説明

ヒト抗CD40抗体

【課題】ヒトB細胞の表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得るヒトモノクローナル抗体を使用する方法を提供すること。
【解決手段】患者における抗体媒介性の疾患を予防または処置する方法。この方法は、このような処置が必要な患者に、CD40保有細胞(例えば、ヒトB細胞またはヒト樹状細胞)の表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得る、薬学的に受容可能な賦形剤中の治療有効量のヒトモノクローナル抗体を投与する工程を包含する。この抗体のCD40抗原への結合は、この細胞の増殖または分化を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、CD40に結合し得るヒト抗体、この抗体を使用する方法、およびヒトにお
ける抗体により媒介される疾患の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
CD40抗原は、B細胞および他の細胞(樹状細胞を含む)の細胞表面上に発現される
糖タンパク質である。B細胞の分化の際に、この分子はプレB細胞に最初に発現され、次
いで、B細胞がプラスマ細胞になった場合に細胞表面から見えなくなる。CD40分子と
抗CD40抗体との架橋は、B細胞に対する種々の効果を媒介する。CD40抗原は、ヒ
ト神経発育因子(NGF)レセプターおよび腫瘍壊死因子α(TNF−α)レセプターに
関連することが知られており、これにより、CD40がB細胞の活性化において重要な機
能を有するリガンドに対するレセプターであることが示唆される。
【0003】
CD40は、免疫応答の重要なエレメントである。抗原提示細胞のCD40の、そのリ
ガンド(CD40LまたはCD154と呼ばれる)による係合は、サイトカインの産生お
よび同時刺激分子のアップレギュレーションを引き起こし、Tリンパ球を効果的に活性化
する。Bリンパ球のCD40の係合は、B細胞に対する同時刺激シグナルを提供し、抗体
産生を駆動する。従って、CD40の係合および活性化のブロックは、抗体および細胞媒
介性の免疫応答を抑制する可能性を有する。抗CD40アンタゴニスト抗体は、自己免疫
疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、乾癬、多発性硬化症、炎症性腸疾患(クローン
病)、および慢性関節リウマチ)を処置するために使用され得る。このような抗体はまた
、自己免疫応答を抑制することにより、器官および組織移植片の拒絶反応を予防するため
、悪性Bリンパ球に、CD40により提供される活性化シグナルを与えないことによりリ
ンパ腫を処置するため、および特異的な様式でCD40保有細胞に毒素を送達するために
使用され得る。
【0004】
これまでに、活性化シグナルを提供することなくCD40に結合するマウスモノクロー
ナル抗体(例えば、5D12)が開示されている。これらの抗体は、インビボおよびイン
ビトロでの免疫応答を阻害する能力を有する。しかし、マウス抗体は、ヒト疾患を処置す
るために使用され得ない。なぜならば、これらは、ヒト抗マウス抗体を惹起し、その処置
の効果を妨げるからである。従って、匹敵する特異性であるが、ヒトアミノ酸配列で構成
される抗体に対する必要性が、当該分野に存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(発明の簡単な要旨)
本発明の主な目的は、ヒトB細胞の表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得るヒト
モノクローナル抗体を提供することである。この抗体のCD40抗原への結合は、B細胞
の増殖または分化を防止する。
【0006】
本発明のさらなる目的は、患者における抗体媒介性の疾患を予防または処置する方法を
提供することである。この方法は、このような処置が必要な患者に、CD40保有細胞(
例えば、ヒトB細胞またはヒト樹状細胞)の表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得
る、薬学的に受容可能な賦形剤中の治療有効量のヒトモノクローナル抗体を投与する工程
を包含する。この抗体のCD40抗原への結合は、この細胞の増殖または分化を防止する

【0007】
本発明の別の目的は、患者におけるIgE媒介性疾患(例えば、アレルギー)を予防ま
たは処置する方法を提供することである。この方法は、このような処置が必要な患者に、
ヒトB細胞の表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得る、薬学的に受容可能な賦形剤
中の治療有効量のヒトモノクローナル抗体を投与する工程を包含する。この抗体のCD4
0抗原への結合は、B細胞の増殖または分化を防止する。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、患者における自己免疫疾患(抗体媒介性疾患を含む)を予
防または処置する方法を提供することである。この方法は、このような処置が必要な患者
に、ヒトB細胞の表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得る、薬学的に受容可能な賦
形剤中の治療有効量のヒトモノクローナル抗体を投与する工程を包含する。この抗体のC
D40抗原への結合は、B細胞の増殖または分化を防止する。本発明による処置について
考慮される特定の自己免疫疾患として、全身性エリスマトーデス(SLE)、原発性胆汁
性肝硬変(PBC)、および特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が挙げられる。
【0009】
本発明の別の目的は、腫瘍細胞(非ホジキンリンパ腫を含む)の増殖を阻害する方法を
提供することである。
【0010】
上記目的のより好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、15B8、20C
4、13E4、12D9、または9F7である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
・本発明は、以下を提供する:
・(項目1) 正常なヒトCD40発現細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異
的に結合し得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノクロ
ーナル抗体またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上記
モノクローナル抗体またはフラグメントが、上記正常細胞の表面上で発現されるCD40
抗原に結合する場合、上記正常細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記抗体が、
配列番号19〜30からなる群より選択される配列を有する軽鎖相補性決定領域を含む、
ヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメント。
・(項目2) 正常なヒトCD40発現細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異
的に結合し得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノクロ
ーナル抗体またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上記
モノクローナル抗体またはフラグメントが、上記正常細胞の表面上で発現されるCD40
抗原に結合する場合、上記正常細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記抗体が、
配列番号19〜30からなる群より選択される配列を有する重鎖相補性決定領域を含む、
ヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメント。
・(項目3) 正常なヒトCD40発現細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異
的に結合し得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノクロ
ーナル抗体またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上記
モノクローナル抗体またはフラグメントが、上記正常細胞の表面上で発現されるCD40
抗原に結合する場合、上記正常細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記抗体が、
15B8、20C4、12D9、9F7、および13E4からなる群より選択されるハイ
ブリドーマによって分泌される、ヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメント。
・(項目4) 項目1、2、または3に記載のフラグメントであって、上記フラグメント
が、上記モノクローナル抗体のFab’フラグメント、F(ab)フラグメント、Fa
bフラグメント、およびFフラグメントからなる群より選択されるメンバーである、フ
ラグメント。
・(項目5) 項目1、2、または3に記載のモノクローナル抗体であって、上記モノク
ローナル抗体が、少なくとも10−5M、少なくとも10−7M、少なくとも10−9
、および少なくとも10−11Mからなる群より選択される親和性(K)で上記ヒトC
D40抗原に結合する、モノクローナル抗体。
・(項目6) 正常なヒトB細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合し
得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノクローナル抗体
またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上記モノクロー
ナル抗体またはフラグメントが、上記正常B細胞の表面上で発現されるCD40抗原に結
合する場合、上記正常B細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記モノクローナル
抗体が、配列番号11、15、20、26、32および38からなる群より選択されるア
ミノ酸配列を含む、ヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメント。
・(項目7) 正常なヒトB細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合し
得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノクローナル抗体
またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上記モノクロー
ナル抗体またはフラグメントが、上記正常B細胞の表面上で発現されるCD40抗原に結
合する場合、上記正常B細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記モノクローナル
抗体が、配列番号13、17、21、27、33および39からなる群より選択されるア
ミノ酸配列を含む、ヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメント。
・(項目8) 正常なヒトB細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合し
得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノクローナル抗体
またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上記モノクロー
ナル抗体またはフラグメントが、上記正常B細胞の表面上で発現されるCD40抗原に結
合する場合、上記正常B細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記モノクローナル
抗体が、配列番号12、16、22、28、34および40からなる群より選択されるア
ミノ酸配列を含む、ヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメント。
・(項目9) 正常なヒトB細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合し
得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノクローナル抗体
またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上記モノクロー
ナル抗体またはフラグメントが、上記正常B細胞の表面上で発現されるCD40抗原に結
合する場合、上記正常B細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記モノクローナル
抗体が、配列番号14、18、23、29、35および41からなる群より選択されるア
ミノ酸配列を含む、ヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメント。
・(項目10) 正常なヒトB細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合
し得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノクローナル抗
体またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上記モノクロ
ーナル抗体またはフラグメントが、上記正常B細胞の表面上で発現されるCD40抗原に
結合する場合、上記正常B細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記モノクローナ
ル抗体が、配列番号24、30、36および42からなる群より選択されるアミノ酸配列
を含む、ヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメント。
・(項目11) 正常なヒトCD40発現細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特
異的に結合し得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノク
ローナル抗体またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上
記モノクローナル抗体またはフラグメントが、上記正常細胞の表面上で発現されるCD4
0抗原に結合する場合、上記正常細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記モノク
ローナル抗体が、配列番号1、3、4、5、6、7、8、9、10、および43からなる
群より選択されるポリヌクレオチドを含む核酸によってコードされる、ヒトモノクローナ
ル抗体またはそのフラグメント。
・(項目12) 核酸であって、上記核酸が、配列番号20〜24、26〜30、32〜
36、および38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレ
オチドを含み、上記アミノ酸配列が、正常なヒトB細胞においてCD40に特異的に結合
し得る抗体の軽鎖および重鎖の相補性決定領域のうちの少なくとも1つを含む、核酸。
・(項目13) 正常なヒトCD40発現細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特
異的に結合し得るヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、上記モノク
ローナル抗体またはフラグメントが、有意なアゴニスト活性を有さず、これによって、上
記モノクローナル抗体またはフラグメントが、上記正常細胞の表面上で発現されるCD4
0抗原に結合する場合、上記正常細胞の増殖または分化が阻害され、ここで、上記抗体ま
たはそのフラグメントが、15B8、20C4、13E4、12D9、および9F7から
なる群より選択されるハイブリドーマによって産生される、ヒトモノクローナル抗体また
はそのフラグメント。
・(項目14) 項目7〜11のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体であって、上
記モノクローナル抗体が、少なくとも10−5M、少なくとも10−7M、少なくとも1
−9M、および少なくとも10−11Mからなる群より選択される親和性(K)で上
記ヒトCD40抗原に結合する、モノクローナル抗体。
・(項目15) 正常ヒトB細胞の増殖または分化を阻害するための方法であって、上記
方法が、上記B細胞を有効量のヒト抗CD40モノクローナル抗体に接触させる工程を包
含し、上記抗体が、有意なアゴニスト活性を含まず、これによって、上記抗体が、上記B
細胞上のCD40抗原に結合する場合、上記B細胞の増殖または分化が阻害され、ここで
、上記モノクローナル抗体が、少なくとも10−5M、少なくとも10−7M、少なくと
も10−9M、および少なくとも10−11Mからなる群より選択される親和性(K
で上記B細胞に結合する、方法。
・(項目16) 正常ヒトB細胞の増殖または分化を阻害するための方法であって、上記
方法が、上記B細胞を有効量のヒト抗CD40モノクローナル抗体に接触させる工程を包
含し、上記抗体が、有意なアゴニスト活性を含まず、これによって、上記抗体が、上記B
細胞上のCD40抗原に結合する場合、上記B細胞の増殖または分化が阻害され、ここで
、上記ヒトモノクローナル抗体が、15B8、20C4、13E4、12D9、および9
F7からなる群より選択される、方法。
・(項目17) 項目15に記載の方法であって、上記モノクローナル抗体が、上記モノ
クローナル抗体のFab’フラグメント、F(ab)フラグメント、Fabフラグメン
ト、またはFフラグメントである、方法。
・(項目18) 項目16に記載の方法であって、上記モノクローナル抗体が、上記モノ
クローナル抗体のFab’フラグメント、F(ab)フラグメント、Fabフラグメン
ト、またはFフラグメントである、方法。
・(項目19) 正常ヒトB細胞の増殖を阻害するための方法であって、上記増殖が、C
D40リガンドとB細胞の表面上で発現されるCD40抗原との相互作用によって増強さ
れ、上記方法が、上記B細胞を有効量のヒト抗CD40モノクローナル抗体と接触させる
工程を包含し、上記抗体が、有意なアゴニスト活性を含まず、これによって、上記抗体が
、上記B細胞上のCD40抗原に結合する場合、上記B細胞の増殖が阻害され、上記モノ
クローナル抗体が、少なくとも10−5M、少なくとも10−7M、少なくとも10−9
M、および少なくとも10−11Mからなる群より選択される親和性(K)で上記ヒト
B細胞に結合する、方法。
・(項目20) 正常ヒトB細胞の増殖を阻害するための方法であって、上記増殖が、C
D40リガンドとB細胞の表面上で発現されるCD40抗原との相互作用によって増強さ
れ、上記方法が、上記B細胞を有効量のヒト抗CD40モノクローナル抗体と接触させる
工程を包含し、上記抗体が、有意なアゴニスト活性を含まず、これによって、上記抗体が
、上記B細胞上のCD40抗原に結合する場合、上記B細胞の増殖が阻害され、上記モノ
クローナル抗体が、少なくとも10−5M、少なくとも10−7M、少なくとも10−9
M、および少なくとも10−11Mからなる群より選択される親和性(K)で上記ヒト
B細胞に結合し、ここで、上記ヒトモノクローナル抗体が、15B8、20C4、13E
4、12D9、および9F7からなる群より選択される、方法。
・(項目21) ヒト患者におけるB細胞による抗体産生を阻害するための方法であって
、上記方法が、ヒト患者に有効量のヒト抗CD40モノクローナル抗体を投与する工程を
包含し、上記抗体が、有意なアゴニスト活性を含まず、これによって、上記抗体が、上記
B細胞上のCD40抗原に結合する場合、上記B細胞による抗体産生が阻害され、ここで
、上記モノクローナル抗体が、少なくとも10−5M、少なくとも10−7M、少なくと
も10−9M、および少なくとも10−11Mからなる群より選択される親和性(K
で上記ヒトB細胞に結合する、方法。
・(項目22) ヒト患者におけるB細胞による抗体産生を阻害するための方法であって
、上記方法が、ヒト患者に有効量のヒト抗CD40モノクローナル抗体を投与する工程を
包含し、上記抗体が、有意なアゴニスト活性を含まず、これによって、上記抗体が、上記
B細胞上のCD40抗原に結合する場合、上記B細胞による抗体産生が阻害され、ここで
、上記モノクローナル抗体が、少なくとも10−5M、少なくとも10−7M、少なくと
も10−9M、および少なくとも10−11Mからなる群より選択される親和性(K
で上記ヒトB細胞に結合し、ここで、上記ヒトモノクローナル抗体が、15B8、20C
4、13E4、12D9、および9F7からなる群より選択される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、CD40L発現細胞により刺激されたB細胞の増殖に対する抗CD40抗体の効果を示す棒グラフである。
【図2】図2は、B細胞増殖に対する抗CD40抗体の効果を示す棒グラフである。
【図3】図3は、抗IgMにより誘導されたB細胞の増殖に対するCD40抗体の効果を示す棒グラフである。
【図4】図4は、ヒト末梢B細胞の増殖に対する架橋された抗CD40抗体の効果を示す棒グラフである。
【図5】図5は、5つのヒト抗CD40抗体および5H7の軽鎖のアミノ酸配列の比較である。配列番号は、以下の通りである。5H7:配列番号19、259F7:配列番号20、2615B8:配列番号21、2712D9:配列番号22、2820C4:配列番号23、2913E4:配列番号24、30。
【図6】図6は、5つのヒト抗CD40抗体および5H7の重鎖のアミノ酸配列の比較である。配列番号は、以下の通りである。5H7:配列番号31、379F7:配列番号32、3815B8:配列番号33、3912D9:配列番号34、4020C4:配列番号35、4113E4:配列番号36、42。
【図7】図7は、CD40を発現する細胞に結合するモノクローナル抗体15B8のFACS分析の結果を示す。図7は、この抗体が、3種(ヒト、アカゲザル、およびカニクイザル)由来の末梢血細胞を染色することを示した。
【図8】図8は、ヒトモノクローナル抗体12D9のvK領域のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号43および44)を提供する。
【図9】図9は、ヒトモノクローナル抗体12D9の重鎖定常領域のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1および2)を提供する。
【図10】図10は、ヒトモノクローナル抗体20C4のvK.1およびvh1領域のDNA配列(それぞれ、配列番号3および4)を提供する。
【図11】図11は、ヒトモノクローナル抗体9F7のvK.1およびvh1領域のDNA配列(それぞれ、配列番号5および6)を提供する。
【図12】図12は、ヒトモノクローナル抗体15B8のvK.3およびvh1領域のDNA配列(それぞれ、配列番号7および8)を提供する。
【図13】図13は、ヒトモノクローナル抗体13E4および12D9のvh1領域のDNA配列(それぞれ、配列番号45および10)を提供する。
【図14】図14は、以下に示されるヒトモノクローナル抗体の以下の領域のアミノ酸配列を提供する。9F7VH1:配列番号1112D9VH1:配列番号1215B8VH1:配列番号1320C4VH1:配列番号149F7VK1:配列番号1512D9VK1:配列番号1615BVK1:配列番号1720C4VK1:配列番号18。
【図15】図15は、ある患者からの細胞を用いて、抗CD40抗体MS81が、IL−4の存在下および非存在下でNHL細胞の増殖を刺激したことを示す。
【図16】図16は、第2の患者からの細胞を用いて、抗CD40抗体MS81が、IL−4の存在下および非存在下でNHL細胞の増殖を刺激したことを示す。
【図17】図17は、抗CD40抗体15B8が、ある患者において、NHL細胞の増殖を阻害することを示す。
【図18】図18は、リツキサン(Rituxan)感受性の患者由来のNHL細胞の増殖における、15B8に対する用量応答を示す。これらの細胞を、CD40LおよびIL−4により刺激した。
【図19】図19は、3人の個体由来の細胞を用いて、CD40Lにより刺激されたヒトB細胞の増殖に対する15B8の効果についての代表的な用量応答曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
抗体は、いくつかの領域から構築され、重要な領域は、相補性決定領域、すなわちCD
Rである。句「相補性決定領域」は、ネイティブの免疫ブロブリン結合部位の天然のFv
領域の結合親和性および特異性を一緒に規定するアミノ酸配列をいう。例えば、Chot
hiaら、J,Mol.Biol.196:901−917(1987);Kabatら
、U.S. Dept. of Health and Human Services
NIH発行番号91−3242(1991)を参照のこと。句「定常領域」は、エフェ
クター機能に与える抗体分子の部分をいう。ヒト疾患の治療における使用のための非免疫
原性抗体を生成することに関するこれまでの研究において、マウス定常領域は、ヒト定常
領域により置換されていた。本発明のヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グログリンから
獲得された。しかし、これらのヒト化抗体はなお、ヒトにおいて望ましくない、そして潜
在的に危険な免疫応答を惹起し、親和性を喪失していた。
【0014】
本発明のヒトモノクローナル抗CD40抗体は、先行技術のモノクローナル抗体の欠点
に取り組んでいる。従って、本発明のヒトモノクローナル抗体は、好ましくは、ヒト免疫
グロブリン遺伝子座を含むよう操作されたトランスジェニック動物を用いて生成される。
例えば、WO98/24893は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を
開示している。この動物は、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の不活性化に起因して、
機能的な内因性の免疫グロブリンを生成しない。WO91/10741はまた、免疫原に
対する免疫応答をマウントし得るトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示してい
る。この抗体は、霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、そして内因性の免疫
グロブリンをコードする遺伝子座は置換されているかまたは不活性化されている。WO9
4/02602は、不活性化された内因性Ig遺伝子座および機能的なヒトIg遺伝子座
を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示している。米国特許第5,939,598号は、トラ
ンスジェニックマウスを作製する方法を開示しており、このマウスは、内因性の重鎖を欠
損しており、そして1つ以上の異種性定常領域を含む外因性免疫グロブリン遺伝子座を発
現する。
【0015】
上記のトランスジェニック動物を使用して、CD40の場合、選択された抗原性分子に
対する免疫応答が生成され得、そして抗体産生細胞がこの動物から取り出され得、そして
ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するために使用され得る。免疫
化プロトコル、アジュバントなどは当該分野で公知であり、そして例えば、WO96/3
3735に記載されるようなトランスジェニックマウスの免疫において使用される。この
モノクローナル抗体は、対応するタンパク質の生物学的活性または生理学的効果を阻害ま
たは中和する能力について試験され得る。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル
抗体、単鎖抗体、およびそれらのフラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab
’)フラグメント、Fvフラグメント、および親抗体の抗原結合機能を保持する他のフ
ラグメント)をいう。
【0017】
本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、同質の抗体集団を有す
る抗体組成物をいう。この用語は、抗体の種または起源に関して限定されないし、作製さ
れる様式によっても限定されないことが意図される。この用語は、免疫グロブリン全体お
よびフラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフ
ラグメント、および抗体の抗原結合機能を保持する他のフラグメント)を含む。任意の哺
乳動物種のモノクローナル抗体が、本発明において使用され得る。しかし、実際には、抗
体は、代表的に、モノクローナル抗体を生成するのに必要とされるハイブリッド細胞株ま
たはハイブリドーマを作製する際に使用するためのラットまたはマウスの細胞株の利用可
能性に起因して、ラットまたはマウス起源の抗体である。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「単鎖抗体」は、結合する抗体の結合ドメイン(重
鎖および軽鎖の両方)を決定し、その結合機能の保存を可能にする連結部位を供給するこ
とにより調製される抗体をいう。これにより、本質的に、抗原に結合するのに必要とされ
る可変ドメインの部分のみを有する根本的に短縮された抗体が形成される。単鎖抗体の決
定および構築は、Ladnerらに対する米国特許第4,946,778号に記載されて
いる。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「CD40抗原エピトープ」は、本発明の抗CD4
0モノクローナル抗体と免疫反応し得る分子(CD40抗原自身を除く)をいう。CD4
0抗原エピトープは、タンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、炭水化物、脂質
、および他の分子を含み得るが、本発明の目的のためには、最も一般的には、タンパク質
、短いオリゴペプチド、オリゴペプチド模倣物(すなわち、CD40抗原の抗体結合特性
を模倣する有機化合物)、またはそれらの組み合わせである。適切なオリゴペプチド模倣
物は、とりわけ、PCT出願US91/04282に記載されている。
【0020】
本発明の抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスによ
り産生され、そしてヒト細胞(特に、B細胞)の表面上のヒトCD40抗原に結合する。
これらの抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、およびそれらの
フラグメントであり得る。
【0021】
モノクローナル抗体15B8、20C4、13E4、12D9、および9F7が、実施
例において記載されるように調製される。本発明の他の抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝
子座についてトランスジェニックなマウスを用いて同様に調製され得るか、または当該分
野で公知の他の方法および/もしくは本明細書中に記載される他の方法により調製され得
る。
【0022】
ポリクローナル血清は、従来の方法により調製され得る。一般的に、CD40抗原を含
む溶液が、適切な動物(本発明においては、トランスジェニック動物、好ましくは、ヒト
免疫グロブリン遺伝子座を有するマウス)を免疫するために最初に使用される。好ましい
実施形態において、CD40を発現するSf9細胞が、免疫原として使用される。免疫は
また、生理食塩水(好ましくは、フロイント完全アジュバントのようなアジュバント)中
で抗原含有溶液を混合または乳化し、そしてこの混合物またはエマルジョンを非経口注入
(一般的には、皮下注入または筋肉内注入)することにより実施され得る。50〜200
μg/注入の用量が、代表的に、十分である。免疫は、一般的に、生理食塩水中のタンパ
ク質(好ましくは、フロイント不完全アジュバントを用いて)の1回以上の注入により、
2〜6週後にブーストされる。当該分野で公知の方法を用いたインビトロでの免疫によっ
て、抗体が代替的に生成され得、これは、本発明の目的に関して、インビボでの免疫に相
当するとみなされる。
【0023】
ポリクローナル抗血清は、免疫した動物の血液をガラスまたはプラスチック容器に注ぎ
、この血液を25℃にて1時間インキュベートし、その後4℃にて2〜18時間インキュ
ベートすることにより獲得される。血清は、遠心分離(例えば、1,000×gで10分
間)により回収される。約20〜50ml/血液が、ウサギから獲得され得る。
【0024】
モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、Nature
256:495−96(1975)の方法またはその改良版を用いて調製され得る。代
表的に、マウスは、上記のように免疫される。しかし、血清を抽出するために動物を出血
させずに、脾臓(および必要に応じていくつかの大リンパ節)が取り出され、そして単一
細胞に分離される。所望の場合、脾臓細胞は、タンパク質抗原でコーティングされたプレ
ートまたはウェルに細胞懸濁物を適用することにより(非特異的接着細胞の除去後に)ス
クリーニングされ得る。この抗原に対して特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細
胞は、プレートに結合し、そして懸濁物の残りと共に洗い流されない。次いで、得られる
B細胞または全ての分離された脾臓細胞は、黒色腫細胞と融合してハイブリドーマを形成
するために誘導され、そして選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミ
ジン培地、「HAT」)で培養される。得られるハイブリドーマは、限界希釈によりプレ
ーティングされ、そして所望の免疫細胞表面抗原に特異的に結合する(そして関連しない
抗原に結合しない)抗体の産生についてアッセイされる。次いで、選択されたMAb分泌
ハイブリドーマは、インビトロ(例えば、組織培養ボトルまたは中空繊維リアクターにお
いて)またはインビボ(マウスにおける腹水として)のいずれかで培養される。
【0025】
ハイブリドーマの使用の代替として、抗体は、米国特許第5,545,403号、同第
5,545,405号および同第5,998,144号(これらは本明細書中で参考とし
て援用される)に開示されるように、CHO細胞株のような細胞株において産生され得る
。簡単に述べると、この細胞株は、軽鎖および重鎖をそれぞれ発現し得るベクターにより
トランスフェクトされる。別々のベクター上の2つのタンパク質をトランスフェクトする
ことにより、キメラ抗体が生成され得る。別の利点は、抗体の正確なグリコシル化である

【0026】
好ましくは、CD40に対する十分なヒト抗体が、トランスジェニックマウスを免疫す
ることにより獲得される。1つのこのようなマウスは、Xenomouseと称され、そ
して米国特許第6,075,181号;同第6,091,001号;および同第6,11
4,598号において開示されている(これらは全て、本明細書中で参考として援用され
る)。本明細書に開示される抗体を生成するために、ヒトIgG2重鎖遺伝子座およびヒ
トK軽鎖遺伝子座についてトランスジェニックなマウスを、ヒトCD40を発現するSf
9細胞により免疫した。マウスはまた、他のアイソタイプについてもトランスジェニック
であり得る。
【0027】
Sf9(Spodoptera frugiperda)細胞の生成は、本明細書中で
参考として援用される、de Boer、米国特許第6,004,552号に開示される
。簡単に述べると、ヒトCD40をコードする配列を、de Boerにより記載される
ような転移ベクターを用いて、バキュロウイルス中に組み換えた。このプラスミドを、野
生型バキュロウイルスDNAと共にSf9細胞中に同時トランスフェクトした。組換えバ
キュロウイルス感染Sf9細胞を同定し、クローン精製した。
【0028】
CD40を発現する5×10個のSf9細胞を、第0日および第14日に、マウスに
腹腔内(IP)注入した。最後の注入を少なくとも5週間後に実施し、そして脾臓および
胸腺細胞を取り出し、そして細胞融合のために使用した。細胞融合を、de Boerに
記載されるように実施した。ハイブリドーマ抗体を、実施例に記載されるようにしてスク
リーニングした。5つのハイブリドーマを、CD40リガンド(CD40L)および抗I
gMにより誘導されたヒト末梢血B細胞の増殖を阻害するそれらの能力、および抗CD3
不活性化されたヒト末梢血T細胞により刺激されたヒト末梢血B細胞によるIgMの産生
を阻害するそれらの能力に基づき、さらなる研究のために選択した。
【0029】
最適な阻害活性を示す5つのハイブリドーマを、15B8.8.6(15B8)、20
C4.1.6(20C4)、13E4.12.11(13E4)、12D9.9.10(
12D9)、9F7.9.11.1(9F7)、および15B8.7.2と命名した。こ
れらのハイブリドーマのいずれも、休止しているヒト末梢血B細胞における増殖を誘導す
る有意な能力を示さなかった。
【0030】
これらのハイブリドーマの抗体の相対的な結合特性を、フローサイトメトリーにより試
験した(実施例に詳細記載される)。簡単に述べると、比較された抗体は、同一または親
密に関連するエピトープを認識するそれらの能力にもかかわらず、親和性における差異を
示した。例えば、MAb 15B8は、ヒトCD20末梢血リンパ球へのMAb 20
C4の結合をブロックしたが、MAb 20C4は、CD20リンパ球へのMAb 1
5B8の結合をブロックしなかった。ハイブリドーマの示差的なCD40結合を、表4(
実施例4)に示す。
【0031】
試験した4つのハイブリドーマ(15B8、20C4、12D9、および9F7)は、
3つの種(ヒト;アカゲザル;およびカニクイザル)由来の末梢血細胞を染色するモノク
ローナル抗体を産生した(図7)。
【0032】
このモクローナル抗体をコードするポリヌクレオチド配列を決定するために、このハイ
ブリドーマからmRNAを調製し、そして標準的な手順を用いて、このmRNAに対して
RT−PCRを実施した。PCR産物をゲル上で分析し、配列決定し、そして翻訳した。
このポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、表7、実施例11に示されるように配
列番号1〜18において提供する。
【0033】
5つのモノクローナル抗体(9F7、15B8、12D9、20C4、および13E4
)のアミノ酸配列を、図5(軽鎖)および図6(重鎖)に示されるように、マウス抗CD
40モノクローナル抗体5H7のアミノ酸配列と比較した。
【0034】
5つの開示されるモノクローナル抗体を用いて獲得された結果は、これらの抗体ならび
にそれらのフラグメントおよびキメラ形態が拮抗特性を有し、それによりこれらが多くの
臨床適用(自己免疫疾患の処置、移植反応および拒絶の処置を含む)に適切であり、遺伝
子療法およびタンパク質療法のためのアジュバント療法として適切であり、そして腫瘍細
胞(非ホジキンリンパ腫細胞を含む)の増殖を阻害する上で適切であることを示す。さら
なる用途として、CD40を発現する悪性細胞により媒介される任意の疾患の処置、およ
びCD40を発現する細胞の増殖、活性化、または調節に関連する疾患を処置するための
使用が挙げられる。5つのMAbの活性を、表1に要約する。
【0035】
【表1】


*1μg/mlの抗体からの代表的なデータを示した。
【0036】
本発明は、本明細書中に記載される5つのモノクローナル抗体だけでなく、これらとは
異なるがCDRを保持する抗体;および1つ以上のアミノ酸付加、欠失、または置換を有
する抗体もまた包含する。ここで、この活性は、B細胞増殖および/または抗体分泌を阻
害することにより測定される。本発明はまた、例えば、WO98/52976、「Met
hod for the Production of Non−Immunogeni
c Proteins」(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるよ
うにして生成され得る脱免疫抗体(de−immunized antibody)を包
含する。本発明のモノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む融合タンパク質もま
た、本発明の範囲内に含まれる。この融合タンパク質は、当該分野で公知のように、合成
され得るかまたは対応するポリヌクレオチドベクターから発現され得る。
【0037】
本発明の抗体は、例えば、特許公報番号EP0983303A1、WO00/3431
7、およびWO98/52976(これらは、本明細書中で参考として援用される)に記
載される方法を用いて生成される、配列のバリエーションを有し得る。例えば、CDR内
の配列は、抗体がMHCクラスIIに結合しそして望ましくないヘルパーT細胞応答を誘
導し得る原因となることが示されている。保存的置換は、その抗体が結合活性を保持して
いるが、望ましくないT細胞応答を誘導する能力を失わせることを可能にする。任意のこ
のような保存的置換または非保存的置換は、当該分野で認識されている方法を用いてなさ
れ得、そして得られる抗体は本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
本発明は、好ましいモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列(配列番号1
〜18)を提供する。この配列は、図5および6に示されるように、整列される。これら
の整列は、この抗体の所望の生物学的活性を喪失することなく置換するのにより適した特
定のアミノ酸位置を示す。慣用的な方法のみを用いて、当業者は、これらの配列の改変体
をコードするプラスミドを構築し得る。この改変抗体は、本明細書中に記載される方法を
用いて、アンタゴニスト活性、親和性、特異性、およびアゴニスト活性について慣用的に
試験され得る。
【0039】
上記の方法のいずれか、または本明細書中に開示されない他の方法のいずれかによって
産生される抗体は、以下の生物学的活性の少なくとも1つを有する場合、本発明の範囲内
である:T細胞によって刺激されたヒト末梢B細胞による免疫グロブリン分泌の阻害;J
urkat T細胞によって刺激されたヒト末梢B細胞の増殖の阻害;およびCD40−
L発現細胞によって刺激されたヒト末梢B細胞の増殖阻害。これらのアッセイは、本明細
書中の実施例に記載されるように実行され得る。
【0040】
これらの抗体はまた、当該分野で公知の標準的なアッセイ(例えば、Biacore)
を使用して測定されるように、適切なコントロールと比較して、少なくとも10−5M、
好ましくは少なくとも10−6〜10−7M、より好ましくは少なくとも10−8M、そ
して最も好ましくは少なくとも10−9M(例えば、10−10M)の単一部位結合親和
性(K)を示す。10−11M、10−13M、10−15M、10−17Mおよび1
−19Mの結合親和性もまた達成され得る。これらのアッセイは自動化され、そして当
該分野において公知の標準的な技術を使用してもアッセイされ得る、MAbの特異性およ
び交差反応性の測定を可能にする。Biacoreアッセイの詳細は、Biacoreの
「BIAapplications handbook」に提供される。WO01/27
160に記載される方法をまた使用して、結合親和性を調節し得る。
【0041】
所望の場合、抗体(ポリクローナルであれ、モノクローナルであれ)は、従来技術を使
用して標識され得る。適切な標識としては、発蛍光団、発色団、放射性原子(特に32
および125I)、高電子密度試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガン
ドが挙げられる。酵素は、代表的にはその活性によって検出される。例えば、西洋ワサビ
ペルオキシダーゼは、通常3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を、
分光光度計で定量可能な青色色素に変換する能力によって検出される。「特異的結合パー
トナー」とは、例えば、抗原およびその抗原に特異的なモノクローナル抗体の場合のよう
な、高い特異性でリガンド分子に結合し得るタンパク質をいう。他の特異的結合パートナ
ーとしては、ビオチンおよびアビジンもしくはストレプトアビジン、IgGおよびプロテ
インA、ならびに当該分野で公知の多数のレセプター−リガンド対が挙げられる。上の記
載は、種々の標識を別個のクラスに分類することを意味せず、同じ標識がいくつかの異な
る様式で作用し得ることが、理解されるべきである。例えば、125Iは、放射性標識ま
たは高電子密度試薬として作用し得る。HRPは、酵素またはMAbに対して抗原として
作用し得る。さらに、所望の効果のために種々の標識を組み合わせ得る。例えば、MAb
およびアビジンはまた、本発明の実行において標識を必要とする:従って、MAbをビオ
チンで標識し得、そしてその存在を、125Iで標識したアビジン、またはHRPで標識
した抗ビオチンMAbを用いて検出し得る。他の置換および可能性は当業者に容易に明ら
かであり、本発明の範囲内の等価物とみなされる。
【0042】
本発明における使用のための抗体は、任意の適切な技術を用いることによって産生され
得る。例えば、WO01/27160は、抗体アクセプターの可変領域フレームワークに
対する結合親和性をドナーCDRに付与する方法を開示する。この方法をまた使用して、
可変領域または抗体の結合親和性を最適化(例えば、結合親和性を増強)し得る。1以上
のCDRを有するヒト化抗体を生成する方法は、米国特許第6,180,370号に記載
される。ヒトに対する投与のために最適化された抗体を生成する方法は、WO00/34
317に開示され、これは、免疫原性が低いか、または非免疫原性にされたタンパク質の
生成を記載する。米国特許第5,514,548号は、標的リガンドに高い親和性で結合
するリガンド結合タンパク質(例えば、抗体)の選択のための方法を開示する。米国特許
第5,877,397号は、異種抗体を産生し得るトランスジェニック非ヒト動物を開示
した。これら全ての特許および特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0043】
(処方物および投与方法)
本発明の抗体は、抗体媒介性疾患(例えば、アレルギー、SLE、PBC、ITP、多
発性硬化症、疥癬、クローン病、移植片拒絶およびB細胞リンパ腫)を予防または処置す
るために、治療的に有効な濃度で投与される。この目的を達成するために、抗体を、当該
分野で公知の種々の受容可能な賦形剤を使用して処方し得る。代表的には、抗体は、静脈
内または腹腔内のいずれかで、注射によって投与される。この投与を達成するための方法
は、当業者に公知である。局所的または経口的に投与され得るか、あるいは粘膜を介して
透過し得る組成物を得ることもまた可能であり得る。
【0044】
患者への投与の前に、処方剤(formulant)が抗体に添加され得る。液体処方
物が好ましい。例えば、これらの処方物は、オイル、ポリマー、ビタミン、炭水化物、ア
ミノ酸、塩、緩衝液、アルブミン、界面活性剤または充填剤を含み得る。好ましくは、炭
水化物としては、糖または糖アルコール(例えば、単糖、二糖または多糖)あるいは水溶
性グルカンが挙げられる。糖またはグルカンとしては、フルクトース、デキストロース、
ラクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、スクロー
ス、デキストラン、プルラン、デキストリン、αシクロデキストリンおよびβシクロデキ
ストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチル(hydroxethyl)デンプンなら
びにカルボキシメチルセルロースまたはこれらの混合物が挙げられ得る。スクロースが最
も好ましい。「糖アルコール」は、−OH基を有するC〜Cの炭化水素として規定さ
れ、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリ
セロールおよびアラビトールが挙げられる。マンニトールが最も好ましい。上記のこれら
の糖または糖アルコールは、個々にかまたは組み合わせて使用され得る。この糖または糖
アルコールが、水性調製物中に可溶である限り、使用される量に固定された制限はない。
好ましくは、糖または糖アルコールの濃度は、1.0w/v%と7.0w/v%との間、
より好ましくは2.0w/v%と6.0w/v%との間である。好ましいアミノ酸として
は、左旋性(L)形態のカルニチン、アルギニンおよびベタインが挙げられるが、他のア
ミノ酸もまた加えられ得る。好ましいポリマーとしては、2,000と3,000との間
の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)または3,000と5,000と
の間の平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。凍結乾燥前
または再構成後に溶液中のpH変化を最小化するために、組成物中に緩衝剤を使用するこ
ともまた好ましい。大部分の任意の生理学的緩衝剤が使用され得るが、クエン酸塩(ti
trate)、リン酸塩、コハク酸塩およびグルタミン酸塩の緩衝剤またはこれらの混合
物が好ましい。クエン酸緩衝剤が最も好ましい。好ましくは、その濃度は、0.01モル
濃度〜0.3モル濃度である。処方物に添加され得る界面活性剤は、EP第270,79
9号および同第268,110号に示される。
【0045】
さらに、抗体は、ポリマーへの共有結合的結合体化によって化学的に修飾されて、例え
ば、その循環半減期を増大し得る。好ましいポリマーおよびポリマーをペプチドに結合さ
せる方法は、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,4
95,285号および同第4,609,546号(これらは全て、その全体が本明細書中
に参考として援用される)に示される。好ましいポリマーは、ポリオキシエチレン化ポリ
オールおよびポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、室温で水溶性であり
、そして一般式:R(O−CH−CHO−Rを有し、ここでRは、水素またはア
ルキル基もしくはアルカノール基のような保護基であり得る。好ましくは、この保護基は
、1〜8個の炭素原子を有し、より好ましくはメチルである。記号nは、正の整数であり
、好ましくは1と1,000との間、より好ましくは2と500との間である。PEGは
、1000と40,000との間、より好ましくは2000と20,000との間、より
好ましくは3,000と12,000との間の平均分子量を有する。好ましくは、PEG
は、少なくとも1つのヒドロキシ基を有し、より好ましくは、これは末端ヒドロキシ基で
ある。このヒドロキシ基が、好ましくは活性化されて、インヒビター上の遊離アミノ基と
反応する。しかし、この反応性基の型および量は、本発明の共有結合的に結合体化したP
EG/抗体を達成するために変えられ得る。
【0046】
水溶性ポリオキシエチレン化ポリオールもまた、本発明において有用であることが理解
される。これらには、ポリオキシエチレン化ソルビトール、ポリオキシエチレン化グルコ
ース、ポリオキシエチレン化グリセロール(POG)などが挙げられ、POGが好ましい
。1つの理由は、ポリオキシエチレン化グリセロールのグリセロール骨格が、例えば、動
物およびヒトにおいて天然に存在する、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド
中と同じ骨格であるからである。従って、この分枝は、体内において必ずしも外来因子と
して見られない。POGは、PEGと同じ範囲の好ましい分子量を有する。POGの構造
は、Knaufら、J.Bio.Chem.263:15064−15070(1988
)に示され、そしてPOG/IL−2結合体の考察は、米国特許第4,766,106号
に見出される(これら両方は、その全体が本明細書中で参考として援用される)。
【0047】
循環半減期を増大させるための別の薬物送達システムは、リポソームである。リポソー
ム送達システムを調製するための方法は、Gabizonら、Cancer Resea
ch 42:4734(1982);Cafiso、Biochem Biosphys
Acta 649:129(1981);およびSzoka、Ann Rev Bio
phys Eng 9:467(1980)において考察される。他の薬物送達システム
が、当該分野で公知であり、例えば、Poznanskyら、Drug Deliver
y Systems(R.L.Juliano編、Oxford、N.Y.、1980)
、253−315頁;M.L.Poznasky、Pharm Revs 36:277
(1984)に記載されている。
【0048】
液体薬学的組成物を調製した後、分解を防止し、そして滅菌を保つために、凍結乾燥す
ることが好ましい。液体組成物を凍結乾燥するための方法は、当業者に公知である。使用
の直前に、この組成物は、さらなる成分を含み得る滅菌希釈剤(例えば、リンガー溶液、
蒸留水、または滅菌生理食塩水)で再構成され得る。再構成の際に、この組成物は、好ま
しくは、当業者に公知の方法を使用して被験体に投与される。
【0049】
上記のように、本発明の抗体および組成物は、ヒト患者を処置して、抗体媒介性の疾患
(例えば、アレルギー、SLE、PBCおよびITP)を予防または処置するために使用
され得る。好ましい投与経路は、非経口である。非経口投与において、本発明の組成物は
、薬学的に受容可能な非経口ビヒクルと組み合わせて、注射可能な単位投薬形態(例えば
、溶液、懸濁液または乳濁液)で処方される。このようなビヒクルは、本質的に非毒性で
あり、かつ非治療剤である。このようなビヒクルの例は、生理食塩水、リンガー溶液、デ
キストロース溶液およびハンクス溶液である。非水性ビヒクル(例えば、不揮発油および
オレイン酸エチル)もまた使用され得る。好ましいビヒクルは、生理食塩水中5%のデキ
ストロースである。このビヒクルは、少量の添加剤(例えば、緩衝液および保存料を含む
、等張性および化学的安定性を増強する物質)を含み得る。
【0050】
投薬量および投与の様式は、個体に依存する。一般に、この組成物は、1μg/kgと
20mg/kgとの間、より好ましくは20μg/kgと10mg/kgの間、最も好ま
しくは1mg/kgと7mg/kgとの間の用量で抗体が与えられるように、投与される
。適切には、これは、注入またはボーラス投与で与えられ、ボーラス投与後4〜6時間に
わたって、循環レベルを10〜20倍増大させる。連続的な注入はまた、ボーラス投与後
に用いられ得る。この場合、抗体は、5μg/kg/分と20μg/kg/分との間、よ
り好ましくは7μg/kg/分と15μg/kg/分との間の用量で注入され得る。適切
な処置レジメンは、WO00/27428およびWO00/27433(これらは、本明
細書中で参考として援用される)に開示されている。
【0051】
(非ホジキンリンパ腫治療のための、抗CD40抗体治療の使用)
非ホジキンリンパ腫(NHL)は、脾臓、胸腺およびリンパ節の成分に由来する(Ja
ndl J.H.、Non−Hodgkin’s lymphomas、Jandl J
H(編):Blood、Textbook of Hematology、Boston
、MA、Little Brown、1996、853−887頁)。これは、元々B細
胞およびT細胞に由来するリンパ球悪性疾患の一群からなる。低悪性度のNHLを有する
患者は、通常、放射線療法および化学療法に応答性ではない。この低い応答率および高い
再発の可能性は、9年未満の患者生存期間の中央値に寄与する。
【0052】
CD40による生存/増殖シグナルの不均衡およびFasによる不活発なデス(dea
th)シグナルは、低悪性度のB系統悪性疾患(慢性リンパ球白血病(CLL)およびN
HLを含む)の病因において重要な役割を果たす(Ghia P.、Adv.Cance
r Res.、2000、79:157−73)。低悪性度NHLにおける研究は、疾患
の発症が、Fas経路を介したアポトーシスの減少およびCD40を介した生存シグナル
の増大の結果としての、リンパ腫細胞の蓄積に起因することを示唆する(Ghia P.
、Adv.Cancer Res.、2000、79:157−73)。このことは、化
学療法または放射線療法(これは、活発に増殖している細胞を特異的に標的化する)に対
するリンパ腫細胞の非感受性を説明し得る。
【0053】
本発明はさらに、新規NHL治療に関し、これは、CD40に対する抗体を使用して、
NHL細胞への生存シグナルをブロックすることを包含する。この戦略は、発行された科
学文献中の多数の観察によって支持される。CD40は、B細胞の発生を通じて、B細胞
表面で発現される。研究によって、CD40が、悪性B細胞への生存シグナルを提供し、
インビトロでの増殖を刺激することを実証した(Romano M.F.ら、Leuk
Lymphoma、2000年1月、36(3−4):255−62;Furman R
.R.、J.Immunol.、2000年2月15日、164(4):2200−6;
Kitada S.、Br.J.Haematol.、1999年9月、106(4):
995−1004;Romano M.F.、Blood、1998年8月1日、92(
3):990−5;Jacob A.、Leuk.Res.、1998年4月、22(4
):379−82;Wang D.、Br.J.Haematol.、1997年5月、
97(2):409−17;Planken E.V.、Leukemia、1996年
3月、10(3):488−93;Greiner A.、Am.J.Pathol.、
1997年5月、150(5):1583−93)。インビボのCD40シグナル伝達の
ためのCD40Lを提供する微小環境が存在するという、患者からの証拠が存在する:C
D40は、B系統のNHLを有する患者の86%において、リンパ腫細胞上に発現される
(Uckun F.M.、Blood、1990年12月15日、76(12):244
9−56)。同じB細胞リンパ腫細胞におけるCD40/CD40Lの同時発現の発見は
、NHL患者におけるオートクライン増殖シグナルループの可能性を提起する(Clod
i K.、Br.J.Haematol.、1998年10月、103(1):270−
5)。NHL患者の血清における可溶性CD40Lの有意な増加もまた存在する(You
nes A.、Br.J.Haematol.、1998年1月、100(1):135
−41)。可溶性CD40Lは、初代NHLリンパ腫細胞培養物において、リンパ腫細胞
の増殖を誘導し得る(Andersen N.S.、Blood、2000年9月15日
、96(6):2219−25;Buske C.、Leukemia、1997年11
月、11(11):1862−7)。CD40Lの発現は、低悪性度MALTリンパ腫に
おいて、腫瘍周辺領域において増大する(Carbone A.、Am.J.Patho
l.、1995年10月、147(4):912−22;Greiner A.、Dev
.Immuol.、1998、6(3−4):187−95)。B細胞系統の腫瘍上で発
現される高レベルのCD40、およびこれらの悪性細胞への生存シグナルとしてのその機
能を考慮して、アンタゴニストの抗CD40抗体は、NHLにおいて治療的価値を有し得
る。
【0054】
15B8(ヒトIgG2重鎖遺伝子座およびヒトK軽鎖遺伝子座を有するトランスジェ
ニックマウス(Xenomouse、Abgenix)の免疫によって生成されるヒトI
gG2サブタイプの抗ヒトCD40モノクローナル抗体)を使用した。臨床前NHLイン
ビトロモデルにおける15B8の潜在的な効力を実証するために、15B8を、ritu
ximab処置したNHL患者または未処置のNHL患者のいずれかから得た悪性B細胞
(NHL細胞)を使用して試験した。rituximabは、再発性または抵抗性の、低
悪性度または小胞性のNHLの処置のための、抗CD20モノクローナル抗体である。
【0055】
初代リンパ腫細胞は、標準的な培養倍地中で増殖せず、培養物中で数日後にアポトーシ
スに陥るので、腫瘍細胞を、B細胞増殖因子であるインターロイキン−4(IL−4)の
存在下または非存在下で、照射したCD40リガンド(CD40L)トランスフェクトフ
ィーダー細胞(Arpin,C.、Science、1995、268:720−722
)と同時培養した。次いで、示された濃度(0.01μg/ml〜10μg/ml)の抗
体(アゴニストの抗CD40 MS81、またはアンタゴニストの抗CD40 15B8
あるいはアイソタイプコントロールのhuIgG2)を、培地に添加した。37℃での4
8時間のインキュベーション後、培養細胞をH−チミジンで18時間パルスした。次い
で、この細胞を収集し、そしてH−チミジン取り込み量について分析した(Schul
tz,J.L.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1995、92:8
200−8204)。全てのサンプル条件は、3連であった。
【0056】
これらのNHL細胞初代培養物アッセイにおいて、15B8単独もIL−4との組み合
わせも、NHL細胞のインビトロでの増殖を刺激しなかった。対照的に、アゴニストの抗
CD40 MS81は、同じ条件下でNHL細胞の増殖を誘導した。15B8は、インビ
トロにおいて、CD40Lによって刺激されるNHL細胞の増殖(P=0.05)ならび
にCD40LおよびIL−4によって刺激されるNHL細胞の増殖(P<0.05)の統
計的に有意な阻害を示した。それぞれ、1〜10μg/mlまたは0.1〜10μg/m
lの濃度範囲で、15B8は、CD40LまたはCD40LおよびIL−4によって刺激
されるNHL細胞の増殖の、統計的に有意な用量に関連する阻害を示した(P<0.00
5)。
【0057】
リンパ腫について開発された治療剤中のヒト抗原特異的なMabの評価のために現在使
用される、2種類の臨床前モデルが存在する。1つのモデルは、異種移植マウスのインビ
ボモデルであり、ここで、EBV形質転換リンパ腫細胞株(例えば、Daudi(バーキ
ットリンパ腫)細胞またはRaji(バーキットリンパ腫)細胞)が、SCID/ヌード
マウスに異種移植される。しかし、これらのモデルにおいて、結果は、特定の不死細胞株
(これは、1つのEBV形質転換細胞に由来する)に対する影響を反映するだけである。
バーキットリンパ腫細胞は、リンパ芽球細胞であることが公知である(Ambinder
R.F.、Cancer Treat.Res.、1999、99:27−45;Qu
intanilla−Martinez L.、Leuk.Lymphoma、1998
年6月、30(1−2):111−21;Klein G.、Acta Microbi
ol.Immunol.Hung.、1996、43(2−3):97−105)が、一
方、NHL患者由来のリンパ腫細胞は、成熟B細胞段階であると考えられる(Ghia
P.、Adv.Cancer Res.、2000、79:157−73)。B細胞のE
BV形質転換は、CD40シグナル伝達経路中の多くの構成要素の変化を生じる(Uch
ida J.、Science、1999年10月8日、286(5438):300−
3;Farrell P.J.、Biomed.Pharmacother.、1997
、51(6−7):258−67)。NHL細胞および正常B細胞におけるCD40シグ
ナル伝達とは対照的に、CD40シグナル伝達は、EBV形質転換バーキットリンパ腫細
胞株における増殖停止を導く(Fukuda M.、Viral Immunol.、2
000、13(2):215−29;Baker M.P.、Blood、1998年1
0月15日、92(8):2830−43)。従って、異種移植モデルにおけるアンタゴ
ニスト抗CD40 MAb(15B8)の試験の結果は、NHL患者による抗体(15B
8)に対する応答を予測することはできない。
【0058】
他のモデルは、NHL患者由来のリンパ球細胞のインビトロ増殖阻害アッセイであり、
これを、本明細書中で使用した。その利点は、この結果が、NHL患者由来のリンパ腫細
胞の、試験される薬剤(15B8)に対する感受性を予測することである。しかし、その
結果は、規定された条件下でのインビトロの研究から得られる。以前に公開された研究は
、ラット抗マウスCD40(これは、インビトロでADCCおよびCDDを誘導できない
)が、2つの同質遺伝的なマウスBリンパ腫モデル(BCL1およびA31)において良
好な効力を示したことを報告した(Tutt A.L.、J.Immunol.、199
8年9月15日、161(6):3176−85)。抗マウスCD40に関する抗腫瘍効
果は、試験された抗Idよりも時間的にゆっくりと生じた。抗マウスCD40は、試験さ
れたマウスモデルにおいて抗Idのようなシグナル伝達を指向しない、表面CD40発現
に依存する、重要な増殖シグナルをブロックすることによって、作動し得る。この研究は
、抗CD40によるCD40/CD40Lシグナル伝達のブロックが、インビボで有効で
あり得ることを示唆する。15B8は、ヒトIgG2サブタイプであるので、試験した場
合、インビトロでFcγレセプターに結合せず、ADCCおよびCDCをインビトロで誘
導できなかった。15B8は、ラット抗マウスCD40に対して類似の特性のものである
。このデータは、15B8が、NHL患者、特にRituxan耐性患者にとって有益で
あるという仮説を支持する。
【0059】
ここで、本発明は、特定の有利な実施形態を示す以下の実施例を参照して示される。し
かし、これらの実施形態は、例示であり、いかようにも本発明を限定するとは解釈される
べきでないことに、留意すべきである。
【実施例】
【0060】
(実施例)
(一般的方法)
(免疫グロブリン定量のためのELISAアッセイ)
ヒトIgMおよびIgGの濃度を、ELISAによって推定した。96ウェルのELI
SAプレートを、0.05Mの炭酸塩緩衝液(pH9.6)中の2μg/mlのヤギ抗ヒ
トIgG MAb(The Jackson Laboratory、Bar Harb
or、Marine)または2μg/mlのヤギ抗ヒトIgM MAb 4102(Bi
oSource International、Calif.)を用いて、4℃にて16
時間インキュベートすることによってコーティングした。プレートをPBS−0.05%
Tween−20(PBS−Tween)で3回洗浄し、そしてBSAで1時間飽和さ
せた。2回の洗浄後、プレートを、異なる希釈の試験サンプルと共に、37℃で2時間イ
ンキュベートした。3回の洗浄後、結合したIgGを、1μg/mlのペルオキシダーゼ
標識したヤギ抗ヒトIgG MAbまたはヤギ抗ヒトIgM MAbと共に、37℃で2
時間インキュベートすることによって検出した。プレートを4回洗浄し、そして結合した
ペルオキシダーゼ活性を、O−フェニレンジアミンを基質として添加することによって検
出した。ヒトIgGまたはIgM標準(Caltaq、Burlingame、CA)を
使用して、各アッセイについての標準曲線を確立した。
【0061】
(ヒト末梢血からの末梢血単核細胞(PBMC)の単離)
50mlのポリエチレンチューブあたり、20mlのFicoll−Paque溶液(
低内毒素、Phrmacia)を、30分間、3つのチューブに添加し、その後血液を添
加した。このFicoll−Paque溶液を室温まで温めた。1:10希釈の3Lの漂
白剤を調製し、これを使用して血液を含有する全てのチューブおよびピペットを洗浄した
。血液を、Ficoll層を乱さずに、1.5ml血液/1mlのFicoll−Paq
ueで、Ficoll−Paque溶液の上部に層にした。これらのチューブを、室温に
て1700rpmで30分間遠心分離し、ブレーキをかけて遠心分離をオフにした。上層
(血漿)を可能な限り多く除去し、溶液の第二層を除去するのを回避するために、減圧を
最小にした。第二層(これは、Bリンパ球およびTリンパ球を含む)を、滅菌パスツール
ピペットを用いて収集し、そして2本の50mlポリスチレンチューブに配置した。収集
物を、添加物を含まない冷RPMI(3倍容積)をもちいて希釈し、そしてチューブを1
000RPMで10分間遠心分離した。媒体を吸引によって除去し、そして両方の50m
lチューブからの細胞を、合計10mlの冷RPMI(添加剤を含む)中に再懸濁し、そ
して15mlのチューブに移した。細胞を、血球計を用いて計数し、次いで、1000R
PMで10分間遠心分離した。媒体を除去し、細胞を4mlのRPMI中に再懸濁した。
この画分は、PBMCを含んだ。
【0062】
(PBMCからのB細胞の単離)
100μlのDynabeads(抗hCD19)を、5mlのプラスチックチューブ
に配置した。3mlの滅菌PBSをこのビーズに添加し、混合し、磁性ホルダに配置し、
次いで2分間静置させた。溶液を、パスツールピペットを使用して除去し、3mlの滅菌
PBSを添加し、混合し、そして磁性ホルダに配置し、次いで2分間静置させた。滅菌P
BSを用いるこの手順を、もう一度繰り返して、合計3回洗浄した。PBMCをこのビー
ズに添加し、そして混合しながら4℃で30分間インキュベートした。PBMCおよびビ
ーズを含むチューブを、磁性ホルダに2分間配置し、次いで溶液を磁性ホルダ中の新たな
5mlチューブに移した。2分後、溶液を、新たな15mlチューブに移した。この工程
をもう4回繰り返し、最初の4回の溶液を15mlチューブに収集し、1000RPMで
5分間遠心分離した。この工程によって、T細胞分離のためのペレットを生成した。
【0063】
100μlのRPMI(添加剤を含む)を添加してビーズを収集し、そして溶液を0.
7mlのチューブに移した。10μlのDynal DetachaBeadsを、室温
にて懸濁液に添加し、そしてそれを45分間回転させた。懸濁液を新たな5mlチューブ
に移し、そして3mlのRPMI(添加剤を含む)を添加した。チューブを、2分間磁性
ホルダに配置した。溶液を、ホルダ内の新たな5mlチューブに移し(2分間)、次いで
15mlチューブに移した。上記の工程をもう3回繰り返し、溶液を15mlチューブに
収集した。15mlチューブを1000RPMで10分間遠心分離し、この細胞を10m
lのRMPIに再懸濁した。洗浄をもう2回繰り返し、合計3回洗浄した。細胞を、最後
の遠心分離前に計数した。この工程によって、B細胞の精製を完了した。細胞を、90%
FCSおよび10%DMSO中に保存し、そして−80℃で冷凍した。
【0064】
(T細胞の単離)
ヒトT細胞Enrichment Column(R&D systems、抗hCD
3カラムキット)を、2mlの10×カラム洗浄緩衝液および18mlの滅菌希釈水を混
合することによって、20mlの1×カラム洗浄緩衝液を使用して、調製した。このカラ
ムを70%エタノールで浄化し、そして15mlチューブの上部に置いた。カラムの上部
キャップを最初に外して、カラムの底に気泡が入ることを回避した。次に、底のキャップ
を外して、先端を70%エタノールで洗浄した。カラム内の液体を、15mlチューブ内
に排出させた。カラムの緩衝液が、白色フィルタのレベルまで排出された後、新たな滅菌
15mlチューブを、カラムの下に配置した。B細胞を枯渇させたPBMC画分を、1m
lの緩衝液中に懸濁し、そしてカラムの上部に添加した。細胞を、カラムを用いて室温に
て10分間インキュベートさせた。T細胞を、各々2mlの1×カラム洗浄緩衝液の4ア
リコートを用いて、カラムから溶出させた。収集したT細胞を、1000RPMで5分間
遠心分離した。上清を除去し、細胞を10mlのRPMI中に再懸濁した。細胞を計数し
、そしてもう1回遠心分離した。上清を除去し、T細胞の精製を完了した。細胞を、90
%FCSおよび10%DMSO中に保存し、そして−80℃で冷凍した。
【0065】
上記の手順について、RPMI組成物は、10%FCS(56度にて45分間不活化し
た)、1%Pen/Strep(100u/mlのペニシリン、0.1μg/mlのスト
レプトマイシン)、1% グルタミン酸、1%ピルビン酸ナトリウム(sodium p
uravate)、50μM 2−MEを含んだ。
【0066】
(フローサイトメトリーアッセイ)
Ramos細胞(10細胞/サンプル)を、100μlの一次抗体(PBS−BSA
中10μg/ml)中で、4℃で20分間インキュベートした。PBS−BSAまたはH
BSS−BSAで3回洗浄した後、細胞を、ヤギ抗(ヒトIgG)抗体(Caltaq)
のFITC標識F(ab’)フラグメント100μl中で、4℃で20分間インキュベ
ートした。PBS−BSAで3回およびPBSで1回洗浄した後、細胞を、0.5mlの
PBS中に再懸濁した。分析を、FACSCAN V(Becton Dickinso
n、San Jose、Calif.)を用いて実行した。
【0067】
(ハイブリドーマクローンの生成)
先にde Boerら、J.Immunol.Meth.113:143(1988)
によって記載されたように、50%ポリエチレングリコールを用いて、免疫したマウス由
来の脾細胞を、SP2/0またはP3×63Ag8.653マウス骨髄腫細胞と10:1
の比率で融合した。この融合細胞を、ヒポキサンチン(0.1mM)、アミノプテリン(
0.01mM)、チミジン(0.016mM)および0.5ng/mlのhIL−6(G
enzyme,Cambridge,Mass.)を補充した完全IMDM培地中に再懸
濁した。次いで、この融合細胞を、96ウェル組織培養プレートのウェル間に分配して、
各ウェルを、平均して1増殖ハイブリドーマに維持した。
【0068】
10〜14日後に、ハイブリドーマ集団の上清を特異的抗体生成についてスクリーニン
グした。ハイブリドーマクローンによる特異的抗体生成のスクリーニングのために、各ウ
ェルからの上清をプールし、そして最初に抗CD40活性特異性について、ELISAに
よって試験した。次いで、この陽性物を、FACSアッセイについて上に記載したように
、EBVで形質転換したB細胞の蛍光細胞染色のために使用した。陽性ハイブリドーマ細
胞を、0.5ng/ml hIL−6を含むIMDM/FBS中の限界希釈によって2回
クローン化した。
【0069】
(実施例1)
(Sf9細胞におけるヒトCD40の発現)
CD40をコードする組換えウイルスオートグラファ(Autographa)カリフ
ォルニカバキュロウイルス(AcNPV)に感染させたSf9昆虫細胞を、24ウェルプ
レートにおいて48時間培養した。組織培養培地を除去した後、このプレートを、1%
BSAを含むPBS(PBS−BSA)中の0.25mlの抗体と共に、室温(RT)に
て45分間インキュベートした。PBS−BSAを用いて3回洗浄した後、このプレート
を、PBS−BSA中の西洋わさびペルオキシダーゼに結合体化したヤギ抗(マウス全I
g)免疫グロブリン(Zymed,South San Francisco,Cali
f.)の1/250希釈(250μl)と共に、室温にて35分間インキュベートした。
結合していないペルオキシダーゼ活性を、PBS−BSAで5回洗浄して除去した。結合
したペルオキシダーゼ活性を、10mlのエタノール(10mM酢酸ナトリウム、10m
M EDTA緩衝液(pH5.0)を含有する)中に、2mg/mlの3,3',5,5'
−テトラメチルベンジジン(0.5ml)を希釈し、そして0.03%(v/v)H
を添加することによって調製したアッセイ混合物の添加によって明らかにした。この反
応を、1M HSO(100μl)の添加によって10分後に停止させた。
【0070】
(実施例2)
(ヒト免疫グロブリントランスジェニックマウスにおいて惹起された抗体)
ヒトIgG2重鎖遺伝子座およびヒトK軽鎖遺伝子座に対するトランスジェニックマウ
スを、ヒトCD40を発現するSf9細胞で免疫した。免疫の方法を、de Boer、
米国特許第6,004,552号に記載されるように実行した。要するに、マウスを、A
cCD40ウイルスに感染させたSf9細胞(5×10個)を用いて、0日目および1
4日目に腹腔内注射した。21日目に、100μlの血清を特異的抗体の存在について試
験するために獲得した。少なくとも2週間の静置期間後、このマウスに、AcCD40ウ
イルスに感染させた5×10細胞を用いる最後の注射を受けさせた。この最後の注射の
3日後に、脾細胞を細胞融合のために使用した。
【0071】
マウスを、ELISAにおいて、組換え体CD40とのマウスの血清反応性に基づく融
合について選択した。免疫したマウス由来の脾細胞を、KohlerおよびMilste
in、Nature 256:495−96(1975)の方法(改変を伴う)によって
、マウス骨髄腫細胞(NS/O)に融合した。HAT選択培地におけるハイブリドーマの
増殖を、ELISAにおいて、CD40に結合するこれらの能力に基づくさらなる特徴付
けのために選択した。非トランスフェクトSf9細胞溶解物に結合した抗体または抗マウ
ス軽鎖抗体を生成したハイブリドーマを、考察からはずした。Sf9細胞溶解物に結合し
なかったCD40結合抗体または抗マウス軽鎖抗体を生成したハイブリドーマを、サブク
ローン化した。サブクローンを、さらなる特徴付けのための抗体を生成するために使用し
た。ハイブリドーマ抗体をまた、それらの表面上でヒトCD40を発現するRamosリ
ンパ腫細胞を染色する能力について試験した。ELISAによって測定した場合の、最大
半減のCD40結合を示す抗体の濃度を以下の表2に示す。
【0072】
(表2)
(ELISAによる最大半減CD40結合を示す抗CD40抗体の濃度)
【0073】
【表2】


次いで、ハイブリドーマ抗体を、抗CD28活性化ヒト末梢血T細胞で刺激したヒト末
梢血B細胞によるIgMの生成を阻害する能力について選択した(図1)。ハイブリドー
マ抗体を、CD40Lおよび抗IgMによって誘導されるヒト末梢血B細胞の増殖を阻害
する能力について、さらにスクリーニングした(図2)。ハイブリドーマをまた、休止し
ているヒト末梢血B細胞における増殖を誘導する能力についてスクリーニングした(図3
)。いくつかのハイブリドーマ(例えば、36C4−G2)は、著しい刺激性活性を示し
た。従って、CD40に結合し得る場合でさえ、全てヒト抗体が所望の阻害効果を提示す
るとは限らない。4つのハイブリドーマを、最適阻害活性を有する約36個から選択した

【0074】
(実施例3)
(選択したハイブリドーマの結合特性)
4つのハイブリドーマを、上記の実施例2に記載のように、B細胞活性化に関するこれ
らの阻害効果に基づいて選択した。これらの結合特性を、センサー表面上に捕捉された抗
CD40抗体を有する移動相として可溶性組換えCD40を用いるBIAcore評価に
よって決定した。阻害抗体は、表3に示すように、本明細書中に記載される使用にとって
適切な種々の結合親和性を示した。
【0075】
(表3)
【0076】
【表3】


固定相=CD40、移動相=Fab
**固定相=抗体、移動相=sCD40
(実施例4)
(CD40に結合する可変ハイブリドーマ)
選択したモノクローナル抗体の相対的な結合特性を、フローサイトメトリーによって試
験した。全血を、FITC−結合体化15B8および抗CD20−PECy5の0.1μ
gを添加した、種々の濃度の非標識ハイブリドーマ抗体と共に30分間インキュベートし
た。次いで、RBCを溶解し、白血球集団を固定し、そして分析のための標本を獲得した

【0077】
これらの研究は、非標識15B8が、ヒト末梢血由来のCD20+リンパ球への非標識
20C4の結合をブロックすることを示す(表4)。対照的に、非標識20C4は、この
細胞集団への標識15B8の結合を弱くブロックするだけであった。従って、2つの抗体
は、同様かまたは密接に関連したエピトープを認識するが、Biacore分析において
示される親和性の差異はまた、低親和性抗体のより弱い競合能力に反映される。標識MA
bを、ヒト、Rhesus(Macaca mulatta)およびカニクイザル(Ma
caca fascicularis)マカーク由来の末梢血細胞を染色するために使用
した。全3種を、15B8、20C4、12D9および9F7のMAbによって染色した
(図7)。
【0078】
(表4)
【0079】
【表4】


MFI:平均の蛍光強度
(実施例5)
(ヒト末梢B細胞による免疫グロブリン分泌の阻害)
プレートを、抗ヒトCD3(2μg/ml、UCHTi、NE/LE、Pharmin
gen)を用いて、4℃にて一晩コートした。この予めコートしたプレートを、PBSを
用いて3回洗浄した。T細胞を、3000Radで放射線照射した。このB細胞を、1m
lあたり10個で、RPMI(+)に再懸濁した。100μlのB細胞を、このウェル
中に添加し、次いで抗CD40抗体をウェル中に添加した。このT細胞を、1mlあたり
10個で、RPMI(+)に再懸濁した。ヒト組換え体IL2(Chiron、−20
℃で保蔵した10u/μlの水溶液)を、細胞懸濁液に200u/mlまで添加した。1
00μlの懸濁液を各ウェルに入れ、B細胞および抗体と十分に混合した。RPMI(+
)をウェルに添加し、計200μlにした。ELISAのために細胞を遠心沈殿させた後
、このプレートを、培地の回収前の8日間、37℃にてインキュベートした。その結果を
、以下の表5に示す。
【0080】
(表5)
(T細胞刺激B細胞によるIgM分泌に関するモノクローナル抗体の効果)
【0081】
【表5】


この結果は、本発明に記載の抗体の存在下において、T細胞刺激ヒト末梢血B細胞によ
る免疫グロブリン(IgM)の分泌が減少することを示す。
【0082】
(実施例6)
(Jurkat刺激したヒト末梢B細胞の増殖の阻害)
B細胞を、上記のように精製した。10個の精製したB細胞、10個の照射(30
00 Rad)したJurkat細胞、試験されるべき抗体を、抗CD3でコートした9
6ウェルプレートに添加した。このプレートを37℃にて4日間にわたってインキュベー
トし、最後の18時間の間にH−チミジンを用いて細胞を標識した。この細胞を収集し
、そして計数した。この結果を以下の表6に示す。
【0083】
(表6)
(Jurkat細胞刺激したB細胞増殖に対する抗体の効果)
【0084】
【表6】


この結果は、本発明の抗体の存在下において、Jurkat細胞によって刺激されるB
細胞増殖が阻害されることを示す。
【0085】
(実施例7)
(CD40L刺激したヒト末梢B細胞の増殖の阻害)
B細胞を上記のように精製した。10個の精製したB細胞、2×10個のホルムア
ルデヒド固定したCHO−CD40L細胞、および試験されるべき抗体を、抗CD3コー
トした96ウェルプレートに添加した。このプレートを37℃にて4日間にわたってイン
キュベートし、最後の18時間の間にH−チミジンを用いて細胞を標識した。この細胞
を収集し、そして計数した。この結果を以下の図1に示す。
【0086】
(実施例8)
(B細胞増殖の刺激)
B細胞(1ウェルあたり、1×10個)を、U底96ウェルマイクロタイタープレー
トにおいて、10%胎仔ウシ血清を補充したRPMI(200μl)中で培養した。B細
胞を、固定した抗(IgM)抗体(5μg/ml、Sigma)の添加によって刺激した
。種々の濃度のMAbを、初めに微少培養物に添加し、そして増殖を18時間のパルス後
H−チミジンの取り込みを測定することによって4日目に評価した。この結果を図2
に示す。
【0087】
(実施例9)
(抗IgMによって刺激されたヒト末梢B細胞の増殖に対する抗CD40抗体の効果)
10個の精製したB細胞、抗IgMビーズ(5μg/ml、Sigma)、および試
験されるべき抗体を、96ウェルプレートに添加した。このプレートを37℃にて4日間
にわたってインキュベートし、最後18時間の間にH−チミジンを用いて細胞を標識し
た。この細胞を収集し、そして計数した。この結果を図3に示す。
【0088】
(実施例10)
(ヒト末梢B細胞の増殖に対する抗CD40抗体架橋の効果)
10個の精製したB細胞を、抗CD40コートした96ウェルプレートに添加した。
このプレートを37℃にて4日間にわたってインキュベートし、最後18時間の間に
−チミジンを用いて細胞を標識した。この細胞を収集し、そして計数した。この結果を図
4に示す。
【0089】
(実施例11)
(ヒト抗CD40抗体のポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)
mRNAを、実施例2に記載のように生成したハイブリドーマから調製し、RT−PC
RをmRNAに関して実施した。プライマーの2つのセットを、PCR産物を生成するた
めに使用した:ユニバーサルプライマーまたは重鎖および軽鎖のファミリーのプールのプ
ライマー;ならびにファミリー特異的プライマー。PCR産物をゲル上で分析し、配列決
定し、そして翻訳した。ポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、表7にまとめた配
列表において提供する。
【0090】
(表7)
【0091】
【表7】


抗体の特異的領域を、図5、6および8〜14に示す。この情報を使用して、本発明に
従う使用のためのさらなるモノクローナル抗体を設計し得る。これらのモノクローナル抗
体は、1つ以上のフレームワークまたはCDR領域の置換により、本明細書中に記載され
る抗体とは異なり得る。このモノクローナル抗体はまた、1つ以上のアミノ酸置換によっ
て異なり得、これはフレームワークおよびCDRの特定領域において異なることが示され
る(図5および6)。一旦、アミノ酸配列が設定されると、慣用的手順が使用され、モノ
クローナル抗体の発現のための対応するポリヌクレオチド配列を構築し得る。モノクロー
ナル抗体の発現および精製は、米国特許第5,545,403号、同第5,545,40
5号および同第5,998,144号(本明細書中で参考として援用される)中に開示さ
れるような、当該分野で公知の方法を用いて行われる。
【0092】
(実施例12)
(インビトロでの悪性B細胞増殖に対する15B8の効果)
15B8がインビトロにおいてCD40L様の増殖シグナルを提供するかどうかを試験
するため、腫瘍に浸潤されたリンパ節由来のB細胞(NHL細胞)を、抗体未処置のNH
L患者1人、rituximab感受性のNHL患者1人およびrituximab耐性
のNHL患者1人より、採取した。これらのNHL細胞を、以下の4つの異なる培養条件
下で研究した:抗体の添加なし(培地);ヒトアイソタイプ抗体IgG2の添加(コント
ロール);抗CD40抗体MS81(アゴニスト抗体)の添加;および15B8の添加。
IL−4の存在下または非存在下にて、全ての抗体を1μg/mL、2μg/mLおよび
5μg/mLで試験した。2人の患者由来のNHL細胞を、上記のように同じ4つの条件
下でIL−4(2ng/ml)の存在下で、培養した。B細胞増殖を、上記のH−チミ
ジン取り込みにより測定した。
【0093】
抗CD40抗体15B8は、1μg/mL、2μg/mLおよび5μg/mLの濃度で
は、IL−4の存在下または非存在下のどちらでも、NHL細胞が増殖するように刺激し
なかった。対照的に、同じ濃度で試験したアゴニスト抗CD40抗体(MS81)は、I
L−4の存在下および非存在下で、全ての患者のサンプルにおいてNHL細胞増殖を刺激
した。1人の患者からの代表的な結果を、以下に示す(図15および図16)。上記2人
の患者由来のNHL細胞のIL−4存在下での結果、および3人の患者由来のNHC細胞
のIL−4非存在下での結果は、同等であった。これらの結果は、15B8が、アゴニス
ト抗CD40抗体ではなく、そしてインビトロにおいてrituximab感受性のNH
L患者、rituximab未処理のNHL患者またはrituximab耐性のNHL
患者由来のNHL細胞の増殖を刺激しないことを示す。
【0094】
NHL細胞のFACS分析を、直接標識した15B8−FITCまたは15B8+抗H
uIgG2−FITCの一方を用いて実施し、試験されたNHL細胞表面にCD40が発
現されていること、および15B8がNHL細胞に結合することを確認した。ritux
imab感受性の患者2人およびrituximab耐性の患者4人(合計6人の患者)
由来のNHL細胞を試験した。全ての患者由来のNHL細胞は、CD40を発現し、そし
て15B8に結合した。所定のどの患者においても15B8結合陽性細胞集団は、約66
%〜91%であった。
【0095】
(実施例13)
(15B8は、インビトロでNHL細胞のCD40Lで刺激した増殖を阻害する)
インビトロにおいてCD40Lによって提供される増殖シグナルをブロックする15B
8の能力を評価するため、患者由来のNHL細胞を、実施例12に記載するように、4つ
の異なる条件下でCD40L発現フィーダー細胞上の懸濁物中にて培養した:抗体の添加
なし(培地);ヒトアイソタイプ抗体IgG2の添加(コントロール);抗CD40抗体
MS81(アゴニスト抗体)の添加;および15B8の添加。全ての抗体を、IL−4存
在下または非存在下で1μg/mL、2μg/mLおよび5μg/mLの濃度で添加した
。抗体未処置の患者1人、rituximab感受性の患者2人、およびrituxim
ab耐性の患者5人(合計8人の患者)由来のNHL細胞を、上記と同じ4つの条件下で
、IL−4の存在下(2ng/ml)にて培養した。rituximab感受性の患者3
人およびrituximab耐性の患者4人(合計7人の患者)由来のNHL細胞を、同
様の条件下でIL−4の非存在下にて培養した。NHL細胞の増殖を、H−チミジン取
り込みにより測定した。
【0096】
以下の表8は、インビトロでCD40L単独で刺激した、rituximab感受性の
患者2人(一方の患者からのデータは、2回の別々の実験において再現性があった)、お
よびrituximab耐性の患者4人(合計6人の患者)由来のNHL細胞の増殖に対
する15B8の阻害効果を示す。1人の患者(A)の細胞からの代表的な結果を示す(図
17)。15B8は、6人の患者において、コントロールと比較した場合、約12〜68
%増殖を阻害する。15B8細胞による阻害程度は、患者サンプルおよび15B8の用量
レベルに依存して変化する。試験した7人の患者サンプルのうちの6つからのデータの統
計学的分析は、CD40L刺激したNHLの細胞増殖の15B8による阻害が、1μg/
mlで有意なことを示す(p=0.05)。統計学的に有意な用量応答(p<0.005
)が存在し、この阻害効果は15B8用量の増加とともに増強される。
【0097】
(表8)
(IL−4非存在下におけるNHL患者細胞のCD40−L刺激した増殖に対する15
B8 Mabの効果
【0098】
【表8】


1.患者由来のNHL細胞を、培地、アゴニストCD40(MS81)、アンタゴニスト
抗CD40(15B8)またはhuIgG2アイソタイプコントロールの存在下にて、ヒ
トCD40Lを発現するマウスL細胞と共にインビトロにて培養した。NHL細胞の増殖
を、3H−チミジン取り込みによって測定した(rituximab感受性の患者1人か
らのデータは、CD40Lのcpmが2000未満であるので表にはない)
2.抗CD20 Mab治療に対する患者の応答;CR、完全に応答を示す患者;NR、
応答のない患者
3.15B8%阻害=100−(15B8 cpm/huIgG2 cpm×100);
3つの測定の平均を示す。
【0099】
(以下の)表9は、インビトロにおいてCD40LおよびIL−4の両方によって刺激
された、抗体未処置の患者1人、rituximab感受性の患者2人(両患者のサンプ
ルからのデータは、再現性よく2回繰り返された)、およびrituximab耐性の患
者5人(合計8人の患者)由来のNHL細胞の増殖に対する15B8の阻害効果を示す。
15B8は、1μg/mlで、NHL細胞のCD40LおよびIL−4の媒介性増殖を有
意(p<0.05)に阻害した。阻害の程度は、インビトロで、8人全ての患者に由来す
るサンプルにおいて、高用量(5または10μg/ml)で、18〜69%の範囲であっ
た。0.01〜10ug/mlの15B8濃度範囲で、15B8によるこの阻害効果の統
計学的に有意な用量応答(p<0.005)が存在する(図18は、代表的な、1つの用
量応答曲線を示す)。
【0100】
これらのインビトロにおける結果は、15B8を用いた処置が患者のNHL細胞に対す
るCD40媒介性増殖シグナルをブロックし得ることを、示唆する。
【0101】
(表9)
(IL−4の存在下での、CD40−L刺激されたNHL患者細胞に対する15B8
MAbの効果
【0102】
【表9】




1.患者由来のNHL細胞を、表1に記載する条件下、ヒトCD40Lを発現するマウス
L細胞と共に2ng/mlでのIL−4(ヒトインターロイキン−4)の存在下で培養し
た。
2.抗CD20 Mab治療に対する患者の反応;CR、完全な応答を示す患者;NR、
応答のない患者;未処置、未処置の患者
3.hIgG2と比較した%阻害。15B8 %阻害=100−(15B8 cpm/h
uIgG2 cpm × 100)
(実施例14)
(インビトロでの異なる種における15B8のアゴニスト活性およびアンタゴニスト活
性の実証)
15B8がアゴニスト抗CD40であるか、またはアンタゴニスト抗CD40であるか
否かを決定するために、15B8を、ヒトおよび5つの異なる霊長類種(チンパンジー(
chimp)、マーモセット、カニクイザル、アカゲザル、およびヒヒを含む)由来の細
胞を用いて、以下に記載するいくつかのインビトロアッセイにて試験した。
【0103】
15B8は、ヒト末梢血B細胞を活性化せず、ヒト、チンパンジーおよびマーモセット
においてインビトロでPBMC増殖を引き起こさない。末梢血から得られたヒトB細胞上
のCD40の活性化は、B細胞の増殖を導く(van Kooten C.,J.Leu
koc.Biol.,2000 Jan.,67(1):2−17;Denton M.
D.,Pediatr.Transplant.,1998 Feb.,2(1):6−
15;Evans D.E.,J.Immunol.,2000 Jan.15,164
(2):688−97;Noelle R.J.,Agents Actions Su
ppl.,1998,49:17−22;Lederman S.ら,Curr.Opi
n.Hematol.,1996,3(1):77−86)。15B8がB細胞上のCD
40を活性化するか否かを試験するために、末梢血由来の新しく単離したヒトB細胞また
はPBMCを用いて、一連の増殖アッセイを実行した。このアッセイにおいて15B8の
効果を、Hメチル−チミジン取り込みによって測定した(John E.Coliga
nら,Current Protocols in Immunology,Vol.1
3:12,John Wiley & Sons,Inc.,1991;Kwekkeb
oom J.,Immunology,1993 Jul,79(3):439−444
)。以下の表10の濃度0.2μg/ml、1μg/mlおよび5μg/mlにおいて示
されるように、15B8は、CD40Lに対する効果(これは、ヒトB細胞に対する強力
な増殖促進効果を実証する)と比較して、精製B細胞増殖に対して最小の効果しか有さな
かった。表3に示されるように、2人の健康なボランティア由来の精製B細胞における結
果は、比較可能である。
【0104】
15B8をさらに、新しく単離したヒトPBMCを用いたヒトPBMC増殖の刺激に対
して、CD40Lと比較した。以下の表10に要約されるように、15B8は、16人の
ボランティア由来の試験したサンプルにおいて0.2〜5μg/mlの範囲の濃度にて、
3−Hメチル−チミジン取り込みによって測定した場合、インビトロにおけるヒトPBM
C増殖を刺激しない(John E.Coliganら、Current Protoc
ols in Immunology,Vol.13:12,John Wiley &
Sons,Inc.,1991;Kwekkeboom J.,Immunology
,1993 Jul,79(3)439−444)。
【0105】
(表10)
(15B8抗体によるヒト、チンパンジーおよびマーモセットにおけるPBMC/B細
胞増殖の刺激
【0106】
【表10】


1.B細胞/PBMCを、CD40L、15B8またはhuIgG2アイソタイプコント
ロールの存在下でインビトロで培養した。
2.細胞増殖の結果を、huIG2コントロールに対する15B8の3H−チミジン取り
込みの割合として報告する。
いくつかのサンプル由来のデータは、2000よりも小さいCD40L(ポジティブコン
トロール)によって誘導されたCPMについて、表に含めていない。
3.表に示すCD40Lについての増加(倍)は、5μg/mlのhuIG2のcpmに
対するCD40Lのcpmの割合である。
CD40L:実験前にホルムアルデヒドで固定した、CD40Lでトランスフェクトした
CHO細胞。
【0107】
B細胞活性化の際、多数の細胞表面タンパク質がアップレギュレートされる(Dent
on M.D.,Pediatr.Transplant.,1998
Feb.,2(1):6−15;Evans D.E.,J.Immunol.,20
00 Jan.15,164(2):688−97;Noelle R.J.,Agen
ts Actions Suppl.,1998,49:17−22;Lederman
S.ら,Curr.Opin.Hematol.,1996,3(1):77−86)
。15B8がヒトB細胞を活性化しないこと、およびCD40に結合した場合にアゴニス
トシグナルを誘導しないことを確認するために、B細胞活性化マーカーをアップレギュレ
ートするその能力を、精製ヒトPBMCを用いたFACS分析によって試験した。15B
8処理したヒトB細胞において、CD25、CD69、CD86、HLA−DRおよびI
CAM−1(CD54)のような活性化マーカーの発現のアップレギュレーションは、存
在しなかった(表4)。これらのマーカーのレベルは、細胞を15B8またはhuIgG
2コントロールのいずれかで処理した場合と類似していた(表11)。対照的に、CD6
9は、3人の健康なボランティア由来の試験したPBMCサンプルにおいて、一貫してC
D40Lによってアップレギュレートされた。
【0108】
(表11)
(FACSによる、インビトロにおけるB細胞活性化マーカーのアップレギュレーショ
ンに対する15B8の効果)
【0109】
【表11】


1.“−”は、アップレギュレーションがないことを意味する。
2.“N/A”は、測定しなかったかまたは成功しなかったことを意味する。
【0110】
B細胞活性化のさらなる結果は、表面FasLのアップレギュレーションおよびアポト
ーシスである(Revy P.,Eur.J.Immunol.,1998 Nov.,
28(11):3648−3654;Carey G.B.,Immunol.Rev.
,2000 Aug.,176:105−115;Ju S.T.,Int.Rev.I
mmunol.,1999,18(5−6):485−513;Baumgarth N
.,Immunol.Rev.,2000 Aug.,176:171−180)。15
B8がアゴニスト抗CD40抗体ではないことを確認するために、ヒトB細胞のFasL
発現およびアポトーシスを誘導するその能力もまた、試験した。細胞表面上のアネキシン
V染色は、初期アポトーシスマーカーとして使用され得る(Ju S.T.,Int.R
ev.Immunol.,1999,18(5−6):485−513)。ヒトB細胞を
末梢血から精製し、15B8とインキュベートした。FACS分析を使用して、アネキシ
ンVおよび抗FasLのポジティブ染色を用いて細胞を検出した。15B8と共にインキ
ュベートした細胞またはアイソタイプコントロール(huIgG2)抗体と共にインキュ
ベートした細胞との間に、2つの試薬による表面染色に、有意な差異は存在しなかった。
この結果は、15B8がインビトロにおいてヒトB細胞のアポトーシスを誘導しないこと
を示す。これらのデータはさらに、15B8がヒトB細胞に対するアゴニスト抗CD40
抗体ではない証拠を提供する。
【0111】
15B8は、霊長類由来のCD20ポジティブPBMCの表面上で発現されるCD40
と交差反応する。15B8が他の霊長類種(例えば、チンパンジーおよびマーモセット)
由来のB細胞上のCD40を活性化し得るか否かを試験するために、15匹のチンパンジ
ーおよび5匹のマーモセット由来の新しく単離したチンパンジーPBMCおよびマーモセ
ットPBMCを用いて、同じ増殖アッセイを実行した。ヒトPBMCを用いた結果と同様
に、15B8は、6匹のチンパンジーおよび5匹のマーモセット由来のPBMCのインビ
トロにおける増殖を、1μg/ml濃度および5μg/ml濃度において刺激しなかった
(上記の表3)。15B8はまた、試験した3個のチンパンジー−PBMCサンプルにお
いて、活性化マーカー(CD69)の発現をアップレギュレートしなかった(表4)。1
5B8は、6匹のチンパンジー由来の試験した全サンプルにおけるインビトロでの24時
間刺激および48時間刺激の後に、ヒトPBMCコントロールと類似して、チンパンジー
PBMCにおいて、FasL発現およびアポトーシスに何の影響も示さなかった。
【0112】
プラスチック表面に固定された二次抗体による架橋15B8は、B細胞増殖を刺激する
その能力を増大しなかった(データは示さず)。この架橋アッセイにおいてヒトおよびチ
ンパンジー由来のPBMCを用いて試験した場合、15B8は細胞増殖を刺激しなかった
。この観察は、インビボで投与された場合の、他のFcレセプター発現細胞への抗15B
8(HAHA)またはFcの結合誘導の際に、15B8がB細胞増殖に対して刺激性であ
る(アゴニストである)ことの危険性を低減することを示す。
【0113】
まとめると、15B8は、インビトロにおいて、ヒトB細胞/PBMCにおいてもチン
パンジー/マーモセットのPBMCにおいても、活性化シグナルを開始しない。従って、
15B8は、ヒト、チンパンジーおよびマーモセットにおいて、アゴニスト抗CD40抗
体ではない。
【0114】
(実施例15)
(15B8は、インビトロで、ヒト、チンパンジーおよびマーモセットにおけるアンタ
ゴニスト抗CD40抗体である)
15B8がアンタゴニスト抗CD40であるか否かを決定するために、CD40−CD
40L相互作用を阻害するその能力を、CD40L媒介ヒトB細胞増殖アッセイにおいて
試験した(Kwekkeboom J.,Immunology,1993 Jul,7
9(3):439−444)。ヒトCD40Lを発現するトランスフェクトしたCHO細
胞株を使用して、精製したヒト末梢血B細胞またはPBMCの増殖を刺激した。10人の
健康なボランティア由来のヒトB細胞および3人の健康なボランティア由来のヒトPBM
Cを試験した。試験した全サンプルにおいて、15B8は、0.2〜5μg/mlの濃度
範囲にて、CD40Lを発現するCHO細胞により媒介される増殖を42〜88%抑制し
た(表12)。図19は、3人の個体由来の細胞を用いた代表的な用量応答曲線を示す。
15B8の影響のない用量は、0.008μg/mlであり、そして0.2μg/mlに
て飽和用量に達する(図19)。この観察は、アンタゴニスト抗CD40抗体としての1
5B8が、細胞表面に発現されるCD40Lによって提供される、ヒトB細胞およびPB
MCにおける増殖シグナルを阻害し得ることを示す。
【0115】
(表12)
(15B8抗体を用いたPBMC/B細胞のCD40L誘導増殖の阻害
【0116】
【表12】


1.B細胞/PBMCを、15B8またはhuIgG2コントロールの存在下で、CD4
0Lを発現するCHO細胞と共にインビトロで培養した。CD40Lをトランスフェクト
したCHO細胞を、実験前にホルムアルデヒドで固定した。細胞増殖を、3H−チミジン
取り込みによって測定した。
2.“15B8 阻害%”=100−(15B8 cpm/CD40L cpm×100

−倍のCD40L(ポジティブコントロール)によって誘導された増殖について、いくつ
かのサンプル由来のデータは表中に含めていない。
【0117】
9匹のチンパンジーおよび3匹のマーモセット由来の新しく単離したPBMCを用いて
、さらなるアッセイを実行した。ヒトPBMCを用いたように、15B8は、CD40L
発現CHO細胞によって刺激されたチンパンジーPBMCおよびマーモセットPBMCの
増殖を、1μg/mlの濃度レベルにて阻害し得た(上記表5)。15B8による阻害は
、3匹のチンパンジーおよび3匹のマーモセット由来のPBMCサンプルにおいて、それ
ぞれ、約55〜73%および68〜84%であった(上記の表5)。
【0118】
活性化されたB細胞は、多数の生物学的応答(例えば、増殖および抗体産生)を引き起
こす。T細胞依存性抗原によるB細胞の活性化は、CD4T−ヘルパー(Th)細胞を
含む。このT細胞ヘルパープロセスは、他の同時刺激因子およびサイトカインの相互作用
と一緒に、B細胞上のCD40とTh細胞表面上のCD40Lとの相互作用の、協調作用
によって媒介される。Denton M.D.,Pediatr.Transplant
.,1998 Feb.,2(1):6−15;Evans D.E.,J.Immun
ol.,2000 Jan.15,164(2):688−97;Noelle R.J
.,Agents
Actions Suppl.,1998,49:17−22;Lederman S
.ら,Curr.Opin.Hematol.,1996,3(1):77−86;Ma
ckey M.F.ら,J.Leukoc.Biol.,1998,63(4):418
−428。15B8がTヘルパー細胞により媒介されるB細胞抗体産生をブロックし得る
か否かを試験するために、精製したヒト末梢血B細胞を、抗CD3抗体で活性化した精製
照射T細胞の存在下で培養した。ELISAアッセイを使用して、IgM産生のレベルを
測定した。15B8は、このアッセイにおいてIgM産生を約30%低減した(データは
示さず)。従って、15B8は、T細胞によって媒介されるB細胞免疫グロブリン産生を
低減し得る。
【0119】
まとめると、15B8は、ヒト、チンパンジーおよびマーモセットにおいてCD40L
により誘導されるBp細胞/PBMC増殖を阻害し、そしてインビトロにおける精製ヒト
B細胞によるT細胞誘導性(inducted)抗体産生を阻害する。これらのデータは
、15B8が、インビトロにおいて、ヒトB細胞ならびにチンパンジーおよびマーモセッ
ト由来のPBMCにおいて、アンタゴニスト抗CD40抗体であることを実証する。
【0120】
(実施例16)
(15B8は、インビトロにおいて、アゴニスト抗サル(アカゲザル、カニクイザル、
およびヒヒ)CD40抗体である)
FACS分析は、15B8がサル(カニクイザル、アカゲザルおよびヒヒ)の末梢血由
来のB細胞表面上に発現されるCD40に結合することを実証する。新しく単離したカニ
クイザルPBMCに対する15B8の効果を、ヒトおよびチンパンジーについて上記に記
載した増殖アッセイと同じ増殖アッセイにて試験した(John E.Coliganら
,Current Protocols in Immunology,Vol.13:
12,John Wiley & Sons,Inc.,1991;Kwekkeboo
m J.,Immunology,1993 Jul,79(3):439−444)。
ヒトPBMCと対照的に、15B8は、H メチル−チミジン取り込みによって測定し
た場合に、インビトロで増殖するようにカニクイザルPBMCを刺激することが見出され
た(以下の表13)。1μg/mlレベルにおいて、15B8は、17匹のサル由来の試
験した22個のサンプルにおいて(5匹のサル由来のサンプルを2回試験した)、huI
gG2コントロールと比較して、PBMCの増殖を6〜129.7倍刺激した(以下の表
13)。5μg/mlレベルにおいて、15B8によって刺激された増殖は、サル由来の
4個のサンプルにおいて14〜24倍であり、そして2匹のサル由来の2個のサンプルに
おいて約1.25倍または1.85倍であった(表13)。このことは、5μg/mlの
濃度レベルにおいて、15B8がカニクイザル由来のPBMCに対するその増殖刺激効果
について、飽和用量を超える限界であり得ることを示唆する。表面マーカーによる活性化
状態についてのB細胞のさらなるFACS分析によって、15B8が、サルB細胞上でC
D69、CD86およびHLA−DRのアップレギュレーションを誘導することが示され
た(表14)。これらのデータは、15B8は、インビトロにおいてカニクイザル由来の
末梢血B細胞上で発現されるCD40に対して、アゴニスト抗体であることを示唆する。
【0121】
15B8のこのアゴニスト効果がカニクイザル特異的ではないことを確認するために、
アカゲザルおよびヒヒ由来のPBMCを用いて同じアッセイを実行した。以下の表13に
示されるように、カニクイザルの細胞から得られた結果と類似の結果が観察された。15
B8はインビトロにおいて、アカゲザルおよびヒヒ由来のPBMCの増殖を刺激した(以
下の表13)。5匹のアカゲザルおよび3匹のヒヒ由来のPBMCを用いた、15B8の
アゴニスト活性を示す(表13)。
【0122】
(表13)
(15B8で刺激した、ヒト、カニクイザル、アカゲザルおよびヒヒ由来のPBMCの
増殖
【0123】
【表13】


1.PBMCを、CD40L、15B8またはhuIgG2コントロールの存在下でイン
ビトロで培養した。
2.増殖結果を、huIgG2コントロールに対する15B8のH−チミジン取り込み
の割合として報告する。
いくつかのサンプル由来のデータは、2000よりも小さいCD40L(ポジティブコン
トロール)によって誘導されたCPMについて、表に含めていない。
3.表に示すCD40Lについての増加(倍)は、5μg/mlのhuIgG2のcpm
に対するCD40Lのcpmの割合である。CD40LをトランスフェクトしたCHO細
胞を、実験前にホルムアルデヒドで固定した。
【0124】
(表14)
(FACS分析による、インビトロでのB細胞活性化マーカーのアップレギュレーショ
ンに対する15B8の効果)
【0125】
【表14】


1.“−”は、アップレギュレーションがないことを意味する。
2.“N/A”は、測定しなかったかまたは成功しなかったことを意味する。
3.1匹のカニクイザル由来の細胞のみを、3日目にFACSによって分析した。
【0126】
(実施例17)
(15B8は、カニクイザルにおいてインビボでのアゴニスト抗CD40抗体である)
15B8は、インビトロにおいて、カニクイザル由来のPBMCにおける細胞表面活性
化マーカーの増大およびアップレギュレーションを刺激し得る。15B8がサルにおいて
インビボでのアゴニスト抗CD40抗体であるか否かを決定するために、15B8の生体
分布および冒された末梢B細胞の運命(すなわち、過剰な拡大(extravastio
n)、アポトーシス、活性化状態または補体溶解(complement lysis)
を調べる研究を実行した[Biodistribution 15B8.72 Anti
bodies following Intravenous Administrat
ion to Non−Naive Male and Female Cynomol
gus Monkeys(SNBL.218.3,SNBL USA)]。
【0127】
カニクイザル(1匹の雌および2匹の雄)に、3mg/kg 15B8の単回静脈内投
与をした。以下のパラメーターをモニターした:臨床徴候、給餌の消費、体重、薬物動態
、血清補完(CH50)、B細胞(アポトーシスB細胞を含む)、T細胞、および単球に
ついてのフローサイトメトリー。15B8でのB細胞CD40レセプター飽和もまた、測
定した。単回用量の15B8を与えた24時間後に動物の検死を行ない、そして標準的な
器官の重量を測定した。脾臓および腋窩(axiliary)リンパ節の試験前手術生検
を採取して、ベースラインコントロールとした。検死において、リンパ組織および非リン
パ組織を、組織病理学および免疫組織化学についてサンプルにした。CD3抗原、CD4
0抗原、CD20抗原、CD27抗原、およびCD38抗原に対する抗体を用いて、組織
を免疫染色した。この研究の予備的な結果を、以下に考察する。
【0128】
全動物が予定した検死まで生存し、給餌の消費にも、体重にも、CH50レベルにも、
末梢血T細胞数にも単球数にも影響を与えなかった。器官の重量に変化はなかった。脾臓
の顕微鏡試験によって、壊死を伴なう中程度に分散した小胞性過形成(follicul
ar hyperplasia)および/または15B8処理した動物の胚中心における
好中球性の浸潤が示された。腸間膜リンパ節および鼡径部リンパ節の試験によって、3匹
中2匹の動物における軽症の小胞性過形成が明らかになった。処理に関連する微視的な影
響は、他の組織(肝臓、皮膚、脳、甲状腺、肺、骨髄、副腎および腎臓)において見出さ
れなかった。
【0129】
CD20抗体、CD27抗体、CD40抗体、およびCD86抗体を用いた免疫染色に
よって、脾臓小胞およびリンパ節小胞におけるこれらのマーカーの増大が明らかとなり、
このことは、これらと同じ組織中で見出された小胞性過形成と相関する。CD20および
CD40の増大した染色は、脾臓およびリンパ節に限定されたが、いくつかのさらなる染
色(CD27での肝臓組織の染色、ならびにCD86による肝臓クップファー細胞および
炎症細胞の染色)が存在した。CD86染色はまた、胸腺髄細胞および副腎間質白血球に
おいても増大した。コントロールと比較して、15B8処理動物においてCD3の免疫染
色に変化は存在しなかった。
【0130】
これらの知見は、カニクイザルに投与される15B8の3mg/kgの単回用量が、2
4時間の期間内で、リンパ小胞の増殖ならびに/または脾臓およびリンパ節における末梢
血からのB細胞の再分布をもたらし得ることを示す。CD20、CD27、CD40およ
びCD86に対する抗体は、他の細胞型の認識と一緒に、B細胞および/または活性化B
細胞上に発現された抗原を認識する。これらの抗原を発現する細胞の数の増大が、処理動
物の脾臓およびリンパ節で見出され、このことは、活性化CD20+ B細胞数の増大を
示唆する。この研究は、15B8が、カニクイザルにおいてインビボでのアゴニスト抗C
D40抗体であることを示唆する。インビトロおよびインビボで得られた結果は、カニク
イザルにおいて一致する。
【0131】
この結果は、15B8がカニクイザル、アカゲザルおよびヒヒにおいてアゴニスト抗C
D40抗体であり、そして、ヒト、チンパンジーおよびマーモセットにおいてアンタゴニ
スト抗体であることを示唆する。
【0132】
15B8は、ヒトIgG2サブタイプを有する抗ヒトCD40特異的モノクローナル抗
体であり、非ヒト霊長類由来のCD40のみと交差反応性を有する。広範囲のインビトロ
試験を通して、15B8は、ヒトB細胞、ヒト、チンパンジーおよびマーモセット由来の
PBMC上に発現されるCD40に対してアンタゴニスト抗CD40であることが示され
た。しかし、15B8は、インビトロにおいて、サル(カニクイザル、アカゲザル、およ
びヒヒ)由来のPBMC上に発現されるCD40に結合する場合、アゴニスト活性を有す
ることが示された。15B8のこのアゴニスト活性を、インビボにおいて、カニクイザル
で確認した。Rituxan感受性およびRituxan耐性NHL患者由来のリンパ腫
の初代培養物中で試験した場合、15B8は、IL−4の存在下および非存在下でアゴニ
スト活性を有さない。15B8はまた、両方の条件下の類似する患者群由来のリンパ腫細
胞の、CD40Lで刺激した増殖を阻害し得る。15B8は、B細胞悪性腫瘍(例えば、
非ホジキンリンパ腫(NHL))を改変する能力を有し、ここで、CD40/CD40L
経路は、その疾患の病因に対して一定の役割を果たし得る。これらの結果を、以下の表に
要約する。
【0133】
(表15)
(アゴニスト活性を測定するアッセイ)
【0134】
【表15】


(表16)
(アンタゴニスト活性を測定するアッセイ)
【0135】
【表16】


本発明は、特定の実施形態を参照して記載された。しかし、本出願は、添付の特許請求
の範囲の精神および範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得る変更および置換
を含むことが、意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−201523(P2009−201523A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143746(P2009−143746)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【分割の表示】特願2007−299859(P2007−299859)の分割
【原出願日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】