ピオグリタゾンの中間体、及びその製造方法、並びにピオグリタゾンまたはその塩酸塩の製造方法
【課題】糖尿病などの治療に用いられるピオグリタゾン及びその塩酸塩を、工業的に容易かつ安全に、高い純度で得ることができるその新規な中間体とその製造方法、並びにこの中間体からピオグリタゾン及びその塩酸塩を製造する方法を提供する。
【解決手段】次式(I)または(II)で表されるピオグリタゾンの新規な中間体であり、この中間体から酸水溶液による加水分解でピオグリタゾンまたはその塩酸塩を導く。この酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、酢酸、硫酸、塩酸のいずれか1つ、またはこれらを混合したものが好ましい。
【化1】
式中、Rは、分岐していてもよいアルキル基、置換していてもよいアリール基、またはトリフルオロメチル基を示す。
【解決手段】次式(I)または(II)で表されるピオグリタゾンの新規な中間体であり、この中間体から酸水溶液による加水分解でピオグリタゾンまたはその塩酸塩を導く。この酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、酢酸、硫酸、塩酸のいずれか1つ、またはこれらを混合したものが好ましい。
【化1】
式中、Rは、分岐していてもよいアルキル基、置換していてもよいアリール基、またはトリフルオロメチル基を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病治療薬として実用されているピオグリタゾンとその塩酸塩を容易かつ高純度で得ることができるその新規な中間体とその製造方法、並びにこの中間体からピオグリタゾンとその塩酸塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピオグリタゾン(次式(IV)で表される化合物)やその塩酸塩は、毒性が低く、優れた血糖および血糖脂質の低下作用を有するので、糖尿病などの治療薬として実用されている。
【0003】
【化1】
【0004】
このピオグリタゾン(IV)は、例えば、特許文献1に記載される方法で合成することができる。
該方法は、下記の反応式〔1〕で示されるように、5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノン(以下、「PEBIT」と記すことがある)(III)を2N−HCl(2規定塩酸)中で加水分解する方法である。
【0005】
【化2】
【0006】
ところが、上記PEBIT(III)のイミノ基をダイレクトに加水分解する方法では、PEBIT(III)を塩酸水溶液中で加熱還流した後、減圧下にて溶媒(酸水溶液)を留去している。このため、酸水溶液を、減圧下にて留去する工程は安全面から好ましくないばかりか、水を留去するのに時間もコストも要するので、工場スケールでの製造において問題があった。
しかも、該方法で得られるピオグリタゾン(IV)は、本発明者による追試試験によると、高速液体クロマトグラフィーにより測定された純度(以下、単に「HPLCによる純度」または「HPLC純度」と記す)が97.3%と悪い。DMF−H2O(ジメチルホルムアミドと水の混合溶液)にて再結晶させた後でも、HPLCによる純度は97.8%程度にしかならない。よって、これらをそのまま塩酸塩化しても、医薬品規格に耐えうる純度のものを得るためには、度重なる精製が必要である。
加えて、現在の医薬品規格では、最終製品の「色」も定められており(ピオグリタゾン塩酸塩に関しては、"白色"の結晶又は結晶性の粉末でなければならない)、上記方法で「色」の規格を満たす塩酸塩を合成するには、更に脱色目的の工程(例えば、活性炭の使用による精製工程など)も必要とされる。
【0007】
他方、特許文献2にも、ピオグリタゾン(IV)の製造方法が開示されている。
この方法は、下記の反応式〔2〕で示されるように、5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジリデン}−2,4−チアゾリジンジオン(V)を触媒(パラジウムカーボンなどの貴金属)の存在下に接触還元する反応であるが、工業的に反応を促進させるためには、5〜100kg/cm2という高圧での反応を必要とし、特殊な反応釜を要するという欠点を有していた。
【0008】
【化3】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平5−66956号公報
【特許文献2】特許第3256841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような現状を考慮し、工業的に容易ではない酸水溶液の留去工程、高価な貴金属の使用、特殊な高圧反応釜の使用、度重なる精製工程のいずれも必要とすることなく、「色」の規格を満たしかつ非常に純度が高いピオグリタゾン及びその塩酸塩を安全に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明者は、PEBIT(III)のイミノ基をダイレクトに加水分解せずに、工業的に容易な操作で高純度のピオグリタゾンが得られる方法について鋭意検討を重ねた結果、
先ず、そのイミノチアゾリジノン環の窒素原子をアシル化することで、ピオグリタゾンの中間体としての新規化合物(すなわち、PEBITのアシル体)を見出し、
次に、この新規化合物である中間体から高純度なピオグリタゾンを得る方法についても見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明におけるピオグリタゾンの中間体は、次式(I)または(II)で表される新規化合物であることを特徴とする。
【0013】
【化4】
式中、Rは、分岐していてもよいアルキル基、置換していてもよいアリール基、またはトリフルオロメチル基を示す。
【0014】
上式中、Rで示される分岐していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などが、置換していてもよいアリール基としては、ベンゾイル基などがそれぞれ挙げられる。
これらRの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基が特に好ましい。
【0015】
これら2つの新規化合物のうち、ピオグリタゾン(IV)またはその塩酸塩の製造に用いる中間体としては、式(I)で表される化合物を用いることが好ましい。式(II)で表される化合物に比較して、式(I)で表される化合物は、結晶性が良好なので、収率の向上をもたらすからである。
加えて、PEBIT(III)より、式(II)で表される化合物を合成するためには、PEBIT(III)に対してアシル化剤を過剰に用いる必要があるので、コスト的に好ましくないばかりか、この過剰なアシル化剤の配合が、化合物(I)と化合物(II)を含む混合体となりやすく、更なる副生成物の生成の虞がある。
さらに、式(II)で表される化合物を、加水分解によりピオグリタゾン(IV)に誘導した際には、式(I)で表される化合物を用いた場合と比較して、加水分解により脱離する置換基が多く、得られるピオグリタゾン(IV)の純度が低下する虞もある。
【0016】
<ピオグリタゾンの中間体の製造方法>
本発明では、このようなピオグリタゾンの中間体(I)または(II)を得るために下記に示す製造方法を用いる。
その製造方法とは、下記の反応式〔3〕で示されるように、式(III)で表される化合物(PEBIT)を、酸無水物または酸ハライドにてアシル化反応に付すことが重要である。
酸無水物または酸ハライドは工業的にも容易に入手可能であり、この反応〔3〕において、高価な貴金属や特殊な装置等を要する事はない。このような酸無水物または酸ハライドと反応させることで、PEBIT(III)のアシル化誘導を容易かつ確実に達成することができる。
【0017】
【化5】
【0018】
上記反応式〔3〕に記載の反応条件とは、PEBIT(III)に対する酸無水物または酸ハライドの使用量を主にさす(ただし、使用する溶媒や反応温度なども得られる生成物を左右することがある)。
すなわち、PEBIT(III)に対する酸無水物または酸ハライドの使用量が、多すぎると、上式(I)及び(II)で表される中間体が混合物として合成される可能性が高くなる。また、過剰な酸無水物(酸ハライド)の使用により、反応終了後に晶析物として得られる中間体(I)又は中間体(II)或いはそれら(I)(II)の混合物の収率が低下する虞があるうえ、コスト的にも無駄である。一方、少なすぎると、PEBIT(III)の窒素原子のアシル化完結が困難となる。
医薬品の中間体として化合物(I)を単独(単一成分)で得ることをも考慮すると、酸無水物または酸ハライドの使用量は、PEBIT(III)1モルに対して、0.9〜10モルが好ましく、より好ましくは1.0〜2.5モルであり、更に好ましくは1.0〜1.3モルである。
【0019】
出発物質であるPEBIT(III)については、例えば、特許文献1記載の方法により合成することができる。
【0020】
酸無水物としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、イソ酪酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸無水物などが使用できる。中でも、価格、酸無水物の安定性、得られるアシル体の純度や結晶性などから、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物が好ましく、さらに、酸無水物の臭気、得られるアシル体の収率までも考慮すると、より好ましくは、無水酢酸またはプロピオン酸無水物である。
酸ハライドとしては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、アセチルブロマイド、ベンゾイルクロライドなどが使用でき、中でも、アセチルクロライドが好ましい。
なお、酸無水物と酸ハライドを混合して使用すること、及び2種以上の酸無水物同士(あるいは2種以上の酸ハライド同士)を混合して使用することは、得られるアシル体が混合物となり易く、更にその他の不純物が生成する虞もあるので好ましくない。
【0021】
上記反応式〔3〕における酸無水物または酸ハライドの使用量以外の反応条件については、季節などにより一概には決められないが、一般には、PEBIT(III)に酸無水物(あるいは、酸ハライド)のみ、又は通常の有機溶媒(例えば、クロロホルム、トルエン、酢酸エチルなど)とともに酸無水物(あるいは、酸ハライド)を添加し、常圧、還流下で、1〜10時間程度行うことが好ましく、1〜4時間程度で行うことがより好ましい。
【0022】
アシル化反応終了後については、そのまま攪拌下冷却、又は適当な溶媒を加えて攪拌下冷却し、晶析物(I)、晶析物(II)又はそれらの混合物を濾取・乾燥すればよい。
このように、本発明のピオグリタゾンの中間体(I)または(II)の製造方法では、反応終了後にそのまま(または適当な有機溶媒を添加し)攪拌下冷却するのみで結晶を得ることができるので、減圧用の機器(真空ポンプ)等を使用し、時間がかかる溶媒の留去工程を一切必要としない。
【0023】
なお、上記アシル化反応により得られた化合物(I)および化合物(II)の色は、白色〜乳白色であり、PEBIT(III)をアシル体に誘導することで、脱色がなされることも、本発明の非常に優れた効果の一つである。
【0024】
<ピオグリタゾンフリー体の製造方法>
また、本発明では、上記のようにして得られる、ピオグリタゾンの中間体(I)及び/または(II)を、下記の反応式〔4〕で示されるように、酸水溶液により加水分解することにより、ピオグリタゾン(IV)を製造することを特徴とする。
【0025】
【化6】
【0026】
用いる酸としては、有機酸及び無機酸のいずれも使用可能であるが、その使用量が重要である。
これら酸の中間体(I),(II)に対する使用量は、多すぎると、不純物の生成が増加する傾向にあり、さらに(加水分解)反応終了後にそのまま晶析させる事ができず中和または抽出等の操作が必要となるばかりか、冷却晶析させた際の収率低下や資材コストの上昇を招く虞がある。
一方、使用量が少なすぎると、加水分解を完結させるために長時間を要するか、あるいは完結が困難となる。
したがって、酸の中間体(I),(II)に対する使用量は、中間体1モルに対して0.7〜2.1モルが好ましく、より好ましくは0.8〜1.7モル、さらに好ましくは0.9〜1.5モルである。
【0027】
また、使用する酸に対する水の量も重要となる。例えば、水に対する酸のモル数(すなわち、酸濃度)が高すぎると、不純物の生成が増加する傾向にあるばかりか反応終了後にそのまま晶析させることが困難となる。一方、酸に対する水の量が多すぎると、加水分解反応完結に長時間を要するか完結が困難となる。
したがって、酸水溶液の濃度は、0.1〜2.1モル/L(リットル)が好ましく、より好ましくは0.3〜1.7モル/L、さらに好ましくは0.4〜1.0モル/Lである。
このように、適当な酸濃度の水溶液により加水分解させることで、ピオグリタゾンフリー体(IV)が選択的に晶析し易くなるため、溶媒の留去工程が一切不要となり、しかも純度の高いピオグリタゾン(IV)が得られる。
【0028】
酸水溶液に用いる有機酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、酢酸等のいずれか1つ、またはこれらを混合したものなどが使用できる。
酸水溶液に用いる無機酸としては、塩酸、硫酸等のいずれか1つ、またはこれらを混合したものなどが使用できる。
さらに、これら有機酸と無機酸とを混合して使用することも可能である。
これらの中でも、常温、常圧で液体であるメタンスルホン酸、硫酸、塩酸が好ましい。
【0029】
上記加水分解の条件は、季節などにより一概には決められないが、一般には、中間体(I)及び/または(II)に、酸および水を添加し、常圧、還流下で、1〜10時間程度行う事が好ましく、2〜4時間程度で行うことがより好ましい。
加水分解反応終了後については、そのまま、または適当な有機溶媒を添加して攪拌下冷却し、晶析物であるピオグリタゾン(IV)を濾取・乾燥すればよい。
このように、本発明のピオグリタゾン(IV)の製造方法においても、反応終了後に冷却攪拌するのみで、純度の高い結晶を得ることができるので、工業的に容易ではない溶媒の留去工程や煩雑な中和操作、分液抽出操作等を一切必要としない。
【0030】
ピオグリタゾンの塩酸塩については、上記のようにして得られる、ピオグリタゾン(IV)を、例えば、塩酸水溶液と有機溶媒の混合溶液中で塩酸塩化する、有機溶媒中に塩酸ガスを添加し塩酸塩化する等の公知の方法により、塩酸塩とすればよい。
【0031】
以上のように、本発明では、PEBIT(III)をアシル化することでピオグリタゾンの中間体(PEBITのアシル体(I)または(II)あるいはそれら(I),(II)の混合物)を合成し、またこの新規化合物であるPEBITのアシル体を加水分解することによって、従来のPEBITのイミノ基をダイレクトに加水分解する方法(特許文献1参照)に比べて、安全面から問題であり且つ工業的にも容易ではない酸水溶液を減圧下留去する工程や煩雑な中和操作を必要としないばかりか、更なる脱色目的の精製工程も必要とせずに、ピオグリタゾンまたはその塩酸塩を、度重なる精製を行うことなく高純度に、工業的に容易かつ安全に製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のピオグリタゾンの中間体は、新規化合物であり、該中間体を用いることで、容易かつ安全に、しかも一度の精製工程で、「色」の規格を満たしかつ非常に純度の高いピオグリタゾンまたはその塩酸塩を工業的に製造することができる。
また、本発明によれば、この新規化合物である中間体を、酸無水物または酸ハライドにてPEBITをアシル化する事によって、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1で得た化合物(Ia)のNMR分析結果を示す図である。
【図2】実施例1で得た化合物(Ia)のIR分析結果を示す図である。
【図3】実施例2で得た化合物(IIa)のNMR分析結果を示す図である。
【図4】実施例2で得た化合物(IIa)のIR分析結果を示す図である。
【図5】実施例8で得た化合物(Ib)のNMR分析結果を示す図である。
【図6】実施例8で得た化合物(Ib)のIR分析結果を示す図である。
【図7】実施例9で得た化合物(Ic)のNMR分析結果を示す図である。
【図8】実施例9で得た化合物(Ic)のIR分析結果を示す図である。
【図9】実施例10で得た化合物(Id)のNMR分析結果を示す図である。
【図10】実施例10で得た化合物(Id)のIR分析結果を示す図である。
【図11】実施例29で得た化合物(Ie)のNMR分析結果を示す図である。
【図12】実施例29で得た化合物(Ie)のIR分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<ピオグリタゾンの中間体の合成>
実施例1
本発明に係るピオグリタゾンの中間体:N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(I)を以下のようにして合成した。
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノン(III)100.00g(281.3ミリモル)に、酢酸エチル500.00g及び無水酢酸30.15g(295.3ミリモル)を加えた後、3時間加熱還流した。PEBIT(III)1モルに対する無水酢酸のモル等量については、表1に示す通りである。
反応終了後、室温まで攪拌下冷却した後、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、乳白色のN−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(Ia)100.22g(収率89.6%、HPLC純度97.0%)を得た。なお、色の判定については、目視によるものである。
【0035】
実施例2〜7、13〜23
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT(III)5.00g(14.1ミリモル)に、酢酸エチル25.00g、及び表1に示す量の無水酢酸をそれぞれ加える以外は、実施例1と同様にして、本発明に係るピオグリタゾンの中間体を合成した。析出した結晶の重量(g)、析出した結晶中メイン純度を示す化合物の収率(%)、各化合物(I),(II),(III)のHPLC純度、及び、析出した結晶の色について、併せて表1に示す。
なお、実施例2については、反応終了後(加熱還流冷却後)に晶析物が認められなかったので、ジエチルエーテル200.0gを加えてから室温下攪拌し晶析物を濾取した。
【0036】
【表1】
【0037】
表1中の析出した結晶の「化合物」の欄に示すとおり、実施例6は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(Ia)と、2-(アセチルイミノ)-5-(4-(2-(5-エチルピリジン-2-イル)エトキシ)ベンジル)-2,5-ジハイドロチアゾール-4-イル アセタテート(IIa)との混合物であった。
【0038】
実施例8〜12、27〜29
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT(III)5.00g(14.1ミリモル)に、酢酸エチル25.00g(実施例8〜10,12,27,29)又はクロロホルム25.00g(実施例11)、及び表2に示す量の酸無水物または酸ハライドをそれぞれ加える以外は、実施例1と同様にして、本発明に係るピオグリタゾンの中間体を合成した。析出した結晶の重量(g)、析出した結晶中メイン純度を示す化合物の収率(%)、各化合物(I),(II),(III)のHPLC純度、及び、析出した結晶の色について、表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2中の化合物(Ib)は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)プロピオンアミドである。
表2中の化合物(Ic)は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)ブチルアミドである。
表2中の化合物(Id)は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)−2,2,2−トリフルオロアセタミドである。
表2中の化合物(Ie)は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)−ベンズアミドである。
【0041】
実施例1,2,8〜10について、得られた各化合物(Ia,IIa,Ib,Ic,Id)の元素分析、融点測定、NMR分析、IR分析を、下記のようにして行った。
また、実施例29については、得られた化合物(Ie)の融点測定、NMR分析、IR分析を、下記のようにして行った。
【0042】
〔元素分析〕
Thermo Fisher Scientific社製 “Model EA1112 IRMS NC−plus CHNS”を使用して行った。この結果を表3に示す。
〔融点測定〕
融点測定装置(独国BUCHI社製 商品名"B545")を使用して行った。この結果を表3に示す。
〔NMR分析〕
BRUKER社製 “AV-300”を使用し、CDCl3又はDMSO−d6にて測定を行った。この結果を、図1,3,5,7,9,11にそれぞれ示す。
〔IR分析〕
Thermo Fisher Scientific社製 “Model Nicolet iS10 FT−IR spectrometer, secondary Nicolet iZ10 module”を使用し、錠剤法にて測定を行った。この結果を、図2,4,6,8,10,12にそれぞれ示す。
【0043】
【表3】
【0044】
<ピオグリタゾンフリー体の合成>
実施例1と同様にして得られたピオグリタゾンの中間体:N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(Ia)からピオグリタゾン:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル−2,4−チアゾリジンジオン(IV)を、以下のようにして合成した。
【0045】
実施例1−1、1−7〜1−30
ピオグリタゾンの中間体(Ia)2.00g(5.0ミリモル)に、表4に示す量のイオン交換水、及び表4に示す量のメタンスルホン酸をそれぞれ加え、3時間加熱還流した。中間体(Ia)1モルに対するメタンスルホン酸のモル等量、及び酸水溶液の濃度については、表4に示す通りである。
反応終了後、室温まで攪拌下冷却した後、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、白色のピオグリタゾン:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2,4−チアゾリジンジオン(IV)を合成した。析出した結晶の重量(g)、析出した結晶中メイン純度を示す化合物の収率(%)、各化合物(IV),(Ia)のHPLC純度、及び、析出した結晶の色について、併せて表4に示す。なお、色の判定については、目視によるものである。
【0046】
【表4】
【0047】
実施例1−2〜1−6
ピオグリタゾンの中間体(Ia)2.00g(5.0ミリモル)に、イオン交換水10.00g、及び表5に示す酸をそれぞれ6.2ミリモル加える以外は、実施例1−1と同様にして、ピオグリタゾン(IV)を合成した。析出した結晶の重量(g)、析出した結晶中メイン純度を示す化合物の収率(%)、各化合物(IV)のHPLC純度、及び、析出した結晶の色について、併せて表5に示す。
なお、実施例1−2〜1−4については、反応終了後(加熱還流冷却後)に晶析物が認められなかったので、2−プロパノール5.0gを加えてから室温下攪拌し晶析物を濾取した。
【0048】
【表5】
【0049】
実施例1−1〜1−30で得られた結晶は、いずれも後述の参考例1に示した既知の方法により合成したピオグリタゾン(IV)とHPLCによるRetension time (R.t.)が一致したので、ピオグリタゾン(IV)であることが同定された。
表4に示すとおり、実施例1−8、1−9、1−24は、未反応のN−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(Ia)を、5%以上含むものであった。
【0050】
<PEBITを直接加水分解し(ピオグリタゾンの中間体(I),(II)を経由せずに)、ピオグリタゾンフリー体を合成する>
参考例1〔2規定塩酸にて、PEBITを加水分解する〕
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT(III)1.18g(3.3ミリモル)を、2N−HCl(2規定塩酸)10mL(ミリリットル)(96.0ミリモル)により6時間加熱還流することにより加水分解した後、減圧下にて酸水溶液を留去した。
これに、水を加えた後、炭酸水素ナトリウム水溶液により中和し、得られた晶析物を濾取、乾燥し、1.32gのピオグリタゾン:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2,4−チアゾリジンジオン(IV)が得られた。
しかし、参考例1の製法で得られた化合物は、淡褐色に着色しており、HPLC純度は97.2%であった。したがって、そのまま塩酸塩化しても医薬品規格に耐えうる純度とはならないし、着色面に関しても活性炭等による脱色を実施しなければならないということが明らかになった。
【0051】
参考例2〔メタンスルホン酸にて、PEBITを加水分解する〕
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT(III)2.00g(5.6ミリモル)にイオン交換水10.00g及びメタンスルホン酸0.6g(6.2ミリモル)を加えて、3時間加熱還流することにより加水分解した後、室温まで攪拌下冷却し、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、淡褐色のピオグリタゾン:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2,4−チアゾリジンジオン(IV)0.78gを得た。
しかし、得られる量が少なく、しかもHPLC純度が53.6%と低く未反応PEBITを44.6%含んでおり、反応時間の延長により加水分解体生成率や反応収率が若干上がる可能性はあっても、本発明による実施例1−1〜1−30と比較して非常に低い結果となった。
【0052】
<粗ピオグリタゾン塩酸塩の合成>
実施例1−1A
実施例1−1と同様にして得られたピオグリタゾンフリー体(IV)80.00g(0.22モル)に、メタノール80.00g及び濃塩酸40.00g(0.38モル)を加えて加熱還流により溶解した。
反応終了後、室温まで攪拌下冷却した後、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、白色のピオグリタゾン塩酸塩の粗結晶78.6gを得た(収率89.2%、HPLC純度99.7%)。
【0053】
<精ピオグリタゾン塩酸塩の合成>
実施例1−1B
実施例1−1Aで得られた粗ピオグリタゾン塩酸塩70.00g(0.18モル)に、メタノール140.00gを加えて加熱還流により溶解した。
反応終了後、室温まで攪拌下冷却した後、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、白色のピオグリタゾン塩酸塩の精結晶56.96gを得た(収率81.4%、HPLC純度99.9%)。
【0054】
実施例1−1A〜1−1Bから、本発明の製造方法により合成されたピオグリタゾン塩酸塩は、最終精製のみを行うだけで「色」の規格を満たし、収率が良好で、しかも非常に純度が高いものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によるピオグリタゾンの新規な中間体は、簡便な合成方法によって得られ、該中間体を用いることで容易かつ安全な高純度のピオグリタゾンまたはその塩酸塩の工業的製造を可能とする。
本発明から導かれるピオグリタゾンまたはその塩酸塩は、医薬品の規格を十分に満たすものであるので、糖尿病などの治療薬として好適に使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病治療薬として実用されているピオグリタゾンとその塩酸塩を容易かつ高純度で得ることができるその新規な中間体とその製造方法、並びにこの中間体からピオグリタゾンとその塩酸塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピオグリタゾン(次式(IV)で表される化合物)やその塩酸塩は、毒性が低く、優れた血糖および血糖脂質の低下作用を有するので、糖尿病などの治療薬として実用されている。
【0003】
【化1】
【0004】
このピオグリタゾン(IV)は、例えば、特許文献1に記載される方法で合成することができる。
該方法は、下記の反応式〔1〕で示されるように、5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノン(以下、「PEBIT」と記すことがある)(III)を2N−HCl(2規定塩酸)中で加水分解する方法である。
【0005】
【化2】
【0006】
ところが、上記PEBIT(III)のイミノ基をダイレクトに加水分解する方法では、PEBIT(III)を塩酸水溶液中で加熱還流した後、減圧下にて溶媒(酸水溶液)を留去している。このため、酸水溶液を、減圧下にて留去する工程は安全面から好ましくないばかりか、水を留去するのに時間もコストも要するので、工場スケールでの製造において問題があった。
しかも、該方法で得られるピオグリタゾン(IV)は、本発明者による追試試験によると、高速液体クロマトグラフィーにより測定された純度(以下、単に「HPLCによる純度」または「HPLC純度」と記す)が97.3%と悪い。DMF−H2O(ジメチルホルムアミドと水の混合溶液)にて再結晶させた後でも、HPLCによる純度は97.8%程度にしかならない。よって、これらをそのまま塩酸塩化しても、医薬品規格に耐えうる純度のものを得るためには、度重なる精製が必要である。
加えて、現在の医薬品規格では、最終製品の「色」も定められており(ピオグリタゾン塩酸塩に関しては、"白色"の結晶又は結晶性の粉末でなければならない)、上記方法で「色」の規格を満たす塩酸塩を合成するには、更に脱色目的の工程(例えば、活性炭の使用による精製工程など)も必要とされる。
【0007】
他方、特許文献2にも、ピオグリタゾン(IV)の製造方法が開示されている。
この方法は、下記の反応式〔2〕で示されるように、5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジリデン}−2,4−チアゾリジンジオン(V)を触媒(パラジウムカーボンなどの貴金属)の存在下に接触還元する反応であるが、工業的に反応を促進させるためには、5〜100kg/cm2という高圧での反応を必要とし、特殊な反応釜を要するという欠点を有していた。
【0008】
【化3】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平5−66956号公報
【特許文献2】特許第3256841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような現状を考慮し、工業的に容易ではない酸水溶液の留去工程、高価な貴金属の使用、特殊な高圧反応釜の使用、度重なる精製工程のいずれも必要とすることなく、「色」の規格を満たしかつ非常に純度が高いピオグリタゾン及びその塩酸塩を安全に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明者は、PEBIT(III)のイミノ基をダイレクトに加水分解せずに、工業的に容易な操作で高純度のピオグリタゾンが得られる方法について鋭意検討を重ねた結果、
先ず、そのイミノチアゾリジノン環の窒素原子をアシル化することで、ピオグリタゾンの中間体としての新規化合物(すなわち、PEBITのアシル体)を見出し、
次に、この新規化合物である中間体から高純度なピオグリタゾンを得る方法についても見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明におけるピオグリタゾンの中間体は、次式(I)または(II)で表される新規化合物であることを特徴とする。
【0013】
【化4】
式中、Rは、分岐していてもよいアルキル基、置換していてもよいアリール基、またはトリフルオロメチル基を示す。
【0014】
上式中、Rで示される分岐していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などが、置換していてもよいアリール基としては、ベンゾイル基などがそれぞれ挙げられる。
これらRの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基が特に好ましい。
【0015】
これら2つの新規化合物のうち、ピオグリタゾン(IV)またはその塩酸塩の製造に用いる中間体としては、式(I)で表される化合物を用いることが好ましい。式(II)で表される化合物に比較して、式(I)で表される化合物は、結晶性が良好なので、収率の向上をもたらすからである。
加えて、PEBIT(III)より、式(II)で表される化合物を合成するためには、PEBIT(III)に対してアシル化剤を過剰に用いる必要があるので、コスト的に好ましくないばかりか、この過剰なアシル化剤の配合が、化合物(I)と化合物(II)を含む混合体となりやすく、更なる副生成物の生成の虞がある。
さらに、式(II)で表される化合物を、加水分解によりピオグリタゾン(IV)に誘導した際には、式(I)で表される化合物を用いた場合と比較して、加水分解により脱離する置換基が多く、得られるピオグリタゾン(IV)の純度が低下する虞もある。
【0016】
<ピオグリタゾンの中間体の製造方法>
本発明では、このようなピオグリタゾンの中間体(I)または(II)を得るために下記に示す製造方法を用いる。
その製造方法とは、下記の反応式〔3〕で示されるように、式(III)で表される化合物(PEBIT)を、酸無水物または酸ハライドにてアシル化反応に付すことが重要である。
酸無水物または酸ハライドは工業的にも容易に入手可能であり、この反応〔3〕において、高価な貴金属や特殊な装置等を要する事はない。このような酸無水物または酸ハライドと反応させることで、PEBIT(III)のアシル化誘導を容易かつ確実に達成することができる。
【0017】
【化5】
【0018】
上記反応式〔3〕に記載の反応条件とは、PEBIT(III)に対する酸無水物または酸ハライドの使用量を主にさす(ただし、使用する溶媒や反応温度なども得られる生成物を左右することがある)。
すなわち、PEBIT(III)に対する酸無水物または酸ハライドの使用量が、多すぎると、上式(I)及び(II)で表される中間体が混合物として合成される可能性が高くなる。また、過剰な酸無水物(酸ハライド)の使用により、反応終了後に晶析物として得られる中間体(I)又は中間体(II)或いはそれら(I)(II)の混合物の収率が低下する虞があるうえ、コスト的にも無駄である。一方、少なすぎると、PEBIT(III)の窒素原子のアシル化完結が困難となる。
医薬品の中間体として化合物(I)を単独(単一成分)で得ることをも考慮すると、酸無水物または酸ハライドの使用量は、PEBIT(III)1モルに対して、0.9〜10モルが好ましく、より好ましくは1.0〜2.5モルであり、更に好ましくは1.0〜1.3モルである。
【0019】
出発物質であるPEBIT(III)については、例えば、特許文献1記載の方法により合成することができる。
【0020】
酸無水物としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、イソ酪酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸無水物などが使用できる。中でも、価格、酸無水物の安定性、得られるアシル体の純度や結晶性などから、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物が好ましく、さらに、酸無水物の臭気、得られるアシル体の収率までも考慮すると、より好ましくは、無水酢酸またはプロピオン酸無水物である。
酸ハライドとしては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、アセチルブロマイド、ベンゾイルクロライドなどが使用でき、中でも、アセチルクロライドが好ましい。
なお、酸無水物と酸ハライドを混合して使用すること、及び2種以上の酸無水物同士(あるいは2種以上の酸ハライド同士)を混合して使用することは、得られるアシル体が混合物となり易く、更にその他の不純物が生成する虞もあるので好ましくない。
【0021】
上記反応式〔3〕における酸無水物または酸ハライドの使用量以外の反応条件については、季節などにより一概には決められないが、一般には、PEBIT(III)に酸無水物(あるいは、酸ハライド)のみ、又は通常の有機溶媒(例えば、クロロホルム、トルエン、酢酸エチルなど)とともに酸無水物(あるいは、酸ハライド)を添加し、常圧、還流下で、1〜10時間程度行うことが好ましく、1〜4時間程度で行うことがより好ましい。
【0022】
アシル化反応終了後については、そのまま攪拌下冷却、又は適当な溶媒を加えて攪拌下冷却し、晶析物(I)、晶析物(II)又はそれらの混合物を濾取・乾燥すればよい。
このように、本発明のピオグリタゾンの中間体(I)または(II)の製造方法では、反応終了後にそのまま(または適当な有機溶媒を添加し)攪拌下冷却するのみで結晶を得ることができるので、減圧用の機器(真空ポンプ)等を使用し、時間がかかる溶媒の留去工程を一切必要としない。
【0023】
なお、上記アシル化反応により得られた化合物(I)および化合物(II)の色は、白色〜乳白色であり、PEBIT(III)をアシル体に誘導することで、脱色がなされることも、本発明の非常に優れた効果の一つである。
【0024】
<ピオグリタゾンフリー体の製造方法>
また、本発明では、上記のようにして得られる、ピオグリタゾンの中間体(I)及び/または(II)を、下記の反応式〔4〕で示されるように、酸水溶液により加水分解することにより、ピオグリタゾン(IV)を製造することを特徴とする。
【0025】
【化6】
【0026】
用いる酸としては、有機酸及び無機酸のいずれも使用可能であるが、その使用量が重要である。
これら酸の中間体(I),(II)に対する使用量は、多すぎると、不純物の生成が増加する傾向にあり、さらに(加水分解)反応終了後にそのまま晶析させる事ができず中和または抽出等の操作が必要となるばかりか、冷却晶析させた際の収率低下や資材コストの上昇を招く虞がある。
一方、使用量が少なすぎると、加水分解を完結させるために長時間を要するか、あるいは完結が困難となる。
したがって、酸の中間体(I),(II)に対する使用量は、中間体1モルに対して0.7〜2.1モルが好ましく、より好ましくは0.8〜1.7モル、さらに好ましくは0.9〜1.5モルである。
【0027】
また、使用する酸に対する水の量も重要となる。例えば、水に対する酸のモル数(すなわち、酸濃度)が高すぎると、不純物の生成が増加する傾向にあるばかりか反応終了後にそのまま晶析させることが困難となる。一方、酸に対する水の量が多すぎると、加水分解反応完結に長時間を要するか完結が困難となる。
したがって、酸水溶液の濃度は、0.1〜2.1モル/L(リットル)が好ましく、より好ましくは0.3〜1.7モル/L、さらに好ましくは0.4〜1.0モル/Lである。
このように、適当な酸濃度の水溶液により加水分解させることで、ピオグリタゾンフリー体(IV)が選択的に晶析し易くなるため、溶媒の留去工程が一切不要となり、しかも純度の高いピオグリタゾン(IV)が得られる。
【0028】
酸水溶液に用いる有機酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、酢酸等のいずれか1つ、またはこれらを混合したものなどが使用できる。
酸水溶液に用いる無機酸としては、塩酸、硫酸等のいずれか1つ、またはこれらを混合したものなどが使用できる。
さらに、これら有機酸と無機酸とを混合して使用することも可能である。
これらの中でも、常温、常圧で液体であるメタンスルホン酸、硫酸、塩酸が好ましい。
【0029】
上記加水分解の条件は、季節などにより一概には決められないが、一般には、中間体(I)及び/または(II)に、酸および水を添加し、常圧、還流下で、1〜10時間程度行う事が好ましく、2〜4時間程度で行うことがより好ましい。
加水分解反応終了後については、そのまま、または適当な有機溶媒を添加して攪拌下冷却し、晶析物であるピオグリタゾン(IV)を濾取・乾燥すればよい。
このように、本発明のピオグリタゾン(IV)の製造方法においても、反応終了後に冷却攪拌するのみで、純度の高い結晶を得ることができるので、工業的に容易ではない溶媒の留去工程や煩雑な中和操作、分液抽出操作等を一切必要としない。
【0030】
ピオグリタゾンの塩酸塩については、上記のようにして得られる、ピオグリタゾン(IV)を、例えば、塩酸水溶液と有機溶媒の混合溶液中で塩酸塩化する、有機溶媒中に塩酸ガスを添加し塩酸塩化する等の公知の方法により、塩酸塩とすればよい。
【0031】
以上のように、本発明では、PEBIT(III)をアシル化することでピオグリタゾンの中間体(PEBITのアシル体(I)または(II)あるいはそれら(I),(II)の混合物)を合成し、またこの新規化合物であるPEBITのアシル体を加水分解することによって、従来のPEBITのイミノ基をダイレクトに加水分解する方法(特許文献1参照)に比べて、安全面から問題であり且つ工業的にも容易ではない酸水溶液を減圧下留去する工程や煩雑な中和操作を必要としないばかりか、更なる脱色目的の精製工程も必要とせずに、ピオグリタゾンまたはその塩酸塩を、度重なる精製を行うことなく高純度に、工業的に容易かつ安全に製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のピオグリタゾンの中間体は、新規化合物であり、該中間体を用いることで、容易かつ安全に、しかも一度の精製工程で、「色」の規格を満たしかつ非常に純度の高いピオグリタゾンまたはその塩酸塩を工業的に製造することができる。
また、本発明によれば、この新規化合物である中間体を、酸無水物または酸ハライドにてPEBITをアシル化する事によって、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1で得た化合物(Ia)のNMR分析結果を示す図である。
【図2】実施例1で得た化合物(Ia)のIR分析結果を示す図である。
【図3】実施例2で得た化合物(IIa)のNMR分析結果を示す図である。
【図4】実施例2で得た化合物(IIa)のIR分析結果を示す図である。
【図5】実施例8で得た化合物(Ib)のNMR分析結果を示す図である。
【図6】実施例8で得た化合物(Ib)のIR分析結果を示す図である。
【図7】実施例9で得た化合物(Ic)のNMR分析結果を示す図である。
【図8】実施例9で得た化合物(Ic)のIR分析結果を示す図である。
【図9】実施例10で得た化合物(Id)のNMR分析結果を示す図である。
【図10】実施例10で得た化合物(Id)のIR分析結果を示す図である。
【図11】実施例29で得た化合物(Ie)のNMR分析結果を示す図である。
【図12】実施例29で得た化合物(Ie)のIR分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<ピオグリタゾンの中間体の合成>
実施例1
本発明に係るピオグリタゾンの中間体:N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(I)を以下のようにして合成した。
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノン(III)100.00g(281.3ミリモル)に、酢酸エチル500.00g及び無水酢酸30.15g(295.3ミリモル)を加えた後、3時間加熱還流した。PEBIT(III)1モルに対する無水酢酸のモル等量については、表1に示す通りである。
反応終了後、室温まで攪拌下冷却した後、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、乳白色のN−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(Ia)100.22g(収率89.6%、HPLC純度97.0%)を得た。なお、色の判定については、目視によるものである。
【0035】
実施例2〜7、13〜23
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT(III)5.00g(14.1ミリモル)に、酢酸エチル25.00g、及び表1に示す量の無水酢酸をそれぞれ加える以外は、実施例1と同様にして、本発明に係るピオグリタゾンの中間体を合成した。析出した結晶の重量(g)、析出した結晶中メイン純度を示す化合物の収率(%)、各化合物(I),(II),(III)のHPLC純度、及び、析出した結晶の色について、併せて表1に示す。
なお、実施例2については、反応終了後(加熱還流冷却後)に晶析物が認められなかったので、ジエチルエーテル200.0gを加えてから室温下攪拌し晶析物を濾取した。
【0036】
【表1】
【0037】
表1中の析出した結晶の「化合物」の欄に示すとおり、実施例6は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(Ia)と、2-(アセチルイミノ)-5-(4-(2-(5-エチルピリジン-2-イル)エトキシ)ベンジル)-2,5-ジハイドロチアゾール-4-イル アセタテート(IIa)との混合物であった。
【0038】
実施例8〜12、27〜29
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT(III)5.00g(14.1ミリモル)に、酢酸エチル25.00g(実施例8〜10,12,27,29)又はクロロホルム25.00g(実施例11)、及び表2に示す量の酸無水物または酸ハライドをそれぞれ加える以外は、実施例1と同様にして、本発明に係るピオグリタゾンの中間体を合成した。析出した結晶の重量(g)、析出した結晶中メイン純度を示す化合物の収率(%)、各化合物(I),(II),(III)のHPLC純度、及び、析出した結晶の色について、表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2中の化合物(Ib)は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)プロピオンアミドである。
表2中の化合物(Ic)は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)ブチルアミドである。
表2中の化合物(Id)は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)−2,2,2−トリフルオロアセタミドである。
表2中の化合物(Ie)は、N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)−ベンズアミドである。
【0041】
実施例1,2,8〜10について、得られた各化合物(Ia,IIa,Ib,Ic,Id)の元素分析、融点測定、NMR分析、IR分析を、下記のようにして行った。
また、実施例29については、得られた化合物(Ie)の融点測定、NMR分析、IR分析を、下記のようにして行った。
【0042】
〔元素分析〕
Thermo Fisher Scientific社製 “Model EA1112 IRMS NC−plus CHNS”を使用して行った。この結果を表3に示す。
〔融点測定〕
融点測定装置(独国BUCHI社製 商品名"B545")を使用して行った。この結果を表3に示す。
〔NMR分析〕
BRUKER社製 “AV-300”を使用し、CDCl3又はDMSO−d6にて測定を行った。この結果を、図1,3,5,7,9,11にそれぞれ示す。
〔IR分析〕
Thermo Fisher Scientific社製 “Model Nicolet iS10 FT−IR spectrometer, secondary Nicolet iZ10 module”を使用し、錠剤法にて測定を行った。この結果を、図2,4,6,8,10,12にそれぞれ示す。
【0043】
【表3】
【0044】
<ピオグリタゾンフリー体の合成>
実施例1と同様にして得られたピオグリタゾンの中間体:N−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(Ia)からピオグリタゾン:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル−2,4−チアゾリジンジオン(IV)を、以下のようにして合成した。
【0045】
実施例1−1、1−7〜1−30
ピオグリタゾンの中間体(Ia)2.00g(5.0ミリモル)に、表4に示す量のイオン交換水、及び表4に示す量のメタンスルホン酸をそれぞれ加え、3時間加熱還流した。中間体(Ia)1モルに対するメタンスルホン酸のモル等量、及び酸水溶液の濃度については、表4に示す通りである。
反応終了後、室温まで攪拌下冷却した後、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、白色のピオグリタゾン:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2,4−チアゾリジンジオン(IV)を合成した。析出した結晶の重量(g)、析出した結晶中メイン純度を示す化合物の収率(%)、各化合物(IV),(Ia)のHPLC純度、及び、析出した結晶の色について、併せて表4に示す。なお、色の判定については、目視によるものである。
【0046】
【表4】
【0047】
実施例1−2〜1−6
ピオグリタゾンの中間体(Ia)2.00g(5.0ミリモル)に、イオン交換水10.00g、及び表5に示す酸をそれぞれ6.2ミリモル加える以外は、実施例1−1と同様にして、ピオグリタゾン(IV)を合成した。析出した結晶の重量(g)、析出した結晶中メイン純度を示す化合物の収率(%)、各化合物(IV)のHPLC純度、及び、析出した結晶の色について、併せて表5に示す。
なお、実施例1−2〜1−4については、反応終了後(加熱還流冷却後)に晶析物が認められなかったので、2−プロパノール5.0gを加えてから室温下攪拌し晶析物を濾取した。
【0048】
【表5】
【0049】
実施例1−1〜1−30で得られた結晶は、いずれも後述の参考例1に示した既知の方法により合成したピオグリタゾン(IV)とHPLCによるRetension time (R.t.)が一致したので、ピオグリタゾン(IV)であることが同定された。
表4に示すとおり、実施例1−8、1−9、1−24は、未反応のN−(5−(4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)ベンジル)−4−オキソチアゾリジン−2−イリデン)アセタミド(Ia)を、5%以上含むものであった。
【0050】
<PEBITを直接加水分解し(ピオグリタゾンの中間体(I),(II)を経由せずに)、ピオグリタゾンフリー体を合成する>
参考例1〔2規定塩酸にて、PEBITを加水分解する〕
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT(III)1.18g(3.3ミリモル)を、2N−HCl(2規定塩酸)10mL(ミリリットル)(96.0ミリモル)により6時間加熱還流することにより加水分解した後、減圧下にて酸水溶液を留去した。
これに、水を加えた後、炭酸水素ナトリウム水溶液により中和し、得られた晶析物を濾取、乾燥し、1.32gのピオグリタゾン:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2,4−チアゾリジンジオン(IV)が得られた。
しかし、参考例1の製法で得られた化合物は、淡褐色に着色しており、HPLC純度は97.2%であった。したがって、そのまま塩酸塩化しても医薬品規格に耐えうる純度とはならないし、着色面に関しても活性炭等による脱色を実施しなければならないということが明らかになった。
【0051】
参考例2〔メタンスルホン酸にて、PEBITを加水分解する〕
特許文献1記載の方法により合成したPEBIT(III)2.00g(5.6ミリモル)にイオン交換水10.00g及びメタンスルホン酸0.6g(6.2ミリモル)を加えて、3時間加熱還流することにより加水分解した後、室温まで攪拌下冷却し、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、淡褐色のピオグリタゾン:5−{4−〔2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ〕ベンジル}−2,4−チアゾリジンジオン(IV)0.78gを得た。
しかし、得られる量が少なく、しかもHPLC純度が53.6%と低く未反応PEBITを44.6%含んでおり、反応時間の延長により加水分解体生成率や反応収率が若干上がる可能性はあっても、本発明による実施例1−1〜1−30と比較して非常に低い結果となった。
【0052】
<粗ピオグリタゾン塩酸塩の合成>
実施例1−1A
実施例1−1と同様にして得られたピオグリタゾンフリー体(IV)80.00g(0.22モル)に、メタノール80.00g及び濃塩酸40.00g(0.38モル)を加えて加熱還流により溶解した。
反応終了後、室温まで攪拌下冷却した後、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、白色のピオグリタゾン塩酸塩の粗結晶78.6gを得た(収率89.2%、HPLC純度99.7%)。
【0053】
<精ピオグリタゾン塩酸塩の合成>
実施例1−1B
実施例1−1Aで得られた粗ピオグリタゾン塩酸塩70.00g(0.18モル)に、メタノール140.00gを加えて加熱還流により溶解した。
反応終了後、室温まで攪拌下冷却した後、得られた晶析物を濾取、減圧乾燥し、白色のピオグリタゾン塩酸塩の精結晶56.96gを得た(収率81.4%、HPLC純度99.9%)。
【0054】
実施例1−1A〜1−1Bから、本発明の製造方法により合成されたピオグリタゾン塩酸塩は、最終精製のみを行うだけで「色」の規格を満たし、収率が良好で、しかも非常に純度が高いものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によるピオグリタゾンの新規な中間体は、簡便な合成方法によって得られ、該中間体を用いることで容易かつ安全な高純度のピオグリタゾンまたはその塩酸塩の工業的製造を可能とする。
本発明から導かれるピオグリタゾンまたはその塩酸塩は、医薬品の規格を十分に満たすものであるので、糖尿病などの治療薬として好適に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)または(II)で表されるピオグリタゾンの中間体。
【化1】
式中、Rは、分岐していてもよいアルキル基、置換していてもよいアリール基、またはトリフルオロメチル基を示す。
【請求項2】
次式(III)で表される化合物を、酸無水物または酸ハライドにてアシル化反応に付すことを特徴とする請求項1に記載のピオグリタゾンの中間体の製造方法。
【化2】
【請求項3】
前記アシル化反応において、式(III)で表される化合物1モルに対し、酸無水物または酸ハライドを0.9〜10モル反応させることを特徴とする請求項2に記載のピオグリタゾンの中間体の製造方法。
【請求項4】
酸無水物が、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、イソ酪酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸無水物のいずれか1つであり、
酸ハライドが、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、アセチルブロマイド、ベンゾイルクロライドのいずれか1つであることを特徴とする請求項2または3に記載のピオグリタゾンの中間体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のピオグリタゾンの中間体を、酸水溶液により加水分解することを特徴とする次式(IV)で表されるピオグリタゾンまたはその塩酸塩の製造方法。
【化3】
【請求項6】
前記加水分解において、酸が、ピオグリタゾンの中間体1モルに対し0.7〜2.1モルであり、かつ、酸水溶液の濃度が、0.1〜2.1モル/Lであることを特徴とする請求項5に記載のピオグリタゾンまたはその塩酸塩の製造方法。
【請求項7】
酸が、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、酢酸、硫酸、塩酸のいずれか1つ、またはこれらを混合したものであることを特徴とする請求項5または6に記載のピオグリタゾンまたはその塩酸塩の製造方法。
【請求項1】
次式(I)または(II)で表されるピオグリタゾンの中間体。
【化1】
式中、Rは、分岐していてもよいアルキル基、置換していてもよいアリール基、またはトリフルオロメチル基を示す。
【請求項2】
次式(III)で表される化合物を、酸無水物または酸ハライドにてアシル化反応に付すことを特徴とする請求項1に記載のピオグリタゾンの中間体の製造方法。
【化2】
【請求項3】
前記アシル化反応において、式(III)で表される化合物1モルに対し、酸無水物または酸ハライドを0.9〜10モル反応させることを特徴とする請求項2に記載のピオグリタゾンの中間体の製造方法。
【請求項4】
酸無水物が、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、イソ酪酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸無水物のいずれか1つであり、
酸ハライドが、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、アセチルブロマイド、ベンゾイルクロライドのいずれか1つであることを特徴とする請求項2または3に記載のピオグリタゾンの中間体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のピオグリタゾンの中間体を、酸水溶液により加水分解することを特徴とする次式(IV)で表されるピオグリタゾンまたはその塩酸塩の製造方法。
【化3】
【請求項6】
前記加水分解において、酸が、ピオグリタゾンの中間体1モルに対し0.7〜2.1モルであり、かつ、酸水溶液の濃度が、0.1〜2.1モル/Lであることを特徴とする請求項5に記載のピオグリタゾンまたはその塩酸塩の製造方法。
【請求項7】
酸が、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、酢酸、硫酸、塩酸のいずれか1つ、またはこれらを混合したものであることを特徴とする請求項5または6に記載のピオグリタゾンまたはその塩酸塩の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−51954(P2011−51954A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204280(P2009−204280)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000135760)株式会社パーマケム・アジア (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000135760)株式会社パーマケム・アジア (17)
【Fターム(参考)】
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