説明

ヒトプロテインチロシンホスファターゼ阻害剤および使用法

本開示は、ヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤として有効な化合物に関し、それにより血管新生を調節することに関する。本開示は更に、1種又は複数のヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤を含む組成物、及び血管新生を調節する方法に関する。本開示の組成物によって治療され得る疾患としては、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、心筋梗塞、卒中、高血圧症、糖尿病及び虚血性神経障害、創傷治癒及び皮膚の老化、血管炎症及びアテローム性動脈硬化症、血管漏出症候群、骨増殖、維持及び修復などが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤として有効であり、それにより血管新生を調節する化合物に関する。本開示は更に、1種又は複数のヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤を含む組成物、及び血管新生を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存血管系からの新生血管の出芽である血管新生は、広範囲の生理学的及び病理学的過程において決定的役割を演じている(Nguyen,L.L.ら、Int.Rev.Cytol.、204、1〜48頁、2001年)。血管新生は、血管を裏打ちしている内皮細胞と、それらの周辺環境との間の伝達により媒介される複雑な過程である。血管新生の初期段階では、組織細胞又は腫瘍細胞が、低酸素症等の環境刺激に応答して血管新生促進増殖因子を産生及び分泌する。このような因子は、隣接する内皮細胞に拡散し、受容体を刺激して、周囲の細胞外マトリックスを分解するプロテアーゼの産生及び分泌をもたらす。活性化内皮細胞は、これらの増殖因子源に向かって、周囲組織に移動し、そこで増殖し始める(Bussolino,F.、Trends Biochem.Sci.、22、251〜256頁、1997年)。次いで、内皮細胞は、増殖を停止し、管状構造に分化する。これは、安定な成熟血管の形成における第一段階である。その後、周皮細胞及び平滑筋細胞等の外皮細胞は、血管の成熟化のための更なる段階で新たに形成された血管に補充される。
【0003】
血管新生は、自然発生の血管新生促進因子と抗血管新生因子とのバランスによって調節される。血管内皮増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、及びアンジオポエチンは、多くの潜在的な血管新生促進増殖因子の内のいくつかを示している。これらのリガンドは、内皮細胞の表面上で各々の受容体チロシンキナーゼに結合し、細胞の移動及び増殖を促進するシグナルを伝達する。多くの調節因子が特定されてきた一方で、この過程の分子機構は、いまだに十分に理解されていない。
【0004】
持続的な血管新生を調節していないか、又は不適切に調節していることに推進される病状が数多くある。このような病状では、血管新生を調節していないか、又は不適切に調節していることにより、特定の疾患を引き起こし得るか、又は既存の病的状態を悪化させ得る。例えば、眼球の血管新生は、失明の最も一般的な原因に関係があるとされてきたが、約20種の眼疾患の病理の元になっている。関節炎等のある種の以前から存在する病状では、新たに形成された毛細血管が関節に侵入し、軟骨を破壊する。糖尿病では、網膜に形成された新しい毛細血管が硝子体液に侵入し、出血及び失明を引き起こす。また、固形腫瘍の増殖及び転移はいずれも血管新生依存性である(Folkmanら、「Tumor Angiogenesis」、10章、206〜32頁、The Molecular Basis of Cancer、Mendelsohnら、編集、W.B.Saunders、1995年)。直径2mm超に拡大する腫瘍は、自らの血液供給を確保しなければならず、新しい毛細血管の増殖を誘発することによって血液供給を確保することが示された。これらの新しい血管が腫瘍内に埋め込まれると、該血管は、腫瘍の増殖に不可欠な栄養素及び増殖因子、並びに腫瘍細胞が循環系に入り、肝臓、肺又は骨等の遠く離れた部位へ転移するための手段をもたらす(Weidner、New Eng.J.Med.、324、1、1〜8頁、1991年)。天然の血管新生阻害剤は、薬物として担癌動物で使用した場合、小さな腫瘍の増殖を予防できる(非特許文献1)。いくつかの手順では、このような阻害剤の適用は、治療を中止した後でも腫瘍の退縮及び休眠をもたらす(非特許文献2)。更に、血管新生阻害剤をある種の腫瘍に供給すると、他の治療計画に対するそれらの応答を増強できる(非特許文献3)。
【0005】
多くの病状は、持続的な血管新生を調節していないか、又は不適切に調節していることにより推進されるが、いくつかの病状は、血管新生を増加させることにより治療できよう。組織の増殖及び修復は、細胞増殖及び血管新生が起こる生物学的事象である。このため、創傷修復の重要な態様は、血管新生により損傷組織を血管再生することである。
【0006】
慢性的な非治癒創傷は、老年人口においては長期罹患の主な原因である。これは、重度の非治癒皮膚潰瘍を発症する寝たきり患者又は糖尿病患者に特に当てはまる。このような場合の多くにおいて、治癒の遅延は、持続的圧力又は血管閉塞による血液供給不足の結果である。小動脈のアテローム性動脈硬化症又は静脈うっ滞による毛細血管の循環不良は、損傷組織を修復できない一因となる。このような組織は、病原体を効果的に除去するために血管新生の十分な組織を必要とする、生体の先天的防御機構の攻撃を受けずに増殖する微生物に感染している場合が多い。そのため、ほとんどの治療的介入は、虚血組織への血流を回復し、それにより栄養素及び免疫因子が創傷部位に到達できるようにすることを中心としている。
【0007】
大血管におけるアテローム性動脈硬化症の病巣は、組織虚血を引き起こす恐れがあるが、これは罹患組織に対して血管の増殖を調節することにより改善できよう。例えば、大動脈におけるアテローム性動脈硬化症の病巣は、狭心症及び心筋梗塞を引き起こす恐れがあるが、これらは、側副動脈の増殖を刺激することにより血流を回復できれば予防することができよう。同様に、下肢に供給する大動脈におけるアテローム性動脈硬化症の病巣は、可動性を制限し、場合によっては切断を余儀なくさせる、骨格筋での虚血を引き起こす恐れがあるが、これも血管新生療法で血流を改善することにより予防し得る。
【0008】
糖尿病及び高血圧等の他の疾患は、細動脈及び毛細血管等の微小血管の数及び密度の減少によって特徴付けられる。これらの微小血管は、酸素及び栄養素の送達に重要である。これらの血管の数及び密度の減少は、間欠性跛行、虚血性潰瘍、加速性高血圧、及び腎不全等を含めた、高血圧及び糖尿病による有害な結果の一因となる。これらの一般的な疾患、及びビュルガー病等の他の多くのあまり一般的でない疾患は、血管新生療法を用いて微小血管の数及び密度を増加させることによって改善できよう。
【0009】
血管新生を調節するための1つの手段は、ヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤で患者を治療することであると提案されてきた(Kruegarら、EMBO J.、9、1990年)。従って、この要求に応えるために、本開示の化合物を調製した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】O’Reillyら、Cell(1994)79,315−28
【非特許文献2】O’Reillyら、Cell(1997)88,277−85
【非特許文献3】Teischerら、Int.J.Cancer(1994)51,920−25
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
要旨
本開示の化合物は、ヒトにおける血管新生を調節できる新しい部類の化合物である。
【0012】
本開示は更に、医薬組成物及びその医薬として許容できる塩、並びに/又は以下のものを含む、医薬組成物に関する:
a)有効量の本開示による1種又は複数の化合物、及び
b)賦形剤。
【0013】
本開示は、血管新生を制御し、それにより血管新生によって影響を受ける疾患を治療する方法に関し、前記方法は、有効量の本開示による化合物をヒトに投与することを含む。
【0014】
これらの及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読むことにより当業者には明らかになるであろう。本明細書において、パーセンテージ、比、及び割合は全て、別段の指示がない限り、重量によるものである。温度は全て、別段の指示がない限り、摂氏(℃)である。引用した文献は全て、その関連部分において参照により本明細書に組み込まれており、任意の文献の引用が、本開示に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
開示の詳細な説明
本明細書及び上記の特許請求の範囲では、多くの用語について言及するが、それらは以下の意味を有するものとして定義する。
【0016】
「医薬として許容できる」とは、生物学的に見て、又は他の点から見て望ましくなくはない物質を意味する。即ち、該物質は、臨床的に許容されない生物学的効果を引き起こすことなく、又は含有される医薬組成物の他の成分のいずれもと有害に相互作用することなく、活性な当該化合物と共に患者に投与され得る。
【0017】
本明細書の記述及び特許請求の範囲全体で、「含む(comprise)」という用語、並びに「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」等の該用語の変化形は、「含むが限定されないこと」を意味し、例えば他の添加剤、成分、整数、又は工程を排除する意図はない。
【0018】
本記述及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形(「a」、「an」、及び「the」)は、文脈で別段の明確な指示がない限り、複数の言及も含む。従って、例えば「1つの組成物(a composition)」の言及は、2つ又は複数の同種の組成物の混合物も含む。
【0019】
「任意選択の(optional)」及び「場合により(optionally)」とは、後述される事象又は状況が起こる場合も、起こらない場合もあり、その記述は、該事象又は状況が起こる場合の例、及びそれが起こらない場合の例を含むことを意味する。
【0020】
範囲は、本明細書では、「約」を付した1つの特定の値から、及び/又は「約」を付した別の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の値から、及び/又は別の特定の値までを含む。同様に、値が前置の「約」の使用によって近似値として表現される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。更に、範囲の各々の終点は、別の終点に関連して、また別の終点とは無関係に重要であることが理解されるであろう。本明細書では多くの値が開示されており、各値は、その値自体に加えて「約」を付した特定の値としても本明細書に開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。また、当業者であれば適切に理解されようが、1つの値が開示されている場合、「その値と同等未満」、「その値と同等以上」、及び値の間の可能な範囲も開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「10と同等未満」並びに「10と同等以上」も開示されている。また、適用データは終始、多くの異なる書式で提供されており、このデータは、終点及び始点、並びに該データ点の任意の組合せの範囲を示していることも理解される。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点「15」が開示されている場合、10及び15より大、それらと同等以上、それら未満、それらと同等未満、及びそれらと同等、並びに10〜15の間が開示されていると見なされることが理解される。2つの特定の単位の間の各単位も開示されていることも理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13、及び14も開示されている。
【0021】
本明細書に記載の「有機単位」という用語は、1個若しくは複数の炭素原子を含み、化合物若しくはその医薬として許容できる塩の内の1つの1部を形成する基又は部分を指す。例えば、本明細書の他の場所に言及されている置換単位の多くは、有機単位である。本明細書に開示されている化合物及び/又は塩での有機単位の存在との関連において有効に機能するために、有機単位は、所望の標的酵素への結合性、溶解性、生体吸収性をもたらすように、限られた大きさ及び/又は分子量の可変範囲をしばしば有するはずである。例えば、有機単位は、例えば1〜26個の炭素原子、1〜18個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有することができる。有機単位は、有機単位の炭素原子の少なくともいくつかに結合する水素を有する場合が多く、酸素、窒素、硫黄等の置換有機化合物中で、又はハロゲン、リン等の無機原子中で見いだされる普通のヘテロ原子を場合により含んでよい。無機原子を含まない有機基の一例は、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル基である。いくつかの実施形態では、有機基は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、リン等を含め、そこに又はその中に結合する無機ヘテロ原子を1〜10個含有し得る。有機基の例としては、それだけに限らないが、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキシアミド、置換アルキルカルボキシアミド、ジアルキルカルボキシアミド、置換ジアルキルカルボキシアミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、複素環、又は置換複素環基が挙げられ、該用語は、本明細書の他の部分に定義されている。ヘテロ原子を含む有機基のいくつかの非限定的例としては、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、アセトキシ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
【0022】
置換及び非置換の直鎖、分枝、又は環状のアルキル単位としては、メチル(C)、エチル(C)、n−プロピル(C)、iso−プロピル(C)、シクロプロピル(C)、n−ブチル(C)、sec−ブチル(C)、iso−ブチル(C)、tert−ブチル(C)、シクロブチル(C)、シクロペンチル(C)、シクロヘキシル(C)等の非限定的な例が挙げられ、置換の直鎖、分枝、又は環状のアルキルの非限定的な例としては、ヒドロキシメチル(C)、クロロメチル(C)、トリフルオロメチル(C)、アミノメチル(C)、1−クロロエチル(C)、2−ヒドロキシエチル(C)、1,2−ジフルオロエチル(C)、2,2,2−トリフルオロエチル(C)、3−カルボキシプロピル(C)、2,3−ジヒドロキシシクロブチル(C)等が挙げられる。
【0023】
置換及び非置換の直鎖、分枝、又は環状のアルケニルとしては、エテニル(C)、3−プロペニル(C)、1−プロペニル(また、2−メチルエテニル)(C)、イソプロペニル(また、2−メチルエテン−2−イル)(C)、ブテン−4−イル(C)等が挙げられ、置換の直鎖又は分枝のアルケニルの非限定的な例としては、2−クロロエテニル(また、2−クロロビニル)(C)、4−ヒドロキシブテン−1−イル(C)、7−ヒドロキシ−7−メチルオクト−4−エン−2−イル(C)、7−ヒドロキシ−7−メチルオクト−3,5−ジエン−2−イル(C)等が挙げられる。
【0024】
置換及び非置換の直鎖又は分枝のアルキニルとしては、エチニル(C)、プロプ−2−イニル(また、プロパルギル)(C)、プロピン−1−イル(C)、及び2−メチル−ヘキス−4−イン−1−イル(C)が挙げられ、置換の直鎖又は分枝のアルキニルの非限定的な例としては、5−ヒドロキシ−5−メチルヘキス−3−イニル(C)、6−ヒドロキシ−6−メチルヘプト−3−イン−2−イル(C)、5−ヒドロキシ−5−エチルヘプト−3−イニル(C)等が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用する置換及び非置換の「アルコキシ」とは、一般式−OR100(式中、R100は、例えばメトキシ、メトキシメチル、メトキシメチル等の、本明細書に上記定義したアルキル、アルキレニル、又はアルキニルの単位である)を有する単位を示す。
【0026】
本明細書で使用する置換及び非置換の「ハロアルキル」とは、例えばトリフルオロメチル、1,2−ジクロロエチル、及び3,3,3−トリフルオロプロピル等、1個又は複数のハロゲン原子で置換されている水素原子を有するアルキル単位を示す。
【0027】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、共役及び芳香族の6員環を有する少なくとも1個のベンゼン環を含む環状有機単位を示し、その非限定的な例としては、フェニル(C)、ナフチレン−1−イル(C10)、ナフチレン−2−イル(C10)が挙げられる。アリール環は、他の有機基又は無機基で置換されている1個若しくは複数の水素原子を有することができる。置換アリール環の非限定的な例としては、4−フルオロフェニル(C)、2−ヒドロキシフェニル(C)、3−メチルフェニル(C)、2−アミノ−4−フルオロフェニル(C)、2−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル(C)、2−シアノフェニル(C)、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル(C)、3−メトキシフェニル(C)、8−ヒドロキシナフチレン−2−イル(C10)、4,5−ジメトキシナフチレン−1−イル(C10)、及び6−シアノナフチレン−1−イル(C10)が挙げられる。
【0028】
「ヘテロアリール」という用語は、環原子の少なくとも1個が窒素、酸素、又は硫黄から選択されるヘテロ原子である、5員若しくは6員の共役環及び芳香族環を含む有機単位を示す。ヘテロアリール環は、単環、例えば、少なくとも1個の環原子が、窒素、酸素、又は硫黄に限定されないヘテロ原子である、5個若しくは6個の原子を有する環、例えばピリジン環、フラン環、又はチオフラン環等を含んでいてもよい。「ヘテロアリール」は、環の少なくとも1個が芳香族環であり、かつ芳香族環の少なくとも1個の原子が窒素、酸素、又は硫黄を含むヘテロ原子である、多環及び芳香族複素環の縮合環系でもよい。
【0029】
以下は、本開示によるヘテロアリール環の非限定的な例である。
【0030】
【化1】

「複素環」という用語は、環原子の少なくとも1個が、窒素、酸素、又は硫黄に限定されないヘテロ原子である、3〜10個の原子を有する環系を示す。該環は、単環、縮合環、又は二環であってよい。複素環の非限定的な例としては、以下ものが挙げられる。
【0031】
【化2】

前記のヘテロアリール環又は複素環は全て、本明細書で更に記載されているように、水素の代わりに1個又は複数の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0032】
本開示の記述全体で、「チオフェン−2−イル及びチオフェン−3−イル」のつづりを有する用語は、次の各式を有するヘテロアリール単位を示すために使用される。
【0033】
【化3】

本開示の化合物を命名する際に、これらの部分の化学名は、各々「チオフェン−2−イル及びチオフェン−3−イル」と通常つづられる。本明細書でどの環を指しているのか当業者に明らかにするためだけに、本明細書において「チオフェン−2−イル及びチオフェン−3−イル」という用語は、本開示の化合物を構成する単位又は部分としてこれらの環を示す場合に使用される。
【0034】
以下は、水素原子を置換できる単位の非限定的な例である:
i)C〜C12の直鎖、分枝、若しくは環状のアルキル、アルケニル、及びアルキニル、例えば、メチル(C)、エチル(C)、エテニル(C)、エチニル(C)、n−プロピル(C)、iso−プロピル(C)、シクロプロピル(C)、3−プロペニル(C)、1−プロペニル(また、2−メチルエテニル)(C)、イソプロペニル(また、2−メチルエテン−2−イル)(C)、プロプ−2−イニル(また、プロパルギル)(C)、プロピン−1−イル(C)、n−ブチル(C)、sec−ブチル(C)、iso−ブチル(C)、tert−ブチル(C)、シクロブチル(C)、ブテン−4−イル(C)、シクロペンチル(C)、シクロヘキシル(C)、
ii)置換若しくは非置換のC若しくはC10のアリール、例えば、フェニル、ナフチル(本明細書ではナフチレン−1−イル(C10)又はナフチレン−2−イル(C10)とも称する)、
iii)本明細書で以下に記載されている、置換若しくは非置換のC〜Cの複素環、
iv)本明細書で以下に記載されている、置換若しくは非置換のC〜Cヘテロアリール環、
v)−(CR12a12bOR11、例えば、−OH、−CHOH、−OCH、−CHOCH、−OCHCH、−CHOCHCH、−OCHCHCH、及び−CHOCHCHCH
vi)−(CR12a12bC(O)R11、例えば、−COCH、−CHCOCH、−OCHCH、−CHCOCHCH、−COCHCHCH、及び−CHCOCHCHCH
vii)−(CR12a12bC(O)OR11、例えば、−COCH、−CHCOCH、−COCHCH、−CHCOCHCH、−COCHCHCH、及び−CHCOCHCHCH
viii)−(CR12a12bC(O)N(R11、例えば、−CONH、−CHCONH、−CONHCH、−CHCONHCH、−CON(CH、及び−CHCON(CH
ix)−(CR12a12bN(R11、例えば、−NH、−CHNH、−NHCH、−N(CH、−NH(CHCH)、−CHNHCH、−CHN(CH、及び−CHNH(CHCH)、
x)ハロゲン、−F、−Cl、−Br、及び−I、
xi)−(CR12a12bCN、
xii)−(CR12a12bNO
xiii)−CH(式中、Xがハロゲン、jが0〜2、j+k=3である)、例えば、−CHF、−CHF、−CF、−CCl、又は−CBr
xiv)−(CR12a12bSR11、−SH、−CHSH、−SCH、−CHSCH、−SC、及び−CHSC
xv)−(CR12a12bSO11、−SOH、−CHSOH、−SOCH、−CHSOCH、−SO、及び−CHSO、並びに
xiii)−(CR12a12bSO11、例えば、−SOH、−CHSOH、−SOCH、−CHSOCH、−SO、及び−CHSO
(式中、R13は、各々独立に水素、置換若しくは非置換のC〜Cの直鎖、分枝、若しくは環状のアルキル、フェニル、ベンジルであり;又は2つのR13単位は、一緒になって3〜7個の原子を含む環を形成してもよく;R14a及びR14bは、各々独立に水素、又はC〜Cの直鎖若しくは分枝のアルキルであり;指数pは0〜4である)。
【0035】
本開示の目的のために、「化合物」、「類似体」、及び「物質の組成物」という用語は、全ての鏡像体、ジアステレオマー形態、塩等を含め、本明細書に記載のフェニルスルファミン酸を同等によく表し、「化合物」、「類似体」、及び「物質の組成物」という用語は、本明細書全体で互換的に用いられる。
【0036】
本開示は、いまだ満たされていない主な医学的必要性に対処するものであり、とりわけ、有効なヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤の組成物を提供し、それにより、血管新生が低下しているか、組織の血流が不足しているか、又は血流の増加が有益になると思われる疾患において、血管新生及び血管リモデリングを調節する手段を提供する。
【0037】
この及び他のいまだ満たされていない医学的必要性は、血管新生及び血管リモデリングを調節することができるため、ヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)の調節不足によって生じる疾患を治療するための手段となる、本開示のヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤により解決される。
【0038】
本明細書に開示の化合物は、全ての医薬として許容できる塩の形態、例えば両塩基性基の塩、とりわけアミン、並びに酸性基の塩、とりわけスルファミン酸及びカルボン酸を含む。以下は、塩基性基の塩を形成できるアニオンの非限定的な例である:塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等。以下は、酸性基の塩を形成できるカチオンの非限定的な例である:ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ビスマス等。
【0039】
R単位
R単位は、以下のものから選択される単位である:
i)水素、
ii)置換若しくは非置換のフェニル、及び
iii)置換若しくは非置換のヘテロアリール環。
【0040】
Rの一例は、Rが水素である化合物に関し、前記化合物は次の一般式を有する。
【0041】
【化4】

(式中、Zは、本明細書で以下に更に定義されている)。
【0042】
式(I)の化合物の別の例としては、Rがフェニル又は置換フェニルである化合物が挙げられ、前記化合物は次の一般式を有する。
【0043】
【化5】

(式中、R10は、1個若しくは複数の任意選択の水素の置換基を示している)。
【0044】
以下は、フェニル単位上で水素原子を置換できるR10単位の非限定的な例である:
i)C〜C12の直鎖、分枝、若しくは環状のアルキル、アルケニル、及びアルキニル、例えば、メチル(C)、エチル(C)、エテニル(C)、エチニル(C)、n−プロピル(C)、iso−プロピル(C)、シクロプロピル(C)、3−プロペニル(C)、1−プロペニル(また、2−メチルエテニル)(C)、イソプロペニル(また、2−メチルエテン−2−イル)(C)、プロプ−2−イニル(また、プロパルギル)(C)、プロピン−1−イル(C)、n−ブチル(C)、sec−ブチル(C)、iso−ブチル(C)、tert−ブチル(C)、シクロブチル(C)、ブテン−4−イル(C)、シクロペンチル(C)、シクロヘキシル(C)、
ii)置換若しくは非置換のC若しくはC10のアリール、例えば、フェニル、ナフチル(本明細書ではナフチレン−1−イル(C10)又はナフチレン−2−イル(C10)とも称する)、
iii)本明細書で以下に記載されている、置換若しくは非置換のC〜Cの複素環、
iv)本明細書で以下に記載されている、置換若しくは非置換のC〜Cヘテロアリール環、
v)−(CR12a12bOR11、例えば、−OH、−CHOH、−OCH、−CHOCH、−OCHCH、−CHOCHCH、−OCHCHCH、及び−CHOCHCHCH
vi)−(CR12a12bC(O)R11、例えば、−COCH、−CHCOCH、−OCHCH、−CHCOCHCH、−COCHCHCH、及び−CHCOCHCHCH
vii)−(CR12a12bC(O)OR11、例えば、−COCH、−CHCOCH、−COCHCH、−CHCOCHCH、−COCHCHCH、及び−CHCOCHCHCH
viii)−(CR12a12bC(O)N(R11、例えば、−CONH、−CHCONH、−CONHCH、−CHCONHCH、−CON(CH、及び−CHCON(CH
ix)−(CR12a12bN(R11、例えば、−NH、−CHNH、−NHCH、−N(CH、−NH(CHCH)、−CHNHCH、−CHN(CH、及び−CHNH(CHCH)、
x)ハロゲン、−F、−Cl、−Br、及び−I、
xi)−(CR12a12bCN、
xii)−(CR12a12bNO
xiii)−CH(式中、Xがハロゲン、jが0〜2、j+k=3である)、例えば、−CHF、−CHF、−CF、−CCl、又は−CBr
xiv)−(CR12a12bSR11、−SH、−CHSH、−SCH、−CHSCH、−SC、及び−CHSC
xv)−(CR12a12bSO11、−SOH、−CHSOH、−SOCH、−CHSOCH、−SO、及び−CHSO、並びに
xiii)−(CR12a12bSO11、例えば、−SOH、−CHSOH、−SOCH、−CHSOCH、−SO、及び−CHSO
(式中、R13は、各々独立に水素、置換若しくは非置換のC〜Cの直鎖、分枝、若しくは環状のアルキル、フェニル、ベンジルであり;又は2つのR13単位は、一緒になって3〜7個の原子を含む環を形成してもよく;R14a及びR14bは、各々独立に水素、又はC〜Cの直鎖若しくは分枝のアルキルであり;指数pは0〜4である)。
【0045】
式(I)の化合物の別の例としては、Rが置換若しくは非置換のヘテロアリール環である化合物が挙げられる。本開示の目的のために、以下は、R単位として本開示の化合物に適したヘテロアリール環の非限定的な例である:1,2,3,4−テトラゾリル、[1,2,3]トリアゾリル、イミダゾリル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、[1,2,4]オキサジアゾリル、[1,3,4]オキサジアゾリル、フラニル、チオフェニル、イソチアゾリル、チアゾリル、[1,2,4]チアジアゾリル、及び[1,3,4]チアジアゾリル。
【0046】
R単位を含むヘテロアリール単位は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、シクロプロピルメチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、シクロプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、iso−ブトキシ、tert−ブトキシ、シクロプロポキシ、フルオロ、クロロ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、及びトリフルオロメチルから選択される、1個又は複数の単位で置換されていてもよい。
【0047】
式(I)の化合物の一例としては、R単位が次式を有する単位を含む化合物が挙げられる。
【0048】
【化6】

式(I)の化合物の別の例としては、R単位が次式を有する単位を含む化合物が挙げられる。
【0049】
【化7】

式(I)の化合物の更なる例としては、R単位が次式を有する単位を含む化合物が挙げられる。
【0050】
【化8】

Zは、次式を有する置換若しくは非置換の[1,3,4]チアジアゾール−2−イル単位である。
【0051】
【化9】

及び、Rは、広範な無機(水素、ヒドロキシル、アミノ、ハロゲン等)又は有機(アルキル、シクロアルキル、複素環、ヘテロアリール等)の置換単位から独立に選択され得る置換基であり、このような置換単位は、1〜12個、1〜10個、又は1〜6個の炭素原子を場合により有することができる。本発明の多くの態様において、Rは、以下:
i)水素、
ii)置換若しくは非置換のC〜Cの直鎖、分枝、若しくは環状のアルキル、
iii)置換若しくは非置換のC若しくはC10のアリール、
iv)−OR
v)−C(O)OR
vi)−COR、及び
vii)−NRC(O)OR
から選択され、Rは、水素、又は置換若しくは非置換のC〜Cの直鎖、分枝、若しくは環状のアルキルであり;Rは、C〜Cの直鎖若しくは分枝のアルキル、又はベンジルであり;Rは、C〜Cの直鎖、分枝、若しくは環状のアルキル、又はフェニルであり;Rは、水素又はメチルであり;Rは、C〜Cの直鎖若しくは分枝のアルキル、又はベンジルである。
【0052】
式(I)による化合物の一例としては、水素であるR単位が挙げられ、それにより次の一般式を有する化合物がもたらされる。
【0053】
【化10】

(式中、Rは本明細書で上記に定義されている)。
【0054】
式(I)による化合物の別の例としては、Rが、置換若しくは非置換のC〜Cの直鎖、分枝、若しくは環状のアルキルである化合物が挙げられ、その非限定的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、及びシクロプロピルメチルから選択されるR単位が挙げられる。
【0055】
式(I)による化合物の更なる例としては、Rが、置換若しくは非置換のC若しくはC10のアリール単位、即ち、フェニル、ナフチレン−1−イル、及びナフチレン−2−イルである化合物が挙げられる。この態様の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。フェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、3−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2−イソプロピルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、2−シアノフェニル、3−シアノフェニル、4−シアノフェニル、2−ニトロフェニル、3−ニトロフェニル、4−ニトロフェニル、2−アミノフェニル、2−(N−メチルアミノ)フェニル、2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、2−(N−エチルアミノ)フェニル、2−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、3−アミノフェニル、3−(N−メチルアミノ)フェニル、3−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、3−(N−エチルアミノ)フェニル、3−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、4−アミノフェニル、4−(N−メチルアミノ)フェニル、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、4−(N−エチルアミノ)フェニル、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、ナフチレン−1−イル、及びナフチレン−2−イル
式(I)による化合物の更に別の例としては、Rが式−NRC(O)OR[式中、Rが水素であり、Rがメチル(C)、エチル(C)、n−プロピル(C)、iso−プロピル(C)、及びシクロプロピル(C)から選択される]を有する化合物が挙げられる。
【0056】
本開示のZ単位は、結合単位Lを更に含むことができ、結合単位Lは、それが存在するとき、[1,3,4]チアジアゾール−2−イル単位とR単位とを結合する働きをする。指数xが0と同等であるとき、結合単位は存在しない。指数xが1と同等であるとき、結合単位は存在する。
【0057】
Lは、式−[C(R9a9b)]−(式中、R9a及びR9bが各々独立に水素、C〜Cの直鎖若しくは分枝のアルキル、又はフェニルであり、指数yが1〜4である)を有する結合単位である。
【0058】
L単位の一例としては、R9a及びR9bが各々水素であり、指数yが1と同等である単位が挙げられ、これらの単位は、式−CH−を有し、本明細書でメチレン結合単位とも称される。
【0059】
L単位の別の例としては、R9a及びR9b単位が全て水素であり、指数yが2と同等である単位が挙げられ、この単位は、式−CHCH−を有し、本明細書でエチレンの結合単位とも称される。
【0060】
本明細書で上に記載されているように、本開示の化合物は、全ての医薬として許容できる塩の形態を含む。次式を有する化合物は、
【0061】
【化11】

塩、例えばスルホン酸の塩を形成できる。
【0062】
【化12】

化合物は、例えば両性イオンの形で、
【0063】
【化13】

又は例えば強酸塩として存在してもよい。
【0064】
【化14】

本開示の類似体(化合物)は、本明細書で明白には例示されていない類似体を調製するための合理的な合成戦略を適用する際に、考案者の補助となるように、いくつかの部類に配置されている。部類ごとの配置は、本明細書に記載の物質組成物のいずれの効果の増減も意味するものではない。
【0065】
本開示の化合物は、以下の工程(a)〜(f)に概説されている手順を用いて、又は当業者に公知であり、過度に実験する必要もなく実現できる、その手順の変更を加えることによって調製できる。
【0066】
【化15】

本明細書の以下のスキームIは、実施例1に詳細に記載されている本開示の類似体を調製するための手順を概説している。
【0067】
スキームI
【0068】
【化16】

試薬及び条件:(a)(i)(iso−ブチル)OCOCl、EtN、THF;0℃、20分
(ii)CH;0℃〜室温、3時間
【0069】
【化17】

試薬及び条件:(b)48%HBr、THF;0℃、1.5時間
【0070】
【化18】

試薬及び条件:(c)CHCN;還流2時間
【0071】
【化19】

試薬及び条件:(d)チオホスゲン、CaCO、CCl、HO;室温18時間
【0072】
【化20】

試薬及び条件:(e)(i)CHC(O)NHNH、EtOH;還流2時間
(ii)POCl;室温18時間、50℃2時間
【0073】
【化21】

試薬及び条件:(f)(i)H:Pd/C、MeOH
(ii)SO−ピリジン、NHOH
【実施例】
【0074】
(実施例1)
(S)−4−(2−(5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸(6)
[3−ジアゾ−1−(4−ニトロベンジル)−2−オキソ−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1)の調製:THF(20mL)中の2−(S)−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−(4−ニトロフェニル)−プロピオン酸(1.20g、4.0mmol)0℃溶液にトリエチルアミン(0.61mL、4.4mmol)、次いでiso−ブチルクロロギ酸(0.57mL、4.4mmol)を滴下する。反応混合物を0℃で20分間撹拌し、濾過する。濾過液は、0℃でジアゾメタン(〜16mmol)のエーテル溶液で処理する。反応混合物を室温で3時間撹拌し、濃縮する。残渣をEtOAc中に溶解し、水及び塩水で連続的に洗浄し、乾燥(NaSO)し、濾過して、減圧濃縮する。得られた残渣をシリカ(ヘキサン/EtOAc2:1)上で精製すると、わずかに黄色の固体として所望の生成物1.1g(収率82%)が得られる。
【0075】
【化22】

[3−ブロモ−1−(4−ニトロ−ベンジル)−2−オキソ−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(2)の調製:THF(5mL)中の[3−ジアゾ−1−(4−ニトロベンジル)−2−オキソ−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1)(0.350g、1.04mmol)0℃溶液に48%水性HBr(0.14mL、1.25mmol)を滴下する。反応混合物を0℃で1.5時間撹拌し、飽和NaCOで0℃にて失活させる。混合物をEtOAc(3×25mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)し、濾過して、減圧濃縮すると、所望の生成物0.400gが得られる。これは、更に精製せずに次の工程で使用する。
【0076】
【化23】

(S)−2−(4−ニトロフェニル)−1−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エタンアミン臭化水素酸塩(3)の調製:CHCN(5mL)中の[3−ブロモ−1−(4−ニトロ−ベンジル)−2−オキソ−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(2)(1.62g、4.17mmol)及びベンゾチオアミド(0.630g、4.59mmol)の混合物を24時間還流する。反応混合物を室温まで冷却し、ジエチルエーテル(50mL)を溶液に加え、得られる沈殿物を濾過により収集する。該固体を減圧乾燥すると、所望の生成物1.059g(63%)が得られる。ESI+MS326(M+1)。
【0077】
(S)−4−(1−イソチオシアネート−2−(4−ニトロフェニル)エチル)−2−フェニルチアゾール(4)の調製:CCl/水(10:7.5mL)中の(S)−2−(4−ニトロフェニル)−1−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エタンアミン臭化水素塩(3)(2.03g、5mmol)及びCaCO(1g、10mmol)溶液にチオホスゲン(0.46mL、6mmol)を加える。反応物を室温で18時間撹拌した後、CHCl及び水で希釈する。層を分離し、水性層をCHClで抽出する。合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)し、減圧濃縮する。残渣をシリカ(CHCl)上で精製すると、所望の生成物1.71g(93%)が得られる。ESI+MS368(M+1)。
【0078】
(S)−5−メチル−N−(2−(4−ニトロフェニル)−1−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−アミン(5)の調製:EtOH(5mL)中の(S)−4−(1−イソチオシアネート−2−(4−ニトロフェニル)−エチル)−2−フェニルチアゾール(4)(332mg、0.876mmol)及び酢酸ヒドラジド(65mg、0.876mmol)溶液を2時間還流する。該溶媒を減圧除去し、残渣をPOCl(3mL)中に溶解する。得られた溶液を室温で18時間撹拌した後、溶液を2時間で50℃に加熱する。該溶媒を減圧除去し、残渣をEtOAc(40mL)中に溶解する。得られた溶液は、pHが約8で保たれるまで、1N NaOHで処理する。該溶液をEtOAcで抽出する。合わせた水性層をEtOAcで洗浄し、有機層を合わせ、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮すると、黄色の固体として所望の生成物0.345g(93%)が得られる。
【0079】
【化24】

(S)−4−(2−(5−メチル−1,3,4−チアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸(6)の調製:(S)−5−メチル−N−(2−(4−ニトロフェニル)−1−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エチル)−1,3,4−チアゾール−2−アミン(5)(0.404g、0.954mmol)をMeOH(5mL)中に溶解する。Pd/C(50mg、10%w/w)を加え、該混合物を、反応が完了したと判断されるまで、水素雰囲気下で撹拌する。反応混合物をセライト(商標)の層を通して濾過し、溶媒を減圧除去する。粗製生成物をピリジン(4mL)中に溶解し、SO−ピリジン(0.304g、1.91mmol)で処理する。反応物を室温で5分間撹拌した後、NHOH(50mL)の7%溶液を加える。次いで、該混合物を濃縮し、得られた残渣を逆相分取HPLCで精製すると、アンモニウム塩として所望の生成物0.052g(収率11%)が得られる。
【0080】
【化25】

以下は、遊離酸として最終的な化合物を単離するための一般的な手順である。
【0081】
アミンを遊離するためのアリールニトロ基の還元
Parr水素化容器に、固体として、ニトロ化合物[例えば、中間体5](1.0等量)及びPd/C(C上10%Pd、濡れ50%、Degussa型E101NE/W、2.68g、15重量%)を導入する。MeOH(15mL/g)を加えて懸濁液を得る。該容器をParr水素化装置上に置く。容器は、N(3×20psi)で充填/真空脱気プロセスにかけて不活性にした後、H(3×40psi)で同じ手順を行う。該容器にHを充填し、40psiのH下で40時間以下振とうする。容器を脱気し、雰囲気をN(5×20psi)で浄化する。一定分量を濾過し、HPLCで分析して、完全な変換を確実にする。懸濁液をセライトのパッドを通して濾過して、触媒を除去し、均一な黄色の濾過液を回転蒸発器で濃縮すると、所望の生成物が得られる。これは更に精製せずに使用する。
【0082】
遊離スルファミン酸の調製:100mLのRBFに、本明細書で上に記載されている工程で調製した遊離アミン(1.0等量)を導入する。アセトニトリル(5mL/g)を加え、通常は黄色から橙色である黄色の懸濁液を室温で撹拌する。第2の500mLの三つ首RBFに、SOpyr(1.4等量)及びアセトニトリル(5mL/g)を導入し、懸濁液を室温で撹拌する。アミンを含有する反応溶液が、橙色から赤橙色になるまで、両方の懸濁液を徐々に加熱する(通常約40〜45℃にて)。この溶液を含有する基材は、1回分をSOpyrの撹拌溶液中に35℃で注入する。得られた不透明な混合物を勢いよく撹拌しながら、室温まで徐々に冷却する。45分間撹拌した後、又はHPLCによって反応が完了したことが確定した時点で、水(20mL/g)を着色した懸濁液に加え、pHが約2.4の均一な溶液を得る。濃縮したHPOを徐々に加え、pHを約1.4に低下させる。このpHの調整中、くすんだ白色の沈殿物が通常得られる。溶液は室温で更に1時間撹拌する。懸濁液を濾過し、濾過ケーキを濾過液で洗浄する。濾過ケーキを終夜空気乾燥すると、遊離酸として所望の生成物が得られる。
【0083】
以下は、本開示による化合物の非限定的な例である。
【0084】
(S)−4−(2−(5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸
【0085】
【化26】

4−((S)−2−(5−プロピル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸
【0086】
【化27】

4−((S)−2−(5−ベンジル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸
【0087】
【化28】

5−(3−メトキシベンジル)−N−((S)−2−(4−ニトロフェニル)−1−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)−1,3,4−チアゾール−2−アミン
【0088】
【化29】

4−((S)−2−(5−(ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸
【0089】
【化30】

4−((S)−2−(5−((メトキシカルボニル)メチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸
【0090】
【化31】

4−((S)−2−(5−((2−メチルチアゾール−4−イル)メチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸
【0091】
【化32】

HPTP−βの阻害により、それだけに限らないが、アンジオポエチン受容体チロシンキナーゼ(Tie−2)及びVEGF受容体チロシンキナーゼ(VEGFR2)を含む、内皮受容体チロシンキナーゼの活性を高め、それにより組織の血流が不足している病状を治療する手段がもたらされる。本開示の化合物は、血管新生及び内皮受容体チロシンキナーゼの他の活性を調節するための手段として機能する。このように、本開示は、いまだ満たされていない主な医学的必要性に対処するものであり、とりわけ有効なヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤の組成物を提供し、それにより、組織の血流が不足しているか、又は血流の増加が有益であると思われる疾患において、血管新生、血管リモデリング、及び内皮受容体チロシンキナーゼの他の活性を調節するための手段を提供する。ヒトプロテインチロシンホスファターゼ阻害剤の効果は、いくつかのヒトの病状又は疾患に影響を与えることが示された。これらの疾患としては、それだけに限らないが以下が挙げられる:
i)末梢動脈疾患−Shiojima,l.ら、Journal of Clinical Invest.、115、3108〜2118頁、2005年、
ii)冠動脈疾患−Siddiqui,A.J.ら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、310、1002〜1009頁、2003年、
iii)心筋梗塞(急性冠症候群)−Takahashi,K.ら、Molecular Therapy、8、584〜592頁、2003年、
iv)卒中(脳血管疾患)−Stewart,D.ら、Chest、128、633〜642頁、2005年、
v)心不全−Thurston G.、J.Anat.、200、575〜580頁、2002年、
vi)高血圧症−Caravalho,R.S.ら、Bone、34、849〜861頁、2004年、
vii)糖尿病及び虚血性神経障害−Carano,A.D.及びFilvaroff,E.H.、Drug Discovery Today、8、980〜989頁、2003年、
viii)創傷治癒及び皮膚の老化−Simons,M.、Circulation、111、1556〜1566頁、2005年、
xi)血管炎症及びアテローム性動脈硬化症−Annex,B.H.及びSimons M.、Cardiovascular Research、65、649〜655頁、2005年、
x)血管漏出症候群−Ardelt,A.A.ら、Stroke、36、337〜341頁、2005年、及び
xi)骨増殖、維持及び修復−Cardiovascular Medicine、12、62〜66頁、2002年。
【0092】
製剤
本開示は、本開示によるHPTPβ阻害剤を含む組成物又は製剤にも関する。全般的に、本開示の組成物は以下のものを含む:
a)ヒトプロテインチロシンホスファターゼβ(HPTP−β)阻害剤として有効である、有効量の本開示による1種又は複数のフェニルスルファミン酸及びその塩、並びに
b)1種又は複数の賦形剤。
【0093】
本開示の目的のために、「賦形剤」及び「担体」という用語は、本開示の記述全体で互換的に使用され、前記用語は、本明細書では「安全で有効な医薬組成物の製剤化を実施する際に使用する成分」として定義されている。
【0094】
製剤担当者は、賦形剤が、安全で安定な機能的医薬の送達に利用するために主に使用され、送達のための総合的な媒体の一部となるだけでなく、活性成分の受容体による効果的な吸収を実現するための手段となることを理解されよう。賦形剤は、不活性充填剤のように単純かつ直接的な役割を果たし得るか、又は本明細書で使用する賦形剤は、賦形剤の胃への安全な送達を確実にするための、pH安定化システム若しくはコーティングの一部となり得る。製剤担当者は、本開示の化合物は、改善された細胞の有効性、薬物動態特性、並びに改善された経口バイオアベイラビリティを有するという事実を利用してもよい。
【0095】
本開示による組成物の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
a)約0.001mg〜約1000mgの本開示による1種又は複数のフェニルスルファミン酸、及び
b)1種又は複数の賦形剤。
【0096】
本開示による別の実施形態は、以下の組成物に関する:
a)約0.01mg〜約100mgの本開示による1種又は複数のフェニルスルファミン酸、及び
b)1種又は複数の賦形剤。
【0097】
本開示による更なる実施形態は、以下の組成物に関する:
a)約0.1mg〜約10mgの本開示による1種又は複数のフェニルスルファミン酸、及び
b)1種又は複数の賦形剤。
【0098】
本明細書で使用する「有効量」という用語は、「所望の結果又は治療結果を得るために必要な投薬量及び期間で有効な1種又は複数のフェニルスルファミン酸の量」を意味する。有効量は、治療を受けるヒト又は動物の病状、年齢、性別、及び体重等、当技術分野で公知の要因により変化し得る。特定の投与計画が、本明細書の実施例に記載され得るが、当業者であれば、該投与計画は最適な治療反応を得るために変更され得ることを認識されよう。このため、正確な「有効量」を明記することはできない。例えば、数回に分割した用量を毎日投与してもよいし、又は治療状況の緊急性により示されるように用量を比例的に減少させてもよい。更に、本開示の組成物は、治療量を得るのに必要な頻度で投与してもよい。
【0099】
使用法
本開示は、本明細書に記載されているように、本開示による化合物をヒトに投与することを含む、ヒトにおける血管新生を調節する方法に関する。
【0100】
本開示の方法の一実施形態は、それだけに限らないが、冠動脈疾患、末梢血管疾患又は脳血管疾患から選択される、組織の血流の制限が不十分である対象における疾患を治療する方法に関する。
【0101】
本開示の方法の第2の実施形態は、虚血組織を血管新生する方法に関する。本明細書で使用する場合、「虚血組織」とは、十分な血流が欠乏している組織を意味する。虚血組織の例としては、心筋梗塞及び脳梗塞、腸間膜若しくは肢の虚血に起因するか、又は血管閉塞若しくは血管狭窄の結果、十分な血液供給が不足している組織が挙げられるが、これに限定されるものではない。一例では、酸素化された血液の供給の遮断は、血管閉塞によって起こり得る。このような血管閉塞は、アテローム性動脈硬化症、外傷、外科手術、疾患、及び/又は他の病因によって起こり得る。骨格筋及び心筋の虚血、卒中、冠動脈疾患、末梢血管疾患、冠動脈疾患の治療も本開示の治療法に含まれる。
【0102】
本開示の方法の第3の実施形態は、組織を修復する方法に関する。本明細書で使用する場合、「組織を修復すること」とは、それだけに限らないが、創傷修復又は組織工学を含めた、組織の修復、再生、増殖、及び/又は維持を促進することを意味する。当業者は、新生血管の形成が組織修復に必要とされることを認識している。同様に、組織は、関節炎、骨粗しょう症及び他の骨障害、並びに熱傷を含めた、それだけに限らないが外傷性の傷害又は状態により損傷し得る。組織は、外科手術、放射線治療、裂傷、有毒化学物質、ウイルス感染若しくは細菌感染、又は熱傷による傷害によっても損傷し得る。修復の必要な組織としては、非治癒創傷も挙げられる。非治癒創傷の例としては、糖尿病の病状に起因する非治癒皮膚潰瘍、又は容易に治癒しない骨折が挙げられる。
【0103】
本開示の化合物は、組織再生誘導法(GTR)の手順において組織修復をもたらす際の使用にも適している。このような手順は、現在、侵襲的な外科手術の後で創傷治癒を促進するために当業者により使用されている。
【0104】
本開示の方法の第4の実施形態は、組織工学プロセス中の組織増殖の促進によって特徴付けられる組織修復を促進する方法に関する。本明細書で使用する場合、「組織工学」とは、生体組織及び臓器を増強又は交換するために、合成材料若しくは天然材料との併用で、生体人工器官を形成、設計、及び作製することとして定義される。従って、本方法は、病変組織の修復又は交換で後に移植するため、体外でのヒト組織の設計及び増殖を強化するために使用できる。例えば、抗体は、熱傷の治療における療法として使用される皮膚移植片置換物の増殖を促進する際に有用となり得る。
【0105】
本開示の方法の組織工学の実施形態の更なる反復は、再生を必要とする部位に移植すると、機能性ヒト組織の再生を誘発する細胞含有装置又は無細胞装置に含まれる。本明細書で考察されているように、生体材料組織再生誘導法は、例えば歯周病において骨再生を促進するために使用できる。従って、抗体は、このような修復を必要とする創傷部位又は他の組織部位で、3次元構造で組み立てられた再構成組織の増殖を促進するために使用できる。
【0106】
本開示の方法の組織工学の実施形態の更に別の反復では、本明細書に記載の化合物が、病変した内部組織の機能を交換するために設計されたヒト組織を含有する、外部又は内部の装置に含まれていてもよい。この手法は、細胞を生体から単離し、該細胞を構造マトリックスで配置し、新しいシステムを生体内に移植するか、又は該システムを生体外で使用することを伴う。例えば、抗体は、移植片に含有される細胞の増殖を促進するために細胞株血管移植片に含まれていてもよい。本開示の方法は、軟骨及び骨、中枢神経系組織、筋肉、肝臓、並びに膵島(インスリン産生)細胞等の生成物における、組織の修復、再生及び工学を強化するために使用し得ることが予見されている。
【0107】
本開示は、皮膚移植片置換物の増殖を促進するための薬剤の製造における、本開示によるフェニルスルファミン酸の使用にも関する。
【0108】
本開示は、組織再生誘導法(GTR)の手順において組織修復をもたらす際に使用するための薬剤の製造における、本開示によるフェニルスルファミン酸の使用にも関する。
【0109】
本開示の化合物は、1種又は複数の薬剤の製造で使用でき、その非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
組織増殖の促進に影響を与える、組織工学の目的のために有用な薬剤の製造に使用するための化合物。
【0110】
対象における虚血性疾患を治療するための薬剤の製造に使用するための化合物。
【0111】
手順
in vitroモデル及びin vivoモデルを用いた血管新生のスクリーニング試験
本開示の化合物は、当技術分野で公知の血管新生試験で選別できる。このような試験としては、培養細胞における血管増殖の代用品又は組織外植片からの血管構造の形成を測定するin vitro試験、及び血管増殖を直接又は間接的に測定するin vivo試験(Auerbach,R.ら、2003年、Clin Chem、49、32〜40頁;Vailhe,Bら、2001年、Lab Invest、81、439〜452頁)が挙げられる。
【0112】
1.血管新生のin vitroモデル
本開示での使用に適したin vitroモデルは、培養内皮細胞又は組織外植片を使用し、「血管新生」細胞応答、又は毛細血管様構造の形成に対する作用剤の効果を測定する。in vitro血管新生試験の非限定的な例としては、それだけに限らないが、内皮細胞の移動及び増殖、毛細管の形成、内皮細胞の発芽、大動脈輪外植片試験及びニワトリ大動脈弓試験が挙げられる。
【0113】
2.血管新生のin vivoモデル
本開示での使用に適したin vivo作用剤又は抗体は、増殖因子(即ち、VEGF若しくはアンジオポエチン1)の存在下又は不在下で、局所的に又は全身的に投与され、新生血管の増殖は、直接観察することにより、又はヘモグロビン含有量等の代理マーカー若しくは蛍光指示薬を測定することにより測定される。in vitro血管新生試験の非限定的な例としては、それだけに限らないがニワトリ絨毛尿膜試験、角膜血管新生試験、MATRIGEL(商標)プラグ試験が挙げられる。
【0114】
3.虚血組織の血管新生を決定するための手順
標準的な常套的技法は、組織が望ましくない血管閉塞から虚血性障害を受ける危険性があるかどうか決定するために利用できる。例えば、心筋症におけるこれらの方法としては、様々な画像法(例えば、放射性トレーサー法、x線、及びMRI)並びに生理学的試験が挙げられる。そのため、血管閉塞により影響を受けた組織、又はそれにより影響を受ける危険性がある組織での虚血を予防するか、又は減弱させる効果的な手段として血管新生を誘発することが、容易に決定され得る。
【0115】
標準的な技法を使用する当業者は、組織の血管新生を測定してもよい。対象における血管新生を測定する非限定的な例としては、治療前後の組織への血流を測定することによる、SPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影法)、PET(ポジトロン放出断層撮影法)、MRI(磁気共鳴影像法)、及びそれらの組合せが挙げられる。血管造影法は、血管の肉眼的評価として使用できる。組織学的評価は、小血管レベルで血管を定量するために使用できる。これらの及び他の技法は、Simonsら、「Clinical trials in coronary angiogenesis」、Circulation、102、73〜86頁、2000年で考察されている。
【0116】
以下は、本明細書で以下の表Iに列挙されているHPTPβ(IC50μM)及びPTP1B(IC50μM)活性の非限定的な例である。
【0117】
【表1】

本明細書に開示した寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳密に制限されるものとして理解されるべきではない。その代わり、別段の指示がない限り、このような各寸法は、列挙した値及びその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味することが意図されている。
【0118】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した文献は全て、その関連部分において参照により本明細書に組み込まれているが、いずれの文献の引用も、本開示に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。本文献における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれている文献における同一の用語の任意の意味又は定義と対立する範囲内においては、本文献において該用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。
【0119】
本開示の特定の実施形態を例示し、記載してきたが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には明白であろう。従って、本開示の範囲内にあるそのような変更及び修正全てを、添付の特許請求の範囲で扱うことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化33】

を有する化合物であって、式中、Rは以下:
i)水素、
ii)置換又は非置換のフェニル、及び
iii)置換又は非置換のヘテロアリール環
から選択される単位であり、
Zは、式:
【化34】

を有する置換又は非置換の[1,3,4]チアジアゾール−2−イル単位であって、ここで
は、以下:
i)水素、
ii)置換又は非置換のC〜Cの直鎖、分枝、又は環状のアルキル、
iii)置換又は非置換のC又はC10のアリール、
iv)−OR
v)−C(O)OR
vi)−COR、及び
vii)−NRC(O)OR
から選択され、
は、水素、又は置換若しくは非置換のC〜Cの直鎖、分枝、若しくは環状のアルキルであり、Rは、C〜Cの直鎖若しくは分枝のアルキル、又はベンジルであり、Rは、C〜Cの直鎖、分枝、若しくは環状のアルキル、又はフェニルであり、Rは、水素又はメチルであり、Rは、C〜Cの直鎖若しくは分枝のアルキル、又はベンジルであり、
Lは式−[C(R9a9b)]−を有する単位であり、
9a及びR9bは、各々独立に水素、C〜Cの直鎖若しくは分枝のアルキル、又はフェニルであり、
指数xは0又は1であり、指数yは1〜4である、化合物。
【請求項2】
Rがフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが、1,2,3,4−テトラゾール−1−イル、1,2,3,4−テトラゾール−5−イル、[1,2,3]トリアゾール−4−イル、[1,2,3]トリアゾール−5−イル、[1,2,4]トリアゾール−4−イル、[1,2,4]トリアゾール−5−イル、イミダゾール−2−イル、イミダゾール−4−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、オキサゾール−2−イル、オキサゾール−4−イル、オキサゾール−5−イル、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、イソオキサゾール−5−イル、[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル、[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル、[1,3,4]オキサジアゾール−2−イル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、イソチアゾール−3−イル、イソチアゾール−4−イル、イソチアゾール−5−イル、チアゾール−2−イル、チアゾール−4−イル、チアゾール−5−イル、[1,2,4]チアジアゾール−3−イル、[1,2,4]チアジアゾール−5−イル、及び[1,3,4]チアジアゾール−2−イル、
から選択されるヘテロアリール単位である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rがチオフェン−2−イル又はチオフェン−3−イルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
がメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、及びシクロプロピルメチルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Lが式−CH−を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が置換又は非置換のフェニル、ナフタレン−1−イル、及びチアゾール−4−イルから選択され、該置換がメチル、エチル、n−プロピル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、及びトリフルオロメチルから選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
がフェニル、ナフタレン−1−イル、3−メトキシフェニル、及び2−メチルチアゾール−4−イルから選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
(S)−{4−[2−(5−メチル−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(4−フェニルチアゾール−2−イル)−エチル]フェニル}スルファミン酸;
(S)−4−(2−(5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エチル)−フェニルスルファミン酸;
4−((S)−2−(5−プロピル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸;
4−((S)−2−(5−ベンジル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸;
5−(3−メトキシベンジル)−N−((S)−2−(4−ニトロフェニル)−1−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−アミン;
4−((S)−2−(5−(ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸;
4−((S)−2−(5−((メトキシカルボニル)メチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸;および
4−((S)−2−(5−((2−メチルチアゾール−4−イル)メチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ)−2−(2−(チオフェン−2−イル)チアゾール−4−イル)エチル)フェニルスルファミン酸、
から選択される化合物。
【請求項10】
A)請求項1に記載の1種又は複数の化合物、及び
B)1種又は複数の賦形剤又は担体
を含む組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物をヒトに投与することを含む、骨格筋及び心筋の虚血、卒中、冠動脈疾患、末梢血管疾患、冠動脈疾患から選択される疾患を治療する方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物をヒトに投与することを含む、ヒトにおける血管新生を調節する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物をヒトに投与することを含む、ヒトにおける虚血組織に血管新生する方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物をヒトに投与することを含む、皮膚移植片置換物の増殖を促進する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物をヒトに投与することを含む、組織再生誘導法(GTR)の手順において組織修復を促進する方法。
【請求項16】
医薬として許容できる塩基性基又は酸性基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、及びクエン酸塩から選択されるアニオンを含む塩である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びビスマスから選択されるカチオンを含む塩である、請求項16に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−542660(P2009−542660A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518228(P2009−518228)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/014824
【国際公開番号】WO2008/002571
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(501300757)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (12)
【氏名又は名称原語表記】The Procter & Gamble Company
【Fターム(参考)】