説明

ビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法

【解決手段】下記式(1)
CH2=C(R1)−(CH2m−C(R1)=CH2 (1)
(R1は水素原子又は1価炭化水素基であり、mは0〜14の整数である。)
で示されるジエン化合物と、下記式(2)
HSiR2n(OR33-n (2)
(R2、R3は1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とを、白金含有触媒を用いてヒドロシリル化するに際し、脂肪族ニトリル化合物を上記ジエン化合物に対して0.1質量%以上存在させる、下記式(3)
(R3O)3-n2nSi−CH2−CH(R1)−(CH2m
CH(R1)−CH2−SiR2n(OR33-n (3)
(R1、R2、R3、m、nは上記と同様である。)
で示されるビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
【効果】目的とするビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物を、反応性を維持しつつ、位置選択性を向上させて、効率よく製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤等に有用なビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物は、ジエン化合物とハイドロジェンクロロシラン化合物又はハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とを触媒を用いて付加反応することにより製造される。
【0003】
ハイドロジェンクロロシラン化合物を用いた場合、付加反応の後にオルガノキシル化することで製造されるが、生産性が悪く、塩化水素又はその塩といった廃棄物が大量に発生するため好ましくない。ハイドロジェンオルガノキシシラン化合物を用いた場合、上記の問題は解決されるものの、触媒の活性が低い、選択性が悪いといった問題がある。特に、ジエン化合物に対して2つシリル基を導入する場合、二重結合内部にオルガノキシシリル基が結合した位置異性体の生成率が上がる。オルガノキシシリル基の加水分解速度は、オルガノキシシリル基に結合するアルキル置換基が嵩高いほど反応時の立体障害が大きくなるため、遅くなることが知られており、二重結合内部に結合した位置異性体の方が加水分解速度は遅くなってしまう。ビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物が使用される応用分野においては加水分解速度は速いことが好ましく、よって二重結合内部への結合が少ない、即ち位置選択性が高い製造方法が求められていた。
【0004】
ジエン化合物への付加反応の際に、反応性、位置選択性を向上する目的で、ハイドロジェン(アシルオキシ)シラン化合物又はカルボン酸化合物の存在下で反応する方法が知られている(特許文献1:特許第4435893号公報)が、目的物に対して分離が困難な近沸点のアシルオキシ化物が生成するために収率が低下するといった問題があった。
【0005】
一般的に、ヒドロシリル化の際に、リン化合物やアミン化合物といったルイス塩基を添加して選択性を向上させるといった方法も知られているが、触媒を被毒するため、触媒に対して使用量が多い場合に触媒活性が低下、もしくは触媒活性が失われるといった問題点があるため好ましくない。ただし、ニトリル化合物はアミン化合物の中でもあまり触媒を被毒しないため、添加量が多くても触媒活性が低下しにくいといった特徴があった。
【0006】
付加反応の際にニトリル化合物を添加する方法としては、触媒として塩化白金酸の芳香族ニトリル溶液を用いる方法(特許文献2:特許第3658777号公報)や、アクリル基含有シラン化合物やエポキシ基含有シラン化合物を製造する際に、ニトリル化合物を添加する方法(特許文献3:特公平03−12075号公報、特許文献4:特許第4141547号公報)が知られていたが、触媒活性の向上や重合、ゲル化防止といった効果が挙げられるのみであり、ニトリル化合物は触媒を被毒しにくいことから、付加反応における位置選択性向上に対する効果があるとは考えられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4435893号公報
【特許文献2】特許第3658777号公報
【特許文献3】特公平03−12075号公報
【特許文献4】特許第4141547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ジエン化合物とハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とを触媒を用いて付加反応し、ビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物を製造する際に、反応性を維持しつつ、位置選択性を向上させ、効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示されるジエン化合物と、下記一般式(2)で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とを白金含有触媒を用いてヒドロシリル化する際に、ジエン化合物に対して所定量の脂肪族ニトリル化合物を存在させることにより、反応性を維持しつつ、位置選択性を向上させ、効率よく下記一般式(3)で示されるビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記ビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
CH2=C(R1)−(CH2m−C(R1)=CH2 (1)
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。mは0〜14の整数である。)
で示されるジエン化合物と、下記一般式(2)
HSiR2n(OR33-n (2)
(式中、R2及びR3は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とを、白金含有触媒を用いてヒドロシリル化するに際し、脂肪族ニトリル化合物を上記ジエン化合物に対して0.1質量%以上存在させることを特徴とする、下記一般式(3)
(R3O)3-n2nSi−CH2−CH(R1)−(CH2m
CH(R1)−CH2−SiR2n(OR33-n (3)
(式中、R1、R2、R3、m及びnは上記と同様である。)
で示されるビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
請求項2:
脂肪族ニトリル化合物が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、3−メトキシプロピオニトリル及びエチレンシアノヒドリンから選ばれるものである請求項1記載のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
請求項3:
白金含有触媒を上記ジエン化合物1モルに対して含有される白金原子が1×10-7〜1×10-2モル使用することを特徴とする請求項1又は2記載のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
請求項4:
白金含有触媒として、0価の白金錯体を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
請求項5:
更に、ジエン化合物と共に、3級アミン化合物を添加した請求項1乃至4のいずれか1項記載のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、目的とするビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物を、反応性を維持しつつ、位置選択性を向上させて、効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法は、下記一般式(1)
CH2=C(R1)−(CH2m−C(R1)=CH2 (1)
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。mは0〜14の整数である。)
で示されるジエン化合物と、下記一般式(2)
HSiR2n(OR33-n (2)
(式中、R2及びR3は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とを、白金含有触媒を用いてヒドロシリル化するに際し、脂肪族ニトリル化合物を上記ジエン化合物に対して0.1質量%以上存在させて、下記一般式(3)
(R3O)3-n2nSi−CH2−CH(R1)−(CH2m
CH(R1)−CH2−SiR2n(OR33-n (3)
(式中、R1、R2、R3、m及びnは上記と同様である。)
で示されるビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物を製造するものである。
【0013】
上記一般式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。mは0〜14、特に2〜6の整数である。
【0014】
本発明で使用される上記一般式(1)で示されるジエン化合物を具体的に例示すると、例えば、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,17−オクタデカジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0015】
一方、上記一般式(2)中、R2及びR3は炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基が例示される。また、これらの基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、置換基の例としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基、エステル基、エーテル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらのなかでも特に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が好ましい。nは0〜2の整数である。
【0016】
上記一般式(2)で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物を具体的に例示すると、例えば、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(1)で示されるジエン化合物と、上記一般式(2)で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物の配合割合は特に制限されないが、ジエン化合物1モルに対してハイドロジェンオルガノキシシラン化合物1〜3モル、特に1.5〜2.2モルとすることが、経済性の点から好ましい。
【0018】
本発明で用いられる白金含有触媒としては、特に制限はないが、具体的には塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金、白金−炭素、白金−アルミナ、白金−シリカなどの担持触媒等が例示される。選択性の面から、好ましくは0価の白金錯体が用いられ、更に好ましくは白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液が挙げられる。
【0019】
白金含有触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(1)で示されるジエン化合物1モルに対し、含有される白金原子が1×10-7〜1×10-2モル、更に1×10-7〜1×10-3モル、特に1×10-6〜1×10-3モルの範囲が好ましい。
【0020】
脂肪族ニトリル化合物としては特に制限されないが、具体的には、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、エチレンシアノヒドリン等が例示される。
【0021】
脂肪族ニトリル化合物の使用量は、選択性を向上させるためにジエン化合物に対して0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。上限は特に制限されないが、100質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。使用量が少なすぎると選択性の向上が不十分な場合があり、多すぎると体積当たりの収率が低くなる場合がある。
【0022】
本発明の製造方法において、反応温度は特に限定されず、室温下又は加熱下で行うことができる。適度な反応速度を得るためには加熱下で反応させることが好ましく、0〜200℃、特に40〜70℃が好ましい。また、反応時間も特に限定されないが、1〜60時間、特に1〜30時間、とりわけ1〜20時間が好ましい。
【0023】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
また、添加剤として3級アミン化合物を併用することで、ニトリル化合物のみより更に位置選択性を向上させることができる。3級アミン化合物としては、下記一般式(4)
【化1】

(式中、R4、R5、R6は炭素数1〜20、特に1〜10、とりわけ1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基であって、各々同一又は異なっていてもよく、また、R4、R5、R6は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。R4、R5及びR6のうちのいずれか2つ以上が互いに結合してこれらが結合する窒素原子及びヘテロ原子と共に環を成してもよい。)
で示されるものを用いることができる。
【0025】
4、R5及びR6としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられ、これらの基の水素原子の一部又は全部が、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基、エステル基、エーテル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等で置換されていてもよい。
【0026】
3級アミン化合物としては、具体的には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアルキルアミン化合物や、ピリジン、キノリン、2,6−ルチジン等の芳香族環に窒素原子を含んでいるアミン化合物、更に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ヘキサメチレンテトラミン等の特殊な環状アミンなども挙げられる。
【0027】
3級アミン化合物の使用量は、特に制限はないが、使用量が多い場合、触媒活性が非常に低下するため、白金含有触媒1モルに対して1〜1000モル、特に1〜100モル、更に好ましくは1〜10モルである。
【0028】
本発明の製造方法によって得られる有機ケイ素化合物は、その目的品質に応じて、蒸留、ろ過、洗浄、カラム分離、固体吸着剤等の各種の精製法によって更に精製して使用することもできる。触媒等の微量不純物を取り除き、高純度にするためには、蒸留による精製が好ましい。
【0029】
本発明の製造方法で製造される上記一般式(3)のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物を具体的に例示すると、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(ジメチルメトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(メチルジエトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(ジメチルエトキシシリル)ブタン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,5−ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1,5−ビス(ジメチルメトキシシリル)ペンタン、1,5−ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,5−ビス(メチルジエトキシシリル)ペンタン、1,5−ビス(ジメチルエトキシシリル)ペンタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(ジメチルメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサン、1,5−ビス(ジメチルエトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,7−ビス(メチルジメトキシシリル)ヘプタン、1,7−ビス(ジメチルメトキシシリル)ヘプタン、1,7−ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、1,7−ビス(メチルジエトキシシリル)ヘプタン、1,7−ビス(ジメチルエトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(メチルジメトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(ジメチルメトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(メチルジエトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(ジメチルエトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,9−ビス(メチルジメトキシシリル)ノナン、1,9−ビス(ジメチルメトキシシリル)ノナン、1,9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、1,9−ビス(メチルジエトキシシリル)ノナン、1,9−ビス(ジメチルエトキシシリル)ノナン、1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカン、1,10−ビス(メチルジメトキシシリル)デカン、1,10−ビス(ジメチルメトキシシリル)デカン、1,10−ビス(トリエトキシシリル)デカン、1,10−ビス(メチルジエトキシシリル)デカン、1,10−ビス(ジメチルエトキシシリル)デカン、1,18−ビス(トリメトキシシリル)オクタデカン、1,18−ビス(メチルジメトキシシリル)オクタデカン、1,18−ビス(ジメチルメトキシシリル)オクタデカン、1,18−ビス(トリエトキシシリル)オクタデカン、1,18−ビス(メチルジエトキシシリル)オクタデカン、1,18−ビス(ジメチルエトキシシリル)オクタデカン、2−メチル−1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、2−メチル−1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、2−メチル−1,4−ビス(ジメチルメトキシシリル)ブタン、2−メチル−1,4−ビス(トリエトキシシリル)ブタン、2−メチル−1,4−ビス(メチルジエトキシシリル)ブタン、2−メチル−1,4−ビス(ジメチルエトキシシリル)ブタン等が挙げられる。これらのなかでも特に、ヘキサン化合物、ヘプタン化合物、オクタン化合物、ノナン化合物、デカン化合物が好ましい。
【0030】
本発明の有機ケイ素化合物の用途は特に限定されるものではないが、具体的には、無機充填剤の表面処理、液状封止剤、鋳物用鋳型、樹脂の表面改質、高分子変性剤及び水系塗料の添加剤等を挙げることができる。この場合、本発明の有機ケイ素化合物に加え、本発明の効果を損なわない範囲であれば、顔料、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、pH調節剤、フィルム形成剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、染料等から選択される他の添加剤の1種以上を含有するものであってもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0032】
[実施例1]
温度計、コンデンサー、攪拌機、滴下ロートを備えたフラスコに、1,5−ヘキサジエン20.5g(0.25モル)、アセトニトリル5.0g(1,5−ヘキサジエンに対して25質量%)、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(1,5−ヘキサジエンに対して白金原子に換算して1×10-4モル)を仕込み、トリメトキシシラン51.9g(0.43モル)を内温40〜50℃で8時間かけて滴下した。その温度で3時間攪拌し、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、98.8対1.2であった。
【0033】
[比較例1]
アセトニトリルを使用しないこと以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、89.9対10.1であった。
【0034】
[実施例2]
アセトニトリルの使用量を2.1g(1,5−ヘキサジエンに対して10質量%)に変更した以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、98.7対1.3であった。
【0035】
[実施例3]
アセトニトリルの使用量を1.0g(1,5−ヘキサジエンに対して5質量%)に変更した以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、97.4対2.6であった。
【0036】
[実施例4]
アセトニトリルの使用量を0.2g(1,5−ヘキサジエンに対して1質量%)に変更した以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、95.0対5.0であった。
【0037】
[実施例5]
アセトニトリルの代わりにエチレンシアノヒドリン1.0g(1,5−ヘキサジエンに対して5質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、96.5対3.5であった。
【0038】
[実施例6]
アセトニトリルの代わりに3−メトキシプロピオニトリル5.0g(1,5−ヘキサジエンに対して25質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、98.7対1.3であった。
【0039】
[実施例7]
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(白金含有触媒1モルに対して1.5モル)を仕込み時に追加した以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、99.1対0.9であった。
【0040】
[実施例8]
温度計、コンデンサー、攪拌機、滴下ロートを備えたフラスコに、1,5−ヘキサジエン20.5g(0.25モル)、アセトニトリル5.0g(1,5−ヘキサジエンに対して25質量%)、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(1,5−ヘキサジエンに対して白金原子に換算して1×10-4モル)を仕込み、メチルジエトキシシラン57.7g(0.43モル)を内温40〜50℃で8時間かけて滴下した。その温度で3時間攪拌し、ガスクロマトグラフィーの分析にて、生成した1,6−ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサンと1,5−ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサンの質量比を確認すると、99.5対0.5であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
CH2=C(R1)−(CH2m−C(R1)=CH2 (1)
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。mは0〜14の整数である。)
で示されるジエン化合物と、下記一般式(2)
HSiR2n(OR33-n (2)
(式中、R2及びR3は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とを、白金含有触媒を用いてヒドロシリル化するに際し、脂肪族ニトリル化合物を上記ジエン化合物に対して0.1質量%以上存在させることを特徴とする、下記一般式(3)
(R3O)3-n2nSi−CH2−CH(R1)−(CH2m
CH(R1)−CH2−SiR2n(OR33-n (3)
(式中、R1、R2、R3、m及びnは上記と同様である。)
で示されるビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
【請求項2】
脂肪族ニトリル化合物が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、3−メトキシプロピオニトリル及びエチレンシアノヒドリンから選ばれるものである請求項1記載のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
【請求項3】
白金含有触媒を上記ジエン化合物1モルに対して含有される白金原子が1×10-7〜1×10-2モル使用することを特徴とする請求項1又は2記載のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
【請求項4】
白金含有触媒として、0価の白金錯体を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。
【請求項5】
更に、ジエン化合物と共に、3級アミン化合物を添加した請求項1乃至4のいずれか1項記載のビス(オルガノキシシリル)アルカン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−153638(P2012−153638A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13535(P2011−13535)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】