説明

ヒトCYP酵素を阻害するためのショウガ画分

本発明は、ショウガ画分の調製方法、この方法により調製した画分、及び活性物質の経口での生体利用効率及び薬物動態学に好ましい影響を与えるための、ヒトチトクロームP450(CYP)酵素(特にチトクロームP450 3A4、CYP 3A4)の阻害用のそれ自身の又は薬剤と組み合わせた使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ショウガ画分の調製方法、この方法により調製した画分、及び該画分の、活性物質の経口での生体利用効率及び薬物動態学に好ましい影響を与えるための、ヒトチトクロームP450(CYP)酵素(特にチトクロームP450 3A4、CYP 3A4)の阻害用の単独で又は薬剤と組み合わせた使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
チトクロームP450(CYP)酵素は、薬物代謝において中心的な部分を担う。これら酵素は、肝臓だけでなく、腸壁、肺、腎臓及び他の肝外の器官において主に見出される。経口投与された活性物質は、いわゆる“初回通過効果”の結果として乏しい生体利用効率を示し、例えばこれら活性物質は、体循環に達する前に、腸壁又は肝臓で代謝される。
初回通過代謝を阻害する場合、経口投与された活性物質の生体利用効率における顕著な増加を達成できる(Gibbs, Megan A. and Hosea, Natalie A.: Factors affecting the clinical development of cytochrome P450 3A substrates; Clin. Pharmacokinet. 2003; 42(11), 969-984)。投与された活性物質よりもより高い生体利用効率をもたらす、活性物質−活性物質相互作用の多くの例は、このような効果に基づく。このような場合において、活性物質の初回通過代謝は、同時に投与された他の活性物質により阻害される。
【0003】
初回通過代謝の阻害は、活性物質の生体利用効率を増加させることに加えて、絶対的バイオアバイラビリティが減少するに従って増加することが知られる、生体利用効率における変動を顕著に削減する。生体利用効率における変動を削減することにより、経口医薬品治療の治療的な成功が大幅に向上し、それは過度に高い医薬品レベル(望まれない副作用のリスク)又は過度に低い医薬品レベル(治療失敗のリスク)にさらされることの発生をより低くするためである。このような効果は、薬物治療におけるある利点を有するであろう。例えば、HIV薬品であるロピナビルは、CYP 3A4による初回通過代謝のため不十分な生体利用効率を有する。これがCYP 3A4の強力な阻害剤であるリトナビルと組み合わせた固定用量で投与される場合、顕著により高い経口の生体利用効率が、ロピナビルについて達成される。
【0004】
しかしながら、他の活性物質又は活性物質に似た物質と、乏しい経口生体利用効率を有する活性物質を組み合わせて初回通過効果を減少させる可能性はごくわずかである。これは、主に、付加的な活性物質の活性の様式に起因する。従って、例えば、倫理的な理由のため、HIVに感染していない患者に対して、同時に抗レトロウイルス活性物質(HIV感染の治療に用いられる)を与えることにより、非常に低い心臓脈管薬の生体利用効率を増加することはできない。許容される活性物質でさえ、活性物質を代謝する酵素の阻害目的で認可されていない。代わりに、医薬品添加物は、この点において有用であろう。例えば、グレープフルーツジュースのいくつかの構成成分は、CYP 3A4の強力な阻害剤であり、及び腸壁における医薬品の運搬物質(transporter)である。先行技術は、グレープフルーツジュースと共に医薬品を投与することが、経口投与した活性物質、例えばシムバスタチン、シクロスポリンA、テルフェナジン等の薬物動態学、安全性及び有効性における劇的な効果を有することを実証する多くの例を含む(Ameer, Barbara and Weintraub, Randy A.: Drug interactions with grapefruit juice; Clin. Pharmacokinet. 1997; 33(2):103-121)。
【0005】
(先行技術)
ショウガ(ジンジバーオフィシナリス(Zingiber officinalis))は、世界の多くの国々における伝統的な食品成分であり、種々の投与用の植物薬(phytopharmaceutical)としても使用される。例えば、粉末化したショウガの根は、船酔いを防ぐための製剤として利用できる。これは、非蒸気揮発性のコショウ又は辛い画分、加えて揮発性のエーテル油画分を含んだ、約5から8%の高粘度の液体バルサム(含油樹脂)を含む。淡い黄色のエーテル油は、含油樹脂の約20から25%を占める。エーテル油の組成は、その由来に起因する顕著なばらつきを受ける。これは、その主成分として、ビスアボロン(bisabolone)タイプのセスキテルペン炭化水素、特に、(-)-α-チンギベレン(zingiberene)及び更に(-)-β-セスキフェランドレン、(-)-β-ビサボレン、(+)-アル-クルクメン及び非環式のα-ファルネセンを含む(Deutsche Apothekerzeitung 1997, 137(47), 40-46)。
辛い画分の主成分は、含油樹脂の約25%を占め、ジンジェロールの同族列を構成する(HagerROM 2002: Zingiberis rhizoma, Springer Verlag, Heidelberg)。
【0006】
(発明の詳細な説明)
驚くべきことに、種々の活性物質及び他の化合物によるCYP阻害のインビトロの試験が、本発明による抽出方法により得られたショウガ画分を用いることにより、種々のヒトCYPの強力な阻害を達成するであろうことを示した。
この画分は、市場で入手可能な全体のショウガエキス(いわゆる含油樹脂)と比較して、及び最初の抽出工程で分離されるエーテル(ethereal)ショウガ油の高い蒸発画分(IC50約23μg/ml)と比較しても、より高い阻害の可能性を示す(1μg/mlより低い範囲におけるIC50)。
ここで得られる画分は、ヘキサンに難溶解性であり、既にCYP 3A4を阻害することが示された(US5,665,386)エーテル油の画分とは、この特性において区別される。
【0007】
本発明の方法は、市場で入手可能な含油樹脂から出発し、有機溶媒及び水性溶媒を用いた多くの抽出工程を含む。
従って、本発明の第一の目的は、以下の工程を含む、エーテル油を分離すると同時に、ショウガ画分を単離する方法である:
(a)非極性の有機溶媒で含油樹脂を抽出する工程;
(b)工程(a)からの合わせた残渣を、温水で抽出し、次いで上澄みを廃棄する工程。
従って、得られる残渣は、CYP 3A4に対して、30.5から42.0μg/mlのIC50の値を有する。この値は、実施例の項で記載する実験において、人の肝臓のミクロソームで達成される。
従って、好ましい態様において、得られる残渣は、以下の工程を含む方法で更に精製される:
(c)工程(b)からの合わせた残渣を、温めたアルコールで抽出する工程;
(d)工程(c)からの合わせた上澄みを濃縮する工程。
【0008】
工程(d)で得た画分は、アルコール、好ましくはメタノール又はエタノールに溶解し、及び任意で、例えば固相抽出及び階段溶離により更に分画してよい。
工程(a)で使用して良い非極性の有機溶媒は、本発明により、低沸点のアルカン溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタン又はシクロヘキサン、石油化学の留出物、推進剤及び溶媒、例えばガソリン、ケロシン、石油エーテル、石油及び他の低沸点、揮発性及び非極性の溶媒、例えばジエチルエーテル、tert-ブチル-メチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン及びキシレンを含むが、ヘキサンが好ましく使用される。
工程(c)及び(e)で使用するアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール及び他の位置異性体のブタノール、n-ペンタノール及び他の位置異性体のペンタノールから選択して良く、これらは同一又は異なって良い。好ましくはメタノールを使用する。各場合における抽出剤は、使用する含油樹脂1g当たり4から10ml(4から10ml/g)、好ましくは4から7ml(4から7ml/g)の量で使用する。
水性の抽出は、好ましくは、50から80℃、特に好ましくは65から75℃の温度で行う。
この方法の代わりとして、抽出は、有機溶媒を用いた液−液抽出の代わりに、適切な水性の有機酸を用いて行っても良く、又は適切な非極性の吸収剤を用いた固相抽出を行っても良い。
【0009】
工程(a)、(b)及び(c)で行う抽出は、1回又は数回行って良く、及び一の工程の種々の抽出からの所望の生成物を含んだ相を合わせても良い。好ましくは、抽出を、各工程で3回行い、生成物を含んだ各相を合わせる。次いで、合わせた相を更に処理する。
本発明の第二の目的は、本発明の一の方法により得られるであろう、本発明のショウガ画分である。
【0010】
以下の式の化合物を含み、これらのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つを含むショウガ画分が好ましい;
【化1】

(式中、R1はH、CH3を意味し
R2はH、CH3を意味し、
R3はH、OH、OCH3を意味し、
R4はH、O、OH、OCH3、OC(O)CH3を意味し、及び
R5はH、O、OH、OCH3、OC(O)CH3を意味する。)
【0011】
前記一般式のIからVIの特に好ましい化合物、これらのエナンチオマー又はジアステレオマーの例は以下を含む:
【化2】



【0012】
一般式IからIIIの化合物は、本発明により得られたショウガ画分から同定した。このショウガ画分をより正確に特徴付け及びその含有量を定めるために、個々の成分の精製した画分の単離を目的として更に適切に精製した。
これを行うために、本発明で得られたショウガ画分を、更に、C18相で固相抽出することで精製した。固相抽出の溶離剤を乾燥し、更に半調製の(semipreparative)高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)でさらに詳細に調べた。これを、半調製のHPLC系中に、5から10mgのほんの少量のアリコートを注入することにより行った。次いで、HPLCカラムの溶離剤を60から65の個々の画分で回収し、次いで得られた各画分を各種P450試験反応におけるその阻害効果を調査した。これら調査の結果を、より高い阻害効能の明確に定義した領域(ピーク)を示した。
【0013】
個々の画分の成分の化学構造を明確にするために、選択したサンプルを更に精製し、HPLCを繰り返すことで濃縮し、次いで質量分光法及びNMR分光法により詳しく調べた。
本発明により定義された化合物(1)から(8)は、文献で既に十分に記載された、不揮発性のショウガの辛い画分の典型的な成分である。ジンジェロールの種々の修飾生成物及びそれらの種々の相同物に加えて、公知のショウガの主成分である、[6]-ジンジェロール(4)も見出された。
これは、記載した方法で調製したショウガ画分が、不揮発性の辛い画分に由来し、及びCYP酵素の阻害が、ジンジェロールタイプの成分、及び構造的な修飾物及びこれらの崩壊産物によりもたらされることを確認した。
本発明の第三の目的は、本発明によるショウガ画分及びこれから単離される一般式IからIIIの1以上の化合物の、チトクロームP450酵素、特にチトクロームP450 3A4、1A2、2C19及び2C9の阻害用の医薬組成物の調製のための使用である。好ましくは、チトクロームP450 1A2、P450 2C19及びP450 2C9が阻害される。
【0014】
本発明の第四の目的は、本発明によるショウガ画分、更に、これから単離される一般式IからIIIの1以上の化合物を、活性物質の経口の生体利用効率及び薬物動態学への好ましく影響するため、ヒトチトクロームP450 (CYP)酵素、特にチトクロームP450 3A4、1A2、2C19及び2C9を阻害する医薬組成物を調製するための医薬組成物と同時に使用することである。好ましくは、チトクロームP450 1A2、2C19及び2C9が阻害される。
多くの活性物質は、いわゆる初回通過代謝に由来する、低い経口の生体利用効率を有する。これは、活性物質が血流を介して標的器官に移動する前に、経口投与された活性物質の小腸又は肝臓における代謝機能停止である。
前記活性物質、すなわち医薬品の薬理的な活性成分は、血液の組成(例えば血中脂質)に影響する物質を含む、最も広義の循環系に作用するための医薬品;中枢神経系に作用する医薬品;代謝疾患(例えば糖尿病)を治療するための医薬品;最も広義の炎症過程の治療のための医薬品;免疫系に影響するための医薬品;バクテリア、原虫、多細胞寄生生物、ウイルス、菌類又はプリオンによる感染を治療するための医薬品;種々の器官、特に脳における退行変性過程の停止又は緩和のための医薬品、及びガンの治療のための医薬品から選択して良い。
【0015】
用語“医薬品”とは、人間又は動物の体に対して又はこれらの中に投与することにより以下のことが意図される、物質又は物質の製剤を意味する;
1.病気、栄養、肉体的損傷又は病的な障害を治療、緩和、予防又は検出すること。
2.身体又は精神状態の性質、状態又は機能を示すこと。
3.人間又は動物の体で生成する活性物質又は体液を置き換えること。
4.体に対して有害な病原体、寄生生物又は異物を防ぎ、除去し又は溶かすこと。
5.体又は精神状態の性質、状態又は機能に影響すること。
この場合におけるチトクロームP450(CYP)酵素は、現在の科学知識による医薬品の代謝に関する、チトクロームP450モノオキシゲナーゼのファミリーからの酵素である。特に、これらは、CYP 1A、CYP 1B、CYP 2A、CYP 2B、CYP 2C、CYP 2D、CYP 2E、CYP 2F、CYP 2J、CYP 3A、CYP 4Aファミリーの全てのP450酵素である。
【0016】
本発明の第五の目的は、治療を必要とする患者に対して、請求項8から10のいずれか1項に記載するショウガ画分と共に医薬化合物を経口投与することを含む、経口投与のための医薬化合物の生体利用効率を向上するための、医薬組成物の調製方法であって、ショウガ画分が、医薬化合物単独で投与した場合と比べて医薬化合物の生体利用効率を増加するために必要とされる量で投与される方法に関する。医薬化合物は、チトクロームP450酵素、好ましくはP450 3A4、1A2、2C9及び2C19で代謝されることを特徴とする。
本発明の第六の目的は、本発明により得られるであろうショウガ画分、又は一般式IからIIIの化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つを、任意で1以上の医薬品として許容されるキャリアー及び/又は希釈剤と共に含んだ、活性物質の経口の生体利用効率及び薬物動態学を向上するための医薬処方に関する。
【0017】
好ましくはこの種の医薬組成物は、任意に物理的にお互い分けられた2以上の成分から成り、以下を含む:
(a)本発明によるショウガ画分、及び1以上の医薬品として許容される希釈剤及び/又はキャリアーから成る第一の成分:
(b)チトクロームP450酵素により代謝される医薬化合物、及び1以上の医薬品として許容される希釈剤及び/又はキャリアーを含んだ、医薬組成物を含む第二の成分。
好ましい医薬組成物において、第一の成分は、一般式IからIIIの化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つから成る。
より好ましい医薬組成物において、第一の成分は、式(1)から(8)の化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つから成る。
第二の成分に含まれる医薬組成物は、チトクロームP450 1A2、3A4、2C9及び2C19により好ましく代謝される。
【0018】
医薬品として許容されるキャリアー及び/又は希釈剤として、トウモロコシデンプン、ラクトース、グルコース、微結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース又は脂肪質の物質、例えば固い脂肪又はこれらの適切な混合物を、通常の方法で、通常のガレヌス製剤、例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル、粉末、懸濁液、溶液、定量噴霧エアロゾル又は坐剤に取り込んで良い。
【0019】
(実施例)
10gの含油樹脂(Eramex Aromatics GmbH)を50mlのヘキサンで3回抽出して、上澄み(有機相)を捨てる。残渣を合わせて、70℃まで熱した40mlの水で3回抽出する。上澄みを再度捨てて、合わせた残渣を70℃まで熱した40mlのメタノールで3回抽出する。残渣を捨てる。得られる上澄みを、ロータリーエバポレーターで濃縮し、メタノールで再度溶解する。図1は、エーテル油の分離を伴う、本発明による含油樹脂のショウガ画分の抽出方法の概略を示す。
次いで、結果得られたショウガ画分を、更にC18相上での固相抽出により精製した。固相抽出の溶離剤を乾燥し、更に半調製の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で更に詳しく調べた。このため、5から10mgの少量のアリコートを半調製のHPLC系に注入した。次いで、HPLCカラムの溶離剤を60から65の個々の画分で回収し、結果得られた各画分を、種々のP450試験反応における阻害効果に関して詳しく調べた。これら調査の結果(図2から5)は、より高い阻害の有効性の明確に区画化された領域(ピーク)を示した。
【0020】
ヒト肝臓ミクロソームをもちいた実験
試験(A)
エリスロマイシンのN-脱メチル反応を、CYP 3A4に対する特定の試験反応として使用した。
ショウガ画分又は抽出方法の種々の画分を、CYPの阻害について詳しく調べる。これは、100μgのヒト肝臓ミクロソームと、0.01から100μgのショウガ画分、及び7.34μg(10nmol)のエリスロマイシンを、NADPHの存在下のpH7.4でインキュベートすることを含む。CYP活性の阻害は、全くショウガエキスを用いないコントロールのインキュベーション(同じ濃度の溶媒をもちいる)と比較することにより決定する。
【0021】
試験(B)
フェナセチンのO-脱エチル反応を、CYP 1A2に対する特定の試験反応として使用する。
ショウガ画分又は抽出法の種々の画分を、CYPの阻害について詳しく調べる。これは、125mgのヒト肝臓ミクロソームと、0.01〜100mgのショウガ画分及び5nmolのフェナセチンを、NADPH(1mM)の存在下におけるpH7.4で、250μlの合計容積でインキュベートすることを含む。CYP活性の阻害は、全くショウガエキスを用いないコントロールのインキュベーション(同じ濃度の溶媒をもちいる)と比較することにより決定する。
【0022】
試験(C)
S-メフェニトインの4'-ヒドロキシル化を、CYP 2C19に対する特定の試験反応として使用する。
ショウガ画分、又は抽出方法の種々の画分を、CYPの阻害について詳しく調べる。これは、125mgのヒト肝臓ミクロソームと、0.01〜100mgのショウガ画分及び12.5nmolのS-メフェニトインを、NADPH(1mM)の存在下におけるpH7.4で、250μlの合計容積でインキュベートすることを含む。CYP活性の阻害は、全くショウガエキスを用いないコントロールのインキュベーション(同じ濃度の溶媒をもちいる)と比較することにより決定する。
【0023】
試験(D)
トルブタミドの水酸化を、CYP 2C9に対する特定の試験反応として使用する。
ショウガ画分、又は抽出方法の種々の画分を、CYPの阻害について詳しく調べる。これは、125mgのヒト肝臓ミクロソームと、0.01〜100mgのショウガ画分及び37.5nmolのトルブタミドを、NADPH(1mM)の存在下におけるpH7.4で、250μlの合計容積でインキュベートすることを含む。CYP活性の阻害は、全くショウガエキスを用いないコントロールのインキュベーション(同じ濃度の溶媒をもちいる)と比較することにより決定する。
【0024】
(処方)
CYP 3A4の阻害に対する必須条件は、ショウガエキスが腸管中に大量に溶解することである。ショウガエキスは非常に水に溶けにくいので、水性媒体中に良く溶ける処方を開発する必要があった。この理由のため、種々の医薬品の通常の賦形剤を用いて、処方のスクリーニングを行った。次いで、特定の適切な賦形剤を用いて、より広範囲にわたる試験を行い、品質及び量の両方の関係で最適化した処方を得た。
1.水性媒体中におけるショウガエキスの高い過飽和を伴う機能性賦形剤の選択
1.1 溶融できる賦形剤を用いた処方の調製
30mgのショウガエキスを、丸いくぼみを有するアルミニウムのプレート中で、60mgの賦形剤と共に攪拌しながら、賦形剤の融点よりも約5℃高い温度まで加熱し、次いで攪拌して混合した。次いで、混合物を、固形の製剤が得られるまで、攪拌しながら冷却した。次いで、これを直接インビトロ試験に使用した。
【0025】
1.2 溶融しない賦形剤を用いた処方の調製
200mgのショウガエキスを、2mlのアルコール、好ましくはエタノールに溶解した。次いで、各場合において、300μlを、60mgの賦形剤と共に激しく攪拌し、次いでアルコールを蒸発させた。次いで、得られた固形物を、直接インビトロ試験に使用した。
1.3 インビトロの放出の結果
方法:
各場合において10mgのショウガエキスを含んだ30mgの処方を、37℃の温度で20mlの水中で攪拌し、放出を、2、5、10、15、20、25及び30分後、280及び358nmでのUV測定により決定した。この活性物質の負荷は、200mlの水と共に摂取される、100mgのヒトの投与量に対応する。処方されていないショウガエキスを参照物質として使用した。放出を、個々の処方の消失と参照形態の消失の商から計算した。
【0026】
表1は、最も重要な結果の概略を与える。
表1:37℃の水における種々の処方の最大限の放出の概略
【表1】

【0027】
最も適切な処方を有する、33%の高い活性物質の負荷を選択することでさえ、ショウガエキスが完全に放出され、20倍以上の過飽和に対応することが明らかである。従って、ショウガエキスの良好な吸収が予想される。
【0028】
2.ショウガエキスを用いて増進できる生体利用効率、ショウガエキス及び活性物質の組み合わせのための処方例
各場合において、本発明のショウガエキスとその生体利用効率を増進すべき医薬物質の組み合わせを使用する。これを、以下の種々の処方アプローチを用いて行って良い:
(i)ショウガエキス及び活性物質を別々に処方し、次いでこれらを同時に、又はショウガ製剤と医薬組成物の製剤を摂取する間の短い間隔で投与する(あらかじめCyp 3A4の飽和を達成するため)。
(ii)ショウガエキスと活性物質の半製品を調製し、次いでさらに最終的な固定した組み合わせを製造するために処理し、ショウガエキスと薬剤の放出を互いに適合させる。これは、例えば粒にしたショウガ製剤及び粒にした医薬組成物を、錠剤化賦形剤と共に圧縮して錠剤を製造することにより行うことができ、又はショウガエキスと薬剤の多粒子製剤を、共に単一のカプセルに充填する。
(iii)ショウガエキス及び薬剤を、固定した薬の組み合わせとして共に処方する。
【0029】
製剤の種々のタイプのいくつかの例を以下に記載し、これは本発明の全体の範囲を制限することなく、本発明の範囲を説明する。
【0030】
(実施例1)
ゲルサイアー44/14の溶融物へのショウガエキスの埋込及び硬カプセルへの充填によるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス及び40gのゲルサイアー44/14を、均一な溶融物を形成するまで、50℃で攪拌する。液体注入装置を用いて、得られた75mgの溶融物を、攪拌しながら#5硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に移す。これは、25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、150mgの溶融物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#4カプセルに充填し、225mgの溶融物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2カプセルに充填し、300mgの溶融物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2elカプセルに充填し又は450mgの溶融物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0カプセルに充填しても良い。
(実施例2)
ポロキサマー188の溶融物へのショウガエキスの埋込及び硬カプセルへ移すことによるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス及び40gのポロキサマー188を、均一な溶融物を形成するまで、64℃で攪拌する。液体注入装置を用いて、得られた75mgの溶融物を、攪拌しながら#5硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に移す。これは、25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、150mgの溶融物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#4カプセルに移し、225mgの溶融物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2カプセルに移し、300mgの溶融物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2elカプセルに移し又は450mgの溶融物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0カプセルに移しても良い。
【0031】
(実施例3)
クレモファーELの溶融物へのショウガエキスの埋込及び硬カプセルへ移すことによるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス及び40gのクレモファーEL及び15gの微結晶セルロースを、微結晶セルロースが均一に懸濁された均一な溶融物を形成するまで、48℃で攪拌する。液体注入装置を用いて、得られた93.8mgの溶融物を、攪拌しながら#5硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に移す。これは、25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、187.5mgの溶融物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#4カプセルに移し、281.3mgの溶融物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#1カプセルに移し、375mgの溶融物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#1カプセルに移し又は562.5mgの溶融物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0カプセルに移しても良い。
(実施例4)
PEG6000の溶融物へのショウガエキスの埋込及び硬カプセルへ移すことによるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス及び40gのPEG6000を、均一な溶融物を形成するまで、67℃で攪拌する。液体注入装置を用いて、得られた75mgの溶融物を、攪拌しながら#5硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に移す。これは、25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、150mgの溶融物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#4カプセルに充填し、225mgの溶融物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2カプセルに充填し、300mgの溶融物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2elカプセルに充填し又は450mgの溶融物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0カプセルに充填しても良い。
【0032】
(実施例5)
PEG6000/ポロキサマー188の溶融物へのショウガエキスの埋込及び硬カプセルへ移すことによるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス、20gのポロキサマー188及び20gのPEG6000を、均一な溶融物を形成するまで、67℃で攪拌する。液体注入装置を用いて、得られた75mgの溶融物を、攪拌しながら#5硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に移す。これは、25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、150mgの溶融物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#4カプセルに充填し、225mgの溶融物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2カプセルに充填し、300mgの溶融物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2elカプセルに充填し又は450mgの溶融物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0カプセルに充填しても良い。
(実施例6)
ショウガエキスとポロキサマー188の押し出し及び硬カプセルへ移すことによるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス及び40gのポロキサマー188をドライ混合し、及び1mmダイプレート(die plate)及びヘッドリムーバル(head removal)を有する16mmツインスクリュー押し出し機中で52℃で押し出す。形成したおよそ1mmの長さの円筒を、スフェロナイザー内で約51℃で丸め、次いでカプセル充填機を用いて硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に充填する。75mgを#5カプセル中に充填した場合、これは25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、150mgの押出物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#4カプセルに充填し、225mgの押出物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2カプセルに充填し、300mgの押出物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2elカプセルに充填し又は450mgの押出物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0カプセルに充填しても良い。
【0033】
(実施例7)
ショウガエキスとPEG6000の押し出し及び硬カプセルへ移すことによるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス及び40gのPEG6000をドライ混合し、及び1mmダイプレート及びヘッドリムーバルを有する16mmツインスクリュー押し出し機中で55℃で押し出す。形成したおよそ1mmの長さの円筒を、スフェロナイザー内で約51℃で丸め、次いでカプセル充填機を用いて硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に充填する。75mgを#5カプセル中に充填した場合、これは25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、150mgの押出物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#4カプセルに充填し、225mgの押出物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2カプセルに充填し、300mgの押出物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2elカプセルに充填し又は450mgの押出物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0カプセルに充填しても良い。
(実施例8)
ショウガエキスとポロキサマー188/PEG6000の押し出し及び硬カプセルへ移すことによるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス、20gのポロキサマー188及び20gのPEG6000をドライ混合し、及び1mmダイプレート及びヘッドリムーバルを有する16mmツインスクリュー押し出し機中で53℃で押し出す。形成したおよそ1mmの長さの円筒を、スフェロナイザー内で約51℃で丸め、次いでカプセル充填機を用いて硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に充填する。75mgを#5カプセル中に充填した場合、これは25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、150mgの押出物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#4カプセルに充填し、225mgの押出物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2カプセルに充填し、300mgの押出物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2elカプセルに充填し又は450mgの押出物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0カプセルに充填しても良い。
【0034】
(実施例9)
ショウガエキスとポロキサマー188/PEG6000の押し出し及び硬カプセルへ移すことによるショウガ製剤の調製
20gのショウガエキス、40gのクレモファーEL及び20gの微結晶セルロースを強く混合し、及び1mmダイプレート(die plate)及びヘッドリムーバル(head removal)を有する16mmツインスクリュー押し出し機中で50℃で押し出す。形成したおよそ1mmの長さの円筒を、スフェロナイザー内で約51℃で丸め、次いでカプセル充填機を用いて硬カプセル(ゼラチン又はHPLC)中に充填する。100mgを#4カプセル中に充填した場合、これは25mgのショウガエキスの投与量に対応する。同じように、200mgの押出物(50mgのショウガエキスの投与量に対応)を#3カプセルに充填し、300mgの押出物(75mgのショウガエキスの投与量に対応)を#2elカプセルに充填し、400mgの押出物(100mgのショウガエキスの投与量に対応)を#1elカプセルに充填し又は600mgの押出物(150mgのショウガエキスの投与量に対応)を#0elカプセルに充填しても良い。
実施例1から9で得られるカプセルを、効能がCYP 3A4酵素で削減される活性物質の標準的な通常の製剤を有する自由な組み合わせとして使用する。
【0035】
表2:CYP 3A4酵素に対する基質である活性物質の例
【表2】

【0036】
2つの薬物の形態をそれぞれ同時に、又はショウガ製剤と低下した効能の活性物質の摂取の間の約15分の時間遅延を伴って摂取する;時間遅延後の活性物質の摂取が好ましくは、それはCYP 3A4系が飽和することを確実にするからである。
【0037】
3.CYP 3A4に対する基質である活性物質用のペレット製剤
(実施例10)
シムバスタチンと微結晶セルロースのウェット押し出しによるシムバスタチン製剤の調製
20gのシムバスタチン、2gのクエン酸及び18gの微結晶セルロースをドライ混合し、0.8mmダイプレートを有する16mmツインスクリュー押し出し機中で同時に水を添加して室温で押し出す。製造した押し出したストリップを壊し、室温でスフェロナイザーで丸めて、次いで乾燥する。
(実施例11)
ロバスタチンと微結晶セルロースのウェット押し出しによるロバスタチン製剤の調製
20gのロバスタチン及び30gの微結晶セルロースをドライ混合し、0.8mmダイプレートを有する16mmツインスクリュー押し出し機中で同時に水を添加して室温で押し出す。製造した押し出したストリップを壊し、室温でスフェロナイザーにより丸めて、次いで乾燥する。
(実施例12)
ベラパミルと微結晶セルロースのウェット押し出しによるベラパミル製剤の調製
75gのベラパミル及び25gの微結晶セルロースをドライ混合し、0.8mmダイプレートを有する16mmツインスクリュー押し出し機中で同時に水を添加して室温で押し出す。製造した押し出したストリップを壊し、室温でスフェロナイザーにより丸めて、次いで乾燥する。
【0038】
表2及び3の全ての活性物質を同じように処方して良く、活性物質:微結晶セルロースの割合を選択して、全体の処方を100から300mgの範囲内に、すなわち活性物質の低い投与量(≦40mg活性物質)を有するようにし、40から80%のセルロースを使用し、一方でより多い活性物質の投与量は、良好な加工性のために必要とされる最小量の≧20%セルロースを使用する。望まれる場合、他の賦形剤を、溶解性を向上するため及び/又は安定化のために、製剤に添加しても良い。
(実施例13)
CYP 3A4基質及びショウガ製剤のカプセル中における、遅延放出ではない活性物質ペレットの、固定した医薬品の組み合わせ
各場合における所望の投与量に対応した量で各ペレット製剤を秤量することにより、全ての所望の組み合わせを極めて容易に達成できる。
いくつかの例を表3に示す。
【0039】
表3:異なる活性物質の組み合わせの例
【表3】

【0040】
(実施例14)
CYP 3A4に対する基質である活性物質の遅延放出を有するペレット製剤
実施例10から12の100gのペレット、又は他の活性物質の実施例の同じようなペレットを、以下の組成の遅延コーティング剤を用いてHuettlin-Coater Microlab又は他の適切な装置で被覆する。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース−フタレート 2.25g
ユードラジットS(Eudragit S) 0.25g
タルク 0.5g
トリエチルシトレート 0.5g
イソプロパノール 50ml
乾燥後、ペレットを得、これは約15分の遅延時間の後にのみ活性物質を放出する。これと遅延放出ではないペレットを組み合わせて、活性物質が流れ込むときに、すでにCYP 3A4が阻害されることを確実にする。
【0041】
(実施例15)
カプセル中のCYP 3A4基質及びショウガ製剤の遅延放出活性物質ペレットの固定した医薬品の組み合わせ
各場合において所望の投与量に対応した量で、各ペレット製剤を秤量することにより、全ての所望の組み合わせを極めて容易に達成できる。
【0042】
表4にいくつかの例を示す。
表4:異なる活性物質の組み合わせの例
【表4】

【0043】
(実施例16)
錠剤中のCYP 3A4基質及びショウガ製剤の遅延放出(ではない)活性物質ペレットの固定した医薬品の組み合わせ
実施例6から9のショウガを含むペレットと、実施例10から12の活性物質を含んだペレットを、錠剤を製造するために適切な賦形剤と共に錠剤に圧縮することもできる:
従って、例えば、実施例10の40gのペレット及び実施例4の75gのペレットを120gの微結晶セルロース、40gのラクトース及び7.5gのAcDiSol及び2.5gのステアリン酸マグネシウムと混合し、20mgのシムバスタチンと25mgのショウガエキスを含んだ合計質量285mgの錠剤に圧縮する。
実施例6から9及び10から12の多くの他の組み合わせを、同じように調製して良い。
【0044】
(実施例17)
錠剤中のCYP 3A4基質及びショウガ製剤の遅延放出ではない活性物質ペレットの固定した医薬品の組み合わせ
押し出した後に、実施例6から9のショウガを含んだペレットを、適切なミル、例えば遠心ミルを用いてすりつぶして、100から500μmの範囲の粒径を有する粒子を形成し、同様に、活性物質を含んだ実施例10から12の押し出し物を乾燥後にすりつぶす。粒子を錠剤化に適切な賦形剤と共に圧縮できる。
従って、例えば、40gの実施例10のすりつぶした粒、75gの実施例4のすりつぶした粒を、80gの微結晶セルロース、20gのラクトース及び5gのAcDiSol及び1.5gのステアリン酸マグネシウムと混合し、20mgのシムバスタチンと25mgのショウガエキスを含んだ合計質量219.5mgの錠剤に圧縮する。
実施例6から9及び10から12の多くの他の組み合わせを同じように調製して良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、エーテル油を分離する間、含油樹脂の本発明によるショウガ画分を抽出する方法の概略である。
【図2】図2は、ショウガエキスのHPLC分離及び溶離したHPLC画分(回収間隔:1分)に対するCYP 3A4に関する阻害の有効性の測定を示す。
【図3】図3は、ショウガエキスのHPLC分離及び溶離したHPLC画分(回収間隔:1分)に対するCYP 1A2に関する阻害の有効性の測定を示す。
【図4】図4は、ショウガエキスのHPLC分離及び溶離したHPLC画分(回収間隔:1分)に対するCYP 2C19に関する阻害の有効性の測定を示す。
【図5】図5は、ショウガエキスのHPLC分離及び溶離したHPLC画分(回収間隔:1分)に対するCYP 2C9に関する阻害の有効性の測定を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、エーテル油を分離すると同時にショウガ画分を単離するための方法:
(a)非極性の有機溶媒で含油樹脂を抽出する工程;
(b)工程(a)からの合わせた残渣を、温水で抽出し、次いで上澄みを廃棄する工程。
【請求項2】
工程(b)で得られる合わせた残渣を、さらに以下の工程を含んだ方法により精製する、請求項1に記載の方法:
(c)温めたアルコールで抽出する工程;
(d)工程(c)からの合わせた上澄みを濃縮する工程。
【請求項3】
工程(a)において、低沸点のアルカン溶媒、石油化学の留出物、推進剤又は他の低沸点、揮発性及び非極性の溶媒を、非極性の有機溶媒として使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)において、ヘキサンを非極性の有機溶媒として使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール又は他の位置異性体のブタノール、n-ペンタノール又は他の位置異性体のペンタノールをアルコールとして使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、メタノールをアルコールとして使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)、(b)及び(c)において使用する抽出剤を、それぞれの場合において使用する含油樹脂1g当たり4から10ml(4から10ml/g)の量で使用する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法により得ることができる、ショウガ画分。
【請求項9】
以下の一般式の化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つを含む、請求項8に記載のショウガ画分:

(式中、R1はH、CH3を意味し
R2はH、CH3を意味し、
R3はH、OH、OCH3を意味し、
R4はH、O、OH、OCH3、OC(O)CH3を意味し、及び
R5はH、O、OH、OCH3、OC(O)CH3を意味する。)
【請求項10】
以下の一般式の化合物、これらのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つを含む、請求項8又は9に記載のショウガ画分:
【化1】



【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載のショウガ画分の、チトクロームP450酵素の阻害用の医薬組成物を調製するための使用。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの1以上の、ヒトチトクロームP450酵素の阻害用の医薬組成物を調製するための使用。
【請求項13】
チトクロームP450 3A4、1A2、2C19 及び2C9を阻害する、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
チトクロームP450 1A2、2C9及び2C19を阻害する、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項15】
ヒトチトクロームP450(CYP)酵素の阻害用の医薬組成物を調製するための薬剤との組み合わせにおける、請求項8から10のいずれか1項に記載のショウガ画分の使用。
【請求項16】
ヒトチトクロームP450酵素の阻害用の医薬組成物を調製するための薬剤と同時の、請求項9又は10に記載の1以上の化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの使用。
【請求項17】
酵素が、チトクロームP450 3A4、1A2、2C19又は2C9である、請求項17又は18に記載の使用。
【請求項18】
酵素が、チトクロームP450 1A2、2C19又は2C9である、請求項15又は16に記載の使用。
【請求項19】
治療を必要とする患者に対して、請求項8から10のいずれか1項に記載するショウガ画分と共に医薬化合物を経口投与することを含む、経口投与のための医薬化合物の生体利用効率を向上するための、医薬組成物の調製方法であって、ショウガ画分が、医薬化合物を単独で投与した場合と比べて医薬化合物の生体利用効率を増加するために必要とされる量で投与される方法。
【請求項20】
医薬化合物が、チトクロームP450 3A4酵素で代謝される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
医薬化合物が、チトクロームP450 1A2酵素で代謝される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
医薬化合物が、チトクロームP450 2C9酵素で代謝される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
医薬化合物が、チトクロームP450 2C19酵素で代謝される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
一般式IからIIIの化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つを、任意で1以上の不活性キャリアー及び/又は希釈剤を共に含む医薬製剤。
【請求項25】
式(1)から(8)の化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つを、任意で1以上の不活性キャリアー及び/又は希釈剤を共に含む医薬製剤。
【請求項26】
以下を含む、任意に物理的にお互い分けられた2以上の成分から成る医薬組成物:
(a)請求項8から10のいずれか1項に記載のショウガ画分、及び1以上の医薬品として許容される希釈剤及び/又はキャリアーから成る第一の成分:
(b)チトクロームP450酵素により代謝される医薬化合物、及び1以上の医薬品として許容される希釈剤及び/又はキャリアーを含んだ、医薬組成物を含む第二の成分。
【請求項27】
第一の成分が、請求項9又は10に記載の化合物、そのエナンチオマー又はジアステレオマーの少なくとも一つを含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
第二の成分の医薬化合物が、酵素チトクロームP4501A2、3A4、2C9又は2C19で代謝される、請求項26又は27に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−520003(P2009−520003A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546440(P2008−546440)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069975
【国際公開番号】WO2007/071708
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】