説明

ピストン

【課題】嵌合を緩くしても嵌合部からスープ液が漏れ難く且つ押出し及び引込みの駆動トルクを小さくすると共にパッキンを割りリングとしなくとも容易に嵌合し得るピストンを提供する。
【解決手段】回転し得るシリンダーに摺動自在に嵌合するピストン本体の後端部をリング状パッキンが嵌合し得るように若干小径に形成し、嵌合させた該リング状パッキン後方からリング状パッキン押え部を有するピストンロッドを、前記ピストン本体後端面の穴に嵌合させて、リング状パッキン押え部でリング状パッキンを押圧したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、具入りスープ類を、缶詰め若しくは真空パックの袋に充填したり、一定量ずつに小分けする小分け・充填装置に使用するピストンに関する。
【発明の概要】
【0002】
液体中に肉類や野菜類が混入しているカレー、ミネソタローネ、豚汁、シチュー等の具入りスープ類を、缶に充填して缶詰としたり、真空パックの袋に充填するのに、従来は、具を充填する工程とスープを充填する工程の二工程で行われていた。そのため、作業能率が上がらない問題があった。
【0003】
このような問題点を解決するため、本出願人は、具とスープ液とを一緒に小分け充填できる流動物の小分け充填装置を開発し、先に特許出願したが、このものは既に特許されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3267964号明細書
【0005】
上記従来の定量弁方式は、シリンダー本体の上部より具とスープとを取り込んで、シリンダーの内径に組み込まれた内筒(ロータリー弁)で切り出しをして、180°回転させて、取り込んだ開口部をシリンダー下部の開口部と合わせた後、取り込んだ具入りスープをピストンで押出すことによって、一杯分のスープを容器に取り出すものである。
【0006】
ロータリー弁の内径に組み込まれたピストンを、前進端からある一定の位置まで引くことによって円筒状の体積の空間ができるが、その空間に引き込んだスープは、一定容量とすることができる。ピストンを引く量が常に一定であれば、その円筒状の空間は、全て一定の体積になるからである。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記装置は、具入りスープ類を容易に一定容積に小分けできることから極めて高い評価を受けているが、問題点として、シリンダー本体の内径に組み込まれたロータリー弁(内筒)の嵌合の問題があることが判明した。
【0008】
即ち、嵌合が緩ければ心出しができないことと、嵌合部の円周を伝わって液漏れが発生し、嵌合がカタければ、ロータリー弁を回転させるのに大きなトルクが必要になり、時にはカジリを起こす原因になる。特に困るのは、一日の作業が完了し、分解洗浄するのにロータリー弁を抜くのが困難になることである。このようなカジリを無くすためには、ステンレス表面をコーティングしなければならないが、これがコスト高の原因となっている。
【0009】
そればかりか、スープを昇温させる際に発生する熱伝導によっては、熱膨張が起こり、嵌合条件が変わるので非常に厄介な問題が生じる。即ち、オペレータの使い勝手が悪くなるのである。
【0010】
オペレータの使い勝手を良くするには、嵌合はできるだけゆるく、熱膨張が発生してもゆるさは変わらないことが条件になってくる。しかしながら、嵌合がゆるければ、心出しができないほか、スープ液は円周上を伝わって下に回って下部の開口部から液漏れが生じる問題がある。
【0011】
また、従来の一般的ピストンのシールには、O−リングが使用されているが、O−リング使用で軸方向のシールは確実にできるが、押出し及び引込みの駆動トルクが15W容量のモーターが必要であった。そのため電気エネルギーを必要とする問題があった。そればかりか、伸びるパッキンでないとピストンの溝に嵌め込めないので、割りリングを使用しなければならなかった。
【0012】
この発明は、嵌合を緩くしても嵌合部からスープ液が漏れ難く且つ押出し及び引込みの駆動トルクを小さくすると共にパッキンを割りリングとしなくとも容易に嵌合し得るピストンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的に沿う本発明のうち請求項1に記載の発明は、回転し得るシリンダーに摺動自在に嵌合するピストン本体の後端部をリング状パッキンが嵌合し得るように若干小径に形成し、嵌合させた該リング状パッキン後方からリング状パッキン押え部を有するピストンロッドを、前記ピストン本体後端面に嵌合させたことを特徴とする(請求項1)。
【0014】
前記ピストン本体後端面にネジ穴を形成し、該ネジ穴に前記ピストンロッドを螺合させて、該ピストンロッドの押さえ部で前記リング状パッキンを押圧するのが良い(請求項2)。
【0015】
前記リング状パッキンは、断面コ字状のリング状パッキンにO−リングを嵌合させ、コ字状の開口が前方に向くように装着するのが良い(請求項3)。この場合、ピストンロッドを締付けて押さえ部でリング状パッキンを押圧し、該リング状パッキンがピストン本体から若干突出するようにするのが良い。
前記ピストンロッド後端には、エンジン駆動系に接続されるピストンキャップを装着するのが良い(請求項4)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、嵌合部からスープ液が漏れ難く且つ押出し及び引込みの駆動トルクを小さくすると共にパッキンを割りリングとしなくとも容易に嵌合し得る利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のピストンを備えた小分け装置の分解断面図である。
【図2】図1を組立てた状態の断面図である。
【図3】本発明のピストンの分解斜視図である。
【図4】本発明ピストンに使用するパッキンの断面図である(図ではO−リングはコ字部に嵌合させてない状態を示している。)。
【符号の説明】
【0018】

定量切出弁本体

吸引口

定量切出弁本体先端開口

フロントキャップ

内筒(ロータリー弁)

ピストン本体
10
吐出口
11
貫通口(開口)
14
円筒状テフロン(登録商標)シール
16
吐出ノズル
20
ピストンシャフト
22
リング状パッキン
23
リング状シール押え具
24
断面コ字状の金属製リング
25
コ字部に嵌合させるO−リング
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
定量切出弁本体1の先端開口3には、フロントキャップ(蓋体)4が嵌合固定されている。フロントキャップ4には、開口3に密嵌する若干小径の円板状部5と更に小径の内筒蓋体となる小径円板状部6が連設され、同小径円板状部6と切出弁本体1内壁とでリング状嵌合凹部を形成している。
【0021】
定量切出弁本体1に回動自在に嵌合されている内筒(ロータリー弁)7の先端が、前記リング状嵌合凹部に回動自在に嵌合している(小径円板状部6が内筒前面開口に嵌合している)。リング状嵌合凹部は、軸受けの役割をするものであり、このようにすることによって心出しができるので、ステンレス製の定量切出弁本体1と内筒7とのカジリを防止できる。内筒7内には、ピストン本体8が摺動自在に嵌合されている。尚、図中9はO−リングであり、内筒7の先端が当接し内筒と定量切出弁本体1間のスープ液が漏れないようになっている。
【0022】
内筒7には、貫通孔(開口)11が形成され、同貫通孔11が前記定量切出弁本体1の吸引孔2と連通すると、前記ピストン本体8は後退して内筒7内に所定量の具入りスープ類を充填し、前記内筒7の貫通孔11が前記定量切出弁本体1の吐出口10と連通すると、前記ピストン本体8は前進して、連通した吐出口から具入りスープ類を吐出するようになっている。
【0023】
内筒後部は、O−リング溝にO−リング12が嵌合され、内筒7と定量切出弁本体1とのシール性を高めている。従って、この部分からのスープ液の漏れも防止されている。
【0024】
定量切出弁本体1の吐出口10には、先端が前記内筒(ロータリー弁)7に密接し得る曲面13に形成された円筒状テフロン(登録商標)シール14を装着し、同テフロン(登録商標)シール14後端のフランジ15を吐出ノズル16の先端フランジ18で押圧してテフロン(登録商標)シール14先端を内筒7に密接させているので、吐出口10廻りからのスープ液の漏れを効果的に防止している。テフロン(登録商標)シールのフランジ15は、外筒に形成された外周ネジ部の短筒体17に嵌合し、吐出ノズル16の先端フランジ18を短筒体17に螺合させて、テフロン(登録商標)シール14を押圧している。尚、テフロン(登録商標)シール14の開口は、シリンダーの貫通孔11よりも大きくなっている。
【0025】
ピストン本体8後端面には、ネジ穴19が形成され、同ネジ穴19にピストンシャフト20先端ネジ部21が螺合するようになっている。
【0026】
ピストン本体8後端部は、若干小径に形成され、同小径部にリング状パッキン22が嵌合され、リング状パッキン22を後方からピストンシャフト20に設けられたリング状シール押え具23で押圧することにより、リング状パッキン22先端を押圧保持している。
【0027】
リング状パッキン22は、図4に示すように断面コ字状の金属製リング24のコ字部に、O−リング25を嵌合させることによって形成し、コ字部の開口が前方を向き、押さえ部で押圧することにより、若干ピストン本体から出るようになっている。従って、断面コ字状の金属製リング24は、常に広がる方向に付勢されているので、押すときは液体の漏れを効果的に防止し、引く時は若干の突出部が倒れてスムーズに後進するようになっている。
【0028】
ピストンロッド後端には、エンジン駆動系に接続されるピストンキャップ26が螺合装着されている。
【0029】
上記実施例によれば、筒状パッキンで常時内筒を押圧しているので、内筒と定量切出弁本体との嵌合を若干緩くしても、液体が内筒の円周上を伝わって液漏れが生じることを効果的に防止することができる。
【0030】
また、上記実施例によれば、内筒は定量切出弁本体前蓋裏面に回動し得るように嵌合しているので、心出しができるから、嵌合を若干緩くすることができる。
【0031】
また本発明のピストンは、2つに分離できるので、割りリングを使用しなくともパッキンをピストン溝に嵌め込むことができる。また、O−リングを内装した断面コ字形のパッキンを使用すると、確実にシールし且つ駆動トルクを小さくすることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転し得るシリンダーに摺動自在に嵌合するピストン本体の後端部をリング状パッキンが嵌合し得るように若干小径に形成し、嵌合させた該リング状パッキン後方からリング状パッキン押え部を有するピストンロッドを、前記ピストン本体後端面の穴に嵌合させて、リング状パッキン押え部でリング状パッキンを押圧したことを特徴とするピストン。
【請求項2】
前記ピストン本体後端面にネジ穴を形成し、該ネジ穴に前記ピストンロッドを螺合させて、該ピストンロッドの押さえ部で前記リング状パッキンを押圧する請求項1記載のピストン。
【請求項3】
前記リング状パッキンは、断面コ字状のリング状パッキンにO−リングを嵌合させてなり、コ字状の開口が前方を向くように装着し、前記押圧によりリング状パッキンはピストン外周より若干突出する請求項1又は2記載のピストン。
【請求項4】
前記ピストンロッド後端には、エンジン駆動系に接続されるピストンキャップ26が装着されている請求項1〜3のいずれかに記載のピストン。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−227344(P2009−227344A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157396(P2009−157396)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【分割の表示】特願2003−187555(P2003−187555)の分割
【原出願日】平成15年6月30日(2003.6.30)
【出願人】(597141977)
【Fターム(参考)】