説明

ビーム電流波形の測定方法および測定装置

【課題】 ビームモニタの各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を、少ない数の電流測定器を用いて短時間で精度良く測定する。
【解決手段】 ビームモニタ30の各ビーム検出器32を、スイッチSをそれぞれ介して一つの電流測定器40に接続しておく。そして、各ビーム検出器32のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビーム4のX方向のビーム幅をWb、ビーム検出器32の総数をpとし、nを0≦n≦(p−2)の整数とすると、次式を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチSを同時にオン状態にしている状態で、ビームモニタ30によってイオンビーム4を受けて電流測定器40に流入するビーム電流の波形を測定する測定工程と、同時にオン状態にしているスイッチSを前記条件の下で切り換える切換工程とを繰り返す。
Wb<{n・Wf+(n+1)Ws}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばイオン注入装置に用いられるものであって、複数のビーム検出器をX方向(例えば水平方向。以下同様)に等間隔で並べたビームモニタによって、X方向に走査されるイオンビームを受けて、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を測定する測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、イオン注入装置の一例を示す概略平面図である。このイオン注入装置は、イオンビーム4を射出するイオン源2と、このイオン源2からのイオンビームが入射され当該イオンビーム4から所望質量のイオンビーム4を分離して取り出す質量分離器6と、この質量分離器6からのイオンビーム4が入射され当該イオンビーム4を加速または減速する加減速器8と、この加減速器8からのイオンビーム4が入射され当該イオンビーム4から所望エネルギーのイオンビーム4を分離して取り出すエネルギー分離器10と、このエネルギー分離器10からのイオンビーム4が入射され当該イオンビーム4をX方向に走査する走査器12と、この走査器12からのイオンビーム4が入射され当該イオンビーム4を曲げて走査器12と協働してイオンビーム4をX方向に平行走査するビーム平行化器14と、このビーム平行化器14からのイオンビーム4の照射領域内でウエハ16をX方向と実質的に直交するY方向(例えば垂直方向。以下同様)に沿う方向に機械的に往復走査(往復駆動)するウエハ駆動装置20とを備えている。
【0003】
ビーム平行化器14を出たイオンビーム4に着目し、その設計上の進行方向をZ方向とすると、このZ方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向が前記X方向およびY方向である。ビーム平行化器14を出たイオンビーム4は、この設計上の進行方向Zに対して実質的に平行に走査される。これを平行走査と呼んでいる。「設計上の進行方向」というのは、所定の進行方向、即ち本来進むべき進行方向のことである。
【0004】
質量分離器6は、例えば、磁界によってイオンビーム4の質量分離を行う質量分離電磁石である。加減速器8は、例えば、複数枚の電極を有していて静電界によってイオンビーム4の加減速を行う加減速管である。エネルギー分離器10は、例えば、磁界によってイオンビーム4のエネルギー分離を行うエネルギー分離電磁石である。走査器12は、例えば、磁界によってイオンビーム4の走査を行う走査電磁石である。ビーム平行化器14は、例えば、磁界によってイオンビーム4の平行化を行うビーム平行化電磁石である。ウエハ駆動装置20は、ウエハ16を保持するホルダ18を有している。
【0005】
上記構成によって、所望の質量および所望のエネルギーのイオンビーム4をX方向に平行走査しながらウエハ16に照射すると共に、このイオンビーム4に対してウエハ16をY方向に沿う方向に機械的に往復走査して、ウエハ16の全面にイオンビーム4を照射してイオン注入を行うことができる。このように、イオンビーム4の電磁気的な走査とウエハ16の機械的な走査とを併用する方式は、ハイブリッドスキャン方式と呼ばれる。
【0006】
例えば上記のようなイオン注入装置において、例えばイオンビーム4の平行度測定やイオンビーム4の走査波形整形等のために、X方向に走査されるイオンビームの波形(即ち時間的変化)を、ウエハ16の近傍でX方向の複数箇所において測定することが重要である。この重要性は、例えば、ウエハ16の大型化およびウエハ16の表面に形成される半導体デバイスの微細化等に伴ってより大きくなる。
【0007】
上記イオンビーム4のビーム電流波形の測定は、従来は図2または図3に示す測定方法で行っていた。いずれの測定方法も、イオンビーム4を受けてそのビーム電流Ibを検出する複数の(例えば10個〜数十個程度の)ビーム検出器32をX方向に等間隔で並べたビームモニタ30を、上記ウエハ16の上流側近傍または下流側近傍に設けておいて、このビームモニタ30によって、矢印Aに示すようにX方向に走査されるイオンビーム4を受けて、各ビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を測定するものである。各ビーム検出器32は、例えばファラデーカップである。
【0008】
その内、図2に示す測定方法は、ビームモニタ30を構成する各ビーム検出器32を、スイッチSをそれぞれ介して一つの電流測定器40に接続しておき、スイッチSを一つずつ切り換えて(即ち択一的に)順次オン状態にすることによって、一つの電流測定器40を用いて、各ビーム検出器32に流入するビーム電流Ibの波形を順次測定するものである。スイッチSの切り換えは、測定の合間に行う。即ち、イオンビーム4を走査して測定を行ない、スイッチSを切り換え、更にイオンビーム4を走査して測定を行う、という工程を繰り返す。
【0009】
上記電流測定器40を用いて測定されるビーム電流波形の一例を図4に示す。これに似た(必ずしも同一とは限らない)ビーム電流波形が、各ビーム検出器32について得られる。このビーム電流波形の横幅は、イオンビーム4の走査速度が実質的に一定であるのでイオンビーム4のX方向のビーム幅(図6等のビーム幅Wb参照)に応じて変わり、高さは、イオンビーム4のビーム電流密度に応じて変わる。
【0010】
なお、特許文献1には、n本の導体が引き出されているビームモニタ(多点ビームモニタ)について、一つの電流測定器(ビーム電流変換器)を用いる測定方法が記載されており、これは上記図2に示す測定方法に相当する。
【0011】
図3に示す測定方法は、ビームモニタ30を構成する各ビーム検出器32に電流測定器40をそれぞれ接続しておき、各電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形を同時に測定するものである。各電流測定器40を用いて測定されるビーム電流波形は、それぞれ、例えば上記図4を参照して説明したようなものになる。
【0012】
【特許文献1】特許第3456318号公報(段落0009、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記図2に示す測定方法の場合は、電流測定器40が一つであるために、測定精度が全てのビーム検出器32について同一になるという利点があるけれども、各ビーム検出器32ごとにスイッチSを一つずつ順次切り換えてビーム電流波形を測定するために、測定に長時間を要するという課題がある。
【0014】
また、スイッチSを高速で切り換えるようにするにしても、スイッチSの切換遅れ時間や電流測定器40の応答遅れ時間等による待ち時間を要するので、高速化には限界がある。しかも、各スイッチSの寿命低下や接続の信頼性低下という別の問題が発生する。
【0015】
上記図3に示す測定方法の場合は、全てのビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を一度に、従って短時間で測定することができるという利点があるけれども、電流測定器40がビーム検出器32ごとに設けられているために、電流測定器40の測定精度を統一するのが困難であり、従って測定精度が低下するという課題がある。また、電流測定器40の数が多いという課題もある。
【0016】
そこでこの発明は、複数のビーム検出器を有するビームモニタの各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を、少ない数の電流測定器を用いて短時間で精度良く測定することができる測定方法および測定装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係るビーム電流波形の測定方法および測定装置の一つでは、前記ビームモニタを構成する各ビーム検出器を、スイッチをそれぞれ介して一つの電流測定器に接続しておく。
【0018】
そして、この発明に係る第1の測定方法では、各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、ビーム検出器の総数をpとし、nを0≦n≦(p−2)の整数とすると、次の数1またはそれと数学的に等価の式を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定する測定工程と、同時にオン状態にしているスイッチを前記条件の下で切り換える切換工程とを繰り返す。
[数1]
Wb<{n・Wf+(n+1)Ws}
【0019】
また、この発明に係る第2の測定方法では、二つのスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定する第1測定工程を、同時にオン状態にしている二つのスイッチを前記ビームモニタのX方向の両端のビーム検出器に接続されている二つのスイッチから順に一つずつ内側へ切り換えて繰り返し、しかも、各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、ビーム検出器の総数をp、同時にオン状態にしている二つのスイッチに接続されている二つのビーム検出器間に存在するビーム検出器の数をn(nは0≦n≦(p−2)の整数)とすると、次の数2またはそれと数学的に等価の式を満たす範囲で前記第1測定工程を繰り返し、数2またはそれと数学的に等価の式を満たさなくなった以降は、残りのスイッチを一つずつオン状態にしている状態で前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定する第2測定工程を行う。
[数2]
Wb<{n・Wf+(n+1)Ws}
【0020】
この発明に係るビーム電流波形の測定方法および測定装置の他のものでは、前記ビームモニタを構成するビーム検出器を、一つ置きに第1グループと第2グループとに属させて、第1グループの各ビーム検出器をスイッチをそれぞれ介して第1の電流測定器に接続し、第2グループの各ビーム検出器をスイッチをそれぞれ介して第2の電流測定器に接続しておく。
【0021】
そして、この発明に係る第3の測定方法では、各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、第1グループおよび第2グループのビーム検出器の総数をそれぞれq、rとし、nを0≦n≦(q−2)の整数、mを0≦m≦(r−2)の整数とすると、第1グループのビーム検出器用のスイッチについて、次の数3またはそれと数学的に等価の式を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にし、かつ第2グループのビーム検出器用のスイッチについて、次の数4またはそれと数学的に等価の式を満たすm個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記第1および第2の電流測定器に流入するビーム電流の波形をそれぞれ測定する測定工程と、第1グループのビーム検出器用のスイッチおよび第2グループのビーム検出器用のスイッチについて、同時にオン状態にしているスイッチを前記条件の下で切り換える切換工程とを繰り返す。
[数3]
Wb<{(2n+1)Wf+2(n+1)Ws}
[数4]
Wb<{(2m+1)Wf+2(m+1)Ws}
【0022】
この発明に係る測定装置は、前記工程に相当する処理および測定データ記憶の制御を行う制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1または4に記載の発明によれば、複数のスイッチを同時にオン状態にしていても、数1または数5の条件を満たすことによって、電流測定器に流入するビーム電流の波形は、オン状態のスイッチに接続されている複数のビーム検出器に流入するビーム電流の波形がそれぞれ時間的に分離された波形となるので、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を分離して測定することができる。従って、一つの電流測定器を用いて、複数のビーム検出器に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができる。
【0024】
その結果、複数のビーム検出器を有するビームモニタの各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を、一つという少ない数の電流測定器を用いて短時間で測定することができる。しかも、電流測定器が一つであり、測定精度が全てのビーム検出器について同一になるので、精度の良い測定を行うことができる。
【0025】
請求項2または5に記載の発明によれば、複数のスイッチを同時にオン状態にしていても、数2または数6の条件を満たす範囲では、電流測定器に流入するビーム電流の波形は、オン状態のスイッチに接続されている二つのビーム検出器に流入するビーム電流の波形がそれぞれ時間的に分離された波形となるので、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を分離して測定することができる。従って、一つの電流測定器を用いて、二つのビーム検出器に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができる。
【0026】
その結果、複数のビーム検出器を有するビームモニタの各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を、一つという少ない数の電流測定器を用いて短時間で測定することができる。しかも、電流測定器が一つであり、測定精度が全てのビーム検出器について同一になるので、精度の良い測定を行うことができる。
【0027】
更に、同時にオン状態にしている二つのスイッチを、ビームモニタの両端のビーム検出器に接続されている二つのスイッチから順に一つずつ内側へ切り換えて第1測定工程を繰り返すので、スイッチ切り換えの組み合わせが単純になり、測定や制御が簡単になる。
【0028】
また、第1測定工程では、イオンビームのビーム幅に応じて、二つのビーム検出器で同時にビーム電流波形を測定することができる回数を最大にすることができる。
【0029】
請求項3または6に記載の発明によれば、複数のスイッチを同時にオン状態にしていても、数3、数4または数7、数8の条件を満たすことによって、第1または第2の電流測定器に流入するビーム電流の波形は、オン状態のスイッチに接続されている複数のビーム検出器に流入するビーム電流の波形がそれぞれ時間的に分離された波形となるので、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を分離して測定することができる。従って、第1および第2の電流測定器を用いて、それぞれ、複数のビーム検出器に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができる。
【0030】
その結果、複数のビーム検出器を有するビームモニタの各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を、二つという少ない数の電流測定器を用いて短時間で測定することができる。しかも、電流測定器が二つであり、多数の電流測定器の場合に比べて測定精度を互いに揃えるのは容易であるので、精度の良い測定を行うことができる。
【0031】
更に、電流測定器を二つ用いるので、請求項1、4記載の発明に比べて、同じビーム幅で比較すると、一度に2倍の数のビーム検出器を選択してビーム電流波形を測定することができる。従ってその分、測定に要する時間を短縮することができる。また、ビーム検出器を一つ置きに第1グループと第2グループとに属させるので、請求項1、4記載の発明に比べて、一つの電流測定器について一度に選択するビーム検出器の数が同じ場合で比較すると、より大きいビーム幅に対応することができる。
【0032】
また、一方のグループのビーム検出器およびそれ用の電流測定器を用いてビーム電流波形を測定している間に、他方のグループのビーム検出器用のスイッチを切り換えることができ、それによって、スイッチの切換遅れ時間や電流測定器の応答遅れ時間等による待ち時間の発生を抑えて、測定に要する時間をより短縮することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図5は、この発明に係るビーム電流波形の測定方法を実施する測定装置の一例を示す図である。図2、図3に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0034】
また、以下においては、スイッチSの特定を容易にするために、上記ビームモニタ30を構成するビーム検出器32の総数を一例として16個(即ち後述するp=16)とし、その各ビーム検出器32に接続されるスイッチSの符号をX方向の一方端からS1〜S16としているが、これらの数は16個に限られるものではない。また、スイッチの位置を特定する必要がない場合は、スイッチの符号は単にSを用いる。図9に示す測定装置60bにおいても同様である。
【0035】
この測定装置60aでは、上記ビームモニタ30を構成する各ビーム検出器32は、スイッチS1〜S16をそれぞれ介して、一つの電流測定器40に接続している。スイッチS1〜S16は、例えばリレー(継電器)である。電流測定器40は、例えば、電流を電圧に変換するカレントトランスデューサを有している。後述する電流測定器42も同様である。
【0036】
この測定装置60aは、制御装置50を備えており、この例では電流測定器40に流入するビーム電流Ibの測定データは、制御装置50に取り込まれ、その内部の記憶装置(記憶手段)52に記憶される。但し、記憶装置52を制御装置50の外部に設けても良い。図5では制御装置50から各スイッチS1〜S16への制御ラインの図示を簡略化しているが、制御ラインは各スイッチS1〜S16にそれぞれつながっており、制御装置50は各スイッチS1〜S16をそれぞれ独立してオンオフすることができる。図9に示す測定装置60bにおいても同様である。
【0037】
上記測定装置60aによって、各ビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を測定する第1の測定方法を説明する。
【0038】
この測定方法では、上記スイッチS1〜S16の内の複数のスイッチSを所定の条件の下で同時にオン状態にしている状態で、X方向に走査されるイオンビーム4をビームモニタ30で受けて、電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形を測定する(これを測定工程と呼ぶ)。
【0039】
上記所定の条件とは、図6を参照して、各ビーム検出器32のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器32のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビーム4のX方向のビーム幅をWb、ビーム検出器32の総数をpとし、nを0≦n≦(p−2)の整数とすると、次の数9(またはそれと数学的に等価の式。他の式においても同様)を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチSを同時にオン状態にすることである。この式は、上記数1、数2、数5および数6と同じ式である。
【0040】
[数9]
Wb<{n・Wf+(n+1)Ws}
【0041】
例えば、イオンビーム4のビーム幅Wbが図6中に示すイオンビーム4aのようなビーム幅Wbの場合はn=0(即ち0個ずつ飛ばすこと)で数9を満たし、イオンビーム4bのようなビーム幅Wbの場合はn=1(即ち1個ずつ飛ばすこと)で初めて数9を満たし、イオンビーム4cのようなビーム幅Wbの場合はn=1(即ち2個ずつ飛ばすこと)で初めて数9を満たすことができる。0個ずつ飛ばすということは、取りも直さず1個も飛ばさないということである。
【0042】
従って、例えば、数9を満たす条件の下で最小の整数nを選定すれば良い。そのようにすれば、最小の間隔で複数のスイッチSを同時にオン状態にすることができるので、同時にオン状態にすることができるスイッチSの数を、即ち同時に測定可能な測定点数を最大にすることができる。
【0043】
なお、走査されて広がった走査ビームに対して、その走査の元になるイオンビーム4をスポット状のイオンビーム4と呼ぶことがあるが、このスポット状のイオンビーム4の断面形状は、特定のものに限定されるものではない。例えば、円形、長円形、楕円形、四角形、その他の形状でも良い。
【0044】
複数の一例として二つのスイッチSを同時にオン状態にする場合を例に説明すると、仮に数9を満たさない整数nの場合(例えば図6中に示すイオンビーム4bでn=0の場合)は、当該二つのスイッチSに接続されている二つのビーム検出器32に同時にイオンビーム4が入射することが起こるので、電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形は例えば図7に示すようになり、二つのビーム検出器32に流入するビーム電流の二つの波形44a、44bが互いにつながったものになる。即ち、両波形44a、44b間でビーム電流Ibが実質的にゼロにならない。これでは、両ビーム電流波形44a、44bの境界が不明確であるので、両ビーム電流波形44a、44bを分離して測定することはできない。
【0045】
これに対して、数9を満たす整数nの場合は、オン状態の二つのスイッチSに接続されている二つのビーム検出器32に同時にイオンビーム4が入射することは起こらないので、電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形は例えば図8に示すようになり、二つのビーム検出器32に流入するビーム電流の二つの波形44a、44bが互いに時間的に分離されたものになる。即ち、両ビーム電流波形44a、44b間に、ビーム電流Ibが実質的にゼロになる時期が存在する。両ビーム電流波形44a、44b間の隔たりは、同時にオン状態にしているスイッチSに接続されている二つのビーム検出器32間の距離に依る。
【0046】
従って、両ビーム電流波形44a、44bを分離して測定することができる。例えば、ビーム電流Ibが実質的にゼロの時点、またはビーム電流Ibのピーク値の数%をしきい値として当該しきい値を下回った時点を境目にして、電流測定器40によるビーム電流Ibの測定データを分割すれば良い。この分割処理を、例えば制御装置50において制御ソフトウエアによって行えば良い。
【0047】
以上のようにして、この第1の測定方法によれば、一つの電流測定器40を用いて、二つのビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができる。
【0048】
三つ以上のスイッチSを同時にオン状態にする場合も、上記と同様である。
【0049】
そして、同時にオン状態にしているスイッチSを上記所定の条件の下で切り換えることによって(これを切換工程と呼ぶ)、他のビーム検出器32についても、一つの電流測定器40を用いて、複数のビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができる。このスイッチSの切り換えは、例えば、測定工程の合間に行えば良い。そして、上記測定工程と上記切換工程とを繰り返すことによって、ビームモニタ30を構成する全てのビーム検出器32に流入するビーム電流の波形をそれぞれ測定することができる。
【0050】
表1は、n=5にして、基本的に三つのスイッチSを同時にオン状態にする場合のスイッチS1〜S16のオン状態の一例を示すものである。この例では、6回の測定工程で、16個全てのビーム検出器32に流入するビーム電流の波形をそれぞれ測定することができる。ビーム検出器32を16個とすると、図2に示した従来の測定方法では16回の測定工程が必要であるので、それに比べて測定工程数を大幅に減らすことができる。その結果、短時間で(換言すれば高速で)測定を行うことができる。
【0051】
【表1】

【0052】
このように、上記第1の測定方法によれば、一つの電流測定器40を用いて、複数のビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができるので、複数のビーム検出器32を有するビームモニタ30の各ビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を、一つという少ない数の電流測定器40を用いて短時間で測定することができる。しかも、電流測定器40が一つであり、図3に示した従来の測定方法のようにビーム検出器32ごとに電流測定器40を設ける場合と違って、測定精度が全てのビーム検出器32について同一になるので、精度の良い測定を行うことができる。
【0053】
制御装置50は、上記測定工程および切換工程に相当する処理並びに測定データ記憶の制御を行うことができる。即ち、制御装置50は、(a)上記数9を満たす条件の下で複数のスイッチSをオン状態にしている状態で、ビームモニタ30によってイオンビーム4を受けて電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形を測定して当該測定データを記憶装置52に記憶する測定処理と、(b)同時にオン状態にしているスイッチSを上記条件の下で切り換える切換工程とを繰り返す制御を実行することができる。
【0054】
従って、このような制御装置50を備えている測定装置60aは、上記第1の測定方法について述べたのと同様の効果を奏することができる。
【0055】
次に、第2の測定方法を、表2を参照して、上記第1の測定方法との相違点を主体に説明する。測定装置60aの構成は、制御装置50における制御内容を除いて、図5に示すものと同様である。
【0056】
【表2】

【0057】
この第2の測定方法は、二つのスイッチSを同時にオン状態にしている状態で、ビームモニタ30によってイオンビーム4を受けて電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形を測定する第1測定工程を、同時にオン状態にしている二つのスイッチSをビームモニタ30のX方向の両端のビーム検出器32に接続されている二つのスイッチS1、S16から順に一つずつ内側へ切り換えて、上記数9を満たす範囲で繰り返し、数9を満たさなくなった以降は、残りのスイッチSを一つずつオン状態にしている状態でビームモニタ30によってイオンビーム4を受けて電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形を測定する第2測定工程を行うものである。
【0058】
例えば、イオンビーム4のビーム幅Wbが図6中のイオンビーム4bまたは4cのようなビーム幅Wbの場合は、n≧2で数9を満たすことができるので、表2中の7回目の測定(この場合はn=2である)まで第1測定工程を繰り返すことができる。即ち、2点(二つのビーム検出器32)で同時測定可能な回数は7回である。それ以降は、スイッチS8またはS9を一つずつオン状態にして第2測定工程を行う。
【0059】
この第2の測定方法の場合も、数9を満たす範囲では、一つの電流測定器40を用いて、二つのビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができるので、複数のビーム検出器32を有するビームモニタ30の各ビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を、一つという少ない数の電流測定器40を用いて短時間で測定することができる。しかも、電流測定器40が一つであり、測定精度が全てのビーム検出器32について同一になるので、精度の良い測定を行うことができる。
【0060】
更に、同時にオン状態にしている二つのスイッチSを、ビームモニタ30の両端のビーム検出器32に接続されている二つのスイッチS1、S16から順に一つずつ内側へ切り換えて第1測定工程を繰り返すので、スイッチ切り換えの組み合わせが単純になり、測定や制御が簡単になる。
【0061】
また、第1測定工程では、イオンビーム4のビーム幅Wbに応じて、二つのビーム検出器32で同時にビーム電流波形を測定することができる回数を最大にすることができる。これをより詳しく説明すると、表1のような第1の測定方法だと、イオンビーム4のビーム幅Wbがn≧6にしないと数9を満たさないほど大きい場合は、そのビーム幅Wbに応じて、同時にオン状態にするスイッチSの組み合わせを変える必要があるのに対して、表2のような第2の測定方法だと、イオンビーム4のビーム幅Wbが大きくても小さくても、数9を満たす範囲では、必ず2点同時測定を行うことができる。しかも、2点同時測定を行うことができる回数を、ビーム幅Wbに応じて最大にすることができる。これは、ビーム幅Wbに応じて、数9を満たさなくなる直前の測定回まで、2点同時測定を行うことができるからである。具体的には、ビーム幅Wbが小さいほど、2点同時測定を行うことができる回数を増やすことができる。
【0062】
また、表2のような第2の測定方法だと、図8を参照して、電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形に含まれる上記二つの波形44a、44b間の中間の時点Taは、イオンビーム4の走査の片道のほぼ中間になるので、即ちイオンビーム4の走査開始時点を0とし走査周期をTscとすると次式で一義的に定まるので、この時点Taで測定データを分割すれば良いことになる。従って、測定データの分割処理が容易になる。
【0063】
[数10]
Ta≒Tsc/4
【0064】
制御装置50を、上記第1測定工程および第2測定工程に相当する処理並びに測定データ記憶の制御を行うことができるものにしても良い。即ち、制御装置50を、(a)二つのスイッチSを同時にオン状態にしている状態で、ビームモニタ30によってイオンビーム4を受けて電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形を測定して当該測定データを記憶装置52に記憶する第1測定処理を、同時にオン状態にしている二つのスイッチSをビームモニタ30のX方向の両端のビーム検出器32に接続されている二つのスイッチS1、S16から順に一つずつ内側へ切り換えて、上記数9を満たす範囲で繰り返す制御と、(b)数9を満たさなくなった以降は、残りのスイッチSを一つずつオン状態にしている状態でビームモニタ30によってイオンビーム4を受けて電流測定器40に流入するビーム電流Ibの波形を測定して当該測定データを記憶装置52に記憶する第2測定処理を行う制御を実行することができるものにしても良い。
【0065】
そのような制御装置50を備えている測定装置60aは、上記第2の測定方法と同様の効果を奏することができる。
【0066】
図9は、この発明に係るビーム電流波形の測定方法を実施する測定装置の他の例を示す図である。以下においては、図5を参照して説明した上記第1の測定方法および測定装置60aとの相違点を主体に説明する。
【0067】
この測定装置60bでは、上記ビームモニタ30を構成する複数のビーム検出器32を、一つ置きに第1グループと第2グループとに属させて、第1グループの各ビーム検出器32をスイッチS(より具体的にはS1、S3、・・・、S15)をそれぞれ介して第1の電流測定器40に接続し、第2グループの各ビーム検出器32をスイッチS(より具体的にはS2、S4、・・・、S16)をそれぞれ介して第2の電流測定器42に接続している。各電流測定器40、42に流入するビーム電流Ibの測定データは、制御装置50に取り込まれ、記憶装置52に記憶される。
【0068】
上記測定装置60bによって、各ビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を測定する第3の測定方法を説明する。
【0069】
この測定方法では、第1のグループのビーム検出器32用のスイッチSの内の複数のスイッチSを所定の条件の下で同時にオン状態にし、かつ第2グループのビーム検出器32用のスイッチSの内の複数のスイッチSを所定の条件の下で同時にオン状態にしている状態で、X方向に走査されるイオンビーム4をビームモニタ30で受けて、電流測定器40および42に流入するビーム電流Ibの波形をそれぞれ測定する(これを測定工程と呼ぶ)。
【0070】
上記所定の条件とは、図10を参照して、上記と同様に各ビーム検出器32のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器32のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビーム4のX方向のビーム幅をWbとし、かつ第1グループおよび第2グループのビーム検出器32の総数をそれぞれq、rとし、nを0≦n≦(q−2)の整数、mを0≦m≦(r−2)の整数とすると、第1グループのビーム検出器32用のスイッチSについて、次の数11を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチSを同時にオン状態にし、かつ第2グループのビーム検出器32用のスイッチSについて、次の数12を満たすm個ずつ飛ばして複数のスイッチSを同時にオン状態にすることである。数11は上記数3および数7と同じ式であり、数12は上記数4および数8と同じ式である。n=mでも良いし、n≠mでも良い。q+r=p(ビーム検出器32の総数)である。
【0071】
[数11]
Wb<{(2n+1)Wf+2(n+1)Ws}
【0072】
[数12]
Wb<{(2m+1)Wf+2(m+1)Ws}
【0073】
例えば、イオンビーム4のビーム幅Wbが、図10中に示すイオンビーム4dのようなビーム幅Wbの場合はn=0、m=0で数11、数12をそれぞれ満たし、イオンビーム4eのようなビーム幅Wbの場合はn=1、m=1で初めて数11、数12をそれぞれ満たし、イオンビーム4fのようなビーム幅Wbの場合はn=2、m=2で初めて数11、数12をそれぞれ満たすことができる。
【0074】
従って、例えば、数11および数12を満たす条件の下で最小の整数nおよびmを選定すれば良い。そのようにすれば、最小の間隔で複数のスイッチSを同時にオン状態にすることができるので、同時にオン状態にすることができるスイッチSの数を、即ち同時に測定可能な測定点数を最大にすることができる。
【0075】
この測定方法の場合も、上記第1の測定方法の場合と同様に、複数のスイッチSを同時にオン状態にしていても、二つの電流測定器40、42にそれぞれ流入するビーム電流Ibの波形は、オン状態のスイッチSに接続されている複数のビーム検出器32に流入するビーム電流の波形がそれぞれ時間的に分離された波形となるので、各ビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を分離して測定することができる。従って、二つの電流測定器40、42を用いて、複数のビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができる。
【0076】
そして、第1グループのビーム検出器32用のスイッチSおよび第2グループのビーム検出器32用のスイッチSについて、同時にオン状態にしているスイッチSを上記所定の条件の下で切り換えることによって(これを切換工程と呼ぶ)、他のビーム検出器32についても、電流測定器40、42をそれぞれ用いて、複数のビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができる。このスイッチSの切り換えは、例えば、測定工程の合間に行えば良い。そして、上記測定工程と上記切換工程とを繰り返すことによって、ビームモニタ30を構成する全てのビーム検出器32に流入するビーム電流の波形をそれぞれ測定することができる。
【0077】
このように、上記第3の測定方法によれば、二つの電流測定器40、42を用いて、それぞれ、複数のビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を一度に測定することができるので、複数のビーム検出器32を有するビームモニタ30の各ビーム検出器32に流入するビーム電流の波形を、二つという少ない数の電流測定器40、42を用いて短時間で測定することができる。しかも、電流測定器が二つであり、多数の電流測定器の場合に比べて、例えば図3に示した従来の測定方法のようにビーム検出器32ごとに電流測定器40を用いる場合に比べて、二つの電流測定器40、42の測定精度を互いに揃えるのは容易であるので、精度の良い測定を行うことができる。
【0078】
更に、二つの電流測定器40、42を用いるので、上記第1の測定方法に比べて、同じビーム幅Wbで比較すると、一度に2倍の数のビーム検出器32を選択してビーム電流波形を測定することができる。従ってその分、測定に要する時間を短縮することができる。また、ビーム検出器32を一つ置きに第1グループと第2グループとに属させるので、上記第1の測定方法に比べて、一つの電流測定器について一度に選択するビーム検出器32の数が同じ場合で比較すると、より大きい(例えば2倍程度の)ビーム幅Wbに対応することができる。
【0079】
また、一方のグループのビーム検出器32およびそれ用の電流測定器を用いてビーム電流波形を測定している間に、他方のグループのビーム検出器用のスイッチSを切り換えることができ、それによって、スイッチSの切換遅れ時間や電流測定器40、42の応答遅れ時間等による待ち時間の発生を抑えて、測定に要する時間をより短縮することもできる。
【0080】
制御装置50は、この例では、上記測定工程および切換工程に相当する処理並びに測定データ記憶の制御を行うことができる。即ち、制御装置50は、(a)第1グループのビーム検出器32用のスイッチSについて、上記数11を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチSを同時にオン状態にし、かつ第2グループのビーム検出器32用のスイッチSについて、上記数12を満たすm個ずつ飛ばして複数のスイッチSを同時にオン状態にしている状態で、ビームモニタ30によってイオンビーム4を受けて電流測定器40、42に流入するビーム電流Ibの波形をそれぞれ測定して当該測定データを記憶装置52に記憶する測定処理と、(b)第1グループのビーム検出器32用のスイッチSおよび第2グループのビーム検出器32用のスイッチSについて、同時にオン状態にしているスイッチSを上記測定条件の下で切り換える切換処理とを繰り返す制御を実行することができる。
【0081】
従って、このような制御装置50を備えている測定装置60bは、上記第3の測定方法について述べたのと同様の効果を奏することができる。
【0082】
なお、図3に示した従来例のように電流測定器40の数が多いと電流測定器40の測定精度をそれぞれで比較しチェックすることは難しいけれども、上記測定装置60bのように電流測定器が二つの場合は、測定精度を互いに比較しチェックすることも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】イオン注入装置の一例を示す概略平面図である。
【図2】従来のビーム電流波形の測定方法の一例を示す図である。
【図3】従来のビーム電流波形の測定方法の他の例を示す図である。
【図4】ビーム電流波形の一例を示す概略図である。
【図5】この発明に係るビーム電流波形の測定方法を実施する測定装置の一例を示す図である。
【図6】図5に示す測定装置において複数のスイッチを同時にオン状態にすることができる条件を説明するための図である。
【図7】ビーム電流波形の他の例を示す概略図である。
【図8】ビーム電流波形の更に他の例を示す概略図である。
【図9】この発明に係るビーム電流波形の測定方法を実施する測定装置の他の例を示す図である。
【図10】図9に示す測定装置において複数のスイッチを同時にオン状態にすることができる条件を説明するための図である。
【符号の説明】
【0084】
4、4a〜4f イオンビーム
30 ビームモニタ
32 ビーム検出器
40、42 電流測定器
50 制御装置
52 記憶装置
60a、60b 測定装置
S、S1〜S16 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを受けてそのビーム電流をそれぞれ検出する複数のビーム検出器をX方向に等間隔で並べたビームモニタによって、X方向に走査されるイオンビームを受けて、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を測定する方法であって、
前記ビームモニタを構成する各ビーム検出器を、スイッチをそれぞれ介して一つの電流測定器に接続しておき、
各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、ビーム検出器の総数をpとし、nを0≦n≦(p−2)の整数とすると、次の数1またはそれと数学的に等価の式を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定する測定工程と、
同時にオン状態にしているスイッチを前記条件の下で切り換える切換工程とを繰り返す、ことを特徴とするビーム電流波形の測定方法。
[数1]
Wb<{n・Wf+(n+1)Ws}
【請求項2】
イオンビームを受けてそのビーム電流をそれぞれ検出する複数のビーム検出器をX方向に等間隔で並べたビームモニタによって、X方向に走査されるイオンビームを受けて、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を測定する方法であって、
前記ビームモニタを構成する各ビーム検出器を、スイッチをそれぞれ介して一つの電流測定器に接続しておき、
二つのスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定する第1測定工程を、同時にオン状態にしている二つのスイッチを前記ビームモニタのX方向の両端のビーム検出器に接続されている二つのスイッチから順に一つずつ内側へ切り換えて繰り返し、
しかも、各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、ビーム検出器の総数をp、同時にオン状態にしている二つのスイッチに接続されている二つのビーム検出器間に存在するビーム検出器の数をn(nは0≦n≦(p−2)の整数)とすると、次の数2またはそれと数学的に等価の式を満たす範囲で前記第1測定工程を繰り返し、
数2またはそれと数学的に等価の式を満たさなくなった以降は、残りのスイッチを一つずつオン状態にしている状態で前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定する第2測定工程を行う、ことを特徴とするビーム電流波形の測定方法。
[数2]
Wb<{n・Wf+(n+1)Ws}
【請求項3】
イオンビームを受けてそのビーム電流をそれぞれ検出する複数のビーム検出器をX方向に等間隔で並べたビームモニタによって、X方向に走査されるイオンビームを受けて、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を測定する方法であって、
前記ビームモニタを構成するビーム検出器を、一つ置きに第1グループと第2グループとに属させて、第1グループの各ビーム検出器をスイッチをそれぞれ介して第1の電流測定器に接続し、第2グループの各ビーム検出器をスイッチをそれぞれ介して第2の電流測定器に接続しておき、
各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、第1グループおよび第2グループのビーム検出器の総数をそれぞれq、rとし、nを0≦n≦(q−2)の整数、mを0≦m≦(r−2)の整数とすると、第1グループのビーム検出器用のスイッチについて、次の数3またはそれと数学的に等価の式を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にし、かつ第2グループのビーム検出器用のスイッチについて、次の数4またはそれと数学的に等価の式を満たすm個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記第1および第2の電流測定器に流入するビーム電流の波形をそれぞれ測定する測定工程と、
第1グループのビーム検出器用のスイッチおよび第2グループのビーム検出器用のスイッチについて、同時にオン状態にしているスイッチを前記条件の下で切り換える切換工程とを繰り返す、ことを特徴とするビーム電流波形の測定方法。
[数3]
Wb<{(2n+1)Wf+2(n+1)Ws}
[数4]
Wb<{(2m+1)Wf+2(m+1)Ws}
【請求項4】
イオンビームを受けてそのビーム電流をそれぞれ検出する複数のビーム検出器をX方向に等間隔で並べたビームモニタによって、X方向に走査されるイオンビームを受けて、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を測定する装置であって、
前記ビームモニタを構成する各ビーム検出器を、スイッチをそれぞれ介して一つの電流測定器に接続しており、
かつ、(a)各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、ビーム検出器の総数をpとし、nを0≦n≦(p−2)の整数とすると、次の数5またはそれと数学的に等価の式を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定して当該測定データを記憶手段に記憶する測定処理と、(b)同時にオン状態にしているスイッチを前記条件の下で切り換える切換処理とを繰り返す制御を実行する制御装置を備えている、ことを特徴とするビーム電流波形の測定装置。
[数5]
Wb<{n・Wf+(n+1)Ws}
【請求項5】
イオンビームを受けてそのビーム電流をそれぞれ検出する複数のビーム検出器をX方向に等間隔で並べたビームモニタによって、X方向に走査されるイオンビームを受けて、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を測定する装置であって、
前記ビームモニタを構成する各ビーム検出器を、スイッチをそれぞれ介して一つの電流測定器に接続しており、
かつ、(a)二つのスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定して当該測定データを記憶手段に記憶する第1測定処理を、同時にオン状態にしている二つのスイッチを前記ビームモニタのX方向の両端のビーム検出器に接続されている二つのスイッチから順に一つずつ内側へ切り換えて繰り返し、しかも、各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、ビーム検出器の総数をp、同時にオン状態にしている二つのスイッチに接続されている二つのビーム検出器間に存在するビーム検出器の数をn(nは0≦n≦(p−2)の整数)とすると、次の数6またはそれと数学的に等価の式を満たす範囲で前記第1測定処理を繰り返す制御と、(b)数6またはそれと数学的に等価の式を満たさなくなった以降は、残りのスイッチを一つずつオン状態にしている状態で前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記電流測定器に流入するビーム電流の波形を測定して当該計測データを前記記憶手段に記憶する第2測定処理を行う制御とを実行する制御装置を備えている、ことを特徴とするビーム電流波形の測定装置。
[数6]
Wb<{n・Wf+(n+1)Ws}
【請求項6】
イオンビームを受けてそのビーム電流をそれぞれ検出する複数のビーム検出器をX方向に等間隔で並べたビームモニタによって、X方向に走査されるイオンビームを受けて、各ビーム検出器に流入するビーム電流の波形を測定する装置であって、
前記ビームモニタを構成するビーム検出器を、一つ置きに第1グループと第2グループとに属させて、第1グループの各ビーム検出器をスイッチをそれぞれ介して第1の電流測定器に接続し、第2グループの各ビーム検出器をスイッチをそれぞれ介して第2の電流測定器に接続しており、
かつ、(a)各ビーム検出器のビーム入射孔のX方向の幅をWf、隣り合うビーム検出器のビーム入射孔間のX方向の間隔をWs、イオンビームのX方向のビーム幅をWb、第1グループおよび第2グループのビーム検出器の総数をそれぞれq、rとし、nを0≦n≦(q−2)の整数、mを0≦m≦(r−2)の整数とすると、第1グループのビーム検出器用のスイッチについて、次の数7またはそれと数学的に等価の式を満たすn個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にし、かつ第2グループのビーム検出器用のスイッチについて、次の数8またはそれと数学的に等価の式を満たすm個ずつ飛ばして複数のスイッチを同時にオン状態にしている状態で、前記ビームモニタによってイオンビームを受けて前記第1および第2の電流測定器に流入するビーム電流の波形をそれぞれ測定して当該測定データを記憶手段に記憶する測定処理と、(b)第1グループのビーム検出器用のスイッチおよび第2グループのビーム検出器用のスイッチについて、同時にオン状態にしているスイッチを前記条件の下で切り換える切換処理とを繰り返す制御を実行する制御装置を備えている、ことを特徴とするビーム電流波形の測定装置。
[数7]
Wb<{(2n+1)Wf+2(n+1)Ws}
[数8]
Wb<{(2m+1)Wf+2(m+1)Ws}

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−175765(P2008−175765A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11360(P2007−11360)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】