説明

ヒマワリ(Helianthusannuus)における優性早生突然変異および遺伝子

本発明は、一部においてヒマワリの自然突然変異の発見に関する。本発明は、「早生」突然変異および関連する近交系/雑種の開発を伴う。本発明は、さらに、ヒマワリの近交同質遺伝子系統および近親の同質遺伝子型の雑種において早生性を付与する単一の優性遺伝子を提供する。産業で雑種を開発するためにこの遺伝子を利用することについての公知の先行教示または示唆はない。本発明は、新規かつ他とは区別しうる、H120Rと称するヒマワリの近交系も提供する。本発明は、この突然変異遺伝子を保有する種子、これらの種子を栽培することによって作出した植物、およびこの突然変異遺伝子および関連する早生性形質を有するその植物の後代を含む。本発明は、近交系および雑種を含めた、そのようなヒマワリの種子および植物を作出する方法も含む。そのような植物は、例えば、近交系をそれ自体と、または他のヒマワリ系統と交配することにより作出することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒマワリは、動物およびヒトの両方に食物を供給するための重要で有用な農作物である。植物育種家にとっての継続的な目標は、使用した土地で生産される種子の量が最大限になるように、栽培学的に健全な、安定した多収性のヒマワリ雑種を開発することである。この目標を達成するために、ヒマワリの育種家は、雑種を作出するための優れた親系統をもたらす形質を有するヒマワリ植物を選択し開発する必要がある。
【0002】
ヒマワリ(Helianthus annuus L.)は、自家受粉と他家受粉のどちらによっても育種することができる。ヒマワリの頭部(花序)は通常、共通の基部(花床)に連結した約1,000〜2,000の個々の筒状花で構成される。周縁の花は、雄ずいでも雌ずいでもない舌状花である。残りの花は、雌雄同体の筒状花である。
【0003】
ヒマワリの自然受粉は、合弁花冠から部分的にもたらされる筒の出現で開花が始まる時に起こる。この筒は、5個の合着した葯から形成され、花粉は筒の内表面で放出される。花柱は急速に伸長し、柱頭を筒に貫通させる。柱頭の2つの裂片は外向きに開き、花粉受容性になるが、最初はそれ自体の花粉は届かない。これにより、個々の花の自家受粉は大幅に防止されるが、花は、同一の頭部において、昆虫、風および重力によって他の花の花粉にさらされる。
【0004】
有望な進化した育種系統は、少なくとも3年の間、商業的な標的地域(1つまたは複数)の代表的な環境において、徹底的に試験し、適切な基準と比較される。最も良い系統が、新規市販品種の候補であり、それらのうち、なお数個の形質が不足しているものを、さらに選択を行うための新規集団を作出するために親として使用する。
【0005】
これらのプロセスは、市販および流通の最終段階に至り、通常、最初の交配を行った時から8〜12世代を必要とする。したがって、新規品種の開発は、正確な将来計画、資源の有効利用、および最低限の方向変換を必要とする、時間のかかるプロセスである。
【0006】
ほとんどの形質について、真の遺伝子型の有用性は他の植物形質の交絡または環境因子によって遮蔽されるために、遺伝的に優れた個体を同定することが最も難しい課題である。優れた植物を同定する1つの方法は、その生産力を他の実験植物および広く栽培されている基準栽培品種と比較観察することである。単回の観察では結論が出ない場合、観察を繰り返すことにより、その遺伝子の価値についてのより良い判断が得られる。
【0007】
毎年、植物育種家は、次世代に進化させるための遺伝資源を選択する。この遺伝資源は、独特で異なる地理的条件、気候条件および土壌条件の下で栽培され、それから、栽培時期の間および栽培時期の終わりに、さらに選択が行われる。開発される近交系は予測不可能である。この予測不可能性は、育種家の選択が独特の環境の下で起こり、DNAレベルで制御されず(従来の育種手順を用いる)、また、何百万もの異なる、遺伝子の組合せの可能性が発生するために生じる。当技術分野の通常の育種家は、最終的に開発される最後に得られる系統について、非常に全体的かつ一般的な様式以外は予測することができない。同一の育種家が、厳密に同一の最初の親および同一の選択技法を用いて同一の系統を2回作出することはできない。この予測不可能性のために、優れた新規ヒマワリ近交系を開発するために多額の研究費用が費やされている。
【0008】
異なる形質および作物によく使用される育種方法の説明は、数冊の参考書の1つにおいて見ることができる(例えば、Allard,1960;Simmonds,1979;Sneep et al.,1979;Fehr,1987)。
【0009】
突然変異ヒマワリは、Heatonらにより報告されたが、突然変異の遺伝子座は未知である。T.C.Heaton,et al.,1981,「Rapid Conversion of Maintainer Lines to Cytoplasmic Sterility」,Proceedings Sunflower Forum and Research Workshop,p.23。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一部において、ヒマワリの自然突然変異の発見に関する。本発明は、「早生」突然変異および関連する近交系/雑種の開発を伴う。本発明は、さらに、ヒマワリの近交同質遺伝子系統および近親の同質遺伝子型雑種において早生性を付与する単一の優性遺伝子を提供する。産業界において雑種を開発するためにこの遺伝子を利用することについての公知の先行教示または示唆はない。本発明は、新規かつ他とは区別しうる、H120Rと称するヒマワリの近交系も提供する。
【0011】
本発明は、この突然変異遺伝子を保有する種子、これらの種子を栽培することによって作出した植物、およびこの突然変異遺伝子および関連する早生性形質を有するその植物の後代を含む。本発明は、近交系および雑種を含めた、そのようなヒマワリの種子および植物を作出する方法も含む。そのような植物は、例えば、近交系をそれ自体と、または他のヒマワリ系統と交配することにより作出することができる。本発明は、さらに、遺伝物質に1つまたは複数の導入遺伝子をさらに含有するヒマワリ植物を作出するための植物および方法に関する。本発明のヒマワリ植物の一部、例えば近交系植物から得られた花粉および近交系植物の胚珠なども提供され、そのような部分は、本発明の早熟性遺伝子を含む。
【0012】
本発明により、熟す期間に影響を及ぼさずに開花フェノフェイズの出現を有意に縮めることができる。本発明により、ICを有意に増加させることもできる。本発明は、短い成熟を必要とする他の地形のために、極晩生の優良近交系を早生の同質遺伝子系統に変換させるためにも使用することができる。本発明は、密度耐性を高めるため、および間作を行うためにも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】H120Rの晩生アルゼンチン系統とその早生突然変異バージョンとの間の、H120R同質遺伝子系統の開花発生の比較を示した写真である。
【図2】X223(MG2em)遺伝子型およびMG2遺伝子型についての、(A)葉面積指数と最初の開葯からの時間との関係および(B)作物により遮断される入射照射光の割合(Qd)と最初の開葯からの時間との関係を示すグラフである。縦棒は、符号よりも大きい場合の標準偏差を表す。
【図3】X223(MG2em)遺伝子型およびMG2遺伝子型についての、種子の重さと最初の開葯からの時間との双直線関係を示すグラフである。縦棒は、符号よりも大きい場合の標準偏差を表す。
【図4】X223(MG2em)遺伝子型およびMG2遺伝子型についての、収穫指数(合成費用に対して補正される)と最初の開葯からの時間との双直線関係を示すグラフである。縦棒は、符号よりも大きい場合の標準偏差を表す。
【図5】早期開花性(EF)遺伝子の主要遺伝子座の遺伝子地図である。実施例8を参照されたい。
【図6】マーカー開発のための戦略を示す図である。
【図7】本発明の早期開花性遺伝子に隣接するマーカーを示す図である。
【図8】促進的な遺伝子移入戦略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一部において、ヒマワリの自然突然変異の発見に関する。本発明は、「早生」突然変異および関連する近交系/雑種の開発を伴う。本発明は、さらに、ヒマワリの近交同質遺伝子系統および近親の同質遺伝子型の雑種において早生性を付与する単一の優性遺伝子を提供する。産業界において雑種を開発するためにこの遺伝子を利用することについての公知の先行教示または示唆はない。本発明は、新規かつ他とは区別しうる、H120Rと称するヒマワリの近交系も提供する。突然変異は、H792A近交系増殖ブロックの苗畑の畝2290141において発見された。図1は、晩生アルゼンチン系統H120Rとその早生突然変異バージョンとの間における、H120R同質遺伝子系統の開花発生の比較を示した写真である。
【0015】
この遺伝子の起源は、ヒマワリの育種集団における自然突然変異であった。この遺伝子は、当初、短期成熟性の地域に適応させることを目指す早生近交系の極早生バージョンを創出するために使用された。その後、極晩生近交系を正常化させるためにこの遺伝子を使用する可能性が理解され、応用された。
【0016】
主題の遺伝子により付与される主題の形質の遺伝は、定性的だと思われる(単一かつ不完全な優性)。効果は明らかに優性とみなされるが、「遺伝子量」効果であるという兆候がいくつかある。
【0017】
この遺伝子を挿入することにより(例えば戻し交配によって)、変換した晩生ヒマワリ近交系を早生性の環境で直接使用できるようになる。これは、他の作物におけるトランスジェニックの研究開発にも利用することができる。
【0018】
この遺伝子により、望ましい形質を持つ晩生遺伝子型を、定量的かつ定性的に、早生性(短季節)の環境に移すことができ得る。同じ概念を、他の作物のトランスジェニック開発に適用することができる。つまり、この形質を育種することにより、または別の方法で、他の、ヒマワリではない作物に導入することもできる。例えば、成功した適用で、熱帯トウモロコシの遺伝資源を、例えば米国中部のトウモロコシ地帯で使用可能にすることができ得る。さらに、中央トウモロコシ地帯の遺伝資源を北部に移動することができ得る。
【0019】
この早生遺伝子は、形質の戻し交配における補助としても有用性がある場合があり、そのいくつかの例としては、細胞質雄性不稔またはイミダジリノン(IMI)耐性が挙げられる。ヘテロ接合型で早期開花性の、戻し交配によるF1の後代について、所望のドナー形質で選択した場合、変換サイクルが短縮され得る(所望の成熟性が選択された際、変換の最終段階で自殖が起こりうる)。
【0020】
この遺伝子は、育種の戻し交配法によって他のヒマワリ近交系に移入することができる。早熟性が付与された雑種を開発するために必要なのは、1つの変換された近交系のみである。
【0021】
この早生突然変異遺伝子は、さまざまな従来の反復親の成熟性に対して、開花までの日数、したがって成熟までの日数を比較的比例的に減少させると思われる。全ての近交系、したがって全ての雑種について、限定された市販地域に対して同じ日数で成熟することは望ましくないように、比例的な開花性/成熟性の改良が望ましい。
【0022】
本発明は、この突然変異遺伝子を保有する種子、これらの種子を栽培することによって作出した植物、およびこの突然変異遺伝子および関連する早生性形質を有するその植物の後代を含む。本発明は、近交系および雑種を含めた、そのようなヒマワリの種子および植物を作出する方法も含む。そのような植物は、例えば、近交系をそれ自体と、または他のヒマワリ系統と交配することにより作出することができる。本発明は、さらに、遺伝物質に1つまたは複数の導入遺伝子をさらに含有するヒマワリ植物を作出するための植物および方法に関する。本発明のヒマワリ植物の一部、例えば近交系植物から得られた花粉および近交系植物の胚珠も提供され、そのような部分は、本発明の早熟性遺伝子も含む。
【0023】
「早熟性」とは、生理的に成熟するまでの平均時間(生理的な成熟を、ヒマワリ植物の種子が熟し終わる時として定義する場合)を指し、約60日〜約90日にわたる。一部の実施例では、生理的に成熟するまでの平均時間は約60日〜約70日であり得る。
【0024】
「早期開花性」とは、ヒマワリ植物が開花するまでの平均時間を指し、約48日〜約66日にわたる。一部の実施例では、ヒマワリ植物が開花するまでの平均時間は約48日〜55日であり得る。
【0025】
ルーチンスクリーニングにより、EM植物は、早熟性および早期開花性の点でおよそ10%異なり得ると予想される。
【0026】
頭部のサイズ(頭部の外周)、乾燥種子の重量および/または乾燥種子の収率は、EMと野生型とで統計学的に同じである。
【0027】
CNE840Bは、H840Bの早生突然変異変換体である。CNE840Bが突然変異を有し、H840Bは突然変異を有さないことを除いて、それらは遺伝的に同一である。CNE840Bは、H840B(反復親として)×早生突然変異ドナー親の5回の戻し交配の派生体である。
【0028】
本開示の一部として、早生突然変異遺伝子を含む早生突然変異ヒマワリ系統CNE840Bの種子少なくとも2500個を、2007年10月17日のブタペスト条約に従って、American Type Culture Collection(ATCC)Manassas,VA20110−2209に寄託し、制限なしで(しかし、特許権に従う)公開利用できるようにした。この寄託は、ATCC受託番号PTA−8715として指定された。この寄託は、公共の寄託機関であるATCC寄託機関において、30年の期間、または最新の依頼後5年間、または本特許の有効期間のうちいずれか長い期間、制限なしで維持され、その期間中に生育不能になった場合は交換される。
【0029】
寄託された種子は、本発明の一部である。明らかに、これらの種子から植物を栽培することができ、そのような植物は、本発明の一部である。本発明は、これらの植物に含有されるDNA配列にも関する。それらの植物の、関連する早熟性後代は、交配において親植物および後代植物を使用することを含め、本発明の一部である。本発明の検出方法およびキットは、任意の、寄託された系統および/またはその後代系統を同定することを対象とする。
【0030】
他の態様において、本発明は、例えば、組織培養物において使用するための、この遺伝子を含む再生可能細胞を提供する。組織培養物は、前述のヒマワリ植物の生理的特性および形態的特性を有する植物を再生させる能力、および前述の近交系ヒマワリと実質的に同一の遺伝子型を有する植物を再生させる能力があることが好ましい。そのような組織培養物中の再生可能細胞は、胚芽、花粉、胚珠、葉、茎、皮層、髄、総苞片、舌状花、筒状花、冠毛、痩果、花蜜、花の苞葉、花床、突起様構造、柱頭、葯、花柱、花糸、がく、果皮、種皮、内乳、胚芽、根、根端、種子などであることが好ましい。さらに、本発明は、本発明の組織培養物から再生された早熟性ヒマワリを提供する。
【0031】
早生同質遺伝子系統であるH418RおよびH120Rの開花までの日数は、それぞれ、反復親では68日および75日であったのに比べ、62日および66日であった。関与する正常な早生系統変換体と早生突然変異との、1つの場所における比較については、第1群F3早生突然変異派生体(極早生分離F3派生体内の遺伝子を持つ)では植え付け後わずか35〜37日後に開花したのに対し、正常(第1群派生体)極早生(第1群)近交系では48日後に開花した。他の場所において、早生突然変異の同質遺伝子系統およびその晩熟性の反復親H840B(アルゼンチン近交系)の開花までの日数は、それぞれ64日、80日であった。成熟性の分類は、反復親の第7群(極晩生)から第3群の早生突然変異変換体(適度に早生)に変化した。
【0032】
主題の遺伝子には、他の形質を積み重ねることもできる。これは、種々の手段で達成することができる。他の系統(他の形質を有する)との交配育種は、当技術分野で公知である。例えば、CLEARFIELD(商標)ヒマワリ(Helianthus annuus)系統X81359を参照されたい。また、主題の形質および/または他の形質を遺伝子操作して所望の形質の組合せを含む植物を得ることができる。
【0033】
例えば、鑑賞用および糖剤用(ヒトによる消費用)の系統および派生体は、主題の早生遺伝子を遺伝子移入することができる。例えば、下記を参照されたい。

【0034】
いくつかの形質および系統の他のいくつかの例は、下記の特許文献に記載されている。

米国特許番号または 発明の名称または主題 出願日
米国特許出願番号 (該当する場合)

61/015,591 低飽和脂肪ヒマワリおよび 2007年12月20日
関連する方法

USSN11/245,991 デルタトコフェロール含量 2005年10月7日
(2006/0112450A1 の高いヒマワリ種
として公開)

61/721,181 高オレイン酸イミダゾリノン 2005年9月28日
耐性ヒマワリ

USPN 4,627,192および 高オレイン酸ヒマワリ
4,743,402

USPN 5,276,264 低レベルの飽和脂肪酸を
有するヒマワリ産物

USPN 6,977,328 低飽和油含量のヒマワリ種
(高オレイン酸でもある)

USPN 6,956,156 近交系ヒマワリ系統H1063R
(高オレイン酸かつイミダゾ
リノン耐性でもある)
【0035】
本明細書で参照または引用した全ての特許、特許出願、仮出願、および公開特許は、本明細書に明示した教示に矛盾しない範囲で、参照により完全に組み込まれている。
【0036】
下記の実施例で本発明を実施するための手順を例証する。これらの実施例は、限定的なものであると解釈されるべきではない。特に注記がなければ、パーセンテージは全て重量パーセントであり、溶媒混合物の割合は全て体積比である。
【実施例1】
【0037】
農業試験および標本結果
本遺伝子の起源は、ヒマワリの育種集団における自然突然変異であった。本遺伝子は、当初、短期成熟性の地域に適応させることを目指す早生近交系の極早生バージョンを創出するために使用された。その後、極晩生近交系を正常化させるために本遺伝子を使用する可能性が理解され、応用された。
【0038】
ヒマワリにおけるem遺伝子の特性決定を開始する目的で、下記の遺伝子型を用いた一連の実験を行った。
MG2 H757A*H120R 野生型
X223 H757A*EM229135R 早生突然変異型
EM229135R=H120Rem(BC2F7ホモ接合型)
【0039】
下記は最重要点の一部である。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
図2に、X223(MG2em)遺伝子型およびMG2遺伝子型についての、(A)葉面積指数と最初の開葯からの時間との関係および(B)作物により遮断される入射照射光の割合(Qd)と最初の開葯からの時間との関係を示す。縦棒は、符号よりも大きい場合の標準偏差を表す。
【0044】
【表4】

【0045】
図3に、コロンで2002年3月に植えたX223(MG2em)遺伝子型およびMG2遺伝子型についての、種子の重さと最初の開葯からの時間との双直線関係を示す。縦棒は、符号よりも大きい場合の標準偏差を表す。
【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
図4に、コロンで2002年3月に植えたX223(MG2em)遺伝子型およびMG2遺伝子型についての、収穫指数(合成費用に対して補正される)と最初の開葯からの時間との双直線関係を示す。縦棒は、符号よりも大きい場合の標準偏差を表す。
【実施例2】
【0049】
熟す期間に影響を及ぼさずにフェノフェイズを減少させるためのem遺伝子についての遺伝子の優性、遺伝子量および適用についての特性決定
主題の突然変異遺伝子/突然変異した遺伝子は、ヒマワリの栽培サイクルにおいて、「開花の出現」(V1−R5.1)フェノフェイズを、続く熟す期間(R5.5−R9)に影響を及ぼさずに有意に減少させるために使用することができ、極晩生の「遺伝子型と環境の相互作用の減少が見られる優良近交系」を、短い成熟性を必要とする他の地形用に早生の「同質遺伝子系統」に変換するために使用することができる。
【0050】
2種の近交系がすでに変換(BC4+)および固定され(H840BおよびH418R)、1種は部分的に変換されたが(BC2F7)固定された(H120R)。H840BおよびH120Rのどちらのemバージョンも、北米で通常用いられている成熟性に完全に適合する。これらの近交系のemバージョンは、mg3雑種を創出するのに有用であり、それぞれmg7およびmg6の反復近交系になっている。この雑種は、8377NSおよび近親のSF270よりも生産された。
【0051】
過去にH840Bは、非常に良好な鈍化耐性を持つ実験的な雑種を作製するために使用された。その雑種は、生産力に優れていたが、極晩生で背丈が高かった。新規emバージョンは、いったん前述の問題がem遺伝子により取り除かれれば、これらの雑種を再現し、「優良コレクション」に含めるために使用することができる。
【0052】
種々の知見に基づいて、この遺伝子の遺伝形質は定性的だと思われる(単一かつ不完全な優性)。効果は明らかに優性とみなされるが、「遺伝子量」効果であるという兆候がいくつかある。これが真であれば、この遺伝子をヘテロ接合型またはホモ接合型のどちらの型ででも使用することにより、異なる成熟性の群に対して同質遺伝子の雑種を創出することができる可能性があり、さらに優良遺伝資源を使用することに拡大され得る。
【0053】
その仮説を立証/否定するために、遺伝形質の形式および遺伝子作用を明白に特定する目的で、下記の遺伝子型について試験することにより一連の実験(RCBD)を計画した。
【0054】
【表7】

【0055】
【表8】

【0056】
早生性に関連する測定に加え、PHGT、HDIAM、SDIAM、#LEAFなどの形質に対する多面発現効果についても測定する。
【実施例3】
【0057】
ヒマワリのフロンティアを、栽培期が短く、また利用できる水が限られている地域に拡大させるためのこの遺伝子の使用
フェノフェイズを有意に減少させるために、この遺伝子を使用し、他の地域由来の優良な同質遺伝子雑種を組み合わせて使用することによって、ヒマワリのフロンティアを、栽培期が短く、また利用できる水が限られている地域に拡大させることができる。この遺伝子は他の形質に対して多面発現効果を有するので、作物の空間的な分布を変化させるためには、作物の生産性を最大にする必要があり得る。SunwheatおよびSunolaなどの先例は、大規模に試験されているが、遺伝的背景に制限されている。
【0058】
この種の遺伝子効果を研究し、同質遺伝子雑種の多様な空間的分布の効果を定量化するために、生長および発達のパラメーターならびに収量構成要素に関する実験の段取りが組まれている。
【0059】
【表9】

【実施例4】
【0060】
他の形質の遺伝子移入を促進するための主題の遺伝子の使用
この遺伝子は、その遺伝形質のために、戻し交配プロセスの間にem遺伝子をヘテロ接合型に保つことによって他の形質の遺伝子移入を促進するための非常に強力な道具になる。遺伝子はドナーまたは反復体に遺伝子移入する必要がある。
EEXX*eexx
EeXx*eexx
eexx EeXx*eexx
eexx EeXx @ → eeXXの回収
【実施例5】
【0061】
遺伝子のさらなる特性決定および配列決定
我々の変換の状態のおかげで、この遺伝子は容易にマッピングされ、配列決定され、最終的にさまざまな作物を形質転換し得る(早生性は非常に容易に同定される)。
H840Bem*H840B F1
(H840Bem*H840B)@ F2
【実施例6】
【0062】
ヒマワリ雑種産物におけるこの遺伝子の使用
早生突然変異の近交同質遺伝子系統の開発はほぼ完全なので、試験の次の段階は、ヒマワリ雑種産物においてこの遺伝子を実際に使用することについての決定である。限定された雑種試験を行い、雑種MG2の早生突然変異バージョンの生産性について、その正常第6群の成熟性バージョンおよび同様の成熟性第3群の他の雑種と比較した。
【実施例7】
【0063】
植物への遺伝子の挿入
本発明の一態様は、主題のポリヌクレオチド配列を用いて植物を形質転換することである。
【0064】
植物においてこの遺伝子を発現させる能力がある異種プロモーター領域を使用することができる。したがって、in plantaで発現させるために、本発明のDNAを適切なプロモーター領域の制御下に置く。そのような構築物を用いた、in plantaでの発現を得るための技法は当技術分野で公知である。
【0065】
本発明の遺伝子は、当技術分野で周知の種々の技法を用いて植物細胞内に挿入することができる。例えば、高等植物に外来遺伝子を挿入する準備のために、大腸菌の複製系および形質転換された細胞の選択を可能にするマーカーを含む数多くのクローニングベクターが入手可能である。そのベクターは、例えば、pBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184などを含む。したがって、ベクターの適当な制限部位に異種配列を挿入することができる。得られたプラスミドを、大腸菌の形質転換に使用する。大腸菌細胞を適当な栄養培地で培養し、次いで採取して溶解する。プラスミドを回収する。分析の方法として、一般に、配列分析、制限分析、電気泳動、および他の生化学分子生物学的方法を行う。各操作を行った後、使用したDNA配列を切断し、次のDNA配列に結合させることができる。各プラスミド配列は、同一プラスミドまたは他のプラスミド内にクローニングすることができる。
【0066】
植物に所望の遺伝子を挿入する方法に応じて、他のDNA配列が必要となる場合がある。例えば、TiプラスミドまたはRiプラスミドを植物細胞の形質転換に使用する場合、TiプラスミドT−DNAまたはRiプラスミドT−DNAの少なくとも右縁、しかし多くの場合右縁および左縁を、挿入される遺伝子の隣接領域として結合させる必要がある。植物細胞を形質転換するためのT−DNAの使用については、EP120516;Hoekema(1985)In:The Binary Plant Vector System,Offset−durkkerij Kanters B.V.,Alblasserdam,Chapter 5;Fraley et al,Crit.Rev.Plant Sci.4:1−46;and An et al.(1985) EMBOJ.4:277−287において集中的に研究され十分に記載されている。
【0067】
挿入されたDNAがいったんゲノム内に組み込まれたら、そのDNAはそのゲノム内で比較的安定であり、概して二度と外に出ない。挿入されたDNAは、形質転換された植物細胞に、とりわけ、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、またはクロラムフェニコールなどの殺生物剤または抗生物質への耐性を付与する選択マーカーを含有する。したがって利用される個々のマーカーにより、挿入されたDNAを含有しない細胞ではなく、形質転換された細胞の選択が可能になるはずである。
【0068】
植物宿主細胞にDNAを挿入するために、数多くの技法が利用可能である。これらの技法としては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を形質転換物質として用いたT−DNAによる形質転換、融合、注入、遺伝子銃(微粒子衝撃)、または電気穿孔ならびに他の実行可能な方法が挙げられる。アグロバクテリアを形質転換に用いる場合、挿入されるDNAを、特別なプラスミド、すなわち、中間ベクターまたはバイナリーベクターのいずれかにクローニングする必要がある。中間ベクターは、T−DNA中の配列に相同的な配列があるため、相同組換えによって中間ベクターをTiプラスミドまたはRiプラスミドに組み込むことができる。TiプラスミドまたはRiプラスミドは、T−DNAを移入するために必要なvir領域も含む。中間ベクターは、それ自体ではアグロバクテリア中で複製できない。中間ベクターは、ヘルパープラスミド(コンジュゲーション)を用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に移入することができる。バイナリーベクターは、大腸菌およびアグロバクテリアのどちらにおいてもそれ自体で複製可能である。バイナリーベクターは、右側および左側のT−DNA境界領域に囲まれた、選択マーカー遺伝子およびリンカーまたはポリリンカーを含む。バイナリーベクターは、アグロバクテリアに直接導入し形質転換することができる(Holsters et al.[1978] Mol.Gen.Genet.163:181−187)。宿主細胞として使用するアグロバクテリウムは、vir領域を有するプラスミドを含むことになっている。vir領域は、T−DNAを植物細胞に移入するために必要である。追加的なT−DNAを含有してもよい。そのように形質転換されたバクテリアを、植物細胞を形質転換するために使用する。植物外植片は、DNAを植物細胞に移入するために、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を用いて都合よく培養することができる。次に、選択のための抗生物質または殺生物剤を含有し得る適当な培地において、感染した植物材料(例えば、葉のかけら、柄の切片、根、またプロトプラストまたは懸濁培養した細胞)から植物体全体を再生することができる。注入および電気穿孔の場合は、プラスミドに特別な要求はない。例えばpUC派生体などの普通のプラスミドが使用可能である。
【0069】
形質転換された細胞は、植物内で通常の方式で増殖する。それらの細胞は生殖細胞を形成し、後代植物に形質転換された形質(1つまたは複数)を伝達することができる。そのような植物は、普通の方式で栽培し、同じ形質転換された遺伝因子または他の遺伝因子を有する植物と交配することができる。得られた雑種は、対応する表現型特性を有する。
【実施例8】
【0070】
早期開花突然変異遺伝子に関する追加情報
特性決定
表10は、ホモ接合型の変換された親が、その正常な反復親に対して有意に早期開花性であり、背丈が短いことを示す。表11:開発のF1段階の種々のヘテロ接合型を戻し交配した変換体は、主として優性の遺伝子作用を示す(不完全な優性)。表12の雑種比較の最初の3組は、早生突然変異遺伝子によって付与される優性を追加支持する証拠を示している。最後の2つのホモ接合型の同質遺伝子雑種とヘテロ接合型の同質遺伝子雑種との比較は、この遺伝子の量の影響−両方の親のこの遺伝子は、一方の親のこの遺伝子より早生性であり得る可能性を示し、それは系図によって異なる。この遺伝子の優性性質を考えると、優良な親への遺伝子移入は、伝統的な戻し交配により、優良な反復親とさらに戻し交配するためにBCnF1世代において早生の分離系を選択することによって、容易に達成される。いったん完全に遺伝子移入されれば、BCnF1を自殖させて、BCnF2集団において個々のホモ接合型EM分離系を選択する。続くBCnF3ファミリーの畝についてホモ接合性の存在を観察することができる。
【0071】
【表10】

【0072】
【表11】

【0073】
【表12】

【0074】
表13および14は、早期開花性突然変異の追加的な多面発現効果を示す。表13の未加工データは、葉の数、葉の幅、および葉の長さが減少し、葉柄が短くなり、頭部サイズが小さくなり、植物の背丈が短くなったことを示す。このことは、EM雑種の葉面積指数(開花の13日後および16日後)、光遮断率(開花の13日後および16日後)、およびバイオマス(開花の13日後および16日後、および生理的成熟時)が正常雑種と比較して有意に少ないことを示す表14の結果の理由であると思われる。しかし、収穫指数比(子実物質/上記の粉砕した植物乾燥物質全体)は、EM雑種の方が有意に高かった。このことは、下記の遺伝子の有用性のポイント3で考察している多くの集団の利用に好適である。
【0075】
【表13】

【0076】
【表14】

【0077】
早期開花性遺伝子の主要な遺伝子座は、マイクロサテライトマーカーまたはSSR(単純反復配列)マーカーおよびMOC0666R×CNE418.312の交配で得られたF3ファミリーの開花データを用いて、第5連鎖群の一端にマッピングした。図5を参照されたい。
【0078】
このヒマワリにおける地図は、通常連鎖群により参照する。第5連鎖群は、Dr.Steve N.Knappのグループによって発表された地図に対応する。Yu et al,(2003)“Towards a saturated molecular genetic linkage map for cultivated sunflower,”Crop Sci.43:367−387;およびTang et al.(2002)“Simple sequence repeat map of the sunflower genome,”Theor Appl Genet 105:1124−1136を参照されたい。ヨーロッパの科学者によって作成された地図の連鎖群の数は、Dr.Knappのグループによって作成されたものと異なる。ヒマワリでは、染色体の数はまだ定義されていない。
【0079】
早期開花性遺伝子座(EF)がマッピングされた地図において、第5連鎖群にマッピングされたSSRマーカーのプライマー配列および地図上の位置を下記に示す。
【0080】




【0081】
各プライマー対は、地図上の1つのマーカーに対応する。これらのプライマーを用いて、マッピング集団の2種類の親(片方は早期開花性、他方は正常開花性)由来のDNAを増幅した。その各々により、その2種類の親間で多型であるDNA断片を増幅した。次にこれらのプライマーを用いて、地図を構築するのに用いたマッピング集団の個々の親を増幅した。
【0082】
遺伝子の有用性
1)この遺伝子は、晩生成熟性の優良近交系を、早熟性の雑種を必要としている他の地形または文化的慣習用に、早生の同質遺伝子系統に変換するために使用することができる。したがって、1つの有益な結果は、育種家のために創出された遺伝的基礎の拡大および多用途性である。表6の結果は、この概念の有用性を示している。雌性および雄性の近交系H840AおよびCN2922Rは、第6〜8群の雑種を開発するために米国の中北部に適合させた極晩生成熟性系統である。H535Aは、晩生の雑種を作製するために用いる第6群の雌性である。H1063Rは、第2〜5群の雑種を開発するための中程度の成熟性の雄性である。それらのEM変換体の試験交配について表6に示している。特に注目すべきは、EM2922Rの試験交配により示される結果であり、EM2922R雑種6個体のうち5個体から、第2群の雑種が作製された。結果は、正常の第2、3、4および5群対照に対するON3403Aの試験交配と非常に競合した結果を示している。
【0083】
【表15】

【0084】
2)この遺伝子は、生活環が短いため、遺伝学研究のための超早期開花性/成熟性の植物を作製するために使用することができる。H324BのBC2F1変換体(表11の下部を参照されたい)は、この可能性を示す(第1群のその反復親H324Bが49日で開花するのに対して、38日で開花する)。
【0085】
3)この遺伝子の多型発現効果−バイオマスを減少させる(林冠、背丈を減少させる)が、収穫指数を高める−により、雑種は高密度集団に有利になり、収率が改善され、正常の晩生成熟性雑種と競合する。表16は、この概念について示している。エーカー当たり36,000個体の植物を植えたEM H1063R雑種は全て、エーカー当たり18,000個体の植物を植えた同じ雑種よりも収率が高かった。このEM雑種は、第2群の対照雑種8N251および8N270よりも有意に早期開花し、収穫種子の水分が少ない。これらの極早生雑種は、遅まき用または小麦の後の二毛作用に市販でき得る。高い植物密度で畝を狭くした追加の研究が行われる予定である。
【0086】
【表16】

【0087】
4)この遺伝子は、戻し交配の間、早生突然変異遺伝子をヘテロ接合型に保つことにより、他の形質の遺伝子移入を促進するための強力なツールになり得る。下記の例において、EM遺伝子は、下線を引いた遺伝子型で示す所望の遺伝子と一緒にドナー親に遺伝子移入された。反復親は太字で示す。
開始: EEXX*eexx
BC0 EeXx*eexx
BC1 eexx Eexx EeXx*eexx
BC2〜BCn eexx Eexx EeXx*eexx
BCnF2 自殖によりeeXXを回収
【0088】
別の模式図を図8に示し、そこでは所望の遺伝子を「YFG」と呼ぶ。図8に図解したように、Clearfieldドナー中のClearfield遺伝子(例えば)をEM突然変異親と交配し、ヘテロ接合型EM/CL F1を得る。F1後代(CL形質のドナーとして使用される)は、優良反復親と交配することができる。3回の戻し交配の各段階で、各交配の後代を次に、反復親を回収するための分子マーカーを用いて反復親と交配する(各戻し交配で、後代のEM、CLおよびEM/CLからEM/CLを選択する)。分子マーカーを用いた3回目の戻し交配により、対象の遺伝子(Clearfield遺伝子)を含有するであろう反復親のゲノムの大部分を回収することができる。
【0089】
視覚選択を用いて(分子マーカーなしで)戻し交配を5ラウンド行った後に、同じことが達成される。しかし、分子マーカーおよび主題の早生遺伝子によりサイクルが大幅に加速される。例えば、各サイクルは、例えば20日短縮される。したがって、例えば、本発明を実施することによって、1年当たり3〜4世代を得ることができる。
【0090】
要約すれば、「ドナー」親と「反復」親との交配を行うことができる。次にF1と続く世代を反復親と交配する(戻し交配)。戻し交配による世代は、単一の遺伝子型に収束する。「ドナー」親の遺伝的関与は、各世代で半減する。
【0091】
良好な反復親は、通常、確立された栽培品種から得る。ドナー親は、一般に望ましい特性を提供する。反復親を再構成するために十分な数の戻し交配を行う。
【0092】
これらの戻し交配の方法により、育種家に高度な制御を提供することができる。改良されるべき形質について前もって記述することができる。これらの方法は、繰り返し可能である。大規模な野外実験は必要ない。さらに、メモを取りおよび記録を保管する必要性が緩和される。
【0093】
5)ヒマワリの早期開花突然変異遺伝子の有用性により、経済的に優れた遺伝子の組合せの適合性が広幅化されることによって、他の作物におけるトランスジェニック開発についての公知の先行開示に対して興奮するような可能性が提示される。他の植物で起こる同様の優性遺伝子作用についての公知の先行開示はない。この遺伝子についてさらにマッピングし、配列決定することもできる。追加の形質転換のために遺伝子の最適化も行うことができる。TaqManアッセイまたはインベーダーアッセイを展開して遺伝子移入を補助することもできる。
【実施例9】
【0094】
追加のマーカーの開発
材料と方法
マーカー開発の戦略について本実施例で要約し、図6に示す。マーカーについて、第5連鎖群(LG5)の下流テロメア領域について選択し、開発し、早期開花性(EF)突然遺伝子のマッピングに以前使用されたMOC0666R×CNE418Rマッピング集団の親系統MOC0666RとCNE418Rとの間の多型についてスクリーニングした。次に多型マーカーをMOC0666R×CNE418Rマッピング集団にマッピングした。MOC0666RとCNE418Rとの間で単型であるマーカーに対して、プライマーを設計してその遺伝子座を増幅した。MOC0666RおよびCNE418R両方の単位複製配列をクローニングし、配列決定して、もしあれば、その2種の親系統間の単一ヌクレオチド多型(SNP)を同定した。TaqMan MGB対立遺伝子識別アッセイを展開し、同定されたSNPをマッピングした。JoinMap4.0(Van Ooijen,2004)を利用して新規開発されたマーカーをマッピングした。
【0095】
結果
SSRマーカーの開発
MOC0666RとCNE418Rとの間で3つのSSRマーカーをスクリーニングした(表17)。1つのSSRマーカー(HA1805)は多型であり、MOC0666RおよびCNE418R由来の単位複製配列はそれぞれ240bpおよび235bpであった。それに対応して、MOC0666R×CNE418Rマッピング集団について、下記のPCRプライマーおよび反応条件を用いてHA1805で遺伝子型を同定した。PCR産物をABI3730シーケンサーにかけて決定した。
HA1805 フォワードプライマー 5'-6FAM-GAAGTTGGGAGGGTTGTTCAAG-3'(配列番号61)
HA1805 リバースプライマー:5'-CCTCCTGTTGGAACACCAAAT-3'(配列番号62)

PCR 成分:
4ng gDNA
1×PCR緩衝液 (Qiagen,Valencia,California)
フォワードプライマー 0.25μM
リバースプライマー 0.25μM
MgCl 1mM
各dNTP O.1mM
0.4%PVP
HotStar Taq DNAポリメラーゼ(Qiagen,Valencia,California) 0.04ユニット
総体積:4.8μl

サーモサイクラーの設定:
ステップ1:94℃で12分
ステップ2:94℃で30秒
ステップ3:55℃で30秒
ステップ4:72℃で30秒
ステップ5:ステップ2、3および4を35サイクル繰り返す
ステップ6:72℃で30分
【0096】
SNPマーカーの開発
5対のプライマーを用いてMOC0666RおよびCNE418R由来の5つの遺伝子座を増幅し、SNPマーカーを開発した(表17)。
【0097】
【表17】

【0098】
制限断片長多型(RFLP)プローブであるZVG23およびZVG24(Kolkman et al.2007)由来の配列に基づいて、2対のプライマー(ZVG23snpF/RおよびZVG24snpF/R)を設計した。HT120F/R、HT137F/R、およびHT151F/Rのプライマー配列は、Laiら(2005)より得た。HT120F/RおよびHT137F/R由来の単位複製配列内でSNPが見出された。HT120F/R単位複製配列内の1つのSNP遺伝子座についてTaqMan MGB対立遺伝子識別アッセイを展開し(下記参照)、このアッセイを用いてMOC0666R×CNE418Rマッピング集団の遺伝子型を決定した。
【0099】
MOC0666R/CNE418R由来のHT120F/R単位複製配列内に、2つのSNP遺伝子座(下線部)があった。

【0100】
R遺伝子座についてTaqManアッセイを展開し、SNPOマーカーDAS HA SNP 2008を設計した。示した通り、下記の配列を使用した。
5'-ACGAGATTGAAGGAACAGAGAGAAA-3'(フォワードプライマー(配列番号64)、5'-GCAGCAGAAAGTCTCGACCTTT-3'(リバースプライマー(配列番号65)、5'-6FAM-CGGAGCGAGAGCT-3'(プローブ1; 配列番号66)、および
5'-VIC-AGCGAAAGCTTAGC-3'(プローブ2; 配列番号67)。
【0101】
リアルタイムPCR成分:
25ng gDNA
1×Taqman Universal PCR Master Mix
フォワードプライマー 22.5μM
リバースプライマー 22.5μM
プローブ1 5μM
プローブ2 5μM
総体積:25μl

Bio−Rad iCyclerの設定:
ステップ1:95℃で15分
ステップ2:94℃で30秒
ステップ3:60℃で1分
ステップ4:ステップ2および3を65サイクル繰り返す
ステップ5:4℃で長時間
【0102】
新規マーカーのマッピング
JoinMap4.0(Van Ooijen,2006)を用いてHA1805およびDAS HA SNP 2008をマッピングした(図7)。HA1805およびDAS HA SNP 2008はどちらも、それぞれ、EF突然変異遺伝子の1.4cMおよび1.8cM下流でEF突然変異遺伝子と密接に連結していた。どちらのマーカーも、例えば、育種計画における早期開花性の選択を楽にするために容易に使用することができる、良質で共優性のマーカーである。
【0103】
実施例9の参考文献

【受託番号】
【0104】
ATCC PTA−8715
【配列表フリーテキスト】
【0105】
[配列の簡単な説明]
配列番号1〜60は、実施例8に詳述したフォワードプライマーおよびリバースプライマーである。
配列番号61は、HA1805フォワードプライマーである。
配列番号62は、HA1805リバースプライマーである。
配列番号63は、実施例9に詳述した2つの単一ヌクレオチド多型(SNP)遺伝子座を含むゲノム配列である;配列番号82に、早期開花性/早熟性の遺伝子/系統において見出されるSNPを示す。
配列番号64は、「R」SNP遺伝子座を増幅するためのフォワードプライマーである。
配列番号65は、「R」SNP遺伝子座を増幅するためのリバースプライマーである。
配列番号66は、R遺伝子座に早熟性のヌクレオチド/多型を含むプローブである。
配列番号67は、R遺伝子座に野生型ヌクレオチドを含むプローブである。
配列番号68〜81は、実施例9に詳述したマーカー配列である。
配列番号82は、実施例9に詳述した2つの単一ヌクレオチド多型(SNP)を含むゲノム配列である;残基65(「Y」遺伝子座)および残基125(「R」遺伝子座)で生じる早期開花性/早熟性の遺伝子/系統において見出されるSNP。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒマワリ植物に早期開花性および/または早熟性の表現型を付与する突然変異優性単一遺伝子を含む早熟性ヒマワリ植物であって、前記遺伝子の主要遺伝子座をDNAマーカーによって第5連鎖群の一端にマッピングすることができる早熟性ヒマワリ植物。
【請求項2】
ATCC#PTA−8715にある早熟性遺伝子を含む、請求項1に記載の早熟性ヒマワリ植物。
【請求項3】
前記遺伝子を含む、請求項1に記載の植物から作出される種子。
【請求項4】
前記遺伝子を含む、請求項1に記載の植物の後代。
【請求項5】
ゲノム試験試料が、植物に早期開花性および/または早熟性の表現型を付与可能な遺伝子を含むかどうかを決定する方法であって、前記ゲノム試験試料が試験植物または前記試験植物の組織、種子、または一部から得られ、前記試験植物がゲノムを含み、前記方法が、前記試験試料を、前記ゲノム中の少なくとも1つの、配列番号63または配列番号82の単一ヌクレオチド多型(SNP)の存在についてアッセイするステップを含み、前記少なくとも1つのSNPが存在することが、前記ゲノム中に前記早期開花性遺伝子が存在することを示し、前記ゲノム中に前記少なくとも1つのSNPが存在しないことが、前記遺伝子を欠失する野生型植物であることを示す、方法。
【請求項6】
前記試験植物からゲノムDNAを得るステップと、前記ゲノムDNAのセグメントを増幅して単位複製配列を形成するステップと、前記単位複製配列が前記少なくとも1つのSNPを含むかどうかを決定するステップとを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記単位複製配列を配列決定するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
配列番号64および配列番号65を含むプライマーを用いて前記ゲノムDNAを増幅して前記単位複製配列を形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記植物が前記早期開花性遺伝子を含む場合に前記試験植物が配列番号66を含み、前記植物が前記SNPを欠失する野生型である場合に前記植物が配列番号67を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記試験植物のゲノムが、前記早期開花性遺伝子であることを示す、配列番号66の9位のグアニンを含むかどうかを決定するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記試験植物のゲノムが、野生型であることを示す、配列番号66の9位のアデニンを含むかどうかを決定するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記試験植物のゲノムが、前記早期開花性遺伝子であることを示す、配列番号67の残基6のグアニンを含むかどうかを決定するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記試験植物のゲノムが、野生型であることを示す、配列番号67の残基6のアデニンを含むかどうかを決定するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記試験植物のゲノムが、前記試験植物が前記早期開花性遺伝子を含むことを示す、配列番号82の残基65がシトシンである配列番号82を含むかどうかを決定するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記試験植物のゲノムが、野生型であることを示す、配列番号63の残基65がチミンである配列番号63を含むかどうかを決定するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
早熟性植物を作出する方法であって、請求項5に記載のステップと、前記遺伝子を含む早熟性植物を選択するステップと、前記早熟性植物を栽培し繁殖させるステップとを含む方法。
【請求項17】
請求項5に記載のステップを含み、配列番号82に関する試験結果が陽性である植物を選択するステップと、前記陽性の植物をさらに育種するステップをさらに含む、選択的育種の方法。
【請求項18】
前記陽性の植物を他の植物と交配するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記植物がヒマワリである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記植物を、観賞用系統および糖剤用系統からなる群から選択される系統のヒマワリ植物と交配する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
早期開花性表現型を有する前記植物を繁殖させる方法であって、請求項5に記載のステップを含み、前記陽性の植物を栽培するステップと、前記陽性の植物を自家交配するステップとをさらに含む方法。
【請求項22】
早熟性植物を選択する方法であって、請求項5に記載のステップと、さらに育種し、および/または繁殖させるために前記早熟性植物を選択するステップとを含む方法。
【請求項23】
配列番号66を含むゲノムを含む植物。
【請求項24】
前記ゲノム中に安定に組み込まれた配列番号82をさらに含む、請求項7に記載の植物。
【請求項25】
早期開花性遺伝子を含む植物であって、前記植物がゲノムを含み、前記ゲノムがその中に配列番号82の少なくとも1つの単一ヌクレオチド多型(SNP)を含み、前記ゲノムが配列番号82の残基65にシトシンを含む植物。
【請求項26】
前記ゲノムが配列番号82中に2つの多型を含む、請求項25に記載の植物。
【請求項27】
前記植物がヒマワリである、請求項25に記載の植物。
【請求項28】
前記植物が、前記野生型植物と比較して早期開花性の表現型を表す、請求項25に記載の植物。
【請求項29】
前記植物が、35日で開花可能なヒマワリである、請求項25に記載の植物。
【請求項30】
請求項5に従って同定されたヒマワリ植物。
【請求項31】
前記遺伝子を含む、請求項25に記載の植物の一部分。
【請求項32】
種子または花粉である、請求項31に記載の植物の部分。
【請求項33】
早期開花性に関連するマーカー遺伝子座の存在を同定する方法であって、前記方法が、請求項25に記載の植物からポリヌクレオチド配列を得るステップを含み、前記配列が前記遺伝子を含む植物に独特であり、識別できるものである方法。
【請求項34】
一連のプライマーを使用することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
配列番号82、配列番号66、配列番号63、配列番号64、配列番号65、および配列番号67からなる群から選択される配列(または前記配列の相補体)とハイブリダイズする単離ポリヌクレオチドであって、ハイブリダイゼーションが55℃、0.2×塩(SSPEまたはSSC)の条件下で維持される、単離ポリヌクレオチド。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドがプローブである、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチドがプライマーである、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
配列番号63と比較して、配列番号82中に少なくとも1つの単一ヌクレオチド多型を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項39】
試験植物が早期開花性遺伝子を含むかどうかを決定する方法であって、前記試験植物がゲノムを含み、前記方法が、前記植物を、前記ゲノム中の配列番号66または配列番号67の存在についてアッセイするステップを含み、前記ゲノム中に配列番号66が存在することが、前記ゲノム中に前記早期開花性遺伝子が存在することを示し、前記ゲノム中に配列番号67が存在することが、野生型植物であることを示す、方法。
【請求項40】
ヒマワリ植物への対象遺伝子の遺伝子移入を促進する方法であって、
対象の遺伝子を含有するドナー植物と早期開花性遺伝子を含むヒマワリ植物を交配してF1ヒマワリ植物を得るステップと、
F1植物を、ゲノムを有する優良ヒマワリの親植物と戻し交配するステップと、
1つまたは複数の、戻し交配による後代の続く世代を戻し交配して、優良ヒマワリ親のゲノムおよび対象の遺伝子を含む少なくとも1つの新規の優良親ヒマワリ植物を回収するステップと
を含む方法。
【請求項41】
前記新規の優良親が、早期開花性形質および対象の遺伝子の両方を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記新規の優良親において、前記対象の遺伝子から前記早期開花性遺伝子を分離するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記早期開花性遺伝子の分子マーカーを少なくとも1つ使用することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
請求項40に記載の方法によって作出される植物。
【請求項45】
観賞用ヒマワリまたは糖剤用ヒマワリである、請求項44に記載の植物。
【請求項46】
野生型バージョンの遺伝子を含む植物と比較して早期開花性および/または早熟性を引き起こす、突然変異した優性単一遺伝子を含む早熟性ヒマワリ植物であって、前記遺伝子の主要な遺伝子座を、マイクロサテライトマーカーまたはSSRマーカーによって、第5連鎖群の一端にマッピングすることができる、早熟性ヒマワリ植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−511646(P2011−511646A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546899(P2010−546899)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/033955
【国際公開番号】WO2009/102890
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】