説明

ピストン

【課題】組付作業性が良く、加工も容易なピストンを提供することである。
【解決手段】上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、ピストンロッド2に連結されるピストン1であって、複数の通路13,14とピストンロッド2が挿通される挿通孔18が設けられる底部11と底部11外周から立ち上がる筒部12を有して外周にピストンリング17が装着される外側ピース10と、円盤状であって複数の通路21,22とピストンロッド2が挿通される挿通孔24を有する内側ピース20とを備えてなり、内側ピース20を筒部12に嵌合して外側ピース10の底部11に積層し内側ピース20と外側ピース10の双方の通路13,14,21,22を連通させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のピストンは、たとえば、緩衝器のシリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を二つの圧力室に区画するとともに、緩衝器が伸長する際に作動油を通過させる伸側ポートと緩衝器が収縮する際に作動油を通過させる圧側ポートとを有している。また、ピストンの上下にはリーフバルブが積層されて、伸側ポートと圧側ポートの出口端をこれらリーフバルブで開閉するようになっており、緩衝器の伸縮時に伸側ポートおよび圧側ポートを通過する作動油の流れに上記リーフバルブで抵抗を与えて上記した二つの圧力室内の圧力に差を生じせしめて減衰力を発生するようになっている。
【0003】
上述のように使用されるピストンにあっては、伸側ポートと圧側ポートをピストンの軸線に対して交差する方向から貫通させて、伸側ポートの入口端が圧側ポートの出口端より外周側に配置されるとともに、圧側ポートの入口端が伸側ポートの出口端より外周側に配置されるようにし、ピストンの上下端に環状の弁座を設けて各ポートの入口端と出口端とを隔てるようにしたものがある。
【0004】
このようなピストンでは、伸側ポートおよび圧側ポートの両方の弁座径を大きく設定することができるため、リーフバルブの受圧面積を大きく確保することができ応答性良く減衰力を発生させることができる長所があるものの、上記各ポートの形成にあたりピストンの軸線に対して交差する方向から貫通させる加工は、煩雑であって製造コストが高くなる。
【0005】
そこで、二つの円盤を上下に積層してピストンを構成するとし、各円盤の積層面側端部の同一円周上に径方向に長い長溝を複数形成し、この長溝の一つおき毎に、長溝の内周よりの部位と積層面端部に対し反対側の端部とを連通する出口孔を設けるとともに、残った長溝の外周よりの部位と積層面端部に対し反対側の端部とを連通する入口孔を設けて、反対側の端部にあっては出口孔より外周側に入口孔が配置されるようにし、入口孔と出口孔とをピストンの上記反対側の端部に設けた環状の弁座で隔て、一方の円盤における出口孔と他方の円盤における入口孔とを上記長溝を介して連通することで各ポートを構成させるピストンがある(たとえば、特許文献1から3参照)。
【0006】
この二つの円盤で構成されたピストンでは、ポートを形成する加工を要せず、各円盤を焼結成形することができ、積層面を向かい合わせて積層面側端部に設けた凹凸を利用して圧入によって円盤同士を一体化することでピストンを製造することが可能である。
【0007】
また、これとは別にピストンを三つの円盤を積層して構成する提案もあり、この提案にあっても、ポートを形成する加工を要せず、各円盤を焼結成形することができる。そして、この提案では、互いの円盤同士を一体化するのではなく、上記各円盤を積層した状態としてピストンロッドに組付けたのちに、ピストンナットで締め付けてピストンロッドに固定するようになっている(たとえば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭48−21378号公報
【特許文献2】特開2005−188602号公報
【特許文献3】特許第3828584号公報
【特許文献4】特開2007−198515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1から3に開示されたピストンでは、円盤同士を一体化してピストンを製造した後、その外周に、ピストンリングを装着する必要があるが、ピストンリングが装着される部位に上側の円盤と下側の円盤との境目が配置されることになり、両円盤の形成に当たり加工精度を良くしておかないと境目に段部が形成されてしまい、その外周に装着されるピストンリングの外周面に上記段部が影響して凹凸が現れてしまう恐れがある。
【0010】
このピストンリングは、緩衝器のシリンダに直接摺接する部材であって、ピストンリングの外周面に凹凸ができると、緩衝器の伸縮動作に無用な抵抗を与えて緩衝器の円滑な伸縮動作を妨げる恐れがあり、これを防ぐためには、ピストンのピストンリングが装着される装着部を切削する等の後加工する必要が生じ、ピストンの加工が煩雑となる。
【0011】
また、特許文献4に開示されたピストンでは中間に配置される円盤の外周のみにピストンリングが装着されるので、上記のような不具合を生じることが無いが、ピストンが3つの円盤で構成されており、部品点数が多く、また、各円盤が固定されて一体化されていないので、ピストンロッドへの組付作業が面倒で部品管理も煩雑となる。
【0012】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、組付作業性が良く、加工も容易なピストンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、ピストンロッドに連結されるピストンであって、複数の通路とピストンロッドが挿通される挿通孔が設けられる底部と底部外周から立ち上がる筒部を有して外周にピストンリングが装着される外側ピースと、円盤状であって複数の通路とピストンロッドが挿通される挿通孔を有する内側ピースとを備えてなり、内側ピースを筒部に嵌合して外側ピースの底部に積層し内側ピースと外側ピースの双方の通路を連通させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のピストンによれば、外側ピースの外周にピストンリングが装着されており、ピストンリングの外周面に凹凸ができてしまうといった不具合も無いので、緩衝器の伸縮動作に抵抗を与えてしまう危惧も無く、また、二つの円盤を一体化する従来のピストンのように比較して装着部を精密に加工する必要がないから、ピストンの加工が容易となり、ピストンの製造の際の加工工数を低減することができ、製造コストも低減させることが可能である。
【0015】
さらに、このピストンにあっては、外側ピースと内側ピースとが一体化されて固定されるので、ピストンロッドへの組みつけの際に、ピストンを構成する外側ピースと内側ピースとがバラバラとならず、これらを別々に管理する必要もなくなるので、ピストンロッドへの組付作業が容易となって部品管理も簡単となる。
【0016】
したがって、このピストンによれば、ピストンロッドへの組付作業性が良く、加工も容易となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施の形態におけるピストンのYY’断面図である。
【図2】一実施の形態におけるピストンの平面図である。
【図3】一実施の形態におけるピストンの底面図である。
【図4】一実施の形態におけるピストンの外側ピースの平面図である。
【図5】一実施の形態におけるピストンの内側ピースの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のバルブ構造を図に基づいて説明する。一実施の形態におけるピストン1は、図1に示すように、有底筒状の外側ピース10と、外側ピース10の筒部12に嵌合されて外側ピース10の底部11に積層される円盤状の内側ピース20とを備えて構成され、緩衝器のピストンロッド2の先端に固定されている。
【0019】
そして、外側ピース10には、通路として外側ピース入口通路13と外側ピース出口通路14が形成されており、内側ピース20には、通路として内側ピース入口通路21と内側ピース出口通路22が形成されており、外側ピース入口通路13と内側ピース出口通路22とを連通させるとともに外側ピース出口通路14と内側ピース入口通路21とを連通させている。これによって、ピストン1の図1中上方と下方とがこれらの各通路13,14,21,22によって連通される。
【0020】
また、外側ピース10において、外側ピース入口通路13の下端開口端は、外側ピース出口通路14の下端開口端より外周側に設けられており、外側ピース入口通路13の下端開口端と外側ピース出口通路14の下端開口端との間には環状の外側ピース弁座15が設けられ、内側ピース20において、内側ピース入口通路21の上端開口端は、内側ピース出口通路22の上端開口端より外周側に設けられており、内側ピース入口通路21の上端開口端と内側ピース出口通路22の上端開口端との間には環状の内側ピース弁座23が設けられている。
【0021】
さらに、外側ピース10の図1中下方には、外側ピース弁座15に着座して外側ピース出口通路14を開閉するリーフバルブ3が積層されるとともに、他方の内側ピース20の図1中上方には、内側ピース弁座23に着座して内側ピース出口通路22を開閉するリーフバルブ4が積層され、ピストン1は、これらリーフバルブ3,4とともに、ピストンロッド2の先端2aに内側ピース20を図1中上にしてピストンナット5で固定されている。
【0022】
他方、このピストン1が適用される緩衝器は、周知であるので詳細には図示して説明しないが、具体的にたとえば、シリンダ6と、シリンダ6の上端を封止するヘッド部材(図示せず)と、ヘッド部材(図示せず)を摺動自在に貫通するピストンロッド2と、ピストンロッド2の先端2aに設けた上記ピストン1と、シリンダ6内にピストン1で隔成される2つの圧力室たる上室7と下室8と、シリンダ6の下端を封止する封止部材(図示せず)と、シリンダ6から出没するピストンロッド2の体積分のシリンダ内容積変化を補償する図示しないリザーバあるいはエア室とを備えて構成され、シリンダ6内には流体、具体的にはたとえば、作動油が充填されている。
【0023】
したがって、この緩衝器の場合、シリンダ6に対してピストン1が図1中上方に移動する場合、上室7内の圧力が上昇して外側ピース10に設けた外側ピース弁座15に着座するリーフバルブ3を図1中下方に撓ませて外側ピース出口通路14が開かれるので、作動油は、内側ピース20の内側ピース入口通路21および外側ピース10の外側ピース出口通路14を通過して上室7から下室8へ移動することになり、リーフバルブ3でこの作動油の流れに抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめて、緩衝器に所定の伸側減衰力を発生させることになる。すなわち、これら内側ピース入口通路21および外側ピース出口通路14は、緩衝器の伸長時に作動油が通過する伸側ポートとして機能し、リーフバルブ3は伸側の減衰バルブとして機能する。
【0024】
反対に、シリンダ6に対してピストン1が図1中下方に移動する場合、下室8内の圧力が上昇して内側ピース20の内側ピース弁座23に着座するリーフバルブ4を図1中上方に撓ませて内側ピース出口通路22が開かれるので、作動油は、外側ピース10の外側ピース入口通路13および内側ピース20の内側ピース出口通路22を通過して下室8から上室7へ移動することになり、リーフバルブ4でこの作動油の流れに抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめて、緩衝器に所定の伸側減衰力を発生させることになる。すなわち、これら外側ピース入口通路13および内側ピース出口通路22は、緩衝器の収縮時に作動油が通過する圧側ポートとして機能し、リーフバルブ4は圧側の減衰バルブとして機能する。
【0025】
以下、上記したピストン1の各部について詳しく説明すると、外側ピース10は、焼結成形によって製造され、図1から図4に示すように、有底筒状とされており、円盤状の底部11と、底部11の外周から立ち上がる筒部12とを備えている。そして、底部11の中心にはピストンロッド2の先端2aが挿通される挿通孔18が設けられるほか、底部11の図1中下端外周にはテーパ部19が設けられるとともに、底部11を貫通する外側ピース入口通路13および外側ピース出口通路14がそれぞれ六つずつ設けられている。
【0026】
外側ピース入口通路13は、底部11の内側ピース20に向く対向端部となる図1中上端から底部11の反対向端部となる図1中下端に通じており、対向端部に設けたアーチ形状の開口部13aと、底部11の反対向端部の外周に設けたテーパ部19から開口して開口部13aの外周側に通じる縦孔13bとで構成され、開口部13aは対向端部にて同一円周上に等間隔をもって配置され、縦孔13bも底部11に同一円周上であって等間隔をもって配置される。外側ピース出口通路14にあっても、底部11の対向端部から反対向端部に通じており、対向端部に設けたアーチ形状の開口部14aと、底部11の反対向端部であって上記縦孔13bが設けられる円周より内周側から開口して開口部14aの内周側に通じる縦孔14bと、底部11の反対向端部に設けられて各縦孔14bに通じる環状窓14cとで構成され、開口部14aは対向端部にて同一円周上に等間隔をもって配置され、縦孔14bも底部11に同一円周上であって等間隔をもって配置される。さらに、底部11の対向端部にて、開口部13aと開口部14aとは、ともに同一円周上に等間隔を持って円周方向に交互に配置されている。
【0027】
また、底部11の反対向端部の外側ピース入口通路13の縦孔13bが設けられる円周上より内周側であって、外側ピース出口通路14の縦孔14bが設けられる円周上より外側、具体的には、環状窓14cの外周に環状の外側ピース弁座15が設けられており、この外側ピース弁座15で外側ピース入口通路13と外側ピース出口通路14とを隔てている。
【0028】
さらに、筒部12の内周の一箇所に内周側へ突出する凸部12aが設けられ、筒部12の図1中上端の内周に六つの円弧状の突起12bが等間隔を持って設けられている。
【0029】
そしてさらに、この外側ピース10の外周には、図1中上下方向となる軸方向に並べて形成される複数の環状溝でなる装着部16が設けられており、この装着部16にはピストンリング17が装着されている。
【0030】
このように、外側ピース10には、その図1中上下方向となる軸線に対して交差するような孔を設ける必要がないので、外側ピース10を容易に焼結成形によって製造することが可能である。
【0031】
つづき、内側ピース20について説明する。内側ピース20は、円盤状であって焼結成形によって製造され、図1から図3および図5に示すように、中心にピストンロッド2の先端2aが挿通される挿通孔24が設けられており、また、外径は外側ピース10の筒部12の内周に嵌合できる径に設定されるとともに、肉厚は筒部12の軸方向長さより厚くなっているものの図1中上端外周となる反対向端部外周にテーパ部25を備え、内側ピース20を外側ピース10の筒部12に嵌合して底部11に密着させるとテーパ部25の外縁が筒部12の内縁と同じ高さとなるように設定されている。
【0032】
また、この内側ピース20は、内側ピース入口通路21および内側ピース出口通路22をそれぞれ六つずつ備えている。内側ピース入口通路21は、内側ピース20における外側ピース10に対向する図1中下端となる対向端部から反対向端部外周にかけて設けた溝で形成されており、内側ピース20の外周から対向端部へ向けて徐々に深さが浅くなるとともに、対向端部側から見てアーチ形状となる楔状溝21aと、内側ピース20の外周に軸方向に沿って設けられて楔状溝21aに通じるとともに反対向端部のテーパ部25へ通じる縦溝21bとで構成され、楔状溝21aは対向端部にて同一円周上に等間隔をもって配置され、縦溝21bも内側ピース20に同一円周上であって等間隔をもって配置されている。
【0033】
内側ピース出口通路22は、内側ピース20の対向端部から反対向端部に通じており、対向端部に設けたアーチ形状の開口部22aと、内側ピース20の対向端部であって上記縦溝21bが設けられる円周より内周側から開口して開口部22aの内周側に通じる縦孔22bと、内側ピース20の反対向端部に設けられて各縦孔22bに通じる環状窓22cとで構成され、開口部22aは対向端部にて同一円周上に等間隔をもって配置され、縦孔22bも内側ピース20に同一円周上であって等間隔をもって配置される。さらに、内側ピース20の対向端部にて、楔状溝21aと開口部22aとは、ともに同一円周上に等間隔を持って円周方向に交互に配置されている。
【0034】
また、内側ピース20の反対向端部の内側ピース入口通路21の縦孔21bが設けられる円周上より内周側であって、内側ピース出口通路22の縦孔22bが設けられる円周上より外側、具体的には、環状窓22cの外周に環状の内側ピース弁座23が設けられており、この内側ピース弁座23で内側ピース入口通路21と内側ピース出口通路22とを隔てている。
【0035】
上述のように構成された外側ピース10と内側ピース20とを一体化するには、内側ピース20を外側ピース10の筒部12に嵌合させ、内側ピース20を外側ピース10の底部11に積層させる。
【0036】
その際、外側ピース10の筒部12の内側に設けた凸部12aを内側ピース20の外周に設けられる縦溝21bのうち任意の一つに侵入させることで、外側ピース10に対して内側ピース20が回り止めされるとともに円周方向に位置決めされ、外側ピース10に設けた外側ピース入口通路13の開口部13aと内側ピース20に設けた内側ピース出口通路22の開口部22aとが対向するとともに、外側ピース10に設けた外側ピース出口通路14の開口部14aと内側ピース20に設けた内側ピース入口通路21の楔状溝21aとが対向するようになっている。凸部12aは、縦溝21b内に侵入してもこれを閉塞しないようになっている。
【0037】
また、外側ピース10における開口部13a,14aが対向端部において交互に配置されるとともに、内側ピース20における楔状溝21aと開口部22aが開口部13a,14aと同数設けられて対向端部において交互に配置されているので、凸部12aを任意に選択される一つの縦溝21bに挿入することで、外側ピース10に対して内側ピース20を位置決めでき、自動的に、開口部13a,14a,22aと楔状溝21aとが対となる相手方に対向するので、外側ピース10に内側ピース20を組付ける際に、開口部13a,14a,22aと楔状溝21aの位置を確認する手間が省ける。
【0038】
上述のように、凸部12aは、位置合わせのために設けられるものであり、この場合、開口部13a,14a、楔状溝21aと開口部22aが同数設けられて、それぞれ交互に配置されているので、一つ設けるだけでよいが、交互に設けられない場合や開口部13aと開口部14aおよび楔状溝21aと開口部22aの設置数が同数でない場合には、凸部12aを複数設けておくようにすれば、自動的に位置合わせができる。
【0039】
また、凸部12aを縦溝21b内に侵入させることによって、上述のように開口部13a,14a,22aおよび楔状溝21aを対向させることができればよいので、その限りにおいて凸部12aを縦溝22bに遊嵌させてもよいが、凸部12aを縦溝22bにガタ無く嵌合させるようにしておくことで、開口部13a,14a,22aおよび楔状溝21aをきっちり対向させることができる。
【0040】
この場合、上記開口部13a,14aの外側ピース10の対向端部における形状と、上記開口部22aおよび楔状溝21aの内側ピース20の対向端部における形状とはともに一致する形状とされているが、開口部13a,14a,22aおよび楔状溝21aは、互いに対向する相手方以外には連通しないようになっていればよいので、上記した形状および大きさに限定されるものではない。
【0041】
戻って、上記したように外側ピース10に内側ピース20を組み込むと、外側ピース入口通路13と内側ピース出口通路22とが連通されて、これらで圧側ポートが形成され、外側ピース出口通路14と内側ピース入口通路21とが連通されて、これらで伸側ポートが形成される。このように、このピストン1にあっては、伸側ポートと圧側ポートをピストンの軸線に対して交差する方向から貫通させる孔あけ加工を要せず、伸側ポートと圧側ポートを形成することができるのである。
【0042】
そして、この実施の形態の場合、外側ピース10の筒部12に内側ピース20を嵌合した後、外側ピース10の筒部12の内側に設けた円弧状の突起12bを図4に示した状態から加締めて図2に示すように内側へ倒し、この突起12bで内側ピース20を保持して、外側ピース10に内側ピース20を強固に固定させる。
【0043】
突起12bは、上記した筒部12の凸部12aと内側ピース20の縦溝22bによる位置決めによって、内側ピース20の縦溝22b間に配置されて、上記の加締めによって内側ピース20のテーパ部25を把持する。
【0044】
この加締め加工は、実際には、焼結によって成形された外側ピース10と内側ピース20を組み合わせた後に冷間プレスするサイジング加工を実施する際に行えばよく、サイジング加工は表面処理と寸法の矯正を行うために実施される加工であって焼結によって製造されるものに基本的には実施される加工であり、突起12bの加締め加工のみを単独で行う必要が無いので、上記突起12bによる固定に際してコスト増加を招くことが無い。
【0045】
なお、この場合、内側ピース20にはテーパ部25が設けられており、突起12bがテーパ部25を把持するようになっているが、テーパ部25を設けずともよく、いずれにしろ、突起12bで内側ピース20の外縁を把持することができればよい。
【0046】
また、上記のように突起12bで内側ピース20を保持するので、外側ピース10と内側ピース20の寸法誤差によって、内側ピース20が外側ピース10の筒部12に遊嵌されるような場合にあっても、外側ピース10に内側ピース20を確実に固定することが可能である。それゆえ、内側ピース20を確実に外側ピース10の筒部12の内周へ嵌合可能なように、内側ピース20の寸法の設定が可能となって、外側ピース10へ内側ピース20の嵌合が不能となってしまう事態を招くことが無い。
【0047】
さらに、突起12bを加締めることで、突起12bで内側ピース20を外側ピース10の底部11側へ押圧することができるので、外側ピース10の底部11に内側ピース20を密着させることができ、外側ピース10と内側ピース20との間を通じて開口部13a,14a,22aおよび楔状溝21aが対向する相手方以外に連通してしまうといった事態も招くことが無い。
【0048】
なお、内側ピース20を外側ピース10の筒部12へ嵌合することで、外側ピース10に内側ピース20を固定することができる場合には、突起12bを設けずともよいが、突起12bを設けることで上記の種々の利点を享受することができるのである。
【0049】
このように構成されたピストン1は、上述したように外側ピース10の外周にピストンリング17が装着されており、ピストンリング17の外周面に凹凸ができてしまうといった不具合も無いので、緩衝器の伸縮動作に抵抗を与えてしまう危惧も無く、また、二つの円盤を一体化する従来のピストンのように比較して装着部を精密に加工する必要がないから、ピストン1の加工が容易となり、ピストン1の製造の際の加工工数を低減することができ、製造コストも低減させることが可能である。
【0050】
さらに、このピストン1にあっては、外側ピース10と内側ピース20とが一体化されて固定されるので、ピストンロッド2への組みつけの際に、ピストンを構成する外側ピース10と内側ピース20とがバラバラとならず、これらを別々に管理する必要もなくなるので、ピストンロッド2への組付作業が容易となって部品管理も簡単となる。したがって、このピストン1によれば、ピストンロッド2への組付作業性が良く、加工も容易となる。
【0051】
また、内側ピース20を外側ピース10の筒部12に嵌合させるが圧入はせず、突起12bで内側ピース10を外側ピース20に固定する場合には、内側ピース20を外側ピース10へ強く押付ける加工を要しないため、リーフバルブ3,4が当接するバルブシート部である各弁座15,23の先端および環状窓14c,22cより内側となる内周部を痛めて変形させてしまうことが無く、緩衝器の発生減衰力が製品毎でばらつきが生じることがなく、緩衝器に狙い通りの均一で安定した減衰力を発現させることができる。
【0052】
以上で本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のピストンは、緩衝器に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ピストン
2 ピストンロッド
2a ピストンロッドの先端
3,4 リーフバルブ
5 ピストンナット
6 シリンダ
7 上室
8 下室
10 外側ピース
11 底部
12 筒部
12a 凸部
12b 突起
13 外側ピース入口通路
13a,14a,22a 開口部
13b,14b,22b 縦孔
14 外側ピース出口通路
14c,22c 環状窓
15 外側ピース弁座
16 装着部
17 ピストンリング
18,24 挿通孔
19,25 テーパ部
20 内側ピース
21 内側ピース入口通路
21a 楔状溝
21b 縦溝
22 内側ピース出口通路
23 内側ピース弁座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドに連結されるピストンであって、複数の通路とピストンロッドが挿通される挿通孔が設けられる底部と底部外周から立ち上がる筒部を有して外周にピストンリングが装着される外側ピースと、円盤状であって複数の通路とピストンロッドが挿通される挿通孔を有する内側ピースとを備えてなり、内側ピースを筒部に嵌合して外側ピースの底部に積層し内側ピースと外側ピースの双方の通路を連通させたことを特徴とするピストン。
【請求項2】
外側ピースにおける筒部の端部内側に突起を設け、突起を内側へ加締めて当該突起で内側ピースを保持して、内側ピースを外側ピースに固定することを特徴とする請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
内側ピースに設けた通路は、外側ピースに対向する対向端部とは反対側の反対向端部に設けた環状の内側ピース弁座より内周側に設けた内側ピース出口通路と、上記内側ピース弁座より外周であって対向端部から反対向端部外周にかけて設けた溝で形成される内側ピース入口通路とを備え、外側ピースに設けた通路は、底部であって内側ピースに対向する対向端部とは反対側の反対向端部に設けた環状の外側ピース弁座より内周側に設けた外側ピース出口通路と、底部であって上記外側ピース弁座より外周に設けた外側ピース入口通路とを備え、内側ピース出口通路と外側ピース入口通路とを連通させるとともに内側ピース入口通路と外側ピース出口通路とを連通させたことを特徴とする請求項1または2に記載のピストン。
【請求項4】
外側ピースの筒部の内側に凸部を設けて、凸部を内側ピースの内側ピース入口通路を形成する溝内に挿入することで外側ピースに対して内側ピースを円周方向に位置決めすることを特徴とする請求項3に記載のピストン。
【請求項5】
突起は円弧状であって内側ピースの内側ピース入口通路を形成する溝間に配置され、当該突起で内側ピースの溝間を保持することを特徴とする請求項3または4に記載のピストン。
【請求項6】
内側ピース入口通路および内側ピース出口通路は同数設けられて円周方向に交互に表れるよう配置されるとともに、外側ピース入口通路および外側ピース出口通路はともに内側ピース入口通路および内側ピース出口通路と同数設けられて円周方向に交互に表れるよう配置されることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のピストン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−38626(P2011−38626A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189363(P2009−189363)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】