説明

ヒートシール装置及び薬剤分包装置

【課題】発熱体への不必要な電力供給を遮断するための遮断時間の短縮を図ることができるヒートシール装置及び薬剤分包装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ヒータ台と、該ヒータ台に対向して設けられたヒータ受台とが設けられ、熱溶着性シートに通電によって加熱される発熱体が設けられ、前記ヒータ台とヒータ受台とで熱溶着性シートを挟圧加熱することで熱溶融性シートどうしを熱溶させてヒートシール部を設けて、該ヒートシールによって収容物を収容するために区画した包装部を形成するようにしたヒートシール装置であって、前記発熱体7とこれに電力を供給するための電源部4とが接続され、該発熱体7と電源部4との間に、設定温度異常で抵抗値が急激に上昇するPTCサーミスタ10を備えさせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶着性シートに対してヒートシールを行うためのヒートシール装置及びこのヒートシール装置を備えた薬剤分包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺の熱溶着性シートに対して加熱状態の発熱体を接触させることによりヒートシールを行い、該シートから個別に区画された包装体を形成するヒートシール装置は、従来より薬剤分包装置等に使用されている。
例えば、ヒートシール装置に電源を投入してから、発熱体によりヒートシールが可能となる時間が短くなる、つまり発熱体の温度の立ち上がりが早くなるように、発熱体を薄板状に構成したり、発熱体に大電流を流すように構成することなどが既に行われている(薄板状にしたものとしては、例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−335810号公報(図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の構成によれば、装置内に備えた発熱体の温度調節回路により温度調節を行いながら、ヒートシールを行うのであるが、温度調節回路の不具合などの原因により発熱体が不必要に加熱されてしまい、耐久性の低い薄板状の発熱体では、損傷又は破壊されることを確実に回避することが難しい。
このため、前記発熱体への必要以上の電力が供給されたときに、発熱体への電力供給を遮断するための温度ヒューズや電流ヒューズ等を発熱体と電源部との間に設けたものが一般的である。
しかしながら、温度ヒューズや電流ヒューズにおいては、熱により溶断して遮断する構成であるため、溶断時間としては、早くても2,3秒を要してしまうことから、その遮断時間に耐え得るように発熱体を構成することになる。従って、発熱体を薄板状に構成したり、発熱体に大電流を流すように構成することにおいて、限界があるため、前記のように、発熱体によりヒートシールが可能となる時間を十分に短縮することができないものであった。
【0004】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、発熱体への不必要な電力供給を遮断するための遮断時間の短縮を図ることができるヒートシール装置及び薬剤分包装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のヒートシール装置は、前述の課題解決のために、ヒータ台と、該ヒータ台に対向して設けられたヒータ受台とが設けられ、熱溶着性シートに通電によって加熱される発熱体が設けられ、前記ヒータ台とヒータ受台とで熱溶着性シートを挟圧加熱することで熱溶融性シートどうしを熱溶させてヒートシール部を設けて、該ヒートシールによって収容物を収容するために区画した包装部を形成するようにしたヒートシール装置であって、
前記発熱体とこれに電力を供給するための電源部とが接続され、該発熱体と電源部との間に、設定温度以上で抵抗値が急激に上昇するPTCサーミスタを備えさせたことを特徴としている。
PTCサーミスタとしては、低融点のポリマー中にカーボン、ニッケル等の導電性粉末を分散させることで同様の特性が得られるようにしたポリマーPTC素子を用いることができる。通常、樹脂中の金属粉同士が接触することで導通があり、抵抗が低くなる。ポリマーPTC内部に電流が流れると、PTC素子が発熱する。この場合、外部から熱を受け取る場合に比べてそれ自身が発熱するので素子全体の温度は敏感に上昇することになる。そして、電源部からPTCサーミスタへ不必要な電力供給をすると、PTCサーミスタへ大きな電流が流れ温度が上がるとポリマー樹脂が膨張する。これに対して樹脂に錬り込まれた金属はほとんど膨張しないため、金属粉同士の間隔が広がり、金属粉同士が離れてしまい抵抗値が急激に大きくなる。この時の電流値をトリップ電流と呼ぶ。このように一旦抵抗値が大きくなっても僅かな電流が流れるので、PTCサーミスタの温度は高いままになり、ほぼ断線状態になる。この時、流れている電流は前記トリップ電流よりはるかに少ないのですが、PTCサーミスタは復帰しないことになる。尚、一旦回路を外して(遮断して)電流を止めることによりPTCサーミスタの温度が下がり、PTCサーミスタを元の正常な状態に戻すことができる。前記ほぼ断線状態になるまでの時間は、温度ヒューズや電流ヒューズ等の溶断タイプにて遮断するものに比べて短かくなる。前記PTCサーミスタの設定温度は、ポリマーの融点に依存するが、具体的には85℃を過ぎた辺りから急激に抵抗値が上昇する。
【0006】
前記PTCサーミスタが、設定温度に達してから設定時間後に前記発熱体と電源部との接続を遮断状態とするものを用いることが好ましい。前記設定時間は、異常電圧が発生して例えば温度ヒューズや電流ヒューズにて回路を遮断する時間よりも短い時間である。
【0007】
前記発熱体と電源部との間に温度調節回路を備えさせ、該温度調節回路と電源部との間に前記PTCサーミスタを配置してもよい。尚、前記PTCサーミスタを、ポリマー系のPTCサーミスタで構成してもよいし、チタン酸バリウムを主成分としたセラミック系PTC素子であってもよい。前記セラミック系PTC素子はキュリー温度に基づき、その温度範囲は、−50℃〜300℃(高温用は500℃)のものが一般的であるが、他の範囲のものでもよい。
【0008】
上記ヒートシール装置が備えられ、該ヒートシール装置によって熱溶融性シートが個別に区画された薬剤の包装体とするように構成された薬剤分包装置が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
PTCサーミスタが設定温度に達すると、それが持っている抵抗値が急激に上昇して発熱体への供給電流を小さくすることにより、発熱体を不必要に発熱させることを回避することができるだけでなく、温度ヒューズや電流ヒューズに比べて、耐圧以上の電圧が加わった場合等の異常時における発熱体と電源部との接続を迅速に遮断状態にすることができ、発熱体への供給電力の遮断時間の短縮を図ることができるから、発熱体を薄板状に構成したり、発熱体に大電流を流すように構成することを大きな制約を受けることなく実現することができ、スタンバイするための必要時間の短縮化を十分に図ることができる商品価値の高いヒートシール装置及び薬剤分包装置を提供することができる。前記PTCサーミスタは、温度ヒューズや電流ヒューズのように一旦切れてしまうと、復帰できないものではなく、設定温度以上になっている温度を下げるだけで復帰させることができ、何度も使用することができる利点がある。又、電流ヒューズ等を使用する場合には、使用に伴って電流が流れるヒューズを構成する金属の一部が少しずつ溶けていくものであることから、溶けて小さくなってきた金属から構成される電流ヒューズでは、使用初期の遮断電流値よりも小さな遮断電流値になってしまい、正常状態で遮断してしまう不都合が発生することになるが、溶断するタイプではないPTCサーミスタを使用すれば、常に同一の状態での遮断が可能になり、長期間の使用でも良好に使用することができる信頼性の高いものにすることができる。
【0010】
前記発熱体と電源部との間に温度調節回路を備えさせ、該温度調節回路と電源部との間に前記PTCサーミスタを配置することによって、温度調節回路にトラブルが発生し、温度調節が正常に機能していない場合でも、PTCサーミスタに加わる温度によって温度調節回路が異常であると判断して、発熱体への供給電力の遮断を確実に行うことができ、安全面において有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明に係るヒートシール装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、ヒートシール装置が薬剤分包装に組み込まれて使用される場合を例にして説明する。
【0012】
図1は、ヒートシール装置が組み込まれた薬剤分包装置を概略的に示す斜視図である。図1に示すように、薬剤分包装置100は、熱溶着性シート300に対してヒートシールを行うためのヒートシール装置1と、薬剤(散薬及び/又は錠剤)を所定量毎に分配し且つ当該所定量毎の薬剤を排出する薬剤分配装置200と、薬剤分配装置200から排出される薬剤を熱溶着性シート300の内部へ供給する薬剤供給装置400とを備えている。なお、図中の符号60は、ヒートシール装置1の後述するヒータ台及びヒータ受台を覆う保護カバーである。
【0013】
前記薬剤分包装置100は、縦長の長方形状の支持壁11を有する架台部材10と、前記支持壁11の一方面側11aに設けられた回転自在な紙管ドラム20と、ドラム20に装着されたロール体310からシートを繰り出す駆動手段(図示せず)とを備えている。
【0014】
なお、図中の符号91〜93は、ロール体310から繰り出された熱溶着性シート300を案内する案内バーであり、必要又は所望に応じて、薬剤分包装置100に備えられる。
【0015】
図2は、ヒートシール装置周辺の概略構成を拡大して示す斜視図である(但し、図1に示す保護カバー60は省略している)。
前記ドラム20には、1枚の熱溶着性シート300を長手方向に沿った中心線で熱溶着面を内側にして2つ折りにしたシート(以下「包装シート」という場合がある)が巻き取られたロール体310が装着されている。尚、包装シート300は、このように1枚の熱溶着性シートを2つ折りにした態様の他、例えば、熱溶着面を重ね合わせた2枚の熱溶着性シートの下側端部を長手方向に接着してなる態様、ロール状に巻かれた1枚の熱溶着性シートを薬剤を入れる前に中心線で2つ折りにする態様など種々のものを用いることもできる。
前記ロール体310から繰り出される包装シート300は、前記案内バー91,92,93を介して、矢印X方向に送出される。前記包装シート300(熱溶着性シート)は、内面が熱溶着可能なものであれば特に限定されず、グラシン/ポリエチレン、セロハン/ポリエチレン、耐熱性樹脂/ポリエチレンなどの積層体などが例示される。
尚、40は、包装シート300を送るための搬送用ローラである。
【0016】
送出された包装シート300は、ヒートシール装置1によって個々の包装体を形成するようにヒートシールされる。
具体的には、ヒートシール装置1は、包装シート300の一面側に配置され且つ包装シート300を加熱してヒートシールするための三叉状シール部を有するヒータ台5と、この包装シート300を挟んでヒータ台5に対向配置されたヒータ受台6とを備えている。ヒータ台5及びヒータ受台6は、包装シート300に直交する方向(シート面を貫通する方向)へ移動可能とされており、ヒートシールを行う際には、両者が互いに近接する方向へ動かされ、両者によって挟圧される包装シート300の熱溶着面がヒートシールされる。
【0017】
ヒータ台5は、包装シート300の幅方向に延び、且つ包装シート300を個々に仕切るための幅シール部51と、この幅シール部51の上端から上流方向に、且つ包装シート300の上側端部に沿って延び、包装シート300の上方開口部320を閉塞するための第1シール部52と、幅シール部51の上端から下流方向に、且つ包装シート300の上側端部に沿って延び、包装シート300の上方開口部320を閉塞するための第2シール部53と、からなり、例えば、図示したように正面略T字状に形成されている。この第1シール部52と第2シール部53は、その長さが異なっており、例えば、第1シール部52は、第2シール部53よりも短く形成されている。
尚、ヒータ受台6は、ヒータ台5に鏡像的に重なるように、ヒータ台5と略同一形状に形成されて配置されている。
【0018】
前記発熱体7は、図3(a)に示すように、ヒータ台5の内面(シート対向面)に設けられており、通電によって発熱する発熱部71と、この発熱部71の両端部にそれぞれ形成された電源接続用の端子部72とを備え、発熱部71は、ヒータ台5の各シール部51,52,53(第1及び第2シール部52,53、幅シール部51)を通るように配設されている。この発熱部71は、ヒータ台5の内面から露出して設けられている。従って、本実施形態では、発熱体7が、包装シート300に直に接触し且つ包装シート300を加熱するシート加熱面を構成している。
【0019】
より具体的には、発熱体7は、発熱部71と端子部72,72とからなり、電源投入からシール可能となる時間を短縮することができるように1本の線状(板状)の発熱部材からなっている。前記発熱部71は、シート長手方向に所定間隔を置いて配置した第1水平部711と第2水平部712、及びそれら水平部711,712の接近側端同士を連結するU字部713を有する。前記2つの端子部72は、第1水平部711及び第2水平部712それぞれの離間する側の端部にそれぞれ連接されている。例えば、電源接続用の前記端子部72は、発熱部71よりも幅広に形成され且つ該発熱部71が略均一な幅及び厚みとなるように形成された金属板(ステンレス板等)などで構成されている。前記U字状部713は、一対の垂直部714,715と、これら垂直部の下端同士を連結する反転部716とを有する。
【0020】
又、発熱部71は、直線部と、該直線部どうしの方向を転換すべく直線部間を連接する湾曲部85,86とを有した構成である。すなわち、直線部は第1水平部711、第2水平部712、U字部713の一対の垂直部714,715に相当する。第1水平部711と垂直部714の端部同士が湾曲部85を介して連接されている。第2水平部712と垂直部715の端部同士が湾曲部86を介して連接されている。
【0021】
前記発熱体7の両端子部72,72は、ヒータ台5の第1シール部52及び第2シール部53の先端外方へ突出させてそれぞれ配置されている。したがって、両端子部72,72の間に連続する前記発熱部71の線路形状は、一方の端子部72を始点とし、ヒータ台5の第1シール部52の内面に沿って延び、幅シール部51の上端で湾曲部85を介して下方側へ略90度湾曲して該幅シール部51の下端にまで達し、ここで反転部716を介して湾曲反転して、ヒータ台5の幅シール部51の上端側へ延び、該幅シール部51の上端で湾曲部86を介して略90度湾曲して第2シール部53に沿って延び、他方の端子部72に続いている。
このように、発熱部71の線路形状は、包装シートの幅方向に延びる略U字状のU字部713を有し、第1水平部711の一端部とU字部713の一端部が連接され、且つ第2水平部712の一端部とU字部713の他端部が連接された形状となっている。
【0022】
また、発熱部71とヒータ台5の内面との間には、図3(b)に示すように、耐熱性発泡樹脂シートなどの断熱層8が介装されており、発熱部71と断熱層8、及び断熱層8とヒータ台5の内面は、耐熱性接着剤にて接着されている。このように断熱層8を介在させることにより、ヒータ台5が高温とならないから、例えばヒータ台5の外面へ接触することによる火傷などを防止でき、また、ヒータ台5を比較的耐熱性の低い材質で作製することも可能であるが、ヒータ台5に発熱部71の少なくとも一部が入り込む凹部を形成して実施することもできる。又、ここでは、薄板状の発熱部71を用いているが、耐久性のある厚みのある発熱部であってもよく、発熱部としての具体的構成は自由に変更することができる。
【0023】
図3(a)、(b)に示すように、前記発熱部71の特定一箇所には、温度センサ9(本実施形態ではサーミスタを用いているが、熱電対など、温度を検出し得る限りにおいて種々のセンサを用いることが可能である)が設けられ、図4に示すように、前記温度センサ9からの出力信号に基づいて発熱部71の温度を検出するための温度検出回路2がヒートシール装置1に具備された制御回路C内に備えられている。この温度センサ9は、発熱部71と断熱層8の間に介装され、前記温度検出回路2に接続されている。そして、前記制御回路Cには、前記温度検出回路2からの温度検出信号による実際の検出温度と予め設定された設定温度とを比較して、設定温度に維持するために発熱体7への通電量を調節するための温度調節回路、略して温調回路3が備えられている。尚、前記制御回路Cは、例えば、図1に示す分包装置1の筐体の適宜の箇所(図示省略)に配置されている。
【0024】
前記制御回路Cは、前記発熱体7をシール温度と該シール温度と異なる温度の少なくとも2つの温度(これら温度を設定温度という)に昇温させる機能を少なくとも備えている。
シール温度は、使用される熱溶着性シート300の種類に応じて適宜設定されるものであって、概ね80〜130℃程度であり、例えば、グラシン/低密度ポリエチレンの場合には、100〜110℃程度、セロハン/低密度ポリエチレンの場合には、120〜130℃程度に設定される。
シール温度と異なる温度は、例えば、シール温度よりも低く且つ手が触れても直ちに火傷しない程度の温度(例えば、50〜60℃程度)や、シール温度よりも高く且つ発熱部に付着した付着物を溶融させることができる温度(例えば、140〜190℃程度)、シール温度よりも高く且つ発熱部に付着した付着物を炭化できる温度(例えば、400℃以上)などが例示される。
本実施形態に於ける発熱体7は、制御回路により、80〜130℃のシール温度、400℃以上の炭化温度の2種の温度に昇温するように設定されており、ヒートシール装置1等に設けられた操作盤(図示せず)を介して、使用者が、所望により発熱体7の温度を変更できるようになっている。
尚、前記発熱体7の温度は、シール温度と炭化温度の2種の組み合わせの他、シール温度と140〜190℃程度の溶融温度や、シール温度、溶融温度及び炭化温度の3種以上に変更できるようにしてもよい。
【0025】
前記温調回路3を介して発熱体7に電力を供給するための電源部4が、該温調回路3に接続されている。そして、前記温調回路3と電源部4との間に、設定温度以上で抵抗値が急激に上昇するPTCサーミスタの一例であるポリマーPTC素子10が備えられており、温調回路3にて発熱体7の温度調節を行っているときに、温調回路3の不具合により電源部4から設定されている電力以上の電力が温調回路3に供給される状況にあっても、ポリマーPTC素子10が設定温度以上上昇することにより該素子10の抵抗値が急激に増大することによって、電源部4から温調回路3への供給電流を小さく抑えることができるようにしている。この時の電流値をトリップ電流と呼ぶ。前記設定温度は、ポリマーの融点に依存することになり、例えば85℃から急激に抵抗値が上昇するように構成してもよいが、他の温度になるようにしてもよい。前記電源部4は電源回路11とコンセントに差し込むためのプラグ12とを備えているが、他の構成であってもよい。前記PTCサーミスタとしてポリマーPTC素子10を挙げたが、設定温度以上で抵抗値が急激に上昇するものであれば、チタン酸バリウム等のセラミック系PTC素子等の他のPTCサーミスタであってもよい。前記セラミック系PTC素子の場合には、設定温度がキュリー温度になる。
【0026】
前記ポリマーPTC素子10は、汎用のものを用いることから図示していないが、構成としては、絶縁層を構成する樹脂の中に導通させるための金属粉を混入した温度感知部と、この温度感知部をサンドイッチ状態に挟み込むための一対の電極板とからなり、一対の電極板の一方を、温調回路3へ接続し、他方の電極板を電源回路に接続している。従って、電源回路11から設定電圧を超える電圧(電力)が供給されることによって、ポリマーPTC素子10を流れる電流値が増大していくと、ポリマーPTC素子10を構成する樹脂が徐々に膨張していき、設定温度以上で急激に樹脂中に混入している金属粉同士の間隔が増大することによって、電流が流れ難くなり、温調回路3へ大きな電流が流れることを抑えることができ、発熱体7への過剰な電力供給を阻止することができるだけでなく、温調回路3へも過剰な電力供給を阻止することができる。従って、発熱体7は勿論のこと、発熱体7を構成する各種のPTCサーミスタが破壊されることを阻止することができる。そして、前記ポリマーPTC素子10には、トリップ電流よりも少ない電流が流れているため、ポリマーPTC素子10の温度が設定温度以上に維持されることになり、回路はほぼ断線状態(遮断状態)になっており、一旦回路を外して電流を止めることによりポリマーPTC素子10の温度が下がり元の正常な状態に戻る。前記トリップ電流よりも少ない電流が流れる遮断状態になるまでの時間は、1.5,6秒までの時間が好ましいが、温度ヒューズや電流ヒューズを用いたときの遮断時間(金属のヒューズが溶けて接続が遮断される遮断時間)よりも短い2秒までの時間であれば構わない。尚、前記ポリマーPTC素子10を構成する樹脂材料によって、遮断時間も変更可能であり、材料の選定によって遮断時間が決定されることになる。
ここでは、ポリマーPTC素子10を復帰させるために、上昇した温度を下げる方法として、例えば回路を外す(遮断する)構成とすることによって、回路構成を簡素化することができる利点があるが、例えばポリマーPTC素子10の電源回路11側端の電流値と、ポリマーPTC素子10の温調回路3側端の電流値との差をコンパレータ等により検出する構成とし、その差が所定値以上になり、その差が設定時間持続されたときに電源回路11からの電力の供給を停止するための回路遮断部を備えさせて、ポリマーPTC素子10を自動的に復帰させるように実施することもできる。
【0027】
前記ポリマーPTC素子10を、図5に示すように、接続してもよい。つまり、発熱体7と温調回路3との間に接続した場合を示している。
前記セラミック系PTC素子の温度範囲は、−50℃〜300℃(高温用は500℃)であるが、この値以外であってもよい。又、設定温度は、設定されるシール温度に応じて設定していくことになり、例えばシール温度が、80〜130℃間に設定される場合には、このシール温度を超える温度に適宜設定し、その温度を有するポリマーPTC素子10を用いることになる。
【0028】
上記構成からなる薬剤分包装置100は、図2に示すように、ヒートシール装置1の上流側に於いて、薬剤分配装置200のホッパー21を介して、包装シート300の上方開口部320から薬剤が挿入される。薬剤挿入後、包装シート300は、搬送用ローラ40によって1分包長さだけ下流側へ送られる。そして、発熱体7をシール温度に昇温させた状態で、ヒータ台5及びヒータ受台6にて包装シート300を挟圧加熱することにより、包装シート300の幅方向及び長手方向がヒートシールされる。これによって、包装シート300に、仕切シール壁330と、この仕切シール壁330に直交し且つ上下流側に延びる2方向の閉塞シール壁340,340とが一時に形成される。薬剤挿入及びシール壁の形成を順次繰り返すことにより、薬剤の分包された包装体を連続的に製造することができる。前記シート長手方向で対向位置する一対の仕切シール壁330,330と閉塞シール壁340とでヒートシール部を構成し、このヒートシール部によって収容物を収容するために区画した包装部を形成することができるようにしている。
【0029】
上記ヒートシール装置1は、1つのヒータ台5に対して1本の発熱体7を設けているので、1系統の制御回路でこの発熱体7を発熱制御することができる。この発熱体7は、ヒータ台5の略T字状のシール部全体を通るように配設されているので、1系統の制御回路で(シール温度などの所定温度となるように)発熱体7を制御するだけで、シール斑を生じることなく包装シート300を一時に3方向にヒートシールすることができる。
【0030】
また、長期間ヒートシールを行うと、経時的に発熱体7の表面(シート加熱面)に、熱溶着性樹脂の一部などの熱溶着性シート300の一部が付着し堆積する。このようにシート屑が付着したままでヒートシールを行うと、シール不良を起こしたり、得られる包装体が汚れたりする。このような場合には、発熱体7を炭化温度に昇温させると、加熱面に付着したシート屑を炭化させることができる。その後、通電を止め、発熱体7を室温まで冷ませば、炭化したシート屑は、簡単に拭き取り除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ヒートシール装置が組み込まれた薬剤分包装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示すヒートシール装置周辺の概略構成を拡大した斜視図である。
【図3】(a)は図1に示すヒートシール装置のヒータ台を内面側から見た概略構成を示す正面図、(b)は同ヒータ台を上面側から見た概略の平面図である。
【図4】ヒートシール装置にポリマーPTC素子を接続した概略を示すブロック図である。
【図5】図4のポリマーPTC素子の接続箇所を変更したブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
1…ヒートシール装置、2…温度検出回路、3…温度調節回路(温調回路)、4…電源部、5…ヒータ台、6…ヒータ受台、7…発熱体、8…断熱層、9…温度センサ、10…PTCサーミスタ(ポリマーPTC素子)、11…電源回路、12…プラグ、51…幅シール部、52…第1シール部、53…第2シール部、71…発熱部、72…端子部、85,86…湾曲部、100…薬剤分包装置、110…反転部、200…薬剤分配装置、300…熱溶着性シート(包装シート)、320…包装体の上方開口部、400…薬剤供給装置、711…第1水平部、712…第2水平部、713…U字部、714…垂直部、716…反転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ台と、該ヒータ台に対向して設けられたヒータ受台とが設けられ、熱溶着性シートに通電によって加熱される発熱体が設けられ、前記ヒータ台とヒータ受台とで熱溶着性シートを挟圧加熱することで熱溶融性シートどうしを熱溶させてヒートシール部を設けて、該ヒートシールによって収容物を収容するために区画した包装部を形成するようにしたヒートシール装置であって、
前記発熱体とこれに電力を供給するための電源部とが接続され、該発熱体と電源部との間に、設定温度以上で抵抗値が急激に上昇するPTCサーミスタを備えさせたことを特徴とするヒートシール装置。
【請求項2】
前記PTCサーミスタが、設定温度に達してから設定時間後に前記発熱体と電源部との接続を遮断状態とするものでなる請求項1に記載のヒートシール装置。
【請求項3】
前記発熱体と電源部との間に温度調節回路を備えさせ、該温度調節回路と電源部との間に前記PTCサーミスタを配置してなる請求項1または2に記載のヒートシール装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のヒートシール装置が備えられ、該ヒートシール装置によって熱溶融性シートを個別に区画された薬剤の包装体とするように構成されたことを特徴とする薬剤分包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−326601(P2007−326601A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158520(P2006−158520)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】