説明

ビスマスで触媒されたポリウレタン組成物

本発明は、末端イソシアネート基を備え、且つ少なくとも1種のポリイソシアネート及び少なくとも1種のポリオールから作られた少なくとも1種のポリウレタンプレポリマー、並びに少なくとも1種のビスマス化合物及び少なくとも1種の芳香族窒素化合物から得られる少なくとも1種の触媒システムを含む一成分型ポリウレタン組成物に関する。本発明はまた、接着剤、シーラント、コーティング、又はライニングとしての前記ポリウレタン組成物の使用に関する。さらに、ポリウレタン組成物のための触媒が開示され、この触媒は、ビスマスと少なくとも1種の芳香族窒素化合物との間の配位化合物を意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン組成物分野、そしてさらにはポリウレタン組成物のための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン組成物は多くの分野で長いあいだ用いられてきた。一方で、2成分型ポリウレタン組成物が公知であり、これは1つの成分中にポリイソシアネートを含み、且つ第二の成分中にイソシアネート基と反応性の化合物、例としてアミン、などを含む。この種のシステムは、上記成分が混合された後急速に硬化することによって特徴づけられる。他方で、一成分型ポリウレタン組成物もまた公知である。これらのポリウレタン組成物は、反応性イソシアネートを含み、水の影響で硬化する。この目的のための水は、通常、空気に由来する(大気中の湿気)。水の拡散に支配されて、これらの組成物を適用した後に続く組成物の硬化は2成分型システムの場合よりも顕著に遅く起こる。この効果は、不利な適用条件、例えば、低温又は低大気湿度、の下で特にいうことができ、例えば、そのような場合には、しばしば不完全硬化をもたらし、それゆえに、組成物の低い最終機械強度をもたらす。上記遅い硬化速度に支配されて、さらには、一成分型組成物は低い初期強度(組成物が完全に硬化する前の、所定時間後の強度)しかもたず、これはその材料を早期に積み出すこと(これはユーザーが多くの場合に所望することである。)を不可能にする。遅い硬化速度、低い初期強度、及び不完全硬化の問題に対処するため、通常、触媒が用いられる。1成分型湿気反応性ポリウレタン組成物のために適した触媒は、しばしば錫化合物を含み、たびたび第三級アミンと組み合わせられる。しかし、この種の錫化合物は、毒性上の関心によって、ユーザーからの高まる圧力の下に置かれている。したがって、錫触媒に対する、より毒性上好ましい代替物への強まりつつある要求が存在する。
【0003】
ビスマス触媒は、上述した錫触媒よりもずっと低い急性毒性しかもたず、そして、ユーザーの立場からは後者よりも明らかに好ましい。ポリウレタン組成物のために公知のビスマス触媒の例は、WO98/36007号中で言及されているビスマスカルボキシレート、例えば、ビスマスオクトエート、を含む。しかしながら、イソシアネート/水の反応に関するビスマス化合物の触媒活性は、錫触媒の活性よりもずっと低い。充分な硬化速度のために必要とされる高い触媒使用量は、しかしながら、そのようなビスマスカルボキシレートを含有するポリウレタン組成物がユーザーによって必要とされる全保存期間、通常数ヶ月からたかだか1又は2年、にわたって使用可能に保つことはできないことを意味し、なぜなら、たとえ水が存在しなくても、組成物中のイソシアネート基がビスマス触媒の影響で反応をおこすからである。この種の組成物の不充分な貯蔵安定性は、実際には、それが適用の可能性を失うまで、貯蔵期間にわたって粘度が徐々に増加すること(粘度の増加には、その組成物の適用性の悪化の増大が伴う。)に明らかに示される。
【0004】
貯蔵時に安定であり、且つ水又は大気中の湿気ですみやかに硬化する、現在ある1成分型ポリウレタン組成物は、しばしば、さらに、自動車製造において使用され、そしてそのため当業者に「自動車用塗料」として公知の塗料上へのそれらの接着特性について弱点を有する。特に新世代の自動車用塗料への接着は、しばしば、湿気硬化性1成分型ポリウレタン接着剤を用いて充分に達成することができない。そのような塗料が複数回焼き付けられる場合、その基材に対する接着剤の有効な接着性を達成すること、及び長期間にわたってそのような接着を維持することも特に困難である。
【特許文献1】国際公開WO98/36007号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(本発明の説明)
本発明の目的は、一方で水の不存在下での貯蔵において充分安定であり、他方で適用に続いて急速かつ完全に硬化し、同時に充分長いオープンタイムを可能にし且つ高い初期強度を有する湿気硬化性1成分型ポリウレタン組成物を提供することである。この組成物はさらに自動車用塗料、特に複数回焼き付けされる自動車用塗料に対する有効な接着特性を有しているべきである。
【0006】
驚くべきことに、所望の特性を有する湿気硬化性1液型ポリウレタン組成物が発見された。説明する組成物は、ビスマス化合物及び少なくとも1種の芳香族窒素化合物から構成される触媒システムを含有する。一方で、説明する組成物は、水の不存在下での貯蔵において極めて安定であり、そして他方で、その適用に続き、高い初期強度を有しそして急速かつ完全に硬化する。この組成物は良好な作業性を有し、そしてさらに、複数回焼き付けされる自動車用塗料に対する非常に良好な接着特性を有する。説明する組成物は、接着剤、シーラント、コーティング、又はライニングとしての使用に適する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の実施の方法)
本発明は1成分型ポリウレタン組成物に関し、この組成物は末端イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリウレタンポリマーを含み、これは少なくとも1種のポリイソシアネート及び少なくとも1種のポリオール、並びに少なくとも1種のビスマス化合物及び少なくとも1種の芳香族窒素化合物から得られる少なくとも1種の触媒システム、から調製される。
【0008】
「ポリオール」及び「ポリイソシアネート」中の接頭辞「ポリ」は、ここ及び以下で、1分子当たりのそれぞれの官能基の数が2以上であるという事実の記載である。
【0009】
本明細書全体において、「芳香族窒素化合物」により、芳香族系の一部分である少なくとも1つの窒素原子を含む芳香族化合物を意味し、そしてこれは、当業者には窒素ヘテロ芳香族として公知でもある。
【0010】
上記ポリウレタンプレポリマーは少なくとも1種のポリオール及び少なくとも1種のポリイソシアネートから調製される。ポリイソシアネートとポリオールの反応は、通常の方法により、例えば50〜100℃の温度で、適切な触媒及び/又は可塑剤及び/又は選択した反応条件下でポリイソシアネートと反応しない溶媒を使用し、ポリイソシアネートを化学量論で過剰量用いて、ポリオール及びポリイソシアネートを反応させることを伴うことができる。形成された反応生成物は、末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーである。ポリイソシアネートの過剰度は、ポリオールの全ての水酸基が反応した後に、ポリウレタンプレポリマーのフリーイソシアネート基含有量がそのポリウレタンプレポリマー全体を基準にして、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜5質量%となるように選択される。
【0011】
プレポリマー調製のために用いるポリオールは、ポリウレタン化学で通常用いられるポリオールである。さらに、ヒドロキシ基を含有するポリアクリレート類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、及びポリブタジエン類の他に、ポリオキシアルキレンポリオール類、特にポリオキシエチレンポリオール類、ポリオキシプロピレンポリオール類、及びポリオキシブチレンポリオール類、好ましくはポリオキシアルキレンジオール類又はトリオール類に特に関心がもたれる。上記ポリオールの分子量は、典型的には250〜30000g/mol、特に500〜15000g/molの範囲である。800〜6000g/molの分子量を有するポリオール類を用いることが好ましい。「分子量(molecular weight)」又は「モル質量(molar weight)」は、常に、ここ及び以下において、平均分子量Mwを意味する。
【0012】
好ましいポリオール類は、単純なポリオキシプロピレンポリオール類及び同様に「EO末端キャップ」(エチレンエチレンオキシド末端キャップ)ポリオキシプロピレンポリオール類とよばれるポリオール類である。後者は特別なポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオール類であり、これは例えば、ポリオキシプロピレン化が終了した後に、単純なポリオキシプロピレンポリオール類をエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られ、そしてこれは結果として一級水酸基を含有する。
【0013】
さらに好ましいポリオール類は、0.04meq/g未満、好ましくは0.02meq/g未満、そしてさらに好ましくは0.017meq/g未満の総不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオール類である。1つの好ましい態様においては、そのようなポリオキシアルキレンポリオール類は、2000〜30000g/molの分子量を有する。
【0014】
これらの具体的なポリオキシアルキレンポリオール類は、開始剤分子とアルキレンオキシド類、例えば、1,2−プロピレンオキシド又はエチレンオキシドとの反応生成物であり、アルキレンオキシド類については、個別に、交互に連続して、又は混合物として用いることができる。通常用いられる重合触媒は、複合金属シアン化物錯体(ダブルメタルサイアナイド錯体)、又は略してDMC触媒、である。この種のポリオール類は、例えば、バイエル社からアクレイム(Acclaim(登録商標))及びアルコール(Arcol(登録商標))の名称で、旭硝子社からプレミノール(Preminol(登録商標))の名称で、レプソール(Repsol)社からアルクポール(Alcupol(登録商標))、アーコ(Arco)ケミカルズ社からポリ−L(Poly-L(登録商標))の名称で市販されている。ポリオール類の製造にDMC触媒を用いる結果として、それらは非常に低い不飽和度を有する。これは、それらのポリオール類において、一つの分子鎖末端に二重結合及び他の分子鎖末端にOH基をもつポリオキシプロピレン類(「モノオール」といわれる)の量が非常に低いことを意味する。モノオールは、プロポキシル化の間のプロピレンオキシドの異性化がアリルアルコールを生成し、これがアリル末端ポリオキシプロピレン類の生成をもたらす結果として生じる。不飽和度は、ASTM D−2849−69(「ウレタンフォームポリオール原料の試験」)に準拠して測定され、ポリオールの1グラム当たりの不飽和のミリ当量(meq/g)として記録される。これらのポリオール類の総不飽和度(meq/g)は、モノオール含有量に対応する。平均分子量(又は合計OH含有量)及び総不飽和度から、ポリオールの平均OH官能基数を計算することができる。ポリオール類の混合物も同様に用いることができる。
【0015】
これらの提示したポリオール類に加えて、2以上の水酸基を有する低分子量化合物、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール並びにそれらの異性体;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、並びにそれらの異性体;水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール及び糖アルコール類及びその他の多官能アルコール類、並びに上記ヒドロキシル基含有化合物の混合物を、上記ポリウレタンプレポリマーを製造する場合に用いることができる。
【0016】
上記ポリウレタンプレポリマーを製造するためには、ポリイソシアネート類を用いる。好ましいポリイソシアネート類は、ジイソシアネート類である。挙げることができる例には、ポリウレタン化学において周知の以下のポリイソシアネート類が含まれる:2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)及び全ての所望するこれらの異性体混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートの位置異性体類、及びこれらのイソシアネート類のオリゴマー類及びポリマー類、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−及び2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−及び1,4−ジイソシアネート、及び全ての所望するこれらの異性体混合物、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、パーヒドロ−2,4’−及び−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−及び1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び上記イソシアネート類の所望する混合物の全て。
【0017】
上記ポリウレタン組成物は、少なくとも1種のビスマス化合物及び少なくとも1種の芳香族窒素化合物から得られる少なくとも1種の触媒システムをさらに含む。
【0018】
上記芳香族窒素化合物は好ましくは以下の式A又はBを有する化合物である。
【0019】
【化1】

【0020】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ互いに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、C〜C12アルキル、COOH、COOR’、又はハロゲンである。
R7は、H、メチル、エチル、C〜C12アルキル、OH、又はOR’’であり、そして、
R8はアルキレン又はアルキレンエーテルである。
最後にR’はアルキル残基であり、かつ、R’’はアルキル残基又はヘテロ原子を含むアルキル残基である。
【0021】
式Aにおける好ましいR7は、メチル、エチル、C〜Cアルキル、又はO−(CHCHO)−R’若しくはO−(CHCH(CH)O)−R’又はこれらの位置異性体(ここでxの値は1〜6である。)、又はOHである。特に好ましいR7は、OHである。
【0022】
式Bにおける好ましいR8は、C〜Cアルキレン、又は(CHCHO)CHCH若しくは(CHCH(CH)O)CHCH(CH)若しくはそれらの位置異性体(ここでyの値は0〜5である。)である。特に好ましいものはy=2又は3の値である。
【0023】
2つの式A又はBにおいて、好ましい置換基R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は互いに独立して、H、又はメチルである。特に好ましくはHである。
【0024】
多くの従来のビスマス触媒が、上記ビスマス化合物として用いられうる。これらには、例えば、アセテート、オレエート、オクトエート、又はネオデカノエートなどのビスマスカルボキシレート類;例えば、硝酸ビスマス;臭化物、塩化物、又はヨウ化物などのハロゲン化ビスマス;例えば、硫化ビスマス;ビスムチルネオデカノエートなどの塩基性ビスマスカルボキシレート;ビスマスサブガレート(subgallate)、又はビスマスサブサリシレート(subsalicylate);例えば、さらにそれらの混合物、が含まれる。ビスマスカルボキシレート類、特にトリカルボキシレートBi(OOC-R’’’)3(式中、R’’’はC〜C17アルキル残基、特にC〜C11アルキル残基、好ましくはC又はCアルキル残基である)が好ましい。上記ビスマスカルボキシレートは、例えば、酸化ビスマスから出発する公知の方法によって調製することができる。
【0025】
上記ビスマス化合物は、粉末、液体、又は溶液の形態で用いることができる。
【0026】
上記触媒システムは、上記ビスマス化合物及び上記芳香族窒素化合物を違いに結合させることによって調製される。この結合は、可塑剤又は溶媒などの不活性媒体中で行うか、又はポリウレタン組成物中で直接行うことができる。
【0027】
1つの好ましい態様においては、ポリウレタン組成物に触媒システムを添加する前に、触媒システムは、例えば、上記ビスマス化合物及び上記芳香族窒素化合物を別々に溶解し、例えば、その溶液を互いに混合し、且つそれらを完全に混ぜることによって、可塑剤又は溶媒などの不活性媒体中で調製される。短時間その混合物を加熱すること(例えば50〜120℃に1時間)は特に有利である。
【0028】
上記芳香族窒素化合物及び上記ビスマス化合物を混合する場合、その成分が完全に混合することを確実に行うことが通常必要である。ビスマス化合物及び芳香族窒素化合物を計る方法にもまた、特に注意が払われなければならない。
【0029】
説明した上記触媒システムは配位化合物(錯体)を含むことができ、ここでは芳香族窒素化合物はビスマス原子に配位子として配位的に結合する。この方法における錯体の形成は、色の変化、この場合一般に強い黄色の着色、によって確認でき、これはビスマス化合物を芳香族窒素化合物と混合したときに生じうる。この種の色の変化は当業者に公知であり、錯体の形成の必須の指標と考えられる。
【0030】
上記触媒システムの計量は、所望する特性に左右される。ここでは、一方でビスマス化合物に関する触媒システムについて使用される芳香族窒素化合物の量について、他方ではポリウレタン組成物中の上記触媒システムの濃度について特別の配慮が払われるべきである。
【0031】
ビスマスに対する芳香族窒素化合物の割合に関しては、配位理論(錯体化学)から公知の「座」の概念を考慮しなければならない。配位子の特定官能基が、金属原子又は金属イオンと配位結合(錯体結合)を形成する。芳香族窒素化合物は例えば、1種のそのような官能基でありえる。1つの配位子中ではしたがって、2以上のそのような官能基、同一又は異なる、が存在することができ、それらは金属原子に配位結合することができる。具体的な金属原子を配位結合するために適したそれらの官能基の数に従って、配位子はそれゆえ、「単座」(配位数=1)、「二座」(配位数=2)、「三座」(配位数=3)、「四座」(配位数=4)、「多座」(polydentate, multidentate)などといわれる。したがって本発明の場合は、金属原子としてはビスマスであり、式Aの化合物は、R7がOH又はOR’’であってそれらが二座である場合を除いて単座であると考えられる一方、式Bの化合物は四座であると考えられる。
【0032】
上述したポリウレタン組成物は一方で、水の不存在下で非常に良好な貯蔵安定性を有し、そして他方ではそれらの適用に続いて、高い初期強度及び急速且つ完全に硬化する。
【0033】
貯蔵時のポリウレタン組成物の有効な安定性をともに急速な硬化を達成するためには、(芳香族窒素化合物×配位数)のビスマスに対するモル比が、0.2:1〜12:1の範囲から選択される場合に最良の結果が達成されることが発見された。約0.1:1〜6:1の、小さな比が本文脈においては好ましく、なぜならそのような割合により、組成物の明確な安定性が既に達成され、しかも同時にビスマス化合物の触媒活性が本質的に維持されるからである。(ビスマス化合物又はビスマス触媒の「触媒活性」は、本明細書を通じて、ビスマス含有量(質量%で)に基づくビスマス化合物の触媒作用を意味し、触媒作用はイソシアネート基の反応に向けられている。)この場合、全ポリウレタン組成物の質量を基準にして0.001〜1質量%のビスマス、好ましくは0.01〜0.5質量%のビスマスの量で、上記触媒システムが計量されうる。
【0034】
上記比が6:1よりも大きい場合、ビスマスに対して6の配位数(8面体配位)を仮定すると、配位子過剰に相当し、実体のない安定性の改善のみがある一方、触媒活性は著しく低下する。
【0035】
上記芳香族窒素化合物を用いてビスマス化合物を変性することの結果として、上述した触媒活性の減少は、適用直後の硬化反応速度にのみ影響を及ぼすことに言及しておくべきであろう。上記減少はおそらく、上記変性されたビスマス化合物は最初に水によって活性化されなければならず、そしてそのために不活性のままで始まり、そして時間経過によってのみ完全な触媒活性を獲得するという事実に帰因されうる(「遅延」又は「時の経過」として知られる効果;2成分型組成物においては、この効果の結果は可使時間(ポットライフ)の増加である。)。この活性化期間が経過したときには、上記変性されたビスマス化合物は未変性化合物と同じ触媒活性をもち、続いてポリウレタン組成物の強度の急速な増加及び急速な硬化へと導く。初めのわずかに低減された触媒活性は、説明した触媒システムについて観測されるように、言及した理由によって、本発明のポリウレタン組成物の特性に対していかなる有害な結果ももたらさない;その代わり、反対にそれは好ましい可能性があり、なぜなら、初めに粘度が非常にわずかにしか上昇しないことによって、適用後の組成物の可使時間(オープンタイムとしても知られる。)がさらに増加されるからである。
【0036】
説明した上記ポリウレタン組成物はまた、ポリウレタン化学において通例の他の有機金属触媒を、共触媒として含むこともできる。特に有利な組み合わせは、錫化合物、例えば、錫(II)オクトエート、ジブチル錫ジラウレート、又はジブチル錫ジアセテートなどの錫化合物と本発明の触媒システムの組み合わせであり、なぜなら、ポリウレタン組成物におけるそのような混合物の触媒活性は、本発明の触媒システム単独のものよりも高いからである。さらに、ポリウレタン化学でよく知られるその他の触媒を共触媒として使用することも可能であり、例はDABCO(=1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)又は2,2’−ジモルホリノジエチルエーテルである。そのような触媒を混合することは、ポリウレタン組成物の特定の応用に対して有利でありえる。
【0037】
説明した上記ポリウレタン組成物に存在しうる追加の成分には、数あるなかでも、ポリウレタン工業で周知の以下の助剤及び添加剤が含まれる:
可塑剤、例としては有機カルボン酸又はそれらの無水物のエステル類、例えば、ジオクチルフタレート又はジイソデシルフタレートなどのフタレート類、例えば、ジオクチルアジペートなどのアジペート類、例えば、セバケート類、有機リン酸及びスルホン酸エステル類、ポリブテン類、及びその他のイソシアネート非反応性化合物;溶媒;有機及び無機フィラー、例えば粉砕又は沈降炭酸カルシウム類、例えば任意にステアレートコーティングのあるもの、カーボンブラック、カオリン、アルミナ、シリカ、及びPVC粉末;繊維類、例えばポリエチレンの繊維;顔料;増粘剤などのレオロジー調整剤、例は尿素化合物である、ポリアミドワックス、ベントナイト、又は火成性シリカ;接着促進剤、特にエポキシシラン類、ビニルシラン類、イソシアネートシラン類、及びアルデヒド類と反応してアルドイミノシラン類を形成したアミノシラン類などのシラン類;例えば、p−トシルイソシアネート及びその他の反応性イソシアネート類、オルソギ酸エステル類、酸化カルシウム、又はモレキュラーシーブスなどの乾燥剤;熱、光、及び紫外線に対する安定剤;難燃剤;例えば、湿潤剤などの界面活性剤、レベリング剤、揮発分除去剤、又は消泡剤;防かび剤又はカビの繁殖を防止する化合物;及びさらに、ポリウレタン工業で従来用いられている物質。
【0038】
説明した上記ポリウレタン組成物は、湿気の不存在下で製造し且つ保持される。この組成物は貯蔵中に安定である:すなわち、例えば、ドラム、袋、又はカートリッジ内などの適当な包装又は適当な処理において、ポリウレタン組成物は数ヶ月から1年以上に至るまで、その適用性能を失うことなく、適用前に保存されうる。適用すると、このポリウレタン組成物は湿気と接触し、するとすぐにイソシアネート基が水と反応し、そして結果としてポリマーを硬化させる。硬化に必要な水は空気から来ることができるか(大気の湿度)、又はポリウレタン組成物が、例えば、平滑剤でブラシがけすることにより;スプレーにより、もしくは浸漬法手段により、水を含む成分と接触させられることができ、又は、例えば含水ペーストの形態の、例えばスタティック・ミキサーによって混合されうる含水成分が、ポリウレタン組成物に添加されうる。
【0039】
説明した上記ポリウレタン組成物は、例えば建築におけるシーリングジョイントの目的のための任意の種類のシーラントとして、例えば自動車、鉄道車両、船舶、又はその他の工業製品の生産における接着部材として多様な基材を結合するための接着剤として、そしてさらに多様な物品及び様々な基材のためのコーティング又はライニングとして使用するのに適している。好ましいコーティングは、保護コート、シーリングシステム、保護コーティング、及びプライマーである。ライニングの中でも、特に好ましいものはフロア被覆剤である。この種の被覆剤は典型的には反応性組成物を基材上に注ぎ、且つそれを平らにならす(レベリング)ことによって作られ、そこで硬化してフロア被覆剤を形成する。この種のフロア被覆剤は、例えば、オフィス、生活圏、病院、学校、倉庫、ガレージ、及びその他の個人的な又は工業上の応用のために使用される。
【0040】
特に好ましくは、本発明の組成物は接着剤又はプライマーとしての応用を発見している。
【0041】
上記ポリウレタン組成物は、少なくとも部分的にいずれかの所望する基材の表面と密着される。特に、使用の目的のために、接着剤又はシール剤又はその基材が覆われるべきである形態における接着剤を必要とする領域において、シーラント又は接着剤の形態、コーティング又はライニングにおける密着剤、を統一することが好ましい。密着されるべき基材及び/又は物品にとって、接触される準備として、物理的及び/又は化学的前処理を受けさせられることが必要となりえるが、それは例えば研磨、サンドブラスト、ブラシがけ、又はそのた同様の方法によって、又は洗浄剤、溶媒、接着促進剤、接着促進溶液又はプライマー、又はタイ・コート(tie coat)若しくはシーラーの適用による。既に説明したように、密着に続いて、水の影響下での硬化が起こる。
【0042】
請求項1に係るポリウレタン組成物は、特に多数回焼き付けされた自動車用塗料に関連して、特に自動車用塗料が用いられた塗装表面の接着剤又はプライマーとして特に適することが発見された。
【0043】
追加の請求項は、ポリウレタン組成物のための触媒であって、これはビスマスと式A又はBの芳香族窒素化合物との間の配位化合物(錯体)である。
【0044】
【化2】

【0045】
上記式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ互いに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、C〜C12アルキル、COOH、COOR’、又はハロゲンである。
R7は、H、メチル、エチル、C〜C12アルキル、OH、又はOR’’であり、
R8はアルキレン又はアルキレンエーテルである。
最後にR’はアルキル残基であり、かつ、R’’はアルキル残基又はヘテロ原子を含むアルキル残基である。
【0046】
式Aにおける好ましいR7は、C〜Cアルキル、又はO−(CHCHO)−R’若しくはO−(CHCH(CH)O)−R’又はこれらの位置異性体(ここでxの値は1〜6である。)、又はOHである。特に好ましいR7は、OHである。
【0047】
式Bにおける好ましいR8は、C〜Cアルキレン、又は(CHCHO)CHCH若しくは(CHCH(CH)O)CHCH(CH)若しくはそれらの位置異性体である(ここでyの値は0〜5である。)。特に好ましいのはy=2又は3の値である。
【0048】
2つの式A又はBにおいて、好ましい置換基R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は互いに独立して、H、又はメチルである。特に好ましくはHである。
【0049】
特に適することが立証された触媒は、ビスマス及び8−ヒドロキシキノリンのあいだの配位化合物、又はビスマス及びテトラエチレングリコールビス(8−キノリル)エーテルとのあいだの配位化合物である。
【0050】
驚くべきことに、上述した触媒はポリウレタンプレポリマーを調製するために有効に用いることができることが発見されている。この場合、少なくとも1種の上述した触媒の存在下で、少なくとも1種のポリイソシアネートと少なくとも1種のポリオールの反応が著しく加速されるが、このプレポリマーの貯蔵安定性についての問題増加をもたらさない。したがって、このことは、一方で、ポリウレタンプレポリマーのためのより短い製造時間をもたらし、そして他方では、このポリウレタンプレポリマー、及びこれを用いて配合された製品は、粘度のいかなる実質的増加なしに長期間貯蔵されうる。
【0051】
(実施例)
実施例1〜9及び比較例10〜26
表1及び表2に従って開始モル比L×Z/Biで、ネオデカン酸中のビスマストリス(ネオデカノエート)(商品名:NeoBi 200、シェファード・ケミカルズ社;ビスマス含有量 20.0質量%)及び配位数Zの化合物Lをガラスフラスコに仕込み、そして正式に2.0質量%の合計ビスマス含有量までジイソデシルフタレートで希釈した。この混合物を乾燥窒素下に置き、そして激しく撹拌しながら1時間、100℃に加熱した。得られた触媒溶液又は懸濁液を冷却し、そして次に、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに対してプレポリマーの100質量%あたり3.0質量%の量(すなわち、正式には、0.06質量%のビスマス)を混合した。この場合に用いたプレポリマーは、以下のように製造した:
259gのポリオール(Acclaim(登録商標)4200N、バイエル社)、517gのポリオール(Caradol(登録商標)MD34−02、シェル社)、及び124gの4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI;Desmodur(登録商標)44 MC L、バイエル社)を公知の方法によって80℃で反応させ、NCO末端プレポリマーを得た。この反応生成物は、2.35質量%の、滴定で決定したフリーイソシアネート基含有量、及び20℃で84Pa・sの粘度を有していた。
【0052】
混合操作の後、組成物は直ちに内面コートされたアルミニウムチューブに入れ、これをしっかりと密封し、そしてオーブン中に60℃で貯蔵した。
【0053】
上記混合物を最初に1日後、そして再度7日後に試験した。それぞれの場合に、試験にはスキン形成時間及び粘度の決定が含まれる。
【0054】
室温にある上記組成物を、23℃及び約50%相対湿度で3mmの層の厚さにカードボードへ適用し、そして次に組成物が、その表面をLDPEピペットで突いたときに、もはやピペットにいかなるポリマーの残留物も残さなくなるまでに経過した時間を決定することによって、スキン形成時間を決定した。
【0055】
粘度は、20℃で、Physica社のコーンプレート粘度計で決定した。コーンとプレートの間の最小距離は、0.05mmだった;測定は、30S−1の一定の剪断速度で行った。粘度の変化は、ポリウレタン組成物の貯蔵安定性の尺度である。
【0056】
実施した試験の結果は、表1及び2に示した。
【0057】
これらの結果は、実施例1〜9の本発明の組成物(それぞれ本発明のビスマス触媒システムを含む。)(表1)は、比較例10(触媒としてビスマスカルボキシレートのみを含む。)(表2)と比較した場合、全てがより優れた貯蔵安定性を有し、そして用いた芳香族化合物Lしだいで、より短いスキン形成時間からわずかに長いスキン形成時間までを有することを示している。元来存在する好ましくない増加は、しかしながら+8%の最大値で残っているが、なお許容できる範囲内である。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2A】

【表2B】

【0060】
比較例11〜26(本発明ではないビスマス触媒システムを含む。)(表2)は、一方、比較例10(触媒としてビスマスカルボキシレートのみを含む。)と比較した場合、全てがいかなる改善もされず又は上記比較例よりも明らかにおとる。したがって、比較例11〜21の組成物は、たぶん許容可能なスキン形成時間を示すが、貯蔵安定性に関しては、比較例10よりも優れていないか又は明らかに劣る。反対に、比較例10と比較した場合、比較例22〜26は貯蔵においてたぶんより安定であるが、全てはより長いスキン形成時間を有し、その増加は、+90%〜+356%の値であり、許容可能の外にある。これらの組成物の反応性はしたがって、触媒されていない組成物の反応性とわずかにのみ異なるだけである。
【0061】
〔実施例27〜35〕
表3に従って開始モル比L×Z/Biで、ネオデカン酸中のビスマストリス(ネオデカノエート)(商品名:NeoBi 200、シェファード・ケミカルズ社;ビスマス含有量 20.0質量%)及び配位数Zの化合物Lをガラスフラスコに仕込み、そして正式に2.0質量%の合計ビスマス含有量までジイソデシルフタレートで希釈した。この混合物を乾燥窒素下に置き、そして激しく撹拌しながら1時間、100℃に加熱した。得られた触媒溶液又は懸濁液を冷却し、そして次に、実施例1に記載したイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーに、プレポリマーの100質量%あたり3.0質量%の量(すなわち、正式には、0.06質量%のビスマス)をイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに混合し、そしてこの混合物を実施例に記載したようにして貯蔵及び試験をした。実施した試験の結果を表3に示した。
【0062】
表3の結果は、実施例7及び27〜35(それぞれ、本発明のビスマス触媒システムを含む。)の本発明の組成物は、比較例10(触媒としてビスマスカルボキシレートのみを含む。)と比較した場合、全て −すなわち、配座数Zの化合物L及びビスマス(L×Z/Bi、mol/mol)の間の割合の全範囲にわたって− がより良好な貯蔵安定性を示す。用いた比に応じて、安定化効果は多かれ少なかれはっきりしている:選択した比が大きいほど、それだけ組成物はより安定である。反対に、大きな比では、スキン形成時間も増加する。この増加はしかし、実施例35で最も高い選択をした割合でさえ、許容可能(+16%)にとどまっている。全体に最良である特性のパターン(高い安定性、遅いスキン形成時間)は、中央(6/1)からより低い(0.2/1)範囲のL×Z/Biの比に対して生み出される。
【0063】
【表3】

【0064】
〔実施例36〜38及び比較例39〕
表4に従って、開始モル比L×Z/(Bi+Sn)で、ネオデカン酸中のビスマストリス(ネオデカノエート)(商品名:NeoBi 200、シェファード・ケミカルズ社;ビスマス含有量 20.0質量%)3質量部、及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL;Metatin(登録商標)触媒712、Acima/Rohm & Haas社;錫含有量18.5質量%)1質量部を、配座数Zの化合物Lとともにガラスフラスコに仕込み、そして正式に1.0質量%の合計ビスマス含有量(又は0.31質量%の錫)までジイソデシルフタレートで希釈した。この混合物を乾燥窒素下に置き、そして激しく撹拌しながら1時間、100℃に加熱した。得られた触媒溶液又は懸濁液を冷却し、そして次に、実施例1に記載したイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーに、プレポリマーの100質量%あたり3.0質量%の量(すなわち、正式には、0.03質量%のビスマス及び0.01質量%の錫)をイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに混合し、そしてこの混合物を実施例1に記載したようにして貯蔵及び試験をした。実施した試験の結果を表4に示した。
【0065】
【表4】

【0066】
表4の結果から、実施例36〜38の本発明の組成物(それぞれは錫共触媒と組み合わされた本発明のビスマス触媒システムを含む。)は、実施例7、29、及び31(それぞれ錫共触媒なしで本発明のビスマス触媒システムを含む)と比較し、並びに比較例10(触媒としてビスマスカルボキシレートのみを含み、錫共触媒を含まない。)と比較した場合その両方とも、それぞれの場合に、より短いスキン形成時間を示している。組成物の貯蔵安定性は、錫なしの組成物のものと概略同じ特性である。比較例39(これは錫及びビスマスを含むが芳香族窒素化合物を含まない。)は、比較例10よりもずっと速いスキン形成時間を有するが、不利な貯蔵安定性をもっている。
【0067】
実施例36〜38は従って、本発明の組成物及び、それぞれに、本発明のビスマス触媒システムが、有利に錫触媒と組み合わされることができることを示している。
【0068】
〔実施例40及び比較例41〜43:〕
この実施例は、本発明のポリウレタン組成物の製造及び接着剤としてのその使用を説明する。
【0069】
真空攪拌機中で、1500gのプレポリマー1、250gのプレポリマー2、1000gのカオリン、625gのカーボンブラック、500gのジイソデシルフタレート(DIDP;Palatinol(登録商標)Z、BASF)、1000gの尿素系増粘剤、25gの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A−187、OSi Crompton社)、及び表5に従って100gの触媒溶液1〜4のうちの1つを、塊なしの均一なペーストに加工した。
【0070】
プレポリマー1及び2は、以下のように調製した:
プレポリマー1: 2155gのポリオールAcclaim(登録商標)4200 N(バイエル社)、4310gのポリオールCaradol(登録商標)MD34−02(シェル社)、及び1035gの4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI;Desmodur(登録商標)44 MC L、バイエル社)を公知の方法によって80℃で反応させて、NCO末端プレポリマーを得た。この反応生成物は、2.36質量%の、滴定で決定したフリーイソシアネート基含有量を有していた。
【0071】
プレポリマー2: 590gのポリオールAcclaim(登録商標)4200N(バイエル社)、1180gのポリオールCaradol(登録商標)MD34−02(シェル社)、及び230gのイソホロンジイソシアネート(IPDI; Vestanat(登録商標)IPDI、Degussa社)を公知の方法によって80℃で反応させて、NCO末端プレポリマーを得た。この反応生成物は、2.12質量%の、滴定で決定したフリーイソシアネート基含有量を有していた。
【0072】
上記尿素系増粘剤は以下のように調製した:
真空ミキサーに、1000gのジイソデシルフタレート(DIDP; Palatinol(登録商標)Z、バイエル社)及び160gの4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI; Desmodur(登録商標)44 MC L、バイエル社)を仕込み、そしてこの初期仕込み物をわずかに加温した。次に、激しく撹拌しながら、90gのモノブチルアミンを滴下してゆっくり加えた。得られたペーストを真空下でさらに1時間、冷却しながら撹拌した。
【0073】
触媒溶液1〜4は以下のように調製した:
触媒溶液1:ネオデカン酸中のビスマストリス(ネオデカノエート)(NeoBi 200、Shepherd Chemicals社;ビスマス含有量20.0質量%)及びジイソデシルフタレート(DIDP)中の8−ヒドロキシキノリン(配座数Z=2)を、1.5/1のL×Z/Bi(モル比)でガラスフラスコに仕込み、そして正式に5.85質量%の合計ビスマス含有量までDIDPで希釈した。この混合物を激しく撹拌しながら80℃で1時間加熱し、次に室温まで冷却した。
【0074】
触媒溶液2: ネオデカン酸中のビスマストリス(ネオデカノエート)(NeoBi 200、Shepherd Chemicals社;ビスマス含有量20.0質量%)をガラスフラスコに仕込み、そして正式に5.85質量%の合計ビスマス含有量までDIDPで希釈した。
【0075】
触媒溶液3: ネオデカン酸中のビスマストリス(ネオデカノエート)(NeoBi 200、Shepherd Chemicals社;ビスマス含有量20.0質量%)及びジイソデシルフタレート(DIDP)中のトルエン−4−スルホニルイソシアネート(配座数Z=1)を、3/1のL×Z/Bi(モル比)でガラスフラスコに仕込み、そして正式に5.85質量%の合計ビスマス含有量までDIDPで希釈した。
【0076】
触媒溶液4: 10gの2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)及び1gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL; Metatin(登録商標)触媒712、Acima/Rohm & Haas社;錫含有量18.5質量%)を89gのDIDPと混合し、均一溶液になるまで撹拌した。
【0077】
結果として得られる接着剤の調製後すぐに、それらは直径45mmを有するアルミニウムカートリッジに分配し、これを気密シールし、さらにオーブン中で60℃に貯蔵した。1日後、押出力、スキン形成時間、初期強度、及び接着特性について、上記接着剤を試験した。7日後に、再度、押出力を測定した。
【0078】
押出力(Extrusion force)(ETF)は各場合に、室温で開封したてのカートリッジについて決定し、接着剤は、室温で、5mmの開口部を通してカートリッジの先端から押し出した。押出しは、引張試験機を用いて60mm/分の一定速度で行った。
【0079】
スキン形成時間(SFT)は実施例1に記載したようにして決定した。
【0080】
初期強度は以下のように決定した。
最初に、40×100×6mmの小さな2枚のガラス板の接着を行う面をシーカ・アクティベーター(Sika(登録商標)activator、Sika Schweiz AGから入手可)で前処理した。10分の蒸発時間後、接着剤を1枚のガラス板に三角のビードとして適用した。約1分後、第二のガラス板及び引張試験機(Zwick)を用いて、その接着剤を4mmの厚さに圧縮し(約1cmの接着幅に対応する。)、次に23℃及び50%相対湿度で90分間貯蔵し、そして続いて100mm/分の引張速度で引きはがし、このために必要とされる最大応力をN/cmで記録した。
実施した試験の結果を表5に示す。
【0081】
【表5】

【0082】
上記接着試験については、基材をイソプロパノールで前もって清浄にし、そして30秒の揮発時間後に、アルミニウムカートリッジから三角のビードの形状に接着剤を適用した。
【0083】
室温及び50%相対湿度(表6中でRTとして示した。)で7日の貯蔵、及び40℃及び100%相対湿度(表6中でCC(condensation conditions)として示した。)でさらに7日後、「ビード試験」によって接着剤を試験した。この試験では、終端部で接着面のすぐ上に切れ目を入れる。ビードの切れ目を入れた端部を先の丸いピンセットでつかみ、そして基材から引っ張る。これはピンセットの先端で注意深くビードを巻き上げること、及びビードを引っ張る方向に向けて垂直に基材そのものに届くまで切れ目を入れることによって行われる。およそ3秒ごとに切れ目を入れなければならないように、ビードを取り除く速度を選択する(2〜3mmの間隔をあけた切れ目)。試験する長さは、少なくとも8cmにならなければならない。接着特性はビードを基材から取り除いた後に残存する接着剤に基づいて評価し(凝集破壊)、以下の尺度に従って、特に接着面の凝集の割合を見積もることによって評価する:
1 = >95%凝集破壊
2 = 75%〜95%凝集破壊
3 = 25%〜75%凝集破壊
4 = <25%凝集破壊
5 = 接着破壊
【0084】
「P」の追加は、基材からプライマーがはがれることを意味し、それゆえ、基材へのプライマーの接着が弱点であることを表す。75%未満の凝集破壊値をもつ試験結果は、不充分であると考えられる。
実施した試験の結果を表6に示す。
【0085】
【表6】

【0086】
表5及び表6の結果は、実施例40の本発明のポリウレタン組成物が接着剤として使用するための好ましい特性、すなわち、優れた貯蔵安定性(新しいときの押出力と貯蔵したときの押出力との間のわずかな違いから明らか)、高い初期強度、そしてまた、特に、複数回焼成の場合を含む新世代の自動車用塗料への良好な接着特性をもっていることを示している。さらに、いくらか遅いスキン形成時間は、適用後にこの接着剤がより長時間の間加工されることをどちらかといえば可能にする。比較例41〜43の(本発明ではないビスマス触媒システムを含む)接着剤組成物全ては、実施例40と比較した場合に弱点をもっている。比較例41の(触媒としてビスマスカルボキシレートのみを含む)組成物は、確かに高い初期強度をもち且つ良好な接着特性を有する;しかし、それは貯蔵時の充分な安定性を欠いている。比較例42の(ビスマスカルボキシレート及びトルエン−4−スルホニルイソシアネートから構成される触媒システムを含む)組成物は、貯蔵に対して安定であり且つ良好な接着特性を有する;しかし、それは硬化が非常に遅すぎ、そしてそのため低い初期強度しか有しない。最後に、比較例43の(触媒として第三級アミンを含む)組成物は、貯蔵に対して安定であり且つ高い初期強度を有する;その一方、その接着特性は不充分である。
【0087】
〔実施例44及び比較例45〜46〕
この例は、本発明のポリウレタン組成物の調製、及びプライマーとしてのその使用を示す。
ポリウレタンプレポリマーを含んでいるポリウレタンプライマーSika(登録商標)Primer−209(Sika Schweiz AGから商業的に入手可能)を、表7による触媒システムと混合し、これは窒素下で完全に混合し、そしてこの混合物をブラシで金属パネル(これはイソヘキサンできれいにし、そして複数回焼付自動車用塗料でコートした。)に適用した。30分の蒸発時間の後、80℃に予備加熱した、高モジュラス湿気硬化型ポリウレタン接着剤であるSikaTack(登録商標)−Plus HM(Sika Schweiz AGから商業的に入手可能)を、カートリッジを用いて適用した。室温及び50%相対湿度における貯蔵の後、この接着剤の接着を試験した。
【0088】
表7中の実施例の貯蔵安定性は、Sika(登録商標)Primer−29と直接比較して、室温又は50℃で30日の貯蔵後の粘度の増加によって評価した。
【0089】
【表7】

【0090】
表7の結果は、実施例44の本発明のポリウレタン組成物がプライマーとして適用するために適した特性、すなわち、自動車用塗料への良好な接着及び良好な貯蔵安定性の両者、を有することを示している。比較例45及び46のプライマー組成物は、対照的に、実施例44と比較して弱点を有する:比較例45の(触媒としてビスマスカルボキシレートを添加した)組成物は、実際に、自動車用塗料への良好な接着特性を有するが、充分な貯蔵安定性に欠けている;比較例46の(全く触媒を添加していない)組成物は、実際に貯蔵では安定であるが、新世代の自動車用塗料への充分な接着特性を有していない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリイソシアネートと少なくとも1種のポリオールから調製された、末端イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリウレタンプレポリマー;及び
少なくとも1種のビスマス化合物及び少なくとも1種の芳香族窒素化合物から得られる、少なくとも1種の触媒システム、
を含む1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記芳香族窒素化合物が、以下の式A又はB:
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ互いに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、C〜C12アルキル、COOH、COOR’、又はハロゲンであり、
R7は、H、メチル、エチル、C〜C12アルキル、OH、又はOR’’であり、
R8はアルキレン又はアルキレンエーテルであり、
そしてさらに、R’はアルキルであり、かつ、R’’はアルキル又はヘテロ原子を含むアルキルである)
を有することを特徴とする、請求項1に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記式Aの芳香族窒素化合物において、R7が、H、メチル、エチル、C〜Cアルキル、又はO−(CHCHO)−R’若しくはO−(CHCH(CH)O)−R’又はこれらの位置異性体(ここでxの値は1〜6である。)であるか、又はOHであり、特に好ましくはOHであることを特徴とする、請求項2に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記式Bの芳香族窒素化合物において、R8が、C〜Cアルキレン、又は(CHCHO)CHCH若しくは(CHCH(CH)O)CHCH(CH)若しくはそれらの位置異性体(ここでyの値は0〜5であり、特に好ましくはy=2又は3である。)であることを特徴とする、請求項2に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記式A又はBの芳香族窒素化合物において、置換基R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は互いに独立して、H、又はメチル、特にHであることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記ビスマス化合物が、ビスマスカルボキシレートBi(OOC-R’’’)3(式中、R’’’はC〜C17アルキル残基、特にC〜C11アルキル残基、好ましくはC又はCアルキル残基である。)であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項7】
前記触媒システムにおいて、(前記芳香族窒素化合物の配座数をかけ算した芳香族窒素化合物)のモル数とビスマスとのモル比が0.2:1〜12:1、特に0.2:1〜6:1であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記芳香族窒素化合物が、ビスマスと配位結合で結ばれていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項9】
さらに少なくとも1種の錫化合物が存在していることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項10】
前記組成物が湿気硬化性であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の1成分型ポリウレタン組成物。
【請求項11】
ビスマス化合物を少なくとも1種の芳香族窒素化合物と反応させることによって前記触媒システムを調製するステップをさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項12】
接着剤、シーラント、コーティング、又はライニングとしての、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
プライマーとしての、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を密着させるステップを含むことを特徴とする、特定の表面に接着し、シーリングし、又はコーティングする方法。
【請求項15】
前記表面が塗料、好ましくは自動車用塗料、特に複数回焼成自動車用塗料であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
空気中で硬化させる追加のステップを含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
水を含む成分又はそれらの混合物と接触させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ポリウレタン組成物のための触媒であって、前記触媒が、ビスマスと以下の式A又はB:
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ互いに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、C〜C12アルキル、COOH、COOR’、又はハロゲンであり、
R7は、H、メチル、エチル、C〜C12アルキル、OH、又はOR’’であり、
R8はアルキレン又はアルキレンエーテルであり、
そしてさらに、R’はアルキルであり、かつ、R’’はアルキル又はヘテロ原子を含むアルキルである。)
の芳香族窒素化合物との間の配位化合物であることを特徴とする、ポリウレタン組成物のための触媒。
【請求項19】
ビスマスと8−ヒドロキシキノリンとの間の、又はビスマスとテトラエチレングリコールビス(8−キノリル)エーテルとの間の配位化合物であることを特徴とする、ポリウレタン組成物のための触媒。
【請求項20】
少なくとも1種のポリイソシアネートと少なくとも1種のポリオールの反応のために、請求項18又は19に記載の触媒を用いることを特徴とする、ポリウレタンプレポリマーの製造方法。


【公表番号】特表2006−502267(P2006−502267A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542408(P2004−542408)
【出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010931
【国際公開番号】WO2004/033519
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】