説明

ヒト由来免疫担当細胞の製造方法

本発明は、ヒト由来リンパ系細胞を産生することができる免疫不全動物、及びヒト由来リンパ系細胞並びにヒト抗原特異的抗体産生の方法の提供を目的とする。 上記目的の解決手段は、ヒト由来造血前駆細胞が移植された幼若な免疫不全哺乳動物であって、当該ヒト由来の造血細胞又は免疫担当細胞を産生することができる前記動物、並びに、前記動物から免疫担当細胞を回収し、該免疫担当細胞を培養し、得られる培養物からヒト由来抗体を採取することを特徴とする抗体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヒトリンパ系細胞と抗原提示細胞など免疫応答に必須なる種々の細胞の生体内増殖、及びヒト免疫系の再構築の技術に関する。
【背景技術】
ヒト幹細胞に関する研究は、生体内で測定することが重要であることから、免疫不全げっ歯類、又はヒツジ胎仔(Flake,A.W.et al.,1986.Science 233:776−778.)を用いた異種動物間移植に基づいて行われている。Scid−huアッセイは、McCuneらにより1988年に報告されており(Science 241:1632−1639(1988))、このアッセイはヒト細胞をCB17/SCIDマウスで検出した最初の例である。その後、ヒト造血細胞を移植するためのレシピエントとして、NOD/SCID(Pflumio,F.et al.,1996.Blood 88:3731−3740.)、NOD/RAG−1null(Shultz,L.D.et al.,2000.Journal of Immunology 164:2496−2507.)、beige/nude/scid(Dao,M.A.,and J.A.Nolta.1998.International Journal of Molecular Medicine 1:257−264.)又はNOD/SCID/β2Mnull(Kollet,O.et.al.,2000.Blood 95:3102−3105.)等の免疫不全マウスが多く用いられている。
しかしながら、異種動物間の幹細胞移植のレシピエントとして使用されるマウスは、8〜12週齢の成体マウスであることがほとんどである。また、通常の成体SCIDマウスを用いた場合において移植片を長期間維持させるには外来性サイトカインの投与が必要となり、T細胞を前駆細胞から分化させることが困難である(Ito,M.et al.,2002.Blood 100:3175−3182.)。
【発明の開示】
本発明は、ヒト免疫系を異種動物宿主に構築させ、免疫反応を自然又は人為的に起こすことにより、必要とされるヒト免疫細胞、特に抗原特異的なT細胞、B細胞や、免疫グロブリン、サイトカイン等を産生させることを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、免疫不全動物に造血前駆細胞又は成熟造血細胞を移植することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)ヒト由来造血前駆細胞又は成熟造血細胞が移植された幼若な(胎児から新生児を経て生殖年令に達するまでを含む)免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)であって、当該ヒト由来の免疫担当細胞、及び/又は当該免疫担当細胞由来の生理活性物質を産生することができる前記動物である。また、本発明は、上記幼若な免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)を飼育してなる免疫不全哺乳動物又はその子孫である。
上記幼若な免疫不全哺乳動物としては、例えば新生児免疫不全哺乳動物又は胎児免疫不全哺乳動物が挙げられる。
また、上記造血前駆細胞としては、骨髄由来、臍帯血由来、動員(G−CSF)末梢血、ES細胞由来中肺葉系細胞又は末梢血由来の細胞例示することができる。これらの細胞は、例えば、CD34陽性のもの(例えばCD34細胞、CD133細胞、SP細胞、CD34CD38細胞、c−kit細胞あるいはCD3、CD4、CD8及びCD34細胞のもの)が挙げられる。また、免疫担当細胞としてはB細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞及びNKT細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。これら免疫担当細胞は、末梢血からレシピエントを殺すことなく採取可能であり、より多数の細胞、又は前記免疫担当細胞由来の生理活性物質(例えば免疫グロブリン、サイトカイン等)を精製する場合に、骨髄、脾臓、胸腺、リンパ節などを細胞源として利用することが可能である。免疫不全哺乳動物は免疫不全マウスであることが好ましい。上記の免疫グロブリンは、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEなどの全てのアイソタイプが含まれる。
(2)さらに、本発明は、ヒト由来造血前駆細胞又は成熟造血細胞を幼若な免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)に移植することを特徴とする、当該ヒト由来の免疫担当細胞、及び/又は当該免疫担当細胞由来の生理活性物質を産生することができる動物又はその子孫の作製方法である。幼若な免疫不全哺乳動物としては、例えば新生児免疫不全哺乳動物又は胎児免疫不全哺乳動物が挙げられる。また、造血前駆細胞としては、骨髄由来、臍帯血由来、動員(G−CSF)末梢血、ES細胞由来中肺葉系細胞又は末梢血由来の細胞を例示することができる。これらの細胞は、例えば、CD34陽性のもの(例えばCD34細胞、CD133細胞、SP細胞、CD34+CD38−細胞、c−kit+細胞あるいはCD3、CD4、CD8及びCD34細胞のもの)が挙げられる。免疫担当細胞としては、B細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞及びNKT細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。また、生理活性物質としては、例えばサイトカイン及び/又は免疫グロブリンが挙げられる。上記の免疫グロブリンは、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEなどの全てのアイソタイプが含まれる。免疫不全哺乳動物は免疫不全マウスであることが好ましい。
(3)さらに、本発明は、前記免疫不全哺乳動物又はその子孫から免疫担当細胞を回収し、当該免疫担当細胞を抗原又は適切な刺激物質の存在下で培養し、得られる培養物からヒト由来抗体を採取することを特徴とする前記抗体の製造方法である。免疫担当細胞としては、B細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞及びNKT細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
(4)さらに、本発明は、前記免疫不全哺乳動物又はその子孫を抗原又は刺激物質で免疫し、得られる免疫動物から当該ヒト由来抗体を採取することを特徴とする前記抗体の製造方法である。抗体の採取源としては、例えば血漿又は血清が挙げられる。
(5)また、本発明は、前記免疫不全哺乳動物又はその子孫に、細菌、ウイルス、腫瘍細胞及び腫瘍抗原ペプチドからなる群から選択されるいずれかのものが投与された疾患モデル動物又はその子孫である。上記疾患には、感染症を挙げることができる。
(6)本発明は、被験物質を、前記免疫不全哺乳動物若しくはその子孫又は前記感染症動物若しくはその子孫に投与して、被験物質の有効性を評価することを特徴とする、免疫関連医薬のスクリーニング方法である。免疫関連医薬には、ワクチン、抗ウイルス薬や抗生剤も含まれる。また、前記方法は、本発明のヒト抗体に対する免疫応答及びアレルギーに対する安全性確認(特に前臨床試験段階)において有用である。
(7)本発明は、前記免疫不全哺乳動物又はその子孫から免疫担当細胞を回収することを特徴とする前記免疫担当細胞の製造方法である。
(8)本発明は、前記免疫不全哺乳動物又はその子孫から回収された免疫担当細胞である。
(9)本発明は(8)記載の免疫担当細胞を含むワクチンである。
(10)本発明は、前記疾患モデル動物又はその子孫から免疫担当細胞を回収することを特徴とする前記免疫担当細胞の製造方法である。
(11)本発明は、前記疾患モデル動物又はその子孫から回収された免疫担当細胞である。
(12)本発明は(11)記載の免疫担当細胞を含むワクチンである。
(13)本発明は、前記疾患モデル動物又はその子孫から回収されたヒト由来抗体である。
(14)本発明は、前記免疫担当細胞を抗原又は刺激物質の存在下で培養した培養物から採取されたヒト由来抗体である。
(15)本発明は、疾患モデル動物又はその子孫から回収されたヒト由来抗体である。
(16)本発明は、(15)記載のヒト由来抗体を含むワクチンである。
【図面の簡単な説明】
図1Aは、レシピエントマウスにおけるヒトB細胞系(CD19細胞)の再構築を示す図である。
図1Bは、レシピエントマウスに各種ヒト免疫グロブリンの発現を示す図である。
図2は、OVA特異的IgMのELISAの結果を示す図である。
図3は、レシピエントマウスの骨髄、脾臓及び末梢血におけるヒトT細胞系の再構築を示す図である。
図4は、リンパ系組織のFISH解析及び免疫組織学的解析の結果を示す図である。
図5は、NOD/SCID/IL2rg−nullマウスの骨髄(BM)におけるヒト赤血球構成物の同定を示す図である。
図6は、NOD/SCID/IL2rg−nullマウスのBM及び脾臓におけるヒトB細胞発生を示す図である。
図7は、CD19B系細胞におけるヒト免疫グロブリンの発現を示す図である。
図8は、NOD/SCID/IL2rg−nullマウスにおけるヒトT細胞の発生を示す図である。
図9は、NOD/SCID/IL2rg−nullマウスの脾臓におけるヒト樹状細胞の存在を示す図である。
図10は、NOD/SCID/IL2rg−nullマウスの腸管における粘膜免疫の発生を示す図である。
図11は、卵白アルブミンによる免疫に続くIgG細胞の誘導を示す図である。
図12は、NOD/SCID/IL2rg−nullマウスで産生したヒトT細胞によって介される同種異型標的細胞に対する細胞毒性を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明はヒト造血系細胞を異種哺乳動物の生体内で分化、増殖させ、異種哺乳動物においてヒト免疫系を再構築させようとして完成されたものである。具体的には、ヒト由来の造血前駆細胞を宿主である幼若な免疫不全哺乳動物(例えばSCIDマウス)に移植し、当該宿主内でヒト由来細胞を分化及び増殖させることを特徴とするものである。すなわち、ヒト免疫系及び造血系を免疫不全動物の体内を利用して構築するシステムを利用して、ヒト抗体の産生及び腫瘍又はウイルス抗原特異的ワクチンの開発に応用することが可能である。
1.幼若な免疫不全哺乳動物
本発明において、ヒト由来の造血前駆細胞を移植するためのレシピエントとして使用される動物は、ヒトを除く免疫不全哺乳動物である。本発明において「幼若な」動物とは、胎児から新生児を経て生殖年令に達するまでを含み、好ましくは、胎児及び生後7日以内、より好ましくは生後2日以内の新生児である。幼若な免疫不全哺乳動物をレシピエントとして用いると、個体の成長に伴ってヒト免疫担当細胞も効率的に増殖するため、本発明では幼若な個体を用いることが好ましい。
哺乳動物としては、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、羊、ミニブタ、ブタ、サルなどが挙げられる。モデル動物が豊富であり、系統が確立されている点で免疫不全マウスであることが好ましい。免疫不全マウスとは、T細胞及びB細胞の生産能を欠く重症複合免疫不全マウス(SCIDマウス)を意味し、特に、NK細胞の活性を持たないNOD/SCID/β2ミクログロブリンノックアウトマウス(NOD/SCID/B2M)やNOD/SCID/common γ−chainノックアウトマウスが好ましい。このSCIDマウスの幼若な個体を使うと、マウス生体内にヒト由来免疫細胞及び造血細胞を高率に産生させることができる。上記SCIDマウスは市販されており(Jackson Laboratory)、当業者であれば容易に入手することが可能である。
2.細胞の調製及び移植
移植の対象となる造血前駆細胞は、例えば臍帯血、骨髄、末梢血、動員(G−CSF)末梢血、ES細胞由来中肺葉系細胞から得ることができるが、臍帯血が好ましい。
臍帯血(CB)細胞は、臨床検体(例えば臨床検査等が済んで細胞数の問題や家族歴の問題から廃棄の対象となった検体)を日本赤十字センター臍帯血バンクから得ることが可能である。また、骨髄細胞は、骨髄バンクから得ることも、骨髄穿刺によって採取された細胞、又はそのうち廃棄の対象となる細胞から得ることもできる。末梢血は、一般的血液検査に使用するために採取した血液又はその廃棄対象血液を使用することができる。また、末梢血中の幹細胞集団をより効率良く取るには、G−CSFにより骨髄中の幹細胞を動員させたあとに採取することも可能である。
次に、単核細胞(MNCs)を密度勾配遠心により上記細胞から単離する。
本発明において移植に使用される細胞は、例えばCD34陽性(CD34、CD133細胞、SP細胞、CD34CD38細胞、c−kit細胞)を表す細胞、すなわち造血前駆細胞又は成熟造血細胞である。CD34細胞は、試料を抗ヒトCD34ミクロビーズとともにインキュベートすることにより得ることができる。
上記造血前駆細胞源となる試料中には、造血前駆細胞のほかにT細胞に分化した細胞が含まれている。そこで、そのようなT細胞を除去するために、T細胞マーカーに対する抗体を反応させることもできる。例えば、MNCsをマウス抗ヒトCD3、CD4及び/又はCD8抗体とともにインキュベートする。これを洗浄後、細胞をヒツジ抗マウス免疫磁気ビーズとともにインキュベートし、未結合の細胞を回収する。CD3、CD4及びCD8はいずれもT細胞のマーカー(表面抗原)であるため、これらの抗原に対する抗体を用いて上記処理を行うことにより、T細胞が除去される。このようにして得られる前駆細胞の細胞表面抗原は、CD3陰性(CD3)、CD4陰性(CD4)、CD8陰性(CD8)である。次に、T細胞を除去した試料を抗ヒトCD34ミクロビーズとともにインキュベートする。この操作により、CD34を表す造血前駆細胞を得ることができる。そして、濃縮されたCD34細胞の純度が好ましくは90%以上となるように、細胞を磁気カラムにかける。
成熟造血細胞は、造血幹細胞および造血前駆細胞などの増殖能力を利用して、特にサイトカインなどの助けを必要とすることなく得ることができる。ただし、G−CSF、Steel factor、GM−CSF、TPO、EPOなどのサイトカインを投与することで、特定の分画を効率良く得ることも可能である。
本発明の動物は、レシピエント動物を予め放射線全身照射した後、所定の量に調製した造血前駆細胞又は成熟造血細胞をレシピエント動物(NOD/SCID/B2M、NOD/SCID/IL2rg−nullマウス等)に移植することにより得ることができる。移植する細胞数は、動物の種類に応じて適宜定めることができる。例えば、SCIDマウスをレシピエントとした場合において、造血細胞を移植するときは1匹あたり少なくとも1×10個であり、上限は特に限定されるものではない。好ましくは、1×10個〜1×10個の細胞を使用することができる。多数の細胞により、より高率なヒト細胞の分化が期待できる。
移植は、静脈経由が好ましいが、腹腔、心腔内、肝臓内移植であってもよい。静脈経由で移植する場合は、顔面静脈、尾静脈などから細胞を注入する。この場合、26〜30ゲージ(G)の注射針(例えば29G)を用いればよい。例えば、T細胞が除去された1×10個のCB細胞(CD3CD4CD8CD34)を静脈注射により、予め100cGyの全身照射を受けた幼若なNOD/SCID/B2Mマウス、又はNOD.Cg−Prkdcscidマウスに移植するのが望ましい。
細胞の移植後、無菌管理を十分に行いながら飼育する。「無菌管理」とは、感染症などの病原微生物や抗原物質を含まないように管理することを意味し、いわゆるSPF(Specific pathogen free)レベルの無菌室での飼育、放射線照射した餌(又は低分子化した餌)を給餌すること、あるいは滅菌水を与えることをいう。マウスの場合は、2週〜16週、好ましくは3〜4週の間、上記無菌管理下で飼育すれば、免疫細胞の回収又は免疫に用いることができる。本発明においては、このような飼育された動物も提供される。このような本発明の動物には、その子孫も含まれる。子孫は、無菌環境が維持される限り、通常の交配により得ることができる。
上記の通り得られた「ヒト型化動物」の体内はドナー(ヒト)由来の免疫系が確立されており、ヒト由来の免疫担当細胞などを回収することができる。本発明において、「免疫担当細胞」(免疫細胞ともいう)とは、免疫応答を成立させる細胞を意味し、抗体産生細胞又は造血細胞、具体的にはB細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞、NKT細胞などが挙げられる。
免疫担当細胞は、全身免疫、粘膜免疫(後述)のみならず、各組織においても宿主及びその組織を守るという役目を担っている。例えば、皮膚であれば、Langerhans細胞が抗原提示を行って、真皮において動員されるT細胞、B細胞が機能する。肝臓においては、Kuppfer細胞が貪職能力を有している。また、神経系では、Microglia細胞が、神経変性を予防するべく、不要な物質を貪食する。従って、本発明において、各組織における免疫担当細胞についても、ヒト免疫系を構築している。
これらのヒト由来細胞のレシピエント由来の細胞に対する比率は、造血細胞については5〜90%、好ましくは20〜90%であり、抗体産生細胞については2〜80%、好ましくは10〜80%である。
上記免疫担当細胞は、ドナーであるヒト由来の細胞であり、これらの細胞から各種生理活性物質が産生される。単球や樹状細胞などが、主な抗原提示細胞(Antigen−presenting cell)として機能する。生理活性物質としては、例えばサイトカイン、免疫グロブリンなどが挙げられる。サイトカインは、各種の血球細胞の増殖と分化を制御するタンパク質性の生理活性物質であり、インターロイキン(IL)、コロニー刺激因子(CSF)、ケモカインなどを例示することができる。これらサイトカインの異常な分泌や制御の調節破綻が各種病態と密接に関連していることが近年示唆されている。また、これらの産生減少は重症感染症に対して一種の免疫不全状態を呈する可能性が高い。また、免疫グロブリン(Ig)は、抗体の機能及び構造をもつタンパク質であり、アイソタイプにはIgG、IgM、IgA、IgD、IgEがある。本発明の免疫グロブリンには、全てのアイソタイプが含まれる。IgG及びIgAについては、それらのサブクラス(それぞれG1〜G4、A1〜A2)も存在し、上記免疫グロブリンに含まれる。
B細胞は表面または細胞内にIg受容体を発現するリンパ球であり、IgG、IgM、IgA、IgDなどの免疫グロブリン、あるいはIL−6などのサイトカインを産生する。T細胞は、免疫応答に関与するリンパ球であって胸腺で分化、成熟する細胞であり、IL−2〜IL−6、IL−9、IL−10、IL−13、IL−14、IL−16などを産生する。樹状細胞は、免疫応答の開始時に補助細胞(アクセサリー細胞)として働く樹状突起をもった細胞であり、クラスII主要組織適合(MHC)抗原を発現してヘルパーT細胞への抗原提示細胞として機能する。NK(ナチュラルキラー)細胞は、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞などに対し、MHC抗原に拘束されずに細胞傷害活性を示す細胞である。NKT(ナチュラルキラーT)細胞は、T細胞受容体及びNK細胞マーカー(例えばCD16、CD56)を併せ持つ細胞であり、糖脂質であるαガラクトシルセラミド(αGalCer)の刺激によりIFN−γやIL−4を産生する。
3.キメラ現象の確認及び抗体及びワクチンの産生
ヒト由来細胞がレシピエント動物において発現していることの確認は、レシピエント動物の末梢血、骨髄細胞、その他免疫組織を採取して、これらがヒト由来のものであることを確認すればよい。
例えば、レシピエントを免疫不全マウスとした場合は、移植後3週から3箇月の間に、末梢血は眼窩後叢から、骨髄細胞は大腿骨と脛骨から採取する。また、脾臓、リンパ節及び胸腺を切除後、細片化し、分離した細胞をメッシュフィルターに通して単一細胞懸濁液を得る。これらの細胞をFACSCalibur又はFACSVantage(Becton Dickinson)を用いたヒトCD45(白血球共通抗原、造血系細胞の主要膜糖タンパク質)の発現解析により、ドナー由来の造血細胞であることを同定する。マウス抗ヒト抗体等により染色することも可能である。
また、本発明の動物は、ドナーであるヒト由来の免疫系が確立されている。特に、マウスの場合、骨髄、脾臓、リンパ節、末梢血、胸腺はほぼ100%に近いヒト細胞で置換されている(以下、このようなマウスを本発明においては「ヒト型化マウス」とも呼ぶ)。従って、免疫担当細胞であるB細胞(抗体産生細胞)、B細胞を高率に含む脾臓細胞等を抗原又は適当な刺激物質で刺激することにより、ヒト由来抗体を産生させることができる。例えば、本発明の免疫担当細胞を細菌、ウイルス、腫瘍(腫瘍細胞、抗原ペプチド等を含む)の存在下で培養することによりヒト由来抗体の産生を促すことができる。抗体の産生能の測定は、B細胞の表面抗原はCD19陽性(CD19)を表すため、CD19細胞におけるIgM、IgG、IgD及びIgAの発現をセルソーター等により解析する。
さらに、本発明の動物を所定の抗原又は適当な刺激物質で免疫し、得られる免疫細胞から抗体を採取することにより、ドナー(ヒト)由来の抗原特異的抗体を得ることができる。例えば、本発明の動物又はその子孫に細菌、ウイルス、腫瘍(腫瘍細胞、抗原ペプチド等を含む)を投与することにより、あるいは、本発明の動物又はその子孫から得た組織又は細胞を細菌、ウイルス、腫瘍(腫瘍細胞、抗原ペプチド等を含む)の存在下で培養することにより、ヒト由来抗体の産生を促し、また、ワクチンを開発することができる。前記の刺激によりパルス(刺激)された樹状細胞は、T細胞を効率よく誘導できることが知られている。従って、生体内でパルスした樹状細胞を選択して、ワクチンとして応用することも可能である。
抗原又は適当な刺激物質の動物1匹当たりの投与量は、マウスの場合、10μg〜1mgであり、アジュバントの有無によって適宜調節する。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
抗原又は適当な刺激物質の種類は特に限定されるものではなく、タンパク質、ペプチド、レクチンなどが挙げられる。
投与部位は静脈内、皮下、足(food pad)又は腹腔内である。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは1〜2週間間隔で、1〜3回の免疫を行う。そして、最終免疫後約一週間から二週間後に血清又は血漿中の抗体価を測定し、抗血清又は抗血漿を得る。抗体価の測定は、酵素免疫測定法(ELISA;enzyme−linked immunosorbent assay)、放射性免疫測定法(RIA;radioimmuno assay)等により行うことができる。
抗血清又は抗血漿から抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより抗体を精製することができる。
大動物、特に免疫不全ブタをレシピエントとして用いると、抗体産生において量的な利点がある。当該大動物としては、例えばIL7R、IL2R common gamma chain、Jak/Stat,RAG−1、RAG−2などをノックアウトして作製された免疫不全動物が挙げられる。
一方、質の高いワクチンの開発には、レシピエントに小動物を用いることが望ましい。小動物では、さまざまなペプチドや抗原などが、ヒト免疫系を有する本発明の動物の生体内でどの程度有効な抗腫瘍効果を有するのか、あるいはペプチド認識効率を有するのかを容易に判定することができる。また、本発明者が開発した白血病細胞の生体内評価システムを用いれば、開発したワクチンや樹状細胞、あるいはT細胞が、生体内で増殖した白血病細胞などの腫瘍細胞に、どの程度有効であるかも評価することが可能である。
従って、本発明は、被験物質を本発明の動物(幼若個体、生体、子孫、モデル動物を含む)に投与して、被験物質の有効性を評価することを特徴とする免疫関連医薬のスクリーニング方法を提供する。「免疫関連医薬」は例えば抗体医薬、ワクチン(ペプチドや樹状細胞など)が代表的なものであり、抗ウイルス薬や抗生剤などの感染症に対する薬剤も含む。さらに、サイトカイン療法を含む液性因子も広く含む。免疫関連医薬の投与量及び投与方法については、体表面積、体重及び性別を基準として設定することが可能であり、特に静脈内、骨髄内、腹腔、肝臓、皮下などが主たる投与経路である。免疫関連医薬の対象疾患は極めて広く、例えば、腫瘍性疾患、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、神経性疾患、寄生性疾患、難病、バクテリア性疾患、ミコバクテリウム疾患、関節リウマチやSLEなどの膠原病、白血病やリンパ衆などの造血器悪性疾患、固形腫瘍、良性の造血器および固形腫瘍性疾患、花粉症、アレルギー、アトピー、エイズなどが挙げられる。
また、当該方法は、本発明のヒト抗体に対する免疫応答及びアレルギーに対する安全性確認(特に前臨床試験段階)において有用である。
本発明の動物またはその子孫は、粘膜免疫、消化管免疫、気道免疫もヒト免疫系で構築されている。ここで、粘膜免疫とは、特にIgAなどの分泌型の免疫グロブリンを産生し、粘膜固有のリンパ小節やパイエル板などのT細胞を多数含む組織などにおける免疫をさす。消化管免疫とは、経口摂取により体内に取り込まれる細菌などの抗原に対して、不要なもの又は体に有害となるものを排除するシステム全般をさす。また、気道免疫とは、消化管免疫と同様に分泌型の免疫グロブリンを産生し、気道(鼻腔から気管支、肺胞)を経て侵入する外来性抗原に対する免疫応答全般を含むものである。
本発明のヒト型化動物における粘膜免疫系を利用すると、経口ワクチン開発、消化管感染症の解明、食物アレルギー病態の解明、アレルギー薬開発等を行うことができ、当該免疫系の応用範囲は極めて広いものである。例えば、経口ワクチンには、古典的にはポリオに対するものがよく知られているが、致死的な食中毒を引き起こすO157やコレラ、赤痢などの感染症に対するものが望まれる。本発明の疾患モデル動物若しくはその子孫のから回収される体液(主に血清)若しくは細胞、又は本発明の免疫担当細胞を上記ワクチンとして用いることができる。
また、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症成長疾患は、免疫系の異常が原因とも言われている。従って、本発明の動物、方法、抗体、ワクチン等を用いたこれらの病態解明、幹細胞移植やT細胞注入などによる新規治療法の開発なども今後応用できる。
また、本発明の動物又はその子孫は疾患モデル動物(特に感染症モデル動物、腫瘍モデル動物)として用いることができる。その中でも、特にウイルス感染症モデル動物として期待される。特にウイルスは、種特異的であるために、ヒトのHIV,HSVなど現在臨床上重要と思われているウイルスはマウスに感染しない。従って、これまではマウスヘルペス、マウスレトロウイルスなど同じ系統のウイルスを用いて感染実験を行うのみで、HIVを直接用いることができないことが問題であった。本発明のモデル動物は、ヒトの免疫系を保有するために、疾患モデルは、細菌、真菌、ウイルスをマウスに感染させることで作製することができる。本発明の疾患モデルは、抗原をμg〜mg単位において、様々な量を投与することで得ることができる。投与経路は、前述したとおり、静脈、骨髄、肝臓、腹腔、皮下などを例示することができる。抗原については、細菌、真菌、ウイルスの他、OVAだけではなく、タンパク、ペプチド、細胞などをふくむ。
例えば、本発明者はすでに、HIV,HTLV−1などのウイルスの生体内での観察において、彼等が宿主とするヒトCD4陽性細胞が、マウス体内で、例えば幹細胞から分化し、成熟T細胞が直接生着することを効率に確認している。従って、上記のウイルスを含めた数々の臨床上問題となるウイルスの感染実験に用いることが期待される。
4.その他のキメラ現象の試験
(1)組織学的解析
レシピエントマウスを解剖後、組織を固定化又は凍結する。パラホルムアルデヒド固定化組織は、段階的な濃度のアルコールを用いて脱水し、パラフィンに埋め込むことが好ましい。ミクロトーム又はクライオスタット等を用いて切片を作製し、それぞれの切片について、通常の免疫組織染色を行うことができる。
(2)蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法
FISH法とは、染色体の遺伝子座位を決める周知技術であり、蛍光物質などにて標識した一本鎖プローブDNAを染色体DNAの相補性部位でハイブリダイズさせ、特異的に求める細胞などの部位を顕微鏡下で同定するというものである。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 免疫不全マウスへのヒト造血細胞の移植
臍帯血(CB)細胞を日本赤十字センター臍帯血バンクから得た。書面によるインフォームドコンセントを得た後に、廃棄対象となった臍帯血からCB細胞を採取した。単核細胞(MNCs)を、密度勾配(リンパ球分離培地、ICN Biomedicals)を用いて370×g、30分間の遠心によりCBから単離した。MNCsをマウス抗ヒトCD3、CD4、CD8抗体(BD Immunocytometry)とともに、4℃で30分間インキュベートした。洗浄後、細胞をヒツジ抗マウス免疫磁気ビーズ(DYNAL)とともに4℃で30分間インキュベートし、未結合の細胞を回収した。CD34集団を単離するために、T細胞除去試料を、抗ヒトCD34ミクロビーズ(Miltenyi Biotech)とともに40分間インキュベートした(製造者プロトコールにしたがった。)。細胞を磁気カラムに2回通した結果、濃縮されたCD34細胞の純度は90%以上となった。
上記のように調製したCB細胞(CD3CD4CD8CD34、1×10個)を、予め100cGyの全身照射を受けた新生児NOD/SCID/B2Mマウス(Jackson Laboratory)に静脈注射により移植し、ヒト由来免疫細胞を初めとするヒト免疫系が構築されたマウスを作製した。
〔実施例2〕 マウス生体内におけるヒト由来B系細胞の解析
マウス生体内におけるヒトリンパ細胞の再構築の有無を調べるため、ヒトCD45細胞であってCD19細胞(B細胞)の移植レベルについて、多重造血組織解析を行った。
移植後、飼育3箇月目のレシピエントマウスの骨髄(BM)、脾臓、末梢血(PB)、リンパ節(LN)の中にヒト由来B系細胞が存在するか否かを解析した。BM、脾臓、PB、LNをFITC結合免疫グロブリン及びPE結合CD19で染色した。
結果を図1A及び図1Bに示す。図1Aにおいて、aはBM、bは脾臓、cはPB、dはLNから採取した細胞のフローサイトメトリーである。各リンパ組織において、高レベルのヒトCD45CD19細胞が同定された。図1Aのa〜dに示す各数値(それぞれ64.6,23.6,50.1,44.6)は、各組織から採取した細胞全体の中に占めるCD45CD19細胞の比率(%)を示す。
また、図1Bの16枚のパネルにおいて、1段目(e)、2段目(f)、3段目(g)、4段目(h)のパネルは、それぞれBM、脾臓、PB、LN由来の造血細胞を、FITC−結合IgM(1列目)、IgD(2列目)、IgG(3列目)、IgA(4列目)及びPE−結合CD19抗体により染色したときの結果を示す。各パネル内の数値は、CD19細胞の中の免疫グロブリンの各クラスを発現する細胞の比率(%)を示す。例えばeの1列目の90.1は、IgMを発現する骨髄由来細胞の比率である。
これらの結果から、BM、脾臓、PB、LNの各組織において、ヒト由来免疫グロブリンが高率に発現していることが示された。
次に、マウスにおいて生着したヒトリンパ系細胞の抗原特異性応答を調べるため、実施例1で作製したマウスを100μgの卵白アルブミン(OVA)で免疫し、OVA−特異的IgM及びIgGの存在をELISAにより解析した。レシピエントマウスの血漿を10倍(IgM解析用)又は3倍(IgG解析用)に希釈し、各サンプルについて吸光度を測定した。また、レシピエントマウスからB細胞を採取し、RPMI/FCS(ウシ胎児血清)/Pokeweed mitogen培地で5日培養した。その後培養上清中の免疫グロブリンをELISAにより測定した。陰性対照として、ヒト血清中の免疫グロブリンを測定した。
結果を図2に示す。図2においてパネルaはIgM、パネルbはIgGについての結果である。グラフは、左から血漿、培養上清、陰性対照1(ヒト血清)、陰性対照2(陰性対照1の血清の1/10量)を示す。図2より、抗原特異的IgM及びIgGが高率に産生されていることが示された。
〔実施例3〕 B系細胞の分化と成熟化
レシピエントマウスの末梢血(PB)、骨髄(BM)及び脾臓からセルソーターによりヒトCD19細胞(B細胞)を採取し、B細胞によるIgM、IgG、IgD及びIgAの発現を調べた。CD19細胞におけるIgM/IgDの表面発現はPBでは90.0%/54.0%、BMでは19.7%/3.4%、脾臓では59.0%/22.7%であった。
脾臓細胞をさらにヤマゴボウマイトジェン(PWM)を用いて試験管内で5日間培養した。また、100μg/mlのOVAで免疫したレシピエントマウスも作製した。続いて、培養上清及び血漿中へのヒト免疫グロブリンの分泌をELISAを用いて調べた(表1)。PWMを用いた5日間培養の培地(上清)は、114ng/ml〜19.8μg/mlのIgM、2.6〜47.6ng/mlのIgG、及び1.9〜5.7ng/mlのIgAを含んでいた(表1)。


レシピエントマウスから採取した血漿は、17.2〜225μg/mlのIgM、4.1〜823ng/mlのIgG、及び9.4〜553ng/mlのIgAを含んでいた。
表1に示す通り、レシピエントマウスをOVAで免疫した場合、ヒトB細胞は、OVA特異的IgMを含めて、多量のIgM、IgG及びIgAを分泌した。従って、本実施例において、新生児NOD/SCID/B2Mマウスにおいて産生されるヒトB細胞は、成熟してヒト由来IgM及びIgDを産生し、さらに抗原特異的かっヒト由来のIgM、IgG及びIgAを産生する機能を有することが示された。
これらの知見から、本発明のマウスにより得られるB細胞は、ヒト抗体産生細胞として使用するに止まらず、重症感染症の病原微生物や腫瘍に対するヒト免疫グロブリン(モノクローナル抗体)を産生するため極めて有用であることが示された。
〔実施例4〕 マウス生体内におけるヒト由来T系細胞の解析
本実施例では、レシピエントマウスのBM、脾臓及びPBにおけるヒトT細胞の存在(CD45及びCD3)についてフローサイトメトリー解析を行なった。
結果を図3に示す。図3a〜cの各パネルはそれぞれBM(a)、脾臓(b)、PB(c)の解析結果である。T細胞は、B細胞と比較して少数ではあるが分化しており、レシピエントへの移植後3箇月目のCD3細胞は、BMで0.17%、脾臓で1.44%、PBで1.8%であった。
HLADRCD11c表現型を特徴とする抗原提示細胞(APCs)は、BMで1.09%(図3d)であった。なお、胸腺において、CD19IgMのB細胞が同定された(図3e)。
〔実施例5〕 リンパ系組織のFISH解析と免疫蛍光分析
in situでのヒトリンパ細胞の分布を調べるために、レシピエントマウスに由来する脾臓を用いて、ヒト及びマウス染色体について二重FISH解析を行なった。FISHは、常法に従った(Vysis)。サンプル解析には、レーザースキャニング共焦点顕微鏡(LSM510Meta:Carl Zeiss)を用いた。
ヒトX染色体プローブを用いた実験から、FACS分析の結果に矛盾しない高頻度のヒト細胞が得られた。ヒト及びマウスX染色体を用いた二重FISH分析から、マウス起源の間質細胞も、脾臓に存在することが明らかとなった(図4)。
ヒト細胞は、緑色のシグナル(ヒトX染色体)として同定された(図4a)。レシピエントマウス由来の脾臓細胞の一部は、マウス抗ヒトCD3で赤色に染色された(図4c)。図4bはパネルaとbを重ね合わせた図であり、青く染まっている箇所は核を示す。
レシピエントマウスは、移植前にはいずれの成熟リンパ細胞も欠いているが、ヒトCB由来T細胞除去CD34+細胞を移植することにより、マウス内でヒト由来リンパ系組織をうまく再構築することができた。
また、組織標本について免疫組識染色を行なった。マウスから採取した脾臓組識の免疫組織染色の結果を図4d及びeに示す。大多数の脾臓細胞は、抗ヒトIgM陽性(d)、抗ヒトIgD陽性(e)に赤く染色され、極めて高率にヒト由来脾臓細胞が生着していることが示された。さらに、脾臓組織をマウス抗ヒトCD3で染色した結果、脾臓の一部が抗ヒトCD3で陽性(赤色)に染色された(図4f)。そして、濾胞樹状細胞に対する特異抗体を用いて免疫染色を行うことにより、ヒトAPCsの存在も確認することができた(図4g)。
〔実施例6〕 異種宿主におけるヒト細胞の多細胞系再構築
本実施例は、造血細胞によって再構築される「ヒト型化マウス」を開発することを目的とした。ヒトCB造血幹細胞/前駆体細胞のレシピエントには、新生児NOD/SCID/IL2rg−null(NOD.Cg−PrkdcscidIL2rgtm1Wj1/Sz)マウス(Jackson Laboratory)を用い、当該マウスへのヒト造血幹細胞の移植は実施例1に記載の方法とほぼ同様の方法で行った。臍帯血(CB)細胞は日本赤十字センター臍帯血バンクから得た。書面によるインフォームドコンセントを得た後に、廃棄対象となった臍帯血からCB細胞を採取した。マウス抗ヒトCD3、CD4、CD8、CD11b、CD19、CD20、CD56及びグリコホリンAモノクローナル抗体(BD Immunocytometry)を用いて単核細胞(MNCs)からLin(lineage−antigen)陽性細胞を除いた。CD34造血幹細胞集団を高純度で単離するために、単核細胞を抗ヒトCD34ミクロビーズ(Miltenyi Biotech)とともに10℃で30分間インキュベートし(製造者プロトコールにしたがった。)、細胞を磁気カラムに2回通した。その結果、濃縮されたCD34細胞の純度は95%以上となり、CD19細胞及びCD3細胞の割合は0.1%以下となった。上記のように調製したLinCD34細胞(1×10個)を静脈注射により移植する前に、予め新生NOD/SCID/IL2rg−nullマウス及びNOD/SCID/β2mnullマウスに100cGyの全身照射を施した。
NOD/SCID/IL2rg−nullマウスは、成熟B及びT細胞が完全に欠損していることに加えて、NK細胞の活性レベルが著しく低いために、当該マウスをレシピエントに用いる場合には、異種細胞を拒絶する危険性を低下させることができる。また、新生児は免疫的に未成熟であるため、新生児レシピエントが成長する間に、ヒト幹細胞は定着し、そこから分化した造血系の細胞を得ることができる。実際、1×10個のLinCD34細胞は、レシピエントマウスのBMに効率的に移植され、1次または2次リンパ臓器において多細胞系統の分化した細胞を生じさせた。
実施例2と同様に、移植後3ヶ月目のレシピエントマウス生体内におけるヒト由来B系細胞を解析した。FACSCalibur(Becton Dicinson)を用いてヒトCD45とその系列マーカー(lineage marker)の発現を解析した。その結果、レシピエントマウスの造血系において、全てのヒト造血系構成要素を含んでいた。レシピエントマウスのBMでは、ヒトGPA赤血球は9.5±6.2%(n=5)、ヒトCD41巨核球は1.64±0.42%(n=5)の頻度で存在した(図5A)。
また、ヒトCB由来LinCD34細胞は、BM内でCD33脊髄細胞、CD19B細胞、及びCD3T細胞を産生した(それぞれ図5B〜D)。
このNOD/SCID/IL2rg−nullマウスの優位性を評価するために、既存のマウスの系統の中で最も移植効率のよいと考えられているNOD/SCID/β2mnullマウス(NOD/LtSz−Prkdcscid/Prkdcscid/β2mnull)(Jackson Laboratory)と移植レベルについて比較した。1×10個のLinCD34由来のヒトCB細胞をNOD/SCID/β2mnullマウスに、又はNOD/SCID/IL2R−γcnullマウスに移植した。そして、移植3ヶ月後のレシピエントマウスのBM、脾臓、及び末梢血(PB)におけるヒトCD45細胞の移植レベルを解析した。
その結果、PBでは、NOD/SCID/IL2rg−nullマウス(68.9±11.6%、n=5)はNOD/SCID/β2mnullマウス(12.4±5.9%、n=5)に比べてヒト細胞の移植レベルが有意に高く、ヒト成熟赤血球(図5E)及び血小板(図5F)の両方が、ヒト白血球と共に確認された。NOD/SCID/IL2rg−nullマウスはBM(72.9±9.8%、n=5)及び脾臓(54.5±8.0%、n=5)においても高率の移植レベルを示した(表2)。
BM、脾臓と同じく末梢血においてもヒト細胞が循環するために、特に外因性の抗原またはサイトカインで刺激される場合に、ヒト細胞の遊走や流動を解析することが可能である。

〔実施例7〕 NOD/SCID/IL2rg−nullにおけるヒト免疫系の分化
実施例6により、レシピエントマウス(NOD/SCID/IL2R−γcnullマウス)の免疫系において、ヒトB細胞、T細胞及び樹状細胞の存在を確認できた。B細胞発生の各段階、つまり、CD19CD20bi成熟B細胞(図6A、D)、CD10CD19未成熟B細胞(図6B、E)及びCD34CD19pro−B細胞(図6C、F)は、移植されたマウスのBM(図6A−C)及び脾臓の両方で確認できた(図6D−F)。
続いて、移植後3月におけるヒト免疫グロブリンの各アイソタイプの発現を、BM、末梢血(PB)及び脾臓(SP)由来のヒトCD19細胞において調査した。
結果を図7に示す。各ドットプロット中の数字は、細胞由来を示す各マーカー別の抗体と各免疫グロブリンクラスの抗体とに両陽性を示した細胞の割合(%)を示す。図7は、リンパ組織で分化するCD19B系細胞において免疫グロブリンが発現することは、当該リンパ組織がヒト免疫系に変化したことを示している。そして、BMにおいてはB前駆細胞が保たれ発現し、末梢血(PB)では成熟IgM及びIgDB細胞が産生された(図7)。BM及び脾臓においてヒトIgAB細胞が存在することは、ヒト細胞によって粘膜免疫系が再構築されることを示している。
次に、上記B細胞の機能を調べるために、レシピエントの血清に含まれるヒト免疫グロブリンの産生量をELISA法により定量した。ヒトCB由来LinCD34細胞の移植3月後のNOD/SCID/β2mnullマウス及びNOD/SCID/IL2rg−nullマウスを用いて、血清中のヒトIgM及びIgG抗体産生量をELISAにより解析した。
その結果、検査した全てのレシピエントの血清においてヒトIgM(600±197μg/ml、n=3)及びヒトIgG(256.7±76.4μg/ml、n=3)が存在した。従って、本実施例により、ヒト免疫グロブリンが効果的に産生することを確認することができた(表3)。

移植された前記のNOD/SCID/β2mnullマウス及びNOD/SCID/IL2rg−nullマウスにおける免疫グロブリン産生レベルの大きな違いは、レシピエントの血清中のヒトIgGクラス抗体量においてみられる。すなわち、効果的なクラススイッチが、NOD/SCID/IL2rg−nullレシピエントマウスにおけるヒト免疫系への変化よって調節されていることを示すものである。
次に、異種宿主におけるヒトT細胞の発生を解析した。胸腺(図8A)及び脾臓(図8B)におけるヒトT細胞の発生をフローサイトメトリーで解析した。
結果を図8に示す。胸腺では未成熟CD4CD8二重陽性T細胞が88.1%を占めたのに対し(A)、2次リンパ組織である脾臓ではCD4CD8またはCD4CD8といった一重陽性ヒトT細胞が大部分を占めた(B)。
さらに、免疫蛍光試験によって移植されたT細胞を同定した。胸腺におけるT細胞を抗ヒトCD4抗体(図8C)及び抗ヒトCD8抗体(図8D)で染色した。パラホルムアルデヒドで固定した切片を、温めたクエン酸バッファーで処置し、抗体で免疫染色した。検出はレーザースキャニング共焦点顕微鏡(LSM510Meta:Carl Zeiss)を用いた。図8Eは、図8CとDとの重ね合わせ像であり、これにより、胸腺細胞の大部分はCD4とCD8の2重陽性であることが示された。一方、脾臓を抗ヒトCD4抗体(緑)と抗ヒトCD8(赤)で染色すると、CD4またはCD8一重陽性のT細胞が優性であった(図8F)。
以上の結果より、免疫染色によって、レシピエントの胸腺においてCD4CD8T細胞、CD4CD8T細胞、CD4CD8ヒトT細胞が組織的構造を形成していることが明らかとなった。脾臓のような2次リンパ組織では、一重陽性T細胞は1.39±0.61(n=5,0.94−2.43)CD4/CD8比で存在した。上記結果は、ヒトCB−幹細胞/前駆体細胞由来T細胞が成熟及び増殖刺激を受けることを示しており、このことは、ヒト生体におけるものと同一であることを意味する。
抗原に対する免疫応答が最適に変化するには、樹状細胞又は単核細胞が抗原提示細胞として機能することが必要である。そこで、NOD/SCID/IL2R−γcnulマウスの脾臓におけるヒト樹状細胞の存在を検討した。
結果を図9に示す。図9Aには、脾臓におけるHLADRCD11c細胞の存在をフローサイトメトリーで示した。図9Bは、抗ヒトCD11c抗体による免疫染色により、ヒト樹状細胞が予想された形態学的特徴を保持していることを示した図である。図9Aより、HLADRCD11c樹状細胞は1.32±0.54%(n=6)の頻度でNOD/SCID/IL2rg−nullレシピエントマウスの脾臓に存在することが示された。また、ヒトCD11cで免疫染色することによって、移植されたヒト樹状細胞はマウス臓器における形態学的特徴を有することが示された(図9B)。レシピエントの脾臓において、ヒトCD19細胞及びCD3細胞により組織化された構造が形成することに伴い(図9C及びD)、異種リンパ組織においてヒト免疫系が機能的に再構築することが、ヒト樹状細胞の存在によって示された。
以上の結果から、免疫系において必要不可欠な3つの要素であるヒト由来T細胞、B細胞及び抗原提示細胞は、異種宿主(マウス)において適切な成熟を伴ってCB LinCD34細胞から高率に分化することが示された。
〔実施例8〕 ヒト粘膜免疫の再構築
胃腸管系の組織は、外因性の抗原に対する粘膜免疫による宿主防御を支える主要な部位である。本発明者は、レシピエントマウスのBM及び脾臓においてIgAB系細胞の存在することを確認したことから、異種宿主の消化管においてヒト免疫細胞が存在するかを調べた。胃から直腸にかけての消化管をマウスから摘出し、PBSで染色した後、3%パラホルムアルデヒドで1時間室温で固定した。パラフィン包埋サンプルを5μmにスライスし、免疫染色に用いた。免疫蛍光試験はレーザースキャニング共焦点顕微鏡を用いた。
結果を図10に示す。図10は、NOD/SCID/IL2rg−nullマウスの消化管における粘膜免疫の発生を示している。図10A及びBは、DAPIによる核染色とともに、抗ヒトCD3抗体(A、緑)及び抗ヒトIgA抗体(B、赤)で免疫染色することによって、レシピエントマウスの腸管標本においてヒト粘膜免疫が存在することを示す。図10Cは、絨毛の輪郭をDICイメージングによって明らかにした図である。図10Dは、A、B及びCの像を重ね合わせたものである。図10A〜Dから、免疫蛍光試験によって、レシピエントマウスの腸管絨毛にヒトIgAB細胞及びヒトCD3T細胞が共に含まれていることが示された。つまり、この結果は、粘膜免疫がヒトLinCD34幹細胞/前駆細胞によって再構築されたことを示している。加えて、移植マウスの回腸の漿膜下で節構造が認められた(図10E)。
Peyer’sパッチ様構造を、抗ヒトIgA(赤)、及び抗ヒトCD3(緑)抗体で染色すると、上皮下ドームにおいてヒトT細胞を豊富に含んでいることが明らかとなった(図10F)。以上のように、マウス腸間膜リンパ節もヒト細胞によって著しく再構築されていた。したがって、本発明のモデルは、胃腸管におけるヒト粘膜免疫系の役割を解析するための実験動物として有用である。
〔実施例9〕 移植されたB細胞による抗原特異的免疫グロブリンの産生
ヒト免疫系の組織的な応答を調べるために、そしてin vivoにおける抗原特異的なヒト抗体の産生を調べるために、移植3月後に3匹のNOD/SCID/IL2rg−nullレシピエントマウスに2回卵白アルブミン(100μg、sigma)で免疫した。卵白アルブミンは、100μgの水酸化アルミニウム(sigma)で乳化させて用いた。当該免疫後のフローサイトメトリーによって解析した結果、2回免疫後2週間経たレシピエントマウスのBMにおいて、ヒトCD38IgG細胞が効果的に誘導されていることが示された(図11)。図11A及びBは卵白アルブミン免疫前及び後におけるレシピエントマウスのBM細胞を、フローサイトメトリーによってヒトIgG細胞の存在によって分析した図である。
次に、免疫化レシピエントマウスの血清を用いて、卵白アルブミン特異的なヒトIgM及びIgGの産生を測定した。上記の3匹の免疫化マウス、即ちNOD/SCID/IL2rg−nullレシピエントマウスを卵白アルブミンで免疫した2週間後に、レシピエントマウスの血清を採取し、卵白アルブミン特異的なヒトIgM及びIgGの存在をELISA法によって解析した。ヤギ抗ヒトIgM及びIgG抗体は、Bethylから購入し、これらはマウス抗ヒトIgM及びIgG抗体とクロス反応しないことを確認した後に用いた。免疫をしていないNOD/SCID/IL2rg−nullレシピエントマウス由来の血清を、非特異的IgM及びIgG対照として用いた。卵白アルブミン特異的なヒトIgM及びIgG抗体を解析するために、96マルチウェルプレートの底に、100μg/ml濃度の卵白アルブミンをプレーティングしてELISA法に用いた。
その結果、ELISAによって、ヒトIgM(図11C白カラム)及びIgG(図11C黒カラム)の光学濃度(Optical Density)は、免疫化レシピエント(Recipient)の血清では非免疫化レシピエント(control)と比較して非常に高いことが示された。また、ヒト細胞のキメラ化が高いレベルであることも示された(図11)。卵白アルブミンがT依存性抗原であることを考慮すると、ヒト免疫系特性に変化したヒト樹状細胞、T細胞及びB細胞は、異種宿主レシピエントマウスにおいて抗原特異的なヒトIgM及びIgGの産生をするために調和して機能したものであると考えられる。
〔実施例10〕 アロ抗原特異的なヒトT細胞の存在
本実施例は、異種宿主のリンパ組織中のLinCD24CB細胞から分化したヒトT細胞の、アロ抗原特異的な機能を明らかにしたものである。
ヒトT細胞をレシピエントの脾臓から単離した後、アロ抗原(alloantigen)特異的なCD4T細胞株及びCD8T細胞株を分化した。CD4T細胞株及びCD8T細胞株の両者を同種異型(allogenic)の標的細胞(target cells、TAK−LCL)と共培養し、同種異型標的細胞に対する細胞毒性を調べるために、51Cr遊離アッセイを行った。
さまざまな細胞数のエフェクター細胞(Effector cell)と、1×10個の51Cr標識同種異型標的細胞を、丸底マイクロタイターウェルにて10%熱非働化ウシ胎児血清を添加した0.2mLのRPMI1640中で培養した。標的細胞は、メディウムのみのウェル、及びメディウムに1%Triton X−100の入ったウェルにも添加し、それぞれの遊離量は、51Crの自発的な遊離及び51Crの最大遊離の値として後の計算で用いた。5時間後上清0.1mLをそれぞれのウェルから回収し、以下の計算式から特異的な51Cr遊離量を求めた。
(特異的な51Cr遊離量)(%)=(実測値(cpm)−自発遊離値(cpm))/(最大遊離値(cpm)−自発遊離値(cpm))×100
HLA拘束を決定するために、標的細胞を抗HLA−A,B,Cモノクローナル抗体(w6/32)(ATCC)又はHLA−DRモノクローナル抗体(L243)(ATCC)と30分間プレインキュベートし、その後、エフェクターTリンパ球で共培養した。それぞれの細胞毒性アッセイは、少なくとも2回行った。
KIN−LCLは、同種異型の標的細胞と、いずれのHLAタイプをも共有せず、陰性対照として用いた(図12、KIN−LCL、(×))。
また、エフェクター細胞と標的細胞のHLAタイプは以下のとおりである。T cells isolated from recipient spleen,HLA−A24/33,B44/52,Cw12/w14,DRB1*1302/*15021,TAK−LCL,HLA−A24/26,B62/−,Cw4/w9,DRB1*0405/*0901,KIN−LCL,HLA−A01/30,B13/17,Cw6/−,DRB1*0701/*0701.
結果を図12に示す。図12A〜Cは、3つのCD4T細胞株それぞれの、刺激細胞濃度(Effector/Target ratio)依存的な細胞毒性(%Cytotoxicity)を示す。ヒトCD4T細胞株による細胞毒性は、標的細胞として用いた同種異型LCL(TAK−LCL)に対して細胞毒性を示した(図12、none、(◆))。異種環境で産生されたヒトT細胞のMHC拘束を調べるために、抗HLAクラスI抗体(anti−HLA class I)及び抗HLA−DR抗体(anti−HLA−DR)を用いて、ヒトT細胞による細胞毒性の阻害アッセイを行った。その結果、細胞毒性はHLA−DR抗体(図12、anti−HLA−DR、(▲))によって阻害されたが、HLAクラスIモノクローナル抗体(図12、anti−HLA−class I、(■))では阻害されなかった。このことは、細胞毒性はHLAクラスIIで拘束されることを示している。
図12D〜Fは、3つのCD8T細胞株それぞれの、刺激細胞濃度依存的な細胞毒性を示す。CD8Tによる細胞毒性は、HLAクラスIモノクローナル抗体によって阻害されたが、HLA−DR抗体では阻害されなかった。このことは、通常の環境下で産生したCD8CTLによって介されるのと同様に、異種環境下で産生したCD8T細胞によって介される細胞毒性は、HLAクラスI抗体によって拘束されることを示している。
【産業上の利用可能性】
本発明により、新生児免疫不全動物を用いたヒト由来免疫担当細胞の製造方法を提供することができる。本発明の新生児免疫不全動物は、その体内にヒト由来の免疫系を構築することができるため、リンパ系組織の機能解析及びB細胞を用いたヒト由来抗体の作製に有用である。


【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト由来造血前駆細胞又は成熟造血細胞が移植された幼若な免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)であって、当該ヒト由来の免疫担当細胞、及び/又は当該免疫担当細胞由来の生理活性物質を産生することができる前記動物。
【請求項2】
請求項1記載の幼若な免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)を飼育してなる免疫不全哺乳動物又はその子孫。
【請求項3】
幼若な免疫不全哺乳動物が、新生児免疫不全哺乳動物又は胎児免疫不全哺乳動物である請求項1又は2記載の動物又はその子孫。
【請求項4】
造血前駆細胞が骨髄由来、臍帯血由来又は末梢血由来の細胞である請求項1記載の動物又は請求項2若しくは3記載の動物若しくはその子孫。
【請求項5】
免疫担当細胞が、B細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞及びNKT細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1記載の動物又は請求項2若しくは3記載の動物若しくはその子孫。
【請求項6】
生理活性物質がサイトカイン及び/又は免疫グロブリンである請求項1記載の動物又は請求項2若しくは3記載の動物若しくはその子孫。
【請求項7】
免疫グロブリンが、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEからなる群から選択されるいずれかのものである請求項6記載の動物又はその子孫。
【請求項8】
免疫不全哺乳動物が免疫不全マウスである請求項1記載の動物又は請求項2若しくは3記載の動物若しくはその子孫。
【請求項9】
ヒト由来造血前駆細胞又は成熟造血細胞を幼若な免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)に移植することを特徴とする、当該ヒト由来の免疫担当細胞、及び/又は当該免疫担当細胞由来の生理活性物質を産生することができる動物又はその子孫の作製方法。
【請求項10】
幼若な免疫不全哺乳動物が、新生児免疫不全哺乳動物又は胎児免疫不全哺乳動物である請求項9記載の方法。
【請求項11】
造血前駆細胞が骨髄由来、臍帯血由来又は末梢血由来の細胞である請求項9記載の方法。
【請求項12】
免疫担当細胞が、B細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞及びNKT細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項9記載の方法。
【請求項13】
生理活性物質がサイトカイン及び/又は免疫グロブリンである請求項9記載の方法。
【請求項14】
免疫グロブリンが、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEからなる群から選択されるいずれかのものである請求項13記載の動物又はその子孫。
【請求項15】
免疫不全哺乳動物が免疫不全マウスである請求項9記載の方法。
【請求項16】
請求項1記載の動物又は請求項2〜8のいずれか1項に記載の動物若しくはその子孫から免疫担当細胞を回収し、当該免疫担当細胞を抗原又は刺激物質の存在下で培養し、得られる培養物からヒト由来抗体を採取することを特徴とする前記抗体の製造方法。
【請求項17】
免疫担当細胞が、B細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞及びNKT細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項1記載の動物又は請求項2〜8のいずれか1項に記載の動物若しくはその子孫を抗原又は刺激物質で免疫し、得られる免疫動物から当該ヒト由来抗体を採取することを特徴とする前記抗体の製造方法。
【請求項19】
抗体の採取源が血漿又は血清である請求項18記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載の動物又は請求項2〜8のいずれか1項に記載の動物若しくはその子孫に、細菌、ウイルス、腫瘍細胞及び腫瘍抗原ペプチドからなる群から選択されるいずれかのものが投与された疾患モデル動物又はその子孫。
【請求項21】
疾患が感染症である請求項20記載の動物又はその子孫。
【請求項22】
被験物質を、請求項1記載の動物、又は請求項2〜8、20及び21のいずれか1項に記載の動物若しくはその子孫に投与して、被験物質の有効性を評価することを特徴とする、免疫関連医薬のスクリーニング方法。
【請求項23】
免疫関連医薬がワクチンである請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項1記載の動物又は請求項2〜8のいずれか1項に記載の動物若しくはその子孫から免疫担当細胞を回収することを特徴とする前記免疫担当細胞の製造方法。
【請求項25】
請求項1記載の動物又は請求項2〜8のいずれか1項に記載の動物若しくはその子孫から回収された免疫担当細胞。
【請求項26】
請求項25記載の免疫担当細胞を含むワクチン。
【請求項27】
請求項20記載の動物又はその子孫から免疫担当細胞を回収することを特徴とする前記免疫担当細胞の製造方法。
【請求項28】
請求項20記載の動物又はその子孫から回収された免疫担当細胞。
【請求項29】
請求項28記載の免疫担当細胞を含むワクチン。
【請求項30】
請求項1記載の動物又は請求項2〜8のいずれか1項に記載の動物若しくはその子孫から回収されたヒト由来抗体。
【請求項31】
請求項25又は28記載の免疫担当細胞を抗原又は刺激物質の存在下で培養した培養物から採取されたヒト由来抗体。
【請求項32】
請求項20記載の動物又はその子孫から回収されたヒト由来抗体。
【請求項33】
請求項32記載のヒト由来抗体を含むワクチン。

【国際公開番号】WO2004/110139
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507024(P2005−507024)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008784
【国際出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(800000035)株式会社産学連携機構九州 (34)
【Fターム(参考)】