説明

ヒトテロメラーゼ逆転写酵素ペプチド

腫瘍抗原は、特定のまたは共通の腫瘍タイプとして分類することができる。テロメラーゼ逆転写酵素(TRT)は、最初の真正な共通の腫瘍抗原である。ヒトTRT(hTRT)の9マーのペプチドのいくつかは、ヒトにおいて最も一般的な(〜50%)のHLAタイプであるHLA−A2に関して同定されているが、残りのHLAタイプのペプチドに関する情報はほとんどない。本明細書に記載されているように、多段階アプローチは、免疫原候補として、一団のHLA−B7の9マーのペプチドを選択し、特徴付けるために採用された。具体的には、いくつかのアルゴリズムに基づく予測、HLA−B7トランスジェニックマウスのインビボでの免疫、ヒト血中リンパ球のインビトロでの免疫、インビボでのプロセッシングおよびスーパータイプ結合は、hTRTにおけるHLA−B7制限エピトープを同定するために採用された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、National Institutes of Healthのグラント番号RO1CA084062および5T32GM008666−07、ならびにNational Scinence Foundationグラント番号9978892による政府の支援により部分的になされた。よって、米国合衆国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【0002】
発明の分野
本発明は、癌の免疫療法およびその試験に関する。特に、本発明は、ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素ペプチド(複数)を提示する細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するための組成物および方法を提供する。さらに、本発明は、免疫原性のヒト・テロメラーゼ逆転写酵素ペプチド(複数)を同定するための手段を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
テロメラーゼは、テロメアDNAのRNA依存的な合成を媒介するリボヌクレオタンパク質である(非特許文献1)。一定なテロメアの長さの維持は、染色体の安定性を保証し、細胞を加齢から防ぎ、不死性を与える(非特許文献2−4)。インビトロ試験により、正常な線維芽細胞において、ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase:hTRT)の長期間の異所性発現は、不死化に十分であり(非特許文献5)、2つの癌遺伝子(SV40T抗原およびRas)とともにhTRTの発現は、正常なヒト上皮細胞株および線維芽細胞株において腫瘍変換を促進することが示されている(非特許文献6)。このようにして、テロメラーゼそれ自体は発癌性ではないが、前癌性細胞を連続して増殖させ、不死化とさせることによって、腫瘍形成において直接的な役割を果たす。
【0004】
ヒト癌細胞の試験により、様々な組織学的な起源およびタイプの腫瘍において、著しく高い発現(>85%)のテロメラーゼ活性が示されている(非特許文献7、8)。対照的に、正常な組織では、テロメラーゼ活性をほとんど示さないかまたは全く示さない(非特許文献8、9)。このため、hTRTは、原型の共通の腫瘍抗原であると考えられている(非特許文献10)。今日まで、多数のインビトロ試験が公表され、hTRTペプチドを用いて、CD8 T細胞前駆体を増殖させ、ヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)において細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte:CTL)を生じさせ得ることが示されている(非特許文献11−15)。さらにまた、いくつかのフェーズ1の試行が完了し、特定のCD8 T細胞応答が癌患者においてインビボ(非特許文献16−19)で誘導し得ることを明らかにしている。
【0005】
Tリンパ球は、主要組織適合複合体(major histocompatibility complex:MHC)またはヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)の仲介分子を通じて抗原を認識し、多形のシステムは数百個の分子から構成されている(「MHC制限」)。CD8 T細胞は、抗原ペプチドが細胞内で処理され、内因性経路を通じて細胞表面に運び出された後、全ての細胞の表面で発現されているMHCクラスI分子を通じて提示された抗原を認識する(非特許文献20)。正常な環境下では、MHCクラスI分子は、広範囲なペプチド、主に内因性タンパク質のプロセッシング産生物を提示する。微生物病原体による感染または腫瘍形質転換により、抗原提示細胞(antigen presenting cell:APC)のMHC分子と複合化されると、CD8 T細胞を活性化し、CTL応答を誘導することができるペプチドが生じる。しかしながら、MHCシステムは、ヒト個体群の中で非常に多形であるため、抗原ペプチドの免疫原性は、各HLA分子に関して試験されることが必要である。代替であって、より単純なアプローチは、大きなスーパータイプのファミリーに分類されたHLA対立遺伝子に関して抗原ペプチドを試験することである(非特許文献21)。HLAスーパータイプは、複数のHLA分子(スーパーモチーフ)に結合するペプチドの能力によって定義されている。特定のHLAスーパーモチーフを有するペプチドに結合するHLA対立遺伝子変異体は、HLAスーパータイプと呼ばれる。HLA−B7スーパータイプには、B*0702、B*3501−03、B*51、B*5301、B*5401、B*0703−05、B*1508、B*5501−02、B*5601−02、B*6701およびB*7801対立遺伝子が含まれる。これらのHLA分子は、2位のPに対するペプチド結合特異性、C末端位置の疎水性脂肪族残基(A、L、I、M、もしくはV)または芳香族残基(F、W、もしくはY)を共有している(非特許文献22)。
【0006】
今日まで、免疫原性hTRTペプチドに関する具体的な情報は、1つのMHC対立遺伝子(HLA−A*0201)に限定され、それぞれHLA−A3タイプ(非特許文献13)およびHLA−A24タイプ(非特許文献23)に関する最初のレポートだけである。HLA−A*0201は、ヒト個体群において最も頻度が高いが(95%のHLA−A2タイプ自体が白人個体群の約50%において発現されている(非特許文献24−26))、同様に大部分のヒト個体群に対する抗原性ペプチドが同定される必要がある。本明細書に示された取り組みの目的は、HLA−B*0702分子によって制限された免疫原性hTRTペプチドを同定することであり、このHLA−B*0702分子は、白人個体群の約8.6%を占めるHLA−B7タイプの中で最も一般的な対立遺伝子である(非特許文献27)。
【非特許文献1】Blackburn, 1992. Annual Review of Biochemistry 61:113.
【非特許文献2】Kim et al., 1994. Science 266:2011.
【非特許文献3】Meyerson et al., 1997. Cell 90:785.
【非特許文献4】Bodnar et al., 1998. Science 279:349.
【非特許文献5】Morales et al., 1999. Nature Genetics 21:115.
【非特許文献6】Hahn et al., 1999. Nature 400:464.
【非特許文献7】Shay and Bacchetti, 1997. Eur J of Cancer 33:787.
【非特許文献8】Kim, 1997. Eur J of Cancer 33:781.
【非特許文献9】Nakamura et al., 1997. Science 277:955.
【非特許文献10】Zanetti et al., 2005. Springer Semin Immunopathol. 27:87.
【非特許文献11】Vonderheide et al., 1999. Immunity 10:673.
【非特許文献12】Minev et al., 2000. Proc Natl Acad Sci USA 97:4796.
【非特許文献13】Vonderheide et al., 2001. Clin Cancer Res 7:3343.
【非特許文献14】Hernandez et al., 2002. Proc Natl Acad Sci U S A 99:12275.
【非特許文献15】Amarnath et al., 2004. Int J Oncol 25:211.
【非特許文献16】Vonderheide et al., 2004. Clin Cancer Res 10:828.
【非特許文献17】Su et al., 2003. Cancer Res 63:2127.
【非特許文献18】Su et al., 2005. J Immunol 174:3798.
【非特許文献19】Zanetti, 2003. Hum Gene Ther 14:301.
【非特許文献20】Yewdell and Bennink, 1992. Adv Immunol 52:1.
【非特許文献21】Sette and Sidney, 1999. Immunogenetics 50:201.
【非特許文献22】Sidney et al., 1996. J Immunol 157:3480.
【非特許文献23】Arai et al., 2001, Blood, 97:2903.
【非特許文献24】Lee, 1990. In The HLA System. J. Lee, ed. Springer−Verlag, New York, p. 141.
【非特許文献25】Fernandez−Vina et al., 1992. Hum Immunol 33:163.
【非特許文献26】Krausa et al., 1995. Tissue Antigens 45:223.
【非特許文献27】Marsh et al., 2000. The HLA Facts Book. Academic Press, San Diego, CA.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、癌の免疫療法およびその試験に関する。特に、本発明は、ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(hTRT)ペプチド(複数)を提示する細胞に細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するための組成物および方法を提供する。さらに、本発明は、最も頻繁に発現されている主要組織適合複合体(MHC)クラスIタイプおよびサブタイプによって提示された免疫原性hTRTペプチドを同定するための組成物および方法を提供する。具体的には、ある態様では、本発明は、少なくとも1つのヒト白血球抗原(HLA)−B7制限hTRTペプチドを含む組成物および方法を提供する。更なる態様では、HLA−A3制限hTRTペプチド、HLA−A2制限hTRTペプチド、HLA−A24制限hTRTペプチド、HLA−B44制限hTRTペプチド、HLA−A1制限hTRTペプチド、およびHLA−B27制限hTRTペプチドの1以上を含む組成物および方法が提供される。
【0008】
なお更なる態様では、本発明は、免疫グロブリン分子に挿入されたHLAクラスI制限hTRTエピトープを有する免疫グロブリン分子(例えば、重鎖または軽鎖可変領域の一部として発現されたhTRTエピトープを含む組換え抗体)を含む方法および組成物を提供する。抗原化した抗体の生産に関する教示は、例えばZanettiらによる米国特許第5,658,762号、同第5,583,202号、および同第5,508,386号(全体として参照により本明細書中に援用される)に見出すことができる。
【0009】
さらに、ある態様では、本発明は、HLA−A2制限hTRTペプチドである第1HLAクラスI制限hTRTペプチド、並びにHLA−B7制限hTRTペプチド、HLA−A3制限hTRTペプチド、HLA−A24制限hTRTペプチド、HLA−B44制限hTRTペプチド、HLA−A1制限hTRTペプチド、およびHLA−B27制限hTRTペプチドの1以上を含む第2HLAクラスI制限hTRTペプチドを含む、細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導する方法および組成物を提供する。HLA−A*0201制限hTRTペプチドに関する教示は、例えばZanettiによる米国特許出願公開第20040086518号、NadlerらによるPCT国際公開第WO00/25813号(ともに全体として参照により本明細書中に援用される)に見出すことができる。ある態様では、HLA−A2制限hTRTペプチドは、p540(ILAKFLHWL、配列番号10として記載される)およびp865(RLVDDFLLV、配列番号11として記載される)からなる群から選択される。なお更なる態様では、HLA−A2制限hTRTペプチドは、HLA−A2に対する結合親和性を増加する修飾(例えば、p572Y、YLFFYRKSV、配列番号12として記載される)を含む。HLA−A2制限ペプチド(複数)に関する更なる教示は、HLA−A2に対するそれらの結合親和性を増加させるための修飾の有無に関わらずに、Minevら,Proc Natl Acad Sci USA,97:4796−4801,2000;Hernandezら,Proc Natl Acad Sci USA,99:12275−12280,2002(ともに全体として参照により本明細書中に援用される)に見出すことができる。
【0010】
具体的には、本発明は、細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するための組成物を提供し、該組成物は、長さにして9〜12個のアミノ酸残基(例えば、9、10、11または12残基)の少なくとも1つのHLA−B7制限ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(TRT)ペプチドを含む。ある態様では、HLA−B7は、HLA−B*0702、HLA−B*3501、HLA−B*3502、HLA−B*3503、HLA−B*5101、HLA−B*5301、HLA−B*5401、HLA−B*0703、HLA−B*0704、HLA−B*0705、HLA−B*1508、HLA−B*5501、HLA−B*5502、HLA−B*5601、HLA−B*5602、HLA−B*6701、HLA−B*7801、およびHLA−B*0801からなる群から選択される。いくつかの好ましい態様では、前記少なくとも1つのTRTペプチドは、配列番号3(p277)、配列番号4(p342)、配列番号6(p464)、配列番号8(p1107)、および配列番号9(p1123)からなる群から選択される配列からなる。更なる態様では、前記組成物もまたヘルパーペプチドを含み、このTRTペプチドは該ヘルパーペプチドに結合しない。典型的な態様では、前記ヘルパーペプチドは、B型肝炎コア抗原の128〜140残基(TPPAYRPPNAPIL、配列番号13として記載される)に対応する。なお更なる態様では、前記組成物もまたアジュバントを含む。ある態様では、前記組成物は、生理学的に許容される担体をさらに含み、好ましい態様では、該担体は哺乳動物細胞(例えば、細胞表面上でHLAクラスI分子に結合したTRTペプチドを有する樹状細胞、Bリンパ球またはマクロファージなどの抗原提示細胞)である。また、TRTペプチドがHLA−B7への結合を高めるような修飾を含む組成物も提供される。ある態様では、この修飾は、チロシンによるTRTの9マー(nonamer)の第1残基の置換である)。いくつかの好ましい態様では、前記TRTペプチドは合成ペプチドである。
【0011】
さらに、本発明は、ヒトTRTおよびHLA−B7を発現している標的細胞に対するCTL応答を誘導するかまたは高める方法を提供し、該方法は、HLA−B7を発現している白血球を回収し;長さにして9〜12個のアミノ酸残基(例えば、9、10、11または12残基)のHLA−B7制限ヒトTRTペプチドを含む組成物で該白血球をパルスし;ヒトTRTおよびHLA−B7を発現している標的細胞と該パルスされた白血球とを接触させることを含む。ある態様では、前記接触はインビトロまたはエクスビボで達成され、代替の態様では、該接触はインビボで達成される。ある態様では、HLA−B7は、HLA−B*0702、HLA−B*3501、HLA−B*3502、HLA−B*3503、HLA−B*5101、HLA−B*5301、HLA−B*5401、HLA−B*0703、HLA−B*0704、HLA−B*0705、HLA−B*1508、HLA−B*5501、HLA−B*5502、HLA−B*5601、HLA−B*5602、HLA−B*6701、HLA−B*7801、およびHLA−B*0801からなる群から選択される。いくつかの好ましい態様では、前記少なくとも1つのTRTペプチドは、配列番号3(p277)、配列番号4(p342)、配列番号6(p464)、配列番号8(p1107)、および配列番号9(p1123)からなる群から選択される配列からなる。
【0012】
さらに、本発明は、HLAクラスI制限ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(TRT)ペプチドをスクリーニングする方法を提供し、該方法は、a)標準(canonical)HLAクラスIモチーフに対応し、少なくとも9個のアミノ酸残基を含む全長のTRTタンパク質配列にヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(TRT)ペプチド配列を同定するためのアルゴリズムを用いること;b)参照ペプチドと比較して、HLAクラスI結合または安定化を測定することによって、該TRTペプチド配列のHLAクラスI結合を試験すること;c)HLAクラスI陽性の被験体のTRTペプチド反応性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導を測定することによって、該TRTペプチド配列の免疫原性を評価することを含む。ある態様では、HLAクラスI陽性の被験体は、前記工程c)の評価前に、候補ヒトTRTワクチン(例えば、免疫原性組成物)で免疫された。いくつかの好ましい態様では、ヒトTRTワクチンは、ヒトTRT DNAを含む。他の好ましい態様では、ヒトTRTワクチンは、ヒトTRTを発現するように操作された組換え微生物を含む。更なる態様では、ヒトTRTワクチンは、長さにして9〜12個のアミノ酸残基(例えば、9、10、11または12残基)でのTRTペプチドを含み、ある態様では、リポソームを用いて調合される。好ましい方法では、HLAクラスIはHLA−B7であり、特に好ましい態様では、HLA−B7結合は、HLA−B*0702結合、並びに1以上のHLA−B*3501、HLA−B*3502、HLA−B*3503、HLA−B*5101、HLA−B*5301、HLA−B*5401、HLA−B*0703、HLA−B*0704、HLA−B*0705、HLA−B*1508、HLA−B*5501、HLA−B*5502、HLA−B*5601、HLA−B*5602、HLA−B*6701、HLA−B*7801、およびHLA−B*0801結合を含む。代替の態様では、HLAクラスIは、HLA−A3、HLA−A24、HLA−B44、HLA−A1およびHLA−B27からなる群から選択される。ある態様では、HLAクラスI陽性の被験体は、トランスジェニックマウスである。
【0013】
また、本発明によって、細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するための組成物が提供され、該組成物は、長さにして9〜12個のアミノ酸残基の少なくとも1つのHLAクラスI制限ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(hTRT)ペプチドを含み、該hTRTペプチドは、1以上のHLA−A3制限hTRTペプチド、HLA−A24制限hTRTペプチド、HLA−B44制限hTRTペプチド、HLA−A1制限hTRTペプチド、およびHLA−B27制限hTRTを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
定義
本発明の理解を容易にするために、多数の用語および句は下記のように定義される:
本明細書中で使用するとき、用語「精製した」および「単離した」は、天然の環境から取り出されるかまたは分離される分子(ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド)または生物を意味する。「実質的に精製された」分子または生物は、自然に関連する他の成分を少なくとも50%含まず、好ましくは少なくとも75%含まず、より好ましくは少なくとも90%含まず、最も好ましくは少なくとも95%含まない。
【0015】
用語「野生型」は、自然に存在している供給源から単離した場合、遺伝子、遺伝子産物または生物の特徴を有する遺伝子、遺伝子産物または生物を意味する。野生型遺伝子または生物は、1つの個体群において最も頻繁に観察され、したがって、その遺伝子または生物の「正常」または「野生型」形態を任意に示すものである。
【0016】
対照的に、用語「修飾した」、「突然変異体」、および「改変体」は、野生型遺伝子、遺伝子産物または生物と比較した場合、配列および/または機能的特性における修飾(即ち、変更した特徴)を示す遺伝子、遺伝子産物または生物を意味する。自然に存在している突然変異体は単離可能であることは留意されたい;これらは、野生型遺伝子、遺伝子産物または生物と比較した場合、変更された特徴を有するといった事実によって同定される。
【0017】
本明細書中で使用するとき、用語「免疫応答」は、抗原に応答して被験体の免疫系の反応性を意味する。哺乳動物では、これは、抗体産生、細胞を媒介した免疫性の誘導、および/または補体活性化を伴う場合がある。好ましい態様では、免疫応答なる用語には、限定されないが、「細胞傷害性Tリンパ球応答」、「リンパ球増殖応答」、「サイトカイン応答」、および「抗体応答」の1以上が含まれる。
【0018】
特定の好ましい態様では、免疫応答には、HLAクラスI分子(例えば、HLA−A、HLA−Bおよび/またはHLA−C)との関連でhTRTエピトープを提示する細胞に本質的に特異的であるCTLの誘導が含まれる。ある態様では、hTRTエピトープを提示する細胞は、hTRTを発現するHLAクラスI陽性細胞、または配列番号2として記載される配列からなるhTRTタンパク質のペプチド(例えば、長さにして9〜29個のアミノ酸、好ましくは9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸であり、限定されないが、表IおよびVI−XIXにおける本明細書に開示されているペプチドが含まれる)でパルスしたHLAクラスI陽性細胞である。特に好ましい態様では、hTRTエピトープを提示する細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手されるhTRT陽性ヒト腫瘍細胞株(例えば、メラノーマ、前立腺、乳房、結腸、肺など)である。腫瘍細胞によるhTRTの発現は、インタージェン(Intergen)(ニューヨーク州パーチェス(Purchase,NY))のPCRベースのTRAPEZEアッセイなどの当該技術分野において承認されている方法を用いて測定される。tTRT陽性標的細胞の細胞傷害性は、50:1のE:T比で51Cr標識放出アッセイで測定される。ある態様では、腫瘍細胞株は、アッセイ前に100ユニット/mlインターフェロン−ガンマとともにインキュベートされる。
【0019】
用語「T細胞エピトープ」は、本明細書中で使用するとき、1個のT細胞受容体に結合するためのMHCクラスIまたはクラスII分子によって提示される抗原決定基を意味する。T細胞エピトープは、少なくとも7個のアミノ酸残基を含む線状エピトープである。本発明のある態様では、T細胞エピトープなる用語には、細胞傷害性Tリンパ球(例えば、一般にはCD8)の表面上でT細胞受容体に結合するためのMHCクラスI分子によって提示される抗原断片であるCTLエピトープが含まれ、他の態様では、T細胞エピトープなる用語には、ヘルパーT細胞(例えば、一般にはCD4)の表面上でT細胞受容体に結合するためのMHCクラスIIによって提示される抗原断片であるThエピトープが含まれる。
【0020】
用語「対象とするエピトープに特異的」とは、免疫応答に言及すると、対照ペプチド(例えば、無関係な抗原)を提示している細胞に対する免疫応答のレベルと比較して、対象とするエピトープを提示している細胞(例えば、p277、p1123、p540、p865などのhTRT CTLエピトープ)に対する免疫応答のレベルの増加を意味する。
【0021】
用語「ワクチン」は、本明細書中で使用するとき、免疫応答を誘導することを目的として、被験体に投与される免疫原性組成物を意味する。この用語には、癌の発生から被験体を保護し、および/または癌患者における腫瘍もしくは悪性細胞を根絶する、未だに実証されていない候補の予防的および治療的な癌ワクチンが含まれる。
【0022】
用語「アジュバント」とは、本明細書中で使用するとき、抗原とともに注射されると、その抗原に対する免疫応答を非特異的に高める任意の化合物を意味する。典型的なアジュバントには、限定されないが、フロイント不完全アジュバント(incomplete Freunds adjuvant:IFA)、アルミニウム系アジュバント類(例えば、AIOH、AIPO4など)、およびモンタニド(Montanide)ISA720が含まれる。
【0023】
用語「賦形剤」、「担体」および「ビヒクル」は、本明細書中で使用するとき、医薬物質(例えば、hTRTペプチド)が懸濁されている、通常は不活性な補助物質を意味する。典型的な担体には、液体担体(例えば、水、生理食塩水、培養液、水性デキストロース、およびグリコール類)、および固体担体(例えば、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、およびデキストラン類に例示される糖質、アスコルビン酸およびグルタチオンに例示される抗酸化剤、並びに加水分解されたタンパク質)が含まれる。
【0024】
用語「対照」とは、実験の被験体または試料の比較の根拠を与える被験体または試料をいう。例えば、対照となる被験体または試料の使用により、実験手法の有効性に関する決定が可能となる。ある態様では、用語「対照の被験体」とは、模擬処理(例えば、アジュバントのみ)を受け入れる動物または細胞を意味する。
【0025】
本明細書中で使用するとき、用語「TRT」、「TERT」および「テロメラーゼ逆転写酵素」は、真核細胞が分裂した後、染色体の終端にテロメアを付加する該細胞のテロメラーゼ酵素の触媒サブユニットを意味する。特に、用語「ヒトTRT」および「hTRT」は、配列番号1に記載される核酸配列(図6)によってコードされる、配列番号2に記載されるヒトのタンパク質(図7)をいう。
【0026】
発明の説明
各HLAタイプに対してhTRTの免疫原性成分を定義することは、骨の折れる仕事であるが、ヒト個体群の最も広範な分類における腫瘍細胞上のtTRTを標的とするための免疫療法を開発するためには必要な工程である。従来、本実験室(12、14)および他の実験室(11)では、最も頻出のHLAタイプであるHLA−A2に対する免疫原性ペプチドが同定された。これらの試験の結果は、ヒトが、インビトロでの免疫によって増殖され得る、高親和性および低親和性hTRTペプチドの両方に対する残りのCD8 T細胞レパートリーを有していることであった(12、14、16)。hTRT特異的なCD8 T細胞前駆体は、進行癌を患っている患者に存続することが報告されている(12、14、15)。ここで、本発明者らは、HLA−B7に制限された免疫原性hTRTペプチドの同定および特徴付けに系統的な努力を展開した。本試験の結果は、一連の全般的な考察をもたらす。
【0027】
ここで用いられた従来のアルゴリズムは、HLA−B7タイプに対して免疫原性hTRTペプチドの全体的に不十分な予測因子であることが証明された。以前に、本発明者らは、本明細書で試験されたものと類似した免疫原性に対する所望の基準を満たすHLA−A2制限hTRTペプチドを予測し、選択する手段としてBIMASを用いて成功した。対照的に、BIMASは、HLA−B7免疫原性ペプチドを概して予測できなかった。例えば、p444は、BIMASによれば最良の(top)ペプチドであるが、インビボでは、HLA−B7 Tgマウスでは免疫原性でなく、ヒトPBMCに対してはインビトロでは弱い免疫原性であり、完全長のhTRT pDNAで免疫したHLA−B7 Tgマウスでは外見上プロセッシングを受けなかった。予想通り、HLA−B7分子に対するp444の実際の結合親和力も弱く、そのため、予測された親和性、実際の親和力および免疫原性機能の間での不一致が指摘された。SYFPEITHIは、免疫原性が弱い2つのペプチド(p966およびp464)を予測しなかったが、同時に、試験した残りの5個のペプチドの中で免疫原性ペプチドと非免疫原性ペプチドとの間を区別しなかった。最後に、プロテアソーム開裂の基づく予測因子は、有用でないことが判明した。例えば、プロセッシングおよび免疫原性についての最大に予測された可能性を有する2つのペプチドは、ある場合(p966)では非免疫原性であり、他の場合(p342)では弱い免疫原性であることが分かった。しかしながら、このアルゴリズムは、p277を予測した。まとめると、ペプチドの初期選択を導くために用いられた3つのアルゴリズムのうちどれもそれ自体、免疫原性に関する必要条件を満たすペプチドを識別することはできなかった。
【0028】
インビトロの免疫試験は、調べた大部分(7個のうち5個)のペプチドの特異性に関して、残りのCD8 T細胞レパートリーが存在するという結論を支持する。これらのペプチドもHLA−B7分子に対して良好な結合親和力を有するので、本所見は、HLA−B7に制限されたhTRT CD8 T細胞クローン型の胸腺陰性選択(中心的な寛容)は発生しないかまたはごく限られた程度で発生したことを示す。免疫学的アジュバント中のペプチドを用いたインビボでの免疫に対するHLA−B7 Tgマウスの応答は、同様に免疫されたHLA−A2 Tgマウスよりも即効的であり強力であった(12、14、39)。それは、あたかも、少なくともhTRTに関して、HLA−B7/ペプチド複合体が高い免疫原性であるかのようである。同様に、高免疫性は、HLA−B7 Tgマウスがインフルエンザウイルスペプチドで免疫された試験において示された(28)。
【0029】
スーパータイプ結合試験は、免疫原性ペプチドの選択において優れた最終のチェックポイントであることが証明された。例えば、p1123、並びにそれ程ではないp277およびp1107は、HLA−B7スーパータイプの様々な対立遺伝子に結合した。まとめて考えてみると、本発明者らの試験の結果は、候補となる免疫原性ペプチドが少なくとも2つの一般的な基準;HLA−B7分子との良好な親和力相互作用および良好なスーパータイプ結合を満足する必要があることを示す。また、免疫原性における付加的な因子としてTCRを用いて、MHC/ペプチド複合体間の相互作用の性質を考慮することが必要である。第2の特徴に関して、本発明者らのデータは、スーパータイプ結合ペプチドは優先的にプロセッシングを受け、抗原プロセッシングに関連したトランスポーター(transporter associated with antigen processing:TAP)複合体の分子との相互作用に関して選択的な利点を有することを示す(14、44、45)。それでもなお、メカニズム(単数または複数)の理解は、本発明を生産し、使用するために必要ではなく、本発明が任意の特定のメカニズムに限定されることは意図されない。
【0030】
結論として、本発明者らは、HLA−B7に制限された、いくつかの免疫原性hTRTペプチドの良好な同定を示した。本発明者らは、この同定が多段階アプローチを必要とし、マウスとヒトの両方のPBMCを用いた、一連のインビトロおよびインビボの工程を伴うことを示す。これは、潜在的な臨床使用のための免疫原性ペプチドの選択が、一連のチェックポイントおよび経験論全体の要素に当てはまることを意味する。今日まで、このような系統的なアプローチは、HLA−A2(10)、現在はHLA−B7ペプチドの同定を可能にし、免疫原性の特徴付けは、癌患者の免疫療法におけるそれらの使用を正当化した。ともに、HLA−A2およびHLA−B7は、白人個体群の約60%を占める。この試験において同定されたペプチドのいくつかのスーパータイプ結合を考慮すれば、民族性に関わらずに70%を超える範囲を達成し得る。したがって、ヒト個体群の完全な範囲については、その個体群の残りの30〜40%を占める対立遺伝子に関する免疫原性ペプチドはなお本明細書に従ったものと同じストラテジーを系統的に用いて同定することが必要である。
【実施例】
【0031】
実験
下記の実施例は、本発明のある種の好ましい態様および局面を示し、さらに例証するために提供され、その範囲を限定するものとして構成されるべきでない。続く実験の開示では、下記の省略形が適用される:eq(当量);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);lまたはL(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);U(ユニット)、mU(ミリユニット);min.(分);sec.(秒);%(パーセント);kb(キロベース);bp(塩基対);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);TRT(テロメラーゼ逆転写酵素);WT(野生型);Tg(トランスジェニック);TCR(T細胞受容体);Th(ヘルパーT細胞);MHC(主要組織適合複合体);mAb(モノクローナル抗体)、APC(抗原提示細胞);およびCTL(細胞傷害性T細胞)。
【0032】
材料および方法
マウス。HLA−B7トランスジェニックマウスは、キメラHLA−B7/H2−DMHCクラスI分子を発現し、C57BL/6バックグラウンドにあり、以前に記載されている(28)。マウスは、元々は、パスツール研究所(Institut Pasteur)(パリ、フランス)で生成された。コロニーを培養し、カリフォルニア大学の生態動物園、サンディエゴ(San Diego)(カリフォルニア州ラ・ホイヤ(La Jolla,CA))で特殊な無菌状態で維持された。全ての実験手法は、承認されたプロトコール、および実験動物の世話および使用(Care and Use of Laboratory Animals)に関する国立衛生研究所のガイド(National Institute of Health Guide)に従って行われた。
【0033】
細胞株。ヒトT2−B7形質転換体およびマウスRMA−B7形質転換体菌株は、前述(28、29)したHLA−B*0702対立遺伝子を用いて形質転換した。エプスタイン・バー・ウイルス(Epstein Barr Virus)で形質転換されたBリンパ芽球様(HLA−A2/B7)JY細胞は、Dr.Antonella Vitiello(PRI Johnson & Johnson、カリフォルニア州ラ・ホイヤ)から入手した。
【0034】
ヒト血液細胞。HLA−B7正常ドナー由来の軟膜をサンディエゴ・ブラッド・バンク(San Diego Blood Bank)(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。前立腺癌の患者は、血液学腫瘍学部門を通じて募集され、静脈穿刺から血液を得た。HLA−B7陽性は、フローサイトメトリーによって評価された。実験は、承認された施設内治験審査委員会(Institutional Review Board:IRB)プロトコールに従って行った。
【0035】
ペプチドおよびモノクローナル抗体。全ての合成ペプチドは、オハイオ州立大学のペプチド合成コア施設(Peptide Synthesis Core Facility)(オハイオ州コロンバス(Columbus,OH))から購入した。HLA−B7に対するモノクローナル抗体であるBB7.1は、アメリカン・ティッシュ・タイプ・コレクション(バージニア州マナッサス(Manassas,VA))から購入した。使用した他の抗体は、フルオレセイン・イソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate:FITC)結合のマウスIgG抗ヒトCD8ベータ(mAb53−6.7)およびフィコエリトリン(phycoerythrin:PE)結合のマウスIgG抗ヒトCD3(BD PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)、およびFITC結合のヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch,ペンシルバニア州ウェストグローブ(West Grove,PA))であった。
【0036】
予測アルゴリズム。下記の予測アルゴリズムを用いた:(A)非常に有利および不利な優性アンカー残基および補助アンカー残基に基づき、係数に準じたペプチドをスコアするBIMASアルゴリズム(30)(thr.cit.nih.gov/molbio/hla bind/を介してアクセスする)。(B)既知のT細胞エピトープおよびMHCリガンドに基づき(31、32)(www.uni−tuebingen.de/uni/kxi/を介してアクセスする)、該アンカーおよび補助アンカー位置でアミノ酸を考慮して、10ポイントを示す理想的なアンカー残基を有するアミノ酸、−1と3ポイントを占める結合における負の効果を有することに関するアミノ酸を与える蓄積的(正または負の)効果によるペプチドをスコアするSYFPEITHIアルゴリズム。(C)酵母およびヒトの20Sプロテアソームによる基質タンパク質の開裂に関するコンピュータに基づく理論モデルであるPAProC(プロテアソーム開裂のための予測データベース(Prediction Database for Proteasomal Cleavages))。PAProCは、アミノ酸配列の開裂性(アミノ酸当たりの切断)、および個々の開裂(位置および推測された長さ)を予測する。具体的には、本発明者らは、エノラーゼおよびオボアルブミンのヒト赤血球のプロテアソーム開裂に基づいて、タイプIIIモデルを使用した(33、34)(www.paproc.de/を介してアクセスする)。
【0037】
MHC結合アッセイ。相対的親和力測定。HLA B7に対するhTRTペプチドの相対的親和力は、前述(14)される参照ペプチドと比較して、T2−B7細胞上のMHC安定化アッセイを用いて測定された。結果は、相対的親和力の値として表わされ、参照ペプチドによる最大結合の20%に到達するのに必要な試験ペプチドの濃度の比であり、それにより、この値が低くなるにつれて結合が強化する。
【0038】
スーパータイプ分析。精製したHLA B7−スーパータイプ分子(B*0702、B*3501、B*5101、B*5301、B*5401)およびB*0801に対するペプチドの結合親和性を測定するための定量的アッセイは、放射線標識した標準ペプチドの結合の阻害に基づき、前述(22、35)のように行った。簡潔に説明すると、1〜10nMの放射線標識したペプチドは、1〜3μMのヒト・ベータ−ミクログロブリン(Scripps Laboratories,カリフォルニア州サンディエゴ)およびプロテアーゼ阻害剤のカクテルの存在下で、1マイクロM〜1nMの精製したMHCとともに室温で同時にインキュベートした。2日間のインキュベーション後、放射線標識したペプチドによる、対応するMHCクラスI分子への結合は、W6/32抗体で被覆したGreiner Lumitrac 600マイクロプレート(Greiner Bio−one,フロリダ州ロングウッド(Longwood,FL))上でMHC/ペプチド複合体を捕捉し、TopCountマイクロシンチレーションカウンター(Packard Instrument Co.)を用いて、1分当たりの結合カウント(counts per minute:cpm)を測定することによって決定した。結果は、放射線標識した参照ペプチドの結合の50%阻害を生じさせるペプチドの濃度として表わされる。ペプチドは、典型的には、100,000倍の投薬範囲をカバーする6種類の濃度であって、3以上の独立したアッセイで試験した。利用される条件下で、[標識」<[MHC]およびIC50≧[MHC]である場合、測定されたIC50値は、真のK値の妥当な近似値である。
【0039】
インビトロ免疫手法。表IIIおよび図3に示される実験では、免疫は、96ウェルプレートで行った。簡潔に説明すると、2×10個の照射(6000rad)されたヒトPBMCは、100マイクログラム/mlのペプチドとともに、100マイクロリットルの完全なヒト培地(10%の熱不活性化ヒトAB血清、2mMのグルタミン、50マイクログラム/mlのストレプトマイシン、および50マイクログラム/mlのペニシリンを含むRPMI1640培地)を含む96(フラット)ウェルプレートに撒いた。患者1人当たり、12ウェル/ペプチドをプレーティングした。次に、100マイクロリットルの完全なヒト培地中の2×10個のPBMCを各ウェルに添加した。4日後、100マイクロリットルの培地は、80IU/mlのIL−2を含む100マイクロリットルの新鮮な完全なヒト培地と交換された。6〜7日で、100IU/mlのIL−2を添加し、ウェルを2つに分けた。10〜11日で、マイクロ細胞毒性アッセイを行った。図4および5に示される実験では、ヒトPBMCは、前述(12)されるようにIL−2およびIL−7の存在下で、インビトロで24ウェルプレートにおいて、自家性の照射されたペプチドでパルスされた付着細胞とともに刺激された。再刺激後の4〜5日で、エフェクターCTLは、標準51Cr放出アッセイで試験された。
【0040】
インビボ免疫手法。ペプチド免疫。HLA B7トランスジェニックマウス(28)は、前述(12)されるように、フロイント不完全アジュバント中のB型肝炎ウイルスのコアタンパク質のI−AMHCクラスIIヘルパーペプチド128−140の120マイクログラムとともに、100マイクログラムのhTRTペプチドを用いて、尾の付け根にs.c.注射された。長期のCTL菌株は、10%の熱不活性化されたウシ胎児血清、2mMのグルタミン、5×10−5Mの2−メルカプトエタノール、50マイクログラム/mlのストレプトマイシン、および50マイクログラム/ペニシリンを含むRPMI−1640培地(完全培地)であって、40IU/mlの組換えヒトIL−2を添加された該培地中で照射されペプチドでパルスされた同系脾臓細胞を用いて毎週の再刺激により培養され維持された。
【0041】
DNA免疫。CMVプロモータの制御下で発現されるhTRTをコードするDNAベクターは、内毒素を含まない条件下にあるプラスミドGiga Kitカラム(キアジェン(Qiagen)、ヒルデン(Hilden)、ドイツ)上で精製した。麻酔したHLA−B*0702トランスジェニックマウスは、DNA注射の5〜6日前に、各脛骨筋内に50マイクロリットルの心臓毒素を注射された。ワクチン接種に関しては、50マイクロリットルのDNA(PBS中、1マイクログラム/ミクロリットル)は、0日と14日に前処理された筋肉のそれぞれに注射された。10日後、個々のマウスの脾臓細胞は、別々に、各関連ペプチド(10マイクログラム/ml)で6日間、別々に再刺激された。エフェクターCTL細胞は、試験ペプチドまたは対照ペプチド(HLA−B7に制限されたCMV p65由来のR10TV)でパルスされたRMA−B7細胞(HLA−B*0702をトランスフェクトされたRMA細胞)を用いて、標準的な4時間の51Cr放出アッセイにおいて試験された。特異的溶菌%は下記に示される通りである。インビボでの免疫手法は、それぞれ、カリフォルニア大学、サンディエゴ、またはパスツール研究所で承認させた動物プロトコールに従って行った。
【0042】
CTLアッセイ。マウスとヒトの両方のCTLは、前述(14)されるように行った51Cr放出アッセイにより検出された。簡単に説明すると、HLA−B7抗原提示細胞(RMA−B7またはT2−B7細胞)は、100マイクロ−CiのNa51CrO(パーキン・エルマー(Perkin Elmer))を用いて1時間標識した。洗浄した細胞(5×10個/ウェル)は、96ウェルプレート中で、100マイクロリットル/ウェルで、各ペプチド(10マイクログラム/ml以下の濃度)および100マイクロリットルのCTLエフェクター細胞(種々のE:T比)を含むRPMI培地と混合された。このプレートは、37℃(5%CO)で4〜5時間インキュベートされた。上清を回収し、Wallac 1470 Wizard Gamma counterでカウントした。溶菌率は、100(cpmexp−cpmspont)/(cpmmax−cpmspont)として計算された。
【0043】
FACS分析。インビトロで増殖したCTLの表現型の特徴は、FACS分析によって決定された。簡単に説明すると、刺激後の6〜7日で、細胞(0.5×10)は、0.1%BSAおよび0.05%アジ化ナトリウムを含むHank’s Balanced Solution中のFITC結合のマウス抗ヒトCD8mAbおよびPE結合のマウス抗ヒトCD3mAb(2マイクログラム/ml)とともに、4℃で30分間インキュベートされた。ヒトPBMCの分類に関しては、細胞は、10マイクロlのBB7.1マウスB細胞ハイブリドーマ上清を20分間、4℃でインキュベートされ、次にFITC結合したウサギ抗マウスIGG抗体とともに30分のインキュベートを行った。試料は、FACSCalibur(Becton Dickinson,カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA))で分析された。10万の事象を回収し、CellQuestソフトウェア(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))を用いて分析した。
【0044】
結果
予測アルゴリズムによるペプチドの選択
候補ペプチドの数を扱いやすい集団(panel)に限定するために、本発明者らは、2つの予測アルゴリズムであるBIMASおよびSYFPEITHIを用いた。これらを別々に用いて、HLA−B7タイプの大部分のメンバーを占めるHLA−B*0702対立遺伝子に関する9個のアミノ酸ペプチドを予測した(27)。BIMASは、全体の結合特徴に基づくHLA結合および標準アンカー残基を予測し、SYFPEITHIは、結合特徴がマトリックスベータベースとして自然に存在しているMHCリガンドから推定されるペプチドを予測する。全長タンパク質のプロテアソーム開裂を予測するPAProC(プロテアソーム開裂のための予測データベース)を用いて、開裂可能性を定義した。
【0045】
本発明者らは、最初に、前記2つのアルゴリズムのいずれかまたはそれらの両方において予測された高いスコアを有する10個の9マーのペプチドを選択し、7個のペプチドを合成した(表I)。これらのペプチドは、BIMASおよびSYFPEITHIの両方によって一致した予測に基づいて選択された。これらの7個のペプチドのうち3個だけは、BIMASを用いて180を超えるスコアを有し、SYFPEITHIを用いると、2つを除いて23のスコアであった。興味深いことに、SYFPEITHIを用いて予測できなかったこれらの2個のペプチドは、BIMASを用いると、中でも最良のスコアであった。
【0046】
表I.hTRTペプチドに結合するHLA−B7の予測
【0047】
【表1】

HLA−B*0702の結合親和性は、BIMASおよびSYFPEITHIによって予測され、前者については、標準アンカー残基を有する9マーのペプチドに対する最小の数値は180であり、後者では20である。プロテアソーム開裂による全長(1132個のアミノ酸)のhTRTの中で予測された9マーのC末端プロテアソーム開裂(PAProC)。予測されたプロテアソーム開裂の強度は、適宜、0(開裂なしについて)、X、XXおよびXXX(開裂強度について)としてスコアされる。
NP=予測されない
次に、本発明者らは、HLA−B7(HLA−B*0702)についての実際の結合親和力を評価した。2つの独立したアッセイを用いた:フローサイトメトリーによるT2−B7細胞上の結合安定化アッセイ(12)、および固定された精製HLA−B7分子上の競合的固相放射免疫アッセイ(35)。表IIに示されるように、7個のペプチドのうち5個(p277、p342、p464、p1107およびp1123)は、高い結合親和力を示した。結合が弱い2個のペプチド(p444およびp966)は、BIMASによって予測された良好な3個のペプチドに含まれた。利用された2つのタイプの結合アッセイ間で優れた一致が見られた。
【0048】
表II.HLA−B7に対する予測されたhTRTペプチドの相対的親和力
【0049】
【表2】

相対的親和力は、T2−B7上のMHC安定化アッセイによって試験された。
IC50は、競合的固相放射免疫アッセイによって計算された。
ダッシュは、IC50>50,000nMを示す。
【0050】
HLA−B7 Tgマウスのインビボ免疫
ペプチドのそれぞれに対して免疫原性を与え、この特性を結合特徴および予測アルゴリズムのスコアと関連付けるために、本発明者らは、HLA−B7 Tgマウスを免疫した(28)。免疫後10〜11日で、マウスを屠殺し、脾臓を回収し、脾細胞をLPS/デキストランで活性化したAPCとともに培養し、4時間の51Cr放出アッセイで試験した。示されるように、7個のペプチドのうち5個だけが、インビトロでの再刺激の第3サイクル後でさえ意味のある特異的なCTL応答を生じさせた(図1)。全ての免疫原性ペプチドは、第1のインビトロ再刺激からの応答を誘導し、この応答は、続く抗原再刺激のラウンドにより増加した。免疫原性ペプチドの2つに対するCTLの例は、図2に示される。記されるように、ペプチドでパルスされたRMA−B7標的細胞の溶菌は、インビトロ再刺激の各ラウンドで増加した。ペプチドでパルスされなかったRMA−B7細胞では溶菌は起こらなかった。したがって、このインビボの結果は、HLA−B7結合親和力の実際の測定と合わせると、9マーのhTRTペプチドの2つのグループを識別した。1つのグループ(p277、p342、p464、p1107およびp1123)は、インビトロでの高い結合性とインビボでの良好な免疫原性の両方を示した。他のグループ(p444およびp966)は、弱い結合性および弱い免疫原性を示した。
【0051】
正常ドナー由来のヒトPBMCのインビトロ免疫
選択されたペプチド候補の免疫原性、およびヒトPBMCにおける前駆体CD8 T細胞を増殖させるペプチドの能力をさらに評価するために下記の実験を行った。8人のHLA−B7正常ドナー由来のPBMCを小スケールのインビトロ免疫アッセイ(96ウェルプレートアッセイ)でスクリーニングし、それぞれ個々のペプチドに対する応答レベルを測定した。このスクリーニング工程の累積データは、表IIIに示される。示されるように、これらのペプチドに対する応答は、8人のドナーで変化していた。全体として、2個のペプチド(p277およびp1123)は、被験体の大部分において強い応答を生じさせた。3個のペプチド(p342、p464およびp1107)は、強い応答を誘導したが、僅かな例においてだけである。顕著には、p444もまた、HLA−B7 Tgマウスでは、インビボにおいて弱い免疫原性であり、このマイクロCTLアッセイにおいて弱い免疫原性を示した。p966に対する応答は、HLA−B7 Tgマウスにおいて度重なる負の結果のために試験されなかった。したがって、このインビトロアッセイの結果は、HLA−B7 Tgマウスではインビボにおいて同定されたペプチドを越える免疫原性ペプチドの範囲を狭めた。このタイプの分析の代表的な結果は図3に示され、12ウェルの各々においてCTLの誘導およびそれらの特異性を示す。示されるように、ペプチド当たりの正のウェル数、並びにそれ自身がペプチドごとに変化した溶菌率においてかなりの変動がある。各ペプチドに対する応答におけるこのバリエーションは、ペプチドの固有の特徴(例えば、その親和力)であるか、または特に、使用したアッセイのフォーマットを考慮して、ドナーでのそのペプチドに対するCD8 T細胞前駆体の頻度のバリエーションのいずれかに関連し得る。
【0052】
表III.HLA−B7制限hTRTペプチドを用いた正常ドナーのPBMCの免疫後のインビトロでのCTL応答
【0053】
【表3】

HLA−B7の正常な血液ドナー由来のPBMCは、96ウェルプレートアッセイにおいて候補ペプチドでパルスされ(材料および方法に記載される)、10〜11日にペプチドでパルスされたT2−B7の溶菌について試験した。ミクロ51Cr放出アッセイは、材料および方法に記載されるように行った。応答者は、>50%特異的CTL溶菌であると考えられた。CTLアッセイは、約10:1のE:T比で行った。ND=試験していない。
【0054】
インビボでのプロセッシング
次に、本発明者らは、種々の候補ペプチドの中でどれがプロセッシングを受け、全長hTRTから提示されるのかを確かめた。この目的を達成するために、本発明者らは、hTRTプラスミドDNAでHLA−B7 Tgマウスを免疫した。マウスを24日に屠殺し、脾細胞は、下記のペプチド:p277、p342、p444、p464、p1107およびp1123のそれぞれを用いてインビトロで再刺激された。表IVに示されるように、全部ではないがいくつかのペプチドは、インビボでプロセッシングされ、提示された。3個のペプチド(p277、p1107およびp1123)は、他のペプチドよりも大きなCTL応答を生じさせ、APCの表面に提示されると、優先的にプロセッシングされ、および/またはより良好な免疫原性となることを意味する。残りの3つのペプチド(p342、p444、p464)は、あるとしても僅かな免疫原性であった。この分析に基づいて、最初の7個のペプチドのうち3個だけがインビボでプロセッシングされ、効率的に提示されたようである。興味深いことに、本発明者らは、3個の最も免疫原性であるペプチドのうち、1個(p277)だけがPAProCによって予測されたが、他の2個(p1107およびp1123)は提示されなかったことを見出した(表I)。したがって、PAProCアルゴリズムを用いた選択は、それ自体では、インビボで開裂され、免疫原性となるhTRTペプチドを予測することはできなかった。
【0055】
表IV.HLA−B7 TgマウスにおけるhTRTペプチドのインビボでのプロセッシングおよび免疫原性
【0056】
【表4】

HLA−B7 Tgマウスは、CMVプロモータ下の全長hTRTをコードするpDNAで免疫された。51Cr放出アッセイは、それぞれのペプチドを用いたインビトロでの再刺激の6日後に行った。>10%の特異的溶菌が観察された場合に、マウスは応答個体であると考えられた。試験は、RMA−B7標的細胞を用いて、60:1のE:T比で二重で行った。
【0057】
スーパータイプ分析
HLA分子は、ヒト個体群の全体をカバーするために用いることができるペプチドの同定に対して問題を提起するように非常に多形である。しかしながら、HLA対立遺伝子は、スーパータイプと称される相対的に少数のグループに一まとめにすることができる(21)。HLA−B7スーパータイプには、10個の対立遺伝子が含まれる(22)。ここで、本発明者らは、HLA−B7スーパータイプの10個のメンバーのうち5個(B*3501、B*5101、B*5301、B*5401)およびB*0801と結合する選択されたhTRTペプチドの能力について該ペプチドを試験することに決めた。B*0801対立遺伝子は、B*0702と結合特性を共通にするが、HLA−B7スーパータイプの正式な部分ではない。この分析は、スーパータイプ結合に基づく推定のHLA−B7免疫原の選択をさらに狭めるという目的を有していた(表V)。1個のペプチド(p1123)だけは、試験された全ての対立遺伝子に対して測定可能な親和力を有した。別のペプチド(p1107)は、5つの対立遺伝子のうち3つに高親和力で結合した。2つの追加のペプチド(p277およびp342)は、中間的な親和力で4つの対立遺伝子に結合した。残りのペプチド(p444、p464およびp966)は、ほとんどHLA−B7スーパータイプ結合を示さなかった。したがって、インビボにおける免疫原性およびプロセッシングに関して上述したインビトロおよびインビボのスクリーニングプロセスを通じて保持されたペプチドは、HLA−B7スーパータイプ結合物として最高にランクされるようである。これは、スーパータイプ分析が、選択プロセスを精錬する極めて重要な工程であることを示す。
【0058】
表V.HLA−B7スーパータイプ結合アッセイ
【0059】
【表5】

ダッシュは、IC50>50000nMを示す。
【0060】
p1123に対するヒトCTLの特徴付け
免疫原性全体に対して最高の特徴を有するペプチド(p1123)に対する応答をより良く特徴付けるために、2人のHLA−B7正常な血液ドナーおよび1人の癌患者由来のPBMCを用いて、新たなインビトロ免疫実験を行った。これらの実験は、従来のインビトロ免疫アッセイを用いて行った(12)。インビトロでの再刺激の繰り返しのラウンド後、p1123でパルスしたT2−B7標的細胞を特異的に死滅される高効率なCTLを誘導した(図4A)。これらのCTLは、CD3/CD8二重陽性のT細胞(80%)に示した(図4B)。したがって、p1123は、CD8 T細胞前駆体を増殖させ、CTLに成長した。同様のアプローチは、前立腺癌の患者由来のPBMCを用いて行った。また、繰り返しの再刺激後、本発明者らは、p1123でパルスしたT2−B7標的細胞を死滅させたCTLを増殖させることができた(図4C)。両方の正常な血液ドナーに観察された誘導の効率を比較すると、癌患者において誘導されたCTLは効果が小さかった。活性は、FACS分析によって示されるように、CD3/CD8リンパ球の二重陽性T細胞(75%)によって媒介されるようであった。総合してみると、これらのデータは、p1123に対するCD8 T細胞前駆体は、正常なCD8 T細胞レパートリーに存在し、癌発生後に存続することを確認した。
【0061】
最後に、p1123に対するCTLが、抗原プロセッシングタンパク質と関連したトランスポーター(TAP)のコンピテント/hTRT陽性細胞を溶菌させることができた。この目的を達成するために、本発明者らは、hTRTに対して非常に陽性である(未発表データ)JY(HLA−A2/B7EBV形質転換Bリンパ芽球様ヒト細胞株)を用いた。また、p1123でパルスされたT2−B7標的細胞を効率的に死滅させた正常なドナー由来のCTLは、いかなるペプチドパルスもない場合に、JY細胞を死滅させ(図5)、これは、p1123が、内因性のhTRTから自然にプロセッシングを受け、HLA−B7/p1123複合体が、ペプチド免疫によって誘導されたCTLにより認識されるように細胞表面で提示されることを示唆している。
【0062】
mCTL菌株はヒト細胞を認識する
ヒト細胞におけるp1123の内因性プロセッシングおよび提示をさらに特徴付けるために、本発明者らは、ペプチド(p1123)でパルスされたヒト標的細胞(T2−B7)に対する高い溶菌活性を有する、p1123に特異的なmCTL菌株を用いた(図8A)。2つのHLA−B7+ヒト・リンパ芽球様細胞であるT1−B7およびBCl−B7を用いた。p1123でパルスされたTAP欠損T2−B7細胞は、mCTLによる溶菌に非常に感受性であるが、パルスされていないTAPコンピテントhTRT+HLA−B7+EBV形質転換Bリンパ芽球様ヒト細胞株であるT1−B7およびBCl−B7は感受性ではなかった。これは、マウスCD8コレセプター分子とヒトMHCとの低親和性相互作用が、ペプチドでパルスされたT2−B7細胞上の豊富なMHC−ペプチド複合体によって補填され得ることを示す。
【0063】
代替のアプローチとして、本発明者らは、T1−B7およびBCl−B7細胞の存在下で、p1123に特異的なmCTL菌株における細胞内合成のIFN−γを試験し、p1123の特異的な認識は、IFN−ガンマ合成を生じさせると判断した。これは、細胞内染色を測定することによって評価された。図8Bに示されるように、T1−B7およびBCl−B7リンパ芽球様細胞との一晩の接触により、CD8/IFN−ガンマの二重陽性細胞における増加を生じさせた。これは、p1123でパルスされた対照のT2−B7細胞(正の対照)とともにインキュベートされたCD8/IFN−ガンマの二重陽性CTLの割合と相違してほんの僅かであった。したがって、これは、ヒト細胞においては、内因性プロセッシングおよびhTRT p1123の提示を確証する。
【0064】
上記明細書に言及された全ての刊行物および特許は、参照により本明細書中に援用される。本発明の記載された方法および組成物の様々な修飾およびバリエーションは、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明確となる。本発明は特定の好ましい態様に関連して記載されているが、主張される本発明は、このような特定の態様に過度に制限されるべきでないことは理解しなければならない。実際に、当業者に自明である、本発明を実施するための記載された形態の種々の修飾は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【0069】
【表10】

【0070】
【表11】

【0071】
【数1】

【0072】
【数2】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1.HLA−B7 Tgマウスにおけるp277、p342、p444、p464、p966、p1107およびp1123に対するインビボでのCTL応答。HLA−B7 Tgマウスは、IFAに含まれる100マイクログラムの単一のhTRTペプチド、および120マイクログラムのHBVヘルパーペプチドを用いてワクチン接種された。免疫してから10日後、ペプチドおよび新鮮な放射線照射した同系のAPCを用いてインビトロで脾臓リンパ球を再刺激した。再刺激は週1回ベースで行なった。標準的な4時間の51Cr放出アッセイは、標的として同種のhTRTペプチドでパルスされ、E:T比が25:1であるRMA−B7細胞を用いて、インビトロでの再刺激後5日で行なった。結果は、応答したマウスのみの平均した特異的溶菌±標準偏差として表され、その数は各パネルに示されている。試験は、二重で行った。
【図2】図2.p277およびp1123を用いた免疫によってインビボで誘導したCTL応答の例。HLA−B7 Tgで免疫したマウスの脾臓リンパ球は、週1回ベースで、同種のhTRTペプチドを用いて、インビトロで再刺激した。標準的な4時間の51Cr放出アッセイは、指示されたE:T比で、標的としてペプチドでパルスされたかまたはパルスされていないRMA−B7細胞を用いて行なった。CTLアッセイは、インビトロでの再刺激の1ラウンド(aとb)、2ラウンド(cとd)、および3ラウンド(eとf)後に行なった。
【図3】図3.正常ドナーのPBMCを用いた小スケールのインビトロでの免疫アッセイにおけるCTL誘導の例。HLA−BヒトPBMCは、96ウェルプレートアッセイでインビトロにおいて免疫し、10〜11日にペプチドでパルスされたT2−B7の特異的溶菌について試験した。ミクロCTLアッセイは、材料および方法に記載されているように行なった。p444を有する培養物以外の全ての培養物は、同じドナー由来のPBMCとともに設置された。
【図4】図4.インビトロでの免疫によって生じたヒトCTLの特徴付け。2人のHLA−B7正常ドナーのPBMCの1つ、および前立腺癌の被験体の例。インビトロでの免疫は、従来の方法(12)を用いて行なった。(A)正常ドナーのPBMCに生じたCTLによるp1123でパルスしたT2−B7細胞の特異的溶菌。CTLは、相同ペプチドを用いた5サイクルのインビトロでの再刺激後に試験した。(B)パネルAに示されているCTLの抗CD3および抗CD8モノクローナル抗体を用いた表面の表現型分析。二重陽性細胞の割合を示す。(C)前立腺癌の被験体のPBMCに生じたCTLによるp1123でパルスしたT2−B7細胞の特異的溶菌。CTLは、相同ペプチドを用いた7サイクルのインビトロでの再刺激後に試験した。(D)相同ペプチドを用いた5サイクルのインビトロでの再刺激後に、パネルCに示される同じ被験体由来のCTLの抗CD3および抗CD8モノクローナル抗体を用いた表面の表現型分析。AおよびBに示される実験は、様々な時間で調べた2人の正常なドナーからの一連の類似データの代表例である。
【図5】図5.p1123は、JYリンパ芽球様細胞において内因的にプロセッシングを受ける。HLA−B7ヒト正常ドナーのPBMC由来のCTLは、p1123(A)、またはJY細胞(B)でパルスしたT2−B7細胞の4時間の51Cr放出アッセイで試験された。示されたE:T比で二重に試験を行った。CTLは、相同ペプチドを用いた4サイクルのインビトロでの再刺激後に用いられた。試験は二重でなされた。
【図6−1】図6.hTRTの核酸配列(配列番号1)を示す。
【図6−2】図6.hTRTの核酸配列(配列番号1)を示す。
【図7】図7.hTRTのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図8】図8.p1123に特異的なマウスCTL(mCTL)は、hTRT+ヒト標的細胞(T1−B7およびBC1−B7)を認識する。mCTL株は、p1123で免疫したHLA−B7 Tgマウスから増殖させ、インビトロで5回再刺激した。(A)4時間の51Cr放出アッセイは、p1123でパルスしたまたはパルスしていない標的細胞としてヒトT2−B7を用いてmCTLで行なった。(B)T1−B7、BC1−B7リンパ芽球様細胞、並びにp1123(陽性対照)およびp464(陰性対照)でパルスしたT2−B7とともに一晩のインキュベートによるmCTLの細胞内IFN−ガンマ染色。試験は、2回繰り返し、同じような結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するための組成物であって、長さにして9〜12個のアミノ酸残基である少なくとも1つのHLA−B7制限ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(TRT)ペプチドを含む組成物。
【請求項2】
前記HLA−B7が、HLA−B*0702、HLA−B*3501、HLA−B*3502、HLA−B*3503、HLA−B*5101、HLA−B*5301、HLA−B*5401、HLA−B*0703、HLA−B*0704、HLA−B*0705、HLA−B*1508、HLA−B*5501、HLA−B*5502、HLA−B*5601、HLA−B*5602、HLA−B*6701、HLA−B*7801、およびHLA−B*0801からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記HLA−B7がHLA−B*0702である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのTRTペプチドが、配列番号3(p277)、配列番号4(p342)、配列番号6(p464)、配列番号8(p1107)、および配列番号9(p1123)からなる群から選択される配列からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのTRTペプチドが、配列番号9(p1123)として記載される配列からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ヘルパーペプチドをさらに含み、前記TRTペプチドが該ヘルパーペプチドに結合しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
アジュバントをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
生理学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記担体が哺乳動物細胞である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記TRTペプチドが、HLA−B7への結合を強めるための修飾を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記TRTペプチドが合成ペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ヒトTRTおよびHLA−B7を発現する標的細胞に対してCTL応答を誘導するかまたは高める方法であって、HLA−B7を発現している白血球を回収し;HLA−B7制限ヒトTRTペプチドを含む請求項1に記載の組成物で該白血球をパルスし;ヒトTRTおよびHLA−B7を発現している標的細胞と該パルスされた白血球とを接触させることを含む方法。
【請求項13】
前記接触がインビトロで達成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記接触がインビボで達成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
HLAクラスI制限ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(TRT)ペプチドをスクリーニングする方法であって、
a)アルゴリズムを用いて、カノニカル(canonical)HLAクラスIモチーフに対応し、少なくとも9個のアミノ酸残基を含む全長TRTタンパク質配列中のヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(TRT)ペプチド配列を同定し;
b)参照ペプチドと比較して、HLAクラスI結合または安定化を測定することによって、該TRTペプチド配列のHLAクラスI結合を試験し;
c)HLAクラスI陽性の被験体のTRTペプチド反応性の細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte:CTL)の誘導を測定することによって、該TRTペプチド配列の免疫原性を評価する
ことを含む方法。
【請求項16】
前記HLAクラスI陽性の被験体が、前記工程c)の評価前に、ヒトTRTワクチンで免疫される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒトTRTワクチンがヒトTRT DNAを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒトTRTワクチンが、ヒトTRTを発現するように操作された組換え微生物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記HLAクラスIがHLA−B7である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記HLAクラスI結合が、HLA−B*0702結合、並びにHLA−B*3501、HLA−B*3502、HLA−B*3503、HLA−B*5101、HLA−B*5301、HLA−B*5401、HLA−B*0703、HLA−B*0704、HLA−B*0705、HLA−B*1508、HLA−B*5501、HLA−B*5502、HLA−B*5601、HLA−B*5602、HLA−B*6701、HLA−B*7801、およびHLA−B*0801結合の1以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記HLAクラスIが、HLA−A3、HLA−A24、HLA−B44、HLA−A1、およびHLA−B27からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記HLAクラスI陽性の被験体がトランスジェニックマウスである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するための組成物であって、長さにして9〜12個のアミノ酸残基である少なくとも1つのHLAクラスI制限ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(hTRT)ペプチドを含み、該hTRTペプチドは、1以上のHLA−A3制限hTRTペプチド、HLA−A24制限hTRTペプチド、HLA−B44制限hTRTペプチド、HLA−A1制限hTRTペプチド、およびHLA−B27制限hTRTを含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−523817(P2009−523817A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551444(P2008−551444)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/001587
【国際公開番号】WO2007/094924
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】