ヒドロゲルリザーバ部材を利用する減圧治療システムと方法
患者の組織部位を治療するための減圧治療システムにおいて、このシステムは組織部位の近傍に配置するためのマニホールドパッドを具える。マニホールドパッドは、ヒドロゲルリザーバ部材とマニホールド部材とを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は、第1の圧力で組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されている。第1の圧力は、絶対圧力スケールで第2の圧力より大きい。システムはさらに、組織とマニホールドパッドの上に配置するためのシーリングドレープを具えている。シーリングドレープは、組織とマニホールドパッドの上に流体シールを形成する。減圧サブシステムは、減圧をシーリングドレープに伝達する。他のシステム、装置、および方法が開示されている。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本発明は、35USC119(e)に基づき、(2009年6月2日)提出の「Reduced−Pressure Treatment Systems and Methods Employing Hydrogel Reservoir Members」と題する米国仮出願第61/183,285号の利益を主張し、これを全ての目的のため本書に援用する。
【0002】
本開示は一般に医療用治療システムに関し、特に限定しないが、ヒドロゲルリザーバ部材を利用する減圧治療システムと方法に関する。
【0003】
長時間水分に晒された組織は、解離の危険性と他の問題を導く。治癒を促進し、感染症の危険性を低減させるとともに、解離の危険性を低減させるためには、組織部位から流体を除去することがしばしば有利となる。陰圧創傷閉鎖法は、組織部位から流体を除去するために用いることができる。しかしながら、従来の陰圧創傷閉鎖法では、陰圧が組織まで伝達されていないとき組織が水分に長時間晒される場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本書の例示的な限定しない実施形態の例示的なシステム、装置および方法により既存の創傷治療システム、装置および方法の改良が取り扱われている。例示的な限定しない一実施形態によれば、患者の組織部位を治療するための減圧治療システムが、マニホールドパッドと、組織部位の上に配置して流体シールを形成するためのシーリングドレープと、マニホールドパッドに減圧を伝達するための減圧サブシステムとを具える。マニホールドパッドは組織部位の近傍に配置するためのマニホールド部材と、マニホールド部材に連結したヒドロゲルリザーバ部材とを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は第1の圧力で組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、第1の圧力は絶対圧力スケールで第2の圧力より大きい。
【0005】
別の例示的な限定しない実施形態によれば、患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドが、減圧を分散するよう適合されたマニホールド部材と、マニホールド部材に連結したヒドロゲルリザーバ部材とを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は第1の圧力で組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されている。第1の圧力は、絶対圧力スケールで第2の圧力より大きい。
【0006】
別の例示的な限定しない実施形態によれば、患者の組織部位を治療するための方法が、ヒドロゲルリザーバ部材を有するマニホールドパッドを組織部位の近傍に配置するステップと、シーリングドレープをマニホールド部材と患者の表皮の上に配置するステップと、シーリングドレープと患者の表皮との間に流体シールを形成するステップと、マニホールドパッドに減圧を伝達するステップとを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は、第1の圧力で組織部位から流体を受け入れるよう動作することができ、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう動作することができる。第1の圧力は、絶対圧力スケールで第2の圧力より大きい。
【0007】
さらに別の例示的な限定しない実施形態によれば、患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドの製造方法が、マニホールド部材を形成するステップと、マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップとを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は、第1の圧力で組織部位から流体を受け入れ保持するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されている。
【0008】
例示的な限定しない実施形態の他の特徴および利点は、後続する図面と詳細な説明を参照することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、ヒドロゲルリザーバ部材を利用する減圧治療システムの例示的な限定しない実施形態の概略図であり、一部が断面図で示されている。
【図1B】図1Bは、図1Aの領域1Bの拡大図である。
【図2】図2は、図1Bのライン2−2に沿って切り取られた概略断面図である。
【図3A】図3Aは、減圧創傷治療システムの例示的な限定しない実施形態の一部として用いられるマニホールドパッドの例示的な限定しない実施形態の概略斜視図である。
【図3B】図3Bは、ヒドロゲルビーズを利用するマニホールドパッドの例示的な限定しない実施形態の一部の拡大した概略斜視図である。
【図3C】図3Cは、ヒドロゲルビーズを利用する例示的なマニホールドパッドの一部の拡大した概略断面図である。
【図3D】図3Dは、ヒドロゲルビーズを利用する代替的なマニホールドパッドの一部の拡大した概略斜視図である。
【図3E】図3Eは、図3Aのマニホールドパッドの概略平面図である。
【図4A】図4Aは、減圧創傷治療システムの例示的な限定しない実施形態の一部として用いられるマニホールドパッドの例示的な限定しない実施形態の概略斜視図である。
【図4B】図4Bは、ライン4B−4Bに沿って切り取られた図4Aのマニホールドパッドの概略断面図である。
【図4C】図4Cは、図4Aのマニホールドパッドの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な限定しない実施形態の以下の詳細な説明では、その一部をなす添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に十分詳細に記載されており、他の実施形態を利用することができ、本発明の趣旨および範囲を逸脱せずに論理構造的、機械的、電気的および化学的な変更を行うことができることを理解されたい。当業者が本書に記載した実施形態を実施するために必要のない詳細を避けるため、この記載は当業者に既知の特定の情報を省略する場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定する意味で捉えるべきではなく、例示する実施形態の範囲は添付した特許請求の範囲により規定されるに過ぎない。
【0011】
図面、主に図1A〜図2を参照すると、組織部位102、例えば創傷104を治療するための減圧治療システム100の例示的な限定しない実施形態が示されている。創傷104は、限定しないが、開放創、外科的切開、あるいは病変組織などの組織のあらゆる凹凸を含むことができる。創傷104は、表皮106(もしくは一般に皮膚)、真皮108、および皮下組織110といった様々な組織を含むことができる。減圧治療システム100は、開放創を含む様々な種類の創傷とともに、任意の深さの創傷104など、組織部位102を治療するために用いることができる。組織部位102は総ての人、動物、または他の生物の身体組織とすることができ、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯、または任意の他の組織を含む。他に記載がない限り、本書で用いられるように、「または」は相互排他性を要求するものではない。
【0012】
例示的な限定しない実施形態では、減圧治療システム100が通常、マニホールドパッド111と、シーリングドレープ116と、減圧サブシステム118とを具える。マニホールドパッド111は、マニホールド部材112とヒドロゲルリザーバ部材114とを具える。マニホールドパッド111は組織対向面122を有し、流体を受け入れ貯蔵する第1の圧力(P1)で動作することができ、特にヒドロゲルリザーバ部材114が流体を貯蔵する。減圧または陰圧が増加すると、すなわち絶対圧力が第2の圧力(P2)まで低下すると、マニホールドパッド111が減圧を分散することができ、流体をマニホールドパッド111を介して流し、ヒドロゲルリザーバ部材114から前に貯蔵した流体の一部を放出する。マニホールドパッド111はさらに後述する。
【0013】
シーリングドレープ116は、組織部位102の上に流体シールを提供する。減圧治療システム100は接着具120を具えることができる。シーリングドレープ116と接着具120は、シーリングドレープ116と患者の表皮106との間に流体シールを形成する。マニホールドパッド111は、シーリングドレープ116の組織対向(内向きの)面132と組織部位102との間に配置される。「流体シール(fluid seal)」または「シール(seal)」とは、関連する特定の減圧源もしくはサブシステムに与えられた所望の部位で減圧を維持するのに十分なシール(密封)のことを意味する。
【0014】
本書で用いられているように用語「マニホールド(manifold)」とは通常、組織部位、例えば組織部位102に減圧を適用し、そこに流体を送り、あるいはそこから流体を除去するのを支援するために設けられた物質または構造のことをいう。マニホールド部材112は一般に、マニホールド部材112に提供された流体を分散し、その周囲から流体を除去する複数の流路または経路を具えている。複数の流路あるいは経路は、相互に接続することができる。マニホールド部材112は、組織部位、例えば組織部位102に接触して配置することができ、かつ組織部位102に減圧を分散することができる生体適合性材料とすることができる。マニホールド部材の例としては、限定されないが、例えば、複数の流路を具えるまたは流路を具えるよう硬化した多孔性発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、液体、ゲル、および発泡体など、流路を形成するよう構成された構造成分を有する器具を含むことができる。マニホールド112は多孔性にすることができ、発泡体、ガーゼ、フェルト状マット等で作製することができる。マニホールド部材112は、多孔性物質、例えば発泡体で形成するか、あるいは多孔性を得た材料、例えばその内部に開口部が適用された固体部材で形成することができる。
【0015】
例示的な限定しない一実施形態では、マニホールド部材112が複数の相互接続した支柱124を具える多孔性発泡体である。相互接続した支柱124は、複数の連続気泡あるいは孔126の形成に役立ち、これはマニホールド部材112を通る流路として機能する。多孔性発泡体は、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社により製造されたGranuFoam(登録商標)材料などのポリウレタン、連続気泡、網状発泡体とすることができる。例示的な限定しない一実施形態では、孔126が20ppiないし60ppiの孔径(1インチ当たりの孔数(ppi))を有することができる。
【0016】
ヒドロゲルリザーバ部材114はマニホールド部材112と連結しており、組織部位102から浸出液あるいは任意の他の流体などの流体を受け入れ保持もしくは貯蔵するよう第1の圧力(P1)で動作することができ、かつ吸収した流体の少なくとも一部を放出するよう第2の圧力(P2)で動作することができる。第1の圧力は絶対圧力スケールで第2の圧力より大きく、すなわちP1>P2である。例示的な一実施形態では、第1の圧力が実質的に大気圧である(ゲージ圧0mmHgおよび海面での絶対圧力の約760mmHg)。代替実施形態では、第1の圧力が組織部位102の静水圧である。さらに以下で論じるように、第2の圧力は通常、組織部位102を治療するため減圧サブシステム118によって提供された減圧であり、通常−75mmHg〜−500mmHgの範囲である(ゲージ圧)。
【0017】
マニホールドパッド111はヒドロゲルリザーバ部材114を有しており、減圧、例えば第2の圧力(P2)の影響下で減圧を分散する(または集配する)。減圧が例えば機器の故障あるいは他の理由により第1の圧力(P1)まで低下すると(絶対圧力では圧力が上昇する)、流体は組織部位102から除去され続けるが、このときマニホールドパッド111のヒドロゲルリザーバ114に貯蔵される。例えば、第2の圧力(P2)まで減圧を増加すると、流体がヒドロゲルリザーバ114から少なくとも部分的に除去され、マニホールドパッド111が組織部位102に減圧を分散する。例示的な一実施形態では、より大きな減圧(より低い絶対圧力)、例えば第2の減圧(P2)の影響下に配置されたとき、ヒドロゲルリザーバ部材114が吸収した流体もしくは貯蔵した流体の20%ないし80%を放出する。
【0018】
ヒドロゲルリザーバ部材114は、任意の適切なヒドロゲル材料で形成することができる。ヒドロゲルは、限定しないが、親水性架橋ポリマーなど、任意の高吸収性の天然あるいは合成ポリマーを含む。適切なヒドロゲルの例示的な限定しない実施例は、アクリル樹脂、例えばアクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの塩類と、スルホン酸塩、例えばamps(アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、およびそれらの塩類)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびアルギン酸塩とを含む。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル材料がヒドロゲルイオンである。加えて、ヒドロゲルリザーバ部材114はさらに殺生物剤と、抗菌剤と、疼痛管理の導電性材料、例えば飽和状態を示す視覚表示器と、他の材料とを組み込むことができる。
【0019】
ヒドロゲルリザーバ部材114は様々な方法でマニホールド部材112と連結することができる。限定しない例示的な実施例として、マニホールド部材112はヒドロゲル材料でコーティングすることができる。幾つかの実施形態では、ヒドロゲルリザーバ部材114がマニホールド部材112に直接結合するか、あるいはヒドロゲルリザーバ部材114がマニホールド部材112に隣接して配置することができる。本書で用いられているように、用語「結合された」とは通常、別個の対象を介した結合を含み、かつ直接結合も含む。用語「結合された」とは、各々の成分が同じ要素の材料で形成されていることにより互いに連続している2以上の成分をも包含する。また、用語「結合された」とは、化学的、機械的、熱的、または電気的結合を含むことができる。流体結合とは、流体が指定した部分あるいは位置の間で連通していることを意味する。
【0020】
図1A〜図2の例示的な限定しない実施形態では、ヒドロゲルリザーバ部材114がヒドロゲルコーティング128であり、それはマニホールド部材112の相互接続した支柱124の少なくとも1つに適用される。ヒドロゲルコーティング128は、任意の適切な技術により適用することができる。例示的な一実施形態では、ヒドロゲルコーティング128は、液化したヒドロゲル、もしくは部分的に液化したヒドロゲルの中に、マニホールド部材112または基板の少なくとも一部を初めに浸すことによってマニホールド部材112に適用される。ヒドロゲルは、非架橋溶液、分散液、固体(ホットメルトまたは粉末)、あるいは乳状液として供給することができる。次いで、非架橋溶液は含浸プロセス中(例えば、UV光を用いて)あるいは含浸プロセス直前の何れかで活性化され、これにより架橋プロセスがマニホールド部材112あるいは基板の中で継続する。別の例示的な限定しない実施形態では、ガンマ線あるいはeビーム照射を用いる滅菌プロセスと同時など、別のプロセス中に架橋を得ることができる。別の例示的な限定しない実施形態として、予め架橋したゲルが懸濁液あるいは乳状液として供給され、これを用いてマニホールド部材112を含浸させることができる。
【0021】
使用する手法に拘わらず、相互接続した支柱124の少なくとも一部がヒドロゲルでコーティングされる。相互接続した支柱124の全てあるいは実質的に全てをヒドロゲルでコーティングすることができる。次いで、浸漬による余分なヒドロゲルはマニホールド部材112を圧搾することによりマニホールド部材112から除去することができ、これにより余分なヒドロゲルがマニホールド部材112から放出される。マニホールドパッド111の残りのヒドロゲルは相互接続した支柱124に接着し、乾燥し、相互接続した支柱124の周りにヒドロゲルコーティング128を形成する。あるいは、ヒドロゲルはマニホールド部材112の少なくとも一部に噴射することができ、これにより相互接続した支柱124の少なくとも一部がヒドロゲルコーティング128を受ける。あるいは、ヒドロゲルはブレードコーティングあるいはオフセットロールコーティングを用いて適用することができる。マニホールドパッド111は、シーリングドレープ116で覆われる。
【0022】
シーリングドレープ116は、第1の面130と、組織対向(内向き)面132とを具える。シーリングドレープ116は、シーリングドレープ116が創傷104と重なり、これによりシーリングドレープ116の一部がドレープ外延部134を形成するようなサイズにすることができる。ドレープ外延部134は、創傷104の外縁を越えて延在する。シーリングドレープ116は、流体シールを提供する任意の材料にすることができる。シーリングドレープ116は、例えば非透過性あるいは半透過性の弾性材料にすることができる。「弾性」とは、弾性体(エラストマー)の特性を有することを意味する。それは通常、ゴム状弾性を有するポリマー材料のことをいう。より具体的には、大抵のエラストマーは100%超の伸び率と、非常に高い弾力性とを有する。材料の弾力性とは、弾性変形から回復する材料の性能のことをいう。エラストマーの例としては、限定されないが、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン(PU)、EVAフィルム、コポリエステルおよびシリコーンを含む。シーリングドレープ116の更なる実施例は、シリコンドレープ、3M Tegaderm(登録商標)ドレープ、カリフォルニア州パサデナのAvery Dennison社で利用可能なPUドレープを含むことができる。
【0023】
接着具120は、患者の表皮106あるいはガスケットあるいは付加的なシーリング部材など、別の層に対してシーリングドレープ116を保持するために用いることができる。接着具120は、様々な形態を取ることができる。例えば、接着具120は医学的に許容可能な圧感接着剤とすることができ、それはシーリングドレープ116のドレープ外延部134に適用される。あるいは、圧感接着剤はシーリングドレープ116の幅全体にわたることができる。代替的な接着具120は、限定されないが、熱活性化接着剤、シーリングテープ、両面シーリングテープ、のり、親水コロイド、ヒドロゲル、フック、あるいは縫合を含むことができる。
【0024】
減圧サブシステム118は、減圧源136を具える。減圧源136は、減圧治療システム100の一部として、減圧、例えば第2の減圧(P2)を提供する。本書で用いられているように、「減圧」とは通常、治療を受けている組織部位102の周囲圧力未満の圧力のことをいう。大抵の場合、この減圧は患者がいる位置の大気圧未満となるであろう。
あるいは、この減圧は組織部位102における静水圧未満でもよい。減圧は最初に、マニホールドパッド111と、減圧伝達導管138あるいは導管138と、組織部位102、例えば創傷104の近傍とに流体流を生成することができる。組織部位102、例えば創傷104の周りの静水圧が所要の減圧に近づくと、流れが和らぎ、減圧を維持することができる。伝達された減圧は、一定あるいは(パターンでまたはランダムに)変化することができ、連続的または間欠的に伝達することができる。用語「真空」および「陰圧」とは、組織部位102に適用された圧力を説明するために用いることができるが、組織部位102に適用される実際の圧力は通常、完全な真空に関連する圧力よりも大きい。本書で用いる場合には一貫して、減圧または真空圧の増加とは一般に絶対圧力の相対的な低下のことをいう。
【0025】
減圧源136は、真空ポンプあるいは壁面吸い込みなど減圧を供給するあらゆる技術もしくはデバイスを含むことができる。組織部位102に適用される減圧の量と性質は一般に用途に応じて変化するが、減圧は一般に−5mmHgないし−500mmHg(ゲージ圧)であるだろう。
【0026】
図1の例示的な限定しない実施形態では、減圧源136がバッテリ区画140とキャニスタ142とを有し、これはキャニスタ142の中の流体レベルの視覚表示を提供するウィンドウ144を備える。疎水性または油分をはじくフィルタなどの挿入膜フィルタは、減圧伝達導管138と減圧源136との間に挿入することができる。
【0027】
減圧源136によって生成された減圧は、減圧伝達導管138を通ってL型端子148である減圧インターフェイス146に伝達される。例示的な限定しない一実施形態では、L型端子148がテキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なTRAC(登録商標)テクノロジーの端子である。減圧インターフェイス146により、減圧がシーリングドレープ116に伝達し、シーリングドレープ116より下の内部に実現され、さらにマニホールド部材112の中に実現される。この例示的な限定しない実施形態では、L型端子148がシーリングドレープ116を通って、マニホールド部材112まで延在しているが、様々な配置が可能である。
【0028】
例示的な限定しない実施形態によれば、動作中、マニホールドパッド111は組織部位102、例えば創傷104の近傍に配置することができる。シーリングドレープ116はマニホールドパッド111の上に配置することができ、これによりドレープ外延部134は創傷104の外縁を越えて延在する。ドレープ外延部134は、組織部位102とマニホールドパッド111の上に流体シールを形成するために接着具120によって患者の表皮106に固定することができる。次いで、減圧インターフェイス146が設置されていない場合には適用することができる。減圧伝達導管138は、減圧インターフェイス146に流体結合され、かつ減圧源136に流体結合される。
【0029】
減圧が減圧伝達導管138に伝達されるように、減圧サブシステム118を起動することができる。減圧(P2)下では、流体が組織部位102からマニホールドパッド111へ、かつ減圧伝達導管138を通ってキャニスタ142へ伝達される。この動作中に減圧が低下するような事象、例えば圧力がP2からP1に進むような事象が発生した場合、減圧伝達導管138の流体流が停止するが、依然として流体が組織部位102から除去され続け、マニホールドパッド111のヒドロゲルリザーバ114によって組織部位102から貯蔵される。減圧が元に戻されると、例えば、圧力がP1からP2に進むと、流体は再び減圧伝達導管138の中を流れてキャニスタ142に送られ、ヒドロゲルリザーバ部材114の中の流体の全部あるいは一部が放出される。
【0030】
別の例示的な限定しない実施形態によれば、動作中、マニホールド部材112が組織部位102に隣接して配置された後、減圧(P2)が適用されていなくても、組織部位102に関連する浸出液あるいは他の流体がヒドロゲルコーティング128によって吸収され始める。しかしながら、ヒドロゲルコーティング128は既存の圧力(P1)で組織部位102から流体の少なくとも一部を受け入れるよう適合されている。言い換えれば、ヒドロゲルコーティング128は自身へ減圧が伝達されていなくとも組織部位102から流体を吸い込むよう適合されており、この流体除去は減圧が利用できないときに組織部位102の治療や回復に有益である。ヒドロゲルコーティング128が流体を吸収すると、ヒドロゲルコーティング128が隣接する孔126の中へ膨張し、これにより孔126を閉じることで、組織部位102の更なる流体がまだ流体に晒されていないマニホールド部材112の他の領域に送られ、流体がヒドロゲルコーティング128に吸収される。次いで、流体を除去するために減圧を用いることができる。
【0031】
一旦減圧源136が起動されると、減圧がシーリングドレープ116とマニホールドパッド111の内部に伝達される。減圧(P2)が伝達されると、ヒドロゲルコーティング128が前に吸収した流体、または貯蔵した流体の少なくとも一部を放出する。吸収した流体がヒドロゲルコーティング128によって放出されると、ヒドロゲルコーティング128が縮み、相互接続した孔126が開く。次いで、組織部位102からの更なる流体が相互接続した孔126によりマニホールドパッド111の中に吸い込まれる。このように、減圧治療システム100は減圧の伝達があってもあるいはなくても組織部位102から少なくとも一部の流体を除去するよう動作することができる。減圧の連続した伝達により、組織部位102からの流体が相互接続した孔126を介してマニホールドパッド111を通り、減圧インターフェイス146の中を進み、減圧伝達導管138を通って、減圧源136のキャニスタ142の中に入る。
【0032】
ここで主に図3A〜図3Eを参照すると、減圧治療システム、例えば図1Aの減圧治療システム100に用いることができるマニホールドパッド211の別の例示的な限定しない実施形態が示されている。マニホールドパッド211は、マニホールド部材212に連結するヒドロゲルリザーバ部材214を具える。図3A〜図3Cの例示的な限定しない実施形態では、ヒドロゲルリザーバ部材214が1または複数のヒドロゲルビーズ250を具え、これらは互いに対し間隔をおいた関係にすることができる。ヒドロゲルビーズ250は、ヒドロゲルイオンまたはヒドロゲルリザーバ部材114について上述した材料の何れかで形成することができる。ヒドロゲルビーズ250の一部は、銀イオンなどの抗菌剤あるいは任意の他の適切な抗菌剤を具えることができる。代わりにまたは加えて、銀イオンなどの任意の適切な抗菌剤で形成された抗菌ビーズ(図示せず)をヒドロゲルビーズ250に隣接するマニホールド部材212の中に配置することができる。
【0033】
ヒドロゲルビーズ250は、任意の適切な技術によりマニホールド部材212の中に配置することができる。例えば、ヒドロゲルビーズ250は注射器または注射器に似た器具を用いることによってマニホールド部材212に注入することができる。代わりに、マニホールド部材212はヒドロゲルビーズ250の周りに形成することができる。図3Bに示す例示的な限定しない一実施形態では、マニホールド部材212が高さ(h1)を有し、ヒドロゲルビーズ250が図示した方向にマニホールド部材212の上部の3分の1(h2)の中に配置される。しかしながら、ヒドロゲルビーズ250はマニホールド部材212に対してマニホールド部材212の中の任意の適切な位置に配置することができることを認識されたい。
【0034】
ここで主に図3Eを参照すると、幾つかの実施形態では、マニホールド部材212がマニホールド部材212の中心に最も近い第1の領域252と、マニホールド部材212の外縁に最も近い第2の領域254あるいは外縁部分とを具えることができる。幾つかの実施形態では、マニホールド部材212の第2の領域254がマニホールド部材212の第1の領域252に比べてより多量のヒドロゲルを具える。例えば、第2の領域254にあるヒドロゲルビーズ250は第1の領域252にあるヒドロゲルビーズ250より大きな直径あるいは密度を有することができる。
【0035】
図3Cに示す別の例示的な限定しない実施形態では、所定のヒドロゲルビーズ250の直径がマニホールド部材212の中心からヒドロゲルビーズ250までの距離に比例させることができる。例えば、マニホールド部材212の外縁に最も近いヒドロゲルビーズ250が最も大きく、ヒドロゲルビーズ250がマニホールド部材212の中心に近くなるにつれてヒドロゲルビーズ250が徐々に小さくなる。さらに別の例示的な限定しない実施形態では、ヒドロゲルビーズ250の密度を変更することができる。すなわち、第2の領域254にあるヒドロゲルビーズ250の数は第1の領域252にあるヒドロゲルビーズ250の数より多くすることができる。また、ヒドロゲルビーズ250は任意の適切な形状を取ることができる。例えば、図3Bと図3Cに示すように、ヒドロゲルビーズ250は球状に形成することができる(球体)。代わりに、図3Dに示すように、ヒドロゲルビーズ250は細長い四角形の棒形状を有することができる。ヒドロゲルビーズ250はさらに涙形、多角形、不規則な形、あるいは別の形状にすることができる。ヒドロゲルビーズ250は任意の適切な形状あるいはサイズを有することができることを認識されたい。
【0036】
例示的な限定しない実施形態によれば、動作中、マニホールド部材212は組織部位(例えば、図1Aの組織部位102)の近傍に配置され、シーリングドレープは流体シールを形成するために用いることができる。減圧(P2)下では、マニホールド部材212が最小限の流体吸収で減圧を分散する。減圧が(P1)まで減少すると(絶対圧力が増加すると)、組織部位から流体がマニホールド部材212に入るが、ヒドロゲルビーズ250により吸収される。最も多量のヒドロゲルがマニホールド部材212の外縁の最も近くに配置される実施形態では、マニホールド部材112の中心に最も近いヒドロゲルビーズ250が通常、初めに組織部位からの流体で満たされ、その後は組織部位からの更なる流体がマニホールド部材212の外縁に最も近いヒドロゲルビーズ250の方へ迂回する。
【0037】
図1〜図2に関して論じたように、減圧がマニホールド部材212に伝達されるか、元に戻されると、ヒドロゲルビーズ250が前に吸収した流体、あるいは貯蔵した流体の少なくとも一部を放出する。ヒドロゲルビーズ250からの流体が放出されると、ヒドロゲルビーズ250が縮み、組織部位からの流体がマニホールド部材212を通り、最終的に減圧サブシステムのキャニスタまで進む。したがって、減圧治療システムは自身に減圧の伝達があってもあるいはなくても組織部位から少なくとも一部の流体を除去するよう動作することができる。
【0038】
ここで主に図4A〜図4Cを参照すると、減圧治療システム、例えば図1Aの減圧治療システム100で用いることができるマニホールドパッド311の別の例示的な限定しない実施形態が示されている。マニホールドパッド311は、マニホールド部材312と連結するヒドロゲルリザーバ部材314を具えている。ヒドロゲルリザーバ部材314は、マニホールド部材312の組織対向面313の近傍にマニホールド部材312に隣接して配置されたヒドロゲルシート356である。ヒドロゲルシート356は、マニホールド部材312に隣接するか、マニホールド部材312を積層されるか、あるいはマニホールド部材312に結合することができる。代わりに、ヒドロゲルシート356はマニホールド部材312にキャスティングするか、それと共に押し出すか、あるいは他の方法でそれと共に形成することができる。ヒドロゲルシート356は、上述したものなどの任意の適切なヒドロゲル材料で形成することができる。幾つかの実施形態では、ヒドロゲルシート356はヒドロゲルイオン材料で形成することができる。
【0039】
ヒドロゲルシート356は、1以上の開口部358を具えることができる。ヒドロゲルシート356は、ヒドロゲルシート356の中心に最も近い第1の領域352と、ヒドロゲルシート356の外縁に最も近い第2の領域354とを具えることができる。ヒドロゲルシート356の第2の領域354にある開口部358のサイズまたは数は、第1の領域352にある開口部358のサイズまたは数より大きくすることができる。代わりに、図4Bに最もよく示すように、開口部358のサイズはヒドロゲルシート356の中心から所定の開口部までの距離に比例させることができる。例えば、ヒドロゲルシート356の外縁に最も近い開口部358が最も大きく、開口部358がヒドロゲルシート356の中心に近くなるにつれて開口部358が徐々に小さくなる。開口部358は、限定されないが、円形、楕円系、三角形、四角形、矩形、六角形、八角形、不規則形、あるいは他の形状を含む任意の適切な形状を有することができる。幾つかの実施形態では、開口部358の直径は約1mmないし約10mmの範囲にすることができる。幾つかの実施形態では、隣接する開口部358の間の距離(d)は約1mmないし約10mmの範囲にすることができる。
【0040】
図4A〜図4Cに示すマニホールドパッド311を含む幾つかの実施形態では、ウィッキング層360をヒドロゲルシート356の組織対向面357に隣接して配置することができ、これによりヒドロゲルシート356がウィッキング層360とマニホールド部材312との間に配置される。ウィッキング層360は、ヒドロゲルシート356に隣接するか、ヒドロゲルシート356を積層するか、あるいはヒドロゲルシート356に結合することができる。ウィッキング層360は、ウィッキング層360の組織対向面362から第1の面364に流体を送るよう動作することができる。ウィッキング層360はさらに、適用した減圧を数倍にするよう動作することができ、あるいは適合することができる。
【0041】
ウィッキング層360は、限定されないが、不織布のレーヨンシート、不織布のポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、圧縮繊維ブロック(例えば、ポリエステル、ポリアミド、あるいはポリオレフィン繊維で形成)、もしくは焼結ポリマー(例えば、ポリオレフィン、EVA、ポリアミド、または他のポリマー)といった不織布材料、網状発泡体、または別の不織布材料を含む任意の適切な材料で形成することができる。幾つかの実施形態では、ウィッキング層360が親水性となるよう処理するか、または他の方法で修正することができる。幾つかの実施形態では、マニホールド部材312を用いることなくウィッキング層360とヒドロゲルシート356を利用することができる。
【0042】
例示的な限定しない実施形態によれば、動作中、ウィッキング層360の組織対向面362が組織部位の近傍に配置される。ウィッキング層360は組織部位から流体を受け取り、組織対向面362から第1の面364に流体を運ぶ。一旦流体がウィッキング層360を通過すると、流体は減圧(P2)の影響下でマニホールド部材312を通って、最終的にキャニスターまたは他の位置に送ることができる。減圧が適用される動作中、ヒドロゲルリザーバ部材314が流体の一部を吸収することができる。減圧が除去されるか、または例えばP1まで低下すると(絶対圧力が増加すると)、ヒドロゲルシート356が更なる流体を貯蔵する。ヒドロゲルシート356が流体を吸収すると、ヒドロゲルシート356が膨張し、開口部358が縮み始める。
【0043】
減圧が伝達されるか、例えばP2に戻されると、ヒドロゲルシート356が前に吸収した流体、あるいは貯蔵した流体の少なくとも一部を放出する。一旦ヒドロゲルシート356が流体を放出し始めると、開口部358の直径が増加し始め、これにより流体が組織部位からウィッキング層360を通って、ヒドロゲルシート356の中の開口部358を通り、マニホールド部材312の中を進み、最終的に減圧源のキャニスターに入ることができる。したがって、減圧治療システムは自身に減圧の伝達があってもなくても組織部位から流体の少なくとも一部を除去するよう動作することができる。
【0044】
本発明とその利点が特定の例示的な限定しない実施形態の内容で開示されたが、添付した請求項により規定されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、代替、置換および修正を行うことができることを理解されたい。何れか1つの実施形態との関係で記載された任意の特徴は、任意の他の実施形態にも適用可能であることを認識されたい。
【背景技術】
【0001】
関連出願
本発明は、35USC119(e)に基づき、(2009年6月2日)提出の「Reduced−Pressure Treatment Systems and Methods Employing Hydrogel Reservoir Members」と題する米国仮出願第61/183,285号の利益を主張し、これを全ての目的のため本書に援用する。
【0002】
本開示は一般に医療用治療システムに関し、特に限定しないが、ヒドロゲルリザーバ部材を利用する減圧治療システムと方法に関する。
【0003】
長時間水分に晒された組織は、解離の危険性と他の問題を導く。治癒を促進し、感染症の危険性を低減させるとともに、解離の危険性を低減させるためには、組織部位から流体を除去することがしばしば有利となる。陰圧創傷閉鎖法は、組織部位から流体を除去するために用いることができる。しかしながら、従来の陰圧創傷閉鎖法では、陰圧が組織まで伝達されていないとき組織が水分に長時間晒される場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本書の例示的な限定しない実施形態の例示的なシステム、装置および方法により既存の創傷治療システム、装置および方法の改良が取り扱われている。例示的な限定しない一実施形態によれば、患者の組織部位を治療するための減圧治療システムが、マニホールドパッドと、組織部位の上に配置して流体シールを形成するためのシーリングドレープと、マニホールドパッドに減圧を伝達するための減圧サブシステムとを具える。マニホールドパッドは組織部位の近傍に配置するためのマニホールド部材と、マニホールド部材に連結したヒドロゲルリザーバ部材とを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は第1の圧力で組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、第1の圧力は絶対圧力スケールで第2の圧力より大きい。
【0005】
別の例示的な限定しない実施形態によれば、患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドが、減圧を分散するよう適合されたマニホールド部材と、マニホールド部材に連結したヒドロゲルリザーバ部材とを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は第1の圧力で組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されている。第1の圧力は、絶対圧力スケールで第2の圧力より大きい。
【0006】
別の例示的な限定しない実施形態によれば、患者の組織部位を治療するための方法が、ヒドロゲルリザーバ部材を有するマニホールドパッドを組織部位の近傍に配置するステップと、シーリングドレープをマニホールド部材と患者の表皮の上に配置するステップと、シーリングドレープと患者の表皮との間に流体シールを形成するステップと、マニホールドパッドに減圧を伝達するステップとを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は、第1の圧力で組織部位から流体を受け入れるよう動作することができ、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう動作することができる。第1の圧力は、絶対圧力スケールで第2の圧力より大きい。
【0007】
さらに別の例示的な限定しない実施形態によれば、患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドの製造方法が、マニホールド部材を形成するステップと、マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップとを具える。ヒドロゲルリザーバ部材は、第1の圧力で組織部位から流体を受け入れ保持するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されている。
【0008】
例示的な限定しない実施形態の他の特徴および利点は、後続する図面と詳細な説明を参照することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、ヒドロゲルリザーバ部材を利用する減圧治療システムの例示的な限定しない実施形態の概略図であり、一部が断面図で示されている。
【図1B】図1Bは、図1Aの領域1Bの拡大図である。
【図2】図2は、図1Bのライン2−2に沿って切り取られた概略断面図である。
【図3A】図3Aは、減圧創傷治療システムの例示的な限定しない実施形態の一部として用いられるマニホールドパッドの例示的な限定しない実施形態の概略斜視図である。
【図3B】図3Bは、ヒドロゲルビーズを利用するマニホールドパッドの例示的な限定しない実施形態の一部の拡大した概略斜視図である。
【図3C】図3Cは、ヒドロゲルビーズを利用する例示的なマニホールドパッドの一部の拡大した概略断面図である。
【図3D】図3Dは、ヒドロゲルビーズを利用する代替的なマニホールドパッドの一部の拡大した概略斜視図である。
【図3E】図3Eは、図3Aのマニホールドパッドの概略平面図である。
【図4A】図4Aは、減圧創傷治療システムの例示的な限定しない実施形態の一部として用いられるマニホールドパッドの例示的な限定しない実施形態の概略斜視図である。
【図4B】図4Bは、ライン4B−4Bに沿って切り取られた図4Aのマニホールドパッドの概略断面図である。
【図4C】図4Cは、図4Aのマニホールドパッドの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な限定しない実施形態の以下の詳細な説明では、その一部をなす添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に十分詳細に記載されており、他の実施形態を利用することができ、本発明の趣旨および範囲を逸脱せずに論理構造的、機械的、電気的および化学的な変更を行うことができることを理解されたい。当業者が本書に記載した実施形態を実施するために必要のない詳細を避けるため、この記載は当業者に既知の特定の情報を省略する場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定する意味で捉えるべきではなく、例示する実施形態の範囲は添付した特許請求の範囲により規定されるに過ぎない。
【0011】
図面、主に図1A〜図2を参照すると、組織部位102、例えば創傷104を治療するための減圧治療システム100の例示的な限定しない実施形態が示されている。創傷104は、限定しないが、開放創、外科的切開、あるいは病変組織などの組織のあらゆる凹凸を含むことができる。創傷104は、表皮106(もしくは一般に皮膚)、真皮108、および皮下組織110といった様々な組織を含むことができる。減圧治療システム100は、開放創を含む様々な種類の創傷とともに、任意の深さの創傷104など、組織部位102を治療するために用いることができる。組織部位102は総ての人、動物、または他の生物の身体組織とすることができ、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯、または任意の他の組織を含む。他に記載がない限り、本書で用いられるように、「または」は相互排他性を要求するものではない。
【0012】
例示的な限定しない実施形態では、減圧治療システム100が通常、マニホールドパッド111と、シーリングドレープ116と、減圧サブシステム118とを具える。マニホールドパッド111は、マニホールド部材112とヒドロゲルリザーバ部材114とを具える。マニホールドパッド111は組織対向面122を有し、流体を受け入れ貯蔵する第1の圧力(P1)で動作することができ、特にヒドロゲルリザーバ部材114が流体を貯蔵する。減圧または陰圧が増加すると、すなわち絶対圧力が第2の圧力(P2)まで低下すると、マニホールドパッド111が減圧を分散することができ、流体をマニホールドパッド111を介して流し、ヒドロゲルリザーバ部材114から前に貯蔵した流体の一部を放出する。マニホールドパッド111はさらに後述する。
【0013】
シーリングドレープ116は、組織部位102の上に流体シールを提供する。減圧治療システム100は接着具120を具えることができる。シーリングドレープ116と接着具120は、シーリングドレープ116と患者の表皮106との間に流体シールを形成する。マニホールドパッド111は、シーリングドレープ116の組織対向(内向きの)面132と組織部位102との間に配置される。「流体シール(fluid seal)」または「シール(seal)」とは、関連する特定の減圧源もしくはサブシステムに与えられた所望の部位で減圧を維持するのに十分なシール(密封)のことを意味する。
【0014】
本書で用いられているように用語「マニホールド(manifold)」とは通常、組織部位、例えば組織部位102に減圧を適用し、そこに流体を送り、あるいはそこから流体を除去するのを支援するために設けられた物質または構造のことをいう。マニホールド部材112は一般に、マニホールド部材112に提供された流体を分散し、その周囲から流体を除去する複数の流路または経路を具えている。複数の流路あるいは経路は、相互に接続することができる。マニホールド部材112は、組織部位、例えば組織部位102に接触して配置することができ、かつ組織部位102に減圧を分散することができる生体適合性材料とすることができる。マニホールド部材の例としては、限定されないが、例えば、複数の流路を具えるまたは流路を具えるよう硬化した多孔性発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、液体、ゲル、および発泡体など、流路を形成するよう構成された構造成分を有する器具を含むことができる。マニホールド112は多孔性にすることができ、発泡体、ガーゼ、フェルト状マット等で作製することができる。マニホールド部材112は、多孔性物質、例えば発泡体で形成するか、あるいは多孔性を得た材料、例えばその内部に開口部が適用された固体部材で形成することができる。
【0015】
例示的な限定しない一実施形態では、マニホールド部材112が複数の相互接続した支柱124を具える多孔性発泡体である。相互接続した支柱124は、複数の連続気泡あるいは孔126の形成に役立ち、これはマニホールド部材112を通る流路として機能する。多孔性発泡体は、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社により製造されたGranuFoam(登録商標)材料などのポリウレタン、連続気泡、網状発泡体とすることができる。例示的な限定しない一実施形態では、孔126が20ppiないし60ppiの孔径(1インチ当たりの孔数(ppi))を有することができる。
【0016】
ヒドロゲルリザーバ部材114はマニホールド部材112と連結しており、組織部位102から浸出液あるいは任意の他の流体などの流体を受け入れ保持もしくは貯蔵するよう第1の圧力(P1)で動作することができ、かつ吸収した流体の少なくとも一部を放出するよう第2の圧力(P2)で動作することができる。第1の圧力は絶対圧力スケールで第2の圧力より大きく、すなわちP1>P2である。例示的な一実施形態では、第1の圧力が実質的に大気圧である(ゲージ圧0mmHgおよび海面での絶対圧力の約760mmHg)。代替実施形態では、第1の圧力が組織部位102の静水圧である。さらに以下で論じるように、第2の圧力は通常、組織部位102を治療するため減圧サブシステム118によって提供された減圧であり、通常−75mmHg〜−500mmHgの範囲である(ゲージ圧)。
【0017】
マニホールドパッド111はヒドロゲルリザーバ部材114を有しており、減圧、例えば第2の圧力(P2)の影響下で減圧を分散する(または集配する)。減圧が例えば機器の故障あるいは他の理由により第1の圧力(P1)まで低下すると(絶対圧力では圧力が上昇する)、流体は組織部位102から除去され続けるが、このときマニホールドパッド111のヒドロゲルリザーバ114に貯蔵される。例えば、第2の圧力(P2)まで減圧を増加すると、流体がヒドロゲルリザーバ114から少なくとも部分的に除去され、マニホールドパッド111が組織部位102に減圧を分散する。例示的な一実施形態では、より大きな減圧(より低い絶対圧力)、例えば第2の減圧(P2)の影響下に配置されたとき、ヒドロゲルリザーバ部材114が吸収した流体もしくは貯蔵した流体の20%ないし80%を放出する。
【0018】
ヒドロゲルリザーバ部材114は、任意の適切なヒドロゲル材料で形成することができる。ヒドロゲルは、限定しないが、親水性架橋ポリマーなど、任意の高吸収性の天然あるいは合成ポリマーを含む。適切なヒドロゲルの例示的な限定しない実施例は、アクリル樹脂、例えばアクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの塩類と、スルホン酸塩、例えばamps(アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、およびそれらの塩類)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびアルギン酸塩とを含む。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル材料がヒドロゲルイオンである。加えて、ヒドロゲルリザーバ部材114はさらに殺生物剤と、抗菌剤と、疼痛管理の導電性材料、例えば飽和状態を示す視覚表示器と、他の材料とを組み込むことができる。
【0019】
ヒドロゲルリザーバ部材114は様々な方法でマニホールド部材112と連結することができる。限定しない例示的な実施例として、マニホールド部材112はヒドロゲル材料でコーティングすることができる。幾つかの実施形態では、ヒドロゲルリザーバ部材114がマニホールド部材112に直接結合するか、あるいはヒドロゲルリザーバ部材114がマニホールド部材112に隣接して配置することができる。本書で用いられているように、用語「結合された」とは通常、別個の対象を介した結合を含み、かつ直接結合も含む。用語「結合された」とは、各々の成分が同じ要素の材料で形成されていることにより互いに連続している2以上の成分をも包含する。また、用語「結合された」とは、化学的、機械的、熱的、または電気的結合を含むことができる。流体結合とは、流体が指定した部分あるいは位置の間で連通していることを意味する。
【0020】
図1A〜図2の例示的な限定しない実施形態では、ヒドロゲルリザーバ部材114がヒドロゲルコーティング128であり、それはマニホールド部材112の相互接続した支柱124の少なくとも1つに適用される。ヒドロゲルコーティング128は、任意の適切な技術により適用することができる。例示的な一実施形態では、ヒドロゲルコーティング128は、液化したヒドロゲル、もしくは部分的に液化したヒドロゲルの中に、マニホールド部材112または基板の少なくとも一部を初めに浸すことによってマニホールド部材112に適用される。ヒドロゲルは、非架橋溶液、分散液、固体(ホットメルトまたは粉末)、あるいは乳状液として供給することができる。次いで、非架橋溶液は含浸プロセス中(例えば、UV光を用いて)あるいは含浸プロセス直前の何れかで活性化され、これにより架橋プロセスがマニホールド部材112あるいは基板の中で継続する。別の例示的な限定しない実施形態では、ガンマ線あるいはeビーム照射を用いる滅菌プロセスと同時など、別のプロセス中に架橋を得ることができる。別の例示的な限定しない実施形態として、予め架橋したゲルが懸濁液あるいは乳状液として供給され、これを用いてマニホールド部材112を含浸させることができる。
【0021】
使用する手法に拘わらず、相互接続した支柱124の少なくとも一部がヒドロゲルでコーティングされる。相互接続した支柱124の全てあるいは実質的に全てをヒドロゲルでコーティングすることができる。次いで、浸漬による余分なヒドロゲルはマニホールド部材112を圧搾することによりマニホールド部材112から除去することができ、これにより余分なヒドロゲルがマニホールド部材112から放出される。マニホールドパッド111の残りのヒドロゲルは相互接続した支柱124に接着し、乾燥し、相互接続した支柱124の周りにヒドロゲルコーティング128を形成する。あるいは、ヒドロゲルはマニホールド部材112の少なくとも一部に噴射することができ、これにより相互接続した支柱124の少なくとも一部がヒドロゲルコーティング128を受ける。あるいは、ヒドロゲルはブレードコーティングあるいはオフセットロールコーティングを用いて適用することができる。マニホールドパッド111は、シーリングドレープ116で覆われる。
【0022】
シーリングドレープ116は、第1の面130と、組織対向(内向き)面132とを具える。シーリングドレープ116は、シーリングドレープ116が創傷104と重なり、これによりシーリングドレープ116の一部がドレープ外延部134を形成するようなサイズにすることができる。ドレープ外延部134は、創傷104の外縁を越えて延在する。シーリングドレープ116は、流体シールを提供する任意の材料にすることができる。シーリングドレープ116は、例えば非透過性あるいは半透過性の弾性材料にすることができる。「弾性」とは、弾性体(エラストマー)の特性を有することを意味する。それは通常、ゴム状弾性を有するポリマー材料のことをいう。より具体的には、大抵のエラストマーは100%超の伸び率と、非常に高い弾力性とを有する。材料の弾力性とは、弾性変形から回復する材料の性能のことをいう。エラストマーの例としては、限定されないが、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン(PU)、EVAフィルム、コポリエステルおよびシリコーンを含む。シーリングドレープ116の更なる実施例は、シリコンドレープ、3M Tegaderm(登録商標)ドレープ、カリフォルニア州パサデナのAvery Dennison社で利用可能なPUドレープを含むことができる。
【0023】
接着具120は、患者の表皮106あるいはガスケットあるいは付加的なシーリング部材など、別の層に対してシーリングドレープ116を保持するために用いることができる。接着具120は、様々な形態を取ることができる。例えば、接着具120は医学的に許容可能な圧感接着剤とすることができ、それはシーリングドレープ116のドレープ外延部134に適用される。あるいは、圧感接着剤はシーリングドレープ116の幅全体にわたることができる。代替的な接着具120は、限定されないが、熱活性化接着剤、シーリングテープ、両面シーリングテープ、のり、親水コロイド、ヒドロゲル、フック、あるいは縫合を含むことができる。
【0024】
減圧サブシステム118は、減圧源136を具える。減圧源136は、減圧治療システム100の一部として、減圧、例えば第2の減圧(P2)を提供する。本書で用いられているように、「減圧」とは通常、治療を受けている組織部位102の周囲圧力未満の圧力のことをいう。大抵の場合、この減圧は患者がいる位置の大気圧未満となるであろう。
あるいは、この減圧は組織部位102における静水圧未満でもよい。減圧は最初に、マニホールドパッド111と、減圧伝達導管138あるいは導管138と、組織部位102、例えば創傷104の近傍とに流体流を生成することができる。組織部位102、例えば創傷104の周りの静水圧が所要の減圧に近づくと、流れが和らぎ、減圧を維持することができる。伝達された減圧は、一定あるいは(パターンでまたはランダムに)変化することができ、連続的または間欠的に伝達することができる。用語「真空」および「陰圧」とは、組織部位102に適用された圧力を説明するために用いることができるが、組織部位102に適用される実際の圧力は通常、完全な真空に関連する圧力よりも大きい。本書で用いる場合には一貫して、減圧または真空圧の増加とは一般に絶対圧力の相対的な低下のことをいう。
【0025】
減圧源136は、真空ポンプあるいは壁面吸い込みなど減圧を供給するあらゆる技術もしくはデバイスを含むことができる。組織部位102に適用される減圧の量と性質は一般に用途に応じて変化するが、減圧は一般に−5mmHgないし−500mmHg(ゲージ圧)であるだろう。
【0026】
図1の例示的な限定しない実施形態では、減圧源136がバッテリ区画140とキャニスタ142とを有し、これはキャニスタ142の中の流体レベルの視覚表示を提供するウィンドウ144を備える。疎水性または油分をはじくフィルタなどの挿入膜フィルタは、減圧伝達導管138と減圧源136との間に挿入することができる。
【0027】
減圧源136によって生成された減圧は、減圧伝達導管138を通ってL型端子148である減圧インターフェイス146に伝達される。例示的な限定しない一実施形態では、L型端子148がテキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なTRAC(登録商標)テクノロジーの端子である。減圧インターフェイス146により、減圧がシーリングドレープ116に伝達し、シーリングドレープ116より下の内部に実現され、さらにマニホールド部材112の中に実現される。この例示的な限定しない実施形態では、L型端子148がシーリングドレープ116を通って、マニホールド部材112まで延在しているが、様々な配置が可能である。
【0028】
例示的な限定しない実施形態によれば、動作中、マニホールドパッド111は組織部位102、例えば創傷104の近傍に配置することができる。シーリングドレープ116はマニホールドパッド111の上に配置することができ、これによりドレープ外延部134は創傷104の外縁を越えて延在する。ドレープ外延部134は、組織部位102とマニホールドパッド111の上に流体シールを形成するために接着具120によって患者の表皮106に固定することができる。次いで、減圧インターフェイス146が設置されていない場合には適用することができる。減圧伝達導管138は、減圧インターフェイス146に流体結合され、かつ減圧源136に流体結合される。
【0029】
減圧が減圧伝達導管138に伝達されるように、減圧サブシステム118を起動することができる。減圧(P2)下では、流体が組織部位102からマニホールドパッド111へ、かつ減圧伝達導管138を通ってキャニスタ142へ伝達される。この動作中に減圧が低下するような事象、例えば圧力がP2からP1に進むような事象が発生した場合、減圧伝達導管138の流体流が停止するが、依然として流体が組織部位102から除去され続け、マニホールドパッド111のヒドロゲルリザーバ114によって組織部位102から貯蔵される。減圧が元に戻されると、例えば、圧力がP1からP2に進むと、流体は再び減圧伝達導管138の中を流れてキャニスタ142に送られ、ヒドロゲルリザーバ部材114の中の流体の全部あるいは一部が放出される。
【0030】
別の例示的な限定しない実施形態によれば、動作中、マニホールド部材112が組織部位102に隣接して配置された後、減圧(P2)が適用されていなくても、組織部位102に関連する浸出液あるいは他の流体がヒドロゲルコーティング128によって吸収され始める。しかしながら、ヒドロゲルコーティング128は既存の圧力(P1)で組織部位102から流体の少なくとも一部を受け入れるよう適合されている。言い換えれば、ヒドロゲルコーティング128は自身へ減圧が伝達されていなくとも組織部位102から流体を吸い込むよう適合されており、この流体除去は減圧が利用できないときに組織部位102の治療や回復に有益である。ヒドロゲルコーティング128が流体を吸収すると、ヒドロゲルコーティング128が隣接する孔126の中へ膨張し、これにより孔126を閉じることで、組織部位102の更なる流体がまだ流体に晒されていないマニホールド部材112の他の領域に送られ、流体がヒドロゲルコーティング128に吸収される。次いで、流体を除去するために減圧を用いることができる。
【0031】
一旦減圧源136が起動されると、減圧がシーリングドレープ116とマニホールドパッド111の内部に伝達される。減圧(P2)が伝達されると、ヒドロゲルコーティング128が前に吸収した流体、または貯蔵した流体の少なくとも一部を放出する。吸収した流体がヒドロゲルコーティング128によって放出されると、ヒドロゲルコーティング128が縮み、相互接続した孔126が開く。次いで、組織部位102からの更なる流体が相互接続した孔126によりマニホールドパッド111の中に吸い込まれる。このように、減圧治療システム100は減圧の伝達があってもあるいはなくても組織部位102から少なくとも一部の流体を除去するよう動作することができる。減圧の連続した伝達により、組織部位102からの流体が相互接続した孔126を介してマニホールドパッド111を通り、減圧インターフェイス146の中を進み、減圧伝達導管138を通って、減圧源136のキャニスタ142の中に入る。
【0032】
ここで主に図3A〜図3Eを参照すると、減圧治療システム、例えば図1Aの減圧治療システム100に用いることができるマニホールドパッド211の別の例示的な限定しない実施形態が示されている。マニホールドパッド211は、マニホールド部材212に連結するヒドロゲルリザーバ部材214を具える。図3A〜図3Cの例示的な限定しない実施形態では、ヒドロゲルリザーバ部材214が1または複数のヒドロゲルビーズ250を具え、これらは互いに対し間隔をおいた関係にすることができる。ヒドロゲルビーズ250は、ヒドロゲルイオンまたはヒドロゲルリザーバ部材114について上述した材料の何れかで形成することができる。ヒドロゲルビーズ250の一部は、銀イオンなどの抗菌剤あるいは任意の他の適切な抗菌剤を具えることができる。代わりにまたは加えて、銀イオンなどの任意の適切な抗菌剤で形成された抗菌ビーズ(図示せず)をヒドロゲルビーズ250に隣接するマニホールド部材212の中に配置することができる。
【0033】
ヒドロゲルビーズ250は、任意の適切な技術によりマニホールド部材212の中に配置することができる。例えば、ヒドロゲルビーズ250は注射器または注射器に似た器具を用いることによってマニホールド部材212に注入することができる。代わりに、マニホールド部材212はヒドロゲルビーズ250の周りに形成することができる。図3Bに示す例示的な限定しない一実施形態では、マニホールド部材212が高さ(h1)を有し、ヒドロゲルビーズ250が図示した方向にマニホールド部材212の上部の3分の1(h2)の中に配置される。しかしながら、ヒドロゲルビーズ250はマニホールド部材212に対してマニホールド部材212の中の任意の適切な位置に配置することができることを認識されたい。
【0034】
ここで主に図3Eを参照すると、幾つかの実施形態では、マニホールド部材212がマニホールド部材212の中心に最も近い第1の領域252と、マニホールド部材212の外縁に最も近い第2の領域254あるいは外縁部分とを具えることができる。幾つかの実施形態では、マニホールド部材212の第2の領域254がマニホールド部材212の第1の領域252に比べてより多量のヒドロゲルを具える。例えば、第2の領域254にあるヒドロゲルビーズ250は第1の領域252にあるヒドロゲルビーズ250より大きな直径あるいは密度を有することができる。
【0035】
図3Cに示す別の例示的な限定しない実施形態では、所定のヒドロゲルビーズ250の直径がマニホールド部材212の中心からヒドロゲルビーズ250までの距離に比例させることができる。例えば、マニホールド部材212の外縁に最も近いヒドロゲルビーズ250が最も大きく、ヒドロゲルビーズ250がマニホールド部材212の中心に近くなるにつれてヒドロゲルビーズ250が徐々に小さくなる。さらに別の例示的な限定しない実施形態では、ヒドロゲルビーズ250の密度を変更することができる。すなわち、第2の領域254にあるヒドロゲルビーズ250の数は第1の領域252にあるヒドロゲルビーズ250の数より多くすることができる。また、ヒドロゲルビーズ250は任意の適切な形状を取ることができる。例えば、図3Bと図3Cに示すように、ヒドロゲルビーズ250は球状に形成することができる(球体)。代わりに、図3Dに示すように、ヒドロゲルビーズ250は細長い四角形の棒形状を有することができる。ヒドロゲルビーズ250はさらに涙形、多角形、不規則な形、あるいは別の形状にすることができる。ヒドロゲルビーズ250は任意の適切な形状あるいはサイズを有することができることを認識されたい。
【0036】
例示的な限定しない実施形態によれば、動作中、マニホールド部材212は組織部位(例えば、図1Aの組織部位102)の近傍に配置され、シーリングドレープは流体シールを形成するために用いることができる。減圧(P2)下では、マニホールド部材212が最小限の流体吸収で減圧を分散する。減圧が(P1)まで減少すると(絶対圧力が増加すると)、組織部位から流体がマニホールド部材212に入るが、ヒドロゲルビーズ250により吸収される。最も多量のヒドロゲルがマニホールド部材212の外縁の最も近くに配置される実施形態では、マニホールド部材112の中心に最も近いヒドロゲルビーズ250が通常、初めに組織部位からの流体で満たされ、その後は組織部位からの更なる流体がマニホールド部材212の外縁に最も近いヒドロゲルビーズ250の方へ迂回する。
【0037】
図1〜図2に関して論じたように、減圧がマニホールド部材212に伝達されるか、元に戻されると、ヒドロゲルビーズ250が前に吸収した流体、あるいは貯蔵した流体の少なくとも一部を放出する。ヒドロゲルビーズ250からの流体が放出されると、ヒドロゲルビーズ250が縮み、組織部位からの流体がマニホールド部材212を通り、最終的に減圧サブシステムのキャニスタまで進む。したがって、減圧治療システムは自身に減圧の伝達があってもあるいはなくても組織部位から少なくとも一部の流体を除去するよう動作することができる。
【0038】
ここで主に図4A〜図4Cを参照すると、減圧治療システム、例えば図1Aの減圧治療システム100で用いることができるマニホールドパッド311の別の例示的な限定しない実施形態が示されている。マニホールドパッド311は、マニホールド部材312と連結するヒドロゲルリザーバ部材314を具えている。ヒドロゲルリザーバ部材314は、マニホールド部材312の組織対向面313の近傍にマニホールド部材312に隣接して配置されたヒドロゲルシート356である。ヒドロゲルシート356は、マニホールド部材312に隣接するか、マニホールド部材312を積層されるか、あるいはマニホールド部材312に結合することができる。代わりに、ヒドロゲルシート356はマニホールド部材312にキャスティングするか、それと共に押し出すか、あるいは他の方法でそれと共に形成することができる。ヒドロゲルシート356は、上述したものなどの任意の適切なヒドロゲル材料で形成することができる。幾つかの実施形態では、ヒドロゲルシート356はヒドロゲルイオン材料で形成することができる。
【0039】
ヒドロゲルシート356は、1以上の開口部358を具えることができる。ヒドロゲルシート356は、ヒドロゲルシート356の中心に最も近い第1の領域352と、ヒドロゲルシート356の外縁に最も近い第2の領域354とを具えることができる。ヒドロゲルシート356の第2の領域354にある開口部358のサイズまたは数は、第1の領域352にある開口部358のサイズまたは数より大きくすることができる。代わりに、図4Bに最もよく示すように、開口部358のサイズはヒドロゲルシート356の中心から所定の開口部までの距離に比例させることができる。例えば、ヒドロゲルシート356の外縁に最も近い開口部358が最も大きく、開口部358がヒドロゲルシート356の中心に近くなるにつれて開口部358が徐々に小さくなる。開口部358は、限定されないが、円形、楕円系、三角形、四角形、矩形、六角形、八角形、不規則形、あるいは他の形状を含む任意の適切な形状を有することができる。幾つかの実施形態では、開口部358の直径は約1mmないし約10mmの範囲にすることができる。幾つかの実施形態では、隣接する開口部358の間の距離(d)は約1mmないし約10mmの範囲にすることができる。
【0040】
図4A〜図4Cに示すマニホールドパッド311を含む幾つかの実施形態では、ウィッキング層360をヒドロゲルシート356の組織対向面357に隣接して配置することができ、これによりヒドロゲルシート356がウィッキング層360とマニホールド部材312との間に配置される。ウィッキング層360は、ヒドロゲルシート356に隣接するか、ヒドロゲルシート356を積層するか、あるいはヒドロゲルシート356に結合することができる。ウィッキング層360は、ウィッキング層360の組織対向面362から第1の面364に流体を送るよう動作することができる。ウィッキング層360はさらに、適用した減圧を数倍にするよう動作することができ、あるいは適合することができる。
【0041】
ウィッキング層360は、限定されないが、不織布のレーヨンシート、不織布のポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、圧縮繊維ブロック(例えば、ポリエステル、ポリアミド、あるいはポリオレフィン繊維で形成)、もしくは焼結ポリマー(例えば、ポリオレフィン、EVA、ポリアミド、または他のポリマー)といった不織布材料、網状発泡体、または別の不織布材料を含む任意の適切な材料で形成することができる。幾つかの実施形態では、ウィッキング層360が親水性となるよう処理するか、または他の方法で修正することができる。幾つかの実施形態では、マニホールド部材312を用いることなくウィッキング層360とヒドロゲルシート356を利用することができる。
【0042】
例示的な限定しない実施形態によれば、動作中、ウィッキング層360の組織対向面362が組織部位の近傍に配置される。ウィッキング層360は組織部位から流体を受け取り、組織対向面362から第1の面364に流体を運ぶ。一旦流体がウィッキング層360を通過すると、流体は減圧(P2)の影響下でマニホールド部材312を通って、最終的にキャニスターまたは他の位置に送ることができる。減圧が適用される動作中、ヒドロゲルリザーバ部材314が流体の一部を吸収することができる。減圧が除去されるか、または例えばP1まで低下すると(絶対圧力が増加すると)、ヒドロゲルシート356が更なる流体を貯蔵する。ヒドロゲルシート356が流体を吸収すると、ヒドロゲルシート356が膨張し、開口部358が縮み始める。
【0043】
減圧が伝達されるか、例えばP2に戻されると、ヒドロゲルシート356が前に吸収した流体、あるいは貯蔵した流体の少なくとも一部を放出する。一旦ヒドロゲルシート356が流体を放出し始めると、開口部358の直径が増加し始め、これにより流体が組織部位からウィッキング層360を通って、ヒドロゲルシート356の中の開口部358を通り、マニホールド部材312の中を進み、最終的に減圧源のキャニスターに入ることができる。したがって、減圧治療システムは自身に減圧の伝達があってもなくても組織部位から流体の少なくとも一部を除去するよう動作することができる。
【0044】
本発明とその利点が特定の例示的な限定しない実施形態の内容で開示されたが、添付した請求項により規定されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、代替、置換および修正を行うことができることを理解されたい。何れか1つの実施形態との関係で記載された任意の特徴は、任意の他の実施形態にも適用可能であることを認識されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織部位を治療するための減圧治療システムであって、前記減圧治療システムが、
前記組織部位の近傍に配置するためのマニホールドパッドを具え、前記マニホールドパッドが、
マニホールド部材と、
前記マニホールド部材に連結したヒドロゲルリザーバ部材とを具え、前記ヒドロゲルリザーバ部材が第1の圧力で前記組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で前記流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、前記第1の圧力が絶対圧力のスケールで前記第2の圧力より大きく、
前記組織部位と前記マニホールドパッドの上に配置するためのシーリングドレープであって、流体シールを形成するよう適合されたシーリングドレープと、
前記マニホールドパッドに減圧を伝達するための減圧サブシステムとを具えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記第1の圧力が実質的に大気圧であることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記第1の圧力が前記組織部位の近傍の静水圧であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記第2の圧力の影響下で貯蔵した流体の20%ないし80%を放出するよう適合されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材の少なくとも一部に適用されたヒドロゲルコーティングであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材の中に配置された複数のヒドロゲルビーズを含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材に隣接して配置されたヒドロゲルシートを含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルシートに少なくとも1つの開口部が形成され、前記少なくとも1つの開口部の直径が1mmないし10mmであることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項7に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルシートが複数の開口部を具えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項7に記載の減圧治療システムがさらに、前記ヒドロゲルシートに隣接して配置されたウィッキング層を具え、前記ヒドロゲルシートが前記ウィッキング層と前記マニホールド部材との間に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材がヒドロゲルイオンを具えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドであって、前記マニホールドパッドが、
減圧を分散するよう適合されたマニホールド部材と、
前記マニホールド部材に連結されたヒドロゲルリザーバ部材とを具え、
前記ヒドロゲルリザーバ部材が第1の圧力で前記組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で前記流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、前記第1の圧力が絶対圧力のスケールで前記第2の圧力より大きいことを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項13】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記マニホールド部材が複数の相互接続した支柱を有する発泡体を含み、前記ヒドロゲルリザーバ部材がヒドロゲルコーティングを具え、前記複数の相互接続した支柱の少なくとも一部が前記ヒドロゲルコーティングで少なくとも部分的にコーティングされていることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項14】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材がヒドロゲルイオンであることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項15】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が減圧の影響下で吸収した流体の20%ないし80%を放出するよう適合されていることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項16】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が複数のヒドロゲルビーズを含み、前記複数のヒドロゲルビーズが前記マニホールド部材の中に配置されていることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項17】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、
前記マニホールド部材が中央部分と外縁部分とを具え、
第1の複数のヒドロゲルビーズが前記中央部分の中に配置されており、
第2の複数のヒドロゲルビーズが前記外縁部分の中に配置されており、前記第2の複数のヒドロゲルビーズが前記第1の複数のヒドロゲルビーズより多いことを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項18】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、
前記マニホールド部材が中央部分と外縁部分とを具え、
複数のヒドロゲルビーズが前記中央部分の中と前記外縁部分の中とに配置されており、
前記外縁部分の中に配置された前記ヒドロゲルビーズの各々の第1の直径が前記中央部分の中に配置された前記ヒドロゲルビーズの第2の直径より大きいことを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項19】
請求項17に記載のマニホールドパッドにおいて、前記複数のヒドロゲルビーズの各々の断面が円形であることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項20】
請求項17に記載のマニホールドパッドにおいて、前記マニホールド部材が高さ(h1)と、組織対向面と、第1の面とを有し、前記複数のヒドロゲルビーズが前記マニホールド部材の第1の面からh1の3分の1(1/3)の中に配置されていることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項21】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が、
第1の複数の開口部を有する中央部分と、
ほぼ外縁部分に配置された第2の複数の開口部を有する外縁部分とを具えたヒドロゲルシートを具えることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項22】
請求項21に記載のマニホールドパッドにおいて、前記第1の複数の開口部が第1の直径を有し、前記第2の複数の開口部が第2の直径を有し、前記第1の直径が前記第2の直径より小さいことを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項23】
患者の組織部位を治療するための方法であって、前記方法が、
前記組織部位の近傍にマニホールドパッドを配置するステップを具え、前記マニホールドパッドがマニホールド部材と、前記マニホールド部材に連結したヒドロゲルリザーバ部材とを有し、前記ヒドロゲルリザーバ部材が第1の圧力で前記組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、前記第1の圧力が絶対圧力スケールで前記第2の圧力より大きく、
前記マニホールド部材と患者の表皮の上にシーリングドレープを配置するステップと、
前記シーリングドレープと前記患者の表皮との間に流体シールを形成するステップと、
前記マニホールドパッドに減圧を伝達するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記第1の圧力が実質的に大気圧であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記第1の圧力が前記組織部位の近傍の静水圧であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記第2の圧力の影響下で貯蔵した流体の20%ないし80%を放出するよう適合されていることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記マニホールドパッドが発泡体を含み、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材の少なくとも一部に適用されたヒドロゲルコーティングであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記マニホールドパッドが発泡体を含み、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材の中に配置された複数のヒドロゲルビーズを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記マニホールドパッドが発泡体を含み、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材に隣接して配置された複数のヒドロゲルシートを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドの製造方法であって、前記方法が、
マニホールド部材を形成するステップと、
前記マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップとを具え、前記ヒドロゲルリザーバ部材が第1の圧力で前記組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、前記第1の圧力が絶対圧力スケールで前記第2の圧力より大きいことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記マニホールド部材を形成するステップが複数の相互接続した支柱によりマニホールド部材を形成するステップを具え、前記マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップが複数の相互接続した支柱の少なくとも一部をヒドロゲルでコーティングするステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項30に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップが前記マニホールド部材の中に複数のヒドロゲルビーズを注入するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記マニホールド部材が中央部分と外縁部分とを具え、前記複数のヒドロゲルビーズを注入するステップが前記中央部分の中に第1の複数のヒドロゲルビーズを注入し、前記外縁部分の中に第2の複数のヒドロゲルビーズを注入するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記外縁部分の中に注入された第1の複数のヒドロゲルビーズが前記中央部分の中に注入された第2の複数のヒドロゲルビーズより多いことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項33に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記外縁部分の中に注入された前記ヒドロゲルビーズの各々の第1の直径が前記中央部分の中に注入された前記ヒドロゲルビーズの各々の第2の直径より大きいことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項32に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記複数のヒドロゲルビーズの各々の断面が円形であることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項32に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記複数のヒドロゲルビーズの各々が涙形であることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項30に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップが中央部分と外縁部分とを有するシートをヒドロゲル材料で形成するステップと、前記シートの中央部分に少なくとも1つの開口部を形成するステップと、前記外縁部分に少なくとも1つの開口部の形成するステップと、前記シートを前記マニホールド部材に隣接して配置するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記中央部分に形成された少なくとも1つの開口部の直径が前記外縁部分に形成された少なくとも1つの開口部の直径より小さいことを特徴とする方法。
【請求項40】
患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドであって、前記マニホールドパッドが、
第1の材料を含むマニホールド部材と、
第2の材料を含むヒドロゲルリザーバ部材とを具え、
前記第1の材料と前記第2の材料が異なる材料であり、
前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材に連結され、
前記第2の材料が、第1の圧力で前記組織部位から液体を受け入れ保持するよう適合され、かつ第2の圧力で前記液体の実質的な部分を放出するよう適合された高吸収性ポリマーであることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項41】
請求項40に記載のマニホールドパッドにおいて、前記第1の材料が多孔質ポリマー発泡体であり、第2の材料が親水性架橋ポリマーあることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項1】
患者の組織部位を治療するための減圧治療システムであって、前記減圧治療システムが、
前記組織部位の近傍に配置するためのマニホールドパッドを具え、前記マニホールドパッドが、
マニホールド部材と、
前記マニホールド部材に連結したヒドロゲルリザーバ部材とを具え、前記ヒドロゲルリザーバ部材が第1の圧力で前記組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で前記流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、前記第1の圧力が絶対圧力のスケールで前記第2の圧力より大きく、
前記組織部位と前記マニホールドパッドの上に配置するためのシーリングドレープであって、流体シールを形成するよう適合されたシーリングドレープと、
前記マニホールドパッドに減圧を伝達するための減圧サブシステムとを具えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記第1の圧力が実質的に大気圧であることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記第1の圧力が前記組織部位の近傍の静水圧であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記第2の圧力の影響下で貯蔵した流体の20%ないし80%を放出するよう適合されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材の少なくとも一部に適用されたヒドロゲルコーティングであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材の中に配置された複数のヒドロゲルビーズを含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材に隣接して配置されたヒドロゲルシートを含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルシートに少なくとも1つの開口部が形成され、前記少なくとも1つの開口部の直径が1mmないし10mmであることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項7に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルシートが複数の開口部を具えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項7に記載の減圧治療システムがさらに、前記ヒドロゲルシートに隣接して配置されたウィッキング層を具え、前記ヒドロゲルシートが前記ウィッキング層と前記マニホールド部材との間に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材がヒドロゲルイオンを具えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドであって、前記マニホールドパッドが、
減圧を分散するよう適合されたマニホールド部材と、
前記マニホールド部材に連結されたヒドロゲルリザーバ部材とを具え、
前記ヒドロゲルリザーバ部材が第1の圧力で前記組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で前記流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、前記第1の圧力が絶対圧力のスケールで前記第2の圧力より大きいことを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項13】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記マニホールド部材が複数の相互接続した支柱を有する発泡体を含み、前記ヒドロゲルリザーバ部材がヒドロゲルコーティングを具え、前記複数の相互接続した支柱の少なくとも一部が前記ヒドロゲルコーティングで少なくとも部分的にコーティングされていることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項14】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材がヒドロゲルイオンであることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項15】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が減圧の影響下で吸収した流体の20%ないし80%を放出するよう適合されていることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項16】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が複数のヒドロゲルビーズを含み、前記複数のヒドロゲルビーズが前記マニホールド部材の中に配置されていることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項17】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、
前記マニホールド部材が中央部分と外縁部分とを具え、
第1の複数のヒドロゲルビーズが前記中央部分の中に配置されており、
第2の複数のヒドロゲルビーズが前記外縁部分の中に配置されており、前記第2の複数のヒドロゲルビーズが前記第1の複数のヒドロゲルビーズより多いことを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項18】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、
前記マニホールド部材が中央部分と外縁部分とを具え、
複数のヒドロゲルビーズが前記中央部分の中と前記外縁部分の中とに配置されており、
前記外縁部分の中に配置された前記ヒドロゲルビーズの各々の第1の直径が前記中央部分の中に配置された前記ヒドロゲルビーズの第2の直径より大きいことを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項19】
請求項17に記載のマニホールドパッドにおいて、前記複数のヒドロゲルビーズの各々の断面が円形であることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項20】
請求項17に記載のマニホールドパッドにおいて、前記マニホールド部材が高さ(h1)と、組織対向面と、第1の面とを有し、前記複数のヒドロゲルビーズが前記マニホールド部材の第1の面からh1の3分の1(1/3)の中に配置されていることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項21】
請求項12に記載のマニホールドパッドにおいて、前記ヒドロゲルリザーバ部材が、
第1の複数の開口部を有する中央部分と、
ほぼ外縁部分に配置された第2の複数の開口部を有する外縁部分とを具えたヒドロゲルシートを具えることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項22】
請求項21に記載のマニホールドパッドにおいて、前記第1の複数の開口部が第1の直径を有し、前記第2の複数の開口部が第2の直径を有し、前記第1の直径が前記第2の直径より小さいことを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項23】
患者の組織部位を治療するための方法であって、前記方法が、
前記組織部位の近傍にマニホールドパッドを配置するステップを具え、前記マニホールドパッドがマニホールド部材と、前記マニホールド部材に連結したヒドロゲルリザーバ部材とを有し、前記ヒドロゲルリザーバ部材が第1の圧力で前記組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、前記第1の圧力が絶対圧力スケールで前記第2の圧力より大きく、
前記マニホールド部材と患者の表皮の上にシーリングドレープを配置するステップと、
前記シーリングドレープと前記患者の表皮との間に流体シールを形成するステップと、
前記マニホールドパッドに減圧を伝達するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記第1の圧力が実質的に大気圧であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記第1の圧力が前記組織部位の近傍の静水圧であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記第2の圧力の影響下で貯蔵した流体の20%ないし80%を放出するよう適合されていることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記マニホールドパッドが発泡体を含み、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材の少なくとも一部に適用されたヒドロゲルコーティングであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記マニホールドパッドが発泡体を含み、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材の中に配置された複数のヒドロゲルビーズを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項23に記載の組織部位を治療するための方法において、前記マニホールドパッドが発泡体を含み、前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材に隣接して配置された複数のヒドロゲルシートを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドの製造方法であって、前記方法が、
マニホールド部材を形成するステップと、
前記マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップとを具え、前記ヒドロゲルリザーバ部材が第1の圧力で前記組織部位から流体を受け入れ貯蔵するよう適合されており、かつ第2の圧力で流体の少なくとも一部を放出するよう適合されており、前記第1の圧力が絶対圧力スケールで前記第2の圧力より大きいことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記マニホールド部材を形成するステップが複数の相互接続した支柱によりマニホールド部材を形成するステップを具え、前記マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップが複数の相互接続した支柱の少なくとも一部をヒドロゲルでコーティングするステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項30に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップが前記マニホールド部材の中に複数のヒドロゲルビーズを注入するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記マニホールド部材が中央部分と外縁部分とを具え、前記複数のヒドロゲルビーズを注入するステップが前記中央部分の中に第1の複数のヒドロゲルビーズを注入し、前記外縁部分の中に第2の複数のヒドロゲルビーズを注入するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記外縁部分の中に注入された第1の複数のヒドロゲルビーズが前記中央部分の中に注入された第2の複数のヒドロゲルビーズより多いことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項33に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記外縁部分の中に注入された前記ヒドロゲルビーズの各々の第1の直径が前記中央部分の中に注入された前記ヒドロゲルビーズの各々の第2の直径より大きいことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項32に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記複数のヒドロゲルビーズの各々の断面が円形であることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項32に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記複数のヒドロゲルビーズの各々が涙形であることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項30に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記マニホールド部材にヒドロゲルリザーバ部材を連結するステップが中央部分と外縁部分とを有するシートをヒドロゲル材料で形成するステップと、前記シートの中央部分に少なくとも1つの開口部を形成するステップと、前記外縁部分に少なくとも1つの開口部の形成するステップと、前記シートを前記マニホールド部材に隣接して配置するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38に記載のマニホールドパッドの製造方法において、前記中央部分に形成された少なくとも1つの開口部の直径が前記外縁部分に形成された少なくとも1つの開口部の直径より小さいことを特徴とする方法。
【請求項40】
患者の組織部位を治療するためのマニホールドパッドであって、前記マニホールドパッドが、
第1の材料を含むマニホールド部材と、
第2の材料を含むヒドロゲルリザーバ部材とを具え、
前記第1の材料と前記第2の材料が異なる材料であり、
前記ヒドロゲルリザーバ部材が前記マニホールド部材に連結され、
前記第2の材料が、第1の圧力で前記組織部位から液体を受け入れ保持するよう適合され、かつ第2の圧力で前記液体の実質的な部分を放出するよう適合された高吸収性ポリマーであることを特徴とするマニホールドパッド。
【請求項41】
請求項40に記載のマニホールドパッドにおいて、前記第1の材料が多孔質ポリマー発泡体であり、第2の材料が親水性架橋ポリマーあることを特徴とするマニホールドパッド。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【公表番号】特表2012−528680(P2012−528680A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513981(P2012−513981)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/036080
【国際公開番号】WO2010/141271
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/036080
【国際公開番号】WO2010/141271
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】
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