することができる1つの発現ベクターからのin vivo発現を介して投与することができる。
【0088】
干渉RNAは、polIIIプロモーター、U6又はH1プロモーターなど、又はpolIIプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーターなどを含めた、当業者に知られている様々な真核生物プロモーターから発現させることが可能である。当業者は、これらのプロモーターを適合させて、干渉RNAを誘導的に発現させることも可能であることを理解しているはずである。
【0089】
生理的条件下でのハイブリダイゼーション:本発明の幾つかの実施形態では、干渉RNAのアンチセンス鎖は、RISC複合体の一部としてin vivoでmRNAとハイブリダイズする。
【0090】
前に記載したin vitroハイブリダイゼーションアッセイは、候補siRNAと標的の間の結合が特異性を有し得るかどうかを予想する方法を与える。しかしながら、RISC複合体の状況では、in vitroハイブリダイゼーションに関して高ストリンジェンシーを示さないアンチセンス鎖で、標的の特異的切断が起こる可能性もある。
【0091】
一本鎖干渉RNA:前述のように、干渉RNAは結局一本鎖として機能する。一本鎖(ss)干渉RNAは、二本鎖RNAほど有効ではないが、mRNAサイレンシングに影響を与えることが分かってきている。したがって、本発明の幾つかの実施形態は、配列番号1の一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、配列番号1のハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有するss干渉RNAの投与も提供する。ss干渉RNAは、前述のds干渉RNAと同様に19〜49ヌクレオチドの長さを有する。ss干渉RNAは5’リン酸を有するか、或いはin situ又はin vivoにおいて5’位置でリン酸化する。用語「5’リン酸化」を使用して、例えばポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの5’末端で糖(例えば、リボース、デオキシリボース、又はこれらの類似体)のC5ヒドロキシルとエステル結合を介して結合したリン酸基を有する、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを記載する。
【0092】
ds干渉RNAと同様に、ss干渉RNAを化学的又はin vitro転写によって合成し、或いはベクター又は発現カセットから内因性発現される。5’リン酸基はキナーゼによって加えることができ、或いは5’リン酸はRNAのヌクレアーゼ切断の結果である可能性がある。送達はds干渉RNAと同様である。一実施形態では、保護末端及びヌクレアーゼ耐性修飾を有するss干渉RNAをサイレンシング用に投与する。ss干渉RNAは保存用に乾燥するか、或いは水溶液に溶かすことができる。溶液はアニーリングの阻害又は安定化のためにバッファー又は塩を含むことができる。
【0093】
ヘアピン干渉RNA:ヘアピン干渉RNAは、ステム−ループ又はヘアピン構造の干渉RNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の両方を含む単分子(例えば、1本のオリゴヌクレオチド鎖)である(例えば、shRNA)。例えば、センス干渉RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドが短いスペーサーによって逆方向の相補性アンチセンス干渉RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドと結合しているDNAベクターから、shRNAを発現させることが可能である。選択発現ベクターが必要とされる場合、3’末端のT及びヌクレオチド形成制限部位を加えることができる。生成したRNA転写産物自体が再度フォールディングして、ステム−ループ構造を形成する。
【0094】
投与形式:干渉RNAは例えばエアロゾル、口内、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻腔内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所、又は経皮経路によって送達することができる。
【0095】
投与は眼周囲、結膜、臍下、嚢内、硝子体内、眼球内、網膜下、結膜下、眼球後方、管腔内、又は脈絡膜上投与などの眼部組織への投与;注射、カテーテル、又は網膜用ペレット、眼球内挿入体、坐薬や、多孔性、非多孔性、又はゼラチン状物質を含むインプラントなどの他の配置デバイスを使用した眼への直接適用;眼部局所点滴剤又は軟膏;或いは円蓋中又は強膜近辺に移植した(経強膜)又は眼内の徐放化デバイスによる眼への直接投与であってよい。嚢内注射を角膜から前房にして、小柱網に物質を到達させることが可能である。管腔内注射は、シュレム管に排出する静脈のコレクターチャンネル又はシュレム管にすることが可能である。他の投与形式には錠剤、ピル、及びカプセルがある。
【0096】
投与は、例えば耳部局所点滴剤又は軟膏、耳中又は耳近辺に移植した徐放化デバイスによる耳への直接投与であってよい。局所投与には耳筋肉内、鼓室内腔及び蝸牛管内注射による投与経路がある。さらに、中耳/内耳の窓膜又は連続した構造に対してジェルフォーム、又は干渉RNAを含ませた類似の吸収剤及び粘着製品を施すことによって、内耳に物質を投与することができる。
【0097】
投与は、例えばエアロゾル調製物によって、及び例えば吸入器を介した吸入又は噴霧器によって、肺に直接投与することができる。
【0098】
対象:HRH1関連状態に関する治療が必要である対象、又はHRH1関連状態を発症する危険性がある対象は、例えば本明細書に列挙するHRH1の望ましくないか或いは不適切な発現又は活性と関係がある、アレルギー性結膜炎、眼炎症、皮膚炎、鼻炎、喘息、又はアレルギーなどのHRH1関連状態を有するか又はHRH1関連状態を発症する危険性があるヒト又は他の哺乳動物である。
【0099】
このような障害と関係がある眼部構造は、例えば眼、網膜、脈絡膜、レンズ、角膜、小柱網、虹彩、視神経、視神経頭、強膜、眼房、硝子体腔、毛様体、又は後眼部を含み得る。
【0100】
このような障害と関係がある耳部構造は、例えば内耳、中耳、外耳、鼓室腔又は膜、蝸牛管、又はエウスタキー管を含み得る。
【0101】
このような障害と関係がある肺構造は、鼻、口、咽頭、喉頭、気管支、気管、竜骨(右主気管支の開口部と左主気管支の開口部を隔てる隆起)、及び肺、特に細気管支及び肺胞などの下肺を含み得る。
【0102】
対象は耳細胞、肺細胞、眼細胞、細胞培養物、臓器又はex vivo臓器又は組織であってもよい。
【0103】
配合物及び用量:製剤配合物は、例えば水、バッファー、生理食塩水、グリシン、ヒアルロン酸、マンニトールなどの生理的に許容される担体媒体と混合した、99重量%までの本発明の干渉RNA、又はその塩を含む。
【0104】
本発明の干渉RNAは、固体、溶液、懸濁液、又は乳濁液として投与する。以下は、本発明によって具体化する可能な配合物の例である。
【表2】

【0105】
一般に、本発明の実施形態の有効量の干渉RNAは、標的細胞の表面において100pM〜100nM、又は1nM〜50nM、又は5nM〜約10nM、又は約25nMの細胞外濃度をもたらす。この局所濃度を得るのに必要とされる用量は、送達法、送達部位、送達部位と標的細胞又は組織の間の細胞層の数、送達が局所的であるか或いは全身性であるかなどを含めた幾つかの要因に応じて変わるはずである。送達部位における濃度は、標的細胞又は組織の表面における濃度より大幅に高い可能性がある。局所用組成物は、当業者の通常の裁量に従い、1日当たり1〜4回、或いは1日1回、1週間に1回、2週間に1回、1月に1回以上などの長期の送達スケジュールで標的臓器の表面に送達する。配合物のpHは約pH4〜9、又はpH4.5〜pH7.4である。
【0106】
HRH1のmRNAを対象とするsiRNAを用いた患者の療法治療は、作用期間を増大させ、それによって低頻度の投与及び高い患者のコンプライアンスを与えることにより、小分子を用いた治療より有益であると予想される。
【0107】
配合物の有効量は、例えば対象の年齢、人種、及び性別、HRH1関連状態の重度、標的遺伝子の転写/タンパク質代謝回転の割合、干渉RNAの有効性、及び干渉RNAの安定性などの要因に依存する可能性がある。一実施形態では、干渉RNAを標的臓器に局所送達し、治療用量でヒスタミン受容体含有組織に到達し、それによってHRH1関連プロセスを改善する。
【0108】
許容される担体:許容される担体は、せいぜいわずかな眼の炎症を引き起こすか或いは全く引き起こさず、必要な場合は適切な保存を与え、且つ均一な用量で本発明の1つ又は複数の干渉RNAを送達する担体を指す。本発明の実施形態の干渉RNAの投与に許容される担体には、カチオン性脂質ベースのトランスフェクション試薬TransIT(登録商標)−TKO(Mirus Corporation、Madison、WI)、LIPOFECTIN(登録商標)、Lipofectamine、OLIGOFECTAMINE(商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)、又はDHARMAFECT(商標)(Dharmacon、Lafayette、CO);ポリエチレンイミンなどのポリカチオン;Tat、ポリアルギニン、又はPenetratin(Antpペプチド)などのカチオン性ペプチド;又はリポソームがある。リポソームは標準的な小胞形成脂質及びコレステロールなどのステロールから形成され、例えば内皮細胞表面抗原に対する結合親和性を有するモノクローナル抗体などの標的分子を含むことができる。さらに、リポソームはPEG化リポソームであってよい。
【0109】
干渉RNAは溶液、懸濁液、或いは生体侵食性又は非生体侵食性送達デバイスで送達することができる。干渉RNAは単独で、或いは明確な共有結合体の要素として送達することができる。干渉RNAはカチオン性脂質、カチオン性ペプチド、又はカチオン性ポリマーと複合体形成し、タンパク質、融合タンパク質、又は核酸結合性を有するタンパク質ドメイン(例えば、プロタミン)と複合体形成し、或いはナノ粒子中に封入することもできる。組織又は細胞特異的送達は、抗体又は抗体断片などの適切な標的成分を封入することによって実施することができる。
【0110】
眼部、耳部、又は肺送達用に、干渉RNAは眼科学的に、光学的に、又は肺に許容される防腐剤、共溶媒、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、バッファー、塩化ナトリウム、又は水と組み合わせて、水性、滅菌懸濁液又は溶液を形成することができる。溶液配合物は、生理的に許容される等張水性バッファー中に干渉RNAを溶かすことによって調製することができる。さらに、阻害剤の溶解を助長するために、溶液は許容される界面活性剤を含むことができる。例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの増粘剤を本発明の組成物に加えて、化合物の保持を改善することができる。
【0111】
滅菌軟膏配合物を調製するために、干渉RNAを鉱油、液状ラノリン、又は白色ワセリンなどの適切な媒体中で防腐剤と組み合わせる。滅菌ゲル配合物は、当技術分野で知られている方法に従い、例えばCARBOPOL(登録商標)−940(BF Goodrich、Charlotte、NC)などの組合せから調製した親水性基剤中に干渉RNAを懸濁させることによって調製することができる。VISCOAT(登録商標)(Alcon Laboratories、Inc.、Fort Worth、TX)は、例えば眼内注射に使用することができる。干渉RNAが当該の臓器又は組織中で浸透性が低い場合、本発明の他の組成物はクレモフォア及びTWEEN(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Sigma Aldrich、St.Louis、MO)などの浸透促進剤を含むことができる。
【0112】
キット:本発明の幾つかの実施形態は、細胞中での本明細書に列挙するmRNAの発現を減弱させるための試薬を含むキットを提供する。キットはsiRNA又はshRNA発現ベクターを含む。siRNA及び非ウイルスshRNA発現ベクター用に、キットはトランスフェクション試薬又は他の適切な送達媒体を含むこともできる。ウイルスshRNA発現ベクター用に、キットはウイルスベクター及び/又はウイルスベクター生成に必要な要素(例えば、パッケージング細胞系、及びウイルスベクターの鋳型を含むベクター、及びパッケージング用の他のヘルパーベクター)を含むことができる。キットは陽性及び陰性対照siRNA又はshRNA発現ベクター(例えば、非標的対照siRNA又は無関係なmRNAを標的とするsiRNA)を含むこともできる。キットは目的とする標的遺伝子のノックダウンを評価するための試薬を含むこともできる(例えば、ウエスタンブロット用の標的mRNA及び/又は対応するタンパク質に対する抗体を検出するための定量PCR用のプライマー及びプローブ)。或いは、キットはsiRNA配列又はshRNA配列、並びにin vitro転写によってsiRNAを生成し或いはshRNA発現ベクターを構築するのに必要な教示書及び材料を含むことができる。
【0113】
容器手段を厳重に閉じ込めた状態で支えるように適合させた担体手段と、干渉RNA組成物及び許容される担体を含む第一の容器手段をパッケージされた組合せで含む、キットの形の薬剤の組合せをさらに提供する。当業者には容易に明らかであるように、このようなキットは、望むならば、1つ又は複数の様々な従来の薬剤キット要素、例えば1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む容器、他の容器などをさらに含むことができる。投与する要素の量、投与に関するガイドライン、及び/又は要素の混合に関するガイドラインを示す挿入物又はラベルのいずれかとして印刷された教示書もキット中に含まれ得る。
【0114】
例えばヒト角膜上皮細胞中での、内因性HRH1の発現のレベルをノックダウンするHRH1干渉RNAの能力は、以下のようにin vitroで評価される。形質転換させたヒト角膜上皮細胞、例えばCEPI−17細胞系(Offordら、(1999)Invest Ophthalmol Vis Sci.40:1091〜1101)を、KGMケラチン生成細胞培地(Cambrex、East Rutherford、NJ)中でのトランスフェクション前に24時間平板培養する。0.1nM〜100nMの範囲のHRH1干渉RNA濃度で製造者の教示書に従い、DharmaFECT(商標)1(Dharmacon、Lafayette、CO)を使用してトランスフェクションを実施する。非標的対照干渉RNA及びラミンA/C干渉RNA(Dharmacon)は対照として使用する。標的mRNAのレベルは、例えばTAQMAN(登録商標)正方向及び逆方向プライマー並びに標的部位を含むプローブセット(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して、トランスフェクション後24時間qPCRによって評価する。標的タンパク質のレベルは、例えばウエスタンブロットによって、トランスフェクション後約72時間評価することができる(実際の時間はタンパク質の代謝回転率に依存する)。培養細胞からRNA及び/又はタンパク質を単離するための標準的な技法は、当業者によく知られている。非特異的な、オフターゲット効果の可能性を低下させるために、望ましいレベルの標的遺伝子の発現のノックダウンをもたらし得る最少の可能な濃度のHRH1干渉RNAを使用すべきである。
【0115】
本明細書に挙げる参照文献は、それらが本明細書で述べる参照文献を補足する例示的手順又は他の詳細を与える程度で、具体的に参照として本明細書に組み込まれる。
【0116】
当業者は、本開示に照らして、本明細書に開示する実施形態の明らかな改変を、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに作成することができることを理解するはずである。本明細書に開示する全ての実施形態は、本開示に照らして過度の実験なしで作成し実施することができる。本発明の全範囲は、本開示及びその同等の実施形態中に示される。本明細書を、本発明が権利を与えられた全保護範囲を過度に狭めるものとして解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させるための薬剤を製造するための干渉RNAの使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、前記干渉RNAが
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの(penultimate)13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域、
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの14ヌクレオチドと少なくとも85%の配列相補性、又は少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14個の連続したヌクレオチドの領域、及び
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの15、16、17、又は18ヌクレオチドのそれぞれと少なくとも80%の配列相補性、又は少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15、16、17、又は18個の連続したヌクレオチドの領域からなる群から選択されるRNAを含み、
ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現がそれによって減弱する使用。
【請求項2】
組成物が、19〜49ヌクレオチドの長さを有し配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応する第二のmRNAの3’末端の最後から2番目からの13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む第二の干渉RNAをさらに含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
干渉RNAがshRNAである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
組成物をエアロゾル、口内、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻腔内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所、又は経皮経路によって投与する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのin vivoでの発現を介して干渉RNAを投与する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
干渉RNAがmiRNA又はsiRNAである、請求項1から5までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療するための薬剤を製造するための干渉RNAの使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、
前記干渉RNAが配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域、
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの14ヌクレオチドと少なくとも85%の配列相補性、又は少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14個の連続したヌクレオチドの領域、又は
配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目からの15、16、17、又は18ヌクレオチドのそれぞれと少なくとも80%の配列相補性、又は少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15、16、17、又は18個の連続したヌクレオチドの領域を含み、
HRH1関連状態がそれによって治療される使用。
【請求項8】
組成物が、19〜49ヌクレオチドの長さを有し配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応する第二のmRNAの3’末端の最後から2番目からの13ヌクレオチドと少なくとも90%の配列相補性、又は少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む第二の干渉RNAをさらに含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
干渉RNAがshRNAである、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
組成物をエアロゾル、口内、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻腔内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所、又は経皮経路によって投与する、請求項7から9までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのin vivoでの発現を介して干渉RNAを投与する、請求項7から10までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
干渉RNAがmiRNA又はsiRNAである、請求項7から11までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
対象がヒトであり、ヒトがHRH1関連状態を有するか又はHRH1関連状態を発症する危険性がある、請求項7から12までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させるための薬剤を製造するための干渉RNAの使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、前記干渉RNAが
センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を含み、
アンチセンス鎖が、配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有し、
ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現がそれによって減弱する使用。
【請求項15】
対象がヒトであり、ヒトがHRH1関連状態を有するか又はHRH1関連状態を発症する危険性がある、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
干渉RNAのアンチセンス鎖を、ヌクレオチド285、324、410、581、584、660、672、801、817、1045、1059、1089、1157、1209、1223、1241、1253、1265、1363、1391、若しくは1488を含む配列番号1に対応するmRNA、又は
ヌクレオチド1521、1624、1670、1673、1784、1873、1875、1985、2086、2087、2226、2297、2420、2421、2485、2603、2647、若しくは3431を含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計する、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
19〜49ヌクレオチドの長さを有し、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い相補性のある領域を含む第二の干渉RNAを対象に投与することをさらに含み、
第二の干渉RNAのアンチセンス鎖が、配列番号1に対応するmRNAの第二の部分と生理的条件下でハイブリダイズし、アンチセンス鎖が、配列番号1に対応するmRNAの第二のハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有する、請求項14から16までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
センスヌクレオチド鎖とアンチセンスヌクレオチド鎖がループヌクレオチド鎖によって結合している、請求項14から17までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
組成物をエアロゾル、口内、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻腔内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所、又は経皮経路によって投与する、請求項14から18までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのin vivoでの発現を介して干渉RNAを投与する、請求項14から19までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療するための薬剤を製造するための干渉RNAの使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、前記干渉RNAがセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を含み、
アンチセンス鎖が配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有し、
HRH1関連状態がそれによって治療される使用。
【請求項22】
対象がヒトであり、ヒトがHRH1関連状態を有するか又はHRH1関連状態を発症する危険性がある、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
干渉RNAのアンチセンス鎖をヌクレオチド285、324、410、581、584、660、672、801、817、1045、1059、1089、1157、1209、1223、1241、1253、1265、1363、1391、若しくは1488を含む配列番号1に対応するmRNA、又は
ヌクレオチド1521、1624、1670、1673、1784、1873、1875、1985、2086、2087、2226、2297、2420、2421、2485、2603、2647、若しくは3431を含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計する、請求項21又は22に記載の使用。
【請求項24】
19〜49ヌクレオチドの長さを有し、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い相補性のある領域を含む第二の干渉RNAを対象に投与することをさらに含み、
第二の干渉RNAのアンチセンス鎖が配列番号1に対応するmRNAの第二の部分と生理的条件下でハイブリダイズし、アンチセンス鎖が配列番号1に対応するmRNAの第二のハイブリダイズ部分と少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有する、請求項21から23までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
センスヌクレオチド鎖とアンチセンスヌクレオチド鎖がループヌクレオチド鎖によって結合している、請求項21から24までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
組成物をエアロゾル、口内、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻腔内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所、又は経皮経路によって投与する、請求項21から25までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのin vivoでの発現を介して干渉RNAを投与する、請求項21から26までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
対象のヒスタミン受容体H1のmRNAの発現を減弱させるための薬剤を製造するための干渉RNAの使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の一本鎖干渉RNA、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含み、
前記一本鎖干渉RNAが、ヌクレオチド285、324、410、581、584、660、672、801、817、1045、1059、1089、1157、1209、1223、1241、1253、1265、1363、1391、1488、1521、1624、1670、1673、1784、1873、1875、1985、2086、2087、2226、2297、2420、2421、2485、2603、2647、又は3431を含む配列番号1に対応するmRNAの一部分と生理的条件下でハイブリダイズし、干渉RNAが配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズ部分と少なくとも完全に近い連続した相補性のある領域を有し、
ヒスタミン受容体H1のmRNAの発現がそれによって減弱する使用。
【請求項29】
組成物をエアロゾル、口内、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻腔内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所、又は経皮経路によって投与する、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのin vivoでの発現を介して干渉RNAを投与する、請求項28又は29に記載の使用。
【請求項31】
干渉RNAがmiRNA又はsiRNAである、請求項28から30までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
治療の必要がある対象におけるHRH1関連状態を治療するための薬剤を製造するための干渉RNAの使用であって、
RNA干渉によってHRH1遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物を対象に投与することを含み、
siRNA分子の各鎖が独立して約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、
siRNA分子の一方の鎖がHRH1遺伝子に対応するmRNAと実質的相補性を有するヌクレオチド配列を含み、その結果siRNA分子がRNA干渉によるmRNAの切断を誘導する使用。
【請求項33】
組成物をエアロゾル、口内、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻腔内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所、又は経皮経路によって投与する、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのin vivoでの発現を介して干渉RNAを投与する、請求項32又は33に記載の使用。
【請求項35】
干渉RNAがmiRNAである、請求項32から34までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
siRNA分子の各鎖が独立して約19ヌクレオチド〜約25ヌクレオチドの長さ、又は独立して約19ヌクレオチド〜約21ヌクレオチドの長さである、請求項32から35までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
19〜49ヌクレオチドの長さを有する干渉RNAを含み、且つ配列番号2及び配列番号13〜配列番号50のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列、又はその相補配列、及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項38】
干渉RNAがshRNA、siRNA、又はmiRNAである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
RNA干渉によってHRH1遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物であって、
siRNA分子の各鎖が独立して約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、
siRNA分子の一方の鎖がHRH1遺伝子に対応するmRNAと実質的相補性を有するヌクレオチド配列を含み、その結果siRNA分子がRNA干渉によるmRNAの切断を誘導する組成物。
【請求項40】
siRNA分子の各鎖が独立して約19ヌクレオチド〜約25ヌクレオチドの長さ、又は独立して約19ヌクレオチド〜約21ヌクレオチドの長さである、請求項39に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−533466(P2009−533466A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505565(P2009−505565)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/066287
【国際公開番号】WO2007/121156
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】