説明

ピストンアッセンブリおよび力伝達装置、特にピストンアッセンブリを備えた力伝達装置

【課題】多機能ユニットとして構成され、つまり少なくともさらに1つの別の切換可能なクラッチを有し、さらには力伝達装置のために既に公知のスリーチャンネル原理を維持し、なおかつ軸方向ならびに半径方向での小さなサイズにより特徴付けられている力伝達装置を提供する。
【解決手段】第2のクラッチ装置(4)のピストンエレメント(10)が第1のクラッチ装置(3)のピストンエレメント(9)に、圧力媒体により負荷可能な別の第2の圧力室(12)の形成下で、ストッパ(13)に対して摺動可能に案内されており、第1のピストンエレメント(9)が軸方向で第2のクラッチ装置(4)のピストンエレメント(10)に対して相対的に摺動可能であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1および第2の切換可能なクラッチ装置を操作するための、力伝達装置の圧力室内に配置されるピストンアッセンブリであって、切換可能なクラッチ装置に対応配置されたそれぞれ1つのピストンエレメントが設けられている形式のものに関する。
【0002】
さらに本発明は、入力部と出力部との間の力伝達経路内で第1の圧力室内に配置され、所属の操作装置を備えた2つの切換可能なクラッチ装置を備えた力伝達装置であって、2つの切換可能なクラッチ装置が少なくともそれぞれ1つのピストンエレメントを有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0003】
駆動機械と伝動装置構成ユニットとの間に配置されている力伝達装置は、多数の構成で背景技術から公知である。力伝達装置は一般に1つの入力部と少なくとも1つの出力部とを有している。その際、入力部は少なくとも間接的に、すなわち直接または別の伝達エレメントを介して駆動機械に連結可能であり、出力部は、力伝達装置の下流に配置される伝動装置構成ユニット、一般には変速機に結合されている。入力部と出力部との間には、流体力学的なコンポーネント、有利には流体力学的な回転数/トルク変換器の形の流体力学的なコンポーネントが配置されている。流体力学的なコンポーネントは少なくとも、入力部から出力部への力伝達経路内でポンプインペラもしくはポンプホイールと呼ばれる1つの第1の羽根車と、タービンランナもしくはタービンホイールと呼ばれる1つの第2の羽根車とを有している。流体力学的な出力伝達を迂回するために、ロックアップクラッチとして機能する切換可能なクラッチ装置の形の装置が設けられている。この装置は、少なくとも間接的に互いに作用結合可能な第1のクラッチ部分と第2のクラッチ部分とを有している。ロックアップクラッチはその際、入力部またはこの入力部とポンプホイールとの間の結合部と、タービンホイールとの間の連結のために役立つ。操作は操作装置を介して行われる。操作装置は最も簡単な事例ではピストンエレメントの形の作動装置を有している。一般には、タービンホイールと出力部、ひいては下流に配置された伝動装置構成ユニットとの間の直接的な連結が行われる。構成次第で、流体力学的な回転数/トルク変換器もしくは力伝達装置全体は、ツーチャンネルユニット(Zweikanaleinheit)またはスリーチャンネルユニット(Dreikanaleinheit)として構成されている。スリーチャンネル構造形式での構成時、作動装置は、別個に制御可能な圧力により負荷される。力伝達装置内の残りの圧力室、特に回転数/トルク変換器内の作業室および流体力学的な回転数/トルク変換器とロックアップクラッチならびに作動装置との間の中間室はその際、求心的または遠心的に通流される。その際、圧力室への個々の接続部を介して、外的な回路が、流体力学的な回転数/トルク変換器内に生じる流動回路に対して、冷却のために形成される。一般に、出力はある運転領域では純粋に流体力学的に伝達される。この場合、入力部と出力部との間の力伝達経路は流体力学的なコンポーネントを介して行われる。ポンプホイールとして機能する一次ホイールはその際、直接駆動機械に連結されており、タービンホイールは、出力部もしくは下流に配置された変速機の入力部に連結されている。特に車両での使用時に、その原理に起因するスリップによる、高い回転数時の比較的悪い効率の欠点を回避するために、ロックアップクラッチがアクティブ化され、出力を力伝達装置の入力部と出力部との間で機械的に、流体力学的な出力分岐を迂回して、機械的な出力分岐内で伝達する。力伝達はその際、個々の出力分岐を介して行われてもよいし、出力分割により両出力分岐を介して同時に行われることもできる。駆動機械の無負荷運転時、特に惰行運転(Schubbetrieb)時、ロックアップクラッチにより、駆動機械は出力部から遮断されることができるが、流体力学的な回転数/トルク変換器ではロックアップされた状態でもそうであるように、流体力学的なコンポーネントが充填されていると、ここでは今なおトルクが流体力学的なコンポーネント内に導入され、このトルクは駆動機械の無負荷運転時に損失出力となる。さらに、トルクショックが被動側から流体力学的なコンポーネント内に導入される。駆動機械を伝動装置から連結解除するために、それゆえ別のクラッチ装置が設けられている。このクラッチ装置はポンプホイールを連結解除するために役立ち、ひいては駆動機械を、力伝達装置の下流に配置された伝動装置ユニットから切り離すために役立つ。ポンプホイールクラッチ(Pumpenradkupplung)と呼ばれるこのクラッチ装置はその際、この運転領域のためだけに必要とされる。ポンプホイールクラッチは独自の制御装置を必要とし、しばしば、半径方向および軸方向での構造スペースの拡張に至る領域内に配置されている。さらに、流体力学的なコンポーネントはそれでもなお伝動装置構成ユニットに機能的に、タービンホイールへの接続を介して対応配置されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題はそれゆえ、冒頭で述べた形式の力伝達装置を改良して、多機能ユニットとして構成され、つまり少なくともさらに1つの別の切換可能なクラッチを有し、さらには力伝達装置のために既に公知のスリーチャンネル原理を維持し、なおかつ軸方向ならびに半径方向での小さなサイズにより特徴付けられている力伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明のピストンアッセンブリの構成によれば、第2のクラッチ装置のピストンエレメントが第1のクラッチ装置のピストンエレメントに、圧力媒体により負荷可能な別の第2の圧力室の形成下で、ストッパに対して摺動可能に案内されており、第1のピストンエレメントが軸方向で第2のクラッチ装置のピストンエレメントに対して相対的に摺動可能であるようにした。
【0006】
従属請求項に記載した有利な構成を以下に列挙する。
【0007】
第1のクラッチ装置のピストンエレメントに、第2のクラッチ装置のクラッチ部分が支承されていると有利である。また、第1のクラッチ装置のピストンエレメントに、第1のクラッチ装置のクラッチ部分が配置されていると有利である。また、両切換可能なクラッチ装置のピストンエレメントの、個々の切換可能なクラッチ装置に作用するピストン面領域が、軸方向で同じ方向で方向付けられていると有利である。また、両ピストンエレメントが、第2の圧力室の境界の領域で、実質的に同じ大きさのピストン面を有するディスク状またはリングディスク状のエレメントとして形成されていると有利である。また、第1のピストンエレメントが、第1および第2の切換可能なクラッチ装置のそれぞれのクラッチ部分を支承するとともに、第2のピストンエレメントを案内するための、軸方向で方向付けられ周方向で延びる突出部を備えたリングディスク状のエレメントとして形成されており、半径方向外側の領域が、第1の切換可能なクラッチ装置の操作のために役立ち、半径方向内側の領域が、第2の圧力室の画定のために役立つと有利である。また、第2のピストンエレメントが、半径方向外側の周面でもって、第1のピストンエレメントに設けられた突出部の、内側の周面を形成する部分領域に案内されており、該内側の周面を形成する部分領域が、多板クラッチの形の第2のクラッチ装置のためのアウタプレートキャリアとして構成されており、第2のクラッチ装置の第1のクラッチ部分の摩擦面支持エレメントが、位置固定のストッパと第2のピストンエレメントとの間に配置されていると有利である。また、個々のクラッチ部分とピストンエレメントとの間の相対回動不能な連結が、スプライン結合または互いに相補的に構成された歯列を介して行われると有利である。また、第2の圧力室が、圧力および液体に関して密にピストンアッセンブリの周囲に対してシール装置によりシールされており、該シール装置が、第1のピストンエレメントと第2のピストンエレメントとの間で、接触式のシールとして構成されていると有利である。
【0008】
さらに上記課題を解決した本発明の力伝達装置の構成によれば、一方の切換可能なクラッチ装置が、他方のクラッチ装置のピストンエレメントに軸方向で支持されているようにした。
【0009】
従属請求項に記載した有利な構成を以下に列挙する。
【0010】
第1および第2の切換可能なクラッチ装置が、一方のクラッチ装置内の押付圧が、クラッチ装置を包囲する圧力室内よりも高く調節され得るように配置されていると有利である。また、両切換可能なクラッチ装置の両ピストンエレメントが、上に記載されたピストンアッセンブリとして形成されていると有利である。また、当該力伝達装置が、ポンプホイールおよびタービンホイールを備えた流体力学的なコンポーネントを有しており、第1の切換可能なクラッチ装置がポンプホイールクラッチとして形成されており、少なくとも間接的に相対回動不能に入力部に結合可能な第1のクラッチ部分と、相対回動不能に力伝達装置の流体力学的なコンポーネントのポンプホイールに結合されている第2のクラッチ部分とを有していると有利である。また、第2の切換可能なクラッチ装置が、流体力学的なコンポーネントのためのロックアップクラッチとして構成されており、少なくとも間接的に相対回動不能に入力部に結合されている第1のクラッチ部分と、少なくとも間接的に相対回動不能に出力部、特に伝動装置入力軸に結合されている第2のクラッチ部分とを有していると有利である。また、流体力学的なコンポーネントのタービンホイールが、少なくとも間接的に相対回動不能に出力部に結合されていると有利である。また、タービンホイールと伝動装置入力軸との連結が、ピストンアッセンブリを支持するボスを介して行われると有利である。また、タービンホイールの連結が、振動を減衰するための装置を介して行われると有利である。また、個々の圧力室に、圧力室内の圧力比を制御するための手段が対応配置されていると有利である。
【発明の効果】
【0011】
入力部および出力部を備え、両者の間に配置され、ケーシングにより包囲された圧力室内に配置されている2つの切換可能なクラッチ装置を備えた、本発明により構成された力伝達装置は、各クラッチ装置にピストンエレメントの形の作動装置が対応配置されており、一方のクラッチ装置が他方のクラッチ装置のピストンエレメントに軸方向で支持されていることにより特徴付けられている。
【0012】
本発明による解決策によれば、クラッチ装置とケーシングとの直接的な結合および支持がほぼ回避され、ここでは個々のクラッチ装置のためのアウタルキーな操作装置が、これに直接結合される接続エレメントに対する軸方向力作用から自由に形成されることが可能になる。その際、特に有利な構成によれば、一方のクラッチが、このクラッチ内に周囲よりも高い圧力が調節され得るように配置されている。この種の支持は、切換可能なクラッチ装置に対応配置された第1のピストンエレメントと、第2の切換可能なクラッチ装置に対応配置された第2のピストンエレメントとが設けられ、第2のピストンエレメントが第1のピストンエレメントに軸方向で摺動可能に案内されており、第1のピストンエレメントと相俟って、圧力媒体により負荷可能な1つの圧力室を形成し、この圧力室がケーシングの内室に対して圧力および液体に関して密に構成されている本発明によるピストンアッセンブリにより実現される。さらに、ピストンエレメントには、第1および第2の切換可能なクラッチ装置のそれぞれ1つのクラッチ部分が配置されている。その結果、ここではこの配置は、ケーシング内での配置から完全に切り離されて、すなわちこのクラッチ部分の、ケーシングとの直接的な相対回動不能な連結から完全に切り離されて行われることができる。ピストンアッセンブリはそれにより、力伝達装置内で軸方向でのその位置に関して自由である。このことは、ピストンアッセンブリの省スペースな配置ならびに種々異なる操作コンセプトを保証することを可能にする。
【0013】
ピストンアッセンブリはさらに、第2の圧力室を別の第1の圧力室内に僅かな手間で実現し、それにもかかわらず個々の切換可能なクラッチ装置を互いに無関係に操作することを可能にする。このことは、両ピストンエレメントが互いに相対的に摺動可能であり、その際、この摺動可能性が力伝達装置内で、圧力室内の、ピストンエレメントに作用する個々の圧力の圧力差により達成されることにより実現される。さらに、この種のピストンアッセンブリにより、2つの切換可能なクラッチ装置のパラレルな運転形式も可能となり、それにより、機械的な出力分岐と流体力学的な出力分岐との間の並列切換の形の出力分割を有する構成も可能となる。
【0014】
力伝達装置は少なくとも1つの流体力学的なコンポーネントと、ロックアップクラッチの形の1つの切換可能なクラッチ装置とを有している。さらに、1つの別の切換可能なクラッチ装置が設けられている。このクラッチ装置はピストンアッセンブリにとって第1の切換可能なクラッチ装置を形成する。その際、第1の切換可能なクラッチ装置は有利には多機能ユニットの場合、ポンプホイールクラッチ、すなわちポンプホイールと、力伝達装置の入力部もしくは力伝達装置に連結された駆動機械との選択的な連結または連結解除のためのクラッチ装置により形成され、それにより流体力学的なコンポーネントの連結解除を可能にする。流体力学的なコンポーネントのタービンホイールだけが、連結解除時にもなお出力部に相対回動不能に連結されており、いわば連れ回される。第2の切換可能なクラッチ装置はロックアップクラッチにより形成される。その際、この第2の切換可能なクラッチ装置は、ロックアップクラッチのピストン力が一方向で間接的にポンプホイールクラッチのピストンに支持され、閉鎖力が同時にポンプホイールクラッチにも他方向で作用するに至るように配置されている。構成次第で、このことは、ここでは個々の圧力室内の圧力比の構成によりポンプホイールクラッチが自動的にロックアップクラッチの閉鎖と共に開放されるか、またはしかしより高い圧力時にも操作されたままであることに至る。ピストンアッセンブリはその際、相対回動不能に、出力部を形成する伝動装置入力軸に支持されている。この支持は直接的または間接的に行われることができ、有利にはボスの形の、相対回動不能に伝動装置出力部に連結されたエレメントを介して行われる。ピストンアッセンブリはその際、軸方向で片側で固定されている。その際、組み合わされたスラストラジアル軸受として構成された1つの軸受で十分である。この軸受は第1のピストンエレメントに対応配置されており、第1のピストンエレメントを、第2のピストンエレメントとは反対側の端面で軸方向で支持している。別の方向での支持はそれにより、間接的に、第1のピストンエレメントに定置のストッパを設けることによって行われる。第1のピストンエレメントを介して、第2のピストンエレメントおよび第2の切換可能なクラッチ装置の構成部分は支持される。さらに、第1のピストンエレメントには、第1および第2のクラッチ装置のそれぞれ1つのクラッチ部分が配置されているか、もしくはピストンエレメントがこれを支持している。
【0015】
具体的な構造的な構成に関して多数の可能性が存在する。有利には、個々のピストン面の設計はしかし、ピストン面が、圧力室を画定する面領域に関して、接続エレメントへ軸方向力を及ぼさないか、または及ぼしたとしても僅かにすぎないようにするために、ほぼ同じ大きさに構成されているように行われる。これにより、接続エレメントへの軸方向力作用から自由な、完全に閉じられた構成ユニットが提供され得る。
【0016】
本発明による解決策について以下に図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明により構成された力伝達装置1の一実施形態の軸方向断面を示している。この力伝達装置1は、ドライブトレーン内で駆動機械と伝動装置との間に配置されており、1つの入力部Eおよび1つの出力部Aを有している。その際、出力部Aは伝動装置入力軸の形の軸2により形成される。力伝達装置1は入力部Eと出力部Aとの間に2つの切換可能なクラッチ装置、つまり第1の切換可能なクラッチ装置3と、第2の切換可能なクラッチ装置4とを有している。個々の切換可能なクラッチ装置3および4はその際、少なくとも1つの第1のクラッチ部分3.1もしくは4.1と、1つの第2のクラッチ部分3.2もしくは4.2とを有している。その際、両クラッチ部分3.1および3.2もしくは4.1および4.2は少なくとも間接的に互いに作用結合可能である。「少なくとも間接的」とはその際、直接的または間接的を意味している。このことはクラッチ部分3.1,3.2もしくは4.1,4.2の構成次第である。両切換可能なクラッチ装置3および4はその際、力伝達装置1の、圧力媒体もしくは運転媒体により負荷可能な室5を形成する内室6内に配置されている。「圧力室」という概念は、運転媒体もしくは圧力媒体により負荷可能なチャンバもしくは中間室を意味している。
【0018】
切換可能なクラッチ装置3および4には、それぞれ1つの作動装置7もしくは8が対応配置されている。その際、個々の作動装置はそれぞれ1つのピストンエレメント9もしくは10を有している。内室6はその際、ケーシング11により包囲される。ケーシング11は回転可能に支承されており、有利にはマルチピースに、つまり複数の部分から構成されている。第1のケーシング部分11.1は力伝達装置1の入力部Eとして機能する。第1のケーシング部分11.1はカバーとして構成されており、相対回動不能に第2のケーシング部分11.2に結合されている。両ケーシング部分11.1および11.2はその際、内室6を形成し、流体力学的なコンポーネント30を軸方向および周方向で包囲する。内室6内には、両切換可能なクラッチ装置3および4も配置されている。その際、この配置は、一方のクラッチ装置3または4の運転媒体圧、特に油圧がその内部で、このクラッチ装置を包囲する内室6内よりも高く調節され得るように行われる。このクラッチ装置はその際、軸方向で他方のクラッチ装置のピストンエレメントに支持されている。本発明では、クラッチ装置3および4がケーシング11、特にケーシング壁に結合されているのではなく、ピストンエレメントの形の、一方の切換可能なクラッチ装置の作動装置が、ピストンエレメントの形の、その都度他方のクラッチ装置の作動装置に案内され、さらにその都度のクラッチ装置のクラッチ部分が案内されている。図示の事例では、第2の切換可能なクラッチ装置4の作動装置8が、第1の切換可能なクラッチ装置3の作動装置7、特に第1のピストンエレメント9に軸方向で摺動可能に、圧力媒体で負荷可能な室12の形成下で案内されており、さらに第1のピストンエレメント9に、第2の切換可能なクラッチ装置4の第1のクラッチ部分4.1が配置もしくは支承されている。第1のクラッチ部分4.1の軸方向の摺動可能性は、第1のピストンエレメント9に設けられた位置固定のストッパ13により制限される。それにより、両クラッチ装置のうちの一方、ここでは第2の切換可能なクラッチ装置4は、内部の油圧、特にピストンエレメント10に作用する圧力が、周囲、特に内室6内に存在する圧力よりも高く調節され得るように内室6内に配置されている。この高められた調節は、付加的に形成され圧力媒体により負荷可能な室12を介して実現される。第2の切換可能なクラッチ装置4の第2のピストンエレメント10を負荷するためのこの別の室12はその際、第1の室5内に配置されている。この配置は力伝達装置1の回転軸線Rに対して同軸的に行われる。両ピストンエレメント9および10はその際、1つのピストンアッセンブリもしくはピストン装置14を形成する。ピストンアッセンブリもしくはピストン装置14は、その設計および構成に基づいて、ピストン面の相応の設計時に、それぞれの接続エレメントに軸方向力をまったく及ぼさないか、または及ぼしたとしても僅かにすぎず、それによりいわばその全体で1つの閉鎖されたエレメントを成している。その際、しかし、個々のピストンエレメント9および10は個別的に摺動可能、すなわち互いに相対的に摺動可能である。ピストンアッセンブリ14はその際、少なくとも間接的に出力部A、特に伝動装置入力軸2に支持され、図示の事例では少なくとも間接的に相対回動不能に伝動装置入力軸2に結合されたボス16上で、ここでは振動を減衰するための装置15を介して支持されている。その際、両ピストンエレメント9および10は図示の事例では、半径方向で内周域により形成される部分領域17,18の領域でボス16に軸方向で摺動可能に、かつ圧力に関して密に、有利には液体に関しても密に支承されている。その際、この支承は、個々のピストンエレメント9および10とボス16との相対回動不能な結合から自由に行われる。さらに、第2のピストンエレメント10を第1のピストンエレメント9に、内周域を形成する部分領域18の領域で案内する、ここでは図示しない可能性も考えられる。
【0019】
第1の切換可能なクラッチ装置3の第1のピストンエレメント9はそれに加えて、半径方向で見て、軸方向で延在する突出部19を有するリング状もしくはディスク状のエレメントとして形成されている。突出部19は、第2のピストンエレメント10側の端面20を2つのピストン面領域、すなわち第1のピストン面領域21と第2のピストン面領域とに分割する。第1のピストン面領域21は、内周域もしくは内径部22から半径方向で外側に向かって突出部19まで延在し、室12を画定する。第2のピストン面領域は、突出部19から半径方向でピストンエレメント23の外周域まで延在し、圧着面として機能することによって個々のクラッチ部分3.1および3.2に作用結合する面領域24を形成する。
【0020】
第2のピストンエレメント10は第1のピストンエレメント9に、特に突出部19の、内周域25を形成する領域で、軸方向で摺動可能に、しかし圧力および液体に関して密に案内される。このために、第2のピストンエレメント10の外周域26と、第1のピストンエレメント9、特に突出部19の内周域25との間には、シール装置27が設けられている。さらに、内周域25には、第2の切換可能なクラッチ装置4の第1のクラッチ部分4.1が軸方向で摺動可能に案内されており、第1のピストンエレメント9に関して定置のストッパ13が配置されている。その際、第1のクラッチ部分4.1は位置固定のストッパ13とピストンエレメント10との間に配置されている。それにより、第2のピストンエレメント10の操作時に、クラッチ部分4.1とクラッチ部分4.2との間の作用結合が形成されることが可能となる。その際、第2の切換可能なクラッチ装置4はピストンエレメント9に、位置固定のストッパ13を介して支持されている。個々の切換可能なクラッチ装置3,4は有利には、機械式の、摩擦力結合(reibschluessig:摩擦力による束縛)式のクラッチ装置、すなわちスリップを伴って運転可能なクラッチ装置として形成されている。このクラッチ装置は、第1のクラッチ部分に属する第1の摩擦面支持エレメントまたは摩擦面形成エレメント、すなわち摩擦板と、第2のクラッチ部分4.2に属し、第1の摩擦面支持エレメントまたは摩擦面形成エレメントに作用結合させることができる、摩擦力結合を形成するための第2のエレメント、すなわち摩擦相手板とを有しているが、この関係は逆であってもよい。摩擦面支持エレメントもしくはこれに作用結合可能なエレメントはその際、ディスク状のエレメント、特に多板クラッチディスクプレート(Lamelle)の形で存在している。図示の事例では、個々のクラッチ装置のそれぞれ一方のクラッチ部分、つまり第1または第2のクラッチ部分は、相応のアウタプレートを備えたアウタプレートキャリアにより形成され、それぞれ他方のクラッチ部分は、インナプレートを備えたインナプレートキャリアにより形成される。その際、図示の事例では、ピストンアッセンブリ14内の高い機能集中に基づいて、第1のピストンエレメント9は同時にクラッチ装置3のためのインナプレートキャリアおよびクラッチ装置4のためのアウタプレートキャリアとして機能する。別の構成も考えられる。
【0021】
図1に示した力伝達装置1は、「ポンプホイールクラッチ28」として構成された第1の切換可能なクラッチ装置3と、「ロックアップクラッチ29」として構成された第2の切換可能なクラッチ装置4とを備えた多機能ユニットとしての少なくとも有利な一実施形態である。力伝達装置1はその際、切換可能なクラッチ装置3および4の他に、さらに1つの流体力学的なコンポーネントを有している。流体力学的なコンポーネントは構成次第で流体力学的な回転数/トルク変換器31もしくはトルクコンバータとして構成されているか、または流体力学的なクラッチもしくは流体クラッチとして存在していてもよい。図示の事例では、流体力学的な回転数/トルク変換器31が示されている。流体力学的な回転数/トルク変換器は入力部Eと出力部Aとの間の出力伝達時に回転数およびトルクの変換のために役立つ。流体力学的な回転数/トルク変換器31は、ポンプホイールPとして機能する第1の羽根車と、タービンホイールTとして入力部Eから出力部Aへの出力伝達時に機能する第2の羽根車とを有している。その際、ポンプホイールおよびタービンホイールは、運転媒体により充填可能な、または特に充填された作業室60を形成する。さらに、少なくとも1つのガイドホイールLが設けられている。図示の事例では、流体力学的な回転数/トルク変換器31は有利にはトリローク式コンバータ(Trilokwandler)として構成されている。ガイドホイールLはその際、フリーホイールもしくはワンウェイクラッチFを介して、位置固定のエレメントまたは回転可能な軸に支持されている。図示の事例では、この支持は支持軸32で行われる。
【0022】
流体力学的な回転数/トルク変換器31は流体力学的な出力分岐53を形成する。このために、ポンプホイールPは少なくとも間接的に相対回動不能に力伝達装置1の入力部Eに結合可能である。多機能ユニットとしての力伝達装置1の図示の実施形態では、この相対回動不能な結合は、直接的かつ連続的ではなく、第1の切換可能なクラッチ装置3の形のポンプホイールクラッチ28を介して行われる。ポンプホイールクラッチ28により、流体力学的なコンポーネント30と入力部Eとの間の連結および連結解除が可能である。第1の切換可能なクラッチ装置28はその際、ポンプホイールPと入力部Eもしくはこの入力部Eに連結されたケーシング11との間に配置されている。ポンプホイールPはポンプホイールシェル33を有している。ポンプホイールシェル33は相対回動不能にポンプホイールクラッチ28の第2のクラッチ部分3.2に結合されている。第1のクラッチ部分3.1は少なくとも間接的に相対回動不能に入力部E、ここではケーシング部分11.1に、振動を減衰するための装置34を介して結合されている。振動を減衰するための装置34はその際、入力部Eから出力部Aへの力伝達経路内で入力部分と呼ばれる一次部分37と、二次部分35とを有している。その際、両者は、ばねおよび/または減衰連結のための手段(Mittel zur Feder−und/oder Daempfungskopplung)を介して互いに連結されており、周方向で互いに相対的に、制限された範囲で回動可能である。図示の事例では、連結はいわば間接的に、二次部分35と、第1のクラッチ部分3.1の、第1のピストンエレメント9に設けられた突出部19により形成されるインナプレートキャリア36との結合を介して行われている。振動を減衰するための装置34の一次部分37はその際、相対回動不能に入力部Eに結合されている。駆動はその際、フレックスプレート(Flexplate)またはリングギヤを介して行われることができる。別の可能性もやはり考えられる。重要なのは、何らかの形で駆動が行われ得ることである。さらに、ケーシング部分が相対回動不能に第1のピストンエレメント9に結合されることによって、ケーシング部分との直接的な相対回動不能な連結も考えられる。しかし、そうすると、駆動機械から導入されるトルクショックは妨げられることなくピストンアッセンブリ14にも伝達される。ピストンアッセンブリ14はその後構成ユニットとしてトルクショックを以下の接続エレメントに伝達し得る。
【0023】
ケーシング11はここでは力伝達装置1の個々のエレメントを周方向および軸方向で、内室6の形成下で包囲する。これらのエレメントには、流体力学的なコンポーネント30の他、ピストンアッセンブリ14と、両切換可能なクラッチ装置3および4と、振動を減衰するための装置34と、さらに別の、入力部Eから出力部Aへの力伝達経路内で出力部A、特に伝動装置入力軸2の上流に接続された、振動を減衰するための装置38とが属する。振動を減衰するための装置38もやはり一次部分39および二次部分40を有しており、一次部分39と二次部分40とは、ばねおよび/または減衰連結のための手段41を介して連結されている。その際、一次部分39と二次部分40とは互いに相対的に、制限された範囲で周方向で回動可能である。ここでも、振動を減衰するための装置38はいわば弾性的なクラッチとして働く。二次部分40はその際、相対回動不能に出力部Aもしくは伝動装置入力軸2に結合されている。この連結は、伝動装置入力軸2に相対回動不能に結合されたボス42を介して行われる。ボス42には二次部分40が相対回動不能に固定されている。一次部分39は第2の切換可能なクラッチ装置4に相対回動不能に結合され、さらにはタービンホイールTに結合されている。その際、タービンホイールTと一次部分39との連結は、ピストンアッセンブリ14の支持のために役立つボス16を介して行われる。ボス16と伝動装置入力軸2との相対回動不能な連結はそれにより、ボス16と一次部分39との相対回動不能な連結を介して行われる。さらに、一次部分39は相対回動不能に第2の切換可能なクラッチ装置4、特に第2のクラッチ部分4.2に結合されている。第1のクラッチ部分4.1は相対回動不能にピストンエレメント9に結合もしくは形成され、支承されている。第2の切換可能なクラッチ装置4の第1のクラッチ部分4.1はその際、ピストンエレメント9により形成されるアウタプレートキャリアにより形成される。アウタプレートキャリアには、アウタプレートが軸方向で摺動可能に案内されている。第2のクラッチ部分4.2は、ここでは例示的に符号43が付されているインナプレートキャリアにより形成される。インナプレートキャリアは、インナプレートを支持し、相対回動不能に一次部分39に結合されている。振動を減衰するための装置34および38の具体的な構成に関して、多数の可能性が存在する。振動を減衰するための装置は作用原理次第で種々異なる形式で形成されている。その際、振動を減衰するための装置は実質的にばねおよび/または減衰連結のための手段の構成に関して区別される。その際、ばね連結(Federkopplung)はトルクの伝達の機能的なユニットとして役立ち、減衰連結(Daempfungskopplung)は特に減衰特性を請け負う。その際、ばねおよび/または減衰連結のための手段は同じエレメントにより形成されてもよい。純粋に機械的な減衰時には、ばねおよび/または減衰連結のための手段として、ばねユニットが使用され、液圧的な減衰時には付加的に、有利にはさらに、減衰媒体により充填可能な減衰チャンバが設けられることができる。
【0024】
機能形式の説明のために、以下、前記の個々の、運転媒体もしくは圧力媒体により負荷可能な室を、第1、第2または第3の圧力室と呼ぶ。その際、第1の圧力室は内室6により形成され、第2の圧力室はピストンアッセンブリ14内の室12により形成され、第3の圧力室は流体力学的なコンポーネント30内の作業室60により形成される。力伝達装置1はその際、付加的な切換可能なクラッチ装置が付加されているにもかかわらず、スリーチャンネルユニットとして形成されている。このことは、3つの圧力室だけが設けられていることを意味しており、これらの圧力室は、相応の接続部を介して圧力媒体で負荷可能であるもしくは流体力学的なコンポーネントの運転媒体案内のために役立ち、かつこれらの圧力室を介して、圧力差により力伝達装置1の機能形式が制御され得る。個々の圧力室、すなわち室5の形の第1の圧力室、圧力室12の形の第2の圧力室、流体力学的なコンポーネント30内の作業室60、特にポンプホイールPとタービンホイールTとの間に形成された圧力室の形の第3の圧力室にはそれぞれ、少なくとも1つの接続部47,48もしくは49が対応配置されている。その際、「接続部」という概念は機能的に理解されるべきである。すなわち、具体的な構造的な構成を含むものではなく、圧力もしくは圧力媒体供給もしくは排出を制御する可能性を含むものにすぎない。
【0025】
図示の事例では、第1の接続部47は、さらに支持軸32と伝動装置入力軸2との間を延在する圧力室5に連結されている。支持軸32と伝動装置入力軸2との間の中間室50と、内室6との接続は、相応の管路接続部、特にボス16内に設けられた通路51を介して行われる。第2の接続部48は、圧力室12への圧力媒体の供給のために役立つ。この圧力媒体供給は、伝動装置入力軸2内に設けられた中央の通路52を介して行われる。通路52は、伝動装置入力軸2およびボス16を貫いて半径方向で延在する接続通路44を介して圧力室12に接続されている。その際、ボス16内に設けられた通路51および44は周方向で互いにずらされて構成されており、それぞれ異なる運転媒体案内方向で形成されている。すなわち、横断面で見て1つの平面への投影時に両者は交差する。すなわち、互いに平行な位置から自由である。第3の接続部49は、第3のチャンバとしての作業室60への接続部により形成される。第3の接続部49は、ケーシング11もしくはケーシング軸45と支持軸32との間に設けられている。
【0026】
本発明により構成されたクラッチ装置およびピストンアッセンブリ14を備えた多機能ユニットの形の、こうして構成された力伝達装置1の機能形式について以下に説明する。その際、純粋に流体力学的な出力伝達と、純粋に機械的な出力伝達と、両者が組み合わされた流体力学的かつ機械的な出力伝達とが区別される。その際、両者が組み合わされた流体力学的かつ機械的な出力伝達の場合、スリップ運転時に、出力分割もしくはパワースプリットとして、流体力学的な分岐と機械的な分岐とでの並行した出力伝達が行われる。流体力学的な分岐53は、ここでは流体力学的なコンポーネント30を介した力伝達経路を指し、機械的な分岐54は、流体力学的なコンポーネント30を迂回した、ロックアップクラッチを介した力伝達経路を指す。機能状態はその際、実質的に、個々のピストンエレメント9,10に隣接する圧力室5,6,12および60の間の圧力差により決定される。それに応じて、ここでは図示しない圧力制御のための手段が個々の接続部に設けられている。純粋に流体力学的な出力伝達時、すなわち流体力学的な分岐53での出力伝達時、力伝達経路は直接入力部Eから出力部Aに流体力学的なコンポーネント30を介して、すなわち本事例ではケーシング11から、振動を減衰するための装置34と、ピストンエレメント9と、ポンプホイールクラッチ28と、ポンプホイールPと、タービンホイールTの、圧力室もしくは作業室60内に生じる流動回路と、ボス16と、振動を減衰するための装置38と、ボス42とを介して、伝動装置入力軸2へと行われる。この場合、ポンプホイールクラッチ28は操作、すなわち閉鎖されている。ピストンエレメント9はその際、流体力学的なコンポーネント側の端面55で圧力により負荷可能である。この圧力は第1の圧力室5、すなわち内室6内の圧力に相当する。その際、圧力媒体案内はここでは、ピストンエレメント9、有利には突出部19により形成される領域に配置された接続通路46を介して、ピストンエレメント9と、流体力学的なコンポーネント30の外周域56との間に形成された室57へと行われる。流体力学的なコンポーネント30はその際、求心的または遠心的に通流される。このことは個々の圧力室内の圧力比により制御される。充填はその際、有利には外周域56の領域から半径方向で、外径部において、ポンプホイールPとタービンホイールTとの間の、そこに形成された分割ギャップ58内に、作業室60内へと行われる。クラッチ装置3は室57内の圧力に基づいて閉鎖される。室57内の圧力は、圧力室12内の圧力よりも大きい。その結果、ここではピストンエレメント9とピストンエレメント10との間の相対運動が実施され得る。ピストンエレメント10はその際、第2のクラッチ装置4に対してその位置に関して不変に留まる。運転媒体は作業室60内で循環され、生じる流動回路に基づいて、タービンホイールTの連行、ひいては伝動装置入力軸2への出力伝達を行う。冷却目的で、流体力学的なコンポーネント30での運転中、すなわち流体力学的な分岐53での出力伝達時においても、運転媒体が作業室60から冷却を目的として導出され、作業室60に再び供給される。そのために、運転媒体は第3の接続部49を介して導出され、第1の接続部47を介して外的な案内後または力伝達装置1内または力伝達装置1外の閉鎖された回路内の案内後に再び供給される。
【0027】
純粋に機械的な出力伝達時、ポンプホイールクラッチ28は非アクティブ化、すなわち、流体力学的なコンポーネント30は連結解除され、ロックアップクラッチ29はアクティブ化される。その際、この状態は時間的に連続しているか、または重なり合っていることができる。後者のオーバーラップ運転時、個々のクラッチ装置がスリップを伴って運転されることにより、並行した出力伝達が可能である。ロックアップされた状態は、位置固定のストッパ13の方向でのピストンエレメント10の軸方向の摺動を惹起する圧力室12の負荷により達成される。その結果、両クラッチ部分4.1,4.2、特にクラッチ部分を形成する摩擦面支持エレメントは互いに作用結合される。圧力室12内では、同時に圧力が、ピストン9の、流体力学的なコンポーネント30とは反対側の端面21に及ぼされるが、第1のピストンのピストン面21および第2のピストンのピストン面61の大きさならびに第1の圧力室5内の圧力に基づいて、システム、特にピストンアッセンブリ14は平衡状態に留まる。入力部Eと出力部Aとの間の出力伝達は直接、ロックアップクラッチ29を介して流体力学的なコンポーネント30の迂回下で行われる。この状態では、均衡が、圧力室12内の圧力に基づいてストッパ13に作用する押圧力FDruckと、第1のピストンエレメント9に作用する引張力FZugとの間に生じる。引張力FZugはまた、第1のクラッチ装置3における開放力FKPKとして有効となり、かつ第2のクラッチ装置29における閉鎖圧FKWUKとして有効となる。
【0028】
本発明によるピストンアッセンブリと、個々のピストンエレメント9および10の独立的な起動制御可能性とにより、さらに並列運転も可能である。並列運転は、ポンプホイールクラッチ28が閉鎖されていることができ、同時にロックアップクラッチ20も閉鎖されており、それにより出力伝達が流体力学的な出力分岐53と機械的な出力分岐54とに分割され得ることを意味している。この場合、第1の圧力室5内の圧力は、第2の圧力室12内の圧力よりも大きい。その結果、ここでは付加的に第1のピストンエレメント9と第2のピストンエレメント10との間の相対運動が、第1のピストンエレメント9がやはり動かされるように行われることができる。
【0029】
図示の事例では、ピストンアッセンブリ14の両ピストンエレメント9および10は、ボス16に案内されている。第1のピストンエレメント9の支承は、組み合わされたラジアルスラストすべり軸受59を介して行われる。この組み合わされたラジアルスラストすべり軸受59は同時に、第1のピストンエレメント9のための軸方向のストッパを形成する。ピストンエレメント9のためのこのストッパはその際、ポンプホイールクラッチの開放状態におけるピストンエレメント9の位置を形成する。
【0030】
図1が、2つの切換可能なクラッチ装置を備えた力伝達装置1の特に有利な実施形態を示しているのに対し、図2は、本発明によるピストンアッセンブリだけを示している。このピストンアッセンブリは任意の力伝達装置内で使用され得る。重要なのは、ピストンアッセンブリ14が、2つの個々のピストンエレメント、ここではピストンエレメント9および10から、1つの圧力室12の形成下で構成されており、その際、第2のピストンエレメント10が、第1のピストンエレメント9に軸方向で摺動可能に案内されており、さらにピストンエレメント9が、クラッチエレメント3.1および4.1を支持していることにより、2つのクラッチ装置、例えば第1のクラッチ装置3および第2のクラッチ装置4の構成部分であることにある。本発明によるピストンアッセンブリ14により、個々の切換可能なクラッチ装置の単独の操作も並行した操作も可能である。さらに、個々のピストン面における圧力比の調節により、機能形式が制御されることができ、各出力分岐が単独でも並列運転でも運転されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるピストンアッセンブリを備えた本発明により構成された力伝達装置の基本構造の概略図である。
【図2】複数の、特に2つの切換可能なクラッチを備えた任意のタイプの力伝達装置で使用され得る本発明によるピストンアッセンブリの一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 力伝達装置
2 軸、伝動装置入力軸
3 第1の切換可能なクラッチ装置
3.1 第1のクラッチ部分
3.2 第2のクラッチ部分
4 第2の切換可能なクラッチ装置
4.1 第1のクラッチ部分
4.2 第2のクラッチ部分
5 室
6 内室
7 作動装置
8 作動装置
9 ピストンエレメント
10 ピストンエレメント
11 ケーシング
11.1 第1のケーシング部分
11.2 第2のケーシング部分
12 圧力媒体により負荷可能な室
13 位置固定のストッパ
14 ピストンアッセンブリ
15 振動を減衰するための装置
16 ボス
17 内周域を形成する部分領域
18 内周域を形成する部分領域
19 第1の突出部
20 端面
21 第1の面領域
22 内径部
23 外周域
24 面領域
25 内周域
26 外周域
27 シール装置
28 ポンプホイールクラッチ
29 ロックアップクラッチ
30 流体力学的なコンポーネント
31 回転数/トルク変換器
32 支持軸
33 ポンプホイールシェル
34 振動を減衰するための装置
35 二次部分
36 インナプレートキャリア
37 一次部分
38 振動を減衰するための装置
39 一次部分
40 二次部分
41 ばねおよび/または減衰連結のための手段
42 ボス
43 インナプレートキャリア
44 接続通路
45 ケーシング軸
46 接続通路
47 接続部
48 接続部
49 接続部
50 中間室
51 通路
52 通路
53 流体力学的な分岐
54 機械的な分岐
55 端面
56 外周域
57 室
58 分割ギャップ
59 組み合わされたスラストラジアルすべり軸受
60 作業室
61 ピストン面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の切換可能なクラッチ装置(3,4)を操作するための、力伝達装置(1)の圧力室(5)内に配置されるピストンアッセンブリ(14)であって、切換可能なクラッチ装置(3,4)に対応配置されたそれぞれ1つのピストンエレメント(9,10)が設けられている形式のものにおいて、第2のクラッチ装置(4)のピストンエレメント(10)が第1のクラッチ装置(3)のピストンエレメント(9)に、圧力媒体により負荷可能な別の第2の圧力室(12)の形成下で、ストッパ(13)に対して摺動可能に案内されており、第1のピストンエレメント(9)が軸方向で第2のクラッチ装置(4)のピストンエレメント(10)に対して相対的に摺動可能であることを特徴とする、ピストンアッセンブリ。
【請求項2】
第1のクラッチ装置(3)のピストンエレメント(9)に、第2のクラッチ装置(4)のクラッチ部分が支承されている、請求項1記載のピストンアッセンブリ。
【請求項3】
第1のクラッチ装置(3)のピストンエレメント(9)に、第1のクラッチ装置(3)のクラッチ部分(3.1)が配置されている、請求項1または2記載のピストンアッセンブリ。
【請求項4】
両切換可能なクラッチ装置(3,4)のピストンエレメント(9,10)の、個々の切換可能なクラッチ装置(3,4)に作用するピストン面領域が、軸方向で同じ方向で方向付けられている、請求項1記載のピストンアッセンブリ。
【請求項5】
両ピストンエレメント(9,10)が、第2の圧力室(12)の境界の領域で、実質的に同じ大きさのピストン面を有するディスク状またはリングディスク状のエレメントとして形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ。
【請求項6】
第1のピストンエレメント(9)が、第1および第2の切換可能なクラッチ装置(3,4)のそれぞれのクラッチ部分(3.1,4.1)を支承するとともに、第2のピストンエレメント(10)を案内するための、軸方向で方向付けられ周方向で延びる突出部(19)を備えたリングディスク状のエレメントとして形成されており、半径方向外側の領域が、第1の切換可能なクラッチ装置(3)の操作のために役立ち、半径方向内側の領域が、第2の圧力室(12)の画定のために役立つ、請求項1から5までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ。
【請求項7】
第2のピストンエレメント(10)が、半径方向外側の周面(26)でもって、第1のピストンエレメント(9)に設けられた突出部(19)の、内側の周面を形成する部分領域に案内されており、該内側の周面を形成する部分領域が、多板クラッチの形の第2のクラッチ装置(4)のためのアウタプレートキャリアとして構成されており、第2のクラッチ装置(4)の第1のクラッチ部分(4.1)の摩擦面支持エレメントが、位置固定のストッパ(19)と第2のピストンエレメント(10)との間に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ。
【請求項8】
個々のクラッチ部分(4.1,3.1)とピストンエレメント(9)との間の相対回動不能な連結が、スプライン結合または互いに相補的に構成された歯列を介して行われる、請求項1から7までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ。
【請求項9】
第2の圧力室(12)が、圧力および液体に関して密にピストンアッセンブリ(14)の周囲に対してシール装置(27)によりシールされており、該シール装置(27)が、第1のピストンエレメント(9)と第2のピストンエレメント(10)との間で、接触式のシールとして構成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ。
【請求項10】
入力部(E)と出力部(A)との間の力伝達経路内で第1の圧力室(5)内に配置され、所属の操作装置を備えた2つの切換可能なクラッチ装置(3,4)を備えた力伝達装置(1)であって、2つの切換可能なクラッチ装置(3,4)が少なくともそれぞれ1つのピストンエレメント(9,10)を有している形式のものにおいて、一方の切換可能なクラッチ装置(3,4)が、他方のクラッチ装置(4,3)のピストンエレメント(10,9)に軸方向で支持されていることを特徴とする、力伝達装置。
【請求項11】
第1および第2の切換可能なクラッチ装置(3,4)が、一方のクラッチ装置(3,4)内の押付圧が、クラッチ装置(3,4)を包囲する圧力室(5)内よりも高く調節され得るように配置されている、請求項10記載の力伝達装置。
【請求項12】
両切換可能なクラッチ装置(3,4)の両ピストンエレメント(9,10)が、請求項1から9までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ(14)として形成されている、請求項10または11記載の力伝達装置。
【請求項13】
当該力伝達装置(1)が、ポンプホイール(P)およびタービンホイール(T)を備えた流体力学的なコンポーネント(30)を有しており、第1の切換可能なクラッチ装置(3)がポンプホイールクラッチ(28)として形成されており、少なくとも間接的に相対回動不能に入力部(E)に結合可能な第1のクラッチ部分(3.1)と、相対回動不能に力伝達装置(1)の流体力学的なコンポーネント(30)のポンプホイール(P)に結合されている第2のクラッチ部分(3.2)とを有している、請求項10から12までのいずれか1項記載の力伝達装置。
【請求項14】
第2の切換可能なクラッチ装置(4)が、流体力学的なコンポーネント(30)のためのロックアップクラッチ(29)として構成されており、少なくとも間接的に相対回動不能に入力部(E)に結合されている第1のクラッチ部分(4.1)と、少なくとも間接的に相対回動不能に出力部(A)、特に伝動装置入力軸(2)に結合されている第2のクラッチ部分(4.2)とを有している、請求項10から13までのいずれか1項記載の力伝達装置。
【請求項15】
流体力学的なコンポーネントのタービンホイール(T)が、少なくとも間接的に相対回動不能に出力部(A)に結合されている、請求項13または14記載の力伝達装置。
【請求項16】
タービンホイール(T)と伝動装置入力軸(2)との連結が、ピストンアッセンブリ(14)を支持するボス(16)を介して行われる、請求項15記載の力伝達装置。
【請求項17】
タービンホイール(T)の連結が、振動を減衰するための装置(38)を介して行われる、請求項15または16記載の力伝達装置。
【請求項18】
個々の圧力室に、圧力室内の圧力比を制御するための手段が対応配置されている、請求項10から17までのいずれか1項記載の力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−138877(P2008−138877A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304693(P2007−304693)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Baden, Germany
【Fターム(参考)】