ピストン冷却用オイルジェットおよびその製造方法
【課題】一部樹脂製として製造性に優れ、かつ軽量化を図ることができ、しかも耐久性に優れたオイルジェットを提供する。
【解決手段】本体部1が、日本工業規格で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaで、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂によって形成されている。
【解決手段】本体部1が、日本工業規格で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaで、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂によって形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レシプロエンジンのピストンをその内部から冷却するためにオイルを噴射するオイルジェットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レシプロエンジンは、熱エネルギを機械的エネルギに変換する動力機械であるから、そのピストンは高温に曝される。そこで従来、ピストンの背面側すなわち、燃焼室とは反対側に冷却用のオイルを吹き付けて、潤滑と併せて冷却を行うように構成しており、そのための装置としてオイルジェットが知られている。オイルジェットは、エンジンブロックの内部に取り付けられ、逆止弁とノズルとを備えた部品であり、エンジンブロックに形成されている油路の油圧が高くなることにより逆止弁が押し開かれ、そのオイルがノズルからピストンの背面側の部分に吹き付けられるように構成されている。このようなオイルジェットの例が特許文献1ないし4に記載されている。
【0003】
オイルジェットは、上記のようにエンジンブロックの内部に取り付けられ、その環境が過酷であるから、従来一般には、金属製とされている。例えば上記の特許文献1ないし4に記載されているオイルジェットは、逆止弁を内蔵しているいわゆる本体部分とノズルとを別部品として製造し、そのノズルを本体部分に組み付けるように構成されている。特に特許文献1または2に記載されたオイルジェットは、ノズルを本体部分に圧入するように構成して、ロー付けを解消するようにしている。
【0004】
なお、エンジン部品は、上記のように、金属製とするのが一般的であるが、最近では部分的に合成樹脂を併用することも行われるようになってきており、その樹脂として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、各種のナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)などが特許文献5ないし11に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291904号公報
【特許文献2】特開2006−291899号公報
【特許文献3】特開2007−182819号公報
【特許文献4】特開2008−202418号公報
【特許文献5】特開2006−161563号公報
【特許文献6】特開2005−337190号公報
【特許文献7】特開2006−70154号公報
【特許文献8】特許第4204425号公報
【特許文献9】国際公開WO2007/099968号パンフレット
【特許文献10】特開2005−60529号公報
【特許文献11】特開2005−140062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1ないし5に記載されているように、従来のオイルジェットはその全体が金属によって構成されているので、重量が重く、エンジンあるいはこれを搭載する車両を軽量化し、ひいては燃費を向上させるためには未だ改良の余地があった。また、エンジン部品に使用することのできる合成樹脂が特許文献5ないし11に記載されているが、これらの樹脂をエンジン部品の一例であるオイルジェットに用いるとしても、その使用する部位、使用の態様もしくは形態、材質など、従来知られていない課題が多く存在し、従来では実用に供し得るものが提供されていないのが実情である。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、少なくとも一部の合成樹脂化を可能にし、ひいては軽量でしかも製造性に優れ、さらには金属製ノズルの圧入箇所の油漏れ防止、オイルジェットノズルからピストンに正確に当たるようにオイルが噴出される的あて精度を向上するなどの特性に優れたオイルジェットを提供すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ピストンを備えたエンジンブロックの内部に取り付けられる本体部と、その本体部に内蔵されるとともに前記エンジンブロックに形成されている油路を開閉する逆止弁と、前記本体部から前記ピストンの背面に向けて延びるとともに前記逆止弁が開くことにより前記油路から供給されたオイルを前記ピストンの背面に向けて噴射するノズルとを備えたピストン冷却用オイルジェットにおいて、前記本体部が合成樹脂によって形成されるとともに、その本体部を前記エンジンブロックに固定するためのボルトを挿通する環状の金属製カラーが前記本体部にインサート成形により一体化され、前記合成樹脂製の本体部に金属製の前記逆止弁が挿入されて固定され、前記本体部のうち前記逆止弁が挿入されている中空部に前記ノズルが開口するように前記ノズルの一端部が前記本体部にインサート成形により一体化されており、かつ前記合成樹脂は、日本工業規格で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaで、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記合成樹脂は、無機物を配合した強化プラスチックを含むことを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記強化プラスチックは、前記無機物として、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化チタンのいずれか一種、もしくは二種類以上が配合されていることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記繊維強化プラスチックは、ガラス繊維を15〜45質量%含有していることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記カラーおよび/またはノズルは、前記本体部に埋め込まれている部分の外周部に、本体部を形成している樹脂に向けて突き出た回り止め部を備えていることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記回り止め部は、断面形状が楕円形をなす部分を含むことを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記断面形状が楕円形をなす部分は、前記カラーおよび/または前記ノズルに形成されている楕円形フランジ部を含むことを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明において、前記中空部は、前記ノズルの開口端面と面一に一致する平坦な内面を備えていることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれかのピストン冷却用オイルジェットを製造する方法であって、前記本体部を前記合成樹脂を使用して射出成形する際に、真っ直ぐなノズル用金属管の一方の端部をその本体部にインサート成形して該ノズル用金属管を本体部に一体化させ、前記本体部の形成後に前記ノズル用金属管を所定角度に曲げ加工することにより前記ノズルとすることを特徴とする方法である。
【0017】
請求項10の発明は、請求項1ないし8のいずれかのピストン冷却用オイルジェットを製造する方法であって、前記本体部を前記合成樹脂を使用して射出成形する際に、曲げ加工したノズル用金属管の端部をその本体部にインサート成形して該ノズル用金属管を本体部に一体化させることを特徴とする方法である。
【0018】
請求項11の発明は、ピストンを備えたエンジンブロックの内部に取り付けられる本体部と、その本体部に内蔵されるとともに前記エンジンブロックに形成されている油路を開閉する逆止弁と、前記本体部から前記ピストンの背面に向けて延びるとともに前記逆止弁が開くことにより前記油路から供給されたオイルを前記ピストンの背面に向けて噴射するノズルとを備えたピストン冷却用オイルジェットにおいて、前記本体部が合成樹脂によって形成されるとともに、その本体部を前記エンジンブロックに固定するためのボルトを挿通する環状の金属製カラーが前記本体部にインサート成形により一体化され、前記合成樹脂製の本体部に金属製の前記逆止弁が挿入されて固定され、前記本体部のうち前記逆止弁が挿入されている中空部に前記ノズルが開口するように前記ノズルの一端部が前記本体部にインサート成形により一体化されており、かつ前記合成樹脂および前記金属は、該金属製のパイプを前記合成樹脂にインサート成形した後にこれら金属製パイプと合成樹脂との間に捩りトルクを与えてこれら金属製パイプと合成樹脂との間に密着状態が破壊される密着性破壊トルクが5N・m以上となる合成樹脂および金属であることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【発明の効果】
【0019】
この発明のオイルジェットによれば、本体部が合成樹脂によって形成されているので、全体としての重量を軽減でき、しかもボルトによってエンジンブロックに固定するための部分が金属製カラーによって形成されているので、エンジンブロックに対する固定強度を充分大きくすることができる。また、オイルを噴射するノズルが金属製のパイプによって形成されているので、その耐久性が充分良好になる。そして、これらのカラーおよびノズルがインサート成形によって本体部に一体化されているので、製造性の良好なオイルジェットとすることができる。
【0020】
さらに、この発明のオイルジェットにおいては、本体部を形成している合成樹脂が上記のように特定されていることにより、射出成形による成形性が良好であるだけでなく、エンジンブロックの内部で高温に曝されても、また高温のエンジンオイルが付着しても劣化しにくく、また加熱・冷却を繰り返し受けても亀裂が生じるなどのことがなく、また激しい振動および衝撃力ならびに圧力を受けたとしても、インサート部にガタツキやクラックが発生することなく金属部と樹脂部との密着性が良い。総じて、全体を金属製としたオイルジェットと比較して遜色のない耐久性を示し、充分実用に耐え得るものとすることができる。
【0021】
特に、請求項2ないし請求項4に記載してあるように、無機物を配合した強化プラスチックによって本体部を形成することにより、より軽量で強度あるいは耐久性に優れたオイルジェットを得ることができる。
【0022】
また、請求項5ないし7の発明によれば、本体部とカラーおよびノズルとをより強固に一体化することができ、その結果、オイルジェットの使用中にその取付姿勢やノズルの向きが変化するなどの事態を未然に防止することができる。
【0023】
さらに、請求項8の発明によれば、本体部の射出成形時にノズルの開口端を成形型によって封止することが可能になり、その結果、その開口端を封止する特別な作業が必要ではなくなるから、製造性を向上させることができる。
【0024】
そして、請求項9の発明に係る方法によれば、本体部に対してノズル用金属管をインサート形成する場合、ノズル用金属管は真っ直ぐなパイプであるから、その中心軸線を中心とした回転方向の姿勢は特に限定されず、製造時におけるノズル用金属管の設置作業が容易になり、しかも本体部の成形完了後にその金属管を曲げてノズルとするので、ノズルを目標とする向きに正確に向けることができる。いわゆる的当て性に優れたオイルジェットを容易に製造することができる。
【0025】
そして、請求項10の発明によれば、本体部に対して設計上定められている方向および角度に曲げ加工したノズル用金属管をインサート成形する場合、金属に対して密着性のよい樹脂を使用して成形するため、成形後に微調整を行うことが可能である。
【0026】
請求項11の発明によれば、本体部が合成樹脂によって形成されているので、全体としての重量を軽減でき、しかもボルトによってエンジンブロックに固定するための部分が金属製カラーによって形成されているので、エンジンブロックに対する固定強度を充分大きくすることができる。また、オイルを噴射するノズルが金属製のパイプによって形成されているので、その耐久性が充分良好になる。そして、これらのカラーおよびノズルがインサート成形によって本体部に一体化されているので、製造性の良好なオイルジェットとすることができる。しかも、オイルジェットの使用中にノズルの向きが変化するなどのことがなく、いわゆる的当て性の良好なピストン冷却用オイルジェットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係るオイルジェットを一部破断して示す斜視図である。
【図2】その金属製カラーの一例を示す斜視図である。
【図3】そのノズル用の金属製パイプの一例を示す斜視図である。
【図4】カラーと金属製パイプとをインサート成形した本体部を、一部破断して示す斜視図である。
【図5】その本体部に形成されている中空部を示す部分的な斜視図である。
【図6】この発明に係るオイルジェットを一部破断して示す分解斜視図である。
【図7】曲げ試験に供される供試体を模式的に示す図である。
【図8】曲げ試験の方法を説明するための図である。
【図9】油漏れ試験に供される供試体およびその試験方法を説明するための模式図である。
【図10】密着性破壊トルクを測定する方法を説明するための模式図である。
【図11A】この発明の実施例1ないし5についての試験結果および測定結果をまとめて示す図表である。
【図11B】この発明の実施例6ないし15についての試験結果および測定結果をまとめて示す図表である。
【図12A】参考例および比較例1ないし10についての試験結果および測定結果をまとめて示す図表である。
【図12B】比較例11ないし21についての試験結果および測定結果をまとめて示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
つぎに、この発明をより具体的に説明する。この発明に係るオイルジェットは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのレシプロエンジンにおけるピストンの背面側(燃焼室とは反対側)にオイルを噴射してピストンおよびエンジン摺動壁、その周辺の内壁を冷却するためのエンジン部品である。したがって、ピストンに向けてオイルを噴射する一本もしくは複数本のノズルと、そのノズルを保持するとともにノズルをエンジンブロックの油路に連通させる本体部とを備えている。そして、その本体部には、油路を開閉する逆止弁が内蔵されている。この発明に係るオイルジェットは、その本体部が合成樹脂によって形成されており、その一例を図1に示してある。
【0029】
図1における符号1は本体部を示し、底が閉じられている円筒部2と、その円筒部2から半径方向で外側に延びた平板上のブラケット部3とを有している。そのブラケット部3は、図示しないエンジンブロックに固定するための部分であり、ボルト(図示せず)を挿入するための貫通孔4が形成されている。その貫通孔4は、金属製のカラー5に形成され、そのカラー5を本体部1におけるブラケット部3に一体化することにより、ブラケット部3に貫通孔4が設けられている。
【0030】
前記カラー5の一例を図2に示してあり、このカラー5はその全体が金属製であって、貫通孔4が形成されている環状の部分の外周面に輪郭が楕円形状をなすフランジ部6が一体に形成されている。上記の本体部1は一例として射出成形によって製造され、カラー5はその射出成形の際に本体部1にインサートされる。したがってフランジ部6は、カラー5の本体部1からの抜け止め、および/または回り止めを行うために設けられた部分である。このような機能は、カラー5から突出して本体部1(ブラケット部3)に埋設される部分によっても得られるので、フランジ部6に替えて突起部を設けてもよい。
【0031】
円筒部2は、エンジンブロックの油路から供給されるオイルを流す部分であって、その円筒部2の内部に形成されている中空部7にバルブユニット8が配置されている。このバルブユニット8は供給されるオイルの圧力によって開く逆止弁であって、金属製のボール9を弁体として備えている。このボール9は円筒状をなすバルブシート10の内部に収納されている。バルブシート10は、ボール9を保持するとともに弁座を構成する部材であって、所定の強度および耐摩耗性を維持するために金属によって構成されており、内径がボール9の外径とほぼ等しく、あるいはボール9の外径より僅かに大きく、一方の開口端(図1における上側の開口端)の内径がボール9の外径より小さくなっている円筒状の部材である。このように内径が小さくなっている部分にボール9が接触することにより開口端が閉じられるようになっており、したがってそのボール9が接触する内周部が弁座を形成している。
【0032】
ボール9を上記の弁座に押し付けるスプリング11が設けられている。このスプリング11は図に示す例では金属製のコイルスプリングによって構成されており、前記中空部7の底面上に配置された金属製のワッシャ12とボール9との間に配置されて、ボール9を前述した弁座に押し付けている。上記のバルブシート10は、前記中空部7の開口端側から挿入され、その状態で円筒部2の開口端を加熱して内周側にカシメることにより、中空部7の内部に固定されている。なお、バルブシート10の図1での上下方向での位置を決めるために、中空部の内周面には、バルブシート10の図1での下端部を載せる段差部13が形成され、その段差部13と前記カシメた部分との間にバルブシート10が挟み込まれて固定されている。
【0033】
さらに、スプリング11の位置ずれを防ぐために、中空部7の底面の中心部から突出した(立ち上がった)支柱部14が設けられている。この支柱部14は本体部1の射出成形の際に同時に形成される樹脂製の部分であって、上記のスプリング11およびワッシャ12の内径より小さい外径の円柱状の部分である。したがってワッシャ12およびスプリング11はその支柱部14に嵌め込まれることにより、半径方向へのズレが生じないように保持されている。なお、支柱部14の長さは、弁座に押し付けられているボール9から僅かに離れる程度の長さに設定されており、したがって支柱部14はボール9が弁座から離れて開弁動作を可能にするとともに、弁座から離れたボール9を当接させてその下限位置を規定するように構成されている。
【0034】
図1に示す例では、二本のノズル15a,15bが設けられている。これらのノズル15a,15bは金属製のパイプ16a,16bを本体部1にインサート成形して構成されている。そのパイプ16a,16bの一例を図3に示してあり、ここに示すパイプ16a,16bは真っ直ぐな円筒管であり、その一端部、より具体的には前述した本体部1に埋設される端部には、輪郭が楕円形をなすフランジ部17が形成されている。ノズル15a,15bは本体部1にインサート成形によって一体化されるものであるから、フランジ部17は、ノズル15a,15bの本体部1からの抜け止め、および回り止めを行うために設けられた部分である。このような機能は、ノズル15a,15bから突出して本体部1に埋設される部分によっても得られるので、フランジ部17に替えて突起部を設けてもよい。
【0035】
また、ノズル15a,15bは、設計上定められた方向および角度に曲げ加工したパイプ16a,16bをインサート成形により本体部に一体化し、その後、曲げ角度や向きを微調整することとしてもよい。
【0036】
上記のパイプ16a,16bは一方の端部が前述した本体部1に形成されている中空部7の内面に面一に一致し、かつ中空部7に開口した状態で本体部1に一体化されている。そして、パイプ16a,16bの一旦面が平坦面として形成されていることに合わせて、前記中空部7の内面の少なくとも一部が平坦面18となっている。すなわち、中空部7のうち前記バルブシート10を嵌め込む部分は円筒状に形成されているのに対して、パイプ16a,16b(ノズル15a,15b)を開口させる部分は、図4および図5に示すように、断面が矩形をなす方形中空状に形成されている。これは、パイプ16a,16b(ノズル15a,15b)の開口端を、容易に、中空部7の内面に面一に一致させるための構成である。すなわち、中空部7を形成するための成形型(図示せず)にパイプ16a,16bの一端部を突き当て、その状態で本体部1の射出成形を行えば、樹脂がパイプ16a,16bの開口端に侵入することなく本体部1の射出成形を行うことができる。
【0037】
したがって、ノズル15a,15bは、前述したカラー5と共に各パイプ16a,16bを本体部1にインサート成形し、その後、各パイプ16a,16bを設計上定められている方向および角度に曲げることにより構成される。なお、予め所定の角度に曲げ加工されたパイプ16a,16bを使用した場合には、本体部1にインサート成形した後にノズル15a,15bの向きを必要に応じて微調整する。
【0038】
一方、前述したバルブユニット8は、図6に示すように、ノズル15a,15bが一体化されている本体部1における中空部7に、前記ワッシャ12およびスプリング11ならびにボール9およびバルブシート10を順に挿入し、その後、円筒部2の図における上端部を熱カシメすることにより、本体部1に組み付けられる。
【0039】
ここで、この発明における本体部1を構成する合成樹脂について説明する。この発明で対象とするオイルジェットは、エンジンブロックの内部に取り付けられ、高温のオイルに曝され、また激しい振動および衝撃力ならびに圧力を受けるから、本体部1はこのような過酷な状況下で必要な強度および耐久性を維持する必要がある。そのため、この発明における本体部1を形成する合成樹脂は、荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaで、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂である。
【0040】
ここで、ナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂に特定した理由は、射出成形特性および振動耐久特性が共に良好で、しかも長時間高温に曝された場合の形状安定性が優れているからである。特に、本体部1から突出させてあるノズル15a,15bの向きが長期に亘って変化しない形状安定性に優れているからである。また、ナイロンについてはジアミンとフタル酸の共重合体が上記物性に優れている。
【0041】
また、荷重たわみ温度とは、日本工業規格(JIS K7139)で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる温度である。この荷重たわみ温度が250℃〜400℃としたのは、250℃より低温であると、エンジンブロックに取り付けて高温に曝された場合にたわみが生じ、所期の形状を維持できなくなるからである。また、400℃より高いと、成形加工性(射出成形性)が悪くなるからである。
【0042】
さらに、上記の曲げ弾性率は、日本工業規格(JIS K7139)で規定されている多目的試験片A型を支点間距離64mmで支持するとともに160℃に維持し、これを曲げ速度2mm/minで曲げた場合の弾性率である。この曲げ弾性率を8000MPa〜15000MPaとしたのは、8000MPaより低いと、振動により変形してしまい、また摩擦によって樹脂のカスが生じてしまうからである。反対に、15000MPaより高いと、脆くなって振動による亀裂が生じたり、破損したりする可能性が高くなるからである。
【0043】
またさらに、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは、日本工業規格(JIS K7139)で規定されている多目的試験片A型に深さ2mm、開き角度45°のノッチを機械加工し、これを固定間距離62mmで支持してシャルピー試練を行って測定したものである。このシャルピー衝撃強さを5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2としたのは、15.0kJ/m2より高いと、振動により変形してしまい、また摩擦によって樹脂のカスが生じてしまうからである。反対に、5.0kJ/m2より低いと、脆くなって振動による亀裂が生じたり、破損したりする可能性が高くなるからである。
【0044】
さらに、この発明に係るオイルジェットの本体部1を形成する合成樹脂は、無機物を配合した強化プラスチックであってよい。その無機物として、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化チタンのいずれか一種、もしくは二種類以上を配合することができる。また、その補強繊維は、カーボンやガラスなどであってよく、また混合量は、実験などに基づいて適宜に決めてよい。例えば30質量%程度混合することができる。さらに、この発明に係るオイルジェットの本体部1を形成する合成樹脂は、下記の熱老化試験およびサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル性試験の結果が予め定めた基準値以上となる樹脂であることが好ましい。
【0045】
その熱老化試験は、上述した多目的試験片A型を160℃に設定した恒温槽に3000時間安置し、その後の引っ張り強度および曲げ弾性率を測定し、それらの測定値の加熱前からの変化を求める試験である。この発明では、その基準値を80%とし、加熱処理後の各測定値が、加熱前の各測定値の80%以上であることを要件とする。
【0046】
また、サーマルショック試験は、上記の多目的試験片A型を、−30℃の環境下に30分間安置し、その後、150℃の環境下に30分間安置する60分間の操作を1サイクルとし、これを3000サイクル行い、その後に測定した引っ張り強度および曲げ弾性率を、冷却・加熱サイクルを施す前の各測定値と比較する試験である。この発明では、その基準値を80%とし、冷却・加熱処理後の各測定値が、処理前の各測定値の80%以上であることを要件とする。
【0047】
さらに、耐エンジンオイル性試験は、上記の多目的試験片A型を耐圧容器内のエンジンオイル(例えばトヨタ純正エンジンオイルSM 5W-30)に浸漬し、これを密閉して160℃のオーブンに3000時間安置することにより、浸漬処理を行い、その後に引っ張り強度および曲げ弾性率を測定するとともに、未処理の試験片についての各測定値と比較する試験である。この発明では、その基準値を80%とし、処理後の各測定値が、処理前の各測定値の80%以上であることを要件とする。
【0048】
上述したオイルジェットは、前記カラー5にボルトを挿入するとともにそのボルトをエンジンブロックの所定箇所にねじ込むことによりエンジンブロックに固定される。その場合、ボルトを締め込むことによる荷重はカラー5に作用し、合成樹脂製の本体部1もしくはブラケット部3には作用しないので、樹脂の変形などが生じることはない。こうしてエンジンブロックに取り付けられた本体部1から突き出ている円筒部2が、エンジンブロックに形成されている油路に差し込まれて中空部7が油路に連通させられる。したがって、油路を介して供給させるオイルの圧力が高くなると、ボール9がスプリング11を圧縮して弁座から離れ、いわゆる開弁する。その結果、オイルが中空部7を介してノズル15a,15bに送られ、それぞれのノズル15a,15bの先端部からピストンの背面に向けてオイルが噴射され、ピストンが冷却される。
【0049】
したがってこの発明に係るオイルジェットによれば、本体部1が合成樹脂によって形成されているので、軽量化を図ることができる。またその本体部1に対するカラー5およびノズル15a,15bの組み付け・一体化は、インサート成形によって行うことができるので、製造工程数を少なくして容易に製造でき、ひいては低コスト化を図ることができる。そして、本体部1を形成する合成樹脂を上記のように特定したことにより、強度および耐久性に優れ、実用に充分耐え得るオイルジェットとすることができる。
【0050】
以下、この発明の効果を確認するために行った実施例1〜15、および比較例1〜21を示す、なお、参考例は、全体を金属製とした現行品である。なお、以下の実施例および比較例で使用したカラー5およびノズル15a,15bは、日本工業規格で規定されるSTKM11Aから形成された金属製のものである。
【実施例1】
【0051】
ガラス繊維を30質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロン(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の共重合体:以下、仮にナイロンCとする)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は10500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは12kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例2】
【0052】
ガラス繊維を30質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロン(ノナンジアミンとテレフタル酸の共重合体:以下、仮にナイロンDとする)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は9000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例3】
【0053】
ガラス繊維を30質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は8500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.5kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例4】
【0054】
ガラス繊維を30質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は315℃、曲げ弾性率は10000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは8.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例5】
【0055】
ガラス繊維を30質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は369℃、曲げ弾性率は12000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは7.5kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例6】
【0056】
ガラス繊維を15質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンCを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は8500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは11kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例7】
【0057】
ガラス繊維を40質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンCを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は13700MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは12kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例8】
【0058】
ガラス繊維を15質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンDを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は260℃、曲げ弾性率は8000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例9】
【0059】
ガラス繊維を40質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンDを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は12000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは15kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例10】
【0060】
ガラス繊維を15質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は8200MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例11】
【0061】
ガラス繊維を40質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は14000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは7.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例12】
【0062】
ガラス繊維を15質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は300℃、曲げ弾性率は9000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは7.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例13】
【0063】
ガラス繊維を40質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は320℃、曲げ弾性率は13000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは9.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例14】
【0064】
ガラス繊維を15質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は360℃、曲げ弾性率は10000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.5kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例15】
【0065】
ガラス繊維を40質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は369℃、曲げ弾性率は15000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例1】
【0066】
ガラス繊維を30質量%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は210℃、曲げ弾性率は6500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10.5kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例2】
【0067】
ガラス繊維を30質量%含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は240℃、曲げ弾性率は9320MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは17.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例3】
【0068】
ガラス繊維を30質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロン(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体:以下、仮にナイロンAとする)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は205℃、曲げ弾性率は8200MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは11.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例4】
【0069】
ガラス繊維を30質量%含有する液晶ポリマー(LCP)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は250℃、曲げ弾性率は1500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは35.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例5】
【0070】
ポリカーボネート(PC)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は132℃、曲げ弾性率は2200MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは89.0kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例6】
【0071】
ポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は435℃、曲げ弾性率は6640MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは39.4kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例7】
【0072】
ガラス繊維を30質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロン(メタキシレンジアミンとアジピン酸の共重合体:以下、仮にナイロンBとする)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は230℃、曲げ弾性率は22000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは6.0kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満となり、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例8】
【0073】
ガラス繊維を50質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は16000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.2kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例9】
【0074】
炭酸カルシウム(CaCO3)粉末を50質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は18000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例10】
【0075】
不飽和エステル樹脂に各種の添加剤が加えられた塊粘土状の熱硬化性樹脂であるBMC(Bulk Molding Compound)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は250℃、曲げ弾性率は11800MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは6.2kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例11】
【0076】
ガラス繊維を5質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンCを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は150℃、曲げ弾性率は6000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例12】
【0077】
ガラス繊維を50質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンCを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は15300MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは12kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例13】
【0078】
ガラス繊維を5質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンDを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は260℃、曲げ弾性率は7500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例14】
【0079】
ガラス繊維を50質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンDを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は275℃、曲げ弾性率は14800MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは17kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例15】
【0080】
ガラス繊維を5質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は150℃、曲げ弾性率は5000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは4.0kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例16】
【0081】
ガラス繊維を10質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は250℃、曲げ弾性率は10000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは4.8kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例17】
【0082】
ガラス繊維を50質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は16000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.2kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例18】
【0083】
ガラス繊維を5質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は200℃、曲げ弾性率は6000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは6.0kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例19】
【0084】
ガラス繊維を50質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は320℃、曲げ弾性率は15500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは6.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例20】
【0085】
ガラス繊維を5質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は360℃、曲げ弾性率は6000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例21】
【0086】
ガラス繊維を50質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は369℃、曲げ弾性率は25000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは12.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【0087】
上述した実施例1〜15および比較例1〜21について射出成形性、振動耐久特性、曲げ試験、油漏れ試験、密着性破壊トルク(N・m)、吐出油量(L/min)、開弁圧、噴射位置をそれぞれ調べた。射出成形性は、前述した多目的試験片A型が得られるように加工された金型を搭載したニイガタマシンテクノ製の竪型射出成形機(MDVR75型、射出圧75トン、試作金型はサイドゲートで1個取り)を使用した。射出条件として射出成形時の樹脂温度を250〜400℃、金型温度は135〜250℃とし、射出圧力および射出速度を定格の90%、70%で射出成形を行い、成形体の外観を目視で評価した。充填不良やフローマークなどの外観不良が目立つものは「×」、良好であるがフローマークが少し目立つものは「○」、良好は「◎」と評価した。
【0088】
振動耐久特性は、製品を固定させた治具を上下に振動させ、製品の状態を確認した。振動の条件は、振動加速度:294m/s2、周波数:213Hz、振動回数:1.0×107、継続時間3000時間とした。製品にクラックや破損が生じたものは「×」、製品にクラックや破損が生じないものは「○」と評価した。
【0089】
曲げ試験は、評価対象樹脂に一端部をインサート成形したノズル用のパイプを所期の形状に湾曲させることにより、インサート部に樹脂の剛性や樹脂と金属部との密着の度合いによるガタツキやクラックが発生するか否かの試験である。その曲げ試験に供される樹脂の試験片21は図7の(a)に示するように、縦横30mm、厚さ10mmの直方体状である。これに、日本工業規格で規定されているSTKM11Aからなる金属パイプ22の一端部をインサート成形し、その金属パイプをほぼ90°に曲げ加工した。金属パイプ22は図7の(b)および(c)に示すとおりであり、外径4mmおよび内径1.5mmで長さが40mmのパイプの一方の端部から1.5mmの位置に、厚さ1.5mm、長径6.5mm、短径5.5mmの楕円形フランジ部23が形成されており、さらに他方の端部に6mmの長さに亘ってネジ24を加工したものである。上記の金属パイプ22の曲げ加工は、図8に示すように試験片21をバイス25で挟み付けて固定し、その状態で金属パイプ22のネジ24側の端部をバイスプライヤー26で掴んで金属パイプ22に曲げ荷重を掛け、ほぼ90°に湾曲させた。その後に、インサート部のガタツキおよびクラックの有無を手作業および目視観察によって確認した。5個の試験片について同様の試験を行い、ガタツキあるいはクラックの生じている試験片の数を求めた。評価は、1個でもガタツキあるいはクラックが生じた場合には、その樹脂による製品は不合格(NG)とした。
【0090】
油漏れ試験は、ノズルに対する密着の度合いを調べるための試験であり、樹脂と金属パイプとの境界部分に油圧を作用させ、オイルがその境界部分に侵入して他方の端部から漏れ出るか否かを確認することにより行った。具体的には、図9の(a)に示すように、縦横30mmで厚さ20mmの樹脂試験片31に、日本工業規格で規定するSTMK11A製の外径4mm、長さ40mmのシャフト32の一端部を10mmの長さでインサートし、さらに試験片31の前記シャフト32が突出している面とは反対側の面に、内径10mmで深さ10mmの凹部33を形成し、その凹部33にシャフト32の端面を露出させた。なお、シャフト32の表面粗さの最大高さRmax は6.0μmである。そして、図9の(b)に示すように、凹部33に2MPaの圧力でオイルを供給し、シャフト32の外周面側にオイルが染み出たか否かを目視で確認した。5個の試験片について同様の試験を行い、オイルの染み出しが生じた試験片の数を求めた。評価は、1個でも染み出しが生じた場合には、その樹脂による製品は不合格(NG)とした。
【0091】
密着性破壊トルク(N・m)は、樹脂と金属との境界面に剪断荷重を掛けて両者の接合が剥がれる荷重を測定することにより両者の密着の程度を評価するためのものであり、前述した図7の(a)、(b)、(c)に示す供試体22と同材質・同形状の金属パイプ22Aを用意した。なお、金属パイプ22Aは具体的には、STKM11A製とした。そして、図10に示すように、試験片21をバイス25で挟み付けて固定し、その状態で金属パイプ22Aのネジ24にM5のナット41を2つ取付、そのナット41をデジタルトルクレンチ(KTC GWC3−030)42で締め込むことにより、金属パイプ22Aにトルクを作用させ、金属パイプ22Aが試験片21から剥がれるトルクを測定した。5個の試験片について同様の試験を行い、測定された破壊トルクの平均値をその樹脂についての測定値とした。
【0092】
吐出油量は、各実施例および比較例の製品をエンジンブロックに取り付けて120℃のエンジンオイルを2MPaで3000時間流し、その後にノズル15a,15bから吐出されたエンジンオイルの量(L/min)を測定した。それぞれ5個の製品について同様の測定を行い、平均値を求めた。平均吐出油量が1.2±0.2L/min以上であれば、「良」、それ未満であれば、「不可」と判定した。
【0093】
開弁圧は、製品をエンジンブロックに取り付け、120℃のエンジンオイルを流して前記バルブユニット8が開く油圧を測定した。それぞれ5個の製品について同様の試験、測定を行い、180MPa以下では閉弁し、220MPa以上で開弁するか否かを確認した。実施例および比較例の全てが180MPa以下では閉弁し、220MPa以上で開弁した。
【0094】
噴射位置は、ノズル15a,15bの取付姿勢もしくは向きのことであり、その変化の有無を確認する試験を行った。具体的には、それぞれの製品をエンジンブロックに取り付け、取り付け面から100mmの位置に内径10mmの孔の開いた的をセットし、120℃に加温したエンジンオイルを3000時間流した後、ノズル15a,15bから吐出されたオイルがその的の10mmの孔に入るか否かを確認した。それぞれ5個の製品について同様の試験を行い、噴射したオイルが10mmの孔に入らないものがあった場合には、その樹脂による製品は「不可」と評価した。
【0095】
上述した各試験の結果、および測定値ならびに採用の可否を、実施例1〜5については図11Aに図表にまとめて示し、実施例6〜15については図11Bに図表にまとめ示し、参考例および比較例1〜10については図12Aに図表にまとめて示し、さらに比較例11〜21については図12Bに図表にまとめて示してある。
【0096】
図11Aおよび図11Bに示すように、この発明に係る実施例1〜15のいずれのものも、射出成形後にフローマークなどの欠陥が生じておらず、射出成形性が良好であった。また、振動耐久特性を確認するために加振した後にガタツキや亀裂が生じず、これは曲げ試験を行った後であっても同様であった。さらに油漏れ試験によってオイルの浸透あるいは漏れは認められず、また密着性破壊トルクが5N・m以上であって所期どおりに充分大きく、強度上の不都合は認められなかった。また、吐出油量は規定の範囲内に入っており、ノズル15a,15bからの吐出方向にズレが生じていないことにより、充分耐久性に富んでいることが認められた。
【0097】
これに対して、比較例1ないし3では、前述した熱老化試験およびサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験の結果が「不可」であり、先ずは、この点で実用に供し得ないものである。このことは、前述した噴射位置の確認で、それぞれ5個の製品に全てでノズルの向きに変動を来たし、オイルが的の孔に入ったものがなったことからも明らかである。また、比較例1では、振動耐久試験で亀裂が生じ、実用に供し得ないことが認められた。さらに、比較例1および2では、上述した曲げ試験および油漏れ試験で合格するものはなかった。なお、これら比較例1および2については、以上の結果から実用に供し得ないものと判断されたので、密着破壊トルクを測定しなかった。また、比較例3で曲げ試験において5個のうち2個にクラックやガタツキが生じ、また油漏れ試験では5個のうち3個に油漏れが生じ、評価は不可となった。
【0098】
また、比較例4は、熱老化試験およびサーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験の結果が「良」であり、また外観に特には不良が認められず射出成形性は良好であったが、振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。さらに、上述した曲げ試験および油漏れ試験で合格するものはなかった。なお、以上の結果から実用に供し得ないものと判断されたので、密着破壊トルクを測定しなかった。また、この比較例4では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0099】
比較例5では、射出成形性の結果が「良」であったが、上記の比較例4と同様に、上述した曲げ試験および油漏れ試験で合格するものはなかった。また、密着破壊トルクを測定しなかった。
【0100】
比較例6では、フローマークなどの外観不良が目立ち射出成形性に劣ることが認められ、また振動耐久試験ではクラックなどが生じ、結果は不合格であった。また、曲げ試験において5個のうち3個にクラックやガタツキが生じ、また油漏れ試験では5個のうち3個に油漏れが生じ、評価は不可となった。さらに、密着性破壊トルクは2.8N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。なお、この比較例6では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0101】
比較例7では、振動耐久特性の結果が不良であり、実用に供し得ないことが認められた。また、曲げ試験において5個のうち2個にクラックやガタツキが生じ、また油漏れ試験では5個のうち2個に油漏れが生じ、評価は不可となった。さらに、密着性破壊トルクは4.6N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。なお、この比較例7では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0102】
比較例8,9では、前述した比較例4と同様に、外観に特には不良が認められず射出成形性は良好であった。しかしながら、振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち3個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは、比較例8で2.2N・mであり、比較例9で1.0N・mであり、いずれも基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0103】
特に比較例8では、ガラス繊維の充填割合が多いことにより、ガラス繊維が配向し、収縮の異方性が現れ、これが要因となって金属と樹脂との間に隙間が生じて密着不良となり、油漏れが生じたものと考えられる。同様に、比較例9で無機物の充填量が多いために、収縮率が低下し、これが要因となって金属と樹脂との密着性が悪化し、その結果、曲げ試験でのクラッチやガタツキ、噴射位置のズレが生じたものと考えられる。
【0104】
これに対して、比較例10では、振動耐久特性が良好であったが、振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち3個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは3.1N・mであり、基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0105】
そして、比較例10は収縮率は金属と同様にほぼゼロであるが、金属との密着性が殆どない。そのため、曲げ試験や油漏れ試験の結果は、上述した比較例8および9と同様の結果となっている。
【0106】
比較例11では、前述した比較例7とほぼ同様の結果が得られ、実用には供し得ないものであることが認められた。すなわち、サーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験ならびに射出成形性が良好であることが認められたが、熱老化試験および振動耐久特性の結果が不良であり、実用に供し得ないことが認められた。また、曲げ試験において5個の全てでクラックやガタツキが生じ、また油漏れ試験では5個のうち2個に油漏れが生じ、評価は不可となった。さらに、密着性破壊トルクは4.5N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0107】
比較例12,13,14について結果は、前述した比較例8あるいは比較例9での結果とほぼ同様になった。すなわち、熱老化試験およびサーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験の結果が「良」であり、また外観に特には不良が認められず射出成形性は良好であった。しかしながら、これらいずれの比較例12,13,14においても振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち3個(比較例12および比較例14)もしくは2個(比較例13)で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは、比較例12,14については上記の結果が認められたことにより測定しておらず、また比較例13で4.0N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。なお、これら比較例12,13,14では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0108】
比較例15では、前述した比較例8と比べると熱老化試験の結果を除いて、ほぼ同様な結果となった。すなわち、サーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験および射出成形性の結果は「良」であったが、熱老化試験の結果が不良で、また振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち3個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは3.5N・mであり、基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0109】
比較例16および比較例17では、上記の比較例14とほぼ同様の結果となり、実用に供し得ないものであることが認められた。すなわち、熱老化試験およびサーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験の結果が「良」であり、また外観に特には不良が認められず射出成形性は良好であった。しかしながら、これらいずれの比較例16,17においても振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち2個(比較例16)もしくは3個(比較例17)で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは、比較例16で4.6N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められ、比較例17については密着性破壊トルクを測定していない。なお、これら比較例16,17では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0110】
比較例18では、上記の比較例15とほぼ同様の結果となり、実用の供し得ないことが認められた。すなわち、サーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験および射出成形性の結果は「良」であったが、熱老化試験の結果が不良で、また振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち2個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは4.8N・mであり、基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0111】
そして、比較例19では、比較例18と比べて熱老化試験の結果が改善されるものの、結局は、実用に供し得ないものであることが認められた。すなわち、振動耐久特性が不十分であり、また上述した曲げ試験で合格するものはないうえに、油漏れ試験では、5個のうち3個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。このような結果から、密着性破壊トルクは測定していない。なお、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0112】
さらに、比較例20および比較例21では、比較例19に類似した結果となり、実用に供し得ないものであることが認められた。すなわち、熱老化試験およびサーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験の各結果、および射出成形性が良好であることが認められたが、振動耐久特性が不十分であり、また上述した曲げ試験で合格するものはないうえに、油漏れ試験では、5個のうち2個(比較例20)もしくは3個(比較例21)で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。そして、比較例20での密着性破壊トルクは3.3N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性が不十分であることが認められた。なお、比較例21については上述した結果が得られていることによる密着性破壊トルクは測定していない。また、これらいずれの比較例20,21でも、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0113】
以上述べた実施例および比較例の結果から、この発明で本体部1を形成する樹脂は、実施例および比較例での測定誤差や製品のばらつきなどを考慮して、日本工業規格で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaであり、かつノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂としたのである。
【符号の説明】
【0114】
1…本体部、 2…円筒部、 3…ブラケット部、 4…貫通孔、 5…カラー、 6…フランジ部、 7…中空部、 8…バルブユニット、 9…ボール、 10…バルブシート、 11…スプリング、 12…ワッシャ、 13…段差部、 14…支柱部、 15a,15b…ノズル、 16a,16b…金属製のパイプ、 17…フランジ部、 18…平坦面、 21…試験片、 22…金属パイプ、 23…フランジ部、 24…ネジ、 25…バイス、 26…バイスプライヤー、 31…樹脂試験片、 32…シャフト、 33…凹部、 41…ナット、 42…デジタルトルクレンチ(KTC GWC3−030)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レシプロエンジンのピストンをその内部から冷却するためにオイルを噴射するオイルジェットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レシプロエンジンは、熱エネルギを機械的エネルギに変換する動力機械であるから、そのピストンは高温に曝される。そこで従来、ピストンの背面側すなわち、燃焼室とは反対側に冷却用のオイルを吹き付けて、潤滑と併せて冷却を行うように構成しており、そのための装置としてオイルジェットが知られている。オイルジェットは、エンジンブロックの内部に取り付けられ、逆止弁とノズルとを備えた部品であり、エンジンブロックに形成されている油路の油圧が高くなることにより逆止弁が押し開かれ、そのオイルがノズルからピストンの背面側の部分に吹き付けられるように構成されている。このようなオイルジェットの例が特許文献1ないし4に記載されている。
【0003】
オイルジェットは、上記のようにエンジンブロックの内部に取り付けられ、その環境が過酷であるから、従来一般には、金属製とされている。例えば上記の特許文献1ないし4に記載されているオイルジェットは、逆止弁を内蔵しているいわゆる本体部分とノズルとを別部品として製造し、そのノズルを本体部分に組み付けるように構成されている。特に特許文献1または2に記載されたオイルジェットは、ノズルを本体部分に圧入するように構成して、ロー付けを解消するようにしている。
【0004】
なお、エンジン部品は、上記のように、金属製とするのが一般的であるが、最近では部分的に合成樹脂を併用することも行われるようになってきており、その樹脂として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、各種のナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)などが特許文献5ないし11に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291904号公報
【特許文献2】特開2006−291899号公報
【特許文献3】特開2007−182819号公報
【特許文献4】特開2008−202418号公報
【特許文献5】特開2006−161563号公報
【特許文献6】特開2005−337190号公報
【特許文献7】特開2006−70154号公報
【特許文献8】特許第4204425号公報
【特許文献9】国際公開WO2007/099968号パンフレット
【特許文献10】特開2005−60529号公報
【特許文献11】特開2005−140062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1ないし5に記載されているように、従来のオイルジェットはその全体が金属によって構成されているので、重量が重く、エンジンあるいはこれを搭載する車両を軽量化し、ひいては燃費を向上させるためには未だ改良の余地があった。また、エンジン部品に使用することのできる合成樹脂が特許文献5ないし11に記載されているが、これらの樹脂をエンジン部品の一例であるオイルジェットに用いるとしても、その使用する部位、使用の態様もしくは形態、材質など、従来知られていない課題が多く存在し、従来では実用に供し得るものが提供されていないのが実情である。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、少なくとも一部の合成樹脂化を可能にし、ひいては軽量でしかも製造性に優れ、さらには金属製ノズルの圧入箇所の油漏れ防止、オイルジェットノズルからピストンに正確に当たるようにオイルが噴出される的あて精度を向上するなどの特性に優れたオイルジェットを提供すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ピストンを備えたエンジンブロックの内部に取り付けられる本体部と、その本体部に内蔵されるとともに前記エンジンブロックに形成されている油路を開閉する逆止弁と、前記本体部から前記ピストンの背面に向けて延びるとともに前記逆止弁が開くことにより前記油路から供給されたオイルを前記ピストンの背面に向けて噴射するノズルとを備えたピストン冷却用オイルジェットにおいて、前記本体部が合成樹脂によって形成されるとともに、その本体部を前記エンジンブロックに固定するためのボルトを挿通する環状の金属製カラーが前記本体部にインサート成形により一体化され、前記合成樹脂製の本体部に金属製の前記逆止弁が挿入されて固定され、前記本体部のうち前記逆止弁が挿入されている中空部に前記ノズルが開口するように前記ノズルの一端部が前記本体部にインサート成形により一体化されており、かつ前記合成樹脂は、日本工業規格で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaで、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記合成樹脂は、無機物を配合した強化プラスチックを含むことを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記強化プラスチックは、前記無機物として、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化チタンのいずれか一種、もしくは二種類以上が配合されていることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記繊維強化プラスチックは、ガラス繊維を15〜45質量%含有していることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記カラーおよび/またはノズルは、前記本体部に埋め込まれている部分の外周部に、本体部を形成している樹脂に向けて突き出た回り止め部を備えていることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記回り止め部は、断面形状が楕円形をなす部分を含むことを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記断面形状が楕円形をなす部分は、前記カラーおよび/または前記ノズルに形成されている楕円形フランジ部を含むことを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明において、前記中空部は、前記ノズルの開口端面と面一に一致する平坦な内面を備えていることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれかのピストン冷却用オイルジェットを製造する方法であって、前記本体部を前記合成樹脂を使用して射出成形する際に、真っ直ぐなノズル用金属管の一方の端部をその本体部にインサート成形して該ノズル用金属管を本体部に一体化させ、前記本体部の形成後に前記ノズル用金属管を所定角度に曲げ加工することにより前記ノズルとすることを特徴とする方法である。
【0017】
請求項10の発明は、請求項1ないし8のいずれかのピストン冷却用オイルジェットを製造する方法であって、前記本体部を前記合成樹脂を使用して射出成形する際に、曲げ加工したノズル用金属管の端部をその本体部にインサート成形して該ノズル用金属管を本体部に一体化させることを特徴とする方法である。
【0018】
請求項11の発明は、ピストンを備えたエンジンブロックの内部に取り付けられる本体部と、その本体部に内蔵されるとともに前記エンジンブロックに形成されている油路を開閉する逆止弁と、前記本体部から前記ピストンの背面に向けて延びるとともに前記逆止弁が開くことにより前記油路から供給されたオイルを前記ピストンの背面に向けて噴射するノズルとを備えたピストン冷却用オイルジェットにおいて、前記本体部が合成樹脂によって形成されるとともに、その本体部を前記エンジンブロックに固定するためのボルトを挿通する環状の金属製カラーが前記本体部にインサート成形により一体化され、前記合成樹脂製の本体部に金属製の前記逆止弁が挿入されて固定され、前記本体部のうち前記逆止弁が挿入されている中空部に前記ノズルが開口するように前記ノズルの一端部が前記本体部にインサート成形により一体化されており、かつ前記合成樹脂および前記金属は、該金属製のパイプを前記合成樹脂にインサート成形した後にこれら金属製パイプと合成樹脂との間に捩りトルクを与えてこれら金属製パイプと合成樹脂との間に密着状態が破壊される密着性破壊トルクが5N・m以上となる合成樹脂および金属であることを特徴とするピストン冷却用オイルジェットである。
【発明の効果】
【0019】
この発明のオイルジェットによれば、本体部が合成樹脂によって形成されているので、全体としての重量を軽減でき、しかもボルトによってエンジンブロックに固定するための部分が金属製カラーによって形成されているので、エンジンブロックに対する固定強度を充分大きくすることができる。また、オイルを噴射するノズルが金属製のパイプによって形成されているので、その耐久性が充分良好になる。そして、これらのカラーおよびノズルがインサート成形によって本体部に一体化されているので、製造性の良好なオイルジェットとすることができる。
【0020】
さらに、この発明のオイルジェットにおいては、本体部を形成している合成樹脂が上記のように特定されていることにより、射出成形による成形性が良好であるだけでなく、エンジンブロックの内部で高温に曝されても、また高温のエンジンオイルが付着しても劣化しにくく、また加熱・冷却を繰り返し受けても亀裂が生じるなどのことがなく、また激しい振動および衝撃力ならびに圧力を受けたとしても、インサート部にガタツキやクラックが発生することなく金属部と樹脂部との密着性が良い。総じて、全体を金属製としたオイルジェットと比較して遜色のない耐久性を示し、充分実用に耐え得るものとすることができる。
【0021】
特に、請求項2ないし請求項4に記載してあるように、無機物を配合した強化プラスチックによって本体部を形成することにより、より軽量で強度あるいは耐久性に優れたオイルジェットを得ることができる。
【0022】
また、請求項5ないし7の発明によれば、本体部とカラーおよびノズルとをより強固に一体化することができ、その結果、オイルジェットの使用中にその取付姿勢やノズルの向きが変化するなどの事態を未然に防止することができる。
【0023】
さらに、請求項8の発明によれば、本体部の射出成形時にノズルの開口端を成形型によって封止することが可能になり、その結果、その開口端を封止する特別な作業が必要ではなくなるから、製造性を向上させることができる。
【0024】
そして、請求項9の発明に係る方法によれば、本体部に対してノズル用金属管をインサート形成する場合、ノズル用金属管は真っ直ぐなパイプであるから、その中心軸線を中心とした回転方向の姿勢は特に限定されず、製造時におけるノズル用金属管の設置作業が容易になり、しかも本体部の成形完了後にその金属管を曲げてノズルとするので、ノズルを目標とする向きに正確に向けることができる。いわゆる的当て性に優れたオイルジェットを容易に製造することができる。
【0025】
そして、請求項10の発明によれば、本体部に対して設計上定められている方向および角度に曲げ加工したノズル用金属管をインサート成形する場合、金属に対して密着性のよい樹脂を使用して成形するため、成形後に微調整を行うことが可能である。
【0026】
請求項11の発明によれば、本体部が合成樹脂によって形成されているので、全体としての重量を軽減でき、しかもボルトによってエンジンブロックに固定するための部分が金属製カラーによって形成されているので、エンジンブロックに対する固定強度を充分大きくすることができる。また、オイルを噴射するノズルが金属製のパイプによって形成されているので、その耐久性が充分良好になる。そして、これらのカラーおよびノズルがインサート成形によって本体部に一体化されているので、製造性の良好なオイルジェットとすることができる。しかも、オイルジェットの使用中にノズルの向きが変化するなどのことがなく、いわゆる的当て性の良好なピストン冷却用オイルジェットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係るオイルジェットを一部破断して示す斜視図である。
【図2】その金属製カラーの一例を示す斜視図である。
【図3】そのノズル用の金属製パイプの一例を示す斜視図である。
【図4】カラーと金属製パイプとをインサート成形した本体部を、一部破断して示す斜視図である。
【図5】その本体部に形成されている中空部を示す部分的な斜視図である。
【図6】この発明に係るオイルジェットを一部破断して示す分解斜視図である。
【図7】曲げ試験に供される供試体を模式的に示す図である。
【図8】曲げ試験の方法を説明するための図である。
【図9】油漏れ試験に供される供試体およびその試験方法を説明するための模式図である。
【図10】密着性破壊トルクを測定する方法を説明するための模式図である。
【図11A】この発明の実施例1ないし5についての試験結果および測定結果をまとめて示す図表である。
【図11B】この発明の実施例6ないし15についての試験結果および測定結果をまとめて示す図表である。
【図12A】参考例および比較例1ないし10についての試験結果および測定結果をまとめて示す図表である。
【図12B】比較例11ないし21についての試験結果および測定結果をまとめて示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
つぎに、この発明をより具体的に説明する。この発明に係るオイルジェットは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのレシプロエンジンにおけるピストンの背面側(燃焼室とは反対側)にオイルを噴射してピストンおよびエンジン摺動壁、その周辺の内壁を冷却するためのエンジン部品である。したがって、ピストンに向けてオイルを噴射する一本もしくは複数本のノズルと、そのノズルを保持するとともにノズルをエンジンブロックの油路に連通させる本体部とを備えている。そして、その本体部には、油路を開閉する逆止弁が内蔵されている。この発明に係るオイルジェットは、その本体部が合成樹脂によって形成されており、その一例を図1に示してある。
【0029】
図1における符号1は本体部を示し、底が閉じられている円筒部2と、その円筒部2から半径方向で外側に延びた平板上のブラケット部3とを有している。そのブラケット部3は、図示しないエンジンブロックに固定するための部分であり、ボルト(図示せず)を挿入するための貫通孔4が形成されている。その貫通孔4は、金属製のカラー5に形成され、そのカラー5を本体部1におけるブラケット部3に一体化することにより、ブラケット部3に貫通孔4が設けられている。
【0030】
前記カラー5の一例を図2に示してあり、このカラー5はその全体が金属製であって、貫通孔4が形成されている環状の部分の外周面に輪郭が楕円形状をなすフランジ部6が一体に形成されている。上記の本体部1は一例として射出成形によって製造され、カラー5はその射出成形の際に本体部1にインサートされる。したがってフランジ部6は、カラー5の本体部1からの抜け止め、および/または回り止めを行うために設けられた部分である。このような機能は、カラー5から突出して本体部1(ブラケット部3)に埋設される部分によっても得られるので、フランジ部6に替えて突起部を設けてもよい。
【0031】
円筒部2は、エンジンブロックの油路から供給されるオイルを流す部分であって、その円筒部2の内部に形成されている中空部7にバルブユニット8が配置されている。このバルブユニット8は供給されるオイルの圧力によって開く逆止弁であって、金属製のボール9を弁体として備えている。このボール9は円筒状をなすバルブシート10の内部に収納されている。バルブシート10は、ボール9を保持するとともに弁座を構成する部材であって、所定の強度および耐摩耗性を維持するために金属によって構成されており、内径がボール9の外径とほぼ等しく、あるいはボール9の外径より僅かに大きく、一方の開口端(図1における上側の開口端)の内径がボール9の外径より小さくなっている円筒状の部材である。このように内径が小さくなっている部分にボール9が接触することにより開口端が閉じられるようになっており、したがってそのボール9が接触する内周部が弁座を形成している。
【0032】
ボール9を上記の弁座に押し付けるスプリング11が設けられている。このスプリング11は図に示す例では金属製のコイルスプリングによって構成されており、前記中空部7の底面上に配置された金属製のワッシャ12とボール9との間に配置されて、ボール9を前述した弁座に押し付けている。上記のバルブシート10は、前記中空部7の開口端側から挿入され、その状態で円筒部2の開口端を加熱して内周側にカシメることにより、中空部7の内部に固定されている。なお、バルブシート10の図1での上下方向での位置を決めるために、中空部の内周面には、バルブシート10の図1での下端部を載せる段差部13が形成され、その段差部13と前記カシメた部分との間にバルブシート10が挟み込まれて固定されている。
【0033】
さらに、スプリング11の位置ずれを防ぐために、中空部7の底面の中心部から突出した(立ち上がった)支柱部14が設けられている。この支柱部14は本体部1の射出成形の際に同時に形成される樹脂製の部分であって、上記のスプリング11およびワッシャ12の内径より小さい外径の円柱状の部分である。したがってワッシャ12およびスプリング11はその支柱部14に嵌め込まれることにより、半径方向へのズレが生じないように保持されている。なお、支柱部14の長さは、弁座に押し付けられているボール9から僅かに離れる程度の長さに設定されており、したがって支柱部14はボール9が弁座から離れて開弁動作を可能にするとともに、弁座から離れたボール9を当接させてその下限位置を規定するように構成されている。
【0034】
図1に示す例では、二本のノズル15a,15bが設けられている。これらのノズル15a,15bは金属製のパイプ16a,16bを本体部1にインサート成形して構成されている。そのパイプ16a,16bの一例を図3に示してあり、ここに示すパイプ16a,16bは真っ直ぐな円筒管であり、その一端部、より具体的には前述した本体部1に埋設される端部には、輪郭が楕円形をなすフランジ部17が形成されている。ノズル15a,15bは本体部1にインサート成形によって一体化されるものであるから、フランジ部17は、ノズル15a,15bの本体部1からの抜け止め、および回り止めを行うために設けられた部分である。このような機能は、ノズル15a,15bから突出して本体部1に埋設される部分によっても得られるので、フランジ部17に替えて突起部を設けてもよい。
【0035】
また、ノズル15a,15bは、設計上定められた方向および角度に曲げ加工したパイプ16a,16bをインサート成形により本体部に一体化し、その後、曲げ角度や向きを微調整することとしてもよい。
【0036】
上記のパイプ16a,16bは一方の端部が前述した本体部1に形成されている中空部7の内面に面一に一致し、かつ中空部7に開口した状態で本体部1に一体化されている。そして、パイプ16a,16bの一旦面が平坦面として形成されていることに合わせて、前記中空部7の内面の少なくとも一部が平坦面18となっている。すなわち、中空部7のうち前記バルブシート10を嵌め込む部分は円筒状に形成されているのに対して、パイプ16a,16b(ノズル15a,15b)を開口させる部分は、図4および図5に示すように、断面が矩形をなす方形中空状に形成されている。これは、パイプ16a,16b(ノズル15a,15b)の開口端を、容易に、中空部7の内面に面一に一致させるための構成である。すなわち、中空部7を形成するための成形型(図示せず)にパイプ16a,16bの一端部を突き当て、その状態で本体部1の射出成形を行えば、樹脂がパイプ16a,16bの開口端に侵入することなく本体部1の射出成形を行うことができる。
【0037】
したがって、ノズル15a,15bは、前述したカラー5と共に各パイプ16a,16bを本体部1にインサート成形し、その後、各パイプ16a,16bを設計上定められている方向および角度に曲げることにより構成される。なお、予め所定の角度に曲げ加工されたパイプ16a,16bを使用した場合には、本体部1にインサート成形した後にノズル15a,15bの向きを必要に応じて微調整する。
【0038】
一方、前述したバルブユニット8は、図6に示すように、ノズル15a,15bが一体化されている本体部1における中空部7に、前記ワッシャ12およびスプリング11ならびにボール9およびバルブシート10を順に挿入し、その後、円筒部2の図における上端部を熱カシメすることにより、本体部1に組み付けられる。
【0039】
ここで、この発明における本体部1を構成する合成樹脂について説明する。この発明で対象とするオイルジェットは、エンジンブロックの内部に取り付けられ、高温のオイルに曝され、また激しい振動および衝撃力ならびに圧力を受けるから、本体部1はこのような過酷な状況下で必要な強度および耐久性を維持する必要がある。そのため、この発明における本体部1を形成する合成樹脂は、荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaで、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂である。
【0040】
ここで、ナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂に特定した理由は、射出成形特性および振動耐久特性が共に良好で、しかも長時間高温に曝された場合の形状安定性が優れているからである。特に、本体部1から突出させてあるノズル15a,15bの向きが長期に亘って変化しない形状安定性に優れているからである。また、ナイロンについてはジアミンとフタル酸の共重合体が上記物性に優れている。
【0041】
また、荷重たわみ温度とは、日本工業規格(JIS K7139)で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる温度である。この荷重たわみ温度が250℃〜400℃としたのは、250℃より低温であると、エンジンブロックに取り付けて高温に曝された場合にたわみが生じ、所期の形状を維持できなくなるからである。また、400℃より高いと、成形加工性(射出成形性)が悪くなるからである。
【0042】
さらに、上記の曲げ弾性率は、日本工業規格(JIS K7139)で規定されている多目的試験片A型を支点間距離64mmで支持するとともに160℃に維持し、これを曲げ速度2mm/minで曲げた場合の弾性率である。この曲げ弾性率を8000MPa〜15000MPaとしたのは、8000MPaより低いと、振動により変形してしまい、また摩擦によって樹脂のカスが生じてしまうからである。反対に、15000MPaより高いと、脆くなって振動による亀裂が生じたり、破損したりする可能性が高くなるからである。
【0043】
またさらに、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは、日本工業規格(JIS K7139)で規定されている多目的試験片A型に深さ2mm、開き角度45°のノッチを機械加工し、これを固定間距離62mmで支持してシャルピー試練を行って測定したものである。このシャルピー衝撃強さを5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2としたのは、15.0kJ/m2より高いと、振動により変形してしまい、また摩擦によって樹脂のカスが生じてしまうからである。反対に、5.0kJ/m2より低いと、脆くなって振動による亀裂が生じたり、破損したりする可能性が高くなるからである。
【0044】
さらに、この発明に係るオイルジェットの本体部1を形成する合成樹脂は、無機物を配合した強化プラスチックであってよい。その無機物として、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化チタンのいずれか一種、もしくは二種類以上を配合することができる。また、その補強繊維は、カーボンやガラスなどであってよく、また混合量は、実験などに基づいて適宜に決めてよい。例えば30質量%程度混合することができる。さらに、この発明に係るオイルジェットの本体部1を形成する合成樹脂は、下記の熱老化試験およびサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル性試験の結果が予め定めた基準値以上となる樹脂であることが好ましい。
【0045】
その熱老化試験は、上述した多目的試験片A型を160℃に設定した恒温槽に3000時間安置し、その後の引っ張り強度および曲げ弾性率を測定し、それらの測定値の加熱前からの変化を求める試験である。この発明では、その基準値を80%とし、加熱処理後の各測定値が、加熱前の各測定値の80%以上であることを要件とする。
【0046】
また、サーマルショック試験は、上記の多目的試験片A型を、−30℃の環境下に30分間安置し、その後、150℃の環境下に30分間安置する60分間の操作を1サイクルとし、これを3000サイクル行い、その後に測定した引っ張り強度および曲げ弾性率を、冷却・加熱サイクルを施す前の各測定値と比較する試験である。この発明では、その基準値を80%とし、冷却・加熱処理後の各測定値が、処理前の各測定値の80%以上であることを要件とする。
【0047】
さらに、耐エンジンオイル性試験は、上記の多目的試験片A型を耐圧容器内のエンジンオイル(例えばトヨタ純正エンジンオイルSM 5W-30)に浸漬し、これを密閉して160℃のオーブンに3000時間安置することにより、浸漬処理を行い、その後に引っ張り強度および曲げ弾性率を測定するとともに、未処理の試験片についての各測定値と比較する試験である。この発明では、その基準値を80%とし、処理後の各測定値が、処理前の各測定値の80%以上であることを要件とする。
【0048】
上述したオイルジェットは、前記カラー5にボルトを挿入するとともにそのボルトをエンジンブロックの所定箇所にねじ込むことによりエンジンブロックに固定される。その場合、ボルトを締め込むことによる荷重はカラー5に作用し、合成樹脂製の本体部1もしくはブラケット部3には作用しないので、樹脂の変形などが生じることはない。こうしてエンジンブロックに取り付けられた本体部1から突き出ている円筒部2が、エンジンブロックに形成されている油路に差し込まれて中空部7が油路に連通させられる。したがって、油路を介して供給させるオイルの圧力が高くなると、ボール9がスプリング11を圧縮して弁座から離れ、いわゆる開弁する。その結果、オイルが中空部7を介してノズル15a,15bに送られ、それぞれのノズル15a,15bの先端部からピストンの背面に向けてオイルが噴射され、ピストンが冷却される。
【0049】
したがってこの発明に係るオイルジェットによれば、本体部1が合成樹脂によって形成されているので、軽量化を図ることができる。またその本体部1に対するカラー5およびノズル15a,15bの組み付け・一体化は、インサート成形によって行うことができるので、製造工程数を少なくして容易に製造でき、ひいては低コスト化を図ることができる。そして、本体部1を形成する合成樹脂を上記のように特定したことにより、強度および耐久性に優れ、実用に充分耐え得るオイルジェットとすることができる。
【0050】
以下、この発明の効果を確認するために行った実施例1〜15、および比較例1〜21を示す、なお、参考例は、全体を金属製とした現行品である。なお、以下の実施例および比較例で使用したカラー5およびノズル15a,15bは、日本工業規格で規定されるSTKM11Aから形成された金属製のものである。
【実施例1】
【0051】
ガラス繊維を30質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロン(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の共重合体:以下、仮にナイロンCとする)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は10500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは12kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例2】
【0052】
ガラス繊維を30質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロン(ノナンジアミンとテレフタル酸の共重合体:以下、仮にナイロンDとする)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は9000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例3】
【0053】
ガラス繊維を30質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は8500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.5kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例4】
【0054】
ガラス繊維を30質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は315℃、曲げ弾性率は10000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは8.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例5】
【0055】
ガラス繊維を30質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は369℃、曲げ弾性率は12000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは7.5kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例6】
【0056】
ガラス繊維を15質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンCを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は8500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは11kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例7】
【0057】
ガラス繊維を40質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンCを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は13700MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは12kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例8】
【0058】
ガラス繊維を15質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンDを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は260℃、曲げ弾性率は8000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例9】
【0059】
ガラス繊維を40質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンDを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は12000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは15kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例10】
【0060】
ガラス繊維を15質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は8200MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例11】
【0061】
ガラス繊維を40質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は14000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは7.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例12】
【0062】
ガラス繊維を15質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は300℃、曲げ弾性率は9000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは7.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例13】
【0063】
ガラス繊維を40質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は320℃、曲げ弾性率は13000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは9.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例14】
【0064】
ガラス繊維を15質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は360℃、曲げ弾性率は10000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.5kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【実施例15】
【0065】
ガラス繊維を40質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は369℃、曲げ弾性率は15000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例1】
【0066】
ガラス繊維を30質量%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は210℃、曲げ弾性率は6500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10.5kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例2】
【0067】
ガラス繊維を30質量%含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は240℃、曲げ弾性率は9320MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは17.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例3】
【0068】
ガラス繊維を30質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロン(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体:以下、仮にナイロンAとする)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は205℃、曲げ弾性率は8200MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは11.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例4】
【0069】
ガラス繊維を30質量%含有する液晶ポリマー(LCP)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は250℃、曲げ弾性率は1500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは35.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例5】
【0070】
ポリカーボネート(PC)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は132℃、曲げ弾性率は2200MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは89.0kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例6】
【0071】
ポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は435℃、曲げ弾性率は6640MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは39.4kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例7】
【0072】
ガラス繊維を30質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロン(メタキシレンジアミンとアジピン酸の共重合体:以下、仮にナイロンBとする)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は230℃、曲げ弾性率は22000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは6.0kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満となり、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例8】
【0073】
ガラス繊維を50質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は16000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.2kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例9】
【0074】
炭酸カルシウム(CaCO3)粉末を50質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は18000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例10】
【0075】
不飽和エステル樹脂に各種の添加剤が加えられた塊粘土状の熱硬化性樹脂であるBMC(Bulk Molding Compound)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は250℃、曲げ弾性率は11800MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは6.2kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例11】
【0076】
ガラス繊維を5質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンCを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は150℃、曲げ弾性率は6000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例12】
【0077】
ガラス繊維を50質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンCを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は265℃、曲げ弾性率は15300MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは12kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例13】
【0078】
ガラス繊維を5質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンDを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は260℃、曲げ弾性率は7500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは10kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例14】
【0079】
ガラス繊維を50質量%含有する、共縮重合反応により合成されたナイロンDを使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は275℃、曲げ弾性率は14800MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは17kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例15】
【0080】
ガラス繊維を5質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は150℃、曲げ弾性率は5000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは4.0kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例16】
【0081】
ガラス繊維を10質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は250℃、曲げ弾性率は10000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは4.8kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例17】
【0082】
ガラス繊維を50質量%含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は270℃、曲げ弾性率は16000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.2kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例18】
【0083】
ガラス繊維を5質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は200℃、曲げ弾性率は6000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは6.0kJ/m2であった。また、上述したサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していたが、熱老化試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%未満になっており、耐久性の要求を満たしていなかった。
【比較例19】
【0084】
ガラス繊維を50質量%含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は320℃、曲げ弾性率は15500MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは6.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例20】
【0085】
ガラス繊維を5質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は360℃、曲げ弾性率は6000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは5.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【比較例21】
【0086】
ガラス繊維を50質量%含有するポリイミド樹脂(PI)を使用して射出成形により本体部1を形成した。その本体部1を形成する素材の荷重たわみ温度は369℃、曲げ弾性率は25000MPa、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは12.0kJ/m2であった。また、上述した熱老化試験、サーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験を行った後の引っ張り強度および曲げ弾性率は、それらの試験を行わない場合の80%以上を維持していた。
【0087】
上述した実施例1〜15および比較例1〜21について射出成形性、振動耐久特性、曲げ試験、油漏れ試験、密着性破壊トルク(N・m)、吐出油量(L/min)、開弁圧、噴射位置をそれぞれ調べた。射出成形性は、前述した多目的試験片A型が得られるように加工された金型を搭載したニイガタマシンテクノ製の竪型射出成形機(MDVR75型、射出圧75トン、試作金型はサイドゲートで1個取り)を使用した。射出条件として射出成形時の樹脂温度を250〜400℃、金型温度は135〜250℃とし、射出圧力および射出速度を定格の90%、70%で射出成形を行い、成形体の外観を目視で評価した。充填不良やフローマークなどの外観不良が目立つものは「×」、良好であるがフローマークが少し目立つものは「○」、良好は「◎」と評価した。
【0088】
振動耐久特性は、製品を固定させた治具を上下に振動させ、製品の状態を確認した。振動の条件は、振動加速度:294m/s2、周波数:213Hz、振動回数:1.0×107、継続時間3000時間とした。製品にクラックや破損が生じたものは「×」、製品にクラックや破損が生じないものは「○」と評価した。
【0089】
曲げ試験は、評価対象樹脂に一端部をインサート成形したノズル用のパイプを所期の形状に湾曲させることにより、インサート部に樹脂の剛性や樹脂と金属部との密着の度合いによるガタツキやクラックが発生するか否かの試験である。その曲げ試験に供される樹脂の試験片21は図7の(a)に示するように、縦横30mm、厚さ10mmの直方体状である。これに、日本工業規格で規定されているSTKM11Aからなる金属パイプ22の一端部をインサート成形し、その金属パイプをほぼ90°に曲げ加工した。金属パイプ22は図7の(b)および(c)に示すとおりであり、外径4mmおよび内径1.5mmで長さが40mmのパイプの一方の端部から1.5mmの位置に、厚さ1.5mm、長径6.5mm、短径5.5mmの楕円形フランジ部23が形成されており、さらに他方の端部に6mmの長さに亘ってネジ24を加工したものである。上記の金属パイプ22の曲げ加工は、図8に示すように試験片21をバイス25で挟み付けて固定し、その状態で金属パイプ22のネジ24側の端部をバイスプライヤー26で掴んで金属パイプ22に曲げ荷重を掛け、ほぼ90°に湾曲させた。その後に、インサート部のガタツキおよびクラックの有無を手作業および目視観察によって確認した。5個の試験片について同様の試験を行い、ガタツキあるいはクラックの生じている試験片の数を求めた。評価は、1個でもガタツキあるいはクラックが生じた場合には、その樹脂による製品は不合格(NG)とした。
【0090】
油漏れ試験は、ノズルに対する密着の度合いを調べるための試験であり、樹脂と金属パイプとの境界部分に油圧を作用させ、オイルがその境界部分に侵入して他方の端部から漏れ出るか否かを確認することにより行った。具体的には、図9の(a)に示すように、縦横30mmで厚さ20mmの樹脂試験片31に、日本工業規格で規定するSTMK11A製の外径4mm、長さ40mmのシャフト32の一端部を10mmの長さでインサートし、さらに試験片31の前記シャフト32が突出している面とは反対側の面に、内径10mmで深さ10mmの凹部33を形成し、その凹部33にシャフト32の端面を露出させた。なお、シャフト32の表面粗さの最大高さRmax は6.0μmである。そして、図9の(b)に示すように、凹部33に2MPaの圧力でオイルを供給し、シャフト32の外周面側にオイルが染み出たか否かを目視で確認した。5個の試験片について同様の試験を行い、オイルの染み出しが生じた試験片の数を求めた。評価は、1個でも染み出しが生じた場合には、その樹脂による製品は不合格(NG)とした。
【0091】
密着性破壊トルク(N・m)は、樹脂と金属との境界面に剪断荷重を掛けて両者の接合が剥がれる荷重を測定することにより両者の密着の程度を評価するためのものであり、前述した図7の(a)、(b)、(c)に示す供試体22と同材質・同形状の金属パイプ22Aを用意した。なお、金属パイプ22Aは具体的には、STKM11A製とした。そして、図10に示すように、試験片21をバイス25で挟み付けて固定し、その状態で金属パイプ22Aのネジ24にM5のナット41を2つ取付、そのナット41をデジタルトルクレンチ(KTC GWC3−030)42で締め込むことにより、金属パイプ22Aにトルクを作用させ、金属パイプ22Aが試験片21から剥がれるトルクを測定した。5個の試験片について同様の試験を行い、測定された破壊トルクの平均値をその樹脂についての測定値とした。
【0092】
吐出油量は、各実施例および比較例の製品をエンジンブロックに取り付けて120℃のエンジンオイルを2MPaで3000時間流し、その後にノズル15a,15bから吐出されたエンジンオイルの量(L/min)を測定した。それぞれ5個の製品について同様の測定を行い、平均値を求めた。平均吐出油量が1.2±0.2L/min以上であれば、「良」、それ未満であれば、「不可」と判定した。
【0093】
開弁圧は、製品をエンジンブロックに取り付け、120℃のエンジンオイルを流して前記バルブユニット8が開く油圧を測定した。それぞれ5個の製品について同様の試験、測定を行い、180MPa以下では閉弁し、220MPa以上で開弁するか否かを確認した。実施例および比較例の全てが180MPa以下では閉弁し、220MPa以上で開弁した。
【0094】
噴射位置は、ノズル15a,15bの取付姿勢もしくは向きのことであり、その変化の有無を確認する試験を行った。具体的には、それぞれの製品をエンジンブロックに取り付け、取り付け面から100mmの位置に内径10mmの孔の開いた的をセットし、120℃に加温したエンジンオイルを3000時間流した後、ノズル15a,15bから吐出されたオイルがその的の10mmの孔に入るか否かを確認した。それぞれ5個の製品について同様の試験を行い、噴射したオイルが10mmの孔に入らないものがあった場合には、その樹脂による製品は「不可」と評価した。
【0095】
上述した各試験の結果、および測定値ならびに採用の可否を、実施例1〜5については図11Aに図表にまとめて示し、実施例6〜15については図11Bに図表にまとめ示し、参考例および比較例1〜10については図12Aに図表にまとめて示し、さらに比較例11〜21については図12Bに図表にまとめて示してある。
【0096】
図11Aおよび図11Bに示すように、この発明に係る実施例1〜15のいずれのものも、射出成形後にフローマークなどの欠陥が生じておらず、射出成形性が良好であった。また、振動耐久特性を確認するために加振した後にガタツキや亀裂が生じず、これは曲げ試験を行った後であっても同様であった。さらに油漏れ試験によってオイルの浸透あるいは漏れは認められず、また密着性破壊トルクが5N・m以上であって所期どおりに充分大きく、強度上の不都合は認められなかった。また、吐出油量は規定の範囲内に入っており、ノズル15a,15bからの吐出方向にズレが生じていないことにより、充分耐久性に富んでいることが認められた。
【0097】
これに対して、比較例1ないし3では、前述した熱老化試験およびサーマルショック試験ならびに耐エンジンオイル試験の結果が「不可」であり、先ずは、この点で実用に供し得ないものである。このことは、前述した噴射位置の確認で、それぞれ5個の製品に全てでノズルの向きに変動を来たし、オイルが的の孔に入ったものがなったことからも明らかである。また、比較例1では、振動耐久試験で亀裂が生じ、実用に供し得ないことが認められた。さらに、比較例1および2では、上述した曲げ試験および油漏れ試験で合格するものはなかった。なお、これら比較例1および2については、以上の結果から実用に供し得ないものと判断されたので、密着破壊トルクを測定しなかった。また、比較例3で曲げ試験において5個のうち2個にクラックやガタツキが生じ、また油漏れ試験では5個のうち3個に油漏れが生じ、評価は不可となった。
【0098】
また、比較例4は、熱老化試験およびサーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験の結果が「良」であり、また外観に特には不良が認められず射出成形性は良好であったが、振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。さらに、上述した曲げ試験および油漏れ試験で合格するものはなかった。なお、以上の結果から実用に供し得ないものと判断されたので、密着破壊トルクを測定しなかった。また、この比較例4では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0099】
比較例5では、射出成形性の結果が「良」であったが、上記の比較例4と同様に、上述した曲げ試験および油漏れ試験で合格するものはなかった。また、密着破壊トルクを測定しなかった。
【0100】
比較例6では、フローマークなどの外観不良が目立ち射出成形性に劣ることが認められ、また振動耐久試験ではクラックなどが生じ、結果は不合格であった。また、曲げ試験において5個のうち3個にクラックやガタツキが生じ、また油漏れ試験では5個のうち3個に油漏れが生じ、評価は不可となった。さらに、密着性破壊トルクは2.8N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。なお、この比較例6では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0101】
比較例7では、振動耐久特性の結果が不良であり、実用に供し得ないことが認められた。また、曲げ試験において5個のうち2個にクラックやガタツキが生じ、また油漏れ試験では5個のうち2個に油漏れが生じ、評価は不可となった。さらに、密着性破壊トルクは4.6N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。なお、この比較例7では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0102】
比較例8,9では、前述した比較例4と同様に、外観に特には不良が認められず射出成形性は良好であった。しかしながら、振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち3個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは、比較例8で2.2N・mであり、比較例9で1.0N・mであり、いずれも基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0103】
特に比較例8では、ガラス繊維の充填割合が多いことにより、ガラス繊維が配向し、収縮の異方性が現れ、これが要因となって金属と樹脂との間に隙間が生じて密着不良となり、油漏れが生じたものと考えられる。同様に、比較例9で無機物の充填量が多いために、収縮率が低下し、これが要因となって金属と樹脂との密着性が悪化し、その結果、曲げ試験でのクラッチやガタツキ、噴射位置のズレが生じたものと考えられる。
【0104】
これに対して、比較例10では、振動耐久特性が良好であったが、振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち3個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは3.1N・mであり、基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0105】
そして、比較例10は収縮率は金属と同様にほぼゼロであるが、金属との密着性が殆どない。そのため、曲げ試験や油漏れ試験の結果は、上述した比較例8および9と同様の結果となっている。
【0106】
比較例11では、前述した比較例7とほぼ同様の結果が得られ、実用には供し得ないものであることが認められた。すなわち、サーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験ならびに射出成形性が良好であることが認められたが、熱老化試験および振動耐久特性の結果が不良であり、実用に供し得ないことが認められた。また、曲げ試験において5個の全てでクラックやガタツキが生じ、また油漏れ試験では5個のうち2個に油漏れが生じ、評価は不可となった。さらに、密着性破壊トルクは4.5N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0107】
比較例12,13,14について結果は、前述した比較例8あるいは比較例9での結果とほぼ同様になった。すなわち、熱老化試験およびサーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験の結果が「良」であり、また外観に特には不良が認められず射出成形性は良好であった。しかしながら、これらいずれの比較例12,13,14においても振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち3個(比較例12および比較例14)もしくは2個(比較例13)で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは、比較例12,14については上記の結果が認められたことにより測定しておらず、また比較例13で4.0N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。なお、これら比較例12,13,14では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0108】
比較例15では、前述した比較例8と比べると熱老化試験の結果を除いて、ほぼ同様な結果となった。すなわち、サーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験および射出成形性の結果は「良」であったが、熱老化試験の結果が不良で、また振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち3個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは3.5N・mであり、基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0109】
比較例16および比較例17では、上記の比較例14とほぼ同様の結果となり、実用に供し得ないものであることが認められた。すなわち、熱老化試験およびサーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験の結果が「良」であり、また外観に特には不良が認められず射出成形性は良好であった。しかしながら、これらいずれの比較例16,17においても振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち2個(比較例16)もしくは3個(比較例17)で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは、比較例16で4.6N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められ、比較例17については密着性破壊トルクを測定していない。なお、これら比較例16,17では、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0110】
比較例18では、上記の比較例15とほぼ同様の結果となり、実用の供し得ないことが認められた。すなわち、サーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験および射出成形性の結果は「良」であったが、熱老化試験の結果が不良で、また振動耐久特性が不十分であり、実用には供し得ないものであることが認められた。また、上述した曲げ試験で合格するものはなく、また油漏れ試験では、5個のうち2個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。さらに、密着性破壊トルクは4.8N・mであり、基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性に劣ることが認められた。
【0111】
そして、比較例19では、比較例18と比べて熱老化試験の結果が改善されるものの、結局は、実用に供し得ないものであることが認められた。すなわち、振動耐久特性が不十分であり、また上述した曲げ試験で合格するものはないうえに、油漏れ試験では、5個のうち3個で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。このような結果から、密着性破壊トルクは測定していない。なお、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0112】
さらに、比較例20および比較例21では、比較例19に類似した結果となり、実用に供し得ないものであることが認められた。すなわち、熱老化試験およびサーマルショック試験ならび耐エンジンオイル性試験の各結果、および射出成形性が良好であることが認められたが、振動耐久特性が不十分であり、また上述した曲げ試験で合格するものはないうえに、油漏れ試験では、5個のうち2個(比較例20)もしくは3個(比較例21)で油漏れが生じ、試験結果は不可であった。そして、比較例20での密着性破壊トルクは3.3N・mであって基準値を下回り、本体部とノズルとの密着性が不十分であることが認められた。なお、比較例21については上述した結果が得られていることによる密着性破壊トルクは測定していない。また、これらいずれの比較例20,21でも、噴射位置のズレは認められず、5個の供試体の全てで、ノズルから噴射したオイルが的の孔に入っていた。
【0113】
以上述べた実施例および比較例の結果から、この発明で本体部1を形成する樹脂は、実施例および比較例での測定誤差や製品のばらつきなどを考慮して、日本工業規格で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaであり、かつノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂としたのである。
【符号の説明】
【0114】
1…本体部、 2…円筒部、 3…ブラケット部、 4…貫通孔、 5…カラー、 6…フランジ部、 7…中空部、 8…バルブユニット、 9…ボール、 10…バルブシート、 11…スプリング、 12…ワッシャ、 13…段差部、 14…支柱部、 15a,15b…ノズル、 16a,16b…金属製のパイプ、 17…フランジ部、 18…平坦面、 21…試験片、 22…金属パイプ、 23…フランジ部、 24…ネジ、 25…バイス、 26…バイスプライヤー、 31…樹脂試験片、 32…シャフト、 33…凹部、 41…ナット、 42…デジタルトルクレンチ(KTC GWC3−030)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを備えたエンジンブロックの内部に取り付けられる本体部と、その本体部に内蔵されるとともに前記エンジンブロックに形成されている油路を開閉する逆止弁と、前記本体部から前記ピストンの背面に向けて延びるとともに前記逆止弁が開くことにより前記油路から供給されたオイルを前記ピストンの背面に向けて噴射する金属製のノズルとを備えたピストン冷却用オイルジェットにおいて、
前記本体部が合成樹脂によって形成されるとともに、
その本体部を前記エンジンブロックに固定するためのボルトを挿通する環状の金属製カラーが前記本体部にインサート成形により一体化され、
前記合成樹脂製の本体部に金属製の前記逆止弁が挿入されて固定され、
前記本体部のうち前記逆止弁が挿入されている中空部に前記ノズルが開口するように前記ノズルの一端部が前記本体部にインサート成形により一体化されており、かつ
前記合成樹脂は、日本工業規格で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaで、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂であること
を特徴とするピストン冷却用オイルジェット。
【請求項2】
前記合成樹脂は、無機物を配合した強化プラスチックを含むことを特徴とする請求項1に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項3】
前記強化プラスチックは、前記無機物として、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化チタンのいずれか一種、もしくは二種類以上が配合されていることを特徴とする請求項2に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項4】
前記強化プラスチックは、ガラス繊維を15〜45質量%含有していることを特徴とする請求項2に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項5】
前記カラーおよび/またはノズルは、前記本体部に埋め込まれている部分の外周部に、本体部を形成している樹脂に向けて突き出た回り止め部を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項6】
前記回り止め部は、断面形状が楕円形をなす部分を含むことを特徴とする請求項5に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項7】
前記断面形状が楕円形をなす部分は、前記断面形状が楕円形をなす部分は、前記カラーおよび/または前記ノズルに形成されている楕円形フランジ部を含むことを特徴とする請求項6に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項8】
前記中空部は、前記ノズルの開口端面と面一に一致する平坦な内面を備えていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項9】
前記本体部を前記合成樹脂を使用して射出成形する際に、真っ直ぐなノズル用金属管の一方の端部をその本体部にインサート成形して該ノズル用金属管を本体部に一体化させ、前記本体部の形成後に前記ノズル用金属管を所定角度に曲げ加工することにより前記ノズルとすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のピストン冷却用オイルジェットを製造する方法。
【請求項10】
前記本体部を前記合成樹脂を使用して射出成形する際に、曲げ加工したノズル用金属管の端部をその本体部にインサート成形して該ノズル用金属管を本体部に一体化させることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のピストン冷却用オイルジェットを製造する方法。
【請求項11】
ピストンを備えたエンジンブロックの内部に取り付けられる本体部と、その本体部に内蔵されるとともに前記エンジンブロックに形成されている油路を開閉する逆止弁と、前記本体部から前記ピストンの背面に向けて延びるとともに前記逆止弁が開くことにより前記油路から供給されたオイルを前記ピストンの背面に向けて噴射するノズルとを備えたピストン冷却用オイルジェットにおいて、
前記本体部が合成樹脂によって形成されるとともに、
その本体部を前記エンジンブロックに固定するためのボルトを挿通する環状の金属製カラーが前記本体部にインサート成形により一体化され、
前記合成樹脂製の本体部に金属製の前記逆止弁が挿入されて固定され、
前記本体部のうち前記逆止弁が挿入されている中空部に前記ノズルが開口するように前記ノズルの一端部が前記本体部にインサート成形により一体化されており、かつ
前記合成樹脂および前記金属は、該金属製のパイプを前記合成樹脂にインサート成形した後にこれら金属製パイプと合成樹脂との間に捩りトルクを与えてこれら金属製パイプと合成樹脂との間に密着状態が破壊される密着性破壊トルクが5N・m以上となる合成樹脂および金属である
ことを特徴とするピストン冷却用オイルジェット。
【請求項1】
ピストンを備えたエンジンブロックの内部に取り付けられる本体部と、その本体部に内蔵されるとともに前記エンジンブロックに形成されている油路を開閉する逆止弁と、前記本体部から前記ピストンの背面に向けて延びるとともに前記逆止弁が開くことにより前記油路から供給されたオイルを前記ピストンの背面に向けて噴射する金属製のノズルとを備えたピストン冷却用オイルジェットにおいて、
前記本体部が合成樹脂によって形成されるとともに、
その本体部を前記エンジンブロックに固定するためのボルトを挿通する環状の金属製カラーが前記本体部にインサート成形により一体化され、
前記合成樹脂製の本体部に金属製の前記逆止弁が挿入されて固定され、
前記本体部のうち前記逆止弁が挿入されている中空部に前記ノズルが開口するように前記ノズルの一端部が前記本体部にインサート成形により一体化されており、かつ
前記合成樹脂は、日本工業規格で規定されている多目的試験片A型に1.8MPaの荷重を掛けて温度を変化させた場合のたわみが一定になる荷重たわみ温度が250℃〜400℃で、かつ160℃での曲げ弾性率が8000MPa〜15000MPaで、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5.0kJ/m2〜15.0kJ/m2となるナイロンとポリフェニレンサルファイドとポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとのいずれかの樹脂であること
を特徴とするピストン冷却用オイルジェット。
【請求項2】
前記合成樹脂は、無機物を配合した強化プラスチックを含むことを特徴とする請求項1に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項3】
前記強化プラスチックは、前記無機物として、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化チタンのいずれか一種、もしくは二種類以上が配合されていることを特徴とする請求項2に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項4】
前記強化プラスチックは、ガラス繊維を15〜45質量%含有していることを特徴とする請求項2に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項5】
前記カラーおよび/またはノズルは、前記本体部に埋め込まれている部分の外周部に、本体部を形成している樹脂に向けて突き出た回り止め部を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項6】
前記回り止め部は、断面形状が楕円形をなす部分を含むことを特徴とする請求項5に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項7】
前記断面形状が楕円形をなす部分は、前記断面形状が楕円形をなす部分は、前記カラーおよび/または前記ノズルに形成されている楕円形フランジ部を含むことを特徴とする請求項6に記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項8】
前記中空部は、前記ノズルの開口端面と面一に一致する平坦な内面を備えていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のピストン冷却用オイルジェット。
【請求項9】
前記本体部を前記合成樹脂を使用して射出成形する際に、真っ直ぐなノズル用金属管の一方の端部をその本体部にインサート成形して該ノズル用金属管を本体部に一体化させ、前記本体部の形成後に前記ノズル用金属管を所定角度に曲げ加工することにより前記ノズルとすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のピストン冷却用オイルジェットを製造する方法。
【請求項10】
前記本体部を前記合成樹脂を使用して射出成形する際に、曲げ加工したノズル用金属管の端部をその本体部にインサート成形して該ノズル用金属管を本体部に一体化させることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のピストン冷却用オイルジェットを製造する方法。
【請求項11】
ピストンを備えたエンジンブロックの内部に取り付けられる本体部と、その本体部に内蔵されるとともに前記エンジンブロックに形成されている油路を開閉する逆止弁と、前記本体部から前記ピストンの背面に向けて延びるとともに前記逆止弁が開くことにより前記油路から供給されたオイルを前記ピストンの背面に向けて噴射するノズルとを備えたピストン冷却用オイルジェットにおいて、
前記本体部が合成樹脂によって形成されるとともに、
その本体部を前記エンジンブロックに固定するためのボルトを挿通する環状の金属製カラーが前記本体部にインサート成形により一体化され、
前記合成樹脂製の本体部に金属製の前記逆止弁が挿入されて固定され、
前記本体部のうち前記逆止弁が挿入されている中空部に前記ノズルが開口するように前記ノズルの一端部が前記本体部にインサート成形により一体化されており、かつ
前記合成樹脂および前記金属は、該金属製のパイプを前記合成樹脂にインサート成形した後にこれら金属製パイプと合成樹脂との間に捩りトルクを与えてこれら金属製パイプと合成樹脂との間に密着状態が破壊される密着性破壊トルクが5N・m以上となる合成樹脂および金属である
ことを特徴とするピストン冷却用オイルジェット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【公開番号】特開2011−94519(P2011−94519A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248204(P2009−248204)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【出願人】(593146017)光精工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【出願人】(593146017)光精工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]