説明

ヒートポンプ温水暖房システム

【課題】流量低下による室内放熱器の放熱量不足を招くことなく、ヒートポンプサイクルの効率向上を実現することができるヒートポンプ温水暖房システムを得ること。
【解決手段】ヒートポンプ温水暖房システムは、ヒートポンプサイクル11の冷媒と水熱媒とを冷媒−水熱交換器4を介して熱交換させ、水熱媒を室内放熱器22に搬送する循環ポンプ6と、この循環ポンプ6の揚程を制御する制御部9とを有するヒートポンプ熱源機21と、このヒートポンプ熱源機21からの水熱媒により暖房を行う室内放熱器22と、水熱媒の往き水温と戻り水温との差である往き戻り水温差を検出する往き戻り水温検出部(往き水温検知部7及び戻り水温検知部8)を備え、制御部9は、往き戻り水温差が所定の範囲内となるように循環ポンプ6の揚程を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルの冷媒と水熱媒とを熱交換器を介して熱交換させ、この水熱媒を室内放熱器に搬送し暖房を行うヒートポンプ温水暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプサイクルにより採熱した熱で、暖房に使う水熱媒を生成し、室内放熱器に送水して暖房を行うヒートポンプ温水暖房システムとも称される暖房システムにおいては、室内放熱器に水熱媒を搬送する部として、一般に交流電源で駆動する循環ポンプを用いる。この循環ポンプは、従来、運転する室内放熱器の台数や室内暖房負荷の大小に関わらず、常に一定の揚程にて運転するものが一般的であった。
【0003】
上記のような暖房システムにおいては、室内暖房負荷が最大の場合に必要な放熱量を確保できるような流量が設定されるため、高温の水熱媒生成時に必要以上の流量が流れると、戻り水温が高温となり、ヒートポンプサイクルの冷媒圧力が上昇し、ヒートポンプサイクルの寿命低下、最悪の場合は破損に至る。又、室内暖房負荷が小さい場合、室内放熱器の放熱量が低下することにより、戻り水温が上昇し、凝縮温度が上昇することによりヒートポンプサイクルの効率が悪化する。又、室内暖房負荷が小さい場合、必要以上に流量を流すことにより、無駄に循環ポンプでエネルギーを消費するという課題があり、運転状況に応じて循環ポンプの回転数を制御し、適正な凝縮温度、適正な水温差を確保し、冷媒圧力の高圧化を抑制する必要があった。
【0004】
循環ポンプの回転数を制御し、流量を可変する技術として、例えば特許文献1に開示された技術がある。この技術では、室内放熱器の放熱負荷の大きさで変動する戻り水温が所定温度となるように循環ポンプの回転数を制御し、排熱回収の最適化を図っている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−318007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に示される技術は、室内放熱器の放熱負荷の大きさで変動する戻り水温が所定温度となるように循環ポンプの回転数を制御するものであって、ヒートポンプ温水暖房システムへの適用にあたっては、ヒートポンプサイクルの冷媒圧力の高圧化を抑制し、冷媒圧力が所定以下となるようにするための制御技術が必要である。又、ヒートポンプサイクルの効率化に着目した場合も、生成する水熱媒の温度が一定の温度の場合は、上記技術のように戻り水温が所定温度となるように循環ポンプの回転数を制御すれば、高効率化が可能となるが、生成する水熱媒の温度を室内暖房負荷に応じて自動的に可変する暖房システムや室内コントローラで任意に設定が可能であるシステムにおいては、生成する水熱媒の温度に関わらず、所定の戻り水温となるように循環ポンプ回転数を制御すると、例えば、目標とする戻り水温が低すぎると循環ポンプの回転数を必要以上に下げる必要があり、その結果、室内放熱器への水熱媒循環量が低下し、必要な放熱量を確保できない。また、目標とする戻り水温が高すぎるとヒートポンプサイクルの効率が悪化する。又、無駄に循環ポンプでエネルギーを消費するという問題があり、上記技術ではヒートポンプサイクルの冷媒圧力の高圧化抑制、ヒートポンプ温水暖房システムの性能の向上を十分なものとすることが困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、流量低下による室内放熱器の放熱量不足を招くことなく、ヒートポンプサイクルの効率向上を実現することができるヒートポンプ温水暖房システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために本発明のヒートポンプ温水暖房システムは、ヒートポンプサイクルの冷媒と水熱媒とを熱交換器を介して熱交換させ、水熱媒を室内放熱器に搬送する循環ポンプと、この循環ポンプの揚程を制御する制御部とを有する熱源機と、熱源機に接続され熱源機から搬送される水熱媒により暖房を行う室内放熱器とを備えたヒートポンプ温水暖房システムにおいて、熱源機から室内放熱器に向かう水熱媒の温度(往き水温)と、室内放熱器から熱源機に戻る水熱媒の温度(戻り水温)との差である往き戻り水温差を検出する往き戻り水温検出部を備え、制御部は、往き戻り水温差が所定の範囲内となるように、循環ポンプの揚程を制御することを特徴とする。
【0009】
また、制御部は、往き戻り水温差の減少に伴い、循環ポンプの揚程を下げ、往き戻り水温差の増大に伴い、循環ポンプの揚程を上げることを特徴とする。つまり、往き戻り水温差が往き戻り水温差下限未満である場合、循環ポンプの揚程を下げ、往き戻り水温差が往き戻り水温差上限以上である場合、循環ポンプの揚程を上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
往き戻り温度差がある一定の範囲内の温度となるように循環ポンプの揚程を制御することにより、流量低下による室内放熱器の放熱量不足を招くことなく、ヒートポンプサイクルの効率向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるヒートポンプ温水暖房システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかるヒートポンプ温水暖房システムの実施の形態1のシステム構成図である。図1において、本実施の形態のヒートポンプ温水暖房システムは、暖房に使う水熱媒を生成するヒートポンプ熱源機21と、ヒートポンプ熱源機21から供給される水熱媒により暖房運転を行う室内放熱器22とを含んで構成されている。ヒートポンプ熱源機21は、ヒートポンプサイクルにより採熱した熱で暖房に使う水熱媒を生成する。ヒートポンプ熱源機21は、水熱媒を貯留するバッファタンク5と、バッファタンク5の水熱媒を循環させる送水手段としての循環ポンプ6と、水熱媒を冷媒−水熱交換器4を介して加熱するヒートポンプサイクル11とから構成されている。
【0013】
ヒートポンプサイクル11は、室外空気から熱を採熱する熱源側熱交換器2と、ヒートポンプサイクル11内を循環し熱を搬送する冷媒を圧縮する圧縮機3と、冷媒の流量を調整する冷媒流量調節弁10と、冷媒と水熱媒の熱交換をする冷媒−水熱交換器4の一次流路とで構成された熱媒循環閉路である。ヒートポンプサイクル11の冷媒と室内放熱器循環サイクルの水熱媒とは相互に独立し、混じり合うことはないが冷媒−水熱交換器4により熱的には接続している。上記構成のヒートポンプ熱源機21は、単一のケーシングに収められ、室外に設置される。
【0014】
バッファタンク5には、往き側接続口5aと、戻り側接続口5bが設けられていて、往き側接続口5aは、循環ポンプ6の吸入側に配管接続され、戻り側接続口5bは、ヒートポンプ熱源機21から供給される水熱媒により暖房運転を行う室内放熱器22からの戻り側配管が接続されている。循環ポンプ6の吐出側には採熱用の冷媒−水熱交換器4の二次流路の入口側(戻り配管側接続口)4aが配管接続され、冷媒−水熱交換器4の出口側(往き配管側接続口)4bには室内放熱器22への往き側配管が接続される。室内放熱器22への往き側配管には、冷媒−水熱交換器4の出口の水熱媒温度を検知する往き水温検知部7が設けられている。また、室内放熱器22からの戻り側配管には、室内放熱器22からの戻り水温を検知する戻り水温検知部8が設けられている。この往き水温検知部7と戻り水温検知部8とは、ヒートポンプ熱源機21から室内放熱器22に向かう水熱媒の温度(往き水温)と、室内放熱器22からヒートポンプ熱源機21に戻る水熱媒の温度(戻り水温)との差である往き戻り水温差を検出する往き戻り水温検出部を構成している。
【0015】
制御部9は、マイコンを主体として構成され循環ポンプ6や圧縮機3及び室外空気の熱を採熱する熱源側送風ファン1等を制御する。循環ポンプ6はインペラを有し、このインペラを回転させることにより循環回路内の水熱媒を強制循環させ、室内放熱器22に水熱媒を循環させる。本実施の形態においては、循環ポンプ6は、制御部9によってPWM制御されるモータを備え速度指令電圧によりインペラの回転数が任意に可変できる直流電源で駆動するポンプが用いられる。
【0016】
ヒートポンプ熱源機21が室外に設置されているのに対して、室内には1機または複数機の室内放熱器22とコントローラ23が設けられている。室内放熱器22は、ヒートポンプ熱源機21から供給される水熱媒により暖房運転を行う。室内放熱器22は、例えば床下に設置され、輻射暖房を行う床暖房パネル、室内壁面に設置され輻射暖房を行うパネルヒーター、室内空気循環用の送風機と室内空気と水熱媒をする熱交換器を備え、強制対流により暖房を行うファンコンベクターなどで構成される。
【0017】
コントローラ23には、室温を検知する室温検知手段(図示せず)と、目標とする室温を設定する室温設定手段(図示せず)と、水熱媒の温度を設定する水熱媒温度設定手段(図示せず)とが設けられている。水熱媒温度設定手段は、任意の水温で固定して運転する水温固定運転と、設定室温と現在室温から推定される暖房負荷に応じて、暖房負荷が高い場合は高い水温で運転し、暖房負荷が小さい場合は低い水温で運転するように自動的に水温を可変する水温自動運転の切り替え手段を構成している。
【0018】
制御部9は、室内に設置されたコントローラ23と双方向の通信が可能となるように設置されており、コントローラ23から設定室温や現在室温や設定水温情報や冷媒−水熱交換器4の出口の水熱媒温度を検知する往き水温検知部7や室内放熱器22からの戻り水温を検知する戻り水温検知部8の出力が、ヒートポンプ熱源機21の循環ポンプ6や圧縮機3及び熱源側送風ファン1等を制御するための制御情報として取り込まれる。
【0019】
次にヒートポンプ暖房システムの動作について説明する。図2は本実施の形態のヒートポンプ温水暖房システムの制御動作を示すフローチャートである。図2において、まず、ステップS1にて、室内放熱器22のコントローラ23のいずれかが運転開始操作されると、コントローラ23から、ヒートポンプ熱源機21の制御部9に運転開始情報、設定室温、現在室温、設定水温情報(水温固定運転の場合はコントローラ23で設定された任意の水温、水温自動運転の場合は水温自動運転が選択されているという情報)が伝達される。
【0020】
次に、ステップS2において、制御部9は循環ポンプ6が制御部9に予め記憶された初期回転数で運転するように速度指令電圧を与えるとともに往き水温が目標の水温となるようにヒートポンプサイクルを制御する。目標とする水温は水温固定の場合はコントローラ23で設定された水温、水温自動の場合は設定室温、現在室温情報から演算される水温である。なお、初期回転数は一定ではなく目標とする往き水温に応じて可変しても良い。
【0021】
次に、ステップS3にて、往き水温検知部7で往き水温を検知する。次いで、ステップS4にて、戻り水温検知部8で戻り水温を検知するとともに、検知した戻り水温を制御部9のマイコンに記憶する。
【0022】
次に、ステップS5にて、往き戻り水温差(ΔTa)(往き水温−戻り水温)が往き戻り水温差下限4℃(ΔTaL)以上であるか否かを判断する。そして、往き戻り水温差ΔTaが往き戻り水温差下限4℃(ΔTaL)未満である場合はステップS8に進み、循環ポンプ6の回転数を300rpm下げる処理、すなわち、循環ポンプ6の揚程を下げる処理を行い、その後、ステップS10に進み、3分は現状の回転数を維持し(ステップS7)、3分経過後、ステップS3に戻る。ここで、往き戻り水温差下限4℃(ΔTaL)はヒートポンプの効率を向上するために最低限必要な温度差である。
【0023】
一方、ステップS5の判断にて、往き戻り水温差(ΔTa)が往き戻り水温差下限4℃(ΔTaL)以上である場合、ステップS6に進み、往き戻り水温差(ΔTa)が往き戻り水温差上限20℃(ΔTaH)以下であるか判断する。そして、往き戻り水温差(ΔTa)が往き戻り水温差上限20℃(ΔTaH)を超える場合、ステップS9に進み、循環ポンプ6の回転数を300rpm上げる処理、すなわち、循環ポンプ6の揚程を上げる処理を行い、その後、ステップS10に進み、3分は現状の回転数を維持し(ステップS7)、3分経過後、ステップS3に戻る。
【0024】
また、ステップS6の判断にて、往き戻り水温差(ΔTa)が往き戻り水温差上限20℃(ΔTaH)以下である場合、ステップS7に進み、循環ポンプ6の現状回転数を維持し、ステップS10に進み、3分経過後、ステップS3に戻る。ここで、往き戻り水温差上限20℃(ΔTaH)は流量低下により室内放熱器22が放熱量不足とならないために許容できる最大の温度差である。
【0025】
なお、往き戻り水温差下限4℃(ΔTaL)と往き戻り水温差上限20℃(ΔTaH)は、室内放熱器22の放熱特性により定まるもので、上記の値は様々な種類の室内放熱器22に対応できるように設定したものであるが、使用する室内放熱器22の種類が制限される場合は、室内放熱器22の放熱特性に合せて最適な値を設定しても良い。
【0026】
また、ステップS7における循環ポンプ6の回転数を維持する時間は3分、ステップS8及びステップS9における回転数可変量は300rpmとしたが、循環ポンプ6の回転数可変量と現状回転数を維持する時間は循環ポンプ6の回転数可変量を大きくすれば、ヒートポンプサイクル及び戻り水温の安定に時間がかかるため、現状回転数を維持する時間を長くし、循環ポンプ6の回転数可変量を小さくすれば、ヒートポンプサイクル及び戻り水温の安定に時間がかからないため、現状回転数を維持する時間を短くしても良い。
【0027】
以上のように、本実施の形態のヒートポンプ温水暖房システムにおいては、制御部9が、往き戻り温度差がある一定の範囲内の温度となるように循環ポンプ6の回転数を制御することにより、流量低下による室内放熱器22の放熱量不足を招くことなく、ヒートポンプサイクルの効率向上を実現することができる。
【0028】
実施の形態2.
本実施の形態はヒートポンプ温水暖房システムの構成、制御フローは実施の形態1と同一であるが、実施の形態1における往き戻り水温差下限(ΔTaL)と往き戻り水温差上限(ΔTaH)を往き水温に応じて設定するようにしたものである。図3に往き水温と適正水温差の関係を示す。図3に示されるように、適正水温差は往き水温に比例する。そして、適正水温差に対して、往き戻り水温差下限(ΔTaL)は適正水温差−1℃、往き戻り水温差上限(ΔTaH)は適正水温差+1℃の値で設定される。
【0029】
このように往き戻り水温差下限(ΔTaL)と往き戻り水温差上限(ΔTaH)との間に2℃の温度幅を持たせることによりヒートポンプ温水熱源機の制御収束性を安定させることが可能となる。
【0030】
なお、往き戻り水温差下限(ΔTaL)と往き戻り水温差上限(ΔTaH)の温度差は2℃としたが、往き戻り水温差下限(ΔTaL)と往き戻り水温差上限(ΔTaH)の温度差は大きいほうがヒートポンプ温水熱源機の制御収束性が高まるため、ヒートポンプ温水熱源機の制御収束性が遅い場合は往き戻り水温差下限(ΔTaL)と往き戻り水温差上限(ΔTaH)の温度差を大きく、逆に、ヒートポンプ温水熱源機の制御収束性が早い場合は往き戻り水温差下限(ΔTaL)と往き戻り水温差上限(ΔTaH)の温度差を小さくしても良い。
【0031】
また、適正水温差は、室内放熱器22の放熱特性から求められるものであり、室内放熱器22に定格流量を流した場合の水温差である。即ち、往き水温が高い場合は室内放熱器22での放熱量が大きいため適正水温差は大きく、往き水温が低い場合は室内放熱器22での放熱量が小さいため適正水温差は小さくなる。床暖房パネルの場合、図3に示すように、往き水温60℃の場合、適正水温差は10℃、往き水温40℃の場合、適正水温差は6℃とする。
【0032】
なお、制御部9は任意の適正水温差を設定することが可能となるように構成されており、放熱特性が未知の室内放熱器22と組合せ使用する場合は、任意の適正水温差を設定することにより、様々な室内放熱器22との組合せが可能となるようになっている。
【0033】
なお、高温水生成時は必要以上の流量が流れると、戻り水温が高温となり、冷媒凝縮温度が上昇し、冷媒が高圧となることから、戻り水温を下げ、適正な水温差を確保する必要がある。即ち、ヒートポンプサイクルに繰り返し加わる冷媒圧力に対して、冷媒回路の耐圧寿命が満足する水温差を確保する必要がある。上記の往き水温60℃時の適正水温差10℃は冷媒回路の耐圧寿命を満足する運転が可能となる水温差である。
【0034】
以上のように、往き水温に応じて目標とする行き戻り温度差を設定するとともに、目標とする往き戻り温度差となるように循環ポンプ6の回転数を制御することにより、室内放熱器22の放熱特性に応じて最適な往き戻り温度差を確保することが可能となる。その結果、ヒートポンプサイクルの効率を実施の形態1以上に向上することができる。また、ヒートポンプサイクルの冷媒高圧化抑制による機器寿命の長期化が実現できる。
【0035】
実施の形態3.
本実施の形態はヒートポンプ温水暖房システムの構成、制御フローは実施の形態1と同一であるが、実施の形態1の制御フローのステップS8とステップS9における回転数可変量を制御部9に記憶した前時刻戻り水温と現在の戻り水温の差である戻り水温変化量(ΔTb)(前時刻戻り水温−現在戻り水温)により可変するようにしたものである。
【0036】
本実施の形態の回転数可変量は、図4に示すように、循環ポンプ6の回転数を下げる処理を行う場合は、ΔTbが小さいほど回転数変化量を大きくする。室内放熱器22の運転台数が増加した場合など、前時刻戻り水温に対して現在戻り水温が2℃を超えて下がった場合(ΔTb>2)の循環ポンプ6の回転数可変量は−100rpmとし、室内放熱器22の運転台数に変化がない場合など前時刻戻り水温に対して現在戻り水温の変化が2℃以内の場合(2≧ΔTb≧−2)の循環ポンプ6の回転数可変量は−300rpmとし、室内放熱器22の運転台数が減少した場合など、前時刻戻り水温に対して現在戻り水温が2℃を超えて上がった場合(ΔTb<−2)の循環ポンプ6の回転数可変量は−500rpmとする。
【0037】
逆に、循環ポンプ6の回転数を上げる処理を行う場合、戻り水温変化量(ΔTb)が大きいほど回転数変化量を大きくする。室内放熱器22の運転台数が増加した場合など、前時刻戻り水温に対して現在戻り水温が2℃を超えて下がった場合(ΔTb>2)の循環ポンプ6の回転数可変量は+500rpmとし、室内放熱器22の運転台数に変化がない場合など前時刻戻り水温に対して現在戻り水温の変化が2℃以内の場合(2≧ΔTb≧−2)の循環ポンプ6の回転数可変量は+300rpmとし、室内放熱器22の運転台数が減少した場合など、前時刻戻り水温に対して現在戻り水温が2℃を超えて上がった場合(ΔTb<−2)の循環ポンプ6の回転数可変量は+100rpmとする。
【0038】
上記の回転数可変量の一例を示したが、回転数可変量は循環ポンプ6の回転数と流量特性によって最適な値を選択すれば良い。
【0039】
上記のように、本実施の形態のヒートポンプ温水暖房システムにおいては、回転数可変量を、制御部9に記憶した前時刻戻り水温と現在の戻り水温の差である戻り水温変化量(ΔTb)により求めることにより、室内放熱器22の運転台数変更などによる急激な負荷変動に対する追従性を高めている。
【0040】
実施の形態4.
本実施の形態のヒートポンプ温水暖房システムの構成は実施の形態1と同一であるが、実施の形態1の制御フローのステップS5において、往き戻り水温差(ΔTa)が往き戻り水温差下限(ΔTaL)以上である場合にステップS11の目標往き水温が確保されているか(目標往き水温に達しているか)確認する処理を追加したものである。
【0041】
ステップS11において目標往き水温が確保されていない場合、ステップS8に進み、循環ポンプ6の回転数を300rpm下げる処理を行い、その後、ステップS10に進み、3分経過後、ステップS3に戻る。
【0042】
ステップS11において目標往き水温が確保されている場合はステップS6に進み、以降は実施の形態1と同一の処理を行う。
【0043】
以上のように、本実施の形態のヒートポンプ温水暖房システムにおいては、目標往き水温が確保されていない場合、循環ポンプ6の回転数を下げる処理を行うことにより、ヒートポンプ温水暖房システムの立ち上り時や室内放熱器22の運転台数が増加により流量が増加し、往き水温が低下した場合などに往き水温の立ち上げを早めることが可能となる。
【0044】
実施の形態5.
本実施の形態のヒートポンプ温水暖房システムの構成は実施の形態1と同一であるが、実施の形態4の制御フローのステップS11において、目標往き水温が確保されていない場合にステップS12の除霜運転中か確認する処理を追加したものである。
【0045】
ステップS12において除霜運転中であった場合はステップS7に進み、循環ポンプ6の回転数は現状を維持し、以降は実施の形態4と同一の処理を行う。
【0046】
ステップS12において除霜運転中ではない場合はステップS8に進み、循環ポンプ6の回転数を300rpm下げる処理を行い、以降は実施の形態4と同一の処理を行う。
【0047】
除霜運転は熱源側熱交換器2に付着した霜により暖房能力が低下することを防ぐために行うものであって、ヒートポンプサイクルを冷房運転に切り替え、水熱媒の熱により霜を溶かすものである。よって除霜運転を行うことにより水熱媒の温度は一時的に低下する。
【0048】
除霜運転中かどうかの判断は除霜運転が終了していても、目標とする往き水温まで水温が上昇するまでの時間は現状回転数を維持することが望ましいため、除霜運転終了後5分間は除霜運転中と判断する。
【0049】
以上のように、本実施の形態のヒートポンプ温水暖房システムにおいては、除霜運転中は、循環ポンプ6の回転数を変化させずに維持することにより、除霜運転による水温変化による不必要な回転数変更を排除することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明は、ヒートポンプサイクルの冷媒と水熱媒とを熱交換器を介して熱交換させ水熱媒を室内放熱器に搬送する循環ポンプを有する熱源機を備えたヒートポンプ温水暖房システムに有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明にかかるヒートポンプ温水暖房システムの実施の形態1のシステム構成図である。
【図2】実施の形態1の制御動作を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態2の往き水温と適正水温の関係を示す図である。
【図4】実施の形態3の循環ポンプの回転数可変量を示す図である。
【図5】実施の形態4の制御動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態5の制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 熱源側送風ファン
2 熱源側熱交換器
3 圧縮機
4 冷媒−水熱交換機
4a 入口側(戻り配管側接続口)
4b 出口側(往き配管側接続口)
5 バッファタンク
5a 往き側接続口
5b 戻り側接続口
6 循環ポンプ
7 往き水温検知部(往き戻り水温検出部)
8 戻り水温検知部(往き戻り水温検出部)
9 制御部
10 冷媒流量調節弁
11 ヒートポンプサイクル
21 ヒートポンプ熱源機(熱源機)
22 室内放熱器
23 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプサイクルの冷媒と水熱媒とを熱交換器を介して熱交換させる熱源機と、前記熱源機に接続され該熱源機から搬送される前記水熱媒により暖房を行う室内放熱器とを備えたヒートポンプ温水暖房システムにおいて、
前記水熱媒を前記熱交換器と前記室内放熱器との間で循環させる循環ポンプと、
前記熱源機から前記室内放熱器に向かう前記水熱媒の温度(往き水温)と前記室内放熱器から前記熱源機に戻る前記水熱媒の温度(戻り水温)との差である往き戻り水温差を検出する往き戻り水温検出部と、
前記往き戻り水温検出部の検出値に応じて、前記往き戻り水温差が所定の範囲内となるように、前記循環ポンプの揚程を制御する制御部と
を備えたことを特徴とするヒートポンプ温水暖房システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記往き戻り水温差の減少に伴い、前記循環ポンプの揚程を下げ、前記往き戻り水温差の増大に伴い、前記循環ポンプの揚程を上げる
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ温水暖房システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記往き戻り水温差が往き戻り水温差下限未満であるとき、前記循環ポンプの揚程を下げ、往き戻り水温差が往き戻り水温差上限以上であるとき、前記循環ポンプの揚程を上げる
ことを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ温水暖房システム。
【請求項4】
前記制御部は、水熱媒温度に応じて、目標とする往き戻り温度差を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ温水暖房システム。
【請求項5】
前記制御部は、水熱媒温度に応じて、往き水温が高いとき、目標とする往き戻り水温差を大きくし、往き水温が低いとき、目標とする往き戻り水温差を小さくする
ことを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプ温水暖房システム。
【請求項6】
前記制御部は、往き戻り水温差下限及び往き戻り水温差上限を、往き水温に比例する適正水温差に基づいて変更し、該適正水温差から所定値減算した値を前記往き戻り水温差下限とし、前記適正水温差に所定値加算した値を前記往き戻り水温差上限とする
ことを特徴とする請求項5に記載のヒートポンプ温水暖房システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記循環ポンプの回転数を下げる処理を行うときに、戻り水温変化量が小さいほど回転数変化量を大きくし、前記循環ポンプの回転数を上げる処理を行うときに、戻り水温変化量が大きいほど回転数変化量を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ温水暖房システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記水熱媒の温度が目標に達していない場合は前記循環ポンプの回転数を下げる
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ温水暖房システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記ヒートポンプサイクルが除霜運転中は、前記水熱媒の温度が目標に達していない場合でも前記循環ポンプの回転数を変化させない
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のヒートポンプ温水暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−287895(P2009−287895A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143387(P2008−143387)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】