説明

ヒドロキシチロソールの新規の使用

本発明は、軟骨の修復または軟骨の再生を誘発または増強させるためのヒドロキシチロソールの使用に関する。さらに本発明は、関節内の軟骨傷害、特に軟骨外傷の再生および修復のためのヒドロキシチロソールを含む栄養補助食品組成物および医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、軟骨の修復または軟骨の再生を誘発または増強させるためのヒドロキシチロソールの使用に関する。さらに本発明は、関節内の軟骨傷害、特に軟骨外傷の再生および修復のためのヒドロキシチロソールを含む栄養補助食品組成物および医薬組成物に関する。
【0002】
関節は、ヒトを含めた動物における2つ以上の骨(例えば膝、くるぶし、脚、腰、手首、肘、肩、背骨、手および指)の間の連接点である。
【0003】
軟骨は、特殊に分化した高密度結合組織の一種であり、例えば耳、気道、椎間板および関節内の骨端面の表層といった身体内の複数の部位に存在する。軟骨は、主としてコラーゲン(例えばコラーゲンII型、IX型およびXI型)、プロテオグリカン(例えばコンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヒアルロン酸およびデルマタン硫酸プロテオグリカン)およびその他のタンパク質で構成された広範な細胞外基質(ECM)の中に包埋されている細胞(コンドロブラスト、軟骨細胞)からなる無血管組織である。軟骨には(i)硝子様軟骨または関節軟骨、(ii)線維軟骨、(iii)弾性軟骨という3つの主たるタイプが存在する。これら3つのタイプは、構造および機能が異なっている。
【0004】
成熟関節軟骨内の唯一の細胞型である軟骨細胞は、軟骨特異的基質表現型を維持する最終分化細胞である。正常な条件下で、軟骨細胞は低い代謝回転を有し、関節組織に特有のコラーゲンII型、IX型およびXI型を形成し、特異的プロテオグリカンと相互作用してヒアリン軟骨の水和ECMを形成する。以下に言及する理由で、異なる要因が軟骨の生理機能のアンバランスを開始させる。これは、ECMを産生している細胞集団に影響を及ぼす可能性があると思われる。或いは、ホメオスタシスは、ECMのレベルで乱され、(アグリカン、コラーゲンまたはヒアルロン酸などの)ECM構成要素の不充分な合成に起因するECMの糜爛の増加または(より多くの場合には)ECMの分解増加を導く。
【0005】
発達初期(胎児期および若年期)の間、軟骨形成(chondrogenesis)が最終的に、骨格の発育、軟骨細胞分化そして、軟骨内骨化中の軟骨および骨の形成(formation of cartilage and bone)を結果としてもたらす成熟を導く。このプロセスは、細胞と周囲の基質ならびに時間的かつ空間的に緻密に調節されながら形成される大量の成長因子および分化因子の間の相互作用によって制御される。最も早い軟骨は、間葉系前駆細胞から分化する。これらは漸進的に、増殖する軟骨細胞に形質転換し、肥大化し、ECMの構成要素(アグリカン、ヒアルロナン、コラーゲン)を分泌する。骨形成中、軟骨細胞は、軟骨膜において骨芽細胞へと形質転換する。例えばFGF、IGF−1、TGF−ベータ、BMPならびにシグナリングおよび転写因子(SMAD、SOX、STAT)を含めた成長因子は、軟骨形成およびその後の骨形成中に逐次的に活性化される。これらは、細胞系統特異的分化事象のための前提条件であるものの、ECMタンパク質の発現のためにも必要とされる。例えば、SOXはコラーゲンIIおよびアグリカンの発現を調節し、GADD45は軟骨細胞のアポトーシスおよび最終分化を調節し、MMP−9の効果を相殺する可能性があると思われる。
【0006】
(i)骨成長の停止時点で、ヒアリンまたは関節軟骨は骨端すなわち関節内の骨の関節面を被覆する。それは、骨が互いの上を平滑に動くことができるようにすることで、哺乳動物の関節の運動において重要な役割を果たしている。ヒアリン軟骨は、主として水、II型コラーゲンそしてコラーゲン繊維の配向に基づいて組織された構造を形成する負に帯電したプロテオグリカンで構成されている豊富なECMの中に存在する軟骨細胞からなる。したがってヒアリン軟骨は、圧縮、張力およびせん断力に耐え負荷を散逸させることのできる一種の緩衝構造として作用するのと同時にほぼ摩擦の無い連接面も提供する。
【0007】
(ii)線維軟骨は、関節間線維軟骨、線維軟骨円板(例えば半月板)、結合線維軟骨および周囲線維軟骨(circumferential fibrocartilage)を含む。線維軟骨内では、ミクロ多糖類ネットワークが、隆起(prominent)コラーゲン束と織り混っており、軟骨細胞は、ヒアリンまたは関節軟骨よりもさらに広く散乱している。関節内線維軟骨は、膝のメニスカスなどの激しい震動にさらされかつ頻繁な運動を行う関節の中に見出される。半月板は、関節膝安定性、潤滑および力の伝達において重要な役割を果たす。骨端に密に接着している線維軟骨円板は、軟骨性薄膜が介在した状態で線維性組織の同心円状の輪(例えば脊柱の椎間板)で構成されている。
【0008】
(iii)弾性軟骨は、エラスチン繊維に組織学的に類似するコラーゲンの繊維を含んでいる。それは主として、咽頭蓋、外耳および耳管内に見られる。
【0009】
軟骨の維持には、細胞外基質(ECM)の肥大または過剰分解をそれぞれ妨げるために、同化(構築)および異化(分解)事象の間の微妙な平衡を必要とする組織構成要素の健全な代謝回転が必要とされる。ECMは、コラーゲンおよび、同化事象中に活性であるコラーゲン遺伝子またはアグリカン遺伝子の産物であるプロテオグリカンで構築されている。同様に軟骨細胞増殖および更新には、SOX−5、SOX−6およびSOX−9を含むSOX転写因子の発現が有利に作用し得る。
【0010】
マトリクス、メタロプロテイナーゼ(MMP)は、器官および組織のリモデリングに役立つ。異なるMMPファミリーメンバーの組織特異的発現のため、これらのメンバーには多種多様な役割が与えられる。ECMの分解はMMP3またはMMP13の発現に関係するものの、その他のMMPは、潜在的シグナリング分子(例えばVEGF、IGF)を活性化し、組織アーキテクチャの変化を開始させるかまたは細胞移動を促進する。平衡のとれたECM代謝回転は、軟骨の健康を維持するための前提条件である。余剰のMMP活性に起因する最終的なECM分解は、組織の破壊、変性そして機能喪失を導き得る。
【0011】
軟骨傷害は主として外傷に起因し、あらゆる関節の中で発生し得る。これらは、特に衝撃および/または旋回の大きなスポーツにおいて(通常はせん断力の結果である)急性外傷に由来する可能性があり、ねんざ、損傷または廃用を伴うことが多い。軟骨傷害は同様に、スポーツ選手および兵士の激しい身体トレーニングの場合がそうであるように、関節に対する反復的な機械的応力の結果でもある。回転、急速方向転換および負荷応力を伴うスポーツの練習を行なう対象(例えばランナー、フットボール選手、ウェイトリフティング選手、テニス選手、バスケットボール、ハンドボール、スキー練習および射撃選手)は、軟骨傷害を被る危険性が高い。膝およびくるぶしの関節は、スポーツ選手において主に急性外傷後に傷害を受けることが非常に多く、治療せずに放置するとスポーツ選手は慢性的に身体障害を有する結果となり得る。より年が若く骨格的に未成熟のスポーツ選手は、軟骨傷害の危険性が一層増大する。その上、成人でも若ければ若いほど活発な身体的活動に参加する確率が高く、したがって傷害を受ける確率も高くなる。こうして軟骨傷害は、高衝撃のスポーツを長時間練習する対象における頻度の高い身体障害の原因である。軟骨傷害の重症度は、ピーク応力、組織圧縮のひずみおよびひずみ速度、傷害性機械的負荷の持続時間および軟骨組織の生化学特性および成熟状態により左右される。これは、恐らくはさらに個体の遺伝的構成にも左右される。
【0012】
機械的軟骨傷害により、関節面の亀裂またはフィブリル化およびコラーゲン網が破断する。その結果プロテオグリカンは、さらなる水和を起こす。こうして軟骨の肥厚および軟化が起きる。この結果として、衝撃を吸収し重量負荷を支持する能力が低下し、こうしてコラーゲン網はさらに破断され、軟骨の欠陥が悪化する。これらの欠陥は、軟骨組織のすき間、空洞、穴または構造的完全性のその他の実質的破断として現われる。そこには、骨または靭帯に対して接着している箇所から軟骨が剥離する可能性もある。機械的軟骨傷害によって、軟骨細胞死も起こり、したがって軟骨組織の修復に必要な高分子を合成する軟骨細胞の能力が損われることになる。
【0013】
軟骨のレベルで機械的に誘発される改変が、傷害前ホメオスタシスを最終的に回復させるはずの生化学プロセスを開始させる。マイクロフラグメント化された(micro−fragmented)ECMが、それ自体分解プロセスを増幅すると思われるMMPの活性化を導くコラーゲンまたはプロテオグリカンの分解産物を生成し得る。実際、MMPは、傷害後数時間のうちに滑液内で劇的に増加する可能性があると思われる。ECM構成の変化は、分解したECM成分を再合成する細胞の増殖および分化を開始させるプロセスを誘発し得る。機構的には、軟骨細胞の増殖および分化の重要な要素として前述した分子は、これらのプロセスに必然的に関与している。したがって、それらの発現を変調させる物質が、軟骨再構成または更新および修復のレベルでの有益な効果にとって重要であると予想できる。
【0014】
軟骨修復または軟骨再生の誘発または増強は、本発明の枠内では、軟骨細胞の増殖および/または軟骨内のECM産生の増加のいずれかによる新しい軟骨組織の形成として定義され、スポーツ選手、活動的なライフスタイルをもつその他の人々そして肥満である対象の関節内で特に軟骨損傷の治癒を促進する。
【0015】
本発明においては、軟骨修復または軟骨再生の誘発または増強は、細胞の更新またはECMの再構築のいずれかに関与する重要な分子の発現により測定される。こうして、傷害または損傷を受けた組織の回復に必要とされる或る種の軟骨組織は、既存の生存細胞から再生される。新しい軟骨の形成は、欠陥部位における空隙または構造的不連続性を少なくとも部分的に満たすのに充分なものであるが、それでも、修復とは完全な治癒プロセスを意味せず、別の形でこの完全な治癒のプロセスを必要とする。基本的な細胞および分子的作用様式に関しては、上述のパラメータは全て、軟骨内の外傷誘発型欠陥を回復させるプロセスを反映するために重要なものとみなされている。
【0016】
軟骨傷害は、治療が困難であり、傷害を受けた軟骨は、軟骨細胞が増殖および新ECM合成の能力が限定されたものであることから、その他の身体組織ほど迅速または効果的には治癒しない。実際、軟骨細胞は軟骨下成長中に強力な増殖期を経験するが、これらは後期において限定的な増殖能力しか有していない。その結果として、軟骨欠陥は未修復状態または機能的に不適切な細胞外基質で満たされた状態にとどまるかもしれない。
【0017】
したがって、特に軟骨外傷の治療または同時治療のための軟骨修復または軟骨再生を誘発および/または増強する、特に天然の供給源に由来する作用物質に対する大きなニーズがある。
【0018】
意外にも、軟骨細胞の増殖を誘発または増強し、軟骨細胞の増殖を刺激し、かつ、結果として軟骨の修復および再生を促進する細胞外基質構成要素のそれらの産生を増大させる上でヒドロキシチロソールが有効であることが発見された。したがってヒドロキシチロソールは、軟骨の健康を維持し、軟骨の修復または軟骨の再生を誘発または増強し、かつヒトを含めた動物の関節内特に活動的なライフスタイルをもつ人、スポーツ選手および肥満である対象における軟骨の病巣を治療するために有用である。
【0019】
したがって、本発明の目的は、軟骨の修復または軟骨の再生を誘発または増強させるためのヒドロキシチロソールの使用にある。
【0020】
本発明の別の目的は、特に例えば軟骨外傷によって誘発された軟骨病巣を治療する目的で(i)軟骨細胞の増殖を増強させる;(ii)軟骨細胞増強を刺激する;および/または(iii)細胞外基質の合成を増大させるためのヒドロキシチロソールの使用にある。
【0021】
本発明のさらなる目的は、軟骨の健康を維持し支援し、軟骨のケアを提供し、軟骨病巣を治癒させ、軟骨の完全性を提供するための、すなわち軟骨ケアを目的としたヒドロキシチロソールの使用にある。
【0022】
特に本発明は、関節の健康を維持および/または改善し、関節の剛化を防止し、関節の可動性を増大させ、柔軟性かつ/または可撓性のある関節を提供し、関節を潤滑し、関節の問題を軽減するための前述のヒドロキシチロソールの使用に関する。
【0023】
さらに本発明は、軟骨の維持、軟骨の修復および/または軟骨の再生のための有効な微量栄養素としてのヒドロキシチロソールの使用に関する。
【0024】
本発明の全ての実施形態において、軟骨という用語は、好ましくは関節軟骨に関する。
【0025】
ヒトについてのヒドロキシチロソールの一日経口投薬量(通常は体重70kgの人について決定される)は少なくとも0.1mgである。好ましくは、一日投薬量は、約1mg/日〜約2000mg/日、より好ましくは約5mg/日〜約500mg/日、最も好ましくは10〜100mg/日の範囲内でなければならない。
【0026】
別の実施形態においては、本発明は、関節内の軟骨傷害、特に活動的なライフスタイルをもつ人、スポーツ選手および肥満である対象における軟骨外傷の治療または同時治療のためのヒドロキシチロソールの使用に関する。
【0027】
本明細書で使用されているヒドロキシチロソール〔4−(2−ヒドロキシルエチル)−1,2−ベンゼンジオール、CAS:10597−60−1〕という用語は、合成ヒドロキシチロソールならびに、抽出および/または精製によりオリーブの木に由来する生成物および副産物などの天然の供給源から得ることのできるヒドロキシチロソールを意味する。さらに、ヒドロキシチロソールという用語は、ヒドロキシチロソールを含有する抽出物ならびにオリーブ果汁調製物を包含する。さらに、ヒドロキシチロソールという用語は同様に、ナトリウムまたはカリウム塩などの生理学的/薬学的に許容できる塩をも包含する。
【0028】
合成ヒドロキシチロソールは、貴金属水素化触媒の存在下でC1−10−アルカノール中で3,4−ジヒドロキシマンデル酸、または3,4−ジヒドロキシマンデル酸C1−10アルキルエステルを水素化するステップを含むプロセスにおいて、90%超の純度で調製されてよく、形成された(3,4−ジヒドロキシフェニル)酢酸C1−10−アルキルエステルの任意の還元は、その具体例が以下で記述される2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−エタノール(=ヒドロキシチロソール)を形成するためのものである。ヒドロキシチロソールの純度は、例えばHPLCまたはLC−MSなどの当業者にとって公知の方法により決定可能である。水素化は、PdおよびRhなどの貴金属触媒の存在下で、それ自体公知の方法で別々にまたは混合した形で実施されてよい。触媒の活性および安定性を増大させるために、これらは好ましくは、活性炭、アルミナまたは珪藻土などの担体上で使用される。この場合の好ましい水素化触媒はPd/Cである。水素化は、低級アルカノールすなわちC1−10−アルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールの存在下、好ましくはメタノールまたはエタノール中、好ましくは強酸、好ましくは塩酸の存在下で、好ましくは周囲温度から100℃以上まで、好ましくは40〜65℃の温度で、好ましくは水素化温度での溶媒の蒸気圧よりも高い水素圧力で、実施される。圧力は、常用圧力すなわち大気圧から100バール以上までであり得る。必要に応じて、好ましくは一貫プロセスとして実施される反応は、2つの別々のステップすなわち3,4−ジヒドロキシマンデル酸のエステルが酸のエステル化により構築される第1のステップおよび3,4−ジヒドロキシマンデル酸低級アルキルエステルが水素化される第2のステップで達成可能である。ヒドロキシチロソールを提供するための(3,4−ジヒドロキシフェニル)酢酸C1−10−アルキルエステルの還元は、公知の方法で達成可能である。好ましい還元剤は、LiAlHおよびNaBHなどのアルミニウムとホウ素の複雑な合成物である。出発材料3,4−ジヒドロキシマンデル酸は周知であり、例えばグリオキシル酸とカテコールの縮合によるなど、文献中に記載された方法にしたがって調製可能である。
【0029】
ヒドロキシチロソールのヒドロキシ基の1つまたは複数のものは同様にエーテル化またはエステル化されて例えば酢酸エステルを形成してよい。
【0030】
ヒドロキシチロソールは同様に、抽出および/または精製によってオリーブの木に由来する生成物および副産物などの天然供給源から得ることもできる。オリーブの木に由来する生成物および副産物は、オリーブ、オリーブの木の葉、オリーブの果肉、オリーブオイル、オリーブ由来の油廃液およびオリーブオイル糟を包含するが、これに限定されるわけではない。抽出物は、当業者にとって周知の方法によって調製されてよい。例えば、オリーブおよび/またはオリーブの葉を圧搾してオリーブオイル、油廃液および固形副産物を含む混合物を得ることができる。ヒドロキシチロソールを直接混合物として使用してもよいし、あるいはまた混合物をさらに分画および/または精製して、富化されたヒドロキシチロソールを得てもよい。分画方法の例としては、有機溶媒での分別、クロマトグラフィ例えば高圧液体クリマトグラフィ(HPLC)または超臨界流体の使用が含まれる。
【0031】
オリーブの葉からのヒドロキシチロソールの抽出を扱う参考文献の例としては、当該オレウロペインの少なくとも90%が変換されるまで2〜12ヵ月にわたりオリーブ油廃液を酸性加水分解する方法を開示している国際公開第02/18310A1号パンフレット、米国特許公開第2002/0198415A1号明細書、国際公開第2004/005228A1号パンフレット、米国特許第6,416,808号明細書、および米国特許公開第2002/0058078A1号明細書がある。オリーブ、オリーブの果肉、オリーブ油および搾油機廃水からヒドロキシチロソールを抽出する方法が、ユサナ社(Usana Inc.)米国特許第6,361,803号明細書および国際公開第01/45514A1号パンフレットおよび米国特許公開第2002/0004077A1号明細書中によって記述されている。欧州特許出願公開第1582512A1号明細書は、オリーブの葉からのヒドロキシチロソールの抽出について記述している。種を除去したオリーブ油廃液からヒドロキシチロソールを得る方法は、米国特許出願公開第2004/0039066A1号明細書の段落[0080]〜[0091]で開示されている。
【0032】
本発明にしたがって使用し得る市販のヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物としては、例えばオリーブの実からの抽出物、例えばライフエクステンション(Life Extension)製のPolyphen−Oil(商標)、インデナ(Indena)製のOleaSelect(商標)、Genosa製のHytolive(登録商標)、セピック(Seppic)製のProlivols、Lalilab製のオリーブ葉またはOlea europeaオリーブ水抽出物、Ebiser製のHitofulvic、欧州特許第1582512号明細書に記述されているような加水分解されたオリーブ葉の抽出物、フルフラール(Furfural)から入手可能なものなどのオレウロペインを富有するオリーブの葉の抽出物、そしてクレアグリ(CreAgri)製のハイドロックス(HIDROX)(登録商標)が含まれる。
【0033】
好ましくは、クレアグリ製のハイドロックス(登録商標)例えばハイドロックス(登録商標)2%噴霧乾燥粉末、ハイドロックス(登録商標)ゴールド(Gold)凍結乾燥粉末(9%)およびハイドロックス(登録商標)6%凍結乾燥粉末有機オリーブ果汁抽出物が使用される。
【0034】
好ましくは、使用されるヒドロキシチロソールは、例えばヒドロキシチロソールを含有するオリーブ由来の抽出物またはオリーブ果汁調製物の形で、天然供給源から得られる。投薬量は、ヒドロキシチロソール含量に基づいて調整され、当業者によって容易に決定可能である。
【0035】
さらに別の実施形態においては、本発明は、
(a)ヒトを含めた動物の関節内で軟骨修復または軟骨再生を誘発または増強させる;
(b)ヒトを含めた動物の関節内で軟骨細胞の増殖を増強させる;
(c)ヒトを含めた動物の関節内で軟骨細胞の増強を刺激する;
(d)ヒトを含めた動物の関節内で細胞外基質の合成を増大させる;および/または
(e)軟骨の健康を維持し支援し、軟骨のケアを提供し、軟骨病巣を治癒させ、軟骨の完全性を提供するための;特に、関節の健康を維持および/または改善し、関節の剛化を防止し、関節の可動性を増大させ、柔軟性かつ/または可撓性のある関節を提供し、関節を潤滑し、関節の問題を軽減するための、組成物の製造を目的とするヒドロキシチロソールの使用に関する。
【0036】
さらなる実施形態においては、本発明は、関節内の軟骨傷害、特に軟骨外傷の治療または同時治療のための組成物の製造を目的とするヒドロキシチロソールの使用に関する。
【0037】
さらに本発明は、ヒトを含めた動物の関節内での軟骨傷害特に軟骨外傷の治療または同時治療のために有効な量のヒドロキシチロソールを含む組成物に関する。
【0038】
本発明による組成物は、患者が、疾病予防用およびアジュバント治療として使用可能で穏やかな効果をもち大きな副作用のない「天然由来」とみなすことのできる治療に対し特に関心をもっていることから、特に魅力的である。
【0039】
本発明による組成物は、活動的なライフスタイルをもつ人、スポーツ選手そして肥満である対象において軟骨の修復または軟骨の再生を誘発または増強して軟骨の治癒を促進し軟骨の欠陥を充填するために特に有用である。
【0040】
本発明の全ての実施形態において、好ましくは組成物は栄養補助食品組成物または医薬組成物、特に栄養補助食品組成物である。
【0041】
本発明の枠内で、動物とは、一例としてヒトが含まれる哺乳動物を含めた全ての動物を意味する。ヒト以外の哺乳動物の好ましい例としては、ネコ、イヌ、ヒトコブラクダ、ラクダ、ゾウおよびウマを含めた非反すう動物または反すう動物がある。本発明にしたがって特に好ましいのはヒト、特に活動的なライフスタイルをもつ人、スポーツ選手そして肥満である対象である。
【0042】
本明細書で使用されている栄養補給食品組成物という用語には、食物製品または食料、健康サプリメントまたは栄養サプリメント、あるいは食物製品または食料用のサプリメント組成物、好ましくは飲料(例えばスポーツ飲料、機能水、ジュース、スムージー;インスタントドリンクただし、これらに限定されるわけではない)、スープ、乳製品(例えばシングルショットヨーグルトドリンク、ただしこれに限定されるわけではない)、栄養バーおよびスプレッド、特に飲料および栄養バーが含まれる。
【0043】
本明細書で使用されている食物製品という用語は、ヒトまたは動物による消費に適した任意の食品または飼料を意味する。食物製品は、調製され包装された食品(例えばマヨネーズ、サラダドレッシング、パンまたはチーズ食品)または動物の飼料(例えば押出し加工およびペレット化された動物の飼料、粗混合飼料またはペットフード組成物)であってよい。本明細書で使用する食料という用語は、ヒトまたは動物の消費向けに適した任意の物質を意味する。健康サプリメントという用語は、単一または多数の用量単位に包装されたヒトまたは動物の食事の補足のための少量の化合物を意味する。健康サプリメントは一般に有意な量のカロリーを提供しないがその他の微量栄養素(例えばビタミンまたはミネラル)を含み得る。栄養サプリメントという用語は、カロリー源と組合せた健康サプリメントを含む組成物を意味する。一部の実施形態においては、栄養サプリメントは、食事の代用品またはサプリメント(例えば栄養またはエネルギーバー、または栄養素飲料または濃縮物)である。
【0044】
食品または食料は例えば、飲料例えばノンアルコールおよびアルコール飲料ならびに飲料水および液体食品に添加すべき液体調製物であり、ノンアルコール飲料は例えばソフトドリンク、スポーツドリンク、フルーツジュース例えばオレンジジュース、アップルジュース、およびグレープフルーツジュース;レモネード、紅茶、ニアウォータードリンク、および牛乳およびその他の乳飲料例えばヨーグルトドリンクおよびダイエットドリンクである。別の実施形態においては、食品または食料とは、本発明による組成物を含む固形または半固形食品を意味する。これらの形態には、焼成商品例えばケーキおよびクッキー、プリン、乳製品、糖菓、スナックフード、または冷凍糖菓または新型製品(例えばアイスクリーム、ミルクセーキ)、調理冷凍食、キャンディ、スナック製品(例えばチップス)、流動食例えばスープ、スプレッド、ソース、サラダドレッシング、加工肉製品、チーズ、ヨーグルトおよび任意のその他の脂肪または油含有食品、および食品成分(例えば小麦粉)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0045】
食物製品または食料という用語は、同様に、機能性食品および調理食物製品も含み、調理食物製品とは、ヒトによる消費向けに承認された任意の予備包装食品である。
【0046】
ペットフード組成物を含む動物用飼料には有利には、必要な食事必需品を供給するように意図された食品、ならびにおやつ(treat)(例えばドッグビスケット)またはその他の健康サプリメントが含まれる。本発明による組成物を含む動物用飼料は、乾燥組成物(例えば粗びき穀物)、半湿潤組成物、湿潤組成物またはそれらの任意の混合物の形態をとっていてよい。代替的または付加的には、動物用飼料は、サプリメント、例えばグレイビー、飲料水、ヨーグルト、粉末、懸濁液、咀嚼物(chew)、おやつ(例えばビスケット)またはその他の任意のデリバリー形態である。
【0047】
本発明の健康サプリメントは、任意の適当な形態でデリバリーされてよい。好ましい実施形態では、健康サプリメントは、経口デリバリー向けに調合される。本発明の健康サプリメントの成分は、経口消費のために許容可能な賦形剤および/または担体の中に格納されている。担体ひいては健康サプリメント自体の実際の形態は重要ではない。担体は、液体、ジェル、ジェルキャップ、カプセル、粉末、固形錠剤(コーティングありまたは無し)、茶などであり得る。健康サプリメントは好ましくは、錠剤またはカプセルの形態をとり、最も好ましくは、硬質(シェル)ゼラチンカプセルの形態をとっている。適切な賦形剤および/または担体としてはマルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、微結晶性セルロース、デキストロース、米粉、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、スクロース、植物ガム、ラクトース、メチルセルロース、ポビドン、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチなど(それらの混合物を含む)が含まれる。好ましい担体としては、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、およびそれらの混合物が含まれる。さまざまな成分および賦形剤および/または担体が混合され、従来の技術を用いて所望の形態に整形される。本発明の錠剤またはカプセルは、約6.0〜7.0のpHで溶解する腸溶コーティングでコーティングされてよい。小腸では溶解するものの胃の中では溶解しない適当な腸溶コーティングは、酢酸フタル酸セルロースである。処方および投与の技術についてのさらなる詳細は、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences(ペンシルバニア州イーストンのマックパブリッシング社(Maack Publishing Co.))中に見出すことができる。
【0048】
その他の実施形態においては、健康サプリメントは、消費者が食品または飲料の中に添加するのに適した粉末または液体として提供される。例えば、一部の実施形態では、健康サプリメントは、例えば飲料中への混合または半固体食品例えばプリン、トッピング、ソース、ピューレ、調理済みシリアルまたはサラダドレッシング内への撹拌、または例えば消費直前に放出するよう食品または飲料容器のキャップ内に封入された形態での食品への添加、によって使用すべき粉末の形態で、個体に投与することができる。健康サプリメントは、特に健康サプリメントによって食べ物に添加されるカロリー数を制限することが望まれる場合に、1つ以上の不活性成分を含んでいてよい。例えば、本発明の健康サプリメントは、例えばハーブ、ビタミン、ミネラル、エンハンサ、着色料、甘味料、着香料、不活性成分などを含めた任意の成分も含有していてよい。
【0049】
一部の実施形態においては、健康サプリメントはさらに三塩基性リン酸カルシウムまたは酢酸カルシウム;二塩基性リン酸カリウム;硫酸マグネシウムまたは酸化マグネシウム;塩(塩化ナトリウム);塩化カリウムまたは酢酸カリウム;アスコルビン酸;リン酸第二鉄;ナイアシンアミド;硫酸亜鉛または酸化亜鉛;パントテン酸カルシウム;グルコン酸銅;リボフラビン;ベータカロテン;塩酸ピリドキシン;チアミン硝酸塩;葉酸;ビオチン;塩酸クロムまたはピコリン酸クロム;ヨウ化カリウム;セレン酸ナトリウム;モリブデン酸ナトリウム;フィロキノン;ビタミンD3;シアノコバラミン;亜セレン酸ナトリウム;硫酸銅;ビタミンA;ビタミンC;イノシトール;ヨウ化カリウムを含む(ただし、これらに限定されるわけではない)ビタミンおよびミネラルを含んでいる。ビタミンおよびミネラルについての適切な投与量は、米国RDA指針を閲覧することによって得ることができる。
【0050】
その他の実施形態においては、本発明は、本発明による組成物を含む栄養サプリメント(例えばエネルギーバーまたは食事代用バーまたは飲料)を提供している。栄養サプリメントは、食事または軽食代用品として用いられてよく、一般に、栄養素カロリーを提供する。好ましくは、栄養サプリメントは炭水化物、タンパク質および脂肪を、バランスのとれた量で提供する。栄養サプリメントはさらに炭水化物、単糖、中鎖長糖または多糖類またはそれらの組合せを含み得る。単糖は、所望の官能特性について選択可能である。未調理コーンスターチは、複合糖質の一例である。熱は複合糖質を単糖類または二糖類である単炭水化物へと分解することから、その高分子量構造を維持すべきことが望まれる場合、未調理コーンスターチを調理も熱処理もされない食品処方物またはその分量の中にのみ含み入れるべきである。一実施形態においては、栄養サプリメントは、3つの鎖長レベル(単鎖、中鎖、複合鎖;例えばスクロース、マルトデキストリンおよび未調理コーンスターチ)の炭水化物供給源の組合せを含む。
【0051】
本発明の栄養サプリメント中に取込むべきタンパク質の供給源は、栄養処方物中に利用される任意の適切なタンパク質であり得、乳漿タンパク質、乳漿タンパク質濃縮物、乳漿粉末、卵、大豆粉、豆乳、大豆タンパク、大豆タンパク単離物、カゼイン酸塩(例えばカゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カルシウム・ナトリウム、カゼイン酸カルシウム、カゼイン酸カリウム)、動物性および植物性タンパク質および炭水化物またはそれらの混合物を含み得る。タンパク質供給源を選択するにあたっては、タンパク質の生物価をまず考慮すべきであり、最高の生物価はカゼイン酸塩、乳漿、ラクトアルブミン、卵アルブミンおよび全卵タンパク質中に見出される。好ましい実施形態においては、タンパク質は、乳漿タンパク質濃縮物およびカゼイン酸カルシウムの組合せである。これらのタンパク質は高い生物価を有する。すなわちこれらは、高い割合の必須アミノ酸を有する。「健康及び疾病状態における現代栄養学(Modern Nutrition in Health and Disease)」、第8版、出版:Lea & Febiger、1986年、特に第1巻、30〜32頁を参照のこと。
【0052】
栄養サプリメントは同様に、その他の成分、例えばビタミン、ミネラル、抗酸化物質、繊維質およびその他の健康サプリメント(例えばタンパク質、アミノ酸、塩素、レシチン、オメガ−3脂肪酸)のうちの1つまたは組合せも含有し得る。これらの成分のうちの1つまたは複数のものの選択は、処方、設計、消費者のし好そしてエンドユーザーの問題である。本発明の健康サプリメントに添加されるこれらの成分の量は、当業者にとっては容易に理解できることである。かかる量の指針は、小児および成人についての米国RDA用量によって提供され得る。添加可能なさらなるビタミンおよびミネラルとしては、三塩基性リン酸カルシウムまたは酢酸カルシウム;二塩基性リン酸カリウム;硫酸マグネシウムまたは酸化マグネシウム;塩(塩化ナトリウム);塩化カリウムまたは酢酸カリウム;アスコルビン酸;リン酸第二鉄;ナイアシンアミド;硫酸亜鉛または酸化亜鉛;パントテン酸カルシウム;グルコン酸銅;リボフラビン;ベータカロテン;塩酸ピリドキシン;チアミン硝酸塩;葉酸;ビオチン;塩酸クロムまたはピコリン酸クロム;ヨウ化カリウム;セレン酸ナトリウム;モリブデン酸ナトリウム;フィロキノン;ビタミンD3;シアノコバラミン;亜セレン酸ナトリウム;硫酸銅;ビタミンA;ビタミンC;ビタミンE、イノシトール;ヨウ化カリウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0053】
栄養サプリメントは、さまざまな形態でかつさまざまな生産方法により提供され得る。好ましい実施形態においては、食品バーを製造するため、液体成分が調理される。乾燥成分は液体成分と共にミキサーに加えられ、生地相に達するまで混合される;生地は押出し機に入れられ押出し加工される;押出し加工された生地は、適切な長さに切断され;製品は冷却される。バーは、本明細書中で具体的に列挙した成分に加えて、味を増強するためその他の栄養素と充填剤を含有していてよい。
【0054】
当業者であれば、栄養サプリメントの加工または製造のため例えば充填剤、乳化剤、防腐剤などのその他の成分を本明細書で記述されている成分に加えることができるということがわかる。
【0055】
さらに、栄養補給食品組成物の中に、フレーバ、着色剤、香辛料、ナッツなどを取込んでもよい。香味料は、風味のついた抽出物、揮発性油分、チョコレート香味料、ピーナッツバター香味料、クッキークラムス、クリスプライス、バニラまたは任意の市販の香味料の形態をとる可能性がある。有用な香味料の例としては、純粋アニス抽出物、人工バナナ抽出物、人工チェリー抽出物、チョコレート抽出物、純粋レモン抽出物、純粋オレンジ抽出物、純粋ペパーミント抽出物、人工パイナップル抽出物、人工ラム抽出物、人工ストロベリー抽出物または純粋バニラ抽出物;または揮発性油、例えばバーム油、ベイ油、ベルガモット油、セダー油、クルミ油、チェリー油、シナモン油、クローブ油またはペパーミント油;ピーナツバター、チョコレート香味料、バニラクッキークラム、バタースコッチまたはタフィーが含まれるが、これらに限定されるわけではない。一実施形態においては、健康サプリメントはココアまたはチョコレートを含有する。
【0056】
栄養補給食品組成物の安定性のために、乳化剤を添加してもよい。適切な乳化剤の例としては、レシチン(例えば卵または大豆由来のもの)、および/またはモノおよびジグリセリドが含まれるがこれらに限定されるわけではない。その他の乳化剤は当業者には直ちに明らかであり、適切な乳化剤の選択は、一部には処方および最終製品により左右される。製品の貯蔵寿命を延ばすために栄養サプリメントに対して防腐剤を添加してもよい。好ましくは、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウムまたはEDTAカルシウム二ナトリウムなどの防腐剤が使用される。
【0057】
上述の炭水化物に加えて、栄養補給食品組成物は、天然または人工(好ましくは低カロリー)甘味料例えば単糖類、チクロ、アスパルタミン、アスパルテーム、アセサルフェームKおよび/またはソルビトールを含有し得る。かかる人工甘味料は、栄養サプリメントが太り過ぎまたは肥満の個体または高血糖症となりがちな2型糖尿病の個体により消費されるように意図されている場合に、望ましい可能性がある。
【0058】
さらに、一部の食べ物には欠如している必須栄養素を適量得るために、本発明の栄養補給食品組成物に対し、マルチビタミンおよびミネラルサプリメントを添加してもよい。マルチビタミンおよびミネラルサプリメントは同様に、生活習慣に起因する栄養損失および栄養失調に対する疾病予防および防護のためにも有用であり得る。
【0059】
栄養補給食品組成物を介して投与されるヒドロキシチロソールの投与量および比率は、当然のことながら、特定の組成物の生理学的特性ならびにその投与様式および投与経路;レシピエントの年令、健康状態および体重;症候の性質および程度;併用治療の種類;治療の頻度;および正規の試験を用いてまたは栄養補給食品組成物の処方に関する通常の検討材料を用いてその分野の専門家が判定できる所望の効果などの公知の要因に応じて変動する。
【0060】
食品または飲料は、適切には1人分あたり約0.5mg〜約1000mgのヒドロキシチロソールを含有する。組成物が医薬組成物である場合には、かかる組成物は、1投与量単位あたり、例えばカプセルまたは錠剤1個あたり約1mg〜約2000mg、または液体処方物の日用量あたり約1mgから約3000mgの量でヒドロキシチロソールを含有していてよい。
【0061】
本発明による医薬組成物は好ましくはさらに、薬学的に許容される担体を含む。適切な医薬担体は、例えばこの分野における標準的な参考文献である前出のレミントンの薬学の中で記述されている。かかる薬学的に許容される担体の例は、経口/非経口/注射可能投与に適した無機および有機の両方の担体材料であり、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油などを含む。
【0062】
医薬組成物はさらに、水、任意の由来のゼラチン、植物ゴム、リグニンスルホン酸塩、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、着香剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などを含めた(ただし、これらに限定されるわけではない)従来の医薬添加剤およびアジュバント、賦形剤または希釈剤も含んでいてよい。
【0063】
医薬組成物中の個々の成分の投与量および比率は、正規の前臨床および臨床試験を用いて、または医薬組成物の処方に関する通常の検討材料を用いてその分野の専門家が判定できる。
【0064】
好ましい実施形態においては、ヒドロキシチロソールは、一日体重1kgあたり少なくとも0.3mg/kg、好ましくは1〜450mg/kg、最も好ましくは4〜140mg/kgの量で単回用量または多数回用量のいずれかの形態で医薬組成物を介して投与される。
【0065】
本発明による組成物は、例えば、食品または飼料(用の添加物/サプリメント)、食品または飼料プレミックス、強化食品または飼料、錠剤、丸薬、顆粒、糖衣錠、カプセルおよび発泡性処方物例えば粉末および錠剤としての固体形態かまたは、例えば飲料、ペーストおよび油性懸濁液などとしての溶液、エマルジョンまたは懸濁液の形態での液体形態で、人体を含めた動物の身体に対し投与するのに適している任意のガレヌス剤形、より具体的には経口投与の通常の任意の形態であってよい。ペーストは、硬または軟(シェル)カプセルの中に充填され、したがってカプセルが例えば(魚、豚、家禽、乳牛)ゼラチン、植物性タンパク質またはリグニンスルホン酸塩のマトリクスを特徴とするようになっていてよい。その他の適用形態の例としては、経皮、非経口、局所または注射可能投与向けの形態がある。栄養補助食品組成物および医薬組成物は、制御(遅延)放出型製剤の形態であってよい。医薬組成物の例としては、例えばクリーム、ジェル、スプレー、ドライスティック、粉末などのフェノール化合物の局所施用および経皮吸収に適した組成物も含まれる。
【0066】
好ましい実施形態においては、本発明による組成物は、錠剤、丸薬、顆粒、糖衣錠、カプセルまたは発泡性製剤の形態をとっている。
【0067】
本発明による組成物は、同様に、ビタミンCおよびE、コンドロイチン硫酸、加水分解コラーゲン(加水分解物)、ショウガ(匍匐茎)抽出物、グルコサミン、メチルスルホニルメタン(MSM)、S−アデノシルメチオニン、セレン、ビタミンB9(葉酸塩)、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、B12(コバラミン)およびビタミンD3を含む抗酸化物質から選択され、好ましくはビタミンE、PUFA、コンドロイチン硫酸およびグルコサミンから選択される、関節ケアに適したさらなる活性成分をも含有していてよい。
【0068】
特定の一実施形態においては、本発明は同様に、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、PUFA(特にEPAおよびDHA)、ヒドロキシチロソールおよびビタミンEを含む組成物、詳細には栄養補助食品組成物、最も詳細には健康サプリメントにも関する。好ましくは、組成物は錠剤またはカプセルの形、最も好ましくは硬(シェル)ゼラチンカプセルの形態をとっている。かかる組成物は好ましくは、一日投薬量で、
800〜1200mg、好ましくは1000mgのグルコサミン、
600〜1000mg、好ましくは800mgの硫酸コンドロイチン、
200〜600mgのPUFA、好ましくは400mgのPUFA、特にEPAおよびDHA、
5〜20mg、好ましくは10mgのヒドロキシチロソールおよび
15〜50IU、好ましくは30IUのビタミンE、を含む。
【0069】
以上で規定された通りの対象組成物の好ましい一日投薬量は、錠剤などの1つ以上の投薬量単位の形で投与されてよい。最も好ましくは、対象組成物の一日投薬量は、一日に合計2投薬量単位となるように一日2回摂取される1つの投薬量単位の形で提供されるかまたは、一日に合計4投薬量単位となるように一日2回摂取される2投薬量単位の形で提供される。一日一回合計一日用量を摂取することに比べて、合計一日用量の半分を一用量あたり1投薬量単位以上の形で毎日2回投薬することにより、不可欠成分の吸収が改善されその血中レベルがよりよく維持される。
【0070】
したがって、対象組成物の好ましい製剤の錠剤2個などの2つの投薬量単位を毎日摂取しなくてはならない場合、各々の投薬量単位は、好ましくはおよそ500mg以上のグルコサミン、400mg以上のコンドロイチン硫酸、300mg以上のPUFA(例えばスイスのDSMニュートリショナルプロダクツ(Nutritional Products)で入手可能なROPUFA(登録商標)「75」n―3EE油)および5mg以上のヒドロキシチロソール(例えば最低2.5%のヒドロキシチロソールを含有する200mgのハイドロックス6%の形)を提供するように調合される。対象組成物の好ましい製剤の錠剤4個などの4つの投薬量単位を毎日摂取しなくてはならない場合、各投薬量単位は、好ましくはおよそ250mg以上のグルコサミン、200mg以上のコンドロイチン硫酸、150mg以上のPUFAおよび2.5mg以上のヒドロキシチロソールを経口投与時点で提供するように調合される。
【0071】
さらに本発明は、軟骨の健康を維持し支援し、軟骨のケアを提供し、軟骨病巣を治癒させ、軟骨の完全性を提供するため、すなわち軟骨ケアのための特に関節の健康を維持および/または改善し、関節の剛化を防止し、関節の可動性を増大させ、柔軟性かつ/または可撓性のある関節を提供し、関節を潤滑し、関節の問題を軽減するための上述の組成物の使用に関する。
【0072】
本発明による適切な多価不飽和脂肪酸は、好ましくは16〜24個の炭素原子、特に1〜6個の2重結合、特に好ましくは4個または5個または6個の2重結合を有する一価不飽和または多価不飽和カルボン酸である。
【0073】
不飽和脂肪酸は、n−6系およびn−3系の両方に属する可能性がある。n−3系の多価不飽和脂肪酸が好ましい。n−3多価不飽和酸の好ましい例としては、エイコサペンタ−5,8,11,14,17−エン酸(EPA)およびドコサヘキサ−4,7,10,13,16,19−エン酸(DHA)、ならびにアラキドン酸(ARA)がある。
【0074】
多価不飽和脂肪酸の好ましい誘導体は、それらのエステル例えばグリセリド特にトリグリセリド;特に好ましくはエチルエステルである。n−3多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドが特に好ましい。
【0075】
トリグリセリドは、3個の均一な不飽和脂肪酸または2個または3個の異なる不飽和脂肪酸を含有し得る。これらは同様に、飽和脂肪酸を部分的に含んでいてよい。
【0076】
誘導体がトリグリセリドである場合、通常3つの異なるn−3多価不飽和脂肪酸がグリセリンでエステル化される。本発明の1つの好ましい実施形態においては、トリグリセリドが用いられ、したがって脂肪酸部分の30%がn−3脂肪酸であり、これらのうちの25%が長鎖多価不飽和脂肪酸である。さらに好ましい実施形態においては、市販のROPUFA(登録商標)「30」n−3食用油(スイス、カイザーアウグストのDSMニュートリショナルプロダクツ株式会社)が使用される。本発明の別の好ましい実施形態においては、PUFAエステルはROPUFA(登録商標)「75」n−3EEである。ROPUFA「75」n−3EEは、n−3脂肪酸エチルエステルを72%の最小含量で有するエチルエステルの形態の精製魚油である。それは、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸を混合して安定化され、ローズマリー抽出物を含有する。
【0077】
本発明によると、例えば植物油といった多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含有する天然由来の油(1つ以上の化合物)を使用することが有利であり得る。多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む好ましい油はオリーブ油、ヒマワリ種子油、月見草種子油、ルリヂサ油、ブドウ種子油、大豆油、ラッカセイ油、小麦胚芽油、カボチャ種子油、くるみ油、ゴマ油、菜種油(カノーラ油)、ブラックカラント種子油、キウイフルーツ種子油、特定のキノコ類由来の油および魚油である。
【0078】
あるいは、その他の多価不飽和脂肪酸(例えばオメガ−3脂肪酸;オメガ−6脂肪酸)および/またはそれらの誘導体を使用してもよい。
【0079】
ビタミンEという用語は、トコフェロール、トコフェロール誘導体(例えばビタミン−E−アセテート)ならびに天然ビタミンEの混合物を包含する。
【0080】
本発明のさらなる目的は以下の方法にある:
・ヒトを含めた動物における軟骨傷害、特に軟骨外傷の治療または同時治療のための方法であって、それを必要としているヒトを含めた動物に対して有効量のヒドロキシチロソールを投与するステップを含む方法。
・ヒトを含めた動物における軟骨の修復または再生方法であって、それを必要としているヒトを含めた動物に対して有効量のヒドロキシチロソールを投与するステップを含む方法。
・(a)ヒトを含めた動物の関節内の軟骨修復または軟骨再生を誘発または増強させる;(b)軟骨細胞の増殖を増強させる;(c)軟骨細胞の増強を刺激する;(c)ヒトを含めた動物の関節内で軟骨細胞の増殖を刺激する;(d)細胞外基質の合成を増大させる;および/またはe)軟骨の健康を維持し支援し、軟骨のケアを提供し、軟骨病巣を治癒させ、軟骨の完全性を提供するための;特に、関節の健康を維持および/または改善し、関節の剛化を防止し、関節の可動性を増大させ、柔軟性かつ/または可撓性のある関節を提供し、関節を潤滑し、関節の問題を軽減するための方法であって、それを必要としているヒトを含めた動物に対して有効量のヒドロキシチロソールを投与するステップを含む方法。
【0081】
これらの方法における有効量のヒドロキシチロソールとは、生理学的効果を得るために必要な量を意味する。生理学的効果は、1つの単一用量または反復的用量によって達成されてよい。投与される投薬量は、当然のことながら、特定の組成物の生理学的特性ならびにその投与様式および経路;レシピエントの年令、健康および体重;症候の性質および範囲;併用治療の種類;治療の頻度;および所望の効果などの公知の要因に応じて変動し、当業者が調整できる。
【0082】
好ましくは、上述の方法におけるヒドロキシチロソールの有効量は、投与後の血漿中のヒドロキシチロソールの濃度が10〜15μMの間となるようなものである。
【0083】
これらの方法の好ましい実施形態においては、ヒドロキシチロソールは、ビタミンCおよびE、コンドロイチン硫酸、PUFA、加水分解コラーゲン(加水分解物)、ショウガ(匍匐茎)抽出物、グルコサミン、メチルスルホニルメタン(MSM)、S−アデノシルメチオニン、セレン、ビタミンB9(葉酸塩)、B12(コバラミン)およびビタミンD3を含む抗酸化物質から選択され、特にビタミンE、グルコサミン、コンドロイチン硫酸およびPUFAから選択される、少なくとも一つの化合物と組み合わされている。
【0084】
ここで以下の実施例により本発明を明らかにするが、これらの実施例に限定されるわけではない。
【0085】
[実施例]
[実施例1 軟ゼラチンカプセル]
カプセル1個あたり100mgというヒドロキシチロソール用量を提供する軟ゼラチンカプセルを従来の手順により調製する。適切な日用量は1〜5カプセルである。
【0086】
[その他の成分:]
グリセロール、水、ゼラチン、植物油。
【0087】
[実施例2 硬ゼラチンカプセル]
カプセル1個あたり75mgというヒドロキシチロソール用量を提供する硬ゼラチンカプセルを従来の手順により調製する。適切な日用量は1〜5カプセルである。
【0088】
[その他の成分:]
充填剤:ラクトースまたはセルロースまたはセルロース誘導体(適量)
潤滑剤:必要に応じて、ステアリン酸マグネシウム(0.5%)
【0089】
[実施例3.錠剤]
活性成分として錠剤一個あたり100mgのヒドロキシチロソールそして賦形剤として500mgまでの微結晶性セルロース、二酸化シリコーン(SiO)、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウムを提供する錠剤を、従来の手順によって調製する。
【0090】
[実施例4.ソフトドリンク]
フェノール化合物を含むソフトドリンクを以下の通りに調製してよい:
ソフトドリンクを以下の成分から調製してよい:
【0091】
【表1】



【0092】
果汁濃縮物および水溶性フレーバを、空気を取込むことなく混合する。脱イオン水の中に顔料を溶解させる。水中にアスコルビン酸およびクエン酸を溶解させる。安息香酸ナトリウムを水中に溶解させる。撹拌下でペクチンを加え、沸とうさせながら溶解させる。溶解を冷却させる。オレンジ油と油溶性フレーバを予混合する。Fに記されている活性成分をAの果汁濃縮混合物中へと撹拌する。
【0093】
ソフトドリンクを調製するために、全ての成分A−Fを混合してから、Turrax及び次に高圧ホモジナイザー(p=200バール、p=50バール)を用いて均質化する。
【0094】
[実施例5]
この実験では、健常なドナーの膝から得た正常なヒト軟骨細胞(HNAC−Kn、カンブレックス(Cambrex)の中で、同化および異化遺伝子(下表を参照)の発現に対するヒドロキシチロソール(25μM)またはハイドロックス(商標)6%(25mg/L)の効果を測定した。これらの一次軟骨細胞を実験に使用する前に生体外で4回以下の回数だけ継代させた。物質が存在するまたは不在の軟骨細胞分化培地(カンブレックス、#CC−3225)内で4時間細胞を培養した。合計RNAを培養済み細胞から抽出しリチャード(Richard)ら、Mol.Nutr.Food Res.第49号、431〜442頁、2005年により記述されている通りに逆転写させた。全く異なる遺伝子の発現レベルを、リチャードら、Mol.Nutr.Food Res.第49号、431〜442頁、2005年内で詳述されている通りの定量的実時間PCRにより判定した。
【0095】
この実験の結果を表1に示す:
【0096】
【表2】



【0097】
アグリカンおよびコラーゲンIIを含め同化遺伝子発現(すなわち軟骨再構築に有利に作用するもの)は、OH−チロソールおよびハイドロックス(商標)6%によって実質的に増大させられた。さらに、ECM−再構築軟骨細胞の増殖およびコラーゲンの発現に有利に作用する転写因子の発現およびコラーゲンの発現は増強された。注目すべきことに、物質の軟骨再構築特性と一貫して、軟骨分解についてのシグナリング経路のアンタゴニスト(すなわちIL1−Ra)が増大させられた。したがってヒドロキシチロソールは、軟骨を再生し軟骨の欠陥を充填するべく軟骨細胞の増殖を刺激しかつその細胞外基質構成要素産生を増大させることにより軟骨の修復または軟骨再生を誘発または増強する上で意外なほどに有効である。
【0098】
[実施例6.ヒドロキシチロソールの調製]
[実施例6.1.(3,4−ジヒドロキシフェニル)−酢酸メチルエステル]
50ml入りの反応装置内で、メタノール中の0.1NのHCl25mlに2.5g(12.5mmol)の3.4−ジヒドロマンデル酸(純度89.5%、有効2.24g)を溶解させた。この溶液に対して、炭素上のパラジウム(Pd/C E101 N/D;デグサ(Degussa))250mgを添加し、10バールの水素圧力を加えた。24.5時間40℃で混合物を撹拌した。冷却した溶液をろ過し、固形物をメタノールで洗浄した。200mgの酢酸ナトリウムの添加後に溶媒を蒸発させた。残渣は2.5gであり、これをHPLCで分析すると82.7%の収量に対応する純度72.9%の(3,4−ジヒドロキシフェニル)−酢酸メチルエステルであった。
【0099】
[実施例6.2.90%超の純度をもつヒドロキシチロソール]
乾燥THF60mlの中に、6.4g(33.4mmol)の(3,4−ジヒドロキシフェニル)−酢酸メチルエステルを溶解させた。氷浴中で冷却する間、1.95g(50.6mmol)の水素化アルミニウムリチウムを、撹拌下で小分量の形で20分間にわたり添加した。激しい起泡のため、さらに40mlのTHFを添加した。その後、充分に撹拌した混合物を、TLCにより反応の進行を監視しながら3時間にわたり加熱して還流させた。約0℃まで冷却した後、強い気体および熱の発生下で20分後に入念に2NのHCl水50mlを加えた。生成物を4回、各々100ml計400mlの酢酸エチルで抽出した。抽出物を50mlの飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。約1mbarでの溶媒の蒸留の後、6.4gの粗製ヒドロキシチロソール(純度81%)を得た(収量100%)。200〜225℃および1.8mbarでの蒸留により、純度93.8%のヒドロキシチロソール5.3gを得た(収量96.7%)。
【0100】
[実施例7:]
39才の元アマチュアフットボール選手が、トレーニング無しでプレーを再開した。アマチュアゲームにおいて、ディフェンダーとドリブルを繰り返している間に、別の選手に押され膝をねじった。彼の膝には膨れと痛みがあった。診察とX線検査により、膝の他の部分に重症の外傷性半月板断裂および損傷があることが判明する。磁気共鳴画像形成によって、診断が確認され、関節軟骨損傷も示された。外科的修復および標準療法の後、損傷した軟骨の修復および治癒を支援するため、この選手は、一日200mgのヒドロキシチロソールを摂取する。
【0101】
[実施例8]
35才の娯楽目的のスキーヤが、ジャンプの後に転倒して脚をねじった。夜中に激しく膨れ、痛みがあった。医師が膝を診察し、X線および磁気共鳴画像形成により傷害とは無関係なその他の考えられる膝痛の原因を除外する。磁気共鳴画像形成は同様に、細胞損傷を示している。膝の傷害は標準療法(休養、氷冷、圧迫および高位)で治療される。さらに、彼は、軟骨の急速な修復および治癒を支援するため一日100mgのヒドロキシチロソールを摂取する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨の修復または軟骨の再生を誘発または増強させるためのヒドロキシチロソールの使用。
【請求項2】
軟骨細胞の増殖を誘発または増強させるためのヒドロキシチロソールの使用。
【請求項3】
軟骨細胞増強を刺激するためのヒドロキシチロソールの使用。
【請求項4】
細胞外基質の合成を増大させるためのヒドロキシチロソールの使用。
【請求項5】
軟骨の健康を維持し支援し、軟骨のケアを提供し、軟骨病巣を治癒させ、軟骨の完全性を提供するための、ヒドロキシチロソールの使用。
【請求項6】
関節の健康を維持および/または改善し、関節の剛化を防止し、関節の可動性を増大させ、柔軟性かつ/または可撓性のある関節を提供し、関節を潤滑し、関節の問題を軽減するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒドロキシチロソールの使用。
【請求項7】
軟骨の維持、軟骨の修復および/または軟骨の再生のための有効な微量栄養素としてのヒドロキシチロソールの使用。
【請求項8】
関節内の軟骨傷害、特に活動的なライフスタイルをもつ人、スポーツ選手および肥満である対象における軟骨外傷の治療または同時治療のためのヒドロキシチロソールの使用。
【請求項9】
(a)軟骨修復または軟骨再生を誘発または増強させる;(b)軟骨細胞の増殖を増強させる;(c)軟骨細胞の増強を刺激する;(d)細胞外基質の合成を増大させる;(e)軟骨の健康を維持し支援し、軟骨のケアを提供し、軟骨病巣を治癒させ、軟骨の完全性を提供するため;特に、関節の健康を維持および/または改善し、関節の剛化を防止し、関節の可動性を増大させ、柔軟性かつ/または可撓性のある関節を提供し、関節を潤滑し、関節の問題を軽減するための、組成物の製造を目的とするヒドロキシチロソールの使用。
【請求項10】
関節内の軟骨傷害の治療または同時治療のための組成物の製造を目的とするヒドロキシチロソールの使用。
【請求項11】
軟骨傷害が軟骨外傷である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
組成物が栄養補助食品組成物である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
組成物が飲料、スープ、乳製品、栄養バーまたはスプレット、特に飲料または栄養バーである請求項9〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
組成物が錠剤、丸薬、顆粒、糖衣錠、カプセルまたは発泡性製剤の形態をとっている、請求項9〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
ヒトを含めた動物における軟骨傷害、特に軟骨外傷の治療または同時治療のための方法であって、それを必要としているヒトを含めた動物に対して有効量のヒドロキシチロソールを投与するステップを含む方法。
【請求項16】
ヒトを含めた動物における軟骨の修復または再生方法であって、それを必要としているヒトを含めた動物に対して有効量のヒドロキシチロソールを投与するステップを含む方法。
【請求項17】
(a)ヒトを含めた動物の関節内の軟骨修復または軟骨再生を誘発または増強させる;(b)軟骨細胞の増殖を増強させる;(c)軟骨細胞の増強を刺激する;(d)関節内の細胞外基質の合成を増大させる;および/または(e)軟骨の健康を維持し支援し、軟骨のケアを提供し、軟骨病巣を治癒させ、軟骨の完全性を提供するための;特に、関節の健康を維持および/または改善し、関節の剛化を防止し、関節の可動性を増大させ、柔軟性かつ/または可撓性のある関節を提供し、関節を潤滑し、関節の問題を軽減するための方法であって、それを必要としているヒトを含めた動物に対して有効量のヒドロキシチロソールを投与するステップを含む方法。
【請求項18】
一日投薬量で、
約800〜1200mg、好ましくは1000mgのグルコサミンと、
約600〜1000mg、好ましくは800mgのコンドロイチン硫酸と、
約200〜600mgのPUFA、好ましくは400mgのPUFA、特にEPAおよびDHAと、
約5〜20mg、好ましくは10mgのヒドロキシチロソールと、
15〜50IU、好ましくは30IUのビタミンEとを含む組成物。
【請求項19】
軟骨の健康を維持し支援し、軟骨のケアを提供し、軟骨病巣を治癒させ、軟骨の完全性を提供するため、特に関節の健康を維持および/または改善し、関節の剛化を防止し、関節の可動性を増大させ、柔軟性かつ/または可撓性のある関節を提供し、関節を潤滑し、関節の問題を軽減するための、請求項18に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2010−524867(P2010−524867A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503373(P2010−503373)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002674
【国際公開番号】WO2008/128629
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】