説明

ピストン弁装置及びピストン弁装置の駆動方法

【課題】圧縮空気を用いて配管内の流体の流通を制御するピストン弁装置において、ピストン往復動制御用の電磁弁からシリンダ蓋までの長い空気用配管を不要にし、施工や保守性に優れ低コストで、かつ制御応答性に優れたピストン弁装置及びピストン弁装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】バルブ本体40に連結されたヨーク50の開口部端面と、内周面がピストン摺動面に形成されたシリンダ蓋60の開口部端面とが連結されたピストンケーシングを備え、ピストン摺動面に嵌合されたピストン10に、ヨーク内で軸方向に往復動可能に支持されるとともにその先端に弁体30を有するステム20が連結され、圧縮空気を用いて駆動されるピストンによるステムの往復動により、弁体の操作が行われるピストン弁装置の、シリンダ蓋の外側一面に、圧縮空気を切替制御する電磁弁300を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気を用いて弁の開閉制御を行うピストン弁装置、及びピストン弁装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫機は、上下の金型と、流体の供給・排出によって拡縮するブラダーを備え、金型の内部に収納した生タイヤの内面に、流体の供給によって膨張したブラダーを押し付けることで、生タイヤを加硫成形するようになっている。
【0003】
タイヤ加硫機において使用される流体としては、高温・高圧の蒸気、窒素ガス、蒸気と窒素ガスの混合気体等があり、かかるタイヤ加硫機の配管部には、圧縮空気を用いて配管内の流体の流通を制御するピストン弁装置が広く使用されている。
【0004】
ピストン弁装置は、ピストンに連設されたステムの下端に弁体が取り付けられ、空気圧とスプリングによるピストンの上下動に連動して弁体を上下動させ、弁装置本体の内部に形成された複数の流路の切替制御をおこなうように構成されている。ピストンを下方移動させる空気は、空気流通を制御する電磁弁と、電磁弁に接続された配管を通じて、弁装置本体上部に連結されたヨークに係合するシリンダ蓋の頂上部に設けられた空気流入口から流入させられる(特許文献1参照:特開平8−14410)。
【0005】
しかるに、バルブユニットを構成する複数の弁装置は、上述したように、空気駆動方式のピストン弁であり、駆動に高圧空気を用いることから、制御用の電磁弁からシリンダ蓋までの長い空気用配管を必要としている。また、空気用配管として、通常は銅配管を用いることから、その施工や保守に多大な費用を必要とする。更に、タイヤ加硫機に必要に応じて供給される流体及び排出される流体は、その種類や、温度、圧力が多岐にわたり、接続される配管の数と、その各配管に接続され配管の開閉を制御する弁装置が多数になると、空気用配管の接続口であるシリンダ蓋と電磁弁とを連結する配管の取り回しが複雑化し、距離も長くなる。したがって、空気ロスが大きくなり、タイヤ加硫機の省エネルギー要請に反する。また、圧縮性の高圧空気を利用しているために、電磁弁からバルブユニットまでの配管距離が長くなると、制御応答速度が劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−14410
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、タイヤ加硫機の配管部に用いられる、圧縮空気を用いて配管内の流体の流通を制御するピストン弁装置において、シリンダ蓋に圧縮空気の供給、停止、排出を切替制御する電磁弁を備え、ピストン往復動制御用の電磁弁からシリンダ蓋までの長い空気用配管を不要にし、施工や保守性に優れ低コストで、かつタイヤ加硫機の省エネルギー要請に応え、制御応答速度の早いピストン弁装置、及びピストン弁装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1記載のピストン弁装置は、
弁体本体に連結されたヨークの開口部端面と、
内周面がピストン摺動面に形成されたシリンダ蓋の開口部端面とが連結されたピストンケーシングを備え、
前記ピストン摺動面に嵌合されたピストンに、前記ヨーク内で軸方向に往復動可能に支持されるとともにその先端に弁体を有するステムが連結され、
圧縮空気を用いて駆動される前記ピストンによるステムの往復動により弁体の操作が行われるピストン弁装置であって、
前記シリンダ蓋の外側一面に、前記圧縮空気を切替制御する電磁弁を備えた、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のピストン弁装置において、
前記シリンダ蓋の外側一面と前記電磁弁の外側一面との間に、シール部材を備えた、
ことを特徴とする。
【0010】
前記課題を解決するために、請求項3記載のピストン弁装置の駆動方法は、
弁体本体に連結されたヨークの開口部端面と、
内周面がピストン摺動面に形成されたシリンダ蓋の開口部端面とが連結されたピストンケーシングを備え、
前記ピストン摺動面に嵌合されたピストンに、前記ヨーク内で軸方向に往復動可能に支持されるとともにその先端に弁体を有するステムが連結され、
圧縮空気を用いて駆動される前記ピストンによるステムの往復動により弁体の操作が行われるピストン弁装置において、
前記シリンダ蓋の外側一面に、前記圧縮空気を切替制御する電磁弁をシール部材を介して配設し、
前記電磁弁を用いて、前記圧縮空気の切替制御をすることにより往復動する弁体によって流路の切替動作を行う、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タイヤ加硫機の配管部に用いられる、圧縮空気を用いて配管内の流体の流通を制御するピストン弁装置において、シリンダ蓋に圧縮空気の供給、停止、排出を切替制御する電磁弁を備え、ピストン往復動制御用の電磁弁からシリンダ蓋までの長い空気用配管を不要にし、施工や保守性に優れ低コストで、かつタイヤ加硫機の省エネルギー要請に応え、制御応答速度の早いピストン弁装置、及びピストン弁装置の駆動方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るピストン弁装置を使用したタイヤ加硫機及び配管構造を示す概略構成
【図2】本発明に係るピストン弁装置の第1の実施の形態を示す縦断面図
【図3】本発明に係るピストン弁と電磁弁との連結構造を示す断面図
【図4】本発明に係るピストン弁装置の第2の実施の形態を示す縦断面図
【図5】本発明に係るピストン弁装置の他の実施の形態を示す縦断面図
【図6】本発明に係るピストン弁装置の他の実施の形態におけるピストン弁と電磁弁との連結構造を示す断面図
【図7】本発明に係るピストン弁装置の変形例を示す縦断面図
【図8】従来のピストン弁装置におけるピストン弁と電磁弁との間の配管系統を示した縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例としての実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。尚、図面全体を通じて、同一あるいは対応する構成要素には同一の参照符合を付する。
【0014】
(タイヤ加硫機の概略構成)
図1は、本発明に係るピストン弁装置を備えたタイヤ加硫機及び接続される配管構造を示す模式図である。タイヤ加硫機は、本体部と機内配管系統とから構成される。タイヤ加硫機本体は、タイヤの外面形状を規定する、上下に分割された加硫金型と、その内部に配設された拡縮可能な略袋状のブラダー3と、ブラダー3を保持するブラダー保持手段とを備え、金型とブラダー3の間に未加硫の生タイヤTを保持し、加熱・加圧されるようになっている。
【0015】
加硫金型は、生タイヤTの外面形状を成型する複数の、上型1及び下型2からなり、上型1を駆動手段(図子せず)により上下動させ、その内部に形成された略環状のキャビティSを開閉可能に構成されている。ブラダー保持手段は、ブラダー3の両端部を、それぞれ挟み込んで係止する上下一対の略リング状の係止部材からなり、ブラダー3の端部を保持した状態で、ブラダー3とともに上下型内に配設されている。
【0016】
タイヤ加硫機本体は、ブラダー3内を流動する流体の吹出口と排出口を備え、機内配管系統を通じて、加硫媒体の供給源(不図示)と接続されている。機内配管系統は、加硫機本体に加硫媒体を供給する入側と、加硫機本体から排出される加硫媒体を取り出す出側とに大別され、加硫機の機内配管系統には、入側と出側との間に、加硫媒体の強制循環用経路を形成する循環用配管が設けられることもある。
入側配管系統は、加硫工程に先立つシェービング工程用流体の供給管、加圧流体の供給管、加熱流体の供給管で構成されている。出側配管系統は、混合流体のガス排出菅、バキューム菅、及びドレイン排出菅で構成されている。
【0017】
さらに、配管系統は、ブラダー3の主配管5及び6に接続される主流路5a及び6aと、複数の枝配管7a、7b、7c、7d、7eに接続される複数の副流路が形成された配管ブロックと、配管ブロックの一方側にピストン弁装置100を揃えて配置したバルブユニットとする。配管ブロックの接続口と、ピストン弁装置100の接続口との接続部分には、流動する流体の接続部分からの漏洩を防止するシール部材としてのガスケットがそれぞれ設けられている。尚、配管ブロックの内部構造は従来のものと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0018】
(ピストン弁装置の第1の実施形態)
図2を参照しながら、本発明の実施の形態に係るピストン弁装置100について説明する。ピストン弁装置100は、ピストン10に連設されたステム20の下端に弁体30が取り付けられ、弁体30は弁座の下側に位置しており、逆栓式弁すなわち常時閉型となっている。
【0019】
ピストン10は、弁体本体40に連結されたピストンケーシングの内部に収納され、ピストンケーシングは、弁体本体40に連結されたヨーク50と、ヨーク50に連結されたシリンダ蓋60とで形成されている。
【0020】
シリンダ蓋60は、上端に高圧空気流入口を備え、内周面にはピストン摺動面が形成され、下端は、弁体本体40に連結されたピストンケーシングの上側開口部と嵌合される開口部を有する。
【0021】
ヨーク50は、弁体本体40に連結され、ステム20を軸方向に往復動可能に挿通させると共に、ピストン10を上方に付勢させるスプリング70を収納させる支持体となるもので、上端の開口部は、上述のようにシリンダ蓋60の下端の開口部とが連結されて、ピストンケーシングが形成されている。
【0022】
シリンダ蓋60の上端側には、中央部に電磁弁300からの高圧空気流入口としての貫通孔を有する平面状の接続面が形成され、該接続面の外縁部には複数の雌ねじが形成されている(不図示)。シリンダ蓋60の空気流入口と電磁弁300の空気吐出口とは、係合手段である複数のボルトで螺合して、ピストン弁100と電磁弁300が一体として連設されている。
【0023】
次に、図3を参照しながら、ピストン弁100と電磁弁300を連結し、貫通孔を通じて、電磁弁300とピストン弁100のシリンダ蓋60とを連通する手段について具体的に説明する。
シリンダ蓋60は、中心軸に沿って高圧空気の流路としての貫通孔を備えた円筒状の筒体であって、筒体の上端側には、電磁弁300の高圧空気吐出口と面同士で接合するための平面状の接続面が形成されている。また、シリンダ蓋60の中央部には、高圧空気流入口と同心円の半径外方向に、環状凹部210が形成され、環状凹部210にはシール部材250が装着されている。
【0024】
環状凹部210に装着されるシール部材250としては、例えば断面円形状のOリングを用いることができる。また、環状凹部210の凹部形状及び装着されるOリングは、ピストン弁装置100の容量に対応したシリンダ蓋60の空気流入口及び電磁弁300の空気吐出口の口径に応じて適宜選択することができる。
尚、Oリングは装着された状態で弾性変形し、電磁弁300の高圧空気吐出口とシリンダ蓋60の高圧空気流入口の外側面の間が十分にシールされる高さに、環状凹部210の外側に向かって突出するように配設される。Oリングの材料としては、ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム等を用いることができる。
【0025】
本実施例では、圧縮空気を切替制御する手段として電磁弁300を備えている。電磁弁300としては、特に制約はないが、3ポート直動型電磁弁を用いることができる。電磁弁300には、シリンダ蓋60の外側面に設けられた複数の雌ねじと螺合するボルトの貫通孔が複数設けられ(不図示)、ボルトを介して、電磁弁300とシリンダ蓋60が固着される。シリンダ蓋60の高圧空気流入口と同心円の半径外方向に形成された環状凹部210にはシール部材としてOリングが装着されており、その突出量が弾性変形することで、シリンダ蓋と電磁弁300との接合部がシールされる。
【0026】
(ピストン弁装置の第2の実施形態)
次に、第2の実施の形態に係るピストン弁装置100を図4に示す。尚、上述した第1の実施の形態に係るピストン弁装置と同一の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0027】
第2の実施の形態に係るピストン弁装置100では、ピストン10を往復動させる高圧空気の流入口が、シリンダ蓋60の上端側ではなく、シリンダ側面に配設されている点で、第1の実施の形態に係るピストン弁装置100と相違している。シリンダ蓋60は、シリンダ側面に空気流入口を備え、内周面にはピストン摺動面が形成され、下端は、弁体本体40に連結されたピストンケーシングの上側開口部と嵌合される開口部を有するが、ピストンケーシング等の構造は第1の実施の形態と同様である。
【0028】
シリンダ蓋60の空気流入口と電磁弁300の空気吐出口とを連結する連結部には、電磁弁300の空気吐出部と面同士で接合するための平面状の接続面が形成されている。また、シリンダ蓋60の接続面には、高圧空気流入口と同心円の半径外方向に、環状凹部210が形成され、環状凹部210にはシール部材250が装着され、第1の実施の形態と同様に連結される。
【0029】
第2の実施の形態に係るピストン弁装置100は、圧縮空気を切替制御する電磁弁300が、シリンダ蓋60の側面に配設されていることから、ピストン弁装置全体の高さを低くすることができ、多数の流路を形成したブロックと、このブロックに接続された複数のピストン弁装置とから構成されるバルブユニット構造とする場合に、バルブユニットを小型化するのに好適である。
【0030】
(ピストン弁装置のその他の実施の形態)
第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係るピストン弁装置100においては、シリンダ蓋60の空気流入口と同心円に、シール部材250が装着された環状凹部210が形成され、シリンダ蓋60と電磁弁300が複数のボルトを介して固着されることによって接続部がシールされるが、図8に示した従来のピストン弁装置におけるシリンダ蓋60と電磁弁300との間に、以下に説明する連結部材200を配設することで、従来のピストン弁を利用して、シリンダ蓋60の外側一面に、圧縮空気を切替制御する電磁弁300を備えたピストン弁装置100とすることもできる(図5参照)。
【0031】
図6(a)には連結部材200の構成、図6(b)には連結部材200を用いてシリンダ蓋60と圧縮空気を切替制御する電磁弁300を連結した状態を具体的に示した。
連結部材200は、中心軸に沿って流路としての貫通孔を備えた円筒状の筒体であって、筒体の上端側及び下端側にはテーパ雄ねじが形成されている。テーパ雄ねじは、連設されるシリンダ蓋60及び電磁弁300に形成されたテーパ雌ねじと螺合するように適宜選択されている。また、筒体の中央部には、半径外方向に、シリンダ蓋60側及び電磁弁300側に環状凹部210が形成された鍔部220が形成され、さらに、環状凹部210にはそれぞれシール部材250が装着されている。また、鍔部220の外周端面は、連結部材200をシリンダ蓋60のテーパ雌ねじに螺入する際にスパナ等を用いて回転させるための、例えば六角形形状とすることができる。
環状凹部210に装着されるシール部材250としては、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様のOリングを用いることができ、シリンダ蓋60側及び電磁弁300側の接続面での確実かつ十分なシール効果を得ることができる。
【0032】
係る連結部材200を配設することで、図8に示したように、ピストン弁と電磁弁300とが、長い銅配管400で接続され、銅配管400内に高圧空気を流動させて、ピストン弁装置のピストン10を上下動させ、流路の切替制御を行っている配管構造であっても、長い銅配管400を不要にし、既設のピストン弁を利用して、シリンダ蓋60に直接配設された電磁弁300で駆動することができる。
尚、以上の実施の形態においては、常時閉型のピストン弁装置として説明したが、図7に示すように、常時開型のピストン弁装置100とすることもできる。常時閉型と常時開型とは、ピストン弁装置に何らかの障害が発生したときに、安全な状態で停止させたり、タイヤ加硫工程における流体制御に必要な高圧空気の供給・保持に要するエネルギー経済性の要請によって適宜選択される。
【0033】
(タイヤ加硫機の動作)
タイヤ加硫機で生タイヤTを加硫するときは、まず、上型1を上昇させて加硫金型のキャビティ内に、生タイヤTを挿入し、上型1を下降させてキャビティを閉鎖して加硫金型内に生タイヤTを収納しつつ、生タイヤT内にブラダー3を配置する。その後、ブラダー3内に、加熱手段により所定の温度に加熱された、所定圧力のシェービング用ガスを主配管から供給し、ブラダー3をトロイダル状に膨張させて生タイヤTの内面に密着させることにより、生タイヤTを膨張させてシェービングする。引き続き、シェービング用ガスの供給を停止し、ブラダー3内に高温・高圧の加熱媒体を主配管から供給して、生タイヤTを加硫金型の内面に押し付けながら加熱賦形する。
【0034】
タイヤ加硫機内の生タイヤTは、上述した熱と圧力で架橋反応が進展し、生タイヤTを構成する各部材同士が接着され、また、加硫金型に形成された形状や踏面部のトレッドパターンが転写され、製品としてのタイヤに所望の諸性能が付与される。その後、ブラダー3内の加硫媒体を排気し、ブラダー3を加硫成型後のタイヤの内面から離間させ、タイヤは加硫金型内から取り出して製品としてのタイヤが完成する。
【0035】
(ピストン弁装置の動作)
生タイヤTの加硫工程は、シェービング工程、加熱媒体供給工程、加圧媒体供給工程、冷却工程、排出工程、バキューム工程という一連の連続した工程を経ることによって実現される。それぞれの工程において使用される媒体としては、例えばシェービング工程では、窒素ガスやスチームが流体供給主配管5を通じて供給され、加熱媒体供給工程では、スチームや加熱ガスが流体供給主配管5を通じて供給され、加圧工程では、窒素ガス等の低温ガスが流体供給主配管5を通じて供給される。冷却工程では、冷却水が流体供給主配管5を通じて供給され、排出工程では、混合気体が流体排出主管6を通じて排出され、回収されてシェービングガスとして再利用されることもある。このような、各工程に使用される複数の媒体は、それぞれの枝配管系統に配設された複数のピストン弁装置によって流路の切替がなされ、供給、停止、排出がなされる。
【0036】
例えば、シェービング工程においては、供給配管に配設されたピストン弁装置100の電磁弁300にタイヤ加硫機の制御盤内に備えられた制御基板(不図示)より入力される信号によって、電磁弁300のソレノイドが吸引されると、高圧空気がポートを通じて、シリンダ蓋60の空気流入口より供給される。この高圧空気によって、ピストン10がスプリング70に抗して押圧下降し、ピストン10に連結されたステム20先端の弁体30で流路の切替操作を行う。例えば、上記弁体30による流路切替操作によって、選択される媒体が流通する流路同士が連通することによって、シェービング用の窒素ガスが流体供給用主配管5を通じて、吹出口からブラダー3内に供給される。
【0037】
シェービングが終了すると、電磁弁300に入力された制御信号によって、電磁弁300のポートが切り替わり、ピストン弁装置100のシリンダ部に供給されていた高圧空気は、シリンダ蓋60の高圧空気流入口から、電磁弁300の排気ポートを通過して排出され、ピストン10がスプリング70の反発力により上昇し弁体30が流路を切り替える。
【0038】
シェービング工程終了後の、加熱媒体供給工程、加圧媒体供給工程、冷却工程、排出工程、バキューム工程という一連の連続した工程においても、それぞれの配管系統に配設されたピストン弁装置100は、電磁弁300の高圧空気の供給、停止、排気に応じてシェービング工程と同様の動作をする。
【0039】
(作用・効果)
比較例として、図8に、従来のピストン弁装置におけるピストン弁と電磁弁300との間の配管系統を示した。従来のピストン弁装置は、シリンダ蓋60の高圧空気流入口と高圧空気の流通を制御する電磁弁300とが、5mないし10mという長い銅配管400で接続されており、電磁弁300の高圧空気吐出口とシリンダ蓋60の高圧空気流入口を接続した銅配管400内を高圧空気を流動させて、ピストン弁装置のピストンを上下動させ、流路の切替制御を行っている。
【0040】
本発明のピストン弁装置100及び該ピストン弁装置の駆動方法によれば、弁本体40に連結されたヨーク50の開口部端面と、内周面がピストン摺動面に形成されたシリンダ蓋60の開口部端面とが連結されたピストンケーシングを備え、ピストン摺動面に嵌合されたピストン10に、ヨーク50内に軸方向に往復動可能に支持されるとともに先端に弁体30を有するステム30が連結され、シリンダ蓋60の外側一面に、高圧空気の供給、停止、排出を制御する圧縮空気の切替制御手段として電磁弁300を備えているため、従来のピストン弁と異なり、長い空気配管を必要とせず、銅配管の施工や保守のコストがかかることがない。
【0041】
タイヤ加硫機の配管部を多数の流路を形成したブロックと、このブロックに接続された複数のピストン弁装置とから構成されるバルブユニット構造とした場合であっても、制御用の電磁弁からシリンダ蓋までの長い高圧空気用配管を必要とせず、銅配管の施工や保守のコストがかかることがない。
バルブユニット構造の配管構造においては、多数の流路を形成したブロックのブロック側接続面に、多数のピストン弁装置が集合して配置され、その中の一部のピストン弁装置の保守・交換等の作業においても、銅配管の取り外しや取り付けという作業を必要とせず、保守のコストを大幅に削減することができる。
【0042】
更に、長い高圧空気配管を必要としないために、空気ロスが大幅に少なくなり、タイヤ加硫機の省エネルギー要請に応えることができる。また、ピストン10の駆動には圧縮性の高圧空気を利用しているが、電磁弁300からシリンダ蓋60までの長い銅配管400を必要としないために、ピストン弁装置100の制御応答速度を大幅に向上させることができる。
【0043】
ピストン弁の制御応答速度として始動開始時間、すなわち、高圧空気が電磁弁300のポートを通じて、シリンダ蓋60の空気流入口より供給され、この高圧空気によってピストン10がスプリング70に抗して押圧下降を開始するまでの時間は、ピストン径がφ90mmのピストンを有するピストン弁装置の電磁弁300からシリンダ蓋60までの銅配管400の管長が10m、銅配管400の内径が6mm、パイロット圧が0.35MPaの高圧空気を用いた比較例としての従来のピストン弁においては、1.35secであったのに対して、本発明に係る実施例のピストン弁装置100においては、パイロット圧が同じく0.35MPaの高圧空気を用いた場合の始動開始までの時間は0.6secであった。
また、ピストン弁の戻り開始時間、すなわち、電磁弁300のポートを通じてシリンダ蓋60内の高圧空気が排気され、スプリング70の反発力でピストン10が上方へ移動を開始するまでの時間は、従来のピストン弁においては、2.7secであったのに対して、本発明に係る実施例のピストン弁装置100においては、戻り開始までの時間は1.2secであった。
【0044】
弁体本体40における弁体30の切替速度としては、銅配管400の管長が10m、銅配管400の内径が6mm、パイロット圧が0.35MPaの高圧空気を用いた従来のピストン弁においては、0.7secであったが、本発明に係る実施例のピストン弁装置100においては、0.4secであった。ピストン弁装置100を、三方弁として使用する場合、2種類の異なる気体や液体を弁体30の切替動作によって流通制御するが、例えば、ブラダー3内に、加熱手段により所定の温度に加熱された、所定圧力のシェービング用窒素ガスを主配管から供給し、ブラダー3をトロイダル状に膨張させた後、引き続き、シェービング用ガスの供給を停止し、ブラダー3内に高温・高圧の加熱蒸気を主配管から供給した場合、窒素ガスと加熱蒸気が混流する恐れがあるが、本発明に係る実施例のピストン弁装置100は、弁体切替時間が短く、二種類の流体の混流を防止することができる。
尚、比較例におけるピストン弁装置100で応答速度を向上させる場合は、電磁弁300とシリンダ蓋60間の銅配管400の管長を短くするか、高圧空気のパイロット圧を高くする必要があるが、配管取り回し上、管長を短くすることには制約があり、パイロット圧を高くすると、全体での空気ロスが増大し、省エネルギーの要請に応えることが難しい。本実施例においては、電磁弁300がシール部材250を介してシリンダ蓋60に直接配設されていることから、管長によらず、常に高い応答速度を得ることができる。
【0045】
また、本発明のピストン弁装置100においては、シリンダ蓋60の空気流入口と電磁弁300の空気吐出口との間に、シリンダ蓋60側に環状凹部210が形成され、環状凹部210に装着されたシール部材250を備えているために、シリンダ蓋60側及び電磁弁300側の接続面での確実かつ十分なシール効果を得ることができる。
また、かかるシール効果により、従来必要であった、シリンダ蓋60の空気流入口の雌ねじと空気配管の雄ねじ及び電磁弁300の空気吐出口の雌ねじと空気配管の雄ねじとの螺合にかかるシールテープ又はシール材が不要となり、シール作業のコストを削減できると共に、シールテープやシール材の破片が流路に混入し、ピストンの動作に支障をきたす恐れがない。
【0046】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 上型
2 下型
3 ブラダー
5 流体供給主配管
5a 主流路
6 流体排出主配管
6a 主流路
7a スチーム供給配管
7b ガス供給配管
7c シェービングガス供給配管
7d 混合ガス回収配管
7e バキューム配管
10 ピストン
20 ステム
30 弁体
40 弁体本体
50 ヨーク
60 シリンダ蓋
70 スプリング
100 ピストン弁装置
200 連結部材
210 環状凹部
220 鍔部
250 シール部材
300 電磁弁
400 銅配管
S 環状空間
T 生タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体本体に連結されたヨークの開口部端面と、
内周面がピストン摺動面に形成されたシリンダ蓋の開口部端面とが連結されたピストンケーシングを備え、
前記ピストン摺動面に嵌合されたピストンに、前記ヨーク内で軸方向に往復動可能に支持されるとともにその先端に弁体を有するステムが連結され、
圧縮空気を用いて駆動される前記ピストンによるステムの往復動により、弁体の操作が行われるピストン弁装置であって、
前記シリンダ蓋の外側一面に、前記圧縮空気を切替制御する電磁弁を備えた、
ことを特徴とするピストン弁装置。
【請求項2】
前記シリンダ蓋の外側一面と前記電磁弁の外側一面との間に、シール部材を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載のピストン弁装置。
【請求項3】
弁体本体に連結されたヨークの開口部端面と、
内周面がピストン摺動面に形成されたシリンダ蓋の開口部端面とが連結されたピストンケーシングを備え、
前記ピストン摺動面に嵌合されたピストンに、前記ヨーク内で軸方向に往復動可能に支持されるとともにその先端に弁体を有するステムが連結され、
圧縮空気を用いて駆動される前記ピストンによるステムの往復動により、弁体の操作が行われるピストン弁装置において、
前記シリンダ蓋の外側一面に、前記圧縮空気を切替制御する電磁弁をシール部材を介して配設し、
前記電磁弁を用いて、前記圧縮空気の切替制御をすることにより往復動する弁体によって流路の切替動作を行う、
ことを特徴とするピストン弁装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−40666(P2013−40666A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179192(P2011−179192)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(511202838)
【Fターム(参考)】