ヒト抗TSHR抗体
1つの態様によると、TSHRに結合し、TSHRのリガンド誘導性刺激を低減するが、TSHR構成的活性に影響を及ぼさず、前記TSHRに対するTSH及びM22の結合を阻害するという患者血清TSHR自己抗体の特徴を有する単離されたヒト抗体分子が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体(TSHR)と反応するヒトモノクローナル自己抗体(MAb)に関する。ヒトMAbの1つ(K1−18)は、TSHRに結合し、TSHR環状AMP活性を刺激する能力を有する。他方のヒトMAb(K1−70)は、TSHRに結合し、TSH及びTSHR刺激抗体により媒介される環状AMPの刺激を阻止する能力を有する。両ヒトMAbは、甲状腺機能低下症の臨床症状を呈する患者の末梢リンパ球から単離された。
【背景技術】
【0002】
甲状腺機能は、下垂体により分泌されるTSHにより調節される(Szkudlinski MW, et
al 2002. Physiological Reviews 82:473-502)。TSHは、甲状腺細胞の表面にあるTSHRに結合し、これは、TSHRシグナル伝達カスケード開始の最初のステップである。TSHがTSHRに結合することにより、甲状腺ホルモン:チロキシン(T4)及びトリヨードチロニン(T3)の形成及び放出の刺激がもたらされる。循環中のT4及びT3のレベル、及び視床下部により分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)のレベルに関与するフィードバック機序は、ひいては甲状腺刺激を制御するTSHの放出、及び血清中の甲状腺ホルモンのレベルを制御する(Szkudlinski MW, et al 2002 上記)。TSHRは、Gタンパク質共役受容体であり、3つのドメイン:ロイシンリッチリピートドメイン(LRD)、切断ドメイン(CD)、及び膜貫通ドメイン(TMD)で構成される(Nunez Miguel R,et al 2004.Thyroid 14:991-1011)。
【0003】
自己免疫甲状腺疾患(AITD)を有する患者の中には、TSHRと反応する自己抗体を発生させる者がいることが、当技術分野で十分に記述されている(Rees Smith B,et al
1988. Endocrine Reviews 9:106-121)。2つの主要なタイプのTSHR自己抗体(TRAb):刺激型及び阻止型が存在する。甲状腺刺激型自己抗体は、TSHRに結合し、TSHの作用を模倣し、それにより甲状腺を刺激して高レベルのT4及びT3を産生し、これら自己抗体も、刺激活性又はTSHアゴニスト活性を有するTRAbとして記述されている(Rees Smith B, et al 2007. Thyroid 17:923-938)。甲状腺機能のフィードバック制御機序は、甲状腺刺激性自己抗体が存在すると、もはや有効ではなく、患者は、血清及びその代謝結果における甲状腺ホルモンの過剰により特徴付けられる活動亢進性甲状腺の臨床症状を呈する。この状態は、グレーブス病として知られている。刺激活性を有するTRAbは、眼窩後方組織のTSHRとも相互作用し、グレーブス病の眼の兆候の発病に寄与する場合がある。強力な甲状腺刺激物質(hMAb TSHR1;M22とも呼ばれる)として作用するヒトモノクローナル自己抗体が、国際公開第2004/050708号A2に詳細に記述されている。TSHR LRDと結合したM22 Fab複合体の構造は、国際公開第2008/025991号A1に記述されているように、2.55Åの解像度でX線結晶解析法により解析されている。TSHR−M22複合体の構造解析は、互いの相互作用に関与する受容体残基及び刺激性自己抗体残基に関する詳細な情報を提供する。
【0004】
M22は、TSHR抗体を測定するためのELISAに使用されている(Zophel, Ketal, Clinica Chimica Acta 2009及びZophel, Ketal, Clinica Chimica Acta 2008)。
【0005】
AITDの患者では、阻止型TRAbが生じる頻度は、刺激性自己抗体よりも少ない。阻止型自己抗体は、TSHRに結合し、TSHが受容体に結合するのを防止するが、TSHR活性を刺激する能力を有していない。結果的に、甲状腺ホルモン(T4及びT3)の形成及び分泌が大きく低減され、このタイプのTRAbを有する患者は、低活性甲状腺(
甲状腺機能低下症)の臨床症状を呈する場合がある。阻止型自己抗体は、阻止活性又はTSHアンタゴニスト活性を有するTRAbとして知られている(Rees Smith B, et al 1988 上記、及びRees Smith B, 2007 et al 上記)。阻止活性を有するTRAbは、妊婦の血清中に存在する場合、胎盤を通過し、胎児甲状腺のTSHRを阻止する場合があり、新生児甲状腺機能低下に結びつき、発生にとって深刻な結果がもたらされる。更に、阻止活性を有するTRAbは、罹患母体の母乳中に見出される場合があり、幼児の臨床的甲状腺機能低下を引き起こす場合がある(Evans C, et al 2004 European Journal of Endocrinology 150:265-268)。TSHアンタゴニスト活性を有するTSHRに対するヒト自己
抗体(5C9)が、国際公開第2008/099185号A1に詳細に記述されている。AITD及び循環TRAbを有する患者の臨床症状は、TSHR活性に対する自己抗体の効果、つまりTRAbが刺激又は阻止を引き起こすか否かと関連している。しかしながら、ある患者では、刺激性及び阻止性TRAbの混合物が、1つのタイプのTRAbsがより高い濃度及び/又は活性であることと関連する全体的な臨床症状と同時に存在する場合があることが提唱されている(Rees Smith B et al 1988 上記;Furmaniak J et al 1993 Springer Seminars in lmmunopathology 14:309-321、及びSchott M et al 2005 Trends in Endocrinology and Metabolism 16:243-248)。更に、刺激性又は阻止性TRAbの濃度及び/又は活性は、同じ患者でも疾患の経過中で異なる場合があり、実際、甲状腺機能低下から甲状腺機能亢進までの症状の変動が、同じ患者で経時的に報告されている(Rees Smith B et al 1988 上記;Furmaniak J and Rees Smith B 1993 上記、及びSchott
M et al 2005 上記)。しかしながら、現在利用可能なバイオアッセイを使用して、異
なる生物活性を有するTRAbを分離する試み又は血清試料中のこれらTRAbを区別する試みは、困難である。より最近では、国際公開第2006/016121号A1に記述されている発明は、R255が突然変異されたTSHRを使用するバイオアッセイを使用して、刺激型と阻止型のTRAbを区別する手段を提供している。
【0006】
ヒト組換えTSH(Thyrogen(登録商標))は、cGMP制御下で組換えタンパク質として産生されるヒトTSHの製剤であり、残存又は再発性甲状腺癌の診断を支援するものとして米国FDAにより承認されている(Duntas L H, Cooper D S 2008 Thyroid 18:509-516)。治療後の甲状腺癌患者のモニタリングは、組換えヒトTSHで甲状腺残存物又は転移を刺激して、その後甲状腺を走査すること、及び/又は血清チログロブリンレベルを測定することを含む(Duntas LH and Cooper DS 2008 上記)。ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンは、軽度の甲状腺刺激効果を有する、妊娠中に産生されるホルモンである(Grossmann M et al 1997 Endocrine Reviews 18:476-501)。刺激型又は阻止型TR
Abの特徴付け、及びそれらがどのようにしてTSHRと相互作用するのかは、様々な形態のAITDを診断及び管理するための改良法を開発するために非常に重要である。加えて、これら研究は、TSHRに対する自己免疫反応と関連する疾患を管理するための新しい戦略を開発するために重要である。組換えヒトTSH以外の強力な甲状腺刺激物質が使用可能であることは、甲状腺癌患者をモニター及び管理するための新しい選択肢を提供する。
【0007】
過去の関連特許出願
国際公開第2004/050708号A2に記述されている発明は、強力な刺激活性を有しTSHRと相互作用するヒトモノクローナル自己抗体(MAb)の詳細な特性を提供する。この自己抗体(M22)とTSHR LRDとの相互作用は、国際公開第2008/025991号A1に記述されているように、2分子間の複合体のX線回折解析(2.55Å解像度)から、分子レベルで解析されている。国際公開第2006/016121号A1は、患者血清刺激性TSHR自己抗体、患者血清阻止性TSHR自己抗体、及びスクリーニングされている患者に由来する体液試料中のTSHの鑑別スクリーニング及び同定に使用することができる、少なくとも1つの点突然変異を含む突然変異TSHR調製物を開示する。また、TSHR阻止活性を有するマウスMAb(9D33)の産生及び特徴
付けが、国際公開第2004/050708号A2に記述されている。9D33は、TSHRと高親和性(2×1010L/mol)で結合し、TSH、hMAb TSHR1(M22)及び刺激活性又は阻止活性を有する患者血清TRAbの効果的なアンタゴニストである。国際公開第2008/099185号A1は、TSH、及び患者血清中の刺激性TRAbの効果的なアンタゴニストである、TSHRに対するヒトMAb(5C9)の単離及び特徴付けを開示している。5C9は、意外にも、TSHR構成的活性(TSHRの基礎活性とも呼ばれる)を阻害する、即ちTSH又はM22が存在しない試験系で環状AMPの産生を阻害することが見出されている。更に、5C9は、TSHR活性化突然変異に伴うTSHR環状AMP活性を阻害することが見出されている。国際公開第2008/091981号A2には、TSHR構成的活性を抑制する能力を有するマウスMAb、及びこのMAbを使用して甲状腺機能亢進症及び甲状腺癌を含む甲状腺疾患を治療するための方法が記述されている。国際公開第2008/091981号A2に記載されているMAbの特性は、Chen CR et al 2007 Endocrinology 148:2375-2382にも開示されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明
抗体K1−18及びK1−70を、甲状腺機能低下症及び高レベルのTSHR自己抗体を有する54歳の女性患者の末梢血リンパ球から単離した。この患者は、8年のAITD病歴を有し、最初に甲状腺機能亢進症を呈し、3年間継続したメチマゾールによる治療に応答した。しかしながら、この患者は、甲状腺機能正常状態に達した(つまり、正常な機能を示した)およそ10か月後に、甲状腺機能低下症を発症し、チロキシンで治療された。この患者は、血液採取時にはおよそ4.5年間、甲状腺機能が低下していた。リンパ球を単離した際、血清TRAbレベルは、TSH結合阻害アッセイで測定したところ160単位/Lであった。この血清は、TSHRのTSH刺激を阻止する能力も示した(環状AMPに基づくアッセイ)。甲状腺ペルオキシダーゼに対する血清自己抗体は、>500単位/mLで陽性だった(単位は、国立生物学的製剤研究所(NIBSC、National Institute for Standards and Control)、ポターズバー、英国の基準調製物66/387である)。この患者のリンパ球を、エプスタインバーウイルス(EBV)での感染により不死化し、感染細胞の培養上清を、TSHR被覆チューブに対する125I−TSHの結合を阻
害する能力についてスクリーニングした。陽性細胞培養に由来する細胞をマウス/ヒト細胞系と融合し、上記のようにスクリーニングした。TSHR自己抗体を分泌する2つの安定クローンを得た。IgGをクローン培養の上清から精製し、2つのMAb(K1−18及びK1−70)IgGが、TSHRに結合しTSHR活性に影響を及ぼす能力を評価した。特に、TSHRに対するTSH結合を阻害するK1−18又はK1−70の能力を研究した。K1−18がTSHRを刺激する能力も研究し、種々の他の甲状腺刺激物質の活性と比較した。TSHRを刺激するTSHの能力を阻害するK1−70の能力を研究し、他のTSHアンタゴニストの活性と比較した。更に、刺激性又は阻止性の患者血清TRAbが、K1−18及びK1−70のTSHR結合及び生物活性を阻害する能力を評価した。加えて、TSHR抗体、TSH、及び関連化合物用のアッセイにおけるK1−18及びK1−70の使用を調査した。K1−18及びK1−70の重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の可変領域(V領域)遺伝子を配列決定し、相補性決定領域(CDR)を帰属させた。更に、K1−70 Fabの精製調製物を結晶化し、X線回折法を使用して解析した。これら解析は、K1−70 Fabの全体的構造、及びK1−70の抗原結合部位のトポグラフィーに関する分子レベルの詳細を提供した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様によると、TSHRと結合し、前記TSHRのリガンド誘導性刺激を低減するが、前記TSHR構成的活性に影響を及ぼさない単離されたヒト抗体分子が提供される。
【0010】
好ましくは、TSHRに結合し、TSHRのリガンド誘導性刺激を低減するが、前記TSHR構成的活性に影響を及ぼさず、TSHRに対するTSH及びM22の結合を阻害するという患者血清TSH受容体自己抗体の特徴を有する単離されたヒト抗体分子又はその断片が提供される。より好ましくは、単離されたヒト抗体分子又はその断片は、TSHRに対して少なくとも108L/molの結合親和性を有すること、及び10μg/mL未
満の抗体濃度でリガンド誘導性TSHR刺激の検出可能な阻止を引き起こすことができることから選択される患者血清TSH受容体自己抗体の少なくとも1つの更なる特徴を有する。更により好ましくは、患者血清TSH受容体自己抗体の更なる特徴は、TSHRに対して少なくとも109L/molの結合親和性を有すること、及び1μg/mL未満、好
ましくは0.1μg/mL未満の抗体濃度でリガンド誘導性TSHR刺激の検出可能な阻止を引き起こすことができることから選択される。単離されたヒト抗体は、TSHのアンタゴニスト、及び/又は甲状腺刺激性自己抗体、及び/又は甲状腺刺激性動物抗体、及び/又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンであってもよい。
【0011】
単離された抗体分子は、TSH、M22、又はK1−18の少なくとも1つによるTSH受容体結合の阻害物質であってもよい。
【0012】
単離された抗体分子は、図5b及び5d(それぞれ、配列番号41及び51)のアミノ酸配列から選択される抗体VHドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、好ましくは、図5b及び5dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号41及び51)で構成される抗体VHドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、それぞれ、図5b及び5dのCDRI(配列番号42及び52)、II(配列番号43及び53)、及びIII(配列番号44及び54)から選択されるCDRを含んでいてもよい。本発明による抗体分子は、これらCDRに対して実質的な相同性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含むVH領域を含んでいてもよい。好ましくは、本発明による抗体は、図5dに示されているCDR(配列番号52、53、及び54)に対して70〜99.9%のアミノ酸相同性を示す。好ましくは、単離された抗体分子は、図5dのCDRI、II、及びIII(配列番号52、53、及び54)を含む。好ましい実施形態では、単離された抗体分子の対応する部分は、これらCDRの1つと、少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。単離された抗体分子は、好ましくは図6dのアミノ酸配列(配列番号69)から選択される抗体VLドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、好ましくは図6dのアミノ酸配列(配列番号69)で構成される抗体VLドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、図6dのCDRI(配列番号70)、II(配列番号71)、又はIII(配列番号72)から選択されるCDRを含んでいてもよい。それに加えて又はその代わりに、本発明による単離された抗体分子は、これらCDRに対して実質的な相同性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含んでいてもよい。好ましくは、本発明による単離された抗体のCDRは、図6dに示されているCDR(配列番号70、71、及び72)に対して70〜99.9%のアミノ酸相同性を示す。好ましい実施形態では、単離された抗体分子は、少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。
【0013】
好ましくは、単離された抗体分子は、図6dのCDRI、II、及びIII(配列番号70、71、及び72)を含む。
【0014】
単離された抗体分子は、図9b及び9cに示されているような、抗原結合部位における荷電残基及び芳香族残基の分布を有する、図9aに示されているような分子構造を有していてもよい。本発明の別の態様によると、TSHRに結合してTSHRを刺激する単離された株抗体分子が提供され、該単離された株抗体分子は、図4b及び4dのアミノ酸配列
(それぞれ、配列番号23及び33)から選択される抗体VLドメインを含み、並びに/又はそれぞれ図4b及び4dのCDRI(配列番号24及び34)、Il(配列番号25及び35)、及びIII(配列番号26及び36)から選択される1つ又は複数のCDRを含み、並びに/又は図3b及び3dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5及び15)から選択される抗体VHドメインを含み、並びに/又はそれぞれ図3b及び3dのCDRI(配列番号6及び16)、II(配列番号7及び17)、及びIII(配列番号8及び18)から選択される1つ又は複数のCDRを含む。好ましくは、抗体分子は以下のものを含む:(i)それぞれ図4b及び4dのCDRI(配列番号24及び34)、II(配列番号25及び35)、及びIII(配列番号26及び36)から選択される1つ又は複数のCDRを含む抗体VLドメイン、及び/又は(ii)それぞれ図3b及び3dのCDRI(配列番号6及び16)、Il(配列番号7及び17)、及びIII(配列番号8及び18)から選択される1つ又は複数のCDRを含む抗体VHドメイン。
【0015】
TSHRに対する単離された抗体分子の結合は、甲状腺刺激又は阻止活性を有する患者血清TSHR抗体により阻害することができる。
【0016】
TSHRに対する単離された抗体分子の結合は、M22、K1−70、5C9、9D33、及び甲状腺刺激マウスモノクローナル抗体のうちの少なくとも1つにより阻害することができる。
【0017】
単離された抗体分子は、図4b及び4dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号23及び33)から選択される抗体VLドメイン、及び図3b及び3dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5及び15)から選択される抗体VHドメインを含む。好ましくは、単離された抗体分子は、それぞれ図3b及び3dのCDRI(配列番号6及び16)、II(配列番号7及び17)、及びIII(配列番号8及び18)を含む。本発明による抗体分子は、これらCDRに対して実質的な相同性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含むVH領域を含んでいてもよい。好ましくは、本発明による抗体分子は、それぞれ図3b及び3dに示されているCDR(配列番号6〜8、及び16〜18)に対して、70〜99.9%のアミノ酸相同性を示す。好ましい実施形態では、単離された抗体分子は、少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。
【0018】
単離された抗体分子は、図4b又は4d(それぞれ、配列番号23及び33)のアミノ酸配列で構成される抗体VLドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、図3b又は3d(それぞれ、配列番号5及び15)のアミノ酸配列で構成される抗体VHドメインを含んでいてもよい。好ましくは、単離された抗体分子は、それぞれ図4b及び4dのCDRI(配列番号24及び34)、II(配列番号25及び35)、及びIII(配列番号26及び36)を含む。
【0019】
それに加えて又はその代わりに、本発明による抗体は、これらCDRに対して実質的な相同性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含んでいてもよい。好ましくは、抗体は、それぞれ図4b及び4dに示されているCDR(配列番号24〜26、及び34〜36)に対して、70〜99.9%のアミノ酸相同性を示す。好ましい実施形態では、単離された抗体分子は、少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。
【0020】
ほとんどの応用では、本発明による抗体分子のVHドメインは、VLドメインと共に配置されてTSHR結合部位を提供するだろう。幾つかの応用では、VHドメインのみが、
TSHRと結合するために提供されてもよい。
【0021】
抗体ドメインを移植する方法は、当技術分野で周知であり、そのため本発明による抗体分子は、異なる供給源に由来するVH及びVLドメイン又はそれらの部分を使用して構築することができる。
【0022】
本発明の抗体分子に関して本明細書で使用されている「抗体分子」という用語及び「抗体分子(複数)」等の同義の用語は、状況に従って、モノクローナル、組換え、合成、及びポリクローナル抗体、単鎖抗体、多重特異的抗体、並びに結合部分等の免疫グロブリンに基づく結合部分も包含し、当業者であれば、ドメイン抗体、ダイアボディ、並びにlgG(デルタ)CH2、F(ab’)2、Fab、scFv、VL、VH、dsFv、ミニ
ボディ(Minibody)、トリアボディ(Triabody)、テトラボディ(Tetrabody)、(Sc
Fv)2、scFv−Fc、F(ab’)3部分(Holliger P, et al 1993 Proc Natl Acad Sci USA 90:6444-6448.)、(Carter PJ 2006 Nat Rev Immunol 6:343-357)等の免疫
グロブリンに基づく結合部分を、それらの代わりに用いることができる。この用語は、そのような物質の断片も包含し、好ましくは該断片はTSHRに結合し、より好ましくはK1−18又はK1−70の効果を有する。
【0023】
「甲状腺刺激ホルモン受容体」及び「TSHR」という用語は、図7aに示されているアミノ酸配列(配列番号74)を有する全長ヒトTSHR、又はそのようなTSHRと高度な相同性を有するその変異体若しくは断片を指す。好ましくは、そのような変異体及び断片は、図7aに示されているアミノ酸配列(配列番号74)と70〜99.9%の相同性を有する。好ましい実施形態では、そのような変異体及び断片は、その配列と少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。
【0024】
本発明の単離された抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体、組換え抗体、又は合成抗体の形態であってもよい。K1−18又はK1−70のVH又はVLドメインに由来するCDRI、II、又はIIIは、好適なフレームワークに組み込むことができる。K1−18及びK1−70のVH及びVLドメイン並びにそれらのCDRの変異体は、当業者に周知の方法を使用して修飾することにより産生することができる。そのような変異体は、付加、欠失、置換、又は挿入突然変異を含む1つ又は複数のアミノ酸配列変異を含んでいてもよい。本発明による抗体分子では、K1−18又はK1−70のフレームワークを修飾することもできる。本発明による単離された抗体は、ヒト又は非ヒトのフレームワークを有していてもよい。
【0025】
本発明の別の態様によると、図4b(配列番号23)若しくは4d(配列番号33)若しくは6d(配列番号69)のアミノ酸配列を含む抗体VLドメイン、図3b(配列番号5)、3d(配列番号15)、若しくは5b(配列番号41)、及び5d(配列番号51)のアミノ酸配列を含む抗体VHドメイン、又は図3b(配列番号6〜8)、3d(配列番号16〜18)、4b(配列番号24〜26)、4d(配列番号34〜36)、5b(配列番号42〜44)、5d(配列番号52〜54)、若しくは6d(配列番号70〜72)のCDRI、II、若しくはIII、又はこれらの組み合わせを含む、本発明による単離された抗体分子又はその断片をコードする単離されたヌクレオチドが提供される。
【0026】
単離されたヌクレオチドは、図3a(配列番号1)、3c(配列番号10)、4a(配列番号19)、4c(配列番号28)、5a(配列番号37)、5c(配列番号46)、又は6c(配列番号64)のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0027】
複数のそのようなヌクレオチドは、例えば、バクテリオファージディスプレイライブラリーで提供することができる。そのようなバクテリオファージディスプレイライブラリーを使用して、単離されたドメイン等の様々な抗体分子又はその断片を発現することができる。
【0028】
本発明は、本発明による単離されたヌクレオチドを含むベクター、又は本発明によるそのようなベクター若しくはヌクレオチドを含む宿主細胞も提供する。ベクターは、プラスミド、ウイルス、又はその断片であってもよい。多数の異なるタイプのベクターが、当業者に公知である。単離された細胞は、本発明による抗体を発現することができる。好ましくは、単離された細胞は、本発明による抗体を分泌することができる。好ましくは、本発明による単離された細胞は、安定したヘテロハイブリドーマ細胞系に由来する。
【0029】
本発明の別の態様は、本発明による単離されたドメイン等の単離された抗体分子又はその断片を産生する方法であって、そのような抗体分子又はその断片をコードするヌクレオチドを発現することを含む方法を提供する。
【0030】
本発明の更なる態様によると、本発明による抗体を産生する方法であって、本発明による1つ又は複数の単離された宿主細胞を培養し、それにより抗体が細胞により発現される方法が提供される。好ましくは、抗体は細胞により分泌される。
【0031】
本発明の別の態様によると、本発明による単離された抗体分子及び担体を含む医薬組成物が提供される。
【0032】
本発明による医薬組成物は、ヒト投与に好適であってもよい。好ましくは、本発明による医薬組成物は、対象体の免疫系に対して著しい有害効果を示さない。
【0033】
本発明による医薬組成物には、種々の形態が企図される。甲状腺関連状態の治療に使用するための本発明による医薬組成物は、注射可能な形態であってもよい。眼部グレーブス病の治療に使用するための本発明による医薬組成物は、好ましくは点眼剤の形態である。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体、アジュバント、又は媒体を有する本発明による単離された抗体を含む。本発明の医薬組成物に使用することができる薬学的に許容される担体、アジュバント、及び媒体には、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン等の塩又は電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が含まれる。本発明の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入噴霧により、局所的に、点眼剤により、直腸的に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、又は埋め込みリザバーにより投与することができる。本発明者らは、経口投与又は注射による投与を望む。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病巣内、及び頭蓋内注射又は点滴技術を含む。医薬組成物は、例えば無菌注射用の水性又は油性懸濁剤として、無菌注射用製剤の形態であってもよい。この懸濁剤は、好適な分散剤又は湿潤剤(例えば、トウィーン80等)及び懸濁化剤を使用して、当技術分野で公知の技術により製剤化することができる。また、無菌注射用製剤は、例えば1、3−ブタンジオール中の溶液のような、無毒で非経口的に許容される希釈液又は溶媒中の無菌注射用の液剤又は懸濁剤であってもよい。使用することができる許容される媒体及び溶媒の中には、マンニトール、水、リンゲル液、及び等張性塩化ナトリウム溶液
がある。加えて、無菌固定油が、溶媒又は懸濁媒質として従来通りに使用される。この目的のためには、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無味固定油を使用することができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体等の脂肪酸は注射剤の調製に有用であり、オリーブ油又はヒマシ油等の薬学的に許容される天然油、特にそれらのポリオキシエチル化型も同様に有用である。また、これら油剤又は懸濁剤は、Ph.Helv若しくは類似アルコール等の長鎖アルコール希釈剤又は分散剤を含有していてもよい。本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、並びに水性懸濁剤及び液剤を含むが、これらに限定されない、任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。経口使用用の錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁剤を経口投与する場合、活性成分は、乳化剤及び懸濁化剤と混合されている。所望の場合、ある種の甘味料及び/又は香味料及び/又は着色剤が添加されていてもよい。本発明の医薬組成物は、直腸内投与のために坐剤の形態で提供することもできる。これら組成物は、本発明の化合物を、室温では固体であるが直腸温では液体であり、従って直腸中で融解して活性成分を放出することになる好適な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。そのような物質には、これらに限定されないが、ココアバター、蜜ろう、及びポリエチレングリコールが含まれる。本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が、局所適用で容易に接近可能な区域又は器官に関与している場合、特に有用である。皮膚への局所的塗布の場合、医薬組成物は、担体中に懸濁又は溶解された活性成分を含有する好適な軟膏剤と共に製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与用担体には、これらに限定されないが、鉱油、流動石油、白色石油(white petroleum)、プロピレン
グリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、及び水が含まれる。或いは、医薬組成物は、担体中に懸濁又は溶解された活性化合物を含有する好適なローション剤又はクリーム剤と共に製剤化することができる。好適な担体には、これらに限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が含まれる。本発明の医薬組成物は、肛門坐剤製剤又は好適な浣腸製剤により、下部腸管に局所的に適用することもできる。局所経皮的なパッチ剤も本発明に含まれる。本発明の医薬組成物は、経鼻エアロゾル又は吸入により投与することができる。そのような組成物は、医薬製剤化の技術分野で周知の技術により調製され、ベンジルアルコール又は他の好適な保存剤、生物学的利用能を増強する吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当技術分野で公知の他の可溶化剤又は分散剤を使用して、生理食塩水中の液剤として調製することができる。
【0034】
K1−70等の、本発明の第1の言及された態様による抗体は、TSHR活性化に関連する状態:異常なレベルのTSH又はhCGによるグレーブス病、グレーブス眼症(Graves' opthalmopathy)、又は甲状腺機能亢進症の管理及び制御に有用な応用を有する。
【0035】
K1−18等の、本発明の第2の言及された態様による抗体は、様々な臨床状態及び治療状況でTSHRを刺激するための応用を有する。これら状態には、甲状腺癌及びその転移、多結節性甲状腺腫、又は先天性甲状腺機能低下症の診断及び管理が含まれる。
【0036】
本発明の別の態様によると、本発明による単離された抗体分子又は医薬組成物の、治療における使用が提供される。本発明は、治療に使用するための、本発明による単離された抗体分子又は医薬組成物も提供する。
【0037】
本発明の別の態様によると、TSHR抗体、TSH、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンの活性を特徴付けする方法であって、本発明による単離された抗体分子の使用を含むステップを含む方法が提供される。
【0038】
本発明の別の態様によると、哺乳動物細胞のTSHRを刺激するためのin vitro法であって、細胞を、本発明による単離された抗体分子と接触させることを含む方法が提供される。
【0039】
本発明の別の態様によると、哺乳動物細胞のTSHRを刺激するためのin vivo法であって、細胞を、本発明による単離された抗体分子と接触させることを含む方法が提供される。好ましくは、甲状腺癌及びその転移、多結節性甲状腺腫、並びに/又は先天性甲状腺機能低下症を有する対象体の細胞を、本発明による単離された抗体と接触させる。
【0040】
本発明の別の態様によると、哺乳動物細胞のリガンド誘導性TSHR刺激を防止するためのin vivo法であって、TSHRを、本発明による単離された抗体分子と接触させることを含む方法が提供される。リガンドは、甲状腺刺激性自己抗体、TSH、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンであってもよい。哺乳動物細胞は、甲状腺細胞又は甲状腺外細胞であってもよい。哺乳動物の甲状腺外細胞は、眼窩後方組織又は前脛骨組織にあってもよい。
【0041】
本発明のこの態様による方法では、単離された抗体分子は、上記で参照された5C9又は9D33等の別のTSHR結合抗体と組み合わせて使用することができる。
【0042】
甲状腺関連状態は、甲状腺機能亢進症、グレーブス病、グレーブス眼病、及び新生児甲状腺機能亢進症から選択されてもよい。或いは、甲状腺関連状態は、AITDを有する患者の阻止活性を有するTRAbの存在と関連する甲状腺機能低下症、母体TRAbの移動による(胎盤又は母乳を介する)新生児甲状腺機能低下症であってもよい。
【0043】
上記に記載されている本発明の種々の方法で治療される対象体は、好ましくはヒトである。
【0044】
本発明の別の態様によると、TSHRに対する自己抗体を検出するための診断法であって、そのような自己抗体を含有すると考えられる対象体から単離された試料及び本発明による抗体分子を、TSHRと接触させることを含む方法が提供される。
【0045】
本発明の別の態様によると、TSHRに対する本発明による抗体、好ましくはヒト抗体、又はヒト血清中のTSHRに対する抗体を検出するための診断法であって、TSHRに対する抗体のいずれか1つを、TSHRのアミノ酸22〜260(TSHR260)(図7b;配列番号75)を含むTSHR断片と接触させることを含む方法が提供される。
【0046】
本発明による方法で使用することができる好適な検出可能標識は、酵素標識、同位体標識、化学発光標識、蛍光、及び染料等からなる群から選択することができる。
【0047】
従って、同位体標識(125I、14C、3H、又は35S等)が使用される場合、モニタリングは、本発明による抗体分子の結合に依存する放射能を測定することを含んでいてもよい。放射能は、一般的に、ガンマ計数器又は液体シンチレーション計数器を使用して測定される。
【0048】
本発明の別の態様によると、TSHR260(配列番号75)に結合する低分子を識別するための方法であって、候補低分子を、例えばELISAでTSHR260と接触させること、及びTSHR260に結合する低分子を選択することを含む方法が提供される。更に、TSHR260に対するTSHR自己抗体の結合を防止する能力を有する低分子を識別するための方法であって、候補低分子の存在下で、TSHR260に対するTSHR
自己抗体(刺激性又は阻止性)の結合の阻害を決定すること、及びTSHR自己抗体結合を阻害する低分子を選択することを含む方法が提供される。このようにして識別された低分子を開発して、TSHR自己抗体(刺激性又は阻止性)により引き起こされる自己免疫性甲状腺疾患を制御するための新薬を提供することができる。
【0049】
本発明は、以下のことに関する新しい及び/又は改良された手段を提供する:
1 甲状腺癌及び甲状腺癌転移等の、TSHRを発現する甲状腺又は組織のTSHRを刺激すること。
2 甲状腺においてTSHRに対する甲状腺刺激性自己抗体結合を防止し、それによりグレーブス病の新しい治療を提供すること。
3 甲状腺外TSHRに対するTSHR自己抗体結合を防止し(例えば、眼窩後方組織又は前脛骨組織で)、それによりグレーブス眼症及び前脛骨粘液水腫を管理する可能性の向上を提供すること。
4 刺激活性を有するTRAbの結合に重要なTSHRアミノ酸を決定すること。
5 阻止活性を有するTRAbの結合に重要なTSHRアミノ酸を決定すること。
6 刺激活性及び阻止活性を有するTRAbの結合に重要なTSHRアミノ酸を比較すること。
7 阻止性抗体と刺激性抗体とを区別するTRAb用の新しいアッセイを開発すること。
8 熱安定性TSHR断片の使用に基づくTRAb用の新しいアッセイを開発すること。
9 リガンド誘導性TSHR活性化に重要なTSHRアミノ酸を決定すること。
10 リガンド誘導性TSHR不活化に重要なTSHRアミノ酸を決定すること。
11 TSHRに対する結合に重要な阻止性自己抗体アミノ酸を決定すること。
12 TSH又は甲状腺刺激抗体媒介性TSHR活性化に影響を及ぼす重要な阻止性自己抗体アミノ酸を決定すること。
13 グレーブス病の甲状腺機能亢進、新生児甲状腺機能亢進、及びグレーブス病の眼兆候を制御すること。或いは、甲状腺関連状態は、AITDを有する患者の阻止活性を有するTRAbの存在と関連する甲状腺機能低下症、又は母体の阻止型TRAbの移動による(胎盤又は母乳を介する)新生児甲状腺機能低下症であってもよい。
14 TSHRに結合する自己抗体により引き起こされる甲状腺疾患を制御する低分子薬物候補をスクリーニングする手段を開発すること。
15 同じ患者の免疫系及び異なる患者の免疫系により産生された、甲状腺刺激又は阻止活性を有するTSHR自己抗体間の分子的相違を理解すること。
16 刺激性及び阻止性TSHR自己抗体の発生及び産生に関与する免疫学的機序を理解すること。
17 TSHとTSHR自己抗体との間の分子的模倣の基礎である進化的原動力を含む機序を理解すること。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明による抗体分子及び方法を、添付の図面、図1〜9を例としてのみ参照して、これから記述する。
【図1a】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(a)全長TSHRに対する125I標識K1−70 IgG及びFabの結合の時間的経過。
【図1b】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(b)TSHR260に対する125I標識K1−70 IgGの結合の時間的経過。
【図1c】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(c)TSHR260に対する125I標識K1−70 Fabの時間的経過。
【図1d】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(d)種々のリガンドの存在下における、TSHR(全長)からの125I標識K1−70 IgGの解離。
【図1e】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(e)K1−18 Fabの存在下における、TSHR(全長)からの125I標識K1−70 IgGの解離。
【図1f】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(f)種々のリガンドの存在下における、TSHR(全長)からの125I標識K1−70 Fabの解離。
【図1g】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(g)種々のリガンドの存在下における、TSHR260からの125I標識K1−70 IgGの解離。
【図1h】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(h)K1−18 Fabの存在下における、TSHR260からの125I標識K1−70 IgGの解離。
【図1i】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(i)種々のリガンドの存在下における、TSHR260からの125I標識K1−70 Fabの解離。
【図1j】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(j)全長TSHR及びTSHR260に対する125I標識K1−18 IgGの結合の時間的経過。
【図1k】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(k)種々のリガンドの存在下における、全長TSHRからの125I標識K1−18 IgGの解離。
【図1l】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(l)種々のリガンドの存在下における、TSHR260からの125I標識K1−18 IgGの解離。
【図2a】患者血清のTSHR自己抗体の測定結果を示す図である:(a)TRAb被覆チューブアッセイ(TSH結合の阻害に基づく)での測定値と、TSHR260−AP ELISAでの測定値との比較。
【図2b】患者血清のTSHR自己抗体の測定結果を示す図である:(b)全長TSHRに対するM22結合の阻害に基づくELISAによる測定と、TSHR260に対するM22 Fab結合の阻害によるELISAでの測定との比較。
【図2c】患者血清のTSHR自己抗体の測定結果を示す図である:(c)TRAb被覆チューブアッセイ(TSH結合の阻害に基づく)での測定と、TSHR260被覆プレートに対するM22 Fab結合の阻害によるELISAでの測定との比較。
【図2d】患者血清のTSHR自己抗体の測定結果を示す図である:(d)TRAb ELISA(M22結合の阻害に基づく)での測定と、TSHR260−AP ELISAでの測定との比較。。
【図3a−1】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−18 HCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号1)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々の相補性定常領域(CDR)は四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図3a−2】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−18 HCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号1)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々の相補性定常領域(CDR)は四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図3b】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(b)(図3a)に注釈無し及び注釈付の形式で示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するK1−18 HCのアミノ酸配列(配列番号5)。
【図3c】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−18 HCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号10)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図3d】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(d)注釈無し及び注釈付の形式で図3cに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するリーダー配列を有するK1−18 HCの好ましいアミノ酸配列(配列番号15)。
【図4a−1】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−18 LCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号19)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図4a−2】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−18 LCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号19)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図4b】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(b)注釈無し及び注釈付の形式で図4aに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するK1−18 LCのアミノ酸配列(配列番号23)。
【図4c−1】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−18 LCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号28)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図4c−2】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−18 LCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号28)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図4d】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(d)注釈無し及び注釈付の形式で図4cに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するリーダー配列を有するK1−18 LCの好ましいアミノ酸配列(配列番号33)。
【図5a−1】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形態で示されているK1−70 HCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号37)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図5a−2】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形態で示されているK1−70 HCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号37)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図5b】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(b)注釈無し及び注釈付の形式で図5aに示されるオリゴヌクレオチド配列に由来するK1−70 HCのアミノ酸配列(配列番号41)。
【図5c】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−70 HCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号46)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図5d】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(d)注釈無し及び注釈付の形式で図5cに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するリーダー配列を有するK1−70 HCのアミノ酸配列(配列番号51)。
【図6a−1】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−70 LCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号55)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図6a−2】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−70 LCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号55)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図6b】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(b)注釈無し及び注釈付の形式で図6aに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するK1−70 LCのアミノ酸配列(配列番号59)。
【図6c】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−70 LCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号64)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図6d】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(d)注釈無し及び注釈付の形式で図6cに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するリーダー配列を有するK1−70 LCの好ましいアミノ酸配列(配列番号69)。
【図6e】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(e)エドマン分解反応により決定された実際のN−末端アミノ酸配列(アミノ酸2〜21)(配列番号73)。
【図7a】ヒトTSHRのアミノ酸配列を示す図である:(a)ヒトTSHRのコンセンサスアミノ酸配列を示している(アミノ酸1〜764(配列番号74)(受入番号P16473、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=protein&val=62298994)。
【図7b】ヒトTSHRのアミノ酸配列を示す図である:(b)ヒトTSHRアミノ酸1〜260のコンセンサスアミノ酸配列を示している。リーダー配列(アミノ酸1〜21)は小文字で示されており、精製用に付加されたヒスチジン配列は、C−末端に太字で示されている(配列番号75)。
【図7c】ヒトTSHRのアミノ酸配列を示す図である:(c)ヒトTSHR LRD C−CAPのアミノ酸配列を示している。リーダー配列(アミノ酸1〜21)は小文字で示されており、精製用に付加されたヒスチジン配列は、C−末端に太字で示されている(配列番号76)。
【図8−1】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−2】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−3】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−4】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−5】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−6】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−7】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−8】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−9】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−10】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−11】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−12】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−13】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−14】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−15】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−16】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−17】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−18】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−19】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−20】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−21】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−22】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−23】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−24】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−25】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−26】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−27】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−28】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−29】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−30】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−31】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−32】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−33】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−34】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−35】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−36】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−37】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−38】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−39】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−40】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−41】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−42】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−43】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−44】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−45】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−46】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−47】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−48】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−49】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−50】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−51】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−52】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−53】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−54】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−55】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−56】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−57】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−58】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−59】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−60】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−61】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−62】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−63】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−64】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−65】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−66】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−67】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−68】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−69】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−70】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−71】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−72】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−73】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−74】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−75】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−76】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−77】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−78】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−79】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−80】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−81】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−82】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−83】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−84】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−85】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−86】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−87】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−88】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−89】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−90】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−91】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−92】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−93】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−94】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−95】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−96】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−97】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−98】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−99】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−100】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−101】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−102】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−103】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−104】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−105】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−106】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−107】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図9a】(a)K1−70 Fab構造−Joy形式での構造表示。
【図9b】(b)K1−70 Fabの結合部位の静電ポテンシャル。
【図9c】(c)K1−70 Fabの結合部位の芳香族アミノ酸。
【発明を実施するための形態】
【0051】
方法
リンパ球単離及びヒトモノクローナルTSHR自己抗体のクローニング
モノクローナル自己抗体K1−18及びK1−70は、国際公開第2004/050708号A2に記述されている手順を使用して単離した。リンパ球は、8年のAITD病歴及び高レベルのTRAbを有する患者から採取された血液試料から単離した。患者の同意及び組織内倫理委員会の承認を得た。この患者は最初に甲状腺機能亢進症と診察され、メチマゾールによる治療後に甲状腺機能正常状態に達したが、血液採取のおよそ4.5年前に、甲状腺機能低下症を発病した。血液採取時に、患者は、チロキシン(1日50μg)による治療を受けていた。リンパ球を、エプスタインバーウイルス(EBV)(欧州培養細胞系統保存機関−ECACC(European Collection of Cell Cultures);ポートンダウン、SP4 OJG、英国)に感染させ、国際公開第2004/050708号A2に記述されているようにマウスマクロファージ支持細胞層で培養した。TSHR自己抗体を分泌する不死化リンパ球を、マウス/ヒトハイブリッド細胞系K6H6/B5(ECACC)と融合させ、限界希釈により4回クローン化して単一コロニーを得た。細胞培養上清中のTSHR自己抗体の存在は、クローニングの異なる段階において、TSHRに対する標識TSH結合の阻害により検出した(国際公開第2004/050708号A2)。TSHR自己抗体を産生する2つの単一クローンを増殖させ、自己抗体を精製するために上清を培養から回収した。一方のクローンをK1−18と称し、他方をK1−70と称した。
【0052】
K1−18及びK1−70の精製、特徴付け、及び標識化
TSHRヒトMAb IgGは、MabSelect(商標)(GE Healthcare社製、英国)を用いたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、Sanders J et al 2004.Thyroid 2004 14:560-570に記述されているように培養上清から精製し、純度は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で評価した。重鎖アイソタイプは、放射状拡散アッセイ(Binding Site;バーミンガム、B29 6AT、英国)を使用して決定し、軽鎖アイソタイプは、抗ヒトカッパ鎖及び抗ヒトラムダ鎖特異的マウスモノクローナル抗体(Sigma−Aldrich Company Ltd社製、プール、英国)を用いたウェスタンブロッティングで決定した。精製したK1−18 IgGを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;1mmol/Lの終濃度のシステイン、及び2mmol/Lの終濃度のEDTAを含有する137mmol/L NaCl、8.1mmol/L Na2HPO4、2.7mmol/L KCL、1.47mmol/L KH2PO4、pH7.4)中100:1のIgG/酵素比のマーキュリーパパイン(Sigma Aldrich社製、プール、英国)を用いて、37℃で4時間処理した。反応は、室温で30分間ヨードアセトアミド(50mmol/Lの終濃度)を添加することにより停止させた。その後、反応混合物をMabSelectカラムに通し、あらゆる完全IgG又はFc断片をFab調製物から除去した。Fab含有溶液を、3.1mmol/L NaN3を含有するPBSで透析し、必要に応じて、Centripr
ep濃縮器(Millipore社製、ウォトフォード、WD18 8YH、英国)を使用して濃縮した。K1−70 Fabは、200:1のIgG/酵素比を使用し、酵素による消化は37℃で1時間であったという点を除いて、同様の方法を使用して取得した。SDS−PAGEによる分析は、完全IgGがFab調製物中では検出できないことを示した。IgG調製物は、Sanders J et al 1999. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism.1999 84: 3797-3802に記述されているように125Iで標識したか、又はビオチンヒドラジド(Perbio Science社製、クラムリントン、英国)で標識した(Rees Smith et al 2004. Thyroid 14:830-835)。
【0053】
TSHRに対する、125I−TSH又は125I標識ヒトMAb結合の阻害
結合阻害アッセイは、国際公開第2004/050708号A2に記述されるように、TSHR被覆チューブを使用して実施した。このアッセイでは、100μLの試験試料(MAb調製物、患者血清又は未標識TSH)及び50μLの開始緩衝液(RSR Ltd社製)を、TSHR被覆チューブ中でゆっくりと振とうしながら室温で2時間インキュベ
ートした。吸引した後、チューブを洗浄し、100μLの125I標識タンパク質(5×1
04cpm)を添加し、振とうしながら室温で1時間インキュベートした。その後、チュ
ーブを吸引し、洗浄し、ガンマ計数器で計数した。標識タンパク質結合の阻害は、100×[1−(試験物質の存在下で結合したcpm/対照物質の存在下で結合したcpm)]として計算した。これら実験で使用したMAb調製物は、上述のK1−18、K1−70、M22、5C9、9D33だった。TSMAb 1〜7は、マウス甲状腺刺激性MAbである(国際公開第03/01863号、及びSanders J et al 2002、上記)。対照物質は、健常供血者血清の貯留、又は個々の健常供血者血清、又は種々の実験結果に示されるような他の物質であった。
【0054】
TSHRに対するヒトMAb IgG結合のスキャチャード分析
50μLのアッセイ緩衝液(50mmol/L NaCl、10mmol/L Tris pH7.8、及び0.1% トリトンX−100)中の未標識K1−18又はK1−70 IgG、及び50μLの開始緩衝液(RSR Ltd社製)、及び50μLの125
I標識K1−18又はK1−70 IgG(アッセイ緩衝液中で30,000cpm)を、それぞれTSHR被覆チューブ中で2時間室温で振とうさせながらインキュベートし(最大結合は、これら条件下で生じた)、吸引し、1mLのアッセイ緩衝液で2回洗浄し、ガンマ計数器で計数した。結合したIgGの濃度対結合/遊離をプロットし(Scatchard G 1949.Annals of the New York Academy of Sciences 51:660-672)、結合定数を導出した。
【0055】
ELISAにより測定された、TSHRに対するTSH結合の阻害
TSHR被覆ELISAウエルに対するTSH−ビオチン結合に基づくTRAb ELISAを、以前に記述されているように使用した(Bolton J, et al 1999 Clinical Chemistry 45:2285-2287)。このアッセイでは、75μLの試験試料を、プレートウエル中にある75μLの出発緩衝液に添加し、約500振とう/分で振とうしながら室温で2時間インキュベートした。洗浄した後、100μLのTSH−ビオチンを添加し、振とうせずに25分間インキュベーションを継続した。ウエルを再び洗浄し、既述の標準的手順を使用して反応を発生させ、各ウエルの吸光度を450nmで測定した。
【0056】
TSH−ビオチン結合の阻害は、100×[1−(450nmの試験試料吸光度/450nmの陰性対照試料吸光度)]として計算した。これら実験で使用したMAb調製物は、上述のK1−18、K1−70、M22、5C9、9D33だった。TSMAb 1〜7は、マウス甲状腺刺激性MAbである(国際公開第03/01863号、及びSanders J et al 2002、上記)。対照物質は、健常供血者血清の貯留、又は種々の実験結果に示されるような他の物質であった。
【0057】
ELISAでの、TSHRに対するM22結合の阻害
TSHR被覆ELISAウエルに対する標識M22(M22Fab−POD)の結合に基づくTRAb ELISAを使用した(Rees Smith B, et al 2004、上記)。このアッセイは、第1のインキュベーションが1時間であったことを除いて、TSH−ビオチンに基づくELISAと同様に実施した。結果は、数式:100×[1−(450nmの試験試料吸光度/450nmの陰性対照試料吸光度)]を使用して、M22結合の阻害として表した。これら実験で使用したMAb調製物は、上述のK1−18、K1−70、M22、5C9、9D33だった。TSMAb 1〜7は、マウス甲状腺刺激性MAbである(国際公開第03/01863号、及びSanders J,2002、上記)。対照物質は、健常供血者血清の貯留、又は種々の実験結果に示されるような他の物質であった。
【0058】
TSHR刺激の分析
K1−18又はK1−70 IgG及び他の調製物が、ヒトTSHRで形質移入された
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で環状AMPの産生を刺激する能力を、国際公開第2004/050708号A2に記述されているように試験した。1細胞当たりおよそ5×104又はおよそ5×105個のいずれかでTSHRを発現するCHO細胞を、1ウエル当たり3×104細胞で96穴プレートに播種し、ウシ胎仔血清を有していない
DMEM(Invitrogen Ltd社製、ペーズリー、英国)に適応させ、その後試験試料(TSH、IgG、又は患者血清)を添加し(100μL、環状AMPアッセイ緩衝液、つまり、1g/Lグルコース、20mmol/L HEPES、222mmol/Lスクロース、15g/Lウシ血清アルブミン、及び0.5mmol/L 3イソブチル−1−メチルキサンチン pH7.4を含有する無NaClのハンクス緩衝化塩溶液;環状AMPアッセイ低張性緩衝液で希釈)、37℃で1時間インキュベートした。試験溶液を除去した後、細胞を溶解し、溶解産物中の環状AMP濃度を、Assay Designs社製;Cambridge Bioscience社製、英国の直接環状AMP相関性−EIAキットを使用してアッセイした。結果は、細胞溶解産物(200μL)中の環状AMPのpmol/mLとして表されている。幾つかの実験は、等張性緩衝液条件下で実施した。これら実験では、クレブスリンガーHepes緩衝液(KRH緩衝液)を使用した(124mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1.25mmol/L MgSO4、1.45mmol/L CaCl2、1.25mmol/L KH2PO4、25mmol/L HEPES、8mmol/グルコース、0.5g/Lウシ血清アルブミン、0.5mmol/L 3イソブチル−1−メチルキサンチン、pH7.4)。細胞が必要な密度に達することを可能にし、培養培地を除去し、1mLのKRH緩衝液で細胞を洗浄した。その後、新しいKRH緩衝液を添加し、細胞を37℃で30分間インキュベートした。その後、緩衝液を除去し、試験試料(TSH、MAb調製物、血清試料等)を含有する新しいKRH緩衝液と取り換えた。その後、低張性条件下(つまり、環状AMPアッセイ緩衝液中)での実験について上述されているように、次のステップを実施した。幾つかの実験では、上述のように測定された種々の調製物(例えば、TSH、ヒトMAb、患者血清)のTSHR刺激活性に対する種々のMAbの効果を評価した。これは、(a)試料単独の刺激活性を(b)種々のMAbの存在下での刺激活性と比較することにより実施した。
【0059】
アンタゴニスト(阻止)活性の測定
K1−70 IgG及び他の調製物が、TSHRを発現するCHO細胞で、ブタ(p)TSH、天然ヒト(h)TSH及び組換えヒト(rh)TSH、MAb M22、MAb
K1−18、並びに患者血清TRAbの刺激活性を阻害する能力を評価した。これは、K1−70 IgG(又は試験されている他の調製物)の非存在下及び存在下での、TSH、M22、K1−18、又はTRAbの刺激効果を比較することにより実施した。このアッセイは、環状AMPアッセイ緩衝液で希釈された50μLのK1−70(又は試験されている他の調製物)を、細胞ウエルに添加し、その後50μLのTSH又はM22又はK1−18又は患者血清(環状AMPアッセイ緩衝液で適切に希釈されていた)を添加してインキュベートしたことを除いては上述のように実施し、上述の刺激アッセイと同様に試験した。K1−70に加えて、阻止型TRAbを有する患者に由来する他のMAb及び血清を、このアッセイで試験した。
【0060】
TSHRに対するK1−18及びK1−70結合の結合及び解離
全長TSHR及びTSHR260に対する、K1−18 IgG、K1−18 Fab、K1−70 IgG、及びK1−70 Fab結合の結合及び解離を、Nakatake N, et
al Thyroid 2006,16;1077-1084に記述されているような方法を使用して研究した。全長
TSHR又はTSHR260を、TSHRに対する適切なマウスMAbで予め被覆されていたプラスチックチューブに被覆した。結合実験では、100μLの125I標識IgG又
はFabを、TSHR被覆チューブ中で5〜180分間室温でインキュベートした。その後、チューブを吸引し、アッセイ緩衝液で洗浄し、ガンマ計数器で計数した。解離実験で
は、100μLの125I標識IgG又はFabを、TSHR被覆チューブ中で180分間
室温でインキュベートし、その後1mg/mlの種々のMAb IgG又はFab調製物を10μL添加し、0〜180分間室温でインキュベーションした。様々な時点で、チューブを吸引し、洗浄し、計数した。幾つかの実験では、TSH又は緩衝液を、MAb調製物の代りに添加した。
【0061】
TSHRのアミノ酸突然変異
特定の突然変異をTSHR配列に導入するために使用される方法は、国際公開第2006/016121号Aに記述されている。更に、Flp−In系を使用して突然変異TSHR構築体をCHO細胞に形質移入することも、国際公開第2006/016121号Aに記述されている。野生型又は突然変異TSHRのいずれかを発現するFlp−In CHO細胞を96穴プレートに播種し、アミノ酸突然変異を含有するTSHRを発現するCHO細胞で環状AMP活性を刺激する種々の調製物の能力を試験するために使用した。これら実験を、野生型TSHRを発現するCHO細胞を使用して得られた同様の実験と比較した。野生型又は突然変異TSHRのいずれかを発現するFlp−In CHO細胞は、上述のようなTSH、刺激性抗体、又は患者血清TRAbの刺激活性を阻止する種々の調製物の能力を研究する実験でも使用した。
【0062】
TSHR260−アルカリホスファターゼ(TSHR260−AP)構築体の産生
TSHR 260構築体(ヒトTSHRのコード化アミノ酸1〜260;アミノ酸1〜21はリーダー配列である)は、全長ヒトTSHRをテンプレートとして使用して増幅し(Oda Y, et al 1998. Journal of Molecula rEndocrinology 20:233-244)、クローニングベクターpSEAP2−basic(Clontech社製)をテンプレートとして使用して、分泌アルカリホスファターゼ(17個のアミノ酸のアルカリホスファターゼリーダー配列を除く)のコード配列に連結した。2つのPCR反応を実施し、第1の反応では、N末端にEcoRI制限部位、及びC末端に1アミノ酸リンカー(アスパラギン)及び分泌アルカリホスファターゼの最初の8個のアミノ酸(17個のアミノ酸のリーダー配列を除く)を付加した特異的プライマー配列番号77及び配列番号78プライマー(Sigma Genosys社製)を用いて増幅された全長TSHRを使用した。第2のPCRは、分泌アルカリホスファターゼのN末端に、TSHRのアミノ酸254〜260及び1アミノ酸リンカー(アスパラギン)、並びに分泌アルカリホスファターゼ遺伝子のC末端に、6ヒスチジンタグ、終止コドン、及びXhoI制限部位を付加するプライマー配列番号79及び配列番号80を用いて増幅されたクローニングベクターpSEAP2−basicを使用して実施した。PCR反応は、94℃で1分間、40℃で1分間、及び72℃で1分間の30サイクル、その後72℃で7分間で実施した。PCR産物を1%アガロースゲルに流し、DNAを、製造業者の説明書に従ってgeneclean IIキット(Anachem Ltd社製、ルートン)を使用して抽出した。その後、精製PCR産物1及び2を使用して、TSHR 260−アルカリホスファターゼ遺伝子全体を構築するための第3のPCRをセットアップした。200ngのPCR1産物及び200ngのPCR2産物及びPCR3を含有するPCR3反応を、94℃で1.5分間、65℃で1.5分間、及び72℃で1.5分間の7サイクルで実施した。その後、温度を2分間94℃に再び上昇させ、プライマー配列番号77及び80を添加し、その後94℃で1分間、52℃で1分間、及び72℃で2分間の30サイクルを行った。PCR3産物を、EcoRI及びXhoI制限部位を使用してpFastBac1にクローニングし、突然変異の存在は、サンガークールソン法(Sanger F et al 1997. Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 74:5463-5467)による配列決定を使用して確認した。組換えDNAは、国際公開第2008/025991号A1に記述されているように、Bac
to Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen社製、英国)を使用して製作し、Sf−9細胞に形質移入して組換えバキュロウイルス株を取得及び増幅した。TSHR260−APは、国際公開第2008/025991号A1に記述されているよう
に、昆虫細胞で発現した。
【0063】
TSHR260−APに基づくELISA
ELISAは、二価TSHR抗体が、ELISAプレートウエルに被覆されたTSHRに対して1つの抗原結合部位で結合し、液相中のTSHR260−APに対して別の抗原結合部位で結合する、すなわち架橋を形成する能力に基づいて確立した。CHO細胞で発現された界面活性剤可溶化全長受容体形態のTSHRを、以前に記述されているように、C末端抗体によりELISAプレートウエルに被覆した(Bolton J et al 1999、上記)
。このアッセイでは、75μLの開始緩衝液(TRAb ELISAについて記述されているような;Bolton J et al 1999、上記)及び75μLの試験試料(患者血清又はモノ
クローナル抗体)を、界面活性剤可溶化全長TSHRで被覆されたELISAプレートウエルに添加し、振とうしながら(500rpm)室温で2時間インキュベートした。その後、ウエルの内容物を除去し、ウエルを洗浄緩衝液(50mmol/L NaCl、20mmol/L Tris pH7.8、1%トリトンX−100)で3回洗浄し、その後100μLのTSHR260−AP(0.2g/L MgCl2−6H2O及び2g/L BSAを含有する洗浄緩衝液で希釈)を添加した。振とうしながら(500rpm)室温で1時間インキュベーションした後、ウエルを空にし、洗浄し(3回)、100μLのp−ニトロフェニルホスフェート(pNpp)基質(Europa Bioproducts Ltd社製、エリー、ケンブリッジ 英国)を添加し、プレートを暗所で45分間インキュベートした。その後、100μLの停止溶液(1mol/L NaOH)を添加し、405nmの吸光度を、ELISAプレートリーダーで測定した。結果を、OD405nm
の吸光度値として表し、一群の健常供血者(HBD)血清で観察されたものより高い値は、試料中にTSHR自己抗体が存在することを示した。幾つかの実験では、CHO細胞で発現された突然変異R255Dを含有する組換えTSHRの可溶化調整物を使用して、ELISAプレートウエルを被覆した。
【0064】
TSHR LRD C−CAP構築体の産生
アミノ酸306〜384が取り除かれたヒトTSHRのアミノ酸1〜409をコードするTSHR LRD C−CAP構築体を、全長ヒトTSHRをテンプレートとして使用して増幅した(Oda Y, et al 1998. Journal of Molecular Endocrinology 20:233-244)。2つのPCR反応を実施し、第1の反応では、T7プライマー(配列番号81)、及びTSHRのアミノ酸305のC末端側にTSHRのアミノ酸385〜342を付加した特異的プライマー配列番号82(Sigma Genosys社製、ジリンガム、ドーセット、英国)を用いて増幅された全長TSHRを使用した。第2のPCRは、BGH逆方向プライマー配列番号83、及びTSHRのアミノ酸385のN末端側にTSHRのアミノ酸298〜305を付加する特異的プライマー(配列番号84)を用いて増幅された全長TSHRを使用して実施した。PCR反応は、94℃で1分間、40℃で1分間、及び72℃で2分間の30サイクル、その後72℃で7分間で実施した。PCR産物を1%アガロースゲルに流し、DNAを、製造業者の説明書に従ってGeneclean IIキット(Anachem Ltd社製、ルートン)を使用して抽出した。その後、精製PCR産物1及び2を使用して、アミノ酸306〜384が取り除かれ、Ser305がTyr385に連結した連続TSHR配列を構築する第3のPCRをセットアップした。200ngのPCR1産物及び200ngのPCR2産物及びPCR3を含有するPCR3反応を、94℃で1.5分間、65℃で1.5分間、及び72℃で1.5分間の7サイクルで実施した。その後、温度を2分間94℃に再び上昇させ、T7プライマー(配列番号81)及びBGHRプライマー(配列番号83)を添加し、その後94℃で1分間、52℃で1分間、及び72℃で2分間の30サイクルを行った。その後、アミノ酸306〜384が取り除かれたTSHR配列を含有するPCR3産物を1%アガロースゲルに流し、DNAを、製造業者の説明書に従ってGeneclean IIキット(Anachem Ltd社製)を使用して抽出した。精製PCR3産物を、TSHR LRD C−CAP遺
伝子構築用のテンプレートとしてPCR4で使用した。200ngのPCR3をテンプレートDNAとして含有するPCR4反応は、T7プライマー(配列番号81)、及びTSHR配列(アミノ酸306〜384を欠失した1〜409)のアミノ酸409のC末端側に、6ヒスチジンタグ、終止コドン、及びXhoI制限部位を付加する特異的プライマー(配列番号85)を用いて増幅した。PCR4反応は、94℃で1分間、40℃で1分間、及び72℃で1分間の30サイクル、その後72℃で10分間で実施した。PCR4産物を、BamHI及びXhoI制限部位を使用してpFastBac1にクローニングし、突然変異の存在は、サンガークールソン法(Sanger F et al 1997. Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 74:5463-5467)による配列決定を使用して確認した。組換えDNAは、国際公開第2008/025991号A1に記述されているように、Bac to Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen社製、ペーズリー、英国)を使用して製作し、Sf−9細胞に形質移入して組換えバキュロウイルス株を取得及び増幅した。TSHR LRD C−CAP(図7c;配列番号76)は、国際公開第2008/025991号A1に記述されている手順を使用して、昆虫細胞で発現させた。
【0065】
様々なTSHR調製物の安定性の比較
組換えTSHRの様々な調製物の温度安定性を比較した。CHO細胞で発現された全長可溶化TSHR、昆虫細胞で発現されたTSHR260、昆虫細胞で発現されたTSHR260−AP、及び昆虫細胞で発現されたTSHR.LRD C−CAPを試験した。上記に列挙されている調製物の各々の等量を、−80℃保管庫から取り出し、氷上解凍し、対照としての試料を−80℃に戻し、バルクを室温(20〜25℃)で24時間又は48時間保管した。室温で24時間又は48時間後、TSHR調製物を−80℃で保管し、その後下述のように試験した。ELISAプレートウエルを、被覆緩衝液(Bolton J et al
1999、上記)中1μg/mLのマウスTSHR MAb 14C4のF(ab’)2調製物(Jeffreys J et al 2002, Thyroid 12:1051-1061及びSanders J et al 2007 Thyroid 17:395-410)で被覆した。研究中のTSHR調製物を、20mmol/L NaCl、10mmol/L Tris pH7.8、1%容積/容積 トリトンX−100、1g/L BSA、200mg/L NaN3で希釈し、150μLをELISAプレートウエルに添加した(四重重複で)。4℃で終夜インキュベーションして、抗体(14C4 F(ab’)2)被覆ウエルに対するTSHR調製物の結合を可能にした後、ウエルを洗浄し、75μLのアッセイ緩衝液(50mmol/L NaCl、20mmol/L Tris pH7.8、1%容積/容積 トリトンX−100、1g/L BSA)及び75μLの健常供血者血清と共に、ELISAプレート振とう器で毎分500回振とうしながら室温で1時間インキュベートした。その後、ウエルの内容物を空にし、ウエルを洗浄し、100μLのM22 Fab−ペルオキシダーゼ結合体(上記を参照)を各ウエルに添加した。振とうせずに25分間室温でインキュベーションした後、プレートウエルを再度洗浄し、その後100μLのテトラメチルベンジジンを添加し、室温で振とうせずに更に25分間インキュベーションした。反応は、50μLの0.5mol/L H2SO4を添加することにより停止させ、各ウエルの450nmでの吸光度を、ELISAプレートリーダーで測定した。
【0066】
可変領域遺伝子解析
K1−18又はK1−70重鎖及び軽鎖の可変(V)領域遺伝子は、RT−PCR(逆転写PCR)反応用のmRNAを産生するために、1×107個のヘテロハイブリドーマ
細胞(分泌K1−18 IgG又はK1−70 IgG)から調製された全RNAを使用して、国際公開第2004/050708号A2に記述されているように決定した。医学研究審議会のV−base(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)を使用して設計され、
Invitrogen社(ペーズリー、PA4 9RF、英国)により合成された、特異的IgG1 HC及びカッパLCのセンス及びアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドプライ
マーを、K1−18mRNAを用いたRT−PCR反応で使用した。上述のように調製された特異的IgG1 HC及びラムダLCプライマーを、K1−70mRNAを用いたRT−PCR反応で使用した。RT反応は、50℃で15分間、その後94℃で15秒間、50℃で30秒間、及び72℃で30秒間の40サイクルのPCRで実施した。DNA産物をpUC18にクローニングし、サンガークールソン法(Sanger F, et al 1977、上記)により配列決定した。V領域配列を、Ig blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を使用して、入手可能なヒトIg遺伝子の配列と比較した。CDRは、カバット法(Kabat E et al 1991 Sequences of proteins of immunological interest (US Public Health service, Bethesda, MD) Fifth edition)及びIg blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)により帰属させた。2巡目のmRNA単離は、限界希
釈により更に再クローン化を受けたK1−70及びK1−18ハイブリドーマ細胞系の両方から実施した。V領域配列(K1−18 HC、K1−18 LC、K1−70 HC、及びK1−70 LC)は、mRNAからRT−PCRによって取得し、その後上述のようにクローニング及び配列決定した。加えて、RT−PCR反応は、また、V領域の各々のそれぞれのリーダー配列の5’末端に対応する、特異的に設計されたPCRプライマーを使用して実施した。これにより、K1−18及びK1−70のHC及びLC V領域のN−末端の、実際のオリゴヌクレオチド配列(及び派生アミノ酸配列)の特定が可能になった。加えて、K1−70 LCタンパク質のN−末端アミノ酸配列を、Alta Bioscience社(バーミンガム、英国)によるエドマン分解反応により分析した。これは、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼを用いてK1−70 LCタンパク質調製物のN−末端を「脱ブロッキング」した後で可能だった。精製K1−70 Fab(10μg)を、2.5mUのピログルタミン酸アミノペプチダーゼ(50mmol/L Na2HPO4 pH7.0;10mmol/Lジチオトレイトール、及び1mmol/L EDTA中)で、6時間75℃で処理した。等しい容積のSDS−PAGE試料緩衝液を添加し、100℃で5分間加熱した後、K1−70 Fabを、15%SDS−PAGEでHC(Fd部分)及びLCに分離した。LCバンドを、注意深くゲルから切り出し、N−末端タンパク質配列を決定した。数巡のRT−PCRを繰り返し、K1−18 HC、K1−18 LC、及びK1−70 HCの配列決定することにより、V領域配列は以前に得られたものと同じであったが、K1−70 LC V領域配列は異なっていたことが確認された。数巡のRT−PCRの繰り返し実験で得られたK1−70 LC配列は、エドマン反応により得られた2〜21連続N末端アミノ酸のタンパク質配列(図6e;配列番号73)、及びK1−70 Fabの結晶構造中のLCアミノ酸の電子密度(図8)と一致しており、結果的に、好ましいK1−70 LC配列(図6c及び6d、(それぞれ、配列番号64及び69))として結論付けた。
【0067】
K1−70 FabのX線回折解析
上述のように調製されたK1−70 Fab溶液を、9000Daカットオフを有するiCON濃縮器(ThermoFisher Scientific社製、ラフバラ、英国)を使用して、15.5mg/mLに濃縮し、等分して−20℃で保管した。K1−70 Fabの結晶は、Molecular Dimensions社製(ニューマーケット、英国)のStructure Screen1 sparse matrix screenを使用し、蒸気拡散の懸滴法を使用して育晶した。幾つかの結晶が多くの条件で取得され、その全てをスクリーニングして、Biofocus DPI社(サフランウォールデン、英国)でのX線回折解析に最も好適な結晶を特定した。30%PEG400、0.1MナトリウムHepes、pH7.5、0.2M塩化マグネシウム中で育晶した結晶を選択した。それをウエル溶液で洗浄し、液体窒素に浸漬することにより瞬間凍結した。データセットを、Rigaku R−Axis IVイメージプレート検出器で収集し、MOSFLM及びSCALA(CCP4プログラムスイート(Collaborative computational project, number 4. 1994. "The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography". Acta Cryst. D50, 760-763)から)を使用して、指数付けし、積分し、スケーリ
ングした。タンパク質構造データベース(http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do)からの3つの構造1LIL(VL及びCLドメイン)、2B0S(VHドメイン)、及び2EH7(VLドメイン)を、配列アラインメントに基づく分子置換に使用するために選択した。2つの完全なFab K1−70分子が非対称単位中に存在しており、その結果生じたモデルを、REFMAC5(CCP4)を使用して、厳重な幾何学的重み付けをして10サイクルの原子精密化にかけた。電子密度図は、分子置換及び初期精密化をモデル構築プログラムCOOT(Emsley P, Cowtan K 2004. Nature 355: 472-475)で検討した後で計算し、自動モデル再構築は、BUCCANEER(CCP4)を使用して実施した。モデルを再検討して残りの欠けている特徴を全て手作業で構築し、REFMAC5(CCP4)を使用してモデルを精密化した。その後、COOTの水配置機能を使用して水分子を付加し、REFMAC5(CCP4)を使用して精密化した。Fab K1−70の構造幾何学は、PROCHECK(CCP4)及びRAMPAGE(CCP4)を使用して点検した。最後に、モデル中の残基を、カバット付番方式(Kabat E et al 1991、上記)に従って再付番した。
【0068】
大腸菌での組換えK1−70 Fabのクローニング及び発現
K1−70 HC RT−PCR産物を、XhoI及びSpeI制限エンドヌクレアーゼで切断し、K1−70 LC PCR産物をSacI及びXbaI制限エンドヌクレアーゼで切断し、HC及びLC cDNAを、両方ともlacZプロモーターの制御下でImmunozap H/Lベクター(Stratagene Europe社製;アムステルダム、オランダ)(Matthews I, et al 2002 Laboratory Investigation 82:1-11)に
クローニングした。プラスミドDNAは、Qiagen midiプラスミド精製キット(Qiagen Ltd社製、クローリー、英国)を使用して調製し、K1−70 HC及びLC cDNAの存在は、サンガークールソン法(Sanger F, et al 1977、上記)を使用して配列決定することにより確認した。プラスミドDNAを、大腸菌株HB2151(GE Life Sciences社製、リトルチャルフォント、英国)に形質転換し、LBアンピシリン(トリプトン 10g/L、酵母抽出物 5g/L、NaCl 10g/L、100μg/ml終濃度のアンピシリン)寒天プレート(15g/Lの寒天)上で終夜37℃で増殖させた。前培養(3mL LBアンピシリン+1%グルコース中に1つのコロニー)を、振とうしながら30℃で終夜増殖させた。組換えFabの産生は、グルコースが存在すると阻害される。終夜インキュベーションした後の前培養を、1/100に希釈し(5OmL LBアンピシリン中0.5mL)、OD600が1.2になるまで
30℃で増殖させ、その後スクロースを添加し(終濃度0.3mol/L)、培養物を、OD600が1.2に戻るまで30℃で増殖させた。その後、イソプロピル−β−Dチオガ
ラクトシド(IPTG)を、終濃度が1mmol/Lになるように添加し、培養物を振とうしながら23℃で24時間インキュベートし続けた。その後、培養物を、4℃で30分間3000rpmで遠心分離し、培養上清を回収した。培養上清を0.45μmフィルターでろ過し、PBS(8.1mmol/L Na2HPO4、1.5mmol/L KH2
PO4、2.7mmol/L KCl、137mmol/L NaCl pH7.4)で
終夜透析した。K1−70プラスミド(HB2151/K1−70)で形質転換されたHB2151細胞に由来する、IPTG無しでグルコースと共に増殖させた、つまり誘導しなかった培養上清を陰性対照として使用した。培養上清を、(a)TSHRに対するTSH結合を阻害するそれらの能力、(b)TSHRを発現するCHO細胞で環状AMP産生のTSH媒介性刺激を阻害するそれらの能力についてアッセイした。
【0069】
結果
K1−18又はK1−70を分泌する安定細胞系の単離及びクローニング
20mLの患者血液から得たリンパ球(26×106)を、EBVに感染させ、48穴
プレートの1ウエル当たり1×106細胞で、マウスマクロファージの支持細胞層に播種
した。EBV感染後13日目に、プレートウエル上清を、125I−TSH結合の阻害につ
いてモニターした。陽性クローンを、TSHRに対するそれらの効果(刺激性又は阻止性)に関して更に試験した。陽性ウエルの細胞(使用したアッセイのいずれかで陽性)を増殖させ、K6H6/B5ハイブリドーマ細胞系と融合させ、96穴プレートに播種した。125I−TSH結合阻害活性を有する抗体を安定して産生する2つのクローンを取得し、
4回再クローン化した。それらクローンのうちの1つは、TSHR刺激活性を示したK1−18と称するヒトMAbを分泌した。ヘテロハイブリドーマ培養上清から精製されたK1−18抗体は、カッパ軽鎖を有するサブクラスIgG1だった。もう1つの安定クローンは、TSHRで形質移入されたCHO細胞で環状AMP産生のTSH刺激を阻止する能力を示した、K1−70と称するヒトMAbを分泌した。ヘテロハイブリドーマ培養上清から精製されたK1−70抗体は、ラムダ軽鎖を有するサブクラスIgG1だった。
【0070】
TSHR被覆チューブに対する125I−TSH結合の阻害
TSHR被覆チューブに対する標識TSHの結合を阻害する、様々な濃度のK1−18又はK1−70 IgGの能力は、表1a及び1bに示されている。表1aに示されているように、健常供血者(HBD)血清で希釈されたK1−18 IgGは、1μg/mL濃度でおよそ95%の125I−TSH結合の最大阻害を示した。K1−18 IgGの阻
害効果は、1〜0.001μg/mLの濃度で用量依存性だった。K1−18の阻害効果は、同じ濃度のM22 IgGの効果と同等であった。1μg/mLのK1−18 IgGは、5C9 IgG1、TSMAb 1〜7 IgG又は9D33 IgGよりも強力な125I−TSH結合の阻害物質である(表1a)。125I−TSH結合に対する効果を阻害するK1−70 IgG又はFabは、表1bに示されている。HBD血清で希釈されたK1−70 IgGは、0.03μg/mLで13.5±2.3%から100μg/mLで95.9±0.8%に及ぶ用量依存的阻害を示した。K1−70 Fabの阻害効果は、同じ濃度のK1−70 IgGの効果と同等であった(表1b)。表1a及び1bは、被覆チューブアッセイ緩衝液で稀釈されたK1−18及びK1−70及び様々なMAbsによる、TSHR被覆チューブに対する125I−TSHの結合に対する効果も示してお
り、5C9以外の全てのMAbの場合には、これら効果は、MAbがHBD血清で希釈された場合に観察された結果と同等であった。表2aは、K1−18、K1供与体血清、及びK1供与体血清IgGの様々な調製物による、TSHR被覆チューブに対する125I−
TSH結合の阻害を示す。この実験では、およそ12%阻害が、HBD血清で希釈されたわずか0.01μg/mLのK1−18 IgGで観察され、阻害は、10μg/mLのK1−18 IgGでの95%阻害まで用量依存的な様式で増加した。HBD血清中0.01μg/mLのK1−18 Fabは、5.6±7.3%阻害を示し、阻害は、10μg/mLでの82.2±0.9%最大阻害まで用量依存的な様式で増加した。これは、HBD血清で希釈された供与体血清IgGによる125I−TSH結合阻害と比較することが
でき、0.125mg/mLでの13.7±1.3%阻害は、1mg/mLでの76.5±1.5%阻害へと用量依存的な様式で増加する。様々な希釈の供与体血清も、1/160希釈での9.1±0.8%阻害から1/10希釈での81.1±0.4%阻害まで、125I−TSH結合の用量依存的阻害を示した。表2aのデータは、精製K1−18 Ig
Gが、K1供与体血清IgGと比較して、TSH結合阻害の点で6600倍より活性であったことを示した。K1−18 IgG及び供与体血清IgGを、アッセイ緩衝液で希釈した場合、K1−18 IgGがTSH結合を阻害する能力は、供与体血清IgGの阻害能力より4700倍大きかった(表2a)。表2bは、国立生物学的製剤研究所(NIBSC;ポターズバー、英国)の甲状腺刺激自己抗体基準調製物90/672の効果と比較した、被覆チューブアッセイでの、K1−18の様々な調製物によるTSHRに対する125I−TSH結合の阻害を示す。HBD血清で希釈されたK1−18 IgGは、69N
IBSC 90/672単位/mgの125I−TSH結合阻害活性を示した(3つの濃度
のK1−18 IgGで計算された活性の平均;30ng/mL、100ng/mL、及び300ng/mL)(表2b)。同じ実験で計算されたK1−18 Fab(血清で希釈)の125I−TSH結合結合阻害活性は、46NIBSC 90/672単位/mgだ
った(30ng/mL、100ng/mL、及び300ng/mLのK1−18 Fabでの活性を使用して計算した)(表2b)。これは、131NIBSC単位/mgのM22 IgG 125I−TSH結合阻害活性と比較することができる(表2b)。NIBS
C 90/672の活性と比較した、供与体血清及び供与体血清IgGの希釈物の125I
−TSH結合阻害活性は、表2cに示されている。供与体血清の125I−TSH結合阻害
活性は、0.075NIBSC 90/672単位/mLであり(40×及び20×希釈での値の平均)、HBD血清で希釈された供与体血清IgGの125I−TSH結合阻害活
性は、0.011単位/mgだった(0.1、0.3、及び1.0mg/mLでの値の平均)(表2c)。これは、63.3NIBSC 90/672単位/mg(30、100、及び300ng/mLでの値の平均)の同じ実験で測定されたK1−18 IgG(HBD血清で希釈)の活性、及び114単位/mg(10、30、及び100ng/mLでの値の平均)のK1−70 IgG(HBD血清で希釈)の活性と比較することができる(表2c)。結果的に、このアッセイ系では、K1−18 IgGの比活性は、供与体血清IgGの比活性の5755倍だった。同様に、K1−70 IgGの比活性は、供与体血清IgGの比活性の10,364倍だった。
【0071】
TSHR被覆チューブに結合するK1−18及びK1−70のスキャチャード解析
TSHR(全長)に対するK1−18 IgGの結合親和性は、6.7±1.0×109L/mol(平均±SD;n=3)であり、K1−18 Fabの結合親和性は、1.
8±1.0×109L/mol(平均±SD;n=3)だった。TSHR260に対する
K1−18 IgGの結合親和性は、5.9±1.0×109L/mol(平均±SD;
n=3)だった。TSHR(全長)に対するK1−70 IgGの結合親和性は、3.9±0.8×1010L/mol(平均±SD;n=3)であり、K1−70 Fabの結合親和性は、2.3±0.3×1010L/mol(平均±SD;n=3)だった。TSHR260に対するK1−70 IgGの結合親和性は、3.1±0.4×1010L/mol(平均±SD;n=3)であり、K1−70 Fabの結合親和性は、9.3±0.4×109L/mol(平均±SD;n=3)だった。これは、6.0±0.9×109L/mol(平均±SD、n=5)のTSHR(全長)に対するブタTSHの結合親和性と比較することができる(Nakatake et al 2006、上記)。
【0072】
ELISAにより測定されたTSHRに対するTSH−ビオチン結合の阻害
TSHR被覆ELISAプレートウエルへのTS−Hビオチン結合に対するK1−18
IgGの効果を研究し、種々の他のMAbの効果と比較した。表3aに示されているように、HBD血清で希釈されたK1−18 IgGは、TSH−ビオチン結合に対して用量依存的な阻害効果を示し、0.01μg/mLで10.0±0.8%阻害、1μg/mLで96.2±0.2%の本質的に最大阻害、及び3μg/ml以上の濃度で最大阻害プラトーだった。これは、0.01μg/mLで17.5±2.0%及び1μg/mLで98.3±0.0%のM22 IgG(HBD血清で希釈)阻害効果と比較することができる(表3a)。1μg/mL(HBD血清で希釈)でのK1−18 IgGのTSH−ビオチン結合阻害活性は、表3aに示されている例により示されている5C9 IgG、TSMAb 1〜7 IgG、及び9D33 IgGより大きかった。ELISAアッセイ緩衝液(50mmol/L NaCl、10mmol/L Tris、pH7.8、0.1%容積/容積トリトンX−100、1mg/mL BSA)で希釈されたK1−18 IgGを試験すると、阻害効果は、希釈をHBD血清で行った場合と本質的に同じだった(表3a)。表3bの例により示されているように、HBD血清又はELISAアッセイ緩衝液で希釈されたK1−18 Fabも、ELISAでのTSH−ビオチン結合の効果的な阻害物質だった。100μg/mLの対照MAb IgG(グルタミン酸デカルボキシラーゼに対するヒトMAbである5B3)を添加したELISAアッセイ緩衝液で希釈されたK1−18 IgGの阻害効果は、表3cに示されている。対照MAb K1−18 IgGを含有する緩衝液で希釈した場合、BSAを含有する緩衝液又はHBD血清で
希釈した場合と同様のTSH−ビオチン結合阻害活気を示した(表3c)。結果的に、高濃度(100μg/mL)の無関係なヒトMAb IgGの存在は、K1−18 IgG、M22 IgG、及び5C9 IgGのいずれの阻害活性にも効果を示さなかった。表3dは、TSHRへのTSH−ビオチン結合に対するK1−70の影響を示しており、これらは、K1−18又はM22の効果と同等である(表3a&3b)。HBD血清で希釈されたK1−70 IgGは、TSH−ビオチン結合に対して用量依存的な阻害効果を示し、0.01μg/mL、0.1μg/mL、及び1μg/mLで、それぞれ13.6±1.4%、74.1±0.4%、及び97.4±0.2%の阻害であった。K1−70 Fabは、同様に活性であり、0.01μg/mL、0.1μg/mL、及び1μg/mLで、それぞれ18.2±0.6%、88.3±0.3%、及び96.9±0.1%の阻害であった。K1−70 IgG又はFab調製物がELISAアッセイ緩衝液で希釈された場合、阻害活性は、HBD血清で製作された希釈物と比較して本質的に同じだった(表3d)。TSHR被覆ELISAプレートウエルに対するM22 Fab−PODの結合を阻害するK1−18 IgGの能力は、表4aに示されている。HBD血清で希釈されたK1−18 IgGは、用量依存的な様式でM22 Fab−POD結合を阻害し、特に、21.0±1.3%、81.6±0.5%、及び97.2±0.1%の阻害が、それぞれ0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLで観察された。この効果は、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLで、それぞれ51.0±2.4%、93.2±0.3%、及び98.0±0.2%であるM22 IgG(HBD血清で希釈)の阻害効果と同等である。K1−18 Fabは、K1−18 IgGと同様の、M22 Fab−POD結合を阻害する能力を示した(表4b)。表4aに示されているように、TSHRに対する標識M22の結合を阻害するK1−18及びM22の能力は、5C9、TSMAb 1〜7、及び9D33の阻害活性より大きかった。ELISAアッセイ緩衝液で希釈した場合、研究された全てのMAbの阻害効果は、HBD血清で希釈した場合に観察された阻害効果に類似していた(表4a及びb)。TSHRへのM22 Fab−POD結合に対するK1−18の阻害効果は、K1−70の効果と比較することができる(表4c)。HBD血清で希釈されたK1−70 IgGは、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLで、それぞれ34.5±3.8%、91.1±0.3%、及び97.6±0.1%の阻害を示した。K1−70 IgGをELISAアッセイ緩衝液で希釈した場合、同様の阻害パーセントが観察された(表4c)。表4cに例示されているように、HBD血清又はELISAアッセイ緩衝液で希釈されたK1−70 Fabは、K1−70 IgGと同様のM22−POD結合阻害活性を示した。
【0073】
TSHR被覆チューブに対する125I標識K1−18 IgG又はFab結合の阻害
0.01〜100μg/mL(HBD血清で希釈)濃度の対照ヒトMAb 4B4 IgGの存在下では、125I−K1−18 IgGの結合は、本質的に影響を受けなかった
(表5a)。これは、様々な濃度の未標識K1−18 IgG(HBD血清で希釈)の効果と比較することができ、0.001、0.01、0.1、及び1.0μg/mLの増加する用量は、それぞれ11.1±4.4%、22.9±2.4%、69.0±0.5%、及び91.7±0.8%の125I標識K1−18結合の阻害を引き起こした。0.001
〜100μg/mLの濃度で試験された未標識K1−18 Fabは、10.3±2.2%(0.03μg/mLで)〜84.8±0.9%(100μg/mLで)の範囲の阻害を示した(表5b)。また、K1−70 IgG及びFab(両方とも、0.001〜100μg/mLの濃度範囲で試験された)は、10μg/mLのK1−70 IgGでの95.1±0.3%及び3μg/mLのK1−70 Fabでの92.8±1.1%の本質的に完全な阻害まで、125I−K1−18 IgG結合を用量依存的な様式で阻害した
(表5b)。加えて、125I−K1−18 IgGの結合は、M22 IgG、M22
Fab、5C9 IgG、TSMAb 1〜7 IgG、及び9D33 IgGにより用量依存的な様式で阻害された(表5a及び5b)。同じ実験を、被覆チューブアッセイ緩
衝液で希釈された種々のMAb調製物を使用して実施した場合、それぞれの調製物の阻害効果は、5C9 IgGの場合を除いて、HBD血清で希釈された場合に観察された効果と同等であった(表5a)。アッセイ緩衝液で希釈された5C9の場合、100μg/mLでの最大阻害は、HBD血清で希釈された場合の57.7±2.4%と比較して、91.3±0.4%であり、0.01μg/mLでの阻害は、それぞれ11.7±1.8%及び−1.8±2.7%だった(表5a)。TSHR被覆チューブに対する125I−K1−
18 IgGの結合は、リンパ球供与体血清により阻害され、1:20及び1:10の血清希釈でそれぞれ35.2%及び59.3%の阻害がもたらされた(表5c)。20人のグレーブス病患者に由来する血清は、125I−K1−18 IgGの結合を阻害し、阻害
効果は、125I−TSH結合に対する阻害効果と同等であった(表5c)。表5cは、125I−K1−18 IgG及び125I−TSH結合の両方に対する阻止性TRAbを有する
2人の患者に由来する血清(B1及びB2)、及び刺激性TRAbを有する2人の患者に由来する血清(S1及びS2)の希釈物の効果も示す。TSHR被覆チューブに対する125I−K1−18 Fab結合に対する種々のMAbの効果は、表5dに示されている。
未標識K1−18 IgG及びK1−18 Fabは、両方とも125I−K1−18 F
ab結合に対して用量依存的な阻害効果を示し、これら効果は、M22 IgG、M22
Fab、及びK1−70 IgGの効果と同等であった(表5d)。5C9 IgG、TSMAb 1〜7 IgG、及び9D33 IgGも、125I−K1−18 Fab結
合を阻害したが、それら効果は、M22、K1−18、及びK1−70調製物と比較してより小さかった(表5d)。
【0074】
TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP産生の刺激
K1−18 IgGは、TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP産生を、表6aに示されているように用量依存的な様式で刺激した。低張性緩衝液では、0.1ng/mL K1−18 IgGが存在すると、環状AMPのレベルは、1.56±0.32pmol/Lであり、1.0ng/mLでは、4.08±0.28pmol/Lであり、10ng/mLでは、31.66±5.06pmol/Lであり、100ng/mLでは、64.95±9.61pmol/Lであり、1000ng/mLでは、環状AMPのレベルは67.90±10.44pmol/Lであった。低張性緩衝液中の様々な濃度のK1−18 Fabでの環状AMPレベルは、1ng/mL、10ng/mL、100ng/mL、及び1000ng/mLのK1−18 Fabで、それぞれ1.72±0.82pmol/L、9.99±3.52pmol/L、53.22pmol/L、及び66.94±6.93pmol/Lだった。低張性緩衝液中の1ng/mLのM22 Fabは、29.80±0.97pmol/Lの環状AMP産生を刺激し、10ng/mLでは、57.41±5.05pmol/Lの環状AMP産生を刺激した(表6a)。表6aは、等張性条件下で試験された、TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP刺激に対するK1−18 IgG又はFabの効果も示している。表6aの例により示されているように、K1−18及びK1−70は両方とも、等張性条件下で環状AMP産生の増加を引き起こしたが、産生された環状AMPのレベルは、低張性条件を使用した実験と比較してより低かった。低張性緩衝液で試験されたM22 IgG及びK1−18 IgGの刺激活性の比較は、表6bに示されている。3ng/mL濃度では、M22 IgGは、24.3±2.3pmol/mLの環状AMPを刺激し、K1−18 IgGは、8.3±0.5pmol/mLの環状AMPを刺激した。10ng/mLでは、M22 IgG及びK1−18 IgGは、それぞれ50.3±1.6及び25.0±1.0pmol/mLの環状AMPの刺激を引き起こし、100ng/mLでは、それぞれ64.6±1.9及び62.6±2.7pmol/mLの刺激を引き起こした。また、K1−18 IgG及びFabの刺激活性を、NIBSC基準調製物90/672の活性と比べて評価した(表6c)。K1−18 IgGの計算された環状AMP刺激活性は、155NIBSC 90/672単位/mgだった(3つの濃度のK1−18 IgGで計算された活性の平均;1ng/mL、3ng/mL、及び10ng/mL)(表6c)。同じ実験の中で計算された
K1−18 Fabの環状AMP刺激活性は、22NIBSC 90/672単位/mgであった(10ng/mL、30ng/mL、及び100ng/mLのK1−18 Fabでの活性を使用して計算した)(表6c)。これは、286NIBSC単位/mgのM22 IgG環状AMP刺激活性と比較することができる(表6c)。比較のために、等張性及び低張性緩衝液中での、ブタTSH、天然ヒトTSH、及び組換えヒトTSHの刺激活性が、表6dに示されている。
【0075】
表6eに示されている更なる例は、様々な組合せで一緒に混合された場合のK1−18
IgG、M22 IgG、又はpTSHの刺激効果に関する。pTSH、M22、又はK1−18の刺激効果は、同じ濃度の刺激物質単独の効果と比較して、2つの刺激物質が一緒に混合された場合、増強されると考えられる。特に、0.1ng/mLのpTSH単独での11.01±0.99pmol/mL(平均±SD)の環状AMP産生、及び1ng/mLのM22 IgGでの35.17±6.38pmol/mL(平均±SD)の環状AMP産生は、0.1ng/mLのpTSH及び1ng/mLのM22 IgGが一緒に混合された場合、47.22±3.89pmol/mL(平均±SD)に増加した。また、0.1ng/mLのpTSH及び10ng/mLのK1−18 IgGの混合物は、これら刺激物質単独よりも大きな刺激効果を示した(表6e)。更に、一緒に混合された2つの刺激抗体は、同じ濃度の単一の抗体よりも強力だった。例えば、5ng/mLのK1−18 IgGに応答して、29.95±1.18pmol/mL(平均±SD)の環状AMPが産生され、0.5ng/mLのM22 IgGに応答して、20.20±2.48pmol/mL(平均±SD)が産生された一方で、一緒に混合された5ng/mLのK1−18及び0.5ng/mLのM22に応答して、44.01±7.19pmol/mL(平均±SD)の環状AMPが産生された(表6e)。
【0076】
K1−18及びK1−70供与体血清並びに供与体血清IgGが環状AMPを刺激する能力を、NIBSC 90/672の刺激活性と比較した2つの実験の結果は、表6f及び6g示されている。実験1では、供与体血清の刺激活性は、30倍希釈での1.7±0.4pmol/mLのHBD血清の効果と比較して、同じ希釈で4.7±0.1pmol/mLの環状AMPであり、一方で供与体血清IgGの刺激活性は、30μg/mLで7.7±1.0pmol/mLであり、これは0.013単位/mgのNIBSC 90/672と比べた活性を表していた(表6f)。実験2では、30倍希釈の供与体血清は、9.5±0.7pmol/mLまでの環状AMPの刺激を引き起こし、その一方で30μg/mLの供与体血清IgGは、15.6±0.7pmol/mLまでの刺激を引き起こし、これは0.014単位/mgのNIBSC 90/672と比べた活性を表していた(表6g)。K1−18 IgG TSHR刺激活性は、表6hに示されている例により示されるように、TSHアンタゴニスト活性(K1−70及び5C9)を有するヒトMAbにより阻害された。特に、10ng/mLのK1−18 IgGは、50.0±3.3pmol/mLまでの環状AMPの刺激を引き起こし、これは、0.1μg/mLのK1−70 IgGの存在下では、3.8±1.0pmol/mLに低減された(92%阻害)。10ng/mLのK1−18 IgG及び0.1μg/mLの5C9 IgGの存在下では、環状AMPレベルは、4.4±1.5pmol/mLだった(91%阻害)。より高い濃度のK1−70 IgG又は5C9 IgGでは、阻害効果は完全だった(100%阻害)(表6h)。更なる実験では、K1−18 IgGの刺激活性に対する、5C9 IgGと一緒に混合されたK1−70 IgGの効果を研究した(表6i)。表6iに示されているように、10ng/mLでのK1−18 IgG刺激は、0.1μg/mLの5C9 IgG又は0.1μg/mLのK1−70 IgGにより効果的に阻害された。K1−70 IgG及び5C9 IgGを混合して、最終総濃度を0.1μg/mLにした場合も、K1−18 IgGの刺激活性が効果的に阻害された(97.3%阻害)。しかしながら、より低濃度では、一緒に混合された場合、K1−70 IgG及び5C9 IgGは、1つの抗体単独よりも効果的なK1−18 IgG刺激活性の阻害物質だ
った。例えば、0.001μg/mLでは、K1−70 IgG及び5C9 IgGは個々には、阻害を引き起こさなかったが(それぞれ0%及び1%)、一緒に混合して同じ終濃度の総IgG(つまり、0.001μg/mL)にした場合、阻害は25.5%だった。また表6iは、K1−70 IgG(100μg/mL)の存在下での環状AMP濃度が、アッセイ緩衝液の存在下で観察された濃度と同様であり、一方で5C9 IgG(100μg/mL)の存在下での環状AMPの濃度は、より低かった(それぞれ0.89±0.13、0.89±0.15、及び0.55±0.14)(三重重複測定での平均±SD)ことを示した。K1−70 IgG及び5C9 IgGを一緒に混合した場合(100μg/mLの終濃度の総IgG)、環状AMP濃度は、緩衝液の存在下で観察されたレベル未満には低減されなかった(つまり、基礎又は構成的活性レベルより低くはない)。比較して、M22 IgG(3ng/mL)刺激活性の本質的に完全な阻害は、1μg/mLの5C9 IgG又は1μg/mLのK1−70 IgGで観察され(それぞれ、97.1%及び96.6%阻害)、0.1μg/mLの5C9 IgG又は0.1μg/mLのK1−70 IgGでの阻害は、それぞれ92.8%及び75.5%だった(表6j)。しかしながら、5C9及びK1−70を一緒に混合して、0.1μg/mLの最終総IgG濃度にした場合、91.9%阻害が観察された(表6j)。K1−18 IgG刺激活性に対する、K1−70 IgG及び9D33 IgG混合物の効果は、表6kに示されている。9D33 IgGの場合は、1μg/mLで95%阻害が観察されたが、K1−70 IgGは0.1μg/mLで同じ阻害(95%阻害)を示した。しかしながら、2つの阻止性MAb(9D33及びK1−70)を一緒に混合して、0.1μg/mLの最終総IgG濃度にした場合も、95%阻害が観察された(表6k)。9D33 IgGは、10μg/mLでM22 IgG環状AMP刺激を本質的に完全に阻害することができたが(94%阻害)、K1−70 IgG(1μg/mL)は、より低い濃度で同様の効果(96%阻害)を示した(表6l)。M22活性の本質的に完全な阻害は(96%の阻害)は、1μg/mLの9D33及びK1−70混合物で明白だった(表6l)。これは、TSH刺激活性に対する9D33及びK1−70混合物(1μg/mL)の阻害効果と同等である(97%阻害)(表6m)。しかしながら、TSH刺激活性は、9D33
IgG単独(100μg/mLで95%阻害)によるよりも、K1−70 IgG単独(1μg/mLで98%阻害)によって、より効果的に阻害されたことは注目されるべきである(表6m)。表6nは、TSH、M22 IgG、及びK1−18 IgGのTSHR刺激活性に対する、リンパ球供与体血清及び阻止活性を有するTRAbを含有する3つの患者血清(B1〜B3)の効果を示す。供与体血清は、TSH、M22 IgG、及びK1−18 IgG刺激活性を阻害した(それぞれ、63.8%、80.1%、及び79.5%阻害)。TSH及びM22 IgG刺激に対する強力な阻害効果を示した阻止性TRAbを有する3つの異なる血清も、K1−18 IgGの刺激活性を阻害した(表6n)。TSH、M22 IgG、又はK1−18 IgGの刺激活性に対する、これら異なる患者血清の阻害効果は同等だった。
【0077】
アンタゴニスト(阻止)活性の測定
TSHRを発現するCHO細胞を3ng/mLのブタTSHと共にインキュベーションすることにより、62.6±3.9pmol/mLまでの環状AMP産生の刺激が引き起こされた(表7a)。増加する量のK1−70 IgGの存在下では、ブタTSHの刺激活性は、用量依存的な様式で阻害された。特に、0.01、0.05、0.1、及び1μg/mLのK1−70 IgGの存在下では、環状AMPのレベルは、それぞれ60.1±1.6、31.4±1.9、5.8±2.8、及び2.0±0.2pmol/mLであり、これは、対照MAb IgG(5B3)の効果と比べて、それぞれ4.0%、49.8%、90.7%、及び96.8%阻害に相当する(表7a)。表7aは、比較のため、5C9 IgGの阻害効果も示す。2つの異なる実験条件下におけるブタTSHの刺激活性に対するK1−70 Fabの効果は、表7bに示されている。1μg/mLのK1−70 Fabの存在下では、ブタTSH刺激活性は、両条件下で(つまり、等張性培地中
及び低張性培地中で)本質的に完全に阻害された。K1−70 Fabの効果は、研究された濃度範囲(0.003μg/mL〜3μg/mL)で用量依存的であり、わずか0.05μg/mLのFabが、1μg/mLの対照MAbの存在下で(等張性条件下で)、ブタTSH刺激を39.5±1.9 pmol/mLから28.9±1.1pmol/mLの環状AMPへと低減する能力を示した(表7b)。低張性条件下でのK1−70 Fabの効力は、等張性条件下で観察された効力に類似していた(表7b)。K1−70 IgGは、濃度を増加させても(0.001〜100μg/mLの範囲)、表7cに示されている例により示されているように、TSHRの構成的(基礎)活性を阻害するいかなる能力も示さなかった。これは、比較のために表7cで示されているように、5C9 IgGの効果とは対照的である。同じ実験で試験された阻止性マウス抗体9D33は、TSHR構成的活性に影響を及ぼす能力を示さず(表7c)、いくらか弱い刺激活性(基礎活性の約2倍)が、高濃度の9D33で観察された。
【0078】
K1−70 IgGの阻止活性を、表7dに示されているように、リンパ球供与体血清の阻止活性と比較した。1ng/mLのブタTSHと共にインキュベーションした後の環状AMPレベルは、61.7±4.3pmol/mLであり、このレベルは、供与体血清(10倍希釈)の存在下では、14.9±1.2pmol/mL(75.9%阻害)に低下し、20倍希釈の血清では51.6±2.6pmol/mLに低下した(16.4%阻害)。より高い希釈の供与体血清は、TSH刺激活性に対して検出可能な効果を示さなかった。供与体血清の効果は、0.1μg/mLで10倍希釈血清と同様の効果を示したK1−70 IgGの効果と比較することができる(それぞれ、67.6%及び75.9%阻害)(表7d)。K1−70 IgGは、表7eの例により示されるように、ブタTSH、ヒトTSH、及びヒト組換えTSHの環状AMP刺激活性を阻止する能力を示した。0.1μg/mLのK1−70 IgGは、低張性培地条件下で試験された3つのTSH調製物全ての刺激活性の効果的な阻止物質だった。K1−70 IgGの阻止活性は、等張性培地条件下ではそれほど効果的ではなかった(表7e)。TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP産生のM22 IgG媒介性刺激に対するK1−70 IgGの効果は、表7fに示されている。3ng/mLのM22 IgGで観察された環状AMPレベルは、33.1±1.8pmol/mLであり、これらは、K1−70 IgGの存在下では、例えば、0.1μg/mLで4.3±2.4pmol/mLに減少した(87%阻害)(表7f)。K1−70 IgGの効果は、同じ実験で試験された5C9 IgGの効果と同等であった(表7f)。更に、K1−70 IgGは、グレーブス病の患者に由来する血清中でTRAbの環状AMP刺激活性を阻止する能力を示し、表7g〜7kの例は、100μg/mL濃度のK1−70 IgGが、研究された15個の血清全てで刺激活性の完全な阻害を引き起こしたことを示す(T1〜T15の阻害は90.8%〜98.7%の範囲だった)。血清T1〜T15の刺激活性に対するK1−70 IgGの効果は、1つの血清、つまり、T11を除いて、同じ実験で試験された5C9 IgG及び9D33 IgGの効果と同等であった(表7j)。血清T11の刺激活性は、100μg/mLの5C9 IgGによりごく弱く阻害されたが(8.5%阻害)、100μg/mLのK1−70の存在下では、阻害は本質的に完全だった(95.1%阻害)(表7j)。T11の効果的な阻害(87.1%)は、100μg/mLの9D33でも観察された(表7j)。3つのグレーブス病血清(血清T11を含む)の刺激活性に対する、様々な濃度(0.01〜100μg/mL)の様々な阻止性MAbの効果は、表7l〜7nに、より詳細に示されている。これら実験は、5C9 IgGが効果をほとんど又は全く示さなかった血清T11の場合を除いて、K1−70 IgG、5C9 IgG、及び9D33
IgGが、ほんの0.1μg/mLの低濃度で効果的な阻害物質であることを示した(表7n)。表7oは、K1−70 IgG及び5C9 IgGが1つの実験で一緒に混合された場合、ブタTSH刺激が、この2つの阻止性MAbにより阻害されることを示す。これら実験により、この2つの阻止性MAbは、環状AMP産生のTSH刺激を阻害するそれらの能力を組み合わせると効果的だったことが示された。加えて、TSHR構成的活
性に対する、一緒に混合されたK1−70 IgG及び5C9 IgGの効果を試験した。表7c及び7pに示されているように、K1−70 IgGは、5C9 IgGとは対照的にTSHRの基礎活性に効果を示さなかった。K1−70及び5C9 IgGを一緒に混合して、2μg/mLの最終IgG濃度にすると、環状AMPレベルは、緩衝液のみが存在する場合の58.04±8.52pmol/mL(平均±SD、n=3)から、55.28±6.17pmol/mL(平均±SD、n=3)へとわずかに低下し、つまり4.8%阻害だった(表7p)。しかしながら、5C9 IgGを5B3 IgG(グルタミン酸デカルボキシラーゼに対する対照抗体)と混合して、2μg/mLの最終IgG濃度にすると、TSHR構成的活性は、基礎値の52.1%にまで阻害された(環状AMPレベル 27.78±2.96pmol/mL;平均±SD、n=3)(表7p)。これら実験により、K1−70 IgGの存在下では、5C9 IgGは、TSHR構成的活性の効果的な阻害物質として作用することができないことが示される。
【0079】
K1−18刺激活性に対するTSHR突然変異の効果
環状AMP産生の刺激に対するK1−18 IgGの効果を、以下のアミノ酸突然変異を有するTSHRを発現するCHO細胞を使用して試験した:Lys58Ala、Arg80Ala、Tyr82Ala、Glu107Ala、Arg109Ala、Lys129Ala、Phe130Ala、Phe134Ala、Lys183Ala、Asp203Ala、Arg255Asp(表8a〜k、及び表10の要約)。TSHRアミノ酸Lys58、Arg80、Tyr82、Glu107、Arg109、Lys129、Phe130、Phe134、及びAsp203のアラニンへの突然変異は、環状AMP産生を刺激するK1−18 IgGの能力に効果を示さなかった。環状AMP産生を刺激するK−18 IgGの能力は、突然変異Lys183Ala及びArg255Aspを含有するTSHRを発現するCHO細胞で完全に失われ、K1−18 IgGに応答した環状AMP濃度は、環状AMP緩衝液のみの存在下で観察された濃度と同様であった(表8i及び8k)。しかしながら、TSHに対する応答性は、Lys183Ala及びArg255Asp突然変異で保持された。更なる一連の実験で、K1−18 IgG環状AMP刺激活性に対する、TSHRの種々のアミノ酸の突然変異の効果を更に試験した(表14a〜14v、及び表16の要約)。TSHR残基Asp43、Ile60、Glu61、Thr104、His105、Lys250、Arg255、Thr257、Asp276、Ser281の突然変異(アラニンへの)は、環状AMP産生を刺激するK1−18 IgGの能力に効果を示さなかった。TSHR Asp151、Glu178、Lys209、Gln235、Glu251のアラニンへの突然変異は、K1−18 IgG刺激活性の小さな低減を引き起こしたが、これら突然変異は、TSH刺激活性にも効果を示し、従ってこれらTSHR残基との相互作用は、K1−18に特異的であるとは見なされなかった。対照的に、TSHR Glu157Ala、Lys183Asp、Tyr185Ala、及びAsp232Alaの突然変異は、環状AMPを刺激するK1−18 IgGの能力の喪失もたらした(野生型活性の20%未満;表14g、14i、14j、14m)。更に、Tyr206、Trp258、及びArg274がアラニンに突然変異されたTSHRを刺激するK1−18 IgGの能力は、野生型活性のおよそ40〜60%に低減された(表14k、14s、14t)。
【0080】
K1−70阻止活性に対するTSHR突然変異の効果
環状AMP産生のTSH刺激に対するK1−70 IgGの効果を、以下のアミノ酸のアラニンへの突然変異を有するTSHRを発現するCHO細胞を使用して試験した:Lys58、Arg80、Tyr82、Glu107、Arg109、Lys129、Phe130、Phe134、Lys183、及びAsp203。加えて、TSHR突然変異Arg255Aspの効果を試験した。(表9a〜k、及び表10の要約)。TSHRアミノ酸Arg80、Glu107、Lys129、Phe130、Phe134、及びAsp203のアラニンへの突然変異は、TSH刺激性環状AMP産生を阻害するK1−70
IgGの能力に効果を示さなかった。TSH刺激性環状AMP産生を阻害するK1−70の能力は、TSHR Lys58、Tyr82、Arg109、及びLys183のアラニンへの突然変異により低減された。突然変異Lys58Alaが、最も大きな効果を示し(表9a)、Arg109Ala、Lys183Alaと続き、Tyr82Alaが最も小さな効果を示した(それぞれ、表9e、9i、9c、及び表10)。しかしながら、研究された突然変異はいずれも、TSH刺激性環状AMP産生を阻止するK1−70 IgGの能力の完全な喪失を引き起こさなかった。更なる一連の実験で、K1−70 IgG阻止活性に対する、TSHRの種々のアミノ酸の突然変異の効果を更に試験した(表15a〜15v、及び表16の要約)。TSHRで形質移入されたCHO細胞でのTSH刺激性環状AMP産生を阻害するK1−70の能力は、TSHR Asp43、Thr104、His105、Asp151、Tyr185、Tyr206、Lys209、Asp232、Gln235、Glu251、Arg255、Thr257、Trp258、及びArg274のアラニンへの突然変異でも、突然変異Asp160Lys及びLys183Aspでも影響を受けなかった。TSHR Glu178及びSer281の突然変異(アラニンへの)は、TSHの刺激活性を阻止するK1−70 IgGに能力に小さな効果を示した(野生型活性の80〜100%;表15h及び15v)。TSHR Glu61、Lys250、及びAsp276のアラニンへの突然変異は、K1−70 IgG阻止活性に対してある程度の効果を引き起こし(野生型の60〜80%)(表15c、15o、15u)、TSHR突然変異Ile60Alaは、野生型活性の40〜60%までのK1−70 IgG阻止活性の低減を引き起こした(表15b)。
【0081】
TSHRに対する125I標識K1−70 IgG又はFab結合の阻害
TSHR被覆チューブに対する125I−K1−70 IgGの結合は、未標識K1−7
0 IgGにより用量依存的な様式で阻害され、0.003μg/mL、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLの濃度(HBD血清で希釈)で、阻害は、それぞれ10.2±2.4%、36.5±1.9%、84.4±0.8%、及び92.0±0.5%であった(表11a)。表11aに示されているように、125I−K1−7O
IgGの結合は、M22 IgG(HBD血清で希釈)によって非常に類意した様式で阻害され、0.003μg/mL、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL濃度で6.2%(二重重複測定の平均)、33.8±0.9%、84.6±1.1%、及び91.6±0.5%阻害であった。M22 Fabは、より低濃度で125I−K1
−7O IgG結合を阻害するより大きな効力を示し、0.003μg/mL、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL濃度(HBD血清中)で、16.7±6.0%、60.2±1.8%、89.9±01%、及び92.0±0.3%阻害であった(表11a)。また、K1−18 IgG及びFabは、用量依存的な様式でTSHRに対する125I−K1−70 IgG結合を阻害した(表11b)。0.03μg/mL
、0.3μg/mL、及び3μg/mL(HBD血清中)のK1−18 IgGの希釈物は、それぞれ20.0±1.9%、73.9±0.6%、及び91.0の±0.3%阻害を示し、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL(HBD血清中)のK1−18 Fabは、それぞれ10.2±2.1%、60.9±1.1%、及び80.5±0.6%阻害を示した(表11b)。対照的に、より高い濃度の5C9 IgGが、125I−K1−70 IgG結合の阻害に必要とされ、15.4±3.4%阻害には1μ
g/mLが必要とされ、100μg/mLは、68.5±0.7%阻害を示した(表11a)。また、表11a及び11bは、アッセイ緩衝液中で、125I−K1−70結合に対
する種々のヒトMAbの効果を示す。効果は、希釈物をアッセイ緩衝で製作した場合、HBD血清と比較してより強力である。TSHRへの125I−K1−7O IgG結合に対
するTSHR刺激活性(TSMAb 1〜7)及びTSHR阻止活性(9D33)を有するTSHRに対する様々なマウスモノクローナル抗体の効果は、表11cに示されている。試験したTSMAbは全て、125I−K1−70 IgG結合を阻害する能力を示し、
100μg/mL濃度(HBD血清中)は、33.5±3.7%(TSMAb 3)〜5
9.6±0.6%(TSMAb 5)の範囲の阻害を引き起こした(表11c)。100μg/mL(HBD血清中)の9D33 IgGは、51.1±1.7%阻害を示した(表11c)。これらMAbをアッセイ緩衝液で希釈した場合、阻害%は、HBD血清と比較して、ある場合にはわずかにより高く、他の場合にはわずかにより低かった(表11c)。更なる実験により、TSHRに対する125I−k1−70 Fab結合も、K1−1
8 IgG、K1−18 Fab、M22 IgG、M22 Fab、K1−70 IgG、K1−70 Fab、及びマウスTSMAbにより、用量依存的な様式で効果的に阻害されたことが示された(表11d)。15.9%〜80.0%の範囲の125I−TSH
結合阻害活性を有する(TSHR被覆チューブアッセイで)TSHR自己抗体を含有するグレーブス病患者血清(n=20)も、TSHRに対する125I−K1−70 IgG又
はFab結合を阻害する能力を示した(それぞれ、19.2%〜77.6%及び、15.9%〜72.8%の範囲)(表11e)。試験された3つの未標識リガンドの阻害%は、各血清の場合、同等だった(表11e)。HBD血清(n=10)はいずれも、125I標
識TSH、K1−70 IgG又はFab結合に効果を示さなかった(表11e)。表11eは、TSHR刺激活性を有する2つの血清(S1及びS2)、及びTSHR阻止活性を有する2つの血清(B1及びB2)を使用した実験の例を示す。いずれのタイプの活性を有する血清も、125I標識TSH、K1−70 IgG又はFabを用量依存的な様式
で阻害し、様々なリガンドの結合を阻害する度合いは、各血清で同等であった(表11e)。
【0082】
TSHRに対するK1−18及びK1−70結合の動力学
TSHR(全長)被覆チューブに対する125I標識K1−70 IgG及びFabの結
合は、室温で、180分後に最大に達した(それぞれ、45.5%及び37.1%結合)。50%最大結合は、約35分後に生じた(図1a)。TSHR260被覆チューブに対する125I標識K1−70 IgG結合は、180分で36.2%達し、50%最大結合
は、60分間のインキュベーション後に観察された(図1b)。TSHR260に対する125I標識K1−70 Fab結合の時間的経過は、K1−70 IgGで観察された経
過と同様であり、60分間のインキュベーション後に37.3%の最大結合、およそ60分後に50%最大結合であった(図1c)。未標識K1−70 IgG若しくはFab、K1−18 IgG若しくはFab、M22 IgG(全て1mg/mL)、ブタTSH(100mU/mL)、又はアッセイ緩衝液を、TSHR(全長)被覆チューブに結合した125I−K1−70 IgG又は125I−K1−70 Fabのいずれかに添加することでは、180分間インキュベーションした後でさえ、検出可能な解離がもたらされなかった(図1d、1e、及び1f)。しかしながら、未標識M22 Fab(1mg/mL)を、TSHR被覆チューブに結合した125I−K1−70 IgG又は125I−K1−70
Fabに添加した後では、それぞれ、結合時の計数の41.2%及び27.9%が、180分のインキュベーション後に解離した(図1d及び1f)。TSHR260に結合した125I標識K1−70 IgGに対する、種々の未標識リガンドの解離効果は、図1g
に示されている。ブタTSH、M22 IgG、及びK1−18 IgGは効果を示さなかったが、M22 Fab及びK1−70 Fabは、30分間のインキュベーション後に、結合した125I標識K1−70 IgGのおよそ30%をTSHR260から解離さ
せ、その後解離は、更に最長180分間は増加しなかった(図1g)。K1−18 Fabは、図1hに示されているように、同様の効果を示した。TSHR260被膜チューブに対する125I−K1−70 Fab結合は、未標識K1−70 IgG、K1−18
IgG、M22 IgG(全て1mg/mL)、ブタTSH(100mU/mL)、又はアッセイ緩衝液と共にインキュベーションすることでは解離されなかった。未標識M22
Fab又はK1−70 Fab(1mg/mL)とのインキュベーションは、TSHR260に対する125I−K1−70 Fab結合の解離を引き起こした(それぞれ、58
.9%及び62%)(図1i)。TSHR被覆チューブに対する125I標識K1−18
IgGの結合は、室温で180分後に、全長TSHRで被覆したチューブの場合は、32
.7%の最大値に達し、TSHR260で被覆したチューブの場合には23.3%に達した(図1j)。50%最大結合は、全長TSHRの場合は、およそ45分後に、TSHR260の場合は、およそ50分後に観察された(図1j)。全長TSHR被覆チューブに結合した125I標識K1−18 IgGは、未標識ブタTSHとのインキュベーションに
よっては、わずかにしか解離されなかったが、未標識K1−18 IgG、M22 IgG、K1−70 IgG、K1−18 Fab、及びK1−70 Fabとのインキュベーションは、わずかにより大きな効果を示した(180分後におよそ25%解離)(図1k)。対照的に、M22 Fabは、60分間のインキュベーション後、全長TSHRに結合した125I−K1−18 IgGの29%解離を引き起こし、180分間のインキュ
ベーション後では、43%解離に増加した(M22 Fabと共に60分間及び180分間インキュベーションした後のそれぞれ24.5%及び19.8%と比較して、M22 Fabの非存在下では、結合した125I−K1−18 IgGは34.5%)(図1k)
。TSHR260被覆チューブに対する125I標識K1−18 IgG結合の場合、ブタ
TSHとのインキュベーションは、解離効果を示さなかった(図1l)。対照的に、未標識M22 Fab、K1−70 Fab、及びK1−18 Fabとのインキュベーションは、結合した125I−K1−18 IgGをTSHR260から解離させた。M22
Fab及びK1−70 Fabの存在下での解離は迅速だったが(30分間のインキュベーション後、およそ50%)、K1−18 Fabとのインキュベーションでは、50%解離は90分後に引き起こされた(図1l)。完全M22 IgG、K1−70 IgG、及びK1−18 IgGは、TSHR260から125I−K1−18 IgGを解離さ
せる能力がより劣っており、180分間のインキュベーション後に、およそ30%解離が観察された(図1l)。別々の一連の実験では、125I標識ブタTSHは、TSHR26
0被覆チューブに結合できなかったことが示された。全長TSHRで被覆されたチューブに対する125I−TSHの結合は、以前に記述されていた(Nakatake et al 2006、上記)。
【0083】
TSHR260−APに基づくELISAにおけるK1−18又はK1−70 IgGの効果
ELISAプレートウエルに固定化された全長TSHRと、液相中のTSHR260−APとの間に「架橋」を形成するK1−18 IgGの能力は、表12aに示されている例により示されている。OD405nm値は、K1−18 IgG(HBD血清で希釈)濃度の増加と共に、用量依存的な様式で増加した。特に、OD405nm値は、HBD血清のみが存在する場合の−0.002のOD405nmと比較して、0.005、0.05、0.5、10、及び100μg/mLのK1−18 IgGで、それぞれ0.013、0.191、0.511、0.660、及び0.706だった。K1−70 IgG(HBD血清で希釈)も、架橋ELISAでウエルに結合し、0.005、0.05、0.5、10、及び100μg/mLのK1−70 IgG濃度で、それぞれ0.045、0.290、0.661、0.738、及び0.794のOD405nm値を示した(表12a)。K1−18及びK1−70 IgGの効果は、表12aに示されているように、TSHR260−AP調製物に結合するM22 IgGの能力と比較することができる。このアッセイでは、増加する用量のM22 IgG(0.005μg/mL〜10μg/mLの範囲、HBD血清で希釈)は、増加する量のTSHRと結合し、OD405nm値は0.045〜0.796の範囲だった。MAbの希釈物を、HBD血清ではなくELISAアッセイ緩衝液で製作した場合、450nmの吸光度は、特に5C9の場合により高かった(表12a)。二価IgGがTSHRの2つの分子に結合する「架橋型」ELISAの原理を、表12bに示されている実験結果により更に検証した。TSHR(M22、5C9、K1−18、及びK1−70)に対するヒトMAbの完全IgGは、ELISAにおいて用量依存的な結合を示したが、同じMAbの一価Fab断片は、応答をほとんど又は全く示さなかった(表12b)。マウスTSMAb 1〜7も、表12cの例により示されているように、TSHR260−AP ELISAのウエルに結合した。OD40
5nmのシグナルは、10μg/mL濃度TSMAb 1〜7で、0.103〜0.561の範囲であった(表12c)。マウスTSHR阻止性MAb 9D33も、このアッセイ系で結合し、OD405nmのシグナルは、10μg/mLで0.481だった(表12d)。刺激活性を有するTRAbを含有する患者血清、つまりTSHRを発現するCHO細胞で環状AMP活性を刺激する能力を示した血清は、TSHR260−AP ELISAのウエルと反応した。表12eは、様々な希釈で試験された6つの異なる血清の例を示しており、OD405nmシグナルは、HBD血清中1/5希釈で0.407〜0.924の範囲であった。更に、阻止型TSHR自己抗体を有する患者由来の血清は、表12fの例により示されているように、TSHR260−AP ELISAのウエルに結合し、OD405nmシグナルは、HBD血清中1/10希釈で0.323〜0.896の範囲だった。表12gには、TSHR260−AP ELISAにおける患者血清の結合の、より多くの例が示されている。TSHR260−AP ELISAでのTRAb濃度は、NIBSC基準調製物90/672で作成した検量線から計算し、TSHR被覆チューブアッセイを使用して同じ血清中で測定されたTRAb濃度と比較した(NIBSC U/Lとして表されている)。TSHR260−AP ELISAを使用して行われたTRAb測定と、全長TSHRに対するTSH結合を阻害することにより行われたTRAb測定(被覆チューブアッセイ)との一致は全体的に良好であった(r=0.913、n=57)(図2a)。表12hは、患者血清TRAbが、ELISAプレートウエルに被覆されたTSHR260に対する、ペルオキシダーゼで標識されたM22 Fabの結合を阻害する能力を有することを示す。全長TSHRに対するM22 Fab結合の阻害に基づくアッセイでのTRAb測定値の比較は、TSHR260に対するM22 Fab結合の阻害に基づくアッセイの結果と良好に相関していた(r=0.761;n=56)(図2b)。他の比較データは、図2c及び2dに示されている。抗体の結合に対するTSHR
R255突然変異の効果を、TSHR260−AP ELISAで試験した。これら実験では、突然変異R255Dを含有するTSHRの全長調製物を、プレートウエルに被覆し、上述の標準的プロトコールを使用してELISAを実施した。表12iに示されているように、K1−70 IgG又は9D33 IgGの結合は、TSHR R255D突然変異により、ほんのわずかに影響を受けたに過ぎなかった。対照的に、M22 IgG結合は、TSHR R255D突然変異により著しい影響を受け、ODシグナルは、研究された全ての濃度で低減された(表12i)。TSHR R255D突然変異は、突然変異受容体を使用したアッセイでは、より高い濃度のK1−18 IgGにほとんど効果を示さなかったが、より低い濃度(0.1μg/mL以下)は、効果がはるかにより低かった(表12i)。また、表12jは、TSHR R255D被覆プレートを使用した場合、野生型TSHRと比較して、10個のグレーブス病血清(TSHR刺激活性又は阻止活性について選択されなかった)のOD405nmシグナルが低減されたことを示す。シグナルの低減の度合いは、異なる血清で異なっていた(表12j)。患者TSHR阻止性血清は、TSHR260−AP ELISAでウエルに結合し(表12f)、TSHR R255Dに対する同じ血清の結合は、表12kに示されている。野生型TSHR及びR255D突然変異TSHRの実験におけるOD405nmシグナル値は類似しており、結果的に、阻止性血清の結合に対するTSHR R255D突然変異の効果は、このアッセイ系では明確には現れない。TSHR260−AP ELISAでの患者阻止性血清の結合に対するR255D突然変異の効果は、甲状腺刺激活性を有する患者血清の結合に対する同じ突然変異の効果と比較することができる。表12lは、TSHR R255Dに対する6つの刺激性血清(S1〜S6血清は、表12eと同じである)の結合を示す。6つの血清全ての場合で、TSHR R255Dを用いたアッセイでのOD405nm値は、野生型TSHRと比較してより低かった。シグナル低減の度合いは異なっており、血清S4、S5、及びS6(HBD貯溜血清で1:5希釈)の場合、シグナルは、野生型TSHRを用いた実験での0.646、0.407、及び0.531から、TSHR R255Dを用いた実験での0.193、0.133、及び0.342にそれぞれ低下した(表12l)。高レベルのTRAbを有する血清の場合のOD405nm値の低減(表12e及び
12lの血清S1〜S3)は、より高い血清希釈で明らかに明白だった。例えば、血清S1、S2、及びS3(HBD貯留で1:20希釈)の場合、野生型TSHRを用いた実験での0.583、0.407、及び0.453のOD405nmシグナルは、TSHR R255Dを用いた実験での0.193、0.117、及び0.210にそれぞれ明らかに低減した。表12k及び12lに示されている例は、ある場合には、TSHR刺激活性を有する血清は、R255D突然変異を含有するTSHRに対する結合の差異に少なくとも基づいて、TSHR阻止活性を有する血清と区別することができることを示唆する。刺激活性を有する患者血清の結合は、この突然変異により影響を受ける傾向があるが、阻止活性を有する患者血清の結合には、その傾向がない。
【0084】
様々なTSHR調製物の温度安定性
温度安定性実験では、全長TSHRに対するM22 Fab−ペルオキシダーゼの結合の、ELISAにおけるOD450nm値は、(a)−80℃で保管された調製物(未処理)、(b)室温で24時間インキュベートした後で−80℃に戻された調製物、(c)室温で48時間インキュベートした後で−80℃に戻された調製物の場合、それぞれ1.748、0.268、及び0.126だった。結果的に、48時間及び24時間室温で保管された全長TSHR調製物は、未処理調製物と比べて、それぞれ7%及び15%の活性しか示さなかった。M22 Fab−ペルオキシダーゼ結合のOD450nm値は、未処理TSHR260の場合は2.293であり、24時間及び48時間室温で保管されたTSHR260の場合は、それぞれ1.836及び1.676だった。室温で24時間及び48時間保管されたTSHR260の活性は、未処理調製物に比べて、それぞれ80%及び73%だった。同様の結果は、TSHR260−APの場合に観察され、OD450nmは、未処理試料の場合の2.395と比較して、室温で24時間及び48時間保管された試料の場合、それぞれ2.106及び1.983だった。これは、未処理TSHR260−APと比較して、24時間及び48時間の室温保管後では、結合活性が88%及び83%だったことを表した。未処理TSHR LRD C−CAPを用いた実験では、OD450nmは、1.826であり、24時間及び48時間の室温保管後では、それぞれ1.158及び1.155だった。TSHR LRD C−CAPは、未処理調製物と比べて、室温で24時間及び48時間の保管後に63%の活性を示した。上述の実験は、M22に結合するTSHR260、TSHR260−AP、及びTSHR LRD C−CAPの能力が、室温保管処理後に、全長TSHR調製物より大きかったことを示した。これは、TSHR260、TSHR260−AP、及びTSHR LRD C−CAPが、全長TSHRと比較して室温でより安定していることを示す。
【0085】
可変領域配列
K1−18をコードする遺伝子の配列分析は、HC V領域遺伝子が、VH5−51*01ファミリーに由来し、D遺伝子は、D3−16*02(又はD3−16*01)ファミリーに由来し、JH遺伝子は、J3*02ファミリーに由来していたことを示した。LCの場合、V領域遺伝子は、V3−20*01ファミリーに由来し、J領域遺伝子は、JK−1*01生殖細胞系に由来していた。HCヌクレオチド及びアミノ酸配列は、図3(配列番号1〜18)に示されており、LCヌクレオチド及びアミノ酸配列は、図4(配列番号19〜36)に示されている。HC遺伝子配列には、生殖細胞系配列と比較して体細胞突然変異;特に、CDR1における1つのサイレント突然変異及び1つの置換突然変異、CDR2における1つのサイレント突然変異及び3つの置換突然変異、FRW3における3つの置換突然変異、並びにCDRにおける1つのサイレント突然変異及び1つの置換突然変異が存在する。CDRの置換突然変異/沈黙突然変異(R/S)比は2.7であるが、これら突然変異に加えて、CDR3に8塩基対長の挿入が存在する。HC CDR1(配列番号6及び16)は、5アミノ酸長であり、CDR2(配列番号7及び17)は、17アミノ酸長であり、CDR3(配列番号8及び18)は、13アミノ酸長である(それぞれ、図3b及び3d)。LC配列には、CDR1に2つの置換突然変異、FWR2に
1つのサイレント突然変異、及びCDR3に3つの置換突然変異が存在しており、全体のR/S突然変異比は、5.0である(FWR及びCDR)。LC CDR1(配列番号24及び34)は、12個のアミノ酸で構成されており、CDR2(配列番号25及び35)は、7個のアミノ酸で構成されており、CDR3(配列番号26及び36)は、9個のアミノ酸で構成されている(それぞれ、図4b及び4d)。K1−70 HC V領域は、VH5−51*01生殖細胞系に由来し、D遺伝子は、D1−7*01ファミリーに由来し、JH遺伝子はJ4*02ファミリーに由来する。LC遺伝子は、LJ7*01に由来するJL遺伝子と組み合わされたLV1−51*01生殖細胞系に由来する。このHCヌクレオチド及びアミノ酸配列は、図5(配列番号37〜54)に示されており、好ましいLCヌクレオチド及びアミノ酸配列は、図6c及び6d(配列番号63〜72)に示されている。K1−70 HC配列には、FWR1に3つの置換突然変異、CDR1に3つの置換突然変異、FWR2に1つの置換突然変異、CDR2に2つのサイレント突然変異、FWR3に4つの置換突然変異、及びFWR4に1つの置換突然変異が存在する。全体の(FWR及びCDR)R/S突然変異比は、6.0である。加えて、CDR3には2つの挿入;V遺伝子とD遺伝子との間の接合部にある5塩基対の挿入、D遺伝子とJ遺伝子との間の接合部にある12塩基対の挿入が存在する(図5b及び5d;配列番号41及び51)。HC CDR1(配列番号42及び52)は、5アミノ酸長であり、CDR2(配列番号43及び53)は、17アミノ酸長であり、CDR3(配列番号44及び54)は、10アミノ酸長である(それぞれ、図5b及び5d)。K1−70 LC遺伝子は、FWR1に1つのサイレント突然変異、FWR2に1つのサイレント突然変異及び1つの置換突然変異、及びFWR3に1つの置換突然変異を示す。CDR1に1つのサイレント突然変異及び2つの置換突然変異、並びにCDR3に2つの置換突然変異が存在する。全体の(FWR及びCDR)R/S突然変異比は、2.0である。加えて、LC V遺伝子とJ遺伝子との間には2塩基対の挿入がある。LC CDR1(配列番号70)は、13個のアミノ酸で構成されており、CDR2(配列番号71)は、7個のアミノ酸で構成されており、CDR3(配列番号72)は、11個のアミノ酸で構成されている(図6d)。
【0086】
K1−70 Fabの構造
Fab K1−70の構造を、2.22Åの分解能で決定した(図8)。ラマチャンドランプロットパラメーター及び精密化統計値は、妥当な構造精密化に許容される範囲内にあった。非対称単位は、2つの完全なFab K1−70分子、Fab A及びFab Bを含有している。Fab Aは、重鎖A及び軽鎖Bを含有し、Fab Bは、重鎖C及び軽鎖Dを含有している。2つのFab分子は、肘角度が異なるため(Fab A=145.5°、Fab B=163.1°)、非結晶学的対称性では関連付けられない。この構造の主鎖電子密度に破綻はないが、末端にある幾つかの残基は見当らない。Fab Aでは、重鎖A及び軽鎖Bは、それぞれ残基1〜227及び4〜211で構成されており、Fab Bでは、重鎖C及び軽鎖Dは、それぞれ残基1〜227及び2〜212で構成されている。Fab A及びFab Bの残基は、カバット方式(KabatEetal1991、上記)に従って付番されている。詳細は、図8及び9aを参照されたい。電子密度は、重鎖Aの残基1、58、129、及び213の側鎖;軽鎖Bの残基18、94、110、126、156、163、及び166の側鎖;重鎖Cの残基1、58、及び218の側鎖;並びに軽鎖Dの残基17、18、94、108、156、172、184、187、及び190の側鎖について観察することができなかった。電子密度図中にこれら側鎖が存在しないことは、主として、それらが結晶構造の溶媒接触可能領域に位置するため、高度に可動性であることを示す。LSQKAB(CCP4)を使用して計算したFabの2つの分子の標準偏差(r.m.s.d)は、VHドメイン(117個のCα原子)では0.20Åであり、VLドメイン(106個のCα原子)では0.23Åであり、CHドメイン(96個のCα原子)では0.22Åであり、CLドメイン(97個のCα原子)では0.29Åである。これは、たとえ2つのFab分子間の肘角度が異なっていても、ドメインそれ自
体は、最小限の相異を示していることを実証する。K1−70 Fabの構造は、標準的であり(図9a)、6つのCDRがとる標準的な構造は、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3の場合、それぞれ1、1、及び2であり、HC CDR1及びHC CDR2の場合、それぞれ1及び2Aである。HC CDR3は、配列及び立体構造における変異がより大きいため、いかなる標準クラスにも帰属されていない。ジスルフィド結合は、システイン残基LC23−LC88、LC134−LC194、HC22−HC92、HC142−HC208の間に存在する。K1−70 Fab LCの結晶構造では、CDR1は13残基長であり、LC CDR2は7残基長であり、LC CDR3は11残基長である。HC CDR1は、5個の残基で構成され、HC CDR2は17個の残基で構成され、HC CDR3は12個の残基で構成されている。構造を更に解析するために、LC CDR3 Arg94及びHC CDR2 Arg58の側鎖を加えた(これらの電子密度は、回折データセットに見当らなかった)。構造に関する下記の説明では、括弧中の値は、これら側鎖を含めて取得された値を指す。LC内には158個の水素結合があり、HC内には177個の水素結合がある。LCからの52(52)個の残基は、HCからの44(45)個の残基とのインターフェース接触に関与している。2つの鎖をそれらの相対位置に維持する7個の水素結合及び2個の塩橋が存在する。LC CDR1の溶媒接触可能表面積(ASA)は、525(485)Å2であり、LC CDR
2は508(508)Å2であり、LC CDR3は257(442)Å2であり、HC CDR1は120Å2であり、HC CDR2は759(842)Å2であり、HC CDR3は557(528)Å2である。K1−70 Fabの抗原結合部位表面の荷電アミ
ノ酸の分布を分析し、図9bに示す。結合部位の表面は、一方の側には負荷電残基が多く、他方の側には正荷電残基が多い。抗原結合表面にある酸性パッチには、LCからは残基:Asp27B(CDR1)、Asp50(CDR2)、Asp92(CDR3)が寄与しており、HCからは残基:Asp31(CDR1)、Asp54、及びAsp56(CDR2)、並びにAsp96(CDR3)が寄与している。塩基性パッチには、LCからは残基:Lys53及びArg54(CDR1)及びArg94(CDR3)が寄与しており、HCからは残基:Arg58(CDR2)及びArg101(CDR3)が寄与している。加えて、CDR領域外にあるLC Lys66も、表面の塩基性パッチに寄与している。全体として、K1−70の抗原結合表面にある正荷電区域は、主にLC残基で構成されており、負荷電区域はHC残基で構成されている。また、K1−70の抗原結合表面は、芳香族残基に富んでおり、HC及びLC CDRからの5個のチロシン、1個のフェニルアラニン、及び3個のトリプトファンがある(図9c)。加えて、FRW領域からの4個のチロシン及び1個のフェニルアラニンが、表面区域に寄与している。K1−70抗原結合区域の表面は、全体的に高度に不規則であり、中心付近にくぼみがある。このくぼみは、主に芳香族残基及びLC Asp50に囲まれている(図9b及び9c)。更に、くぼみの内部も芳香族残基により占められている。これは、芳香族の接触が、K1−70とTSHRとの間の相互作用に重要であり、TSHR表面の突出した芳香族残基が、K1−70表面のくぼみに「嵌合」する可能性を示唆する。
【0087】
組換えK1−70 Fab
表17aは、大腸菌培養上清中の組換えK1−70 Fabが、TSHRに対する125
I−TSH結合を阻害する能力を有していたことを示す。阻害効果は、より低希釈の培養上清で完全であるが(1:2希釈で91.9%)、上清の希釈を増加させることにより、用量依存的な阻害効果が引き起こされた(1:256希釈で27.9%阻害)(表17a)。TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP産生のTSH媒介性刺激に対するK1−70 Fabの効果は、表17bに示されている。培養上清の様々な希釈物は、1:5希釈で89.3%阻害から1:40希釈で39.7%阻害まで、環状AMP刺激の用量依存的阻害を示した(表17b)。非誘導大腸菌培養に由来する対照培養上清は、TSH結合の検出可能な阻害、又はTSH媒介性環状AMP刺激の阻害をもたらさなかった(表17a&b)。
【0088】
要約及び結論
上述の実験は、非常に異なる生物活性を有する、TSHRに対する2つのモノクローナル自己抗体(K1−18 刺激性、K1−70 阻止性)を、患者のリンパ球の単一調製物から単離することができることを示す。結果的に、患者の免疫系は、両タイプのTSHR自己抗体、つまり刺激型及び阻止型を同時に産生していた。モノクローナル自己抗体の形態で単離されれば(上述のように)、2つのタイプのTSHR自己抗体の特性を、互いからの干渉を受けずに調査することができる。TSHR刺激活性を有する新しいヒトMAb(K1−18)の特徴を記述し、他の幾つかの公知のTSHR MAbの特徴と比較した。具体的には、刺激性ヒトMAb(M22)、阻止性ヒトMAb(5C9)、阻止性ヒトMab(K1−70)、阻止性マウスMAb(9D33)、及びマウス阻止性MAb(TSMAb 1〜7)の特徴である。また、TSHアンタゴニスト活性を有する新しいヒトMAb(K1−70)の特徴を記述し、公知のMAbの特徴と比較した。具体的には、阻止性ヒトMAb(5C9)、阻止性マウスMAb(9D33)、刺激性ヒトMAb(M22)、刺激性ヒトMAb(K1−18)、及びマウス刺激性MAb(TSMAb 1〜7)の特徴である。新しいヒト刺激性TSHR MAb K1−18が、TSHRに対する未標識TSHの結合の阻害、TSHRに対する互いの結合の阻害、TSHRに対する阻止性ヒトMAb(5C9及びK1−70)の結合の阻害、マウス阻止性及び刺激性MAb(9D33及びTSMAb 1〜7)の結合の阻害の点で、M22と類似した特性を有することが示された。また、患者血清TRAbは、TSHRに対するK1−18の結合を阻害した。更に、M22及びK1−18は、両方とも高親和性でTSHRに結合し、アルカリホスファターゼに結合されたアミノ酸22〜260で構成されるTSHR断片に結合することができる。M22及びK1−18等の抗体は、TSHR環状AMP活性を刺激する能力を有するが、2つの抗体の効力は約1.5倍異なる。本研究は、異なる患者のTSHR刺激性自己抗体の特性が類似しており、それらが、これまで研究されているグレーブス病の患者全てのTSHR刺激性自己抗体の特性を代表することを示す。K1−18の特徴の要約は、表13aに示されている。本発明者らの実験は、新しい阻止型ヒトMAb K1−70(刺激性MAb K1−18と同じリンパ球試料から取得された)が、TSHRに対する未標識TSHの結合を阻害する能力、TSHRに対するヒトMAb(M22、K1−18、及び5C9)の結合を阻害する能力、TSHRに対するマウス阻止性及び刺激性MAb(9D33及びTSMAb 1〜7)の結合を阻害する能力を有することも示した。更に、TSHRに対するK1−70の結合は、患者血清TRAbにより阻害された。K1−70は、強力なTSHアンタゴニスト活性、及び試験した全ての患者血清TRAbによるTSHRの刺激を阻止する能力を示した。K1−70は、5C9よりも効果的な、TSHRに対するTSH結合の阻害物質であることが示された。K1−70は、高親和性でTSHRに結合し、アルカリホスファターゼに結合されたアミノ酸22〜260のTSHR断片に結合することができる。結果的に、K1−70は、TSHRに対する高い結合親和性、TSHRに対するTSH及びM22結合を阻害する能力、及び低濃度の抗体でリガンド誘導性TSHR刺激を阻止する能力を含む、阻止性TRAbを有する患者血清の特徴を有する。しかしながら、K1−70は、TSHR構成的活性に影響を及ぼさず、その一方で5C9は影響を及ぼす。K1−70特徴の要約は、表13bに示されている。TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP活性を刺激するK1−18の能力は、TSHRが、Glu157Ala、Lys183Ala、Tyr185Ala、Asp232Ala、又はArg255Aspの突然変異を起こしている場合に失われた。TSHRを発現するCHO細胞でのTSH媒介性環状AMP活性を阻止する1−70の能力は、TSHR突然変異Lys58Ala、Ile60Ala、Arg109Ala、Lys183Ala、Lys250Alaの場合に低減され、TSHR突然変異Tyr82Alaによりわずかに低減された。K1−18及びK1−70の両方並びにM22は、TSHR260−APに基づくELISAで、22〜260のTSHR断片と良好に反応した。更に、一群の患者血清TSHR自己抗体は、同じアッセイで、TSHRアミノ酸22〜260と良好
に反応した。いずれのタイプのTRAb活性(刺激性及び阻止性)を有する患者血清も、ELISAにおいてTSHR260と結合した。加えて、アミノ酸22〜260のTSHR断片で被膜されたELISAプレートウエルは、M22−ペルオキシダーゼ(RSR Ltd社製)と良好に結合し、このM22−ペルオキシダーゼ結合は、一群の患者血清TSHR自己抗体により阻害された。患者血清TSHR自己抗体によるM22−ペルオキシダーゼ結合のこの阻害は、全長TSHRに対するM22−ペルオキシダーゼ結合の阻害と類似していた。驚くべきことに、従って、アミノ酸22〜260のTSHR断片(又は恐らくはより小さな断片)は、TSHR自己抗体の日常的アッセイに十分であると考えられる。更に、M22は、TSHR(TSHR LRD C−CAP)のより長い断片にも良好に結合した。安定性研究では、TSHR260、TSHR260−AP、及びTSHR
LRD C−CAPに結合するM22の能力は、それらが室温で予めインキュベートされた後では、同じ条件下で予めインキュベートされた全長TSHR調製物よりも、大きかった。これは、TSHR260、TSHR260−AP、及びTSHR LRD C−CAPが、全長TSHRと比較して、室温でより安定していることを示す。TSHR突然変異Arg255Aspは、K1−70 IgGの結合に効果を示さなかったが、K1−18 IgG(より低濃度の、つまり0.1μg/mL以下)は、突然変異受容体にそれほど効果的に結合しなかった。様々な患者血清TRAbを用いた実験により、TSHR刺激活性を有する血清を、R255D突然変異を含有するTSHRに対する結合の差異に基づいて、TSHR阻止活性を有する血清と区別することができることが示唆される。刺激活性を有する患者血清の結合は、この突然変異により影響を受けるが、阻止活性を有する患者血清の結合は、それほど又は全く影響を受けない。本実験は、K1−18及びK1−70のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を提供する。K1−18、K1−70の重鎖V遺伝子は、他の刺激性ヒトMAb M22重鎖V遺伝子と同じファミリーに属する同じ生殖細胞系に由来するが、それらは全て、異なるファミリーに由来するD及びJ遺伝子と組み合わせられており、更に、K1−18ではカッパ軽鎖が使用されているが、M22及びK1−70ではラムダ軽鎖が使用されている。5C9(別の阻止型ヒトMAb)生殖細胞系遺伝子は、5C9及びK1−70ではJ4重鎖遺伝子が使用されていることを除いて、M22、K1−18、及びK1−70とは異なる。刺激性MAb(M22及びK1−18)及び阻止性MAb(5C9及びK1−70)のCDRのアミノ酸配列は、特に重鎖及び軽鎖CDR3内で本質的に異なる。これら観察は、4つのヒト自己抗体の各々が別々の生殖細胞系に由来することを示している。また、異なるCDR配列が、TSHRに対して同様の生物活性を示す場合がある。X線回折データは、抗原結合部位のトポグラフィーを含むK1−70 Fab構造の分子的詳細を提供する。K1−70 HC(配列番号46)及びK1−70 LC(配列番号64を有する配列番号63)の大腸菌でのクローニング及び発現により産生された組換えK1−70 Fabは、TSHRに対する125I標識TS
H結合を阻害する能力、及びTSHR環状AMP活性のTSH媒介性刺激を阻害する能力を示した。全体として、本結果は、K1−18及びK1−70等の本発明による抗体が、以前に記述されているTSHR MAb(M22及び5C9)、及び自己免疫性甲状腺疾患を有する患者に由来する様々な血清に見出されるTSHR自己抗体と同様のTSHR結合活性及びTSHR機能に対する同様の生物学的効果を有することを示している。
【0089】
【表1a】
【0090】
【表1b】
【0091】
【表2a】
【0092】
【表2b】
【0093】
【表2c】
【0094】
【表3a】
【0095】
【表3b】
【0096】
【表3c】
【0097】
【表3d】
【0098】
【表4a】
【0099】
【表4b】
【0100】
【表4c】
【0101】
【表5a】
【0102】
【表5b】
【0103】
【表5c】
【0104】
【表5d】
【0105】
【表6a】
【0106】
【表6b】
【0107】
【表6c】
【0108】
【表6d】
【0109】
【表6e】
【0110】
【表6f】
【0111】
【表6g】
【0112】
【表6h】
【0113】
【表6i】
【0114】
【表6j】
【0115】
【表6k】
【0116】
【表6l】
【0117】
【表6m】
【0118】
【表6n】
【0119】
【表7a】
【0120】
【表7b】
【0121】
【表7c】
【0122】
【表7d】
【0123】
【表7e】
【0124】
【表7f】
【0125】
【表7g】
【0126】
【表7h】
【0127】
【表7i】
【0128】
【表7j】
【0129】
【表7k】
【0130】
【表7l】
【0131】
【表7m】
【0132】
【表7n】
【0133】
【表7o】
【0134】
【表7p】
【0135】
【表8a】
【0136】
【表8b】
【0137】
【表8c】
【0138】
【表8d】
【0139】
【表8e】
【0140】
【表8f】
【0141】
【表8g】
【0142】
【表8h】
【0143】
【表8i】
【0144】
【表8j】
【0145】
【表8k】
【0146】
【表9a】
【0147】
【表9b】
【0148】
【表9c】
【0149】
【表9d】
【0150】
【表9e】
【0151】
【表9f】
【0152】
【表9g】
【0153】
【表9h】
【0154】
【表9i】
【0155】
【表9j】
【0156】
【表9k】
【0157】
【表10】
【0158】
【表11a】
【0159】
【表11b】
【0160】
【表11c】
【0161】
【表11d】
【0162】
【表11e】
【0163】
【表12a】
【0164】
【表12b】
【0165】
【表12c】
【0166】
【表12d】
【0167】
【表12e】
【0168】
【表12f】
【0169】
【表12g】
【0170】
【表12h】
【0171】
【表12i】
【0172】
【表12j】
【0173】
【表12k】
【0174】
【表12l】
【0175】
【表13a】
【0176】
【表13b】
【0177】
【表14a】
【0178】
【表14b】
【0179】
【表14c】
【0180】
【表14d】
【0181】
【表14e】
【0182】
【表14f】
【0183】
【表14g】
【0184】
【表14h】
【0185】
【表14i】
【0186】
【表14j】
【0187】
【表14k】
【0188】
【表14l】
【0189】
【表14m】
【0190】
【表14n】
【0191】
【表14o】
【0192】
【表14p】
【0193】
【表14q】
【0194】
【表14r】
【0195】
【表14s】
【0196】
【表14t】
【0197】
【表14u】
【0198】
【表14v】
【0199】
【表15a】
【0200】
【表15b】
【0201】
【表15c】
【0202】
【表15d】
【0203】
【表15e】
【0204】
【表15f】
【0205】
【表15g】
【0206】
【表15h】
【0207】
【表15i】
【0208】
【表15j】
【0209】
【表15k】
【0210】
【表15l】
【0211】
【表15m】
【0212】
【表15n】
【0213】
【表15o】
【0214】
【表15p】
【0215】
【表15q】
【0216】
【表15r】
【0217】
【表15s】
【0218】
【表15t】
【0219】
【表15u】
【0220】
【表15v】
【0221】
【表16】
【0222】
【表17a】
【0223】
【表17b】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体(TSHR)と反応するヒトモノクローナル自己抗体(MAb)に関する。ヒトMAbの1つ(K1−18)は、TSHRに結合し、TSHR環状AMP活性を刺激する能力を有する。他方のヒトMAb(K1−70)は、TSHRに結合し、TSH及びTSHR刺激抗体により媒介される環状AMPの刺激を阻止する能力を有する。両ヒトMAbは、甲状腺機能低下症の臨床症状を呈する患者の末梢リンパ球から単離された。
【背景技術】
【0002】
甲状腺機能は、下垂体により分泌されるTSHにより調節される(Szkudlinski MW, et
al 2002. Physiological Reviews 82:473-502)。TSHは、甲状腺細胞の表面にあるTSHRに結合し、これは、TSHRシグナル伝達カスケード開始の最初のステップである。TSHがTSHRに結合することにより、甲状腺ホルモン:チロキシン(T4)及びトリヨードチロニン(T3)の形成及び放出の刺激がもたらされる。循環中のT4及びT3のレベル、及び視床下部により分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)のレベルに関与するフィードバック機序は、ひいては甲状腺刺激を制御するTSHの放出、及び血清中の甲状腺ホルモンのレベルを制御する(Szkudlinski MW, et al 2002 上記)。TSHRは、Gタンパク質共役受容体であり、3つのドメイン:ロイシンリッチリピートドメイン(LRD)、切断ドメイン(CD)、及び膜貫通ドメイン(TMD)で構成される(Nunez Miguel R,et al 2004.Thyroid 14:991-1011)。
【0003】
自己免疫甲状腺疾患(AITD)を有する患者の中には、TSHRと反応する自己抗体を発生させる者がいることが、当技術分野で十分に記述されている(Rees Smith B,et al
1988. Endocrine Reviews 9:106-121)。2つの主要なタイプのTSHR自己抗体(TRAb):刺激型及び阻止型が存在する。甲状腺刺激型自己抗体は、TSHRに結合し、TSHの作用を模倣し、それにより甲状腺を刺激して高レベルのT4及びT3を産生し、これら自己抗体も、刺激活性又はTSHアゴニスト活性を有するTRAbとして記述されている(Rees Smith B, et al 2007. Thyroid 17:923-938)。甲状腺機能のフィードバック制御機序は、甲状腺刺激性自己抗体が存在すると、もはや有効ではなく、患者は、血清及びその代謝結果における甲状腺ホルモンの過剰により特徴付けられる活動亢進性甲状腺の臨床症状を呈する。この状態は、グレーブス病として知られている。刺激活性を有するTRAbは、眼窩後方組織のTSHRとも相互作用し、グレーブス病の眼の兆候の発病に寄与する場合がある。強力な甲状腺刺激物質(hMAb TSHR1;M22とも呼ばれる)として作用するヒトモノクローナル自己抗体が、国際公開第2004/050708号A2に詳細に記述されている。TSHR LRDと結合したM22 Fab複合体の構造は、国際公開第2008/025991号A1に記述されているように、2.55Åの解像度でX線結晶解析法により解析されている。TSHR−M22複合体の構造解析は、互いの相互作用に関与する受容体残基及び刺激性自己抗体残基に関する詳細な情報を提供する。
【0004】
M22は、TSHR抗体を測定するためのELISAに使用されている(Zophel, Ketal, Clinica Chimica Acta 2009及びZophel, Ketal, Clinica Chimica Acta 2008)。
【0005】
AITDの患者では、阻止型TRAbが生じる頻度は、刺激性自己抗体よりも少ない。阻止型自己抗体は、TSHRに結合し、TSHが受容体に結合するのを防止するが、TSHR活性を刺激する能力を有していない。結果的に、甲状腺ホルモン(T4及びT3)の形成及び分泌が大きく低減され、このタイプのTRAbを有する患者は、低活性甲状腺(
甲状腺機能低下症)の臨床症状を呈する場合がある。阻止型自己抗体は、阻止活性又はTSHアンタゴニスト活性を有するTRAbとして知られている(Rees Smith B, et al 1988 上記、及びRees Smith B, 2007 et al 上記)。阻止活性を有するTRAbは、妊婦の血清中に存在する場合、胎盤を通過し、胎児甲状腺のTSHRを阻止する場合があり、新生児甲状腺機能低下に結びつき、発生にとって深刻な結果がもたらされる。更に、阻止活性を有するTRAbは、罹患母体の母乳中に見出される場合があり、幼児の臨床的甲状腺機能低下を引き起こす場合がある(Evans C, et al 2004 European Journal of Endocrinology 150:265-268)。TSHアンタゴニスト活性を有するTSHRに対するヒト自己
抗体(5C9)が、国際公開第2008/099185号A1に詳細に記述されている。AITD及び循環TRAbを有する患者の臨床症状は、TSHR活性に対する自己抗体の効果、つまりTRAbが刺激又は阻止を引き起こすか否かと関連している。しかしながら、ある患者では、刺激性及び阻止性TRAbの混合物が、1つのタイプのTRAbsがより高い濃度及び/又は活性であることと関連する全体的な臨床症状と同時に存在する場合があることが提唱されている(Rees Smith B et al 1988 上記;Furmaniak J et al 1993 Springer Seminars in lmmunopathology 14:309-321、及びSchott M et al 2005 Trends in Endocrinology and Metabolism 16:243-248)。更に、刺激性又は阻止性TRAbの濃度及び/又は活性は、同じ患者でも疾患の経過中で異なる場合があり、実際、甲状腺機能低下から甲状腺機能亢進までの症状の変動が、同じ患者で経時的に報告されている(Rees Smith B et al 1988 上記;Furmaniak J and Rees Smith B 1993 上記、及びSchott
M et al 2005 上記)。しかしながら、現在利用可能なバイオアッセイを使用して、異
なる生物活性を有するTRAbを分離する試み又は血清試料中のこれらTRAbを区別する試みは、困難である。より最近では、国際公開第2006/016121号A1に記述されている発明は、R255が突然変異されたTSHRを使用するバイオアッセイを使用して、刺激型と阻止型のTRAbを区別する手段を提供している。
【0006】
ヒト組換えTSH(Thyrogen(登録商標))は、cGMP制御下で組換えタンパク質として産生されるヒトTSHの製剤であり、残存又は再発性甲状腺癌の診断を支援するものとして米国FDAにより承認されている(Duntas L H, Cooper D S 2008 Thyroid 18:509-516)。治療後の甲状腺癌患者のモニタリングは、組換えヒトTSHで甲状腺残存物又は転移を刺激して、その後甲状腺を走査すること、及び/又は血清チログロブリンレベルを測定することを含む(Duntas LH and Cooper DS 2008 上記)。ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンは、軽度の甲状腺刺激効果を有する、妊娠中に産生されるホルモンである(Grossmann M et al 1997 Endocrine Reviews 18:476-501)。刺激型又は阻止型TR
Abの特徴付け、及びそれらがどのようにしてTSHRと相互作用するのかは、様々な形態のAITDを診断及び管理するための改良法を開発するために非常に重要である。加えて、これら研究は、TSHRに対する自己免疫反応と関連する疾患を管理するための新しい戦略を開発するために重要である。組換えヒトTSH以外の強力な甲状腺刺激物質が使用可能であることは、甲状腺癌患者をモニター及び管理するための新しい選択肢を提供する。
【0007】
過去の関連特許出願
国際公開第2004/050708号A2に記述されている発明は、強力な刺激活性を有しTSHRと相互作用するヒトモノクローナル自己抗体(MAb)の詳細な特性を提供する。この自己抗体(M22)とTSHR LRDとの相互作用は、国際公開第2008/025991号A1に記述されているように、2分子間の複合体のX線回折解析(2.55Å解像度)から、分子レベルで解析されている。国際公開第2006/016121号A1は、患者血清刺激性TSHR自己抗体、患者血清阻止性TSHR自己抗体、及びスクリーニングされている患者に由来する体液試料中のTSHの鑑別スクリーニング及び同定に使用することができる、少なくとも1つの点突然変異を含む突然変異TSHR調製物を開示する。また、TSHR阻止活性を有するマウスMAb(9D33)の産生及び特徴
付けが、国際公開第2004/050708号A2に記述されている。9D33は、TSHRと高親和性(2×1010L/mol)で結合し、TSH、hMAb TSHR1(M22)及び刺激活性又は阻止活性を有する患者血清TRAbの効果的なアンタゴニストである。国際公開第2008/099185号A1は、TSH、及び患者血清中の刺激性TRAbの効果的なアンタゴニストである、TSHRに対するヒトMAb(5C9)の単離及び特徴付けを開示している。5C9は、意外にも、TSHR構成的活性(TSHRの基礎活性とも呼ばれる)を阻害する、即ちTSH又はM22が存在しない試験系で環状AMPの産生を阻害することが見出されている。更に、5C9は、TSHR活性化突然変異に伴うTSHR環状AMP活性を阻害することが見出されている。国際公開第2008/091981号A2には、TSHR構成的活性を抑制する能力を有するマウスMAb、及びこのMAbを使用して甲状腺機能亢進症及び甲状腺癌を含む甲状腺疾患を治療するための方法が記述されている。国際公開第2008/091981号A2に記載されているMAbの特性は、Chen CR et al 2007 Endocrinology 148:2375-2382にも開示されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明
抗体K1−18及びK1−70を、甲状腺機能低下症及び高レベルのTSHR自己抗体を有する54歳の女性患者の末梢血リンパ球から単離した。この患者は、8年のAITD病歴を有し、最初に甲状腺機能亢進症を呈し、3年間継続したメチマゾールによる治療に応答した。しかしながら、この患者は、甲状腺機能正常状態に達した(つまり、正常な機能を示した)およそ10か月後に、甲状腺機能低下症を発症し、チロキシンで治療された。この患者は、血液採取時にはおよそ4.5年間、甲状腺機能が低下していた。リンパ球を単離した際、血清TRAbレベルは、TSH結合阻害アッセイで測定したところ160単位/Lであった。この血清は、TSHRのTSH刺激を阻止する能力も示した(環状AMPに基づくアッセイ)。甲状腺ペルオキシダーゼに対する血清自己抗体は、>500単位/mLで陽性だった(単位は、国立生物学的製剤研究所(NIBSC、National Institute for Standards and Control)、ポターズバー、英国の基準調製物66/387である)。この患者のリンパ球を、エプスタインバーウイルス(EBV)での感染により不死化し、感染細胞の培養上清を、TSHR被覆チューブに対する125I−TSHの結合を阻
害する能力についてスクリーニングした。陽性細胞培養に由来する細胞をマウス/ヒト細胞系と融合し、上記のようにスクリーニングした。TSHR自己抗体を分泌する2つの安定クローンを得た。IgGをクローン培養の上清から精製し、2つのMAb(K1−18及びK1−70)IgGが、TSHRに結合しTSHR活性に影響を及ぼす能力を評価した。特に、TSHRに対するTSH結合を阻害するK1−18又はK1−70の能力を研究した。K1−18がTSHRを刺激する能力も研究し、種々の他の甲状腺刺激物質の活性と比較した。TSHRを刺激するTSHの能力を阻害するK1−70の能力を研究し、他のTSHアンタゴニストの活性と比較した。更に、刺激性又は阻止性の患者血清TRAbが、K1−18及びK1−70のTSHR結合及び生物活性を阻害する能力を評価した。加えて、TSHR抗体、TSH、及び関連化合物用のアッセイにおけるK1−18及びK1−70の使用を調査した。K1−18及びK1−70の重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の可変領域(V領域)遺伝子を配列決定し、相補性決定領域(CDR)を帰属させた。更に、K1−70 Fabの精製調製物を結晶化し、X線回折法を使用して解析した。これら解析は、K1−70 Fabの全体的構造、及びK1−70の抗原結合部位のトポグラフィーに関する分子レベルの詳細を提供した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様によると、TSHRと結合し、前記TSHRのリガンド誘導性刺激を低減するが、前記TSHR構成的活性に影響を及ぼさない単離されたヒト抗体分子が提供される。
【0010】
好ましくは、TSHRに結合し、TSHRのリガンド誘導性刺激を低減するが、前記TSHR構成的活性に影響を及ぼさず、TSHRに対するTSH及びM22の結合を阻害するという患者血清TSH受容体自己抗体の特徴を有する単離されたヒト抗体分子又はその断片が提供される。より好ましくは、単離されたヒト抗体分子又はその断片は、TSHRに対して少なくとも108L/molの結合親和性を有すること、及び10μg/mL未
満の抗体濃度でリガンド誘導性TSHR刺激の検出可能な阻止を引き起こすことができることから選択される患者血清TSH受容体自己抗体の少なくとも1つの更なる特徴を有する。更により好ましくは、患者血清TSH受容体自己抗体の更なる特徴は、TSHRに対して少なくとも109L/molの結合親和性を有すること、及び1μg/mL未満、好
ましくは0.1μg/mL未満の抗体濃度でリガンド誘導性TSHR刺激の検出可能な阻止を引き起こすことができることから選択される。単離されたヒト抗体は、TSHのアンタゴニスト、及び/又は甲状腺刺激性自己抗体、及び/又は甲状腺刺激性動物抗体、及び/又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンであってもよい。
【0011】
単離された抗体分子は、TSH、M22、又はK1−18の少なくとも1つによるTSH受容体結合の阻害物質であってもよい。
【0012】
単離された抗体分子は、図5b及び5d(それぞれ、配列番号41及び51)のアミノ酸配列から選択される抗体VHドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、好ましくは、図5b及び5dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号41及び51)で構成される抗体VHドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、それぞれ、図5b及び5dのCDRI(配列番号42及び52)、II(配列番号43及び53)、及びIII(配列番号44及び54)から選択されるCDRを含んでいてもよい。本発明による抗体分子は、これらCDRに対して実質的な相同性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含むVH領域を含んでいてもよい。好ましくは、本発明による抗体は、図5dに示されているCDR(配列番号52、53、及び54)に対して70〜99.9%のアミノ酸相同性を示す。好ましくは、単離された抗体分子は、図5dのCDRI、II、及びIII(配列番号52、53、及び54)を含む。好ましい実施形態では、単離された抗体分子の対応する部分は、これらCDRの1つと、少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。単離された抗体分子は、好ましくは図6dのアミノ酸配列(配列番号69)から選択される抗体VLドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、好ましくは図6dのアミノ酸配列(配列番号69)で構成される抗体VLドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、図6dのCDRI(配列番号70)、II(配列番号71)、又はIII(配列番号72)から選択されるCDRを含んでいてもよい。それに加えて又はその代わりに、本発明による単離された抗体分子は、これらCDRに対して実質的な相同性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含んでいてもよい。好ましくは、本発明による単離された抗体のCDRは、図6dに示されているCDR(配列番号70、71、及び72)に対して70〜99.9%のアミノ酸相同性を示す。好ましい実施形態では、単離された抗体分子は、少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。
【0013】
好ましくは、単離された抗体分子は、図6dのCDRI、II、及びIII(配列番号70、71、及び72)を含む。
【0014】
単離された抗体分子は、図9b及び9cに示されているような、抗原結合部位における荷電残基及び芳香族残基の分布を有する、図9aに示されているような分子構造を有していてもよい。本発明の別の態様によると、TSHRに結合してTSHRを刺激する単離された株抗体分子が提供され、該単離された株抗体分子は、図4b及び4dのアミノ酸配列
(それぞれ、配列番号23及び33)から選択される抗体VLドメインを含み、並びに/又はそれぞれ図4b及び4dのCDRI(配列番号24及び34)、Il(配列番号25及び35)、及びIII(配列番号26及び36)から選択される1つ又は複数のCDRを含み、並びに/又は図3b及び3dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5及び15)から選択される抗体VHドメインを含み、並びに/又はそれぞれ図3b及び3dのCDRI(配列番号6及び16)、II(配列番号7及び17)、及びIII(配列番号8及び18)から選択される1つ又は複数のCDRを含む。好ましくは、抗体分子は以下のものを含む:(i)それぞれ図4b及び4dのCDRI(配列番号24及び34)、II(配列番号25及び35)、及びIII(配列番号26及び36)から選択される1つ又は複数のCDRを含む抗体VLドメイン、及び/又は(ii)それぞれ図3b及び3dのCDRI(配列番号6及び16)、Il(配列番号7及び17)、及びIII(配列番号8及び18)から選択される1つ又は複数のCDRを含む抗体VHドメイン。
【0015】
TSHRに対する単離された抗体分子の結合は、甲状腺刺激又は阻止活性を有する患者血清TSHR抗体により阻害することができる。
【0016】
TSHRに対する単離された抗体分子の結合は、M22、K1−70、5C9、9D33、及び甲状腺刺激マウスモノクローナル抗体のうちの少なくとも1つにより阻害することができる。
【0017】
単離された抗体分子は、図4b及び4dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号23及び33)から選択される抗体VLドメイン、及び図3b及び3dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5及び15)から選択される抗体VHドメインを含む。好ましくは、単離された抗体分子は、それぞれ図3b及び3dのCDRI(配列番号6及び16)、II(配列番号7及び17)、及びIII(配列番号8及び18)を含む。本発明による抗体分子は、これらCDRに対して実質的な相同性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含むVH領域を含んでいてもよい。好ましくは、本発明による抗体分子は、それぞれ図3b及び3dに示されているCDR(配列番号6〜8、及び16〜18)に対して、70〜99.9%のアミノ酸相同性を示す。好ましい実施形態では、単離された抗体分子は、少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。
【0018】
単離された抗体分子は、図4b又は4d(それぞれ、配列番号23及び33)のアミノ酸配列で構成される抗体VLドメインを含んでいてもよい。単離された抗体分子は、図3b又は3d(それぞれ、配列番号5及び15)のアミノ酸配列で構成される抗体VHドメインを含んでいてもよい。好ましくは、単離された抗体分子は、それぞれ図4b及び4dのCDRI(配列番号24及び34)、II(配列番号25及び35)、及びIII(配列番号26及び36)を含む。
【0019】
それに加えて又はその代わりに、本発明による抗体は、これらCDRに対して実質的な相同性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含んでいてもよい。好ましくは、抗体は、それぞれ図4b及び4dに示されているCDR(配列番号24〜26、及び34〜36)に対して、70〜99.9%のアミノ酸相同性を示す。好ましい実施形態では、単離された抗体分子は、少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。
【0020】
ほとんどの応用では、本発明による抗体分子のVHドメインは、VLドメインと共に配置されてTSHR結合部位を提供するだろう。幾つかの応用では、VHドメインのみが、
TSHRと結合するために提供されてもよい。
【0021】
抗体ドメインを移植する方法は、当技術分野で周知であり、そのため本発明による抗体分子は、異なる供給源に由来するVH及びVLドメイン又はそれらの部分を使用して構築することができる。
【0022】
本発明の抗体分子に関して本明細書で使用されている「抗体分子」という用語及び「抗体分子(複数)」等の同義の用語は、状況に従って、モノクローナル、組換え、合成、及びポリクローナル抗体、単鎖抗体、多重特異的抗体、並びに結合部分等の免疫グロブリンに基づく結合部分も包含し、当業者であれば、ドメイン抗体、ダイアボディ、並びにlgG(デルタ)CH2、F(ab’)2、Fab、scFv、VL、VH、dsFv、ミニ
ボディ(Minibody)、トリアボディ(Triabody)、テトラボディ(Tetrabody)、(Sc
Fv)2、scFv−Fc、F(ab’)3部分(Holliger P, et al 1993 Proc Natl Acad Sci USA 90:6444-6448.)、(Carter PJ 2006 Nat Rev Immunol 6:343-357)等の免疫
グロブリンに基づく結合部分を、それらの代わりに用いることができる。この用語は、そのような物質の断片も包含し、好ましくは該断片はTSHRに結合し、より好ましくはK1−18又はK1−70の効果を有する。
【0023】
「甲状腺刺激ホルモン受容体」及び「TSHR」という用語は、図7aに示されているアミノ酸配列(配列番号74)を有する全長ヒトTSHR、又はそのようなTSHRと高度な相同性を有するその変異体若しくは断片を指す。好ましくは、そのような変異体及び断片は、図7aに示されているアミノ酸配列(配列番号74)と70〜99.9%の相同性を有する。好ましい実施形態では、そのような変異体及び断片は、その配列と少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、高度に好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一、及び殊に好ましくは99.9%同一である。
【0024】
本発明の単離された抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体、組換え抗体、又は合成抗体の形態であってもよい。K1−18又はK1−70のVH又はVLドメインに由来するCDRI、II、又はIIIは、好適なフレームワークに組み込むことができる。K1−18及びK1−70のVH及びVLドメイン並びにそれらのCDRの変異体は、当業者に周知の方法を使用して修飾することにより産生することができる。そのような変異体は、付加、欠失、置換、又は挿入突然変異を含む1つ又は複数のアミノ酸配列変異を含んでいてもよい。本発明による抗体分子では、K1−18又はK1−70のフレームワークを修飾することもできる。本発明による単離された抗体は、ヒト又は非ヒトのフレームワークを有していてもよい。
【0025】
本発明の別の態様によると、図4b(配列番号23)若しくは4d(配列番号33)若しくは6d(配列番号69)のアミノ酸配列を含む抗体VLドメイン、図3b(配列番号5)、3d(配列番号15)、若しくは5b(配列番号41)、及び5d(配列番号51)のアミノ酸配列を含む抗体VHドメイン、又は図3b(配列番号6〜8)、3d(配列番号16〜18)、4b(配列番号24〜26)、4d(配列番号34〜36)、5b(配列番号42〜44)、5d(配列番号52〜54)、若しくは6d(配列番号70〜72)のCDRI、II、若しくはIII、又はこれらの組み合わせを含む、本発明による単離された抗体分子又はその断片をコードする単離されたヌクレオチドが提供される。
【0026】
単離されたヌクレオチドは、図3a(配列番号1)、3c(配列番号10)、4a(配列番号19)、4c(配列番号28)、5a(配列番号37)、5c(配列番号46)、又は6c(配列番号64)のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0027】
複数のそのようなヌクレオチドは、例えば、バクテリオファージディスプレイライブラリーで提供することができる。そのようなバクテリオファージディスプレイライブラリーを使用して、単離されたドメイン等の様々な抗体分子又はその断片を発現することができる。
【0028】
本発明は、本発明による単離されたヌクレオチドを含むベクター、又は本発明によるそのようなベクター若しくはヌクレオチドを含む宿主細胞も提供する。ベクターは、プラスミド、ウイルス、又はその断片であってもよい。多数の異なるタイプのベクターが、当業者に公知である。単離された細胞は、本発明による抗体を発現することができる。好ましくは、単離された細胞は、本発明による抗体を分泌することができる。好ましくは、本発明による単離された細胞は、安定したヘテロハイブリドーマ細胞系に由来する。
【0029】
本発明の別の態様は、本発明による単離されたドメイン等の単離された抗体分子又はその断片を産生する方法であって、そのような抗体分子又はその断片をコードするヌクレオチドを発現することを含む方法を提供する。
【0030】
本発明の更なる態様によると、本発明による抗体を産生する方法であって、本発明による1つ又は複数の単離された宿主細胞を培養し、それにより抗体が細胞により発現される方法が提供される。好ましくは、抗体は細胞により分泌される。
【0031】
本発明の別の態様によると、本発明による単離された抗体分子及び担体を含む医薬組成物が提供される。
【0032】
本発明による医薬組成物は、ヒト投与に好適であってもよい。好ましくは、本発明による医薬組成物は、対象体の免疫系に対して著しい有害効果を示さない。
【0033】
本発明による医薬組成物には、種々の形態が企図される。甲状腺関連状態の治療に使用するための本発明による医薬組成物は、注射可能な形態であってもよい。眼部グレーブス病の治療に使用するための本発明による医薬組成物は、好ましくは点眼剤の形態である。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体、アジュバント、又は媒体を有する本発明による単離された抗体を含む。本発明の医薬組成物に使用することができる薬学的に許容される担体、アジュバント、及び媒体には、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン等の塩又は電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が含まれる。本発明の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入噴霧により、局所的に、点眼剤により、直腸的に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、又は埋め込みリザバーにより投与することができる。本発明者らは、経口投与又は注射による投与を望む。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病巣内、及び頭蓋内注射又は点滴技術を含む。医薬組成物は、例えば無菌注射用の水性又は油性懸濁剤として、無菌注射用製剤の形態であってもよい。この懸濁剤は、好適な分散剤又は湿潤剤(例えば、トウィーン80等)及び懸濁化剤を使用して、当技術分野で公知の技術により製剤化することができる。また、無菌注射用製剤は、例えば1、3−ブタンジオール中の溶液のような、無毒で非経口的に許容される希釈液又は溶媒中の無菌注射用の液剤又は懸濁剤であってもよい。使用することができる許容される媒体及び溶媒の中には、マンニトール、水、リンゲル液、及び等張性塩化ナトリウム溶液
がある。加えて、無菌固定油が、溶媒又は懸濁媒質として従来通りに使用される。この目的のためには、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無味固定油を使用することができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体等の脂肪酸は注射剤の調製に有用であり、オリーブ油又はヒマシ油等の薬学的に許容される天然油、特にそれらのポリオキシエチル化型も同様に有用である。また、これら油剤又は懸濁剤は、Ph.Helv若しくは類似アルコール等の長鎖アルコール希釈剤又は分散剤を含有していてもよい。本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、並びに水性懸濁剤及び液剤を含むが、これらに限定されない、任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。経口使用用の錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁剤を経口投与する場合、活性成分は、乳化剤及び懸濁化剤と混合されている。所望の場合、ある種の甘味料及び/又は香味料及び/又は着色剤が添加されていてもよい。本発明の医薬組成物は、直腸内投与のために坐剤の形態で提供することもできる。これら組成物は、本発明の化合物を、室温では固体であるが直腸温では液体であり、従って直腸中で融解して活性成分を放出することになる好適な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。そのような物質には、これらに限定されないが、ココアバター、蜜ろう、及びポリエチレングリコールが含まれる。本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が、局所適用で容易に接近可能な区域又は器官に関与している場合、特に有用である。皮膚への局所的塗布の場合、医薬組成物は、担体中に懸濁又は溶解された活性成分を含有する好適な軟膏剤と共に製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与用担体には、これらに限定されないが、鉱油、流動石油、白色石油(white petroleum)、プロピレン
グリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、及び水が含まれる。或いは、医薬組成物は、担体中に懸濁又は溶解された活性化合物を含有する好適なローション剤又はクリーム剤と共に製剤化することができる。好適な担体には、これらに限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が含まれる。本発明の医薬組成物は、肛門坐剤製剤又は好適な浣腸製剤により、下部腸管に局所的に適用することもできる。局所経皮的なパッチ剤も本発明に含まれる。本発明の医薬組成物は、経鼻エアロゾル又は吸入により投与することができる。そのような組成物は、医薬製剤化の技術分野で周知の技術により調製され、ベンジルアルコール又は他の好適な保存剤、生物学的利用能を増強する吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当技術分野で公知の他の可溶化剤又は分散剤を使用して、生理食塩水中の液剤として調製することができる。
【0034】
K1−70等の、本発明の第1の言及された態様による抗体は、TSHR活性化に関連する状態:異常なレベルのTSH又はhCGによるグレーブス病、グレーブス眼症(Graves' opthalmopathy)、又は甲状腺機能亢進症の管理及び制御に有用な応用を有する。
【0035】
K1−18等の、本発明の第2の言及された態様による抗体は、様々な臨床状態及び治療状況でTSHRを刺激するための応用を有する。これら状態には、甲状腺癌及びその転移、多結節性甲状腺腫、又は先天性甲状腺機能低下症の診断及び管理が含まれる。
【0036】
本発明の別の態様によると、本発明による単離された抗体分子又は医薬組成物の、治療における使用が提供される。本発明は、治療に使用するための、本発明による単離された抗体分子又は医薬組成物も提供する。
【0037】
本発明の別の態様によると、TSHR抗体、TSH、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンの活性を特徴付けする方法であって、本発明による単離された抗体分子の使用を含むステップを含む方法が提供される。
【0038】
本発明の別の態様によると、哺乳動物細胞のTSHRを刺激するためのin vitro法であって、細胞を、本発明による単離された抗体分子と接触させることを含む方法が提供される。
【0039】
本発明の別の態様によると、哺乳動物細胞のTSHRを刺激するためのin vivo法であって、細胞を、本発明による単離された抗体分子と接触させることを含む方法が提供される。好ましくは、甲状腺癌及びその転移、多結節性甲状腺腫、並びに/又は先天性甲状腺機能低下症を有する対象体の細胞を、本発明による単離された抗体と接触させる。
【0040】
本発明の別の態様によると、哺乳動物細胞のリガンド誘導性TSHR刺激を防止するためのin vivo法であって、TSHRを、本発明による単離された抗体分子と接触させることを含む方法が提供される。リガンドは、甲状腺刺激性自己抗体、TSH、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンであってもよい。哺乳動物細胞は、甲状腺細胞又は甲状腺外細胞であってもよい。哺乳動物の甲状腺外細胞は、眼窩後方組織又は前脛骨組織にあってもよい。
【0041】
本発明のこの態様による方法では、単離された抗体分子は、上記で参照された5C9又は9D33等の別のTSHR結合抗体と組み合わせて使用することができる。
【0042】
甲状腺関連状態は、甲状腺機能亢進症、グレーブス病、グレーブス眼病、及び新生児甲状腺機能亢進症から選択されてもよい。或いは、甲状腺関連状態は、AITDを有する患者の阻止活性を有するTRAbの存在と関連する甲状腺機能低下症、母体TRAbの移動による(胎盤又は母乳を介する)新生児甲状腺機能低下症であってもよい。
【0043】
上記に記載されている本発明の種々の方法で治療される対象体は、好ましくはヒトである。
【0044】
本発明の別の態様によると、TSHRに対する自己抗体を検出するための診断法であって、そのような自己抗体を含有すると考えられる対象体から単離された試料及び本発明による抗体分子を、TSHRと接触させることを含む方法が提供される。
【0045】
本発明の別の態様によると、TSHRに対する本発明による抗体、好ましくはヒト抗体、又はヒト血清中のTSHRに対する抗体を検出するための診断法であって、TSHRに対する抗体のいずれか1つを、TSHRのアミノ酸22〜260(TSHR260)(図7b;配列番号75)を含むTSHR断片と接触させることを含む方法が提供される。
【0046】
本発明による方法で使用することができる好適な検出可能標識は、酵素標識、同位体標識、化学発光標識、蛍光、及び染料等からなる群から選択することができる。
【0047】
従って、同位体標識(125I、14C、3H、又は35S等)が使用される場合、モニタリングは、本発明による抗体分子の結合に依存する放射能を測定することを含んでいてもよい。放射能は、一般的に、ガンマ計数器又は液体シンチレーション計数器を使用して測定される。
【0048】
本発明の別の態様によると、TSHR260(配列番号75)に結合する低分子を識別するための方法であって、候補低分子を、例えばELISAでTSHR260と接触させること、及びTSHR260に結合する低分子を選択することを含む方法が提供される。更に、TSHR260に対するTSHR自己抗体の結合を防止する能力を有する低分子を識別するための方法であって、候補低分子の存在下で、TSHR260に対するTSHR
自己抗体(刺激性又は阻止性)の結合の阻害を決定すること、及びTSHR自己抗体結合を阻害する低分子を選択することを含む方法が提供される。このようにして識別された低分子を開発して、TSHR自己抗体(刺激性又は阻止性)により引き起こされる自己免疫性甲状腺疾患を制御するための新薬を提供することができる。
【0049】
本発明は、以下のことに関する新しい及び/又は改良された手段を提供する:
1 甲状腺癌及び甲状腺癌転移等の、TSHRを発現する甲状腺又は組織のTSHRを刺激すること。
2 甲状腺においてTSHRに対する甲状腺刺激性自己抗体結合を防止し、それによりグレーブス病の新しい治療を提供すること。
3 甲状腺外TSHRに対するTSHR自己抗体結合を防止し(例えば、眼窩後方組織又は前脛骨組織で)、それによりグレーブス眼症及び前脛骨粘液水腫を管理する可能性の向上を提供すること。
4 刺激活性を有するTRAbの結合に重要なTSHRアミノ酸を決定すること。
5 阻止活性を有するTRAbの結合に重要なTSHRアミノ酸を決定すること。
6 刺激活性及び阻止活性を有するTRAbの結合に重要なTSHRアミノ酸を比較すること。
7 阻止性抗体と刺激性抗体とを区別するTRAb用の新しいアッセイを開発すること。
8 熱安定性TSHR断片の使用に基づくTRAb用の新しいアッセイを開発すること。
9 リガンド誘導性TSHR活性化に重要なTSHRアミノ酸を決定すること。
10 リガンド誘導性TSHR不活化に重要なTSHRアミノ酸を決定すること。
11 TSHRに対する結合に重要な阻止性自己抗体アミノ酸を決定すること。
12 TSH又は甲状腺刺激抗体媒介性TSHR活性化に影響を及ぼす重要な阻止性自己抗体アミノ酸を決定すること。
13 グレーブス病の甲状腺機能亢進、新生児甲状腺機能亢進、及びグレーブス病の眼兆候を制御すること。或いは、甲状腺関連状態は、AITDを有する患者の阻止活性を有するTRAbの存在と関連する甲状腺機能低下症、又は母体の阻止型TRAbの移動による(胎盤又は母乳を介する)新生児甲状腺機能低下症であってもよい。
14 TSHRに結合する自己抗体により引き起こされる甲状腺疾患を制御する低分子薬物候補をスクリーニングする手段を開発すること。
15 同じ患者の免疫系及び異なる患者の免疫系により産生された、甲状腺刺激又は阻止活性を有するTSHR自己抗体間の分子的相違を理解すること。
16 刺激性及び阻止性TSHR自己抗体の発生及び産生に関与する免疫学的機序を理解すること。
17 TSHとTSHR自己抗体との間の分子的模倣の基礎である進化的原動力を含む機序を理解すること。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明による抗体分子及び方法を、添付の図面、図1〜9を例としてのみ参照して、これから記述する。
【図1a】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(a)全長TSHRに対する125I標識K1−70 IgG及びFabの結合の時間的経過。
【図1b】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(b)TSHR260に対する125I標識K1−70 IgGの結合の時間的経過。
【図1c】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(c)TSHR260に対する125I標識K1−70 Fabの時間的経過。
【図1d】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(d)種々のリガンドの存在下における、TSHR(全長)からの125I標識K1−70 IgGの解離。
【図1e】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(e)K1−18 Fabの存在下における、TSHR(全長)からの125I標識K1−70 IgGの解離。
【図1f】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(f)種々のリガンドの存在下における、TSHR(全長)からの125I標識K1−70 Fabの解離。
【図1g】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(g)種々のリガンドの存在下における、TSHR260からの125I標識K1−70 IgGの解離。
【図1h】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(h)K1−18 Fabの存在下における、TSHR260からの125I標識K1−70 IgGの解離。
【図1i】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(i)種々のリガンドの存在下における、TSHR260からの125I標識K1−70 Fabの解離。
【図1j】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(j)全長TSHR及びTSHR260に対する125I標識K1−18 IgGの結合の時間的経過。
【図1k】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(k)種々のリガンドの存在下における、全長TSHRからの125I標識K1−18 IgGの解離。
【図1l】TSHRに対する125l標識K1−70又は125I標識K1−18の結合及び解離の特徴を示す図である:(l)種々のリガンドの存在下における、TSHR260からの125I標識K1−18 IgGの解離。
【図2a】患者血清のTSHR自己抗体の測定結果を示す図である:(a)TRAb被覆チューブアッセイ(TSH結合の阻害に基づく)での測定値と、TSHR260−AP ELISAでの測定値との比較。
【図2b】患者血清のTSHR自己抗体の測定結果を示す図である:(b)全長TSHRに対するM22結合の阻害に基づくELISAによる測定と、TSHR260に対するM22 Fab結合の阻害によるELISAでの測定との比較。
【図2c】患者血清のTSHR自己抗体の測定結果を示す図である:(c)TRAb被覆チューブアッセイ(TSH結合の阻害に基づく)での測定と、TSHR260被覆プレートに対するM22 Fab結合の阻害によるELISAでの測定との比較。
【図2d】患者血清のTSHR自己抗体の測定結果を示す図である:(d)TRAb ELISA(M22結合の阻害に基づく)での測定と、TSHR260−AP ELISAでの測定との比較。。
【図3a−1】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−18 HCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号1)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々の相補性定常領域(CDR)は四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図3a−2】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−18 HCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号1)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々の相補性定常領域(CDR)は四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図3b】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(b)(図3a)に注釈無し及び注釈付の形式で示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するK1−18 HCのアミノ酸配列(配列番号5)。
【図3c】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−18 HCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号10)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図3d】K1−18重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(d)注釈無し及び注釈付の形式で図3cに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するリーダー配列を有するK1−18 HCの好ましいアミノ酸配列(配列番号15)。
【図4a−1】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−18 LCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号19)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図4a−2】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−18 LCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号19)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図4b】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(b)注釈無し及び注釈付の形式で図4aに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するK1−18 LCのアミノ酸配列(配列番号23)。
【図4c−1】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−18 LCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号28)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図4c−2】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−18 LCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号28)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図4d】K1−18軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(d)注釈無し及び注釈付の形式で図4cに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するリーダー配列を有するK1−18 LCの好ましいアミノ酸配列(配列番号33)。
【図5a−1】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形態で示されているK1−70 HCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号37)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図5a−2】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形態で示されているK1−70 HCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号37)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図5b】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(b)注釈無し及び注釈付の形式で図5aに示されるオリゴヌクレオチド配列に由来するK1−70 HCのアミノ酸配列(配列番号41)。
【図5c】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−70 HCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号46)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図5d】K1−70重鎖(HC)の可変領域配列を示す図である:(d)注釈無し及び注釈付の形式で図5cに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するリーダー配列を有するK1−70 HCのアミノ酸配列(配列番号51)。
【図6a−1】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−70 LCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号55)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図6a−2】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(a)注釈無し及び注釈付の形式で示されているK1−70 LCのオリゴヌクレオチド配列(配列番号55)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図6b】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(b)注釈無し及び注釈付の形式で図6aに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するK1−70 LCのアミノ酸配列(配列番号59)。
【図6c】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(c)注釈無し及び注釈付の形式で示されている実際のN末端配列(リーダー配列)を有するK1−70 LCの好ましいオリゴヌクレオチド配列(配列番号64)。注釈付の形式では、PCRプライマーに使用された配列には下線が引かれており、リーダー配列は小文字で示されており、個々のCDRは四角で囲まれており、定常領域は太字である。
【図6d】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(d)注釈無し及び注釈付の形式で図6cに示されているオリゴヌクレオチド配列に由来するリーダー配列を有するK1−70 LCの好ましいアミノ酸配列(配列番号69)。
【図6e】K1−70軽鎖(LC)の可変領域配列を示す図である:(e)エドマン分解反応により決定された実際のN−末端アミノ酸配列(アミノ酸2〜21)(配列番号73)。
【図7a】ヒトTSHRのアミノ酸配列を示す図である:(a)ヒトTSHRのコンセンサスアミノ酸配列を示している(アミノ酸1〜764(配列番号74)(受入番号P16473、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=protein&val=62298994)。
【図7b】ヒトTSHRのアミノ酸配列を示す図である:(b)ヒトTSHRアミノ酸1〜260のコンセンサスアミノ酸配列を示している。リーダー配列(アミノ酸1〜21)は小文字で示されており、精製用に付加されたヒスチジン配列は、C−末端に太字で示されている(配列番号75)。
【図7c】ヒトTSHRのアミノ酸配列を示す図である:(c)ヒトTSHR LRD C−CAPのアミノ酸配列を示している。リーダー配列(アミノ酸1〜21)は小文字で示されており、精製用に付加されたヒスチジン配列は、C−末端に太字で示されている(配列番号76)。
【図8−1】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−2】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−3】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−4】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−5】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−6】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−7】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−8】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−9】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−10】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−11】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−12】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−13】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−14】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−15】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−16】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−17】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−18】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−19】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−20】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−21】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−22】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−23】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−24】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−25】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−26】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−27】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−28】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−29】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−30】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−31】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−32】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−33】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−34】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−35】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−36】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−37】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−38】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−39】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−40】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−41】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−42】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−43】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−44】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−45】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−46】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−47】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−48】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−49】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−50】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−51】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−52】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−53】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−54】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−55】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−56】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−57】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−58】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−59】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−60】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−61】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−62】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−63】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−64】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−65】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−66】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−67】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−68】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−69】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−70】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−71】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−72】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−73】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−74】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−75】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−76】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−77】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−78】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−79】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−80】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−81】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−82】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−83】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−84】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−85】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−86】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−87】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−88】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−89】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−90】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−91】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−92】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−93】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−94】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−95】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−96】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−97】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−98】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−99】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−100】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−101】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−102】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−103】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−104】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−105】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−106】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図8−107】2.22Å分解能でのK1−70 Fabの座標を示す図である。
【図9a】(a)K1−70 Fab構造−Joy形式での構造表示。
【図9b】(b)K1−70 Fabの結合部位の静電ポテンシャル。
【図9c】(c)K1−70 Fabの結合部位の芳香族アミノ酸。
【発明を実施するための形態】
【0051】
方法
リンパ球単離及びヒトモノクローナルTSHR自己抗体のクローニング
モノクローナル自己抗体K1−18及びK1−70は、国際公開第2004/050708号A2に記述されている手順を使用して単離した。リンパ球は、8年のAITD病歴及び高レベルのTRAbを有する患者から採取された血液試料から単離した。患者の同意及び組織内倫理委員会の承認を得た。この患者は最初に甲状腺機能亢進症と診察され、メチマゾールによる治療後に甲状腺機能正常状態に達したが、血液採取のおよそ4.5年前に、甲状腺機能低下症を発病した。血液採取時に、患者は、チロキシン(1日50μg)による治療を受けていた。リンパ球を、エプスタインバーウイルス(EBV)(欧州培養細胞系統保存機関−ECACC(European Collection of Cell Cultures);ポートンダウン、SP4 OJG、英国)に感染させ、国際公開第2004/050708号A2に記述されているようにマウスマクロファージ支持細胞層で培養した。TSHR自己抗体を分泌する不死化リンパ球を、マウス/ヒトハイブリッド細胞系K6H6/B5(ECACC)と融合させ、限界希釈により4回クローン化して単一コロニーを得た。細胞培養上清中のTSHR自己抗体の存在は、クローニングの異なる段階において、TSHRに対する標識TSH結合の阻害により検出した(国際公開第2004/050708号A2)。TSHR自己抗体を産生する2つの単一クローンを増殖させ、自己抗体を精製するために上清を培養から回収した。一方のクローンをK1−18と称し、他方をK1−70と称した。
【0052】
K1−18及びK1−70の精製、特徴付け、及び標識化
TSHRヒトMAb IgGは、MabSelect(商標)(GE Healthcare社製、英国)を用いたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、Sanders J et al 2004.Thyroid 2004 14:560-570に記述されているように培養上清から精製し、純度は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で評価した。重鎖アイソタイプは、放射状拡散アッセイ(Binding Site;バーミンガム、B29 6AT、英国)を使用して決定し、軽鎖アイソタイプは、抗ヒトカッパ鎖及び抗ヒトラムダ鎖特異的マウスモノクローナル抗体(Sigma−Aldrich Company Ltd社製、プール、英国)を用いたウェスタンブロッティングで決定した。精製したK1−18 IgGを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;1mmol/Lの終濃度のシステイン、及び2mmol/Lの終濃度のEDTAを含有する137mmol/L NaCl、8.1mmol/L Na2HPO4、2.7mmol/L KCL、1.47mmol/L KH2PO4、pH7.4)中100:1のIgG/酵素比のマーキュリーパパイン(Sigma Aldrich社製、プール、英国)を用いて、37℃で4時間処理した。反応は、室温で30分間ヨードアセトアミド(50mmol/Lの終濃度)を添加することにより停止させた。その後、反応混合物をMabSelectカラムに通し、あらゆる完全IgG又はFc断片をFab調製物から除去した。Fab含有溶液を、3.1mmol/L NaN3を含有するPBSで透析し、必要に応じて、Centripr
ep濃縮器(Millipore社製、ウォトフォード、WD18 8YH、英国)を使用して濃縮した。K1−70 Fabは、200:1のIgG/酵素比を使用し、酵素による消化は37℃で1時間であったという点を除いて、同様の方法を使用して取得した。SDS−PAGEによる分析は、完全IgGがFab調製物中では検出できないことを示した。IgG調製物は、Sanders J et al 1999. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism.1999 84: 3797-3802に記述されているように125Iで標識したか、又はビオチンヒドラジド(Perbio Science社製、クラムリントン、英国)で標識した(Rees Smith et al 2004. Thyroid 14:830-835)。
【0053】
TSHRに対する、125I−TSH又は125I標識ヒトMAb結合の阻害
結合阻害アッセイは、国際公開第2004/050708号A2に記述されるように、TSHR被覆チューブを使用して実施した。このアッセイでは、100μLの試験試料(MAb調製物、患者血清又は未標識TSH)及び50μLの開始緩衝液(RSR Ltd社製)を、TSHR被覆チューブ中でゆっくりと振とうしながら室温で2時間インキュベ
ートした。吸引した後、チューブを洗浄し、100μLの125I標識タンパク質(5×1
04cpm)を添加し、振とうしながら室温で1時間インキュベートした。その後、チュ
ーブを吸引し、洗浄し、ガンマ計数器で計数した。標識タンパク質結合の阻害は、100×[1−(試験物質の存在下で結合したcpm/対照物質の存在下で結合したcpm)]として計算した。これら実験で使用したMAb調製物は、上述のK1−18、K1−70、M22、5C9、9D33だった。TSMAb 1〜7は、マウス甲状腺刺激性MAbである(国際公開第03/01863号、及びSanders J et al 2002、上記)。対照物質は、健常供血者血清の貯留、又は個々の健常供血者血清、又は種々の実験結果に示されるような他の物質であった。
【0054】
TSHRに対するヒトMAb IgG結合のスキャチャード分析
50μLのアッセイ緩衝液(50mmol/L NaCl、10mmol/L Tris pH7.8、及び0.1% トリトンX−100)中の未標識K1−18又はK1−70 IgG、及び50μLの開始緩衝液(RSR Ltd社製)、及び50μLの125
I標識K1−18又はK1−70 IgG(アッセイ緩衝液中で30,000cpm)を、それぞれTSHR被覆チューブ中で2時間室温で振とうさせながらインキュベートし(最大結合は、これら条件下で生じた)、吸引し、1mLのアッセイ緩衝液で2回洗浄し、ガンマ計数器で計数した。結合したIgGの濃度対結合/遊離をプロットし(Scatchard G 1949.Annals of the New York Academy of Sciences 51:660-672)、結合定数を導出した。
【0055】
ELISAにより測定された、TSHRに対するTSH結合の阻害
TSHR被覆ELISAウエルに対するTSH−ビオチン結合に基づくTRAb ELISAを、以前に記述されているように使用した(Bolton J, et al 1999 Clinical Chemistry 45:2285-2287)。このアッセイでは、75μLの試験試料を、プレートウエル中にある75μLの出発緩衝液に添加し、約500振とう/分で振とうしながら室温で2時間インキュベートした。洗浄した後、100μLのTSH−ビオチンを添加し、振とうせずに25分間インキュベーションを継続した。ウエルを再び洗浄し、既述の標準的手順を使用して反応を発生させ、各ウエルの吸光度を450nmで測定した。
【0056】
TSH−ビオチン結合の阻害は、100×[1−(450nmの試験試料吸光度/450nmの陰性対照試料吸光度)]として計算した。これら実験で使用したMAb調製物は、上述のK1−18、K1−70、M22、5C9、9D33だった。TSMAb 1〜7は、マウス甲状腺刺激性MAbである(国際公開第03/01863号、及びSanders J et al 2002、上記)。対照物質は、健常供血者血清の貯留、又は種々の実験結果に示されるような他の物質であった。
【0057】
ELISAでの、TSHRに対するM22結合の阻害
TSHR被覆ELISAウエルに対する標識M22(M22Fab−POD)の結合に基づくTRAb ELISAを使用した(Rees Smith B, et al 2004、上記)。このアッセイは、第1のインキュベーションが1時間であったことを除いて、TSH−ビオチンに基づくELISAと同様に実施した。結果は、数式:100×[1−(450nmの試験試料吸光度/450nmの陰性対照試料吸光度)]を使用して、M22結合の阻害として表した。これら実験で使用したMAb調製物は、上述のK1−18、K1−70、M22、5C9、9D33だった。TSMAb 1〜7は、マウス甲状腺刺激性MAbである(国際公開第03/01863号、及びSanders J,2002、上記)。対照物質は、健常供血者血清の貯留、又は種々の実験結果に示されるような他の物質であった。
【0058】
TSHR刺激の分析
K1−18又はK1−70 IgG及び他の調製物が、ヒトTSHRで形質移入された
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で環状AMPの産生を刺激する能力を、国際公開第2004/050708号A2に記述されているように試験した。1細胞当たりおよそ5×104又はおよそ5×105個のいずれかでTSHRを発現するCHO細胞を、1ウエル当たり3×104細胞で96穴プレートに播種し、ウシ胎仔血清を有していない
DMEM(Invitrogen Ltd社製、ペーズリー、英国)に適応させ、その後試験試料(TSH、IgG、又は患者血清)を添加し(100μL、環状AMPアッセイ緩衝液、つまり、1g/Lグルコース、20mmol/L HEPES、222mmol/Lスクロース、15g/Lウシ血清アルブミン、及び0.5mmol/L 3イソブチル−1−メチルキサンチン pH7.4を含有する無NaClのハンクス緩衝化塩溶液;環状AMPアッセイ低張性緩衝液で希釈)、37℃で1時間インキュベートした。試験溶液を除去した後、細胞を溶解し、溶解産物中の環状AMP濃度を、Assay Designs社製;Cambridge Bioscience社製、英国の直接環状AMP相関性−EIAキットを使用してアッセイした。結果は、細胞溶解産物(200μL)中の環状AMPのpmol/mLとして表されている。幾つかの実験は、等張性緩衝液条件下で実施した。これら実験では、クレブスリンガーHepes緩衝液(KRH緩衝液)を使用した(124mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1.25mmol/L MgSO4、1.45mmol/L CaCl2、1.25mmol/L KH2PO4、25mmol/L HEPES、8mmol/グルコース、0.5g/Lウシ血清アルブミン、0.5mmol/L 3イソブチル−1−メチルキサンチン、pH7.4)。細胞が必要な密度に達することを可能にし、培養培地を除去し、1mLのKRH緩衝液で細胞を洗浄した。その後、新しいKRH緩衝液を添加し、細胞を37℃で30分間インキュベートした。その後、緩衝液を除去し、試験試料(TSH、MAb調製物、血清試料等)を含有する新しいKRH緩衝液と取り換えた。その後、低張性条件下(つまり、環状AMPアッセイ緩衝液中)での実験について上述されているように、次のステップを実施した。幾つかの実験では、上述のように測定された種々の調製物(例えば、TSH、ヒトMAb、患者血清)のTSHR刺激活性に対する種々のMAbの効果を評価した。これは、(a)試料単独の刺激活性を(b)種々のMAbの存在下での刺激活性と比較することにより実施した。
【0059】
アンタゴニスト(阻止)活性の測定
K1−70 IgG及び他の調製物が、TSHRを発現するCHO細胞で、ブタ(p)TSH、天然ヒト(h)TSH及び組換えヒト(rh)TSH、MAb M22、MAb
K1−18、並びに患者血清TRAbの刺激活性を阻害する能力を評価した。これは、K1−70 IgG(又は試験されている他の調製物)の非存在下及び存在下での、TSH、M22、K1−18、又はTRAbの刺激効果を比較することにより実施した。このアッセイは、環状AMPアッセイ緩衝液で希釈された50μLのK1−70(又は試験されている他の調製物)を、細胞ウエルに添加し、その後50μLのTSH又はM22又はK1−18又は患者血清(環状AMPアッセイ緩衝液で適切に希釈されていた)を添加してインキュベートしたことを除いては上述のように実施し、上述の刺激アッセイと同様に試験した。K1−70に加えて、阻止型TRAbを有する患者に由来する他のMAb及び血清を、このアッセイで試験した。
【0060】
TSHRに対するK1−18及びK1−70結合の結合及び解離
全長TSHR及びTSHR260に対する、K1−18 IgG、K1−18 Fab、K1−70 IgG、及びK1−70 Fab結合の結合及び解離を、Nakatake N, et
al Thyroid 2006,16;1077-1084に記述されているような方法を使用して研究した。全長
TSHR又はTSHR260を、TSHRに対する適切なマウスMAbで予め被覆されていたプラスチックチューブに被覆した。結合実験では、100μLの125I標識IgG又
はFabを、TSHR被覆チューブ中で5〜180分間室温でインキュベートした。その後、チューブを吸引し、アッセイ緩衝液で洗浄し、ガンマ計数器で計数した。解離実験で
は、100μLの125I標識IgG又はFabを、TSHR被覆チューブ中で180分間
室温でインキュベートし、その後1mg/mlの種々のMAb IgG又はFab調製物を10μL添加し、0〜180分間室温でインキュベーションした。様々な時点で、チューブを吸引し、洗浄し、計数した。幾つかの実験では、TSH又は緩衝液を、MAb調製物の代りに添加した。
【0061】
TSHRのアミノ酸突然変異
特定の突然変異をTSHR配列に導入するために使用される方法は、国際公開第2006/016121号Aに記述されている。更に、Flp−In系を使用して突然変異TSHR構築体をCHO細胞に形質移入することも、国際公開第2006/016121号Aに記述されている。野生型又は突然変異TSHRのいずれかを発現するFlp−In CHO細胞を96穴プレートに播種し、アミノ酸突然変異を含有するTSHRを発現するCHO細胞で環状AMP活性を刺激する種々の調製物の能力を試験するために使用した。これら実験を、野生型TSHRを発現するCHO細胞を使用して得られた同様の実験と比較した。野生型又は突然変異TSHRのいずれかを発現するFlp−In CHO細胞は、上述のようなTSH、刺激性抗体、又は患者血清TRAbの刺激活性を阻止する種々の調製物の能力を研究する実験でも使用した。
【0062】
TSHR260−アルカリホスファターゼ(TSHR260−AP)構築体の産生
TSHR 260構築体(ヒトTSHRのコード化アミノ酸1〜260;アミノ酸1〜21はリーダー配列である)は、全長ヒトTSHRをテンプレートとして使用して増幅し(Oda Y, et al 1998. Journal of Molecula rEndocrinology 20:233-244)、クローニングベクターpSEAP2−basic(Clontech社製)をテンプレートとして使用して、分泌アルカリホスファターゼ(17個のアミノ酸のアルカリホスファターゼリーダー配列を除く)のコード配列に連結した。2つのPCR反応を実施し、第1の反応では、N末端にEcoRI制限部位、及びC末端に1アミノ酸リンカー(アスパラギン)及び分泌アルカリホスファターゼの最初の8個のアミノ酸(17個のアミノ酸のリーダー配列を除く)を付加した特異的プライマー配列番号77及び配列番号78プライマー(Sigma Genosys社製)を用いて増幅された全長TSHRを使用した。第2のPCRは、分泌アルカリホスファターゼのN末端に、TSHRのアミノ酸254〜260及び1アミノ酸リンカー(アスパラギン)、並びに分泌アルカリホスファターゼ遺伝子のC末端に、6ヒスチジンタグ、終止コドン、及びXhoI制限部位を付加するプライマー配列番号79及び配列番号80を用いて増幅されたクローニングベクターpSEAP2−basicを使用して実施した。PCR反応は、94℃で1分間、40℃で1分間、及び72℃で1分間の30サイクル、その後72℃で7分間で実施した。PCR産物を1%アガロースゲルに流し、DNAを、製造業者の説明書に従ってgeneclean IIキット(Anachem Ltd社製、ルートン)を使用して抽出した。その後、精製PCR産物1及び2を使用して、TSHR 260−アルカリホスファターゼ遺伝子全体を構築するための第3のPCRをセットアップした。200ngのPCR1産物及び200ngのPCR2産物及びPCR3を含有するPCR3反応を、94℃で1.5分間、65℃で1.5分間、及び72℃で1.5分間の7サイクルで実施した。その後、温度を2分間94℃に再び上昇させ、プライマー配列番号77及び80を添加し、その後94℃で1分間、52℃で1分間、及び72℃で2分間の30サイクルを行った。PCR3産物を、EcoRI及びXhoI制限部位を使用してpFastBac1にクローニングし、突然変異の存在は、サンガークールソン法(Sanger F et al 1997. Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 74:5463-5467)による配列決定を使用して確認した。組換えDNAは、国際公開第2008/025991号A1に記述されているように、Bac
to Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen社製、英国)を使用して製作し、Sf−9細胞に形質移入して組換えバキュロウイルス株を取得及び増幅した。TSHR260−APは、国際公開第2008/025991号A1に記述されているよう
に、昆虫細胞で発現した。
【0063】
TSHR260−APに基づくELISA
ELISAは、二価TSHR抗体が、ELISAプレートウエルに被覆されたTSHRに対して1つの抗原結合部位で結合し、液相中のTSHR260−APに対して別の抗原結合部位で結合する、すなわち架橋を形成する能力に基づいて確立した。CHO細胞で発現された界面活性剤可溶化全長受容体形態のTSHRを、以前に記述されているように、C末端抗体によりELISAプレートウエルに被覆した(Bolton J et al 1999、上記)
。このアッセイでは、75μLの開始緩衝液(TRAb ELISAについて記述されているような;Bolton J et al 1999、上記)及び75μLの試験試料(患者血清又はモノ
クローナル抗体)を、界面活性剤可溶化全長TSHRで被覆されたELISAプレートウエルに添加し、振とうしながら(500rpm)室温で2時間インキュベートした。その後、ウエルの内容物を除去し、ウエルを洗浄緩衝液(50mmol/L NaCl、20mmol/L Tris pH7.8、1%トリトンX−100)で3回洗浄し、その後100μLのTSHR260−AP(0.2g/L MgCl2−6H2O及び2g/L BSAを含有する洗浄緩衝液で希釈)を添加した。振とうしながら(500rpm)室温で1時間インキュベーションした後、ウエルを空にし、洗浄し(3回)、100μLのp−ニトロフェニルホスフェート(pNpp)基質(Europa Bioproducts Ltd社製、エリー、ケンブリッジ 英国)を添加し、プレートを暗所で45分間インキュベートした。その後、100μLの停止溶液(1mol/L NaOH)を添加し、405nmの吸光度を、ELISAプレートリーダーで測定した。結果を、OD405nm
の吸光度値として表し、一群の健常供血者(HBD)血清で観察されたものより高い値は、試料中にTSHR自己抗体が存在することを示した。幾つかの実験では、CHO細胞で発現された突然変異R255Dを含有する組換えTSHRの可溶化調整物を使用して、ELISAプレートウエルを被覆した。
【0064】
TSHR LRD C−CAP構築体の産生
アミノ酸306〜384が取り除かれたヒトTSHRのアミノ酸1〜409をコードするTSHR LRD C−CAP構築体を、全長ヒトTSHRをテンプレートとして使用して増幅した(Oda Y, et al 1998. Journal of Molecular Endocrinology 20:233-244)。2つのPCR反応を実施し、第1の反応では、T7プライマー(配列番号81)、及びTSHRのアミノ酸305のC末端側にTSHRのアミノ酸385〜342を付加した特異的プライマー配列番号82(Sigma Genosys社製、ジリンガム、ドーセット、英国)を用いて増幅された全長TSHRを使用した。第2のPCRは、BGH逆方向プライマー配列番号83、及びTSHRのアミノ酸385のN末端側にTSHRのアミノ酸298〜305を付加する特異的プライマー(配列番号84)を用いて増幅された全長TSHRを使用して実施した。PCR反応は、94℃で1分間、40℃で1分間、及び72℃で2分間の30サイクル、その後72℃で7分間で実施した。PCR産物を1%アガロースゲルに流し、DNAを、製造業者の説明書に従ってGeneclean IIキット(Anachem Ltd社製、ルートン)を使用して抽出した。その後、精製PCR産物1及び2を使用して、アミノ酸306〜384が取り除かれ、Ser305がTyr385に連結した連続TSHR配列を構築する第3のPCRをセットアップした。200ngのPCR1産物及び200ngのPCR2産物及びPCR3を含有するPCR3反応を、94℃で1.5分間、65℃で1.5分間、及び72℃で1.5分間の7サイクルで実施した。その後、温度を2分間94℃に再び上昇させ、T7プライマー(配列番号81)及びBGHRプライマー(配列番号83)を添加し、その後94℃で1分間、52℃で1分間、及び72℃で2分間の30サイクルを行った。その後、アミノ酸306〜384が取り除かれたTSHR配列を含有するPCR3産物を1%アガロースゲルに流し、DNAを、製造業者の説明書に従ってGeneclean IIキット(Anachem Ltd社製)を使用して抽出した。精製PCR3産物を、TSHR LRD C−CAP遺
伝子構築用のテンプレートとしてPCR4で使用した。200ngのPCR3をテンプレートDNAとして含有するPCR4反応は、T7プライマー(配列番号81)、及びTSHR配列(アミノ酸306〜384を欠失した1〜409)のアミノ酸409のC末端側に、6ヒスチジンタグ、終止コドン、及びXhoI制限部位を付加する特異的プライマー(配列番号85)を用いて増幅した。PCR4反応は、94℃で1分間、40℃で1分間、及び72℃で1分間の30サイクル、その後72℃で10分間で実施した。PCR4産物を、BamHI及びXhoI制限部位を使用してpFastBac1にクローニングし、突然変異の存在は、サンガークールソン法(Sanger F et al 1997. Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 74:5463-5467)による配列決定を使用して確認した。組換えDNAは、国際公開第2008/025991号A1に記述されているように、Bac to Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen社製、ペーズリー、英国)を使用して製作し、Sf−9細胞に形質移入して組換えバキュロウイルス株を取得及び増幅した。TSHR LRD C−CAP(図7c;配列番号76)は、国際公開第2008/025991号A1に記述されている手順を使用して、昆虫細胞で発現させた。
【0065】
様々なTSHR調製物の安定性の比較
組換えTSHRの様々な調製物の温度安定性を比較した。CHO細胞で発現された全長可溶化TSHR、昆虫細胞で発現されたTSHR260、昆虫細胞で発現されたTSHR260−AP、及び昆虫細胞で発現されたTSHR.LRD C−CAPを試験した。上記に列挙されている調製物の各々の等量を、−80℃保管庫から取り出し、氷上解凍し、対照としての試料を−80℃に戻し、バルクを室温(20〜25℃)で24時間又は48時間保管した。室温で24時間又は48時間後、TSHR調製物を−80℃で保管し、その後下述のように試験した。ELISAプレートウエルを、被覆緩衝液(Bolton J et al
1999、上記)中1μg/mLのマウスTSHR MAb 14C4のF(ab’)2調製物(Jeffreys J et al 2002, Thyroid 12:1051-1061及びSanders J et al 2007 Thyroid 17:395-410)で被覆した。研究中のTSHR調製物を、20mmol/L NaCl、10mmol/L Tris pH7.8、1%容積/容積 トリトンX−100、1g/L BSA、200mg/L NaN3で希釈し、150μLをELISAプレートウエルに添加した(四重重複で)。4℃で終夜インキュベーションして、抗体(14C4 F(ab’)2)被覆ウエルに対するTSHR調製物の結合を可能にした後、ウエルを洗浄し、75μLのアッセイ緩衝液(50mmol/L NaCl、20mmol/L Tris pH7.8、1%容積/容積 トリトンX−100、1g/L BSA)及び75μLの健常供血者血清と共に、ELISAプレート振とう器で毎分500回振とうしながら室温で1時間インキュベートした。その後、ウエルの内容物を空にし、ウエルを洗浄し、100μLのM22 Fab−ペルオキシダーゼ結合体(上記を参照)を各ウエルに添加した。振とうせずに25分間室温でインキュベーションした後、プレートウエルを再度洗浄し、その後100μLのテトラメチルベンジジンを添加し、室温で振とうせずに更に25分間インキュベーションした。反応は、50μLの0.5mol/L H2SO4を添加することにより停止させ、各ウエルの450nmでの吸光度を、ELISAプレートリーダーで測定した。
【0066】
可変領域遺伝子解析
K1−18又はK1−70重鎖及び軽鎖の可変(V)領域遺伝子は、RT−PCR(逆転写PCR)反応用のmRNAを産生するために、1×107個のヘテロハイブリドーマ
細胞(分泌K1−18 IgG又はK1−70 IgG)から調製された全RNAを使用して、国際公開第2004/050708号A2に記述されているように決定した。医学研究審議会のV−base(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)を使用して設計され、
Invitrogen社(ペーズリー、PA4 9RF、英国)により合成された、特異的IgG1 HC及びカッパLCのセンス及びアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドプライ
マーを、K1−18mRNAを用いたRT−PCR反応で使用した。上述のように調製された特異的IgG1 HC及びラムダLCプライマーを、K1−70mRNAを用いたRT−PCR反応で使用した。RT反応は、50℃で15分間、その後94℃で15秒間、50℃で30秒間、及び72℃で30秒間の40サイクルのPCRで実施した。DNA産物をpUC18にクローニングし、サンガークールソン法(Sanger F, et al 1977、上記)により配列決定した。V領域配列を、Ig blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を使用して、入手可能なヒトIg遺伝子の配列と比較した。CDRは、カバット法(Kabat E et al 1991 Sequences of proteins of immunological interest (US Public Health service, Bethesda, MD) Fifth edition)及びIg blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)により帰属させた。2巡目のmRNA単離は、限界希
釈により更に再クローン化を受けたK1−70及びK1−18ハイブリドーマ細胞系の両方から実施した。V領域配列(K1−18 HC、K1−18 LC、K1−70 HC、及びK1−70 LC)は、mRNAからRT−PCRによって取得し、その後上述のようにクローニング及び配列決定した。加えて、RT−PCR反応は、また、V領域の各々のそれぞれのリーダー配列の5’末端に対応する、特異的に設計されたPCRプライマーを使用して実施した。これにより、K1−18及びK1−70のHC及びLC V領域のN−末端の、実際のオリゴヌクレオチド配列(及び派生アミノ酸配列)の特定が可能になった。加えて、K1−70 LCタンパク質のN−末端アミノ酸配列を、Alta Bioscience社(バーミンガム、英国)によるエドマン分解反応により分析した。これは、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼを用いてK1−70 LCタンパク質調製物のN−末端を「脱ブロッキング」した後で可能だった。精製K1−70 Fab(10μg)を、2.5mUのピログルタミン酸アミノペプチダーゼ(50mmol/L Na2HPO4 pH7.0;10mmol/Lジチオトレイトール、及び1mmol/L EDTA中)で、6時間75℃で処理した。等しい容積のSDS−PAGE試料緩衝液を添加し、100℃で5分間加熱した後、K1−70 Fabを、15%SDS−PAGEでHC(Fd部分)及びLCに分離した。LCバンドを、注意深くゲルから切り出し、N−末端タンパク質配列を決定した。数巡のRT−PCRを繰り返し、K1−18 HC、K1−18 LC、及びK1−70 HCの配列決定することにより、V領域配列は以前に得られたものと同じであったが、K1−70 LC V領域配列は異なっていたことが確認された。数巡のRT−PCRの繰り返し実験で得られたK1−70 LC配列は、エドマン反応により得られた2〜21連続N末端アミノ酸のタンパク質配列(図6e;配列番号73)、及びK1−70 Fabの結晶構造中のLCアミノ酸の電子密度(図8)と一致しており、結果的に、好ましいK1−70 LC配列(図6c及び6d、(それぞれ、配列番号64及び69))として結論付けた。
【0067】
K1−70 FabのX線回折解析
上述のように調製されたK1−70 Fab溶液を、9000Daカットオフを有するiCON濃縮器(ThermoFisher Scientific社製、ラフバラ、英国)を使用して、15.5mg/mLに濃縮し、等分して−20℃で保管した。K1−70 Fabの結晶は、Molecular Dimensions社製(ニューマーケット、英国)のStructure Screen1 sparse matrix screenを使用し、蒸気拡散の懸滴法を使用して育晶した。幾つかの結晶が多くの条件で取得され、その全てをスクリーニングして、Biofocus DPI社(サフランウォールデン、英国)でのX線回折解析に最も好適な結晶を特定した。30%PEG400、0.1MナトリウムHepes、pH7.5、0.2M塩化マグネシウム中で育晶した結晶を選択した。それをウエル溶液で洗浄し、液体窒素に浸漬することにより瞬間凍結した。データセットを、Rigaku R−Axis IVイメージプレート検出器で収集し、MOSFLM及びSCALA(CCP4プログラムスイート(Collaborative computational project, number 4. 1994. "The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography". Acta Cryst. D50, 760-763)から)を使用して、指数付けし、積分し、スケーリ
ングした。タンパク質構造データベース(http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do)からの3つの構造1LIL(VL及びCLドメイン)、2B0S(VHドメイン)、及び2EH7(VLドメイン)を、配列アラインメントに基づく分子置換に使用するために選択した。2つの完全なFab K1−70分子が非対称単位中に存在しており、その結果生じたモデルを、REFMAC5(CCP4)を使用して、厳重な幾何学的重み付けをして10サイクルの原子精密化にかけた。電子密度図は、分子置換及び初期精密化をモデル構築プログラムCOOT(Emsley P, Cowtan K 2004. Nature 355: 472-475)で検討した後で計算し、自動モデル再構築は、BUCCANEER(CCP4)を使用して実施した。モデルを再検討して残りの欠けている特徴を全て手作業で構築し、REFMAC5(CCP4)を使用してモデルを精密化した。その後、COOTの水配置機能を使用して水分子を付加し、REFMAC5(CCP4)を使用して精密化した。Fab K1−70の構造幾何学は、PROCHECK(CCP4)及びRAMPAGE(CCP4)を使用して点検した。最後に、モデル中の残基を、カバット付番方式(Kabat E et al 1991、上記)に従って再付番した。
【0068】
大腸菌での組換えK1−70 Fabのクローニング及び発現
K1−70 HC RT−PCR産物を、XhoI及びSpeI制限エンドヌクレアーゼで切断し、K1−70 LC PCR産物をSacI及びXbaI制限エンドヌクレアーゼで切断し、HC及びLC cDNAを、両方ともlacZプロモーターの制御下でImmunozap H/Lベクター(Stratagene Europe社製;アムステルダム、オランダ)(Matthews I, et al 2002 Laboratory Investigation 82:1-11)に
クローニングした。プラスミドDNAは、Qiagen midiプラスミド精製キット(Qiagen Ltd社製、クローリー、英国)を使用して調製し、K1−70 HC及びLC cDNAの存在は、サンガークールソン法(Sanger F, et al 1977、上記)を使用して配列決定することにより確認した。プラスミドDNAを、大腸菌株HB2151(GE Life Sciences社製、リトルチャルフォント、英国)に形質転換し、LBアンピシリン(トリプトン 10g/L、酵母抽出物 5g/L、NaCl 10g/L、100μg/ml終濃度のアンピシリン)寒天プレート(15g/Lの寒天)上で終夜37℃で増殖させた。前培養(3mL LBアンピシリン+1%グルコース中に1つのコロニー)を、振とうしながら30℃で終夜増殖させた。組換えFabの産生は、グルコースが存在すると阻害される。終夜インキュベーションした後の前培養を、1/100に希釈し(5OmL LBアンピシリン中0.5mL)、OD600が1.2になるまで
30℃で増殖させ、その後スクロースを添加し(終濃度0.3mol/L)、培養物を、OD600が1.2に戻るまで30℃で増殖させた。その後、イソプロピル−β−Dチオガ
ラクトシド(IPTG)を、終濃度が1mmol/Lになるように添加し、培養物を振とうしながら23℃で24時間インキュベートし続けた。その後、培養物を、4℃で30分間3000rpmで遠心分離し、培養上清を回収した。培養上清を0.45μmフィルターでろ過し、PBS(8.1mmol/L Na2HPO4、1.5mmol/L KH2
PO4、2.7mmol/L KCl、137mmol/L NaCl pH7.4)で
終夜透析した。K1−70プラスミド(HB2151/K1−70)で形質転換されたHB2151細胞に由来する、IPTG無しでグルコースと共に増殖させた、つまり誘導しなかった培養上清を陰性対照として使用した。培養上清を、(a)TSHRに対するTSH結合を阻害するそれらの能力、(b)TSHRを発現するCHO細胞で環状AMP産生のTSH媒介性刺激を阻害するそれらの能力についてアッセイした。
【0069】
結果
K1−18又はK1−70を分泌する安定細胞系の単離及びクローニング
20mLの患者血液から得たリンパ球(26×106)を、EBVに感染させ、48穴
プレートの1ウエル当たり1×106細胞で、マウスマクロファージの支持細胞層に播種
した。EBV感染後13日目に、プレートウエル上清を、125I−TSH結合の阻害につ
いてモニターした。陽性クローンを、TSHRに対するそれらの効果(刺激性又は阻止性)に関して更に試験した。陽性ウエルの細胞(使用したアッセイのいずれかで陽性)を増殖させ、K6H6/B5ハイブリドーマ細胞系と融合させ、96穴プレートに播種した。125I−TSH結合阻害活性を有する抗体を安定して産生する2つのクローンを取得し、
4回再クローン化した。それらクローンのうちの1つは、TSHR刺激活性を示したK1−18と称するヒトMAbを分泌した。ヘテロハイブリドーマ培養上清から精製されたK1−18抗体は、カッパ軽鎖を有するサブクラスIgG1だった。もう1つの安定クローンは、TSHRで形質移入されたCHO細胞で環状AMP産生のTSH刺激を阻止する能力を示した、K1−70と称するヒトMAbを分泌した。ヘテロハイブリドーマ培養上清から精製されたK1−70抗体は、ラムダ軽鎖を有するサブクラスIgG1だった。
【0070】
TSHR被覆チューブに対する125I−TSH結合の阻害
TSHR被覆チューブに対する標識TSHの結合を阻害する、様々な濃度のK1−18又はK1−70 IgGの能力は、表1a及び1bに示されている。表1aに示されているように、健常供血者(HBD)血清で希釈されたK1−18 IgGは、1μg/mL濃度でおよそ95%の125I−TSH結合の最大阻害を示した。K1−18 IgGの阻
害効果は、1〜0.001μg/mLの濃度で用量依存性だった。K1−18の阻害効果は、同じ濃度のM22 IgGの効果と同等であった。1μg/mLのK1−18 IgGは、5C9 IgG1、TSMAb 1〜7 IgG又は9D33 IgGよりも強力な125I−TSH結合の阻害物質である(表1a)。125I−TSH結合に対する効果を阻害するK1−70 IgG又はFabは、表1bに示されている。HBD血清で希釈されたK1−70 IgGは、0.03μg/mLで13.5±2.3%から100μg/mLで95.9±0.8%に及ぶ用量依存的阻害を示した。K1−70 Fabの阻害効果は、同じ濃度のK1−70 IgGの効果と同等であった(表1b)。表1a及び1bは、被覆チューブアッセイ緩衝液で稀釈されたK1−18及びK1−70及び様々なMAbsによる、TSHR被覆チューブに対する125I−TSHの結合に対する効果も示してお
り、5C9以外の全てのMAbの場合には、これら効果は、MAbがHBD血清で希釈された場合に観察された結果と同等であった。表2aは、K1−18、K1供与体血清、及びK1供与体血清IgGの様々な調製物による、TSHR被覆チューブに対する125I−
TSH結合の阻害を示す。この実験では、およそ12%阻害が、HBD血清で希釈されたわずか0.01μg/mLのK1−18 IgGで観察され、阻害は、10μg/mLのK1−18 IgGでの95%阻害まで用量依存的な様式で増加した。HBD血清中0.01μg/mLのK1−18 Fabは、5.6±7.3%阻害を示し、阻害は、10μg/mLでの82.2±0.9%最大阻害まで用量依存的な様式で増加した。これは、HBD血清で希釈された供与体血清IgGによる125I−TSH結合阻害と比較することが
でき、0.125mg/mLでの13.7±1.3%阻害は、1mg/mLでの76.5±1.5%阻害へと用量依存的な様式で増加する。様々な希釈の供与体血清も、1/160希釈での9.1±0.8%阻害から1/10希釈での81.1±0.4%阻害まで、125I−TSH結合の用量依存的阻害を示した。表2aのデータは、精製K1−18 Ig
Gが、K1供与体血清IgGと比較して、TSH結合阻害の点で6600倍より活性であったことを示した。K1−18 IgG及び供与体血清IgGを、アッセイ緩衝液で希釈した場合、K1−18 IgGがTSH結合を阻害する能力は、供与体血清IgGの阻害能力より4700倍大きかった(表2a)。表2bは、国立生物学的製剤研究所(NIBSC;ポターズバー、英国)の甲状腺刺激自己抗体基準調製物90/672の効果と比較した、被覆チューブアッセイでの、K1−18の様々な調製物によるTSHRに対する125I−TSH結合の阻害を示す。HBD血清で希釈されたK1−18 IgGは、69N
IBSC 90/672単位/mgの125I−TSH結合阻害活性を示した(3つの濃度
のK1−18 IgGで計算された活性の平均;30ng/mL、100ng/mL、及び300ng/mL)(表2b)。同じ実験で計算されたK1−18 Fab(血清で希釈)の125I−TSH結合結合阻害活性は、46NIBSC 90/672単位/mgだ
った(30ng/mL、100ng/mL、及び300ng/mLのK1−18 Fabでの活性を使用して計算した)(表2b)。これは、131NIBSC単位/mgのM22 IgG 125I−TSH結合阻害活性と比較することができる(表2b)。NIBS
C 90/672の活性と比較した、供与体血清及び供与体血清IgGの希釈物の125I
−TSH結合阻害活性は、表2cに示されている。供与体血清の125I−TSH結合阻害
活性は、0.075NIBSC 90/672単位/mLであり(40×及び20×希釈での値の平均)、HBD血清で希釈された供与体血清IgGの125I−TSH結合阻害活
性は、0.011単位/mgだった(0.1、0.3、及び1.0mg/mLでの値の平均)(表2c)。これは、63.3NIBSC 90/672単位/mg(30、100、及び300ng/mLでの値の平均)の同じ実験で測定されたK1−18 IgG(HBD血清で希釈)の活性、及び114単位/mg(10、30、及び100ng/mLでの値の平均)のK1−70 IgG(HBD血清で希釈)の活性と比較することができる(表2c)。結果的に、このアッセイ系では、K1−18 IgGの比活性は、供与体血清IgGの比活性の5755倍だった。同様に、K1−70 IgGの比活性は、供与体血清IgGの比活性の10,364倍だった。
【0071】
TSHR被覆チューブに結合するK1−18及びK1−70のスキャチャード解析
TSHR(全長)に対するK1−18 IgGの結合親和性は、6.7±1.0×109L/mol(平均±SD;n=3)であり、K1−18 Fabの結合親和性は、1.
8±1.0×109L/mol(平均±SD;n=3)だった。TSHR260に対する
K1−18 IgGの結合親和性は、5.9±1.0×109L/mol(平均±SD;
n=3)だった。TSHR(全長)に対するK1−70 IgGの結合親和性は、3.9±0.8×1010L/mol(平均±SD;n=3)であり、K1−70 Fabの結合親和性は、2.3±0.3×1010L/mol(平均±SD;n=3)だった。TSHR260に対するK1−70 IgGの結合親和性は、3.1±0.4×1010L/mol(平均±SD;n=3)であり、K1−70 Fabの結合親和性は、9.3±0.4×109L/mol(平均±SD;n=3)だった。これは、6.0±0.9×109L/mol(平均±SD、n=5)のTSHR(全長)に対するブタTSHの結合親和性と比較することができる(Nakatake et al 2006、上記)。
【0072】
ELISAにより測定されたTSHRに対するTSH−ビオチン結合の阻害
TSHR被覆ELISAプレートウエルへのTS−Hビオチン結合に対するK1−18
IgGの効果を研究し、種々の他のMAbの効果と比較した。表3aに示されているように、HBD血清で希釈されたK1−18 IgGは、TSH−ビオチン結合に対して用量依存的な阻害効果を示し、0.01μg/mLで10.0±0.8%阻害、1μg/mLで96.2±0.2%の本質的に最大阻害、及び3μg/ml以上の濃度で最大阻害プラトーだった。これは、0.01μg/mLで17.5±2.0%及び1μg/mLで98.3±0.0%のM22 IgG(HBD血清で希釈)阻害効果と比較することができる(表3a)。1μg/mL(HBD血清で希釈)でのK1−18 IgGのTSH−ビオチン結合阻害活性は、表3aに示されている例により示されている5C9 IgG、TSMAb 1〜7 IgG、及び9D33 IgGより大きかった。ELISAアッセイ緩衝液(50mmol/L NaCl、10mmol/L Tris、pH7.8、0.1%容積/容積トリトンX−100、1mg/mL BSA)で希釈されたK1−18 IgGを試験すると、阻害効果は、希釈をHBD血清で行った場合と本質的に同じだった(表3a)。表3bの例により示されているように、HBD血清又はELISAアッセイ緩衝液で希釈されたK1−18 Fabも、ELISAでのTSH−ビオチン結合の効果的な阻害物質だった。100μg/mLの対照MAb IgG(グルタミン酸デカルボキシラーゼに対するヒトMAbである5B3)を添加したELISAアッセイ緩衝液で希釈されたK1−18 IgGの阻害効果は、表3cに示されている。対照MAb K1−18 IgGを含有する緩衝液で希釈した場合、BSAを含有する緩衝液又はHBD血清で
希釈した場合と同様のTSH−ビオチン結合阻害活気を示した(表3c)。結果的に、高濃度(100μg/mL)の無関係なヒトMAb IgGの存在は、K1−18 IgG、M22 IgG、及び5C9 IgGのいずれの阻害活性にも効果を示さなかった。表3dは、TSHRへのTSH−ビオチン結合に対するK1−70の影響を示しており、これらは、K1−18又はM22の効果と同等である(表3a&3b)。HBD血清で希釈されたK1−70 IgGは、TSH−ビオチン結合に対して用量依存的な阻害効果を示し、0.01μg/mL、0.1μg/mL、及び1μg/mLで、それぞれ13.6±1.4%、74.1±0.4%、及び97.4±0.2%の阻害であった。K1−70 Fabは、同様に活性であり、0.01μg/mL、0.1μg/mL、及び1μg/mLで、それぞれ18.2±0.6%、88.3±0.3%、及び96.9±0.1%の阻害であった。K1−70 IgG又はFab調製物がELISAアッセイ緩衝液で希釈された場合、阻害活性は、HBD血清で製作された希釈物と比較して本質的に同じだった(表3d)。TSHR被覆ELISAプレートウエルに対するM22 Fab−PODの結合を阻害するK1−18 IgGの能力は、表4aに示されている。HBD血清で希釈されたK1−18 IgGは、用量依存的な様式でM22 Fab−POD結合を阻害し、特に、21.0±1.3%、81.6±0.5%、及び97.2±0.1%の阻害が、それぞれ0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLで観察された。この効果は、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLで、それぞれ51.0±2.4%、93.2±0.3%、及び98.0±0.2%であるM22 IgG(HBD血清で希釈)の阻害効果と同等である。K1−18 Fabは、K1−18 IgGと同様の、M22 Fab−POD結合を阻害する能力を示した(表4b)。表4aに示されているように、TSHRに対する標識M22の結合を阻害するK1−18及びM22の能力は、5C9、TSMAb 1〜7、及び9D33の阻害活性より大きかった。ELISAアッセイ緩衝液で希釈した場合、研究された全てのMAbの阻害効果は、HBD血清で希釈した場合に観察された阻害効果に類似していた(表4a及びb)。TSHRへのM22 Fab−POD結合に対するK1−18の阻害効果は、K1−70の効果と比較することができる(表4c)。HBD血清で希釈されたK1−70 IgGは、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLで、それぞれ34.5±3.8%、91.1±0.3%、及び97.6±0.1%の阻害を示した。K1−70 IgGをELISAアッセイ緩衝液で希釈した場合、同様の阻害パーセントが観察された(表4c)。表4cに例示されているように、HBD血清又はELISAアッセイ緩衝液で希釈されたK1−70 Fabは、K1−70 IgGと同様のM22−POD結合阻害活性を示した。
【0073】
TSHR被覆チューブに対する125I標識K1−18 IgG又はFab結合の阻害
0.01〜100μg/mL(HBD血清で希釈)濃度の対照ヒトMAb 4B4 IgGの存在下では、125I−K1−18 IgGの結合は、本質的に影響を受けなかった
(表5a)。これは、様々な濃度の未標識K1−18 IgG(HBD血清で希釈)の効果と比較することができ、0.001、0.01、0.1、及び1.0μg/mLの増加する用量は、それぞれ11.1±4.4%、22.9±2.4%、69.0±0.5%、及び91.7±0.8%の125I標識K1−18結合の阻害を引き起こした。0.001
〜100μg/mLの濃度で試験された未標識K1−18 Fabは、10.3±2.2%(0.03μg/mLで)〜84.8±0.9%(100μg/mLで)の範囲の阻害を示した(表5b)。また、K1−70 IgG及びFab(両方とも、0.001〜100μg/mLの濃度範囲で試験された)は、10μg/mLのK1−70 IgGでの95.1±0.3%及び3μg/mLのK1−70 Fabでの92.8±1.1%の本質的に完全な阻害まで、125I−K1−18 IgG結合を用量依存的な様式で阻害した
(表5b)。加えて、125I−K1−18 IgGの結合は、M22 IgG、M22
Fab、5C9 IgG、TSMAb 1〜7 IgG、及び9D33 IgGにより用量依存的な様式で阻害された(表5a及び5b)。同じ実験を、被覆チューブアッセイ緩
衝液で希釈された種々のMAb調製物を使用して実施した場合、それぞれの調製物の阻害効果は、5C9 IgGの場合を除いて、HBD血清で希釈された場合に観察された効果と同等であった(表5a)。アッセイ緩衝液で希釈された5C9の場合、100μg/mLでの最大阻害は、HBD血清で希釈された場合の57.7±2.4%と比較して、91.3±0.4%であり、0.01μg/mLでの阻害は、それぞれ11.7±1.8%及び−1.8±2.7%だった(表5a)。TSHR被覆チューブに対する125I−K1−
18 IgGの結合は、リンパ球供与体血清により阻害され、1:20及び1:10の血清希釈でそれぞれ35.2%及び59.3%の阻害がもたらされた(表5c)。20人のグレーブス病患者に由来する血清は、125I−K1−18 IgGの結合を阻害し、阻害
効果は、125I−TSH結合に対する阻害効果と同等であった(表5c)。表5cは、125I−K1−18 IgG及び125I−TSH結合の両方に対する阻止性TRAbを有する
2人の患者に由来する血清(B1及びB2)、及び刺激性TRAbを有する2人の患者に由来する血清(S1及びS2)の希釈物の効果も示す。TSHR被覆チューブに対する125I−K1−18 Fab結合に対する種々のMAbの効果は、表5dに示されている。
未標識K1−18 IgG及びK1−18 Fabは、両方とも125I−K1−18 F
ab結合に対して用量依存的な阻害効果を示し、これら効果は、M22 IgG、M22
Fab、及びK1−70 IgGの効果と同等であった(表5d)。5C9 IgG、TSMAb 1〜7 IgG、及び9D33 IgGも、125I−K1−18 Fab結
合を阻害したが、それら効果は、M22、K1−18、及びK1−70調製物と比較してより小さかった(表5d)。
【0074】
TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP産生の刺激
K1−18 IgGは、TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP産生を、表6aに示されているように用量依存的な様式で刺激した。低張性緩衝液では、0.1ng/mL K1−18 IgGが存在すると、環状AMPのレベルは、1.56±0.32pmol/Lであり、1.0ng/mLでは、4.08±0.28pmol/Lであり、10ng/mLでは、31.66±5.06pmol/Lであり、100ng/mLでは、64.95±9.61pmol/Lであり、1000ng/mLでは、環状AMPのレベルは67.90±10.44pmol/Lであった。低張性緩衝液中の様々な濃度のK1−18 Fabでの環状AMPレベルは、1ng/mL、10ng/mL、100ng/mL、及び1000ng/mLのK1−18 Fabで、それぞれ1.72±0.82pmol/L、9.99±3.52pmol/L、53.22pmol/L、及び66.94±6.93pmol/Lだった。低張性緩衝液中の1ng/mLのM22 Fabは、29.80±0.97pmol/Lの環状AMP産生を刺激し、10ng/mLでは、57.41±5.05pmol/Lの環状AMP産生を刺激した(表6a)。表6aは、等張性条件下で試験された、TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP刺激に対するK1−18 IgG又はFabの効果も示している。表6aの例により示されているように、K1−18及びK1−70は両方とも、等張性条件下で環状AMP産生の増加を引き起こしたが、産生された環状AMPのレベルは、低張性条件を使用した実験と比較してより低かった。低張性緩衝液で試験されたM22 IgG及びK1−18 IgGの刺激活性の比較は、表6bに示されている。3ng/mL濃度では、M22 IgGは、24.3±2.3pmol/mLの環状AMPを刺激し、K1−18 IgGは、8.3±0.5pmol/mLの環状AMPを刺激した。10ng/mLでは、M22 IgG及びK1−18 IgGは、それぞれ50.3±1.6及び25.0±1.0pmol/mLの環状AMPの刺激を引き起こし、100ng/mLでは、それぞれ64.6±1.9及び62.6±2.7pmol/mLの刺激を引き起こした。また、K1−18 IgG及びFabの刺激活性を、NIBSC基準調製物90/672の活性と比べて評価した(表6c)。K1−18 IgGの計算された環状AMP刺激活性は、155NIBSC 90/672単位/mgだった(3つの濃度のK1−18 IgGで計算された活性の平均;1ng/mL、3ng/mL、及び10ng/mL)(表6c)。同じ実験の中で計算された
K1−18 Fabの環状AMP刺激活性は、22NIBSC 90/672単位/mgであった(10ng/mL、30ng/mL、及び100ng/mLのK1−18 Fabでの活性を使用して計算した)(表6c)。これは、286NIBSC単位/mgのM22 IgG環状AMP刺激活性と比較することができる(表6c)。比較のために、等張性及び低張性緩衝液中での、ブタTSH、天然ヒトTSH、及び組換えヒトTSHの刺激活性が、表6dに示されている。
【0075】
表6eに示されている更なる例は、様々な組合せで一緒に混合された場合のK1−18
IgG、M22 IgG、又はpTSHの刺激効果に関する。pTSH、M22、又はK1−18の刺激効果は、同じ濃度の刺激物質単独の効果と比較して、2つの刺激物質が一緒に混合された場合、増強されると考えられる。特に、0.1ng/mLのpTSH単独での11.01±0.99pmol/mL(平均±SD)の環状AMP産生、及び1ng/mLのM22 IgGでの35.17±6.38pmol/mL(平均±SD)の環状AMP産生は、0.1ng/mLのpTSH及び1ng/mLのM22 IgGが一緒に混合された場合、47.22±3.89pmol/mL(平均±SD)に増加した。また、0.1ng/mLのpTSH及び10ng/mLのK1−18 IgGの混合物は、これら刺激物質単独よりも大きな刺激効果を示した(表6e)。更に、一緒に混合された2つの刺激抗体は、同じ濃度の単一の抗体よりも強力だった。例えば、5ng/mLのK1−18 IgGに応答して、29.95±1.18pmol/mL(平均±SD)の環状AMPが産生され、0.5ng/mLのM22 IgGに応答して、20.20±2.48pmol/mL(平均±SD)が産生された一方で、一緒に混合された5ng/mLのK1−18及び0.5ng/mLのM22に応答して、44.01±7.19pmol/mL(平均±SD)の環状AMPが産生された(表6e)。
【0076】
K1−18及びK1−70供与体血清並びに供与体血清IgGが環状AMPを刺激する能力を、NIBSC 90/672の刺激活性と比較した2つの実験の結果は、表6f及び6g示されている。実験1では、供与体血清の刺激活性は、30倍希釈での1.7±0.4pmol/mLのHBD血清の効果と比較して、同じ希釈で4.7±0.1pmol/mLの環状AMPであり、一方で供与体血清IgGの刺激活性は、30μg/mLで7.7±1.0pmol/mLであり、これは0.013単位/mgのNIBSC 90/672と比べた活性を表していた(表6f)。実験2では、30倍希釈の供与体血清は、9.5±0.7pmol/mLまでの環状AMPの刺激を引き起こし、その一方で30μg/mLの供与体血清IgGは、15.6±0.7pmol/mLまでの刺激を引き起こし、これは0.014単位/mgのNIBSC 90/672と比べた活性を表していた(表6g)。K1−18 IgG TSHR刺激活性は、表6hに示されている例により示されるように、TSHアンタゴニスト活性(K1−70及び5C9)を有するヒトMAbにより阻害された。特に、10ng/mLのK1−18 IgGは、50.0±3.3pmol/mLまでの環状AMPの刺激を引き起こし、これは、0.1μg/mLのK1−70 IgGの存在下では、3.8±1.0pmol/mLに低減された(92%阻害)。10ng/mLのK1−18 IgG及び0.1μg/mLの5C9 IgGの存在下では、環状AMPレベルは、4.4±1.5pmol/mLだった(91%阻害)。より高い濃度のK1−70 IgG又は5C9 IgGでは、阻害効果は完全だった(100%阻害)(表6h)。更なる実験では、K1−18 IgGの刺激活性に対する、5C9 IgGと一緒に混合されたK1−70 IgGの効果を研究した(表6i)。表6iに示されているように、10ng/mLでのK1−18 IgG刺激は、0.1μg/mLの5C9 IgG又は0.1μg/mLのK1−70 IgGにより効果的に阻害された。K1−70 IgG及び5C9 IgGを混合して、最終総濃度を0.1μg/mLにした場合も、K1−18 IgGの刺激活性が効果的に阻害された(97.3%阻害)。しかしながら、より低濃度では、一緒に混合された場合、K1−70 IgG及び5C9 IgGは、1つの抗体単独よりも効果的なK1−18 IgG刺激活性の阻害物質だ
った。例えば、0.001μg/mLでは、K1−70 IgG及び5C9 IgGは個々には、阻害を引き起こさなかったが(それぞれ0%及び1%)、一緒に混合して同じ終濃度の総IgG(つまり、0.001μg/mL)にした場合、阻害は25.5%だった。また表6iは、K1−70 IgG(100μg/mL)の存在下での環状AMP濃度が、アッセイ緩衝液の存在下で観察された濃度と同様であり、一方で5C9 IgG(100μg/mL)の存在下での環状AMPの濃度は、より低かった(それぞれ0.89±0.13、0.89±0.15、及び0.55±0.14)(三重重複測定での平均±SD)ことを示した。K1−70 IgG及び5C9 IgGを一緒に混合した場合(100μg/mLの終濃度の総IgG)、環状AMP濃度は、緩衝液の存在下で観察されたレベル未満には低減されなかった(つまり、基礎又は構成的活性レベルより低くはない)。比較して、M22 IgG(3ng/mL)刺激活性の本質的に完全な阻害は、1μg/mLの5C9 IgG又は1μg/mLのK1−70 IgGで観察され(それぞれ、97.1%及び96.6%阻害)、0.1μg/mLの5C9 IgG又は0.1μg/mLのK1−70 IgGでの阻害は、それぞれ92.8%及び75.5%だった(表6j)。しかしながら、5C9及びK1−70を一緒に混合して、0.1μg/mLの最終総IgG濃度にした場合、91.9%阻害が観察された(表6j)。K1−18 IgG刺激活性に対する、K1−70 IgG及び9D33 IgG混合物の効果は、表6kに示されている。9D33 IgGの場合は、1μg/mLで95%阻害が観察されたが、K1−70 IgGは0.1μg/mLで同じ阻害(95%阻害)を示した。しかしながら、2つの阻止性MAb(9D33及びK1−70)を一緒に混合して、0.1μg/mLの最終総IgG濃度にした場合も、95%阻害が観察された(表6k)。9D33 IgGは、10μg/mLでM22 IgG環状AMP刺激を本質的に完全に阻害することができたが(94%阻害)、K1−70 IgG(1μg/mL)は、より低い濃度で同様の効果(96%阻害)を示した(表6l)。M22活性の本質的に完全な阻害は(96%の阻害)は、1μg/mLの9D33及びK1−70混合物で明白だった(表6l)。これは、TSH刺激活性に対する9D33及びK1−70混合物(1μg/mL)の阻害効果と同等である(97%阻害)(表6m)。しかしながら、TSH刺激活性は、9D33
IgG単独(100μg/mLで95%阻害)によるよりも、K1−70 IgG単独(1μg/mLで98%阻害)によって、より効果的に阻害されたことは注目されるべきである(表6m)。表6nは、TSH、M22 IgG、及びK1−18 IgGのTSHR刺激活性に対する、リンパ球供与体血清及び阻止活性を有するTRAbを含有する3つの患者血清(B1〜B3)の効果を示す。供与体血清は、TSH、M22 IgG、及びK1−18 IgG刺激活性を阻害した(それぞれ、63.8%、80.1%、及び79.5%阻害)。TSH及びM22 IgG刺激に対する強力な阻害効果を示した阻止性TRAbを有する3つの異なる血清も、K1−18 IgGの刺激活性を阻害した(表6n)。TSH、M22 IgG、又はK1−18 IgGの刺激活性に対する、これら異なる患者血清の阻害効果は同等だった。
【0077】
アンタゴニスト(阻止)活性の測定
TSHRを発現するCHO細胞を3ng/mLのブタTSHと共にインキュベーションすることにより、62.6±3.9pmol/mLまでの環状AMP産生の刺激が引き起こされた(表7a)。増加する量のK1−70 IgGの存在下では、ブタTSHの刺激活性は、用量依存的な様式で阻害された。特に、0.01、0.05、0.1、及び1μg/mLのK1−70 IgGの存在下では、環状AMPのレベルは、それぞれ60.1±1.6、31.4±1.9、5.8±2.8、及び2.0±0.2pmol/mLであり、これは、対照MAb IgG(5B3)の効果と比べて、それぞれ4.0%、49.8%、90.7%、及び96.8%阻害に相当する(表7a)。表7aは、比較のため、5C9 IgGの阻害効果も示す。2つの異なる実験条件下におけるブタTSHの刺激活性に対するK1−70 Fabの効果は、表7bに示されている。1μg/mLのK1−70 Fabの存在下では、ブタTSH刺激活性は、両条件下で(つまり、等張性培地中
及び低張性培地中で)本質的に完全に阻害された。K1−70 Fabの効果は、研究された濃度範囲(0.003μg/mL〜3μg/mL)で用量依存的であり、わずか0.05μg/mLのFabが、1μg/mLの対照MAbの存在下で(等張性条件下で)、ブタTSH刺激を39.5±1.9 pmol/mLから28.9±1.1pmol/mLの環状AMPへと低減する能力を示した(表7b)。低張性条件下でのK1−70 Fabの効力は、等張性条件下で観察された効力に類似していた(表7b)。K1−70 IgGは、濃度を増加させても(0.001〜100μg/mLの範囲)、表7cに示されている例により示されているように、TSHRの構成的(基礎)活性を阻害するいかなる能力も示さなかった。これは、比較のために表7cで示されているように、5C9 IgGの効果とは対照的である。同じ実験で試験された阻止性マウス抗体9D33は、TSHR構成的活性に影響を及ぼす能力を示さず(表7c)、いくらか弱い刺激活性(基礎活性の約2倍)が、高濃度の9D33で観察された。
【0078】
K1−70 IgGの阻止活性を、表7dに示されているように、リンパ球供与体血清の阻止活性と比較した。1ng/mLのブタTSHと共にインキュベーションした後の環状AMPレベルは、61.7±4.3pmol/mLであり、このレベルは、供与体血清(10倍希釈)の存在下では、14.9±1.2pmol/mL(75.9%阻害)に低下し、20倍希釈の血清では51.6±2.6pmol/mLに低下した(16.4%阻害)。より高い希釈の供与体血清は、TSH刺激活性に対して検出可能な効果を示さなかった。供与体血清の効果は、0.1μg/mLで10倍希釈血清と同様の効果を示したK1−70 IgGの効果と比較することができる(それぞれ、67.6%及び75.9%阻害)(表7d)。K1−70 IgGは、表7eの例により示されるように、ブタTSH、ヒトTSH、及びヒト組換えTSHの環状AMP刺激活性を阻止する能力を示した。0.1μg/mLのK1−70 IgGは、低張性培地条件下で試験された3つのTSH調製物全ての刺激活性の効果的な阻止物質だった。K1−70 IgGの阻止活性は、等張性培地条件下ではそれほど効果的ではなかった(表7e)。TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP産生のM22 IgG媒介性刺激に対するK1−70 IgGの効果は、表7fに示されている。3ng/mLのM22 IgGで観察された環状AMPレベルは、33.1±1.8pmol/mLであり、これらは、K1−70 IgGの存在下では、例えば、0.1μg/mLで4.3±2.4pmol/mLに減少した(87%阻害)(表7f)。K1−70 IgGの効果は、同じ実験で試験された5C9 IgGの効果と同等であった(表7f)。更に、K1−70 IgGは、グレーブス病の患者に由来する血清中でTRAbの環状AMP刺激活性を阻止する能力を示し、表7g〜7kの例は、100μg/mL濃度のK1−70 IgGが、研究された15個の血清全てで刺激活性の完全な阻害を引き起こしたことを示す(T1〜T15の阻害は90.8%〜98.7%の範囲だった)。血清T1〜T15の刺激活性に対するK1−70 IgGの効果は、1つの血清、つまり、T11を除いて、同じ実験で試験された5C9 IgG及び9D33 IgGの効果と同等であった(表7j)。血清T11の刺激活性は、100μg/mLの5C9 IgGによりごく弱く阻害されたが(8.5%阻害)、100μg/mLのK1−70の存在下では、阻害は本質的に完全だった(95.1%阻害)(表7j)。T11の効果的な阻害(87.1%)は、100μg/mLの9D33でも観察された(表7j)。3つのグレーブス病血清(血清T11を含む)の刺激活性に対する、様々な濃度(0.01〜100μg/mL)の様々な阻止性MAbの効果は、表7l〜7nに、より詳細に示されている。これら実験は、5C9 IgGが効果をほとんど又は全く示さなかった血清T11の場合を除いて、K1−70 IgG、5C9 IgG、及び9D33
IgGが、ほんの0.1μg/mLの低濃度で効果的な阻害物質であることを示した(表7n)。表7oは、K1−70 IgG及び5C9 IgGが1つの実験で一緒に混合された場合、ブタTSH刺激が、この2つの阻止性MAbにより阻害されることを示す。これら実験により、この2つの阻止性MAbは、環状AMP産生のTSH刺激を阻害するそれらの能力を組み合わせると効果的だったことが示された。加えて、TSHR構成的活
性に対する、一緒に混合されたK1−70 IgG及び5C9 IgGの効果を試験した。表7c及び7pに示されているように、K1−70 IgGは、5C9 IgGとは対照的にTSHRの基礎活性に効果を示さなかった。K1−70及び5C9 IgGを一緒に混合して、2μg/mLの最終IgG濃度にすると、環状AMPレベルは、緩衝液のみが存在する場合の58.04±8.52pmol/mL(平均±SD、n=3)から、55.28±6.17pmol/mL(平均±SD、n=3)へとわずかに低下し、つまり4.8%阻害だった(表7p)。しかしながら、5C9 IgGを5B3 IgG(グルタミン酸デカルボキシラーゼに対する対照抗体)と混合して、2μg/mLの最終IgG濃度にすると、TSHR構成的活性は、基礎値の52.1%にまで阻害された(環状AMPレベル 27.78±2.96pmol/mL;平均±SD、n=3)(表7p)。これら実験により、K1−70 IgGの存在下では、5C9 IgGは、TSHR構成的活性の効果的な阻害物質として作用することができないことが示される。
【0079】
K1−18刺激活性に対するTSHR突然変異の効果
環状AMP産生の刺激に対するK1−18 IgGの効果を、以下のアミノ酸突然変異を有するTSHRを発現するCHO細胞を使用して試験した:Lys58Ala、Arg80Ala、Tyr82Ala、Glu107Ala、Arg109Ala、Lys129Ala、Phe130Ala、Phe134Ala、Lys183Ala、Asp203Ala、Arg255Asp(表8a〜k、及び表10の要約)。TSHRアミノ酸Lys58、Arg80、Tyr82、Glu107、Arg109、Lys129、Phe130、Phe134、及びAsp203のアラニンへの突然変異は、環状AMP産生を刺激するK1−18 IgGの能力に効果を示さなかった。環状AMP産生を刺激するK−18 IgGの能力は、突然変異Lys183Ala及びArg255Aspを含有するTSHRを発現するCHO細胞で完全に失われ、K1−18 IgGに応答した環状AMP濃度は、環状AMP緩衝液のみの存在下で観察された濃度と同様であった(表8i及び8k)。しかしながら、TSHに対する応答性は、Lys183Ala及びArg255Asp突然変異で保持された。更なる一連の実験で、K1−18 IgG環状AMP刺激活性に対する、TSHRの種々のアミノ酸の突然変異の効果を更に試験した(表14a〜14v、及び表16の要約)。TSHR残基Asp43、Ile60、Glu61、Thr104、His105、Lys250、Arg255、Thr257、Asp276、Ser281の突然変異(アラニンへの)は、環状AMP産生を刺激するK1−18 IgGの能力に効果を示さなかった。TSHR Asp151、Glu178、Lys209、Gln235、Glu251のアラニンへの突然変異は、K1−18 IgG刺激活性の小さな低減を引き起こしたが、これら突然変異は、TSH刺激活性にも効果を示し、従ってこれらTSHR残基との相互作用は、K1−18に特異的であるとは見なされなかった。対照的に、TSHR Glu157Ala、Lys183Asp、Tyr185Ala、及びAsp232Alaの突然変異は、環状AMPを刺激するK1−18 IgGの能力の喪失もたらした(野生型活性の20%未満;表14g、14i、14j、14m)。更に、Tyr206、Trp258、及びArg274がアラニンに突然変異されたTSHRを刺激するK1−18 IgGの能力は、野生型活性のおよそ40〜60%に低減された(表14k、14s、14t)。
【0080】
K1−70阻止活性に対するTSHR突然変異の効果
環状AMP産生のTSH刺激に対するK1−70 IgGの効果を、以下のアミノ酸のアラニンへの突然変異を有するTSHRを発現するCHO細胞を使用して試験した:Lys58、Arg80、Tyr82、Glu107、Arg109、Lys129、Phe130、Phe134、Lys183、及びAsp203。加えて、TSHR突然変異Arg255Aspの効果を試験した。(表9a〜k、及び表10の要約)。TSHRアミノ酸Arg80、Glu107、Lys129、Phe130、Phe134、及びAsp203のアラニンへの突然変異は、TSH刺激性環状AMP産生を阻害するK1−70
IgGの能力に効果を示さなかった。TSH刺激性環状AMP産生を阻害するK1−70の能力は、TSHR Lys58、Tyr82、Arg109、及びLys183のアラニンへの突然変異により低減された。突然変異Lys58Alaが、最も大きな効果を示し(表9a)、Arg109Ala、Lys183Alaと続き、Tyr82Alaが最も小さな効果を示した(それぞれ、表9e、9i、9c、及び表10)。しかしながら、研究された突然変異はいずれも、TSH刺激性環状AMP産生を阻止するK1−70 IgGの能力の完全な喪失を引き起こさなかった。更なる一連の実験で、K1−70 IgG阻止活性に対する、TSHRの種々のアミノ酸の突然変異の効果を更に試験した(表15a〜15v、及び表16の要約)。TSHRで形質移入されたCHO細胞でのTSH刺激性環状AMP産生を阻害するK1−70の能力は、TSHR Asp43、Thr104、His105、Asp151、Tyr185、Tyr206、Lys209、Asp232、Gln235、Glu251、Arg255、Thr257、Trp258、及びArg274のアラニンへの突然変異でも、突然変異Asp160Lys及びLys183Aspでも影響を受けなかった。TSHR Glu178及びSer281の突然変異(アラニンへの)は、TSHの刺激活性を阻止するK1−70 IgGに能力に小さな効果を示した(野生型活性の80〜100%;表15h及び15v)。TSHR Glu61、Lys250、及びAsp276のアラニンへの突然変異は、K1−70 IgG阻止活性に対してある程度の効果を引き起こし(野生型の60〜80%)(表15c、15o、15u)、TSHR突然変異Ile60Alaは、野生型活性の40〜60%までのK1−70 IgG阻止活性の低減を引き起こした(表15b)。
【0081】
TSHRに対する125I標識K1−70 IgG又はFab結合の阻害
TSHR被覆チューブに対する125I−K1−70 IgGの結合は、未標識K1−7
0 IgGにより用量依存的な様式で阻害され、0.003μg/mL、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLの濃度(HBD血清で希釈)で、阻害は、それぞれ10.2±2.4%、36.5±1.9%、84.4±0.8%、及び92.0±0.5%であった(表11a)。表11aに示されているように、125I−K1−7O
IgGの結合は、M22 IgG(HBD血清で希釈)によって非常に類意した様式で阻害され、0.003μg/mL、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL濃度で6.2%(二重重複測定の平均)、33.8±0.9%、84.6±1.1%、及び91.6±0.5%阻害であった。M22 Fabは、より低濃度で125I−K1
−7O IgG結合を阻害するより大きな効力を示し、0.003μg/mL、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL濃度(HBD血清中)で、16.7±6.0%、60.2±1.8%、89.9±01%、及び92.0±0.3%阻害であった(表11a)。また、K1−18 IgG及びFabは、用量依存的な様式でTSHRに対する125I−K1−70 IgG結合を阻害した(表11b)。0.03μg/mL
、0.3μg/mL、及び3μg/mL(HBD血清中)のK1−18 IgGの希釈物は、それぞれ20.0±1.9%、73.9±0.6%、及び91.0の±0.3%阻害を示し、0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL(HBD血清中)のK1−18 Fabは、それぞれ10.2±2.1%、60.9±1.1%、及び80.5±0.6%阻害を示した(表11b)。対照的に、より高い濃度の5C9 IgGが、125I−K1−70 IgG結合の阻害に必要とされ、15.4±3.4%阻害には1μ
g/mLが必要とされ、100μg/mLは、68.5±0.7%阻害を示した(表11a)。また、表11a及び11bは、アッセイ緩衝液中で、125I−K1−70結合に対
する種々のヒトMAbの効果を示す。効果は、希釈物をアッセイ緩衝で製作した場合、HBD血清と比較してより強力である。TSHRへの125I−K1−7O IgG結合に対
するTSHR刺激活性(TSMAb 1〜7)及びTSHR阻止活性(9D33)を有するTSHRに対する様々なマウスモノクローナル抗体の効果は、表11cに示されている。試験したTSMAbは全て、125I−K1−70 IgG結合を阻害する能力を示し、
100μg/mL濃度(HBD血清中)は、33.5±3.7%(TSMAb 3)〜5
9.6±0.6%(TSMAb 5)の範囲の阻害を引き起こした(表11c)。100μg/mL(HBD血清中)の9D33 IgGは、51.1±1.7%阻害を示した(表11c)。これらMAbをアッセイ緩衝液で希釈した場合、阻害%は、HBD血清と比較して、ある場合にはわずかにより高く、他の場合にはわずかにより低かった(表11c)。更なる実験により、TSHRに対する125I−k1−70 Fab結合も、K1−1
8 IgG、K1−18 Fab、M22 IgG、M22 Fab、K1−70 IgG、K1−70 Fab、及びマウスTSMAbにより、用量依存的な様式で効果的に阻害されたことが示された(表11d)。15.9%〜80.0%の範囲の125I−TSH
結合阻害活性を有する(TSHR被覆チューブアッセイで)TSHR自己抗体を含有するグレーブス病患者血清(n=20)も、TSHRに対する125I−K1−70 IgG又
はFab結合を阻害する能力を示した(それぞれ、19.2%〜77.6%及び、15.9%〜72.8%の範囲)(表11e)。試験された3つの未標識リガンドの阻害%は、各血清の場合、同等だった(表11e)。HBD血清(n=10)はいずれも、125I標
識TSH、K1−70 IgG又はFab結合に効果を示さなかった(表11e)。表11eは、TSHR刺激活性を有する2つの血清(S1及びS2)、及びTSHR阻止活性を有する2つの血清(B1及びB2)を使用した実験の例を示す。いずれのタイプの活性を有する血清も、125I標識TSH、K1−70 IgG又はFabを用量依存的な様式
で阻害し、様々なリガンドの結合を阻害する度合いは、各血清で同等であった(表11e)。
【0082】
TSHRに対するK1−18及びK1−70結合の動力学
TSHR(全長)被覆チューブに対する125I標識K1−70 IgG及びFabの結
合は、室温で、180分後に最大に達した(それぞれ、45.5%及び37.1%結合)。50%最大結合は、約35分後に生じた(図1a)。TSHR260被覆チューブに対する125I標識K1−70 IgG結合は、180分で36.2%達し、50%最大結合
は、60分間のインキュベーション後に観察された(図1b)。TSHR260に対する125I標識K1−70 Fab結合の時間的経過は、K1−70 IgGで観察された経
過と同様であり、60分間のインキュベーション後に37.3%の最大結合、およそ60分後に50%最大結合であった(図1c)。未標識K1−70 IgG若しくはFab、K1−18 IgG若しくはFab、M22 IgG(全て1mg/mL)、ブタTSH(100mU/mL)、又はアッセイ緩衝液を、TSHR(全長)被覆チューブに結合した125I−K1−70 IgG又は125I−K1−70 Fabのいずれかに添加することでは、180分間インキュベーションした後でさえ、検出可能な解離がもたらされなかった(図1d、1e、及び1f)。しかしながら、未標識M22 Fab(1mg/mL)を、TSHR被覆チューブに結合した125I−K1−70 IgG又は125I−K1−70
Fabに添加した後では、それぞれ、結合時の計数の41.2%及び27.9%が、180分のインキュベーション後に解離した(図1d及び1f)。TSHR260に結合した125I標識K1−70 IgGに対する、種々の未標識リガンドの解離効果は、図1g
に示されている。ブタTSH、M22 IgG、及びK1−18 IgGは効果を示さなかったが、M22 Fab及びK1−70 Fabは、30分間のインキュベーション後に、結合した125I標識K1−70 IgGのおよそ30%をTSHR260から解離さ
せ、その後解離は、更に最長180分間は増加しなかった(図1g)。K1−18 Fabは、図1hに示されているように、同様の効果を示した。TSHR260被膜チューブに対する125I−K1−70 Fab結合は、未標識K1−70 IgG、K1−18
IgG、M22 IgG(全て1mg/mL)、ブタTSH(100mU/mL)、又はアッセイ緩衝液と共にインキュベーションすることでは解離されなかった。未標識M22
Fab又はK1−70 Fab(1mg/mL)とのインキュベーションは、TSHR260に対する125I−K1−70 Fab結合の解離を引き起こした(それぞれ、58
.9%及び62%)(図1i)。TSHR被覆チューブに対する125I標識K1−18
IgGの結合は、室温で180分後に、全長TSHRで被覆したチューブの場合は、32
.7%の最大値に達し、TSHR260で被覆したチューブの場合には23.3%に達した(図1j)。50%最大結合は、全長TSHRの場合は、およそ45分後に、TSHR260の場合は、およそ50分後に観察された(図1j)。全長TSHR被覆チューブに結合した125I標識K1−18 IgGは、未標識ブタTSHとのインキュベーションに
よっては、わずかにしか解離されなかったが、未標識K1−18 IgG、M22 IgG、K1−70 IgG、K1−18 Fab、及びK1−70 Fabとのインキュベーションは、わずかにより大きな効果を示した(180分後におよそ25%解離)(図1k)。対照的に、M22 Fabは、60分間のインキュベーション後、全長TSHRに結合した125I−K1−18 IgGの29%解離を引き起こし、180分間のインキュ
ベーション後では、43%解離に増加した(M22 Fabと共に60分間及び180分間インキュベーションした後のそれぞれ24.5%及び19.8%と比較して、M22 Fabの非存在下では、結合した125I−K1−18 IgGは34.5%)(図1k)
。TSHR260被覆チューブに対する125I標識K1−18 IgG結合の場合、ブタ
TSHとのインキュベーションは、解離効果を示さなかった(図1l)。対照的に、未標識M22 Fab、K1−70 Fab、及びK1−18 Fabとのインキュベーションは、結合した125I−K1−18 IgGをTSHR260から解離させた。M22
Fab及びK1−70 Fabの存在下での解離は迅速だったが(30分間のインキュベーション後、およそ50%)、K1−18 Fabとのインキュベーションでは、50%解離は90分後に引き起こされた(図1l)。完全M22 IgG、K1−70 IgG、及びK1−18 IgGは、TSHR260から125I−K1−18 IgGを解離さ
せる能力がより劣っており、180分間のインキュベーション後に、およそ30%解離が観察された(図1l)。別々の一連の実験では、125I標識ブタTSHは、TSHR26
0被覆チューブに結合できなかったことが示された。全長TSHRで被覆されたチューブに対する125I−TSHの結合は、以前に記述されていた(Nakatake et al 2006、上記)。
【0083】
TSHR260−APに基づくELISAにおけるK1−18又はK1−70 IgGの効果
ELISAプレートウエルに固定化された全長TSHRと、液相中のTSHR260−APとの間に「架橋」を形成するK1−18 IgGの能力は、表12aに示されている例により示されている。OD405nm値は、K1−18 IgG(HBD血清で希釈)濃度の増加と共に、用量依存的な様式で増加した。特に、OD405nm値は、HBD血清のみが存在する場合の−0.002のOD405nmと比較して、0.005、0.05、0.5、10、及び100μg/mLのK1−18 IgGで、それぞれ0.013、0.191、0.511、0.660、及び0.706だった。K1−70 IgG(HBD血清で希釈)も、架橋ELISAでウエルに結合し、0.005、0.05、0.5、10、及び100μg/mLのK1−70 IgG濃度で、それぞれ0.045、0.290、0.661、0.738、及び0.794のOD405nm値を示した(表12a)。K1−18及びK1−70 IgGの効果は、表12aに示されているように、TSHR260−AP調製物に結合するM22 IgGの能力と比較することができる。このアッセイでは、増加する用量のM22 IgG(0.005μg/mL〜10μg/mLの範囲、HBD血清で希釈)は、増加する量のTSHRと結合し、OD405nm値は0.045〜0.796の範囲だった。MAbの希釈物を、HBD血清ではなくELISAアッセイ緩衝液で製作した場合、450nmの吸光度は、特に5C9の場合により高かった(表12a)。二価IgGがTSHRの2つの分子に結合する「架橋型」ELISAの原理を、表12bに示されている実験結果により更に検証した。TSHR(M22、5C9、K1−18、及びK1−70)に対するヒトMAbの完全IgGは、ELISAにおいて用量依存的な結合を示したが、同じMAbの一価Fab断片は、応答をほとんど又は全く示さなかった(表12b)。マウスTSMAb 1〜7も、表12cの例により示されているように、TSHR260−AP ELISAのウエルに結合した。OD40
5nmのシグナルは、10μg/mL濃度TSMAb 1〜7で、0.103〜0.561の範囲であった(表12c)。マウスTSHR阻止性MAb 9D33も、このアッセイ系で結合し、OD405nmのシグナルは、10μg/mLで0.481だった(表12d)。刺激活性を有するTRAbを含有する患者血清、つまりTSHRを発現するCHO細胞で環状AMP活性を刺激する能力を示した血清は、TSHR260−AP ELISAのウエルと反応した。表12eは、様々な希釈で試験された6つの異なる血清の例を示しており、OD405nmシグナルは、HBD血清中1/5希釈で0.407〜0.924の範囲であった。更に、阻止型TSHR自己抗体を有する患者由来の血清は、表12fの例により示されているように、TSHR260−AP ELISAのウエルに結合し、OD405nmシグナルは、HBD血清中1/10希釈で0.323〜0.896の範囲だった。表12gには、TSHR260−AP ELISAにおける患者血清の結合の、より多くの例が示されている。TSHR260−AP ELISAでのTRAb濃度は、NIBSC基準調製物90/672で作成した検量線から計算し、TSHR被覆チューブアッセイを使用して同じ血清中で測定されたTRAb濃度と比較した(NIBSC U/Lとして表されている)。TSHR260−AP ELISAを使用して行われたTRAb測定と、全長TSHRに対するTSH結合を阻害することにより行われたTRAb測定(被覆チューブアッセイ)との一致は全体的に良好であった(r=0.913、n=57)(図2a)。表12hは、患者血清TRAbが、ELISAプレートウエルに被覆されたTSHR260に対する、ペルオキシダーゼで標識されたM22 Fabの結合を阻害する能力を有することを示す。全長TSHRに対するM22 Fab結合の阻害に基づくアッセイでのTRAb測定値の比較は、TSHR260に対するM22 Fab結合の阻害に基づくアッセイの結果と良好に相関していた(r=0.761;n=56)(図2b)。他の比較データは、図2c及び2dに示されている。抗体の結合に対するTSHR
R255突然変異の効果を、TSHR260−AP ELISAで試験した。これら実験では、突然変異R255Dを含有するTSHRの全長調製物を、プレートウエルに被覆し、上述の標準的プロトコールを使用してELISAを実施した。表12iに示されているように、K1−70 IgG又は9D33 IgGの結合は、TSHR R255D突然変異により、ほんのわずかに影響を受けたに過ぎなかった。対照的に、M22 IgG結合は、TSHR R255D突然変異により著しい影響を受け、ODシグナルは、研究された全ての濃度で低減された(表12i)。TSHR R255D突然変異は、突然変異受容体を使用したアッセイでは、より高い濃度のK1−18 IgGにほとんど効果を示さなかったが、より低い濃度(0.1μg/mL以下)は、効果がはるかにより低かった(表12i)。また、表12jは、TSHR R255D被覆プレートを使用した場合、野生型TSHRと比較して、10個のグレーブス病血清(TSHR刺激活性又は阻止活性について選択されなかった)のOD405nmシグナルが低減されたことを示す。シグナルの低減の度合いは、異なる血清で異なっていた(表12j)。患者TSHR阻止性血清は、TSHR260−AP ELISAでウエルに結合し(表12f)、TSHR R255Dに対する同じ血清の結合は、表12kに示されている。野生型TSHR及びR255D突然変異TSHRの実験におけるOD405nmシグナル値は類似しており、結果的に、阻止性血清の結合に対するTSHR R255D突然変異の効果は、このアッセイ系では明確には現れない。TSHR260−AP ELISAでの患者阻止性血清の結合に対するR255D突然変異の効果は、甲状腺刺激活性を有する患者血清の結合に対する同じ突然変異の効果と比較することができる。表12lは、TSHR R255Dに対する6つの刺激性血清(S1〜S6血清は、表12eと同じである)の結合を示す。6つの血清全ての場合で、TSHR R255Dを用いたアッセイでのOD405nm値は、野生型TSHRと比較してより低かった。シグナル低減の度合いは異なっており、血清S4、S5、及びS6(HBD貯溜血清で1:5希釈)の場合、シグナルは、野生型TSHRを用いた実験での0.646、0.407、及び0.531から、TSHR R255Dを用いた実験での0.193、0.133、及び0.342にそれぞれ低下した(表12l)。高レベルのTRAbを有する血清の場合のOD405nm値の低減(表12e及び
12lの血清S1〜S3)は、より高い血清希釈で明らかに明白だった。例えば、血清S1、S2、及びS3(HBD貯留で1:20希釈)の場合、野生型TSHRを用いた実験での0.583、0.407、及び0.453のOD405nmシグナルは、TSHR R255Dを用いた実験での0.193、0.117、及び0.210にそれぞれ明らかに低減した。表12k及び12lに示されている例は、ある場合には、TSHR刺激活性を有する血清は、R255D突然変異を含有するTSHRに対する結合の差異に少なくとも基づいて、TSHR阻止活性を有する血清と区別することができることを示唆する。刺激活性を有する患者血清の結合は、この突然変異により影響を受ける傾向があるが、阻止活性を有する患者血清の結合には、その傾向がない。
【0084】
様々なTSHR調製物の温度安定性
温度安定性実験では、全長TSHRに対するM22 Fab−ペルオキシダーゼの結合の、ELISAにおけるOD450nm値は、(a)−80℃で保管された調製物(未処理)、(b)室温で24時間インキュベートした後で−80℃に戻された調製物、(c)室温で48時間インキュベートした後で−80℃に戻された調製物の場合、それぞれ1.748、0.268、及び0.126だった。結果的に、48時間及び24時間室温で保管された全長TSHR調製物は、未処理調製物と比べて、それぞれ7%及び15%の活性しか示さなかった。M22 Fab−ペルオキシダーゼ結合のOD450nm値は、未処理TSHR260の場合は2.293であり、24時間及び48時間室温で保管されたTSHR260の場合は、それぞれ1.836及び1.676だった。室温で24時間及び48時間保管されたTSHR260の活性は、未処理調製物に比べて、それぞれ80%及び73%だった。同様の結果は、TSHR260−APの場合に観察され、OD450nmは、未処理試料の場合の2.395と比較して、室温で24時間及び48時間保管された試料の場合、それぞれ2.106及び1.983だった。これは、未処理TSHR260−APと比較して、24時間及び48時間の室温保管後では、結合活性が88%及び83%だったことを表した。未処理TSHR LRD C−CAPを用いた実験では、OD450nmは、1.826であり、24時間及び48時間の室温保管後では、それぞれ1.158及び1.155だった。TSHR LRD C−CAPは、未処理調製物と比べて、室温で24時間及び48時間の保管後に63%の活性を示した。上述の実験は、M22に結合するTSHR260、TSHR260−AP、及びTSHR LRD C−CAPの能力が、室温保管処理後に、全長TSHR調製物より大きかったことを示した。これは、TSHR260、TSHR260−AP、及びTSHR LRD C−CAPが、全長TSHRと比較して室温でより安定していることを示す。
【0085】
可変領域配列
K1−18をコードする遺伝子の配列分析は、HC V領域遺伝子が、VH5−51*01ファミリーに由来し、D遺伝子は、D3−16*02(又はD3−16*01)ファミリーに由来し、JH遺伝子は、J3*02ファミリーに由来していたことを示した。LCの場合、V領域遺伝子は、V3−20*01ファミリーに由来し、J領域遺伝子は、JK−1*01生殖細胞系に由来していた。HCヌクレオチド及びアミノ酸配列は、図3(配列番号1〜18)に示されており、LCヌクレオチド及びアミノ酸配列は、図4(配列番号19〜36)に示されている。HC遺伝子配列には、生殖細胞系配列と比較して体細胞突然変異;特に、CDR1における1つのサイレント突然変異及び1つの置換突然変異、CDR2における1つのサイレント突然変異及び3つの置換突然変異、FRW3における3つの置換突然変異、並びにCDRにおける1つのサイレント突然変異及び1つの置換突然変異が存在する。CDRの置換突然変異/沈黙突然変異(R/S)比は2.7であるが、これら突然変異に加えて、CDR3に8塩基対長の挿入が存在する。HC CDR1(配列番号6及び16)は、5アミノ酸長であり、CDR2(配列番号7及び17)は、17アミノ酸長であり、CDR3(配列番号8及び18)は、13アミノ酸長である(それぞれ、図3b及び3d)。LC配列には、CDR1に2つの置換突然変異、FWR2に
1つのサイレント突然変異、及びCDR3に3つの置換突然変異が存在しており、全体のR/S突然変異比は、5.0である(FWR及びCDR)。LC CDR1(配列番号24及び34)は、12個のアミノ酸で構成されており、CDR2(配列番号25及び35)は、7個のアミノ酸で構成されており、CDR3(配列番号26及び36)は、9個のアミノ酸で構成されている(それぞれ、図4b及び4d)。K1−70 HC V領域は、VH5−51*01生殖細胞系に由来し、D遺伝子は、D1−7*01ファミリーに由来し、JH遺伝子はJ4*02ファミリーに由来する。LC遺伝子は、LJ7*01に由来するJL遺伝子と組み合わされたLV1−51*01生殖細胞系に由来する。このHCヌクレオチド及びアミノ酸配列は、図5(配列番号37〜54)に示されており、好ましいLCヌクレオチド及びアミノ酸配列は、図6c及び6d(配列番号63〜72)に示されている。K1−70 HC配列には、FWR1に3つの置換突然変異、CDR1に3つの置換突然変異、FWR2に1つの置換突然変異、CDR2に2つのサイレント突然変異、FWR3に4つの置換突然変異、及びFWR4に1つの置換突然変異が存在する。全体の(FWR及びCDR)R/S突然変異比は、6.0である。加えて、CDR3には2つの挿入;V遺伝子とD遺伝子との間の接合部にある5塩基対の挿入、D遺伝子とJ遺伝子との間の接合部にある12塩基対の挿入が存在する(図5b及び5d;配列番号41及び51)。HC CDR1(配列番号42及び52)は、5アミノ酸長であり、CDR2(配列番号43及び53)は、17アミノ酸長であり、CDR3(配列番号44及び54)は、10アミノ酸長である(それぞれ、図5b及び5d)。K1−70 LC遺伝子は、FWR1に1つのサイレント突然変異、FWR2に1つのサイレント突然変異及び1つの置換突然変異、及びFWR3に1つの置換突然変異を示す。CDR1に1つのサイレント突然変異及び2つの置換突然変異、並びにCDR3に2つの置換突然変異が存在する。全体の(FWR及びCDR)R/S突然変異比は、2.0である。加えて、LC V遺伝子とJ遺伝子との間には2塩基対の挿入がある。LC CDR1(配列番号70)は、13個のアミノ酸で構成されており、CDR2(配列番号71)は、7個のアミノ酸で構成されており、CDR3(配列番号72)は、11個のアミノ酸で構成されている(図6d)。
【0086】
K1−70 Fabの構造
Fab K1−70の構造を、2.22Åの分解能で決定した(図8)。ラマチャンドランプロットパラメーター及び精密化統計値は、妥当な構造精密化に許容される範囲内にあった。非対称単位は、2つの完全なFab K1−70分子、Fab A及びFab Bを含有している。Fab Aは、重鎖A及び軽鎖Bを含有し、Fab Bは、重鎖C及び軽鎖Dを含有している。2つのFab分子は、肘角度が異なるため(Fab A=145.5°、Fab B=163.1°)、非結晶学的対称性では関連付けられない。この構造の主鎖電子密度に破綻はないが、末端にある幾つかの残基は見当らない。Fab Aでは、重鎖A及び軽鎖Bは、それぞれ残基1〜227及び4〜211で構成されており、Fab Bでは、重鎖C及び軽鎖Dは、それぞれ残基1〜227及び2〜212で構成されている。Fab A及びFab Bの残基は、カバット方式(KabatEetal1991、上記)に従って付番されている。詳細は、図8及び9aを参照されたい。電子密度は、重鎖Aの残基1、58、129、及び213の側鎖;軽鎖Bの残基18、94、110、126、156、163、及び166の側鎖;重鎖Cの残基1、58、及び218の側鎖;並びに軽鎖Dの残基17、18、94、108、156、172、184、187、及び190の側鎖について観察することができなかった。電子密度図中にこれら側鎖が存在しないことは、主として、それらが結晶構造の溶媒接触可能領域に位置するため、高度に可動性であることを示す。LSQKAB(CCP4)を使用して計算したFabの2つの分子の標準偏差(r.m.s.d)は、VHドメイン(117個のCα原子)では0.20Åであり、VLドメイン(106個のCα原子)では0.23Åであり、CHドメイン(96個のCα原子)では0.22Åであり、CLドメイン(97個のCα原子)では0.29Åである。これは、たとえ2つのFab分子間の肘角度が異なっていても、ドメインそれ自
体は、最小限の相異を示していることを実証する。K1−70 Fabの構造は、標準的であり(図9a)、6つのCDRがとる標準的な構造は、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3の場合、それぞれ1、1、及び2であり、HC CDR1及びHC CDR2の場合、それぞれ1及び2Aである。HC CDR3は、配列及び立体構造における変異がより大きいため、いかなる標準クラスにも帰属されていない。ジスルフィド結合は、システイン残基LC23−LC88、LC134−LC194、HC22−HC92、HC142−HC208の間に存在する。K1−70 Fab LCの結晶構造では、CDR1は13残基長であり、LC CDR2は7残基長であり、LC CDR3は11残基長である。HC CDR1は、5個の残基で構成され、HC CDR2は17個の残基で構成され、HC CDR3は12個の残基で構成されている。構造を更に解析するために、LC CDR3 Arg94及びHC CDR2 Arg58の側鎖を加えた(これらの電子密度は、回折データセットに見当らなかった)。構造に関する下記の説明では、括弧中の値は、これら側鎖を含めて取得された値を指す。LC内には158個の水素結合があり、HC内には177個の水素結合がある。LCからの52(52)個の残基は、HCからの44(45)個の残基とのインターフェース接触に関与している。2つの鎖をそれらの相対位置に維持する7個の水素結合及び2個の塩橋が存在する。LC CDR1の溶媒接触可能表面積(ASA)は、525(485)Å2であり、LC CDR
2は508(508)Å2であり、LC CDR3は257(442)Å2であり、HC CDR1は120Å2であり、HC CDR2は759(842)Å2であり、HC CDR3は557(528)Å2である。K1−70 Fabの抗原結合部位表面の荷電アミ
ノ酸の分布を分析し、図9bに示す。結合部位の表面は、一方の側には負荷電残基が多く、他方の側には正荷電残基が多い。抗原結合表面にある酸性パッチには、LCからは残基:Asp27B(CDR1)、Asp50(CDR2)、Asp92(CDR3)が寄与しており、HCからは残基:Asp31(CDR1)、Asp54、及びAsp56(CDR2)、並びにAsp96(CDR3)が寄与している。塩基性パッチには、LCからは残基:Lys53及びArg54(CDR1)及びArg94(CDR3)が寄与しており、HCからは残基:Arg58(CDR2)及びArg101(CDR3)が寄与している。加えて、CDR領域外にあるLC Lys66も、表面の塩基性パッチに寄与している。全体として、K1−70の抗原結合表面にある正荷電区域は、主にLC残基で構成されており、負荷電区域はHC残基で構成されている。また、K1−70の抗原結合表面は、芳香族残基に富んでおり、HC及びLC CDRからの5個のチロシン、1個のフェニルアラニン、及び3個のトリプトファンがある(図9c)。加えて、FRW領域からの4個のチロシン及び1個のフェニルアラニンが、表面区域に寄与している。K1−70抗原結合区域の表面は、全体的に高度に不規則であり、中心付近にくぼみがある。このくぼみは、主に芳香族残基及びLC Asp50に囲まれている(図9b及び9c)。更に、くぼみの内部も芳香族残基により占められている。これは、芳香族の接触が、K1−70とTSHRとの間の相互作用に重要であり、TSHR表面の突出した芳香族残基が、K1−70表面のくぼみに「嵌合」する可能性を示唆する。
【0087】
組換えK1−70 Fab
表17aは、大腸菌培養上清中の組換えK1−70 Fabが、TSHRに対する125
I−TSH結合を阻害する能力を有していたことを示す。阻害効果は、より低希釈の培養上清で完全であるが(1:2希釈で91.9%)、上清の希釈を増加させることにより、用量依存的な阻害効果が引き起こされた(1:256希釈で27.9%阻害)(表17a)。TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP産生のTSH媒介性刺激に対するK1−70 Fabの効果は、表17bに示されている。培養上清の様々な希釈物は、1:5希釈で89.3%阻害から1:40希釈で39.7%阻害まで、環状AMP刺激の用量依存的阻害を示した(表17b)。非誘導大腸菌培養に由来する対照培養上清は、TSH結合の検出可能な阻害、又はTSH媒介性環状AMP刺激の阻害をもたらさなかった(表17a&b)。
【0088】
要約及び結論
上述の実験は、非常に異なる生物活性を有する、TSHRに対する2つのモノクローナル自己抗体(K1−18 刺激性、K1−70 阻止性)を、患者のリンパ球の単一調製物から単離することができることを示す。結果的に、患者の免疫系は、両タイプのTSHR自己抗体、つまり刺激型及び阻止型を同時に産生していた。モノクローナル自己抗体の形態で単離されれば(上述のように)、2つのタイプのTSHR自己抗体の特性を、互いからの干渉を受けずに調査することができる。TSHR刺激活性を有する新しいヒトMAb(K1−18)の特徴を記述し、他の幾つかの公知のTSHR MAbの特徴と比較した。具体的には、刺激性ヒトMAb(M22)、阻止性ヒトMAb(5C9)、阻止性ヒトMab(K1−70)、阻止性マウスMAb(9D33)、及びマウス阻止性MAb(TSMAb 1〜7)の特徴である。また、TSHアンタゴニスト活性を有する新しいヒトMAb(K1−70)の特徴を記述し、公知のMAbの特徴と比較した。具体的には、阻止性ヒトMAb(5C9)、阻止性マウスMAb(9D33)、刺激性ヒトMAb(M22)、刺激性ヒトMAb(K1−18)、及びマウス刺激性MAb(TSMAb 1〜7)の特徴である。新しいヒト刺激性TSHR MAb K1−18が、TSHRに対する未標識TSHの結合の阻害、TSHRに対する互いの結合の阻害、TSHRに対する阻止性ヒトMAb(5C9及びK1−70)の結合の阻害、マウス阻止性及び刺激性MAb(9D33及びTSMAb 1〜7)の結合の阻害の点で、M22と類似した特性を有することが示された。また、患者血清TRAbは、TSHRに対するK1−18の結合を阻害した。更に、M22及びK1−18は、両方とも高親和性でTSHRに結合し、アルカリホスファターゼに結合されたアミノ酸22〜260で構成されるTSHR断片に結合することができる。M22及びK1−18等の抗体は、TSHR環状AMP活性を刺激する能力を有するが、2つの抗体の効力は約1.5倍異なる。本研究は、異なる患者のTSHR刺激性自己抗体の特性が類似しており、それらが、これまで研究されているグレーブス病の患者全てのTSHR刺激性自己抗体の特性を代表することを示す。K1−18の特徴の要約は、表13aに示されている。本発明者らの実験は、新しい阻止型ヒトMAb K1−70(刺激性MAb K1−18と同じリンパ球試料から取得された)が、TSHRに対する未標識TSHの結合を阻害する能力、TSHRに対するヒトMAb(M22、K1−18、及び5C9)の結合を阻害する能力、TSHRに対するマウス阻止性及び刺激性MAb(9D33及びTSMAb 1〜7)の結合を阻害する能力を有することも示した。更に、TSHRに対するK1−70の結合は、患者血清TRAbにより阻害された。K1−70は、強力なTSHアンタゴニスト活性、及び試験した全ての患者血清TRAbによるTSHRの刺激を阻止する能力を示した。K1−70は、5C9よりも効果的な、TSHRに対するTSH結合の阻害物質であることが示された。K1−70は、高親和性でTSHRに結合し、アルカリホスファターゼに結合されたアミノ酸22〜260のTSHR断片に結合することができる。結果的に、K1−70は、TSHRに対する高い結合親和性、TSHRに対するTSH及びM22結合を阻害する能力、及び低濃度の抗体でリガンド誘導性TSHR刺激を阻止する能力を含む、阻止性TRAbを有する患者血清の特徴を有する。しかしながら、K1−70は、TSHR構成的活性に影響を及ぼさず、その一方で5C9は影響を及ぼす。K1−70特徴の要約は、表13bに示されている。TSHRを発現するCHO細胞での環状AMP活性を刺激するK1−18の能力は、TSHRが、Glu157Ala、Lys183Ala、Tyr185Ala、Asp232Ala、又はArg255Aspの突然変異を起こしている場合に失われた。TSHRを発現するCHO細胞でのTSH媒介性環状AMP活性を阻止する1−70の能力は、TSHR突然変異Lys58Ala、Ile60Ala、Arg109Ala、Lys183Ala、Lys250Alaの場合に低減され、TSHR突然変異Tyr82Alaによりわずかに低減された。K1−18及びK1−70の両方並びにM22は、TSHR260−APに基づくELISAで、22〜260のTSHR断片と良好に反応した。更に、一群の患者血清TSHR自己抗体は、同じアッセイで、TSHRアミノ酸22〜260と良好
に反応した。いずれのタイプのTRAb活性(刺激性及び阻止性)を有する患者血清も、ELISAにおいてTSHR260と結合した。加えて、アミノ酸22〜260のTSHR断片で被膜されたELISAプレートウエルは、M22−ペルオキシダーゼ(RSR Ltd社製)と良好に結合し、このM22−ペルオキシダーゼ結合は、一群の患者血清TSHR自己抗体により阻害された。患者血清TSHR自己抗体によるM22−ペルオキシダーゼ結合のこの阻害は、全長TSHRに対するM22−ペルオキシダーゼ結合の阻害と類似していた。驚くべきことに、従って、アミノ酸22〜260のTSHR断片(又は恐らくはより小さな断片)は、TSHR自己抗体の日常的アッセイに十分であると考えられる。更に、M22は、TSHR(TSHR LRD C−CAP)のより長い断片にも良好に結合した。安定性研究では、TSHR260、TSHR260−AP、及びTSHR
LRD C−CAPに結合するM22の能力は、それらが室温で予めインキュベートされた後では、同じ条件下で予めインキュベートされた全長TSHR調製物よりも、大きかった。これは、TSHR260、TSHR260−AP、及びTSHR LRD C−CAPが、全長TSHRと比較して、室温でより安定していることを示す。TSHR突然変異Arg255Aspは、K1−70 IgGの結合に効果を示さなかったが、K1−18 IgG(より低濃度の、つまり0.1μg/mL以下)は、突然変異受容体にそれほど効果的に結合しなかった。様々な患者血清TRAbを用いた実験により、TSHR刺激活性を有する血清を、R255D突然変異を含有するTSHRに対する結合の差異に基づいて、TSHR阻止活性を有する血清と区別することができることが示唆される。刺激活性を有する患者血清の結合は、この突然変異により影響を受けるが、阻止活性を有する患者血清の結合は、それほど又は全く影響を受けない。本実験は、K1−18及びK1−70のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を提供する。K1−18、K1−70の重鎖V遺伝子は、他の刺激性ヒトMAb M22重鎖V遺伝子と同じファミリーに属する同じ生殖細胞系に由来するが、それらは全て、異なるファミリーに由来するD及びJ遺伝子と組み合わせられており、更に、K1−18ではカッパ軽鎖が使用されているが、M22及びK1−70ではラムダ軽鎖が使用されている。5C9(別の阻止型ヒトMAb)生殖細胞系遺伝子は、5C9及びK1−70ではJ4重鎖遺伝子が使用されていることを除いて、M22、K1−18、及びK1−70とは異なる。刺激性MAb(M22及びK1−18)及び阻止性MAb(5C9及びK1−70)のCDRのアミノ酸配列は、特に重鎖及び軽鎖CDR3内で本質的に異なる。これら観察は、4つのヒト自己抗体の各々が別々の生殖細胞系に由来することを示している。また、異なるCDR配列が、TSHRに対して同様の生物活性を示す場合がある。X線回折データは、抗原結合部位のトポグラフィーを含むK1−70 Fab構造の分子的詳細を提供する。K1−70 HC(配列番号46)及びK1−70 LC(配列番号64を有する配列番号63)の大腸菌でのクローニング及び発現により産生された組換えK1−70 Fabは、TSHRに対する125I標識TS
H結合を阻害する能力、及びTSHR環状AMP活性のTSH媒介性刺激を阻害する能力を示した。全体として、本結果は、K1−18及びK1−70等の本発明による抗体が、以前に記述されているTSHR MAb(M22及び5C9)、及び自己免疫性甲状腺疾患を有する患者に由来する様々な血清に見出されるTSHR自己抗体と同様のTSHR結合活性及びTSHR機能に対する同様の生物学的効果を有することを示している。
【0089】
【表1a】
【0090】
【表1b】
【0091】
【表2a】
【0092】
【表2b】
【0093】
【表2c】
【0094】
【表3a】
【0095】
【表3b】
【0096】
【表3c】
【0097】
【表3d】
【0098】
【表4a】
【0099】
【表4b】
【0100】
【表4c】
【0101】
【表5a】
【0102】
【表5b】
【0103】
【表5c】
【0104】
【表5d】
【0105】
【表6a】
【0106】
【表6b】
【0107】
【表6c】
【0108】
【表6d】
【0109】
【表6e】
【0110】
【表6f】
【0111】
【表6g】
【0112】
【表6h】
【0113】
【表6i】
【0114】
【表6j】
【0115】
【表6k】
【0116】
【表6l】
【0117】
【表6m】
【0118】
【表6n】
【0119】
【表7a】
【0120】
【表7b】
【0121】
【表7c】
【0122】
【表7d】
【0123】
【表7e】
【0124】
【表7f】
【0125】
【表7g】
【0126】
【表7h】
【0127】
【表7i】
【0128】
【表7j】
【0129】
【表7k】
【0130】
【表7l】
【0131】
【表7m】
【0132】
【表7n】
【0133】
【表7o】
【0134】
【表7p】
【0135】
【表8a】
【0136】
【表8b】
【0137】
【表8c】
【0138】
【表8d】
【0139】
【表8e】
【0140】
【表8f】
【0141】
【表8g】
【0142】
【表8h】
【0143】
【表8i】
【0144】
【表8j】
【0145】
【表8k】
【0146】
【表9a】
【0147】
【表9b】
【0148】
【表9c】
【0149】
【表9d】
【0150】
【表9e】
【0151】
【表9f】
【0152】
【表9g】
【0153】
【表9h】
【0154】
【表9i】
【0155】
【表9j】
【0156】
【表9k】
【0157】
【表10】
【0158】
【表11a】
【0159】
【表11b】
【0160】
【表11c】
【0161】
【表11d】
【0162】
【表11e】
【0163】
【表12a】
【0164】
【表12b】
【0165】
【表12c】
【0166】
【表12d】
【0167】
【表12e】
【0168】
【表12f】
【0169】
【表12g】
【0170】
【表12h】
【0171】
【表12i】
【0172】
【表12j】
【0173】
【表12k】
【0174】
【表12l】
【0175】
【表13a】
【0176】
【表13b】
【0177】
【表14a】
【0178】
【表14b】
【0179】
【表14c】
【0180】
【表14d】
【0181】
【表14e】
【0182】
【表14f】
【0183】
【表14g】
【0184】
【表14h】
【0185】
【表14i】
【0186】
【表14j】
【0187】
【表14k】
【0188】
【表14l】
【0189】
【表14m】
【0190】
【表14n】
【0191】
【表14o】
【0192】
【表14p】
【0193】
【表14q】
【0194】
【表14r】
【0195】
【表14s】
【0196】
【表14t】
【0197】
【表14u】
【0198】
【表14v】
【0199】
【表15a】
【0200】
【表15b】
【0201】
【表15c】
【0202】
【表15d】
【0203】
【表15e】
【0204】
【表15f】
【0205】
【表15g】
【0206】
【表15h】
【0207】
【表15i】
【0208】
【表15j】
【0209】
【表15k】
【0210】
【表15l】
【0211】
【表15m】
【0212】
【表15n】
【0213】
【表15o】
【0214】
【表15p】
【0215】
【表15q】
【0216】
【表15r】
【0217】
【表15s】
【0218】
【表15t】
【0219】
【表15u】
【0220】
【表15v】
【0221】
【表16】
【0222】
【表17a】
【0223】
【表17b】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TSHRに結合し、前記TSHRのリガンド誘導性刺激を低減するが、TSHR構成的活性に影響を及ぼさず、前記TSHRに対するTSH及びM22の結合を阻害するという患者血清TSHR自己抗体の特徴を有する単離されたヒト抗体分子。
【請求項2】
前記TSHRに対する結合親和性が、少なくとも108L/mol、好ましくは少なく
とも109L/molであること、及び1μg/mL未満、好ましくは0.1μg/mL
未満の抗体濃度でリガンド誘導性TSHR刺激を阻止することができることから選択される少なくとも1つの更なる患者血清TSHR自己抗体の特徴を有する、請求項1に記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項3】
TSH、甲状腺刺激自己抗体、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンのアンタゴニストである、請求項1又は2に記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項4】
TSH、M22、又はK1−18の少なくとも1つによるTSH受容体結合の阻害物質である、前記請求項のいずれかに記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項5】
モノクローナル抗体、組換え抗体、若しくは合成抗体、又はそれらの断片である、前記請求項のいずれかに記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項6】
図5b及び5dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号41及び51)から選択される抗体VHドメインを含み、好ましくは図5b及び5dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号41及び51)からなる抗体VHドメインを含む単離された抗体分子である、前記請求項のいずれかに記載の単離された抗体分子。
【請求項7】
図5b及び5d(それぞれ、配列番号42〜44及び52〜54)のCDRI、II、及びIIIから選択されるCDRを含み、好ましくは図5b及び5d(それぞれ、配列番号42〜44及び52〜54)のCDRI、II、及びIIIを含む単離された抗体分子である、前記請求項のいずれかに記載の単離された抗体分子。
【請求項8】
図6dのアミノ酸配列(配列番号69)から選択される抗体VLドメインを含み、好ましくは図6dのアミノ酸配列(配列番号69)からなる抗体VLドメインを含む単離された抗体分子である、前記請求項のいずれかに記載の単離された抗体分子。
【請求項9】
図6d(配列番号70〜72)のCDRI、II、及びIIIから選択されるCDRを含み、好ましくは図6d(配列番号70〜72)のCDRI、II、及びIIIを含む単離された抗体分子である、前記請求項のいずれかに記載の単離された抗体分子。
【請求項10】
ヒト又は非ヒトのフレームワークを有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の単離された抗体分子又はその断片。
【請求項11】
TSHRに結合して前記TSHRを刺激する単離された抗体分子であって、図4b及び4dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号23及び33)から選択される抗体VLドメインを含み、並びに/又は図4b(配列番号24〜26)及び4d(配列番号34〜36)のCDRI、II、及びIIIから選択される1つ又は複数のCDRを含み、並びに/又は図3b(配列番号5)及び3d(配列番号15)のアミノ酸配列から選択される抗体VHドメインを含み、並びに/又は図3b(配列番号6〜8)及び3d(配列番号16〜18)のCDRI、II、及びIIIから選択される1つ又は複数のCDRを含む単離された抗体分子。
【請求項12】
前記TSHRに対する前記単離された抗体分子の結合が、甲状腺刺激又は阻止活性を有する患者血清TSHR抗体により阻害される、請求項11に記載の単離された抗体分子。
【請求項13】
前記TSHRに対する前記単離された抗体分子の結合が、M22、K1−70、5C9、9D33、及び甲状腺刺激性マウスモノクローナル抗体のうちの少なくとも1つにより阻害される、請求項11又は12に記載の単離された抗体分子。
【請求項14】
図4b(配列番号23)及び4d(配列番号33)のアミノ酸配列から選択される抗体VLドメイン、及び図3b(配列番号5)及び3d(配列番号15)のアミノ酸配列から選択される抗体VHドメインを含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の単離された抗体分子
【請求項15】
図3b(配列番号6〜8)又は3d(配列番号16〜18)のCDRI、II、及びIIIを含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の単離された抗体分子。
【請求項16】
図4b(配列番号23)又は4d(配列番号33)のアミノ酸配列からなる抗体VLドメインを含む、請求項14又は15に記載の単離された抗体分子。
【請求項17】
図3b(配列番号5)又は3d(配列番号15)のアミノ酸配列からなる抗体VHドメインを含む、請求項14、15、又は16に記載の単離された抗体分子。
【請求項18】
図4b(配列番号24〜26)又は4d(配列番号34〜36)のCDRI、II、及びIIIを含む、請求項16又は17のいずれか一項に記載の単離された抗体分子。
【請求項19】
モノクローナル抗体、組換え抗体、又は合成抗体である、請求項11〜18のいずれか一項に記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項20】
ヒト又は非ヒトのフレームワークを有する請求項11〜19のいずれか一項に記載の単離された抗体分子。
【請求項21】
a.請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は
b.図4b(配列番号23)、4d(配列番号33)、若しくは6d(配列番号69)のアミノ酸配列を含む抗体VLドメイン、又は
c.図3b(配列番号5)、3d(配列番号15)、5b(配列番号41)、若しくは5d(配列番号51)のアミノ酸配列を含む抗体VHドメイン、又は
d.図3b(配列番号6〜8)、3d(配列番号16〜18)、4b(配列番号24〜26)、4d(配列番号34〜36)、5b(配列番号42〜44)、5d(配列番号52〜54)、若しくは6d(配列番号70〜72)のCDRI、II、若しくはIII、又は
e.それらの組合せをコードする単離されたヌクレオチド。
【請求項22】
図3a(配列番号1)、3c(配列番号10)、4a(配列番号19)、4c(配列番号28)、5a(配列番号37)、5c(配列番号46)、又は6c(配列番号64)のヌクレオチド配列を含む、請求項21に記載の単離されたヌクレオチド。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の単離されたヌクレオチドを含むベクター。
【請求項24】
請求項21又は22に記載のヌクレオチド、又は請求項23に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子を含む医薬組成物。
【請求項26】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は請求項25に記載の医薬組成物の治療における使用。
【請求項27】
治療に使用するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子又は請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
TSHR抗体、TSH、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンの活性を特徴付けする方法であって、請求項1〜20のいずれかに記載の単離された抗体分子の使用を含むステップを含む方法。
【請求項29】
哺乳動物細胞の前記TSHRを刺激するin vitro法であって、前記細胞を、請求項11〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は請求項25に記載の医薬組成物と接触させることを含む方法。
【請求項30】
哺乳動物細胞の前記TSHRを刺激するin vivo法であって、前記細胞を、請求項11〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は請求項25に記載の医薬組成物と接触させることを含む方法。
【請求項31】
甲状腺癌及びその転移、多結節性甲状腺腫、並びに/又は先天性甲状腺機能低下症を有する対象体の細胞を、請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離された抗体、又は請求項25に記載の医薬組成物と接触させる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物細胞のリガンド誘導性TSHR刺激を防止するin vivo法であって、前記TSHRを、請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は請求項25に記載の医薬組成物と接触させることを含む方法。
【請求項33】
前記リガンドが、甲状腺刺激性自己抗体、TSH、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物細胞が、甲状腺細胞又は甲状腺外細胞である、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物甲状腺外細胞が、眼窩後方組織又は前脛骨組織にある、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記単離された抗体分子が、更なるTSHR結合抗体と組み合わせて使用される、請求項32〜35に記載の方法。
【請求項37】
前記更なるTSHR結合抗体が、5C9及び/又は9D33である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記TSHRに対する被検体自己抗体を検出するための診断法であって、そのような被検体自己抗体を含有すると考えられる対象体から単離された試料及び請求項1〜20のいずれか一項に記載の抗体分子を、TSHR又はその断片と接触させることを含む方法。
【請求項39】
前記被検体抗体を含有する試料を、前記TSHRのアミノ酸22〜260(配列番号75)を含むTSHR断片と接触させることを含む、前記TSHRに対する被検体抗体を検
出するための診断法。
【請求項40】
前記TSHR又はその断片が、アルギニン255で突然変異されており、そのため前記突然変異TSHR又はその断片が、被検体刺激型TSHR抗体と比較して、被検体阻止型TSHR抗体と優先的に相互作用する、請求項38又は39に記載の前記TSHRに対する被検体抗体を検出するための診断法。
【請求項41】
a.動物対象体に由来する体液試料を準備するステップと、
b.1つ又は複数の第1のTSHR供給源を準備するステップと、
c.1つ又は複数の第2のTSHR供給源を準備し、そのような第2のTSHR供給源が、TSHR260であるか又はアルギニン255が突然変異されているTSHR260であるステップと、
d.前記第1及び第2のTSHR供給源を、同時に又は順次に、前記体液試料と接触させ、それにより前記TSHRに対する抗体が、[第1のTSHR供給源]−[TSHR抗体]−[第2のTSHR供給源]を含む1つ又は複数の複合体を形成するステップと、
e.ステップ(d)の前に、又は同時に、又はその後で固定化手段を準備し、それにより、ステップ(d)で形成された複合体に存在する前記第1のTSHR供給源が、ステップ(d)の前に、又は同時に、又はその後で固体支持体に固定化されるステップと、
f.ステップ(d)の前に、又は同時に、又はその後で、直接的に又は間接的に検出可能な標識手段を準備し、それによりステップ(d)で形成された前記複合体に存在する前記第2のTSHR供給源が、そのような直接的又は間接的な標識手段を、ステップ(d)の前に、又は同時に、又はその後で備えるステップと、
g.(d)で形成された複合体の存在を(e)に従って検出し、前記体液試料にTSHR抗体が存在することの指標を提供するステップとを含む請求項39〜40に記載の診断法。
【請求項42】
(b)で準備される前記第1のTSHR供給源が、TSH受容体の1つ又は複数のエピトープ、又はTSH受容体の1つ又は複数のエピトープを含むポリペプチドを含む全長TSHRである、請求項41に記載の診断法。
【請求項43】
(b)で準備される前記第1のTSHR供給源が、TSH受容体の1つ又は複数のエピトープ、又はTSH受容体の1つ又は複数のエピトープを含むポリペプチドを含む全長TSHRであり、前記第1のTSHR供給源が、アルギニン255で突然変異されている、請求項41又は42に記載の診断法。
【請求項44】
TSHR260又はアルギニン255が突然変異されたTSHR260に対する被検体TSHR抗体の結合が、前記TSHR260又はアルギニン255が突然変異されたTSHR260に対する、直接的又は間接的に標識されたTSHR抗体又はその断片の結合を阻害することにより検出される、請求項39又は40に記載の診断法
【請求項45】
前記標識TSHR抗体が、モノクローナル抗体、組換え抗体、若しくは合成抗体、又はそれらの断片である、請求項44に記載の診断法
【請求項46】
TSHR260に対するTSHR自己抗体結合を防止する低分子を識別するための方法であって、少なくとも1つの候補低分子を含む試料の存在下で、TSHR260に対するTSHR自己抗体の結合の阻害を決定すること、及びTSHR自己抗体結合を阻害するそれら候補低分子を前記試料から選択することを含む方法。
【請求項47】
前記TSHR自己抗体が、モノクローナル抗体、組換え抗体、若しくは合成抗体、又はそれらの断片である、請求項46に記載の方法
【請求項48】
前記TSHRに対する前記TSHR自己抗体の結合が、請求項41、42、又は43のいずれか一項に記載の方法により検出される、請求項46に記載の方法。
【請求項1】
TSHRに結合し、前記TSHRのリガンド誘導性刺激を低減するが、TSHR構成的活性に影響を及ぼさず、前記TSHRに対するTSH及びM22の結合を阻害するという患者血清TSHR自己抗体の特徴を有する単離されたヒト抗体分子。
【請求項2】
前記TSHRに対する結合親和性が、少なくとも108L/mol、好ましくは少なく
とも109L/molであること、及び1μg/mL未満、好ましくは0.1μg/mL
未満の抗体濃度でリガンド誘導性TSHR刺激を阻止することができることから選択される少なくとも1つの更なる患者血清TSHR自己抗体の特徴を有する、請求項1に記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項3】
TSH、甲状腺刺激自己抗体、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンのアンタゴニストである、請求項1又は2に記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項4】
TSH、M22、又はK1−18の少なくとも1つによるTSH受容体結合の阻害物質である、前記請求項のいずれかに記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項5】
モノクローナル抗体、組換え抗体、若しくは合成抗体、又はそれらの断片である、前記請求項のいずれかに記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項6】
図5b及び5dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号41及び51)から選択される抗体VHドメインを含み、好ましくは図5b及び5dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号41及び51)からなる抗体VHドメインを含む単離された抗体分子である、前記請求項のいずれかに記載の単離された抗体分子。
【請求項7】
図5b及び5d(それぞれ、配列番号42〜44及び52〜54)のCDRI、II、及びIIIから選択されるCDRを含み、好ましくは図5b及び5d(それぞれ、配列番号42〜44及び52〜54)のCDRI、II、及びIIIを含む単離された抗体分子である、前記請求項のいずれかに記載の単離された抗体分子。
【請求項8】
図6dのアミノ酸配列(配列番号69)から選択される抗体VLドメインを含み、好ましくは図6dのアミノ酸配列(配列番号69)からなる抗体VLドメインを含む単離された抗体分子である、前記請求項のいずれかに記載の単離された抗体分子。
【請求項9】
図6d(配列番号70〜72)のCDRI、II、及びIIIから選択されるCDRを含み、好ましくは図6d(配列番号70〜72)のCDRI、II、及びIIIを含む単離された抗体分子である、前記請求項のいずれかに記載の単離された抗体分子。
【請求項10】
ヒト又は非ヒトのフレームワークを有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の単離された抗体分子又はその断片。
【請求項11】
TSHRに結合して前記TSHRを刺激する単離された抗体分子であって、図4b及び4dのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号23及び33)から選択される抗体VLドメインを含み、並びに/又は図4b(配列番号24〜26)及び4d(配列番号34〜36)のCDRI、II、及びIIIから選択される1つ又は複数のCDRを含み、並びに/又は図3b(配列番号5)及び3d(配列番号15)のアミノ酸配列から選択される抗体VHドメインを含み、並びに/又は図3b(配列番号6〜8)及び3d(配列番号16〜18)のCDRI、II、及びIIIから選択される1つ又は複数のCDRを含む単離された抗体分子。
【請求項12】
前記TSHRに対する前記単離された抗体分子の結合が、甲状腺刺激又は阻止活性を有する患者血清TSHR抗体により阻害される、請求項11に記載の単離された抗体分子。
【請求項13】
前記TSHRに対する前記単離された抗体分子の結合が、M22、K1−70、5C9、9D33、及び甲状腺刺激性マウスモノクローナル抗体のうちの少なくとも1つにより阻害される、請求項11又は12に記載の単離された抗体分子。
【請求項14】
図4b(配列番号23)及び4d(配列番号33)のアミノ酸配列から選択される抗体VLドメイン、及び図3b(配列番号5)及び3d(配列番号15)のアミノ酸配列から選択される抗体VHドメインを含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の単離された抗体分子
【請求項15】
図3b(配列番号6〜8)又は3d(配列番号16〜18)のCDRI、II、及びIIIを含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の単離された抗体分子。
【請求項16】
図4b(配列番号23)又は4d(配列番号33)のアミノ酸配列からなる抗体VLドメインを含む、請求項14又は15に記載の単離された抗体分子。
【請求項17】
図3b(配列番号5)又は3d(配列番号15)のアミノ酸配列からなる抗体VHドメインを含む、請求項14、15、又は16に記載の単離された抗体分子。
【請求項18】
図4b(配列番号24〜26)又は4d(配列番号34〜36)のCDRI、II、及びIIIを含む、請求項16又は17のいずれか一項に記載の単離された抗体分子。
【請求項19】
モノクローナル抗体、組換え抗体、又は合成抗体である、請求項11〜18のいずれか一項に記載の単離されたヒト抗体分子。
【請求項20】
ヒト又は非ヒトのフレームワークを有する請求項11〜19のいずれか一項に記載の単離された抗体分子。
【請求項21】
a.請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は
b.図4b(配列番号23)、4d(配列番号33)、若しくは6d(配列番号69)のアミノ酸配列を含む抗体VLドメイン、又は
c.図3b(配列番号5)、3d(配列番号15)、5b(配列番号41)、若しくは5d(配列番号51)のアミノ酸配列を含む抗体VHドメイン、又は
d.図3b(配列番号6〜8)、3d(配列番号16〜18)、4b(配列番号24〜26)、4d(配列番号34〜36)、5b(配列番号42〜44)、5d(配列番号52〜54)、若しくは6d(配列番号70〜72)のCDRI、II、若しくはIII、又は
e.それらの組合せをコードする単離されたヌクレオチド。
【請求項22】
図3a(配列番号1)、3c(配列番号10)、4a(配列番号19)、4c(配列番号28)、5a(配列番号37)、5c(配列番号46)、又は6c(配列番号64)のヌクレオチド配列を含む、請求項21に記載の単離されたヌクレオチド。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の単離されたヌクレオチドを含むベクター。
【請求項24】
請求項21又は22に記載のヌクレオチド、又は請求項23に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子を含む医薬組成物。
【請求項26】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は請求項25に記載の医薬組成物の治療における使用。
【請求項27】
治療に使用するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子又は請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
TSHR抗体、TSH、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンの活性を特徴付けする方法であって、請求項1〜20のいずれかに記載の単離された抗体分子の使用を含むステップを含む方法。
【請求項29】
哺乳動物細胞の前記TSHRを刺激するin vitro法であって、前記細胞を、請求項11〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は請求項25に記載の医薬組成物と接触させることを含む方法。
【請求項30】
哺乳動物細胞の前記TSHRを刺激するin vivo法であって、前記細胞を、請求項11〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は請求項25に記載の医薬組成物と接触させることを含む方法。
【請求項31】
甲状腺癌及びその転移、多結節性甲状腺腫、並びに/又は先天性甲状腺機能低下症を有する対象体の細胞を、請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離された抗体、又は請求項25に記載の医薬組成物と接触させる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物細胞のリガンド誘導性TSHR刺激を防止するin vivo法であって、前記TSHRを、請求項1〜20のいずれか一項に記載の単離された抗体分子、又は請求項25に記載の医薬組成物と接触させることを含む方法。
【請求項33】
前記リガンドが、甲状腺刺激性自己抗体、TSH、又はヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物細胞が、甲状腺細胞又は甲状腺外細胞である、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物甲状腺外細胞が、眼窩後方組織又は前脛骨組織にある、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記単離された抗体分子が、更なるTSHR結合抗体と組み合わせて使用される、請求項32〜35に記載の方法。
【請求項37】
前記更なるTSHR結合抗体が、5C9及び/又は9D33である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記TSHRに対する被検体自己抗体を検出するための診断法であって、そのような被検体自己抗体を含有すると考えられる対象体から単離された試料及び請求項1〜20のいずれか一項に記載の抗体分子を、TSHR又はその断片と接触させることを含む方法。
【請求項39】
前記被検体抗体を含有する試料を、前記TSHRのアミノ酸22〜260(配列番号75)を含むTSHR断片と接触させることを含む、前記TSHRに対する被検体抗体を検
出するための診断法。
【請求項40】
前記TSHR又はその断片が、アルギニン255で突然変異されており、そのため前記突然変異TSHR又はその断片が、被検体刺激型TSHR抗体と比較して、被検体阻止型TSHR抗体と優先的に相互作用する、請求項38又は39に記載の前記TSHRに対する被検体抗体を検出するための診断法。
【請求項41】
a.動物対象体に由来する体液試料を準備するステップと、
b.1つ又は複数の第1のTSHR供給源を準備するステップと、
c.1つ又は複数の第2のTSHR供給源を準備し、そのような第2のTSHR供給源が、TSHR260であるか又はアルギニン255が突然変異されているTSHR260であるステップと、
d.前記第1及び第2のTSHR供給源を、同時に又は順次に、前記体液試料と接触させ、それにより前記TSHRに対する抗体が、[第1のTSHR供給源]−[TSHR抗体]−[第2のTSHR供給源]を含む1つ又は複数の複合体を形成するステップと、
e.ステップ(d)の前に、又は同時に、又はその後で固定化手段を準備し、それにより、ステップ(d)で形成された複合体に存在する前記第1のTSHR供給源が、ステップ(d)の前に、又は同時に、又はその後で固体支持体に固定化されるステップと、
f.ステップ(d)の前に、又は同時に、又はその後で、直接的に又は間接的に検出可能な標識手段を準備し、それによりステップ(d)で形成された前記複合体に存在する前記第2のTSHR供給源が、そのような直接的又は間接的な標識手段を、ステップ(d)の前に、又は同時に、又はその後で備えるステップと、
g.(d)で形成された複合体の存在を(e)に従って検出し、前記体液試料にTSHR抗体が存在することの指標を提供するステップとを含む請求項39〜40に記載の診断法。
【請求項42】
(b)で準備される前記第1のTSHR供給源が、TSH受容体の1つ又は複数のエピトープ、又はTSH受容体の1つ又は複数のエピトープを含むポリペプチドを含む全長TSHRである、請求項41に記載の診断法。
【請求項43】
(b)で準備される前記第1のTSHR供給源が、TSH受容体の1つ又は複数のエピトープ、又はTSH受容体の1つ又は複数のエピトープを含むポリペプチドを含む全長TSHRであり、前記第1のTSHR供給源が、アルギニン255で突然変異されている、請求項41又は42に記載の診断法。
【請求項44】
TSHR260又はアルギニン255が突然変異されたTSHR260に対する被検体TSHR抗体の結合が、前記TSHR260又はアルギニン255が突然変異されたTSHR260に対する、直接的又は間接的に標識されたTSHR抗体又はその断片の結合を阻害することにより検出される、請求項39又は40に記載の診断法
【請求項45】
前記標識TSHR抗体が、モノクローナル抗体、組換え抗体、若しくは合成抗体、又はそれらの断片である、請求項44に記載の診断法
【請求項46】
TSHR260に対するTSHR自己抗体結合を防止する低分子を識別するための方法であって、少なくとも1つの候補低分子を含む試料の存在下で、TSHR260に対するTSHR自己抗体の結合の阻害を決定すること、及びTSHR自己抗体結合を阻害するそれら候補低分子を前記試料から選択することを含む方法。
【請求項47】
前記TSHR自己抗体が、モノクローナル抗体、組換え抗体、若しくは合成抗体、又はそれらの断片である、請求項46に記載の方法
【請求項48】
前記TSHRに対する前記TSHR自己抗体の結合が、請求項41、42、又は43のいずれか一項に記載の方法により検出される、請求項46に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図1l】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a−1】
【図3a−2】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a−1】
【図4a−2】
【図4b】
【図4c−1】
【図4c−2】
【図4d】
【図5a−1】
【図5a−2】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6a−1】
【図6a−2】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8−1】
【図8−2】
【図8−3】
【図8−4】
【図8−5】
【図8−6】
【図8−7】
【図8−8】
【図8−9】
【図8−10】
【図8−11】
【図8−12】
【図8−13】
【図8−14】
【図8−15】
【図8−16】
【図8−17】
【図8−18】
【図8−19】
【図8−20】
【図8−21】
【図8−22】
【図8−23】
【図8−24】
【図8−25】
【図8−26】
【図8−27】
【図8−28】
【図8−29】
【図8−30】
【図8−31】
【図8−32】
【図8−33】
【図8−34】
【図8−35】
【図8−36】
【図8−37】
【図8−38】
【図8−39】
【図8−40】
【図8−41】
【図8−42】
【図8−43】
【図8−44】
【図8−45】
【図8−46】
【図8−47】
【図8−48】
【図8−49】
【図8−50】
【図8−51】
【図8−52】
【図8−53】
【図8−54】
【図8−55】
【図8−56】
【図8−57】
【図8−58】
【図8−59】
【図8−60】
【図8−61】
【図8−62】
【図8−63】
【図8−64】
【図8−65】
【図8−66】
【図8−67】
【図8−68】
【図8−69】
【図8−70】
【図8−71】
【図8−72】
【図8−73】
【図8−74】
【図8−75】
【図8−76】
【図8−77】
【図8−78】
【図8−79】
【図8−80】
【図8−81】
【図8−82】
【図8−83】
【図8−84】
【図8−85】
【図8−86】
【図8−87】
【図8−88】
【図8−89】
【図8−90】
【図8−91】
【図8−92】
【図8−93】
【図8−94】
【図8−95】
【図8−96】
【図8−97】
【図8−98】
【図8−99】
【図8−100】
【図8−101】
【図8−102】
【図8−103】
【図8−104】
【図8−105】
【図8−106】
【図8−107】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図1l】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a−1】
【図3a−2】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a−1】
【図4a−2】
【図4b】
【図4c−1】
【図4c−2】
【図4d】
【図5a−1】
【図5a−2】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6a−1】
【図6a−2】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8−1】
【図8−2】
【図8−3】
【図8−4】
【図8−5】
【図8−6】
【図8−7】
【図8−8】
【図8−9】
【図8−10】
【図8−11】
【図8−12】
【図8−13】
【図8−14】
【図8−15】
【図8−16】
【図8−17】
【図8−18】
【図8−19】
【図8−20】
【図8−21】
【図8−22】
【図8−23】
【図8−24】
【図8−25】
【図8−26】
【図8−27】
【図8−28】
【図8−29】
【図8−30】
【図8−31】
【図8−32】
【図8−33】
【図8−34】
【図8−35】
【図8−36】
【図8−37】
【図8−38】
【図8−39】
【図8−40】
【図8−41】
【図8−42】
【図8−43】
【図8−44】
【図8−45】
【図8−46】
【図8−47】
【図8−48】
【図8−49】
【図8−50】
【図8−51】
【図8−52】
【図8−53】
【図8−54】
【図8−55】
【図8−56】
【図8−57】
【図8−58】
【図8−59】
【図8−60】
【図8−61】
【図8−62】
【図8−63】
【図8−64】
【図8−65】
【図8−66】
【図8−67】
【図8−68】
【図8−69】
【図8−70】
【図8−71】
【図8−72】
【図8−73】
【図8−74】
【図8−75】
【図8−76】
【図8−77】
【図8−78】
【図8−79】
【図8−80】
【図8−81】
【図8−82】
【図8−83】
【図8−84】
【図8−85】
【図8−86】
【図8−87】
【図8−88】
【図8−89】
【図8−90】
【図8−91】
【図8−92】
【図8−93】
【図8−94】
【図8−95】
【図8−96】
【図8−97】
【図8−98】
【図8−99】
【図8−100】
【図8−101】
【図8−102】
【図8−103】
【図8−104】
【図8−105】
【図8−106】
【図8−107】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【公表番号】特表2012−513747(P2012−513747A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542893(P2011−542893)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002946
【国際公開番号】WO2010/073012
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(507044468)アールエスアール リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002946
【国際公開番号】WO2010/073012
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(507044468)アールエスアール リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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