説明

ピストンポンプのための電動カムシャフトモータの制御

二つの(又はそれより多くの)ピストンポンプシステム(10)がクランク(14)駆動される二つのポンプ(12)に備わっている。システムは機械的なカムシャフトを有しておらず、それと同様に動作するソフトウェアのアルゴリズムをコントローラ(20)に有している。そのアルゴリズムは、学習して機械的なカムシャフトを模倣する一意的な速度プロファイルを作り出す。実用的な目的で、出力ギアの速度プロファイルは、仮想カムシャフトとして動作するソフトウェアを有するカムプロファイルと呼ばれる。アルゴリズムは、クランク角度の推定、学習カーブの生成、平滑化及び事前タイミングの計算を利用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本出願は、2006年9月26日に出願された米国出願番号60/826,997号の利益を請求している。
【背景技術】
【0002】
背景技術
様々なポンプがシステムを通して塗料及び同様の材料を循環させるために長年使用されてきている。空気作動の往復式ピストンポンプがこの使用には今でも一般的であるが、さらに効率の良い電動式の解決法に移行したいという要望が増えてきている。電動の遠心ポンプ、プログレッシブキャビティポンプ、スクリュードライブ往復式ピストンポンプ(screw drive reciprocating piston pump)(米国特許第5,725,358号)は全て商品化されている。どの技術が使用されても、一定のシステム圧力が存在するように脈動を最小限に抑えることが望まれている。多段往復式ピストンポンプシステム(グラコ・インコーポレーテッドのGM10000エアレススプレイヤー、公開された国際公開第02/46612A1号(WO02/46612A1)及び米国特許第5,145,339号)が作られており、脈動を最小限に抑える目的でポンプが位相においてずれているようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,725,358号明細書
【特許文献2】国際公開第02/46612A1号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,145,339号明細書
【発明の概要】
【0004】
発明の開示
二つの(又はそれより多くの)ピストンポンプシステムは、クランク駆動されるとともに好適な実施態様において約84°だけずれている二つのポンプ12を備えている。システムは機械的なカムシャフトは有しておらず、それと同様に動作するソフトウェアのアルゴリズムを有している。そのアルゴリズムは、学習して機械的なカムシャフトを模倣する一意的な速度プロファイルを作り出す。実用的な目的で、出力ギアの速度プロファイルは、仮想カムシャフトとして動作するソフトウェアを有するカムプロファイルと呼ばれる。アルゴリズムは、クランク角度の推定、学習カーブの生成(Learn Curve Generation)、平滑化及び事前タイミングの計算(Advance Timing Calculation)を利用している。
【0005】
スムーズなカム速度プロファイルは、三つの段階で生成される。すなわち、(1)理論上のカム速度プロファイルが生成され、(2)ポンプの一意的なプロファイルが学習され、そして(3)実際のカムプロファイルが生成される。
【0006】
理論上のカム速度プロファイルは360点で構成される(1°あたり1点)。システムのマニホールドの排出口を通して一定の流れ及び圧力が与えられるようになる。計算には以下のパラメータが使用される。すなわち、ピストンの変位度、アップストロークの際の実際のポンプ体積をもたらすピストンロッドの体積、液体がポンプでくみ上げられない切換え継続期間、並びに接続ロッド及びポンプ穴の形状である。
【0007】
一意的な一連の公式が、与えられたシステムのための完全なカムプロファイルを実際に作り出すために使用され、ポンプからの一定の圧力及び流れを保証している。学習アルゴリズムによって、ポンプは作動中の圧力変化を学習できるようにもなる。
【0008】
一度学習されたカム(LEARNED CAM)が生成されると、それが理論上のカムの上にオーバーレイされて実際のカムが生成される。チェックボールの効果並びにギアボックス及びポンプアセンブリの一般的なたわみをモデル化することは極めて困難であり、理論上のカムのモデリングは単なる近似であることに留意すべきである。学習されたカムは、変数を100%考慮しており、従ってシステム特有なものである。理論上のカムの切換えタイミング及びボールチェックは、学習されたカムに対して検証される。学習されたカムの加速度及び減速度も、理論上の値に対して検証され、±30%で制限される。これによって、説明のつかない急速な圧力変化が原因の速度の小さな急峻なスパイクは除去される。
【0009】
本発明のこれらの及び他の目的並びに利点は、付属の図とともに以下の記載から、より十分に見出されるであろう。これらの図は、いくつかの図を通して同様の参照文字が同一又は類似の部品を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の簡単な説明
【図1】本発明を利用したポンプシステムの全体図である。
【図2】現在の圧力、平均圧力、瞬時の圧力差及び回転角度の関数としての現在の圧力を示している。
【図3】出力ギア回転に適応された事前タイミング技術を示している。
【図4】ポンプドライブの分解図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明を実施するための最良の形態
二つの(又はそれより多くの)ピストンポンプシステム10が図1に大まかに示されている。システム10はクランク14駆動される二つのポンプ12が備わっており、好適な実施態様においてそれぞれのクランクは約84°だけずれている。電動モータ16はギアリダクションユニット18を駆動し、ギアリダクションユニット18は同じくクランク14を駆動する。システム10は機械的なカムシャフトを有しておらず、それと同様に動作するソフトウェアのアルゴリズムを有している。そのアルゴリズムは、学習して機械的なカムシャフトを模倣する一意的な速度プロファイルを作り出す。実用的な目的で、出力ギアの速度プロファイルは、仮想カムシャフトとして動作するソフトウェアを有するカムプロファイルと呼ばれる。アルゴリズムは、クランク角度の推定、学習カーブの生成、平滑化及び事前タイミングの計算を利用している。
【0012】
スムーズなカム速度プロファイルは、三つの段階で生成される。すなわち、(1)理論上のカム速度プロファイルが生成され、(2)ポンプの一意的なプロファイルが学習され、そして(3)実際のカムプロファイルが生成される。
【0013】
理論上のカム速度プロファイルは360点で構成される(1°あたり1点)。システムのマニホールドの排出口を通して一定の流れ及び圧力が与えられるようになる。計算には以下のパラメータが使用される。すなわち、ピストンの変位度、アップストロークの際の実際のポンプ体積をもたらすピストンロッドの体積、液体がポンプでくみ上げられない切換え継続期間、並びに接続ロッド及びポンプ穴の形状である。
【0014】
一意的な一連の公式が、与えられたシステムのための完全なカムプロファイルを実際に作り出すために使用され、ポンプからの一定の圧力及び流れを保証している。学習アルゴリズムによって、ポンプは作動中の圧力変化を学習できるようにもなる。
【0015】
一度学習されたカムが生成されると、それが理論上のカムの上にオーバーレイされて実際のカムが生成される。チェックボールの効果並びにギアボックス及びポンプアセンブリの一般的なたわみをモデル化することは極めて困難であり、理論上のカムのモデリングは単なる近似であることに留意すべきである。学習されたカムは、変数を100%考慮しており、従ってシステム特有なものである。理論上のカムの切換えタイミング及びボールチェックは、学習されたカムに対して検証される。学習されたカムの加速度及び減速度も、理論上の値に対して検証され、±30%で制限される。これによって、説明のつかない急速な圧力変化が原因の速度の小さな急峻なスパイクは除去される。
【0016】
システムは機械的なカムシャフトを有しておらず、それと同様に動作するソフトウェアアルゴリズムを有している。そのアルゴリズムは、学習して機械的なカムシャフトを模倣する一意的な速度プロファイルを作り出す。実用的な目的で、出力ギアの速度プロファイルは、仮想カムシャフトとして動作するソフトウェアを有するカムプロファイルと呼ばれる。このアルゴリズムは、以下の一意的な特徴を有している。
・クランク角度の推定
・学習カーブの生成
・平滑化
・事前タイミングの計算
【0017】
学習カムアルゴリズムは、角度の推定を実行することによってエンコーダーの必要性を排除する。一つの上死点(TDC)のセンサがギアボックスに取り付けられる。センサは出力ギアにあるマークを見る。このマークは、回転毎に一度センサを始動させる。
【0018】
センサが始動すると、アルゴリズムは以下のようにギア回転度の計算を開始する。
1.4msタイムフレーム毎のモータ回転の推定数がまず見出される。
2.モータ回転の推定数を基いて出力ギア回転の推定角度が見出される。
【0019】
毎4msに実行する4msプロセッサタスク内にソフトウェアコードがインストールされる。これは、コードが4ms毎に一度モータ周期を見ることを意味している。実際の実行時間は仕事におけるコードの量に依存することに留意すべきである。従って、タイムフレームはちょうど4msであるとは想定できない。ソフトウェアはエラーを調整する対策を必要とする。
【0020】
次式が回転角度の計算に使用される技術を記載している。



ただし、Ns−速度、F−周波数、P−極数
毎秒回転数への変換:



4msタイムフレーム毎の回転数を見出す:



従って、



ギアボックス速度比=75;これは、モータの75回転毎にカムシャフトの1回転が得られることを意味している。
1カム回転=75モータ回転



これは、1モータ回転が4.8°の出力ギア回転をもたらすことを意味している。
モータ回転は(4msタスク時間)の時間に基づいて追跡され、従ってあらゆる既知のモータ回転数でカムシャフトの角度が見出され得る。
カムの360°=75モータ回転
カムのX°=推定モータ回転数の#
従って、


【0021】
システムは360点の速度配列を使用する。各点はクランクシャフト(出力ギア)の回転角度を表している。学習工程のスタートにおいて、この配列は、その全要素がゼロで満たされていて空である。この学習工程は、一度スタートすると、閉ループ制御システムを作動させ、このシステムの入力はポンプでくみ上げられる液体の圧力であり、出力はモータ速度である。簡易的に言えば、システムはモータ速度を調整することによって一定圧力を与えるように働き、他方、学習のない場合の将来の使用のために、全回転角度における速度値を記録する。
【0022】
例として、現在の回転角度が18°であり、この角度における測定された圧力(現在の圧力)が180PSIであることを想定する。平均圧力は150PSIと想定する。現在の圧力は平均より20%高い。これが排除する必要のある圧力変動である。その後、システムは、圧力変動を排除して現在の圧力を平均圧力に近づけるために、18°点に対してモータ速度を約20%だけ調整する。この工程はカムシャフト13回転分継続するが、これは全点が13回調整されることを意味している。毎回誤差が縮小して、18°における圧力が平均圧力に近づく。
【0023】
制御システムの重要な要素は、以下である。
・現在の圧力−液体の圧力の信号が、10ms毎に更新される。
・平均圧力−平均圧力が、2.4秒の時定数を有する一次フィルタ関数を用いて得られる。実用的な目的のため、フィルタ関数は簡単な平均関数として参照され得る。
・瞬時の圧力差−瞬時の圧力差=現在の圧力−平均圧力
・圧力差−圧力差は、瞬時の圧力差の平均圧力に対する%の関係である。図2を参照。
【0024】
平滑化は、遅い誤差排除の工程である。図2から、18°における誤差は20%であることがわかる。過剰修正及びモータの余分な負荷を防止するために、モータ速度を20%だけ単に増加させることによる誤差の修正は行われない。単なる20%増加の場合、モータはより多くの液体をくみ上げて20%以上の圧力を生み出して誤差を補うことになろう。圧力と流れとの関係は、平方根の関係があることに留意すべきである。モータ速度の20%の増加は、圧力を20%の平方根だけ増加させるだけである。その代わり、13の学習の回転の間における速度のわずかな増加によって、誤差は徐々に排除される。第一の4回転で平滑化係数は5に等しく、次の4回転でその係数は4、次の4回転では3、そして最後の回転では2である。この係数は、回転角の値に対して加えられる重み付け量を表している。
【0025】
例として、学習が3回転目である場合、平滑化係数は5に等しい。アルゴリズムは、前の5つの角度(13°、14°、15°、16°、及び17°)の値及び現在の角度に続く角度(19°、20°、21°、22°、及び23°)の値を取る。進行中のアルゴリズムは、その後、これら全ての値の平均を見出だすが、現在の角度18°の値を2度加えるために18°の角度はより多くの重み付けを有している。得られた速度値は角度18°に割り当てられる。
【0026】
学習カムのアルゴリズムは、制御システムの応答遅れ及びモータの遅延に関連した誤差を調整するための対策を有している。このアルゴリズムは、モータ周波数に基づいた遅れ及び特有の定数である学習リード角度を計算する。この定数は、モータの遅延に依存しており、テストによって得られる。
学習角度=現在の角度+学習リード;



周波数分割=60;
例:推定角度(現在の角度)が18°であり、この角度に対応したモータ周波数が20Hzであることを想定する。学習リードは−6であると想定する。


【0027】
学習が誤差を計算している間、学習は誤差を学習角度に帰属させ、現在の角度には帰属させない。出力ギアが18°にあって誤差が+20%である場合、平滑化を通しての学習アルゴリズムはモータ速度の補正を決定する。その補正が−17.5%と見出されたと想定する。事前タイミングなしでは、出力ギアが18°の回転に達したときに、この学習プログラムはモータ速度が−17.5%になるように命令するであろう。これは、モータ速度が−17.5%だけ瞬時に調整されなければならないことを意味している。しかし、現実にはそれは不可能である。制御システムは処理時間が必要であり、モータは命令に反応する時間が必要である。事前タイミングは、このコマンドが事前にモータに送信されることを保証している。この例では、事前は−2°であり、従ってこのアルゴリズムは出力ギアが18°ではなくて16°に達したときに−17.5%の速度変化の命令をするので、システムに応答時間を与える。図3を参照。
【0028】
以下の請求の範囲によって規定される本発明の精神及び範囲から逸脱しないで、様々な変形及び変更がポンプの制御に可能であることが予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つのクランク駆動の往復式ポンプを有するポンプシステムを制御する方法であって、前記ポンプ用の前記クランクはずれており、前記方法は、
少なくともピストンの変位度の数種のパラメータ、ピストンロッドの体積、切換え期間、及び接続ロッドとポンプ穴との形状を考慮に入れて、前記ポンプに対する理論上のカム速度プロファイルを作り出す工程と、
前記ポンプシステムを動作させることによってポンプに一意的なプロファイルを作り出して、学習されたカムを生成する工程と、
前記理論上のプロファイルを前記学習されたカムでオーバーレイする工程と、
からなる方法。
【請求項2】
前記ずれが約84°である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも二つのクランク駆動の往復式ポンプを有するポンプシステムを制御する方法であって、前記ポンプ用の前記クランクはずれており、前記方法は、
一定速度で前記ポンプシステムを動作させて、選択されたクランク角度位置における出力圧力を収集する工程と、
前記収集された出力圧力から圧力プロファイルを形成する工程と、
前記圧力プロファイルを変換して、圧力変動を減少させるモータ速度プロファイルを形成する工程と、
圧力変動が所定量を超えない間、反復工程において少なくとも一度上記工程を繰り返す工程と、
からなる方法。
【請求項4】
動作中に圧力変動をモニターする工程と、
前記所定量が超えた場合に圧力変動を減少させるため、前記モータ速度プロファイルを調整する工程と、をさらに有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
電動モータによって駆動される、少なくとも二つのクランク駆動の往復式ポンプを有するポンプシステムを制御する方法であって、前記ポンプ用の前記クランクはずれており、前記方法は、
クランクの回転における特定位置を検出するために、前記クランクの少なくとも一つに対してセンサを備えて、その特定位置をゼロ位置として指定する工程と、
前記クランクが前記ゼロ位置を通過して回転するにしたがって前記モータ周波数をモニターして、クランクシャフト位置を予想する工程と、
各クランクの回転の最後に、前記ゼロ位置と予想ゼロ位置との間の相違を検出して、その予想値を調整する工程と、
からなる方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−505065(P2010−505065A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530560(P2009−530560)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/079436
【国際公開番号】WO2008/039787
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(506224045)グラコ ミネソタ インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】