説明

ビスフェノールAの製造方法

【課題】晶析および固液分離の操作を1回に減らしつつ、それでいて高品質(高純度)のビスフェノールAを効率的に製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明のビスフェノールAの製造方法は、(1)フェノールとアセトンとを、特定の樹脂の存在下に反応させる工程、(2)得られた反応液から第一濃縮液を得る工程、(3)該第一濃縮液を冷却して第一晶析液を得る工程、(4)該第一晶析液をアダクト結晶と母液とに固液分離し、アダクト結晶を洗浄する工程および(5)該アダクト結晶からビスフェノールAを得る工程で構成される主工程と、(6)工程(4)で分離された母液から第二濃縮液を得る工程、(7)該第二濃縮液を冷却して第二晶析液を得る工程、(8)該第二晶析液をアダクト結晶と母液とに固液分離し、アダクト結晶を洗浄する工程、および(9)該アダクト結晶を、工程(2)または(3)に供給する工程で構成される副工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビスフェノールAの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]は、ポリカーボネート樹脂およびエポキシ樹脂の原料として有用であり、近年、その需要は大きく伸びている。
【0003】
ビスフェノールAの製造は、従来は触媒として塩化水素を用いた方法(以下「塩酸法」という。)で行われていたが、近年、プラントの大型化に伴い、設備費の安い強酸性陽イオン交換樹脂を触媒とし、チオール化合物を助触媒とする方法(以下「IER(Ion Exchanging Resin)触媒法」ともいう。)が主流となっている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0004】
IER触媒法によるビスフェノールAの製造プロセスは、フェノールとアセトンとをIER触媒の存在下で縮合反応させる工程、得られた反応混合物を、必要に応じて該反応混合物から未反応物や生成水などを除去したあと、濃縮し、冷却してフェノール−ビスフェノールAのアダクト結晶を含むスラリーを生成する晶析工程、該アダクト結晶をスラリーから分離する固液分離工程、分離されたアダクト結晶をフェノール等で洗浄する洗浄工程、蒸留等により前記アダクト結晶に付着残留したフェノールを除去する工程、固液分離された母液の一部を強酸性陽イオン交換樹脂等で処理した後、前記晶析工程に循環させる工程などから構成される。
【0005】
しかしながら、このIER触媒法では、従来技術である塩酸法と比べて副生成物の生成量が多いため、晶析および固液分離の操作を2回行って製品を得ていた(たとえば、特許文献3参照)。
【0006】
そして特許文献3に記載の方法では、1回目の固液分離の操作で分離された母液をそのまま反応器へリサイクルしたりなどするが(特許文献3の[0019]参照)、母液の全量を反応器へリサイクルすると、母液に含まれる不純物が無限に蓄積することになるため、母液の一部は主工程からパージされる。原料原単位を向上させるため、このパージされた母液から、さらに副工程における濃縮・晶析・固液分離処理によりビスフェノールAを回収するのが一般的である。従って、プロセス全体を通してみると、特許文献3に記載の方法では晶析および固液分離操作が主工程で2回、副工程で最低1回の、合計少なくとも3回行われる。
【0007】
そのため、さらなる効率的な製造プロセスを確立することが求められている。
【特許文献1】特開2004−10566号公報
【特許文献2】特開平10−218814号公報
【特許文献3】特開2003−286214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、主工程における晶析および固液分離の操作を1回に減らしつつ、それでいて高品質(高純度)のビスフェノールAを効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、主工程において固液分離後の不純物が多く含まれた母液をリサイクル(そのまま主工程の最初の段階に戻すこと)せず副工程で処理し、副工程で精製されたアダクト結晶を主工程に戻し、主工程における晶析工程入口の不純物濃度を一定値以下とすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0010】
また、特定の触媒を使用することにより、より顕著に晶析工程入口の不純物濃度を低下させることができることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明に係るビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]の製造方法は、
(1)フェノールとアセトンとを、含硫黄化合物で一部変性した強酸性陽イオン交換樹脂の存在下に反応させる工程、(2)工程(1)で得られた反応液から、水と未反応のアセトンと未反応のフェノールの少なくとも一部とを除去して第一濃縮液を得る工程、(3)該第一濃縮液を冷却してビスフェノールAとフェノールとのアダクト結晶を含む第一晶析液を得る工程、(4)該第一晶析液を前記アダクト結晶と母液とに固液分離し、分離されたアダクト結晶を洗浄する工程および(5)工程(4)で分離・洗浄されたアダクト結晶からフェノールを除去してビスフェノールAを得る工程で構成される主工程と、
(6)工程(4)で第一晶析液から分離された母液から、少なくとも一部のフェノールを除去して第二濃縮液を得る工程、(7)該第二濃縮液を冷却してビスフェノールAとフェノールとのアダクト結晶を含む第二晶析液を得る工程、(8)該第二晶析液をアダクト結晶と母液とに固液分離し、分離されたアダクト結晶を洗浄する工程、および(9)工程(8)で分離・洗浄されたアダクト結晶を、前記工程(2)または前記工程(3)に供給する工程で構成される副工程と
を有し、前記工程(3)における第一濃縮液中の2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの濃度を1.0wt%以下とすることを特徴とするビスフェノールAの製造方法である。
【0012】
本発明の工程(1)で使用される含硫黄化合物は、下記一般式(a)で表される化合物、下記一般式(b)および下記一般式(c)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
式(a)中、R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基を表し、nは1〜10の整数を表し、Aは窒素原子またはリン原子を表す。
【0015】
【化2】

【0016】
式(b)中、R1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基を表し、nは1〜10の整数を表し、Aは窒素原子またはリン原子を表す。
【0017】
【化3】

【0018】
式(c)中、mは1〜20の整数を表す。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、IER触媒法によりビスフェノールAを製造する際に、従来2回以上行われていた主工程における晶析および固液分離の操作を1回に低減することができ、それゆえ低コストでビスフェノールAを製造することができ、しかも本発明の製造方法により製造されるビスフェノールAは高品質(高純度)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るビスフェノールAの製造方法について詳細に説明する。
本発明のビスフェノールAの製造方法は主工程と副工程とを有し、主工程においてフェノールとアセトンとを反応させ、反応生成物からビスフェノールAを分離精製し、副工程において、主工程で分離した母液を処理する。以下、主工程および副工程を構成する各工程について説明する。
【0021】
〔主工程〕
<工程(1)>
本発明のビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]の製造方法における主工程を構成する工程(1)では、フェノールとアセトンとを、強酸性陽イオン交換樹脂(強酸性IER)の存在下に反応させる。ここで「強酸性」とは、スルホン酸等の、水中に溶解した時の電離度がほぼ1である官能基を持つことを指す。
【0022】
本発明に使用することのできる強酸性陽イオン交換樹脂は特に限定されず、たとえば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体にスルホン基を導入したタイプのものや、ナフィオン(登録商標)(デュポン(株))などのパーフルオロアルキルスルホン酸系イオン交換樹脂など、公知の強酸性陽イオン交換樹脂を用いることができる。強酸性陽イオン交換樹脂は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
市販品としては、例えば、レバチットK1221(ランクセス(株)製)、ダウエックス(ザダウケミカルカンパニー製)、アンバーライト(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製)、ダイヤイオン(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0024】
そして本発明において上記強酸性陽イオン交換樹脂は、含硫黄化合物で部分的に変性されている。含硫黄化合物としてはチオール基を有する化合物が挙げられ、含硫黄化合物として好ましいものの例としては、下記一般式(a)、(b)および(c)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化4】

【0026】
上記式(a)中、R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基を表し、nは1〜10の整数を表し、Aは窒素原子またはリン原子を表す。
【0027】
【化5】

【0028】
上記式(b)中、R1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基を表し、nは1〜10の整数を表し、Aは窒素原子またはリン原子を表す。
【0029】
【化6】

【0030】
上記式(c)中、mは1〜20の整数を表す。
前記一般式(a)で表される化合物の好適な例として、N,N,N−トリメチルメルカプトプロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチルメルカプトエチルアンモニウム、3−メルカプトプロピルトリフェニルホスホニウムおよび4−メルカプトブチルトリフェニルホスホニウムが、
前記一般式(b)で表される化合物の好適な例として、N,N−ジメチル−3−メルカプトプロピルアミンが、
前記一般式(c)で表される化合物の好適な例として、3−メルカプトメチルピリジン、3−(2−メルカプトエチル)ピリジンおよび4−(2−メルカプトエチル)ピリジンが挙げられる。
【0031】
上記含硫黄化合物は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記特定の含硫黄化合物で部分的に変性された強酸性陽イオン交換樹脂は、従来の触媒に比較してビスフェノールAの選択率が高く、副生物の生成量を低減することができる。
【0032】
上記含硫黄化合物により強酸性陽イオン交換樹脂を部分的に変性する方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、適当な溶媒中で強酸性陽イオン交換樹脂と含硫黄化合物とを、所定の変性量(変性率)になるように反応させることによって、部分的に変性された強酸性陽イオン交換樹脂を得ることができる。
【0033】
上記含硫黄化合物による変性量は特に限定されないが、たとえば強酸性陽イオン交換樹脂がスルホン酸型イオン交換樹脂の場合、全スルホン酸基(酸点)の0.1〜50%、好ましくは3〜40%、より好ましくは5〜30%である。
【0034】
工程(1)の反応におけるフェノールおよびアセトンの使用割合は特に限定されないが、たとえば、「フェノール」/「アセトン」(モル比)が0.1〜100、好ましくは0.5〜50、より好ましくは3〜30の範囲である。
【0035】
上記反応に用いられる含硫黄化合物で一部変性した強酸性陽イオン交換樹脂(以下変性強酸性IERともいう)の使用量は特に限定されないが、たとえば、反応をバッチ方式で実施する場合には、フェノール100重量部に対して、好ましくは乾燥重量で0.001〜200重量部、より好ましくは0.1〜50重量部の範囲である。
【0036】
上記反応は、バッチ式、セミバッチ式または連続流通式のいずれの方法においても実施することができる。また反応は液相、気相、気−液混合相のいずれの形態においても実施することができるが、反応効率の観点から液相で行うことが好ましい。触媒(変性強酸性IER)の充填方式としては、固定床、流動床、懸濁床、棚段固定床など、種々の方式を採用することができる。反応効率の点から考えると、固定床型の反応器を使用することが望ましい。
【0037】
工程(1)においては、フェノールおよびアセトンを、混合液の状態で反応器に供給することが好ましいが、その供給される際の混合液(反応原料)の供給温度(複数の反応器が直列に接続されている場合は、最初の反応器に混合液を供給する温度)は、後述する工程(3)における第一濃縮液中の2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの濃度を効果的に低くする観点から、通常40〜58℃、好ましくは42〜55℃である。混合液供給温度が低すぎると、反応速度が低下することがあり、混合液供給温度が高すぎると2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代表される副生成物の生成量が増大することがある。
【0038】
反応圧力は特に限定されないが、通常大気圧〜0.6MPa、好ましくは0.2〜0.4MPaである。
反応原料であるフェノールおよびアセトンの反応器への供給速度は、副生物の生成を抑制する観点から、総触媒体積(水膨潤状態)に対する単位時間あたりに供給する反応原料の体積の割合(LHSV)が通常0.1〜2.0h-1となる速度、好ましくは0.4〜1.0h-1となる速度である。
【0039】
反応は1段で行っても多段で行ってもよい。工程(1)の好ましい態様としては、少なくとも2つの反応器を直列に接続し、該反応器間に除熱機構を設けて各反応器の最高温度を80℃以下に抑えるとともに、LHSVを0.4h-1以上にすることにより、望ましくない副生物の生成を抑制する方法が挙げられる。これにより副生物生成量が低減され、触媒単位重量あたりのビスフェノールA製造量を高くすることができる。この態様を図2に示す。図2は2つの反応器を直列に接続した態様である。
【0040】
このような工程(1)により得られた反応液を、次の工程(2)に供給する。なお、工
程(1)により得られた反応液を工程(2)に供給する前に、フィルターやイオン交換樹脂処理、吸着剤処理により、反応器から溶出する触媒や微量のスルホン基を除去するなどの操作を行ってもよいことはもちろんである。
【0041】
<工程(2)>
工程(2)では、次の工程(3)で得られるアダクト結晶の収量を増やすため、上記工程(1)で得られた反応液から、水と未反応のアセトンと未反応のフェノールの少なくとも一部とを除去して第一濃縮液を得る。
【0042】
反応液中に含まれる生成水や未反応物は、蒸留によって除去することができ、除去された未反応物は、回収して再び反応系へリサイクルすることができる。蒸留の条件としては、通常、温度は100〜200℃、圧力は5〜80kPaAである。
【0043】
上記のようにして生成水や未反応物が除去された残りの濃縮留分(第一濃縮液)を、次の工程(3)の晶析原料として用いる。
なお、工程(2)で得られた第一濃縮液の一部を、後述する副工程における工程(6)または(7)に供給してもよい。この場合、第一濃縮液の一部を副工程で精製してから主工程に戻すことになり、工程(5)で得られるビスフェノールAの純度をさらに向上させることができる。
【0044】
<工程(3)>
工程(3)では、上記工程(2)で得られた第一濃縮液を冷却して晶析させることで、ビスフェノールAとフェノールとのアダクト結晶を含む第一晶析液を得る。
【0045】
本発明では、第一濃縮液中の2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下o,p−ビスフェノールAともいう)の濃度を1.0wt%以下にすることにより、主工程における晶析・固液分離の操作を1回行うだけで高純度のビスフェノールAを製造することができる。本発明では、後述する工程(4)で発生した不純物が多く含まれる母液を、全量副工程で処理し、精製されたアダクト結晶を再度主工程に循環することにより、原理的に第一濃縮液中のo,p−ビスフェノールAに代表される不純物濃度を低減することができるが、さらに、工程(1)における前記変性強酸性IERの種類、フェノールとアセトンの供給温度や反応原料供給速度(LHSV)などの反応条件、工程(2)における濃縮率等を操作することにより、適宜第一濃縮液中のo,p−ビスフェノールAを低減することが可能である。
【0046】
上記アダクト結晶の晶析は、第一濃縮液に水を添加し、その水を蒸発させることによって潜熱で冷却する方法で行ってもよいし、冷却水との熱交換を行って冷却する方法で行ってもよい。水を添加する場合、通常温度30〜80℃、圧力3〜13kPaA、好ましくは温度40〜70℃、圧力4〜10kPaAの条件で行われる。水の添加量は、第一濃縮液100重量部に対して通常3〜20重量部程度である。必要以上に多量の水を添加すると、ビスフェノールAの第一濃縮液への溶解度が上昇し、工程(4)で得られる結晶の量が減少することがある。
【0047】
冷却は、1段階で最終の温度(通常40〜55℃程度)まで冷却してもよいし、2段階以上の多段階で冷却を行ってもよい。通常、多段階で冷却する方が不純物の少ないきれいな結晶が得られることが多いので、結晶純度を向上させたい場合は多段階で冷却する事が好ましい。
【0048】
このようにして得られたアダクト結晶を含む第一晶析液を、次の工程(4)でアダクト結晶と母液とに固液分離する。
<工程(4)>
工程(4)では、上記工程(3)で得られた第一晶析液をアダクト結晶と母液とに固液分離する。アダクト結晶は次の工程(5)を経て製品ビスフェノールAとなり、母液は工程(6)から(9)、および必要に応じて設ける工程(10)から(12)で構成される副工程にて処理され、有価物(ビスフェノールAとフェノールとのアダクト)が回収される。
【0049】
固液分離の方法は特に限定されず、公知の方法、たとえば濾過によって行われる。分離され、回収されたアダクト結晶は、通常フェノールで洗浄処理され、後述する工程(5)で脱フェノール処理される。また、分離された母液は後述する工程(6)に供給される。
【0050】
なお、本発明では、主工程において分離した母液は主工程にリサイクルせず、後述する副工程で処理する。特許文献3ではこの母液を反応器へリサイクルしており([0019]参照)、この母液は後述する本発明の工程(8)で二度目の固液分離を行って得られるアダクト結晶よりも不純物を多く含んでいるため、これを反応器へリサイクルするとビスフェノールA製造系に不純物が蓄積してしまい、そのため高純度のビスフェノールAを得るために主工程において2回以上の晶析および固液分離操作が必要となる。
【0051】
一方本発明では前述のように主工程において分離した母液は主工程にリサイクルせず、後述する副工程で処理し、精製されたアダクト結晶のみを主工程に戻すため、従来2回以上行われていた主工程における晶析および固液分離の精製プロセスを1回に低減することができる。
【0052】
特許文献3のように主工程の母液を反応器へリサイクルする場合も、不純物の過度の蓄積を防ぐため、母液の一部は主工程からパージする。通常、原料原単位を向上させるため、パージされた母液から、さらに本発明の副工程同様の濃縮・晶析・固液分離処理によりビスフェノールAを回収する。従って、プロセス全体を通してみると、本発明は特許文献3のような方法と比較し、少なくとも1回の晶析および固液分離の精製プロセスを削減することができるため、より低コストでビスフェノールAを製造することが可能となる。
【0053】
工程(4)で得られたアダクト結晶は、工程(5)でフェノールを除いて目的のビスフェノールAを得るが、このような主工程を有する本発明の製造方法により製造されたビスフェノールAは、主工程において晶析および固液分離操作を一度しかしていないにもかかわらず、一般的な高純度ビスフェノールAと同等の純度を有している。具体的には、工程(4)の段階で得られたアダクト結晶のうち、フェノールを除いた総量に対する2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの不純物の濃度が、通常300ppm以下、好ましくは250ppm以下である。
【0054】
<工程(5)>
工程(5)では、上記工程(4)で回収されたアダクト結晶からフェノールを除去して目的のビスフェノールAを得る。
【0055】
上記アダクト結晶からのフェノールの除去は、通常、上記洗浄処理されたアダクト結晶を減圧蒸留等によってビスフェノールAとフェノールとに分離する方法によって行われる。前記減圧蒸留の条件は、通常、温度が130〜200℃の範囲であり、圧力は3〜20kPaAの範囲である。この条件では、通常、処理に伴う新たな不純物の発生は起こらず、工程(4)で得られたアダクト結晶の純度を維持できる。
【0056】
上記分離処理により得られたビスフェノールA中に含まれる残留フェノールを、スチームストリッピングなどの方法により実質上完全に除去することによって、高品質のビスフ
ェノールAが得られる。なお、除去されたフェノールは、回収してリサイクルすることができる。
【0057】
〔副工程〕
<工程(6)>
本発明のビスフェノールAの製造方法における副工程を構成する工程(6)では、上記工程(4)において第一晶析液から分離された母液から、少なくとも一部のフェノールを除去して第二濃縮液を得る。これにより、次の工程(7)で得られるアダクト結晶の収量を増やすことができる。母液には、フェノールのほかに工程(3)で晶析されなかったビスフェノールAとフェノールとのアダクトおよび工程(1)の反応における副生物が含まれている。
【0058】
フェノールを除去する方法は特に限定されないが、通常、蒸留によって行われる。蒸留の条件は特に限定されず、たとえば、上記工程(2)と同程度の条件を採用することができる。蒸留により少なくとも一部のフェノールが留出物として除去された残りの濃縮留分(第二濃縮液)を、次の工程(7)の晶析原料として用いる。なお、除去されたフェノールは、回収して再利用することができる。
【0059】
<工程(7)>
工程(7)では、上記工程(6)で得られた第二濃縮液を冷却してビスフェノールAとフェノールとのアダクト結晶を含む第二晶析液を得る。
【0060】
晶析方法および条件は、上記工程(3)と同様である。得られたアダクト結晶を含む第二晶析液を、次の工程(8)でアダクト結晶と母液とに固液分離する。
<工程(8)>
工程(8)では、上記工程(7)で得られた第二晶析液をアダクト結晶と母液とに固液分離する。固液分離は、上記工程(4)と同様の方法で行うことができる。分離されたアダクト結晶は通常フェノールで洗浄処理される。
【0061】
<工程(9)>
工程(9)では、上記工程(8)で得られたアダクト結晶を、上記工程(2)または工程(3)に供給する。晶析および固液分離を行って得られたアダクト結晶を主工程に循環させることにより、工程(3)における第一濃縮液中の不純物(o,p−ビスフェノールAなど)の濃度を低くすることができ、その結果、主工程において一度の晶析および固液分離により、高純度のビスフェノールAを得ることができる。なお、副工程では、工程(4)の母液中に含まれるビスフェノールAの大半をアダクト結晶の形で回収して主工程に返送するため、工程(9)で工程(2)または工程(3)に供給される前記アダクト結晶の量は、工程(4)の母液中に含まれるビスフェノールAの量により決定される。通常、流量比でアダクト結晶:工程(1)から工程(2)に供給される反応液、またはアダクト結晶:工程(2)から工程(3)に供給される第一濃縮液が1:5〜1:10、好ましくは1:6〜1:9となる量である。
【0062】
本発明のビスフェノールAの製造方法は、さらに以下のような工程を副工程あるいは前処理工程として有していてもよい。
<工程(10)>
工程(10)では、必要に応じて、上記工程(8)で得られた母液の少なくとも一部を強酸性陽イオン交換樹脂により処理した後、上記工程(6)または工程(7)に供給する。工程(8)で得られた母液には、工程(4)で得られる母液と同様に、フェノールのほかに工程(7)で晶析されなかったビスフェノールAとフェノールとのアダクトおよび工程(1)の反応における副生物(ビスフェノールAの異性体など)が含まれている。
【0063】
このように、上記母液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させることにより、ビスフェノールAの異性体(o,p−ビスフェノールA)を目的のビスフェノールAに異性化処理した後、処理液を主工程に循環させず、副工程に循環させて処理する。これにより、主工程における晶析および固液分離の精製プロセスを1回にすることができる。なお、強酸性陽イオン交換樹脂は上述したものを用いることができる。また、前記異性化処理は公知の方法(たとえば、特開平4−283531号公報、特開平6−321834号公報参照)で行うことができる。
【0064】
<工程(11)>
工程(11)では、必要に応じて、前記工程(8)で得られた母液の少なくとも一部を濃縮してフェノールを除去する。
【0065】
フェノールの除去方法は特に限定されないが、上記工程(2)や(6)と同様に蒸留により行うことができる。除去されたフェノールは、回収してリサイクルすることができる。フェノール除去後の濃縮液は、後述する工程(12)に供給される。この濃縮液には、除去されずに残ったフェノールのほかに、ビスフェノールAとフェノールとのアダクトおよび工程(1)の反応における副生物が含まれている。
【0066】
<工程(12)>
工程(12)では、前記工程(11)で得られたフェノール除去後の濃縮液をアルカリ性触媒の存在下に加熱処理して、その濃縮液中のビスフェノール類および副生物を分解し、生成したフェノールおよび4−イソプロペニルフェノールを蒸留により回収する。
【0067】
上記アルカリ性触媒としては、たとえば、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、各種フェノール塩、およびカルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、各種フェノール塩などが挙げられる。
【0068】
上記アルカリ性触媒の存在下でビスフェノール類および副生成物を分解する方法は特に限定されず、公知の方法および条件を採用することができる(たとえば、特開平10−218814号公報参照)。
【0069】
蒸留により回収した4−イソプロペニルフェノールは、イオン交換樹脂等の酸触媒の存在下でフェノールと縮合させることにより、ビスフェノールAとして回収することができる。この回収反応は、独立した反応器を設けて行ってもよく、あるいは回収した4−イソプロペニルフェノールを含む液を工程(10)に供給して行ってもよい。
【0070】
〔前処理工程〕
<工程(13)>
本発明のビスフェノールAの製造方法は、必要に応じて前処理工程として、フェノールをイオン交換樹脂と接触させた後蒸留処理を行い、留出液を上記工程(1)のフェノールの少なくとも一部、上記工程(4)の結晶洗浄液の少なくとも一部または上記工程(8)の結晶洗浄液の少なくとも一部として用い、缶出液を上記工程(11)に送液する工程(13)をさらに含んでいてもよい。前記留出液は精製されたフェノールを含んでおり、缶出液はフェノール及びフェノール中に含まれる高沸点化合物を含んでいる。なお、留出液とは蒸留により分離された揮発性の高い成分を多く含んだ液であり、缶出液とは蒸留により分離された揮発性の低い成分を多く含んだ液である。
【0071】
このようにフェノールをイオン交換樹脂と接触させることにより、フェノール中に含まれるヒドロキシアセトン等の不純物が反応してフェノールよりも高沸点の化合物に転化す
る。高沸点化合物は、続いて蒸留処理によりフェノール中から取り除くことができ、これにより、工程(5)でより不純物や着色の低減された高品質のビスフェノールAを得ることができる。さらに、フェノール中には、強酸性陽イオン交換樹脂の酸点を被毒して工程(1)の触媒活性を低下させる物質が含まれているが、予めフェノールをイオン交換樹脂処理することにより被毒物質を取り除き、工程(1)で使用する触媒の寿命を延長させる効果もある。
【0072】
上記フェノールとイオン交換樹脂との接触処理は、処理温度50〜120℃、接触時間5分〜10時間の条件で行うことができる。なお、イオン交換樹脂としては、上述した強酸性陽イオン交換樹脂を用いることができる。
【0073】
上記接触処理後の蒸留は、常圧〜10mmHgAの減圧下、温度70〜200℃の条件で行うことができる。これにより、工程(5)でより不純物や着色の低減された高品質のビスフェノールAを得ることができる。
【0074】
なお、前記イオン交換樹脂と接触させるフェノールは特に限定されず、市販のフェノールや、上記工程において除去・回収されたフェノールを用いることができる。
以上説明した本発明のビスフェノールAの製造方法の工程の一態様をフロー図として図1に示す。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない
[実施例1]
内径160mm、高さ2000mmのジャケット付固定床反応器(SUS製)に、4−メルカプトブチルトリフェニルホスホニウムで酸点の19%を中和したスルホン酸型イオン交換樹脂(レバチットK1221、ランクセス社製)を水膨潤状態の体積で25L充填した。
【0076】
この反応器に、フェノール 10/アセトン 1のモル比で混合し、45℃に調整した反応原料を、0.4MPaの圧力下、15L/h(LHSV=0.6h-1)の流量で連続的に供給しビスフェノールA合成反応を行った。この時の反応器出口温度は75℃であった。
【0077】
次に、得られた反応液を、40mmHgAの減圧下、100℃で未反応アセトン、反応生成水及び一部のフェノールを蒸発させ、ビスフェノールAが濃縮された液(1)を得た。
【0078】
次に、得られた濃縮液に水を10wt%になるように添加し、容量300Lの攪拌槽に150L/hの流量で連続的に供給しながら、5mmHgAの減圧下で水を蒸発させるこ
とにより90℃から45℃まで冷却してビスフェノールAとフェノールのアダクト結晶を含むスラリーを得た後、減圧式回転ろ過機により連続的に結晶と母液を分離した(主工程)。尚、固液分離と同時に、結晶に対し等量のフェノールを噴霧して洗浄を行った。
【0079】
この時に得られた結晶量は、原料供給量の約35wt%であった。また、分離した母液中には、ビスフェノールAが16wt%、o,p−ビスフェノールAが1.2wt%含まれていた。
【0080】
次に、得られた母液をビスフェノールA濃度が36wt%になるまで濃縮し、同様に晶析を行った後に固液分離・洗浄し、ビスフェノールAとフェノールのアダクト結晶(2)
を得た(副工程)。
【0081】
このアダクト結晶(2)を、反応液を濃縮して得た液(1)と、(1):(2)=7:1の割合で混合し、主工程と副工程を一貫して連続的に運転した場合における、主工程の晶析槽入口液を模した液を作成した(3)。尚、(1)と(2)の混合比は、主工程と副工程を連続的に運転した時に、主工程で得られた母液中のビスフェノールAの95%をアダクト結晶の形で回収した場合を想定している。
【0082】
この混合液(3)中には、ビスフェノールAが35wt%、o,p−ビスフェノールAが0.7wt%含まれていた。
次に、混合液(3)を、濃縮液(1)と同様の方法で晶析し、ビスフェノールAとフェノールのアダクト結晶を含むスラリーを得た。スラリーの一部をサンプリングし、小型遠心分離機で結晶と母液を分離した後、引き続き遠心分離をしながら結晶に対し等量のフェノールを噴霧して洗浄した。
【0083】
この結晶の組成を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、最も濃度の高い不純物であるo,p−ビスフェノールAの濃度はフェノールを除く総量に対し200ppmであり、一般的な高純度ビスフェノールA中に含まれる濃度(200〜300ppm)と比較しても非常に高いレベルの純度を達成していた。
【0084】
[実施例2]
実施例1において、使用する触媒を4−メルカプトエチルピリジンで酸点の19%を中和したスルホン酸型イオン交換樹脂(K1221)とした以外は、全く同様の操作を行った。晶析槽入口(混合液(3))のo,p−ビスフェノールA濃度は、実施例1と同様0.7wt%であった。得られたビスフェノールAとフェノールの付加物結晶中のo,p−ビスフェノールAは、フェノールを除いた総量に対して210ppmあった。
【0085】
[実施例3]
実施例1において、使用する触媒を3−メルカプトプロピルトリメチルアンモニウムで酸点の19%を中和したスルホン酸型イオン交換樹脂(K1221)とした以外は、全く同様の操作を行った。晶析槽入口(混合液(3))のo,p−ビスフェノールA濃度は、0.75wt%であった。得られたビスフェノールAとフェノールの付加物結晶中のo,p−ビスフェノールA濃度は、フェノールを除いた総量に対して250ppmであった。
【0086】
[比較例1]
実施例1において、反応原料の供給温度を60℃とした以外は、同様の操作を行った。この時の反応器出口の温度は90℃であった。この時、混合液(3)中にはo,p−ビスフェノールAが1.2wt%含まれていた。得られたビスフェノールAとフェノールの付加物結晶中のo,p−ビスフェノールA濃度は、フェノールを除いた総量に対して350ppmであった。
【0087】
[比較例2]
実施例1において、反応原料の供給速度を、5L/h(LHSV=0.2h-1)とした以外は、同様の操作を行った。この時の反応器出口の温度は75℃であった。この時、混合液(3)中にはo,p−ビスフェノールAが1.2wt%含まれていた。得られたビスフェノールAとフェノールの付加物結晶中のo,p−ビスフェノールA濃度は、フェノールを除いた総量に対して320ppmであった。
【0088】
[比較例3]
実施例1において、使用する触媒を2−メルカプトエチルアミン(システアミン)で酸
点の15%を中和したスルホン酸型イオン交換樹脂(K1221)とし、反応液の供給温度を48℃にした以外は、同様の操作を行った。この時の反応器出口の温度は75℃であった。この時、混合液(3)中にはo,p−ビスフェノールAが1.2wt%含まれていた。得られたビスフェノールAとフェノールの付加物結晶中のo,p−ビスフェノールA濃度は、フェノールを除いた総量に対して330ppmであった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の製造方法の一態様を示すフロー図である。
【図2】本発明の製造方法における工程(1)の一態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・反応器
2・・・除熱機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)フェノールとアセトンとを、含硫黄化合物で一部変性した強酸性陽イオン交換樹脂の存在下に反応させる工程、
(2)工程(1)で得られた反応液から、水と未反応のアセトンと未反応のフェノールの少なくとも一部とを除去して第一濃縮液を得る工程、
(3)該第一濃縮液を冷却してビスフェノールAとフェノールとのアダクト結晶を含む第一晶析液を得る工程、
(4)該第一晶析液を前記アダクト結晶と母液とに固液分離し、分離されたアダクト結晶を洗浄する工程および
(5)工程(4)で分離・洗浄されたアダクト結晶からフェノールを除去してビスフェノールAを得る工程
で構成される主工程と、
(6)工程(4)で第一晶析液から分離された母液から、少なくとも一部のフェノールを除去して第二濃縮液を得る工程、
(7)該第二濃縮液を冷却してビスフェノールAとフェノールとのアダクト結晶を含む第二晶析液を得る工程、
(8)該第二晶析液をアダクト結晶と母液とに固液分離し、分離されたアダクト結晶を洗浄する工程、および
(9)工程(8)で分離・洗浄されたアダクト結晶を、前記工程(2)または前記工程(3)に供給する工程
で構成される副工程とを有し、
前記工程(3)における第一濃縮液中の2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの濃度を1.0wt%以下とすることを特徴とするビスフェノールAの製造方法。
【請求項2】
前記含硫黄化合物が、下記一般式(a)で表される化合物、下記一般式(b)で表される化合物および下記一般式(c)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のビスフェノールAの製造方法:
【化1】

[式(a)中、R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基を表し、nは1〜10の整数を表し、Aは窒素原子またはリン原子を表す。]
【化2】

[式(b)中、R1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基を表し、nは1〜10の整数を表し、Aは窒素原子またはリン原子を表す。]
【化3】

[式(c)中、mは1〜20の整数を表す。]。
【請求項3】
前記工程(1)を、フェノールとアセトンとを混合した混合液を、含硫黄化合物で一部変性した強酸性陽イオン交換樹脂が充てんされた反応器に供給することにより実施し、該フェノールとアセトンの混合液の供給温度が40〜58℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のビスフェノールAの製造方法。
【請求項4】
前記フェノールおよびアセトンの混合液の供給速度が、前記含硫黄化合物で一部変性した強酸性陽イオン交換樹脂の体積(水膨潤状態)に対する単位時間あたりに供給するフェノールとアセトンの混合液の体積の割合(LHSV)が0.1〜2.0h-1となる速度であることを特徴とする請求項3に記載のビスフェノールAの製造方法。
【請求項5】
前記工程(8)で得られた母液の少なくとも一部を、強酸性陽イオン交換樹脂により処理した後、前記工程(6)または前記工程(7)に供給する工程(10)を副工程としてさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。
【請求項6】
前記工程(8)で得られた母液の少なくとも一部を濃縮してフェノールを除去する工程(11)を副工程としてさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。
【請求項7】
前記工程(11)で得られたフェノール除去後の濃縮液をアルカリ性触媒の存在下に加熱処理して、該濃縮液中のビスフェノール類及び副生物を分解し、生成したフェノールおよび4−イソプロペニルフェノールを蒸留により回収する工程(12)を副工程としてさらに有することを特徴とする請求項6に記載のビスフェノールAの製造方法。
【請求項8】
フェノールをイオン交換樹脂と接触させた後蒸留処理を行い、留出液を前記工程(1)のフェノールの少なくとも一部、前記工程(4)の結晶洗浄液の少なくとも一部または前記工程(8)の結晶洗浄液の少なくとも一部として用い、缶出液を前記工程(11)に送液する工程(13)を前処理工程としてさらに有することを特徴とする請求項6に記載のビスフェノールAの製造方法。
【請求項9】
前記工程(2)で得られた第一濃縮液の一部を、前記工程(6)または(7)に供給することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−196930(P2009−196930A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40000(P2008−40000)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】