説明

ヒドロキシピバリンアルデヒドおよびネオペンチルグリコールの製造法

ヒドロキシピバリンアルデヒドの製造は、イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール化および得られた反応搬出物の引き続く蒸留精製とによって行われ、その際、前記反応搬出物は、0.5〜1.5barの範囲内の塔頂圧力で運転される蒸留塔に返送され、かつ前記蒸留塔内において、塔頂領域中で二段階の凝縮が予定されており、前記二段階の凝縮に際して、蒸気はまず、50〜80℃の範囲内の温度で運転される分縮器中に導かれ、前記分縮器の凝縮物は少なくとも部分的に蒸留塔内に返送され、かつ前記分縮器中で凝縮されなかった蒸気は、−40〜+30℃の範囲内の温度で運転される後接続された凝縮器に供給され、前記凝縮器の凝縮物は少なくとも部分的に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール化によるヒドロキシピバリンアルデヒドの製造法ならびにそのようにして得られたイソブチルアルデヒドの水素化によるネオペンチルグリコールの製造法に関する。
【0002】
イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール化およびネオペンチルグリコールを得るためのさらなる反応は自体公知である。WO98/17614は、例えば0.1〜15%のメタノール濃度を有するホルムアルデヒドの使用下でのネオペンチルグリコールの連続した製造法に関する。イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒド水溶液とのアルドール化の搬出物は、抽出剤としてのオクタノールの利用下で、有価生成物を含有する有機相と水相とに分離される。引き続き、残留する低沸点物を分離するために、該有機相は軽く初期蒸留される。この第一の塔の塔底物が水素化され、かつネオペンチルグリコールが有価生成物としてさらなる抽出およびさらなる蒸留後に得られる。
【0003】
ネオペンチルグリコールは、例えば、ヒドロキシピバリン酸−ネオペンチルグリコールエステル(HPN)を得るためにヒドロキシピバリン酸と反応される。このような方法は、例えばEP−A−0895982の中で記載されている。
【0004】
本発明の課題は、生成物の熱負荷を可能な限り僅かなものとし、かつ僅かな煩雑性で水溶液からのアルデヒドのほぼ完全な分離を可能にする、イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール化によるヒドロキシピバリンアルデヒドの製造法を提供することである。
【0005】
該課題は、本発明により、イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール化および得られた反応搬出物の引き続く蒸留精製による、その際、前記反応搬出物を、0.5〜1.5barの範囲内の塔頂圧力で運転される蒸留塔に供給し、かつ前記蒸留塔内において、塔頂領域中で二段階の凝縮を予定しており、前記二段階の凝縮に際して、蒸気をまず、50〜80℃の範囲内の温度で運転される分縮器中に導き、前記分縮器の凝縮物を少なくとも部分的に蒸留塔内に返送し、かつ前記分縮器中で凝縮されなかった蒸気を、−40〜+30℃の範囲内の温度で運転される後接続された凝縮器に供給し、前記凝縮器の凝縮物を少なくとも部分的に排出する製造法によって解決される。
【0006】
本発明により、蒸留に際しての残留蒸気の分離が、好ましくは、分縮器と、後接続された低温凝縮器とを組み合わせることによって達成されることを発見した。本発明により、塔の下流直後に運転される完全凝縮器が、ヒドロキシピバリンアルデヒドによって遮られ得ることを発見した。しかしながら、該凝縮器は、それが蒸気を完全に凝縮すべきである場合、可能な限り低温で運転されなければならない。その際、ヒドロキシピバリンアルデヒドは、低温還流の高い量に基づき塔内で堆積し、これにより塔の底部で熱負荷が高まる。なぜなら、蒸発器はこのエネルギーをもたらさなければならないからである。加えて、該凝縮器はヒドロキシピバリンアルデヒドによって遮られ得る。
【0007】
本発明による運転方式は、凝縮器中でのヒドロキシピバリンアルデヒドの堆積を防止する。
【0008】
加えて、ヒドロキシピバリンアルデヒドを液相に保ち、かつ同時に熱負荷を低く保つことを可能にする塔の圧力範囲内および温度範囲内で作動される。
【0009】
アルドール化の後、反応しなかったアルデヒドおよび好ましくは方法において併用されるアミン塩基の一部が蒸留により分離され、かつ好ましくは返送される。蒸留塔底部には、アルドール化の生成物(ヒドロキシピバリンアルデヒド)、水、アミン塩基およびギ酸からのギ酸アンモニアが残留する。蒸留による分離は、高められた温度によってヒドロキシピバリンアルデヒドがヒドロキシピバリン酸−ネオペンチルグリコールエステル(HPN)に分解しないように、有利には適度な温度で行われるべきである。他方で、圧力は、なお塔頂部で低沸点物のイソブチルアルデヒドおよびアミン塩基、例えばトリメチルアミンのようなトリアルキルアミンを凝縮するために低すぎないことが望ましい。
【0010】
蒸留は低い圧力で行ってはならない。なぜなら、約60℃より下では、水溶液中でのヒドロキシピバリンアルデヒド(HPA)の溶解度が、イソブチルアルデヒド含量およびメタノール含量に依存して約1〜3質量%に低下するからである。その際、メタノールは、製造条件に応じて約1〜3質量%のメタノールを含有するホルムアルデヒド水溶液を介して連行される。
【0011】
反応しなかったアルデヒドが該水溶液から分離される場合、単段蒸留でメタノールが分離され、該メタノールは還流によりアルドール化のプロセスに返送され、かつ、さらなる工程、例えばメタノールを有するアルデヒドの排出によってのみ排出され得る。
【0012】
本発明により、上記欠点を、蒸留に際して特定の条件が守られていなければならない、還流を伴った多段凝縮により回避出来ることを発見した。結果として、なかでもメタノールが十分に塔底部で保持される。
【0013】
蒸留分離の実施に際して、ほぼ周囲圧力で、すなわち0.5〜1.5bar(絶対)の範囲内の塔頂圧力にて、塔頂部で低沸点物を、冷却媒としての水で凝縮出来ることが明らかになった。調整される塔底温度により、本発明による手法の場合、ヒドロキシピバリンアルデヒドの著しい分解はなお生じない。
【0014】
好ましくは、分縮器の凝縮物は、70質量%を上回って、とりわけ有利には完全に蒸留塔内に返送される。その際、該凝縮物は、好ましくは塔頂部に返送される。後接続された凝縮器の凝縮物は、好ましくは70質量%を上回って、殊に完全に排出される。
【0015】
分縮器は、50〜80℃の範囲内、好ましくは55〜60℃の範囲内の温度で運転される。後接続された凝縮器は、−40〜+30℃の範囲内、好ましくは−10〜10℃の範囲内の温度で運転される。塔頂圧力は、とりわけ有利には1〜1.2barである。
【0016】
蒸留塔の底部は、有利には、90〜130℃の範囲内、とりわけ有利には100〜105℃の範囲内の温度で運転される、短い滞留時間を有する蒸発器とつながれている。その際、該蒸発器は、とりわけ有利には流下薄膜式蒸発器であり、そのうえ有利には、ワイプトフィルム式蒸発器(Wischfilmverdampfer)または短路式蒸発器(Kurzwegverfdampfer)を使用してよい。その際、短い滞留時間ひいては僅かな熱負荷が達成されることが重要である。該蒸発器には、適した形で熱が、例えば4barの蒸気が供給され得る。
【0017】
好ましくは、ヒドロキシピバリンアルデヒドで富化された混合物が、蒸発器の塔底部から排出される。循環流から排出することも、本発明により可能である。この混合物は、熱負荷を低下させるために、さらなる精製前に、50〜80℃の範囲内の冷却器温度、とりわけ有利には55〜60℃の冷却器温度を有する冷却器中で冷却され得る。冷却された混合物は、分離器および続いて水素化に供給され得る。ネオペンチルグリコールの製造のために、まず上記のようにアルドール化および精製され、続いて、そのようにして得られたヒドロキシピバリンアルデヒドの水素化が実施される。
【0018】
有利には、蒸留塔は、分離性能を高めるために内部構造物を有する。その際、アルドール化の反応交換物は、好ましくは、蒸留塔の理論段の1/4から3/4の間の空間領域中に供給され、とりわけ有利には、蒸留塔の理論段の1/3から2/3の間の空間領域中に供給される。例えば、該供給は、理論段の真ん中よりいくらか上方で行ってよい(比率3:4)
蒸留内部構造物は、例えば規則充填物として、例えばMellapak 250 YまたはMonz Pak,B1−250型のようなシート状充填物として存在していてよい。より小さいまたは増大した比表面積を有する充填物も存在していてよく、または織物充填物またはMellapak 252 Yのようなその他の幾何学的形状を有する充填物を使用してよい。この蒸留内部構造物の使用に際して好ましい点は、例えばバルブトレイと比較して僅かな圧力損失および僅かな比液ホールドアップ量である。
【0019】
分縮器中には凝縮物として主に水が発生し、それは好ましくは、塔に完全に還流として供給される。例えば、混合物は凝縮物として得られ、該凝縮物は、水の他にイソブチルアルデヒド約10質量%、アミン塩基、例えばトリメチルアミン約5質量%、ヒドロキシピバリンアルデヒド約1質量%およびメタノール5質量%を含有する。残留蒸気は、主たる量のイソブチルアルデヒドおよびアミン塩基、例えばトリメチルアミンを含有する。これらは、後接続された凝縮器中で可能な限り完全に凝縮される。この場合、有利には、冷却媒として、可能な限り低温の水(例えば約5℃)または低温混合物(例えば−20℃を有するグリコール−水)を使用してよい。
【0020】
添付された図面には、アルドール化反応生成物の蒸留精製が概略的に図示されている。アルドール化搬出物(A)は、図示された箇所にて蒸留塔の真ん中で供給される。塔頂部には二段階の凝縮が接続されており、その際、最終的にオフガス(Ab)が取り出される。塔底部にはイソブチルアルデヒドが返送され、かつ蒸発される。排出されたヒドロキシピバリンアルデヒドが、ネオペンチルグリコール水素化(NEO)にさらに導かれる。凝縮からイソブチルアルデヒド(ISO)が返送される。
【0021】
本発明を、後続の実施例によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】アルドール化反応生成物の蒸留精製を概略的に示す図
【0023】
実施例
イソブチルアルデヒド(IBA)とホルムアルデヒドとのアルドール化
イソブチルアルデヒド約750g/h(IBA 約>99.5GC面積%)を、ホルムアルデヒド約700g/h(ホルムアルデヒド 約49%、メタノール1.5%、残分の水)およびトリメチルアミン溶液80g/h(水中でTMA50%)と二段階の攪拌槽カスケードにおいて反応させた。
【0024】
IBAの返送 実施例1
引き続き、溶液から塔内で蒸留により低沸点物を取り除いた。該塔(直径30mm)には、濃縮部において2mの織物充填物(比表面積 500m2/m3)および4mのシート状充填物(250m2/m3)が備え付けられている。アルドール化搬出物を、シート状充填物の上方で供給し、塔の頂部で留出物をガス状で約85℃にて取り出し、かつ分縮器に供給した。そこで水により55℃で冷却した。この場合に発生する凝縮物(約50g/h)を完全に塔に供給し、残留蒸気を後凝縮器に供給した。そこで該残留蒸気をグリコール−水−低温混合物により−20℃でほぼ完全に凝縮した。得られた凝縮物(約80g/h)を第一の攪拌槽に供給した。凝縮器に後接続された冷トラップ中で、約1g/hの液体が発生した(IBA 約80%、TMA 約20%)。
【0025】
IBAの分離を、約1bar(絶対)の塔頂圧力で行った。蒸発器として流下薄膜式蒸発器を使用した。塔の底部で102℃の塔底温度に調整した。塔への還流量(もしくは分縮器の冷却水量)を、織物充填物の真ん中での温度によって制御し、85℃の温度に調整した。
【0026】
塔底部から、ポンプによって約100kg/hの液体を取り出した。これを流下薄膜式蒸発器(油加熱のステンレス鋼管、長さ2.5m、内径 約21mm、壁の厚さ 約2mmから成る)に供給した。流下薄膜式蒸発器の底部から、イソブチルアルデヒド約0.3%の濃度を有する生成物 約1.5kg/hを取り出した。蒸気および過剰の液体を塔底部に供給した。排出された塔底生成物は、HPA 約70%、HPN 約1.5%、IBA 0.3%、残分の水を含有していた。
【0027】
ネオペンチルグリコールへのヒドロキシピバリンアルデヒドの水素化
触媒活性
EP44444の中で記載されるようなCu/Al23−触媒150mlを、管型反応器中で190℃にて、水素5体積%および窒素95体積%(ガス体積50Nl/h)とから成る混合物を無圧状態で24hのあいだ移行させることによって活性化した。
【0028】
水素化
出発溶液として、上記で水素化供給材料として記載される混合物を用いた。該混合物に、水素化供給材料に対して約10質量%のトリメチルアミンの15%の水溶液を添加した。そのようにして得られた供給流を、細流運転方式においてH2圧力40barにて、120℃に加熱された反応器に通した。負荷量はHPA 0.4kg(lKat*h)であった。水素化搬出物の一部を、供給流に再び混ぜた(循環運転方式)。循環流対供給流の比は10:1であった。反応器搬出物の試料のpH値が室温で8.9であることが測定してわかった。
【0029】
NPG 約69%、HPN 約1.8%、イソブタノール 約2%、メタノール 約3.5%、TMA 約2%、残分の水を水素化後に得た。
【0030】
IBAの返送 実施例2
アルドール化のそれ以外は同じ条件下で、IBAの返送の塔頂部で、冷却水(約10℃)および後接続された相分離器を有する凝縮器を使用した。塔の塔底温度を102℃に調整した。塔頂部で留出物をガス状で凝縮器に供給した。液体凝縮物 約255g/hが発生した。後接続された相分離器中で95g/hの水相を分離し、かつ塔に完全に供給した。さらに相分離器から135g/hを第一の攪拌槽に供給した。塔内での制御温度を85℃に保つために、付加的に該塔に有機相25g/hを供給した。凝縮器に後接続された冷トラップ中で、約5g/hの液体が発生した(IBA 約80%、TMA 約20%)。
【0031】
流下薄膜式蒸発器の底部で、イソブチルアルデヒド約0.4%およびHPN2.6%、HPA約69%を有する約1.5kg/hのHPA水溶液を排出した。
【0032】
NPG 約68%、HPN 約2.8%、イソブタノール 約2.1%、メタノール 約3.4%、TMA 約2%、残分の水を有する水溶液を同様の水素化後に得た。
【符号の説明】
【0033】
A アルドール化搬出物、 Ab オフガス、 Neo ネオペンチルグリコール、 Iso イソブチルアルデヒド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール化および得られた反応搬出物の引き続く蒸留精製によるヒドロキシピバリンアルデヒドの製造法において、前記反応搬出物を、0.5〜1.5barの範囲内の塔頂圧力で運転される蒸留塔に供給し、かつ前記蒸留塔内において、塔頂領域中で二段階の凝縮を予定しており、前記二段階の凝縮に際して、蒸気をまず、50〜80℃の範囲内の温度で運転される分縮器中に導き、前記分縮器の凝縮物を少なくとも部分的に蒸留塔内に返送し、かつ前記分縮器中で凝縮されなかった蒸気を、−40〜+30℃の範囲内の温度で運転される後接続された凝縮器に供給し、前記凝縮器の凝縮物を少なくとも部分的に排出することを特徴とする、イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール化および得られた反応搬出物の引き続く蒸留精製によるヒドロキシピバリンアルデヒドの製造法。
【請求項2】
前記蒸留塔の底部を、90〜130℃の範囲内の温度で運転される、短い滞留時間を有する蒸発器とつなぐことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記蒸発器が、流下薄膜式蒸発器、ワイプトフィルム式蒸発器または短路式蒸発器であることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヒドロキシピバリンアルデヒドで富化された混合物を、前記蒸発器の底部から排出することを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
排出された混合物を、さらなる精製前に、50〜80℃の範囲内の冷却器温度を有する冷却器中で冷却することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記蒸留塔が、分離性能を高めるために内部構造物を有し、かつアルドール化の反応搬出物を、前記蒸留塔の理論段の1/4から3/4の間の空間領域中に供給することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記分縮器の凝縮物を完全に塔内に返送することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記分縮器の凝縮物を塔頂部に返送することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
アルドール化を、塩基としてのアミンの存在下で実施することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法に従ったイソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール化および反応搬出物の精製およびそのようにして得られたヒドロキシピバリンアルデヒドの引き続く水素化によるネオペンチルグリコールの製造法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−520250(P2010−520250A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552165(P2009−552165)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052240
【国際公開番号】WO2008/107333
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】