説明

ヒートシンク及びその製造方法

【課題】コイル状に巻回された金属線材を扁平にし、隣接する巻回単位を相互に密着することにより形成したフィンを用いて、放熱特性を向上させたヒートシンクを提供する。
【解決手段】右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの卷回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、上記扁平コイルが巻回されて長手方向にわたる扁平コイルフィン11が構成され、扁平コイルフィン11の扁平な面が基板10に設けた溝にハンダにより固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はヒートシンクおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、主に半導体素子上に設置され、半導体素子の内部で発生する熱を流動する気体・液体に吸収させることによって半導体を冷却したり、その他、熱交換素子としての種々の用途に用いられるヒートシンク、上記ヒートシンク及びその製造方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートシンクは、半導体素子を効率的に冷却するため、一般に、表面の形状等を工夫し、表面積を大きくして放熱性能を向上させている。
【0003】
例えば、多数の孔を有する板状のベース部に、同様に多数の孔を有する柱状のフィンが多数立設されたヒートシンクが開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上記(特許文献1)の発明は、多数の孔を設けて表面積を大きくすることにより放熱性が高められているが、製造の手間がかかり、また製造コストが高いという欠点があった。
【0005】
一方、半導体素子とリードとが電気的に接続されて封止されたパッケージの上部に金属板を設け、その金属板の上部に金属細線製のコイル形放熱器が搭載された半導体装置が記載されている(特許文献2)。これによれば、コイルを放熱フィンとするため安価に製造できるという利点がある。
【0006】
しかしながら、上記(特許文献2)の発明は、コイルと金属板とが点接合であるため、金属板からコイルへの熱伝導が十分でなく、全体の放熱性能が低いという問題があった。また、コイルが左巻き一重であるためにコイルの占める表面積が大きくならず、大きな放熱量が得られないという問題もあった。
【0007】
また、上記課題を解決するため、金属線材が右巻きに巻回されて右巻き巻回単位が形成されるとともに、コイル状の金属線材が左巻きに巻回されて左巻き巻回単位が形成され、上記右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして組み合わさるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、上記フィンを設ける熱伝導性基板とを備えたヒートシンクが開示されている(特許文献3)。
【0008】
【特許文献1】特開平08−330483号公報
【特許文献2】特開平06−275746号公報
【特許文献3】国際公開第2005/067036号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記(特許3)の発明は、コイル状の金属線材を利用して表面積の大きいヒートシンクが得られることとなった。すなわち、コイル状に巻回された金属線材を扁平にし、隣接する巻回単位を相互に密着することにより、扁平コイルからなるフィンを形成し、上記フィンを扁平な面が熱伝導性基板に垂直となるように配置させて形成されることにより、表面積の大きいヒートシンクが得られることとなった。さらに鋭意研究した結果、扁平コイルを巻回させることで、表面積の大きな扁平コイルを各種形態としてヒートシンクの放熱特性を顕著に向上させることが可能であることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を達成すべく、本発明に係るヒートシンク及び製造方法は、次のような手段を選択する。
【0011】
すなわち、請求項1に記載のヒートシンクは、右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、さらに上記扁平コイルが巻回されて長手方向にわたる扁平コイルフィンが構成され、上記扁平コイルフィンを備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、扁平コイルをコイル状に巻回されることにより、コイルフィンの外周部分において、通気可能な空隙部が増加する。すなわち、扁平コイルフィンの内周部分においては扁平コイルの接触部分は増加し、扁平コイルフィンの外周部分において扁平コイルの接触部分が減少し、空隙部が大きく形成される。また、巻回単位の密着している部位を介して扁平コイルフィンの全体に熱が伝導し、放熱性能が向上する。また、右巻きと左巻にそれぞれ巻回される巻回単位同士が逆向きで良好に絡み合う。
【0013】
請求項2に記載のヒートシンクは、右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、さらに上記扁平コイルが巻回されて長手方向にわたる扁平コイルフィンが構成され、上記扁平コイルフィンが熱伝導性基板に熱結合されることを特徴とする。
上記構成によれば、上記請求項1に加え、基板からの熱結合により放熱される。
【0014】
請求項3に記載のヒートシンクは、請求項2記載のヒートシンクにおいて、扁平コイル自体を扁平面から巻回することで右巻き巻回単位と左巻き巻回単位のコイル外周面のズレがそれぞれ矯正され、各コイル外周面が熱伝導性基板に略同一平面で熱結合可能に構成されることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、扁平コイルと熱伝導性基板との接触部が拡大する。
【0016】
請求項4に記載のヒートシンクは、請求項2または3記載のヒートシンクにおいて、扁平コイル自体を扁平面から螺旋状に巻回して筒状に構成されることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、扁平コイルフィンの筒状内に通風することが容易になり、筒本体内の空隙からも効率良く放熱される。
【0018】
請求項5に記載のヒートシンクは、右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、上記扁平コイル自体を扁平面から螺旋状に巻回しつつ平行方向に分断してアーチ状フィンを形成し、上記アーチ状フィンが熱伝導性基板に熱的結合されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、ヒートシンクの表面体積を減少することができる。
【0020】
請求項6に記載のヒートシンクは、右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、上記扁平コイル自体を扁平面から螺旋状に巻回してリング状フィンを形成し、上記リング状フィンが熱伝導性基板に熱的結合されていることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、上記リング状フィンの内部にファン等を設置するスペースが存在し、ファン等の設置が容易になる。
【0022】
請求項7に記載のヒートシンクは、右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、一方、上下方向に溝を多数有する熱伝導性基体を備え、上記熱伝導性基体の溝に前記扁平コイルを扁平面に沿って係入しつつ上記扁平コイルが扁平面に交差して螺旋状に巻設することで螺旋状フィンを構成し、上記螺旋状フィンが上記熱伝導性基体に熱的結合されていることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、熱伝導性基体の溝に扁平コイルを扁平面に沿って係入し、螺旋状に巻設することで、容易にヒートシンクが製造される。
【0024】
請求項8に記載のヒートシンクは、請求項1〜7のいずれか記載のヒートシンクにおいて、ケースに上記フィンとファンが備えられていることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、ケースとフィンを用いて、ファンを敷設するだけで極簡易にヒートシンクが製造される。
【0026】
請求項9記載のヒートシンクの製造方法は、右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルを形成し、上記扁平コイル自体を巻回することで長手方向にわたる扁平コイルフィンを構成し、上記扁平コイルフィンに棒状の磁性体を挿入し、上記熱伝導性基板を通して上記磁性体を磁力により固定した状態で、上記扁平コイルフィンと上記熱伝導性基板とを熱接合することを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、棒状の磁性体を着磁することで、フィンと基板の定着が図られ、確実な熱結合が得られる。
【発明の効果】
【0028】
以上のことから、本発明の請求項1に係るヒートシンクによれば、扁平コイル時に形成される金属線材間の空隙より大きい空隙を有する扁平コイルフィンが得られる。すなわち、扁平コイルをさらに巻回することで、表面積を増加し、空隙率を減少させないで、扁平コイルフィンを構成することができる。したがって、放熱性能が高いヒートシンクを低コストに得ることができる。また、右巻きと左巻にそれぞれ巻回される金属線材同士が良好に絡み合うため、形態の安定性が付与される。
【0029】
また、上記扁平コイルフィンの内周部分においては、扁平コイルの接触部は増加するため、金属線材間での熱伝導により、扁平コイルフィン全体に熱伝導し、外周部分において空隙部が大きく形成されるため、放熱特性が向上する。
【0030】
本発明の請求項2に係るヒートシンクによれば、熱伝導性基板の熱は、上記に記載した扁平コイルフィンから、良好に放熱される。
【0031】
また、本発明の請求項3に係るヒートシンクによれば、各コイル外周面と熱伝導性基板との接触面積が著しく増加し、基板の熱を扁平コイルフィンから放出することができる。
【0032】
また、本発明の請求項4に係るヒートシンクによれば、扁平コイルの筒内を通風路とすることができ、また、各筒本体においても外周に向かって放熱するため、放熱特性が著しく向上する。
【0033】
また、本発明の請求項5に係るヒートシンクによれば、表面体積が減少したヒートシンクを構成することができる。
【0034】
また、本発明の請求項6に係るヒートシンクによれば、容易にファンを取り付けることが可能となる。
【0035】
また、本発明の請求項7に係るヒートシンクによれば、上記熱伝導性基体に形成された溝に通風することにより、金属線材の接触部が多いフィンの内周部を効率良く冷却するヒートシンクを得ることができる。
【0036】
本発明の請求項8に係るヒートシンクによれば、扁平コイルを熱伝導性基体の溝に螺旋状に巻設するヒートシンクが、容易に製造される。
【0037】
また、本発明の請求項12に係るヒートシンクの製造方法によれば、上記扁平コイルフィンと上記熱伝導性基板をハンダ付け等で接合するとき、棒状の磁性体により上記扁平コイルフィンを押さえながら、上記扁平コイルフィンと熱伝導性基板とを接合することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るヒートシンクの実施の形態(1)について詳細に説明する。
【0039】
図1〜図4は、本発明に係るヒートシンクの実施の形態(1)を示す。
【0040】
扁平コイルフィン11は、扁平コイル14を巻回することで概略構成されている。
【0041】
上記扁平コイルは、右巻きに巻回されたコイル状の金属線材12と、左巻きに巻回されたコイル状の金属線材13がコイル状に巻回される扁平コイルが螺旋状に巻回される扁平コイルフィン11を配列させることによって構成されている。
【0042】
扁平コイル14は、コイル状に巻回された金属線材を、扁平に形成することによって作製されている。このとき、隣接する一巻き一巻きの巻回単位11a、11bが、相互に密着するようにする。
【0043】
具体的には、図4に示すように右巻きに巻回されたコイル状の金属線材12と、左巻きに巻回されたコイル状の金属線材13とが組み合わされる。そして、圧延等の手段により各金属線材12、13を扁平に形成することによって、扁平コイル14が得られる。この加圧の際には、金属線材12,13の帯形の中心部分が内側(重合わせの内部側)に折曲げられるとともに、金属線材12,13の重合わせの表側の部分が圧潰されて中心部分に扁平な面111が形成される。
【0044】
このように製造された扁平コイル14では、金属線材12の巻回単位11a及び金属線材13の巻回単位11bが隣接し、相互に密着している。そして、扁平コイルには、隣接した巻回単位11a、11bが相互に位置ずれして空隙部112及び接触部113が形成されている。具体的には、隣接する巻回単位11a、11bが幅方向に長さm、長手方向に長さnの距離だけ位置ずれしている。幅方向の位置ずれの長さmは、金属線材12、13の直径dに対して0.5〜2倍が好ましい。幅方向の位置ずれの長さmが金属線材12、13の直径dに対して2倍以上の場合には、扁平コイル14の端部における金属線材の密度が低くなることがある。また、幅方向の位置ずれの長さmが金属線材12、13の直径dの0.5倍未満の場合には、金属線材の重なりが大きく圧延等の手段により扁平に形成する際の成形性が低くなることがある。また、長手方向の位置ずれの長さnは、巻回単位11a、11bの長手方向の直径kに対して0.3〜0.7倍が好ましく、0.4〜0.6倍が特に好ましい。
【0045】
扁平コイル14は、それぞれ異なる向きに巻回されたコイル状の金属線材12、13が組み合わさっているため、金属線材12、13が密集して接触部113が密に形成され、熱伝導性が向上し、放熱性能も向上する。また、右巻きおよび左巻きの金属線材12、13が絡み合うため、扁平コイル14の形態が安定し、コイルを連続的に圧延する際に強度等の関係で扁平コイル14が伸びてしまうことがない。
【0046】
上記のように作製された扁平コイル14を外径が円筒状のパイプ、又は棒等に螺旋状に巻回することにより、扁平コイルフィン11を得ることができる。このとき、各コイル外周面が略同一平面に移相される。ここで、巻回前の扁平コイルにおいては、コイル外周面124は、上記金属線材12の先端123は外周面124に接するが、金属線材13の先端13の先端123’の位置は空隙114を形成するようにずれている。この後、扁平コイル14の巻回により、金属線材13の先端123’はコイル外周面125に沿うように移動し、金属線材12の先端123と金属線材の先端123’は略同一平面に形成される。移相とは、上記移動により、外周面が略同一平面に形成されることをいう。
【0047】
上記扁平コイルフィン11の螺旋ピッチは、扁平コイルの幅方向の直径k’より大きければ、扁平コイルフィン11の重複部が発生しないため、良好な通気性を得ることができる。また、扁平コイルフィン11の巻回径についても、上記直径k’より大きければ、巻回時の作業性が良好である。
【0048】
扁平コイルフィン11は、扁平コイル14の扁平面がコイル状に巻回されるため、扁平コイルフィン11の内周部において、扁平コイルフィン11同士の接触部113を有する。図2では、扁平コイルフィン11は、端部123から右巻きに巻回されている。
【0049】
基板10と扁平コイルフィン11は、ハンダ15で接合され、接触部121により熱的結合される。なお、ここで熱的結合とは、接触部での熱伝導を損なうことなく固定することをいう。
【0050】
また、図1の例では、溝100に沿って扁平コイルフィン11を設置している。そして、扁平コイルフィン11は、熱伝導性基板10に対して、上記扁平コイルフィン11と上記基板10の溝100が平行になるように設置されている。上記構成により、基板10と扁平コイルフィン11の接触部121が増加するため、基板10から扁平コイルフィン11への熱抵抗が減少する。
【0051】
次に、コイル状に巻回された金属線材を扁平コイルに形成するには、圧延等の公知の手段により押し潰す等して行うことができる。また、一方向に送られるコイルを連続的に圧延して、長尺状のフィン11を得ることもできる。このとき、隣接する巻回単位11a、11bが相互に適切に密着するように、圧延の圧力、圧延する角度等を適宜設定することが好ましい。なお、コイルを連続的に圧延すると、強度等の関係でコイルが伸びてしまい不適当な場合がある。このような場合には、例えば、左巻きコイルと右巻きコイルとを同軸に組み合わせ(絡み合わせ)、その組み合わせた状態で圧延すると乱れがなく良好に押し潰すことができる。なお、ここでコイル状とは、円形に巻いたものに限定されるものではなく、三角形や四角形等の多角形、楕円形あるいは星形等の種々の形状を含んだものをいう。
【0052】
なお、各巻回単位11a、11bが相互に接触した接触部113は、半田付け、半田メッキ、接着剤、粘着剤等の接着手段や、振動溶接、フラッシュ溶接等の接合手段を用いて接触した線材同士が離れないように固定することで、伝熱抵抗を減少させるための熱的結合を行なうことができる。接触部113が固定されることで、各巻回単位11a、11bの相互の密着が確実に行われ、扁平コイル全体の機械的安定性が向上し、また接触部113により熱的結合がされる。
【0053】
扁平コイルフィン11は、種々の材質から構成することができる。具体的には、アルミニウム、銅、銀、金等の金属材料、又はこれらとニッケル、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等との合金等を挙げることができる。特に、アルミニウム系の材料は、熱伝導性が高くかつ低コストであるため好適に用いられる。
【0054】
また、扁平コイルフィン11の金属線材の材質として、耐蝕性の金属を用いることもできる。ヒートシンクの用途によっては、腐食しやすい環境で使用される場合があるため、そのような場合に適している。耐蝕性の金属の例としては、チタン、及びその合金、ステンレス等が挙げられる。
【0055】
扁平コイルフィン11を構成する金属線材には、必要に応じて、熱伝導性、耐蝕性を高めるために表面処理を施すことができる。具体的には、銅めっき、銀めっき等が挙げられる。また、アルミニウム又はその合金を素材とする場合には、表面に陽極酸化皮膜処理(アルマイト処理)を施すことが好ましい。これにより、耐蝕性が向上するとともに、巻回単位11a、11bの相互に密着する接触部113の熱抵抗が低下し、全体の放熱性をさらに高めることができる。処理の方法は、既知の工程を採用することができ、具体的には、処理物を陽極として、シュウ酸や硫酸、リン酸等の液中で電解を行うことにより酸化皮膜を形成することができる。なお、陽極酸化皮膜処理には、いわゆる白色アルマイトと黒色アルマイトとがあるが、いずれも適用可能である。
【0056】
さらに、金属線材の表面には、必要に応じて、扁平コイルフィン11中を伝導する熱を速やかに外部へ放熱するために、熱放射性の塗膜を形成することができる。
このような塗膜は、熱放射効果を有する種々の顔料を含有させた塗料から形成することができる。顔料の例としては、カーボンブラック、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、ジルコン、マグネシア、イットリア(Y2O3)、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2O3・TiO2)等を挙げることができる。これらは、いずれかを単独で用いても良いし、複数を複合して用いても良い。また、塗料中の顔料の量は、所望の熱放射性に応じて適宜設定することができ、一般には塗膜の乾燥質量に対して10〜90質量%程度が適当である。また、バインダーとしては、熱によって劣化し難い物質が好ましく、例として、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
なお、熱放射性の塗膜の厚さは、1〜50μmが適当である。1μm未満であると、熱放射効果が小さくなり好ましくない。
【0057】
そして、扁平コイルフィン11の径(扁平な面111の幅)は、特に限定されることなく、要求される放熱性能に応じて適宜設定することができる。一般には、径が大きくなると表面積が増加し、放熱性が向上する。具体的には、製造したヒートシンクの用途によっても異なるが、数mm〜数cm程度が適当である。
【0058】
なお、扁平コイル14として、それぞれ異なる向きに巻回されたコイル状の金属線材12、13の2本用いているが、2本に限定されることなく、3本以上のコイル状の金属線材を組み合わせることで扁平コイルを構成することもできる。
【0059】
また、扁平コイルフィン11を備える基板10としては、扁平コイルフィン11の場合と同様に熱伝導性の高い材質を適宜選択して用いることができる。具体的には、アルミニウム、銅、銀、金等の金属材料、もしくはこれらとニッケル、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等との合金、あるいは炭素材料等を挙げることができる。なお、ここでいう熱伝導性基板とは、放熱が要求される半導体装置等の基板をも含んだものをいう。
【0060】
扁平コイルフィン11を備えるための基板10上の溝100は、平板状の基板の表面に切削加工を施すことによって形成することができる。また、ダイキャスト法、押出成形等により、溝100が形成された基板10を直接製造することもできる。なお、溝100のピッチ、形状等は、要求される放熱性能や、扁平コイルフィン11の大きさ等に応じて適宜設定することができる。例えば、溝100を深く形成すると、扁平コイルフィンの吸熱性が向上される。基板の溝の形状は、溝の中央部がくぼんだ形状でも、U字形でもよい。基板の溝の中央がくぼんだ形状のときには、過剰のハンダ等を中央部のくぼみに収容することができる。また、U字形のときには、扁平コイルフィン11と基板10との接触部分を大きくすることができる。
【0061】
上記の扁平コイルフィン11は、基板10の溝100に沿って配列させ、基板10に対して固定するが、その際には熱伝導性を損なわないことを条件として種々の手段を採用することができる。例えば、ハンダを用いて固定することができる。このとき、扁平コイルフィン11を構成する金属線材の断面形状が円形であるので、四角形状の溝100との間に空隙が形成される。この空隙にハンダを供給すると、毛細管現象によりフィン11の表面に沿ってハンダが拡がり、確実な固定が行われて、基板10から扁平コイルフィン11への熱の移動が円滑になる。ハンダ付け以外に、超音波溶接、振動溶接、フラッシュ溶接等の接合手段を用い固定することができる。
【0062】
また、別の固定手段として、熱伝導性接着剤を用いることもできる。熱伝導性接着剤の例としては、金、銀、ニッケル等の金属粉、アルミナ、窒化アルミナ、窒化ケイ素、カーボン粉等を、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーに配合したもの等を挙げることができる。
【0063】
なお、上記実施の形態では、基板10に形成した溝100に沿って扁平コイルフィン11を設置させているが、溝を形成せずに、平板上の基板に対して扁平コイルフィン11を直接固定したり、あるいは基板と扁平コイルフィン11との間に熱伝導性の層を介しても良い。
【0064】
さらに、上記実施の形態では、コイル状に巻回される金属線材を、押し潰す等して扁平に形成しているが、これに限定されるものではない。すなわち、隣接する巻回単位11a、11bが相互に密着することを条件として、例えば、コイル状の金属線材を、その長さ方向の端面が湾曲(三日月形など)になるように押し潰したり、端面が多角形等になるよう成形する等して異形面に形成することができる。
【0065】
なお、上記のヒートシンク1を半導体等に設置する場合には、半導体等からヒートシンク1への熱伝導を妨げないように、上述の熱伝導性接着剤等を介して設置することが好ましい。
【0066】
次に、ヒートシンクの製造方法について説明する。
図5に示すように、扁平コイルフィン11の棒状の磁性体16を挿入し、基板10の下方に磁石16’を設置する。上記磁石の磁力16’が磁性体16を着磁するため、扁平コイルフィン11は磁性体16の磁力により定着された状態で、扁平コイルフィン11と基板10とを接合することができる。上記接合後、磁性体を除去し、ヒートシンク1を製造することができる。
【0067】
上記磁性体16としては、磁性体であればよく、鉄、ニッケルなどの金属、またはその合金などを用いることができる。また、比重の高い金属を用いると、扁平コイルフィンを押さえる力を強くすることができる。
【0068】
上記磁石としては、KS鋼。MK鋼、アルニコ合金、サマリウムコバルト、ネオジム−鉄−ホウ素系磁石、または電磁石等を用いることができる。
【0069】
また、上記扁平コイルを棒状の磁性体16に巻きつけ、扁平コイルフィン11を形成し、扁平コイルフィン11と基板10を接合した後、磁性体16を除去し、ヒートシンク1を製造することも可能である。
【0070】
上記ヒートシンク1、1’は、ファン18を設けることが可能である。上記ファン18には、シロッコファン、ターボファンなどの遠心ファン、プロペラファンなどの軸流ファン、クロスフローファンなどの横流ファン、循環ポンプなどを用いることができる。上記ファン18は、入気側に設けることができ、また、排気側に設けることも可能である。
【0071】
また、上記ヒートシンク1、1’を上記ファン18に加えて、ケース19内に備えることができる。ファン18は、ケース19の内部に設置可能であるが、ケースの外部に設置してもよい。上記ケース19の材料には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂や、アルミ板などの金属板を使用することができる。
【0072】
次に、ヒートシンクの実施の形態(2)を、図6に基づいて説明する。
【0073】
実施形態(1)で作製された扁平コイルを、螺旋状に巻回しつつ平行方向に分断し、アーチフィン11’とする。
【0074】
上記アーチの分断面を基板10’の溝101に接合し、ヒートシンク1’が製造される。図6は、接合にハンダ15を用いているが、実施の形態(1)と同様に他の方法を使用できる。
【0075】
上記アーチの分断面と基板10’は、複数の接触部122を有する。接触部122は、金属線材12、13の断面であるため、基板10’からアーチフィン11’への熱的結合部分を大きくすることができる。
【0076】
アーチ状フィンは扁平コイルを螺旋状に巻回し、螺旋体とした後、分断し、製造することができる。このとき、上記分断後に金属線材同士が離れないようにするため、螺旋体の分断前に半田付け、半田メッキ、接着剤、粘着剤等の接着手段や、振動溶接、フラッシュ溶接等の接合手段を用い固定することが好ましい。なお、扁平コイルの成形時の押し潰す等する際に、金属線材が変形しているため、上記固定をせずに、アーチフィン11’を形成することも可能である。
【0077】
実施形態(2)のヒートシンク1’においては、実施形態(1)のヒートシンク1の半分の金属線材でヒートシンク1’を構成することが可能となる。よって、ヒートシンクの重量、及び材料価格等の点において有利となる。
【0078】
また、図7に示すように、上記螺旋分断フィン11’においては、上記分割面に端面処理部材17を設けることができる。上記端面処理部材17によりフィン11との接合面積を増加することができる。さらに、端面処理部材17を基板10’に接合すると、基板10’との接触面積を増加することができる。また、端面処理部材17により、基板10’とアーチフィン11’の接合時の作業性が向上する。
【0079】
なお、上記実施の形態(2)では、基板10’に形成した溝101に沿ってアーチフィン11’を配列させているが、溝を形成せずに、平板上の基板に対してアーチフィン11’を直接固定したり、あるいは基板とアーチフィン11’との間に熱伝導性の層を介しても良い。
【0080】
次に、実施の態様(3)として、ヒートシンク200は、上記扁平コイルを図8のように扁平コイルの扁平面が交差するようにフィン115が形成し、金属線材間の空隙部を増加させることができる。よって、放熱性能が高いヒートシンクを得ることが可能となる。
【0081】
次に、実施の態様(4)として、図9に、上記リング状フィン21と熱伝導性基板22を備えるヒートシンク201を示す。上記リング状フィン21は、内周から外周、または外周から内周への送風時の空気抵抗が少ないため、ファン23は、リング状フィン21の上部に備えられる。ファン23の送風方向は、入気側でも、排気側でも利用できる。さらに、図10(b)のヒートシンク201’のように、ファン23’をリング状フィンの内部に形成することも可能である。
【0082】
上記リング状フィン21は、螺旋体をリング状に成形し、螺旋体の端部をハンダ、超音波溶接、スポット溶接、接着剤等で接合することにより、成形することができる。また、図10(a)に示すように、アルミ箔等の金属箔25上に螺旋体24を接合し、図10(b)に示すように、金属箔25’をリング状に形成し、金属箔25’の端部を接合することにより、リング状フィン24’を得ることができる。このとき、図10(c)のように、アルミ箔25をフィン24との接合部30の幅程度に形成すると、フィン25の内周部と外周部の通気性を確保することができる。また、上記金属箔25’の端部を接合した後、リング状フィン24’の端部を接合し、上記金属箔25’を除去した場合には、リングフィン24’の内周側と外周側の通気経路を増加することができる。
【0083】
次に、実施の態様(5)として、図11に、上記螺旋状フィン26と、上記螺旋状フィン26を支持する熱伝導性基体27を備えるヒートシンク202を示す。図11では、螺旋状フィン26を構成する扁平コイルの扁平面が柱状体の長手方向と交差するように巻回されている。また、図11では、上記熱伝導性基体27は断面が十字型の柱状体からなり、外側面には、螺旋状フィンを持設するための溝が設けられている。なお、断面が三角形以上の柱状体であれば、溝形成し、溝部に扁平コイルフィンを設置した後に、十分な溝部の通風性を確保することができる。
【0084】
また、上記のヒートシンクは、多段に重ねて使用することもできる。図12に示すように、ヒートシンク203は、基板10によって層状に仕切られて、吸気通路24と排気通路25が交互に形成されている。そして、それぞれの基板10にはフィン11が設けられている。
【0085】
以上のようなヒートシンクは、主に、冷却ファン等とともにCPU等の半導体素子上に設置されて素子に発生する熱を放散させるために使用されるが、その他にも、放熱性が求められる用途であれば適宜用いることができ、上記の放熱をペルチェ素子で行うときにも好適である。特に、本発明に係るヒートシンクは、非常に安価でかつ効率的に製造することができるため、比較的大面積の場所に設置するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施の態様(1)のヒートシンクの斜視図
【図2】実施の態様(1)のヒートシンクの側面図
【図3】コイル外周面を説明する拡大側面図
【図4】実施の態様(1)の扁平コイルを示す図
【図5】実施の態様(1)のヒートシンクの製造方法を示す図
【図6】実施の態様(2)のヒートシンクの斜視図
【図7】実施の態様(2)のフィンの端面部分を示す図
【図8】実施の態様(3)のフィンの側面図
【図9】実施の態様(4)のヒートシンクの側面図
【図10(a)】接合前のリング状フィンを示す側面図
【図10(b)】接合後のリング状フィンを示す上面図
【図10(c)】接合前のリング状フィンを示す下面図
【図11】実施の態様(5)のヒートシンクの斜視図
【図12】多段に備えられたヒートシンクの斜視図
【符号の説明】
【0087】
1、1’ ヒートシンク
10、10’ 基板
100、101 基板の溝
11 扁平コイルフィン
11’ 螺旋分断フィン
11a、11b 巻回単位
111 扁平な面
112 空隙部
113 接触部
115 フィン
12、13 金属線材
121、122 基板とフィンの接触部
123 フィンの端部
15 ハンダ
16 金属棒
17 端面防止部材
18 ファン
19、20 ケース
200、201、201’、202、203 ヒートシンク
21 螺旋体リング状フィン
22 熱伝導性基板
23、23’ ファン
24 螺旋体
24’ 螺旋体リング状フィン
25、25’ 金属箔
26 螺旋体の螺旋状フィン
27 熱伝導性基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、さらに上記扁平コイル自体が巻回されることで長手方向にわたる扁平コイルフィンが構成されることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、さらに上記扁平コイル自体が巻回されることで長手方向にわたる扁平コイルフィンが構成され、上記扁平コイルフィンが熱伝導性基板に熱結合されることを特徴とするヒートシンク。
【請求項3】
請求項2記載のヒートシンクにおいて、扁平コイル自体を扁平面から巻回することで右巻き巻回単位と左巻き巻回単位のコイル外周面のズレがそれぞれ矯正され、各コイル外周面が熱伝導性基板に略同一平面で熱結合可能に構成されることを特徴とするヒートシンク。
【請求項4】
請求項2または3記載のヒートシンクにおいて、扁平コイル自体を扁平面から螺旋状に巻回して筒状に構成されることを特徴とするヒートシンク。
【請求項5】
右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、上記扁平コイル自体を扁平面から螺旋状に巻回しつつ平行方向に分断してアーチ状フィンを形成し、上記アーチ状フィンが熱伝導性基板に熱的結合されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項6】
右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、上記扁平コイル自体を扁平面から螺旋状に巻回してリング状フィンを形成し、上記リング状フィンが熱伝導性基板に熱的結合されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項7】
右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルが構成され、一方、上下方向に溝を多数有する熱伝導性基体を備え、上記熱伝導性基体の溝に前記扁平コイルを扁平面に沿って係入しつつ上記扁平コイルが扁平面に交差して螺旋状に巻設することで螺旋状フィンを構成し、上記螺旋状フィンが上記熱伝導性基体に熱的結合されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載のヒートシンクにおいて、ケースに上記フィンとファンが備えられていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項9】
右巻きコイル状に巻回されて右巻き巻回単位が連続形成されるとともに左巻きコイル状に巻回されて左巻き巻回単位が連続形成され、右巻きと左巻きの巻回単位が相互に位置ずれして重なるように組み付けされて空隙部及び接触部を有する扁平コイルを形成し、上記扁平コイル自体を巻回することで長手方向にわたる扁平コイルフィンを構成し、上記扁平コイルフィンに棒状の磁性体を挿入し、上記熱伝導性基板を通して上記磁性体を磁力により固定した状態で、上記扁平コイルフィンと上記熱伝導性基板とを熱接合するヒートシンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図11】
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【図12】
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