説明

ビシクロ置換ピロールポリマーおよびその用途

【課題】イソインドールポリマーを与える、有機溶媒に対する溶解性が高い前駆体ポリマーを提供する。
【解決手段】特定のビシクロ置換ピロール(例えば、4,7−ジヒドロ−4,7−エタン−2H−イソインドール及びN−アルキル置換誘導体などに代表される)を、ニトリル系、エーテル系などの有機溶媒と電解質との存在下に電気化学的に重合するか、あるいは塩素系溶媒もしくは非プロトン系溶媒と無機系酸化剤類、有機金属塩類等の酸化剤類との存在下に酸化重合することにより得られる、有機溶媒に対する溶解性が高く、塗工、製膜等の作業性に優れ、かつ導電性に優れたイソインドールポリマーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビシクロ置換ピロールポリマーおよびその用途に関し、特に導電性高分子とし
て有用なビシクロ置換ピロールポリマーおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性高分子は帯電防止材料、電池用電極材料、表示素子等の電子材料として有
力視されていて、各種分野への応用が検討されてきている。
前記導電性高分子は高分子鎖が剛直であるため分子鎖間相互作用が強い。このため有機
溶媒に対する溶解性に乏しく、塗工、成膜等の作業性に問題があった。
また、前記導電性高分子の融点は通常その分解点より高いために、加熱により前記導電
性高分子を溶融させようとすると、溶融する前に分解することがあった。
このため、前記導電性高分子は一般的に成形性や加工性に乏しく、各種材料への応用が
制限されていた。
この様な導電性高分子の中でも近年イソインドールポリマーが着目されてきている。
このイソインドールポリマーは導電性高分子の一種であり、適切なドーパントと組み合
わせることにより優れた電気的特性を示すことが報告されている(特許文献1)。
しかしながらイソインドールポリマーそのものもやはり有機溶媒に対する溶解性に乏し
く、加熱による成形性、加工性も低いという特徴を持つ。
このため、イソインドールポリマーの持つ性能を十分に活かすことが難しいとの問題が
あった。
【特許文献1】特開昭62−270621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、有機溶媒に対する溶解性が高く、塗工、成膜等の作業性に優れたポリ
マーを提供することにある。
【0004】
また本発明の目的は、前記ポリマーを用いて、導電性に優れるイソインドールポリマー
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ビシクロ置換ピロールポリマー
が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]下記一般式(1)により示されるビシクロ置換ピロールポリマーを提供するもので
あり、
【0007】
【化1】


(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、Xは次の二価の
基を表す。
【0008】
【化2】


ここでR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、
炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜10
のアルコキシ基を表し、nは5〜500の数を表す。)
[2]上記[1]に記載のビシクロ置換ピロールポリマーを有機溶媒中に0.01〜50
重量%含有することを特徴とするビシクロ置換ピロールポリマー有機溶液を提供するもの
であり、
[3]下記一般式(2)
【0009】
【化3】


(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、Xは次の二価の
基を表す。
【0010】
【化4】


ここでR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、
炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜10
のアルコキシ基を表す。)により表されるビシクロ置換ピロールを、有機溶媒の存在下に
重合することを特徴とする一般式(1)
【0011】
【化5】


(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、Xは次の二価の
基を表す。
【0012】
【化6】


ここでR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、
炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜10
のアルコキシ基を表し、nは5〜500の数を表す。)に記載のビシクロ置換ピロールポ
リマーの製造方法を提供するものであり、
[4]上記[1]に記載のビシクロ置換ピロールポリマーにドーパントをドープさせてな
る導電性高分子を提供するものであり、
[5]前記ドーパントが、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、
六フッ化リン酸イオン、六フッ化アンチモン酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機カル
ボン酸イオンおよびアミド酸イオンからなるアニオン群より選ばれる少なくとも一つであ
ることを特徴とする上記[4]に記載の導電性高分子を提供するものであり、
[6]上記[4]または上記[5]のいずれかに記載の導電性高分子を0.01〜50重
量%含むことを特徴とする樹脂組成物を提供するものであり、
[7]上記[4]または上記[5]のいずれかに記載の導電性高分子を0.01〜20重
量%含む有機溶液からなることを特徴とする樹脂組成物を提供するものであり、
[8]上記[1]に記載のビシクロ置換ピロールポリマーに対し加熱及び/又は光照射す
ることを特徴とする、下記一般式(3)に記載のイソインドールポリマーの製造方法を提
供するものであり、
【0013】
【化7】


(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、nは5〜500
の数を表す。)
[9]請求項4に記載の導電性高分子に対し加熱及び/又は光照射することを特徴とする
、下記一般式(3)
【0014】
【化8】


(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5
〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、nは5〜500の
数を表す。)に記載のイソインドールポリマー、
を含む導電性高分子の製造方法を提供するものであり、
[10]上記[9]に記載の製造方法により得られた導電性高分子を0.01〜50重量
%含有することを特徴とする樹脂組成物を提供するものであり、
[11]上記[9]に記載の製造方法により得られた導電性高分子を、有機溶媒に対し、
0.01〜50重量%分散させてなることを特徴とする樹脂組成物を提供するものであり

[12]上記[6]、[7]、[10]または[11]のいずれかに記載の樹脂組成物か
らなる帯電防止用樹脂組成物を提供するものであり、
[13]上記[6]、[7]、[10]または[11]のいずれかに記載の樹脂組成物か
らなる導電性コーティング用樹脂組成物を提供するものであり、
[14]上記[13]に記載の導電性コーティング用樹脂組成物を基板上に付着させる工
程と、
前記導電性コーティング用樹脂組成物が付着した基板に対し、加熱及び/又は光照射を
行う工程と、
を有することを特徴とする導電性薄膜の製造方法を提供するものであり、
[15]上記[4]に記載の導電性高分子、上記[5]に記載の導電性高分子または上記
[9]に記載の製造方法により得られた導電性高分子のいずれかを含む固体電解コンデン
サを提供するものであり、
[16]上記[13]に記載の導電性コーティング用樹脂組成物を誘電体に付着させる工
程と、
前記導電性コーティング用樹脂組成物が付着した誘電体に対し、加熱及び/又は光照射
を行う工程と、
を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法を提供するものであり、
[17]上記[4]に記載の導電性高分子、上記[5]に記載の導電性高分子または上記
[9]に記載の製造方法により得られた導電性高分子のいずれかを含む帯電防止剤を提供
するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機溶媒に対する溶解性が高く、塗工、成膜等の作業性に優れたビシ
クロ置換ピロールポリマーを提供することができる。
また本発明によれば、前記ビシクロ置換ピロールポリマーを用いて、導電性に優れるイ
ソインドールポリマーを提供することができる。
さらにこれらのポリマーは、各種導電性材料、帯電防止材料、固体電解コンデンサ等の
用途に有用に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず本発明のビシクロ置換ピロールポリマーについて説明する。
本発明のビシクロ置換ピロールポリマーは下記一般式(1)により表されるものである

【0017】
【化9】

【0018】
ここでR〜Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロ
アルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表すものである。
【0019】
またR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基
、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または炭素数
6〜20のアリール基を表すものである。
【0020】
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基
、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等
の直鎖状または分岐状のものが挙げられる。
これらの中でもメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖状または分岐状の
ものが好ましい。
【0021】
前記炭素数1〜10のフッ化アルキル基としては、例えば、前記アルキル基の水素原子
をフッ素原子により置換したものが挙げられるが、具体的には、トリフルオロメチル基、
2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4
−トリフルオロブチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、6,6,6−トリフル
オロヘキシル基、8,8,8−トリフルオロオクチル基、2−メチル−3,3,3−トリ
フルオロプロピル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブ
チル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、2−トリフルオロメチル−
ペルフルオロプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも、トリフルオロメチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチ
ル基、2−トリフルオロメチル−ペルフルオロプロピル基等が好ましい。
【0022】
前記炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロ
ヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等を挙げることができ
る。
これらの中でも、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシ
ル基等が好ましい。
【0023】
前記炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、
ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、
ビフェニル基等を挙げることができる。
これらの中でもフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基が好ましい。
【0024】
また、上記一般式(1)におけるXは次の二価の基により表されるものである。
【0025】
【化10】

【0026】
ここでR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、
炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜10
のアルコキシ基を表すものである。
【0027】
前記炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基および炭素数6
〜20のアリール基の具体例については、それぞれ先のR〜Rについて説明した場合
と同様である。
【0028】
また前記炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、
n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ
基、tert−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソ
ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、シクロペ
ンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、2−メチルペン
チルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基等を挙げるこ
とができる。
これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
【0029】
上記一般式(1)で表されるビシクロ置換ピロールポリマーのnは繰り返し単位を表す
ものであるが、このnは5〜500の範囲であることが好ましい。
【0030】
次に本発明のビシクロ置換ピロールポリマーの製造方法について説明する。
本発明のビシクロ置換ピロールポリマーは、下記一般式(2)
【0031】
【化11】


により表されるビシクロ置換ピロールを有機溶媒の存在下に重合を行うことにより得る
ことができる。
【0032】
ここで上記一般式(2)におけるR〜RおよびXは、先に説明した一般式(1)の
場合と全く同様である。
【0033】
上記一般式(2)により表されるビシクロ置換ピロールの具体例としては、例えば、一
般式(4)〜(9)等により表される一種もしくは二種以上を挙げることができる。
【0034】
【化12】

【0035】
前記ビシクロ置換ピロールは、一般式(4)により表される4,7−ジヒドロ−4,7
−エタノ−2H−イソインドールであればさらに好ましい。
【0036】
前記ビシクロ置換ピロールを有機溶媒の存在下に重合を行う方法としては、例えば、前
記ビシクロ置換ピロールを有機溶媒と電解質との存在下に電気化学的に重合する方法、前
記ビシクロ置換ピロールを有機溶媒と酸化剤との存在下に酸化重合する方法等を挙げるこ
とができる。
【0037】
前記有機溶媒は重合方法や使用する前記ビシクロ置換ピロールに応じて適宜選択するこ
とができるが、例えば、前記電気化学的に重合する方法の場合には、アセトニトリル、ベ
ンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン
等のエーテル系溶媒、スルホラン等の非プロトン性溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロ
ピレンカーボネート等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブ
チルケトン等のケトン系溶媒、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコー
ル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系
溶媒等を挙げることができる。
【0038】
また前記酸化重合する方法の場合には、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素、
ジクロルエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン等の塩素系溶
媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン等の非
プロトン性溶媒等を挙げることができる。
【0039】
これらの溶媒は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0040】
また本発明に使用する電解質としては、例えば、テトラエチルアンモニウムクロリド、
テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチル
アンモニウムブロミド、テトラフェニルアンモニウムクロリド、テトラフェニルアンモニ
ウムブロミド、テトラブチルアンモニウムパークロレート等のアンモニウム塩、テトラフ
ェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩
、トリエチルアミン−p−トルエンスルホン酸塩、トリブチルアミン−p−トルエンスル
ホン酸塩のスルホン酸塩、LiBF、LiPF等のリチウム塩等を挙げることができ
る。
これらの電解質は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0041】
また本発明に使用する酸化剤としては、例えば、臭素、ヨウ素等のハロゲン類、酸化鉛
、塩化鉄等の無機系酸化剤類、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキ
ノン、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、テトラクロロ−1,2−ベンゾキノン等の
ベンゾキノン類、p−トルエンスルホン酸−鉄(III)塩等の有機金属塩類等が挙げられ
る。
これらの酸化剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0042】
前記酸化剤に加えて、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸
、p−ベンゼンスルホン酸等の有機酸等の酸性物質を使用することができる。
これらの酸性物質は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0043】
また前記ビシクロ置換ピロールを有機溶媒の存在下に重合を行う際の温度は通常−80
〜200℃の範囲である。
また前記重合を行う時間は、通常15分間〜7日間の範囲である。
【0044】
次に前記電気化学的に重合する方法を具体的に示すと、例えば、前記ビシクロ置換ピロ
ールを有機溶媒に溶解させ電解質を添加した後、これらの溶液に電極を通じて電圧を印加
する方法が挙げられる。
本発明に使用する電解質の量は、前記ビシクロ置換ピロールに対して、通常0.1〜5
当量の範囲である。
次に白金、酸化インジウム錫ガラス等を電極として、0.1〜2Vの範囲の電圧
を印加することによりビシクロ置換ピロールポリマーを得ることができる。
反応系内は窒素、アルゴン等の不活性ガスにより十分置換した後、前記不活性ガスの雰
囲気下に反応を行うことが好ましい。
【0045】
また、前記酸化重合する方法を具体的に示すと、例えば、前記ビシクロ置換ピロールを
有機溶媒に溶解させ、酸化剤を添加する方法が挙げられる。
本発明に使用する酸化剤の量は通常前記ビシクロ置換ピロールに対して通常1.0〜1
.5当量の範囲である。
反応系内は窒素、アルゴン等の不活性ガスにより十分置換した後、前記不活性ガスの雰
囲気下に反応を行うことが好ましい。この反応によりビシクロ置換ピロールポリマーを得
ることができる。
【0046】
この様にして得られたビシクロ置換ピロールポリマーは有機溶媒に溶解させた有機溶液
として提供することができる。
【0047】
かかる有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族系
溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ジクロルメタン、クロロホルム
、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒
、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピ
レンカーボネート等のエステル系溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系
溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、プロピ
レングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の
グリコール系溶媒、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N
−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒等を挙げることができる。
前記有機溶媒は、エタノール、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドンであればさ
らに好ましい。
これらの有機溶媒は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0048】
前記ビシクロ置換ピロールポリマー有機溶液の濃度は、0.01〜50重量%の範囲で
あり、1〜20重量%の範囲であれば好ましい。
【0049】
次に前記ビシクロ置換ピロールは、例えば次の方法により合成することができる。
【0050】
【化13】


一般式(10)により表されるシクロヘキサジエン誘導体とtrans−1,2−ビス
(フェニルスルフォニル)エチレンとを反応させ、一般式(11)により表されるビスフ
ェニルスルフォニル化合物を得ることができる。
なお、R〜Rは、それぞれ一般式(1)のR〜Rの場合と同様である。
【0051】
【化14】


続いて前記ビスフェニルスルフォニル化合物とエチルイソシアノアセテートとを、t−
BuOK等の塩基の存在下に反応させることにより、一般式(12)で表されるエチルエ
ステル体を得ることができる。
【0052】
【化15】

続いて前記エチルエステル体に対して有機溶媒の存在下に水酸化ナトリウム等の塩基物
質を作用させることにより脱炭酸反応を行い、一般式(13)で表されるビシクロ置換ピ
ロールを合成することができる。
【0053】
【化16】


続いて前記ビシクロ置換ピロールに対し、塩基性物質の存在下に一般式R−Zにより
表される化合物を反応させることにより、一般式(2)で表されるビシクロ置換ピロール
を得ることができる。
ここでRは一般式(1)の場合と同様であり、Zはハロゲン原子を表す。
【0054】
このビシクロ置換ピロールを用いて、先に説明した製造方法によりビシクロ置換ピロー
ルポリマーを得ることができる。
【0055】
次に本発明に使用するドーパントについて説明する。
本発明に使用するドーパントとしては、例えば、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イ
オン、過塩素酸イオン、六フッ化リン酸イオン、六フッ化アンチモン酸イオン、有機スル
ホン酸イオン、有機カルボン酸イオンおよびアミド酸イオン等のアニオン群の一種もしく
は二種以上を挙げることができる。
【0056】
前記ビシクロ置換ピロールポリマーに前記ドーパントをドープすることにより導電性高
分子を得ることができる。
【0057】
前記ビシクロ置換ピロールポリマーに前記ドーパントをドープさせる方法としては、例
えば、前記ビシクロ置換ピロールポリマーに塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンガスを曝す
方法、
硫酸、硝酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸、有機スルホン酸、有
機カルボン酸、アミド酸等の一種もしくは二種以上を含む溶液に前記ビシクロ置換ピロー
ルポリマーを接触させる方法、
先に説明した電気化学的重合の際や酸化重合の際に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フ
ッ酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸、有機スル
ホン酸、有機カルボン酸、アミド酸等の一種もしくは二種以上を使用する方法等を挙げる
ことができる。
【0058】
これらの方法は一種もしくは二種以上を併用することができる。
【0059】
また電気化学的ドーピングについても先に説明した電気化学的重合による場合と同様に
実施することができる。
電気化学的ドーピングの方法については公知であり、特に限定はない。
電気化学的ドーピングの際に印加する電圧により、前記ビシクロ置換ピロールポリマー
にドープするドーパントの量を調整することができる。
また電気化学的ドーピングにより、前記ビシクロ置換ピロールポリマーにドープされた
ドーパントを脱ドープすることもできる。
【0060】
次に本発明のビシクロ置換ピロールポリマー、ドーパントによりドープされたビシクロ
置換ピロールポリマー等をフィルム形状に加工する方法について説明する。
まず前記ビシクロ置換ピロールポリマー、ドーパントによりドープされたビシクロ置換
ピロールポリマー等を有機溶媒に溶解させた有機溶液を準備しておき、この有機溶液を基
材に塗布する。
続いて前記有機溶媒を除去することによりビシクロ置換ピロールポリマー、ドーパント
によりドープされたビシクロ置換ピロールポリマー等をフィルムの形状として得ることが
できる。
【0061】
前記有機溶媒としては、先に説明した、前記ビシクロ置換ピロールポリマーを有機溶媒
に溶解させて有機溶液を得る場合と同様の有機溶媒を使用することができる。
【0062】
また、前記基材としては、例えば、ガラス等の無機基材、銅箔、アルミ箔等の金属基材
、ポリイミドフィルム等の有機基材等を挙げることができる。
【0063】
また前記基材に前記有機溶液を塗布する方法に限定はなく、例えば、ロールを用いて塗
布する方法、刷毛を用いて塗布する方法、前記有機溶液を散布して塗布する方法、スピン
コートにより塗布する方法等を挙げることができる。
これらの方法は一種もしくは二種以上を行うことができる。
【0064】
前記有機溶媒を除去する方法としては、例えば、前記有機溶液を塗布した後の基材を通
風オーブン、減圧オーブン等のオーブンにより加熱する方法、加熱プレスにより加熱する
方法、赤外線を照射する方法等が挙げられる。
これらの方法は一種もしくは二種以上を行うことができる。
【0065】
前記有機溶媒を除去する温度は、通常50〜150℃の範囲である。
前記有機溶媒を除去する時間は、通常、5分〜24時間、好ましくは30分〜5時間の
範囲である。
【0066】
上記の操作によりビシクロ置換ピロールポリマー、ドーパントによりドープされたビシ
クロ置換ピロールポリマー等を得ることができる。
【0067】
次に前記ビシクロ置換ピロールポリマーを用いてイソインドールポリマーを製造する方
法について説明する。
前記ビシクロ置換ピロールポリマーを加熱する方法、前記ビシクロ置換ピロールポリマ
ーに対し光を照射する方法等により、一般式(3)により表されるイソインドールポリマ
ーを得ることができる。
【0068】
【化17】


なお、R〜Rおよびnについては、先に説明した一般式(1)のビシクロ置換ピロ
ールポリマーの場合と同様である。
【0069】
上記方法は一種もしくは二種以上を行うことができる。
【0070】
前記加熱する方法としては、例えば、通風オーブン、減圧オーブン等のオーブンにより
加熱する方法、加熱プレスにより加熱する方法、赤外線を照射する方法等が挙げられる。
また前記光を照射する方法としては、例えば、水銀灯等の光源を使用して光を照射する
方法等が挙げられる。
【0071】
前記加熱する際の温度は、通常は150〜300℃の範囲である。前記温度は、200
〜260℃の範囲であれば好ましい。
前記加熱する際の時間は、通常、5分〜24時間、好ましくは30分〜5時間の範囲で
ある。
また前記光を照射する際の時間は、通常、5分〜24時間、好ましくは30分〜5時間
の範囲である。
前記光を照射する際の光源としては、例えば水銀ランプ等を挙げることができる。
【0072】
また、前記ビシクロ置換ピロールポリマーを有機溶媒に溶解させた有機溶液を準備して
おき、この有機溶液を基材に塗布したものに対して、前記ビシクロ置換ピロールポリマー
を単離することなく、前記加熱する方法、前記光を照射する方法等の一種もしくは二種以
上の方法を行うことにより前記イソインドールポリマーを得ることもできる。
【0073】
ドーパントによりドープされたイソインドールポリマーを製造する方法についても全く
同様である。
前記前記ビシクロ置換ピロールポリマーに替えて、前記ドーパントによりドープされた
ビシクロ置換ピロールポリマーを使用することにより、前記ドーパントによりドープされ
たイソインドールポリマーを製造することができる。
【0074】
前記ビシクロ置換ピロールポリマーにドーパントをドープさせてなる導電性高分子は導
電性を示すことから帯電防止用途、導電性コーティング材料用途に好適に使用することが
できる。
例えば、前記導電性高分子を0.01〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、
さらに好ましくは1〜20重量%含む樹脂組成物は、帯電防止用樹脂組成物や導電性コー
ティング用樹脂組成物として好適に使用することができる。
【0075】
また前記導電性高分子を有機溶媒に溶解した有機溶液、例えば、前記導電性高分子を0
.01〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%
含む有機溶液からなる樹脂組成物は、帯電防止用樹脂組成物や導電性コーティング用樹脂
組成物として好適に使用することができる。
前記有機溶媒としては、先に説明したビシクロ置換ピロールポリマーを有機溶媒に溶解
させる場合に使用する有機溶液と同様のものを挙げることができる。
【0076】
前記導電性コーティング用樹脂組成物の応用例としては、例えば、前記導電性コーティ
ング用樹脂組成物を用いて導電性薄膜とする場合等を挙げることができる。
具体的には、前記導電性コーティング用樹脂組成物を基板上に付着させる工程と、
前記導電性コーティング用樹脂組成物が付着した基板に対し、加熱及び/又は光照射を
行う工程と、
を有する製造方法により前記導電性薄膜を製造することができる。
この製造方法に使用する基板や加熱の条件、光照射の条件等は、先に説明したビシクロ
置換ピロールポリマー、ドーパントによりドープされたビシクロ置換ピロールポリマー等
をフィルム形状に加工する場合と同様である。
【0077】
前記ビシクロ置換ピロールポリマーにドーパントをドープさせてなる導電性高分子、お
よびこの導電性高分子により得られたイソインドールポリマーを含む導電性高分子は、そ
れぞれ固体電解コンデンサの材料や帯電防止剤として好適に使用することができる。
【0078】
これらの導電性高分子を固体電解コンデンサに応用する具体例としては、例えば、前記
導電性コーティング用樹脂組成物を誘電体と組み合わせて使用する場合等を挙げることが
できる。
具体的には、前記導電性コーティング用樹脂組成物を誘電体に付着させる工程と、
前記導電性コーティング用樹脂組成物が付着した誘電体に対し、加熱及び/又は光照射
を行う工程と、
を有する製造方法により固体電解コンデンサを製造することができる。
なお、固体電解コンデンサを製造する方法については公知であり、その方法については
特に制限はない。
この製造方法に使用する基板や加熱の条件、光照射の条件等は、先に説明したビシクロ
置換ピロールポリマー、ドーパントによりドープされたビシクロ置換ピロールポリマー等
をフィルム形状に加工する場合と同様である。
【0079】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により
何ら限定されるものではない。
【0080】
[参考例1]
【0081】
【化18】


還流冷却器を取り付けた300mLのナス型フラスコに、trans−1,2ービス(
フェニルスルフォニル)エチレン 25g(81.0mmol、東京化成工業社製)、1
,3−シクロヘキサジエン 10.0mL(105mmol、東京化成工業社製)および
トルエン150mLを加え、加熱によりトルエンを還流させながら、マグネティックスタ
ーラーを用いて一晩撹拌した。
次に反応混合物を室温まで冷却した後、トルエンを減圧下に留去し、油状の粗生成物を
得た。
この油状の粗生成物にジエチルエーテルを加えて結晶化させた。得られた結晶をジエチ
ルエーテルにより洗浄して、一般式(14)により表される無色結晶のビスフェニルスル
フォニル化合物を30.5g(78.7mmol、収率97%)得た。
なお、前記ビスフェニルスルフォニル化合物の合成に際しては文献(J.Org.Ch
em.,1984,49,596)を参照した。
【0082】
[参考例2]
【0083】
【化19】


500mLのナス型フラスコに、前記ビスフェニルスルフォニル化合物〔2−exo,
3−endo−ビス(フェニルスルフォニル)ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン
〕11.6g(30.0mmol)、エチルイソシアノアセテート(東京化成工業社製)
3.60mL(33.0mmol)を入れた。
次に反応容器内の空気を窒素により置換し、乾燥させたテトラヒドロフラン130mL
を入れた。
反応容器を−10℃に冷却した後、マグネティックスターラーを用いて反応混合物を撹
拌しながらt−BuOK溶液(72.0mL、72.0mmol、1.0Mテトラヒドロ
フラン溶液)をゆっくり滴下した。前記滴下操作終了後、反応混合物の温度を室温に戻し
ながらさらに一晩前記マグネティックスターラーにより撹拌した。
1N塩酸水溶液を加えて加水分解操作を実施後、減圧下にテトラヒドロフランを回収し
、反応混合物の体積を約半分とした。続いて反応混合物にクロロホルムを加えて抽出操作
を行った。
有機層を分離した後、前記有機層を水、飽和重曹水、水および飽和食塩水の順番により
洗浄した。
続いて前記有機層を分液後、得られた前記有機層を無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥さ
せた。
乾燥操作終了後、前記無水硫酸ナトリウムを濾過により濾別し、有機層を減圧下に濃縮
した。
得られた粗生成物を、クロロホルムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによ
り精製し、得られた精製物をクロロホルムとヘキサンとの混合溶媒を用いて再結晶した。
上記操作により、一般式(15)により表される無色結晶のエチルエステル体を5.3
2g(24.5mmol、収率81%)得た。
なお、前記エチルエステル体の合成に際しては文献(J.Chem.Soc.Perk
in Trans.I,1997,3161)を参照した。
【0084】
[参考例3]
【0085】
【化20】


200mLのナス型フラスコに前記エチルエステル体〔エチル 4,7−ジヒドロ−4
,7−エタノ−2H−イソインドール−1−カルボキシレート〕2.17g(10.0m
mol)、NaOH 2.80g(42.0mmol)およびエチレングリコール100
mLを入れた。
次に反応容器内の空気を窒素により置換し、反応容器を遮光した後、反応混合物の温度
を160℃として、マグネティックスターラーにより2時間撹拌した。
反応容器を室温まで冷却した後、反応混合物を水300mL中に注ぎ、続いて酢酸エチ
ルを加えて抽出操作を行った。
有機層を分離した後、前記有機層を水および飽和食塩水の順番により洗浄した。
続いて前記有機層を分液後、得られた前記有機層を無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥さ
せた。
乾燥操作終了後、前記無水硫酸ナトリウムを濾過により濾別し、有機層を減圧下に濃縮
した。
得られた粗生成物を、クロロホルムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによ
り精製し、一般式(16)により表される無色結晶のビシクロ置換ピロールを1.21g
(8.33mmol、収率83%)得た。
なお、前記ビシクロ置換ピロールの合成に際しては文献(Heterocycles,
2000,52,399)を参照した。
【実施例1】
【0086】
[電気化学的重合法]
【0087】
【化21】

参考例3により得た一般式(16)により表されるビシクロ置換ピロール 24mg(
0.04M)、トリエチルアミン−p−トルエンスルホン酸塩 59mg(0.04M)
をアセトニトリル 5mLに溶解した。
次に、参照電極をAg/Ag、作用電極をPt、走査速度を50mV/sおよび走査
回数を3回として前記ビシクロ置換ピロールに対しCV測定を行った。
前記CV測定の結果を図1に示す。
前記作用電極のPtに、一般式(17)により表される黒色膜のビシクロ置換ピロール
ポリマーが生成した。
【実施例2】
【0088】
[酸化重合法]
p−トルエンスルホン酸−鉄(III)塩を40wt%含むブタノール溶液1.2gに対
し、参考例3により得たビシクロ置換ピロール 0.17gを含むブタノール溶液6mL
を滴下し、撹拌した。
室温にて一日反応を行い、反応終了後、析出物を濾過により除いた。
次に濾液に水を加えたところ、一般式(17)により表されるビシクロ置換ピロールポ
リマーが得られた。得られたビシクロ置換ピロールポリマーを水により洗浄後、減圧下に
乾燥を行い、紫色粉末のビシクロ置換ピロールポリマー(ポリマー1)を0.15g得た

前記ビシクロ置換ピロールポリマーのIRチャートを図2に示す。
【0089】
前記ビシクロ置換ピロールポリマーの赤外線吸収スペクトルは次の通りであった。
・IR(KBr)νmax:568cm−1、683cm−1、815cm−1、1010
cm−1、1034cm−1、1181cm−1、1219cm−1、2870cm−1
、2943cm−1、3049cm−1、3433cm−1
【0090】
また、前記ビシクロ置換ピロールポリマーのH−NMRの測定結果は次の通りであっ
た。
H−NMR(DMSO−d、300MHz)
δ=1.23(brs、4H)、2.23(s、3H)、3.64(brs、2H)、
6.50(brs、2H)、7.10(d、2H、J=7.7Hz)、7.46(d、2
H、J=7.5Hz)
【0091】
前記NMR、IRの測定の結果、前記ビシクロ置換ピロールポリマー中にドーパントで
あるp−トルエンスルホン酸が含有していることが示唆され、前記ビシクロ置換ピロール
ユニット三分子に対して、p−トルエンスルホン酸イオン一分子がドープされていること
が判明した。
また、前記ビシクロ置換ピロールポリマーの分子量をMS(TOF−MS)により測定
したところ、m/z=1038の分子量に相当するフラグメントが観察された。
【実施例3】
【0092】
実施例2の場合で反応温度を60℃、反応時間を2時間とした他は、全く実施例2と同
じ操作を行い、茶褐色粉末のビシクロ置換ピロールポリマー(ポリマー2)を0.11g
得た。
【実施例4】
【0093】
実施例2により得られたビシクロ置換ピロールポリマー(ポリマー1)、実施例2の反
応終了後に得られた析出物(析出物1)、実施例3により得られたビシクロ置換ピロール
ポリマー(ポリマー2)および実施例3の反応終了後に得られた析出物(析出物2)を用
いて溶解性試験を実施した。
前記溶解性試験にはN−メチルピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)
およびエタノール(EtOH)を用いた。
結果を表1に示す。
【0094】
【表1】


上記表1中、○印は溶解度が1重量%以上であることを示し、△印は溶解度が0.01
〜1重量%の範囲であることを示し、×は溶解度が0.01重量%未満であることを示す

【実施例5】
【0095】
【化22】


実施例2により得られた一般式(17)により表されるビシクロ置換ピロールポリマー
(ポリマー1)をTG/DTA装置により分析したところ、200℃付近から減量ピーク
が観察された。
前記ビシクロ置換ピロールポリマーを240℃1時間の条件で加熱したところ、有機溶
媒に不溶である一般式(18)により表されるイソインドールポリマーが得られた。
図3に、前記イソインドールポリマーの赤外線吸収スペクトルチャートを示す。
【実施例6】
【0096】
前記ポリマー1およびポリマー2をエタノールに溶解したエタノール溶液をそれぞれ準
備し、10秒間2000回転の条件によりスピンコート操作を実施し成膜を行った。
なお、前記エタノール溶液は2重量%のものと、5重量%のものを使用した。
得られた薄膜には析出物は認められず、平滑な薄膜を得ることができた。
前記ポリマー1から得られた薄膜は紫色、前記ポリマー2から得られた薄膜は褐色であ
った。また、それぞれの前記薄膜はTG/DTA分析により200℃付近に減量ピークが
観察された。
次にそれぞれの前記薄膜について減圧下に240℃の温度で1時間加熱し、前記イソイ
ンドールポリマー構造を含む薄膜を得た。
前記加熱前後のそれぞれの前記薄膜について、ハイレスターにて印加電圧500Vの条
件にて表面抵抗を測定した。
結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】ビシクロ置換ピロールのCV測定チャートである(実施例1)。
【図2】ビシクロ置換ピロールポリマーのIRチャートである(実施例2)。
【図3】イソインドールポリマーのIRチャートである(実施例3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)により示されるビシクロ置換ピロールポリマー。
【化1】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、Xは次の二価の
基を表す。
【化2】

ここでR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、
炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜10
のアルコキシ基を表し、nは5〜500の数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のビシクロ置換ピロールポリマーを有機溶媒中に0.01〜50重量%
含有することを特徴とするビシクロ置換ピロールポリマー有機溶液。
【請求項3】
下記一般式(2)
【化3】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、Xは次の二価の
基を表す。
【化4】

ここでR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、
炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜10
のアルコキシ基を表す。)により表されるビシクロ置換ピロールを、有機溶媒の存在下に
重合することを特徴とする一般式(1)
【化5】


(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、Xは次の二価の
基を表す。
【化6】

ここでR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、
炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜10
のアルコキシ基を表し、nは5〜500の数を表す。)に記載のビシクロ置換ピロールポ
リマーの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のビシクロ置換ピロールポリマーにドーパントをドープさせてなる導電
性高分子。
【請求項5】
前記ドーパントが、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、六フ
ッ化リン酸イオン、六フッ化アンチモン酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機カルボン
酸イオンおよびアミド酸イオンからなるアニオン群より選ばれる少なくとも一つであるこ
とを特徴とする請求項4に記載の導電性高分子。
【請求項6】
請求項4または請求項5のいずれかに記載の導電性高分子を0.01〜50重量%含む
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4または請求項5のいずれかに記載の導電性高分子を0.01〜20重量%含む
有機溶液からなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のビシクロ置換ピロールポリマーに対し加熱及び/又は光照射すること
を特徴とする、下記一般式(3)に記載のイソインドールポリマーの製造方法。
【化7】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、nは5〜500
の数を表す。)
【請求項9】
請求項4に記載の導電性高分子に対し加熱及び/又は光照射することを特徴とする、下
記一般式(3)
【化8】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、
フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ化アルキル基、炭素数
5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、nは5〜500
の数を表す。)に記載のイソインドールポリマー、
を含む導電性高分子の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法により得られた導電性高分子を0.01〜50重量%含有す
ることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の製造方法により得られた導電性高分子を、有機溶媒に対し、0.01
〜50重量%分散させてなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項12】
請求項6、7、10または11のいずれかに記載の樹脂組成物からなる帯電防止用樹脂
組成物。
【請求項13】
請求項6、7、10または11のいずれかに記載の樹脂組成物からなる導電性コーティ
ング用樹脂組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の導電性コーティング用樹脂組成物を基板上に付着させる工程と、
前記導電性コーティング用樹脂組成物が付着した基板に対し、加熱及び/又は光照射を
行なう工程と、
を有することを特徴とする導電性薄膜の製造方法。
【請求項15】
請求項4に記載の導電性高分子、請求項5に記載の導電性高分子または請求項9に記載
の製造方法により得られた導電性高分子のいずれかを含む固体電解コンデンサ。
【請求項16】
請求項13に記載の導電性コーティング用樹脂組成物を誘電体に付着させる工程と、
前記導電性コーティング用樹脂組成物が付着した誘電体に対し、加熱及び/又は光照射
を行なう工程と、
を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項17】
請求項4に記載の導電性高分子、請求項5に記載の導電性高分子または請求項9に記載
の製造方法により得られた導電性高分子のいずれかを含む帯電防止剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−262187(P2007−262187A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87330(P2006−87330)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【Fターム(参考)】