説明

ピセアタノール(piceatannol)及びビタミンA類(retinoids)を含有する化粧品組成物

【課題】皮膚刺激などレチノール有害作用を緩和し、レチノールのスキンケア効果を増強する皮膚用化粧品の組成物を提供する。
【解決手段】本発明の主たる発明は、皮膚適合性を大幅に改善させるビタミンA類含有の皮膚コンディショニング用組成物で、以下を含むものである
(a) レチノール、レチニールエステル類、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸塩、これらの誘導体もしくは類縁物質、並びにこれらのいずれかとの配合からなる群から選択された単一のビタミンAで、その濃度が約0.001%から約5%のもの;
(b) ピセアタノール、皮膚学的に受容可能な塩類、エステル類、アミド類、これらのプロドラッグ及び類縁物質、並びにこれらのいずれかとの配合で、その濃度が約0.0001%から約10%のもの;
(c) 化粧品として受容可能な媒体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンA類及びピセアタノールとその誘導体を含有する化粧品組成に関するものであり、刺激を伴わずにコラーゲン合成の改善を図るスキンケア処置に有用である。
【背景技術】
【0002】
レチノール(ビタミンA)は人体中に天然に存在する内因性物質で、上皮細胞の分化に必須である。天然及び合成ビタミンA誘導体は抗皺作用物質として広く知られており、しわ、ガサツキ、多孔質、粗さ、乾燥、まだら(過剰色素沈着)などの皮下老化作用の軽減に効果的である(Kingmanに対する特許文献1及び2号参照)。ビタミンA類が、表皮の肥厚(アカントーシス、皮膚肥厚症)を引き起こす炎症や、表皮剥離をもたらす局所細胞内浮腫を軽減する作用を有することは自明のこととされている。
【0003】
ビタミンA類含有製剤を組成を処方化するに当たっては、ビタミンAが放出され最適濃度で角質層に保持される一方、体循環中への吸収は最小限である配合となるよう留意する必要がある。更に、使用者が慢性的に取り扱う場合への対応も重要である。しかし、既存のビタミンA類含有品では乾燥や刺激が起こり過度の皮膚剥離を生じる。そのような組成では、使用者が最大限の効果発現に必要な頻回かつ充分量のビタミンA類配合製品の使用を中止せざるを得ないかも知れない。
【特許文献1】米国特許第4.603.146号
【特許文献2】米国特許第4.877.805号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、天然もしくは合成ビタミンA類と抗炎症剤としてのピセアタノールとを配合する組成が、肌の乾燥及び/または刺激をよく抑制し、かつビタミンA類成分の利点を生かしつつ皮膚に放出されるという予期せぬ知見に部分的に基づいている。これらの組成は使用者の受容度を改善し、かくして、同時に皮膚調整効果の全般的改善とともに使用者にとってのより良い利用性が促進される。
【0005】
ピセアタノール(トランス-3,4,3’,5’-テトラヒドロキシスチルベン)は多くの植物中に認められる成分で、しばしば構造的な関連物質であるレスベラトロール(トランス-4,3’,5’-トリヒドロキシスチルベン)もともに認められる。
【0006】
両成分はカビや他の環境ストレスに反応して植物中で合成され、フィトアレキシン(植物補体)に分類される。ピセアタノールは学名Melaleuca leucadendron(ホワイトティーツリー)の有効作用物質として同定されている。文献はTsuruga, T., Chun, Y.T., Ebizawa, Y. & Sankawa, U. (1991) 「Melaleuca leucadendronの生物学的有効組成成分:ラット肥満細胞からの誘発ヒスタミン放出阻害物質」Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 39:3276-3278である。
【0007】
また、Cassia garretiana, (Asian legume)の有効作用物質として同定された。文献はInamori, Y., Kato, Y., Kubo, M., Yasuda, M., Baba, K., & Kozawa, M. (1984) 「Cassia garretiana (CRAIB)の芯材から単離した3,3’,4,5’-テトラヒドロキシスチルベンの生理学的作用」Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 32:213-3218である。
【0008】
またRheum undulatum(朝鮮大黄)の有効成分としても同定された。文献はKo, S.K., lee, S.M., & Whang, W.K. (1999) 「Rheum undulatumから得たスチルベン誘導体の抗血小板凝集作用」 Arch. Pharm. Res. 22: 401-403, 及び Matsuda, H., Kageura, T., Toguchida, I., Harima, S. & Yoshikawa, M. (2000)「リポ多糖類で活性化したマクロファージにおける一酸化窒素に対する大黄から得たスチルベン成分の作用」Bioorg. Med. Chem. Lett. 10:323-327である。これらは伝統的な漢方薬に使われる。
【0009】
また、Euphobia lagascar(ユーホルビア)の種子の抗白血病成分として、癌、腫瘍及び瘤の民間治療に使用されている。文献は、Ferrigni, N.R., McLaughin, J.L., Powell, R.G., & Smith, C.R.(1984)「ユーホルビアの種子の抗白血病作用因子としてのピセアタノールの単離と作用検出のためのポテト板及びブライン・シュリンプバイオアッセイの使用」J. Nat. Prod. 47: 347-352である。
【0010】
Teguoらは、Vitis venifera(ヴィティス ヴェニへラ、ワイン用葡萄の一種)の細胞懸濁培養液中のピセアタノールを検出した。文献はTeguo, P.w., Decendit. S., Krisa, S., Deffieux, G., Vercauteren, J. & Merillon, J.M. (2001)「ヴィティス ヴェニヘラの細胞懸濁培養液中のスチルベングリコシドの蓄積」J. Nat. Prod. 59: 1189-1191である。
【0011】
レスベラトロールを含有する化粧品組成はすでに記述されている。例えば、Pezzutoら(米国特許番号第6,414,037号)はレスベラトロール含有組成による皮膚コンディションの予防もしくは処置の方法を開示し、Pillaiら(米国特許第6,358,517号)はレスベラトロールと選択されたビタミンA類との配合によるスキンケア化粧品の組成を開示している。ピセアタノールを有効成分として用いた化粧品組成はいまだ記述されていない。ピセアタノールのユニーク性とピセアタノールへのヒドロキシ基の追加がレスベラトロールの単純な延長線上のものではないことは、科学的証拠によって実証されている。
【0012】
例えば、AshikawaらのJ. Immunol. 2002 Dec 1; 169(11):6490-7を参照のこと。ピセアタノール及びその誘導体はフェノール成分であるので、強力な抗酸化剤として作用する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主たる発明は、皮膚適合性を大幅に改善させるビタミンA類含有の皮膚コンディショニング用組成の発見で、以下を含むものである:
(a) レチノール、レチニールエステル類、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸塩、これらの誘導体もしくは類縁物質、並びにこれらのいずれかとの配合からなる群から選択された単一のビタミンAで、その濃度が約0.001%から約5%のもの;
(b) ピセアタノール、皮膚学的に受容可能な塩類、エステル類、アミド類、これらのプロドラッグ及び類縁物質、並びにこれらのいずれかとの配合で、その濃度が約0.0001%から約10%のもの;
(c) 化粧品として受容可能な媒体
【0014】
文中で使用する用語“コンディショニング”の意味は、乾燥肌、光で痛んだ皮膚、しわの発現、加齢班、加齢肌、にきび、薄色肌、乾癬、アトピー性皮膚病の予防と治療、角質層の柔軟性増加、皮脂分泌の制御、及び皮膚質の一般的改善である。当該組成は皮膚落屑と細胞増殖の改善に使用することが可能である。
【0015】
本発明品中にピセアタノールが存在することで、レチノールもしくはレチニールエステルの作用は実質的に改善される。すなわち、ピセアタノールはレチノールもしくはレチニールエステルが細胞増殖に作用する能力を実質的に高める。哺乳類では、ピセアタノールは(分子レベルのターゲットは不明ながら)サイトカインの産生と機能に干渉する抗酸化作用と抗炎症作用を発揮する。
【0016】
しかし、皮膚効用の実質的な向上は、ピセアタノールをレチノールもしくはレチニールエステルと配合した場合に実現する。つまり該発明は、少なくとも部分的には、レチノールもしくはレチニールエステルとピセアタノールとの間の相乗的相互作用の発見に基づくものである。
【0017】
本発明に従い、レチノールもしくはレチニールエステル含有組成中へ有効量のピセアタノールを添加することにより、その組成の作用能が実質的に改善される。
【0018】
本発明には、乾燥肌、光で痛んだ皮膚、しわの発現、加齢班、加齢肌、にきび、薄色肌、乾癬、アトピー性皮膚病の予防と治療、角質層の柔軟性増加、皮脂分泌の制御、及び皮膚質の一般的向上などのコンディションの改善もしくは予防の方法も含まれ、その方法には該発明組成を皮膚へ塗布する方法も含まれる。
【0019】
本発明の組成は、すでに乾燥し、パサパサした、しわのある、老人性の、光で痛んだ哺乳類の皮膚への局所塗布を目的としているが、該発明組成を健常皮膚の退行的変化の防止もしくは軽減のために、予防的に塗布しても構わない。
【0020】
更に本発明には、ビタミンA類に起因することのある皮膚の刺激、ヒリヒリ感もしくは炎症を制御する化粧的方法も含まれる。この点で、該発明にはピセアタノールとビタミンA類との配合を含有する化粧品組成もまた含まれる。
【0021】
〔概要及び定義〕
“ピセアタノール”との用語は、ピセアタノールのシス異性体あるいはピセアタノールのトランス異性体、もしくは両異性体の混合のいずれかを指すように企図されている。またこの用語は、天然の有効成分及び研究室での化学合成による化合物の両方を指すよう企図されている。更に文中で“ピセアタノール”という場合、ピセアタノールの皮膚科学的に受容可能な塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ及び類縁物質を包含するよう企図されている。
【0022】
“皮膚コンディションの処置をする”などの“処置する(treat)”との用語には、(1)コンディションの防止、すなわちコンディションの何らかの臨床的症状の予防、(2)コンディションの抑制、すなわち臨床症状の進展あるいは進行の阻止、及び/または(3)コンディションの緩和、すなわち臨床症状の退行惹起を包含するよう企図されている。
【0023】
“皮膚科学的に受容可能な“とは、生物学的にあるいはそれ以外でも不適切ではない物質との意味である。すなわちその物質は、選択された有効成分とともに個体に投与可能でいかなる不都合な生物学的作用をも惹起せず、あるいはそれが含まれている医薬品の組成中のいかなる成分とも有害な相互作用を惹起しない物質である。同様に、文中にある有効成分の“皮膚科学的に受容可能な”塩、もしくは“皮膚科学的に受容可能な”エステルとは、生物学的にあるいはそれ以外でも不適切でない塩あるいはエステルのことである。
【0024】
“選択的な”あるいは“選択的に”とは、後述する状況が発生する場合と発生しなくてもよい場合を意味する。従って、その状況が起こる事例と起こらない事例の両方を含む。例えば、処方中にある添加物が“選択的に存在する”と記述された場合は、その添加物を含有する処方及び含有しない処方の双方を包含する。
【0025】
〔処置のための有効成分〕
上述した該発明は、ビタミンA類使用に伴う皮膚コンディションの予防もしくは処置のためのピセアタノールの利用を含むものである。
【0026】
ピセアタノールは天然のまま、すなわちぶどうの皮、ワインもしくは他の植物由来成分から単離して使用できるし、研究室で化学合成しもしくは市販品、例えばビオモール リサーチ ラボラトリーズ インク社 ( プリモスミーティング市、ペンシルバニア州)のものを調達して使用してもよい。天然資源からピセアタノールを得る望ましい方法は、ドイツトウヒの樹皮から該成分を抽出することである。
【0027】
該有効成分は皮膚科学的に受容可能な塩、エステル、アミド、プロドラッグもしくは類縁物質としてあるいはそれらを配合しての使用も可能である。ピセアタノールの塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ及び類縁物質は、有機合成化学や医薬品の製剤技術熟練者には公知の標準的な工程により製造が可能である。エステル類の製造には、その薬物の分子構造中にあるヒドロキシ基の機能化が含まれる。エステル類は、遊離アルコール基の典型的なアシル置換誘導体である。
【0028】
すなわち、化学式RCOOH(Rはアルキル基で、より低分子のアルキル基が望ましい)のカルボン酸誘導体の一部である。エステル類は、必要に応じて、通常の水素化分解もしくは加水分解により遊離酸類へと再変換する。アミド類及びプロドラッグの製造も、類似の方法で可能である。有効成分の他の誘導体及び類縁物質の製造は、有機合成化学技術の熟練者には公知の標準的な工程により、あるいは文献参照による推論が可能である
【0029】
ピセアタノールのシス体及びトランス体の望ましい誘導体は、成分の水酸基、典型的には3−水酸基、の1もしくはそれ以上が、単糖もしくは二糖、一般的には単糖の1位と抱合した物である。ピセアタノールの分子と抱合する可能性のある糖類の例としては、グルコース、ガラクトース、マルトース、サッカロースであるがこれに限定されない。シス−ピセアタノールグルコシド及びトランス−ピセアタノールグルコシド(アストリンジン)は特に望ましいものである。
【0030】
〔化粧品用処方〕
望ましい剤形化実施例では、局所適用に適した担体及び技術的に公知の物質を含む局所用の組成処方に有効成分を加える。局所用の担体としては該組成が望ましい形で供されるような物を選択する。
【0031】
例えば軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルジョン、ゲル、油、溶液などで、天然由来物質あるいは合成物質のいずれが含有されてもよい。選択された担体が有効成分や該局所用組成中の他の成分に悪影響を及ぼしてはならないことは、紛れもなく必須条件である。
【0032】
局所適用の担体として妥当であるものは、水、アルコール類・グリコール類及び他の無毒性有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、ワックスなどである。
【0033】
特に好ましい局所用担体としては、無色無臭の溶液、ローション、クリーム、マイクロエマルジョン及びゲルである。
【0034】
技術的熟練者に公知の種々の添加物は、該発明にかかる局所用処方に包含させることが出来る。その添加物の例としては、溶解補助剤、皮膚浸透性増強剤、乳白剤、保存剤(例えば抗酸化剤)ゲル化剤、緩衝剤、界面活性剤(特に非イオン系両性界面活性剤)、乳化剤、皮膚軟化剤、増粘剤、安定化剤、湿潤剤、着色剤、香料などであるがこれらに限定されない。乳化剤、皮膚軟化剤及び保存剤とともに、溶解補助剤及び/または皮膚浸透強化剤を加えることは特に望ましい。
【0035】
皮膚浸透性増強剤は、有効成分の治療濃度が非損傷皮膚のかなりの広さの部位を通過するのを容易にする。適切な増強剤はこの技術分野ではよく知られており、例えば2-プロパノールやジメチルイソソルビドが含まれる。
【0036】
溶解補助剤の例としては、次のものが挙げられるがそれに限定されない:1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール。
【0037】
その他の有効成分も処方に含めて構わない。すなわち、他の抗炎症剤、鎮痛剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗生物質、ビタミン類、抗酸化剤や日焼け止め剤であるが、日焼け止め剤に共通して使用される成分としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、アントラニル酸塩、ベンゾフェノン(特にベンゾフェノン−3)、カンファー誘導体、桂皮酸塩(例えばオクチルメトキシ桂皮酸塩)、ジベンゾイルメタン(例えばブチルメトキシジベンゾイルメタン)、p-アミノ安息香酸(PABA)及びこれらの誘導体、並びにサリチル酸塩(例えばオクチルサリチル酸塩)がある。
【0038】
本発明の望ましい局所用処方では、有効成分が処方中約0.005重量%から10重量%の範囲で含まれ、望むらくは約0.01重量%から5重量%の範囲で、もっと望ましいのは約0.1重量%から5重量%の範囲で、最も望ましいのは約0.1重量%から2重量%の範囲で含まれることである。
【発明の効果】
【0039】
〔使用〕
本発明に基づく組成は、主としてヒトの皮膚へ局所適用する化粧品、特に皮膚のコンディショニング、保湿化、平滑化、並びにしわや加齢肌の予防及び発現抑止を図る製品を企図したものである。
【0040】
処方品は、前節に記述したごとく、軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルジョン、ゲル、溶液などとして、所期の結果を得るために有効な用量範囲で、皮膚へ局所適用する。有効成分の望ましい1回投与量は1から100 mlの範囲である。一般的には、その投与計画には最低1日1回の局所投与を含む。
【0041】
本発明については具体的な剤形名とともに記述してはいるが、上述した例および後述するものは発明の目的を例証するためであり、それに限定するものでないことは理解されるべきである。他の特徴、利点及び改良は、該発明に関する技術の熟練者には明白であろう。
【0042】
全ての特許、特許資料及び本書で引用する文献は、そのまま参考文献として本書に記載する。
【実施例1】
【0043】
本発明に基づく処方品の作製方法を一般の熟練技術者にすべて開示するため、以下に実施例を示すが、それらは発明者が該発明とみなす範囲をこれに限定することを意味しない。数字に関して(例えば、分量、温度など)は出来うる限り正確性確保に努めたが、多少のエラーや誤差がありえる。
【0044】
特に説明のない限り、割合は重量による比率、温度は摂氏及び気圧は常圧である。すべての溶媒、試薬、添加物は医薬品グレードのものである。
【実施例2】
【0045】
この実施例では、ピセアタノールの溶液がビタミンA類誘発刺激を抑制し、皮膚外観を改善することを実証する。
実施例1及び比較実施例1と2の組成は、表1に示す成分を用いて調製した。
【表1】

【0046】
当該組成は以下の通り調整した:d−α−トコフェロール、レチニールパルミテート(1.7 m. IU/g)及びトランス−ピセアタノールを、30℃にてジメチルイソソルビド中に溶かし、澄明な溶液となった時点で同じく30℃にてジプロピレングリコールを添加する。操作は窒素ブランケット下で実施し、すべての溶液は窒素下で保管した。
【0047】
実施例1及び比較実施例1と2の組成について化粧品としての刺激の強度を、ヒト4-hパッチテスト(Basketter D .A.ら, Food Chem Toxicl 1997,: 35: 845-852)の変法にて検討した。実験はウェブリルパッド(ヒルトップ社、シンシナティ、オハイオ州、アメリカ)付きの25 mmヒルトップチェインバー上の被験溶液0.2 mlを、16名の志願者の上部外腕の皮膚に適用した。被験者の両腕が使われ、パッチは均衡かつランダムに貼付された。
【0048】
24時間後パッチは除去され、被験部位にマーカーペンで印が付けられた。24、48、72時間経過ごとに、被験部位を観察し刺激の有無をパッチ除去後24、48、72時間時点に4評点法(表2)にて判定した。
【表2】

結果を表3に示す。

【表3】

【0049】
ピセアタノールを添加した場合、明らかにレチニールパルミテートの刺激を抑制した。

【0050】
実施例1及び比較実施例1と2の組成について化粧品としての皮膚しわ改善に対する効果を、コンピューター化されたレーザー側面計にて測定した。試験は30歳以上の16人の女性で行い、実験1及び比較実験1と2の組成を、被験者の顔(面積2x2 cm2)に1日1回0.05 gを9週間塗布した。
【0051】
次に皮膚しわの複製(レプリカ)をプラスチックシリコンの精密構造コンパウンドを用いて作成した。その複製の皮膚しわの変化を視覚的皮膚測定器(ドイツ、Couage & Khazaka electronic GmbH社製のSkin Visiometer)にて検出した。複製の3次元映像をCCDカメラで分析した。皮膚しわ改善効果を、次の数方程式1に従い、しわの平均粗さ度(Rz)として算出した:
【0052】

Rz=(R1+R2+………+Rn-1+Rn)/しわの数(n) (1)

【0053】
この数方程式中、Rnは各しわの粗さを、またnはしわの数を表す。結果は次下の表4に示す。
【表4】

【0054】
上の表から分かるように、しわの高さ(粗さ)は実施例1の組成では9週間投与で70%(p<0.01)減少し、比較実施例1の組成では9週間後56%(p<0.01)減少した。このことは、実施例1及び比較実施例1ではプラセボ(比較実施例2)に比して、有意に皮膚しわの粗さが改善されたことを意味している。またこの結果は、ピセアタノールがしわ改善に対するレチノール(ビタミンA)の作用を実際に増強させることも示している。この結果はまた該発明の化粧品としての組成が、しわ改善に対する目に見える効果を短期間に現すことも示している。
【実施例3】
【0055】
この例ではトランス−(3,5,3’,4’-テトラヒドロキシスチルベン)−3−O−ベータ−d−グルコピラノシド(トランス−アストリンジン)が、溶液型処方品でビタミンA類誘発刺激を抑制し、皮膚外観を改善することを実証する。
実施例2の組成は表5に示す成分を用いて調製した。
【表5】

この組成は実施例1の操作に従って調整した

【0056】
実施例1の項に記述した試験方法と同一の方法にて、実施例2の組成の皮膚刺激の強度を比較実施例1及び2のそれと比較検討した。
結果は表6に示す。
【表6】

【0057】
ピセアタノール−グルコシド(アストリンジン)の添加により、レチニールパルミテートの刺激が抑制された。
実施例2の組成の皮膚しわ改善に対する効果を、実施例1に記述した方法と同一の方法で検討した。結果は表7に示す。

【表7】

【0058】
上の表から分かるように、しわの高さ(粗さ)は実施例2の組成では9週間投与で67%(p<0.01)減少した。このことは、実施例1及び比較実施例1ではプラセボ(比較実施例2)に比して、有意に皮膚しわの粗さが改善されたことを意味している。またこの結果は、アストリンジンがしわ改善に対するレチノール(ビタミンA)の作用を実際に増強させることも示している。この結果はまた該発明の化粧品としての組成が、しわ改善に対する目に見える効果を短期間に現すことも示している。
【実施例4】
【0059】
この例ではピセアタノールが、エマルジョン(ローション)型処方品でビタミンA類誘発刺激を抑制し、皮膚外観を改善することを実証する。
実施例3及び比較実施例3と4の組成は、表8に示す成分を用いて調製した。
【表8】

【0060】
当該ローションは化粧用ローションの標準的操作にて調製した。
実施例1の項に記述した試験方法と同一の方法にて、実施例3の組成の皮膚刺激の強度を比較実施例3及び4のそれと比較検討した。
結果は表9に示す。
【表9】

【0061】
ピセアタノールの添加により、ローション中のレチニールパルミテートの刺激が明らかに抑制された。
実施例3の組成の皮膚しわ改善に対する効果を、実施例1に記述した方法と同一の方法で検討した。結果は表10に示す。
【表10】

【0062】
上の表から分かるように、しわの高さ(粗さ)は実施例3の組成では9週間投与で55%(p<0.01)減少し、比較実施例3の組成では9週間後31%(p<0.01)減少した。
【0063】
このことは、実施例3及び比較実施例3ではプラセボ(比較実施例4)に比して、有意に皮膚しわの粗さが改善されたことを意味している。またこの結果は、ピセアタノールがしわ改善に対するレチノール(ビタミンA)の作用を実際に増強させることも示している。
【0064】
この結果はまた該発明の化粧品としての組成が、しわ改善に対する目に見える効果を短期間に現すことも示している。
【実施例5】
【0065】
この例ではピセアタノールグルコシド(アストリンジン)が、エマルジョン(ローション)型処方品でビタミンA類誘発刺激を抑制し、皮膚外観を改善することを実証する。
実施例4の組成は、表11に示す成分を用いて調製した。
【表11】

【0066】
当該ローションは化粧用ローションの標準的操作にて調製した。
実施例1の項に記述した試験方法と同一の方法にて、実施例4の組成の皮膚刺激の強度を検討した。結果は表12に示す。
【表12】

【0067】
アストリンジンの添加により、ローション中のレチニールパルミテートの刺激が明らかに抑制された。
実施例4の組成の皮膚しわ改善に対する効果を、実施例1に記述した方法と同一の方法で検討した。結果は表13に示す。
【表13】

【0068】
上の表から分かるように、しわの高さ(粗さ)は実施例4の組成では9週間投与で65%(p<0.01)減少した。このことは、実施例4ではプラセボ(比較実施例4)に比して、有意に皮膚しわの粗さが改善されたことを意味している。
【0069】
またこの結果は、アストリンジンがしわ改善に対するレチノール(ビタミンA)の作用を実際に増強させること、及びアストリンジンはエマルジョン型化粧品にあってはピセアタノールより効率的であることを示している。
【0070】
この結果はまた該発明の化粧品としての組成が、しわ改善に対する目に見える効果を短期間に現すことも示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含む皮膚用化粧品の組成物:
(a)レチノール、レチニールエステル類、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸塩、これらの誘導体もしくは類縁物質、並びにこれらのいずれかとの配合からなる群から選択された単一のビタミンAで、その濃度が約0.001%から約5%のもの;
(b)ピセアタノール、皮膚学的に受容可能な塩類、エステル類、アミド類、これらのプロドラッグ及び類縁物質、並びにこれらのいずれかとの配合で、その濃度が約0.0001%から約10%のもの;
(c)化粧品として受容可能な媒体
【請求項2】
以下のものを含む皮膚用化粧品の組成物:
(a)約0.005から約5重量%のビタミンA類
(b)ピセアタノール、及びその皮膚科学的に受容可能な塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ、類縁物質、並びにこれらのいずれかを約0.001から約10重量%
【請求項3】
有効成分がピセアタノールである請求項2記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項4】
有効成分がピセアタノールと単糖類または二糖類との抱合である請求項2記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項5】
有効成分がピセアタノール−3−O−ベータ−d−グルコピラノシド(アストリンジン)である請求項2記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項6】
レチノール、レチニールエステル類、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸塩、及びその誘導体、類縁物質、並びにこれらのいずれかを含む配合から選択されたビタミンA類を含む請求項2記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項7】
請求項2記載の組成に、日焼け防止剤及びトコフェロール抗酸化剤の1つならびにこれの配合から選択された成分を含む請求項2記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項8】
約1%から約99.5%の皮膚科学的担体を含む請求項7記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項9】
軟膏、ローション、クリーム、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ゲルまたは溶液の剤形での請求項8記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項10】
以下のものを含む皮膚用化粧品の組成物:
(a)約0.005から約5重量%のビタミンA類
(b)ピセアタノール、及びその皮膚科学的に受容可能な塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ、類縁物質、並びにこれらのいずれかを約0.001から約10重量%含む配合
(c)皮膚科学的に受容可能な媒体で、そこに上記のビタミンA類を約0.005から約5重量%含有するもの
【請求項11】
有効成分がピセアタノールである請求項10記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項12】
有効成分がピセアタノールと単糖類または二糖類との抱合である請求項11記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項13】
有効成分がピセアタノール−3−O−ベータ−d−グルコピラノシド(アストリンジン)である請求項12記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項14】
レチノール、レチニールエステル類、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸塩、及びその誘導体、類縁物質、並びにこれらのいずれかを含む配合から選択されたビタミンA類を含む請求項10記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項15】
日焼け防止剤及びトコフェロール抗酸化剤の1つならびにこれの配合から選択された成分を含む請求項10記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項16】
約1%から約99.5%の皮膚科学的担体を含む請求項10記載の皮膚用化粧品の組成物。
【請求項17】
軟膏、ローション、クリーム、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ゲルまたは溶液の剤形での請求項16記載の皮膚用化粧品の組成物。

【公開番号】特開2008−162937(P2008−162937A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354053(P2006−354053)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000101787)アルロン・ジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】